説明

染色織物の製造方法および染色織物および繊維製品

【課題】染色された染色織物であって、超極細繊維特有のソフトな風合いを呈するだけでなく、優れた発色性と染色堅牢度とを有する染色織物の製造方法、および該製造方法により製造された染色織物、および該染色織物を用いてなる繊維製品を提供する。
【解決手段】単繊維径10〜1000nmのポリエステルフィラメント糸Aと、単繊維径1000nmより大のカチオン可染性フィラメント糸Bとを含む織物を、カチオン染料を用いて染色することにより染色織物を得た後、必要に応じて該染色織物を用いて繊維製品を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超極細繊維特有のソフトな風合いを呈するだけでなく、優れた発色性と染色堅牢度とを有する染色織物の製造方法、および該製造方法により製造された染色織物、および該染色織物を用いてなる繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナノファイバーと称せられる超極細繊維は、超極細繊維特有のソフトな風合いを呈するため、衣料用途、インナー衣料、スポーツ衣料などの分野で、さかんに開発が行われている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
しかしながら、超極細繊維は繊維径が小さいため染料を吸尽するものの発色性が悪く、また、染色堅牢度が十分でないという問題があった(例えば、特許文献5、特許文献6、特許文献7参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−41432号公報
【特許文献2】特開2004−162244号公報
【特許文献3】特開2005−23466号公報
【特許文献4】特開2007−2364号公報
【特許文献5】特開2007−303020号公報
【特許文献6】特開平5−331782号公報
【特許文献7】特開昭60−34671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、染色された織物(以下、単に「染色織物」ということもある。)であって、超極細繊維特有のソフトな風合いを呈するだけでなく、優れた発色性と染色堅牢度とを有する染色織物の製造方法、および該製造方法により製造された染色織物、および該染色織物を用いてなる繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、単繊維径が1000nm以下の超極細繊維と、単繊維径が1000nmより大のカチオン可染性繊維とを用いて織物を得た後、該織物を、カチオン染料を用いて染色することにより、超極細繊維特有のソフトな風合いを呈するだけでなく、優れた発色性と染色堅牢度とを有する染色織物が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして、本発明によれば「単繊維径10〜1000nmのポリエステルフィラメント糸Aと、単繊維径1000nmより大のカチオン可染性フィラメント糸Bとを含む織物を、カチオン染料を用いて染色することを特徴する染色織物の製造方法。」が提供される。
【0007】
その際、前記ポリエステルフィラメント糸Aのフィラメント数が500本以上であることが好ましい。また、前記ポリエステルフィラメント糸Aが、海成分と島成分とからなる海島型複合繊維の海成分を溶解除去して得られた糸条であることが好ましい。一方、前記カチオン可染性フィラメント糸Bがカチオン可染性ポリエステルからなるフィラメント糸であることが好ましい。
【0008】
本発明の染色織物の製造方法において、織物の経糸および/または緯糸に、前記ポリエステルフィラメント糸Aとカチオン可染性フィラメント糸Bとが規則的に含まれていることが好ましい。また、織物の経糸および緯糸のうち、どちらか一方に前記ポリエステルフィラメント糸Aが含まれ、かつ他方に前記カチオン可染性フィラメント糸Bが含まれていることが好ましい。また、織物が2層以上の多層構造を有する多層構造織物であって、少なくとも1層に前記ポリエステルフィラメント糸Aが含まれ、かつ他層に前記カチオン可染性フィラメント糸Bが含まれていることが好ましい。特に、織物が3層以上の多層構造を有し、最外層または最内層に前記ポリエステルフィラメント糸Aが含まれ、他層に前記カチオン可染性フィラメント糸Bが含まれていることが好ましい。また、織物が前記ポリエステルフィラメント糸Aとカチオン可染性フィラメント糸Bとを含み、前記ポリエステルフィラメント糸Aおよび/またはカチオン可染性フィラメント糸Bが複合糸の一部として織物に含まれることが好ましい。その際、かかる複合糸としては、空気混繊糸、複合仮撚捲縮加工糸、およびカバリング糸からなる群より選択されるいずれかであることが好ましい。
【0009】
また、本発明によれば、前記の染色織物の製造方法で製造された染色織物が提供される。かかる染色織物において、明度L値が40以下であることが好ましい。また、JIS L0844により測定した洗濯染色堅牢度が3級以上であることが好ましい。また、JIS L0849により測定した摩擦染色堅牢度が3級以上であることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、前記の染色織物を用いてなる、スポーツウェア、アウトドアウェア、レインコート、傘地、紳士衣服、婦人衣服、作業衣、防護服、人工皮革、履物、鞄、カーテン、防水シート、テント、カーシートの群より選ばれるいずれかの繊維製品が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、染色された染色織物であって、超極細繊維特有のソフトな風合いを呈するだけでなく、優れた発色性と染色堅牢度とを有する染色織物の製造方法、および該製造方法により製造された染色織物、および該染色織物を用いてなる繊維製品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、本発明で用いるポリエステルマルチフィラメント糸Aはその単繊維径(単繊維の直径)が10〜1000nm(好ましくは100〜800nm、特に好ましくは550〜800nm)であることが肝要である。かかる単繊維径を単糸繊度に換算すると、0.000001〜0.01dtexに相当する。該単繊維径が1000nmを超える場合には、染色織物が超極細繊維特有のソフトな風合いを呈さず好ましくない。逆に、該単繊維径が10nm未満の場合には繊維強度が低くなるため実用上好ましくない。ここで、単繊維の断面形状が丸断面以外の異型断面である場合には、外接円の直径を単繊維径とする。なお、単繊維径は、透過型電子顕微鏡で繊維の横断面を撮影することにより測定が可能である。
【0013】
前記ポリエステルフィラメント糸Aにおいて、フィラメント数は特に限定されないが、超極細繊維特有の風合いを得る上で500本以上(より好ましくは2000〜10000本)であることが好ましい。また、ポリエステルフィラメント糸Aの総繊度(単繊維繊度とフィラメント数との積)としては、5〜150dtexの範囲内であることが好ましい。
【0014】
前記ポリエステルフィラメント糸Aの繊維形態は特に限定されないが、長繊維(マルチフィラメント糸)であることが好ましい。単繊維の断面形状も特に限定されず、丸、三角、扁平、中空など公知の断面形状でよい。また、通常の空気加工、仮撚捲縮加工が施されていてもさしつかえない。
【0015】
前記ポリエステルフィラメント糸Aを形成するポリエステルはジカルボン酸成分とジグリコール成分とから製造される。ジカルボン酸成分としては、主としてテレフタル酸が用いられることが好ましく、ジグリコール成分としては主としてエチレングリコール、トリメチレングリコール及びテトラメチレングリコールから選ばれた1種以上のアルキレングリコールを用いることが好ましい。また、ポリエステルには、前記ジカルボン酸成分及びグリコール成分の他に第3成分を含んでいてもよい。該第3成分としては、カチオン染料可染性アニオン成分、例えば、ナトリウムスルホイソフタル酸;テレフタル酸以外のジカルボン酸、例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸;及びアルキレングリコール以外のグリコール化合物、例えばジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールスルフォンの1種以上を用いることができる。かかるポリエステルとしては、ポリ乳酸などの生分解性を有するポリエステル、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。また、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。さらには、ポリ乳酸やステレオコンプレックスポリ乳酸などの脂肪族ポリエステルであってもよい。該ポリエステルポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0016】
また、前記ポリエステルフィラメント糸Aが、海成分と島成分とからなる海島型複合繊維の海成分を溶解除去して得られた糸条であることが好ましい。例えばまず、下記のような海島型複合繊維用の海成分ポリマーと島成分ポリマーを用意する。
【0017】
海成分ポリマーは、好ましくは島成分との溶解速度比が200以上であればいかなるポリマーであってもよいが、特に繊維形成性の良好なポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレンなどが好ましい。例えば、アルカリ水溶液易溶解性ポリマーとしては、ポリ乳酸、超高分子量ポリアルキレンオキサイド縮合系ポリマー、ポリエチレングルコール系化合物共重合ポリエステル、ポリエチレングリコール系化合物と5−ナトリウムスルホン酸イソフタル酸の共重合ポリエステルが好適である。また、ナイロン6は、ギ酸溶解性があり、ポリスチレン・ポリエチレンはトルエンなど有機溶剤に非常によく溶ける。なかでも、アルカリ易溶解性と海島断面形成性とを両立させるため、ポリエステル系のポリマーとしては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6〜12モル%と分子量4000〜12000のポリエチレングルコールを3〜10重量%共重合させた固有粘度が0.4〜0.6のポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが好ましい。ここで、5−ナトリウムイソフタル酸は親水性と溶融粘度向上に寄与し、ポリエチレングリコール(PEG)は親水性を向上させる。なお、PEGは分子量が大きいほど、その高次構造に起因すると考えられる親水性増加効果が大きくなるが、反応性が悪くなってブレンド系になるため、耐熱性・紡糸安定性などの点から好ましくなくなる。また、共重合量が10重量%以上になると、本来溶融粘度低下作用があるので、本発明の目的を達成することが困難になる。したがって、上記の範囲で、両成分を共重合することが好ましい。
【0018】
一方、島成分ポリマーは、海成分との溶解速度差があればいかなるポリエステルポリマーであってもよいが、前記のように繊維形成性のポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ステレオコンプレックスポリ乳酸、ポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどのポリエステルが好ましい。
【0019】
上記の海成分ポリマーと島成分ポリマーからなる海島型複合繊維は、溶融紡糸時における海成分の溶融粘度が島成分ポリマーの溶融粘度よりも大きいことが好ましい。かかる関係にある場合には、海成分の複合重量比率が40%未満と少なくなっても、島同士が接合したり、島成分の大部分が接合して海島型複合繊維とは異なるものになり難い。
【0020】
好ましい溶融粘度比(海/島)は、1.1〜2.0、特に1.3〜1.5の範囲である。この比が1.1倍未満の場合には溶融紡糸時に島成分が接合しやすくなり、一方2.0倍を越える場合には、粘度差が大きすぎるために紡糸調子が低下しやすい。
【0021】
次に島数は、多いほど海成分を溶解除去して極細繊維を製造する場合の生産性が高くなるので100以上(より好ましくは300〜1000)であることが好ましい。なお、島数があまりに多くなりすぎると紡糸口金の製造コストが高くなるだけでなく、加工精度自体も低下しやすくなるので10000以下とするのが好ましい。
【0022】
次に、島成分の径(直径)は、10〜1000nm(好ましくは100〜800nm)の範囲とする必要がある。島成分の径を該範囲内とすることにより、最終的に得られる織物に、単繊維径(単繊維の直径)が10〜1000nmのマルチフィラメント糸が含まれることになる。ここで、島成分の断面形状が丸断面以外の異型断面である場合には、外接円の直径を島成分の径とする。なお、島成分の径(直径)は、海島型複合繊維の海成分をアルカリ水溶液で溶解除去したのち、透過型電子顕微鏡で繊維の横断面を撮影することにより測定が可能である。
【0023】
溶融紡糸に用いられる紡糸口金としては、島成分を形成するための中空ピン群や微細孔群を有するものなど任意のものを用いることができる。例えば中空ピンや微細孔より押し出された島成分とその間を埋める形で流路を設計されている海成分流とを合流し、これを圧縮することにより海島断面形成がなされるいかなる紡糸口金でもよい。
【0024】
吐出された海島型断面複合繊維は、冷却風によって固化され、好ましくは400〜6000m/分で溶融紡糸された後に巻き取られる。得られた未延伸糸は、別途延伸工程をとおして所望の強度・伸度・熱収縮特性を有する複合繊維とするか、あるいは、一旦巻き取ることなく一定速度でローラーに引き取り、引き続いて延伸工程をとおした後に巻き取る方法のいずれでも構わない。
【0025】
ここで、特に微細な島径を有する海島型複合繊維を高効率で製造するために、通常のいわゆる配向結晶化を伴うネック延伸(配向結晶化延伸)に先立って、繊維構造は変化させないで繊維径のみを極細化する流動延伸工程を採用することが好ましい。流動延伸を容易とするため、熱容量の大きい水媒体を用いて繊維を均一に予熱し、低速で延伸することが好ましい。このようにすることにより延伸時に流動状態を形成しやすくなり、繊維の微細構造の発達を伴わずに容易に延伸することができる。このプロセスでは、特に海成分および島成分が共にガラス転移温度100℃以下のポリマーであることが好ましく、なかでもポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステルに好適である。具体的には60〜100℃、好ましくは60〜80℃の範囲の温水バスに浸漬して均一加熱を施し、延伸倍率は10〜30倍、供給速度は1〜10m/分、巻取り速度は300m/分以下、特に10〜300m/分の範囲で実施することが好ましい。予熱温度不足および延伸速度が速すぎる場合には、高倍率延伸を達成することができなくなる。
【0026】
得られた流動状態で延伸された延伸糸は、その強伸度などの機械的特性を向上させるため、定法にしたがって60〜220℃の温度で配向結晶化延伸する。該延伸条件がこの範囲外の温度では、得られる繊維の物性が不十分なものとなる。なお、この延伸倍率は、溶融紡糸条件、流動延伸条件、配向結晶化延伸条件などによって変わってくるが、該配向結晶化延伸条件で延伸可能な最大延伸倍率の0.6〜0.95倍で延伸すればよい。
【0027】
かくして得られた海島型複合繊維において、その海島複合重量比率(海:島)は、40:60〜5:95の範囲が好ましく、特に30:70〜10:90の範囲が好ましい。かかる範囲であれば、島間の海成分の厚みを薄くすることができ、海成分の溶解除去が容易となり、島成分の極細繊維への転換が容易になるので好ましい。ここで海成分の割合が40%を越える場合には海成分の厚みが厚くなりすぎ、一方5%未満の場合には海成分の量が少なくなりすぎて、島間に接合が発生しやすくなる。
【0028】
また、前記の海島型複合繊維において、その島間の海成分厚みが500nm以下、特に20〜200nmの範囲が適当であり、該厚みが500nmを越える場合には、該厚い海成分を溶解除去する間に島成分の溶解が進むため、島成分間の均質性が低下するだけでなく、毛羽やピリングなど着用時の欠陥や染め斑も発生しやすくなる。
【0029】
次いで、該海島型複合繊維にアルカリ水溶液処理を施し、海島型複合繊維の海成分をアルカリ水溶液で溶解除去することにより、海島型複合繊維フィラメント糸を単繊維径が10〜1000nmのポリエステルマルチフィラメント糸Aとする。その際、アルカリ水溶液処理の条件としては、濃度3〜4%のNaOH水溶液を使用し55〜65℃の温度で処理するとよい。また、アルカリ水溶液処理は、織物を織成する前でもよいが、織物を織成した後のほうが好ましい。
【0030】
一方、カチオン可染性フィラメント糸Bはその単繊維径が1000nm(1μm)より大(好ましくは1.1〜20μm)であることが肝要である。該単繊維径が1000nm以下であると、単繊維径が細くなりすぎて染料を吸尽するものの、優れた発色性が得られず好ましくない。逆に該単繊維径が20μmよりも大きいと、超極細繊維が有するピーチタッチ状の独特の風合いが損われるおそれがある。ここで、単繊維の断面形状が丸断面以外の異型断面である場合には、外接円の直径を単繊維径とする。なお、単繊維径は、前記と同様、透過型電子顕微鏡で繊維の横断面を撮影することにより測定が可能である。
【0031】
前記ポリエステルフィラメント糸Bにおいて、フィラメント数は特に限定されないが、1〜300本の範囲内であることが好ましい。また、かかるポリエステルフィラメント糸Bの繊維形態は特に限定されないが、長繊維(マルチフィラメント糸)であることが好ましい。単繊維の断面形状も特に限定されず、丸、三角、扁平、中空など公知の断面形状でよい。また、通常の空気加工、仮撚捲縮加工が施されていてもさしつかえない。
【0032】
前記カチオン可染性フィラメント糸Bを形成するポリマーの種類としては、カチオン可染性ポリマーであれば特に限定されないが、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのカチオン可染剤を、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ステレオコンプレックスポリ乳酸、などのポリエステルに共重合させた、カチオン可染性ポリエステルなどが好ましく例示される。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0033】
本発明の染色織物の製造方法において、前記ポリエステルフィラメント糸A(またはポリエステルフィラメント糸A用海島型複合繊維フィラメント糸)とカチオン可染性フィラメント糸Bとを用いて織物を織成した後、必要に応じて、該織物にアルカリ水溶液処理を施し、海島型複合繊維の海成分をアルカリ水溶液で溶解除去することにより、海島型複合繊維フィラメント糸を単繊維径が10〜1000nmのポリエステルマルチフィラメント糸Aとした後、該織物を、カチオン染料を用いて染色する。その際、前記ポリエステルフィラメント糸A(またはポリエステルフィラメント糸A用海島型複合繊維フィラメント糸)とカチオン可染性フィラメント糸Bのみを用いて織物を織成することが好ましいが、織物の全重量に対して20重量%以下であれば、他の繊維が含まれていてもよい。また、前記ポリエステルフィラメント糸Aの織物の全重量に対する重量割合は10〜40重量%の範囲内であることが好ましい。一方、カチオン可染性フィラメント糸Bの織物の全重量に対する重量割合は60〜90重量%の範囲内であることが好ましい。
【0034】
また、織物の組織は特に限定されず、平織、斜文織、サテン織物等の三原組織、変化組織、変化斜文織等の変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。層数も特に限定されず単層でもよいし2層以上の多層構造を有する織物でもよい。
【0035】
特に、前記ポリエステルフィラメント糸Aとカチオン可染性フィラメント糸Bとが、以下のように織物中に配されていることが好ましい。
すなわち、好ましい実施態様(1)では、織物の経糸および/または緯糸に、前記ポリエステルフィラメント糸Aとカチオン可染性フィラメント糸Bとが規則的に配されている。具体的には、1本交互または複数本交互(例えば、1本:複数本、複数本:1本、複数本:複数本、またはこれらの組合せ)に配されている。
【0036】
また、好ましい実施態様(2)では、織物の経糸および緯糸のうち、どちらか一方に前記ポリエステルフィラメント糸Aが含まれ、かつ他方に前記カチオン可染性フィラメント糸Bが含まれている。例えば、経糸に前記ポリエステルフィラメント糸Aが含まれ、緯糸に前記ポリエステルフィラメント糸Aが含まれる場合、経糸に前記ポリエステルフィラメント糸Aが含まれ、緯糸に前記ポリエステルフィラメント糸Aが含まれる場合などが例示される。
【0037】
また、好ましい実施態様(3)では、織物が2層以上の多層構造を有する多層構造織物であって、少なくとも1層に前記ポリエステルフィラメント糸Aが含まれ、かつ他層に前記カチオン可染性フィラメント糸Bが含まれている。例えば、織物が2層構造を有し、表層に前記ポリエステルフィラメント糸Aが含まれ、かつ裏層に前記カチオン可染性フィラメント糸Bが含まれている場合、また、織物が2層構造を有し、表層に前記カチオン可染性フィラメント糸Bが含まれ、かつ裏層に前記ポリエステルフィラメント糸Aが含まれている場合などが例示される。特に、織物が3層以上の多層構造を有し、最外層または最内層に前記ポリエステルフィラメント糸Aが含まれ、他層に前記カチオン可染性フィラメント糸Bが含まれていることが好ましい。例えば、織物が3層構造を有し、最外層に前記ポリエステルフィラメント糸Aが含まれ、他層に前記カチオン可染性フィラメント糸Bが含まれる場合、織物が3層構造を有し、最外層に前記カチオン可染性フィラメントが含まれ、他層に糸B前記ポリエステルフィラメント糸Aが含まれる場合などが例示される。
【0038】
また、好ましい実施態様(3)では、織物が前記ポリエステルフィラメント糸Aとカチオン可染性フィラメント糸Bとを含み、前記ポリエステルフィラメント糸Aおよび/またはカチオン可染性フィラメント糸Bが複合糸の一部として織物に含まれる。ここで、複合糸としては、インターレース加工やタスラン(登録商標)加工などにより得られる空気混繊糸、複合仮撚捲縮加工糸、カバリング糸などが例示される。その際、ポリエステルフィラメント糸Aとカチオン可染性フィラメント糸Bとのうち一方が芯部に位置し、かつ他方が鞘部に位置する芯鞘構造を複合糸が有していることが好ましい。
【0039】
また、かかる織物を、カチオン染料を用いて染色する際、用いるカチオン染料は通常のカチオン染料でよい。また、染色機も液流染色機、ビーム染色機、ジッガーなど通常の染色機でよく特に限定はない。
【0040】
また、染色工程の前および/または後の工程において、なお、常法の精練、リラックス、プレセット、ファイナルセットなどの各種加工を施してもよい。さらには、起毛加工、撥水加工、カレンダー加工、紫外線遮蔽あるいは制電剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
【0041】
かくして得られた染色された染色織物において、前記カチオン可染性フィラメント糸Bがカチオン染料により着色することにより、優れた発色性と染色堅牢度とを有する。その際、ポリエステルフィラメント糸Aは、カチオン可染性ポリエステルからなる場合はカチオン染料により着色するが、カチオン不染性ポリエステルからなる場合はカチオン染料により着色しない。また、かかる染色織物には、単繊維径10〜1000nmのポリエステルフィラメント糸Aが含まれているので、超極細繊維特有のソフトな風合いを呈する。その際、明度L値が40以下であることが好ましい。また、JIS L0844により測定した洗濯染色堅牢度が3級以上であることが好ましい。また、JIS L0849により測定した摩擦染色堅牢度が3級以上であることが好ましい。
【0042】
また、かかる染色された染色織物において、経糸のカバーファクターおよび緯糸のカバーファクターがいずれも500〜5000(さらに好ましくは、500〜2500)であることが好ましい。経糸もしくは緯糸のカバーファクターが500未満であると、十分な発色性が得られない場合があり好ましくない。逆に、経糸もしくは緯糸のカバーファクターが2500より大きいと、発色性は向上するが、風合いが硬くなり好ましくない。なお、本発明でいうカバーファクターCFは下記の式により表されるものである。
経糸カバーファクターCF=(DWp/1.1)1/2×MWp
緯糸カバーファクターCF=(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWは経糸総繊度(dtex)、MWは経糸織密度(本/2.54cm)、DWは緯糸総繊度(dtex)、MWは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
【0043】
次に、本発明の繊維製品は、前記の染色織物を用いてなる、スポーツウェア、アウトドアウェア、レインコート、傘地、紳士衣服、婦人衣服、作業衣、防護服、人工皮革、履物、鞄、カーテン、防水シート、テント、カーシートの群より選ばれるいずれかの繊維製品である。かかる繊維製品は前記の染色織物を用いているので、超極細繊維特有のソフトな風合いを呈するだけでなく、優れた発色性と染色堅牢度とを有する。
【実施例】
【0044】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
<溶解速度>海・島ポリマーの各々0.3Φ−0.6L×24Hの口金にて1000〜2000m/分の紡糸速度で糸を巻き取りし、さらに残留伸度が30〜60%の範囲になるように延伸して、84dtex/24filのマルチフィラメントを作製した。これを各溶剤にて溶解しようとする温度で浴比100にて溶解時間と溶解量から、減量速度を算出した。
<経糸カバーファクターCFpおよび緯糸カバーファクターCFf>下記式で定義する。
経糸カバーファクターCFp=(DWp/1.1)1/2×MWp
緯糸カバーファクターCFf=(DWf/1.1)1/2×MWf
ただし、DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。
<溶解速度>海・島ポリマーの各々0.3Φ−0.6L×24Hの口金にて1000〜2000m/分の紡糸速度で糸を巻き取りし、さらに残留伸度が30〜60%の範囲になるように延伸して、84dtex/24filのマルチフィラメントを作製した。これを各溶剤にて溶解しようとする温度で浴比100にて溶解時間と溶解量から、減量速度を算出した。
<風合い>
編地表面の風合いを試験者3人が官能評価し、3級:超極細繊維(ナノファイバー)特有の柔らかくヌメリ感のある風合いを呈する、2級:普通、1級:超極細繊維特有の風合いを呈さない、の3段階に評価した。
<単繊維径>
編地を電子顕微鏡で写真撮影した後、n数5で単繊維径を測定しその平均値を求めた。
<明度L値>
マクベス・カラーアイ(Macbeth COLOR―EYE)モデルM―2020P
Lを使用し、JISZ 8729−1980に規定されたL*a*b*系色表示により表される明度L値を測定した
<洗濯染色堅牢度>
JIS L0844により測定した。
<摩擦染色堅牢度>
JIS L0849により測定した。
【0045】
[実施例1](カチオン可染性延伸糸90重量%の実施例)
島成分としてポリエチレンテレフタレート、海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸6モル%と数平均分子量4000のポリエチレングリコール6重量%を共重合したポリエチレンテレフタレートを用い(溶解速度比(海/島)=230)、海:島=40:60、島数=500の海島型複合未延伸繊維を、紡糸温度280℃、紡糸速度1500m/分で溶融紡糸して一旦巻き取った。得られた未延伸糸を、延伸温度80℃、延伸倍率2.5倍でローラー延伸し、次いで150℃で熱セットして巻き取った。得られた海島型複合延伸糸(ポリエステルフィラメント糸A用)は50dtex/10filであり、透過型電子顕微鏡TEMによる繊維横断面を観察したところ、島の形状は丸形状でかつ島の径は700nmであった。
【0046】
一方、カチオン可染剤である5−ナトリウムスルホイソフタル酸を2.6モル%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートポリマーを用いて、常法の紡糸・延伸方法で、カチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸B(56dtex/24fil、カチオン可染性フィラメント糸B)を得た。
【0047】
次いで、経糸に前記カチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸Bを全量配し、緯糸に前記カチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸B2本と、前記海島型複合延伸糸(ポリエステルフィラメント糸A用)1本とを交互に配し、経密度165本/2.54cm、緯密度107本/2.54cmの織密度にて、図1に示す織組織図に従い通常の製織方法により平組織の織物生機を得た。そして、前記海島型複合延伸糸の海成分を除去するために、3.5%NaOH水溶液で、55℃にて30%減量(アルカリ減量)した。該織物には、単繊維径700nmのポリエステルフィラメント糸Aと単繊維径15μmのカチオン可染性フィラメント糸Bが含まれていた。
【0048】
次いで、カチオン染料を用いて染色加工を行い、経密度182本/2.54cm、緯密度118本/2.54cmの織物を作成した。なお、染色は以下の条件で行った。
(染色浴):
Bismarck Brown B(商標、日本化学社製) 3.5%(布帛質量に対して)
Irgasol DAM(商標、チバガイギー社製) 1g/リットル
酢酸 0.5g/リットル
(染色機):
液流染色機(日阪製作所製)
(条件):
温度130℃時間45分
【0049】
得られた織物を走査型電子顕微鏡SEMで織物表面および経糸および緯糸断面を観察したところ、海成分は完全に溶解除去されており、織物の経糸および緯糸全量が均一性に優れた超極細繊維により構成されていることを確認した。得られた織物(染色織物)において、経糸カバーファクターCFpは1289、緯糸カバーファクターCFfは791であり、L値は25、洗濯堅牢度は4級、摩擦堅牢度は4級と優れた発色性と堅牢度を有していた。
【0050】
次いで、該染色織物を用いてTシャツ(スポーツウエアー)を得て着用したところ、超極細繊維(ナノファイバー)特有の柔らかくヌメリ感のある風合いを呈し、優れた発色性と堅牢度を有していた。また、超極細繊維(ナノファイバー)特有の柔らかくヌメリ感のある風合い(3級)を呈するものであった。
【0051】
[実施例2](カチオン可染性延伸糸40重量%の実施例)
経糸に、実施例1と同じカチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸B1本と、実施例1と同じ海島型複合延伸糸(ポリエステルフィラメント糸A用)2本とを交互に配し、緯糸に、実施例1と同じカチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸B1本と、実施例1と同じ海島型複合延伸糸(ポリエステルフィラメント糸A用)2本とを交互に配し、経密度185本/2.54cm、緯密度113本/2.54cmの織密度にて、図1に示す織組織図に従い通常の製織方法により平組織の織物生機を得た。そして、海島型複合延伸糸の海成分を除去するために、3.5%NaOH水溶液で、55℃にて30%減量(アルカリ減量)した。該織物には、単繊維径700nmのポリエステルフィラメント糸Aと単繊維径15μmのカチオン可染性フィラメント糸Bが含まれていた。
【0052】
次いで、実施例1と同様にカチオン染料を用いて染色加工を行い、経密度204本/2.54cm、緯密度125本/2.54cmの織物を作成した。
得られた織物を走査型電子顕微鏡SEMで織物表面および経糸および緯糸断面を観察したところ、海成分は完全に溶解除去されており、織物の経糸および緯糸全量が均一性に優れた極細繊維により構成されていることを確認した。得られた織物において、経糸カバーファクターCFpは918、緯糸カバーファクターCFfは562であり、L値は35、洗濯堅牢度は4級、摩擦堅牢度は4級と優れた発色性と堅牢度を有していた。また、超極細繊維(ナノファイバー)特有の柔らかくヌメリ感のある風合い(3級)を呈するものであった。
【0053】
[実施例3](カチオン可染性延伸糸90重量%の実施例)
経糸に、実施例1と同じカチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸を全量配し、緯糸に、実施例1と同じカチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸B2本と、実施例1と同じ海島型複合延伸糸(ポリエステルフィラメント糸A用)1本とを交互に配し、経密度226本/2.54cm、緯密度138本/2.54cmの織密度にて、図1に示す織組織図に従い通常の製織方法により朱子組織の織物生機を得た。そして、海島型複合延伸糸の海成分を除去するために、3.5%NaOH水溶液で、55℃にて30%減量(アルカリ減量)した。該織物には、単繊維径700nmのポリエステルフィラメント糸Aと単繊維径15μmのカチオン可染性フィラメント糸Bが含まれていた。
【0054】
次いで、実施例1と同様にカチオン染料を用いて染色加工を行い、経密度248本/2.54cm、緯密度151本/2.54cmの織物を作成した。
得られた織物を走査型電子顕微鏡SEMで織物表面および経糸および緯糸断面を観察したところ、海成分は完全に溶解除去されており、織物の経糸および緯糸全量が均一性に優れた極細繊維により構成されていることを確認した。得られた織物において、経糸カバーファクターCFpは1761、緯糸カバーファクターCFfは878であり、L値は25、洗濯堅牢度は4級、摩擦堅牢度は4級と優れた発色性と堅牢度を有していた。また、超極細繊維(ナノファイバー)特有の柔らかくヌメリ感のある風合い(3級)を呈するものであった。
【0055】
[実施例4](カチオン可染性延伸糸40重量%の実施例)
経糸に、実施例1と同じカチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸B1本と、実施例1と同じ海島型複合延伸糸(ポリエステルフィラメント糸A用)2本とを交互に配し、緯糸に、実施例1と同じカチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸B1本と、実施例1と同じ海島型複合延伸糸(ポリエステルフィラメント糸A用)1本とを交互に配し、経密度254本/2.54cm、緯密度146本/2.54cmの織密度にて、図1に示す織組織図に従い通常の製織方法により朱子組織の織物生機を得た。そして、海島型複合延伸糸の海成分を除去するために、3.5%NaOH水溶液で、55℃にて30%減量(アルカリ減量)した。該織物には、単繊維径700nmのポリエステルフィラメント糸Aと単繊維径15μmのカチオン可染性フィラメント糸Bが含まれていた。
【0056】
次いで、実施例1と同様にカチオン染料を用いて染色加工を行い、経密度279本/2.54cm、緯密度161本/2.54cmの織物を作成した。
得られた織物を走査型電子顕微鏡SEMで織物表面および経糸および緯糸断面を観察したところ、海成分は完全に溶解除去されており、織物の経糸および緯糸全量が均一性に優れた極細繊維により構成されていることを確認した。得られた織物において、経糸カバーファクターCFpは1258、緯糸カバーファクターCFfは830であり、L値は35、洗濯堅牢度は4級、摩擦堅牢度は4級と優れた発色性と堅牢度を有していた。また、超極細繊維(ナノファイバー)特有の柔らかくヌメリ感のある風合い(3級)を呈するものであった。
【0057】
[実施例5](カチオン可染性延伸糸90重量%の実施例)
経糸に、実施例1と同じカチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸を全量配し、緯糸に、実施例1と同じカチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸B5本と、実施例1と同じ海島型複合延伸糸(ポリエステルフィラメント糸A用)1本とを交互に配し、経密度134本/2.54cm、緯密度202本/2.54cmの織密度にて、図1に示す織組織図に従い通常の製織方法により平緯二重組織の織物生機を得た。そして、海島型複合延伸糸の海成分を除去するために、3.5%NaOH水溶液で、55℃にて30%減量(アルカリ減量)した。該織物には、単繊維径700nmのポリエステルフィラメント糸Aと単繊維径15μmのカチオン可染性フィラメント糸Bが含まれていた。
【0058】
次いで、実施例1と同様にカチオン染料を用いて染色加工を行い、経密度148本/2.54cm、緯密度222本/2.54cmの織物を作成した。
得られた織物を走査型電子顕微鏡SEMで織物表面および経糸および緯糸断面を観察したところ、海成分は完全に溶解除去されており、織物の経糸および緯糸全量が均一性に優れた極細繊維により構成されていることを確認した。得られた織物において、経糸カバーファクターCFpは1048、緯糸カバーファクターCFfは1434であり、L値は25、洗濯堅牢度は4級、摩擦堅牢度は4級と優れた発色性と堅牢度を有していた。また、超極細繊維(ナノファイバー)特有の柔らかくヌメリ感のある風合い(3級)を呈するものであった。
【0059】
[実施例6](カチオン可染性延伸糸60重量%の実施例)
経糸に、実施例1と同じカチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸を全量配し、緯糸に、実施例1と同じカチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸1本と、実施例1と同じ海島型複合延伸糸(ポリエステルフィラメント糸A用)3本をS方向に150回/m合撚したものとを交互に配し、経密度134本/2.54cm、緯密度160本/2.54cmの織密度にて、図1に示す織組織図に従い通常の製織方法により平緯二重組織の織物生機を得た。そして、海島型複合延伸糸の海成分を除去するために、3.5%NaOH水溶液で、55℃にて30%減量(アルカリ減量)した。該織物には、単繊維径700nmのポリエステルフィラメント糸Aと単繊維径15μmのカチオン可染性フィラメント糸Bが含まれていた。
【0060】
次いで、実施例1と同様にカチオン染料を用いて染色加工を行い、経密度148本/2.54cm、緯密度176本/2.54cmの織物を作成した。
得られた織物を走査型電子顕微鏡SEMで織物表面および経糸および緯糸断面を観察したところ、海成分は完全に溶解除去されており、織物の経糸および緯糸全量が均一性に優れた極細繊維により構成されていることを確認した。得られた織物において、経糸カバーファクターCFpは953、緯糸カバーファクターCFfは1394であり、L値は25、洗濯堅牢度は4級、摩擦堅牢度は4級と優れた発色性と堅牢度を有していた。また、超極細繊維(ナノファイバー)特有の柔らかくヌメリ感のある風合い(3級)を呈するものであった。
【0061】
[実施例7](カチオン可染性延伸糸90重量%の実施例(3重織))
経糸に、実施例1と同じカチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸B5本と、実施例1と同じ海島型複合延伸糸(ポリエステルフィラメント糸A用)1本とを交互に配し、緯糸に、実施例1と同じカチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸Bを全量に配し、経密度333本/2.54cm、緯密度198本/2.54cmの織密度にて、図1に示す織組織図に従い通常の製織方法により平三重組織の織物生機を得た。そして、海島型複合延伸糸の海成分を除去するために、3.5%NaOH水溶液で、55℃にて30%減量(アルカリ減量)した。該織物には、単繊維径700nmのポリエステルフィラメント糸Aと単繊維径15μmのカチオン可染性フィラメント糸Bが含まれていた。
【0062】
次いで、実施例1と同様にカチオン染料を用いて染色加工を行い、経密度366本/2.54cm、緯密度218本/2.54cmの織物を作成した。
得られた織物を走査型電子顕微鏡SEMで織物表面および経糸および緯糸断面を観察したところ、海成分は完全に溶解除去されており、織物の経糸および緯糸全量が均一性に優れた極細繊維により構成されていることを確認した。得られた織物において、経糸カバーファクターCFpは2529、緯糸カバーファクターCFfは1546であり、L値は25、洗濯堅牢度は4級、摩擦堅牢度は4級と優れた発色性と堅牢度を有していた。また、超極細繊維(ナノファイバー)特有の柔らかくヌメリ感のある風合い(3級)を呈するものであった。
【0063】
[実施例8](カチオン可染性延伸糸40重量%の実施例(3重織))
経糸に、実施例1と同じカチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸B1本と、実施例1と同じ海島型複合延伸糸(ポリエステルフィラメント糸A用)2本とを交互に配し、緯糸に、実施例1と同じカチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸B1本と、実施例1と同じ海島型複合延伸糸(ポリエステルフィラメント糸A用)2本とを交互に配し、経密度360本/2.54cm、緯密度223本/2.54cmの織密度にて、図1に示す織組織図に従い通常の製織方法により平三重組織の織物生機を得た。そして、海島型複合延伸糸の海成分を除去するために、3.5%NaOH水溶液で、55℃にて30%減量(アルカリ減量)した。該織物には、単繊維径700nmのポリエステルフィラメント糸Aと単繊維径15μmのカチオン可染性フィラメント糸Bが含まれていた。
【0064】
次いで、実施例1と同様にカチオン染料を用いて染色加工を行い、経密度396本/2.54cm、緯密度246本/2.54cmの織物を作成した。
得られた織物を走査型電子顕微鏡SEMで織物表面および経糸および緯糸断面を観察したところ、海成分は完全に溶解除去されており、織物の経糸および緯糸全量が均一性に優れた極細繊維により構成されていることを確認した。得られた織物において、経糸カバーファクターCFpは2503、緯糸カバーファクターCFfは1555であり、L値は35、洗濯堅牢度は4級、摩擦堅牢度は4級と優れた発色性と堅牢度を有していた。また、超極細繊維(ナノファイバー)特有の柔らかくヌメリ感のある風合い(3級)を呈するものであった。
【0065】
[実施例9](カチオン可染性延伸糸70重量%の実施例(鞘カチオン混繊糸とナノファイバーとの平織))
経糸に、実施例1と同じカチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸を含む混繊糸を配し、緯糸に、経糸と同じカチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸Bを含む混繊糸3本と実施例1と同じ海島型複合延伸糸(ポリエステルフィラメント糸A用)2本とを交互に配し、経密度105本/2.54cm、緯密度67本/2.54cmの織密度にて、図1に示す織組織図に従い通常の製織方法により平組織の織物生機を得た。そして、海島型複合延伸糸の海成分を除去するために、3.5%NaOH水溶液で、55℃にて30%減量(アルカリ減量)した。該織物には、単繊維径700nmのポリエステルフィラメント糸Aと単繊維径15μmのカチオン可染性フィラメント糸Bが含まれていた。
【0066】
次いで、実施例1と同様にカチオン染料を用いて染色加工を行い、経密度105本/2.54cm、緯密度71本/2.54cmの織物を作成した。
得られた織物を走査型電子顕微鏡SEMで織物表面および経糸および緯糸断面を観察したところ、海成分は完全に溶解除去されており、織物の経糸および緯糸全量が均一性に優れた極細繊維により構成されていることを確認した。得られた織物において、経糸カバーファクターCFpは1307、緯糸カバーファクターCFfは788であり、L値は25、洗濯堅牢度は4級、摩擦堅牢度は4級と優れた発色性と堅牢度を有していた。また、超極細繊維(ナノファイバー)特有の柔らかくヌメリ感のある風合い(3級)を呈するものであった。
【0067】
[実施例10](カチオン可染性延伸糸40重量%の実施例(鞘カチオン混繊糸とナノファイバーとの平織)
経糸に、実施例1と同じカチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸を含む混繊糸3本と、実施例1と同じ海島型複合延伸糸(ポリエステルフィラメント糸A用)1本とを交互に配し、緯糸に、実施例1と同じ海島型複合延伸糸(ポリエステルフィラメント糸A用)を配し、経密度111本/2.54cm、緯密度86本/2.54cmの織密度にて、図1に示す織組織図に従い通常の製織方法により平組織の織物生機を得た。そして、海島型複合延伸糸の海成分を除去するために、3.5%NaOH水溶液で、55℃にて30%減量(アルカリ減量)した。該織物には、単繊維径700nmのポリエステルフィラメント糸Aと単繊維径15μmのカチオン可染性フィラメント糸Bが含まれていた。
【0068】
次いで、実施例1と同様にカチオン染料を用いて染色加工を行い、経密度122本/2.54cm、緯密度95本/2.54cmの織物を作成した。
得られた織物を走査型電子顕微鏡SEMで織物表面および経糸および緯糸断面を観察したところ、海成分は完全に溶解除去されており、織物の経糸および緯糸全量が均一性に優れた極細繊維により構成されていることを確認した。得られた織物において、経糸カバーファクターCFpは1302、緯糸カバーファクターCFfは794であり、L値は35、洗濯堅牢度は4級、摩擦堅牢度は4級と優れた発色性と堅牢度を有していた。また、超極細繊維(ナノファイバー)特有の柔らかくヌメリ感のある風合い(3級)を呈するものであった。
【0069】
[実施例11](カチオン可染性延伸糸90重量%の実施例(鞘ナノファイバー混繊糸とカチオン可染性延伸糸との平織))
経糸に、実施例1と同じカチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸を配し、緯糸に、実施例1と同じカチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸B3本と、実施例1と同じ海島型複合延伸糸(ポリエステルフィラメント糸A用)を含む混繊糸1本とを交互に配し、経密度117本/2.54cm、緯密度74本/2.54cmの織密度にて、図1に示す織組織図に従い通常の製織方法により平組織の織物生機を得た。そして、海島型複合延伸糸の海成分を除去するために、3.5%NaOH水溶液で、55℃にて30%減量(アルカリ減量)した。該織物には、単繊維径700nmのポリエステルフィラメント糸Aと単繊維径15μmのカチオン可染性フィラメント糸Bが含まれていた。
【0070】
次いで、実施例1と同様にカチオン染料を用いて染色加工を行い、経密度128本/2.54cm、緯密度81本/2.54cmの織物を作成した。
得られた織物を走査型電子顕微鏡SEMで織物表面および経糸および緯糸断面を観察したところ、海成分は完全に溶解除去されており、織物の経糸および緯糸全量が均一性に優れた極細繊維により構成されていることを確認した。得られた織物において、経糸カバーファクターCFpは1290、緯糸カバーファクターCFfは813であり、L値は25、洗濯堅牢度は4級、摩擦堅牢度は4級と優れた発色性と堅牢度を有していた。また、超極細繊維(ナノファイバー)特有の柔らかくヌメリ感のある風合い(3級)を呈するものであった。
【0071】
[実施例12](カチオン可染性延伸糸40重量%の実施例(鞘ナノファイバー混繊糸とカチオン可染性延伸糸との平織))
経糸に、実施例1と同じカチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸B2本と、実施例1と同じ海島型複合延伸糸(ポリエステルフィラメント糸A用)を含む混繊糸1本とを交互に配し、緯糸に、実施例1と同じ海島型複合延伸糸(ポリエステルフィラメント糸A用)を含む混繊糸1本とを交互に配し、経密度105本/2.54cm、緯密度74本/2.54cmの織密度にて、図1に示す織組織図に従い通常の製織方法により平組織の織物生機を得た。そして、海島型複合延伸糸の海成分を除去するために、3.5%NaOH水溶液で、55℃にて30%減量(アルカリ減量)した。該織物には、単繊維径700nmのポリエステルフィラメント糸Aと単繊維径15μmのカチオン可染性フィラメント糸Bが含まれていた。
【0072】
次いで、実施例1と同様にカチオン染料を用いて染色加工を行い、経密度115本/2.54cm、緯密度81本/2.54cmの織物を作成した。
得られた織物を走査型電子顕微鏡SEMで織物表面および経糸および緯糸断面を観察したところ、海成分は完全に溶解除去されており、織物の経糸および緯糸全量が均一性に優れた極細繊維により構成されていることを確認した。得られた織物において、経糸カバーファクターCFpは1299、緯糸カバーファクターCFfは808であり、L値は35、洗濯堅牢度は4級、摩擦堅牢度は4級と優れた発色性と堅牢度を有していた。また、超極細繊維(ナノファイバー)特有の柔らかくヌメリ感のある風合い(3級)を呈するものであった。
【0073】
[比較例1](ナノファイバー100重量%の比較例)
実施例1と同じ海島型複合延伸糸(ポリエステルフィラメント糸A用)を経糸と緯糸に全量配し、経密度197本/2.54cm、緯密度121本/2.54cmの織密度にて、図1に示す織組織図に従い通常の製織方法により平組織の織物生機を得た。そして、海島型複合延伸糸の海成分を除去するために、3.5%NaOH水溶液で、55℃にて30%減量(アルカリ減量)した。該織物には、単繊維径700nmのポリエステルフィラメント糸Aのみが含まれていた。
【0074】
次いで、実施例1と同様にカチオン染料を用いて染色加工を行い、経密度217本/2.54cm、緯密度133本/2.54cmの織物を作成した。
得られた織物を走査型電子顕微鏡SEMで織物表面および経糸および緯糸断面を観察したところ、海成分は完全に溶解除去されており、織物の経糸および緯糸全量が均一性に優れた極細繊維により構成されていることを確認した。得られた織物において、経糸カバーファクターCFpは697、緯糸カバーファクターCFfは427であり、L値は70、洗濯堅牢度は4級、摩擦堅牢度は4級と、充分な発色性が得られなかった。また、超極細繊維(ナノファイバー)特有の柔らかくヌメリ感のある風合い(3級)を呈するものであった。
【0075】
[比較例2](ナノファイバー100重量%で分散染料を用いて染色した比較例)
実施例1と同じ海島型複合延伸糸(ポリエステルフィラメント糸A用)を経糸と緯糸に全量配し、経密度197本/2.54cm、緯密度121本/2.54cmの織密度にて、図1に示す織組織図に従い通常の製織方法により平組織の織物生機を得た。そして、海島型複合延伸糸の海成分を除去するために、3.5%NaOH水溶液で、55℃にて30%減量(アルカリ減量)した。該織物には、単繊維径700nmのポリエステルフィラメント糸Aのみが含まれていた。
【0076】
次いで、実施例1の染色工程においてカチオン染料にかえて分散染料を用いて染色加工を行い、経密度216本/2.54cm、緯密度133本/2.54cmの織物を作成した。
得られた織物を走査型電子顕微鏡SEMで織物表面および経糸および緯糸断面を観察したところ、海成分は完全に溶解除去されており、織物の経糸および緯糸全量が均一性に優れた極細繊維により構成されていることを確認した。得られた織物において、経糸カバーファクターCFpは697、緯糸カバーファクターCFfは427であり、L値は50、洗濯堅牢度は2級、摩擦堅牢度は2級と、充分な発色性および染色堅牢度が得られなかった。また、超極細繊維(ナノファイバー)特有の柔らかくヌメリ感のある風合い(3級)を呈するものであった。
【0077】
[比較例3](カチオン可染性延伸糸100重量%の比較例)
実施例1と同じカチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸を経糸と緯糸に全量配し、経密度165本/2.54cm、緯密度101本/2.54cmの織密度にて、図1に示す織組織図に従い通常の製織方法により平組織の織物生機を得た。該織物には、単繊維径15μmのカチオン可染性フィラメント糸Bのみが含まれていた。
【0078】
そして、実施例1と同様にカチオン染料を用いて染色加工を行い、経密度182本/2.54cm、緯密度111本/2.54cmの織物を作成した。
得られた織物を走査型電子顕微鏡SEMで織物表面および経糸および緯糸断面を観察したところ、海成分は完全に溶解除去されており、織物の経糸および緯糸全量が均一性に優れた極細繊維により構成されていることを確認した。得られた織物において、経糸カバーファクターCFpは1289、緯糸カバーファクターCFfは791であり、L値は20、洗濯堅牢度は4級、摩擦堅牢度は4級と優れた発色性と堅牢度を有していたが、風合が硬くなった。また、超極細繊維特有の風合いを呈さないものであった(1級)。
【0079】
[比較例4](実施例1において分散染料を用いて染色した比較例)
経糸に実施例1と同じカチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸Bを全量配し、緯糸に前記カチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸前記カチオン可染性ポリエステルマルチフィラメント延伸糸B2本と、前記海島型複合延伸糸(ポリエステルフィラメント糸A用)1本とを交互に配し、経密度165本/2.54cm、緯密度107本/2.54cmの織密度にて、図1に示す織組織図に従い通常の製織方法により平組織の織物生機を得た。そして、前記海島型複合延伸糸の海成分を除去するために、3.5%NaOH水溶液で、55℃にて30%減量(アルカリ減量)した。該織物には、単繊維径700nmのポリエステルフィラメント糸Aと単繊維径15μmのカチオン可染性フィラメント糸Bが含まれていた。
【0080】
次いで、実施例1の染色工程においてカチオン染料にかえて分散染料を用いて染色加工を行い、経密度182本/2.54cm、緯密度118本/2.54cmの織物を作成した。
得られた織物を走査型電子顕微鏡SEMで織物表面および経糸および緯糸断面を観察したところ、海成分は完全に溶解除去されており、織物の経糸および緯糸全量が均一性に優れた超極細繊維により構成されていることを確認した。得られた織物(染色織物)において、経糸カバーファクターCFpは1289、緯糸カバーファクターCFfは791であり、L値は25と優れた発色性を有していたが、洗濯堅牢度は2級、摩擦堅牢度は2級と十分な堅牢度が得られなかった。
次いで、該染色織物を用いてTシャツ(スポーツウエアー)を得て着用したところ、超極細繊維(ナノファイバー)特有の柔らかくヌメリ感のある風合い(3級)を呈するものであった。
【0081】
[比較例5](実施例1において、カチオン可染性フィラメント糸Bに変えて通常のポリエチレンテレフタレートフィラメント糸を使用し、分散染料を用いて染色した比較例)
経糸にカチオン染料に不染性であるレギュラーポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント糸Cを全量配し、緯糸に前記カチオン不染性ポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント延伸糸C2本と、前記海島型複合延伸糸(ポリエステルフィラメント糸A用)1本とを交互に配し、経密度165本/2.54cm、緯密度107本/2.54cmの織密度にて、図1に示す織組織図に従い通常の製織方法により平組織の織物生機を得た。そして、前記海島型複合延伸糸の海成分を除去するために、3.5%NaOH水溶液で、55℃にて30%減量(アルカリ減量)した。該織物には、単繊維径700nmのポリエステルフィラメント糸Aと単繊維径15μmのカチオン不染性ポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント延伸糸Cが含まれていた。
【0082】
次いで、実施例1の染色工程においてカチオン染料にかえて分散染料を用いて染色加工を行い、経密度182本/2.54cm、緯密度118本/2.54cmの織物を作成した。なお、染色は以下の条件で行った。
得られた織物を走査型電子顕微鏡SEMで織物表面および経糸および緯糸断面を観察したところ、海成分は完全に溶解除去されており、織物の経糸および緯糸全量が均一性に優れた超極細繊維により構成されていることを確認した。得られた織物(染色織物)において、経糸カバーファクターCFpは1289、緯糸カバーファクターCFfは791であり、L値は50、洗濯堅牢度は2級、摩擦堅牢度は2級であり、十分な発色性と堅牢度が得られなかった。
次いで、該染色織物を用いてTシャツ(スポーツウエアー)を得て着用したところ、超極細繊維(ナノファイバー)特有の柔らかくヌメリ感のある風合い(3級)を呈するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、染色された染色織物であって、超極細繊維特有のソフトな風合いを呈するだけでなく、優れた発色性と染色堅牢度とを有する染色織物の製造方法、および該製造方法により製造された染色織物、および該染色織物を用いてなる繊維製品が提供され、その工業的価値は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明において、用いることのできる織組織図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単繊維径10〜1000nmのポリエステルフィラメント糸Aと、単繊維径1000nmより大のカチオン可染性フィラメント糸Bとを含む織物を、カチオン染料を用いて染色することを特徴する染色織物の製造方法。
【請求項2】
前記ポリエステルフィラメント糸Aのフィラメント数が500本以上である、請求項1に記載の染色織物の製造方法。
【請求項3】
前記ポリエステルフィラメント糸Aが、海成分と島成分とからなる海島型複合繊維の海成分を溶解除去して得られた糸条である、請求項1または請求項2に記載の染色織物の製造方法。
【請求項4】
前記カチオン可染性フィラメント糸Bがカチオン可染性ポリエステルからなるフィラメント糸である、請求項1〜3のいずれかに記載の染色織物の製造方法。
【請求項5】
織物の経糸および/または緯糸に、前記ポリエステルフィラメント糸Aとカチオン可染性フィラメント糸Bとが規則的に含まれる、請求項1〜4のいずれかに記載の染色織物の製造方法。
【請求項6】
織物の経糸および緯糸のうち、どちらか一方に前記ポリエステルフィラメント糸Aが含まれ、かつ他方に前記カチオン可染性フィラメント糸Bが含まれる、請求項1〜4のいずれかに記載の染色織物の製造方法。
【請求項7】
織物が2層以上の多層構造を有する多層構造織物であって、少なくとも1層に前記ポリエステルフィラメント糸Aが含まれ、かつ他層に前記カチオン可染性フィラメント糸Bが含まれる、請求項1〜4のいずれかに記載の染色織物の製造方法。
【請求項8】
織物が3層以上の多層構造を有し、最外層または最内層に前記ポリエステルフィラメント糸Aが含まれ、他層に前記カチオン可染性フィラメント糸Bが含まれる、請求項7に記載の染色織物の製造方法。
【請求項9】
織物が前記ポリエステルフィラメント糸Aとカチオン可染性フィラメント糸Bとを含み、前記ポリエステルフィラメント糸Aおよび/またはカチオン可染性フィラメント糸Bが複合糸の一部として織物に含まれる、請求項1〜4のいずれかに記載の染色織物の製造方法。
【請求項10】
複合糸が空気混繊糸、複合仮撚捲縮加工糸、およびカバリング糸からなる群より選択されるいずれかである、請求項9に記載の染色織物の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の染色織物の製造方法で製造された染色織物。
【請求項12】
明度L値が40以下である、請求項11に記載の染色織物。
【請求項13】
JIS L0844により測定した洗濯染色堅牢度が3級以上である、請求項11または請求項12に記載の染色織物。
【請求項14】
JIS L0849により測定した摩擦染色堅牢度が3級以上である、請求項11〜13のいずれかに記載の染色織物。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれかに記載の染色織物を用いてなる、スポーツウェア、アウトドアウェア、レインコート、傘地、紳士衣服、婦人衣服、作業衣、防護服、人工皮革、履物、鞄、カーテン、防水シート、テント、カーシートの群より選ばれるいずれかの繊維製品。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−209500(P2009−209500A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56188(P2008−56188)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】