説明

染液調合装置

【課題】染液の調合をコンパクトな構成により精度良く行うことができる染液調合装置を提供する。
【解決手段】複数種類の染液を供給可能な液供給装置10と、供給された染液を収容する調合用容器20と、調合用容器20に収容された染液を攪拌する攪拌装置30と、混合された染液を回収するための染色用容器90を搬送する搬送装置40とを備え、調合用容器20は、下部に設けられた液排出部21aと、液排出部21aを開閉する開閉装置とを備えており、搬送装置40は、液排出部21aの下方に染色用容器90を搬送する。また、搬送装置40により搬送される染色用容器90の直上にある液供給位置と、液供給位置から退避した洗浄位置との間で調合用容器20を移動させる退避装置50と、洗浄位置にある調合用容器20の内部に洗浄液を噴射する洗浄装置60とをさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の染液を調合する染液調合装置に関し、より詳しくは、調合した染液を染色用容器に供給可能な染液調合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
染液を貯留したポット内に生地を収容して、このポットを回転させることにより生地を染色するポット式の染色機が従来から知られている。例えば、特許文献1には、被染物及び染液を収容する染色容器を回転可能なユニットを複数配置してなる染色機が開示されている。このようなポット式の染色機は、ユニット毎に染液を調整して染色容器に供給する必要があるため、染色容器を多数備える場合には、染液の調合及び供給が繁雑である。
【0003】
そこで、このような原料の調合を自動的に行う装置も従来から知られている。例えば特許文献2には、調合容器を搬送して、原料仕込みステーション、攪拌ステーション、充填ステーションおよび洗浄ステーションを順次通過するように循環させることで、充填ステーションにおいて製品用容器に内容物を充填可能な構成が開示されている。
【0004】
ところが、このような装置を用いて染色用のポット内に染液を供給する場合には、調合容器を各ステーションに搬送するための設備が過大となり、製造コストの増加を招くおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−309476号公報
【特許文献2】特開2001−321654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、染液の調合をコンパクトな構成により精度良く行うことができる染液調合装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、複数の染液を調合する染液調合装置であって、複数種類の染液を供給可能な液供給手段と、供給された染液を収容する調合用容器と、前記調合用容器に収容された染液を攪拌する攪拌手段と、前記撹拌手段で混合された染液を前記調合用容器より排出させる排出手段と、前記調合用容器から排出される染液を回収するための所定位置まで染液を収容可能な染色用容器を搬送する搬送手段とを備える染液調合装置により達成される。
【0008】
本発明の好ましい実施態様においては、前記排出手段は、前記調合容器の下部に設けられた染液の排出部と、前記排出部を開閉する開閉装置とからなり、前記搬送手段は、前記排出部の下方に前記染色用容器を搬送することを特徴としている。
【0009】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、染液調合装置は、前記搬送手段により搬送される前記染色用容器の直上位置から前記調合用容器を退避位置に移動させる退避手段と、前記退避位置にある前記調合用容器の内部に洗浄液を噴射する洗浄手段とをさらに備えることを特徴としている。
【0010】
本発明の上記した構成において、前記液供給手段は、シリンダ内に収容された染液をピストンの押圧により吐出可能な分注器を複数備えることが可能である。この構成において、前記各シリンダは水平方向に延びるように並列配置され、前記各ピストンは一体的に移動するように連結部材により連結されていることが好ましく、連結された少なくとも2つの前記ピストンに対応する前記各シリンダの口径が互いに異なることが好ましい。この場合、前記分注器は、複数にグループ分けされており、前記連結部材による前記ピストンの連結がグループ毎に行われるようにしてもよい。前記分注器は、前記シリンダが上下に傾動可能となるように傾動板に支持されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の染液調合装置によれば、染液の調合をコンパクトな構成により精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る染液調合装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1における矢示A方向の斜視図である。
【図3】図1における矢示C方向の拡大斜視図である。
【図4】図1における矢示D方向の拡大斜視図である。
【図5】液供給装置の作動を説明するための概略断面図である。
【図6】傾動板の使用例を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る染液調合装置の全体構成を示す斜視図であり、図2は図1の矢示A方向から見た状態を示している。なお、以下の各図においては、構成の理解を容易にするために一部の部材を透明にしている。
【0014】
図1に示すように、染液調合装置1は、液供給装置10、調合用容器20、攪拌装置30、搬送装置40、退避装置50および洗浄装置60を備えており、これらは枠体2に支持されている。
【0015】
液供給装置10は、染液をそれぞれ供給する複数の分注器11を備えている。各分注器11は、それぞれ染液や助剤等を貯留するタンク(図示せず)に接続されており、ピストン13の後退によりシリンダ12内に染液等を充填した後、ピストン13の押圧により調合用容器20に向けて吐出可能に構成されている。分注器11は、複数(本実施形態では2つ)にグループ分けされており、各グループに対応して設けられた傾動板19の上面に、シリンダ12の長手方向が水平となるように並列配置されている。
【0016】
傾動板19は、枠体2に水平に延びるように固定された支持棒3に、ヒンジを介して取り付けられている。ヒンジの回転軸は、各シリンダ13の軸線と直交するように水平方向に延びており、各シリンダ13が上下(図1の矢示B方向)に傾動可能となるように、各傾動板19が個別に傾動自在に支持されている。各傾動板19の傾動は、手動で行うことも可能であり、或いは、エアシリンダ等の作動により自動で行うことも可能である。
【0017】
複数の分注器11は、グループ毎にピストン13の後端が連結部材14の突出部14aに連結されている。連結部材14は、傾動板19上のガイドレール19aに沿って、ピストン13の進退方向に往復動可能に支持されており、連結されたピストン13を同じ距離だけ一体的に移動することができる。連結部材14の駆動制御は、ステッピングモータ等の制御用モータ15により高精度に行われる。
【0018】
シリンダ12は、各グループ内で少なくとも2種類の口径を有しており、本実施形態においては大径のシリンダ121と、小径のシリンダ122の2種類をそれぞれ所定数組み合わせて構成されている。口径が異なるシリンダ121,122の組み合わせパターンは、グループ毎に相違することが好ましく、本実施形態においては、2つのグループのうち、一方のグループが2つの大径シリンダ121と6つの小径シリンダ122から構成され、他方のグループが1つの大径シリンダ121と8つの小径シリンダ122から構成されている。
【0019】
調合用容器20には、液供給装置10から染液等が供給される。図3及び図4は、調合用容器20の拡大斜視図である。図3及び図4は、それぞれ図1の矢示C方向及びD方向から見た状態を示している。調合用容器20は、容器本体21の開口上部が蓋体22により覆われて構成されており、蓋体22には供給ブロック23が取り付けられている。供給ブロック23は、液供給装置10の各分注器11から染液等を供給する配管(図示せず)の先端がそれぞれ接続される複数の開口23aを有しており、蓋体22の切欠部22aを介して容器本体21に染液等を供給することができる。
【0020】
容器本体21の下部は、下方に向けて先細となるようにテーパ状に形成されており、下端部に排出部21aが形成されている。排出部21aは、ロッド21bの下端に取り付けられた栓21cにより密閉可能であり、エアシリンダ21dによるロッド21bの上下動により、排出部21aを開閉することができる。
【0021】
攪拌装置30は、蓋体22の上面に設けられた駆動モータ31と、容器本体21の内部で回転可能となるように駆動モータ31に連結された回転棒32と、回転棒32の下端に設けられた回転羽根33とを備えており、容器本体21に供給された染液等を回転羽根33の回転により攪拌混合することができる。回転棒32は、容器本体21の軸線を通るロッド21bと平行になるように、ロッド21bの近傍に配置されている。
【0022】
搬送装置40は、染色用容器90を調合用容器20に向けて図1の矢示E方向に搬送するベルトコンベア41と、ベルトコンベア41の搬送終端部近傍に設けられた載置台5上に染色用容器90を押し出すプッシャ42とを備えている。載置台5の上面には、染色用容器90の重量を検出する重量センサ5aが設けられている。
【0023】
退避装置50は、調合用容器20を水平方向(図3の矢示F方向)に移動可能となるように支持するガイドレール51と、調合用容器20をガイドレール51に沿って駆動するエアシリンダ等のアクチュエータ52とを備えており、調合用容器20を、図3に示す洗浄液回収トレイ61の直上である洗浄位置と、図1に示す載置台5の直上である液供給位置との間で往復動させることができる。ガイドレール51及びアクチュエータ52は、枠体2に取り付けられている。
【0024】
洗浄装置60は、図3及び図4に示すように、蓋体22に設けられた噴射ノズル62を備えており、洗浄液タンク(図示せず)から配管(図示せず)を介して噴射ノズル62に洗浄液を供給することで、調合用容器20の内面全体に洗浄液を噴射することができる。噴射ノズル62は、本実施形態では攪拌装置30の回転棒32を挟んで両側に2つ配置されている。
【0025】
次に、上記の構成を備える染液調合装置1の作動を説明する。液供給装置10の分注器11は、図5に示すように、染液や助剤等を貯留するタンク11aに上流側配管11bを介して接続されており、上流側配管11bには上流側バルブ11cが設けられている。また、分注器11の吐出側には、染液等を調合用容器(図示せず)に供給するための下流側配管11dが設けられており、下流側配管11dには下流側バルブ11eが設けられている。
【0026】
まず、図5(a)に示すように、上流側バルブ11cを開いて下流側バルブ11eを閉じた状態で、ピストン13を後退させることにより、シリンダ12内に染液等が吸引され、分注器11に染液等が充填される。ついで、図5(b)に示すように、上流側バルブ11cを閉じて下流側バルブ11eを開いた状態で、ピストン13を前進させることにより、染液等が吐出される。そして、図5(c)に示すように、ピストン13の前進中に上流側バルブ11cを開いて下流側バルブ11eを閉じると、シリンダ12内に残留する染液等はタンク11aに戻される。各分注器11のピストン13は、グループ毎に連結部材(図示せず)により連結されて制御用モータ15により一体的に定速駆動されるため、染液等の吐出中における各分注器11の上流側バルブ11c及び下流側バルブ11eの切り替えタイミングを制御することにより、下流側バルブ11eが開いている間のピストン13の移動量(図5(c)の長さL)に相当する量の染液等が各分注器11から吐出され、分注器11毎に予め設定された量を吐出することができる。
【0027】
また、本実施形態のように、各グループのシリンダ12が、少なくとも2種類の口径を有することにより、各分注器11の吐出量を、上述したバルブの切り替えタイミングだけでなく、シリンダ12の口径選択によっても調整することができるので、吐出量の選択幅を拡げることができる。
【0028】
分注器11のグループ分けは、必要な調合染液の種類に対応させることができ、グループ毎に染液等の種類や吐出量を予め設定しておくことで、多種多様な染液の調合を迅速に精度良く行うことができる。
【0029】
こうして、調合用容器20には染液等の供給が行われ、染色用容器90は、靴下や下着等の被染物が予め収容された状態で、搬送装置40により載置台5上に搬送される。調合用容器20に供給された染液等は、載置台5の直上である液供給位置において、攪拌装置30の作動により攪拌された後、容器本体21の排出部21aの開放により染色用容器90に供給される。染色用容器90への調合染液の供給量は、載置台5に設けられた重量センサ5aの検出により、適正か否かを判別することができる。このように、染液を調合用容器20で調合した後に染色用容器90に供給することにより、染色用容器90内の被染物に調合前の原液が直接付着するおそれがなく、染色の色ムラ等を確実に防止することができる。
【0030】
調合染液が供給された染色用容器90は、不図示の搬送装置により次工程である染色装置に搬送される一方、調合用容器20は、退避装置50の作動により洗浄位置に移動する。洗浄位置においては、噴射ノズル62から調合用容器20内に洗浄液が噴射され、調合用容器20の洗浄が行われる。噴射された洗浄液は、容器本体21の排出部21aから排出され、洗浄液回収トレイ61を経て回収される。この後、調合用容器20を退避装置50の作動により再び液供給位置に移動することで、次の染液の調合を開始することができる。こうして、搬送装置40により載置台5上に順次搬送される染色用容器90に対して、多種多様な調合染液を迅速に効率よく供給することができる。
【0031】
傾動板19は、シリンダ13の軸線が水平となるように各分注器11を支持することが可能であるが、シリンダ13の先端側(吐出側)を上方に傾けることにより、図6(a)に示すように、シリンダ13内にエアaが混入した場合に、下流側配管11dの近傍にエアaを集めることができる。したがって、上流側バルブ11cを閉じて下流側バルブ11eを開いた状態で、ピストン13を前進させることにより、下流側配管11dから染液等と共にエアを容易に排出することができる。一方、図6(b)に示すように、シリンダ13の先端側を下方に傾けると、シリンダ13内の液lを上流側配管11bの近傍に集めることができる。したがって、シリンダ13内の液交換が必要な場合には、ピストン13の前進により上流側配管11bを介して全ての液を容易にタンク11aに戻すことができるので、交換作業を迅速に行うことができる。
【0032】
傾動板19を上下に傾動させる手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、図6(a),(b)に示すように、傾動板19において、ヒンジ19bを介して支持棒3に取り付けられた縁部と反対側の縁部にエアシリンダ19cを設け、エアシリンダ19cのロッド19dの先端を上方から枠体2に当接させて傾動板19を支持するように構成することで、ロッド19dの進退によって傾動板19を上下に傾動させることができる。
【0033】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、調合用容器20の下端部に染液の排出部21aを設けるとともに、排出部21aを開閉することが可能な、栓21c、ロッド21bおよびエアシリンダ21dからなる開閉装置を調合用容器20に設けることにより、撹拌装置30で混合された後の染液を調合用容器20より排出させるようにしているが、染液を調合用容器20より排出させる排出手段としては必ずしもこれに限られる必要はない。
【0034】
例えば、前記排出手段を、調合用容器20内に一端が引き込まれる吸液管と、染色用容器90内に一端が引き込まれる吐液管と、吸液管および吐液管の他端がそれぞれ接続される吸引装置とで構成し、撹拌装置30による撹拌後、吸引装置を駆動することで、吸水管で調合用容器20内の染液を吸い上げ、吐液管により染色用容器90内に吐き出すようにしてもよい。
【0035】
また、撹拌装置30による撹拌後、染液を収容した調合用容器20だけを蓋22、調合用容器20、撹拌装置30および退避装置50からなるユニットより取り外すように構成し、染色用容器90の上方で調合用容器20を傾動させることで、染液を調合用容器20より染色用容器90に排出させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 染液調合装置
2 枠体
5 載置台
10 液供給装置
11 分注器
12 シリンダ
13 ピストン
14 連結部材
15 制御用モータ
19 傾動板
20 調合用容器
21 容器本体
21a 排出部
21b ロッド
21c 栓
22 蓋体
30 攪拌装置
40 搬送装置
50 退避装置
51 ガイドレール
52 アクチュエータ
60 洗浄装置
61 洗浄液回収トレイ
62 噴射ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の染液を調合する染液調合装置であって、
複数種類の染液を供給可能な液供給手段と、
供給された染液を収容する調合用容器と、
前記調合用容器に収容された染液を攪拌する攪拌手段と、
前記撹拌手段で混合された染液を前記調合用容器より排出させる排出手段と、
前記調合用容器から排出される染液を回収するための所定位置まで染液を収容可能な染色用容器を搬送する搬送手段とを備える染液調合装置。
【請求項2】
前記排出手段は、前記調合容器の下部に設けられた染液の排出部と、前記排出部を開閉する開閉装置とからなり、前記搬送手段は、前記排出部の下方に前記染色用容器を搬送する請求項1に記載の染液調合装置。
【請求項3】
前記搬送手段により搬送される前記染色用容器の直上にある液供給位置と、前記液供給位置から退避した洗浄位置との間で前記調合用容器を移動させる退避手段と、
前記洗浄位置にある前記調合用容器の内部に洗浄液を噴射する洗浄手段とをさらに備える請求項1または2に記載の染液調合装置。
【請求項4】
前記液供給手段は、シリンダ内に収容された染液をピストンの押圧により吐出可能な分注器を複数備え、
前記各シリンダは水平方向に延びるように並列配置され、前記各ピストンは一体的に移動するように連結部材により連結されており、
連結された少なくとも2つの前記ピストンに対応する前記各シリンダの口径が互いに異なる請求項1〜3のいずれかに記載の染液調合装置。
【請求項5】
前記各分注器は、複数にグループ分けされており、前記連結部材による前記ピストンの連結がグループ毎に行われる請求項4に記載の染液調合装置。
【請求項6】
前記分注器は、前記シリンダが上下に傾動可能となるように傾動板に支持されている請求項4または5に記載の染液調合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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