説明

染色液および染色方法

【課題】
エオシン染色を迅速に行い、且つ刺激臭も少ない染色液を見出すことで、さらには染色液の使用量が少量ですむ方法
【解決手段】
水と水溶性有機溶媒との混液に溶かしたエオシンに、 乳酸を5〜25%加え、さらに酢酸を0.5〜10%加えたエオシン染色液
さらには、テープストリッピング法で得られた角層の付着したテープに、筒或いは穴を有するホルダーの一方を密着固定し、筒或いは穴に上記のエオシン染色液を入れて行う染色方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、迅速に、どこでも実施できる、人や環境に優しい染色液および染色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肌質を知るための1つの方法として、粘着テープ等を皮膚表面に貼着、剥離して粘着テープ等の粘着面に皮膚角層細胞を移し取り、粘着テープ等の粘着面に付着した皮膚角層細胞を必要によりスライドガラス等にさらに写し取りこれを染色する。
これに用いられる染色方法としては、エオシン染色がある。
【0003】
エオシンは酸性色素で、色素自体が負に荷電しているので、正に荷電している細胞質・細胞間質・線維類と結合して染める。pHの違いにより染色性が変わり、より酸性下で組織側の変化により正荷電が増加し、負荷電色素と結合しやすくなる。このため、酢酸を加え、染色性が増した状態で使用と染色時間も短縮できる。
このような染色は個々人の肌質を詳しく知り、それに対応した化粧品が多く作られるようになった昨今では非常によく実施される作業であり、且つ今までのように染色工程を設備の整った実験室等である程度時間をかけて実施する状況のみならず、化粧品を販売する店舗等ですばやく、染色し、その結果から商品の選択するというような必要性が生じている。また、環境面でも換気等が不十分で、不特定多数の人が接する機会を生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように染色時間を短縮するため、酢酸の量を増量すると、酢酸臭が強くなり、設備の整わない、化粧品を販売する店舗等で、なおかつ、一般の消費者には耐え難い臭いである。
すなわち、本発明者らは、酢酸臭の少なく、なおかつ迅速に染色できる染色液、この染色液を使った染色方法を見出すことにある。
さらには、染色は通常染色バットを用いて大量の染色液を使用して、染色を行い、拡大し、顕微鏡等で観察をする方法が取られているが、染色液も少量ですみ廃液の量を減量させて環境にやさしい染色方法をみいだすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の方法が本課題を解決することがわかった。
エオシンを必要量溶媒に溶かす。溶媒は水、エタノール等の水溶性有機溶媒あるいはこれらの混液を用いる。
しかしながら、通常エタノール:水=50:50〜99:1を用いる。
これに対して、容量で5〜25%、好ましくは8〜20%の乳酸を加えて撹拌する。
さらに最初の水と水溶性有機溶媒との混液に溶かしたエオシン液を基準としてときの量として、酢酸を0.5〜10%加える。
発明者らが検討した結果、乳酸だけでは染色の状態が悪く少量の酢酸を加えることによって、酢酸臭が許容範囲で且つ染色状態のよい液を見出すことができた。
この染色液を用いて迅速にまた、染色液も少量ですむ方法を考えた。
これはテープストリッピング法で得た角層細胞の付着したテープをそのテープの付着力も利用して、用意した筒の或いは穴の有するホルダーの一方をこのテープに密着固定した。
【0006】
以下に用いる筒の或いは穴の有するホルダーを説明する。
筒は円筒や楕円筒であってもよいが、断面形状が三角形、四角形、その他の多角形の筒が用いられていても良いが、テープの幅より広くない断面を有する筒の方が、こののち筒に入れる染色液の漏れが少なく、また、テープのない部分を染色しても意味がない。すなわち、断面の大きさは、10〜1000mm2、好ましく20〜500mm2であり、断面が小さいと角層の染色される面積が少なく、目的の肌質の診断が難しくなり、大きすぎても、染色液が余分に必要で肌質の診断の精度も一定面積あればそれ以上は精度向上にほとんど役立たない。
また、筒の一方、又は両面の断面にフランジがあってもよい。
筒の高さ(長さ)は3〜20mm程度がよく、短すぎると必要量の染色液を筒に入れれないし、染色液がこぼれたりする。
【0007】
或いは筒ではないが、穴を有するホルダーでもよい。これは一定の厚みのある板に染色液をいれて置くことができる穴が存在するもので、穴の断面は染色できる面積になるので、筒と同様、10〜1000mm2、好ましく20〜500mm2が必要でその穴の形状も染色状況を確認できる範囲なら任意の形を選択できる。
ホルダーの厚みは筒の高さ(長さ)と同様な意味を持つので、3〜20mm程度がよい。
ホルダーの形状も板状で角層細胞の付着したテープを密着固定できれば特に限定なない。
また、穴はホルダーの両面に突き抜けている必要はなく、凹部でもよいが、この場合、角層細胞の付着したテープを凹部に密着固定する前に、染色液を凹部に入れ、角層細胞の付着したテープを凹部に密着固定した後、反転させ、角層細胞に染色液を接触させることになる。
筒及び穴を有するホルダーの材質は、染色液によって、亀裂や溶解の起こらない材質であれば問題ない。
【0008】
このような筒をテープに密着固定する。これは、この筒に染色液を入れるので、必要時間、テープに付着した角層細胞に染色液が接する時間を確保する程度にテープと筒が密着固定されている必要がある。なお、染色液の回収等を考えると、染色液が漏れない程度に密着固定していた方がよい。
このため、筒又は穴を有するホルダー、角層細胞の付着したテープ、板状の弾性体、変形の少ない板状体の順で設置し、多少の圧力で密着させると染色液の漏れることが少ない。
【0009】
テープに付着した角層細胞に染色液が接する時間は染色液によって異なるが、本発明の主旨から30秒〜15分、好ましくは2〜10分である。短いと染色が不十分になる場合があり、長いと本特許の主旨の短時間で染色ができるという主旨から外れる。
また、染色液作用時間は染色液の酸の濃度によって必要時間が変化するのは言うまでもない。
染色時間が経過したのち、染色液を除去し、顕微鏡、マイクロスコープ等の手段を用いて観察する。また、これらの画像を得て、必要な解析を加える。

【実施例】
【0010】
比較テスト
A.染色液
表1の通りに作成した染色液を用いた。
【0011】
【表1】

【0012】
B.実施方法
人頬部よりセロハンテープ(ニチバン社製、商品名セロハン粘着テープCT405AP−18)を用いて、角層細胞の付着したテープを得た。
このテープの接着面に、図2の筒のフランジがある断面側を押し付け、図1の染色用具のゴム板の上にセットした。この筒のフランジを押さえるように染色用具の押さえ板を止め具で押し付けながら密着固定した。
この筒に上記のように作成した染色液を200μL入れ、5分間静置した。
その後、染色液を棄て、軽く、水洗した後、染色したテープをスライドガラスに密着させた。

【0013】
結果は、図5から図8に示すように染色液に乳酸と酢酸を特定の割合で用いると染色が良好で且つ、短時間で染色でき、酢酸のみを用いた場合より酢酸臭が大幅に低減できた。さらには図1〜4の染色用具を用いることによって少量の染色液で実施可能となった。

【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】は比較テストで用いた染色用具1.止め具2.20×20mm厚さ2mmのゴム板(この上に付着したテープをセットする)3.ヒンジ4.筒設置位置5.押さえ板
【図2】は比較テストで用いた染色液を入れる筒(角層細胞の付着したテープをセットし、セットした反対側から見た写真)
【図3】は比較テストで用いた染色液を入れる筒(筒を横から見た写真で一方にフランジがあり、そのフランジが図1の5の押さえ板によって筒と角層細胞の付着したテープが密着固定される。)
【図4】比較テストで用いた染色用具で角層細胞の付着したテープをセットし、密着固定したところ
【図5】比較テストで実施例1の染色液で染色した画像
【図6】比較テストで実施例2の染色液で染色した画像
【図7】比較テストで比較例1の染色液で染色した画像
【図8】比較テストで比較例2の染色液で染色した画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と水溶性有機溶媒との混液に溶かしたエオシンに、乳酸を5〜25%加え、さらに酢酸を0.5〜10%加えたエオシン染色液。
【請求項2】
請求項1のエオシン染色液を用いる角層染色方法
【請求項3】
テープストリッピング法で得られた角層の付着したテープに、筒或いは穴を有するホルダーの一方を密着固定し、筒或いは穴に請求項1のエオシン染色液を入れて行う請求項2の染色方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−169655(P2011−169655A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31758(P2010−31758)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000166959)御木本製薬株式会社 (66)
【Fターム(参考)】