説明

染着除去剤組成物および染着除去方法

【課題】各種染毛剤による皮膚染着の汚れを効果的に除去する性能を有し、しかも皮膚に対する刺激の少ない染着除去剤組成物、およびこうした染着除去剤組成物を用いて染着による汚れを効果的に除去する方法を提供する。
【解決手段】本発明の染着除去剤組成物は、染毛剤を使用したときの皮膚染着の汚れを除去するために用いる染着除去剤組成物であって、(A)非イオン性界面活性剤、および(B)還元剤を含有し、泡状に吐出して使用されるものであり、必要によって(C)浸透剤および(D)アルカリ剤を夫々含有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性染料や酸化染料を含有する染毛剤を使用して毛髪を染色したときに、少なくとも毛髪の生え際付近の頭皮の他、手や肌等に付着した皮膚染着の汚れを除去するための染着除去剤組成物、およびこうした染着除去剤組成物を用いた染着除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪を染色するには、酸性染料や酸化染料を含有する染毛剤が使用されるが、これらを使用したときに、少なくとも毛髪の生え際付近の頭皮の他、手や肌等に皮膚染着の汚れが付着することがある。こうしたことから、毛髪以外の箇所に付着した皮膚染着の汚れを取り除くための除去剤(以下、「染着除去剤」と呼ぶ)が必要となる。このような染着除去剤としては、これまで様々なものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、(A)尿素および/またはチオ尿素、および(B)亜硫酸塩および/またはアルカリ成分を配合した染着除去剤が提案されている。この染着除去剤は、剤型が液状のものを想定したものであり、従来の染着除去剤は液状のものがほとんどである。
【0004】
このような液状の染着除去剤では、皮膚染着の汚れが付着した部分(染着部分)を処理するときには、染着除去剤を脱脂綿等に含ませてから染着部分を擦る方法が一般的に採用されている。しかしながら、こうした方法では、脱脂綿等と皮膚との摩擦が生じることから皮膚刺激の面で問題がある。
【0005】
一方、特許文献2のように、剤型をゲル状やクリーム状とした染着除去剤も提案されている。この技術では、チオグリコール酸塩の如き還元性の脱色主剤に、染毛剤に含有されている金属を可溶化し得るキレート剤、および消炎剤を含有し、濃化剤によりゲルまたはクリーム状としたものである。しかしながら、こうした染着除去剤では、浸透性が低く染着除去を効果的に行えないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−239309号公報
【特許文献2】特開昭49−81548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこうした状況の下でなされたものであって、その目的は、各種染毛剤による皮膚染着の汚れを効果的に除去する性能を有し、しかも皮膚に対する刺激の少ない染着除去剤組成物、およびこうした染着除去剤組成物を用いて皮膚染着の汚れを効果的に除去する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成することのできた本発明の染着除去剤組成物とは、染毛剤を使用したときの皮膚染着の汚れを除去するために用いる染着除去剤組成物であって、(A)非イオン性界面活性剤、および(B)還元剤を夫々含有し、泡状に吐出して使用されるものである点に要旨を有する。
【0009】
本発明の染着除去剤組成物には、必要によって、更に(C)浸透剤および(D)アルカリ剤を夫々含有させることも有効である。
【0010】
一方、上記目的を達成し得た本発明方法とは、上記のような染着除去剤組成物を、フォーマー容器から泡状に吐出しつつ皮膚染着の汚れを除去する点に要旨を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、(A)非イオン性界面活性剤、および(B)還元剤を含有し、泡状に吐出して使用されるものとしたので、皮膚染着の汚れを効果的に除去することができると共に、染着除去の際の皮膚等に対する摩擦が少なく刺激も少ないものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者は、上記目的を達成するために様々な角度から検討を重ねた。そして、染毛後の乳化時(洗い落とし時)に、同時に染着除去剤組成物を使用すること、即ち、皮膚染着の汚れが存在する部分ができるだけ空気と触れ合わないようにすると染着除去が容易であることが判明した。
【0013】
通常、染毛剤の皮膚染着が気になるのは、白髪染めの場合がほとんどである。この白髪染めでは、根元部分をしっかりと染めるために、生え際部分の頭皮から染毛剤を塗布することが多い。そうすると、生え際付近の頭皮も毛髪と同様に染まることとなり、その汚れを除去しなければならなくなる。染毛剤の皮膚染着部分は空気と触れ合う時間が短いほど除去が容易であるという考え、染毛剤を洗い落とすと同時に染着除去剤を使用することが最も望ましいとの着想が得られた。
【0014】
これまで提案されている染着除去剤は、液状のものがほとんどである。液状の剤型では、染毛剤を洗い落とした後に脱脂綿等に含ませて擦り落とさなければならないため、洗い落としから染着除去剤の使用までに非常に時間がかかり、また手間がかかり、染着除去を効率よく行うことができない。その他、ゲル状やクリーム状のリムーバーも存在するが、染毛剤とのなじみが悪いため効率が良くない。これらに対して、泡状の剤型で染着除去剤を使用することで染毛剤を洗い落とすと同時に染着除去を行うことが、最も効率のよい方法であることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
本発明の染着除去剤組成物は、少なくとも(A)非イオン性界面活性剤および(B)還元剤を含有するものである。これらの各成分は夫々、化粧料において従来から用いられてきたものであるが、これらの成分を含有するものを泡状の剤型で使用することによって、予想できない効果が得られたのである。各成分(A)および(B)による作用効果について説明する。
【0016】
(A)非イオン性界面活性剤は、皮膚染着の汚れを洗浄すると共に、フォーマー容器により泡を生成する上で必要な成分である。このような非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルグリセリルエーテル、脂肪酸モノエタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0017】
(A)非イオン性界面活性剤の好ましい含有量は、染着除去剤組成物全体に占める割合で0.3〜10.0質量%程度である。(A)非イオン性界面活性剤の含有量が0.3質量%よりも少なくなると、染着除去効果が十分ではなくなる。また10.0質量%よりも過剰になっても、その効果が飽和し、それ以上の効果は期待できない。
【0018】
(B)還元剤は、皮膚染着の汚れを除去する上で必要な成分である。こうした還元剤としては、チオグリコール酸、チオグリコール酸塩類、システイン等のメルカプト化合物類、亜硫酸塩類、チオ硫酸塩類、ラクトンチオール若しくはその他の還元性を有する化合物が挙げられる。その中でも亜硫酸塩類、亜硫酸水素塩類が好ましい。還元剤の好ましい含有量は、0.1〜4.0質量%である。(B)成分の配合量が0.1質量%よりも少なくなると、除去効果が十分でなくなる。また4.0質量%よりも過剰になっても、その効果が飽和し、それ以上の効果は期待できない。
【0019】
本発明の染着除去剤組成物には、必要によって、更に(C)浸透剤および(D)アルカリ剤を夫々含有させることも有効である。これらのうち、(C)浸透剤は、皮膚染着した染料を溶かし出す上で有効な成分であり、溶剤としての作用の他、皮膚への浸透を助ける作用も発揮する。こうした浸透剤としては、ベンジルアルコールやエタノール、プロパノール等のアルコール類、N−メチルピロリドン、プロピレングリコール、プロピレンカーボネート、尿素等が挙げられる。その中でも、エタノール、N−メチルピロリドン、ベンジルアルコールが好ましい。浸透剤の好ましい含有量は、1.0〜7.0質量%程度である。1.0質量%よりも少ないと染着除去効果が弱くなり、7.0質量%よりも多くなってもそれ以上の効果は期待できない。
【0020】
(D)アルカリ剤は、皮膚染着の汚れを除去する上で有効な成分である。こうしたアルカリ剤としては、アンモニア水やモノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類を示す有機アミン類、水酸化ナトリウム等の無機アルカリ剤が挙げられる。その中でも、モノエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。アルカリ剤の好ましい含有量は、0.5〜3.0質量%程度である。0.5質量%よりも少なくなると染着除去効果が弱くなり、3.0質量%よりも多くなってもそれ以上の効果は期待できず、却って皮膚への刺激の原因となるので好ましくない。
【0021】
本発明の染着除去剤組成物は、その剤型が泡状であることも特徴の一つとするものであり、泡状に吐出するためにはフォーマー容器が用いられる。このフォーマー容器は、ノンエアゾール型の容器であって、染着除去剤組成物を空気と混合し泡状に吐出させるために使用する。ノンエアゾール型の容器は再利用が可能であり安価であることから容易に取り扱うことが可能である。
【0022】
フォーマー容器としては、ポンプフォーマー容器、スクイズフォーマー容器等、ノンエアゾール型の容器で泡吐出機能を有するものであればいずれの容器を用いることもできる。皮膚の上に一定時間泡状であることが効果的であるため、フォーマー容器としては泡持ちの点から特にポンプフォーマーが好ましい。
【0023】
本発明の染着除去剤組成物には、上記以外にも染着除去剤組成物に通常添加されるような成分(添加剤)を含有することができる。こうした添加剤としては、例えば、油脂類・ワセリン・ワックス類などの油剤、保湿剤、界面活性剤類(カチオン性界面活性剤類・アニオン性界面活性剤類・両性界面活性剤類)、シリコーン類、カチオン化ポリマー、増粘・ゲル化剤、キレート剤、酸化防止剤、安定化剤、pH調整剤、香料、色素等を挙げることができ、これらを適宜配合することができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0025】
[実施例1]
下記表1に示す配合割合で各種原料を配合して調製した染着除去剤組成物(処方例1)を、下記のフォーマー容器(若しくは泡立て器)により泡状にした際の泡立ちおよび泡持ちの比較を行った。また、フォーマー容器や泡立て器における使用時の簡便性についても調査した。
【0026】
【表1】

【0027】
(1)フォーマー容器A:ポンプフォーマー、大和製罐社製、メッシュの粗さ(目開き)は混合室200メッシュ(1インチ(25.4mm)あたり200の桝目)、先端255メッシュ(1インチ(25.4mm)あたり255の桝目)
(2)フォーマー容器B:ポンプフォーマー、大和製罐社製、メッシュの粗さ(目開き)は混合室100メッシュ(1インチ(25.4mm)あたり100の桝目)、先端200メッシュ(1インチ(25.4mm)あたり200の桝目)
(3)フォーマー容器C:スクイズフォーマー、大和製罐社製、メッシュの粗さ(目開き)は混合室200メッシュ(1インチ(25.4mm)あたり200の桝目)、先端255メッシュ(1インチ(25.4mm)あたり255の桝目)
(4)電動泡立て器:貝印製、ハンドミキサー
【0028】
(泡立ちの評価方法および評価基準)
泡立ちについて、目視にて評価を行った。
◎:極めて均一できめ細かい泡
○:均一できめ細かい泡
△:不均一できめが粗い泡
×:泡がきれいにできない
【0029】
(泡持ちの評価方法および評価基準)
泡持ちについて、目視にて評価を行った。
◎:非常に持続性が長く、塗布後5分以上泡が持続する
○:十分な持続性を有し、塗布後もしばらく泡が持続する
△:塗布できる泡は生成するが、塗布した後すぐに泡が消える
×:吐出後すぐに泡が消え、塗布中に液ダレを生じる
【0030】
(フォーマー容器、泡立て器の簡便性)
○:簡便であり手間にならない
×:使いづらく手間である
【0031】
その結果を、下記表2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
この結果から明らかなように、フォーマー容器にて泡状に吐出させることによって、泡立ちが良好であり、特にポンプフォーマー容器では泡立ちおよび泡持ちが良好である。また、フォーマー容器では、使用時の簡便性も良好であることが分かる。
【0034】
[実施例2]
市販の酸化染毛剤[第1剤:「キャラデコNB/d−5/3」(酸化染毛剤:中野製薬株式会社製)、第2剤:「キャラデコ オキサイド 06」(過酸化水素系酸化剤:中野製薬株式会社製)、第1剤と第2剤の混合比率1:1]を、人の前腕または上腕部に塗布し(1平方センチメーター、0.2g)、30分放置した。
【0035】
下記表3に示す各種配合割合で各種原料を配合して調製した染着除去剤組成物(処方例2〜5)を、(1)フォーマー容器により泡状にして染毛剤と一緒に皮膚になじませ、人指し指の腹で一定の強さで揉み込む操作を10往復させて水洗した場合と、(2)染毛剤を水洗した後、脱脂綿に含浸させ一定の強さで拭き取る操作を10往復させた場合とで、染着除去および皮膚刺激の評価を行った。このときの評価方法と評価基準は、下記の通りである。
【0036】
(染着除去の評価方法)
上記染着除去処理後の皮膚染着の残り具合について、専門のパネラー(10名)が目視にて評価を行い、その合計値を求め下記の基準によって評価した。
3点:ほぼ除去できた
2点:やや着色が残っている
1点:ほとんど除去できず着色が残っている
【0037】
[染着除去の評価基準]
◎:26〜30点
○:21〜25点
△:16〜20点
×:10〜15点
【0038】
(皮膚刺激の評価方法)
上記染着除去処理後の皮膚刺激について、専門のパネラー(10名)が目視にて評価を行い、その合計値を求め下記の基準によって評価した。
3点:発赤がなく、処理前と皮膚の状態は同じである
2点:やや発赤が見られる
1点:発赤が見られる
【0039】
[皮膚刺激の評価基準]
◎:26〜30点
○:21〜25点
△:16〜20点
×:10〜15点
【0040】
その結果を、染着除去剤組成物の処方例および除去方法(処方例2〜5:除去方法1〜7)と共に、下記表3に示す。
【0041】
【表3】

【0042】
この結果から明らかなように、フォーマー容器により泡状にして染着除去を行った方(除去方法1〜3、5〜7)が、染着除去効果が高く、皮膚刺激も抑えられることが分かる。
【0043】
[実施例3]
市販の酸性染毛剤[「キャラデコアシッドカラー N」(酸性染毛剤:中野製薬株式会社製)]を人の前腕または上腕部に塗布し(1平方センチメーター、0.2g)、15分放置した。
【0044】
下記表4の処方例6に示した染着除去剤組成物を、(1)各種フォーマー容器A〜Cにより、泡状にして染毛剤と一緒に皮膚になじませ、人指し指の腹で一定の強さで揉み込む操作を10往復させて水洗した場合(除去方法8〜10)と、(2)染毛剤を水洗した後、脱脂綿に含浸させ一定の強さで拭き取る操作を10往復させた場合(除去方法11)とにおいて、染着除去および皮膚刺激の評価を実施例2と同様に行った。
【0045】
その結果を、染着除去剤組成物の処方例(処方例6)および除去方法(除去方法8〜11)と共に、下記表4に示す。
【0046】
【表4】

【0047】
この結果から明らかなように、フォーマー容器A〜Cにより泡状にして染着除去を行った方が、染着除去効果が高く、皮膚刺激も抑えられていることが分かる。
【0048】
[実施例4]
市販の酸化染毛剤[第1剤:「キャラデコNB/d−5/3」(酸化染毛剤:中野製薬株式会社製)、第2剤:「キャラデコ オキサイド 06」(過酸化水素系酸化剤:中野製薬株式会社製)、第1剤と第2剤の混合比率1:1]を、人の前腕または上腕部に塗布し(1平方センチメーター、0.2g)、30分放置した。
【0049】
下記表5に示す配合割合で各種原料を配合して調製した染着除去剤組成物(処方例7)を、(1)フォーマー容器Aにより、泡状にして染毛剤と一緒に皮膚になじませ、人指し指の腹で一定の強さで揉み込む操作を10往復させて水洗した場合(除去までの時間0分)と、(2)染毛剤を水洗して1分経過後に、フォーマー容器Aにより、泡状にして染毛剤と一緒に皮膚になじませ、人指し指の腹で一定の強さで揉み込む操作を10往復させて水洗した場合と、(3)染毛剤を水洗して5分経過後に、フォーマー容器Aにより、泡状にして染毛剤と一緒に皮膚になじませ、人指し指の腹で一定の強さで揉み込む操作を10往復させて水洗した場合とで、染着除去効果の比較を行った。つまり、染毛剤を水洗してから染着除去剤組成物を使用するまでの時間を0分(直後)、1分後、5分後と変化させたときの染着除去効果の比較を行った(評価方法は実施例2と同じ)。
【0050】
その結果を、染着除去剤組成物の処方例(処方例7)および除去までの時間と共に、下記表5に示す。
【0051】
【表5】

【0052】
この結果から明らかなように、染毛剤を取り除いてから染着除去を行うまでの時間が短いほど染着除去効果が高いことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染毛剤を使用したときの皮膚染着の汚れを除去するために用いる染着除去剤組成物であって、(A)非イオン性界面活性剤、および(B)還元剤を夫々含有し、泡状に吐出して使用されるものであることを特徴とする染着除去剤組成物。
【請求項2】
更に、(C)浸透剤および(D)アルカリ剤を夫々含有するものである請求項1に記載の染着除去剤組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の染着除去剤組成物を、フォーマー容器から泡状に吐出しつつ皮膚染着の汚れを除去する染着除去方法。

【公開番号】特開2012−126667(P2012−126667A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278547(P2010−278547)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000213482)中野製薬株式会社 (57)
【Fターム(参考)】