説明

染毛料

【課題】累積染毛性及び使用性に優れると共に、夏季などの高温多湿期による汗、雨などに対しても優れた耐水性を有する染毛料。
【解決手段】使用直後の洗髪が不要であり、かつ使用する回数を重ねる毎に徐々に毛髪が染色していく累積染毛性の染毛料を提供するために、着色剤として塩基性染料0.5〜8重量%と、アルコール可溶性アクリル系樹脂0.5〜15重量%と、低級アルコール20〜80重量%と、水5〜40重量%とを含有してなり、粘度が20mPa・s以下である染毛料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用直後の洗髪が不要であり、かつ使用する回数を重ねる毎に徐々に毛髪が染色していく累積染毛性の染毛料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一般に汎用される、永久染毛料(酸化染毛料)や半永久染毛料(酸性染料)は、使用時の染毛操作が複雑で、且つ面倒であり、周囲や衣服、被施術者の皮膚が染色されてしまうなどの大きな欠点を有している。
そのため、一般的には、理美容院で施術してもらうか、若しくは汚れても直ぐに洗い流せるように入浴時に自己施術しなくてならないなど、使用者に過大な負担を強いるものであった。
【0003】
これらの負担を軽減し、1回で染まる量は少なくても簡便に繰り返し使用することで累積的に染毛できる染毛料として、例えば、本願出願人による着色剤として酸性染料を0.01〜3重量%、ノニオン若しくはアニオンのシリコーン系樹脂を1.5〜10重量%、染毛助剤を3〜20重量%と、低級アルコールを30〜80重量%と、水を5〜50重量%含有し、pHが2〜5、粘度が100mPa・s以下であることを特徴とする累積染毛性一時染毛料(特許文献1参照)が知られている。
また、皮膚に染着せず、毛髪に対して徐々に着色する効果を有するものとして、例えば、塩基性染料と両性高分子樹脂とを含有し、pHが3.0〜8.0である毛髪化粧料(特許文献2参照)が知られている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の染毛料は、累積的に染毛できるものとしては優れているが、酸性染料を使用しているので、万一頭皮や指先に液が付着してしまうと、皮膚に染着してしまい、使用者に負担を強いる点等に若干の課題があり、しかも、この染毛料は液性が酸性であるので、顔料を配合する場合などにはその分散性が悪い点に課題等がある。
また、上記特許文献2の毛髪化粧料は、塩基性染料を使用している点で共通するものであるが、耐水性、累積染色性が劣り、内容液粘度が高くなる傾向があることで塗布性が悪くなる等の点で未だ課題があるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−172141号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2003−246714号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、皮膚に染着することがなく、累積染毛性に優れると共に、夏季などの高温多湿期による汗、雨などに対しても優れた耐水性を有する染毛料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記従来技術の課題等について鋭意検討を重ねた結果、塩基性染料、特定のアルコール可溶性樹脂及び低級アルコールなどの含有量を夫々特定の範囲とすることなどにより、上記目的の染毛料が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(4)に存する。
(1)着色剤として塩基性染料0.5〜8重量%と、アルコール可溶性アクリル系樹脂0.5〜15重量%と、低級アルコール20〜80重量%と、水5〜40重量%とを含有してなり、粘度が20mPa・s以下であることを特徴とする染毛料。
(2)アルコール可溶性アクリル系樹脂がシリコーン・アクリルブロックコポリマーである上記(1)記載の染毛料。
(3)更に、カーボンブラックを含有する上記(1)又は(2)記載の染毛料。
(4)カーボンブラックの含有量が、染毛料全量に対して、0.1〜3重量%である上記(3)記載の染毛料。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、累積染毛性及び使用性に優れると共に、夏季などの高温多湿期による汗、雨などに対しても優れた耐水性を有する染毛料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す側面図である。
【図2】図1の側面態様の縦断面図である。
【図3】図1の正面態様の縦断面図である。
【図4】(a)は、本発明の実施形態の他例を示す縦断面図であり、(b)はI−I線断面図であり、(c)は櫛体の平面図である。
【図5】本発明の実施形態の他例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の染毛料は、着色剤として塩基性染料0.5〜8重量%と、アルコール可溶性アクリル系樹脂0.5〜15重量%と、低級アルコール20〜80重量%と、水5〜50重量%とを含有してなり、粘度が20mPa・s以下であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明で用いる塩基性染料としては、染毛料に用いられることが認められ、水溶性のものであれば特に限定されず、例えば、BASIC RED 1、BASIC RED 2、BASIC RED 22、BASIC RED 46、BASIC RED 76、BASIC RED 118、BASIC YELLOW 11、BASIC YELLOW 28、BASIC YELLOW 57、BASIC BLUE 3、BASIC BLUE 6、BASIC BLUE 7、BASIC BLUE 9、BASIC BLUE 26、BASIC BLUE 41、BASIC BLUE 99、BASIC GREEN 1、BASIC GREEN 4、BASIC BROWN 4、BASIC BROWN 16、BASIC BROWN 17、BASIC ORANGE 1、BASIC ORANGE 2、BASIC VIOLET 1、BASIC VIOLET 3、BASIC VIOLET 4、BASIC VIOLET 10、BASIC VIOLET 11、BASIC VIOLET 14、BASIC VIOLET 16などが挙げられ、これらは、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0013】
これらの塩基性染料の含有量は、染毛料全量に対して、0.5〜8重量%(以下、単に「%」という)とすることが必要であり、好ましくは、0.5〜5%とすることが望ましい。
この塩基性染料の含有量が0.5%未満であると、染毛効果が十分に発揮されず、また、8%を越えると、皮膚等他への汚染が生じやすくなり、好ましくない。
【0014】
本発明に用いるアルコール可溶性アクリル系樹脂は、一時着色性、累積染毛性を損なうことなく、全頭使用時の耐汗性、耐水性を向上させると共に、夏季などの高温多湿期に生じやすかった、皮膚、衣料への二次付着による汚染を更に阻止し、しかも、後述するカーボンブラックを含有せしめた場合にはその分散性を向上せしめることができ、更に、毛髪に対して好適なセット力を付与することができる。
本発明に用いるアルコール可溶性アクリル系樹脂としては、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーンと、メタアクリル酸・メタアルリル酸アルキルなどのアクリル系ポリマーとを高分子アゾ重合開始剤等を使用して合成したエタノール等のアルコールに可溶なシリコーン・アクリルブロックコポリマーなどが挙げられる。
【0015】
このシリコーン・アクリルブロックコポリマーは、両樹脂の性質を兼ね備えたものであり、シリコーン系ポリマーのサラサラ感(撥水性、潤滑性)とアクリル系ポリマーの被膜形成能を染毛料に最大限に付与することができる。
本発明に用いるアルコール可溶性アクリル系樹脂は、使用性、取り扱い性等の点から、好ましくは、上記シリコーン・アクリルブロックコポリマーなどをエタノール、変性アルコール又はこれらの混液に溶解した溶液形態での使用が望ましい。
【0016】
具体的に用いることができるアルコール可溶性アクリル系樹脂脂としては、(アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマー〔別名:メタクリル酸・メタクリル酸アルキル・ジメチルポリシロキサンブロック共重合体、市販品としてはマイブロックワコー101(固形分25%のエタノール溶液、和光純薬工業社製)〕、また、オクチルアクリルアミド/アクリル樹脂、市販品としてはAMPHOMERV−42、ダーマクリル−79(以上、日本エヌエスシー社製)などを挙げることができる。
【0017】
本発明における上記アルコール可溶性アクリル系樹脂の含有量は、固形分換算で染毛料全量に対して、0.5〜15%とすることが必要であり、好ましくは、1〜10%、更に好ましくは、1.5〜5%とすることが望ましい。
このアルコール可溶性アクリル系樹脂の含有量が0.5%未満では、耐水性、耐汗性が乏しくなり、また、15%を越えると、粘度が高くなりすぎ塗布性が悪くなると共に、累積染毛性が悪くなり、好ましくない。
【0018】
本発明に用いる低級アルコールとしては、例えば、エチルアルコール(エタノール)、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノールなどの染毛料に使用できる低級アルコールの1種又は2種以上を用いることができ、安全性、乾燥性、匂い等の点からエチルアルコールが望ましい。
上記低級アルコールの含有量は、染毛料全量に対して、20〜80%とすることが必要であり、好ましくは、40〜70%とすることが望ましい。
この低級アルコールの含有量が20%未満であると、乾燥性が低下し、また、80%を越えると、染毛効果が十分に発揮されないこととなり、好ましくない。
【0019】
本発明における染毛料の残部は、水で調整され、例えば、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水、上水、常水、蒸留水、海洋深層水等を使用でき、その含有量としては、染毛料全量に対して、5〜40%とすることが必要であり、更に好ましくは、15〜40%とすることが望ましい。
この水の含有量が5%未満であると、染毛効果が低下することとなり、また、40%を越えると、乾燥性が低下し、好ましくない。
【0020】
本発明の染毛料は、上記塩基性染料により、各色の髪の色調を発揮せしめることができるが、白髪などを更に隠蔽する白髪用の染毛料であれば、更に、カーボンブラックを含有せしめることが好ましい。
本発明では、顔料等の分散性に優れるシリコーン・アクリルブロックコポリマー等を用いているので、カーボンブラックの分散性にも優れたものである。
用いることができるカーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、チャネルブラック、アセチレンブラック等、各製法によって製造された市販のカーボンブラック、具体的には、Special Black 6,Color Black S170,SB−4(以上、デグサ社製)等を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
このカーボンブラックの含有量が、染毛料全量に対して、好ましくは、0.1〜3%とすることが望ましく、更に好ましくは、0.5〜1.5%とすることが望ましい。
このカーボンブラックの含有量が0.1%未満であると、更に白髪を充分に隠蔽する点で劣ることとなり、また、3%を越えると、粘度が急激に上昇し、使用性の点から、好ましくない。
【0021】
また、本発明の染毛料には、更なる染毛効果を発揮せしめる点から、染毛助剤を含有することが好ましい。
用いることができる染毛助剤としては、例えば、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェノキシエタノール、プロピレングリコール、N−メチルピロリドン、グルコン酸ラクトン、レブリン酸、尿素、エチレンカーボネート、N−メチル−2−ピロリドン、α−ケトグルタル酸、γ−ブチロラクトン、プロピオンアミド、酢酸アミド等の一般的な半永久染毛料で使用されるものから選ばれる1種又は2種以上を混合して用いることができる。
これらの染毛助剤の含有量は、染毛料全量に対して、好ましくは、2〜20%とすることが望ましく、更に好ましくは、5〜15%とすることが望ましい。
この染毛助剤の含有量が2%未満であると、更なる染毛効果が十分に発揮されず、また、20%を越えると、塗布後の乾燥性が低下し、好ましくない。
【0022】
なお、本発明の染毛料には、本発明の効果や、系の安定性を損なわない範囲でその他の任意成分を適宜含有することができ、例えば、各種界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、還元防止剤、キレート剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、油性成分、シリコーン誘導体、顔料、香料、動植物抽出物、公知のポリマー成分等を含有することができる。
【0023】
本発明の染毛料は、塩基性染料を使用している点、毛髪損傷防止、皮膚刺激防止の点から、pHを5〜9に調整することが好ましく、更に好ましくは、6〜8とすることが望ましい。
この染毛料のpHが5未満であると、累積染毛効果が低下することとなり、また、pHが9を越えると、アルカリにより毛髪の損傷や皮膚刺激が発生しやすくなり、好ましくない。
本発明において、pHの調整は、通常のpH調整剤、例えば、トリエタノールアミン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の有機、無機の塩基、クエン酸、リンゴ酸、塩酸、グリコール酸等の有機、無機酸を任意に用いて行うことができる。
【0024】
また、本発明の染毛料の粘度は、頭髪への塗布を容易に行う観点から、20mPa・s以下、好ましくは、10mPa・s以下、更に好ましくは、2〜6mPa・sとすることが望ましい。
この染毛料の粘度が20mPa・sを越えると、頭髪へ薄く均一に塗り延ばすことがしにくくなり、好ましくない。
【0025】
本発明における染毛料は、上記塩基性染料、アルコール可溶性アクリル系樹脂、低級アルコール、水などの各成分を上記各含有量の範囲で配合し均一に攪拌・混合することにより、製造することができる。
このように構成される本発明の染毛料では、黒髪用毛髪着色料、白髪用毛髪着色料などとして好適に用いることができ、皮膚に染着することがなく、累積染毛性に優れると共に、夏季などの高温多湿期による汗、雨などに対しても優れた耐水性を有するものが得られる。
【0026】
また、このように構成される本発明の染毛料を使用に供するにあたっては、毛髪用塗布具を用いるものであるが、用いる毛髪用塗布具の形状、構造等は特に限定されるものではない。
本発明において、用いることができる毛髪用塗布具としては、好ましくは、毛髪への塗布性、塗布部位に含ませる液量のコントロール性、衣服、皮膚、家具などの汚損の発生も少ない点、また、使用性の点から、内部に本発明の染毛料の貯留部を有する塗布具本体部と、該塗布具本体部の先端部に設けた塗布部とを備え、上記染毛料貯留部より塗布部に本発明の染毛料を流出させて毛髪に染毛料を塗布する毛髪用塗布具が挙げられる。
【0027】
このような構成となる毛髪用塗布具としては、例えば、図1〜図3に示される毛髪用塗布具A、図4に示される毛髪用塗布具B、図5に示される毛髪用塗布具Cが挙げられる。
以下に、これらの毛髪用塗布具A〜Cを具体的に説明する。
毛髪用塗布具Aは、所謂中綿式(吸蔵体)の塗布具であり、図1〜図3に示されるように、塗布具本体をなす軸体10の内部に上記構成の染毛料を吸蔵した吸蔵体11を染毛料貯留部10aに収容し、複数の毛細管作用を有する塗布用の櫛態様となる芯体(ペン芯)12を直線状の列の配置で軸体10の先端部に固定して、芯体12の後端部を吸蔵体11に接続すると共に、芯体12の先端部を軸体10の前方へ突出させ、芯体12の側部には、櫛部13を直線状に設け、軸体10の先端部には、キャップ本体20を螺合により着脱自在とし、芯体12の先端部が接触するフェルトなどの芯先端受け部材21を取り付けることも可能とし、その側部に櫛部13の先端部を収容する凹部22を設けた中キャップ23をキャップ本体20の内部に軸方向に移動自在で、かつ円周方向に回動自在に配して、中キャップ23をスプリング部材24によりキャップ本体20の開口方向へ付勢状態とすることも可能としたものである。
このような構成となる毛髪用塗布具Aでは、上記貯留部10aに本発明の上記構成の染毛料を吸蔵した吸蔵体11より、塗布部となる芯体12の先端部まで必要な染毛料を供給しつつも「たれ落ち」や不本意な液体の吐出を生じることがなく、持ち運びやハンドリング性に優れると共に、使用性、耐水性、累積染毛性に優れる毛髪用塗布具とすることができる。
【0028】
この毛髪用塗布具Aを用いて、本発明の染毛料を使用する際には、先端塗布体として芯体12を有するので、使用の際の頭皮への汚染を極力回避することができると共に、頭皮近辺の毛髪(生え際)へ簡単に染毛料を塗布することができる。従って、この毛髪用塗布具Aでは、本発明の染毛料の性質を充分に生かして吸蔵体に染毛料を一時的に保持し塗布部を介して毛髪に最適量の染毛料を塗布できるものとなる。
【0029】
また、毛髪用塗布具Bは、ノック式のバルブ装置を備えた塗布具であり、図4(a)〜(c)に示されるように、塗布具本体部30の先端部に台座31が固着され、該台座31にブラシ体32a,32a……からなる塗布部32が設けられている。また、台座31の外周には先軸33が固着されており、該先軸33には、櫛歯部35a,35a……を備えた櫛体35が着脱自在に取り付けられている。台座31の中心孔に塗布部32と接触するスポンジ等からなる含浸体36が嵌着され、台座31の後方に含浸体止め37を挟んで後述するバルブ装置の先端に連通する染毛料誘導管38が設けられている。
また、塗布具本体部30内には、染毛料貯留部となる筒状体の内軸40を有し、その先端部に弁棒41、弁座42、弁ばね43、ばね受け44からなるバルブ装置45が取り付けられると共に、後端部にノック体46が設けられている。
このような構成となる毛髪用塗布具Bでは、上記貯留部40に本発明の上記構成の染毛料を充填し、ノック体46をノックすることにより、染毛料が染毛料誘導管38を介して含浸体36に流出してブラシ体32a,32a……からなる塗布部32に供給されて、使用に供されることとなる。
この毛髪用塗布具Bは、染毛料が含浸体36からブラシ体32a,32a……からなる塗布部32に供給される構造となるので、「たれ落ち」や不本意な液体の吐出を生じることがなく、また、櫛体35を有するので、直接染毛料が指等に付着することがなく、持ち運びやハンドリング性に優れると共に、使用性、耐水性、累積染毛性に優れる毛髪用塗布具とすることができる。
【0030】
更に、毛髪用塗布具Cは、マスカラタイプの塗布具であり、図5に示されるように、有底筒状体となる塗布具本体50と、該塗布具本体50の上端開口部を螺合により密封する蓋体55とを備えている。
塗布具本体50には、その内部に染毛料の貯留部51を有すると共に、該貯留部51の上部には払拭部52が取り付けられている。また、蓋体55には塗布棒体56が固着され、該塗布棒体56の先端にはブラシ体57a、57a……を有する塗布部57が設けられている。
このような構成となる毛髪用塗布具Cでは、蓋体55の螺合を解いて、蓋体55を塗布具本体50から取り出せば、蓋体55の先端部には、染毛料が付着した塗布部57が現れるので、該塗布部57を染色すべき毛髪部位に塗布することにより染毛することができるものとなる。
この毛髪用塗布具Cは、毛髪の生え際などの部分、眉毛などに好適に適用でき、持ち運びやハンドリング性に優れると共に、使用性、耐水性、累積染毛性に優れる毛髪用塗布具とすることができる。
【実施例】
【0031】
次に、実施例及び比較例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例により制限されるものではない。
【0032】
〔実施例1〜5及び比較例1〜4〕
下記表1に示す配合組成にて汎用のプロペラミキサーにより、均一に攪拌・混合して、各染毛料を調製した。なお、(アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマーは、マイブロックワコー101(25%エタノール溶液、和光純薬工業社製、表2も同様)を用い、カーボンブラックSB−4は、デグサ社製を用いた。
上記で得られた実施例1〜5及び比較例1〜4の各染毛料について、下記方法により、pH、粘度について測定等した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0033】
(pHの測定方法)
pH(25℃)をガラス電極pH計により常法にて測定した。
(粘度の評価方法)
25℃における各粘度をELD型粘度計(東機産業社製)にて測定した。
【0034】
次いで、上記で得られた各染毛料10mlを、図1〜図3に示す、下記構成の毛髪用塗布具に充填し、下記方法により、累積染毛性、耐水性、皮膚染着性、一時着色性の評価を行った。
これらの結果を下記表1に示す。
【0035】
(毛髪用塗布具の構成)
芯体:PET製、芯体と芯体の縦横の間隔:3.4mm、気孔率:80%
櫛部:PBT製、
【0036】
(累積染毛性の評価方法)
1gの毛髪毛束に塗布・乾燥後、二回洗髪を5回繰り返し後の、累積染毛性の評価を下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:市販の酸化染毛料と同等。
○:実用上の問題なし。
△:やや染まりにくい。
×:染まらない。
【0037】
(耐水性の評価方法)
2gの毛髪に約0.1mlを塗布し、常温で120分間乾燥後(以下、単に「毛髪に塗布・乾燥後」という)に、水で湿らせた濾紙を押し当て、濾紙への色の付き具合を、下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:濾紙に全く付着しない
○:濾紙に薄く付着する
△:濾紙にやや濃く付着する。
×:濾紙に濃く付着する。
【0038】
(皮膚染着性の評価方法)
ボランティアの上腕内側部に液を0.005g滴下し、30秒放置後、ティシュペーパーで拭き取った。その後、自然乾燥させ、1時間後市販の固形石鹸で洗浄し、乾燥させた。皮膚への染着を、下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:殆んど染着しない。
○:薄く染着するが目立たない。
△:染着しているのがわかる。
×:明瞭に染着を認める。
【0039】
(一時着色性の評価方法)
10%白髪交じりの人毛毛束1gに液を0.1g塗布し、白髪が隠蔽されたか否かを下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:殆んど白髪が判別できなかった。
○:白髪があることはわかるが、目立たなくなった(ぼかし染めレベル)。
△:多少着色しているが白髪の存在がはっきり残る。
×:殆んど着色しない。
【0040】
【表1】

【0041】
上記表1の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜5は、本発明の範囲外となる比較例1〜4に較べて、皮膚に染着することがなく、累積染毛性、耐水性、一時着色性の全ての面で優れていることが判明した。
比較例を個別的に見ると、比較例1は、アルコール可溶性アクリル系樹脂を含有しない場合であり、この場合は、累積染毛性、耐水性に著しく劣ることが判明した。比較例2は、従来の酸性染料を使用した場合であり、この場合は、皮膚に染着し使用上問題が生じることが判明した。比較例3は、アルコール可溶性アクリル系樹脂の含有量を過大に増やした場合であり、粘度が高く、この場合は累積染毛性が阻害されることが判明した。比較例4は含有する塩基性染料の量を過大に増やした場合であり、この場合は耐水性、皮膚染着性が著しく劣ることが判明した。
【0042】
〔実施例6及び比較例5〜6、カーボンブラック含有〕
下記表2に示す配合組成にて汎用タービンミキサーにより、均一に攪拌・混合して、各染毛料を調製した。
上記で得られた実施例6及び比較例5〜6の各染毛料について、上記方法により、pH、粘度、累積染毛性、耐水性、皮膚染着性、一時着色性の評価を行うと共に、下記方法により、カーボンブラックの分散性について評価した。
これらの結果を下記表2に示す。
【0043】
(カーボンブラック分散性の評価方法)
25℃−65%RH下に100mlのサンプルビンで1日間放置した後、ビン底部に凝集物の沈殿がないことを目視により、下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:沈降物が底部になく、ビンの壁面もきれいに濡れる。
○:ビン底部に微量の沈殿を認めるがビンを軽く振ると均一に分散し、ビン壁面もきれいに濡れる。
△:ビン底部に明瞭な沈殿物を認めるが、ビンを強く振ると均一に分散する。
×:ビン底部に明瞭な沈殿物を認め、ビンを多少強く振っても均一に分散しない。
【0044】
【表2】

【0045】
上記表2の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例6は、本発明の範囲外となる比較例5〜6に較べて、カーボンブラックの凝集もなく、また、皮膚に染着することがなく、累積染毛性、耐水性、一時着色性の全ての面で優れていることが判明した。
これに対して、比較例を個別的に見ると、比較例5は、アルコール可溶性アクリル系樹脂を含有しない場合であり、この場合は、累積染毛性、耐水性、カーボンブラック分散性に著しく劣ることが判明した。比較例6は、従来の酸性染料を使用した場合であり、この場合は、皮膚に染着し使用上問題が生じ、また、pHを調整していないため、累積染毛性に劣ることが判明した。
また、カーボンブラックを更に含有せしめることにより、実施例6は、カーボンブラックを含有しない実施例1〜5と較べて一時染色性が更に改善されることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明では、皮膚に染着することがなく、累積染毛性に優れると共に、夏季などの高温多湿期による汗、雨などに対しても優れた耐水性に優れた染毛料が得られ、この染毛料を充填した毛髪用塗布具を用いれば、使用者が簡単に使用することができるものとなる。
【符号の説明】
【0047】
A 毛髪用塗布具
10 塗布具本体
12 芯体(ペン芯)
13 櫛部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤として塩基性染料0.5〜8重量%と、アルコール可溶性アクリル系樹脂0.5〜15重量%と、低級アルコール20〜80重量%と、水5〜40重量%とを含有してなり、粘度が20mPa・s以下であることを特徴とする染毛料。
【請求項2】
アルコール可溶性アクリル系樹脂がシリコーン・アクリルブロックコポリマーである請求項1記載の染毛料。
【請求項3】
更に、カーボンブラックを含有する請求項1又は2記載の染毛料。
【請求項4】
カーボンブラックの含有量が、染毛料全量に対して、0.1〜3重量%である請求項3記載の染毛料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−116777(P2011−116777A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48895(P2011−48895)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【分割の表示】特願2005−517703(P2005−517703)の分割
【原出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】