説明

染料、着色樹脂組成物、カラーフィルタ、液晶表示装置及び有機EL表示装置

【課題】本発明は、耐熱性と耐溶剤性とを両立したカラーフィルタを得られる着色樹脂組成物を提供することを課題とする。
更に、本発明は、前記着色樹脂組成物を用いて形成されるカラーフィルタ、並びに高品質の液晶表示装置及び有機EL表示装置を提供することを課題とする。
【達成手段】下記式(I)で表される化合物からなることを特徴とする、染料。
(I)
(上記式(I)中、Zは、ジスルホニルイミドアニオンを表す。Aは、カチオン染料を表す。
但し、Z及びAの少なくとも何れかには、架橋性基を有する。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料、着色樹脂組成物、カラーフィルタ、液晶表示装置及び有機EL表示装置に存する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットディスプレイとして、カラーの液晶表示装置や有機ELディスプレイが注目されており、これらのディスプレイにはカラーフィルタが用いられている。
例えば、カラー液晶表示装置には、一例として、ブラックマトリックス、複数の色(通常、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色)からなる着色層、透明電極および配向層を備えたカラーフィルタ基板と、薄膜トランジスタ(TFT素子)、画素電極および配向層を備えた対向電極基板と、これら両基板を所定の間隙をもたせて対向させ、シール部材で密封して、上記間隙に液晶材料を注入して形成された液晶層とから概略構成された透過型の液晶表示装置がある。また、上記のカラーフィルタの基板と着色層との間に反射層を設けた反射型の液晶表示装置もある。
【0003】
有機ELディスプレイは、原理的には、陽極と陰極との間に有機EL発光層をはさんだ構造の有機EL素子を有するものであるが、実際に、有機EL素子を用いてカラー表示の可能な有機ELディスプレイとするには、(1)三原色の各色をそれぞれ発光する有機EL素子どうしを配列する方式、(2)白色光に発光する有機EL素子を三原色のカラーフィルタ層と組み合わせる方式、並びに(3)青色発光する有機EL素子と、青→緑、および青→赤にそれぞれ色変換する色変換層(CCM層)とを組み合わせるCCM方式等がある。
【0004】
(1)の方式は言うまでもなく、各色の有機EL素子を使用するため、高い色再現性を発現し得るのが特徴である。従って、各色の有機EL素子に対応してカラーフィルタを載置することにより、色再現性の向上や、反射光を吸収することによるコントラスト向上が期待できるため、有望な方式の一つとされている。
また、(2)の白色有機ELとカラーフィルタとの組み合わせ方式および(3)のCCM方式は、同じ色に発光する有機EL素子を一種類使用すればよいので、上記(1)の方式の有機ELディスプレイにおけるように、各色の有機EL素子の特性を揃える必要が無く、工程数および材料の削減等が可能となり、製造コスト面でも注目を集めているフルカラー化方式である。
【0005】
カラーフィルタおよび色変換フィルターと有機発光体を構成要素とする色変換方式を用いた有機EL素子において、カラーディスプレイの製造工程で要求される耐熱性や、ディスプレイとして使用される際の耐候性、並びに高精細度の画像が要求されるものについては、顔料分散法で作成されたカラーフィルタを用いるのが主流となっており、感光性樹脂溶液中に赤色、青色または緑色の顔料を粒径1μm以下に微分散したものをガラス基板上に塗布した後、フォトリソグラフィーにより所望のパターンで画素を形成している。
【0006】
カラーフィルタに関しては、色純度、彩度、光透過量の向上が求められており、従来は、光透過量の向上を目的として、画像形成用材料中の感光性樹脂に対する着色顔料の含有量を減らすか、もしくは画像形成用材料により形成される画素の形成膜厚を薄くするというような方法が採られてきた。しかしながら、これらの方法ではカラーフィルタ自体の彩度が低下し、ディスプレイ全体が白っぽくなって表示に必要な色の鮮やかさが犠牲となってしまい、逆に彩度を優先して着色顔料含有量を増加させるとディスプレイ全体が暗くな
り、この場合には、明るさを確保するためにバックライトの光量を大きくしなければならず、ディスプレイの消費電力増大を招いてしまうという問題がある。
【0007】
これに対して、光透過量の向上を目的として、顔料粒子の粒径をその呈色波長の1/2以下にまで微分散する方法が知られているが(非特許文献1)、青色顔料は他の赤色、緑色顔料に比較して呈色波長が短いため、この場合にはさらなる微分散を必要とし、コストアップ並びに分散後の安定性が問題となる。
一方で、着色剤として染料を使用したカラーフィルタも依然開発が進められている。例えば特許文献1には、シー・アイ・アシッド・ブルー83(トリアリルアミン系色素)と、シー・アイ・ソルベント・ブルー67(銅フタロシアニン系色素)を有する青色フィルター層を設けたカラーフィルタが記載されている。
【0008】
また、特許文献2には、下記式で表される重合性トリフェニルメタン染料を含むポリマーを用いたカラーフィルタが記載されている。
【0009】
【化1】

【0010】
(上記式におけるR1のうち、少なくとも一つは炭素−炭素二重結合を含む特定の重合性
基)
更に、特許文献3にも特定構造で表される化合物(色素)を含有するカラーフィルタ
用着色樹脂組成物に関する記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−14222号公報
【特許文献2】特開2000−162429号公報
【特許文献3】特開2009−235392号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】橋爪清「色材協会誌」(1967年12月、p608)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前記特許文献2及び3に記載の染料を使用したカラーフィルタは、輝度と耐溶剤性との両立が不十分である場合があった。
そこで、本発明は、輝度と耐溶剤性とを両立したカラーフィルタを得られる染料、及び着色樹脂組成物を提供することを課題とする。
更に、本発明は、前記着色樹脂組成物を用いて形成されるカラーフィルタ、並びに高品質の液晶表示装置及び有機EL表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、鋭意検討を行った結果、特定のアニオンを含む染料において、更に架橋性基を有することで、上記課題を解決しうることを見出して、本発明に到達した。
即ち、本発明は、下記式(I)で表される化合物からなることを特徴とする、染料、着色樹脂組成物、カラーフィルタ、液晶表示装置及び有機EL表示装置に存する。
(I)
(上記式(I)中、Zは、ジスルホニルイミドアニオンを表す。Aは、カチオン染料を表す。
【0015】
但し、Z及びAの少なくとも何れかには、架橋性基を有する。)
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のカラーフィルタを有する有機EL素子の一例を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の記載は本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
なお、本発明において「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」等は、「アクリル及び/又はメタクリル」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」等を意味するものとし、例えば「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味するものとする。
【0018】
また「全固形分」とは、後記する溶剤成分以外の本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物の全成分を意味するものとする。
更に、「芳香族環」とは、「芳香族炭化水素環」及び「芳香族複素環」の双方を意味するものとする。
C.I.とは、カラーインデックスを意味する。
【0019】
本発明は、前記式(I)で表される化合物からなる染料である。
また、本発明の着色樹脂組成物は、(A)色材として前記染料、(B)溶剤、及び(C)バインダー樹脂、並びに、(D)モノマー、(E)光重合開始系、更に必要に応じて配合されるその他の成分を含む。
先ず、本発明の染料について説明する。
【0020】
<染料>
本発明の染料は、下記式(I)で表される化合物からなる染料である。
(I)
(上記式(I)中、Zは、ジスルホニルイミドアニオンを表す。Aは、カチオン染料を表す。
【0021】
但し、Z及びAの少なくとも何れかには、架橋性基を有する。)
(Aについて)
は、カチオン染料を表す。
カチオン染料としては、本発明の効果を損わない限り特に制限はないが、例えば、「Industrial Dyes -Chemistry, Properties, Applications-(Wiley-VCH, 2003年、Klaus Hunger編集)」等に記載されている色材が挙げられる。より具体的には、トリアリールメタン類、シアニン類、スチリル類、アジン類等の色材骨格(Chromophore)を有する化合物
が挙げられ、所望する色により適宜選択することができる。
【0022】
特に、青色(Blue)を所望する場合、色濃度、輝度、及び耐熱性が優れる点からトリアリールメタン類が好ましく、紫色(Violet)を所望する場合は、得られるカラーフィルタの色濃度、輝度及び耐熱性が優れる点から、トリアリールメタン類及びシアニン類が特に好ましい。
(Zについて)
は、ジスルホニルイミドアニオンを表す。
【0023】
ジスルホニルイミドアニオンは、イオン種がスルホンアミド基であるため製造が容易である。また負電荷が非局在化しているため、アニオンが比較的安定である。さらに、ジスルホンアミドにフッ素含有の置換基を有することで、フッ素含有置換基側へアニオンが引っ張られることにより、分子全体として電荷が分散されて、より安定な構造となる。
また、ジスルホニルイミドアニオンは、いずれも可視領域に吸収がない。その為、色材(特に、カチオン染料)の色純度に影響を及ぼしにくく、得られる画素の色純度に影響し難い。
【0024】
(架橋性基について)
式(I)で表される化合物中、カチオン染料又はアニオンは、架橋性基を有する。
本発明における架橋性基とは、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により近傍に位置するほかの分子の同一又は異なる基と反応して、新規な化学結合を生成する基のことをいう。
【0025】
中でも、架橋性基としては、架橋しやすいという点から、下記<架橋性基群T>が挙げられる。
<架橋性基群T>
【0026】
【化2】

【0027】
(式中、R71〜R75は、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。
Ar33は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。)
中でも架橋性基としては、例えばエポキシ基、オキセタン基等の環状エーテル基、ビニルエーテル基等のカチオン重合によって架橋する基が好ましい。反応性が高く、溶剤に対する溶解性低下が容易なためである。中でも、カチオン重合の速度を制御しやすい点ではオキセタン基が特に好ましく、カチオン重合の際に素子の劣化を招く可能性のあるヒドロキシル基が生成しにくい点では、酸素原子を介してビニル基が結合するビニルエーテル基が好ましい。
【0028】
また、上記架橋性基の中でも、色調に影響し難く、得られる画素の耐溶剤性がより向上しやすい点で、下記<架橋性基群T’>で表される架橋性基であることが、特に好ましい。
<架橋性基群T’>
【0029】
【化3】

【0030】
架橋性基は、カチオン染料が有していてもよく、アニオンが有していてもよく、また、両方が有していてもよい。中でも、画素を形成後、溶剤に溶出して色調に与える影響が、アニオンよりカチオン染料の方が大きく、カチオン染料を特に固定した方が耐溶剤性向上の点で優れるため、架橋性基はカチオン染料が有することが好ましい。
<効果を奏する理由>
本発明の構成とすることで、輝度と耐溶剤性とが両立するという効果が得られる理由について、下記の通り推測する。
【0031】
式(I)で表される染料は、アニオンとしてジスルホニルイミドを含む。ジスルホニルイミドアニオンは、熱による昇華や分解などがし難いため、染料自体の安定性が高まる。
この為、アニオンとしてジスルホニルイミドを含む染料で、更に架橋性基を有すると、染料自体の安定性が高いことより有効に働く架橋性基が多く、その結果、耐溶剤性が向上する効果の幅が大きく、つまりは、輝度と耐薬品性とが両立しうるものとなる。
【0032】
[式(II)で表される化合物について]
前記式(I)で表される化合物は、色材の色濃度、輝度及び耐熱性が優れる点で、更に、下記式(II)で表される化合物であることが好ましい。
【0033】
【化4】

【0034】
(上記式(II)中、R11及びR12は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、又は置換基を有していてもよい炭素数3〜8のシクロアルキル基を表す。
尚、R11及びR12は、互いに結合して環を形成していてもよい。
は、前記式(I)におけると同義である。
【0035】
但し、A、R11及びR12の少なくとも何れかには、架橋性基を有する。)
11及びR12は、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜8のシクロアルキル基を表す。
該置換基としては、下記(置換基群W)の項で記載したものが挙げられる。
【0036】
(置換基群W)
フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、フェニル基、メシチル基、トリル基、ナフチル基、シアノ基、アセチルオキシ基、炭素数2〜9のアルキルカルボキシル基、スルホン酸アミド基、炭素数2〜9のスルホンアルキルアミド基、炭素数2〜9のアルキルカルボニル基、フェネチル基、ヒドロキシエチル基、アセチルアミド基、炭素数1〜4のアルキル基が結合してなるジアルキルアミノエチル基、トリフルオロメチル基、炭素数1〜8のトリアルキルシリル基、ニトロ基、炭素数1〜8のアルキルチオ基、ビニル基。
【0037】
これらの内、特に、R11及びR12におけるアルキル基、アルケニル基又はシクロアルキル基が有する置換基としては、アニオンの電荷がより非局在化して、色材の耐熱性が向上する点で、フッ素原子を置換基として有することが好ましい。
つまり、R11及びR12は、アニオンの電荷が分散されて、アニオンが安定化する点で、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0038】
より具体的には、前記式(II)で表される化合物は、下記式(II−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0039】
【化5】

【0040】
(上記式(II−1)中、n及びn’は、各々独立に、1〜8の整数を表す。
は、前記式(II)におけると同義である。
但し、Aは、架橋性基を有する。)
n及びn’は、通常1〜8、好ましくは1〜4の整数である。
n及びn’は、同じでもよく、また異なっていてもよい。
【0041】
nとn’とが同じである場合のスルホニルイミドアニオンの具体例としては、ビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド、ビス(ペンタフルオロブタンスルホン)イミド等が挙げられる。
nとn’とが違う場合のスルホニルイミドアニオンの具体例としては、ペンタフルオロエタンスルホントリフルオロメタンスルホンイミド、トリフルオロメタンスルホンヘプタフルオロプロパンスルホンイミド、フルオロブタンスルホントリフルオロメタンスルホンイミド等が挙げられる。
【0042】
上記の中でも、アニオンが最も安定化するとの理由から、n=n’=2である、ビス(
ペンタフルオロエタンスルホン)イミドが特に好ましい。
また、Aは、前記架橋性基を有する。
一方、R11及びR12は、互いに結合して環を形成していてもよい。
環を形成している場合、R11及びR12は、特に炭素数2〜12のフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0043】
つまり、前記式(II)で表される化合物は、更に、下記式(II−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0044】
【化6】

【0045】
(上記式(II−2)中、n’’は、2〜12の整数を表す。
Aは、前記式(II)におけると同義である。
但し、Aは、架橋性基を有する。)
n’’は、耐熱性の点で,好ましくは2〜8であり,さらに好ましくは3である。
n’’の数が小さい分子ほど、立体反発の影響が小さくなり、より強い相互作用が可能となる。即ち、n’’が小さいほど、アニオンとカチオンの相互作用が大きくなり、イオン対が安定化して耐熱性が向上するものと推測される。
【0046】
また、Aは、前記架橋性基を有する。
以下に、前記式(I)中の、Z、つまり、ジスルホニルイミドアニオンの好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<ジスルホニルイミドアニオンの具体例>
【0047】
【化7】

【0048】
また、前記式(II)で表される化合物は、カチオン、つまり式(II)中のAからリンカーを伸ばして、2量体や3量体などを形成していてもよい。
[式(III)で表される化合物について]
前記式(II)で表される化合物は、耐熱性に優れ、また得られる画素の、特に青色純度及び透過率が優れる点で、下記式(III)で表される化合物であることが好ましい。
【0049】
【化8】

【0050】
(上記式(III)中、R21及びR22は、各々、前記式(II)におけるR11及びR12と同義である。
〜Rは、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
隣接するR〜R同士が結合して環を形成してもよく、該環は、置換基を有していてもよい。
【0051】
及びRは、水素原子、又は任意の置換基を表す。
尚、R及びRは、互いに連結して環を形成していてもよい。
また、上記式(III)中のベンゼン環は、更に任意の置換基を有していてもよい。
101及びR102は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又はフッ素原子を表す。
【0052】
或いはR101とR102とが結合し、環を形成していてもよく、該環は置換基を有していてもよい。
上記式(III)のカチオン構造式は、架橋性基を有する。
尚、一分子中に複数の
【0053】
【化9】

【0054】
が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
(R〜Rについて)
〜Rは、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
〜Rにおけるアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基であって、その炭素数が通常1以上、また、通常8以下、好ましくは5以下のものが挙げられる。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0055】
〜Rにおける芳香族環としては、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環が挙げられる。
芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であってもよく、環を形成する炭素数が5〜18であれば特に制限はないが、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの1価以上の基が挙げられる。
【0056】
また、芳香族複素環としては、単環であっても縮合環であってもよく、環を形成する炭素数が3〜10であれば特に制限はないが、例えばフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの1価以上の基が挙げられる。
【0057】
隣接するR〜R同士が結合して環を形成してもよく、更に該環は、置換基を有していてもよい。
隣接するR〜R同士が結合して環を形成する場合、これらはヘテロ原子で架橋された環であってもよい。この環の具体例として、例えば以下のものが挙げられる。これらの環は置換基を有していてもよい。
【0058】
【化10】

【0059】
化学的安定性の点から、R〜Rとして好ましくは、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基であるか、或いは隣接するR〜Rが互いに結合して環を形成する場合であり、色材の耐熱性を向上し、得られるカラーフィルタの耐光性が優れる点で,より好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基である。
【0060】
〜Rが、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基である場合、超共役によりカチオン内の電荷が分散し、カチオンが安定化するものと推測される。また、R
〜Rが、置換基を有していてもよいフェニル基である場合、共役系を延長することで、カチオン内の電荷が分散することで、カチオンが安定化するものと推測される。このように、カチオンが安定化した結果、得られるカラーフィルタの耐溶剤性がより優れる。
【0061】
〜Rにおけるアルキル基及び芳香族環基が有していてもよい置換基としては、例えば、前記(置換基群W)のものが挙げられる。
(R及びRについて)
及びRは、水素原子、又は任意の置換基を表す。該任意の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族環基などが挙げられる。
【0062】
該アルキル基及び芳香族環基としては、前記(R〜Rについて)の項で記載のものと同様である。
また、R及びRは、互いに連結して環を形成していてもよい。
及びR同士が結合して環を形成する場合、これらはヘテロ原子で架橋された環であってもよい。この環の具体例として、例えば以下のものが挙げられる。これらの環は置換基を有していてもよい。
【0063】
【化11】

【0064】
得られるカラーフィルタが青色であり、且つ高輝度である点から、R及びR同士は互いに連結して環を形成していない方が好ましい。
また、得られるカラーフィルタが紫色であり、且つ高輝度である点から、互いに連結して環を形成している方が好ましい。
(R及びR10について)
及びR10は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又はフッ素原子を表す。
【0065】
又、RとR10とが結合し、環を形成していてもよい。
とR10とが結合して形成される環の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0066】
【化12】

【0067】
とR10とが結合して形成される環についても置換基を有していてもよい。
該置換基としては、例えば、前記(置換基群W)の項で記載したものが挙げられる。
また、上記式(III)中のベンゼン環は、更に任意の置換基を有していてもよい。
該ベンゼン環が有していてもよい置換基としては、例えば、前記(置換基群W)の項で記載したものが挙げられる。
【0068】
(架橋性基を含む位置)
式(III)のカチオン構造中、架橋性基は、R〜Rに含まれていてもよく、ナフタレン環に置換基として有していてもよい。
(R21及びR22について)
21及びR22は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、又は置換基を有していてもよい炭素数3〜8のシクロアルキル基を表す。
【0069】
尚、R21及びR22は、互いに結合して環を形成していてもよい。
上記式(III)中のR21及びR22は、各々、前記式(II)中のR11及びR12と同義であり、その態様については、前記[式(II)について](R11及びR12について)の項で記載のものと同様である。好ましい態様も同様である。
前記式(III)で表される化合物の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<具体例>
【0070】
【化13】

【0071】
【化14】

【0072】
[式(IV)で表される化合物について]
前記式(II)で表される化合物は、耐光性及び耐熱性,高い透過率を有するする点で、更に下記式(IV)で表される化合物であることが好ましい。
【0073】
【化15】

【0074】
(上記式(IV)中、R31及びR32は、各々、前記式(II)におけるR11及びR12と同義である。
41〜R46は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。R41とR42、及びR43とR44は、各々互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0075】
47及びR48は、各々独立に、水素原子、又は任意の置換基を表す。R47及びR48は、互いに結合して環を形成していてもよい。
又、上記式(IV)中のベンゼン環及びインドール環は更に任意の置換基を有していてもよい。
上記式(IV)のカチオン構造式は、架橋性基を有する。
【0076】
尚、1分子中に複数の
【0077】
【化16】

【0078】
が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
(R41〜R46について)
41〜R46は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又
は置換基を有していてもよい芳香族環基を示す。R41とR42、及びR43とR44は、各々互いに結合して環構造を形成していてもよく、更に該環は置換基を有していてもよい。
【0079】
隣接するR41〜R44同士が結合して環を形成する場合、これらはヘテロ原子で架橋された環であってもよい。この環の具体例として、前記式(II)の(R〜Rについて)の項に記載のR〜R同士が結合して環を形成する場合と同様である。好ましい態様も同様である。
(R47及びR48について)
47及びR48は、水素原子、又は任意の置換基を表す。該任意の置換基としては、前記R〜Rに記載のものが挙げられる。
【0080】
また、R47及びR48は、互いに連結して環を形成していてもよい。
47及びR48同士が結合して環を形成する場合、これらはヘテロ原子で架橋された環であってもよく、その具体例は、前記(式(III)で表される化合物について)(R47及びR48について)の項で記載のものと同様である。これらの環は置換基を有していてもよい。
【0081】
得られるカラーフィルタが紫色であり、且つ高輝度である点から、R及びR同士は互いに連結して環を形成していない方が好ましい。
また、得られるカラーフィルタが赤色であり、且つ高輝度である点から、互いに連結して環を形成している方が好ましい。
(架橋性基を含む位置)
式(IV)のカチオン構造中、架橋性基を含む位置としては、特に制限はないが、合成が容易である点で、R45及びR46が特に好ましい。
【0082】
(R31及びR32について)
31及びR32は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、又は置換基を有していてもよい炭素数3〜8のシクロアルキル基を表す。
尚、R31及びR32は、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0083】
上記式(IV)中のR31及びR32は、各々、前記式(II)中のR11及びR12と同義であり、その態様については、前記[式(II)について](R11及びR12について)の項で記載のものと同様である。好ましい態様も同様である。
前記式(IV)で表される化合物の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<具体例>
【0084】
【化17】

【0085】
【化18】

【0086】
【化19】

【0087】
[式(V)で表される化合物について]
前記式(II)で表される化合物は、耐熱性及び耐光性、透過率が高い点で、下記式(V)で表される化合物であることが好ましい。
【0088】
【化20】

【0089】
(上記式(V)中、R51及びR52は、前記式(II)におけるR11及びR12と同義である。
Ar及びArは、各々独立に、置換基を有していてもよい含窒素複素環基を表す。nは、1〜5の整数を表す。)
(Ar及びArについて)
Ar及びArは、各々独立に、置換基を有していてもよい含窒素複素環基を表す。
【0090】
含窒素複素環基としては、例えば、インドール環、ベンゾインドール環、インドレニン環、ベンゾインドレニン環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環やキノリン環が挙げられる。中でも、高輝度という点で、インドール環、ベンゾインドール環、インドレニン環、ベンゾインドレニン環が好ましく、インドール環、ベンゾインドレニン環がより好ましい。
【0091】
また、Ar及びArにおける含窒素複素環が有していてもよい置換基としては、本発明の効果を損わない限り特に制限はないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基などの脂肪族炭化水素基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基などの芳香族炭化水素環基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基などのアルコキシ基;
フェノキシ基などのアリールオキシ基;
ベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などのエステル結合を有する基;
メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基、ジエチルスルファモイル基、n−プロピルスルファモイル基、ジ−n−プロピルスルファモイル基、イソプロピルスルファモイル基、ジイソプロピルスルファモイル基、n−ブチルスルファモイル基、ジ−n−ブチルスルファモイル基などのアルキルスルファモイル基;
メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、tert−ブチルスルホニル基などのアルキルスルホニル基;
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;
ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0092】
尚、上記置換基が水素原子を有する場合、該水素原子は、例えば、フッ素原子、塩素原
子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基などのアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基などの芳香族炭化水素環基;カルボキシ基;シアノ基;ニトロ基;等によって置換されていてもよい。
【0093】
(nについて)
nは、1〜5の整数を表す。
nは、耐熱性の点で、1〜5が好ましく、1〜3が特に好ましい。
上記式(V)で表される化合物は、カチオン部位において、シス−トランス異性体が存在するが、いずれの異性体であってもよい。
【0094】
前記式(V)で表される化合物は、塗膜の明度及び耐熱性を高くする点で下記式(V−1)で表される化合物がより好ましい。
【0095】
【化21】

【0096】
(上記式(V−1)中、R51及びR52は、前記式(II)におけると同義である。
301及びR302は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基を表す。
51及びR52は、各々独立に、−O−、−S−、−N−、−Se−又は−CR303304−を表す。
【0097】
303及びR304は、各々独立に,水素原子、又は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を表す。
但し、R31及びR32が、−CR303304−である場合、R303同士が、互いに結合して、環を形成していてもよい。該環は、置換基を有していてもよい。
環Y及びYは、各々独立に、置換基を有してもよいベンゼン環、又は置換基を有していてもよいナフタレン環を表す。)
(R301及びR302について)
301及びR302は、各々独立に、置換基を有していてもよい、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基を表す。
【0098】
脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、エチニル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−プロピニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、2−ペンテン−4−イニル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が挙げられる。
【0099】
また、脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、フェニル基、o
−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基などの芳香族炭化水素環基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアルコキシ基;
フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基;
さらには、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0100】
301及びR302は、それぞれ、炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜5のアルキル基であることがより好ましい。
61及びR62は、各々独立に、−O−、−S−、−N−、−Se−又は−CR303304−を表す。
303及びR304は、各々独立に,水素原子、又は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を表す。
【0101】
但し、R61及びR62が、−CR303304−である場合、R303同士が、互いに結合して、環を形成していてもよい。
61とR62とが互いに結合して形成していてもよい環の、好ましい具体例としては、例えば以下のものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0102】
【化22】

【0103】
環Y及びYは、各々独立に、置換基を有してもよいベンゼン環、又は置換基を有していてもよいナフタレン環を表す。
303及びR304における脂肪族炭化水素基、R31及びR32が互いに結合して形成していてもよい環、並びに環Y及びYにおけるベンゼン環及びナフタレン環が有していてもよい置換基としては、前記R301及びR302における脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基が挙げられる。
【0104】
51及びR52は、前記式(II)におけるR11及びR12と同義である。好ましい態様も同様である。
また、前記式(V)で表される化合物は、例えば、R301〜R302並びにR61及びR62から、リンカーを伸ばして、2量体や3量体などを形成していてもよい。
尚、上記式(V)で表される化合物は、カチオン部位(括弧内で表される部分構造)において、シス−トランス異性体が存在するが、いずれの異性体であってもよい。
【0105】
(含有量)
本発明の着色樹脂組成物中の前記式(I)で表される化合物の含有量は、全固形分中、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、特に好ましくは5重量%以上、また通常50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、特に好ましくは30重量%以下である。
【0106】
上記範囲内であると、塗膜の硬化性が低下し難く、膜強度が十分であり、また、着色力が低下し難く、色度が十分な濃度で得られ、更に、膜厚が厚くなり難いため好ましい。
尚、前記式(I)で表される化合物の、着色樹脂組成物(特に該組成物中に含まれる溶剤)への溶解性が低い場合には、後述する任意成分である顔料と同様に、分散剤などを使用して組成物中へ分散させて使用してもよい。しかし、液晶表示装置に適用した場合のコントラストの高さ等の点からは、前記式(I)で表される化合物は、着色樹脂組成物中に溶解した状態で存在することが好ましい。
【0107】
本発明の着色樹脂組成物中には、(A)色材として、式(I)で表される化合物(染料)の1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよく、更に他の色材の1種又は2種以上が含まれていてもよい。
尚、(A)色材は、前記式(I)で表される化合物の他に、下記[その他の色材]の項で挙げたその他の染料及び後述の(F)顔料を含有していてもよく、本発明の着色樹脂組成物中における全(A)色材の含有量は、全固形分に対し、通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、また通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。
【0108】
上記範囲内であると、色濃度に対して膜厚が適度であり、液晶セル化の際のギャップ制御が容易である。更に、分散安定性が高く、再凝集や増粘などが生じ難いため好ましい。
本発明の着色樹脂組成物において、前記式(I)で表される化合物の含有量が、通常、(A)色材全量に対し、5重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、特に好ましくは40重量%以上である。
【0109】
尚、(A)色材が、全て前記式(I)で表される化合物であることが好ましいため、上限は通常100重量%以下である。
上記範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる点で好ましい。
[その他の色材]
本発明の着色樹脂組成物は、(A)色材として前記式(I)で表される化合物を含むが、本発明の効果を損わない限り、その他の染料を含んでいてもよい。
【0110】
その他の染料としては、例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、キノンイミン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、カルボニル系染料、メチン系染料、シアニン系染料、トリアリールメタン系染料等が好ましく挙げられる。 これ
らは、架橋性基を有していなくてもよい。
アゾ系染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー11,C.I.アシッドオレンジ7,C.I.アシッドレッド37,C.I.アシッドレッド180,C.I.アシッドブルー29,C.I.ダイレクトレッド28,C.I.ダイレクトレッド83,C.I.ダイレクトイエロー12,C.I.ダイレクトオレンジ26,C.I.ダイレクトグリーン28,C.I.ダイレクトグリーン59,C.I.リアクティブイエロー2,C.I.リアクティブレッド17,C.I.リアクティブレッド120,C.I.リアクティブブラック5,C.I.ディスパースオレンジ5,C.I.ディスパースレッド58,C.I.ディスパースブルー165,C.I.ベーシックブルー41,C.I.ベーシックレッド18,C.I.モルダントレッド7,C.I.モルダントイエロー5,C.I.モルダントブラック7等が挙げられる。
【0111】
アントラキノン系染料としては、例えば、C.I.バットブルー4,C.I.アシッドブルー40,C.I.アシッドグリーン25,C.I.リアクティブブルー19,C.I.リアクティブブルー49,C.I.ディスパースレッド60,C.I.ディスパースブルー56,C.I.ディスパースブルー60等が挙げられる。
この他、フタロシアニン系染料として、例えば、C.I.パッドブルー5等が、キノンイミン系染料として、例えば、C.I.ベーシックブルー3,C.I.ベーシックブルー9等が、キノリン系染料として、例えば、C.I.ソルベントイエロー33,C.I.ア
シッドイエロー3,C.I.ディスパースイエロー64等が、ニトロ系染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー1,C.I.アシッドオレンジ3,C.I.ディスパースイエロー42等が挙げられる。
【0112】
また、トリアリールメタン系染料としては、例えば、国際公開第2009/107734号パンフレットなどに記載のものが挙げられる。
更に、シアニン系染料としては、例えば、特願2010−142748に記載のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
本発明の着色樹脂組成物は、(A)色材として前記式(I)で表される化合物のみを含有してもよく、前記その他の染料以外に、耐熱性及び耐光性の向上の点から、(F)顔料を含有することが好ましい。
【0113】
本発明における(F)顔料としては、青色顔料、緑色顔料、赤色顔料、黄色顔料、紫色顔料、オレンジ顔料、ブラウン顔料、黒色顔料等各種の色の顔料を使用することができる。また、その構造としてはアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリン系、キノフタロン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、インダンスレン系、ペリレン系等の有機顔料の他に種々の無機顔料等も利用可能である。
【0114】
これら使用できる(F)顔料としては、例えば、特開2009−025813号公報に記載の顔料を用いることができる。
本発明の着色樹脂組成物が、特に青色の着色樹脂組成物である場合、用いられる顔料としては、カラーインデックス(C.I.)ピグメントブルー15:6を用いることが特に好ましい。
【0115】
この際に、含まれる本発明の染料としては、前記式(IV)で表される化合物とを組み合わせることが特に好ましい。
[(B)溶剤]
本発明の着色樹脂組成物は、(B)溶剤を含有する。溶剤は、着色樹脂組成物に含まれる各成分を溶解または分散させ、粘度を調節する機能を有する。
【0116】
該(B)溶剤としては、着色樹脂組成物を構成する各成分を溶解または分散させることができるものであればよく、沸点が100〜200℃の範囲のものを選択するのが好ましい。より好ましくは120〜170℃の沸点をもつものである。
このような溶剤としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−モノt−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルペンタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールモノアルキルエーテル類;
エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルのようなグリコールジアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシペンチ
ルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートのようなグリコールアルキルエーテルアセテート類;
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジアミルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジヘキシルエーテルのようなエーテル類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルアミルケトン、メチルブチルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトンのようなケトン類;
エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンのような1価または多価アルコール類;
n−ペンタン、n−オクタン、ジイソブチレン、n−ヘキサン、ヘキセン、イソプレン、ジペンテン、ドデカンのような脂肪族炭化水素類;
シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、ビシクロヘキシルのような脂環式炭化水素類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンのような芳香族炭化水素類;
アミルホルメート、エチルホルメート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸アミル、メチルイソブチレート、エチレングリコールアセテート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、イソ酪酸メチル、エチルカプリレート、ブチルステアレート、エチルベンゾエート、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトンのような鎖状または環状エステル類;
3−メトキシプロピオン酸、3−エトキシプロピオン酸のようなアルコキシカルボン酸類;
ブチルクロライド、アミルクロライドのようなハロゲン化炭化水素類;
メトキシメチルペンタノンのようなエーテルケトン類;
アセトニトリル、ベンゾニトリルのようなニトリル類:
上記に該当する市販の溶剤としては、ミネラルスピリット、バルソル#2、アプコ#18ソルベント、アプコシンナー、ソーカルソルベントNo.1およびNo.2、ソルベッソ#150、シェルTS28 ソルベント、カルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、ジグライム(いずれも商品名)などが挙げられる。
【0117】
これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記溶剤中、前述の本発明に係る(A)色材の溶解性の点から、グリコールモノアルキルエーテル類が好ましい。中でも、特に組成物中の各種構成成分の溶解性の点からプロピレングリコールモノメチルエーテルが特に好ましい。
また、例えば任意成分として前記(F)顔料を含む場合には、塗布性、表面張力などのバランスがよく、組成物中の構成成分の溶解度が比較的高い点からは、溶剤としてさらにグリコールアルキルエーテルアセテート類を混合して使用することがより好ましい。なお、顔料を含む組成物中では、グリコールモノアルキルエーテル類は極性が高く、顔料を凝集させる傾向があり、着色樹脂組成物の粘度を上げる等、保存安定性を低下させる場合がある。このため、グリコールモノアルキルエーテル類の使用量は過度に多くない方が好ましく、(B)溶剤中のグリコールモノアルキルエーテル類の割合は5〜50重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。
【0118】
また、最近の大型基板等に対応したスリットコート方式への適性という観点からは、1
50℃以上の沸点をもつ溶剤を併用することも好ましい。この場合、このような高沸点溶剤の含有量は、(B)溶剤全体に対して3〜50重量%が好ましく、5〜40重量%がより好ましく、5〜30重量%が特に好ましい。高沸点溶剤の量が少なすぎると、例えばスリットノズル先端で色材成分などが析出・固化して異物欠陥を惹き起こす可能性があり、また多すぎると組成物の乾燥速度が遅くなり、後述するカラーフィルタ製造工程における、減圧乾燥プロセスのタクト不良や、プリベークのピン跡といった問題を惹き起こすことが懸念される。
【0119】
なお、沸点150℃以上の溶剤は、グリコールアルキルエーテルアセテート類であっても、またグリコールアルキルエーテル類であってもよく、この場合は、沸点150℃以上の溶剤を別途含有させなくてもかまわない。
本発明の着色樹脂組成物は、インクジェット法によるカラーフィルタ製造に供してもよいが、インクジェット法によるカラーフィルタ製造においては、ノズルから発せられるインクは数〜数十pLと非常に微小であるため、ノズル口周辺あるいは画素バンク内に着弾する前に、溶剤が蒸発してインクが濃縮・乾固する傾向がある。これを回避するためには溶剤の沸点は高い方が好ましく、具体的には、(B)溶剤が沸点180℃以上の溶剤を含むことが好ましい。特に、沸点が200℃以上、とりわけ沸点が220℃以上の溶剤を含有することが好ましい。また、沸点180℃以上である高沸点溶剤は、(B)溶剤中50重量%以上であることが好ましい。
【0120】
上記範囲内であると、インク液滴からの溶剤の蒸発防止効果が有効に発揮される為好ましい。
本発明の着色樹脂組成物において、(B)溶剤の含有量に特に制限はないが、その上限は通常99重量%とする。
上記範囲内であると、塗布膜を形成するのに十分でるため好ましい。
【0121】
また、(B)溶剤の含有量の下限値は、塗布に適した粘性等を考慮して、通常75重量%、好ましくは80重量%、更に好ましくは82重量%である。
[(C)バインダー樹脂]
(C)バインダー樹脂は、硬化手段により好ましい樹脂は異なる。
本発明の着色樹脂組成物が光重合性樹脂組成物である場合、(C)バインダー樹脂としては、例えば特開平7−207211号、特開平8−259876号、特開平10−300922号、特開平11−140144号、特開平11−174224号、特開2000−56118号、特開2003−233179号などの各公報等に記載される高分子化合物を使用することができるが、中でも好ましくは下記(C−1)〜(C−5)の樹脂などが挙げられる。
【0122】
(C−1):エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、又は該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られる、アルカリ可溶性樹脂(以下、「樹脂(C−1)」と称す場合がある。)
(C−2):カルボキシル基含有直鎖状アルカリ可溶性樹脂(C−2)(以下、「樹脂(C−2)」と称す場合がある。)
(C−3):前記樹脂(C−2)のカルボキシル基部分に、エポキシ基含有不飽和化合物を付加させた樹脂(以下「樹脂(C−3)」と称す場合がある。)
(C−4):(メタ)アクリル系樹脂(以下、「樹脂(C−4)」と称す場合がある。)
(C−5):カルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂(以下「樹脂(C−5)と称す場合がある。)
このうち特に好ましくは樹脂(C−1)が挙げられ、以下該樹脂について説明する。
【0123】
尚、樹脂(C−2)〜(C−5)は、アルカリ性の現像液によって溶解され、目的とする現像処理が遂行される程度に溶解性を有するものであれば何でもよく、各々、特開2009−025813号公報の同項目として記載のものと同様である。好ましい態様も同様である。
(C−1):エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られるアルカリ可溶性樹脂
樹脂(C−1)の特に好ましい樹脂の一つとして、エポキシ基含有(メタ)アクリレート5〜90モル%と、他のラジカル重合性単量体10〜95モル%との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の10〜100モル%に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは該付加反応により生じた水酸基の10〜100モル%に多塩基酸無水物を付加させて得られるアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。
【0124】
そのエポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が例示できる。中でもグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。これらのエポキシ基含有(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0125】
上記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと共重合させる他のラジカル重合性単量体としては、本発明の効果を損わない限り特に制限はなく、例えば、ビニル芳香族類、ジエン類、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、ビニル化合物類、不飽和ジカルボン酸ジエステル類、モノマレイミド類などが挙げられるが、特に下記式(7)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0126】
下記式(7)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位は、「他のラジカル重合性単量体」に由来する繰返し単位中、5〜90モル%含有するものが好ましく、10〜70モル%含有するものが更に好ましく、15〜50モル%含有するものが特に好ましい。
【0127】
【化23】

【0128】
上記式(7)中、R89は水素原子又はメチル基を示し、R90は下記式(8)で表される構造を示す。
【0129】
【化24】

【0130】
上記式(8)中、R91〜R98は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。尚、R96とR98とが、互いに連結して環を形成していてもよい。
96とR98が連結して形成される環は、脂肪族環であるのが好ましく、飽和又は不飽和のいずれでもよく、更に炭素数は5〜6であることが好ましい。
中でも、式(8)で表される構造中、特に下記構造式(8a)、(8b)、又は(8c)で表されるものが好ましい。
【0131】
【化25】

【0132】
尚、前記式(8)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記式(8)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレート以外の、「他のラジカル重合性単量体」としては、着色樹脂組成物に優れた耐熱性及び強度を向上しうる点で、スチレン、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシ
エチル、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、が挙げられる。
【0133】
上記モノマー群から選択された少なくとも1種に由来する繰返し単位の含有量が、1〜70モル%であるものが好ましく、3〜50モル%であるものが更に好ましい。
尚、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、前記他のラジカル重合性単量体との共重合反応には、公知の溶液重合法が適用される。
本発明において、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと前記他のラジカル重合性単量体との共重合体としては、エポキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位5〜90モル%と、他のラジカル重合性単量体に由来する繰返し単位10〜95モル%と、からなるものが好ましく、前者20〜80モル%と、後者80〜20モル%とからなるものが更に好ましく、前者30〜70モル%と、後者70〜30モル%とからなるものが特に好ましい。
【0134】
上記範囲内であると、後述の重合性成分及びアルカリ可溶性成分の付加量が十分であり、また、耐熱性や強度が十分であるため好ましい。
上記の様に合成された、エポキシ基含有共重合体のエポキシ基部分に、不飽和一塩基酸(重合性成分)と、更に多塩基酸無水物(アルカリ可溶性成分)とを反応させる。
ここで、エポキシ基に付加させる不飽和一塩基酸としては、公知のものを使用することができ、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有する不飽和カルボン酸が挙げられる。
【0135】
具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、o−、m−、p−ビニル安息香酸、α−位がハロアルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基などで置換された(メタ)アクリル酸等のモノカルボン酸等が挙げられる。中でも好ましくは(メタ)アクリル酸である。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0136】
このような成分を付加させることにより、本発明で用いるバインダー樹脂に重合性を付与することができる。
これらの不飽和一塩基酸は、通常、前記共重合体が有するエポキシ基の10〜100モル%に付加させるが、好ましくは30〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%に付加させる。前記範囲内であると、着色樹脂組成物の経時安定性に優れるため好ましい。尚、共重合体のエポキシ基に不飽和一塩基酸を付加させる方法としては、公知の方法を採用することができる。
【0137】
更に、共重合体のエポキシ基に不飽和一塩基酸を付加させたときに生じる水酸基に付加させる多塩基酸無水物としては、公知のものが使用できる。
例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水クロレンド酸等の二塩基酸無水物;無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の三塩基以上の酸の無水物が挙げられる。中でも、無水コハク酸及びテトラヒドロ無水フタル酸が好ましい。これらの多塩基酸無水物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0138】
このような成分を付加させることにより、本発明で用いるバインダー樹脂にアルカリ可溶性を付与することができる。
これらの多塩基酸無水物は、通常、前記共重合体が有するエポキシ基に、不飽和一塩基酸を付加させることにより生じる水酸基の10〜100モル%に付加させるが、好ましくは20〜90モル%、より好ましくは30〜80モル%に付加させる。
【0139】
上記範囲内であると、現像時の残膜率及び溶解性が十分であるため好ましい。
尚、当該水酸基に多塩基酸無水物を付加させる方法としては、公知の方法を採用することができる。
更に、光感度を向上させるために、前述の多塩基酸無水物を付加させた後、生成したカルボキシル基の一部にグリシジル(メタ)アクリレートや重合性不飽和基を有するグリシジルエーテル化合物を付加させてもよい。このような樹脂の構造に関しては、例えば特開平8−297366号公報や特開2001−89533号公報に記載されている。
【0140】
上述のバインダー樹脂(C−1)の、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、3000〜100000が好ましく、5000〜50000が特に好ましい。上記範囲内であると、耐熱性や膜強度、更に現像液に対する溶解性が量である点で好ましい。
また、分子量分布の目安として、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比は、2.0〜5.0が好ましい。
【0141】
なお、バインダー樹脂(C−1)の酸価は、通常10〜200mg−KOH/g、好ましくは15〜150mg−KOH/g、更に好ましくは25〜100mg−KOH/gである。酸価が低くなりすぎると、現像液に対する溶解性が低下する場合がある。逆に、高すぎると、膜荒れが生じることがある。
(C)バインダー樹脂の含有量は、全固形分中、通常0.1〜80重量%、好ましくは1〜60重量%である。
【0142】
上記範囲内であると、基板への密着性が良好であり、また露光部への現像液の浸透性が適度で、画素の表面平滑性や感度が良好である点で好ましい。
[(D)重合性モノマー]
本発明の着色樹脂組成物は、(D)重合性モノマーを含有することが好ましい。
(D)重合性モノマーは、重合可能な低分子化合物であれば特に制限はないが、エチレン性二重結合を少なくとも1つ有する付加重合可能な化合物(以下、「エチレン性化合物」と言う場合がある。)が好ましい。
【0143】
エチレン性化合物は、本発明の着色樹脂組成物が活性光線の照射を受けた場合、後述する光重合開始系の作用により付加重合し、硬化するようなエチレン性二重結合を有する化合物である。尚、本発明における(D)重合性モノマーは、いわゆる高分子物質に相対する概念を意味し、狭義の単量体以外に二量体、三量体、オリゴマーも包含する。
(D)重合性モノマーにおけるエチレン性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸;モノヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル;脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル;芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル;不飽和カルボン酸と多価カルボン酸及び前述の脂肪族ポリヒドロキシ化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステル;ポリイソシアネート化合物と(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物とを反応させたウレタン骨格を有するエチレン性化合物;等が挙げられる。
【0144】
脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。また、これら(メタ)アクリ
ル酸エステルの(メタ)アクリル酸部分を、イタコン酸部分に代えたイタコン酸エステル、クロトン酸部分に代えたクロトン酸エステル、或いは、マレイン酸部分に代えたマレイン酸エステル等が挙げられる。
【0145】
芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、ハイドロキノンジ(メタ)アクリレート、レゾルシンジ(メタ)アクリレート、ピロガロールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
不飽和カルボン酸と多価カルボン酸及び多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステルは、必ずしも単一物ではなく、混合物であってもよい。代表例としては、(メタ)アクリル酸、フタル酸、及びエチレングリコールの縮合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、及びジエチレングリコールの縮合物;(メタ)アクリル酸、テレフタル酸、及びペンタエリスリトールの縮合物;(メタ)アクリル酸、アジピン酸、ブタンジオール、及びグリセリンの縮合物等が挙げられる。
【0146】
ポリイソシアネート化合物と(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物とを反応させたウレタン骨格を有するエチレン性化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートと、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ〔1,1,1−トリ(メタ)アクリロイルオキシメチル〕プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物との反応物が挙げられる。
【0147】
その他、本発明に用いられるエチレン性化合物の例としては、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;フタル酸ジアリル等のアリルエステル類;ジビニルフタレート等のビニル基含有化合物等が挙げられる。
これらの中では脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルが好ましく、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸エステルがより好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0148】
また、エチレン性化合物は酸価を有するモノマーであってもよい。酸価を有するモノマーとしては、例えば、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであり、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシル基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせた多官能単量体が好ましく、特に好ましくは、このエステルにおいて、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール及び/又はジペンタエリスリトールであるものである。
【0149】
これらの単量体は1種を単独で用いてもよいが、製造上、単一の化合物を得ることは難しいことから、2種以上の混合物を使用してもよい。
また、必要に応じて(D)重合性モノマーとして酸基を有しない多官能モノマーと酸基を有する多官能モノマーを併用してもよい。
酸基を有する多官能モノマーの好ましい酸価としては、0.1〜40mg−KOH/gであり、特に好ましくは5〜30mg−KOH/gである。
【0150】
上記範囲内であると、現像溶解特性が低下しにくく、また製造や取り扱いが容易である。更に、光重合性能が落ち難く、画素の表面平滑性等の硬化性が良好であるため好ましい。
本発明において、より好ましい酸基を有する多官能モノマーは、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートのコハク酸エステルを主成分とする混合物である。こ
の多官能モノマーと他の多官能モノマーを組み合わせて使用することもできる。
【0151】
本発明の着色樹脂組成物において、これらの(D)重合性モノマーの含有量は、全固形分中、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上であり、また、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下、更に好ましくは50重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。
また、(D)重合性モノマーの前記(A)色材に対する比率は、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上であり、また、通常200重量%以下、好ましくは100重量%以下、更に好ましくは80重量%以下である。
【0152】
上記範囲内であると、光硬化が適度であり、現像時の密着不良が置き難く、また現像後の断面が逆テーパー形状になり難く、更に溶解性低下による剥離現象・抜け不良が置き難いため好ましい。
[(E)光重合開始系及び/又は熱重合開始系]
本発明の着色樹脂組成物は、塗膜を硬化させる目的で、(E)光重合開始系及び/又は熱重合開始系を含むことが好ましい。ただし、硬化の方法はこれらの開始剤によるもの以外でもよい。
【0153】
特に、本発明の着色樹脂組成物が、(C)成分としてエチレン性二重結合を有する樹脂を含む場合や、(D)成分としてエチレン性化合物を含む場合には、光を直接吸収し、又は光増感されて分解反応又は水素引き抜き反応を起こし、重合活性ラジカルを発生する機能を有する光重合開始系及び/又は熱によって重合活性ラジカルを発生する熱重合開始系を含有することが好ましい。なお、本発明において光重合開始系としての(E)成分とは、光重合開始剤(以下、任意に(E1)成分と称する)に重合加速剤(以下、任意に(E2)成分と称する)、増感色素(以下、任意に(E3)成分と称する)などの付加剤が併用されている混合物を意味する。
【0154】
(光重合開始系)
本発明の着色樹脂組成物に含有されていてもよい。光重合開始系は、通常、(E1)光重合開始剤、及び必要に応じて添加される(E2)重合加速剤及び(E3)増感色素等の付加剤との混合物として用いられ、光を直接吸収し、或いは光増感されて分解反応又は水素引き抜き反応を起こし、重合活性ラジカルを発生する機能を有する成分である。
【0155】
光重合開始系を構成する(E1)光重合開始剤としては、例えば、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号各公報等に記載のチタノセン誘導体類;特開平10−300922号、特開平11−174224号、特開2000−56118号各公報等に記載されるヘキサアリールビイミダゾール誘導体類;特開平10−39503号公報等に記載のハロメチル化オキサジアゾール誘導体類、ハロメチル−s−トリアジン誘導体類、N−フェニルグリシン等のN−アリール−α−アミノ酸類、N−アリール−α−アミノ酸塩類、N−アリール−α−アミノ酸エステル類等のラジカル活性剤、α−アミノアルキルフェノン誘導体類;特開2000−80068号公報等に記載のオキシムエステル系誘導体類等が挙げられる。
【0156】
具体的には、例えば国際公開第2009/107734号パンフレット等に記載の光重合開始剤等が挙げられる。
これら(E1)光重合開始剤の中では、α−アミノアルキルフェノン誘導体類、オキシムエステル系誘導体類、ビイミダゾール誘導体類、アセトフェノン誘導体類、及びチオキサントン誘導体類がより好ましい。
【0157】
また、オキシムエステル系誘導体類としては、1,2−オクタンジオン,1−〔4−(フェニルチオ)フェニル〕−,2−(o−ベンゾイルオキシム)、エタノン,1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕,1−(o−アセチルオキシム)、等が挙げられる。
その他に、ベンゾインアルキルエーテル類、アントラキノン誘導体類;2−メチル−(4’−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン等のアセトフェノン誘導体類、2−エチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体類、安息香酸エステル誘導体類、アクリジン誘導体類、フェナジン誘導体類、アンスロン誘導体類等も挙げられる。
【0158】
これら光重合開始剤の中では、α−アミノアルキルフェノン誘導体類、チオキサントン誘導体類、オキシムエステル系誘導体類がより好ましい。特に、オキシムエステル系誘導体類が好ましい。
必要に応じて用いられる(E2)重合加速剤としては、例えば、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等のN,N−ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル類;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等の複素環を有するメルカプト化合物;脂肪族多官能メルカプト化合物等のメルカプト化合物類等が挙げられる。
【0159】
これらの(E1)光重合開始剤及び(E2)重合加速剤は、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、必要に応じて感応感度を高める目的で、(E3)増感色素が用いられる。増感色素は、画像露光光源の波長に応じて、適切なものが用いられるが、例えば特開平4−221958号、特開平4−219756号各公報等に記載のキサンテン系色素;特開平3−239703号、特開平5−289335号各公報等に記載の複素環を有するクマリン系色素;特開平3−239703号、特開平5−289335号各公報等に記載の3−ケトクマリン系色素;特開平6−19240号公報等に記載のピロメテン系色素;特開昭47−2528号、特開昭54−155292号、特公昭45−37377号、特開昭48−84183号、特開昭52−112681号、特開昭58−15503号、特開昭60−88005号、特開昭59−56403号、特開平2−69号、特開昭57−168088号、特開平5−107761号、特開平5−210240号、特開平4−288818号各公報等に記載のジアルキルアミノベンゼン骨格を有する色素等が挙げられる。
【0160】
(E3)増感色素もまた1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の着色樹脂組成物において、これらの(E)光重合開始系の含有量は、全固形分中、通常0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.5重量%以上、また通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下である。
【0161】
上記範囲内であると、露光光線に対する感度が良好であり、また未露光部分の現像に対する溶解性が良好である点で好ましい。
(熱重合開始系)
本発明の着色樹脂組成物に含有されていてもよい熱重合開始系(熱重合開始剤)の具体例としては、アゾ系化合物、有機過酸化物及び過酸化水素等が挙げられる。これらのうち、アゾ系化合物が好適に用いられる。より具体的には、例えば国際公開第2009/107734号パンフレット等に記載の熱重合開始剤を用いることができる。
【0162】
これらの熱重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[任意成分]
本発明の着色樹脂組成物は、前記各成分の外に、界面活性剤、有機カルボン酸及び/又
は有機カルボン酸無水物、熱硬化性化合物、可塑剤、熱重合防止剤、保存安定剤、表面保護剤、密着向上剤、現像改良剤等を含有していてもよい。また、色材として顔料を含有する場合には、分散剤や分散助剤を含有してもよい。これら任意成分としては、例えば特開2007−113000号公報記載の各種化合物を使用することができる。
【0163】
[着色樹脂組成物の調製方法]
本発明において、着色樹脂組成物は、適宜の方法により調製することができるが、例えば、前記(A)色材、及び(C)バインダー樹脂を、(B)溶剤及びその他の添加剤と共に混合することで調製できる。
また、(A)色材として(F)顔料を含む場合の調製方法としては、(F)顔料を含む(A)色材を溶剤中、分散剤及び必要に応じて添加する分散助剤の存在下で、場合により(C)バインダー樹脂の一部と共に、例えば、ペイントシェイカー、サンドグラインダー、ボールミル、ロールミル、ストーンミル、ジェットミル、ホモジナイザー等を用いて、粉砕しつつ混合・分散して着色分散液を調製する。該着色分散液に、(C)バインダー樹脂、(A)色材、必要に応じて、(D)重合性モノマー、(E)光重合開始剤及び/又は熱重合開始剤、などの添加剤を添加し、混合することにより調製する方法を挙げることができる。
【0164】
[着色樹脂組成物の応用]
本発明の着色樹脂組成物は、通常、すべての構成成分が溶剤中に溶解又は分散された状態である。この着色樹脂組成物が基板上へ供給され、カラーフィルタや液晶表示装置、有機EL表示装置などの構成部材が形成される。
以下、本発明の着色樹脂組成物の応用例として、カラーフィルタとしての応用、及びそれらを用いた液晶表示装置(パネル)及び有機EL表示装置について、説明する。
【0165】
<カラーフィルタ>
本発明のカラーフィルタは、本発明の着色樹脂組成物から形成された画素を有するものである。
以下に、本発明のカラーフィルタを形成する方法について説明する。
カラーフィルタの画素は、様々な方法で形成することができる。ここでは光重合性の着色樹脂組成物を使用してフォトリソグラフィー法にて形成する場合を例に説明するが、製造方法はこれに限定されるものではない。
【0166】
まず、基板の表面上に、必要に応じて、画素を形成する部分を区画するようにブラックマトリックスを形成し、この基板上に、本発明の着色樹脂組成物を塗布したのち、プレベークを行って溶剤を蒸発させ、塗膜を形成する。次いで、この塗膜にフォトマスクを介して露光したのち、アルカリ現像液を用いて現像して、塗膜の未露光部を溶解除去し、その後ポストベークすることにより、赤色、緑色、青色の各画素パターンを形成して、カラーフィルタを作製することができる。
【0167】
画素を形成する際に使用される基板としては、透明で適度な強度を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂 ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性樹脂製シート、エポキシ樹脂、熱硬化性樹脂、各種ガラスなどが挙げられる。
また、これらの基板には、所望により、シランカップリング剤やウレタン系樹脂などに
よる薄膜形成処理、コロナ放電処理やオゾン処理などの表面処理等、適宜前処理を施してもよい。
【0168】
着色樹脂組成物を基板に塗布する際には、スピナー法、ワイヤーバー法、フローコート法、スリット・アンド・スピン法、ダイコート法、ロールコート法、スプレーコート法等
が挙げられる。中でも、スリット・アンド・スピン法、及びダイコート法が好ましい。
塗布膜の厚さは、乾燥後の膜厚として、通常、0.2〜20μm、好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは0.8〜5.0μmである。
【0169】
上記範囲内であると、パターン現像や液晶セル化工程でのギャップ調整が容易であり、また所望の色発現がし易い点で好ましい。
画素を形成する際に使用される放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用することができるが、波長が190〜450nmの範囲にある放射線が好ましい。
【0170】
画像露光に使用される、波長190〜450nmの放射線を用いるための光源は、特に限定されるものではないが、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、蛍光ランプ等のランプ光源;アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、窒素レーザー、ヘリウムカドミニウムレーザー、半導体レーザー等のレーザー光源等が挙げられる。特定の波長の光を照射して使用する場合には、光学フィルターを利用することもできる。
【0171】
放射線の露光量は、10〜10,000J/mが好ましい。
また、前記アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、燐酸水素ナトリウム、燐酸水素カリウム、燐酸二水素ナトリウム、燐酸二水素カリウム、水酸化アンモニウム等の無機アルカリ性化合物;モノ−・ジ−・又はトリ−エタノールアミン、モノ−・ジ−・又はトリ−メチルアミン、モノ−・ジ−・又はトリ−エチルアミン、モノ−・又はジ−イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノ−・ジ−・又はトリ−イソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン等の有機アルカリ性化合物等の水溶液が好ましい。
【0172】
前記アルカリ現像液には、例えばイソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、プロピレングリコール、ジアセトンアルコール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤等を適量添加することもできる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗する。
現像処理法としては、浸漬現像法、スプレー現像法、ブラシ現像法、超音波現像法等の何れかの方法によることができる。現像条件は、室温(23℃)で5〜300秒が好ましい。
【0173】
現像処理の条件には特に制限はないが、現像温度は通常10℃以上、中でも15℃以上、更には20℃以上、また、通常50℃以下、中でも45℃以下、更には40℃以下の範囲が好ましい。
現像方法は、浸漬現像法、スプレー現像法、ブラシ現像法、超音波現像法等の何れかの方法によることができる。
【0174】
このようにして作製されたカラーフィルタを液晶表示装置に使用する場合には、このままの状態で画像上にITO等の透明電極を形成して、カラーディスプレー、液晶表示装置等の部品の一部として使用されるが、表面平滑性や耐久性を高めるため、必要に応じ、画像上にポリアミド、ポリイミド等のトップコート層を設けることもできる。また、一部、平面配向型駆動方式(IPSモード)等の用途においては、透明電極を形成しないこともある。また、垂直配向型駆動方式(MVAモード)では、リブを形成することもある。ま
た、ビーズ散布型スペーサに代わり、フォトリソグラフィー法による柱構造(フォトスペーサー)を形成することもある。
【0175】
<液晶表示装置>
本発明の液晶表示装置は、上述の本発明のカラーフィルタを用いたものである。本発明の液晶表示装置の型式や構造については特に制限はなく、本発明のカラーフィルタを用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社、1989年9月29日発行、日本学術振興会第142委員会著)に記載の方法で、本発明の液晶表示装置を形成することができる。
【0176】
<有機EL表示装置>
本発明のカラーフィルタを含む有機EL表示装置を作成する場合、例えば図1に示すように、透明支持基板10上に、本発明の着色樹脂組成物により画素20が形成された青色カラーフィルタ上に有機保護層30及び無機酸化膜40を介して有機発光体500を積層することによって多色の有機EL素子を作製する。
【0177】
有機発光体500の積層方法としては、カラーフィルタ上面へ透明陽極50、正孔注入層51、正孔輸送層52、発光層53、電子注入層54、及び陰極55を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体500を無機酸化膜40上に貼り合わせる方法などが挙げられる。このようにして作製された有機EL素子100は、パッシブ駆動方式の有機EL表示装置にもアクティブ駆動方式の有機EL表示装置にも適用可能である。
【実施例】
【0178】
次に、合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[染料の合成]
(化合物Aの合成)
【0179】
【化26】

【0180】
(反応1)
化合物2(5.02g、20mmol)、化合物1(14ml、80mmol)、t−ブトキシナトリウム(7.53g,80mmol)、トルエン(100ml)、酢酸パラジウム(II)(0.55g,2.45mmol)、トリ−t−ブチルホスフィン (1
0%ヘキサン溶液、10g、4.94mmol)の混合物を窒素下で10時間加熱還流した。室温に冷却後、水を加えセライトで濾過し、濾液をトルエンで抽出し、水で洗浄した。トルエン層を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル500g、ヘキサン/酢酸エチル10/1−8/1−6/1)で精製し、得られた粉末を冷メタノ
ールで洗浄して化合物A(4.59、収率53%)を得た。
(化合物Bの合成)
【0181】
【化27】

【0182】
(反応2)
化合物3(5.8g、30mmol)とN,N−ジメチルホルムアミド(50ml)の混合物を氷浴で冷却し、60%水素化ナトリウム(1.57g,36mmol)を加え、10分撹拌した。化合物4(5.1ml,36mmol)を滴下し、そのまま30分撹拌した。室温に戻しながら2時間撹拌した。温浴45℃で、1時間加熱撹拌した。氷冷して水でクエンチし、トルエンで抽出し、有機層を飽和食塩水で2回洗った。無水硫酸ナトリウムで乾燥し減圧濃縮した。ヘキサンを加え生じた結晶を濾取して、化合物B(7.16g,収率77.1%)を白色粉末で得た。
(化合物Cの合成)
【0183】
【化28】

【0184】
(反応3)
化合物3(6g,31.1mmol)とN,N−ジメチルホルムアミド(85ml)の混合物を氷浴で冷却し、60%水素化ナトリウム(1.63g、37.3mmol)を加え、10分撹拌した。化合物5(5.65ml、37.3mmol)を滴下し、そのまま10分撹拌した。室温に戻しながら1時間撹拌した。温浴40℃で3時間撹拌した。氷冷
して水を加え、トルエンで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル = 4/1)で精製した。得られた結晶をヘプタンで洗浄して、化合物6(9.1g,収率91%)を白色粉末として得た。
【0185】
(反応4)
化合物6(6.5g、0.02mol)、メタノール(200ml)を容器にいれ、50℃に加熱し溶解した。1mol/lHCL水溶液(20ml、0.02mol)を滴下
した。1時間後TLCにて脱保護チェックを確認し、放冷した。炭酸水素ナトリウム水溶液に滴下し、塩化メチレンにて抽出を実施した。半量(85ml)程まで濃縮し1N/NaOH(10ml)、水(250ml)に添加した。さらに塩化メチレン(100ml)を添加し抽出、濃縮した。カラムクロマト(シリカゲル60酸性(210g)、クロロホルム展開溶媒)精製を実施し、化合物7(4.805g、収率100%)を得た。
【0186】
(反応5)
化合物7(2.55g、0.0107mol)、テトラヒドロフラン(50ml)を容器に入れ、氷冷で系内を5℃以下にした。トリエチルアミン(2.17g、0.0215mol)を5分かけて滴下した。さらに、メタクリルクロライド(2.23g、0.0215mol、TCI)を12分かけて滴下した。系内は滴下すると白濁し、トリエチルアミン塩酸塩が沈殿してきた。3時間後塩をろ過して除去し、THF溶液側は熱をかけずに濃縮した。カラムクロマト(シリカゲル60酸性 酢酸エチル/ヘキサン=3/7dry
カラム塩化メチレンにて作成)で精製し、oil状の化合物C(2.7g、収率82.8%)を得た。
(化合物Dの合成)
【0187】
【化29】

【0188】
(反応6)
化合物3(5.8g、30mmol) とN,N−ジメチルホルムアミド(50ml)
の混合物を氷浴で冷却し、60%水素化ナトリウム(1.57g、36mmol)を加え、10分撹拌した。化合物8(6.5ml、36mmol)を滴下し、そのまま30分撹拌した。室温に戻しながら1時間撹拌した。温浴45℃で、2時間加熱撹拌した。氷冷して水を加え、トルエンで抽出し、有機層を飽和食塩水で2回洗った。無水硫酸ナトリウムで乾燥し減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム=3/1 - 1/1)で精製し、化合物9(2.19g、 収率20.9%) を薄黄色オイ
ルとして得た。
【0189】
(反応7)
化合物9(2.11g、5.7mmol)、メタノール(50ml)を反応容器にいれ、水バスで50℃加熱攪拌した。1mol/L塩酸(5.72ml、5.7mmol)を滴下し2時間反応した。NaHCO飽和液(200ml)に添加した。pH9までアルカリ性になったので1mol/l塩酸を加えてpH6まで調整した。クロロホルム抽出をし、濃縮した。その後後、カラムクロマト(シリカゲル60酸性100g、クロロホルム)で精製し化合物10(収量1.063g、収率70.35%)を得た。
【0190】
(反応8)
化合物10(1.0g、3.77mmol)、テトラヒドロフラン(25ml)を容器に入れ、氷冷で系内を5℃以下にした。トリエチルアミン(0.768g、7.54mm
ol)を5分かけて滴下した。さらに、メタクリルクロライド(0.784g、7.54mmol)を5分かけて滴下した。系内は滴下すると白濁し、トリエチルアミン塩酸塩が沈殿してきた。室温で1.5時間反応後塩をろ過して除去し、THF溶液側は熱をかけずに濃縮した。NMRにて化合物Dであることを確認した。 oil状の化合物D(1.55g、収率100%)を得た。
(合成例1:色材1の合成)
【0191】
【化30】

【0192】
(反応9)
化合物A(2.1g、6.46mmol)、化合物B(2.0g、6.46mmol)、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン(72mg、0.323mmol)および
トルエン(35ml)の混合物にオキシ塩化リン(0.9ml、9.69mmol)を加え、5時間加熱還流した。水を加え、クロロホルム抽出して、有機層を飽和食塩水で3回
洗った。減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=
10/1−8/1)で精製し、化合物E(3.06g、収率72.6%)を得た。
【0193】
(反応10)
化合物E(365mg、0.56mmol)、リチウム=ビス(トリフルオロメタンス
ルホニル)イミド(161mg、0.56mmol)、メタノール(25ml)の混合物を50℃で1時間撹拌した。減圧濃縮し、得られた固体を、メタノール/水=1/2で洗浄して、色材1(410mg、収率81.6%)を得た。
(合成例2:色材2の合成)
【0194】
【化31】

【0195】
(反応11)
圧空ブロー下、反応容器に化合物A(1.6g,4.94mmol)、化合物C(1.5g,4.94mmol)、トルエン(10ml)を入れ、氷冷で5℃以下まで冷却した。内温1−2℃時、オキシ塩化リン(0.98g、6.42mmol)を5分かけて滴下した。冷却のまま1時間攪拌し、さらに室温下で5時間反応した。反応後、水、酢酸エチルで抽出分離。有機層を濃縮した。固化したのでヘキサン洗浄を2回実施した。カラムクロマト(シリカゲル60酸性100g、塩化メチレン→塩化メチレン/メタノール=8/
2展開溶媒)精製を実施、濃縮後乾燥し、oil状で化合物F(1.03g、収率32.2%)を得た。
【0196】
(反応12)
反応容器に前述の化合物F(1.0g、1.545mmol)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(0.443g、1.545mmol)メタノール(30ml)を仕込み、水バスで50℃設定にし、2時間攪拌した。その後減圧濃縮し、タール状固形物に数回(各回40ml程)EtOHをいれ、濃縮を繰り返しさらに40℃真空乾燥機で乾燥しその後、固体をかきとった。メタノール/水=1/2で洗浄、ろ過、ヘキサンをふりかけ乾燥した。真空乾燥後、色材2(1.022g、収率74%)を得た。
(合成例3:色材3の合成)
【0197】
【化32】

【0198】
(反応13)
圧空ブロー下、反応容器に化合物A(1.46g、4.5mmol、TCI)、化合物D(1.5g,4.5mmol)、トルエン(10ml)を入れ、氷冷で5℃以下まで冷却した。内温1−2℃時、オキシ塩化リン(1.035g、6.75mmol)を5分かけて滴下した。冷却のまま1時間攪拌し、さらに室温下で2時間反応した。さらに80℃
で5時間加熱攪拌を実施した。反応終了後、水、クロロホルムで抽出分離。有機層を濃縮した。カラムクロマト(シリカゲル60酸性150g、クロロホルム→クロロホルム/メタノール=15/1展開溶媒)精製を実施、濃縮後乾燥。oil状で化合物G(0.92g、収率30.5%)を得た。
【0199】
(反応14)
反応容器に前述の化合物G(0.9g、1.33mmol)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(0.382g、1.33mmol)、メタノール(30ml)を仕込み、水バスで50℃設定にし、1.5時間攪拌した。反応後溶媒濃縮し、十分真空で乾燥したのち、固形分をかきとり粉状にした。メタノール/水=1/2で洗浄、ろ過を行った後、粘度の高い塊を一度エタノールで溶解し、溶媒除去、十分乾燥し、冷蔵庫に数十分いれたのち、再度固形分をかきとり粉状にし、メタノール/氷水=1/2で攪拌し、冷却を保ちつつろ過した。35℃真空乾燥し、色材3(1.05g、収率85.7%)を得た。
【0200】
(参考合成例1:樹脂Aの合成)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145重量部を窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。ここにスチレン10重量部、グリシジルメタクリレート85.2重量部およびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成社製FA−513M)66重量部を滴下し、および2.2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル8.47重量部を3時間かけて滴下し、更に90℃で2時間攪拌し続けた。次に反応容
器内を空気置換に変え、アクリル酸43.2重量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7重量部およびハイドロキノン0.12重量部を投入し、100℃で12時間反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)56.2重量部、トリエチルアミン0.7重量部を加え、100℃3.5時間反応させた。こうして得られたバインダ樹脂のGPCにより測定した重量平均分子量Mwは約8400 酸価80mgKOH/gであった。
【0201】
【化33】

【0202】
[顔料分散液の調製]
(青色顔料分散液(1)の調製)
青色顔料としてC.I.ピグメントブルー15:6を11.36重量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート57.5重量部、前記ビックケミー社製分散剤「ディスパービック2000」を固形分換算で3.02重量部、径0.5mmのジルコニアビーズ215.7重量部をステンレス容器に充填し、ペイントシェーカーにて6時間分散させて青色顔料分散液(1)を調製した。
【0203】
(青色顔料分散液(2)の調製)
青色顔料としてC.I.ピグメントブルー15:6とバイオレット23を9.20:3.81となる重量比で11.36重量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート57.5重量部、前記ビックケミー社製分散剤「ディスパービック2000」を固形分換算で3.02重量部、径0.5mmのジルコニアビーズ215.7重量部をステンレス容器に充填し、ペイントシェーカーにて6時間分散させて青色顔料分散液を調製した。
【0204】
[着色樹脂組成物の調製]
前記(染料の合成)で得られた染料及び青色顔料分散液を用い、表1に記載された組成となるように他の成分を混合して、着色樹脂組成物を調製した。
尚、表1中の数値は、いずれも添加する各成分の重量部を表す。
混合に際しては、各成分が十分に混合するまで1時間以上攪拌し、最後に5μmの駒型フィルターによって濾過し、異物を取り除いた。
【0205】
【表1】

【0206】
尚、表1中の数値は、いずれも添加する各成分の重量部を表す。
又、表1中の各化合物は、各々以下の通りである。
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
[着色樹脂膜の製造及び耐溶剤性の評価]
5cm角に切断したガラス基板上に、上記各着色樹脂組成物をスピンコート法により乾燥後のy値が0.085となるように塗布し、減圧乾燥させた後、ホットプレート上にて
80℃3分間プリベークした。その後、60mJ/cmの露光量にて全面露光し、クリーンオーブンにて230℃30分焼成した。その後、分光光度計U−3310(日立製作所製)にて、分光透過率を測定し、XYZ表色系における色度(C光源)を算出した。
続いて、上記基板について、PGMEAに30分浸漬した後、上記同様、分光透過率を測定し、XYZ表色系における色度(C光源)を算出した。浸漬後の色度との色差(ΔE*ab)、即ち耐溶剤性を測定した結果をまとめて表2に示す。
【0207】
【表2】

【0208】
表2に示すが如く、本発明の染料を含む組成物を用いて形成された画素は、輝度が高く、また耐溶剤性にも優れることが分かる。
より具体的には、比較例1は、色材の主成分として顔料(C.I.P.B15:6及び
C.I.P.V23)を用いており、耐溶剤性が4以下であるが、輝度がほぼ頭打ちとなり、輝度向上の要求には対応できるものではなかった。
【0209】
一方、実施例1〜3では、耐溶剤性が、実用レベルの4以下であることに加え、青色顔料の輝度よりも高い値を示すことが可能となった。
つまり、本発明の染料を用いることで、輝度向上の要求にも対応しうるものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される化合物からなることを特徴とする、染料。
(I)
(上記式(I)中、Zは、ジスルホニルイミドアニオンを表す。Aは、カチオン染料を表す。
但し、Z及びAの少なくとも何れかには、架橋性基を有する。)
【請求項2】
前記式(I)で表される化合物が、下記式(II)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の染料。
【化1】

(上記式(II)中、R11及びR12は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、又は置換基を有していてもよい炭素数3〜8のシクロアルキル基を表す。
尚、R11及びR12は、互いに結合して環を形成していてもよい。
は、前記式(I)におけると同義である。
但し、A、R11及びR12の少なくとも何れかには、架橋性基を有する。)
【請求項3】
前記式(I)で表される化合物が、更に下記式(III)で表される化合物からなることを特徴とする、請求項1に記載の染料。
【化2】

(上記式(III)中、R21及びR22は、各々、前記式(II)におけるR11及びR12と同義である。
〜Rは、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。
隣接するR〜R同士が結合して環を形成してもよく、該環は、置換基を有していてもよい。
及びRは、水素原子、又は任意の置換基を表す。
尚、R及びRは、互いに連結して環を形成していてもよい。
また、上記式(III)中のベンゼン環は、更に任意の置換基を有していてもよい。
101及びR102は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、置換基を有していてもよ
いアリール基、又はフッ素原子を表す。
或いはR101とR102とが結合し、環を形成していてもよく、該環は置換基を有していてもよい。
上記式(III)のカチオン構造式は、架橋性基を有する。
尚、一分子中に複数の
【化3】

が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
【請求項4】
前記式(I)で表される化合物が、更に下記式(IV)で表される化合物からなることを特徴とする、請求項1に記載の染料。
【化4】

(上記式(IV)中、R31及びR32は、各々、前記式(II)におけるR11及びR12と同義である。
41〜R46は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。R41とR42、及びR43とR44は、各々互いに結合して環構造を形成していてもよい。
47及びR48は、各々独立に、水素原子、又は任意の置換基を表す。R47及びR48は、互いに結合して環を形成していてもよい。
又、上記式(IV)中のベンゼン環及びインドール環は更に任意の置換基を有していてもよい。
上記式(IV)のカチオン構造式は、架橋性基を有する。
尚、1分子中に複数の
【化5】

が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
【請求項5】
前記架橋性基が、下記<架橋性基群T’>で表されるいずれかであることを特徴とする、請求項1〜4に記載の染料。
<架橋性基群T’>
【化6】

【請求項6】
(A)色材、(B)溶剤、及び(C)バインダー樹脂を含有し、
(A)色材が請求項1〜5のいずれか一項に記載の染料を含有することを特徴とする、着色樹脂組成物。
【請求項7】
更に、(D)重合性モノマーを含有することを特徴とする、請求項6に記載の着色樹脂組成物。
【請求項8】
更に、(E)光重合開始系及び/又は熱重合開始系を含有することを特徴とする、請求項6又は7に記載の着色樹脂組成物。
【請求項9】
更に、(A)色材が、(F)顔料を含有することを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一項に記載の着色樹脂組成物。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項に記載着色樹脂組成物を用いて形成された画素を有することを特徴とする、カラーフィルタ。
【請求項11】
請求項10に記載のカラーフィルタを有することを特徴とする、液晶表示装置。
【請求項12】
請求項10に記載のカラーフィルタを有することを特徴とする、有機EL表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−201694(P2012−201694A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64453(P2011−64453)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】