説明

染毛方法

【課題】白髪等の染毛の効果が十分に得られると共に、毛髪に加えられるダメージを抑えることができる染毛方法を提供する。
【解決手段】染毛方法10は、第1染毛行程として、微アルカリカラー剤に低濃度(略3%)の過酸化水素を加えてなるPH7.5〜9.4の弱いアルカリ性の第1酸化染毛剤組成物を髪の根元側に塗布して10〜15分放置する。第1染毛行程の後に、流し行程として、髪を水洗することにより第1酸化染毛剤組成物が洗い流される。つぎに、第2染毛行程として、上記微アルカリカラー剤に第2酸化剤である低濃度(略2%)の過酸化水素液を加えてなる弱いアルカリ性の第2酸化染毛剤組成物を髪の根元側に塗布して9〜11分放置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ剤と染料と酸化剤とを含む酸化染毛剤組成物を用いて髪を染める染毛方法であり、特に染毛による毛髪に加えられるダメージを抑えることができる染毛方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化染毛剤組成物を用いる染毛方法については、アルカリカラー剤に高濃度(6%)の過酸化水素液を加えた高いアルカリ性の酸化染毛剤組成物を髪に塗布して通常30〜40分程度放置し、続いて、アルカリカラー剤よりアルカリ度の弱い微アルカリカラー剤に低濃度(2%)の過酸化水素液を加えた酸化染毛剤組成物を髪に塗布して10〜15分放置し、その後水洗により酸化染毛剤組成物を水洗除去する方法が行われている。白髪染めの場合には、微アルカリカラー剤の代わりにアルカリカラー剤、まれに低アルカリカラー剤が用いられている。この染毛方法によれば、アルカリカラー剤により髪が膨潤し、髪内部に入った過酸化水素がメラニン色素を分解して髪の明度を上げ、さらに染料が過酸化水素によって酸化することにより発色し、髪を染めることができるようになっている。
【0003】
ところで、アルカリカラー剤は、膨潤作用が大きいため、開いたキューティクルの隙間から毛髪内部のメラニン成分が流出しやすく、毛髪に与えるダメージが大きくなるという問題がある。また、アルカリカラー剤は、刺激臭が強いため、染毛を受ける人に不快感を与えていた。さらに、アルカリカラー剤は、頭皮に対する刺激が強いため、頭皮の弱い人に適用することが困難であった。これに対して、微アルカリカラー剤は、既染毛の色を補うために用いられるものであり、膨潤作用が小さいため、開いたキューティクルの隙間から毛髪内部のメラニン成分が流出し難く、毛髪に与えるダメージは小さく、また刺激臭も弱くさらに頭皮に対する刺激も少ないが、染色効果が小さくなるため単独で白髪を染めることは困難であるという問題があった。
【0004】
例えば、特許文献1に示すように、染料と、アルカリ剤と、酸化剤とを含む酸化染毛剤組成物を用いる染毛方法であって、新生毛に対しては、使用時のPHが9.5〜11.0のアルカリ性酸化染毛剤組成物を塗布し、既染毛に対しては、使用時のPHが7.5〜9.4の微アルカリ性酸化染毛剤組成物を塗布するようにした染毛方法が知られている。これにより、既染毛に対しては微アルカリ性酸化染毛剤を使用して、脱色の進行を小さくし、一方未だ脱色されていない新生毛に対してはアルカリ性の強いアルカリ性酸化染毛剤を使用することにより、既染毛の場合より脱色の程度を大きくすることにより、染毛後における既染毛部分と新生毛部分との間で、脱色の進行程度を均一にして、褪色時に髪の色の明るさに差を生じないようにしている。しかし、これによっても、新生毛に対しては、アルカリ性の強いアルカリ性酸化染毛剤組成物を使用することになるため、毛髪に与えるダメージを抑えることはできず、刺激臭も強く頭皮に対する刺激も強いという問題は解消されないのである。
【特許文献1】特開2002−241248
【0005】
また、アルカリカラー剤に比べてアルカリ度が低くアルカリ剤の含有量が少ないが、微アルカリカラー剤に比べてアルカリ剤含有量が多い低アルカリカラー剤に3%ないし6%の酸化剤を加えた酸化染毛剤組成物を用いて染色を行う方法もあるが、アルカリカラー剤を用いた場合に比べて染色が非常に暗くなり、ほとんど染色効果が得られないという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決しようとするもので、白髪等の染毛の効果が十分に得られると共に、毛髪に加えられるダメージを抑えることができ、また刺激臭が弱く頭皮に対する刺激も少ない染毛方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の構成上の特徴は、酸化染毛剤組成物を用いる染毛方法であって、微アルカリカラー剤に低濃度の第1酸化剤を加えたアルカリ性の弱い第1酸化染毛剤組成物を髪の根元側に塗布して10〜15分放置する第1染毛行程を行い、第1染毛行程の後に髪を水洗する流し行程を行い、流し行程の後に、微アルカリカラー剤に第1酸化剤より濃度の低い第2酸化剤を加えたアルカリ性の弱い第2酸化染毛剤組成物を髪の根元側に塗布して9〜11分放置する第2染毛行程を行うことにある。
【0008】
なお、微アルカリカラー剤は、PHが7.5〜9.4の範囲にあることを意味するもので、PHが9.5〜11.0の範囲の高アルカリ性のアルカリカラー剤と区別される。微アルカリカラー剤、アルカリカラー剤は、組成としてアルカリ剤と染料を含むものであり、アルカリ度が異なるものである。アルカリ剤としては、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を適宜配合したものである。染料としては、フェニレンジアミン類、アミノフェノール類、ジアミノビリジン類及びそれらの塩類等の内の1種類又は2種類以上の混合物である酸化染料中間体と、レゾルシン、ピロガロール、m−アミノフェノール等及びそれらの塩類であるカプラーとからなる染料や、その他タール色素、天然色素等の直接染料がある。また、酸化剤としては、過酸化水素、過酸化尿素がある。
【0009】
上記のように構成した本発明においては、アルカリ性の弱い第1酸化染毛剤組成物を髪に塗布して10〜15分放置する第1染毛行程においては、カラー剤による髪の膨潤作用が小さく毛に与えるダメージは小さいが、染毛も十分には行われない。しかし、第1染毛行程後に髪を水洗することにより、髪がわずかに染色されるとともに、膨潤した状態に保たれているため、その後の第2染毛行程において、微アルカリカラー剤に第1酸化剤より濃度の低い第2酸化剤を加えたアルカリ性の弱い第1酸化染毛剤組成物を髪の根元側に塗布して9〜11分放置することによって、髪の根元側部分に対する染毛効果が高められて、従来のアルカリカラー剤を用いた場合とほぼ同等の染毛が行われる。一方、第2染毛行程でも、微アルカリカラー剤により、膨潤作用が小さく開いたキューティクルの隙間から毛髪内部のメラニン成分が流出し難く、毛髪に与えるダメージが小さくなる効果は維持される。また、本発明の染毛方法においては、アルカリ性の弱い酸化染毛剤組成物が用いられるため、刺激臭も弱くまた頭皮に対する刺激も少ないので、染毛される多くの人に不快感を与えることなくしかも安全に染毛が行われる。さらに、本発明においては、染毛時間を従来の方法に比べて2/3程度に短縮できる。
【0010】
また、本発明において、第2染毛行程で第2酸化染毛剤組成物を髪の根元側に塗布した後、さらに第2酸化染毛剤組成物を残りの毛先側にも塗布することができる。このように、第2染毛行程において、毛先側の褪色が著しいような場合には、根元側に第2酸化染毛剤組成物を塗布した後に、毛先側に第2酸化染毛剤組成物を塗布することにより、髪のダメージを抑えつつ毛先側を根元側の染色に合わせることができる。
【0011】
また、本発明において、第1染毛行程での第1酸化染毛剤組成物を髪の根元側に塗布した後、さらに第2酸化染毛剤組成物を残りの毛先側にも塗布するようにしてもよい。このように、第1染毛行程において、髪の褪色が著しいような場合には、第1酸化染毛剤組成物の塗布後、さらに第2酸化染毛剤組成物を毛先側に塗布することにより、髪のダメージを抑えつつ毛先側の染色の程度を根元側に合わせることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、弱アルカリ性の第1酸化染毛剤組成物に含まれる微アルカリカラー剤により、髪の膨潤作用が小さく毛に与えるダメージは小さいが、染毛も十分には行われない状態で、第1染毛行程後に髪を水洗し、その後、第2酸化染毛剤組成物を髪の根元側に塗布することにより、髪の根元側に対する染毛効果が高められてアルカリカラー剤を用いた場合と同等程度の染毛が行われる。また、本発明によれば、従来のようにアルカリ性の強いアルカリカラー剤を用いていないので、毛髪に与えるダメージを少なくでき、また刺激臭も弱いので染毛を受ける人に与える不快感を抑えることができ、さらに頭皮に対する刺激も少ないので頭皮の弱い人に対しても安心して適用できる。また、本発明において、毛先側の褪色が著しいような場合には、第2染毛行程で第2酸化染毛剤組成物を髪の根元側に塗布した後、あるいは第1染毛行程で第1酸化染毛剤組成物を髪の根元側に塗布した後、毛先側に第2酸化染毛剤組成物を塗布することにより、髪のダメージを抑えつつ毛先側の染色を根元側に合わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施例について説明する。
実施例に係る酸化染毛剤組成物を用いる染毛方法においては、まず、第1染毛行程として、微アルカリカラー剤に第1酸化剤である低濃度(略3%)の過酸化水素を加えてなるPHが7.5〜9.4の弱アルカリ性の第1酸化染毛剤組成物が、図1に示す頭部の髪の根元側の新生毛1に塗布されて、10〜15分間放置される。これにより、第1染毛行程においては、微アルカリカラー剤による髪の膨潤作用が小さく毛に与えるダメージは小さいが、染毛も十分には行われない。
【0014】
第1染毛行程の後に、流し行程として、髪を水洗することにより第1酸化染毛剤組成物が洗い流される。このように、第1染毛行程後に髪を水洗することにより、髪がわずかに染色されると共に、膨潤した状態に保たれている。
【0015】
つぎに、第2染毛行程において、上記微アルカリカラー剤に第1酸化剤より濃度の低い第2酸化剤である低濃度(略2%)の過酸化水素液を加えてなる弱アルカリ性の第2酸化染毛剤組成物を髪の根元側の新生毛1に対して第2酸化染毛剤組成物が重ねて塗布されて、9〜11分間放置される。これにより、新生毛1の染毛効果が高められて所望の染毛が行われる。一方、第2染毛行程でも、微アルカリカラー剤により、膨潤作用が小さく開いたキューティクルの隙間から毛髪内部のメラニン成分が流出し難く、従来のアルカリ性の強いアルカリカラー剤を用いる場合に比べて、毛髪に与えるダメージを少なくする効果は維持される。なお、第2染毛行程において、髪の毛先部分である既染毛2について褪色が激しい場合には、上記第1酸化染毛剤組成物の塗布の後に、第2酸化染毛剤組成物を既染毛2に塗布することができ、これにより新生毛1と既染毛2との染色状態を合わせることができる。
【0016】
以上のように、本実施例によれば、微アルカリカラー剤による髪の膨潤作用が小さく毛に与えるダメージは小さいが、染毛も十分には行われない第1染毛行程後に髪を水洗することにより、新生毛1がわずかに染色されると共に、わずかに膨潤した状態に保たれているため、その後、第2酸化染毛剤組成物を新生毛1に塗布し、さらに毛先側の褪色が大きい場合は、毛先側である既染毛2に対して第2酸化染毛剤組成物を重ねて塗布することにより、髪全体に対する染毛効果が高められて所望の染毛が行われる。また、本実施例においては、従来のアルカリ性の強いアルカリカラー剤を用いることがないので、毛髪に与えるダメージを少なくする効果が得られる。さらに、本実施例によれば、アルカリ性の弱い微アルカリカラー剤を用いることにより刺激臭も弱いので、染毛を受ける人に与える不快感を抑えることができ、さらに頭皮に対する刺激も少ないので頭皮の弱い人に対しても安心して適用できる。
【0017】
なお、上記第1染毛行程において、髪の毛先側である既染毛2について褪色が激しい場合には、上記第1酸化染毛剤組成物の塗布の後に、上記第2酸化染毛剤組成物を既染毛2に塗布することができ、これにより新生毛1と既染毛2との染色状態を合わせることができる。また、上記第1酸化剤及び第2酸化剤である過酸化水素の濃度についても上記値を多少変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、微アルカリカラー剤に低濃度の酸化剤を加えた弱いアルカリ性の第1酸化染毛剤組成物を髪の根元側に塗布して10〜15分放置し、流し行程として髪を水洗することにより第1酸化染毛剤組成物を洗い流し、さらに微アルカリカラー剤に低濃度の第2酸化剤を加えた弱いアルカリ性の第2酸化染毛剤組成物を髪の根元側に塗布して9〜11分放置することにより、髪を傷めることなく適正な染毛を行うことが可能なので、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例である染毛方法を概略的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1…新生毛、2…既染毛。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化染毛剤組成物を用いる染毛方法であって、
微アルカリカラー剤に低濃度の第1酸化剤を加えたアルカリ性の弱い第1酸化染毛剤組成物を髪の根元側に塗布して10〜15分放置する第1染毛行程を行い、
第1染毛行程の後に髪を水洗する流し行程を行い、
該流し行程の後に、前記微アルカリカラー剤に前記第1酸化剤より濃度の低い第2酸化剤を加えたアルカリ性の弱い第2酸化染毛剤組成物を髪の根元側に塗布して9〜11分放置する第2染毛行程を行うことを特徴とする染毛方法。
【請求項2】
前記第2染毛行程で第2酸化染毛剤組成物を髪の根元側に塗布した後、さらに該第2酸化染毛剤組成物を残りの毛先側にも塗布することを特徴とする前記請求項1に記載の染毛方法。
【請求項3】
前記第1染毛行程で第1酸化染毛剤組成物を髪の根元側に塗布した後、さらに前記第2酸化染毛剤組成物を残りの毛先側にも塗布することを特徴とする前記請求項1又は2に記載の染毛方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−106687(P2007−106687A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297979(P2005−297979)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(505382179)
【Fターム(参考)】