説明

染毛剤組成物

【課題】優れた染毛効果及び白髪かくし効果をもち、かつ持続性が高く、アレルギー性の少ない染毛剤を提供すること。
【解決手段】第1剤及び第2剤からなる二剤式染毛剤組成物であって、
第1剤が、
(i)没食子酸及びその誘導体からなる群から選ばれる1以上、及び/又は、
(ii)サリチル酸及びその誘導体からなる群より選ばれる1以上
を含んでなり、
第2剤が、鉄塩を含んでなり、かつ、
第1剤及び第2剤のうち少なくとも一方が、尿素を含んでいる
組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非酸化型の二剤式染毛剤組成物であって、優れた染毛効果及び白髪かくし効果を奏する染毛剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
染毛剤は、性能の面から、(1)一時染毛料、(2)半永久染毛料、(3)永久染毛剤に大きく分類される。
【0003】
このうち永久染毛剤においてこれまで一般に広く利用されているものは、パラフェニレンジアミンを主体とした酸化染料及びアルカリ剤を配合した第1剤と、酸化剤、主に過酸
化水素水を配合した第2剤とを混合して使用する酸化型の染毛剤である。しかしながら、
酸化型の染毛剤はアルカリ剤及び過酸化水素水の作用により、毛髪にダメージを与えることがある。また一部の酸化染料により強いアレルギー反応が示されることもある。
【0004】
一方、多価フェノール類と金属塩との反応を利用して染毛する、非酸化型の染毛剤も知られている(特許文献1〜7参照)。しかし、これまでの非酸化型の染毛剤において、染毛効果及び白髪かくし効果は十分に満足し得るものではなかった。
【特許文献1】特公昭48−31902号公報
【特許文献2】特開昭53−52633号公報
【特許文献3】特開昭55−154912号公報
【特許文献4】特開昭62−33113号公報
【特許文献5】特開昭64−90117号公報
【特許文献6】特開平4−164017号公報
【特許文献7】特開平5−170629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた染毛効果及び白髪かくし効果を有し、かつその持続性が高く、皮膚障害の少ない染毛剤を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究をすすめた結果、特定の組成の染毛剤組成物が、染毛効果及び白髪かくし効果に優れ、更に皮膚障害も少ない利点を有することを見出し、更に鋭意検討を重ねて本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、以下の染毛剤組成物に関する。
【0008】
第1剤及び第2剤からなる二剤式染毛剤組成物であって、
第1剤が、
(i)没食子酸及びその誘導体からなる群から選ばれる1以上、及び/又は、
(ii)サリチル酸及びその誘導体からなる群より選ばれる1以上
を含んでなり、
第2剤が、鉄塩を含んでなり、かつ、
第1剤及び第2剤のうち少なくとも一方が、尿素を含んでいる
組成物。
【0009】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0010】
本発明の染毛剤組成物は、第1剤及び第2剤からなる二剤式の染毛剤組成物であって、第1剤と第2剤を混合させることで染毛するものである。好ましくは、第1剤を塗布し一
定時間放置後、第2剤を第1剤と混ざり合うように塗布して染毛するものである。
【0011】
また、本明細書において、染毛剤とは、毛髪に色を付ける又は毛髪の色を変えるためのものであり、ヘアダイ、ヘアマニキュア、白髪染め剤などを含むものであり、染毛剤組成物とは、そのような用途に使用するための組成物を意図する。
【0012】
1.没食子酸又はその誘導体、並びに、サリチル酸又はその誘導体
本発明の第1剤は、(i)没食子酸及びその誘導体からなる群から選ばれる1以上、及
び/又は、(ii)サリチル酸及びその誘導体からなる群より選ばれる1以上を含んでい
る。
【0013】
第1剤は、(i)没食子酸及びその誘導体からなる群から選ばれる1以上又は(ii)
サリチル酸及びその誘導体からなる群より選ばれる1以上のいずれかを含むものであって
もよく、(i)及び(ii)の両者を含んでいるものであってもよい。
【0014】
(i)没食子酸及びその誘導体、及び/又は、(ii)サリチル酸及びその誘導体は、鉄塩との反応により発色して、毛髪に色素を固定するために配合される。
【0015】
(i)没食子酸又はその誘導体
没食子酸の誘導体としては、例えば、没食子酸のアルキルエステルが挙げられる。没食子酸のアルキルエステルとしては、例えば、炭素数1〜10、好ましくは2〜5の直鎖状又は分岐状のアルキルエステルが挙げられる。例えば、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸イソアミルなどが含まれる。
【0016】
没食子酸又はその誘導体は、公知の方法に従って化学的に合成して得られるものでもよく、植物から単離して得られるものであってもよい。また植物から単離したものに化学的な合成を加えたものであってもよい。また、植物から得られる没食子酸又はその誘導体を含有するエキスをそのまま用いてもよい。例えば、マメ科植物タラ由来の没食子酸やウルシ科ヌルデに発生する五倍子由来の没食子酸又はそれらを含有するエキスなどを用いることができる。またそれらの没食子酸を化学的にエステル化して得られた誘導体を用いることもできる。
【0017】
没食子酸又はその誘導体の配合量は、本発明の効果を奏する範囲内で適宜設定し得るが、第1剤全量に対し0.1〜10重量%程度、好ましくは0.2〜5重量%程度、より好ましくは0.5〜3重量%程度である。
【0018】
この範囲であれば染毛性、使用性、製剤の安定性等の効果に優れる。
【0019】
(2)サリチル酸又はその誘導体
サリチル酸の誘導体には、サリチル酸のエステルや塩が含まれる。サリチル酸の塩としては、サリチル酸のアルカリ金属塩が挙げられる。具体的にはサリチル酸ナトリウムが挙げられる。またサリチル酸のエステルとしては、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキルエステルやフェニルエステルが挙げられる。具体的にはサリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、サリチル酸メチルなどが挙げられる。
【0020】
サリチル酸又はその誘導体は1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
サリチル酸又はその誘導体の配合量には、所望の効果を奏することを目的として適宜設定し得るが、第1剤全量に対し0.1〜3重量%程度、好ましくは0.2〜2重量%程度である。
【0021】
この範囲であれば、染毛性、使用性、製剤の安定性等の効果に優れる。
【0022】
第1剤には、没食子酸及びその誘導体並びにサリチル酸及びその誘導体以外に、他の多価フェノール又はその誘導体を1種又は2種以上用いてもよい。他の多価フェノールとしては、ヘマテイン、タンニン酸、ピロガロール、ヘマトキシリン、カテコールなどが挙げられる。特にヘマテイン、タンニン酸等が挙げられる。それらの配合量は、本発明の効果を奏する範囲内で適宜設定することができるが、通常、第1剤全量に対し、0.01〜2重量
%程度、好ましくは0.1〜1重量%程度である。
【0023】
第1剤のpHは、6.5〜9.0、好ましくは7.5〜8.5程度である。この範囲であると十分な染毛効果が得られ、皮膚刺激の恐れも少ない。
【0024】
2.鉄塩
本発明は、第2剤に、鉄塩を含んでいる。
【0025】
鉄塩は、没食子酸、サリチル酸及びそれらの誘導体との反応により発色して、毛髪に色素を固定するために配合される。
【0026】
鉄塩としては、例えば、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、酢酸第一鉄、リン酸第一鉄、シュウ酸第一鉄などを挙げることができる。
【0027】
鉄塩の量は、本発明の効果を奏する範囲内で適宜設定し得るが、通常第2剤全量に基づき、0.5〜10重量%程度、好ましくは1〜6重量%程度である。
【0028】
第2剤のpHは、2.0〜4.0、好ましくは2.5〜3.5程度である。この範囲であると十分な染
毛効果が得られ、製品の安定性を損ねる恐れも少ない。
【0029】
3.尿素
本発明の組成物は、第1剤と第2剤のいずれか一方又は両方に尿素を含んでいる。尿素は、染毛効果や白髪かくし効果を高めるために配合される。
【0030】
尿素の配合量は、本発明の効果を奏する範囲内で適宜設定し得るが、第1剤のみに配合する場合、第1剤全体に対し、通常1〜20重量%程度、好ましくは4〜10重量%程度である。第2剤のみに配合する場合、第2剤全体に対し、通常1〜20重量%程度、好ましくは4〜10重量%程度である。また第1剤と第2剤の両者に配合する場合、それらの合計で組成物全体に対し、通常1〜20重量%程度、好ましくは4〜10重量%程度である。
【0031】
尿素は特に第1剤に含有されていることが好ましい。第1剤に尿素を含有することで、染毛効果及び白髪かくし効果がより高くなる。
【0032】
4.他の成分
本発明の第1剤及び/又は第2剤には、所望に応じ、本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の染毛剤組成物に用いられている他の成分を適宜添加することができる。
【0033】
他の成分としては、例えば、基剤、界面活性剤、酸化防止剤、pH調整剤、湿潤剤、溶剤等を挙げることができる。
【0034】
基剤としては、高級アルコール類、炭化水素、脂肪酸エステル、植物油、脂肪酸などを挙げることができる。
【0035】
高級アルコール類としては、例えば、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキシルドデカノール、オクチルドデカノール等を挙げることができる。
炭化水素としては、パラフィン、流動パラフィン、ワセリン等を挙げることができる。
脂肪酸エステルとしては、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル等を挙げることができる。
植物油としては、オリーブ油、パーシック油、アルモンド油、アボガド油等を挙げることができる。
脂肪酸としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等を挙げることができる。
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びその塩、アルキルグルコシド、N−アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホン酸塩、アルキルアンモニウム塩、アルキルアミドプロピルベタイン等を挙げることができる。
【0036】
酸化防止剤としては、アスコルビン酸及びその誘導体、亜硫酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0037】
pH調整剤としては、クエン酸、リン酸、アンモニア、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、リン酸アンモニウム、リン酸一水素二アンモニウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等を用いることができる。
【0038】
湿潤剤としては、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソ
ルビトール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、アミノ酸、植物油等を挙げることができる。
【0039】
増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース等を挙げることができる。
【0040】
溶剤としては、精製水を挙げることができる。また、没食子酸の誘導体を溶かすことなどを目的として、1,3-ブチレングリコールやプロピレングリコール、グリセリンを用いることもできる。
【0041】
これらは1種用いてもよく2種以上用いてもよい。また、それらの配合量は、本発明の効果を奏する範囲内で適宜設定することができる。
【0042】
5.二剤式染毛剤組成物
本発明の染毛剤組成物は、第1剤及び第2剤からなる二剤式の染毛剤組成物であって、第1剤と第2剤を混合させることで染毛する。
【0043】
二剤式であることにより、色素を構成する没食子酸又はその誘導体或いはサリチル酸又はその誘導体や、鉄塩が毛髪内部に入りやすく、毛髪内部でそれらの錯体が初めて形成されるため、染毛効果が高く、かつ、染毛後それらの色素が抜け落ちにくいという利点を有する。
【0044】
第1剤と第2剤の形態は、適宜設定し得るが、塗布のしやすさなどの点から、クリーム状であることが好ましい。
【0045】
第1剤及び第2剤の調製方法も、特に限定されず、常法に従って行うことができるが、例えば、第1剤の場合、次のように調製することができる:
界面活性剤等の油相成分と、没食子酸又はその誘導体或いはサリチル酸又はその誘導体等の水相成分とを、別々に量り取り、それぞれ十分に加熱溶解させた後、油相成分によくかきまぜながら水相成分を添加して乳化する。その後冷却し、pH調整剤及び水に溶かした尿素を添加して仕上げることができる。また実施例に記載の方法に従って調製することもできる。
【0046】
また、第2剤の場合、次のように調製することができる:
界面活性剤の油相成分と、鉄塩、pH調整剤等の水相成分とを別々に量り取り、それぞれ十分に加熱溶解させた後、油相成分をよくかきまぜながら水相成分を添加して乳化する。その後冷却し、水に溶かした尿素を添加して仕上げることができる。また、実施例に記載の方法に従って調製することもできる。
【0047】
第1剤の実施態様の一例としては、
第1剤の全量に対して、
(i)没食子酸及びその誘導体からなる群から選ばれる1以上を、第1剤全量に対し0.1〜10重量%程度、好ましくは0.2〜5重量%程度、より好ましくは0.5〜3重量%程度含有
し、及び/又は
(ii)サリチル酸及びその誘導体からなる群より選ばれる1以上を、第1剤全量に対
し0.1〜3重量%程度、好ましくは0.2〜2重量%程度含有し、かつ、
(iii)尿素を1〜20重量%程度、好ましくは4〜10重量%程度
含有してなるものである。
【0048】
第2剤の実施態様の一例としては、
第2剤全量に対し、
鉄塩を0.5〜10重量%程度、好ましくは1〜6重量%程度含有し、更に第1剤が尿素を含
有していない場合、尿素を1〜20重量%程度、好ましくは4〜10重量%程度
含有してなるものである。
【0049】
また、二剤式染毛組成物の実施態様の一例としては、
第1剤及び第2剤からなる二剤式染毛剤組成物であって、
第1剤が、
(i)没食子酸及びその誘導体からなる群から選ばれる1以上を、第1剤全量に対し0.1〜10重量%程度、好ましくは0.2〜5重量%程度、より好ましくは0.5〜3重量%程度含有
し、及び/又は
(ii)サリチル酸及びその誘導体からなる群より選ばれる1以上を、第1剤全量に対
し0.1〜3重量%程度、好ましくは0.2〜2重量%程度含有してなり、
第2剤が、鉄塩を第2剤全量に対し、0.5〜10重量%程度、好ましくは1〜6重量%程度
含有してなり、かつ、
第1剤と第2剤の少なくとも1一方が、尿素を、第1剤及び/又は第2剤全量に対して1〜20重量%程度、好ましくは4〜10重量%程度含有してなる組成物
が挙げられる。
【0050】
第1剤と第2剤の割合は、本発明の効果を奏する範囲内で適宜設定し得るが、通常、重量比で、第1剤:第2剤=1:0.5〜1:2程度、好ましくは約1:1程度である。
【0051】
本発明の二剤式染毛剤組成物は、第1剤と第2剤を混合して使用する。例えば、第1剤を先に毛髪に塗布し、次いで、第2剤を塗布して、混合させることにより染色して使用することができる。
【0052】
具体的には、第1剤を先に塗布して一定時間放置後、第2剤を塗布し一定時間放置後、洗い流して使用する。
【0053】
毛髪に対する塗布量は、所望に応じて適宜設定し得るが、長さ30cm程度の全頭で、第1
剤を50〜90g程度、第2剤が50〜90g程度、好ましくは、第1剤を70g程度、第2剤が70g程
度である。
【0054】
尚、本発明の染毛剤組成物には、染毛及び染毛剤組成物に関する公知の技術を必要に応じて付加し得るものである。
【発明の効果】
【0055】
本発明の染毛剤組成物によると、1回の染毛施術であっても持続性の高い染毛効果及び
白髪かくし効果を得ることができる。
【0056】
また、本発明の染毛剤組成物は、アレルギー反応、換言すると皮膚障害が少なく、ジアミン系酸化染料によるかぶれが生じる使用者にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下、本発明をより詳細に説明するために実施例を用いて説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0058】
尚、実施例及び比較例では、以下の材料を用いた。
没食子酸:マメ科植物タラ由来没食子酸(岩手ケミカル株式会社製)
没食子酸プロピル:マメ科植物タラ由来没食子酸のエステル(岩手ケミカル株式会社)
サリチル酸ナトリウム:(株式会社APIコーポレーション製)
L-アスコルビン酸:L(+)−アスコルビン酸 (和光純薬工業株式会社製)
炭酸水素アンモニウム:炭酸水素アンモニウム (和光純薬工業株式会社製)
強アンモニア水:アンモニア水(濃度28〜30%)(和光純薬工業株式会社製)
水酸化カリウム:水酸化カリウムペレット(和光純薬工業株式会社製)
硫酸第一鉄:硫酸鉄(II)七水和物(和光純薬工業株式会社製)
塩化第一鉄:塩化鉄(II)四水和物(和光純薬工業株式会社製)
尿素:尿素(和光純薬工業株式会社製)
プロピレングリコール:プロピレングリコール(旭硝子株式会社製)
ヘマテイン:ヘマテインR(丸善製薬株式会社製)
セタノール:セタノールSX(高級アルコール工業株式会社製)
ピロガロール:ピロガロールN(大日本製薬株式会社製)
ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル:NIKKOL BC-20(日本サーファクタント工業株式会社製)
【0059】
試験例1(染毛効果及び白髪かくし効果)
表3〜5に示す第1剤、第2剤を以下のように調製し、その染毛効果及び白髪かくし効果を評価した。
【0060】
第1剤の調製方法
実施例1〜18及び比較例1〜3、5〜7及び9においては、プロピレングリコールと、表3〜
5に示す没食子酸及び/又は没食子酸プロピルを混ぜた中に、50℃の精製水を加え、更にサリチル酸ナトリウム及び/又はヘマテインを加えた後、L-アスコルビン酸を加えて溶かした。得られた溶液を常温まで攪拌冷却した後、pH調整剤として炭酸水素アンモニウム
及び水酸化カリウムを加えた。実施例1〜16及び18においては、更に尿素を加えた。得られた溶液を十分に攪拌して仕上がりとした。
【0061】
比較例4、8及び10においては、プロピレングリコールに、50℃の精製水を加え、更に、L-アスコルビン酸を加えて溶かした。次いで、得られた溶液を常温まで攪拌冷却した後、pH調整剤として炭酸水素アンモニウム及び水酸化カリウムを加えた。比較例10において
は更に尿素を加えた。得られた溶液を十分に攪拌して仕上がりとした。
【0062】
実施例及び比較例の組成成分の種類と割合は表3〜5に示すとおりである。pH調整剤である炭酸水素アンモニウム及び水酸化カリウムの量は、得られた溶液のpHが7.5になるよ
うに調整した。
【0063】
第2剤の調製方法
常温の精製水に、硫酸第一鉄又は塩化第一鉄を加え、更に、L-アスコルビン酸を加え
た。実施例17及び18においては、更に尿素を加えた。得られた溶液を、攪拌溶解して仕上げた。得られた溶液のpHは3程度であった。
【0064】
染毛効果及び白髪かくし効果の確認試験は以下のようにして行った。
【0065】
染毛効果
シャンプー及びリンス処理した毛束1g(白髪率100%)に第1剤を2g塗布し、30℃、相対湿度65%下で15分間放置後、第2剤を2g塗布し、再度30℃、相対湿度65%下で15分間放置
した。その後、シャンプー及びリンス処理し、ドライヤーで毛束を乾燥させた。以上の工程後、専門のパネラー5名で肉眼にて染毛効果を評価した。評価は以下の表1に示す基準
により点数を付けて行い、5名の評価の平均値を、染毛効果として、表3〜5に示した。
染毛効果の評価が1.5未満であると実用上好ましくない。一方、評価が2.0以上であると実用上より好ましい。
【0066】
【表1】

【0067】
白髪かくし効果
シャンプー及びリンス処理した毛束2g(白髪率20%)に第1剤を4g塗布し、30℃、相対
湿度65%下で15分間放置後、第2剤を4g塗布し、再度30℃、相対湿度65%下で15分間放置
した。その後、シャンプー及びリンス処理し、ドライヤーで毛束を乾燥させた。以上の工程後、専門のパネラー5名で肉眼にて染毛効果を評価した。評価は以下の表2に示す基準
により点数を付けて行い、5名の評価の平均値を、白髪かくし効果として、表3〜5に示
した。
【0068】
白髪かくし効果は、評価が1.0未満であると実用上好ましくない。一方、評価が1.5以上
、特に2.0以上であると実用上より好ましい。
【0069】
【表2】

【0070】
表3に比較例の組成とその確認試験の結果を示す。また、表4及び表5に実施例の組成とその確認試験の結果を示す。
【0071】
尚、表3〜5中、第1剤の項目における数値は、第1剤全体を100重量%とした場合の
各成分の配合割合(重量%)を示す。また、第2剤の項目における数値は第2剤全体を100重量%とした場合の各成分の配合割合(重量%)を示す。
【0072】
【表3】

【0073】
【表4】

【0074】
【表5】

【0075】
表3〜5の結果から明らかなように、本発明の組成物(実施例1〜18)においては良好
な染毛効果が得られることがわかった。一方、いずれかの成分を欠く場合(比較例1〜10
)は良好な染毛効果が得られないことがわかった。
【0076】
また、表3〜5の結果から明らかなように、本発明の組成物では良好な白髪かくし効果を示すことがわかった。特に尿素を4〜10%含有する本発明の組成物(実施例3〜16)にお
いて良好な白髪かくし効果を示すことがわかった。
【0077】
試験例2(染毛効果及び白髪かくし効果の持続性)
下記表6に示す組成を有する第1剤(A)又は(B)、及び表7に示す組成を有する第2剤からなる染毛剤組成物を以下のように調製し、染毛効果及び白髪かくし効果の持続性を、被験者5名の人頭によるハーフヘッドテストにより評価した。
【0078】
(第1剤)
セタノール、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテルをビーカー1に量り取り、70℃ま
で加熱し溶解した。別のビーカー2にプロピレングリコールと、没食子酸又はピロガロー
ルを入れ、よく混ぜた後、70℃の精製水、L-アスコルビン酸を加えて攪拌溶解した。ビーカー1にビーカー2を加え乳化し、攪拌しながら冷却し、炭酸水素アンモニウム、水酸化カリウムを加えpHを7.5に調整し、精製水に溶かした尿素を添加して仕上げた。
【0079】
(第2剤)
セタノール、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテルをビーカー3に量り取り、70℃ま
で加熱し溶解した。別のビーカー4に硫酸第一鉄、L-アスコルビン酸を量り取り、70℃の
精製水を加えて攪拌溶解した。ビーカー3にビーカー4を加え乳化し、攪拌しながら冷却し仕上げた。
【0080】
【表6】

【0081】
【表7】

【0082】
(ハーフヘッドテスト)
被験者5名は全頭の白髪率が50%程度、長さ30cm程度の人を選んだ。上記表6に示す第
1剤(A)及び(B)並びに表7に示す第2剤を調製し、被験者の左頭部に第1剤(A)
を、右頭部に第1剤(B)を塗布し、15分間放置した。その後、第2剤を全頭に塗布した。この際、左と右の薬剤が混ざらないように、別々の塗布具を使用した。第2剤塗布後、15
分放置してから水洗、シャンプー、リンスし、ドライヤーで完全に乾かした後、染毛直後の染毛効果及び白髪かくし効果を確認した。その後、被験者には1日に1回シャンプー、リ
ンスしてもらい、1日後、1週間後、2週間後、1ヶ月後に染毛直後の染毛効果及び白髪かくし効果に対する変化を確認した。
【0083】
確認は専門のパネラー5名で肉眼により表8に示す判断基準で判定し、5名の評価の平均値を染毛効果及び白髪かくし効果の持続性効果として示した。
【0084】
【表8】

【0085】
評価結果を、下記表9に示す。
【0086】
【表9】

【0087】
表9に示されるように、本発明である第1剤(A)を用いた染毛組成物の場合において、染毛効果及び白髪かくし効果の優れた持続性が奏されることが確認された。
【0088】
試験例3(アレルギー反応性)
表10に示す染毛剤組成物を以下のように調製し、アレルギー反応の有無に関して、ジアミン系酸化染料によってかぶれが生じる被験者5名の右上腕部を用いて、パッチ試験を
実施した。
【0089】
(第1剤)
セタノール、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテルをビーカー1に量り取り、70℃ま
で加熱し溶解した。別のビーカー2にプロピレングリコールと没食子酸を入れ、よく混ぜ
た後、70℃の精製水、サリチル酸ナトリウム、L-アスコルビン酸を加えて攪拌溶解した。ビーカー1にビーカー2を加え乳化し、攪拌しながら冷却し、炭酸水素アンモニウム、水酸化カリウムを加えpHを7.5に調整し、精製水に溶かした尿素を添加して仕上げた。
【0090】
(第2剤)
セタノール、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテルをビーカー3に量り取り、70℃ま
で加熱し溶解した。別のビーカー4に硫酸第一鉄、L-アスコルビン酸を量り取り、70℃の
精製水を加えて攪拌溶解した。ビーカー3にビーカー4を加え乳化し、攪拌しながら冷却して仕上げた。得られた液のpHは3程度であった。
【0091】
【表10】

【0092】
〔パッチ試験〕
調製した表10に示す第1剤1gと第2剤1gを混ぜた。
【0093】
1枚×6パッドからなるパッチテスト用テープ(リバテープ製薬株式会社製、レギューラーサイズ)を1枚×4パッドにカットし、先に用意した第1剤と第2剤の混合物を1パッド当
たり0.1gずつ塗布した後、被験者の右上腕部に貼付けた。その後、48時間でテープを取り、軽く水で洗い、1時間放置した後、第1剤と第2剤の混合物の接触部位を肉眼で確認し、
紅斑の有無を判定した。この試験を被験者5名に実施された。
【0094】
[結果]
パッチ試験の結果、被験者5名に、アレルギー反応と考えられる紅斑、発疹、水疱等の
異常は見られなかった。
【0095】
パッチ試験の結果より、本発明品はジアミン系酸化染料によってかぶれが生じる使用者にも適用できることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1剤及び第2剤からなる二剤式染毛剤組成物であって、
第1剤が、
(i)没食子酸及びその誘導体からなる群から選ばれる1以上、及び/又は、
(ii)サリチル酸及びその誘導体からなる群より選ばれる1以上
を含んでなり、
第2剤が、鉄塩を含んでなり、かつ、
第1剤及び第2剤のうち少なくとも一方が、尿素を含んでいる
組成物。

【公開番号】特開2013−32383(P2013−32383A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−237659(P2012−237659)
【出願日】平成24年10月29日(2012.10.29)
【分割の表示】特願2007−118567(P2007−118567)の分割
【原出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(391047558)ヘンケルジャパン株式会社 (43)
【Fターム(参考)】