説明

柔軟な不織布

プロピレンコポリマー又はプロピレンコポリマー組成物とヘテロ相プロピレンポリマー組成物とのブレンドを含む柔軟なフィラメント及びそれから得られるスパンボンド不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた紡糸性で製造することのできるプロピレンポリマーフィラメント及び繊維、並びにそれから得られる柔軟な不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレンホモポリマーは優れた紡糸性を有するが、それらの融点が比較的高い、即ち通常は165℃以下であるために、加熱スパンボンドのような加熱プロセスによって不織布を製造するためには高い温度が必要である。更に、プロピレンホモポリマーから得られる繊維及び不織布は、かなり劣った手触りを有する。「柔軟な手触り」の不織布に対する市場での需要が増大しているので、布帛の手触り又は感触は重要な役割を果たす。プロピレンコポリマー及びプロピレンポリマー組成物は、プロピレンホモポリマーの欠点を克服するために好都合に用いることができる。
【0003】
例えば、国際特許出願WO2004/029342においては、結晶質プロピレンランダムコポリマー又は結晶質プロピレンポリマー組成物を含み、結晶質プロピレンコポリマー又は組成物が良好な熱結合性を有する不織布が開示されている。ヨーロッパ特許EP663965においては、プロピレンホモポリマーと20重量%以下のヘテロ相プロピレンポリマー組成物とのブレンドを含む、改良された柔軟性を有する繊維が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、柔軟な繊維又はフィラメントに容易に紡糸することのできる良好な紡糸性を有するプロピレンポリマーに対する必要性が未だ存在する。したがって、本発明の目的は、良好な紡糸性を有し、良好なバランスの機械特性を保持しながら「柔軟な手触り」の繊維及び不織布に加工することのできるプロピレンポリマー組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明は、下記成分(A)55〜95重量%、より好ましくは70〜90重量%(A+Bの合計を基準とする)及び成分(B)5〜55重量%、より好ましくは10〜30重量%(A+Bの合計を基準とする)を含むプロピレンポリマー組成物を提供する。
成分(A):10重量%以下、好ましくは0.8〜10重量%、より好ましくは0.8〜5重量%(プロピレンポリマー(A)を基準とする)の2〜10個の炭素原子を有するプロピレン以外のα−オレフィン単位を含み、10〜60g/10分、好ましくは15〜35g/10分の範囲のMFR(A)を有するプロピレンコポリマー又はプロピレンコポリマー組成物;
成分(B): 下記ポリマー(a)5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは20〜35重量%(成分(B)を基準とする)、下記ポリマー(b)0〜20重量%、好ましくは5〜15重量%(成分(B)を基準とする)及び下記ポリマー(c)40〜95重量%、好ましくは50〜75重量%(成分(B)を基準とする)を含むプロピレン組成物:
(a)20重量%より低く、好ましくは2〜15重量%の25℃におけるキシレン可溶フラクションを有するプロピレンホモポリマー、又はプロピレンと2〜10個の炭素原子を有するプロピレン以外の少なくとも1種のα−オレフィンとのコポリマーであって、85%より多いプロピレン単位を含み、20重量%より低い25℃におけるキシレン可溶フラクションを有するコポリマー;
(b)エチレンと3〜10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα−オレフィンとのコポリマーであって、25℃においてキシレン中に少なくとも部分的に不溶であるコポリマー;及び
(c)プロピレンと2〜10個の炭素原子を有するプロピレン以外の少なくとも1種のα−オレフィンとのコポリマーであって、40重量%未満、好ましくは20〜38重量%のα−オレフィン単位を含み、25℃においてキシレン中に少なくとも部分的に可溶であるコポリマー。
【0006】
プロピレンコポリマー又はプロピレンポリマー組成物(A)は、好ましくは、少なくとも以下の組の特性を有する。
−145℃以上の溶融温度;
−15重量%より低く、より好ましくは12重量%より低い25℃におけるキシレン可溶フラクション;及び
−3〜6、より好ましくは2.5〜4.5の範囲の多分散性指数(PI)値。
【0007】
第1の態様によれば、プロピレンポリマー組成物(A)は、下記ポリマー(I)20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%及び下記ポリマー(II)20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%を含み、但し、プロピレンポリマー組成物(A)の全α−オレフィン含量は10重量%以下である。
(I)プロピレンホモポリマー、又は2〜10個の炭素原子を有するプロピレン以外の少なくとも1種のα−オレフィンとのプロピレンコポリマーであっって、1.5重量%以下、好ましくは0.01〜0.5重量%のα−オレフィン単位を含むコポリマー;
(II)2〜10個の炭素原子を有するプロピレン以外の少なくとも1種のα−オレフィンとのプロピレンコポリマーであって、10重量%以下、好ましくは0.8〜10重量%、より好ましくは0.8〜5重量%のα−オレフィン単位を含むコポリマー。
プロピレン以外のα−オレフィン単位がエチレンである場合には、ポリマー(I)とポリマー(II)との間のエチレン含量の差は、通常少なくとも0.8%単位、好ましくは1%単位、より好ましくは2%単位であり、プロピレン以外のα−オレフィン単位がC〜C10−α−オレフィンである場合には、かかる差は、少なくとも1.5%単位、好ましくは2%単位である。
【0008】
更なる態様によれば、プロピレンコポリマー又はプロピレンコポリマー組成物(A)は、
(i)少なくとも0.8重量%の、2〜10個の炭素原子を有するプロピレン以外の少なくとも1種のα−オレフィンから誘導される単位を含み、155℃以上の溶融温度、5重量%より低いキシレン可溶フラクション、室温におけるキシレン可溶フラクションに対するキシレンによる昇温溶出分画(TREF)によって25℃〜95℃の温度範囲において回収されるポリマーフラクションの比の値が8より高い、プロピレンコポリマー又はプロピレンコポリマー組成物;及び
(ii)2.5重量%よりも多い、2〜10個の炭素原子を有するプロピレン以外の少なくとも1種のα−オレフィンから誘導される単位を含み、153℃以上の溶融温度、10重量%より低く、好ましくは8重量%より低いキシレン可溶フラクション、並びに、室温におけるキシレン可溶フラクションに対するキシレンによるTREFによって25℃〜95℃の温度範囲において回収されるポリマーフラクションの比の値が4より高く、好ましくは4.5より高い、プロピレンコポリマー又はプロピレンコポリマー組成物;
の中から選択される。
【0009】
プロピレンコポリマー又はプロピレンポリマー組成物(A)を製造するためには、プロピレン単位を、2〜10個の炭素原子を有するプロピレン以外の少なくとも1種のα−オレフィンの存在下で重合し、ここで、α−オレフィン単位は、好ましくはエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンから誘導され、エチレンが特に好ましい。
【0010】
第1の態様によれば、プロピレンコポリマー又はプロピレンポリマー組成物(A)は、高度に立体特異性の不均質チーグラー・ナッタ触媒系の存在下において、少なくとも1つの重合工程で直接製造することができる。また、且つより好ましくは、プロピレンコポリマー又はプロピレンポリマー組成物(A)は、前駆体プロピレンコポリマー、或いはMFR(A1)を有する前駆体プロピレンコポリマー又は前駆体プロピレンポリマー組成物(A1)を化学分解にかけることによって製造することができる。
【0011】
好ましい態様によれば、プロピレンコポリマー又はプロピレンポリマー組成物(A)は、以下の工程:
(1)好適なモノマーを、高度に立体特異性の不均質チーグラー・ナッタ触媒系の存在下において、少なくとも1つの重合工程で重合して、0.4〜10g/10分、好ましくは0.9〜5g/10分の範囲のMFR(A1)を有する前駆体プロピレンコポリマー又は前駆体プロピレンポリマー組成物(A1)を得る工程;
(2)かかる前駆体プロピレンコポリマー又は前駆体プロピレンポリマー組成物(A1)を化学分解にかけて、10〜60g/10分の範囲のMFR(A)(ここで、MFR(A)/MFR(A1)の比は6〜30の範囲である)を有するプロピレンポリマー組成物を得る工程;
を含む方法によって得ることができる。
【0012】
プロピレンコポリマー又はプロピレンポリマー組成物(A)及び前駆体プロピレンコポリマー又は前駆体プロピレンポリマー組成物(A1)を製造するために好適なチーグラー・ナッタ触媒は、いずれも塩化マグネシウム上に担持されている、少なくとも1つのチタン−ハロゲン結合を有する少なくとも1種のチタン化合物、及び少なくとも1種の電子ドナー化合物(内部ドナー)を含む固体触媒成分を含む。チーグラー・ナッタ触媒系は、更に、必須の共触媒として有機アルミニウム化合物、及び場合によっては外部電子ドナー化合物を含む。
【0013】
好適な触媒系は、ヨーロッパ特許EP45977、EP361494、EP728769、EP1272533、及び国際特許出願WO00/63261に記載されている。
好ましくは、固体触媒成分は、Mg、Ti、ハロゲン、及び、オルト位中に−COOH基(ここで、−COOR基の少なくとも1つのR炭化水素基は3〜20個の炭素原子を有する)を有する芳香族ジカルボン酸のモノ及びジエステルから選択される電子ドナーを含む。特に好ましくは、電子ドナーは、ヨーロッパ特許EP45977及びEP728769に記載されているような、ジイソブチル−2,3−ナフタレン−ジカルボキシレート、ジ−n−プロピル、ジ−n−ブチル、ジイソブチル、ジ−n−ヘプチル、ジ−2−エチルヘキシル、ジ−n−オクチル、ジ−ネオペンチルフタレート、フタル酸のモノブチル及びモノイソブチルエステル、エチル−イソブチルフタレート、エチル−n−ブチルフタレートから選択される。
【0014】
好ましい方法によれば、固体触媒成分は、式:Ti(OR)n−y(式中、nはチタンの価数であり、yは1〜nの数である)のチタン化合物、好ましくはTiClを、式:MgCl・pROH(式中、pは0.1〜6、好ましくは2〜3.5の数であり、Rは、1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基である)の付加体から誘導される塩化マグネシウムと反応させることによって調製することができる。この付加体は、好適には、付加体と非混和性の不活性炭化水素の存在下において、付加体の融点(100〜130℃)において撹拌条件下で操作して、アルコールと塩化マグネシウムとを混合することによって、球状形態で調製することができる。次に、エマルジョンを速やかに急冷し、それによって球状粒子の形態で付加体の固化を行う。この手順によって調製される球状付加体の例は、US4,399,054及びUS4,469,648に記載されている。かくして得られる付加体は、Ti化合物と直接反応させることができ、或いは、アルコールのモル数が概して3よりも低く、好ましくは0.1〜2.5である付加体を得るために、予め熱制御脱アルコール化(80〜130℃)にかけることができる。Ti化合物との反応は、付加体(脱アルコール化又はそのまま)を冷TiCl(概して0℃)中に懸濁し;混合物を80〜130℃に加熱し、この温度で0.5〜2時間保持することによって行うことができる。TiClによる処理は1回以上行うことができる。内部ドナーは、TiClによる処理中に加えることができ、電子ドナー化合物による処理は1回以上繰り返すことができる。一般に、式(I)のスクシネートは、MgClに対して0.01〜1、好ましくは0.05〜0.5のモル比で用いる。球状形態の触媒成分の調製は、例えば、ヨーロッパ特許出願EP−A−395083及び国際特許出願WO98/44009に記載されている。上記の方法にしたがって得られる固体触媒成分は、概して20〜500m/g、好ましくは50〜400m/gの表面積(BET法による)、及び0.2cm/gより高く、好ましくは0.2〜0.6cm/gの全孔隙率(BET法による)を示す。10,000Å以下の半径を有する孔による孔隙率(Hg法)は、概して0.3〜1.5cm/g、好ましくは0.45〜1cm/gの範囲である。
【0015】
有機アルミニウム化合物は、好ましくは、例えばトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムのようなトリアルキルアルミニウム化合物から選択されるアルキル−Alである。また、トリアルキルアルミニウムと、アルキルアルミニウムハロゲン化物、アルキルアルミニウム水素化物、又はアルキルアルミニウムセスキクロリド、例えばAlEtCl及びAlEtClとの混合物を用いることもできる。
【0016】
好ましい外部電子ドナー化合物としては、ケイ素化合物、エチル4−エトキシベンゾエートのようなエステル、複素環式化合物、特に2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及びケトンが挙げられる。好ましい外部ドナー化合物の他の種類は、式:RSi(OR(式中、a及びbは0〜2の整数であり、cは1〜3の整数であり、(a+b+c)の合計は4であり;R、R、及びRは、場合によってはヘテロ原子を有する、1〜18個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、又はアリール基である)のケイ素化合物のものである。メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチル−t−ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、2−エチルピペリジニル−2−t−ブチルジメトキシシラン、及び1,1,1−トリフルオロプロピル−2−エチルピペリジニル−ジメトキシシラン、並びに1,1,1−トリフルオロプロピル−メチルジメトキシシランが特に好ましい。外部電子ドナー化合物は、0.1〜500の有機アルミニウム化合物と該電子ドナー化合物との間のモル比を与える量で用いる。
【0017】
重合は、液相、気相、又は液−気相中において、流動床又はスラリー反応器のような連続又はバッチ式反応器内で行うことができる。好ましくは、プロピレンコポリマー又はプロピレンポリマー組成物(A)、或いは前駆体プロピレンコポリマー又は前駆体プロピレンポリマー組成物(A1)は、少なくとも2つの相互に接続された重合領域内で行う気相重合プロセスによって製造することができる。かかる重合プロセスは、ヨーロッパ特許EP782587及び国際特許出願WO00/02929に記載されている。このプロセスは、第1及び第2の相互に接続された重合領域内で行われ、ここに、触媒系の存在下でプロピレン及び少なくとも1種のα−オレフィンを供給し、ここから生成したポリマーを排出する。成長するポリマー粒子が、速い流動化条件下で該第1の重合領域(昇流管)を通して流れ、該第1の重合領域から排出されて、該第2の重合領域(降水管)に入り、それを通して重力の作用下で緻密化した形態で流れ、該第2の重合領域から排出されて、該第1の重合領域中に再び導入され、このようにして二つの重合領域の間のポリマーの循環が行われる。概して、第1の重合領域での速い流動化条件は、モノマーガス混合物を、成長ポリマーの再導入点よりも下の位置で該第1の重合領域中に供給することによって達成される。第1の重合領域中への輸送ガスの速度は、運転条件下での輸送速度よりも高く、通常2〜15m/秒である。第2の重合領域においては、ポリマーが重力の作用下で緻密化した形態で流れ、ポリマーの嵩密度に近接する固体の高い密度値に到達し、このようにして圧力における正の利得が流れの方向に沿って得られ、これによって機械的手段で補助することなしにポリマーを第1の反応領域中に再導入することが可能になる。このようにして、二つの重合領域の間の圧力のバランス及び系中へ導入されるヘッドロスによって画定される「ループ」循環が形成される。場合によっては、窒素又は脂肪族炭化水素のような1種以上の不活性ガスを、不活性ガスの分圧の合計が好ましくはガスの全圧の5〜80%となるような量で重合領域内に保持する。例えば温度のような操作パラメーターは、気相オレフィン重合法において通常のもの、例えば、50℃〜120℃、好ましくは70℃〜90℃である。プロセスは、0.5〜10MPa、好ましくは1.5〜6MPaの操作圧力下で行うことができる。好ましくは、種々の触媒成分を、第1の重合領域に、該第1の重合領域の任意の位置で供給する。しかしながら、これらは、また、第2の重合領域の任意の位置に供給することもできる。重合プロセスにおいては、昇流管中に存在する気体及び/又は液体混合物が降水管に入るのを完全か又は部分的に阻止し、昇流管中に存在する気体混合物とは異なる組成を有する気体及び/又は液体混合物が降水管中に導入されるようにすることのできる手段を与える。好ましい態様によれば、昇流管中に存在する気体混合物とは異なる組成を有するかかる気体及び/又は液体混合物を、1以上の導入ラインを通して降水管中に導入することは、昇流管中の混合物が降水管に入ることを阻止するのに効果的である。降水管に供給する異なる組成の気体及び/又は液体混合物は、場合によっては、部分的に又は完全に液化した形態で供給することができる。成長ポリマーの分子量分布、及びPI値は、国際特許出願WO00/02929の図4において図式的に示される反応器内で重合プロセスを行うこと、並びに、コモノマーおよび通常の分子量調整剤、特に水素を、少なくとも一つの重合領域、好ましくは昇流管中に異なる割合で独立して計量することによって、好都合に調整することができる。
【0018】
プロピレンポリマー組成物(A)を製造する好ましい方法において、化学分解工程(2)は、当該技術において周知の方法によって、前駆体プロピレンコポリマー又は前駆体プロピレンポリマー組成物(A1)を、適当な量、好ましくは0.001〜0.20重量%、より好ましくは0.04〜0.10重量%の遊離基開始剤で処理することによって行うことができる。好ましくは、化学分解は、ポリマー材料を、高剪断条件下、遊離基開始剤の分解温度以上の温度において、少なくとも1種の遊離基開始剤と接触させることによって行う。好ましい遊離基開始剤は、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン及び2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン(Akzoによって、Luperox 101又はTrigonox 101の名称で販売)のような、150℃〜250℃の範囲の分解温度を有するペルオキシドである。
【0019】
プロピレンポリマー組成物(B)において、フラクション(B)(a)及びB(c)のプロピレンポリマーは、プロピレンと、2〜10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα−オレフィンとのコポリマーであり、好ましいα−オレフィンは、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンの中から選択され、エチレンが特に好ましい。成分(B)(b)は、エチレンと、3〜10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα−オレフィンとのコポリマーであり、好ましいα−オレフィンは、プロピレン、及び上記記載のα−オレフィンの中から選択され、プロピレンが特に好ましい。フラクション(B)(b)及び(B(c)は、場合によっては、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、及びエチリデン−ノルボルネン−1のような共役又は非共役ジエンを含んでいてもよい。ジエンは、存在する場合には、(b)+(c)の重量に対して0.5〜10重量%の量で含まれる。
【0020】
プロピレンポリマー組成物(B)の全エチレン単位含量は、好ましくは15〜35重量%の範囲である。
フラクション(B)(b)のエチレン/C〜C10−α−オレフィンコポリマーは、20重量%より低い25℃におけるキシレン中の溶解度を有し、好ましくは、室温においてキシレン中に不溶である。
【0021】
フラクション(B)(c)のプロピレン/C〜C10−α−オレフィンコポリマーは、好ましくは、50重量%より高い25℃におけるキシレン中の溶解度を有し、より好ましくは、25℃においてキシレン中に完全に可溶であり、1.5〜4.0dL/g、より好ましくは1.7〜3.0dL/gの範囲の固有粘度を有する。
【0022】
プロピレンポリマー組成物(B)は、それぞれの後段の重合段階(第1段階は別である)を、直前の重合反応において形成されたポリマー材料の存在下で行う少なくとも2つの段階の逐次重合によって製造することができ、ここで、ポリマーフラクション(B)(a)は好ましくは少なくとも1つの第1段階で調製され、コポリマーフラクション(B)(b)及び(B)(c)は少なくとも1つの第2段階で調製される。重合段階は、チーグラー・ナッタ及び/又はメタロセン触媒の存在下で行うことができる。好ましくは、全ての重合段階を、いずれも塩化マグネシウム上に担持されている、少なくとも1つのチタン−ハロゲン結合を有する少なくとも1種のチタン化合物及び少なくとも1種の電子ドナー化合物(内部ドナー)を含む固体触媒成分を含むチーグラー・ナッタ触媒の存在下で行う。チーグラー・ナッタ触媒系は、更に、必須の共触媒としての有機アルミニウム化合物、及び場合によっては外部電子ドナー化合物を含む。
【0023】
好適な触媒系は、ヨーロッパ特許EP45977、EP361494、EP728769、EP1272533、及び国際特許出願WO00/63261に記載されている。好ましい内部及び外部ドナー、有機アルミニウム化合物、並びに固体触媒成分の調製は、上記に記載したものと同様である。
【0024】
重合は、液相、気相、又は液−気相中において、流動床又はスラリー反応器のような連続又はバッチ式反応器内で行うことができる。例えば、プロピレンポリマーフラクション(B)(a)の重合を、希釈剤として液体プロピレンを用いて液相中で行い、一方、コポリマーフラクション(B)(b)及び(B)(c)を得るための共重合段階を、モノマーの部分的脱気を除いて中間段階なしに気相中で行うことができる。また、全ての逐次重合段階を気相中で行うことができる。フラクションの調製のための重合温度は、同一か又は異なっていてよく、通常、40℃〜90℃である。重合を気相中で行う場合には、重合圧力は好ましくは5〜30barの範囲である。プロピレンポリマー組成物(B)の例は、ヨーロッパ特許EP472946、国際特許出願WO03/011962、及びWO00/02929に記載されている。
【0025】
プロピレンポリマー組成物(B)のメルトフローレートMFR(B)は、好ましくは、10〜60g/10分、特に好ましくは15〜35g/10分の範囲である。かかるプロピレンポリマー組成物(B)は、上記に記載したように重合反応から直接か、或いは、MFR(B)よりも低いメルトフローレートMFR(B1)を有する前駆体プロピレンポリマー組成物(B1)を、化学分解、特にペルオキシド分解にかけることによって得ることができる。前駆体プロピレンポリマー組成物(B1)の化学分解は、上記に記載のような当該技術において公知の方法にしたがって行うことができる。
【0026】
本発明のプロピレンポリマー組成物は、更に、酸化防止剤、光安定剤、成核剤、抗酸剤、着色剤、充填剤、及び加工改良剤のようなポリオレフィン分野において通常用いられる添加剤を含んでいてよく、かかる添加剤は、通常、当該技術において周知の方法にしたがって、プロピレンコポリマー又はプロピレンコポリマー組成物(A)及び/又はプロピレンポリマー組成物(B)に加えられる。
【0027】
本発明のプロピレンポリマー組成物は、高剪断条件下で成分(A)及び(B)を乾燥配合又は溶融配合することによるような公知の方法にしたがって製造することができる。好ましくは、成分(A)及び(B)、並びに場合によっては添加剤のブレンドを、通常のミキサー(例えばタンブルミキサー)内で調製して乾燥ブレンドを得る。また、成分を、単軸押出機(シングルスクリューエクストルーダー)又は二軸押出機(ツインスクリューエクストルーダー)に、装置の同一か又は異なる区域中に同時か又は別々に直接計量することができる。押出温度は、一般に170〜250℃の範囲である。
【0028】
本発明のプロピレンポリマー組成物を含む繊維又はフィラメントは、当該技術において周知の方法及び装置を用いて、即ち、単繊維又は複合繊維若しくはフィラメントを製造するために好適な通常の装置内でプロピレンポリマー組成物を溶融紡糸することによって製造することができる。更なる態様によれば、複合繊維又はフィラメントは、「シース−コア(鞘−芯)構造」を有していてもよい。「シース−コア構造を有する繊維又はフィラメント」は、ここでは、軸方向に伸長する界面を有し、少なくとも二つの成分、即ち少なくとも1の内部コア及び少なくとも1の外部シースを含み、かかる少なくとも二つの成分は、異なるポリマー材料を含み、軸方向に伸長する界面に沿って結合している繊維又はフィラメントを意味する。シース−コア繊維又はフィラメントにおいては、繊維又はフィラメントの横断面の周囲の周りにおいて、シース厚さは均一であってよく、或いはシース厚さは均一でなくてもよい。かかるシース−コア構造を有する繊維又はフィラメントは、同心環状ダイを有する通常の溶融紡糸装置を用いて製造することができる。本発明のプロピレンポリマー組成物は、シース−コア構造を有する繊維又はフィラメントの外側シースのために好都合に用いることができる。内部コアは、複合繊維又はフィラメントの所望の最終特性に依存して、スパンボンド用途のために通常用いられる任意のポリマー材料を含んでいてよい。好ましくは、シース−コア繊維又はフィラメントは、50〜90重量%、より好ましくは65〜80重量%のコア層を形成するポリマー材料、及び10〜50重量%、より好ましくは20〜35重量%の外側シース層を形成する本発明のプロピレンポリマー組成物を含む。70重量%のコア層を形成するポリマー材料及び30重量%の外側シース層を形成する本発明のプロピレンポリマー組成物を含むシース−コア繊維又はフィラメントが特に有利である。
【0029】
本発明のプロピレンポリマー組成物は、極めて良好な紡糸性を示し、即ち、破断することなく高い紡糸速度で繊維又はフィラメントに紡糸することができ、同時に、良好な機械特性、即ち高いテナシティー及び高い破断点伸びを保持して改良された柔軟性を有する繊維又はフィラメントを与える。紡糸速度とは、ここでは、紡糸機械の巻き取り速度を意味する。好ましくは、本発明の繊維又はフィラメントは、以下の組の特性の1以上を示す。
【0030】
−1000(1/g)以上、より好ましくは1000〜1200(1/g)の範囲の柔軟性指数;
−150〜200%の範囲の破断点伸び;
−20cN/texより高く、より好ましくは23cN/texより高いテナシティー;及び
−0.8〜8dtex、より好ましくは1.0〜4.0dtexの範囲のタイター(titre)。
【0031】
柔軟性指数は、繊維の柔軟性を評価するための通常の指標である。
本発明のプロピレンポリマー組成物を用いて、優れた紡糸性と共に改良されたテナシティー/柔軟性のバランスを有し、シース−コア構造を有し、スキン層が本発明のプロピレンポリマー組成物を含み、コア層が、好ましくは5.0重量%より低く、より好ましくは3重量%より低い、25℃における低いキシレン可溶フラクション、及び好ましくは1100MPaより高く、より好ましくは1300MPaより高い、高い曲げ弾性率を有するプロピレンホモポリマーを含む、繊維又はフィラメントを都合よく製造することができる。かかるプロピレンホモポリマーは、商業的に入手することができる。好ましくは、シース−コア構造を有する本発明の繊維又はフィラメントのスキン層は、フィラメントの全重量に対して20〜40重量%の範囲の割合を示す。
【0032】
本発明の繊維又はフィラメントは、布帛に加工することができる。本発明の好ましい態様によれば、繊維は、不織布、特にスパンボンド不織布に加工することができる。
スパンボンドプロセスは、繊維紡糸とウエブ形成を単一の製造プロセスに組み合わせたものである。溶融ポリマーが紡糸口金から排出されるにつれて繊維が形成され、通常は冷気によって急冷され、高圧空気によって紡糸口金からフィラメントが引き出される。フィラメントは次に移動ベルト上に堆積され、不織布が形成される。布帛重量は、紡糸口金の孔あたりの排出量、孔の数、及び移動ベルトの速度によって決定される。続いて、熱接合、化学接合、又はニードルパンチのような異なる方法によって布帛を接合させることができ、熱接合が好ましい。熱接合によると、布帛を、通常は110℃〜150℃、好ましくは120℃〜130℃の範囲の温度に加熱したカレンダーロールの間に通す。
【0033】
本発明のプロピレンポリマー組成物は、優れた柔軟性及び良好な機械特性を有するスパンボンド不織布を与える。不織布の柔軟性は、布帛の固さに関係し、曲げ柔軟性指数(BSI)によって表すことができる。BSI(以下に記載する方法にしたがって測定する)は、ドレープ特性(ドレープ性)の指標である材料の曲げ長さに依存する。材料がより柔軟であると、曲げ長さはより低くなる。本発明の不織布は、24(1/mm)以上のBSI値を有する。
【実施例】
【0034】
説明及び実施例において言及する特性は、以下の方法にしたがって測定する。実施例は、例示の目的で与えるものであり、本発明を限定するものではない。
供給ガスのモル比:ガスクロマトグラフィーによって測定した。
【0035】
コモノマー(C2)含量:IR分光法によった。
メルトフローレート(MFR):ISO 1133(230℃、2.16kg)にしたがって測定した。
【0036】
固有粘度:テトラヒドロナフタレン中、135℃において測定した。
曲げ弾性率:ISO 178にしたがって測定した。
溶融温度、溶融エンタルピー、及び結晶化温度:20℃/分の温度変化を用いてDSCによって測定した。
【0037】
多分散性指数(PI):
REOMETRICS(米国)によって市販されている平行板流量計モデルRMS-800を用い、0.1rad/秒から100rad/秒に上昇する振動数で操作して、200℃の温度において測定した。分離係数値(modulus separation value)から、次式によってPIを誘導することができる。
【0038】
PI=54.6×(分離係数)−1.76
ここで、分離係数は次のように定義される:
分離係数 = G’=500Paにおける振動数/G”=500Paにおける振動数
ここで、G’は貯蔵弾性率(storage modulus)であり、G”は損失弾性率(loss modulus)である。
【0039】
キシレン可溶フラクション:
冷凍機及び電磁スターラーを取り付けたガラスフラスコ内に、2.5gのポリマー及び250mLのo−キシレンを導入した。温度を30分で溶媒の沸点まで上昇させた。かくして得られた溶液を、次に還流下に保持し、更に30分間撹拌した。次に、フラスコを密閉し、氷水浴中に30分間、更に25℃の温度制御水浴中に30分間保持した。かくして得られた固体を急速濾紙上で濾過し、100mLの濾液を、窒素気流下において加熱プレート上で加熱した予め秤量したアルミニウム容器内に注ぎ入れ、蒸発によって溶媒を除去した。次に、容器を、一定の重量が得られるまで、真空下、80℃のオーブン上に保持した。残渣を秤量して、キシレン可溶ポリマーの割合を測定した。
【0040】
フィラメントのタイター:
長さ10cmの粗紡から、50本の繊維をランダムに選択し、秤量した。50本の繊維の合計重量(mg)に2をかけることによってタイター(dtex)を得た。
【0041】
フィラメントのテナシティー及び破断点伸び:
500mの粗紡から、長さ100mmのセグメントを切断し、単繊維をランダムに選択した。それぞれの単繊維を、Instron Dynamometer(モデル1122)のクランプに固定し、100%より低い伸びに関しては20mm/分、100%を超える伸びに関しては50mm/分のけん引速度を用い、クランプ間の初期距離を20mmとして、破断するまで伸張した。極限強さ(破断点の負荷)及び破断点伸びを、機械方向(MD)及び横断方向(TD)の両方において測定した。次式:
テナシティー=極限強さ(cN)×10/タイター(dtex)
を用いてテナシティーを算出した。
【0042】
繊維についての柔軟性:
この方法によって繊維の柔軟性指数を測定した。柔軟性指数は、その長さを標準条件で測定した繊維束の重量(1/g)として算出した。線密度約4000dtex、長さ0.6mの繊維束を調製した。繊維束の末端を、捩れ測定装置(Torcimetro Negri e Bossi SpA)のクランプ上に固定し、120の左方向の捩れ運転を与えた。捩れた繊維束を、捩れ戻しを避けながら注意深く装置から巻き取った。捩れた繊維束の二つの末端を繋ぎ、繊維束がロープのように見えるようになるまで半分を互いの周りに巻き付けた。それぞれの試験について3つの試験片を調製した。繊維束を二つに曲げ、両末端を、二つの半分の間に1cmの距離を保持して、Clark柔軟性試験機のロールの間に固定した。装置を右方向に回転させ、繊維束がその曲げ方向を逆転させたら停止し、回転角(a)を記録した。次に、繊維束を左方向にその曲げ側を逆転させるまで回転させ、回転角度(b)を記録した。次に、(a)+(b)の合計=90°を有するように二つのロールの上方の繊維束の高さを調節し、1mmの感度を有する適切な装置を用いてこの高さ(h)を測定した。二つの角度a及びbは、それぞれ、45°±15°の限界値を超えるべきではない。繊維束を装置から取り外し、予め測定した高さに相当する高さ(h)に切断した。0.1mgの精度を有する化学天秤によって、切断された繊維束を秤量した。柔軟性指数は、次式:
SI=(1/w)×100
(ここで、wは切断された繊維束の重量(g)である)
から算出される。与えられた結果は3つの試験片に関する平均値である。
【0043】
不織布に関する曲げ柔軟性指数の測定:
単層の不織布を一回折り畳んで、長さ200mm、幅50mmの試験片を調製し、次の寸法:高さ=35mm;長さ=300mm;幅=100mm;を有する平滑なボックス内に配置した。試験片を、それが曲がって下表面に到達するまで、表面に沿ってゆっくりと押し込んだ(図1参照)。ボックスの側面と接地点との間の距離が曲げ長さ(b1)(mm)である。曲げ長さの最終値は、10個の試料に関する平均値である。BSIは、等式:
BSI=(1/bl)×1000
(ここで、blは不織布試料の曲げ長さ(mm)である)
から算出される。
【0044】
パネル試験による柔軟性:
20人をランダムに選択し、試料に触って、対照試料(繊維用に通常用いられているプロピレンホモポリマー)と比較することによって試験試料の柔軟性を評価するように依頼した。試料を次のようにランク付けした:1=対照試料よりも低い;2=対照試料と同等;3=対照試料よりも良好;4=対照試料よりも遙かに良好;5=極めて良好。表における数値は平均評価値に相当する。
【0045】
プロピレンポリマー(A)の製造
前駆体プロピレンコポリマー又は前駆体プロピレンポリマー組成物(A1)を製造するために用いた固体触媒は、ヨーロッパ特許EP728769の実施例5、48〜55行にしたがって調製した。唯一の相違点は、200mLのTiClを加え、引き続くn−ヘプタンによる洗浄を4回繰り返したことであった。助触媒としてトリエチルアルミニウム(TEAL)、外部ドナーとしてジシクロペンチルジメトキシシランを用いた。国際特許出願WO00/02929に記載されているような二つの相互に接続された重合領域である昇流管及び降水管を含む気相重合反応器にモノマー及び触媒系を供給することによって、一つの単一重合工程でプロピレンポリマー(A1)を製造した。示された量のコモノマーを専ら第1の重合領域(昇流管)中に供給し、バリヤーフィードを用いて二つの重合領域中へのガス組成を差別化した。分子量調整剤、即ち水素を、昇流管のみに供給した。得られたポリマー粒子を蒸気処理にかけて、未反応のモノマーを除去し、乾燥した。0.030重量%のステアリン酸カルシウム、0.19重量%のIrganox B501W(Ciba Specialty Chemicalsによって販売)、及びAkzoによって販売されているペルオキシドである0.073重量%のLuperox 101の存在下でプロピレンポリマー(A1)を押出して、プロピレンポリマー組成物(A)を製造した。重合条件、並びに、ペルオキシドによる化学分解の前及び後のプロピレンポリマーの特性を表1に報告する。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例1〜3及び比較例1c〜2c:
通常の装置内での乾燥配合によって、下記に示す組成を有する上記記載のプロピレンポリマー(A)と成分(B)との異なる割合のブレンドを調製し、次に、Leonard 25紡糸パイロットラインにおいて、25のスクリューL/D比、25mmのスクリュー直径、及び1:3の圧縮比で紡糸した。このラインは、Costruzioni Meccaniche Leonard-Sumirago (VA)によって販売されている。ブレンドの組成、操作紡糸条件、及び得られたフィラメントの特性を表2に報告する。
【0048】
成分(B)は、下記フラクション(a)33重量%、下記フラクション(b)6重量%及び下記フラクション(c)61重量%(いずれも単独成分(B)を基準としたパーセントである)を含むプロピレンポリマー組成物である。
(a)4.3重量%(フラクション(a)に対して)のエチレンから誘導された単位を含み、9重量%のキシレン可溶フラクションを有するプロピレン/エチレンコポリマー;
(b)94重量%(フラクション(b)に対して)のエチレンから誘導された単位を含み、キシレン中に完全に不溶のエチレン/プロピレンコポリマー;及び
(c)30重量%(フラクション(c)に対して)のエチレンから誘導された単位を含み、キシレン中に完全に可溶のプロピレン/プロピレンコポリマー。
【0049】
成分(B)は、27g/10分のMFRを有していた。
【0050】
【表2】

【0051】
最大紡糸速度は、本発明のプロピレンポリマー組成物の紡糸性の指標を与える。この値は、フィラメントの破断を起こすことなく30分間維持することができる最も高い紡糸速度に相当する。本発明のプロピレンポリマー組成物は、少なくともプロピレンポリマー(A)の紡糸性(比較例1参照)に匹敵する極めて良好な紡糸性を有し、高いテナシティー及び高い破断点伸びを保持しながら優れた柔軟性を有するフィラメントに加工することができる。成分(B)の量を特許請求の範囲を超えて増加させても、紡糸性及び/又はフィラメントの柔軟性の大きな改良は得られず、反対にフィラメントの機械特性に悪影響を与える。
【0052】
比較例3c及び4c:
上記に記載のものと同じ装置内における乾燥配合により、BasellによってMoplen HP561Rの名称で販売されている25g/10分のMFRを有するプロピレンホモポリマーと実施例1で用いた成分(B)との異なる割合のブレンドを調製し、表2に報告する条件下でフィラメントに紡糸した。ブレンドの組成、最大紡糸速度、及びフィラメントの特性を表3に報告する。
【0053】
【表3】

【0054】
実施例4〜5及び比較例5c:
実施例1、3、及び比較例1cのプロピレンポリマー組成物をスパンボンドラインで処理して、それぞれ実施例4、5、及び比較例6cの不織布を製造した。スパンボンドラインの操作条件、及び不織布の特性を表4に報告する。
【0055】
【表4】

【0056】
本発明による不織布は、プロピレンポリマー組成物(A)から得られた不織布と比較して、より高い柔軟性及び同等の布帛テナシティーを示す。
実施例6及び7:
コア層としてBasellによるMoplen HP561R、及びスキン層として本発明によるプロピレンポリマー組成物を用いて、シース−コアフィラメントを製造した。本発明のプロピレンポリマー組成物は、上記記載のプロピレンポリマー(A)及び(B)の異なる割合のブレンドを含み、実施例1に記載のようにして製造した。シース−コア構造を有するフィラメントを製造するのに好適なダイを取り付けた通常の装置で、70重量%のコア層及び30重量%のシース層を含むシース−コアフィラメントを製造した。シース−コアフィラメントを通常のスパンボンドラインで処理して、不織布を製造した。スキン層の組成、スパンボンドラインの操作条件、及び不織布の特性を表5に報告する。
【0057】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、曲げ柔軟性指数の測定方法を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)55〜95重量%(A+Bの合計を基準とする)及び成分(B)5〜55重量%(A+Bの合計を基準とする)を含むプロピレンポリマー組成物:
成分(A):10重量%以下(プロピレンポリマー(A)を基準とする)の2〜10個の炭素原子を有するプロピレン以外のα−オレフィン単位を含み、10〜60g/10分の範囲のMFR(A)を有するプロピレンコポリマー又はプロピレンコポリマー組成物;
成分(B):下記ポリマー(a)5〜50重量%(成分(B)を基準とする)、ポリマー(b)0〜20重量%(成分(B)を基準とする)及びポリマー(c)40〜95重量%(成分(B)を基準とする)を含むプロピレン組成物:
(a)20重量%より低い25℃におけるキシレン可溶フラクションを有するプロピレンホモポリマー、又はプロピレンと2〜10個の炭素原子を有するプロピレン以外の少なくとも1種のα−オレフィンとのコポリマーであって、85%より多いプロピレン単位を含み、20重量%より低い25℃におけるキシレン可溶フラクションを有するコポリマー;
(b)エチレンと3〜10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα−オレフィンとのコポリマーであって、25℃においてキシレン中に少なくとも部分的に不溶であるコポリマー;及び
(c)プロピレンと2〜10個の炭素原子を有するプロピレン以外の少なくとも1種のα−オレフィンとのコポリマーであって、40重量%未満のα−オレフィン単位を含み、25℃においてキシレン中に少なくとも部分的に可溶であるコポリマー。
【請求項2】
成分(A)が、下記ポリマー(I)20〜80重量%及びポリマー(II)20〜80重量%を含み、但し、プロピレンポリマー組成物(A)の全α−オレフィン含量は10重量%以下である、請求項1に記載のプロピレンポリマー組成物:
(I)プロピレンホモポリマー、又は2〜10個の炭素原子を有するプロピレン以外の少なくとも1種のα−オレフィンとのプロピレンコポリマーであっって、1.5重量%以下のα−オレフィン単位を含むコポリマー;
(II)2〜10個の炭素原子を有するプロピレン以外の少なくとも1種のα−オレフィンとのプロピレンコポリマーであって、10重量%以下のα−オレフィン単位を含むコポリマー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプロピレンポリマー組成物を含む繊維又はフィラメント。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のプロピレンポリマー組成物を含むスパンボンド不織布。
【請求項5】
24(1/mm)以上の曲げ柔軟性指数を有する、請求項4に記載のスパンボンド不織布。
【請求項6】
シース層が請求項1又は2のプロピレンポリマー組成物を含み、コア層が5.0重量%より低い25℃におけるキシレン可溶フラクション及び1100MPaより高い曲げ弾性率を有するプロピレンホモポリマーを含む、シース−コア構造を有する繊維又はフィラメント。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のプロピレンポリマー組成物を溶融紡糸する工程を含む、繊維又はフィラメントの製造方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のプロピレンポリマー組成物を含む繊維又はフィラメントをスパンボンドする工程を含む、スパンボンド不織布の製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−520090(P2009−520090A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546315(P2008−546315)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068225
【国際公開番号】WO2007/071496
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(506126071)バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (138)
【Fターム(参考)】