説明

染毛料組成物

【課題】直接染料を含有する染毛料組成物において、高い染毛力を維持しながら保存安定性を向上させることができる染毛料組成物を提供する。
【解決手段】染毛料組成物において、(A)水、(B)芳香族アルコール、(C)ポリグリセリンアルキルエーテル、及び(D)直接染料を含有することを特徴とする。好ましくは、染毛料組成物中における(C)ポリグリセリンアルキルエーテルの含有量に対する(B)芳香族アルコールの含有量の質量比は、1〜25であり、且つ(B)芳香族アルコールの含有量及び(C)ポリグリセリンアルキルエーテルの含有量の合計に対する(A)水の含有量の質量比は、3〜12である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直接染料を含有する染毛料組成物に関し、詳しくは高い染毛力を維持しながら保存安定性を向上させることができる染毛料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、直接染料として例えば酸性染料を含有し、半永久染毛料として使用される酸性染毛料組成物が知られている。一方、アルカリ剤の働きで酸化染料を毛髪のキューティクル内部に浸透させ、酸化剤でメラニン色素の分解と染料の発色を行わせる酸化染毛剤が知られている。酸性染毛料組成物は、コルテックスのごく浅い部分に染料をイオン結合させて発色させる。酸性染毛料組成物は、毛髪へのダメージを酸化染毛剤に比べて抑制することができるというメリットがある。その一方、特に染毛力の点で酸化染毛剤より劣るという問題があった。そこで、酸性染料により毛髪を染色する染毛料組成物では、染色浸透剤として芳香族アルコールを配合している。こうした染毛料組成物では、芳香族アルコールの毛髪に対する浸透力によって、酸性染料が髪に浸透するように構成されている。そして、毛髪に浸透した酸性染料は、毛髪に定着され易くなることで、染毛された状態が維持され易くなる。
【0003】
この染色浸透剤はその分子構造中に疎水性部分を有している。一方で通常の酸性染料の溶媒は水を主体とする。従来、酸性染毛料組成物は、溶媒中に染色浸透剤を分散させるために、例えば界面活性剤を用いて、疎水性部分を有する染色浸透剤をエマルジョンの形態で配合していた。この場合、染色浸透剤は、界面活性剤のミセル中に封入されることにより、溶媒中に安定に配合される。しかしその一方、染色浸透剤は、界面活性剤のミセル中に封入されることにより、酸性染料を毛皮質に浸透させる作用が低下するという問題があった。
【0004】
そこで、従来より、特許文献1に開示される染毛料組成物が知られている。特許文献1は、直接染料として酸性染料、染色浸透剤、例えば芳香族アルコール、及び有機溶剤、例えばエタノールを配合する染毛料組成物について開示する。かかる構成により、染毛処理による染色性を向上させる。
【特許文献1】特開2003−81788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に開示される染毛料組成物は、保存安定性が低いという問題があった。つまり、特許文献1に開示される染毛料組成物は、染色浸透剤を高分散状態で安定に長期間保存することが困難であった。
【0006】
本発明は、本発明者らの鋭意研究の結果、直接染料及び芳香族アルコールを含有する染毛料組成物において、特定のノニオン性界面活性剤を配合することにより高い染毛力を維持しながら保存安定性を向上させることができることを見出したことによりなされたものである。その目的とするところは、直接染料を含有する染毛料組成物において、高い染毛力を維持しながら保存安定性を向上させることができる染毛料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の染毛料組成物は、(A)水、(B)芳香族アルコール、(C)ポリグリセリンアルキルエーテル、及び(D)直接染料を含有することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の染毛料組成物において、前記染毛料組成物中における(C)ポリグリセリンアルキルエーテルの含有量に対する(B)芳香族アルコールの含有量の質量比は、1〜25であり、且つ(B)芳香族アルコールの含有量及び(C)ポリグリセリンアルキルエーテルの含有量の合計に対する(A)水の含有量の質量比は、3〜12であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の染毛料組成物において、前記(C)ポリグリセリンアルキルエーテルは、ポリグリセリンラウリルエーテルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、直接染料を含有する染毛料組成物において、高い染毛力を維持しながら保存安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の染毛料組成物を具体化した実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の染毛料組成物は、(A)水、(B)芳香族アルコール、(C)ポリグリセリンアルキルエーテル、及び(D)直接染料を含有する。(A)水は、各成分の可溶化剤又は溶媒として作用する。
【0012】
(B)芳香族アルコールは、染色浸透剤としての役割を有し、染毛料組成物の染毛力を向上させる。芳香族アルコールとしては、例えばベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコール、フェニルプロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、フェニルジグリコール、α−メチルベンジルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、ベンジルオキシエタノール、フェノキシエタノール、フェノキシイソプロパノール、及びp−アニシルアルコールが挙げられる。染毛料組成物中における芳香族アルコールの配合量は、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1.0〜10質量%である。配合量が0.5質量%未満であると染毛力が低下する場合がある。一方、配合量が15質量%を超えると、地肌汚れが生じやすくなる場合がある。
【0013】
(C)ポリグリセリンアルキルエーテルは、(B)芳香族アルコールを効率よく水系溶媒中に分散させ且つ毛髪に選択的に親和させる効果を発揮する。それにより(C)ポリグリセリンアルキルエーテルは、直接染料及び芳香族アルコールが含有される染毛料組成物において、高い染毛力を維持しながら保存安定性を向上させる。したがって、(C)ポリグリセリンアルキルエーテルは、25℃で流動性のある液状又はゲル状の化合物が選択されることが好ましい。ポリグリセリンアルキルエーテルは、ポリグリセリンの任意の水酸基の水素原子をアルキル基に置換した構造を有し、モノアルキルエーテルが好ましい。ポリグリセリンアルキルエーテルを構成するポリグリセリンの平均重合度は、2以上の範囲であれば特に限定されるものではないが、好ましくは2〜20、より好ましくは4〜10である。ポリグリセリンの水酸基にエーテル結合しているアルキル基の種類は、特に限定されず、直鎖状のアルキル基であっても分岐状のアルキル基のいずれでもよく、また分子中に不飽和結合を有していない飽和炭化水素であっても分子中に不飽和結合を有する不飽和炭化水素のいずれであってもよい。これらの中でアルキル基は直鎖状の飽和炭化水素が好ましい。アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは1〜22、より好ましくは10〜22、さらに好ましくは12〜18である。ポリグリセリンアルキルエーテルは、染毛剤組成物の保存安定性の向上作用が優れる観点からポリグリセリンラウリルエーテルが好ましい。ポリグリセリンラウリルエーテルの中でも、入手容易性の観点からポリグリセリンの重合度が4であるポリグリセリル−4ラウリルエーテル、及びポリグリセリンの重合度が10であるポリグリセリル−10ラウリルエーテルが好ましい。
【0014】
染毛料組成物中におけるポリグリセリンアルキルエーテルの配合量は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。配合量が0.1質量%未満であると染毛料組成物の保存安定性が低下する場合がある。一方、配合量が10質量%を超えると、それ以上の保存安定性の向上効果は得られない。
【0015】
(D)直接染料は、毛髪を染色するために配合される。この直接染料は、反応性がなく、それ自体で発色可能なものを示す。直接染料としては、例えば酸性染料、ニトロ染料、塩基性染料(カチオン染料)、及び分散染料が挙げられる。
【0016】
酸性染料としては、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号の(1)、赤色105号の(1)、赤色106号、赤色201号、赤色227号、赤色230号の(1)、赤色230号の(2)、赤色231号、赤色232号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号、黄色4号、黄色5号、黄色202号の(1)、黄色202号の(2)、黄色203号、黄色402号、黄色403号の(1)、黄色406号、黄色407号、橙色205号、橙色207号、橙色402号、緑色3号、緑色204号、緑色205号、緑色401号、緑色402号、紫色401号、青色1号、青色2号、青色202号、青色203号、青色205号、かっ色201号、黒色401号、アシッドブルー1、アシッドブルー3、アシッドブルー62、アシッドブラック52、アシッドブラウン13、アシッドグリーン50、アシッドオレンジ6、アシッドレッド14、アシッドレッド35、アシッドレッド73、アシッドレッド184、ブリリアントブラック1等が挙げられる。
【0017】
ニトロ染料としては、例えば4−ニトロ−o−フェニレンジアミン、2−ニトロ−p−フェニレンジアミン、2−アミノ−4−ニトロフェノール、2−アミノ−5−ニトロフェノール、ピクラミン酸、ピクリン酸、及びそれらの塩、HC Blue No.2、HC Blue No.4、HC Blue No.5、HC Blue No.6、HC Blue No.8、HC Blue No.9、HC Blue No.10、HC Blue No.11、HC Blue No.12、HC Blue No.13、HC Blue No.14、HC Brown No.1、HC Brown No.2、HC Green No.1、HC Orange No.1、HC Orange No.2、HC Orange No.3、HC Orange No.5、HC Red No.1、HC Red No.3、HC Red No.7、HC Red No.8、HC Red No.9、HC Red No.10、HC Red No.11、HC Red No.13、HC Red No.14、HC Violet No.1、HC Violet No.2、HC Yellow No.4、HC Yellow No.5、HC Yellow No.6、HC Yellow No.7、HC Yellow No.8、HC Yellow No.9、HC Yellow No.10、HC Yellow No.11、HC Yellow No.12、HC Yellow No.13、HC Yellow No.14、HC Yellow No.15等が挙げられる。
【0018】
塩基性染料としては、例えば赤色213号、赤色214号、Basic Blue 3、Basic Blue 6、Basic Blue 7、Basic Blue 9、Basic Blue 26、Basic Blue 41、Basic Blue 99、Basic Brown 4、Basic Brown 16、Basic Brown 17、Basic Brown 1、Basic Brown 4、Basic Orange 1、Basic Orange 2、Basic Red 1、Basic Red 2、Basic Red 22、Basic Red 46、Basic Red 76、Basic Red 118、Basic Violet 1、Basic Violet 3、Basic Violet 4、Basic Violet 10、Basic Violet 11:1、Basic Violet 14、Basic Violet 16、Basic Yellow 11、Basic Yellow 28、Basic Yellow 57等が挙げられる。
【0019】
分散染料としては、例えばDisperse Black 9、Disperse Blue 1、Disperse Blue 3、Disperse Blue 7、Disperse Brown 4、Disperse Orange 3、Disperse Red 11、Disperse Red 15、Disperse Red 17、Disperse Violet 1、Disperse Violet 4、Disperse Violet 15等が挙げられる。
【0020】
さらに直接染料としては、1−アミノ−4−メチルアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、及びそれらの塩、並びに「医薬品等に使用することができるタール色素を定める省令」(昭和41年告示、厚生省)により定められた直接染料が挙げられる。直接染料は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0021】
染毛料組成物中における直接染料の含有量は、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜3質量%である。直接染料の含有量が0.001質量%未満の場合には、染毛効果が十分に得られない場合がある。一方、直接染料の含有量が5質量%を超える場合には、染毛料組成物中における溶解性が十分に得られないおそれがある。
【0022】
染毛料組成物中における(C)ポリグリセリンアルキルエーテルの含有量に対する(B)芳香族アルコールの含有量の質量比(B/C)は、好ましくは1〜25の範囲にあり、より好ましくは2〜20の範囲にある。この質量比がかかる範囲内に規定されることにより、染毛料組成物の保存安定性をより向上させることができるとともに、地肌汚れ防止効果を向上させることができる。
【0023】
染毛料組成物中における(B)芳香族アルコールの含有量及び(C)ポリグリセリンアルキルエーテルの含有量の合計に対する(A)水の含有量の質量比(A/(B+C))は、好ましくは3〜12の範囲にあり、より好ましくは5〜8の範囲にある。この質量比がかかる範囲内に規定されることにより、染毛料組成物の保存安定性をより向上させることができるとともに、地肌汚れ防止効果を向上させることができる。
【0024】
染毛料組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内において、必要に応じて、例えば水溶性高分子化合物、上記以外の染色浸透剤、有機溶剤、油性成分、上記以外の界面活性剤、糖、防腐剤、安定剤、pH調整剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、香料、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤から選ばれる少なくとも一種を含有してもよい。
【0025】
水溶性高分子化合物としては、アニオン性、カチオン性、非イオン性、及び両性の天然又は合成高分子が使用可能である。アニオン性高分子としては、例えばアラビアガム、カラヤガム、トラガカントガム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、変性キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリルアミド、アクリルアミド・アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩共重合体、アクリルアミド・アクリロイルジメチルタウリン塩共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリロイルジメチルタウリン塩共重合体、アクリル酸塩・アクリロイルジメチルタウリン塩共重合体が挙げられる。カチオン性高分子としては、例えばカチオン化グアーガム、ポリクオタニウム−4、ポリクオタニウム−6、ポリクオタニウム−7、ポリクオタニウム−10、及びポリクオタニウム−11が挙げられる。非イオン性高分子としては、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストリン、グアーガム、及びポリビニルピロリドンが挙げられる。両性高分子としては、例えばポリクオタニウム−39、及びポリクオタニウム−47が挙げられる。
【0026】
染色浸透剤としては、例えば炭素数4〜8の一価アルコール、エチレングリコールアルキルエーテル、環状アルコール、及び低級アルキレンカーボネートが挙げられる。炭素数4〜8の一価アルコールとしては、例えばn−ブタノール、イソブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、及びn−オクタノールが挙げられる。エチレングリコールアルキルエーテルとしては、例えばエチレングリコールモノn−ブチルエーテルが挙げられる。環状アルコールとしては、例えばシクロヘキサノールが挙げられる。低級アルキレンカーボネートとしては、例えば炭酸エチレン、及び炭酸プロピレンが挙げられる。
【0027】
有機溶剤としては、例えば炭素数1〜3の一価アルコール、グリコール、グリセリン、及びジエチレングリコール低級アルキルエーテルが挙げられる。炭素数1〜3の一価アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、及びイソプロパノールが挙げられる。グリコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、ヘキシレングリコール、及び1,3−ブチレングリコールが挙げられる。グリセリンとしては、例えばグリセリン、ジグリセリン、及びポリグリセリンが挙げられる。ジエチレングリコール低級アルキルエーテルとしては、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)が挙げられる。
【0028】
油性成分は、毛髪にうるおい感を付与する。そのため染毛料組成物は、好ましくは油性成分を含有する。油性成分としては、例えば油脂、ロウ、高級アルコール、炭化水素、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステル、及びシリコーンが挙げられる。
【0029】
油脂としては、例えばオリーブ油、ツバキ油、シア脂、アーモンド油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、及び月見草油が挙げられる。ロウとしては、例えばミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、及びラノリンが挙げられる。高級アルコールとしては、例えばセチルアルコール(セタノール)、2−ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、デシルテトラデカノール、及びラノリンアルコールが挙げられる。
【0030】
炭化水素としては、例えばパラフィン、オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ミネラルオイル、スクワラン、ポリブテン、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、及びワセリンが挙げられる。高級脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、及びラノリン脂肪酸が挙げられる。アルキルグリセリルエーテルとしては、例えばバチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、及びイソステアリルグリセリルエーテルが挙げられる。
【0031】
エステルとしては、例えばアジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸2−エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、10〜30の炭素数を有する脂肪酸コレステリル/ラノステリル、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、及びコハク酸ジオクチルが挙げられる。
【0032】
シリコーンとしては、例えばジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、平均重合度が650〜10000の高重合シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、及びフッ素変性シリコーンが挙げられる。これらの油性成分の具体例は単独で使用されてもよく、2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0033】
界面活性剤は、乳化剤又は各成分の可溶化剤として染毛料組成物の安定性を保持するために配合される場合がある。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えばアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、及びスルホコハク酸エステルが挙げられる。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンとしては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、及びトリエタノールアミンが挙げられる。アルキル硫酸塩としては、例えばラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0034】
カチオン性界面活性剤としては、例えばアルキルトリメチルアンモニウム塩、アルケニルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ジアルケニルジメチルアンモニウム塩、ラノリン脂肪酸アミドプロピルエチルジメチルアンモニウム、アルキロイルアミドプロピルジメチルアミン、アルキルピリジニウム塩、及びベンザルコニウム塩が挙げられる。これらの界面活性剤のカチオン基の対イオンとしては、例えば塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、アルキル硫酸イオン、及びサッカリンが挙げられる。アルキルトリメチルアンモニウム塩としては、例えば塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウムが挙げられる。ベンザルコニウム塩としては、例えば塩化ベンザルコニウムが挙げられる。
【0035】
両性界面活性剤としては、例えばココベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホ酢酸ナトリウム、及びラウリルベタイン(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)が挙げられる。
【0036】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルサッカライド界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪酸アルカノールアミド、ポリエーテル変性シリコーン、及びアルキルアミンオキサイドが挙げられる。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えばラウレス(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、セテス(ポリオキシエチレンセチルエーテル)、ステアレス(ポリオキシエチレンステアリルエーテル)、オレス(ポリオキシエチレンオレイルエーテル)及びパレスが挙げられる。これらの界面活性剤の具体例は、単独で使用されてもよく、二種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0037】
糖としては、例えばソルビトール、及びマルトースが挙げられる。防腐剤としては、例えばパラベンが挙げられる。安定剤としては、例えばフェナセチン、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、及びタンニン酸が挙げられる。pH調整剤としては、例えば乳酸、レブリン酸、グリコール酸、酒石酸、リンゴ酸、ピロリドンカルボン酸(PCA)、コハク酸、クエン酸、グルタミン酸、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、トリエタノールアミン(TEA)、モノエタノールアミン、及びアルギニンが挙げられる。酸化防止剤としては、例えばアスコルビン酸、及び亜硫酸塩が挙げられる。
【0038】
染毛料組成物の剤型は特に限定されず、例えば液状、ゲル状、フォーム状、及びクリーム状が挙げられる。液状としては、例えば水溶液、分散液、及び乳化液が挙げられる。上記染毛料組成物の毛髪への塗布方法は、特に限定されず、公知の方法を適宜使用することができる。例えばコーム又は刷毛を用いた塗布方法、手櫛による塗布方法、スプレー(噴霧)による塗布方法を挙げることができる。上記染毛料組成物を用いた毛髪の染色方法は特に限定されず、一回の塗布染色作業により染毛する方法であってもよく、また、繰り返しの塗布染色作業により徐々に染毛する徐染性の染色方法に適用してもよい。
【0039】
本実施形態の染毛料組成物によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の染毛料組成物では、(A)水、(B)芳香族アルコール、(C)ポリグリセリンアルキルエーテル、及び(D)直接染料を含有する。したがって、高い染毛力を維持しながら保存安定性を向上させることができる。
【0040】
(2)本実施形態の染毛料組成物では、ノニオン性界面活性剤として(C)ポリグリセリンアルキルエーテルを含有する。したがって、コンディショニング効果を向上させることができる。
【0041】
(3)本実施形態では、好ましくは染毛料組成物中における(C)ポリグリセリンアルキルエーテルの含有量に対する(B)芳香族アルコールの含有量の質量比は、1〜25であり、且つ(B)芳香族アルコールの含有量及び(C)ポリグリセリンアルキルエーテルの含有量の合計に対する(A)水の含有量の質量比は、3〜12である。したがって、染毛料組成物の保存安定性をより向上させることができるとともに、地肌汚れ防止効果を向上させることができる。
【0042】
(4)本実施形態の染毛料組成物において、(C)ポリグリセリンアルキルエーテルは、好ましくはポリグリセリンラウリルエーテルである。したがって、染毛料組成物の保存安定性をより向上させることができる。
【0043】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、上記染毛料組成物を構成する各成分を全て配合する1剤式として構成した。しかしながら、各成分を分離して複数剤式に構成し、使用直前にそれらを混合するよう構成してもよい。
【実施例】
【0044】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
表1,2に示される各成分を混合して各実施例及び比較例の染毛料組成物を調製した。得られた染毛料組成物を白色山羊毛束及び白髪混じりの人毛毛束に刷毛を用いて塗布し、30℃で15分放置した後、通常のシャンプーにて洗浄し、次いで乾燥させることにより染毛処理毛束とした。かかる染毛処理毛束について、染毛力及びコンディショニング効果について評価を行った。また、各実施例及び比較例の染毛料組成物における保存安定性の評価として、分散状態の保持効果について評価を行った。それらの評価結果を表1,2に示す。なお、表1,2における各成分の配合を示す数値の単位は質量%である。また、表中「成分」欄における(A)〜(D)の表記は、本願請求項記載の各成分に対応する化合物を示す。一方、表中「成分」欄における「c」の表記は、本願請求項記載の(C)成分の対比化合物を示す。
【0045】
また、表中の「芳香族アルコールの質量比(B/C)」は、染毛料組成物中における(C)ポリグリセリンアルキルエーテルの含有量に対する(B)芳香族アルコールの含有量の質量比を示す。また、表中の「水の質量比(A/(B+C))」は、染毛料組成物中における(B)芳香族アルコールの含有量及び(C)ポリグリセリンアルキルエーテルの含有量の合計に対する(A)水の含有量の質量比を示す。
【0046】
<染毛力>
各実施例及び比較例の染毛処理白色山羊毛束について、パネラー20名が標準光源下で目視にて発色度合いを評価することにより、発色が良いか否かを判断した。パネラー20人中「良い」と答えた人が17人以上を評価5、パネラー20人中「良い」と答えた人が13〜16人を評価4、パネラー20人中「良い」と答えた人が9〜12人を評価3、パネラー20人中「良い」と答えた人が5〜8人を評価2、パネラー20人中「良い」と答えた人が2〜4人を評価1、パネラー20人中「良い」と答えた人が0〜1人を評価0とした。
【0047】
<分散状態の保持効果>
各実施例及び比較例の染毛料組成物について、ガラス瓶に入れ、50℃の恒温漕中で1ヶ月間保存した後に組成物の分離状態を目視にて評価することにより分散状態の保持効果が良いか否かを判断した。分離が全く認められないものを評価5、分離がほとんど認められないものを評価4、分離が僅かに認められるもの評価3、分離がやや認められるもの評価2、分離がかなり認められるものを評価1とした。
【0048】
<コンディショニング効果>
各染毛料組成物で処理する前の白髪混じりの人毛毛束と、染毛処理した白髪混じりの人毛毛束とをパネラーが毛束に指を通した感触を比較し、染毛処理毛束の感触が良いか否か評価した。パネラー20人中「良い」と答えた人が17人以上を評価5、パネラー20人中「良い」と答えた人が13〜16人を評価4、パネラー20人中「良い」と答えた人が9〜12人を評価3、パネラー20人中「良い」と答えた人が5〜8人を評価2、パネラー20人中「良い」と答えた人が2〜4人を評価1、パネラー20人中「良い」と答えた人が0〜1人を評価0とした。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

表1,2に示されるように(A)水、(B)芳香族アルコール、(C)ポリグリセリンアルキルエーテル、及び(D)直接染料を含有する各実施例は、各評価項目において評価5の結果であることが確認される。
【0051】
また、表1に示されるように(C)ポリグリセリンアルキルエーテルを含有しない比較例1は、分散状態の保持効果及びコンディショニング効果が各実施例に比べて低いことが確認された。(C)ポリグリセリンアルキルエーテルの代わりにエステルとしてラウリン酸ポリグリセリル−10を使用する比較例2は、分散状態の保持効果及びコンディショニング効果が各実施例に比べて低いことが確認された。(C)ポリグリセリンアルキルエーテルの代わりにノニオン性界面活性剤としてラウレス−10を使用する比較例3は、染毛力及び分散状態の保持効果が各実施例に比べて低いことが確認された。(C)ポリグリセリンアルキルエーテルの代わりに有機溶剤としてポリグリセリン−10を使用する比較例4は、各評価項目が各実施例に比べて低いことが確認された。尚、比較例5,6は、染毛処理において毛髪が染まらなかったため、各評価項目における評価を行っていない。
【0052】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記芳香族アルコールは、ベンジルアルコール、フェノキシイソプロパノール及びベンジルオキシエタノールから選ばれる少なくとも一種である前記染毛料組成物。
【0053】
(b)前記ポリグリセリンラウリルエーテルは、ポリグリセリル−4ラウリルエーテル及びポリグリセリル−10ラウリルエーテルから選ばれる少なくとも一種である前記染毛料組成物。
【0054】
(c)(A)水、(B)芳香族アルコール、及び(D)直接染料を含有する染毛料組成物において、(C)ポリグリセリンアルキルエーテルを配合することを特徴とする染毛料組成物の保存安定化方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水、(B)芳香族アルコール、(C)ポリグリセリンアルキルエーテル、及び(D)直接染料を含有することを特徴とする染毛料組成物。
【請求項2】
前記染毛料組成物中における(C)ポリグリセリンアルキルエーテルの含有量に対する(B)芳香族アルコールの含有量の質量比は、1〜25であり、且つ(B)芳香族アルコールの含有量及び(C)ポリグリセリンアルキルエーテルの含有量の合計に対する(A)水の含有量の質量比は、3〜12であることを特徴とする請求項1に記載の染毛料組成物。
【請求項3】
前記(C)ポリグリセリンアルキルエーテルは、ポリグリセリンラウリルエーテルであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の染毛料組成物。

【公開番号】特開2010−105997(P2010−105997A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282503(P2008−282503)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】