説明

染着除去剤組成物および染着除去方法

【課題】各種染毛剤による皮膚染着の汚れを効果的に除去する性能を有し、しかも皮膚に対する刺激の少ない染着除去剤組成物、およびこうした染着除去剤組成物を用いて皮膚染着の汚れを効果的に除去する方法を提供する。
【解決手段】本発明の染着除去剤組成物は、染毛剤を使用したときの皮膚染着の汚れを除去するために用いる染着除去剤組成物であって、(A)酸化エチレンの付加モル数が40〜80molであるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、および(B)ピロ亜硫酸塩を含有するものであり、必要によって(C)ベンジルアルコール、(D)N−メチルピロリドン、および(E)アルカリ剤を夫々含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性染料や酸化染料を含有する染毛剤を使用して毛髪を染色したときに、少なくとも毛髪の生え際付近の頭皮の他、手や肌等に付着した皮膚染着の汚れを除去するための染着除去剤組成物、およびこうした染着除去剤組成物を用いた染着除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪を染色するには、酸性染料や酸化染料を含有する染毛剤が使用されるが、これらを使用したときに、少なくとも毛髪の生え際付近の頭皮の他、手や肌等に皮膚染着の汚れが付着することがある。こうしたことから、毛髪以外の箇所に付着した皮膚染着の汚れを取り除くための除去剤(以下、「染着除去剤」と呼ぶ)が必要となる。このような染着除去剤としては、これまで様々なものが提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、(A)両性高分子化合物および/またはカチオン性高分子化合物、および(B)ベンジルアルコールおよび/またはN−メチルピロリドン等を含有するステインリムーバ組成物(染着除去剤)が提案されている。また、特許文献2には、(A)カチオン型界面活性剤、(B)還元性物質、および(C)ベンジルアルコールおよび/またはN−メチルピロリドン等を含有するステインリムーバ組成物(染着除去剤)が提案されている。
【0004】
特許文献3には、(A)両性界面活性剤、(B)非イオン性界面活性剤、(C)芳香族アルコールおよび/または一価の低級アルコール、(D)無機アルカリ剤および/または有機アルカリ剤等を含有する染着除去料(染着除去剤)が提案されている。特許文献4には、(a)尿素、チオ尿素、およびヒドロキシエチル尿素の中から選ばれる1種または2種以上、(b)芳香族アルコール、(c)亜硫酸塩および/またはピロ亜硫酸塩、(d)水等を含有する毛髪用染料除去料(染着除去剤)が提案されている。
【0005】
特許文献5には、(A)尿素および/またはチオ尿素、および(B)亜硫酸塩および/またはアルカリ成分を配合した染着除去剤が提案されている。特許文献6には、チオグリコール酸塩の如き還元性の脱色主剤に、染毛剤に含有されている金属を可溶化し得るキレート剤、および消炎剤を含有し、濃化剤によりゲルまたはクリーム状にされる脱色剤(染着除去剤)が提案されている。
【0006】
しかしながら、これまで提案されている技術では、皮膚染着の汚れを除去する効果が十分発揮されているとは言えず、しかも毛髪に大きな損傷を与え、頭皮刺激を起こしやすいという問題がある。また上記した特許文献1〜5の技術は、半永久染毛剤である酸性染料による染着のみを対象としており、一方特許文献6の技術では永久染毛剤である酸化染料による染着のみを対象とするものである。美容室等ではこれら2種類の染着除去剤を準備する必要があることから、酸性染料および酸化染料による皮膚染着の汚れを除去できる染着除去剤が望まれているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−335239号公報
【特許文献2】特開平11−240818号公報
【特許文献3】特開平11−209237号公報
【特許文献4】特開2007−131569号公報
【特許文献5】特開平8−239309号公報
【特許文献6】特開昭49−81548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこうした状況の下でなされたものであって、その目的は、酸性染料および酸化染料による皮膚染着の汚れを効果的に除去する性能を有し、しかも皮膚に対する刺激の少ない染着除去剤組成物、およびこうした染着除去剤組成物を用いて皮膚染着の汚れを効果的に除去する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成することができた本発明の染着除去剤組成物とは、染毛剤を使用したときの皮膚染着の汚れを除去するために用いる染着除去剤組成物であって、(A)酸化エチレンの付加モル数が40〜80molであるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、および(B)ピロ亜硫酸塩を含有する点に要旨を有するものである。
【0010】
本発明の染着除去剤組成物において、染着除去剤組成物全体に占める割合で、(A)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の含有量が0.3〜10.0質量%であると共に、(B)ピロ亜硫酸塩の含有量が0.1〜4.0質量%であることが好ましい。
【0011】
本発明の染着除去剤組成物には、必要によって、更に(C)ベンジルアルコール、(D)N−メチルピロリドン、および(E)アルカリ剤を夫々含有させることも有効である。
【0012】
本発明の染着除去剤組成物は、泡状に吐出して使用されるものであることが好ましい。また、本発明の皮膚染着の汚れを除去する方法とは、染着除去剤組成物をフォーマー容器から染着除去剤組成物を泡状に吐出することによって皮膚染着の汚れを除去する点に要旨を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、(A)酸化エチレンの付加モル数が40〜80molであるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、および(B)ピロ亜硫酸塩を含有することによって、酸性染料および酸化染料による皮膚染着の汚れを効果的に除去する性能を有し、しかも皮膚に対する刺激の少ない染着除去剤組成物が実現できた。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者は、上記目的を達成するために様々な角度から検討を重ねた。その結果、特定の非イオン性界面活性剤と特定の還元剤を配合して染着除去剤組成物とすることにより、十分な汚れ落とし性能(染着除去性能)を発揮し、しかも皮膚に対する刺激のない染着除去剤組成物が実現できることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
本発明の染着除去剤組成物は、少なくとも(A)酸化エチレンの付加モル数が40〜80molであるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、および(B)ピロ亜硫酸塩を含有するものである。これら各成分は、夫々化粧料において従来から使用されてきたものであるが、これらを組み合わせて配合することによって、上記目的に適う染着除去剤組成物が実現できたのである。各成分(A)および(B)による作用効果について説明する。
【0016】
(A)酸化エチレンの付加モル数が40〜80molであるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、染着除去時の皮膚刺激が少なく、且つ皮膚染着を効果的に洗浄する上で必要な成分である。一般的には、酸化エチレン付加型の非イオン性界面活性剤では、酸化エチレンの付加モル数が小さいほど皮膚への浸透性が高いため洗浄力が高くなり、その代わりに皮膚刺激も高くなる傾向となる。また、酸化エチレンの付加モル数が大きいほど皮膚への浸透性が低いため皮膚刺激は低いが、その代わりに洗浄力は低い傾向にある。しかしながら、本発明者が鋭意検討したところによれば、酸化エチレンの付加モル数が40〜80molであるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油では、高い洗浄性と低い皮膚刺激性の両方を兼ね備えていることが判明したのである。
【0017】
(A)酸化エチレンの付加モル数が40〜80molであるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の好ましい含有量は、染着除去剤組成物全体に占める割合で、0.3〜10.0質量%である。(A)成分の含有量が0.3質量%よりも少なくなると、染着除去効果が十分でなくなる。また10.0質量%よりも過剰になっても、その効果が飽和し、それ以上の効果は期待できない。より好ましくは、0.3〜5.0質量%程度である。
【0018】
(B)ピロ亜硫酸塩は、還元剤としての役割を果たし、皮膚染着を効果的に除去する上で必要な成分である。ピロ亜硫酸塩の好ましい配合量は、染着除去剤組成物全体に占める割合で、0.1〜4.0質量%である。(B)成分の配合量が0.1質量%よりも少なくなると、除去効果が十分でなくなる。また4.0質量%よりも過剰になっても、その効果が飽和し、それ以上の効果は期待できない。
【0019】
本発明の染着除去剤組成物には、必要によって、更に(C)ベンジルアルコール、(D)N−メチルピロリドン、および(E)アルカリ剤を夫々含有させることも有効である。これらのうち、(C)ベンジルアルコールと(D)N−メチルピロリドンは、溶剤としての役割を果たし、皮膚に染着した染料を溶かし出し取り除く上で有用な成分である。
【0020】
(C)ベンジルアルコールの好ましい配合量は、染着除去剤組成物全体に占める割合で、1.0〜7.0質量%程度である。(C)成分の配合量が1.0質量%よりも少なくなると、染着除去効果が弱くなり、7.0質量%よりも多くなってもそれ以上の効果は期待できないばかりか、不快な臭いが強くなるので好ましくない。
【0021】
(D)N−メチルピロリドンの好ましい配合量は、1.0〜7.0質量%程度である。1.0質量%よりも少なくなると染着除去効果が弱くなり、7.0質量%よりも多くなってもそれ以上の効果は期待できないばかりか、皮膚への刺激の原因となる。
【0022】
一方、(E)アルカリ剤としては、アンモニア水やモノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類を示す有機アミン類、水酸化ナトリウム等の無機アルカリ剤が挙げられる。その中でも、モノエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。この(E)アルカリ剤は、皮膚を膨潤させ各種薬剤の浸透効果を高める上で有用な成分である。(E)アルカリ剤の好ましい配合量は、0.5〜3.0質量%程度である。(E)成分が0.5質量%よりも少なくなると、染着除去効果が弱くなり、3.0質量%よりも多くなってもそれ以上の効果は期待できないばかりか、皮膚への刺激の原因となる。
【0023】
本発明の染着除去剤組成物の剤型としては、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、泡状等いずれでも使用できるが、皮膚刺激や操作性の点からして、泡状に吐出して使用されるものであることが最も好ましい。
【0024】
本発明の染着除去剤組成物を泡状に吐出して使用するに際しては、染着除去剤組成物を泡状に吐出するフォーマー容器に収容し、フォーマー容器から染着除去剤組成物を泡状に吐出させることになるが、こうした方法を採用することによって、皮膚刺激を低減しつつ良好な操作性を維持して染着物を除去することができる。
【0025】
本発明の染着除去剤組成物には、上記の成分以外にも染着除去剤組成物に通常添加されるような成分(添加剤)を含有することができる。こうした添加剤としては、例えば、油脂類・ワセリン・ワックス類などの油剤、保湿剤、界面活性剤類(カチオン性界面活性剤類・アニオン性界面活性剤類・両性界面活性剤類)、シリコーン類、カチオン化ポリマー、増粘・ゲル化剤、キレート剤、酸化防止剤、安定化剤、pH調整剤、香料、色素等を挙げることができ、これらを適宜配合することができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0027】
[実施例1]
市販の酸化染毛剤[第1剤:「キャラデコNB/d−5/3」(酸化染毛剤:中野製薬株式会社製)、第2剤:「キャラデコ オキサイド 06」(過酸化水素系酸化剤:中野製薬株式会社製)、第1剤と第2剤の混合比率1:1]を、人の前腕または上腕部に塗布し(1平方センチメーター、0.2g)、30分放置した。
【0028】
下記表1、2に示す各種配合割合で各種原料を配合して調製した染着除去剤組成物(処方例1〜18)を、フォーマー容器[ポンプフォーマー:大和製罐社製、メッシュの粗さ(目開き):混合室200メッシュ(1インチ(25.4mm)あたり200の桝目)、先端255メッシュ(1インチ(25.4mm)あたり255の桝目)]により、泡状にして染毛剤と一緒に皮膚へなじませ、人指し指の腹で一定の強さで揉み込む操作を10往復させて水洗したときの染着除去および皮膚刺激の評価を行った。このときの評価方法と評価基準は、下記の通りである。
【0029】
(染着除去の評価方法)
上記染着除去処理後の皮膚染着の残り具合について、専門のパネラー(10名)が目視にて評価を行い、その合計値を求め下記の基準によって評価した。
3点:ほぼ除去できた
2点:やや着色が残っている
1点:ほとんど除去できず着色が残っている
【0030】
[染着除去の評価基準]
◎:26〜30点
○:21〜25点
△:16〜20点
×:10〜15点
【0031】
(皮膚刺激の評価方法)
上記染着除去処理後の皮膚刺激について、専門のパネラー(10名)が目視にて評価を行い、その合計値を求め下記の基準によって評価した。
3点:発赤がなく、処理前と皮膚の状態は同じである
2点:やや発赤が見られる
1点:発赤が見られる
【0032】
[皮膚刺激の評価基準]
◎:26〜30点
○:21〜25点
△:16〜20点
×:10〜15点
【0033】
その結果を、染着除去剤組成物の処方例(処方例1〜18)と共に、下記表1、2に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
これらの結果から明らかなように、本発明で規定する要件を満足する染着除去剤組成物(処方例1〜3、7〜18)では、染着除去効果が高く、皮膚刺激も少ないことが分かる。これに対し、酸化エチレンの付加モル数が40〜80molを外れるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いたもの(処方例4〜6)では、染着除去効果または皮膚刺激のいずれかが低下していることが分かる。
【0037】
[実施例2]
市販の酸化染毛剤[第1剤:「キャラデコNB/d−5/3」(酸化染毛剤:中野製薬株式会社製)、第2剤:「キャラデコ オキサイド 06」(過酸化水素系酸化剤:中野製薬株式会社製)、第1剤と第2剤の混合比率1:1]を、人の前腕または上腕部に塗布し(1平方センチメーター、0.2g)、30分放置した。
【0038】
上記表1の処方例1に示した染着除去剤組成物を、染毛剤を水洗した後脱脂綿に含浸させ一定の強さで拭き取る操作を10往復させた場合(除去方法1)と、フォーマー容器[ポンプフォーマー:大和製罐社製、メッシュの粗さ(目開き):混合室200メッシュ(1インチ(25.4mm)あたり200の桝目)、先端255メッシュ(1インチ(25.4mm)当たり255の桝目]により、泡状にして染毛剤と一緒に皮膚へなじませ、人指し指の腹で一定の強さで揉み込む操作を10往復させて水洗した場合(除去方法2)とにおいて、染着除去および皮膚刺激の評価を実施例1と同様に行った。
【0039】
その結果を、染着除去剤組成物の処方例(処方例1)および除去方法と共に、下記表3に示す。
【0040】
【表3】

【0041】
表3の結果から明らかなように、染着除去および皮膚刺激はいずれも良好な結果が得られているが、フォーマー容器により泡状にして染着除去を行った方(除去方法2)が染着除去効果が更によくなり、皮膚刺激も抑えられることが分かる。
【0042】
[実施例3]
市販の酸性染毛剤[「キャラデコアシッドカラー N」(酸性染毛剤:中野製薬株式会社製)]を人の前腕または上腕部に塗布し(1平方センチメーター、0.2g)、15分放置した。
【0043】
上記表1の処方例1に示した染着除去剤組成物を、染毛剤を水洗した後脱脂綿に含浸させ、一定の強さで拭き取る操作を10往復させた場合(除去方法3)と、フォーマー容器[ポンプフォーマー:大和製罐社製、メッシュの粗さ(目開き):混合室200メッシュ(1インチ(25.4mm)あたり200の桝目)、先端255メッシュ(1インチ(25.4mm)あたり255の桝目)]により、泡状にして染毛剤と一緒に皮膚へなじませ、人指し指の腹で一定の強さで揉み込む操作を10往復させて水洗した場合(除去方法4)とにおいて、染着除去および皮膚刺激の評価を実施例1と同様に行った。
【0044】
その結果を、染着除去剤組成物の処方例(処方例1)および除去方法と共に、下記表4に示す。
【0045】
【表4】

【0046】
表4の結果から明らかなように、フォーマー容器により泡状にして染着除去を行った方(除去方法4)が染着除去効果が高く、皮膚刺激も抑えられることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染毛剤を使用したときの皮膚染着の汚れを除去するために用いる染着除去剤組成物であって、(A)酸化エチレンの付加モル数が40〜80molであるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、および(B)ピロ亜硫酸塩を含有することを特徴とする染着除去剤組成物。
【請求項2】
染着除去剤組成物全体に占める割合で、(A)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の含有量が0.3〜10.0質量%であると共に、(B)ピロ亜硫酸塩の含有量が0.1〜4.0質量%である請求項1に記載の染着除去剤組成物。
【請求項3】
更に、(C)ベンジルアルコール、(D)N−メチルピロリドン、および(E)アルカリ剤を夫々含有するものである請求項1または2に記載の染着除去剤組成物。
【請求項4】
泡状に吐出して使用されるものである請求項1〜3のいずれかに記載の染着除去剤組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の染着除去剤組成物を、フォーマー容器から泡状に吐出しつつ皮膚染着の汚れを除去することを特徴とする染着除去方法。


【公開番号】特開2012−126668(P2012−126668A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278548(P2010−278548)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000213482)中野製薬株式会社 (57)
【Fターム(参考)】