説明

染料用塩

【課題】液晶パネル、エレクトロルミネッセンスパネル、プラズマディスプレイパネルなどのディスプレイ装置には、カラーフィルタが用いられており、カラーフィルタを製造するための材料として、染料を含有する着色感光性樹脂組成物が知られている。かかる染料として有用な、良好なモル吸光係数を示す塩、前記塩を有効成分とする染料および前記染料を含む着色樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で表されるアニオンとカチオンとからなる塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(1)で表される塩、前記塩を有効成分とする染料および前記染料を含む着色組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル、エレクトロルミネッセンスパネル、プラズマディスプレイパネルなどのディスプレイ装置には、カラーフィルタが用いられており、カラーフィルタを製造するための材料として、染料を含有する着色感光性樹脂組成物が知られている。かかる着色感光性樹脂組成物に含まれる染料として、特許文献1の実施例1に記載されるようなトリフェニルメタン化合物(0−1)が知られている。
【0003】
【化1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−229993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のような、トリフェニルメタン化合物は、そのモル吸光係数が、必ずしも十分満足できるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の[1]〜[10]を提供するものである。
[1] 下記式(1)で表される塩。


[式(1)中、Gは炭素数2〜12のアルキレン基を表し、該アルキレン基に含まれる−CH−は、−O−で置き換わっていてもよい。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し、nは、1〜4の整数を表す。
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子;群P1から選ばれる基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基;群P2から選ばれる基を有していてもよい炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、−SO、−SOH、−SOを表す。Rcは、−NR1011、−CR1213、−SO、−SOH、−SOを表す。R10〜R13は、それぞれ独立に、水素原子;群P1から選ばれる基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基;群P2から選ばれる基を有していてもよい炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。
群P1は、−SO、−SOH、および−SOからなり、
群P2は、−SO、−SOH、−SOおよび炭素数1〜8のアルコキシ基からなり、Mは、Na、Kを表す。]
[2] RおよびRが、メチル基である[1]記載の塩。
[3] Gが、プロピレン基である[1]又は[2]記載の塩。
[4] nが、3である[1]〜[3]のいずれかに記載の塩。
[5] Rcが、−NR1011である[1]〜[4]のいずれかに記載の塩。
[6] R及びR10が、−SOを有するベンジル基であり、R及びR11が、エチル基である[1]〜[5]のいずれかに記載の塩。
[7] R及びRが、エチル基であり、Rが水素原子である[1]〜[6]のいずれかに記載の塩。
[8] [1]〜[7]のいずれかに記載の塩を有効成分とする染料。
[9] [8]記載の染料を含む着色組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る塩は、良好なモル吸光係数を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の塩は、下記式(A)で表されるカチオン(以下「カチオン(A)」という場合がある)と下記式(B)で表されるアニオン(以下「アニオン(B)」という場合がある)からなる塩である。

【0009】
カチオン(A)は、目的とするカラーフィルタの色に合わせて選択することができる。カチオン(A)は、溶剤に充分に溶解することが好ましい。更に、カチオン(A)は、パターン形成に使用する現像液に、パターン形成ができる程度に溶解することが好ましい。
【0010】
なお、カチオン(A)は、共鳴構造をとるため、式(1)におけるカチオンの電荷が移動したカチオンも、本発明に含まれる。また、カチオン(A)は、カチオン全体として+2価である。
【0011】
カチオン(A)において、Gとしては、溶解性の観点から、炭素数2〜8のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜4のアルキレン基がより好ましい。
【0012】
として好ましいアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。中でも、プロピレン基が好ましい。
【0013】
カチオン(A)において、Gのアルキレン基に含まれる−CH−が−O−で置き換わっているものとして例えば、式(G−1)で表される基及び式(G−2)で表される基が挙げられる。
【0014】
【化2】

[式(G−1)及び式(G−2)中、G〜Gは、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキレン基を表す。
及びnは、1〜3の整数を表す。
ただし、式(G−1)で表される基及び式(G−1)で表される基に含まれる炭素原子
及び酸素原子の合計数は、ぞれぞれ2〜12である。 *は、−NH−との結合手を表す。]
【0015】
次にカチオン(A)のR〜Rについて具体例を挙げて説明する。
カチオン(A)において、炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0016】
カチオン(A)において、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0017】
溶解性向上の観点から、RおよびRは、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。RおよびRは、同一の基であることが好ましい。
【0018】
カチオン(A)において、−SO−NH−G−Jとしては、例えば下記式で表される基が挙げられる。
【0019】

が、式(G−1)で表される基である場合、−SO−NH−G−Jとしては
、例えば下記式で表される基が挙げられる。
【0020】

【0021】
が、式(G−2)で表される基である場合、−SO−NH−G−Jとしては
、例えば下記式で表される基が挙げられる。
【0022】

【0023】
が、−NRである場合、−SO−NH−G−Jとしては、例えば下記
式で表される基が挙げられる。
【0024】

【0025】
カチオン(A)のnaは、1〜4の整数を表すが、カチオン(A)を含む塩の溶解性向上の観点から、naは、3が好ましい。
【0026】
アニオン(B)は、目的とするカラーフィルタの色に合わせて選択することができる。
アニオン(B)は、溶剤に充分に溶解することが好ましい。更に、アニオン(B)は、パターン形成に使用する現像液に、パターン形成ができる程度に溶解することが好ましい。
【0027】
なお、アニオン(B)は、共鳴構造をとるため、式(1)における電荷が移動したアニオンも、本発明に含まれる。また、アニオン(B)は、アニオン全体として−1価である。
【0028】
アニオン(B)は、アニオン(B)を含む塩の溶解性向上の観点から、Rcが、−NR1011であると好ましい。アニオン(B)を式(2)に示す(以下「アニオン(2)」という場合がある)。

[式(2)中、R〜R11は、それぞれ式(1)と同じ定義である。]
【0029】
アニオン(2)において、R10及びR11のいずれか一方は、−SOを有する炭素数6〜10の芳香族炭化水素基が好ましく、−SOを有するベンジル基がより好ましく、式(3)で表される基が特に好ましい。

[式(4)中、*は、N−との結合手を表す。]
10及びR11の他方は、置換基を有さない炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、エチル基がより好ましい。
【0030】
アニオン(2)において、R及びRのいずれか一方は、−SOを有する炭素数6〜10の芳香族炭化水素基が好ましく、−SOを有するベンジル基がより好ましく、式(4)で表される基が特に好ましい。
及びRの他方は、置換基を有さない炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、エチル基がより好ましい。
【0031】
溶解度の観点から、Rは、水素原子が好ましく、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、エチル基がより好ましい。
【0032】
アニオン(2)において、R及びRのいずれか一方は、炭素数1〜8のアルコキシ基を有してもよい芳香環が好ましく、エトキシ基を有するベンゼン環がより好ましい。R及びRの他方は、水素原子が好ましい。アニオン(2)は、アニオン(2)を含む塩の溶解性向上の観点から、式(4)で表されるアニオン(以下「アニオン(4)」という場合がある)が好ましい。

[式(4)中、R〜R11は、それぞれ式(1)と同じ定義である。]
【0033】
アニオン(B)において、炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基等が挙げられる。
【0034】
アニオン(B)において、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、ベンズヒドリル基、ベンジリデン基、スチリル基、シンナミル基、シンナミリデン基、ナフチル基等が挙げられる。
【0035】
アニオン(B)において、炭素数1〜8のアルコシキ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。
【0036】
アニオン(B)において、Mとしては、Na、Kが挙げられる。
【0037】
カチオン(A)としては、以下のカチオンが挙げられる。
【0038】
【化3】

【0039】
アニオン(B)としては、以下のアニオンが挙げられる。
【0040】
【化4】

【0041】
カチオン(A)とアニオン(B)とを含む塩としては、以下の塩が挙げられる。
【0042】
【化5】

【0043】
【化6】

【0044】
本発明に係る塩は、カチオン(A)を含む塩とアニオン(B)を含む塩とを、溶媒中で塩交換反応をさせることにより、製造することができる。カチオン(A)を含む塩とアニオン(B)を含む塩とを、1:1〜4:1のモル比で反応させることが好ましい。
【0045】
反応混合物から目的化合物である塩を取得する方法は、特に限定されず、公知の種々の手法が採用できる。例えば、反応混合物を無機塩(例えば、食塩等)及び水と共に混合し、析出した結晶を濾取することが好ましい。前記無機塩は、予め無機塩の水溶液を調製してから、反応混合物を前記水溶液に添加することが好ましい。反応混合物を添加するときの温度は、好ましくは10℃以上50℃以下、より好ましくは10℃以上40℃以下、さらに好ましくは10℃以上25℃以下である。また反応混合物を無機塩の水溶液に添加後は、同温度で0.5〜2時間程度攪拌することが好ましい。濾取した結晶は、水などで洗浄し、次いで乾燥することが好ましい。また必要に応じて、再結晶などの公知の手法によってさらに精製してもよい。
【0046】
かくして得られた本発明の塩は、染料として有用である。特に、本発明の化合物は、反射光又は透過光を利用して色表示する、液晶表示装置などの表示装置のカラーフィルターや繊維材料などに用いられる染料として有用である。
【0047】
本発明の染料は、カチオン(A)とアニオン(B)を有効成分とする染料である。
本発明の着色組成物は、着色剤(以下「着色剤(C)」という場合がある)として本発明の染料を含み、さらに樹脂(D)を含むことが好ましい。本発明の着色組成物は、さらに重合性化合物(E)、重合開始剤(F)及び溶剤(G)を含むことがより好ましい。
【0048】
着色剤(C)は、本発明の染料のほかに、さらに顔料及び/又は本発明の染料とは異なる染料を含んでいてもよい。
本発明の染料とは異なる染料としては、カラーインデックス(Colour Index)(The Society of Dyers and Colourists 出版)で、ソルベント(Solvent)、アシッド(Acid)、ベーシック(Basic)、リアクティブ(reactive)、ダイレクト(Direct)、ディスパース(Disperse)、又はバット(Vat)に分類されている染料等が挙げられる。より具体的には、以下のようなカラーインデックス(C.I.)番号の染料が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
C.I.ソルベントイエロー25,79,81,82、83,89;
C.I.アシッドイエロー7,23,25,42,65,76;
C.I.リアクティブイエロー2,76,116;
C.I.ダイレクトイエロー4,28,44,86,132;
C.I.ディスパースイエロー54,76;
C.I.ソルベントオレンジ41,54,56,99;
C.I.アシッドオレンジ56,74,95,108,149,162;
C.I.リアクティブオレンジ16;
C.I.ダイレクトオレンジ26;
C.I.ソルベントレッド24,49,90,91,118,119,122,124,125,127,130,132,160,218;
C.I.アシッドレッド73,91,92,97,138,151,211,274,289;
C.I.アシッドバイオレット102;
C.I.ソルベントグリーン1,5;
C.I.アシッドグリーン3,5,9,25,28;
C.I.ベーシックグリーン1;
C.I.バットグリーン1等。
【0049】
顔料としては、顔料分散レジストに通常用いられる有機顔料又は無機顔料が挙げられる。無機顔料としては、金属酸化物や金属錯塩のような金属化合物が挙げられ、具体的には、鉄、コバルト、アルミニウム、カドミウム、鉛、銅、チタン、マグネシウム、クロム、亜鉛、アンチモン等の金属の酸化物又は複合金属酸化物が挙げられる。また有機顔料及び無機顔料として具体的には、カラーインデックス(Colour Index)(The Society of Dyers and Colourists 出版)で、ピグメント(Pigment)に分類されている化合物が挙げられる。より具体的には、以下のようなカラーインデックス(C.I.
)番号の顔料が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0050】
C.I.ピグメントイエロー20、24、31、53、83、86、93、94、109、110、117、125、137、138、139、147、148、150、153、154、166、173及び180;
C.I.ピグメントオレンジ13、31、36、38、40、42、43、51、55、59、61、64、65及び71;
C.I.ピグメントレッド9、97、105、122、123、144、149、166、168、176、177、180、192、215、216、224、242、254、255及び、264;
C.I.ピグメントバイオレット14、19、23、29、32、33、36、37及び38;
C.I.ピグメントグリーン7、10、15、25、36、47及び58等。
【0051】
着色剤(C)の含有量は、着色組成物中の固形分に対して、好ましくは5〜60質量%である。ここで、固形分とは、着色組成物中の、溶剤を除く成分の合計をいう。
着色剤(C)中に含まれる本発明の染料の含有量は、好ましくは3〜100質量%である。
本発明の染料とは異なる染料、及び顔料は、それぞれ単独でも2種以上を組み合わせて本発明の染料と共に用いてもよい。
【0052】
樹脂(D)としては、特に限定されるものではなく、どのような樹脂を用いてもよい。樹脂(D)は、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましく、(メタ)アクリル酸から導かれる構造単位を含む樹脂であることがより好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を表す。
【0053】
樹脂(D)としては、具体的には、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート共重合体、メタクリル酸/スチレン/ベンジルメタクリレート/N−フェニルマレイミド共重合体、メタクリル酸/スチレン/グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0054】
樹脂(D)のポリスチレン換算重量平均分子量は、5,000〜35,000が好ましく、より好ましくは6,000〜30,000である。
樹脂(D)の酸価は、50〜150が好ましく、より好ましくは60〜135である。
樹脂(D)の含有量は、着色組成物の固形分に対して、好ましくは7〜65質量%であり、より好ましくは13〜60質量%である。
【0055】
重合性化合物(E)は、重合開始剤(F)から発生した活性ラジカル、酸等によって重合しうる化合物であれば、特に限定されるものではない。例えば、重合性のエチレン性不飽和結合を有する化合物等が挙げられる。
【0056】
前記の重合性化合物(E)としては、重合性基を3個以上有する光重合性化合物であることが好ましい。重合性基を3以上有する光重合性化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等が挙げられる。前記の光重合性化合物(E)は、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合性化合物(E)の含有量は、着色組成物の固形分に対して、5〜65質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜60質量%である。
【0057】
前記の重合開始剤(F)としては、活性ラジカル発生剤、酸発生剤等が挙げられる。活性ラジカル発生剤は熱又は光の作用によって活性ラジカルを発生する。前記の活性ラジカル発生剤としては、アルキルフェノン化合物、チオキサントン化合物、トリアジン化合物、オキシム化合物等が挙げられる。
前記のアルキルフェノン化合物としては、例えば、2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルスルファニルフェニル)プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
【0058】
前記のチオキサントン化合物としては、例えば、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等が挙げられる。
【0059】
前記のトリアジン化合物としては、例えば、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシナフチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシスチリル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0060】
前記のオキシム化合物としては、例えば、O−アシルオキシム系化合物が挙げられ、その具体例としては、N−ベンゾイルオキシ−1−(4−フェニルスルファニルフェニル)ブタン−1−オン−2−イミン、N−ベンゾイルオキシ−1−(4−フェニルスルファニルフェニル)オクタン−1−オン−2−イミン、N−アセトキシ−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタン−1−イミン、N−アセトキシ−1−[9−エチル−6−{2−メチル−4−(3,3−ジメチル−2,4−ジオキサシクロペンタニルメチルオキシ)ベンゾイル}−9H−カルバゾール−3−イル]エタン−1−イミン等が挙げられる。
【0061】
また、活性ラジカル発生剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアントラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物等を用いてもよい。
【0062】
前記の酸発生剤としては、例えば、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムp−トルエンスルホナート、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウムp−トルエンスルホナート、4−アセトキシフェニル・メチル・ベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホナート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホナート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等のオニウム塩類や、ニトロベンジルトシレート類、ベンゾイントシレート類等を挙げることができる。
前記の重合開始剤(F)は、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
重合開始剤(F)の含有量は、樹脂(D)及び重合性化合物(E)の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部であり、より好ましくは1〜20質量部である。重合開始剤の含有量が、前記の範囲にあると、高感度化して露光時間が短縮され生産性が向上することから好ましい。
【0064】
溶剤(G)としては、例えば、エーテル類、芳香族炭化水素類、ケトン類、アルコール類、エステル類、アミド類等が挙げられる。
【0065】
前記のエーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0066】
前記の芳香族炭化水素類としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等が挙げられる。
前記のケトン類としては、例えば、アセトン、2−ブタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
前記のアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
【0067】
前記のエステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0068】
前記のアミド類としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
これらの溶剤は、単独でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
着色組成物における溶剤(G)の含有量は、着色組成物に対して、好ましくは70〜95質量%であり、より好ましくは75〜90質量%である。
【0070】
本発明の着色組成物は、必要に応じて、界面活性剤、充填剤、他の高分子化合物、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、連鎖移動剤等の種々の添加剤を含んでもよい。
【0071】
本発明の塩は、染料として有用である。モル吸光係数が高く、かつ有機溶媒への溶解性を示すことから、特に、液晶表示装置等の表示装置のカラーフィルタに用いられる染料として有用である。
また、本発明の塩を含む着色組成物は、カラーフィルタをその構成部品の一部として備える表示装置(例えば、公知の液晶表示装置、有機EL装置等)、固体撮像素子等の種々の着色画像に関連する機器に、公知の態様で利用することができる。
【実施例】
【0072】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
実施例及び比較例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ない限り、質量基準である。
【0073】
以下の実施例において、化合物の構造は元素分析(VARIO-EL;(エレメンタール(株)製))で確認した。
【0074】
〔実施例1〕
C.I.アストラブルーベース6GLL(1−1)、1.67部を5%重量比の酢酸水溶液40部に混合・十分に撹拌を行い、完溶したアストラブルー溶液(s1)を作成した。別途の容器にトリフェニルメタン系色素(2−1)、1.80部を5%重量比の酢酸水溶液60部に混合・十分に撹拌を行い、完溶させた液を作成した(t1)。25℃でC.I.アストラブルーベース6GLL溶液(s1)を、作成した液(t1)に少しずつ滴下した後、20〜30℃で2〜3時間撹拌した。その後、超純水を100部を加えて追加的に1時間撹拌を行った。その後、吸引濾過を行い、5%重量比の酢酸水溶液で洗浄後水洗した。メタノールで洗浄、濾紙上に残った造塩化合物を乾燥機にて水分を除去して乾燥して、式(I−1)で表される塩を2.3部得た。






【0075】
式(I−1)で表される化合物の同定;
(元素分析)C:58.9 H:5.1 N:12.3 Cu:3.8 S:9.0
【0076】
〈吸光度の測定〉
化合物0.35gを乳酸エチルに溶解して体積を250cm3とし、そのうちの2cmを乳酸エチルで希釈して100cmとして、濃度0.028g/Lの溶液を調整した。該溶液について、紫外可視分光光度計(V−650DS;日本分光(株)製)(石英セル、光路長;1cm)を用いて極大吸収波長(λmax)及びモル吸光係数を測定した。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】


〔実施例2〕
[着色組成物の調製]
(C)着色剤:化合物(I−1):実施例1で合成した化合物 20部
(D)樹脂:メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体(モル比;30/70;重量平均分子量10700、酸価70mgKOH/g) 70部
(E)重合性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製) 30部
(F)光重合開始剤:ベンジルジメチルケタール(イルガキュア651;チバ・ジャパン社製) 15部
(G)溶剤:乳酸エチル 680部
を混合して着色組成物を得る。
【0078】
[カラーフィルタの作製]
ガラス上に、上記で得た着色組成物をスピンコート法で塗布し、揮発成分を揮発させる。冷却後、パターンを有する石英ガラス製フォトマスク及び露光機を用いて光照射する。光照射後に、水酸化カリウム水溶液で現像し、オーブンで200℃に加熱してカラーフィルタを得る。
【0079】
表1の結果から、本発明の化合物は吸光度が高いことから、高い分光濃度を示すことがわかる。また、当該化合物を含む着色組成物は、優れた色性能を有し、高品質なカラーフィルタを作製することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の塩は、着色剤として有用である。本発明の塩は、モル吸光係数が高く、分光濃度が高いことから、特に、液晶表示装置等の表示装置のカラーフィルタに用いられる着色剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される塩。

[式(1)中、Gは炭素数2〜12のアルキレン基を表し、該アルキレン基に含まれる−CH−は、−O−で置き換わっていてもよい。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し、nは、1〜4の整数を表す。
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子;群P1から選ばれる基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基;群P2から選ばれる基を有していてもよい炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、−SO、−SOH、−SOを表す。Rcは、−NR1011、−CR1213、−SO、−SOH、−SOを表す。R10〜R13は、それぞれ独立に、水素原子;群P1から選ばれる基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基;群P2から選ばれる基を有していてもよい炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。
群P1は、−SO、−SOH、および−SOからなり、
群P2は、−SO、−SOH、−SOおよび炭素数1〜8のアルコキシ基からなり、Mは、Na、Kを表す。]
【請求項2】
およびRが、メチル基である請求項1記載の塩。
【請求項3】
が、プロピレン基である請求項1又は2記載の塩。
【請求項4】
が、3である請求項1〜3のいずれかに記載の塩。
【請求項5】
Rcが、−NR1011である請求項1〜4のいずれかに記載の塩。
【請求項6】
及びR10が、−SOを有するベンジル基であり、R及びR11が、エチル基である請求項1〜5のいずれかに記載の塩。
【請求項7】
及びRが、エチル基であり、Rが水素原子である請求項1〜6のいずれかに記載の塩。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の塩を有効成分とする染料。
【請求項9】
請求項8記載の染料を含む着色組成物。

【公開番号】特開2012−207070(P2012−207070A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71887(P2011−71887)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】