説明

柔軟な弾性ポリウレタンフィルム、それらの製造方法並びにそれらの使用

【課題】 低い加工温度においてでさえも焼結工程でフィルムに加工できる熱可塑性ポリウレタンの提供。
【解決手段】 加熱したモールド中で、特定のメルトインデックス、相対溶液粘度及びショア硬度を有する少なくとも1種の粉末の熱可塑性ポリウレタン(TPU)を焼結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱したモールド(heated mould)の補助による粉末の熱可塑性ポリウレタン−以下に略字TPUでも言及される−の焼結により製造される、柔軟な弾性の熱可塑性ポリウレタンフィルム(TPUフィルム)、それらの製造方法並びにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
液体PU配合物からの流し込成形(casting)又はTPUの押出しによるPUフィルム(ポリウレタンフィルム)の製造は、公知であり、例えばKunststoff−Handbuch“Polyurethane”、第7巻、第2版、469頁(Dr.G.Oertel編;Carl Hanser Verlag,Munich,Vienna,1983)に記載されている。
【0003】
液体配合物から出発して、ブロックを注型しそしてそれからフィルムを切り出すか又は直接遠心成形法でフィルムを製造する。TPUから製造される厚さが0.03から0.3mmのフィルムは、通常通りにブロー工程で製造され;例えばより厚い約3mmまでのフィルムは、スロットダイ押出し法により製造される。TPUからの焼結よるPUフィルムの製造は上に引用した論文においては言及されていない。
【0004】
自動車の内部での装飾用プラスチックフィルムの使用もまた公知であり[R.Pfriender,Kunststoffe,76(1986),10,page 960 ff.];ここでプラスチック成形品はフィルムでコーティングされ又はフィルム若しくは表皮(skin)は、発泡プラスチック、好適にはPU発泡プラスチックを用いて裏面を発泡体化した(foamed)。
【0005】
PUが使用される場所では、表面層はほとんどの場合IMC(インモールドコーティング)工程により二つの成分のPU系から製造される。この工程では約50℃に加熱されたモールドは、まず初めにはく離剤を噴霧され、その後PUの二成分コーティング、そして続いてPU支持層が開放式モールド(open mould)に導入される。対応する部分の製造のためのこの製造技術は困難でありそして今日まで加工技術者にほとんど使用されていない(Dr.M.Wachsmann,Kunststoffberater,10/1987,27−28頁)。
【0006】
ドイツ特許出願(DE−A)第4,203,307号は焼結フィルム製造のための脂肪族TPU粉体の使用を開示している。ドイツ特許出願(DE−A)第4,203,307号においては、有利な加工運転となる特定のメルトインデックス範囲(MVR範囲)の言及はなされていない。これに反して、非常に広いMVRの範囲は、97から99と広い、言及されたNCOのOHに対する比率(指数)の範囲に含まれる。
【0007】
従来の技術では、PVC/ABSフィルムは通常、熱成形工程によりそして続いての二番目の加工段階で裏面を発泡体化することにより製造できる。PVCフィルムはPVCの粉体スラッシュ(slush)工程により製造することができる。このためにはモールドは炉で約250℃まで加熱され、粉末のPVCはその後その中に均一に分配されそしてモールドは再び炉の中でPVC表皮をゲル化するために加熱する。モールドが例えば水浴で冷却された後、フィルムを取除きそしてその後裏面を発泡体化できる。PVC粉体スラッシュ工程により製造されたフィルムは、ABS/PVCフィルム、PU IMCフィルム
及びTPUフィルムに比べてかなり安価である。裏面がPU発泡プラスチックスを用いて発泡体化したPVCフィルムから作られた成形品の欠点は、PVCフィルムとPU裏面フォームの負の相互作用である。それゆえ成分、例えば触媒、安定化剤等はPU発泡プラスチックから装飾用フィルムへ拡散し、そして逆に可塑剤はPVCフィルムからPU発泡プラスチックへ移動する。これらの移動過程の結果として、成形品は収縮又は脆化により機械的にダメージを受け、それらの外観は退色及び斑点の結果として変わることになる(Kunststofftechnik,VDI Verlag GmbH,Duesseldorf,1987,“Kunststoffe als Problemloeser
im Automobilbau”,page 141 ff.)。
【0008】
欧州特許出願公報(EP−A)第399,272号は焼結による粉体のTPUsから製造される弾性ポリウレタンフィルムを開示する。50から350のメルトインデックス(MVR)[190℃及び212Nの重量を適用で]がTPUsのために特定される。欧州特許出願公報(EP−A)第399,372号において焼結工程に適したTPUは、メルトインデックスに関しては言及した基準を満たさなければならないことが明白に述べられている。220℃から280℃、好適には230℃から270℃の必要とされる高い加工温度が欠点となる。これらの高い加工温度では一般にTPUs及び特にポリエーテルに基づくTPUは第一に鎖の分割の結果としての分子量の減少(機械的特性の低下)を行い、第二に、何にもましてポリエーテル及び/又は芳香族ジイソシアナートに基づくTPUsにおいて黄色化する傾向があることである(染色したテストピースでさえ退色;Wolfgang Endres in the Faculty of Chemistry at the University of Osnabrueck,1944もまた参照)。190℃及び212Nで50のMVRを有するTPUは21.2N及び190℃で2のMVRを示す。190℃及び21.2Nで40のMVRを有するTPUは212N及び190℃で>500のMVRを示し、すなわちTPUは“貫通し(run through)”もはや測定不能である。欧州特許出願公報(EP−A)第399,272号に記載された220℃から280℃の高い加工温度はまた、長い冷却及び加熱時間の結果に関係する長い循環時間のために不利となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明の目的は180℃から215℃、好適には190℃か215℃の低い加工温度においてでさえも焼結工程でフィルムに加工できる材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことにこの目的は焼結によりある種のTPUsから製造されるTPUフィルムを用いて達成することができる。
【0011】
本発明は、190℃及び21.2N(2.16kp)の重量を適用した場合に20から100、好適には30から60のメルトインデックス、そして1.15から1.45、好適には1.25から1.35の相対溶液粘度、並びに80から98、好適には85から94のショア硬度(Shore hardness)を有する、粉末の熱可塑性ポリウレタン−また以下に略字TPUとして言及される−の焼結により得られる、柔軟な弾性の熱可塑性ポリウレタンフィルムを供給し、粉体のTPUは、加熱したモールド(heated
mould)の補助により、
a) 有機ジイソシアナート、
b) ポリオール(ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール又はそれらの混合物)、
c) 鎖延長剤(ジオール又はジオール/ジアミン混合物)そして
d) 場合によっては通常の補助物質及び添加剤
の反応により得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によるTPUフィルムの製造に関連して、TPUsの焼結は以下の工程を含む:例えばドイツ特許出願(DE−A)第3,932,923号に記載された“粉体スラッシュ工程”による製造;例えばKunststoff−Handbushにおける“Polyurethane”Volume 7に記載された圧延(calendering)工程による製造、又は例えばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,Sixth Editionに記載された共押出し工程による製造。
【0013】
粉末のTPUは好適には、
a) 芳香族ジイソシアナート、好適には4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、
b) 600から5000g/molの間の平均分子量を有するポリオール、
c) 60から500g/molの間の平均分子量を有する鎖延長剤、そして
d) 場合によっては通常の補助物質及び添加剤
の反応により得られる。
【0014】
芳香族ジイソシアナートに基づくTPUsは耐光性に関しては特に高い必要性がある場合には特には適当ではない。欧州特許出願公報(EP−A)第399,272号においては脂肪族ジイソシアナートに基づくTPUsは耐光性であるが、熱可塑性工程の後に、常に困難性を伴いながら取り扱うことができることが述べられている。この理由のために芳香族ジイソシアナートに基づくTPUsの混合物が提案される。しかしながら多くの場合にはこれらの混合物は同様に耐光性に関しては高い要求を満たさない。驚くべきことにこれらの高い要求は、TPUsが優先的に(90重量%以上)脂肪族ジイソシアナートに基づいて製造された場合にのみ満たすことができる。上記の粉末のTPUが
a) ヘキサメチレンジイソシアナート、
b) 600から5000g/molの間の平均分子量を有するポリオール、
c) 60から500g/molの間の平均分子量を有する鎖延長剤、そして
d)場合によっては通常の補助物質及び添加剤
の反応より得られる場合には、熱可塑性工程の後でさえもこれらの脂肪族TPUsの満足のいく取扱性が達成されることが見いだされた。
【0015】
本発明のTPUから得られる成形におかれた要求に依存して、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)は部分的に一又はそれ以上の他の脂肪族ジイソシアナート、特にはイソホロンジイソシアナート(IPDI)、1,4−シクロヘキサンジイソシアナート、1−メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアナート、1−メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアナート及びそれらの異性体混合物、4,4’−、2,4’−及び2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート及びそれらの異性体混合物で置換されてもよい。
【0016】
耐光性、熱可塑性ポリウレタンフィルムは、上記の粉末のTPUが
a) 95から70mol%のヘキサメチレンジイソシアナート及び5から30mol%の他の脂肪族ジイソシアナート、
b) 600から5000g/molの間の平均分子量を有するポリオール、
c) 60から500g/molの間の平均分子量を有する鎖延長剤、そして
d)場合によっては通常の補助物質及び添加剤
の反応から得られる場合に好適に得られる。
【0017】
耐光性、熱可塑性ポリウレタンフィルムは、上記の粉末のTPUが
a) 100から60mol%、好適には100から70mol%、特に好適には100から80mol%のヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)及び0から40mol%、好適には0から30mol%、特に好適には0から20mol%の他の脂肪族ジイソシアナート、
b) 600から5000g/molの間の平均分子量を有するポリオール、
c)80から100重量%の1,6−ヘキサンジオール及び0から20重量%の60から500g/molの間の平均分子量を有する鎖延長剤、そして
d)場合によっては通常の補助物質及び添加剤
の反応から得られる場合に特に好適に得られる。
【0018】
粉末のTPUはまた
a) 芳香族ジイソシアナート、好適には4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート及び/又は脂肪族ジイソシアナート、好適にはヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート及び/又は4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、b) 600から5000g/molの間の平均分子量を有するポリオール、
c) 60から500g/molの間の平均分子量を有する鎖延長剤、そして
d)場合によっては通常の補助物質及び添加剤
の反応から得ることもできる。
【0019】
粉末のTPUはまた、100重量部に基づき
a) 芳香族ジイソシアナート、好適には4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナートを用いて製造されるTPU(A)の40から99.5重量部、そして
b) 脂肪族ジイソシアナート、好適には1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート及び/又は4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナートの中から選択される脂肪族ジイソシアナートを用いて製造されるTPU(B)の0.5から60重量部
からなることができる。
【0020】
直鎖でヒドロキシルを末端に持つ、600から5000g/mol、好適には700から4200g/molの間の平均分子量を有するポリオールが成分b)として使用される。製造の間の状況のため、これらはしばしば少量の非直鎖の化合物を含む。この理由のために、それらはしばしば”実質的に直鎖のポリオール”としても言及される。
【0021】
適当なポリエステルジオールは例えば2から12の、好適には4から6の炭素原子を有するジカルボン酸、及び多価アルコールから製造できる。適当なジカルボン酸の例は:脂肪族ジカルボン酸、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸並びに芳香族酸例えばフタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸である。ジカルボン酸は別々に又は混合物として例えばコハク酸、グルタル酸及びアジピン酸の混合物の形態として使用できる。ポリエステルジオールの製造のためには、ジカルボン酸の代わりに対応するジカルボン酸誘導体例えば、アルコール基に1から4の炭素原子を有するカルボン酸ジエステル、カルボン酸無水物又はカルボン酸塩化物を使用することが好都合である。多価アルコールの例としては2から10の、好適には2から6の炭素原子を有するグリコール例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール及びジプロピレングリコールである。必要とされる性質に依存して、多価アルコールはそれのみで又は場合によっては互いに混合して使用できる。上記ジオールとのカルボン酸のエステルもまた適当であり、特には4から6の炭素原子を有するこれらのジオール例えば、1,4−ブタンジオール又は1,6−ヘキサンジオール、ヒドロキシカルボン酸例えばヒドロ
キシカプロン酸及びラクトンの重合生成物例えば場合により置換されたカプロラクトンの縮合生成物である。好適に使用されるポリエステルジオールはエタンジオールポリアジペート、1,4−ブタンジオールポリアジペート、エタンジオール−1,4−ブタンジオールポリアジペート、1,6−ヘキサンジオール−ネオペンチルグリコールポリアジペート、1,6−ヘキサンジオール−1,4−ブタンジオールポリアジペート及びポリカプロラクトンである。ポリエステルジオールは、600から5000、好適には700から4200の平均分子量を有し、そして別々に又は互いに混合した形態で使用できる。
【0022】
適当なポリエーテルジオールは、アルキレン基に一又はそれ以上の2から4の炭素原子を有するアルキレンオキシドと、二つの結合した活性水素原子を含む出発分子との反応により製造できる。言及できるアルキレンオキシドは、例えばエチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、エピクロロヒドリン並びに1,2−ブチレンオキシド及び2,3−ブチレンオキシドである。エチレンオキシド、プロピレンオキシド並びに1,2−プロピレンオキシド及びエチレンオキシドの混合物の使用が好適である。アルキレンオキシドは別々に、代わりに連続して又は混合物として使用できる。適当な出発分子の例は:水、アミノアルコール例えば、N−アルキルジエタノールアミン、例えばN−メチルジエタノールアミン、及びジオール、例えばエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールである。出発分子の混合物もまた場合によっては使用できる。テトラヒドロフランのヒドロキシル含有重合生成物もまた適当なポリエーテルジオールである。三官能性ポリエーテルもまた二官能性ポリエーテルに基づき0から30重量%の量で、しかし熱可塑性的に働くことができる生成物が形成するような最大量において使用できる。実質的に直鎖のポリエーテルジオールは600から5000、好適には700から4200の分子量を有する。それらは別々に及び互いに混合物の形態の両方で使用することができる。
【0023】
成分c)として使用できる化合物は、分子当たり平均1.8から3.0のツェレビチノフ活性水素原子及び60から500g/molの分子量を有するジオール又はジアミンであり、好適には2から14の炭素原子を有する脂肪族ジオール例えば、エタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール及び特に1,4−ブタンジオールである。しかしテレフタル酸と2から4の炭素原子を有するグリコールとのジエステルもまた適当であり、例えばテレフタル酸とビス(エチレングリコール)又はテレフタル酸とビス(1,4−ブタンジオール)、ヒドロキノンのヒドロキシアルキレンエーテル例えば、1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)ヒドロキノン、エトキシル化ビスフェノール例えば1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)ビスフェノール A、(シクロ)脂肪族ジアミン、例えばイソホロンジアミン、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、N−メチルプロピレン−1,3−ジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン及び芳香族アミン例えば2,4−トリレンジアミン及び2,6−トリレンジアミン、3,5−ジエチル−2,4−トリレンジアミン及び/又は3,5−ジエチル−2,6−トリレンジアミン及び第一(primary)モノ−、ジ−、トリ−及び/又はテトラアルキル置換4,4’−ジアミノフェニルメタンである。上記の鎖延長剤の混合物もまた使用できる。これらの他に少量のトリオールもまた加えることができる。
【0024】
さらに少量の通常の単官能化合物もまた、例えば鎖停止剤又は離型剤として使用することができる。与えられる例としては、アルコール例えばオクタノール及びステアリルアルオール又はアミン例えばブチルアミン及びステアリルアミンである。
【0025】
TPUsの製造に関しては構造的成分は、場合によっては触媒、補助物質及び/又は添加剤の存在下で、好適にはNCOと反応する基、特には低分子量の鎖延長剤及びポリオールのOH基、の合計に対してNCO基の比率が等しくなる量で、0.9:1.0から1.
1:1.0、好適には0.95:1.0から1.10:1.0の比率で反応が行われる。
【0026】
本発明の適当な触媒は、従来の技術で公知の通常の第三級アミン、例えばトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N,N’−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等、そして特に有機金属化合物、例えばチタネートエステル、鉄化合物、スズ化合物、例えばスズジアセテート、スズジオクトエート、スズジラウレート又は脂肪族カルボン酸のジアルキルスズ塩例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート等である。好適な触媒は、有機金属化合物、特にチタネートエステル、鉄化合物及び/又はスズ化合物である。
【0027】
TPU成分及び触媒は別として、補助物質及び/又は添加剤(d)も、TPUの全量に基づき20重量%までの量で加えることができる。それらは前以てTPU成分の一つ、好適には成分b)中に溶解することができ、好適には成分b)中に、又は反応が終了した後で、場合によってはタンデム配列(tandem−arranged)混合ユニット例えば押出し機へ導入することができる。
【0028】
与えることができる例は潤滑剤、例えば脂肪酸エステル、それらの金属セッケン、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルアミド及びシリコン化合物、粘着防止剤、阻害剤、加水分解、光、熱及び退色に対する安定化剤、防炎剤、染料、顔料、無機及び/又は有機充填剤及び補強剤である。補強剤は特に繊維性の補強材料例えば従来の技術として製造された無機繊維であり、サイズ剤と共に処理することもできる。上記の補助材料及び添加剤のより詳細な情報は技術文献例えばJ.H.Saunders and K.C.Frisch,“High Polymers”,Volume XVI,Polyurethanes,part 1 and 2,Interscience Publishers,1962 and 1964による論文で;Taschenbuch fuer Kunststoff−Additive,by R.Gaechter and H.Mueller(Hanser Verlag,Munich,1990)で又はドイツ特許出願(DE−A)第2,901,774号で見ることができる。
【0029】
本発明で使用される190℃及び21.2N(2.16kp)の重量の適用で20から100、好適には30から60のメルトインデックスを有し、1.15から1.45、好適には1.25から1.35の相対溶液粘度である、TPUsは、押出し機又はベルト方法又は特許出願PCT/EP98/07753に記載された方法によって成型可能である。
【0030】
欧州特許出願公報(EP−A)第399,272号に記載された、それに関して相対的に高い溶融粘度及び低いMVR値を示すTPUsは、高い含量の遊離のイソシアナート基を有する。0.05から0.1重量%、好適には0.1から0.5重量%が言及されている。
【0031】
このNCO基の高い残含量が反応する遊離のNCO基であり、そしてそれゆえ溶融粘度を増加させるということが今回見いだされた。貯蔵の間にTPUsは変化する。これは、以前に選択された狭いMVR範囲を確立する(establish)することを困難にさせる。
【0032】
他方、それに関するそれらのかなり低い溶融粘度及び高いMVR値のために、本発明のTPUsは0.0から0.05重量%というかなり低いNCOの残量(全重量に基づく)で製造することができる。溶融粘度としては貯蔵の間に認め得るほどには変化しないが、以前に選択された狭いMVR範囲の確立は問題として存在しない。
【0033】
本発明はまた、190℃及び21.2N(2.16kp)の重量の適用で20から100、好適には30から60のメルトインデックスを有し、1.15から1.45、好適には1.25から1.35の相対溶液粘度、並びに80から98のショア A硬度である粉末のTPU又はTPUの混合物が、焼き入れされた(tempered)モールドを用いて焼結されることを特徴とする、本発明の柔軟な、弾性のTPUフィルムの製造方法を提供する。
【0034】
好適には焼結は180℃から215℃、特に好適には190℃から210℃のモールド温度で行われる。
【0035】
使用されるTPUは好適には50から800μm、特に好適には50から500μmの平均粒径を有する。
【0036】
上に記載されたTPUs及びTPU混合物は好適には本発明の方法における粉末のTPU又はTPU混合物として使用される。
【0037】
本発明の成形組成物は多くの種類の成形物例えば、フィルム、特に粒子化された焼結フィルムの製造に適している。粉体の形態では、本発明のポリウレタン成形組成物は公知の“粉体スラッシュ方法”を用いて加熱可能な(heatable)モールド中で表皮を形成するよう焼結できる。このために必要な粉体は、低温粉砕を用いて本発明のポリウレタン成形組成物の顆粒から得ることができる。粉砕された材料は一方の側が開いた加熱可能なモールドに導入され、短時間の間に熱された(heated)表面の内壁上に焼結される。モールドが冷却された後に、スラッシュ表皮を取除くことができる。それゆえ本発明の方法は、PVC表皮からダッシュボード被覆(coverings)を製造するための方法と同様である。例えばドイツ特許(DE)第3,932,923号において、“粉体スラッシュ方法”として記載されている。
【0038】
本発明のTPUフィルムは特に、輸送のための乗り物における表面の被覆として使用できる。
【0039】
本発明のTPUフィルムはまた共押出し又は圧延を用いる基質への適用に適している。可能な低い加工温度(180℃から215℃)のために、フィルムは、それらの低い軟化点のために欧州特許出願公報(EP−A)第399,272号に記載されたTPUsでコーティングすることができない基質のコーティングのためにも使用できる。
【0040】
二つの異なった重量で測定された種々のTPUsを表1に示す。本発明のTPUフィルムと欧州特許出願公報(EP−A)第399,272号の間の明白な相違点は、これらの実施例から見ることができる。
【0041】
表2において、加工温度の分子量における減少への影響は明らかである。相対溶液粘度は平均分子量に比例する(特にWolfgang Endres in the Faculty of Chemistry at the University of Osnabrueck,1994の学術論文を参照)。
【実施例】
【0042】
本発明は以下の実施例により詳細に説明される。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
粉体のSVの測定は、実施例1では粉体に対し1.245の値及び実施例2では粉体に対し1.311の値を与えた。
【0046】
粉体のMVR値もまた得られた。
【0047】
【数1】

【0048】
TPUs及びTPUフィルムの製造
HDIに基づくTPUsは以下のように連続して製造された:−
【0049】
ポリオール、鎖延長剤及びジブチルスズジラウレートの混合物が、容器中で、撹拌しながら約110℃まで加熱され、そしてHDIと共に熱交換器を用いて約110℃まで加熱され、硬いスルザー(Sulzer(10混合元素及びシェア速度500s-1を伴ったDN6))からのスタティックミキサー(static mixer)で強力に撹拌し、そしてその後スクリューコンベヤー(ZSK 32)の入り口に通した。
【0050】
押出し機で全体の混合物を、反応が完了するまで反応させそしてその後粒状化した。
【0051】
MDIに基づくTPUsは以下のように連続的に製造した:−
【0052】
ポリオール、鎖延長剤及びスズジオクトエートの混合物が容器中で撹拌しながら約130℃まで加熱され、MDI(約120℃)と同様に、スクリューコンベヤー(ZSK 32)の入り口に一回の工程で通した。
【0053】
押出し機で全体の混合物を、反応が完了するまで反応させそしてその後粒状化した。
【0054】
添加剤はポリオールに溶解するか或はスクリューコンベヤーへ連続的に計量投入された。
【0055】
液体窒素を用いての冷却下で、それぞれの粒子が<500μmの粒度分布を有する細かい粉体に粉砕された。TPU粉体はそれ自体公知の方法で焼き入れされたモールドにおかれ(それぞれの温度については各々の実施例を参照)、30から60秒後に過剰のTPU粉体は洗い流され、そしてその後モールド中に残されたTPUは2分以内で焼結された。モールドが冷却された後でTPUフィルムが取除かれた。全ての実施例及び比較実施例において得られるフィルムは柔軟で、弾性があり、全てのものについて空隙や気泡がなかった。
【0056】
TPUsの組成物(熱可塑性ポリウレタン):
実施例 2、4 及び比較実施例 1 及び 2:
1.0mol De2020
0.43mol PE 225B
3.76mol 1,4BDO
40ppm DBTL
実施例2 実施例4 比較実施例1 比較実施例2
5.06molHDI 4.98molHDI 5.19mol HDI 5.14molHDI
【0057】
実施例 5
1.0mol PE 225B
0.43mol Acclaim 2220
3.43mol 1,6HDO
4.67mol HDI
1.0重量%(PE 225Bに基づく)Stabaxol P200
60ppm DBTL
【0058】
実施例 6
1.0mol Capa 225
2.36mol 1,6HDO
3.29mol HDI
60ppm DBTL
【0059】
実施例 1 及び 3 並びに比較実施例 3:
1.0mol PE 80B
0.82mol 1,4BDO
200ppm スズジオクトエート
実施例1 実施例3 比較実施例3
1.765mol MDI 1.775mol MDI 1.82mol MDI
【0060】
全てのTPUsはそれぞれの場合TPUに基づき、0.2重量%のエチレンビス−ステアリルアミド、0.5重量%Irganox(登録商標)1010、0.4重量%Tinuvin(登録商標)328及び0.4重量%Tinuvin(登録商標)622を含む。触媒(DBTL及びスズジオクトエート)の含量はポリオールの全量に基づく。
【0061】
DBTL: ジブチルスズジラウレート

HDI: ヘキサメチレンジイソシアナート
MDI: 4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート
Irganox(登録商標)1010: テトラキス[メチレン−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン(Ciba Geigy)
Tinuvin(登録商標)328: 2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(Ciba Geigy)
Tinuvin(登録商標)622: 4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールを伴ったジメチルスクシネート重合体(Ciba Geigy)
1,6 HDO: 1,6−ヘキサンジオール
Acclaim(登録商標) 2220: ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン単位を伴ったポリエーテルポリオール(約85%一級ヒドロキシルキ基

Stabaxol(登録商標) P200: 芳香族ポリカーボジイミド(Rhein−
Chemie)
【0062】
以下の測定値は実施例で得られた材料に基づき行われた:−
1)溶液粘度の測定
このために、0.1%ジブチルアミンを伴ったN−メチル−2−ピロリドン99.7g及びTPU粉体0.4gがはかり取られた。試料はマグネティックスターラーで撹拌された。
MDI試料は室温で溶解され一晩静置された。
HDI試料は約70℃で約1時間かけて溶解され、そして一晩室温まで冷却された。
試料及びブランク(溶媒のみ)は、25℃で硬いショット(Schott)から粘度試験アセンブリー(assembly)について測定された。
相対溶液粘度は時間(溶液)を時間(溶媒)で割って計算した。
ショットからの粘度試験アセンブリーは、粘度試験アセンブリー AVS 400、測定スタンド ASV/S、ガラスサーモスッット、ウッベローデ粘度計50110型からなる。
MVR測定は190℃並びに21.2N及び212Nで、5分の予熱時間、ISO 1133に従って、それぞれ行った。
【0063】
本発明の主たる特徴及び態様は以下の通りである。
【0064】
1. 加熱したモールド中で、190℃でそして21.2Nの重量を適用した場合に20から100のメルトインデックス、1.15から1.45の相対溶液粘度及び80から98のショア硬度を有することを特徴とする少なくとも1種の粉末の熱可塑性ポリウレタン(TPU)を焼結することを含んでなる方法より製造される熱可塑性ポリウレタンフィルム。
【0065】
2. 焼結が180から215℃で行われる上記1に記載のフィルム。
【0066】
3. a) 100から60mol%のヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)及び0から40mol%の他の脂肪族ジイソシアナート、
b) 600から5000g/molの間の平均分子量を有するポリオール、並びに
c) 60から500g/molの間の平均分子量を有する鎖延長剤
の反応生成物を含んでなる上記1に記載のフィルム。
【0067】
4. 鎖延長剤が、80から100重量%の1,6−ヘキサンジオール及び0から20重量%の、60から500g/molの間の平均分子量を有する鎖延長剤を含んでなる上記3に記載の熱可塑性ポリウレタンフィルム。
【0068】
5. 粉末のTPUが、100重量部に基づき、
a) 芳香族ジイソシアナートを用いて製造されるTPUの40から99.5重量部、並びに
b) 脂肪族ジイソシアナートを用いて製造されるTPUの0.5から60重量部
を含んでなる上記1に記載の熱可塑性ポリウレタンフィルム。
【0069】
6. 190℃でそして21.2Nの重量を適用した場合に20から100のメルトインデックス、1.15から1.45の相対溶液粘度及び80から98のショア硬度を有することを特徴とする少なくとも1種の粉末のTPUを加熱したモールド中で焼結することを含んでなるTPUフィルムの製造方法。
【0070】
7. 焼結が180から215℃のモールド温度で行われる上記6に記載の方法。
【0071】
8. 焼結が190から210℃のモールド温度で行われる上記6に記載の方法。
【0072】
9. 粉末のTPUが、50から800μmの平均粒径を有する上記6に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱したモールド中で、190℃でそして21.2N(2.16kp)の重量を適用した場合に20から100のメルトインデックス、1.15から1.45の相対溶液粘度及び80から98のショアA硬度を有し、
a)芳香族ジイソシアネート、
b)600から5000g/モルの間の平均分子量を有する直鎖ヒドロキシル−末端ポリオール、
c)60から500g/モルの間の平均分子量、及び分子当り平均1.8から3.0のツェレビチノフ−活性水素原子を有する鎖延長剤、
又は、
a’)脂肪族ジイソシアネート、
b’)600から5000g/モルの間の平均分子量を有する直鎖ヒドロキシル−末端ポリオール、
c’)60から500g/モルの間の平均分子量、及び分子当り平均1.8から3.0のツェレビチノフ−活性水素原子を有し、エタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、テレフタル酸と2から4の炭素原子を有するグリコールとのジエステル、ヒドロキノンのヒドロキシアルキレンエーテル、エトキシル化ビスフエノール、(シクロ)脂肪族ジアミン、芳香族ジアミンおよびこれらの混合物から選択される鎖延長剤、
を反応させる事により得られ、
こゝでNCOと反応する基の合計に対しNCO基の比率が等しくなる量で0.9:1.0から1.1:1.0である、
粉末の熱可塑性ポリウレタン(TPU)又はTPU混合物を焼結することにより得られる柔軟で弾性のポリウレタンフィルムであって、
こゝで芳香族ジイソシアネートから得られる熱可塑性ポリウレタン(TPU)の相対溶液粘度が、室温でTPUを溶解し、一昼夜放置して得られた溶液について測定し、脂肪族ジイソシアネートから得られる熱可塑性ポリウレタンの相対溶液粘度が、70℃で1時間以上に亘りTPUを溶解し、一昼夜室温に冷却して得られた溶液について測定したものである、ポリウレタンフィルム。
【請求項2】
190℃でそして21.2N(2.16kp)の重量を適用した場合に20から100のメルトインデックス、1.15から1.45の相対溶液粘度及び80から98のショアA硬度を有し、
a)芳香族ジイソシアナート、
b)600から5000g/モルの間の平均分子量を有する直鎖ヒドロキシル−末端ポリオール、
c)60から500g/モルの間の平均分子量、及び分子当り平均1.8から3.0のツェレビチノフ−活性水素原子、を有する鎖延長剤、
又は、
a’)脂肪族ジイソシアネート、
b’)600から5000g/モルの間の平均分子量を有する直鎖ヒドロキシル−末端ポリオール、
c’)60から500g/モルの間の平均分子量、及び分子当り平均1.8から3.0のツェレビチノフ−活性水素原子を有し、エタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、テレフタル酸と2から4の炭素原子を有するグリコールとのジエステル、ヒドロキノンのヒドロキシアルキレンエーテル、エトキシル化ビスフエノール、(シクロ)脂肪族ジアミン、芳香族ジアミンおよびこれらの混合物から選択される鎖延長剤、を反応させる事により得られ、
こゝでNCOと反応する基の合計に対するNCO基の比率が等しくなる量で0.9:1.0
から1.1:1.0である、
粉末の熱可塑性ポリウレタン(TPU)又はTPU混合物を、加熱したモールド中で、180℃から215℃の成型温度で焼結する事を特徴とする、請求項1記載の柔軟で弾性のTPUフィルムを製造する方法。

【公開番号】特開2011−246732(P2011−246732A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200807(P2011−200807)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【分割の表示】特願2000−209536(P2000−209536)の分割
【原出願日】平成12年7月11日(2000.7.11)
【出願人】(591063187)バイエル アクチェンゲゼルシャフト (67)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−51368 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】