説明

染毛剤組成物

【課題】染色力が高く、毛髪に鮮やかな色を堅固に付与することができ、光、洗浄、汗、摩擦、熱に対して優れた堅牢性を有し、時間経過に伴う褪色も少ない染毛剤組成物及びこれを用いた染毛方法の提供。
【解決手段】アルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤を混合して用いる組成物であって、成分(A):式(1)で表されるカチオン性アントラキノン直接染料、及び成分(B):式(2)で表される化合物又はその塩を含有する染毛剤組成物。


〔Rは水素原子又はアミノ基を示し、A-はアニオンを示す。R1は水素原子、メチル基など、R3は水素原子、水酸基などを示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性直接染料と酸化染料を含有する染毛剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
染毛剤には、酸化剤によるカップリング反応で発色する酸化染料のほか、酸性染料、塩基性染料、ニトロ染料等の種々の青色乃至紫色の直接染料が用いられ、濃色系色調を調整することが広く行われている。しかし、いずれの直接染料を用いた場合においても、これら青色乃至紫色の直接染料が洗浄や光によって比較的容易に毛髪から失われてしまい易いため、染毛直後の髪色から変色し易く、これは損傷を受けた毛髪において著しい。
【0003】
そこで光、洗浄、汗、摩擦、熱に対する耐性(堅牢性)の問題を解決する方法の一つとして、トリアルキルアンモニウム基を有するカチオン性アントラキノン直接染料が提案されている(特許文献1)。しかし、この技術提案では多数のカチオン性アントラキノン直接染料が等しく酸化染料と併用可能であることまでは開示されているものの、実際に染毛剤組成物を製造する際には、染毛によって得られる毛髪色調のシャンプー堅牢性等が考慮されなければならず(非特許文献1参照)、そこまで考慮された酸化染料と併用するに好適なカチオン性アントラキノン直接染料が提案されているとは言いがたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1,820,826号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】D.H. Johnson Ed., Hair and Hair Care, pp204-207, Marcel Dekker, New York, 1997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、染色力が高く、毛髪に鮮やかな色を堅固に付与することができ、光、洗浄、汗、摩擦、熱に対して優れた堅牢性を有し、時間経過に伴う褪色も少ない染毛剤組成物及びこれを用いた染毛方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、染毛剤組成物において、特許文献1に記載のカチオン性アントラキノン直接染料のうち特定の化合物と、特定の酸化染料とを併用すれば、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、アルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤を混合して用いる組成物であって、次の成分(A)及び成分(B)を含有する染毛剤組成物を提供するものである。
【0009】
成分(A):一般式(1)で表されるカチオン性アントラキノン直接染料
【0010】
【化1】

【0011】
〔式中、Rは水素原子又はアミノ基を示し、A-はアニオンを示す。〕
成分(B):一般式(2)で表される化合物又はその塩
【0012】
【化2】

【0013】
〔式中、R1は水素原子、メチル基又はヒドロキシエチル基を示し、R2は水素原子、メチル基、フェニル基、ヒドロキシエチル基又は3-(N-ヒドロキシエチル-N-(4-アミノフェニル)アミノ)-2-ヒドロキシプロピル基を示し、R3は水素原子、水酸基、メチル基、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシエトキシ基を示す。〕
【0014】
更に本発明は、上記の染毛剤組成物を毛髪に適用する染毛方法を提供するものである。
【0015】
更に本発明は、上記の染毛剤組成物の第1剤と第2剤を使用前に混合した後、毛髪に適用し放置した後、洗い流し、乾燥することによる染毛方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の染毛剤組成物は、染色力が高く、毛髪に鮮やかな色を堅固に付与することができ、光、洗浄、汗、摩擦、熱に対して優れた堅牢性を有し、時間経過に伴う褪色も少ない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明にいう染毛剤組成物とは、使用直前まで別々に保存する、アルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤よりなる二剤式組成物、更にこれら第1剤と第2剤に加え、酸化助剤を含有する第3剤よりなる三剤式組成物などの多剤式組成物をいい、「全組成」というときは、これらを混合した、実際に毛髪に適用する組成物全体をいう。なお、ここでいう「二剤式」及び「三剤式」には、更に、カチオン性アントラキノン直接染料(A)及び/又は他の直接染料を含有するブースター液を併用した態様も含まれるものとし、同様に「二剤式」、「三剤式」というものとする。
【0018】
〔成分(A)〕
一般式(1)において、アニオンA-としては、塩化物イオン、硫酸水素イオン、メチル硫酸イオン、酢酸イオン、1/2硫酸イオンが挙げられる。好ましくはメチル硫酸イオンである。カチオン性アントラキノン直接染料(A)は、より具体的には下記化合物(A-1)及び化合物(A-2)から選ばれ、(A-1)がより好ましい。
【0019】
【化3】

【0020】
これらはどちらか一方を単独で又は双方を組み合わせて用いることができる。成分(A)の含有量は、全組成中の0.01〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.02〜4質量%、更に好ましくは0.05〜3質量%である。
【0021】
〔成分(B)〕
本発明の染毛剤組成物においては、カチオン性アントラキノン直接染料(A)とともに、酸化染料(B)として一般式(2)で表される化合物又はその塩を含有する。これらの併用により、直接染料単独あるいは酸化染料単独では得られない、極めて鮮明でしかも堅牢性の高く濃色系色調での染色が可能となる。より具体的には、以下のような酸化染料を挙げることができる。
【0022】
【化4】

【0023】
酸化染料(B)は、遊離塩基でも塩であってもよく、塩としては塩酸塩、硫酸塩又は酢酸塩が好ましい。具体的には、トルエン-2,5-ジアミン(B-2)、パラフェニレンジアミン(B-1)が好ましい。酸化染料(B)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、それらの含有量は、全組成中の0.1〜5質量%が好ましく、更には0.5〜3質量%が好ましい。
【0024】
〔その他の染料〕
本発明の染毛剤組成物には、成分(A)以外の直接染料を配合して色調を変化させることができる。成分(A)以外の直接染料としては、酸性染料、塩基性染料、ニトロ染料、分散染料、カチオン染料等の公知の直接染料を用いることができる。直接染料としては、例えば、青色1号、紫色401号、黒色401号、だいだい色205号、赤色227号、赤色106号、黄色203号、黄色403号の(1)、酸性橙3、2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、3-ニトロ-p-ヒドロキシエチルアミノフェノール、4-ニトロ-o-フェニレンジアミン、4-アミノ-3-ニトロフェノール、4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノール、HC青2、HC橙1、HC赤1、HC黄2、HC黄4、HC黄5、HC赤3、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、分散紫1、分散青1、分散黒9、塩基性青99、塩基性茶16、塩基性茶17、塩基性赤76、塩基性黄76、塩基性黄57、塩基性橙31、塩基性赤51などが挙げられる。
【0025】
また、例えば、特開2002-275040号公報、特開2003-107222号公報、特開2003-107223号公報、特開2003-113055号公報、特開2003-342139号公報、特開2004-107343号公報、特開2004-155746号公報、特開2004-262888号公報、特開2006-182653号公報に記載されている直接染料も加えることができる。
【0026】
他の直接染料を併用する場合には、カチオン性アントラキノン直接染料(A)と他の直接染料の合計含有量が、全組成中に0.05〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が更に好ましい。
【0027】
本発明の染毛剤組成物には、更にインドール類、インドリン類等に代表される自動酸化型染料を加えることもできる。
【0028】
カチオン性アントラキノン直接染料(A)、酸化染料(B)、他の直接染料及び自動酸化型染料の全含有量は、全組成中の0.2〜25質量%が好ましく、0.25〜20質量%がより好ましく、0.5〜10質量%が更に好ましい。
【0029】
〔成分(C)〕
本発明の染毛剤組成物は、界面活性剤(C)を含有することができる。界面活性剤としては、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン界面活性剤のいずれを使用することもできる。
【0030】
カチオン界面活性剤としては、モノ長鎖アルキル四級アンモニウム塩が好ましく、具体的には、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アラキルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0031】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、高級脂肪酸ショ糖エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸モノ又はジエタノールアミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、アルキルサッカライド系界面活性剤、アルキルアミンオキサイド、アルキルアミドアミンオキサイド等が挙げられる。
【0032】
両性界面活性剤としてはイミダゾリン系、カルボベタイン系、アミドベタイン系、スルホベタイン系、ヒドロキシスルホベタイン系、アミドスルホベタイン系等が挙げられる。
【0033】
アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホ脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、スルホコハク酸エステル等が挙げられる。アルキルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が挙げられる。これら界面活性剤のアニオン性残基の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;炭素数2又は3のアルカノール基を1〜3個有するアルカノールアミン(例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)が挙げられる。
【0034】
界面活性剤は、単独で又は2種以上用いることができ、その含有量は制限されないが、例えば、全組成中の0.05〜20質量%が好ましく、0.1〜18質量%がより好ましく、0.5〜15質量%が更に好ましい。
【0035】
〔アルカリ剤〕
本発明の染毛剤組成物の第1剤は、アルカリ剤を含有する。アルカリ剤としては、アンモニア及びその塩;モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノブタノール等のアルカノールアミン及びその塩;1,3-プロパンジアミン等のアルカンジアミン及びその塩;炭酸グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩等が挙げられる。
【0036】
上記アルカリ剤のうち、アンモニア、アルカノールアミン及びそれらの塩が好ましい。アンモニウム塩としては、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムが好ましく、アルカノールアミン及びその塩としてはモノエタノールアミン及びその塩が好ましい。更には、これらの含有量が下記範囲であることが最も好ましい。全組成物中のアンモニア及びその塩をアンモニアとして換算した場合の含有量(X)と、モノエタノールアミン及びその塩をモノエタノールアミンとして換算した場合の含有量(Y)の合計が、十分な染毛・脱色効果の点、及び毛髪損傷や頭皮刺激、嗅覚刺激の低減の点から、全組成物中の0.05〜15質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.2〜5質量%であることが更に好ましい。また、X/Yの質量比が、0.01:1〜2:1であることが好ましく、0.02:1〜1:1がより好ましく、0.05:1〜0.5:1であることが更に好ましい。
【0037】
〔酸化剤〕
本発明の染毛剤組成物の第2剤は、酸化剤を含有する。カチオン性アントラキノン直接染料(A)は、酸化剤に対して安定であり、酸化剤を混合した後に毛髪に適用することにより染色と脱色が同時に行われ、鮮やかな染色が得られる。
【0038】
酸化剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;過ホウ酸ナトリウム等の過ホウ酸塩;過炭酸ナトリウム等の過炭酸塩;臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム等の臭素酸塩などが挙げられる。なかでも、毛髪に対する脱色性及び酸化剤自体の安定性及び有効性の点から、過酸化水素が好ましい。また、過酸化水素と共に、酸化助剤として他の酸化剤を組み合わせて用いることもできる。この場合、酸化助剤を含有する組成物を第3剤とし、三剤式染毛剤組成物とすることができる。酸化助剤としては、過硫酸塩が好ましい。
【0039】
酸化剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その含有量は、全組成中の0.5〜30質量%が好ましく、更には1〜20質量%が好ましい。過酸化水素と過硫酸塩とを組み合わせて用いる場合には、過酸化水素の含有量が全組成中の0.5〜10質量%であり、過硫酸塩の含有量が全組成中の0.5〜25質量%であり、両者の合計の含有量が1〜30質量%であるのが好ましい。
【0040】
本発明の染毛剤組成物において、アルカリ剤、カチオン性アントラキノン直接染料(A)及び酸化染料(B)を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤の混合割合は、容積比で2:1〜1:3の範囲であるのが好ましい。
【0041】
〔コンディショニング成分〕
本発明の染毛剤組成物は、毛髪への適用に好適なコンディショニング成分を含むことができる。コンディショニング成分は、染毛剤組成物に溶解又は分散可能なポリマー又はオイル類であり、リンス時又は水やシャンプーで希釈された時に毛髪へ付着する。
【0042】
コンディショニング成分を用いる場合、その配合量は、全組成中の0.01〜30質量%が好ましく、0.05〜20質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が更に好ましい。
【0043】
本発明の染毛剤組成物に使用される好適なコンディショニング成分としては、一般にカチオン性ポリマー、シリコーン類、高級アルコール、有機コンディショニングオイル(例えば、炭化水素オイル類、ポリオレフィン、脂肪酸エステル類)が挙げられる。
【0044】
・カチオン性ポリマー
カチオン性ポリマーとは、カチオン基又はカチオン基にイオン化され得る基を有するポリマーをいい、全体としてカチオン性となる両性ポリマーも含まれる。すなわち、カチオン性ポリマーとしては、ポリマー鎖の側鎖にアミノ基又はアンモニウム基を含むか、又はジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含むもの、例えばカチオン化セルロース、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体、4級化ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらのうち、シャンプー時の柔らかさ、滑らかさ及び指の通り易さ、乾燥時のまとまり易さ及び保湿性という効果及び剤の安定性の点から、ジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含むポリマー、4級化ポリビニルピロリドン、カチオン化セルロースが好ましく、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体、カチオン化セルロースがより好ましい。
【0045】
ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体の具体例としては、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド重合体(ポリクオタニウム-6、例えばマーコート100;Nalco社)、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド/アクリル酸共重合体(ポリクオタニウム-22、例えばマーコート280、同295;Nalco社)、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド/アクリル酸アミド共重合体(ポリクオタニウム-7、例えばマーコート550;Nalco社)等が挙げられる。
【0046】
4級化ポリビニルピロリドンの具体例としては、ビニルピロリドン(VP)とメタクリル酸ジメチルアミノエチルの共重合体と硫酸ジエチルから得られる4級アンモニウム塩(ポリクオタニウム-11、例えばガフコート734、同755、同755N(以上、アイエスピー・ジャパン社))等が挙げられる。
【0047】
カチオン化セルロースの具体例としては、ヒドロキシエチルセルロースに塩化グリシジルトリメチルアンモニウムを付加して得られる4級アンモニウム塩の重合体(ポリクオタニウム-10、例えばレオガードG、同GP(以上、ライオン社)、ポリマーJR-125、同JR-400、同JR-30M、同LR-400、同LR-30M(以上、Amerchol社))、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロリド共重合体(ポリクオタニウム-4、例えばセルコートH-100、同L-200(以上、ナショナルスターチアンドケミカル社))等が挙げられる。
【0048】
カチオン性ポリマーは、2種以上を併用してもよい。また、カチオン性ポリマーは、含有量が多いほど効果が高くなるが、多すぎると安定性不良、剤単独での又は混合時の粘度低下を引き起こす。これらの点、及び感触向上の点から、カチオン性ポリマーの含有量は、全組成中の0.001〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.05〜5質量%が更に好ましい。
【0049】
・シリコーン類
本発明の染毛剤組成物は、優れた使用感を付与するために、シリコーン類を含有することが好ましい。シリコーン類としては、ジメチルポリシロキサン類、変性シリコーン類(例えば、アミノ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等)が挙げられるが、ジメチルポリシロキサン類、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーンが好ましい。
【0050】
ジメチルポリシロキサン類としては、環状又は非環状のジメチルシロキサン重合体であれば良く、例えば、SH 200シリーズ、BY22-019、BY22-020、BY11-026、BY22-029、BY22-034、BY22-050A、BY22-055、BY22-060、BY22-083、FZ-4188(以上、東レ・ダウコーニング社)KF-9008、KM-900シリーズ、MK-15H、MK-88(以上、信越化学工業社)等が挙げられる。
【0051】
ポリエーテル変性シリコーンとしては、ポリオキシアルキレン基を有するシリコーン類であれば良く、ポリオキシアルキレン基を構成する基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基を挙げることができる。より具体的には、例えば、KF-6015、KF-945A、KF-6005、KF-6009、KF-6013、KF-6019、KF-6029、KF-6017、KF-6043、KF-353A、KF-354A、KF-355A(以上信越化学工業社)、FZ-2404、SS-2805、FZ-2411、FZ-2412、SH3771M、SH3772M、SH3773M、SH3775M、SH3749、SS-280Xシリーズ、BY22-008M、BY11-030、BY25-337(以上、東レ・ダウコーニング社)等が挙げられる。
【0052】
アミノ変性シリコーンとしては、アミノ基又はアンモニウム基を有するシリコーン類であればよく、例えば、末端水酸基の全て又は一部がメチル基等で封鎖されたアミノ変性シリコーンオイル、末端が封鎖されていないアモジメチコンなどがある。好ましいアミノ変性シリコーンとしては、以下の一般式(S)で表されるものが挙げられる。
【0053】
【化5】

【0054】
〔式中、R'は水酸基、水素原子又はRXを示し、RXは置換又は非置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基を示し、DはRX、基R"−(NHCH2CH2)mNH2、基ORX又は水酸基を示し、R"は炭素数1〜8の二価炭化水素基を示し、mは0〜3の数を示し、p及びqはその和が数平均で、10以上20000未満、好ましくは20以上3000未満、より好ましくは30以上1000未満、更に好ましくは40以上800未満となる数を示す。〕
【0055】
アミノ変性シリコーンの好適な市販品の具体例としては、SF8452C、SS-3551(以上、東レ・ダウコーニング社)、KF-8004、KF-867S、KF-8015(以上、信越化学工業社)等のアミノ変性シリコーンオイルや、SM8704C、SM8904、BY22-079、FZ-4671、FZ-4672(以上、東レ・ダウコーニング社)等のアモジメチコンエマルション等が挙げられる。
【0056】
これらのシリコーン類の本発明染毛剤組成物への総含有量は、十分な効果とベタツキの抑制の点から、全組成中の0.02〜40質量%が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましく、0.2〜15質量%が更に好ましい。
【0057】
本発明の染毛剤組成物がシリコーン類及びカチオン性ポリマーを含有する場合、全組成中のカチオン性ポリマー(アクティブ量):シリコーン類の質量比は、100:1〜1:50が好ましく、50:1〜1:10がより好ましい。
【0058】
・高級アルコール
本発明の染毛剤組成物は、感触改善、安定性の観点から、第1剤、第2剤及び第3剤のいずれか1以上に、高級アルコールを含有することが好ましい。高級アルコールの含有により、界面活性剤と構造体を形成して染毛剤組成物の分離を防ぐと共に、すすぎ時の感触を改善する効果がある。
【0059】
高級アルコールとしては、炭素数8〜22のものが好ましく、炭素数16〜22のものがより好ましい。具体的には、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0060】
高級アルコールは、2種以上を併用してもよく、その含有量は、全組成中の0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
【0061】
・有機コンディショニングオイル
本発明の染毛剤組成物は、優れた使用感を付与するために、有機コンディショニングオイルを含有することも好ましい。コンディショニング成分として好適に用いられる有機コンディショニングオイルは、好ましくは低粘度、水不溶性の液体であって、少なくとも炭素数10を有する炭化水素オイル類、ポリオレフィン、脂肪酸エステル類、脂肪酸アミド類、ポリアルキレングリコール類及びこれらの混合物より選択される。このような有機コンディショニングオイルの粘度は、40℃における測定において、好ましくは1〜200mPa・s、より好ましくは1〜100mPa・s、更に好ましくは2〜50mPa・sである。
【0062】
炭化水素オイル類としては、例えば環状炭化水素や直鎖脂肪族炭化水素(飽和又は不飽和)や分枝鎖肪族炭化水素(飽和又は不飽和)が挙げられ、これらのポリマーや混合物も含まれる。直鎖炭化水素オイルは、好ましくは炭素数12〜19である。分枝鎖炭化水素オイルは、炭化水素ポリマーを含み、好ましくは炭素数19を超えるものである。
【0063】
ポリオレフィンとしては、液状ポリオレフィン、より好ましくは液状ポリ-α-オレフィン、最も好ましくは、水素化液状ポリ-α-オレフィンである。ここで用いられるポリオレフィンは、炭素数4〜14、好ましくは炭素数6〜12のオレフィンモノマーを重合して調製する。
【0064】
脂肪酸エステル類としては、例えば少なくとも炭素数10の脂肪酸エステルが挙げられる。これら脂肪酸エステルの例としては、脂肪酸とアルコールから誘導される炭化水素鎖を有するエステル(例えば、モノエステル、多価アルコールエステル、ジ−及びトリカルボン酸エステル)が挙げられる。これら脂肪酸エステルの炭化水素基は、アミド基やアルコキシ基等の他の相溶性官能基を置換基として有していてもよく、またそれらに共有結合していてもよい。より具体的には、炭素数10〜22の脂肪族鎖を有する脂肪酸のアルキル及びアルケニルエステル、炭素数10〜22のアルキル及び/又はアルケニルアルコールから誘導された脂肪族鎖を有する脂肪族アルコール・カルボン酸エステル、及びこれらの混合物が好適に用いられる。このような好ましい脂肪酸エステルの具体例としては、イソプロピルイソステアレート、ヘキシルラウレート、イソヘキシルラウレート、イソヘキシルパルミテート、イソプロピルパルミテート、デシルオレエート、イソデシルオレエート、ヘキサデシルステアレート、デシルステアレート、ジヘキサデシルアジペート、ラウリルラクテート、ミリスチルラクテート、セチルラクテート、オレイルステアレート、オレイルオレエート、オレイルミリステート、ラウリルアセテート、セチルプロピオネート及びジオレイルアジペートが挙げられる。
【0065】
脂肪酸アミド類としては、例えば脂肪酸とアルキルアミンあるいはアルカノールアミンから誘導される炭化水素鎖を有するアミドが挙げられる。これら脂肪酸アミドの炭化水素基は、アミド基やアルコキシ基等の置換基を有していてもよく、またそれらに共有結合していてもよい。このような好ましい脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ヤシ脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド等が挙げられる。
【0066】
ポリアルキレングリコール類としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールを挙げることができ、両者の混合物であっても、酸化エチレンと酸化プロピレンとの共重合体であってもよい。
【0067】
有機コンディショニングオイルは、2種以上を併用してもよく、その含有量は、全組成中の0.1〜25質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましい。
【0068】
〔媒体〕
本発明の染毛剤組成物には、媒体として、水及び必要により有機溶剤が使用される。有機溶剤としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級脂肪族アルコール類;ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール等の芳香族アルコール類;プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン等のポリオール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類が挙げられる。
【0069】
有機溶剤の含有量は、制限されないが、例えば、全組成中の0.05〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.5〜10質量%が更に好ましい。
【0070】
〔その他の成分〕
本発明の染毛剤組成物には、上記成分のほかに通常化粧品原料として用いられる他の成分を加えることができる。このような成分としては、動植物油脂、高級脂肪酸類、天然又は合成の高分子、エーテル類、タンパク質、タンパク質加水分解物、アミノ酸類、防腐剤、キレート剤、安定化剤、酸化防止剤、植物性抽出物、生薬抽出物、紫外線吸収剤、ビタミン類、色素、香料等が挙げられる。
【0071】
〔pH〕
本発明の染毛剤組成物に用いるカチオン性アントラキノン直接染料(A)は、通常の染毛剤で用いられるpH2〜14の広い範囲で保存安定性に優れており、通常の酸化染毛剤で採られているpH範囲で使用することができるが、染毛剤組成物の染毛・脱色効果と皮膚刺激性の点から、使用時(混合時)の全組成のpH(25℃)は5〜14が好ましく、更に6〜12が好ましい。また、混合前の第1剤のpHは7〜14が好ましく、混合前の第2剤のpHは2〜5が好ましい。pH調整剤としては、前記アルカリ剤のほか、塩酸、リン酸等の無機酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸等の有機酸、塩酸モノエタノールアミン等の塩酸塩、リン酸二水素一カリウム、リン酸一水素二ナトリウム等のリン酸塩等が使用できる。
【0072】
〔剤型〕
本発明の染毛剤組成物は、アルカリ剤を含有する第1剤と過酸化水素等の酸化剤を含有する第2剤からなる二剤式として提供されることが好ましい。また第1剤及び第2剤に加え、更に酸化助剤を含有する第3剤からなる三剤式とすることもできる。
【0073】
二剤式(又は三剤式)の場合、第1剤と第2剤の剤型は、例えば、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、ムース状などとすることができ、エアゾール形態とすることもできる。本発明の染毛剤組成物は、第1剤と第2剤(三剤式の場合は更に第3剤)を混合し、毛髪に塗布したときに液だれしにくいような粘度になることが望ましい。本発明の染毛剤組成物は、二剤式又は三剤式のいずれにおいても、25℃においてヘリカルスタンド付きB型回転粘度計(B8R型粘度計、トキメック社)で測定した全組成物の粘度が2000〜10万mPa・sであるのが好ましい。ここで、粘度は、ローターT-Cを用い、10rpm、1分間回転させて得られた値である。
【0074】
〔染毛方法〕
本発明の組成物を用いて染毛処理するには、例えば本発明の組成物の第1剤と第2剤(三剤型の場合は更に第3剤)を使用直前に混合した後、毛髪に適用し、1時間以内の所定時間放置後、洗い流し、乾燥すればよい。毛髪への適用温度は15〜45℃、適用時間は3〜50分間が好ましく、5〜40分間がより好ましく、10〜30分間が更に好ましい。この場合、まず染毛剤を水で軽く洗い流した後、アニオン界面活性剤を含有するシャンプーを用いて洗髪し、次いで水洗すると、カチオン性ポリマーは適度に流出し、シリコーン類は適度に毛髪に残留し、良好なコンディショニング効果を示す。シャンプーとしては、ラウレス-1 硫酸ナトリウム、ラウレス-2 硫酸ナトリウム、ラウレス-3 硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤を5〜20質量%程度含有する一般的な水性シャンプーが好適である。
【実施例】
【0075】
実施例1〜3
表1に示す組成からなる第1剤及び表2に示す組成からなる第2剤Aを常法により調製した。得られた第1剤と第2剤Aとをそれぞれ1:1の質量比で混合した後に、以下の染色性評価法によって染色性を評価した。結果を表3に示す。
【0076】
[染色性評価法]
第1剤と第2剤Aの混合物を、浴比(剤:毛髪)=1:1で山羊毛の毛束(ビューラックス社製)に塗布した。30℃で30分放置した後、約40℃の水ですすぎ、市販のシャンプーで洗浄、水洗し、市販のリンスを塗布した後、水ですすぎ、タオルで拭き、乾燥させた。このように処理して得られた毛束の色合いを、色差計(コニカミノルタセンシング社製色彩色差計CR-400)を用いてCIE表色系(L*,a*,b*)で計測し、下記式によりΔE*を算出した。なお、測定は3以上の検体で行い、平均値と各測定値とのブレは±1.2以内であった。その平均値を表3に示した。また、ΔE*が大きいほど、染色性に優れていることを意味する。
【0077】
【数1】

【0078】
〔式中、L*1、a*1及びb*1はそれぞれ染色前のL*、a*及びb*の値を示し、L*2、a*2及びb*2はそれぞれ染色後のL*、a*及びb*値を示す。〕
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【0082】
上記のように、いずれの染毛剤も、山羊毛の毛束を濃色に染色することができた。
また、実施例2の第1剤を50℃で2ヶ月間保存した後に染毛を行った場合にも、同じ色調に染色された。また、生産直後の第1剤を用いて染色した毛束の色調と2ヵ月保存後の第1剤を用いて染色した毛束の色調とは、目視で区別出来ないものであった。
【0083】
[シャンプー堅牢性試験]
表4に示した試験シャンプーの水溶液(10質量%)を100mLガラス壜に充填し、実施例1〜3の染毛剤による染毛で得られた染色毛束各3検体を浸漬し、振蕩攪拌器(40℃、120rpm)中で振盪しながら20分間経時洗髪を行い、シャンプー堅牢性を評価した。この条件で得られる洗髪効果は、日常のシャンプーによる洗髪約1週間分に相当する。
【0084】
【表4】

【0085】
実施例1〜3の染毛剤による染毛で得られた染色毛束は、いずれも僅かに淡色化したが、それぞれ深緑茶色、深青茶色、深紫茶色の色調を保っていた。
【0086】
実施例4〜7
表5に示すクリーム状二剤式染毛剤の第1剤、及び表6に示す共通第2剤Bを調製し、第1剤:共通第2剤Bを1:1の質量比で混合し染毛剤組成物とする。白髪を10%混入した人毛製毛束約1gに対し、これらの染毛剤組成物をそれぞれ等質量塗布し、30分間放置後、水洗及びシャンプー洗浄し、乾燥すると、染色性・シャンプー堅牢性が良好な染色毛が得られる。
【0087】
【表5】

【0088】
【表6】

【0089】
実施例8〜11
表7に示す二剤式染毛剤の第1剤を調製し、第1剤:共通第2剤Bを1:1の質量比で混合し染毛剤組成物とする。白髪を10%混入した人毛製毛束約1gに対し、これらの染毛剤組成物をそれぞれ等質量塗布し、30分間放置後、水洗とシャンプー洗浄し、乾燥すると、染色性・シャンプー堅牢性が良好な染色毛が得られる。
【0090】
【表7】

【0091】
実施例12〜15
表8に示す二剤式染毛剤の第1剤及びブースター液を調製し、第1剤:ブースター液:共通第2剤Bを1:0.1:1の質量比で混合し、染毛剤組成物とする。白髪を10%混入した人毛製毛束約1gに対し、これらの染毛剤組成物をそれぞれ等質量塗布し、30分間放置後、水洗とシャンプー洗浄し、乾燥すると、染色性・シャンプー堅牢性が良好な染色毛が得られる。
【0092】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤を混合して用いる組成物であって、次の成分(A)及び成分(B)を含有する染毛剤組成物。
成分(A):一般式(1)で表されるカチオン性アントラキノン直接染料
【化1】

〔式中、Rは水素原子又はアミノ基を示し、A-はアニオンを示す。〕
成分(B):一般式(2)で表される化合物又はその塩
【化2】

〔式中、R1は水素原子、メチル基又はヒドロキシエチル基を示し、R2は水素原子、メチル基、フェニル基、ヒドロキシエチル基又は3-(N-ヒドロキシエチル-N-(4-アミノフェニル)アミノ)-2-ヒドロキシプロピル基を示し、R3は水素原子、水酸基、メチル基、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシエトキシ基を示す。〕
【請求項2】
更に成分(C)界面活性剤を含有する請求項1記載の染毛剤組成物。
【請求項3】
成分(A)の含有量が全組成の0.01〜5質量%であり、かつ成分(B)の含有量が全組成の0.1〜5質量%である請求項1又は2記載の染毛剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の染毛剤組成物を毛髪に適用して染毛する方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の染毛剤組成物の第1剤と第2剤を使用前に混合した後、毛髪に適用し放置した後、洗い流し、乾燥することによる染毛方法。
【請求項6】
染毛剤を洗い流した後、アニオン界面活性剤を含有するシャンプーを用いて洗髪し、次いで水洗する請求項5に記載の染毛方法。

【公開番号】特開2010−70549(P2010−70549A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190392(P2009−190392)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】