説明

染毛方法及びその染毛方法に用いられる染毛剤セット

【課題】HC染料及び塩基性染料をベースカラーとして用いても、長期間色持ちを維持できる染毛方法を提供することを目的とする。
【解決手段】染料主成分である塩基性染料とHC染料とを含有するベースカラー染料液を毛髪に塗布し、所定の時間放置する第一工程と、ベースカラー染料液を塗布された毛髪をリンスする第二工程と、第二工程の後に毛髪に茶カテキン水溶液を塗布し、所定の時間放置する第三工程と、を備える染毛方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染毛方法及びその染毛方法に用いられる染毛剤セットに関する。詳しくは、HC染料及び塩基性染料をベースカラーとして用いても、高い染着性を維持できる染毛方法及びその染毛方法に用いられる染毛剤セットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、合成染料であるp−フェニレンジアミン系やアミノフェノール系の酸化染料を含む染毛剤が広く用いられている。酸化染料を含む染毛剤は、染毛後の色持ちに優れるとともに、多彩な色調を表現できる。
【0003】
しかしながら、酸化染料は、皮膚障害を引き起こすことが知られている。また、生態系に悪影響を及ぼす環境ホルモンであるという指摘や、さらに、発がん性や発アレルギー性等の疑いがあるとの指摘もある。このことから、酸化染料を含む染毛剤は、欧州等においては規制対象となっている。
【0004】
一方、染毛剤の染料成分として、酸化染料よりも安全性が高いとされている、HC染料や塩基性染料等が知られている。従来からHC染料及び塩基性染料は、例えば、2〜3週間程度の色持ちを目的としたヘアマニキュアや、1週間に数回用いることにより色を付与し続けるカラーリンスやカラートリートメントとして用いられていた。例えば、下記特許文献1は、整髪効果と染毛効果の両方を兼ね備えた染毛性整髪用組成物として、HC染料、塩基性染料、ディスパース染料及び天然色素からなる群から選択された少なくとも一つの染料又は色素である染毛性色素と共に、少なくとも一つのαヒドロキシ酸エステル及び/又は少なくとも一つの炭酸ジアルキル、並びに、少なくとも一つの架橋ポリマーを含む染毛性整髪用組成物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−213212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
HC染料や塩基性染料は、酸化染料に比べて安全性が高いとされている。しかしながら、HC染料や塩基性染料は、化学反応することなく毛髪に染着するために染毛後の色持ちが悪く、シャンプーを繰り返すことなどにより色落ちしやすいという欠点があった。従って、上述のように、2〜3週間程度の色持ちを目的としたヘアマニキュアや、1週間に数回用いることにより色を付与し続けることにより色を維持するようなカラーリンスやカラートリートメントとしては、実用上の使用は可能であったものの、例えば、1ヶ月を超える色持ちを目的とした、所謂、永久染毛剤のような用いられ方は試みられていなかった。
【0007】
本発明は、HC染料及び塩基性染料をベースカラーとして用いて、永久染毛剤に近い、長期間の色持ちを維持できる染毛方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の染毛方法は、HC染料及び塩基性染料を含む第一剤を毛髪に塗布し、所定の時間放置する第一工程と、第一剤を塗布された毛髪をリンスして第一剤を流す第二工程と、シャンプー後の毛髪にポリフェノールを含有する第二剤を塗布し、所定の時間放置する第三工程と、を備えることを特徴とする。このような染毛方法によれば、HC染料及び塩基性染料をベースカラーとして用いても、長期間色持ちを維持できる。本発明の効果は、数多くの実験を繰り返した中で、次のようなメカニズムで奏されていると考えている。第一工程において、HC染料及び塩基性染料を含むベースカラー染毛剤を毛髪に塗布することにより、HC染料及び塩基性染料が毛髪に付着又は浸透する。そして、第二工程でシャンプーした後、第三工程でポリフェノールを含有する第二剤を塗布する。この第三工程において塗布されたポリフェノールが空気中の酸素に触れて酸化重合して被膜を形成することにより、毛髪に付着又は浸透したHC染料及び塩基性染料がより強く定着されていると考えている。なお、ポリフェノールとしては、茶カテキンが、特に、HC染料及び塩基性染料で調色された色に影響を与えにくい点から好ましい。
【0009】
また、第三工程において、第二剤を塗布された毛髪を所定の時間放置する際に、遠赤外線を照射することが好ましい。遠赤外線を照射することにより、色持ちがさらに向上する。これは、恐らく、施術時に、ポリフェノールをシャンプーにより洗い流す前に、ポリフェノールが活性化されてポリフェノールの重合反応が促進されるためであると考えられる。
また、第一剤が0.01〜1質量%のアルカリ性還元剤を含み、塩基性である場合には、毛髪がアルカリ膨潤することにより、HC染料及び塩基性染料が毛髪に浸透し易くなり、その結果、より色もちが向上する点から好ましい。
また、本発明の染毛剤セットは、上記染毛方法を行うために用いられる染毛剤セットであり、第一剤を調製するための、HC染料及び塩基性染料を含むベースカラー染毛剤と、第二剤を調製するためのポリフェノールと、を組み合わせた染毛剤セットである。このような染毛剤セットによれば、上記染毛方法を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、HC染料及び塩基性染料をベースカラーとして用いても、長期間色持ちを維持できる染毛方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の染毛方法の一実施形態について、以下に詳しく説明する。
本発明の染毛方法は、HC染料及び塩基性染料を含む第一剤を毛髪に塗布し、所定の時間放置する第一工程と、第一剤を塗布された毛髪をリンスして第一剤を流す第二工程と、シャンプー後の毛髪にポリフェノールを含有する第二剤を塗布し、所定の時間放置する、第三工程と、を備える。
【0012】
はじめに第一工程について説明する。
第一工程は、HC染料及び塩基性染料を含む第一剤を、毛髪の染毛しようとする部分に満遍なく塗布する工程である。第一剤は、例えば、主成分としてHC染料及び塩基性染料を含むベースカラー染毛剤である。
【0013】
HC染料は公知の「HC」を接頭辞として有する染料であり、分子径が小さい染料であるために毛髪の内部に浸透して水素結合や分子間引力によって染着し、より深みのある発色を付与する。その具体例としては、例えば、HCブルーNo.2、HCブルーNo.8、HCオレンジNo.1、HCオレンジNo.2、HCレッドNo.1、HCレッドNo.3、HCレッドNo.7、HCレッドNo.8、HCレッドNo.10、HCレッドNo.11、HCレッドNo.13、HCレッドNo.16、HCバイオレットNo.2、HCイエローNo.2、HCイエローNo.5、HCイエローNo.6、HCイエローNo.7、HCイエローNo.9、HCイエローNo.12、等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
塩基性染料は、分子内にアミノ基、または置換アミノ基を有し、水溶液中で陽イオンになる染料であり、従来から塩基性染料として知られたものが特に限定なく用いられうる。塩基性染料は、水溶液中で陽イオンになるために、毛髪表面のケラチンタンパクのマイナス部分とイオン結合することにより染着する。その具体例としては、例えば、ベーシックブルー7(C.i.42595)、ベーシックブルー16(C.I.12210)、ベーシックブルー22(C.I.61512)、ベーシックブルー26(C.I.44045)、ベーシックブルー99(C.I.56059)、ベーシックブルー117、ベーシックバイオレット10(C.I.45170)、ベーシックバイオレット14(C.I.42515)、ベーシックブラウン16(C.I.12250)、ベーシックブラウン17(C.I.12251)、ベーシックレッド2(C.I.50240)、ベーシックレッド12(C.I.48070)、ベーシックレッド22(C.I.11055)、ベーシックレッド51、ベーシックレッド76(C.I.12245)、ベーシックレッド118(C.I.12251:1)、ベーシックオレンジ31、ベーシックイエロー28(C.I.48054)、ベーシックイエロー57(C.I.12719)、ベーシックイエロー87、ベーシックブラック2(C.I.11825)等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
HC染料と塩基性染料との比率は特に限定されないが、HC染料と塩基性染料との合計量中のHC染料の割合が、1〜30質量%、さらには5〜20質量%程度であることが好ましい。
【0016】
第一剤は塩基性、具体的には、pH7.5〜9、さらには8〜8.5程度の塩基性を有することが、毛髪がアルカリ膨潤することにより、HC染料及び塩基性染料が毛髪に浸透し易くなる点から好ましい。このような液性に調整するために、第一剤はアルカリ剤を含有することが好ましい。このようなアルカリ剤の具体例としては、例えば、アセチルシステイン,システアミン,チオグリコール酸等のアルカリ性還元剤や、アンモニア、各種のアルカノールアミン、アンモニウム塩、有機アミン類、無機アルカリ、塩基性アミノ酸及びそれらの塩等が挙げられる。これらの中では、特に、アセチルシステイン,システアミン,チオグリコール酸のアルカリ性還元剤や、アセチルシステイン,システアミン,及びチオグリコール酸を組み合わせたアルカリ性還元剤を用いた場合には、染料が毛髪により入り易くなる傾向がある。これらは、それぞれ、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。アルカリ性還元剤は、第一剤中に0.01〜1質量%、さらには、0.1〜0.5質量%含有されることが好ましい。
【0017】
第一剤は、例えば、HC染料、塩基性染料、必要に応じて用いられるアルカリ剤等を所定の比率で配合し、従来から染毛剤成分の媒体として用いられているようなクリーム基剤等の液状媒体に混合してペースト状に、または、水溶液に調製されて、毛髪に塗布される。なお、クリーム基材としては、例えば、セタノール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、インステアリルアルコール、ミネラルオイル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソプロピル、トリグリセリル等の油脂成分とポリオキシエチレンラウリルエーテル、ラウリン酸ソルビタン、セテス−2、オレス−10、セトレス−20等の乳化剤等を適宜配合して得られるようなクリーム基剤が特に限定なく用いられうる。
【0018】
第一剤中に含有されるHC染料及び塩基性染料の濃度としては、HC染料と塩基性染料の合計量で、ペーストまたは水溶液中に0.5〜10質量%、さらには1〜5質量%であることが好ましい。
第一剤を塗布された毛髪は所定の時間放置される。放置する時間は、毛髪に付与される色の好みや用いられるHC染料及び塩基性染料の種類により適宜調整されるが、作業工程の観点から、通常5〜60分間、さらには、10〜30分間放置することが好ましい。また、放置の際には、第一剤を塗布された毛髪に遠赤外線を満遍なく照射することが好ましい。遠赤外線を毛髪に照射することにより、放置時間を短くすることができる。遠赤外線照射の際の毛髪表面の温度としては、20〜40℃、さらには25〜35℃程度の温度であることが毛髪を損傷したり、人体に過度な負担を与えない点から好ましい。
【0019】
第二工程は、所定の時間放置された、第一剤を塗布された毛髪をリンスして第一剤を流す工程である。
リンスは、毛髪に付着した第一剤を洗い流すことができれば、特に、その方法は限定されないが、好ましくはシャンプー剤を用いずに、水または微温湯で第一剤を洗い流すことが好ましい。洗い流した後は、通常、タオルドライを行う。
【0020】
第三工程は、リンス後の毛髪にポリフェノールを含有する第二剤を毛髪に塗布し、所定の時間放置する工程である。第二剤は、例えば、主成分としてポリフェノールを含有する水溶液である。
ポリフェノールの具体例としては、例えば、フラボノイド類(カテキン、アントシアニン、フラボン、イソフラボン、フラバン、フラバノン、ルチン)、フェノール酸類(クロロゲン酸、エラグ酸、没食子酸、没食子酸プロピル)、リグナン類、クルクミン類、クマリン類等が挙げられる。また、これらの化合物は、以下のような天然物由来の抽出物中に多く含まれるため、抽出物としても配合することができる。抽出物としては、エピカテキン,エピガロカテキン,エピカテキンガラート,エピガロカテキンガラートの何れか又はそれらの混合物を含む茶カテキン;アントシアニンを含むベリーポリフェノール;ヘナポリフェノール;インディゴポリフェノール;柿ポリフェノール;ナフトキノン系フラボノイド等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、HC染料及び塩基性染料で調色された色に影響を与えにくく、また、アレルギー源になりにくいことから茶カテキンが特に好ましい。なお、ヘナポリフェノールやインディゴポリフェノールの色素は比較的濃いために、HC染料及び塩基性染料で調色された色に影響を与えて調色された色を変化させてしまう傾向がある。
【0021】
第二剤は、例えば、ポリフェノールの水溶液又は水分散液であるペースト状に調製される、そして、毛髪に塗布される。水溶液又は水分散液であるペースト中のポリフェノールの含有割合は特に限定されないが、具体的には、5〜20質量%、さらには10〜15質量%であることが好ましい。なお、第二剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、ヘアカラー酸化剤として用いられるブロム酸等を配合してもよいが、ブロム酸を配合した場合には、ポリフェノールの酸化重合反応を阻害する傾向があるために、特に、目的が無い限り、ブロム酸等のヘアカラー酸化剤はなるべく配合しない方が好ましい。
【0022】
ポリフェノールを含有する第二剤を塗布し、所定の時間放置することにより、毛髪に付着又は浸透したHC染料及び塩基性染料がより強く定着される。この作用のメカニズムは充分に突き止めていないが、発明者の多数の実験結果から、活性が高いポリフェノールが空気中の酸素により酸化重合してカテキンに変化すること等により、毛髪に付着又は浸透したHC染料及び塩基性染料を覆う被膜を形成し、この被膜により、経時的な色落ちが抑制されると考えている。これは、特に、放置中に遠赤外線を照射することにより、効果が増加することからも、このようなメカニズムが推定される。すなわち、ポリフェノールを含有する第二剤を塗布した後、毛髪に遠赤外線を照射することにより、経時的な色落ちがさらに抑制される。
【0023】
遠赤外線照射の条件としては、毛髪表面の温度として20〜40℃、さらには25〜35℃程度の温度であり、10〜60分間、さらには、15〜30分間であることが、作業効率に優れ、毛髪を損傷したり、人体に過度な負担を与えたりしない点からも好ましい。なお、遠赤外線照射後に、所定の時間放置することにより、色落ちはさらに抑制される。
【0024】
そして、第二剤を塗布されて、所定の時間放置、好ましくは遠赤外線を照射して放置された毛髪に、仕上げのシャンプーを施して第二剤を洗い流すことにより、染色された毛髪が得られる。洗い流した後は、タオルドライ及び通風乾燥等を行う。このようにして、毛髪の染毛処理が完了する。
【0025】
本発明の染毛方法は、HC染料及び塩基性染料をベースカラーとして用いても、例えば、1ヶ月以上、さらには2ヶ月以上もの長期間の色持ちの維持を実現できる。また、ベースカラーとしてHC染料及び塩基性染料を用いるために、安全性に優れる。従って、白髪染めを長期的に繰り返して行う場合等にも、安心して用いることができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。なお、本発明の範囲は、本実施例により何ら限定されるものではない。
【0027】
(実施例1)
セタノールを主成分とするクリーム基材に、HC染料と塩基性染料とを1:9の割合で含有する染料混合物5質量%を混合したベースカラー剤50gと、アセチルシステインとシステアミンとチオグリコール酸との混合物であるアルカリ性還元剤1質量%含有するアルカリ剤50gとを混合して、第一剤を調製した。
【0028】
次に、一端で結束された総重量10gの人毛からなる毛髪束に調製された第一剤を塗布した。なお、毛髪束を構成する人毛の全ては大部分が白髪であった。
そして、第一剤が塗布された毛髪束を10分間放置した後、約15分間遠赤外線を照射した。このとき、毛髪束の温度は30℃程度であった。そして、毛髪束の白髪が茶色に満遍なく染まっていることを確認した後、毛髪束に付着した第一剤を水で洗い流した。そして、タオルで水分をよく拭き取った。
【0029】
次に、茶カテキンパウダー((株)ITCBグローバル製のお茶カラートリートメントパウダー)25gを微温湯175gに溶解することにより、第二剤を調製した。そして、調製された第二剤を毛髪束に塗布した。そして、第二剤が塗布された毛髪束を10分間放置した後、約20分間遠赤外線を照射した。このとき、毛髪束の温度は30℃程度であった。そして、さらに、約10分間自然放置した。
【0030】
そして、毛髪束を市販のシャンプー剤で洗毛した。そして、タオルで水分をよく拭き取った。
なお、上記染毛においては、毛髪束のほぼ半分のみの長さを染毛し、残りの半分は染毛しなかった。
このようにして半分の長さのみが染毛された毛髪束を得た。
そして、染毛された毛髪束に対して、一日1回シャンプーを施し、染毛部分の色の変化を染毛されていない部分の色を基準に経時変化を観察した。その結果、2ヶ月を経過しても、染毛された部分には茶色の染料が色抜けすることなく残っており、染毛された部分と染毛されなかった部分の色の境界が明確に残っていた。なお、70歳代の女性モニターに同じ工程で施術したときには、2ヶ月前に施術したときから伸びた根元の白髪部分と2ヶ月前に染毛した部分との境界が明確に観察された。
【0031】
(比較例1)
第二剤を塗布する処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして毛髪束を染毛した。すなわち、実施例1と同様にして、毛髪束に第一剤を塗布し、第一剤が塗布された毛髪束を10分間放置した後、約15分間遠赤外線を照射した。そして、毛髪束の白髪が茶色に満遍なく染まっていることを確認した後、毛髪束に付着した第一剤を水で洗い流し、さらに、市販のシャンプー剤で洗毛した。そして、タオルで水分をよく拭き取った。なお、上記染毛においても、毛髪束のほぼ半分のみの長さを染毛し、残りの半分は染毛しなかった。このようにして半分の長さのみが染毛された毛髪束を得た。
そして、染毛された毛髪束に対して、一日1回シャンプーを施し、染毛部分の色の変化を染毛されていない部分の色を基準に経時変化を観察した。その結果、約3週間経過したときには、染毛された部分が色あせ、染毛された部分と染毛されなかった部分との色の境界が明らかに不鮮明になった。
【0032】
(比較例2)
実施例1で調製したのと同様の、第一剤と第二剤とを1:1の割合で混合した。そして、一端で結束された総重量10gの人毛からなる毛髪束に調製された混合剤を塗布した。なお、毛髪束を構成する人毛の全ては大部分が白髪であった。
【0033】
そして、混合剤が塗布された毛髪束を10分間自然放置した後、約20分間遠赤外線を照射した。そして、さらに、約10分間自然放置した。そして、毛髪束を市販のシャンプー剤で洗毛した。そして、タオルで水分をよく拭き取った。このようにして半分の長さのみが染毛された毛髪束を得た。
そして、染毛された毛髪束に対して、一日1回シャンプーを施し、染毛部分の色の変化を染毛されていない部分の色を基準に観察した。その結果、約3週間経過したときには、染毛された部分が色あせ、染毛された部分と染毛されなかった部分との色の境界が明らかに不鮮明になった。この結果から、第一剤と第二剤とを混合して塗布しても、色持ちを充分に維持することができなかったことがわかる。
【0034】
(実施例2)
第二剤が塗布された毛髪束を10分間放置した後、約20分間遠赤外線を照射する代わりに、第二剤が塗布された毛髪束を30分間自然放置した以外は実施例1と同様にして毛髪束を染毛した。すなわち、実施例1と同様にして調製された第二剤を毛髪束に塗布した後、第二剤が塗布された毛髪束を30分間自然放置し、さらに、約10分間自然放置した。
そして、毛髪束を市販のシャンプー剤で洗毛した。そして、タオルで水分をよく拭き取った。上述した工程以外は、実施例1と同様にして毛髪束を染毛し、評価した。その結果、約2ヶ月経過したときには、染毛された部分が幾分色あせていた。しかし、染毛された部分と染毛されなかった部分との色の境界はある程度明確に分かれていた。この結果を実施例1の結果と比較すれば、遠赤外線を照射することにより、色持ち効果が向上することがわかる。
【0035】
(実施例3)
ヘナパウダー 25gを水175gに溶解することにより調製された第二剤を用いて、第二剤による処理を行った以外は、実施例1と同様にして毛髪束を染毛し、評価した。その結果、1ヶ月を経過しても、染毛された部分には黒茶色の染料が色抜けすることなく残っており、染毛された部分と染毛されなかった部分の色の境界が明らかであった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る染毛方法を用いて染毛した場合には、HC染料及び塩基性染料をベースカラーとして用いても、長期間色持ちを維持させることができる。従って、短期的な色持ちを目的とする染毛ではなく、長期的な色持ちを維持できる、所謂、永久染毛剤の代わりとして用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HC染料及び塩基性染料を含む第一剤を毛髪に塗布し、所定の時間放置する第一工程と、
前記第一剤を塗布された毛髪をリンスして第一剤を流す第二工程と、
前記第二工程の後に毛髪にポリフェノールを含有する第二剤を塗布し、所定の時間放置する第三工程と、を備えることを特徴とする染毛方法。
【請求項2】
前記ポリフェノールは茶カテキンを含む請求項1に記載の染毛方法。
【請求項3】
前記第三工程において所定の時間放置する際に、前記毛髪に遠赤外線を照射する請求項1または2に記載の染毛方法。
【請求項4】
前記第一剤は0.01〜1質量%のアルカリ性還元剤を含み、塩基性である請求項1〜3の何れか1項に記載の染毛方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の染毛方法を行うために用いられる染毛剤セットであり、
第一剤を調製するための、HC染料及び塩基性染料を含むベースカラー染毛剤と、
第二剤を調製するためのポリフェノールと、を組み合わせたことを特徴とする染毛剤セット。
【請求項6】
前記ポリフェノールは茶カテキンを含む請求項5に記載の染毛剤セット。

【公開番号】特開2013−67597(P2013−67597A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209097(P2011−209097)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【特許番号】特許第4993396号(P4993396)
【特許公報発行日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【出願人】(506239061)株式会社ICTBグローバル (1)
【Fターム(参考)】