説明

染色体DNAに標的化されるオリゴマーによる遺伝子発現の調節

【課題】哺乳動物細胞中の遺伝子の標的転写物の合成を選択的に増加させる方法を提供する。
【解決手段】オリゴマーが標的転写物の合成を選択的に増加する条件下で、遺伝子の標的プロモーター内の領域に相補的な12から28塩基のポリヌクレオチドオリゴマーと細胞を接触させることによって、遺伝子の標的転写物の合成が、哺乳動物細胞中において選択的に増加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者:David R. Corey、David S. Shames、Bethany A. Janowski及びJohn D. Minna
関連出願の相互参照:本願は、2005年11月17日に出願された米国仮出願第60/738,103号の優先権を主張する。
【0002】
譲受人:Board of Regents, The University of Texas System
本研究は、国立衛生研究所によって授与された補助金(NIGMS60642及び73042;並びにP50CA70907)の下、連邦政府の支援を受けて為された。連邦政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野:発明の分野は、遺伝子のプロモーター領域を標的化するポリヌクレオチドオリゴマーを用いて、遺伝子転写物合成を調節することである。
【背景技術】
【0004】
二重鎖RNAがmRNAを認識する能力及び転写後RNA干渉(RNAi)を通じて遺伝子発現を発現停止させる能力は、広く理解されている(Tang,2004)。低分子干渉RNA(siRNA)は、遺伝子発現を調節するための一般的な研究ツールとなっており、内在性に発現されたミクロRNA(miRNA)は、増え続ける細胞経路の多数に関与する。
【0005】
RNA誘導性のDNAメチル化は、植物において最初に記載され(Matzke et al 2004)、RNAウイルス及びウイロイドがゲノムDNA配列中にメチル化を誘導できることが見出された(Massenegger et al 1994)。メチル化された塩基は、RNAに相補的なDNAの配列内に濃縮されており、認識のための配列特異的機序が推測される(Pelissier and Wassenegger 2000)。
【0006】
酵母では、セントロメア反復配列及び接合型座位を標的とする小さなRNAが、ヘテロクロマチンの修飾を促進することによって遺伝子発現を発現停止させることができる(Grewal and Moazed 2003; Bernstein and Allis 2005)。クロマチン修飾には、ヒストンH3のリジン9のメチル化が関与しており(Volpe et al)、RNA依存性ポリメラーゼ(Sugiyama et al 2005)及びDNAポリメラーゼII(Schramke et al 2005)を必要とする。修飾には、転写後発現停止にも関与しているタンパク質ファミリーのメンバーであるアルゴナウト1(Sigova et al 2004)などのRNA誘導性転写発現停止(RITS;RNA−induced transcriptional 発現停止)経路(Verdel et al 2003)のタンパク質が関与している。
【0007】
最近、染色体DNAを標的とする短いオリゴヌクレオチドであるアンチジーンRNA(agRNA;antigeneRNA)も哺乳動物細胞中の発現を発現停止させ得ることが、幾つかの報告によって示唆されている。Kawasaki及びTairaは、CpG二ヌクレオチドを含有するE−カドヘリンプロモーター内の配列に10個の二重鎖RNAを標的化した(Kawasaki and Taira, 2004)。DNAのメチル化は、これらの部位の全てにおいて観察された。各RNAはE−カドヘリン発現の僅かな低下をもたらすに過ぎなかったが、10個のRNA全てが合わされると、より完全な発現停止を達成することができた。メチル転移酵素遺伝子であるDMNT1及びDMNT3Bが発現停止された場合に、二重鎖RNAがE−カドヘリンの発現を阻害できなかったという観察によって、メチル化と発現停止の間の関連が裏付けられた。
【0008】
同様の研究において、Morrisと共同研究者は、伸長因子1α(EF1A)のプロモーターを標的とする二重鎖RNAが発現を阻害し得ることを示した(Morris et al, 2004)。Morrisと共同研究者は、標的配列においてDNAのメチル化を観察し、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤であるトリコスタチン(TSA)とともに、メチル化の阻害剤である5’−アザ−2’−デオキシシチジン(5−アザ−dC)を添加することによって、発現停止が元に戻ることを観察した。Taira及びMorrisの研究室から得られた研究は、RNAが哺乳動物細胞中での発現停止のためにDNAを標的とし得るという証拠を与え、RNAがDNAのメチル化を誘導し得ることを示唆したので重要であった。Morrisの研究では、合成agRNAによる発現停止には、核取り込みを促進するように設計されたペプチドの使用が必要であったが、他の研究は、標準的な形質移入操作で十分であることを示唆している(Kawasaki and Taira 2004; Castanotto et al 2005; Janowski et al 2005; Ting et al 2005)。
【0009】
哺乳動物細胞中において、RNAによって誘導されたメチル化を達成するための他の試みは、これらに比べて成功を収めていない。Steer及び共同研究者は、ハンチントンをコードする遺伝子を標的とするRNAを検査したが、メチル化は一切検出されなかった(Park et al 2004)。マウス卵母細胞中で二本鎖RNAを安定的に発現させた場合に、RNAによって誘導されるメチル化は観察されなかった(Svoboda, P. et al 2004)。Rossi及び共同研究者は、腫瘍抑制因子RASSF1Aに対するプロモーター内に存在する十分に性質決定されたCG島を標的とするために、発現された短いヘアピンRNA(shRNA)を使用した(Castanotto et al 2005)。Rossi及び共同研究者は、遺伝子発現の穏やかな阻害を報告した。メチル化特異的PCRアッセイはメチル化を示したが、より完全な亜硫酸水素塩配列決定アッセイはメチル化を示さなかった。
【0010】
本発明者らの研究室は、染色体DNAの効率的なRNA媒介性発現停止が、DNAのメチル化とは独立に達成できることを発見した(Janowski et al 2005; US Pat appl no. 60/661,769)。本発明者らは、転写の開始を妨害することによって発現を遮断するために、転写開始部位を標的とした。転写開始部位を標的とする実際上の利点は、それらが全ての遺伝子中に存在すること、及び標的配列の一般的で、予測可能なクラスを提供することである。転写開始部位の標的化は、メチル化が起こっているかどうかにかかわらず、遺伝子発現を遮断することも予測される。
【0011】
他の研究とは異なり、本発明者らは、メチル化特異的PCR又は亜硫酸水素ナトリウム配列決定によってメチル化を全く観察しなかった。5−アザC又は抗メチル転写酵素siRNAを用いたメチル転写酵素活性の阻害は、遺伝子発現停止に対して全く影響を及ぼさず、メチル化が発現停止に関与していないことが示唆された。本発明者らが観察した発現停止は、先行研究で報告されたものより強力であり、転写開始部位がagRNAに対する特に感受性が高い標的であり得ることを示唆する。
【0012】
Baylin及び共同研究者らは、E−カドヘリンの転写的発現停止を再び取り上げた(Ting et al 2005)。Baylin及び共同研究者らは、プロモーターによって標的とされる2つの二重鎖RNAを直列で使用した場合には、遺伝子発現の効率的な発現停止を観察したが、RNAを個別的に使用した場合には、遺伝子発現の効率的な発現停止を観察しなかった。Baylinは、DNAメチル化の証拠を観察しなかった。
【0013】
E−カドヘリン遺伝子プロモーターを標的とするsiRNAは、培養された乳癌細胞中で転写を活性化することができることが報告されている(Li et al, 2005)。同様に、プロモーターを標的とするsiRNAによる、増加されたEF1AmRNA発現を示唆するデータが提示されている(Morris et al 2004;図3A参照、最初の2つの棒)。核に局在化された、NRSE配列をコードする小さな調節性二本鎖(ds)RNA(smRNA)は、成人海馬神経幹細胞中で、NRSE遺伝子の転写の活性化の引き金を引くことも報告されている(Kuwabara et al, 2004; and Kuwabara et al, 2005)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願第60/661,769号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Tang (2004) Trends Biochem. Sci. 30:106−114.
【非特許文献2】Matzke et al. (2004) Biochem. Biophys. Acta 1677,129−141.
【非特許文献3】Massenegger et al (1994) Cell 76:567−576.
【非特許文献4】Pelissier and Wassenegger (2000) RNA 6:55−65.
【非特許文献5】Grewal and Moazed (2003) Science 301:798−802.
【非特許文献6】Bernstein and Allis (2005) Genes Dev. 19:1635−1655.
【非特許文献7】Volpe et al (2002) Science 297:1833−1837.
【非特許文献8】Sugiyama et al (2005) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102:152−157.
【非特許文献9】Schramke et al (2005) Nature 435:1275−1279.
【非特許文献10】Sigova et al (2004) Genes Dev. 18:2359−2367.
【非特許文献11】Verdel et al (2003) Science 303:672−676.
【非特許文献12】Kawasaki and Taira (2004) Nature 431:211−7.
【非特許文献13】Morris et al (2004) Science 305:1289−92.
【非特許文献14】Castanotto et al (2005) MoI. Therapy 12:179−183.
【非特許文献15】Janowski et al (2005) Nature Chem Biol 1:216−222.
【非特許文献16】Ting et al (2005) Nat Genet. 37:906−10.
【非特許文献17】Park et al (2004) Biochem. Biophys. Res. Comm. 323:275−280.
【非特許文献18】Svoboda, P. et al (2004) Nucl. Acids. Res. 32:3601−3606.
【非特許文献19】Li et al (2005) Proc Amer Assoc Cancer Res 46:6105.
【非特許文献20】Kuwabara et al (2004) Cell 1 16:779−793.
【非特許文献21】Kuwabara et al (2005) Nuc Acid Symp Series 49:87−88.
【発明の概要】
【0016】
本発明の一態様において、哺乳動物細胞中の遺伝子の標的転写物の合成を選択的に増加させる方法であり、前記標的転写物は、増加された合成を必要とすることが予定されており、前記方法は、オリゴマーが前記標的転写物の合成を選択的に増加させる条件下で、遺伝子の標的プロモーター内の領域に相補的な12から28塩基のポリヌクレオチドオリゴマーと前記細胞を接触させる工程、及び前記標的遺伝子の生じた選択的な増加された合成を検出する工程、を含む。
【0017】
一実施形態において、領域は、遺伝子の転写開始部位に対して−100から+25ヌクレオチドの間に位置している。さらなる実施形態において、領域は、遺伝子の転写開始部位に対して−50から+25、−30から+17及び−15から+10ヌクレオチドの間に位置している。特定の実施形態において、領域は、遺伝子の転写開始部位に対して−9から+2ヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、領域は、遺伝子の転写開始部位を含む。
【0018】
一実施形態において、標的プロモーターは、標的転写物のプロモーターである。別の実施形態において、標的プロモーターは、標的転写物のイソフォームのプロモーターである。さらなる実施形態において、標的プロモーターは、標的転写物のプロモーターであり、且つ標的転写物のイソフォームのプロモーターである。
【0019】
一実施形態において、オリゴマーは、二本鎖RNA、DNA、ペプチド核酸及びモルホリノからなる群から選択される。特定の実施形態において、オリゴマーは、18から25塩基の二本鎖RNAである。
【0020】
一実施形態において、オリゴマーは、2’化学修飾を有するヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、オリゴマーは、ホスホロチオアートヌクレオチド間連結、2’−O−メチルリボヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−フルオロリボヌクレオチド、2’−デオキシリボヌクレオチド、ユニバーサル塩基ヌクレオチド、5−C−メチルヌクレオチド、逆位デオキシ脱塩基残基の取り込み及びロックされた核酸からなる群から選択される血清安定性増強化学修飾を含む。
【0021】
一実施形態において、細胞は、インビトロでの培養された細胞である。別の実施形態において、細胞は、宿主内においてインサイチュである。
【0022】
一実施形態において、接触工程は、ウイルス形質導入を含まない。さらなる実施形態において、接触工程は、ウイルス形質導入を含まず、及び細胞は、オリゴマーから実質的になる組成物と接触される。さらなる実施形態において、接触工程はウイルス形質導入を含まず、及び標的転写物の少なくとも2倍の増加された合成が生じる。別の実施形態において、オリゴマーは18から25塩基の二本鎖RNAであり、標的プロモーターの単一の領域が標的化され、及び標的転写物の少なくとも2倍の増加された合成が生じる。別の実施形態において、接触工程は、ウイルス形質導入を含まず、及びオリゴマーは、核移行ペプチドに付着されていない。
【0023】
一実施形態において、細胞は、オリゴマーの1から100nM濃度と接触される。
【0024】
一実施形態において、細胞は癌細胞であり、及び遺伝子はE−カドヘリン、ヒトプロゲステロン受容体(hPR)、p53及びPTENからなる群から選択されるタンパク質をコードする。
【0025】
本発明の別の態様は、遺伝子の標的転写物の合成を選択的に増加させるための単離された又は合成ポリヌクレオチドオリゴマーであり、該オリゴマーは、遺伝子の標的プロモーター内の領域に対して相補的な12から28塩基のヌクレオチド配列を含み、遺伝子を含む細胞中に導入された場合に、オリゴマーは、標的転写物の転写を選択的に増加させる。
【0026】
一実施形態において、領域は、遺伝子の転写開始部位に対して−100から+25ヌクレオチドの間に位置している。さらなる実施形態において、領域は、遺伝子の転写開始部位に対して−50から+25、−30から+17及び−15から+10ヌクレオチドの間に位置している。特定の実施形態において、領域は、遺伝子の転写開始部位に対して−9から+2ヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、領域は、遺伝子の転写開始部位を含む。
【0027】
一実施形態において、標的プロモーターは、標的転写物のプロモーターである。別の実施形態において、標的プロモーターは、標的転写物のイソフォームのプロモーターである。さらなる実施形態において、標的プロモーターは、標的転写物のプロモーターであり、且つ標的転写物のイソフォームのプロモーターである。
【0028】
一実施形態において、オリゴマーは、RNA、DNA、ペプチド核酸及びモルホリノからなる群から選択される。
【0029】
別の実施形態において、オリゴマーは、配列番号1から11及び12からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む18から25塩基の二本鎖RNAである。
【0030】
特定の実施形態において、標的転写物は、ヒト主要ヴォールトタンパク質(MVP;主要ヴォールトタンパク質)、ヒトE−カドヘリン、ヒトプロゲステロン受容体(hPR)、ヒトp53及びヒトPTENからなる群から選択されるタンパク質をコードする。一実施形態において、細胞は癌細胞であり、及び遺伝子はE−カドヘリン、ヒトプロゲステロン受容体(hPR)、p53及びPTENからなる群から選択されるタンパク質をコードする。
【0031】
本発明を広告し、市販し、販売し又は実施許諾することを含む、事業を行う方法。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、哺乳動物細胞中の遺伝子の標的転写物の合成を選択的に増加させる方法及び組成物を提供し、前記標的転写物は、増加された合成を必要とすることが予定されており、前記方法は、オリゴマーが前記標的転写物の合成を選択的に増加させる条件下で、遺伝子の標的プロモーター内の領域に相補的な12から28塩基のポリヌクレオチドオリゴマーと前記細胞を接触させる工程、及び前記標的遺伝子の生じた選択的な増加された合成を検出する工程を含む。
【0033】
遺伝子の標的転写物は、定型的な方法を用いて、増加された合成を必要とすることが予定されている。例えば、所望のレベルと比べて低下した標的転写物/及び/又はタンパク質のレベルは、直接測定され得る。あるいは、標的転写物の増加された合成に対する必要性は、標的転写物の低下したレベルと関連する表現型から推測され得る。
【0034】
一実施形態において、遺伝子のプロモーター内の領域は、部分的に一本鎖の構造、非B−DNA構造、ATが豊富な配列、十字型ループ、G四重鎖、ヌクレアーゼ高感受性要素(NHE;nuclease hypersensitive elements)及び遺伝子の転写開始部位に対して−100から+25ヌクレオチドの間に位置している領域から選択される。
【0035】
好ましいATが豊富な配列は、局所的な融解が生じているDNAの伸長(タンパク質機構が、一本鎖領域に接近しなければならない、遺伝子のプロモーターなど)中に見出され、好ましくは、遺伝子のTATAボックス及び/又は少なくとも60%若しくは70%のA+Tを含む。
【0036】
好ましい十字型構造は、各鎖上にヘパリン構造を形成しているパリンドローム性ゲノム配列から形成され、反復配列が非パリンドローム性DNAの伸長によって隔てられており、十字型のヘアピンの各々の末端に一本鎖ループを与える。
【0037】
好ましい、G−四重鎖構造は、哺乳動物遺伝子のプロモーター領域中に同定されており、転写制御に関与していると推定されている。例えば、c−MYC癌遺伝子プロモーターのヌクレアーゼ高感受性要素IIIは、転写の調節に関与しており、それぞれ、I−モチーフ及びG−四重鎖構造を採ることができる、ピリミジンが豊富な配列及びプリンが豊富な配列を、それぞれコード鎖及び非コード鎖上に含む。G−四重鎖構造の安定化は、c−MYCの発現停止をもたらすことが示されている(例えば、Siddiqui−Jain,2002を参照されたい。)。
【0038】
一実施形態において、標的とされる領域は、遺伝子の転写開始部位に対して−100から+25ヌクレオチドの間に位置している。前記方法のある種の好ましい実施形態において、領域は、遺伝子の転写開始部位に対して−30から+17ヌクレオチドの間のテンプレート鎖上に位置している。別の実施形態において、領域は、遺伝子の転写開始部位に対して−15から+10オリゴヌクレオチドの間に位置している。さらなる実施形態において、領域は、遺伝子の転写開始部位に対して−9から+2ヌクレオチドを含む。ある種の好ましい実施形態において、領域は、遺伝子の転写開始部位を含む。別の実施形態において、領域は、転写開始の下流に存在する配列(例えば、配列は、−100から+1ヌクレオチドの間に位置する。)を一切含まない。本発明において使用されるオリゴマーは、ゲノム配列を標的とし、mRNAを標的としない。
【0039】
ある種の実施形態において、遺伝子は、標的転写物の1つ又はそれ以上のイソフォームをコードし、及び/又は発現することが知られており、本発明の方法は、基礎発現レベル及び/又は対照条件レベルを超えて、標的転写物の合成を選択的に増加させるが、標的転写物のイソフォームの合成は、減少し、増加し、又は同じに留まり得る。標的転写物及びイソフォームは、同一のプロモーター及び/又は転写開始部位を共有し得、又は異なるプロモーター及び/又は転写開始部位を有し得る。従って、様々な実施形態において、標的プロモーターは、(1)標的転写物のプロモーター、(2)標的転写物のイソフォームのプロモーター、又は(3)標的転写物のプロモーター及び標的転写物のイソフォームのプロモーターの両方である。多くの遺伝子が、複数のイソフォームを発現することが公知であり、例には、p53(Bourdon, 2005)、PTEN(Sharrard and Maitland, 2000)、Bcl−2−関連遺伝子(Akgul, 2004)及びサービビン(Caldas et al, 2005)が含まれる。例えば、前記方法は、オリゴマーを、イソフォームの転写開始部位に誘導することによって、ある標的転写物の発現を増加させるために使用することができる。標的転写物の合成が増加され、及びイソフォームの合成が阻害される場合には、前記方法は、宿主細胞中で相対的イソフォーム合成を効果的及び選択的に調節する。従って、所定の望ましいイソフォーム又は過少発現されたイソフォームの増加した合成は、所定の望ましくないイソフォーム又は過剰発現されたイソフォームの減少した合成と組み合わせることができる。以下で、p53β/p53を用いて例示されているように、本実施形態は、宿主細胞中の所定のイソフォームの切り替えを作動させるために使用することができる。
【0040】
ポリヌクレオチドオリゴマーは、標的転写物の合成の必要な増加を実施するのに十分な配列及び長さを有するものである。本明細書において使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上別段の意味であることが明らかでなければ、単数及び複数の両方を表す。例えば、「オリゴマー」という用語は、単一又は複数のオリゴマーを含み、「少なくとも1つのオリゴマー」という用語と等しいと考えることができる。適切なオリゴマーは、典型的には、12から28塩基の長さであり、遺伝子の標的プロモーター内の領域に相補的である(すなわち、ワトソン−クリック結合相補性)。オリゴマーは、あらゆる核酸、修飾された核酸又はワトソン−クリック対合によってDNAを認識することができる核酸模倣物を含み得る。オリゴマーと標的とされるプロモーター領域との間のミスマッチ、特に、2以上のミスマッチは、しばしば、標的転写物合成を増加される効力を減弱させる。オリゴマーは、一本鎖又は二本鎖(すなわち、二重鎖)であり得る。二重鎖オリゴマーの場合には、第一の鎖は、標的とされるプロモーターの領域に対して相補的であり、第二の鎖は、第一の鎖に対して相補的である。オリゴマーは、ホモピリミジン配列、ホモピリミジン配列又は混合されたプリン/ピリミジン配列を標的とし得る。混合されたプリン/ピリミジン配列は、少なくとも1つのプリン(残りは、ピリミジンである。)又は少なくとも1つのピリミジン(残りは、プリンである。)を含有する。ワトソン−クリック塩基対合をすることができる様々なオリゴマーが、本分野において公知である。ある種の実施形態において、オリゴマーは、二本鎖RNA、DNA、ペプチド核酸及びモルホリノから選択される。
【0041】
二本鎖(ds)RNAは、比較的合成が容易であり、ヒトの臨床試験で使用されてきたので、特に好ましいオリゴマーである。好ましいdsRNAは、標的とされているプロモーターの領域に対して相補的な18から25個の塩基を有し、及び各鎖上に3’二又は三ヌクレオチド突出部を場合によって有する。dsRNAを調製し、細胞に送達する方法は、本分野において周知である(例えば、Elbashir et al, 2001;Tuschlらに付与されたWO/017164;及びFireらに付与されたUS Pat.No.6,506,559を参照されたい)。特注のdsRNAも市販されている(例えば、Ambion Inc.,Austin、TX)。本発明の方法において使用されるdsRNAは、分子の所望の特性を増強するために化学的に修飾され得る。標的転写物の合成を選択的に増加させるdsRNAの能力に悪影響を与えることなく、幅広い化学的修飾を二重鎖RNAに施すことが可能である。一実施形態において、dsRNAは、2’修飾を有する1つ又はそれ以上のヌクレオチドを含み、完全に2’置換され得る。様々な2’修飾が本分野において公知である(例えば、Cookらに付与されたUS Pat No.5,859,221;Thompsonらに付与されたUS Pat No.6,673,611;及びCzauderna et al, 2003を参照されたい。)。好ましい化学的修飾は、インビボで投与された場合に、dsRNAの血清安定性を増強し、dsRNAの半減期を増加させる。血清安定性増強化学修飾の例には、ホスホロチオアートホスホロチオアートヌクレオチド間連結、2’−O−メチルリボヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−フルオロリボヌクレオチド、2’−デオキシリボヌクレオチド、「ユニバーサル塩基」ヌクレオチド、5−C−メチルヌクレオチド及び逆位デオキシ脱塩基残基の取り込みが含まれる(例えば、McSwiggenらに付与されたUS Patent Publication No.20050032733を参照されたい。)。dsRNAは、安定性を向上させ、ヌクレアーゼ耐性を増加させるために、ロックされた核酸(LNA;locked nucleic acids)を場合によって含有し得る(例えば、Elmen et al, 2005;及びBraasch et al, 2003を参照されたい。)。修飾の別の種類は、宿主へ送達された際に、オリゴマーを追跡できるようにするために、又は、形質移入効率の測定を容易にするために、蛍光分子、例えば、TAMRA、FAM、Texas Redなどをオリゴマーに付着させることである。
【0042】
CpG島を標的とするアンチジーンdsRNAを用いたメチラーゼ依存性の転写阻害が、記載されている(2,3)。しかしながら、本発明の方法は、メチラーゼ非依存性であり、標的転写物の合成は、効果的なメチル化とは独立に増加され、効果的なメチル化を必要とせずに増加される(例えば、メチラーゼ阻害剤の存在下で、細胞をオリゴマーと接触させた場合でも、転写合成がなお生じる。)。本発明の特定の実施形態において、標的プロモーター内の標的領域は、CpG島内に含有されない。ゲノム配列中にCpG島を同定するためのアルゴリズムは公知である(例えば、Takai and Jones, 2002;及びTakai and Jones 2003を参照されたい。)。本発明の別の実施形態において、オリゴマーは、二本鎖RNAであり、及び標的プロモーター内の標的領域は、CG二ヌクレオチドを含まない。
【0043】
ペプチド核酸(PNA)も、本発明の方法において使用するための好ましいオリゴマーである。様々なPNA構成が、本分野において公知である。例えば、PNAオリゴマーは、場合によって、1つのPNAオリゴマーが、ワトソン−クリック塩基対合を介して標的を結合し、第二のオリゴマーがフーグスティーン認識を介して結合するビスPNAとして調製されるホモピリミジンであり得(例えば、Nielsen,2004を参照されたい。)、1つ又はそれ以上のアデニンがジアミノプリンで場合によって置換されているホモプリンであり得(例えば、Haaima et al, 1997を参照されたい。)、又は、場合によって標的配列において尾部固定(tail−clamp)を形成するように構成された混合プリン/ピリミジンであり得る(例えば、Kaihatsu et al, 2003を参照されたい。)。好ましい実施形態において、PNAは、一本鎖の混合プリン/ピリミジンである。
【0044】
本発明の方法では、DNAオリゴマーを使用することも可能である。しかしながら、修飾されていないオリゴデオキシヌクレオチドは、ヌクレアーゼによって素早く分解される。従って、DNAオリゴマーを使用する場合には、ヌクレアーゼ耐性を増加させるために、DNAオリゴマーは、好ましくは化学修飾を有する。ヌクレアーゼ耐性を増加させるための様々な化学修飾が、本分野において公知である。最も単純で、最も広く使用されている修飾は、硫黄原子がオリゴホスファート骨格中の非架橋酸素を置換するホスホロチオアート(PS)修飾である。DNAオリゴマーは、多数の業者(例えば、Integrated DNA Technologies, Coralville, IA)から市販されている。
【0045】
使用可能なオリゴマーの他の種類には、モルホリノオリゴマー(例えば、Summerton and Weller,1997を参照されたい。)及びLNA(例えば、Wahlestedt et al,2000を参照されたい。)が含まれる。オリゴマーと接触される哺乳動物細胞は、インビトロ(例えば、培養された細胞)又は宿主中におけるインサイチュとすることができる。培養細胞の例には、初代細胞、(例えば、細胞株由来の)癌細胞、成体又は胚性幹細胞、神経細胞、繊維芽細胞、筋細胞などが含まれる。細胞は、あらゆる動物から得ることが可能である。一実施形態において、細胞は、インビトロのヒト細胞である。さらなる実施形態において、細胞は、乳癌細胞であり、及び遺伝子は、ヒトプロゲステロン受容体である。他の実施形態において、細胞は、がん細胞であり、並びに遺伝子は、E−カドヘリン、ヒトプロゲステロン受容体(hPR)、p53及びPTENからなる群から選択されるタンパク質をコードする。
【0046】
治療的効果(例えば、アポトーシスの誘導、癌細胞中での増殖の停止など)に対する遺伝子のプロモーター領域を標的とするオリゴマーをスクリーニングするために、ヒトの疾病又は疾患に対する治療薬の候補を検査するために一般的に使用される培養ヒト細胞を使用することができる。細胞がインサイチュである場合には、宿主はあらゆる哺乳動物であり得、ある種の好ましい実施形態は、ヒトであり、又はヒトの疾病若しくは疾患の研究において使用される動物モデル(例えば、げっ歯類、イヌ、ブタなどの動物モデル)である。
【0047】
接触工程では、細胞にオリゴマーを送達するために使用される方法は、使用されるオリゴマーに、及び細胞がインビトロ又はインビトロであるかどうかに応じて変動し得る。インビトロの細胞の場合、細胞中への直接注入によって、送達を達成することができる。微少注入が選択肢でない場合、幾つかの事例では、LipofectamineTM(Invitrogen, Carlsbad, CA)などの疎水性又は陽イオン性担体を使用することによって、送達を強化することが可能である。本発明の一実施形態において、細胞は、インビトロで培養された細胞であり、オリゴマーは18から25塩基の二本鎖RNAであり、並びに細胞は、オリゴマー及び陽イオン性脂質を含む組成物と接触される。PNAオリゴマーは、PNAオリゴマーを部分的に相補的なDNAオリゴヌクレオチド及び陽イオン性脂質(21から25)と複合体化させることによって、インビトロで細胞中に導入することができる。脂質は、DNAの内部移行を促進するのに対して、PNAは積荷として進入し、その後放出される。
細胞性取り込みを促進するために、ペネトラチン、トランスポータン、Tatペプチド、核移行シグナル(NLS)及びその他のペプチドなどのペプチドをオリゴマーに付着させることが可能である(例えば、Nielsen, 2004;Kaihatsu et al, 2003;Kaihatsu, et al, 2004;及び参考文献7を参照されたい。)。あるいは、リゾレシチンなどの透過剤を用いて細胞を透過化した後、オリゴマーと接触させることができる。インビトロでオリゴマーを細胞に送達させるために、ウイルス形質導入を使用することが可能である(例えば、レンチウイルス形質導入、例えば、参考文献7を参照されたい。)。しかしながら、本発明のある種の実施形態において、接触工程はウイルス形質導入を含まないことが好ましい。さらなる好ましい実施形態において、接触工程はウイルス形質導入を含まず、及びオリゴマーは、核移行ペプチドに付着されない。
【0048】
インサイチュ細胞の場合、オリゴマーの送達を促進するために、陽イオン性脂質(例えば、Hassani et al, 2004を参照されたい。)及びポリエチレンイミンなどのポリマー(例えば、Urban−Klein, 2005を参照されたい。)が使用されてきた。(担体溶液中の)オリゴマーから実質的になる組成物は、宿主中へ直接注入することが可能である(例えば、Tyler et al, 1999; McMahon et al, 2002を参照されたい。)。本発明の好ましい実施形態において、細胞は宿主中においてインサイチュであり、オリゴマーは18から25塩基の二本鎖RNAであり、及び細胞は、オリゴマーから実質的になる組成物と接触される。二重鎖RNAのインビボ適用は、Paroo及びCorey(2004)に概説されている。
【0049】
典型的には、本発明の方法は、対照条件及び/又は基底発現レベルに比べて、標的転写物の合成を少なくとも1.2倍増加させる。他の実施形態において、少なくとも1.5、1.7、2.0、2.5、3.0、3.5又は4.0倍の増加が達成される。ウイルス形質導入なしに、標的転写物の効率的な増加された合成を達成することが可能であり、実際、好ましい実施形態において、接触工程は、ウイルス形質導入を含まない。標的プロモーターの複数の領域を標的とすることが可能であるが、標的転写物の高度に効率的な増加した合成は、標的プロモーターの単一領域のみを標的とするdsRNAを用いた場合に達成され得る。例えば、一実施形態において、オリゴマーは、18から25塩基のdsRNAであり、対照条件及び/又は基底発現レベルに比べて、標的転写物の合成が少なくとも2倍増加し、標的プロモーターの単一領域が標的とされる。オリゴマーのnM又はpM(μM未満)濃度を用いて標的転写物の合成の顕著な増加を達成することが可能であり、典型的には、所望の増加された合成をもたらすために可能な限り最小の濃度を使用することが好ましく、例えば、1から100nM範囲のオリゴマー濃度が好ましく、より好ましくは、濃度は、1から50nM、1から25nM、1から10nM又はpM範囲である。
【0050】
本明細書に開示及び例示されているように、選択的な遺伝子活性化のためのこれまでのところ理解されていない内在性機序を活用することによって、本発明者らの方法は、一般に、多様な標的遺伝子、プロモーター領域、オリゴマー、哺乳動物細胞種及び送達条件にわたって適用可能である。所定のオリゴマーが所定の標的遺伝子の転写を選択的に活性化させる条件は、(例えば、本明細書に記載されているプロトコールに従って)必ず経験的に確認されているのに対して、本発明者らは、本発明者らが研究したあらゆる哺乳動物遺伝子に対するオリゴマーを活性化させることを一貫して見出しており、本発明者らのデータは、哺乳動物細胞が、これらの方法を用いて、遺伝子選択的活性化を標的化するのに一般的に好ましいことを示唆している。
【0051】
本方法の検出工程において、細胞に接触しているオリゴマーから生じた標的転写物の選択的な増加された合成が検出される。これは、遺伝子のmRNA転写物のレベルの増加を測定することによって直接的に、又は対照と比べて、対応するコードされたタンパク質の増加されたレベルを検出することによって間接的に測定することが可能である。あるいは、標的転写物の生じた選択的な増加された合成は、標的転写物の増加した合成の指標である表現型の評価に基づいて、推測され得る。
【0052】
本発明の別の態様において、遺伝子の標的転写物の合成を選択的に増加させるためのポリヌクレオチドオリゴマーが提供され、遺伝子の標的プロモーター内の領域に相補的な12から28塩基のヌクレオチド配列を含むオリゴマーは、遺伝子の転写開始部位に対して−100から+25ヌクレオチドの間に位置する。遺伝子を含む細胞中に導入されると、オリゴマーは、標的転写物の転写を選択的に増加させる。一実施形態において、標的転写物は、ヒト主要ヴォールトタンパク質(MVP;主要ヴォールトタンパク質)、ヒトE−カドヘリン、ヒトプロゲステロン受容体(hPR)、ヒトp53及びヒトPTENからなる群から選択されるタンパク質をコードする。さらなる実施形態において、オリゴマーは、RNA,DNA、ペプチド核酸又はモルホリノである。一実施形態において、核酸オリゴマーは、18から25塩基のdsRNAである。
【0053】
転写物合成を選択的に増加させる特異的遺伝子標的及びdsRNA配列が、表1に列記されている。各dsRNAの1つの鎖のみ(5’から3’に示されている。)が示されている。さらに、dsRNAは、各鎖上に3’−ジチミジン突出部を有していた。
【0054】
【表1】

【0055】
本発明のさらなる態様において、本発明は、先述されている発明の何れかを広告し、市販し、販売し又は実施許諾することを含む、事業を行う方法を提供する。
【実施例1】
【0056】
agRNAによって誘導された転写の増加
MVP:以前に記載した方法(Janowski et al., 2005)を用いて、転写開始部位に対して−82から−64(−82/−64)に位置する主要ヴォールトタンパク質(MVP;Lange et al, 2000)及びp53部位(−54/−36)を標的とするdsRNAは、それぞれ、RNA及びタンパク質のレベルで、2.9倍及び3.8倍のMVP発現の増加を引き起こした。
【0057】
E−カドヘリン:E−カドヘリンの−10/+9領域を標的とするRNA(EC9と称される。)は、RNA及びタンパク質のレベルで、1.5から2.1倍のE−カドヘリン発現の増加を引き起こした。−9/+10、−13/+6及び−14/+5を標的とするRNAは、発現及び遺伝子活性化の増加を引き起こさず、又は阻害した。EC9によるE−カドヘリン発現の活性化は、3つの独立した実験において観察された。
【0058】
h−PR:本発明者らは、プロゲステロン受容体(PR)に対して相補的な21個のRNAを検査してきた(Janowski et al, 2005)。これらの幾つかは、遺伝子発現を効率的に遮断したが、これらの実験中に、本発明者らは、幾つかのRNAは、小さいが再現性のある発現の増加をもたらすことが認められることに驚いた。これらの観察を追跡するために、本発明者らは、血清の低下したレベルを有する培地中で細胞を増殖させることによって、ほぼ基底レベルまでPRの発現を低下させた。これらの条件下で増殖された細胞に、アンチジーンRNA(agRNA)が形質移入されると、hPR発現の顕著な増加が観察された。表2は、標的とされる領域を示しており、及び様々な実験から得られた増加された発現のレベルを示している。
【0059】
【表2】

【0060】
−9/+10を標的とするagRNAは、血清中で増殖される細胞中のhPRを阻害することが既に示されているのに対して、他のRNAは全て、不活性であり、又は僅かな活性化を示した。これらの結果には再現性があり、通常の10%血清(hPRを活性化させる条件)中で、及び2.5%血清(hPR発現の低いレベルをもたらす、血清が除去された条件)中で観察される。
【0061】
p53:p53に対するプロモーターにRNAを標的化している間に、本発明者らは、転写調節の別の形態を発見した。主要なp53イソフォームの発現は減少(喪失)したのに対して、より低い見かけの分子量を有するp53イソフォームの発現は、以下の領域、すなわち、p53の主要なイソフォームの転写開始部位に対して−7/+12、−9/+10及び−13/+6を標的とした場合に増加した(表1、配列番号7から9参照)。このより低い分子量のp53イソフォームは、他の研究者によっても最近記載された(Bourdon, et al, 2005; Rohaly et al, 2005)。変化されたRNA発現は、RT−PCRによって確認された。
【0062】
p53遺伝子プロモーターは、別の転写開始部位を含有する。表3は、標的転写物の合成を選択的に増加させるための典型的なp53転写開始部位に近い標的領域/オリゴ対を開示している。各dsRNAの1つの鎖(5’から3’へと示されている。)のみが示されている。
【0063】
【表3】

【0064】
本発明者らは、PTENを標的とする二重鎖RNAで細胞を形質移入したときに、第二の遺伝子のイソフォーム発現の同様の上方制御も観察した(表1、配列番号10から12を参照。)。
【実施例2】
【0065】
転写開始部位近くを標的とするアンチジーンPNA(agPNA)オリゴマーによる、ヒトプロゲステロン受容体(hPR)の増加された発現。
【0066】
細胞培養 10%(v/v)熱不活化(56℃、1時間)ウシ胎児血清(Gemini Bioproducts)、0.5%非必須アミノ酸(Sigma)、0.4単位/mLウシインシュリン(Sigma)及び100単位/mLペニシリン及び0.1mg/mLストレプトマイシン(Sigma)が補充されたRPMI培地(ATCC)中に、37℃及び5%COで、T47D乳癌細胞(アメリカン・タイプ・セル・カルチャー・コレクション、ATCC)を維持した。
【0067】
PNAの脂質媒介性形質移入 PNAは、記載されているとおりに取得する(Kaihatsu et al, 2004)。形質移入の二日前に(第2日)、6ウェルプレート中に、80,000細胞/ウェルで、T47D細胞を播種する(Costar)。形質移入の当日に(第0日)、二重鎖(200nM)及びオリゴフェクタミン(9μL/ウェル、Invitrogen)を、製造業者の指示に従って、Optimem(Invitrogen)中に希釈する。24時間後(第1日)に、培地を交換する。第3日目に、新しい6ウェルプレート中に、1:4で細胞を継代する。第5日目に、細胞に二度目の形質移入を行う。第8日目に、細胞を採取する。hPRタンパク質レベルは、抗hPR抗体を用いたWestern分析によって評価する(Cell Signaling Technologies)。
【0068】
RNA分析。トリゾール(TRIzol、Invitrogen)を用いて、処理されたT47D細胞から得た全RNAを抽出する。きょう雑しているDNAを除去するために、デオキシリボヌクレアーゼで、RNAを処理し、Superscript II RNase H−逆転写酵素(Invitrogen)を用いて、ランダムプライマーによって、4μgを逆転写させる。
【0069】
顕微鏡観察。Zeiss Axiovert 200M倒立光透過型光学顕微鏡(Carl Zeiss Microimaging)を用いた共焦点顕微鏡によって、細胞を画像撮影する。自動化されたプログラムを用いて、Z平面中の距離を追跡することによって、細胞の高さの概則を行う。観察のために、個別の細胞を選択し、次いで、個別の細胞の何れの部分も焦点に入らないようになるまで、顕微鏡を過少焦点の状態にする。Z平面中の過少位置が認められ、次いで、細胞が完全に焦点から外れるまで、細胞を通じて、焦点平面を上方向に移動させる。過剰焦点位置が認められ、細胞の高さ(Z次元)の大まかな推測を計算することができる。
【0070】
生物学的に活性なPNAの細胞性取り込み 部分的に相補的なDNAオリゴヌクレオチド及び陽イオン性脂質と細胞を複合体化することによって、PNAを細胞中に導入する。脂質は、DNAの内部移行を促進するのに対して、PNAは、積荷として進入し、続いて放出される。
【0071】
agPNAによるhPR発現の活性化。hPRの転写開始部位(−100から+25)付近を標的とし、C及びN末端リジンを含有する19塩基のPNAを調製し、200nmの濃度で細胞中に形質移入する。agPNAによって誘導されたhPRタンパク質発現の増加を、ウェスタン分析によって測定する。
【実施例3】
【0072】
VEGF活性化agRNAは、血管新生化を増加させる
ヒトVEGF遺伝子のプロモーター領域は、性質が決定されている(例えば、Tischer et al, 1991を参照されたい。)。転写開始部位は、公開されている配列(GenBank受付番号AF095785.1)中の2363位に位置する。テンプレート鎖に対して完全に相補的であり、及び遺伝子の転写開始部位付近(−50から+25、転写開始は+1である。)を標的とする19マーのagRNAを調製する。典型的なagRNAは、表4に示されている(第二の鎖及び二ヌクレオチド突出部は示されていない。)。
【0073】
【表4】


【0074】
VEGF転写物の合成を選択的に増加させるagRNAの効果は、初代ヒト臍帯静脈細胞(HUVEC)中で測定される。VEGF転写物の得られた選択的な増加された合成は、細胞増殖の増加から推測して検出され、及び/又は対照に対するVEGF遺伝子転写物の増加を測定することによって直接検出される。以下に記載されているように、心筋虚血の治療のための動物モデル及び臨床試験において、VEGF遺伝子転写の少なくとも2倍の増加をもたらすagRNAを評価する。
【0075】
虚血性心臓モデル 公知の方法(例えば、Zender et al, 2003; Su et al, 2002;及びSu et al, 2004を参照。)を用いて、虚血性心臓マウスモデルへVEGF活性化agRNAを送達するために、アデノウイルスベクターを構築する。腹腔内注射によって、2.5%Avertin15から16μL/g体重で、CD1マウス(Charles River Breeding Laboratories)に麻酔をかける。小動物用従量式換気装置(Harvard Rodent Ventilator, model 683, South Natick, MA)によって、動物の呼吸を調節した後、第四肋間腔中に、開胸切開を施す。心臓を露出させるために、切開内に、手術用開創器を配置する。虚血を誘導するために、6−0非吸収性外科用縫合糸で、冠動脈前下降枝を永久的に結紮する。Hepes生理的食塩水(pH7.4)の50μL中のウイルスベクターの1×1011ゲノムを、虚血領域周囲の左心室壁上の心筋の複数部位へ注射する。対照マウスには、緩衝液の注射を与える。手術の4週後に、心機能を評価する。左心室拡張末期径(LVDd)及び収縮末期径(LVDs)を測定する。短縮化割合のパーセント(FS%)は、(LVDd−LVDs)/LVDd×100として計算される。
【0076】
心エコー後に集められた心臓を切片化し、抗血小板内皮細胞接着分子1及び平滑筋α−アクチン抗体で染色する。血管は、6つの領域(3つは左心室の横断面中の前壁上、3つは後壁上)上でカウントする。領域1は、専ら筋肉組織から構成され、領域2は筋肉と瘢痕の両方を有し、領域3は瘢痕のみを有する。ベクターは、前壁の領域2中に注入される。従って、前中の注射された領域と対応する注射されていない後領域との比較は、VEGF発現に対するagRNAの効果を示す。毛細血管密度は、領域1については、心筋細胞に対する毛細血管の比として表され、領域2及び3については、1mm当りの毛細血管数として表される。α−アクチン陽性血管の密度は、1mm当りの又は全領域の血管数として表される。VEGF発現の活性化は、同じ心臓中の後壁と比べた及び対照群の前壁と比べた前壁の3つの領域全てにおける毛細血管及びα−アクチン陽性血管の増加によって示される。
【0077】
臨床試験:ヒトにおけるVEGF活性化agRNA療法の安全性及び有効性は、Losordo et al(2002)によって記載された研究に倣って設計された臨床試験において評価される。適格性を有する患者には、最大の医学的治療に対して難治性のカナダ心臓血管協会(CCS)クラスIII又はIV狭心症、バイパス手術又は血管形成術に適していない多枝冠動脈疾患及びストレスSPECTTc99mセスタミビ核影像法上での可逆的虚血が含まれる。被験者が、悪性腫瘍の既往歴又は現時点での兆候、活性な糖尿病性網膜症又は重度のLV収縮不全の兆候(経胸壁2次元心エコーによって、LV駆出率[EF]<20%)を有していれば、被験者を除外した。
【0078】
VEGF誘導性agRNA発現ベクターを患者中に注射する。被験者は、虚血性心筋の中心部に注射を誘導するために、ベクターの注射の直前に、非経口透視LVEMMを受ける。注射から12週目に、追跡EMMを実施する。予め指定された主な有効性パラメータは、12週の追跡調査のための訪問時におけるCCS狭心症分類中のベースラインからの変化及び運動耐容性である。
【実施例4】
【0079】
agRNAによって誘導された転写の増加
遺伝子活性化は、遺伝子発現の低い基底レベルに対してさらに容易に観察できると、本発明者らは推論した。従って、本発明者らの仮説に取り組むために、本発明者らは、T47D細胞中で観察されるより、ずっと低いPRタンパク質発現の基底レベルを有する乳癌細胞株であるMCF−7細胞中に二重鎖RNAを導入した(Janowski et al(2006a) Nature Struc.Mol.Biol 13:787−792; Jenster et al(1997) Proc Natl Acad Sci USA 94:7879−7884)。
【0080】
本発明者らは、−11から+8のPRプロモーター配列に相補的な二重鎖であるRNAPR11を用いた検査を開始した。PR11は、T47D細胞中でのPR発現を阻害しなかったが、強力な阻害剤であるagRNAによって取り囲まれていたので、本発明者らは、PR11を選択した。比較のために、本発明者らは、T47D細胞中でのPR発現の強力な阻害剤であることを本発明者らが以前に示したRNApR9及びPR26も検査した。
【0081】
本発明者らは、陽イオン性脂質を用いて、二重鎖RNAPR11をMCF−7細胞中に導入し(Janowski et al(2006b) Nature Protocols 1:436−443)、ウェスタン分析によって、PRタンパク質のレベルの18倍の増加を観察し、適切な細胞状況で検査された場合に、agRNAが遺伝子発現の大幅な上方制御を引き起こし得ることを示した。PR9の添加はPR発現に影響を与えなかったのに対して、PR26は、PRレベルを2倍微増させた。PRmRNA内の下流コード配列に対して相補的である2つのsiRNAは、PRタンパク質の発現を阻害し、PRレベルは、MCF−7細胞中において、標準的な転写後発現停止によって低下され得ることを示している。
【0082】
PR11による遺伝子発現のRNA媒介性活性化を観察した後、本発明者らは、本現象の特異性及び効力についてアッセイを行った。本発明者らは、二重鎖の何れかの末端において相補性を保存するミスマッチなど、多数のミスマッチ及びスクランブルされた対照二重鎖を調べた。これらの対照二重鎖は、PRの発現を増加させず、上方制御が配列特異的であることを示している。様々な濃度のPR11の添加によって、活性化が強力である(12nMの濃度で17倍の活性化が達成された。)ことが示された。
【0083】
次いで、本発明者らは、T47D細胞中において、二重鎖RNAによる遺伝子活性化を再度調べた。活性化の明瞭な観察を容易にするために、本発明者らは、活性炭処理された血清を含有する培地中で細胞を増殖させることによって、PR発現の基底レベルを低下させた(Hurd et al(1995) J. Biol. Chem)。予想通り、ホルモンを欠如する血清除去培地の使用は、PR発現を低下させた。RNAPR11の添加は、通常の培地中のT47D細胞に対して観察されたレベルまでPR発現を誘導した。これらの結果は、PR11が、2つの異なる乳癌細胞種で同一の生理的効果を有すること、及びPR11は、ホルモン受容体発現を操作するための十分に確立された機序を相殺できることを示している。
【0084】
PRタンパク質は、生理的プロセスにおいて異なる役割を果たす2つのイソフォームPR−A及びPR−Bとして発現される(Conneely et al,(2003) Mammary Gland Biol. Neoplasia 8:205−214)。PR−Bに対するプロモーターは、PR−Aに対するプロモーターの上流に存在し、本研究で使用されるRNAは、PR−Bプロモーターを標的とする。本発明者らは、PR−Bプロモーターを標的とする(agRNA、アンチジーンPNA)又はPR−BmRNAを標的とする(siRNA、アンチセンスPNA)agRNA、siRNA、アンチセンスPNA又はアンチジーンPNAは、PR−Aのレベルも低下させることを以前に観察しており(Janowski et al, 2005; Janowski et al, 2006a; Janowski et al, 2006b;及びJanowski et al(2006c) Nature Chem. Biol 1:210−215)、PR−Aの発現が、PR−Bの発現と関連していることを示唆している。本発明者らは、ここに、PR−Bプロモーターを標的とするRNAが、PR−BとPR−Aの両タンパク質の発現を増強させ得ることも観察し、これらのイソフォームの発現が関連していることの補完的な証拠を与える。
【0085】
活性を標的配列と相関させるために、本発明者らは、PRプロモーター内の領域−56から+17を通じて配列に標的化される一連の二重鎖RNAを検査した。これらの二重鎖RNAの幾つかは、PRの発現を5倍又はそれ以上誘導した(表5)。標的配列の小さなシフトが、活性化に対して重大な帰結をもたらした。例えば、PR11から上流(PR12)又は下流(PR10)への単一の塩基シフトは、活性化を大幅に低下させた。実験を数回繰り返したが、類似の結果が得られた。これらのデータは、プロモーター全体の配列が適切な標的であること、及びRNA媒介性遺伝子活性化のための要件は柔軟であることを示している。
【0086】
【表5】

【0087】
本発明者らは、活性化するRNAPR11での形質移入前又は後の何れかに、非活性のRNAPR10又はPR12が形質移入される添加順序実験を行った。
PR10又はPR12を最初に細胞に添加した場合には、本発明者らは、その後のPR11の添加が活性化をもたらさないことを観察した。最初にPR11が細胞に添加された場合には、PR10又はPR12は、遺伝子活性化を遮断しなかった。これらの競合アッセイは、非活性なRNAPR10及びPR12がPR11と同一の標的配列に結合することを示している。認識は、PR11の結合を遮断し、PR発現の活性化を妨げるのに十分である。PR10及びPR12とのPR11の競合は、PRのRNA媒介性活性化の標的及び配列特異性をさらに実証する。
【0088】
【表6】

【0089】
二重鎖RNAが他の遺伝子の発現を活性化することができるかどうかを決定するために、本発明者らは、主要ヴォールトタンパク質(MVP)(Huffman and Corey,(2004) Biochemistry 44:2253−2261)に標的化された一連のRNAを調べた。本発明者らは、以前に、agRNAでその発現を停止させたので、MVPを選択した。(Janowski et al, 2005)。MVP6及びMVP9は、遺伝子発現を阻害したが、この結果は、本発明者らが以前に報告した結果である(Janowski et al, 2005)。これに対して、MVP35(Genbank受託番号AJ238509、GI:583487のヌクレオチド1819から1837のヌクレオチドに対応する。)、MVP54及びMVP82は、正常なレベルより2から4倍発現を増加させた。これらのデータは、二重鎖RNAが、発現の比較的高い基底レベルを有する遺伝子の発現を強化できることを示しており、本発明者らによる、T47D細胞中でのPRのRNA媒介性上方制御の最初の観察と類似している。
【0090】
定量的PCR(QPCR)によって、PR11でのMCF−7細胞の処理が、様々な細胞培養条件下で、PRmRNAの発現を増強することが明らかとなる。本発明者らは、以前に、siRNAによるT47D細胞中でのPR発現の阻害を示しており(Hardy et al(2006) Mol Endocrinol, Epub、2006年6月13日の時点で出版されていない。)、又はインターロイキン1β(IL−1β)での誘導後に、agRNAがシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)の発現を著しく増加させることを示した(非公開)。本発明者らは、ここに、RNAPR11での処理後におけるMCF−7細胞中でのPR遺伝子発現の活性化が、IL−1βの存在下又は不存在下でCOX−2発現を低下させることを観察する。PR11での細胞の処理は、PR発現の中心的制御物質であるエストロゲン受容体−α(ER−α)のレベルを変化させなかった。従って、本発明の特定の実施形態は、細胞中でのCox−2発現を減少させる方法であり、オリゴマーがヒトプロゲステロン受容体(hPR)の合成を選択的に増加させる条件下で、hPR遺伝子の転写開始部位に対して−100から+25ヌクレオチドの間に位置する領域に相補的な12から28塩基のポリヌクレオチドオリゴマーと前記細胞を接触させる工程、及びCox−2の減少された合成を検出する工程を含み、前記オリゴマーが好ましくは二本鎖RNAである、前記方法である。
【0091】
本発明者らのデータは、予測可能な様式で、生理的に意味のある下流の標的遺伝子の発現を操作するために、RNAの活性化を使用できること、及び誘導されたPRは完全に機能的であることを示している。
【0092】
【表7】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物細胞中の遺伝子の標的転写物の合成を選択的に増加させる方法であり、前記標的転写物は、増加された合成を必要とすることが予定されており、前記方法は、
オリゴマーが前記標的転写物の合成を選択的に増加させる条件下で、遺伝子の標的プロモーター内の領域に相補的な12から28塩基のポリヌクレオチドオリゴマーと前記細胞を接触させる工程、及び
前記標的遺伝子の生じた選択的な増加された合成を検出する工程、を含み、前記オリゴマーが二本鎖RNAであり、及び前記領域が前記遺伝子の転写開始部位に対して−100から+25ヌクレオチドの間に位置している、前記方法。
【請求項2】
領域が、遺伝子の転写開始部位に対して−50から+25ヌクレオチドの間に位置している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
領域が、遺伝子の転写開始部位に対して−30から+17ヌクレオチドの間に位置している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
領域が、前記遺伝子の転写開始部位を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
標的プロモーターが、標的転写物のプロモーターである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
標的プロモーターが、標的転写物のイソフォームのプロモーターである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
標的プロモーターが、標的転写物の予め定められたイソフォームのプロモーターであり、及び前記イソフォームの合成が阻害される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
標的プロモーターが、標的転写物のプロモーターであり、標的転写物のイソフォームのプロモーターでもある、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
オリゴマーが18から25塩基の二本鎖RNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
オリゴマーが2’化学修飾を有するヌクレオチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
オリゴマーが、ホスホロチオアートヌクレオチド間連結、2’−O−メチルリボヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−フルオロリボヌクレオチド、2’−デオキシリボヌクレオチド、ユニバーサル塩基ヌクレオチド、5−C−メチルヌクレオチド、逆位デオキシ脱塩基残基の取り込み及びロックされた核酸からなる群から選択される血清安定性増強化学修飾を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
細胞が、インビトロでの培養された細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
細胞が、宿主内においてインサイチュである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
接触工程がウイルス形質導入を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
接触工程がウイルス形質導入を含まず、及び細胞がオリゴマーから実質的になる組成物と接触される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
接触工程がウイルス形質導入を含まず、及び標的転写物の少なくとも2倍の増加された合成が生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
オリゴマーが18から25塩基の二本鎖RNAであり、標的プロモーターの単一の領域が標的化され、及び標的転写物の少なくとも2倍の増加された合成が生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
細胞が、オリゴマーの1から100nM濃度と接触される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
細胞が癌細胞であり、及び遺伝子がE−カドヘリン、ヒトプロゲステロン受容体(hPR)、p53及びPTENからなる群から選択されるタンパク質をコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
細胞中でのCox−2発現を減少させる方法であり、
オリゴマーがヒトプロゲステロン受容体(hPR)の合成を選択的に増加させる条件下で、hPR遺伝子の転写開始部位に対して−100から+25ヌクレオチドの間に位置する領域に相補的な12から28塩基のポリヌクレオチドオリゴマーと前記細胞を接触させる工程、及び
Cox−2の減少された合成を検出する工程を含み、前記オリゴマーが二本鎖RNAである、前記方法。

【公開番号】特開2012−50447(P2012−50447A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−214902(P2011−214902)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【分割の表示】特願2008−541255(P2008−541255)の分割
【原出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【Fターム(参考)】