説明

染色交編編地

【課題】ポリエステル繊維糸とアクリル繊維糸の組み合わせの交編編地でありながら、同浴染めによる同色性に優れた染色交編編地の提供。
【解決手段】エチレンテレフタレートを主単位とし、ジカルボン酸成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸2〜2.5モル%およびアジピン酸3〜7モル%を含む共重合ポリエステルからなるポリエステルマルチフィラメント糸と、アクリロニトリル主体の重合体からなるアクリル短繊維紡績糸とを用いて構成した交編編地を、カチオン基が封鎖されていないカチオン染料にて90〜110℃の同浴で染色してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同浴染めによる同色性に優れた染色交編編地に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、異種繊維糸の組み合わせからなる交織或いは交編の布帛を同色に染色するには、それぞれの繊維に対して染色可能な染料を用いて、同浴で多段で染色する或いは別浴でそれぞれの繊維を染色する、例えばポリエステル繊維糸とアクリル繊維糸の組み合わせをポリエステル繊維は分散染料で、アクリル繊維はカチオン染料でそれぞれ染色する(特許文献1)等の方法が採られている。
【0003】
また、異種繊維でありながら同種染料で染色可能な繊維の組み合わせを同浴で一段で染色する、例えばポリアミド繊維糸と木綿等のセルロース繊維糸との組み合わせを反応染料で染色する或いはカチオン染料可染型に改質のポリエステル繊維糸とアクリル繊維糸の組み合わせをカチオン染料で染色する(特許文献2)等の方法が知られている。
【0004】
しかしながら、これらの従来方法のうち、多段或いは別浴による方法では、同色にするための色目合わせに困難を来たし、また同浴一段による方法でも満足しうる同色が得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−13739号公報
【特許文献2】特開昭61−239015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、カチオン染料可染型に改質のポリエステル繊維糸とアクリル繊維糸の組み合わせの交編編地をカチオン染料で満足しうる同色に染色するためには、カチオン染料可染型のポリエステル繊維の染色性をアクリル繊維の染色性に近いものとし、また特定のカチオン染料を用いることにより達成しうることを見出したことによるものである。本発明の目的は、ポリエステル繊維糸とアクリル繊維糸の組み合わせの交編編地でありながら、同浴染めによる同色性に優れた染色交編編地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は、エチレンテレフタレートを主たる構成単位とし、ジカルボン酸成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸2〜2.5モル%およびアジピン酸3〜7モル%を含む共重合ポリエステルからなるポリエステルマルチフィラメント糸と、アクリロニトリルを90質量%以上含むアクリロニトリル系重合体からなるアクリル短繊維紡績糸とを用いて構成した交編編地を、カチオン基が封鎖されていないカチオン染料にて90〜110℃の同浴で染色してなる染色交偏編地にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アクリル繊維のカチオン染料可染性に近似のカチオン染料可染性のポリエステル繊維糸とアクリル繊維糸との交編編地を特定のカチオン染料での同浴染めにより同色性に優れた染色交編編地を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の交編編地の例のリバーシブル編組織図である。
【図2】本発明の交編編地の例のモノクロディ編組織図である。
【図3】本発明の交編編地の例のリバーシブル天竺編組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
〈共重合ポリエステル〉
本発明において、交編編地の構成糸であるポリエステルマルチフィラメント糸を構成する共重合ポリエステルは、エチレンテレフタレートを主たる構成単位とし、ジカルボン酸成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸を2〜2.5モル%およびアジピン酸を3〜7モル%含むことが必要である。
【0011】
5−ナトリウムスルホイソフタル酸を2〜2.5モル%とすることにより、カチオン染料の染着座席が導入されカチオン染料特有の鮮明性を奏するに足る染着性を有するものとなり、また5−ナトリウムスルホイソフタル酸とともにアジピン酸を3〜7モル%とすることにより、90〜110℃での染色を可能とし、また実用上何等支障のない繊維強度を保持する。
【0012】
〈ポリエステルマルチフィラメント糸〉
共重合ポリエステルからなるポリエステルマルチフィラメント糸は、ポリエチレンテレフタレートからマルチフィラメント糸を製造するのと同様の方法によって得られ、マルチフィラメント糸を得るにあたっての製糸方法、糸繊度等には特に限定はない。
【0013】
〈ポリエステル捲縮加工糸〉
本発明の交編編地において、ポリエステルマルチフィラメント糸は、捲縮加工糸であることが好ましく、捲縮加工糸であることにより編地に膨らみ感が付与される。捲縮加工糸は、ポリエステルマルチフィラメント糸を仮撚加工することにより得られ、その加工条件については特に限定されないが、例えば、仮撚温度100〜180℃、仮撚数15000×D−1/2〜35000×D−1/2(t/m)、仮撚オーバーフィード率1〜3%の条件で仮撚加工する。なお、仮撚係数の糸条の繊度と仮撚数の関係は、次式で示される。
仮撚係数=仮撚数(t/m)×(糸条の繊度(dtex)÷10×9)1/2
【0014】
〈アクリロニトリル系重合体〉
本発明において、交編編地の構成糸であるアクリル短繊維紡績糸を構成するアクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルを90質量%以上含む重合体であり、アクリル繊維本来の特性を損なわない限り、アクリロニトリルと共重合可能なモノマーを含む共重合体であってもよい。例えばかかるモノマーとして、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のアクリル酸エステル類、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル等のメタアクリル酸エステル類、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等が挙げられる。
【0015】
〈アクリル短繊維紡績糸〉
アクリロニトリル系重合体からなるアクリル短繊維紡績糸は、特にその製造方法には限定はなく、アクリロニトリル系重合体を湿式紡糸等により紡糸して得られた繊維束を所定長バリアブル長にカットした短繊維を紡績して得られ、その紡績糸を得るにあたっての紡績方法、糸番手等には特に限定はない。
【0016】
〈交編編地〉
本発明における交編編地は、5−ナトリウムスルホイソフタル酸2〜2.5モル%およびアジピン酸3〜7モル%を構成重合体に含むポリエステルマルチフィラメント糸とアクリル短繊維紡績糸とが交編されている限り、その編組織には特に限定はなく、経編、丸編、横編、或いはこれらの変化組織等であってもよく、編地の使用目的に応じた風合い、意匠性を考慮して編組織、さらには編密度等が設定される。
【0017】
〈カチオン染料〉
本発明において、交編編地は、その染色物が同色性に優れるためには、カチオン基が封鎖されていないカチオン染料にて染色されている必要がある。カチオン染料には、カチオン基が封鎖されていないカチオン染料とカチオン基が封鎖されているカチオン染料、いわゆる分散型カチオン染料があり、より優れた同色性を得るうえでは、カチオン基が封鎖されていないカチオン染料を用いることが必要である。かかるカチオン基が封鎖されていないカチオン染料として、種々のカチオン染料のなかから選定して用いられ、例えば日成化成社製Nichilon Blue FCR、保土谷化学工業社製Aizen Cachilon Red BLH、Aizen Cachilon Yellow 7GLH、Aizen Cachilon Yellow SGLH等が挙げられる。
【0018】
〈染色〉
本発明において、染色交編編地は、5−ナトリウムスルホイソフタル酸2〜2.5モル%およびアジピン酸3〜7モル%を構成重合体に含むポリエステルマルチフィラメント糸とアクリル短繊維紡績糸との交編編地を、カチオン基が封鎖されていないカチオン染料にて90〜110℃の同浴で染色してなるものである。本発明においては、多段或いは別浴での染色なしに、同浴一段で前記ポリエステルマルチフィラメント糸とアクリル短繊維紡績糸を染色したことにより、煩雑な色目合わせもなく、また高温染色でないことにより、風合いの低下もない染色交編編地となしうる。
【0019】
〈ポリウレタン弾性糸の併用〉
本発明においては、染色交編編地に良好な伸縮性を付与するうえで、交編編地の構成の際に、単独のアクリル短繊維紡績糸に代えて、アクリル短繊維紡績糸と2〜3倍に引き伸ばされたポリウレタン弾性糸との引揃え糸を用いることが好ましい。アクリル短繊維紡績糸と引き伸ばされたポリウレタン弾性糸との引揃え糸を用いることにより、染色交編編地に良好な伸縮性が付与される。アクリル短繊維紡績糸とともに配されたポリウレタン弾性糸は、伸長性が極めて高く、小さな力で伸長するため、本発明の染色交編編地をスポーツ衣料等にしたときに身体の動きに違和感なく追従し、優れたボディフィット性を与える。
【0020】
〈再生セルロース繊維の併用〉
本発明においては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸2〜2.5モル%およびアジピン酸3〜7モル%を構成重合体に含むポリエステルマルチフィラメント糸と、アクリル短繊維紡績糸と、再生セルロース繊維のマルチフィラメント糸或いは紡績糸とを用いて構成した交編編地を、カチオン基が封鎖されていないカチオン染料にて90〜110℃の同浴で染色して良好な吸湿性を付与した染色交偏編地とすることができる。再生セルロース繊維としては、レーヨン、キュプラ等が挙げられ、繊維の表面形状、艶、繊度等については特に限定はなく交偏編地応じて選定される。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、実施例における染色交編編地の同色性の評価は、次の方法に拠った。
【0022】
〈同色値Aの測定〉
染色交偏編地からポリエステルマルチフィラメント糸とアクリル短繊維紡績糸をそれぞれ抜き取り、たて50mm、よこ200mm、厚さ3mmの紙製の板に、それぞれの糸を板が透けないようになるまで巻いて糸巻きサンプルを作成した。
コニカミノルタセンシング社製分光測色計「CM−3600d」と日清紡メカトロニクス社製カラーマッチングシミュレーションソフト「Hyper調色専科Win95システム」とを組み合わせたシステムを用い、ポリエステルマルチフィラメント糸の糸巻きサンプルの測色値Eabを1回測定し、この測色値をスタンダードとした。各々の糸巻きサンプルについて、スタンダードに対する差ΔEabを5回測定し、その相加平均値を求めた。ポリエステルマルチフィラメント糸の相加平均値とアクリル短繊維紡績糸の相加平均値の差を求め、小数点以下2桁目を四捨五入して同色値Aとした。
【0023】
〈使用構成糸〉
交偏編地の編成に使用する糸は、下記のとおり。
ポリエステルマルチフィラメント糸(PET糸1):三菱レイヨン・テキスタイル社製、5−ナトリウムスルホイソフタル酸2.3モル%、アジピン酸5モル%共重合ポリエチレンテレフタレートルからなるポリエステルマルチフィラメント糸(110dtex/48f、単糸三角断面)ポリエステル捲縮加工糸(PET糸2):PET糸1の仮撚加工糸(捲縮率(JIS L1015測定法に準拠)24.6%)
アクリル短繊維紡績糸(AN糸1):三菱レイヨン社製、アクリロニトリル94質量%含有アクリロニトリル系重合体からなるアクリル繊維紡績糸(単繊維繊度1dtex、繊維長38mm、糸番手1/64)
アクリル短繊維紡績糸(AN糸2):三菱レイヨン社製、アクリロニトリル94質量%含有アクリロニトリル系重合体からなるアクリル繊維紡績糸(単繊維繊度0.8dtex、繊維長38mm、糸番手1/80)
ポリウレタン弾性糸(PU糸):日清紡社製、ポリウレタン弾性糸(33dtex)
キュプラ短繊維紡績糸(CU糸):旭化成せんい社製、キュプラ繊維紡績糸(糸番手60/1)
【0024】
(実施例1)
PET糸1を用い、仮撚加工機(三菱重工業社製LS−6)にて、加工速度112m/分、仮撚オーバーフィード率2%、1stヒーター温度(仮撚温度)175℃、2ndヒーター温度170℃、仮撚数2950t/m(仮撚係数2.94×10)、2ndヒーター内オーバーフィード率15%、巻取りオーバーフィード率7.3%の条件で仮撚加工を行い、前記のPET糸2を作製した。
PET糸2、AN糸1、PU糸を用い、PET糸2を図1に示すリバーシブル編組織の給糸No.2、No.4、No.6に配し、AN糸1と2.5倍に引き伸ばしたPU糸との引き揃え糸を同編組織のNo.1、No.3、No.5に配し、丸編機(福原社製、28G、34インチ)にてバーシブル編地を編成した。得られた編地の生機は、主として表面側にPET糸2、裏面側にAN糸1とPU糸が配され、PET糸2の混率が58%(質量、以下同じ)、AN糸1の混率が34%、PU糸の混率が8%であった。この生機を、常法により精錬後、カチオン基が封鎖されていないカチオン染料(日成化成社製、Nichilon Blue FCR)を用い、無緊張下で染色温度100℃の常圧で30分間同浴一段でブルーに染色した。染色後裏面側に針布での起毛処理を施し、仕上げ巾150cm、45ウエール/インチ、70コース/インチ、目付283g/mに仕上げ、染色交編編地を作製した。得られた染色交編編地は、鮮明な発色性を示すとともに、同色値Aが0.87で、表面側に配されたPET糸2で形成された面と裏面側に顕れたAN糸1で形成された面との同色性に優れたものであった。また、得られた染色交編編地は、表面側がPET糸2の捲縮に基づくソフトな風合いで滑り性に優れ、膨らみ感があり、裏面側が裏面に顕れたAN糸1に基づく膨らみ感、軽量感を有するものであり、また、染色が同浴一段での工程であるため経済性に優れ、染色物もPU糸への汚染も少なく染色堅牢度に優れたものであった。
【0025】
(比較例1)
実施例1において、染色の際に用いたカチオン染料を、カチオン基が封鎖されている分散型カチオン染料(日本化薬社製、Kayacryl Blue GSL−ED)に代えた以外は、実施例1と同様にしてバーシブル編組織の染色交編編地を作製した。得られた染色交編編地は、鮮明な発色性を示すとともに、表面側がPET糸2の捲縮に基づくソフトな風合いで滑り性に優れ、膨らみ感があり、裏面側が裏面に顕れたAN糸1に基づく膨らみ感、軽量感を有するものであったが、同色値Aが1.44であり、表面側の面と裏面側の面との間に色差があり、表面に色差杢を生じ、高級感に劣るものであった。
【0026】
(比較例2)
実施例1において、染色の際に用いたカチオン染料を、分散染料(紀和化学社製、Kiwalon Blue 3RF)に代えた以外は、実施例1と同様にしてバーシブル編組織の染色交編編地を作製した。得られた染色交編編地は、表面側がPET糸2の捲縮に基づくソフトな風合いで滑り性に優れ、膨らみ感があり、裏面側が裏面に顕れたAN糸1に基づく膨らみ感、軽量感を有するものであったが、発色性に劣り、表面側の面と裏面側の面との間に大きな色差があり、また中濃色系での染色堅牢度に劣るものであった。
【0027】
(比較例3)
実施例1において、染色の際に、分散染料(紀和化学社製、Kiwalon Blue 3RF)とカチオン基が封鎖されていないカチオン染料(日成化成社製、Nichilon Blue FCR)との2種の染料を用い、同浴一段で染色した以外は、実施例1と同様にしてバーシブル編組織の染色交編編地を作製した。得られた染色交編編地は、表面側がPET糸2の捲縮に基づくソフトな風合いで滑り性に優れ、膨らみ感があり、裏面側が裏面に顕れたAN糸1に基づく膨らみ感、軽量感を有するものであったが、表面側が主として分散染料で染色されているため発色性に劣り、表面側の面と裏面側の面との間に色差があり、表面に色差杢を生じたものであった。
【0028】
(比較例4)
比較例2において、分散染料を用いた染色の際に、温度120℃の高圧染色とした以外は、実施例1と同様にしてバーシブル編組織の染色交編編地を作製した。得られた染色交編編地は、裏面側が裏面に顕れたAN糸1が染色温度の影響により風合いが硬化し、膨らみ感に劣るものであり、また表面側の面と裏面側の面との間に大きな色差があり、高級感に劣るものであった。
【0029】
(実施例2)
PET糸1、AN糸2を用い、PET糸1を図2に示すモックロディ編組織の給糸No.1、No.3、No.4、No.6に配し、AN糸2を同編組織のNo.2、No.5に配し、丸編機(福原社製、28G、30インチ)にて交編編地を編成した。得られた編地の生機は、主として表面側にPET糸1、裏面側にAN糸2が配され、PET糸1の混率が69%、AN糸2の混率が31%であった。この生機を、常法により精錬後、カチオン基が封鎖されていないカチオン染料(日成化成社製、Nichilon Blue FCR)を用い、染色温度100℃の常圧で30分間同浴一段でブルーに染色し、その後仕上げ巾140cm、46ウエール/インチ、62コース/インチ、目付226g/mに仕上げ、染色交編編地を作製した。得られた染色交編編地は、鮮明な発色性を示すとともに、同色値Aが0.87で、表面側に配されたPET糸1で形成された面と裏面側に顕れたAN糸1で形成された面との同色性に優れたものであった。また、得られた染色交編編地は、表面側がPET糸1に基づくソフトな風合いで滑り性に優れ、裏面側が裏面に顕れたAN糸2に基づく膨らみ感、軽量感を有するものであった。
【0030】
(実施例3)
PET糸1、AN糸2、CU糸を用い、PET糸1を図2に示すモックロディ編組織の給糸No.1、No.3、No.4、No.6に配し、AN糸2を同編組織のNo.2に配し、CU糸を同編組織のNo.5に配し、丸編機(福原社製、28G、30インチ)にて交編編地を編成した。得られた編地の生機は、主として表面側にPET糸1、裏面側にAN糸2とCU糸が配され、PET糸1の混率が74%、AN糸2の混率が15%、CU糸の混率が11%であった。この生機を、常法により精錬後、カチオン基が封鎖されていないカチオン染料(日成化成社製、Nichilon Blue FCR)を用い、染色温度100℃の常圧で30分間同浴一段でブルーに染色し、さらに反応性染料(日本化薬社製、Kayacion E)を用い、温度60℃で60分間別浴二段でブルーに染色し、その後仕上げ巾140cm、40ウエール/インチ、34コース/インチ、目付150g/mに仕上げ、染色交編編地を作製した。得られた染色交編編地は、鮮明な発色性を示すとともに、同色値Aが0.87で、表面側に配されたPET糸1で形成された面と裏面側に顕れたAN糸1で形成された面との同色性に優れたものであった。また、得られた染色交編編地は、表面側がPET糸1に基づくソフトな風合いで滑り性に優れ、裏面側が裏面に顕れたAN糸2に基づく膨らみ感、軽量感およびCU糸に基づく吸湿性を有するものであった。
【0031】
(実施例4)
実施例2において、編組織を図3に示すリバーシブル天竺編組織に代えた以外は、実施例2と同様にして交編編地を編成した。得られた編地の生機は、主として表面側にPET糸1、裏面側にAN糸2が配され、PET糸1の混率が69%、AN糸2の混率が31%であった。この生機を、常法により精錬後、カチオン基が封鎖されていないカチオン染料(日成化成社製、Nichilon Blue FCR)を用い、染色温度100℃の常圧で30分間同浴一段でブルーに染色し、その後仕上げ巾140cm、32ウエール/インチ、46コース/インチ、目付182g/mに仕上げ、染色交編編地を作製した。得られた染色交編編地は、鮮明な発色性を示すとともに、同色値Aが0.87で、表面側に配されたPET糸1で形成された面と裏面側に顕れたAN糸1で形成された面との同色性に優れたものであった。また、得られた染色交編編地は、表面側がPET糸1に基づくソフトな風合いで滑り性に優れ、裏面側が裏面に顕れたAN糸2に基づく膨らみ感、軽量感を有するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の染色交編編地は、アクリル繊維のカチオン染料可染性に近似のカチオン可染性のポリエステル繊維糸とアクリル繊維糸との交編編地を、特定のカチオン染料を用いた同浴染めにより、同色性に優れた染色交編編地を提供することができ、鮮明な発色性を示すとともに、交編編地、特に編地を表面側にカチオン染料可染性のポリエステル繊維糸を配し、裏面側にアクリル繊維糸を顕出させて配したリバーシブル編地としたときには、表面側の裏面側とでの面の同色性に優れ、また表面側がソフトな風合いで滑り性に優れ、膨らみ感があり、裏面側が膨らみ感、軽量感を有するものであり、本発明によれば高級衣料として有用な素材を提供しえるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンテレフタレートを主たる構成単位とし、ジカルボン酸成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸2〜2.5モル%およびアジピン酸3〜7モル%を含む共重合ポリエステルからなるポリエステルマルチフィラメント糸と、アクリロニトリルを90質量%以上含むアクリロニトリル系重合体からなるアクリル短繊維紡績糸とを用いて構成した交編編地を、カチオン基が封鎖されていないカチオン染料にて90〜110℃の同浴で染色してなる染色交偏編地。
【請求項2】
アクリル短繊維紡績糸に代えて、アクリル短繊維紡績糸と2〜3倍に引き伸ばされたポリウレタン弾性糸との引揃え糸を用いる請求項1に記載の染色交偏編地。
【請求項3】
交編編地として、ポリエステルマルチフィラメント糸と、アクリル短繊維紡績糸と、さらに再生セルロース繊維のマルチフィラメント糸或いは紡績糸を用いて構成した交編編地を用い、カチオン基が封鎖されていないカチオン染料にて同浴で染色し、さらに反応性染料にて染色してなる請求項1に記載の染色交偏編地。
【請求項4】
ポリエステルマルチフィラメント糸として、ポリエステル捲縮加工糸を用いた請求項1〜3のいずれか一項に記載の染色交偏編地。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−207311(P2012−207311A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69360(P2011−69360)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(301067416)三菱レイヨン・テキスタイル株式会社 (102)
【Fターム(参考)】