説明

染料系偏光素子及び偏光板、並びにその製造方法

【課題】耐久性の向上した偏光素子、偏光板、およびその製造方法
【解決手段】
本発明の少なくとも少なくとも1種の2色性染料と、ケイ素またはケイ素化合物を含有した親水性高分子からなることを特徴とする偏光素子からなる偏光板は、超高圧水銀ランプのような強度の光を用いた耐光性試験でも透過率変化が少なく、かつ、耐熱性試験においても透過率変化が少ない。この偏光板を用いることにより長期使用に対しても安定した性能を維持する液晶プロジェクターが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料系偏光素子、これを用いた偏光板、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光素子は一般に、2色性色素であるヨウ素又は2色性染料をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに吸着配向させることにより製造されている。この偏光素子の少なくとも片面に接着剤層を介してトリアセチルセルロースなどからなる保護フィルムを貼合して偏光板とされ、液晶表示装置などに用いられる。2色性色素としてヨウ素を用いた偏光板はヨウ素系偏光板と呼ばれ、一方、2色性色素として2色性染料を用いた偏光板は染料系偏光板と呼ばれる。これらのうち染料系偏光板は、ヨウ素系偏光板に比べ同じ偏光度を有する偏光板を比較すると透過率が低い、すなわち、コントラストが低い問題点があったが、高耐熱性、高湿熱耐久性を有するという特徴を有することからカラー液晶プロジェクター等で使用されている。
カラー液晶プロジェクターの場合、その液晶画像形成部に偏光板を使用するが、偏光板により光が大幅に吸収されること、および投射されて数十インチから百数十インチになる画像を0.5〜6インチの小面積の偏光板に集光させるために、その光密度の大きさから、光による劣化、および光を照射した際の熱の影響は避けられない。
【0003】
【特許文献1】特開2000−112022
【特許文献2】特開2007−256898
【特許文献3】特許第3357109号
【特許文献4】米国特許:US4818624
【非特許文献1】機能性色素の応用第1刷発行版, (株)CMC出版, 入江正浩監修, P98-100,
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶プロジェクターの一層の明るさの向上要望は根強く、また、偏光板の小型化に伴い光密度が上昇するため、その光による長期使用に対する耐光性、耐熱性が高く初期光学特性を維持し、かつ、高コントラストを有する偏光板が求められている。そのような要望に対して、特許文献1および特許文献2では、偏光板に発生した熱を逃がすために、放熱性を有する基板を設ける手法が開示されているが、さらなる高出力の光源に対しては耐光性が不十分である。さらには、近年、その光密度、および、その熱量から偏光板の吸収軸方向が平行となるようにして測定して得られた平行透過率が大きく減少する問題(以下、バーニングと記載する)が新たに生じている。バーニングは特に、液晶プロジェクターの青色光源用の偏光板において顕著に発生しており、その改善が求められていた。これに対してこれまで、送風などで偏光板を冷却するなどの対処をしてきたが、まだ不十分であった。さらには、偏光板自体の改善でバーニングの発生を抑えられる技術はこれまでになく、偏光板そのものの光及び/又は熱に対する耐久性を向上させ、バーニングの改善が望まれていた。
【0005】
このような課題に対し、偏光板の耐熱性を向上させる技術として、特許文献3のように多価アルデヒドにより熱に対する耐久性を向上させている技術がある。しかしながら、まだ充分ではなく、更なる耐熱性の向上が切望されている。
【0006】
また、特許文献4には、高温耐熱耐久性向上のために、ポリエン構造を持つ偏光板をシランカップリング剤で処理し、色変化を抑える技術が開示されている。しかしながら、2色性染料が含有した染料系偏光板の光及び/又は熱に対する耐久性を向上させ、バーニングを改善できる技術ではない。
【0007】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討の結果、少なくとも1種の2色性染料と、ケイ素またはケイ素化合物を含有した親水性高分子からなることを特徴とする偏光素子が光及び/又は熱に対する耐久性を向上させ、バーニングを改善できることを新規に見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)少なくとも1種の2色性染料と、ケイ素またはケイ素化合物を含有した親水性高分子からなることを特徴とする偏光素子、
(2)2色性染料がアゾ系染料である(1)に記載の偏光素子、
(3)ケイ素化合物が、シランカップリング剤であることを特徴とする(1)又は(2)に偏光素子、
(4)シランカップリング剤がアミノ基を含有していることを特徴とする(3)に記載の偏光素子、
(5)親水性高分子がポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなり、かつ、延伸されていることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の偏光素子、
(6)(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の偏光素子の少なくとも片面、もしくは両面に保護層が設けられてなる偏光板、
(7)液晶プロジェクター用である(6)に記載の偏光板、
(8)青色光源用である(7)に記載の偏光板、
(9)(1)乃至(6)のいずれか一項に記載の偏光素子、又は偏光板を設けたことを特徴とする液晶表示装置、
(10)(1)乃至(8)のいずれか一項に記載の偏光素子、又は偏光板を設けたことを特徴とする液晶プロジェクター。
(11)少なくとも1種の2色性染料と、親水性高分子からなる偏光素子を、ケイ素またはケイ素化合物を含有している溶液で処理した後、直ちに乾燥処理をすることを特徴とする(1)乃至(6)のいずれか一項に記載の偏光素子の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の偏光素子、およびその偏光板は耐熱性を大きく向上させ、耐光性試験下おいて、光及び/又は熱に対する耐久性を向上させ、バーニングを改善できる偏光素子及び偏光板を得るに至った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の偏光素子は、少なくとも1種の2色性染料と、ケイ素またはケイ素化合物を含有した親水性高分子からなることを特徴とする。親水性高分子は特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、アミロース系樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂又はポリアクリル酸塩系樹脂などがある。それら樹脂よりなるフィルムに2色性染料を染色し、延伸し、2色性を有する偏光板を得る。2色性染料を含有させる場合の染色性、および、架橋性などからポリビニルアルコール系樹脂よりなるフィルムが最も好ましい。
【0011】
以下、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを例にして、具体的な偏光素子の作製方法を説明する。
偏光素子を構成するポリビニルアルコール系樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法で作製することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の製造方法としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得ることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニル及びこれと共重合可能な他の単量体の共重合体などが挙げられる。酢酸ビニルと共重合する他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類又は不飽和スルホン酸類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%が好ましく、95モル%以上がより好ましい。このポリビニルアルコール系樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性したポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用できる。またポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000が好ましく、1,500〜5,000がより好ましい。
【0012】
かかるポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。この場合、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムには可塑剤としてグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール又は低分子量ポリエチレングリコールなどが含有していていても良い。可塑剤量は5〜20重量%が好ましく、8〜15重量%がより好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムの膜厚は特に限定されないが、例えば、5〜150μmが好ましく、10〜100μmがより好ましい。
【0013】
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムには、まず膨潤処理が施される。膨潤処理は20〜50℃の溶液に30秒〜10分間浸漬させることによって行われる。溶液は水が好ましい。偏光素子を作製する時間を短縮する場合には、色素の染色処理時にも膨潤するので膨潤処理を省略しても良い。
【0014】
膨潤処理の後に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは2色性染料を含有した溶液で処理される。この工程での処理温度は、5〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましく、10〜30℃で処理するのが特に好ましい。処理時間は適度に調節できるが、30秒〜20分で調節するのが好ましく、1〜10分がより好ましい。処理方法は、該溶液に浸漬することが好ましいが、溶液をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに塗布することによって処理をしても良い。
【0015】
2色性染料を含有した溶液には、染色助剤として、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、無水硫酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムなどを含有しても良い。それらの含有量は、染料の染色性による時間、温度によって任意の濃度で調整できが、それぞれの含有量としては、例えば、0〜5重量%が良く、より好ましくは0.1〜2重量%が良い。
【0016】
ここでの2色性染料とは、特に限定しないが、親水性高分子に染色されるものであればよい。例えばアゾ染料などであれば良いが、限定されず、アントラキノン系、キノフタロン系や、例えば非特許文献1に示されるようなアゾ系の2色性化合物を使用することができる。特に、2色性の高いものが好ましい。2色性が高い染料としては、例えば、シー.アイ.ダイレクト.イエロー12、シー.アイ.ダイレクト.イエロー28、シー.アイ.ダイレクト.イエロー44、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ26、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ39、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ107、シー.アイ.ダイレクト.レッド2、シー.アイ.ダイレクト.レッド31、シー.アイ.ダイレクト.レッド79、シー.アイ.ダイレクト.レッド81、シー.アイ.ダイレクト.レッド247、シー.アイ.ダイレクト.グリーン80、シー.アイ.ダイレクト.グリーン59、及び特開2001−33627、特開2002−296417、特開2003−215338、WO2004/092282、特開2001−0564112、特開2001−027708、特開平11−218611、特開平11−218610及び特開昭60−156759号公報に記載された有機染料等が挙げられる。これらの有機染料は遊離酸の他、アルカリ金属塩(例えばNa塩、K塩、Li塩)、アンモニウム塩、又はアミン類の塩として用いることができる。ただし、2色性染料はこれらに限定されず公知の2色性化合物を用いることが出来るが、好ましくはアゾ系の染料が良い。
【0017】
これらに示された2色性染料以外にも、必要に応じて、他の有機染料を併用させることが出来る。目的とする偏光素子が、中性色の偏光素子、液晶プロジェクター用カラー偏光素子、あるいはその他のカラー偏光素子であるかによって、それぞれ配合する有機染料の種類は異なる。その配合割合は特に限定されず、光源、色相などの要望に応じて、配合量を任意に設定できる。
【0018】
染色処理後、次の工程に入る前に洗浄を行っても良い。洗浄を行う溶媒は、一般的には水が用いられる。処理方法は、該溶液に浸漬することが好ましいが、溶液をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに塗布によって処理をしても良い。洗浄を行うことによって、次に処理する液中に染料が移行するのを抑制することができる。洗浄の時間は、特に限定されないが、このましくは1〜300秒、より好ましくは1〜60秒であることが良い。処理温度は、親水性高分子が溶解しない温度であることが必要となる。一般的には5〜40℃で処理される。
【0019】
染色処理、または洗浄処理した後、架橋剤及び/又は耐水化剤処理を適用しても良い。架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂又はホウ酸アンモニウムなどのホウ素化合物、グリオキザール又はグルタルアルデヒドなどの多価アルデヒド、ビウレット型、イソシアヌレート型又はブロック型などの多価イソシアネート系化合物、チタニウムオキシサルフェイトなどのチタニウム系化合物などを用いることができるが、他にもエチレングリコールグリシジルエーテル、ポリアミドエピクロルヒドリンなどを用いることができる。耐水化剤としては、過酸化コハク酸、過硫酸アンモニウム、過塩素酸カルシウム、ベンゾインエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、塩化アンモニウム又は塩化マグネシウムなどが挙げられる。好ましくはホウ酸が良い。以上に示された少なくとも1種以上の架橋剤及び/又は耐水化剤を用いて処理を行う。その際の溶媒としては、水が好ましいが限定されるものではない。処理濃度は、ホウ酸を例にして示すと溶媒に対して濃度0.1〜6.0重量%で処理するのが好ましく、1.0〜4.0重量%がより好ましい。この工程での処理温度は、5〜70℃が好ましく、5〜50℃がより好ましい。処理方法は、該溶液に浸漬することが好ましいが、溶液をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに塗布または塗工によって処理をしても良い。処理時間は30秒〜6分が好ましく、1〜5分がより好ましい。ただし、時間を短縮したい場合、架橋処理、又は耐水化処理が不必要な場合には、この処理工程を省略しても良い。
【0020】
ホウ酸処理を行った後に、1軸延伸処理を施す。延伸方法は湿式延伸法又は乾式延伸法のどちらでも良い。
【0021】
乾式延伸法の場合には、延伸加熱媒体が空気媒体の場合には、空気媒体の温度は常温〜180℃で延伸するのが好ましい。また、湿度は20〜95%RHの雰囲気中で処理するのが好ましい。加熱方法としては、例えば、ロール間ゾーン延伸法、ロール加熱延伸法、圧延伸法、赤外線加熱延伸法などが挙げられるが、その延伸方法は限定されるものではない。延伸処理は1段で処理することも良いが、2段処理以上の多段処理を行っても良い。
【0022】
湿式延伸法の場合には、水、水溶性有機溶剤、又はその混合溶液中で延伸する。架橋剤及び/又は耐水化剤を含有した溶液中で浸漬しながら延伸処理を行うことが好ましい。架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂又はホウ酸アンモニウムなどのホウ素化合物、グリオキザール又はグルタルアルデヒドなどの多価アルデヒド、ビウレット型、イソシアヌレート型又はブロック型などの多価イソシアネート系化合物、チタニウムオキシサルフェイトなどのチタニウム系化合物などを用いることができるが、他にもエチレングリコールグリシジルエーテル、ポリアミドエピクロルヒドリンなどを用いることができる。耐水化剤としては、過酸化コハク酸、過硫酸アンモニウム、過塩素酸カルシウム、ベンゾインエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、塩化アンモニウム又は塩化マグネシウムなどが挙げられる。以上に示された少なくとも1種以上の架橋剤及び/又は耐水化剤を用いて処理を行う。架橋剤はホウ酸が好ましい。架橋剤及び/又は耐水化剤の濃度は、例えば、0.5〜15重量%が好ましく、2.0〜8.0重量%がより好ましい。延伸倍率は2〜8倍が好ましく、5〜7倍がより好ましい。延伸温度は40〜60℃で処理することが好ましく、45〜58℃がより好ましい。延伸時間は30秒〜20分を適用できるが、2〜5分がより好ましい。延伸処理は1段で処理することも良いが、2段処理以上の多段処理を行っても良い。
【0023】
延伸を行った後には、フィルム表面に架橋剤及び/又は耐水化剤の析出、又は異物が付着することがあるため、洗浄を行っても良い。洗浄時間は1秒〜5分が好ましい。処理方法は洗浄溶液に浸漬することが好ましいが、溶液をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに塗布または塗工によって洗浄処理をしても良く、1段で処理することも良いし、2段以上の多段処理を行っても良い。処理温度は、特に限定されないが5〜50℃、好ましくは10〜40℃が良い。
【0024】
ここまでの処理工程においての処理溶液の溶媒として、例えば、水、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール又はトリメチロールプロパン等のアルコール類、エチレンジアミン又はジエチレントリアミン等のアミン類などの溶媒が挙げられるが限定されるものではない。又は、1種以上のこれら溶媒の混合物が用いられる。最も好ましくは水が良い。
【0025】
本発明では、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを2色性色素で染色する工程以降、延伸処理後の洗浄する工程までのいずれかの溶液に、ケイ素化合物を含有させ、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを処理することを特徴とする。処理する工程とは具体的には、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを2色性染料で染色する工程、2色性染料を染色後に洗浄する工程、2色性染料を含有したポリビニルアルコール系樹脂フィルムに架橋剤を処理する工程、架橋剤を含有した溶液中で延伸する工程、延伸されたフィルムを洗浄する工程、のいずれか、または複数の工程でケイ素化合物を含有する溶液で処理されることを必要とする。特に、延伸処理を施した後の洗浄工程で、ケイ素化合物で処理した後、該工程の次の工程として乾燥処理を適用することで、より耐バーニングおよび耐熱性が向上する。
【0026】
ケイ素化合物としては、例えば、一般的なケイ素化合物であれば良く限定されない。ケイ素化合物を親水性高分子に浸漬させることによって、その機能を発揮させる。ケイ素化合物としては、一般的に機能性シラン化合物、シリル化剤、シリコン架橋剤、シランカップリング剤と称される化合物を使用できる。
【0027】
そういったケイ素化合物としては例えば、メチルトリイソシアネートシラン(マツモトファインケミカル社製 SI-310)、テトライソシアネートシラン(マツモトファインケミカル社製 SI-400)、メチルトリクロロシラン(信越化学社製 KA-13)、メチルジクロロシラン(信越化学社製 KA-12)、ジメチルジクロロシラン(信越化学社製 KA-22)、トリメチルクロロシラン(信越化学社製 KA-31)、フェニルトリクロロシラン(信越化学社製 KA-103)、シフェニルジクロロシラン(信越化学社製 KA-202)、テトラメトシキシラン(信越化学社製 KBM-04)、メチルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBM-13)、ジメチルジメトキシシラン(KBM-22)、フェニルトリメトキシシラン(KBM-103)、テトラエトキシシラン(信越化学社製 KBE-04)、ジフェニルジメトキシシラン(KBM-202SS)、メチルトリエトキシシラン(KBE-13)、ジメチルジエトキシシラン(KBE-22)、フェニルトリエトキシシラン(KEB-103)、ジフェニルジエトキシシラン(KBE-202)、ヘキシルトリメトキシシラン(KBM-3063)、ヘキシルトリエトキシシラン(LS-3063)、デシルトリメトキシシラン(KBM-3103)、デシルトリメトキシシラン(KBM-3103C)又はトリフルオロプロピルトリメトキシシラン(KBM-7103)が挙げられる。
【0028】
ケイ素化合物の中でも特にシランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤とは、代表的な化合物として、下記の化学構造式(A)または(B)で示され、一分子中に少なくとも2種類の反応性の異なる官能基を有する。
【化1】

(上記中、Xとしては例えば、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基などの反応基、ORとしては例えば、メトキシ基、エトキシ基、Rとしては例えば、メチル基、エチル基を表す)
【0029】
また、シランカップリング剤のアルコキシシリル基(Si-OR)は、水によって加水分解され、シラノール基になる。そのシラノール基へ加水分解したシランカップリング剤を用いてポリビニルアルコール系樹脂フィルムに処理を行う。シラノール基への加水分解させるには、例えば、十分に攪拌した水にシランカップリング剤を徐々に添加し、30分攪拌することで処理が行われる。加水分解したシラノール基は、水溶液中で不安定なため、水溶液中で安定させるためには、該水溶液を適切なpHで制御する必要がある。溶解している水溶液のpHは、それぞれのシラン化合物に適したpHに調整されるが、例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤は、例えば、pH7〜11が適当であり、それ以外のシランカップリング剤は、例えば、pH3〜5が適当であるが、その限りではなく、それぞれ適したpHでの調整が好ましい。
【0030】
本発明で用いる具体的なシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン(信越化学工業社製 KA-1003)、ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製 KBM-1003)、ビニルトリエトキシシラン(信越化学社製 KBE-1003)、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン(信越化学社製 KBC-1003)、β-(3,4-エポキシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBM-303)、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBM−403)、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学社製 KBE−402)、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製 KBE−403)、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学社製 KBM−502)、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBM−503)、γ-メタクルロキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学社製 KBE−502)、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製 KBE−503)、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーティング・シリコーン社製 SZ−6030)、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩(東レ・ダウコーティング・シリコーン社製 SZ−6032)、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーティング・シリコーン社製 SZ−6083)、γ-ジアリルアミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーティング・シリコーン社製 AX43−065)、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学社製 KBM−602)、N−β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBM−603)、N−β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製 KBE−603)、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBM−903)、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製 KBM−903)、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBM−573)、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーティング・シリコーン社製 SH6020)、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン(東レ・ダウコーティング・シリコーン社製 SH6023)、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBM−703)、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBM−803)、サイラエースS210(チッソ社製)、サイラエースS220(チッソ社製)、サイラエースS310(チッソ社製)、サイラエースS320(チッソ社製)、サイラエースS330(チッソ社製)、サイラエースS510(チッソ社製)、サイラエースS520(チッソ社製)、サイラエースS530(チッソ社製)、サイラエースS710(チッソ社製)、サイラエースS810(チッソ社製)又はサイラエースS350(チッソ社製)がある。
【0031】
その中でも、特にアミノ基を有するシランカップリング剤、例えば、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩(東レ・ダウコーティング・シリコーン社製 SZ−6032)、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーティング・シリコーン社製 SZ−6083)、γ-ジアリルアミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーティング・シリコーン社製 AX43−065)、N−β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学社製 KBM−602)、N−β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBM−603)、N−β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製 KBE−603)、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBM−903)、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製 KBM−903)、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBM−573)、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーティング・シリコーン社製 SH6020)又はγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン(東レ・ダウコーティング・シリコーン社製 SH6023)が好ましく、さらに好ましくは、分子末端にアミノ基を有するN−β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学社製 KBM−602)、N−β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBM−603)、N−β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製 KBE−603)、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBM−903)、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製 KBM−903)、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーティング・シリコーン社製 SH6020)又はγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン(東レ・ダウコーティング・シリコーン社製 SH6023)がより好ましい。
【0032】
ケイ素化合物を処理する方法としては、例えばケイ素化合物を含有した溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法、ケイ素化合物を含有した溶液を塗布または塗工による処理する方法が挙げられる。塗布または塗工方法としては、例えば、スピンコート、グラビアコート、ダイコート、リップコート等があるが、特に限定されず公知の方法を用いることが出来る。処理方法は、ケイ素化合物を含有している溶液をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに接触させ、含有できる方法であれば、限定されず、公知の方法を用いることができる。最も好ましい方法としては、ケイ素化合物を含有した溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法が良い。
【0033】
ケイ素化合物を水溶液に含有させる濃度は、ケイ素化合物が溶解されていれば、特に限定されない。好ましくは、0.01重量%以上10重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以上5重量%以下であることが良い。ケイ素化合物の溶解性が低い場合には主溶剤とは別の溶剤の混合溶液、例えば水とアルコール系溶剤のような混合溶液を用いることが出来る。
【0034】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムへケイ素化合物の含有量を確認する方法の一つとして、そのケイ素化合物自体を分析する方法も良いが、間接的に、含有しているケイ素量を間接的に確認しても良い。その際のケイ素はInductively Coupled Plasma発光分析(以下、ICP発光分析と省略)を行う。具体的には、偏光素子 約0.1gを白金ルツボに入れて秤量し、試料上部にかぶさるように四ホウ酸リチウム0.5gを加え、1000℃、2時間で溶解後、50重量%塩酸15mlを加え、加熱溶解し、完全に溶解する50mlに定容ICP発光分析方によりケイ素の含有確認を行うことが出来る。
【0035】
ICP発光分析は、ケイ素の存在を確認するだけでなく、定量も行うことが出来る。偏光素子中に含まれるケイ素量は5ppm以上であれば、ケイ素が含有していることが確認でき、かつ、本発明の効果を発現する。本発明の効果を得るためには、好ましくは100〜30000ppm、より好ましくは300〜1000ppmが含有されていることが好ましい。ケイ素量が、IPC発光分析装置において測定値が上限に達する場合は任意の濃度に希釈して測定すればよい。5ppm未満になると本発明の効果が十分に発現されない場合がある。
【0036】
延伸後、もしくは、延伸後に洗浄処理を適用した後には、フィルムの乾燥を行う。乾燥の際には、自然乾燥が良いが、より乾燥効率を高めるためにはロールによる圧縮やエアーナイフ、又は吸水ロール等によって表面の水分除去を行っても良く、及び/又は送風乾燥を行うことも良い。処理温度としては、20〜100℃で処理することが好ましく、60〜100℃で処理することがより好ましい。より耐熱性を向上させるためには、80℃以上で処理すると耐熱性が向上し、さらに好ましい。処理時間は30秒〜20分を適用できるが、5〜10分が好ましい。
【0037】
以上の方法で、本発明の耐久性を向上させたポリビニルアルコール系樹脂フィルム偏光素子を得ることが出来る。偏光素子における2色性染料を吸着させるフィルムがポリビニルアルコール系樹脂でなくても、アミロース系樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸塩系樹脂などから得られるフィルムでも2色性染料を含有させ、延伸、シェア配向などで親水性樹脂を配向させることによって、同様な偏光素子を作製することができる。
【0038】
得られた偏光素子には、その少なくとも片面、又は両面に透明保護層を設けることによって偏光板とする。透明保護層はポリマーによる塗布層として、又はフィルムのラミネート層として設けることができる。透明保護層を形成する透明ポリマー又はフィルムとしては、機械的強度が高く、熱安定性が良好な透明ポリマー又はフィルムが好ましい。透明保護層として用いる物質として、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースのようなセルロースアセテート樹脂又はそのフィルム、アクリル樹脂又はそのフィルム、ポリ塩化ビニル樹脂又はそのフィルム、ポリエステル樹脂又はそのフィルム、ポリアリレート樹脂又はそのフィルム、ノルボルネンのような環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂又はそのフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン骨格を有するポリオレフィン又はその共重合体、主鎖又は側鎖がイミド及び/又はアミドの樹脂又はポリマー又はそのフィルムなどが挙げられる。また、透明保護層として、液晶性を有する樹脂又はそのフィルムを設けても良い。保護フィルムの厚みは、例えば、0.5〜200μm程度である。その中の同種又は異種の樹脂又はフィルムを片面、もしくは両面に1層以上設けることによって偏光板を作製する。
【0039】
上記、透明保護層を偏光素子と貼り合わせるためには接着剤が必要となる。接着剤としては特に限定されないが、ポリビニルアルコール系接着剤が好ましい。ポリビニルアルコール系接着剤として、例えば、ゴーセノールNH-26(日本合成社製)、エクセバールRS-2117(クラレ社製)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。接着剤には、架橋剤及び/又は耐水化剤を添加しても良い。ポリビニルアルコール系接着剤には、無水マレイン酸-イソブチレン共重合体のみ/かつ架橋剤を混合させた接着剤を用いることができる。無水マレイン酸-イソブチレン共重合体として、例えば、イソバン#18(クラレ社製)、イソバン#04(クラレ社製)、アンモニア変性イソバン#104(クラレ社製)、アンモニア変性イソバン#110(クラレ社製)、イミド化イソバン#304(クラレ社製)、イミド化イソバン#310(クラレ社製)などが挙げられる。その際の架橋剤には水溶性多価エポキシ化合物を用いることができる。水溶性多価エポキシ化合物とは、例えば、デナコールEX-521(ナガセケムテック社製)、テトラット-C(三井ガス化学社製)などが挙げられる。また、ポリビニルアルコール系樹脂以外の接着剤として、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系といった公知の接着剤を用いることも出来る。また、接着剤の接着力の向上、または耐水性の向上を目的として、亜鉛化合物、塩化物、ヨウ化物等の添加物を同時に0.1〜10重量%程度の濃度で含有させることもできる。添加物についても限定されるものではない。透明保護層を接着剤で貼り合せた後、適した温度で乾燥もしくは熱処理することによって偏光板を得る。
【0040】
得られた偏光板を液晶、有機エレクトロルミネッセンス等の表示装置に貼り合わせる場合、後に非露出面となる保護層またはフィルムの表面に視野角改善及び/又はコントラスト改善のための各種機能性層、輝度向上性を有する層またはフィルムを設けることもできる。偏光板、これはらフィルムや表示装置との貼り合せるには粘着剤を用いるのが好ましい。
【0041】
この偏光板は、もう一方の表面、すなわち、保護層又はフィルムの露出面に、反射防止層や防眩層、ハードコート層など、公知の各種機能性層を有していてもよい。この各種機能性を有する層を作製するには塗工方法が好ましいが、その機能を有するフィルムを接着剤又は粘着剤を介して貼合せても良い。また、各種機能性層とは、位相差を制御する層又はフィルムであっても良い。
【0042】
以上の方法で、本発明における少なくとも1種の2色性染料と、ケイ素またはケイ素化合物を含有した親水性高分子からなることを特徴とする偏光素子、またはそれを用いた偏光板を得ることが出来る。本発明によれば、2色性染料を吸着してなる親水性高分子よりなる偏光素子、またはそれを用いた偏光板の光及び/又は熱に対する耐久性を向上させ、バーニングを改善できる。本発明の偏光素子または偏光板を用いたディスプレイは信頼性が高い、長期的に高コントラストで、かつ、高い色再現性を有するディスプレイになる。
【0043】
こうして得られた本発明の偏光板を、例えば、液晶プロジェクターの青色光源に対して用いた場合、バーニング現象は大幅に減少される。このとき、液晶プロジェクターの青色光源に要求される偏光板の波長は、一般的に400〜500nmであって、特に430〜500nmの波長において、高い偏光度を有していることが必要であり、例えば、波長430〜500nmにおいて、偏光素子の吸収軸と平行した直線偏光光を照射したときに透過率が0.3%以下であり、偏光素子の吸収軸に直交した直線偏光光を照射したときに77%以上の光学特性を有する偏光板であることが好ましく、より好ましくは、偏光素子の吸収軸と平行した直線偏光光を照射したときに透過率が0.1%以下であり、偏光素子の吸収軸に直交した直線偏光光を照射したときに80%以上の光学特性を有する偏光板であることが好ましい。
【0044】
さらに、本発明の偏光板を、例えば、液晶プロジェクターの緑色光源に対して用いた場合も同様にバーニング現象は抑制できる。このとき、液晶プロジェクターの緑色光源に要求される偏光板の波長は、500〜600nmであって、特に520〜580nmの波長において、高い偏光度を有していることが必要であり、例えば、波長520〜580nmにおいて、偏光素子の吸収軸と平行した直線偏光光を照射したときに透過率が0.2%以下であり、偏光素子の吸収軸に直交した直線偏光光を照射したときに83%以上の光学特性を有する偏光板であることが好ましく、より好ましくは、偏光素子の吸収軸と平行した直線偏光光を照射したときに透過率が0.1%以下であり、偏光素子の吸収軸に直交した直線偏光光を照射したときに86%以上の光学特性を有する偏光板であることが好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例に示す透過率の評価は以下のようにして行った。
【0046】
分光光度計〔日立製作所社製“U-4100”〕を用いて、透過率を測定するにあたり、光の出射側に、JIS-Z8701( C光源2°視野)に基づき視感度補正後の透過率43%で偏光度99.99%のヨウ素系偏光板(ポラテクノ社製 SKN-18043P)を設置し、絶対偏光光を測定試料に入射出来るようにした。その際のヨウ素系偏光板の保護層は紫外線吸収能のないトリアセチルセルロースである。
【0047】
本発明の偏光板の片面に保護膜を貼合して得た偏光板に、絶対偏光光を入射し、その絶対偏光光の振動方向と本発明の偏光板の吸収軸方向が平行となるようにして測定して得られた絶対平行透過率をKz、その絶対偏光光の振動方向と本発明の偏光板の吸収軸方向が直交となるようにして測定して得られた絶対直行透過率をKyとした。とした。
【0048】
それぞれの透過率は、分光光度計〔日立製作所社製“U-4100”〕を用いて測定した。
【0049】
実施例1
<加水分解したシランカップリング剤を含有した水溶液の作製>
常温の蒸留水に、攪拌しながら、N−β−(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBM−603)を1重量%になるように徐々に添加した。全量添加後、30分間攪拌を継続し、加水分解したシランカップリング剤を含有した水溶液を得た。
【0050】
<シランカップリング剤を処理して得られる偏光素子の作製>
ケン化度が99%以上の膜厚75μmのポリビニルアルコール系樹脂フィルム(クラレ社製 VFシリーズ)を40℃の温水に2分浸漬し膨潤処理をした。膨潤処理したフィルムを、アゾ染料としてシー・アイ・ダイレクト・オレンジ39 0.1重量%、シー・アイ・ダイレクト・レッド81 0.05重量%、トリポリ燐酸ナトリウム0.1重量%を含有した45℃の水溶液に浸漬し、染料の吸着を行った。染料が吸着されたフィルムを水にて洗浄し、洗浄の後、2重量%のホウ酸を含有した40℃の水溶液で1分間処理を行った。ホウ酸処理して得られたフィルムを、5.0倍に延伸しながらホウ酸3.0重量%を含有した55℃の水溶液中で5分間処理を行った。そのホウ酸処理して得られたフィルムの緊張状態を保ちつつ、加水分解したシランカップリング剤KBM−603を1重量%含有した水溶液で30℃において15秒間処理を行った。処理して得られたフィルムを直ちに60℃で5分間乾燥処理を行い膜厚28μmの偏光素子を得た。得られた偏光素子へのケイ素原子の含有量をSPS3100 ICP発光分光分析装置(SIIナノテクノロジー社製)にて測定したところ、678ppmのケイ素量が確認された。得られた偏光素子をアルカリ処理した膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製 TD-80U、以下TACと省略)をポリビニルアルコール系接着剤を用いて、TAC/ 接着層/ 偏光素子/ 接着層/ TACという構成で積層し、ラミネートして偏光板を得た。図1に得られた偏光板の絶対平行透過率Ky,絶対直交透過率Kzを示す。
【0051】
(図1)

(図2)

【0052】
得られた偏光板を40mmx40mmにカットし、粘着剤PTR-3000(日本化薬社製)を介して1mmの透明ガラス板にTAC/ 接着層/ 偏光素子/ 接着層/ TAC/ 粘着層/ 透明ガラス板という構成で貼り合わせて測定試料とした。
【0053】
作製したサンプルを用いて、高圧水銀ランプ耐光性試験機(ウシオ電機社製 超高圧水銀ランプ 2000W)にて85℃の環境で、735時間の試験を行った。照射光は、TAC面から入射するように設置し、試験を行った。試験前と後で、430nm、450nmでのKyを測定した。
【0054】
実施例2
実施例1において、シランカップリング剤として、N−β−(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBM−603)をγ-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBM−903)に変えて偏光素子を作製した以外は同様にして偏光板を作製し、高圧水銀ランプ耐光性試験機を行った。得られた偏光素子へのケイ素原子の含有量をICP発光分析にて測定したところ、484ppmのケイ素量が確認された。
【0055】
比較例1
実施例1において、シランカップリング剤として、N−β−(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBM−603)を用いなかったこと以外は同様にして偏光板を作製し、高圧水銀ランプ耐光性試験機を行った。得られた偏光素子へのケイ素原子の含有量をICP発光分析にて測定したところ、ケイ素量が確認されなかった。
【0056】
表1に実施例1、実施例2、比較例1の高圧水銀ランプ耐光性試験によって得られた430nm, 450nmでのKyを測定した結果と、その変化量を示す。
【0057】
(表1)

【0058】
実施例1、2、および比較例1から分かるように、シランカップリング剤で処理して得られるフィルムは、430nm、および、450nmでの偏光板の初期からの透過率変化が少なく、光及び/又は熱に対する耐久性を向上させ、バーニングを改善できる。
【0059】
実施例3
実施例1において、環境加速試験として、140℃、288時間の耐熱試験を行った以外は同様にして偏光板を作製し、環境加速試験を行った。環境加速試験を適用する前と後で、430〜500nmでの5nmごとのKyの測定値での平均透過率Kaveを測定した。
【0060】
実施例4
実施例3において、シランカップリング剤として、N−β−(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学社製 KBM−602)を用いたこと以外は同様にして環境加速試験を行った。環境加速試験を適用する前と後で、430〜500nmでの5nmごとのKyの測定値での平均透過率(以下Kaveと示す)を測定した。
【0061】
実施例5
実施例3において、シランカップリング剤として、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBM−403)を用いた以外は同様にして偏光板を作製し、環境加速試験を行った。環境加速試験を適用する前と後で、Kaveを測定した。
【0062】
実施例6
実施例1において、加水分解したシランカップリング剤KBM−603を1重量%含有した水溶液で30℃において15秒間処理を行った。処理して得られたフィルムを直ちに80℃で5分間熱処理した以外は同様にして偏光板を作製し、環境加速試験を行った。環境加速試験を適用する前と後で、Kaveを測定した。
【0063】
比較例2
実施例3において、シランカップリング剤を用いない以外は同様にして偏光板を作製し、環境加速試験を行った。環境加速試験を適用する前と後で、Kaveを測定した。
【0064】
表2に実施例3乃至6、比較例2に、140℃耐熱試験によって得られたKaveを測定した結果と、その変化量を示す。
(表2)

【0065】
実施例3乃至6、および比較例2から分かるように、シランカップリング剤で処理して得られる本発明の偏光素子または偏光板は、140℃の耐熱試験において、Kaveの変化量が比較例と比較し、最大で11%強の変化であり、耐熱性が向上している。
【0066】
以上の実施例、比較例から明らかなように、本発明の少なくとも少なくとも1種の2色性染料と、ケイ素またはケイ素化合物を含有した親水性高分子からなることを特徴とする偏光素子を用いたことを特徴とする偏光板は、超高圧水銀ランプのような強度の光を有する耐光性試験でも透過率変化が少なく、かつ、耐熱性試験においてもその透過率変化が少ないことが分かる。このことは、光及び/又は熱に対する耐久性を向上させ、バーニングを改善できることを示しており、透過率が低下し、光吸収を増加して加速する劣化を抑制するのに対しては非常に有効である。本発明の偏光素子、偏光板を用いた液晶プロジェクターは長期的に使用しても、安定した性能を維持できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の2色性染料と、ケイ素またはケイ素化合物を含有した親水性高分子からなることを特徴とする偏光素子。
【請求項2】
2色性染料がアゾ系染料である請求項1に記載の偏光素子。
【請求項3】
ケイ素化合物が、シランカップリング剤であることを特徴とする請求項1又は2に偏光素子。
【請求項4】
シランカップリング剤がアミノ基を含有していることを特徴とする請求項3に記載の偏光素子。
【請求項5】
親水性高分子がポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなり、かつ、延伸されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の偏光素子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の偏光素子の少なくとも片面、もしくは両面に保護層が設けられてなる偏光板。
【請求項7】
液晶プロジェクター用である請求項6に記載の偏光板。
【請求項8】
青色光源用である請求項7に記載の偏光板。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の偏光素子、又は偏光板を設けたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の偏光素子、又は偏光板を設けたことを特徴とする液晶プロジェクター。
【請求項11】
少なくとも1種の2色性染料と、親水性高分子からなる偏光素子を、ケイ素またはケイ素化合物を含有している溶液で処理した後、直ちに乾燥処理をすることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の偏光素子の製造方法。

【公開番号】特開2011−53234(P2011−53234A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4261(P2008−4261)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【出願人】(594190998)株式会社ポラテクノ (30)
【Fターム(参考)】