説明

柔軟剤用香料組成物

【課題】洗濯後まで確実に香りの持続する、高残香性の柔軟剤用香料組成物を提供する。さらにその残香の質が柔軟剤として相応しい香りとなる様にコントロールする。
【解決手段】香料素材の香りの強さに合わせ最適化した洗濯実験において、脱水布及び乾燥布における香りを実際に官能評価することで、その香りの持続性が確認できる43素材を見出した。さらにその43素材を、清潔感とやわらかさという柔軟剤に求められる香りの質で分類し、それぞれ組み合わせて配合することで、確実に洗濯後まで香りの持続し且つ香りの質の優れた、高残香性柔軟剤用香料組成物を提供することが可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗濯後の衣類に強い香りを残し、乾燥途中及び乾燥後の長期間に渡り心地よい香りが持続する柔軟剤用香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の洗濯で衣類を乾燥させたのちまで、消費者に心地よさを与える香りを残す為には、衣類用洗剤または柔軟剤中に、香りが強く且つ揮発度が低く、更に洗濯時に洗浄水とともに排出されにくい香料素材を多量に配合する必要があるとされてきた。
【0003】
揮発度の低い香料を使用した調合香料および、柔軟剤への使用例として、特許文献1がある。ここでの香料素材の揮発度は、匂い紙に素材を直接塗布した後の観察結果に基づいて評価された。しかし実際の洗濯過程において柔軟剤中の香料は、界面活性剤存在下の希薄な溶液として衣類に接触、付着する。しかも柔軟剤で処理した衣類に付着した香料は、乾燥している間に空気中に揮散していくので、衣類の香りは更に弱くなる。その為に匂い紙上の挙動だけでは、洗濯後の衣類に残る香りの明確な指標とはなりにくい。匂い紙上に長く残る香料素材でも、実際に洗濯実験をすると、香りが残らないものも多い。
【0004】
特許文献2には、水/1-オクタノール分配係数であるLogP値(実際には実験値ではなく、多くの実験データから計算されるClogP値)と、揮発度のパラメータとして沸点(bp)を利用し、ClogP≧3且つbp≧250℃の素材によって持続性香料素材を選択できることが開示されている。また前記の範囲外であるが22素材も持続性香料素材として挙げられている。さらにそれらを調合香料中に70質量%以上含有させることで、洗濯後まで衣類に残る持続性香料組成物が得られることを報告している。
【0005】
しかし上記特許文献2に持続性香料素材として記載されているものでも、実際に洗濯実験をすると、洗濯後まで香りが持続しない香料成分が多い。つまり、洗濯後の香りの強さを、物理的なパラメーターだけで予測するのは困難である。
【0006】
【特許文献1】特開2002−327193号公報
【特許文献2】特許3102893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高残香性の柔軟剤用香料組成物及び、柔軟剤組成物を提供することにある。また香りの持続性が高いだけでなく、柔軟剤として求められる“やわらかさ”や“清潔感”を感じさせる香りの香料組成物及び柔軟剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
洗濯後の衣類に残存する香りは、香料素材(以下において単に「素材」と称する場合がある)の種類、洗濯後の衣類への残存量や、その後の揮発度だけでなく、素材自体の香りの強さも重要である。また、素材の香りの強さを示すパラメーターには閾値があるが、感覚は人種やその測定方法などで異なる。
発明者らは、もっとも確実に洗濯後の衣類に香りが残る素材を判断するために、実際にその素材を賦香した柔軟剤を用いて洗濯実験を実施し、官能評価を行った。
【0009】
しかし、香りの残存性が高い素材であっても、その香りが洗濯に際し不快なものであれば家庭品としての使用に適さない。そこで発明者らは、素材個々の香りの強さに合わせて賦香率を調整した。具体的には素材を賦香した柔軟剤組成物の香りが、洗濯に際して強すぎて不快な場合には、快適な香りになるまで賦香率を低減した。すなわち消費者が実際に洗濯をする場面に、十分な配慮をして調整した柔軟剤組成物を用いた洗濯実験を行った。そして洗濯直後(脱水布)と乾燥後(乾燥布)の香りの評価結果から、洗濯後まで確実に香りの残る43種の素材を得た。
【0010】
さらに、この高持続性香料素材12種を、その香りのキャラクターで、清潔感を強く発揮する(A)群と、やわらかさの印象に強く寄与する(B)群の2つに分類し、(A)群及び(B)群から選ばれる素材を併用することで、残香の強さだけでなく、柔軟剤として相応しい香りの質をコントロールすることができる香料組成物が得られることを見出した。
(A)群素材
オークモス油、1‐メチル‐3,4‐ジオキシ(シクロアセトニル)ベンゼン、2‐(2,4‐ジメチル‐3‐シクロヘキセニル)‐5‐メチル‐5‐(1‐メチルプロピル)‐1,3‐ジオキサン、2,4‐ジメチル‐4‐フェニルテトラヒドロフラン、3‐イソカンフィルシクロヘクサノールの異性体混合物、3,3,5,5‐テトラメチル‐4‐(1‐エトキシビニル)シクロヘキサノン、メチル 2,4‐ジヒドロキシ‐3,6‐ジメチルベンゾエート
(B)群素材
4‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐2‐ブタノン、4‐(4‐メトキシフェニル)‐2‐ブタノン、アニスアルデヒド、アンスラニル酸メチル、アンスラニル酸メチルと4‐(4‐ヒドロキシ‐4‐メチルペンチル)‐3‐シクロヘキセン‐1‐カルボキシアルデヒドのシッフベース。
【0011】
すなわち本発明により提供される柔軟剤用香料組成物は、素材の賦香率を考慮して行なわれた洗濯実験により衣類に適した高残香性が確認された特定の素材を含有することを特徴とする。また、当該特定の素材の中から清潔感を強く発揮する素材と、やわらかさの印象に強く寄与する素材を各々選び、組み合わせることで、柔軟剤としてより好ましい香りの印象を、消費者に与えることを可能にした。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、実際に洗濯実験によりその高残香性が確認された12種の素材を用いて、香料組成物を調合することで、洗濯後まで衣類に確実に香りが持続する、高残香性柔軟剤用香料組成物を提供する。
【0013】
本発明で見出された高残香性の12素材は、次の2つグループに分けられる。ドライやフレッシュな印象を強くもつ(A)群と、花や果実などのスイートな印象を強くもつ(B)群である。(A)群の素材は洗濯後の衣類の香りに、清潔な印象を賦与し、(B)群の素材は、洗濯後の衣類に、やわらかい印象を賦与する。(A)群と(B)群のそれぞれから選ばれる、1種以上の素材を組み合わせて配合することで、高残香性に加え柔軟剤に相応しい、やわらかい香りや、清潔な香りの印象を表現することができる。
さらに、本発明の高残香性柔軟剤用香料組成物を配合することにより、洗濯後まで衣類に確実に香りが持続する柔軟剤組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、実際に洗濯実験でその香りの持続性が確認された下記43素材を含有することで、衣類に残った香りが洗濯後まで確実に持続する、高残香性柔軟剤用香料組成物を提供するものである。
高残香性香料素材としてはオークモス油、グァヤク油、ケード油、シダー葉油、バジル油、バーチ油、パチョリ油、ラブダナム油、1-メチル-3,4-ジオキシ(シクロアセトニル)ベンゼン、2-(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセニル)-5-メチル-5-(1-メチルプロピル)-1,3-ジオキサン、2,4-ジメチル-4-フェニルテトラヒドロフラン、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、2-ペンチル-3-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、3-イソカンフィルシクロヘクサノールの異性体混合物(商品名=カンダルム/ロン・プーラン社)、3,3,5,5-テトラメチル-4-(1-エトキシビニル)シクロヘキサノン、3,7-ジメチル-2(3),6-ノナジエンニトリル(「2(3),6」は、-2,6-と-3,6-の構造を有する混合物である。以下同様。)、3-フェニルプロピオンアルデヒド、4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、4-(4-メトキシフェニル)-2-ブタノン、6/7-エチリデンオクタヒドロ-5,8-メタノ-(2H)-1-ベンゾピラン-2-オン(「6/7」は、6-と7-の構造を有する混合物である。以下同様。)、6-メトキシ ジシクロペンタジエン カルボキシアルデヒド、7-ウンデセナール/8-ウンデセナール/9-ウンデセナール/10-ウンデセナールの混合物(商品名=インタレーベンアルデヒド/アイエフエフ社)、9-シクロヘキサデセノリド(商品名=セントライド/シナローム社)、γ-ノナラクトン、アセトフェノン、アニスアルデヒド、アンスラニル酸メチル、アンスラニル酸メチルと2-メチル-3-(4-メトキシフェニル)プロパナールのシッフベース、アンスラニル酸メチルと2-メチルペンタナールのシッフベース、アンスラニル酸メチルと4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒドのシッフベース、アンスラニル酸メチルとデカナールのシッフベース、アンスラニル酸メチルとメチルノニルアセトアルデヒドのシッフベース、インドール、オクタナール、クマリン、クミニルニトリル、チモール、デカナール、ノナナール、ヒドロキシシトロネラールとインドールのシッフベース、メチル 2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチルベンゾエート、メチルアンスラニル酸メチル、メチルオクチルアセトアルデヒドが挙げられる。
【0015】
これらの高残香性香料素材のうち、好ましいのは、オークモス油、グァヤク油、ケード油、バーチ油、ラブダナム油、パチョリ油、1-メチル-3,4-ジオキシ(シクロアセトニル)ベンゼン、2,4-ジメチル-4-フェニルテトラヒドロフラン、3-フェニルプロピオンアルデヒド、6-メトキシ ジシクロペンタジエン カルボキシアルデヒド、7〜10-ウンデセナールの混合物(商品名=インタレーベンアルデヒド/アイエフエフ社)、インドール、オクタナール、デカナール、ノナナール、メチル 2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチルベンゾエート、シダー葉油、バジル油、2-ペンチル-3-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、4-(4-メトキシフェニル)-2-ブタノン、6/7-エチリデンオクタヒドロ-5,8-メタノ-(2H)-1-ベンゾピラン-2-オン、γ-ノナラクトン、アセトフェノン、アニスアルデヒド、アンスラニル酸メチル、クマリン、チモール、メチルアンスラニル酸メチルである。
【0016】
上記の高残香性香料素材において、油と記載した天然精油類は、オイルの他にアブソリュート、コンクリート、レジノイドなどの形状のものでもよい。
【0017】
高残香性柔軟剤用香料組成物を得る為には、上記より選ばれる1種以上の香料素材を、調合香料中に1〜60質量%で配合することが望ましい。
また、より経済的に充分な強さの残香を賦与できる点から、調合香料中に上記の高残香性香料素材を1〜45質量%で配合することが好ましく、さらに、柔軟剤として相応しい、やわらかい印象の香りや、清潔な印象の香りを賦与することができる点から、15〜45質量%で配合することが特に好ましい。
調合香料中には、溶剤や希釈剤を用いることがあるが、本発明において高残香性香料素材の配合量は全て、これらの溶剤、希釈剤を除いた、調合香料中の質量比とする。
【0018】
溶剤、希釈剤の例としては、安息香酸ベンジル、エタノール、エチレングリコール、クエン酸トリエチル、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル等が挙げられる。
【0019】
本発明おける43種の高残香性香料素材は、香りのキャラクターにより以下の2つのグループに分けられる。
(A)群とする香料素材は、木や、苔や、麝香の香り、アルデヒド様、グリーン様など、官能的には、ドライやフレッシュな印象を与える香りである。
(A)群の素材としては、オークモス油、グァヤク油、ケード油、バーチ油、パチョリ油、ラブダナム油、1-メチル-3,4-ジオキシ(シクロアセトニル)ベンゼン、2-(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセニル)-5-メチル-5-(1-メチルプロピル)-1,3-ジオキサン、2,4-ジメチル-4-フェニルテトラヒドロフラン、3-イソカンフィルシクロヘクサノールの異性体混合物(商品名=カンダルム/ロン・プーラン社)、3,3,5,5-テトラメチル-4-(1-エトキシビニル)シクロヘキサノン、3,7-ジメチル-2(3),6-ノナジエンニトリル、6-メトキシ ジシクロペンタジエン カルボキシアルデヒド、7〜10-ウンデセナールの混合物(商品名=インタレーベンアルデヒド/アイエフエフ社)、9-シクロヘキサデセノリド(商品名=セントライド シナローム社)、インドール、オクタナール、クミニルニトリル、デカナール、ノナナール、ヒドロキシシトロネラールとインドールのシッフベース、メチル 2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチルベンゾエート、メチルオクチルアセトアルデヒドが挙げられる。
【0020】
好ましくは、オークモス油、グァヤク油、ケード油、バーチ油、ラブダナム油、パチョリ油、1-メチル-3,4-ジオキシ(シクロアセトニル)ベンゼン、2,4-ジメチル-4-フェニルテトラヒドロフラン、3-フェニルプロピオンアルデヒド、6-メトキシ ジシクロペンタジエン カルボキシアルデヒド、7〜10-ウンデセナールの混合物(商品名=インタレーベンアルデヒド/アイエフエフ社)、インドール、オクタナール、デカナール、ノナナール、メチル 2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチルベンゾエートである。
【0021】
(B)群とする香料素材は、花の香りや、フルーツの香り、バルサム様など、甘い香りである。
(B)群の素材としてはシダー葉油、バジル油、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、2-ペンチル-3-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、3-フェニルプロピオンアルデヒド、4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、4-(4-メトキシフェニル)-2-ブタノン、6/7-エチリデンオクタヒドロ-5,8-メタノ-(2H)-1-ベンゾピラン-2-オン、γ-ノナラクトン、アセトフェノン、アニスアルデヒド、アンスラニル酸メチル、アンスラニル酸メチルと2-メチル-3-(4-メトキシフェニル)プロパナールのシッフベース、アンスラニル酸メチルと2-メチルペンタナールのシッフベース、アンスラニル酸メチルと4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒドのシッフベース、アンスラニル酸メチルとデカナールのシッフベース、アンスラニル酸メチルとメチルノニルアセトアルデヒドのシッフベース、クマリン、チモール、メチルアンスラニル酸メチルが挙げられる。
【0022】
好ましくは,シダー葉油、バジル油、2-ペンチル-3-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、4-(4-メトキシフェニル)-2-ブタノン、6/7-エチリデンオクタヒドロ-5,8-メタノ-(2H)-1-ベンゾピラン-2-オン、γ-ノナラクトン、アセトフェノン、アニスアルデヒド、アンスラニル酸メチル、クマリン、チモール、メチルアンスラニル酸メチルである。
【0023】
(A)群の高残香性香料素材は、清潔な印象の香りを柔軟剤組成物に賦与し、洗濯した衣類の清潔なイメージを表現することができる。また、(B)群の高残香性香料素材は、やわらかい印象を柔軟剤組成物に賦与し、柔軟剤の製品特徴である、衣類を柔らかくする効果に相応しい香りを表現することができる。
さらに、(A)群及び(B)群の両方から1種以上の香料素材を選択し、組み合わせて配合することで、高い持続性を有すると同時に、消費者が柔軟剤に期待するような、やわらかい印象と清潔な印象を併せ持つ香りの柔軟剤組成物を提供することができる。
【0024】
(A)群と(B)群の素材の比率は、その素材の香りの強さに応じて調整することができ、(A)群と(B)群の合計配合量が、調合香料中1〜60質量%であることが望ましい。
さらに好ましくは、経済的に洗濯後の衣類に充分な香りの強さを賦与することができるため、(A)群と(B)群の合計配合量が、調合香料中1〜45質量%となる様に組み合わせる。特に好ましくは、柔軟剤として相応しい香りの質感まで賦与することができるため、(A)群と(B)群の合計が、15〜45質量%となる様に組み合わせる。
【0025】
また、本発明は、上記した高残香性柔軟剤用香料組成物と共に、柔軟剤成分(C)として、下記式(1)、若しくは(2)、若しくは(3)、若しくは(4)で表わされる化合物の酸中和物、または下記式(1)、若しくは(2)、若しくは(3)、若しくは(4)で表わされる化合物の第4級化物、または下記式(5)で表わされる4級アンモニウム塩よりなる群から選ばれる1種以上の化合物を含有する柔軟剤組成物を提供する。
【0026】
【化1】

【0027】
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。R2、R3は夫々独立して、−COO−結合又は−CONH−結合で中断していてもよい、直鎖又は分岐鎖の炭素数12〜32のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【0028】
【化2】

【0029】
(式中、R4、R5は夫々独立して、炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。R6、R7は夫々独立して、直鎖又は分岐鎖の炭素数12〜32のアルキル基又はアルケニル基を示す。aは1〜10の数を示す。)
【0030】
【化3】

【0031】
(式中、R8は−COO−結合又は−CONH−結合で中断していてもよい、直鎖又は分岐鎖の炭素数12〜32のアルキル基又はアルケニル基を示す。R9は直鎖又は分岐鎖の炭素数11〜31のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【0032】
【化4】

【0033】
(式中、R12は炭素数13〜36のアルキル基又はアルケニル基、R13は炭素数1〜6のアルキレン基を示す。R14、R15は夫々独立した、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基、Aは−COO−、−OCO−、−CONH−及び−NHCO−から選ばれる基を示す。dは0又は1の数を示す。)
【0034】
【化5】

【0035】
(式中、R16は炭素数13〜36のアルキル基又はアルケニル基、R17は、炭素数1〜6のアルキレン基を示す。R18、R19、及びR20は夫々独立した、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。Bは−COO−、−OCO−、−CONH−及び−NHCO−から選ばれる基を示す。eは0又は1の数、Y-は陰イオン基を示す。)
【0036】
式(1)で表される(C)成分の中で好ましいものとしては、下記式(1−a)乃至(1−d)、で表わされる化合物の酸中和物及び、該化合物の第4級化物が挙げられる。
【0037】
【化6】

【0038】
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。R10、R11は夫々独立して、直鎖又は分岐鎖の炭素数11〜22のアルキル基又はアルケニル基を示す。b、c:夫々独立して、1〜10の数を示す。)
【0039】
【化7】

【0040】
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。R10、R11は夫々独立して、直鎖又は分岐鎖の炭素数11〜22のアルキル基又はアルケニル基を示す。b、cは夫々独立して、1〜10の数を示す。)
【0041】
【化8】

【0042】
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。R10、R11は夫々独立して、直鎖又は分岐鎖の炭素数11〜22のアルキル基又はアルケニル基を示す。b、cは夫々独立して、1〜10の数を示す。)
【0043】
【化9】

【0044】
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。R10、R11は夫々独立して、直鎖又は分岐鎖の炭素数11〜22のアルキル基又はアルケニル基を示す。b、cは夫々独立して、1〜10の数を示す。)
【0045】
また、式(4)で表される(C)成分の中で好ましい化合物としては、下記式(4−a)及び(4−b)で表される化合物の酸中和物及び、該化合物の第4級化物が挙げられる。
【0046】
【化10】

【0047】
【化11】

【0048】
(式中、R21は炭素数13〜35、好ましくは15〜23のアルキル基又はアルケニル基であり、fは2又は3の数である。R22及びR23は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基又はヒドロキシエチル基、好ましくはメチル基又はヒドロキシエチル基である)。
【0049】
式(4−a)又は(4−b)で表される化合物は、例えば、R21−COOHで表される脂肪酸又はそのアルキル(炭素数1〜5)エステルもしくは酸クロリドと、N−ヒドロキシアルキル−N,N−ジアルキルアミン又はN−アミノアルキル−N,N−ジアルキルアミンとを反応させることで、容易に合成することができ、R21は単独のアルキル基でもよく、混合アルキル基でもよい。
【0050】
式(5)で表される(C)成分の中で好ましい化合物として、下記式(5−a)及び下記式(5−b)で表される4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0051】
【化12】

【0052】
【化13】

【0053】
(式中、R24は炭素数13〜35、好ましくは15〜23のアルキル基又はアルケニル基であり、gは2又は3の数であり、R25、R26及びR27は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基又はヒドロキシエチル基、好ましくはメチル基又はヒドロキシエチル基である。Y-は陰イオン基、好ましくはハロゲンイオン、硫酸イオン、リン酸イオン、炭素数1〜3のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数1〜12の脂肪酸イオン、炭素数1〜3のアルキル基で置換されていても良いアリールスルホン酸イオンから選ばれる1種以上である。)
【0054】
(C)成分の配合量は、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは2〜40質量%、特に好ましくは2〜35質量%である。前記(C)成分のアルキル基またはアルケニル基は、例えば、硬化牛脂脂肪酸、パームステアリン酸、オレイン酸、牛脂脂肪酸、未硬化パーム油由来脂肪酸、ステアリン酸、ラウリン酸、大豆脂肪酸由来の脂肪酸よりカルボキシル基を除いたアルキル基またはアルケニル基である。
【0055】
上記の式(1)、(2)、(3)、(4)で表される(C)成分は、無機酸又は有機酸の中和物として使用することができ、この酸成分として塩酸、硝酸、リン酸、硫酸等の無機酸や、酢酸、乳酸、グリコール酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、プロピオン酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、リンゴ酸、クロトン酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸、ポリアクリル酸等の有機酸、または、炭酸数1〜12の有機酸が挙げられる。好ましいのは、塩酸、硫酸、グリコール酸である。
また、中和物を得るためには、アミン化合物を予め酸成分により中和したものを水に分散させてもよいし、酸成分水溶液中にアミン化合物を液状又は固体状で投入してもよい。或いはアミン化合物と酸成分を同時に水に投入してもよい。中和に用いるこれらの酸は、単独で用いても複数で用いてもよい。
【0056】
また、上記の式(1)、(2)、(3)、(4)で表される(C)成分は、第4級化物として使用することができ、第4級化剤として塩化メチル、ヨウ化メチル、ジアルキル(炭素数1〜3)硫酸等が使用できる。第4級化方法は従来公知の方法にて行うことができる。
【0057】
本発明の柔軟剤組成物には、さらに、繊維製品の柔軟効果や風合いを向上させる目的で陰イオン界面活性剤、中でも脂肪酸またはその塩類を配合することが好ましい。具体的には炭素数12〜36、好ましくは14〜24、より好ましくは14〜20の飽和又は不飽和の脂肪酸又はその塩が挙げられる。
脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミンチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、あるいはその混合物であり、特にラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸から選ばれる1種以上が良好である。またパーム油、牛脂から誘導されるアルキル組成を有する脂肪酸も好ましい。
塩を用いる場合は、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アルカノールアミン塩が好ましく、特に貯蔵安定性からナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。この脂肪酸またはその塩の配合量は、柔軟剤組成物中0.01〜5質量%、特に0.05〜3質量%が好ましい。
【0058】
また、本発明の柔軟剤組成物には、貯蔵安定性の点から、さらに非イオン界面活性剤を配合してもよい。非イオン界面活性剤としては炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく、特に下記式(6)で表される非イオン界面活性剤が好ましい。
【0059】
36−U−[(R37O)i−H]j 式(6)
【0060】
(式中、R36は炭素数10〜18、好ましくは12〜18のアルキル基又はアルケニル基であり、R37は炭素数2又は3のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基である。iは2〜100、好ましくは5〜80、特に好ましくは10〜60の数を示す。Uは−O−、−CON<又は−N<であり、Uが−O−の場合、jは1であり、Uが−CON<又は−N<の場合、jは2である。)
【0061】
式(6)で表される化合物の具体例として、下記式(7)〜(10)で表される化合物を挙げることができる。
【0062】
36−O−(C24O)−H 式(7)
【0063】
(式中、R36は前記の意味を示す。kは8〜100、好ましくは10〜60の数である。)
【0064】
36−O−(C24O)−(C36O)−H 式(8)
【0065】
(式中、R36は前記の意味を示す。l及びmはそれぞれ独立に2〜40、好ましくは5〜40の数であり、エチレンオキシド(以下、EOと表記する)とプロピレンオキシド(以下、POと表記する)はランダムあるいはブロック付加体であってもよい。)
【0066】
【化14】

【0067】
(式中、R36は前記の意味を示す。n、o、p及びqはそれぞれ独立に0〜40、好ましくは5〜40の数であり、n+o+p+qは5〜60、好ましくは5〜40の数である。EOとPOはランダムあるいはブロック付加体であってもよい。)
【0068】
これらの非イオン界面活性剤の配合量は、柔軟剤組成物の安定性の点から、柔軟剤組成物中0.5〜10質量%、特に1〜8質量%が好ましい。
【0069】
柔軟剤組成物には、長期保存安定性を向上し、柔軟性能低下を抑制するため、多価アルコールの脂肪酸エステルをさらに配合することができる。多価アルコールの脂肪酸エステルとしては、好ましくは糖エステル、エチレングリコールエステル、ペンタエリスリトールエステル、グリセリンエステル等が例示される。この場合において、エステルを構成する脂肪酸は、例えば、硬化牛脂脂肪酸、パームステアリン酸、オレイン酸、牛脂脂肪酸、未硬化パーム油由来脂肪酸、ステアリン酸、ラウリン酸、大豆脂肪酸由来の脂肪酸が使用される。
【0070】
多価アルコールの脂肪酸エステルとして好ましい例は、エチレングリコールステアレート、炭素数12〜22の飽和及び不飽和脂肪酸のモノ−、ジ−、及びトリグリセリド、ペンタエリスリトールステアレート、ソルビタンモノ−、ジ−、及びトリエステルである(ただし、ソルビタンエステル中のアシル基は炭素数12〜22個を有する)。また、ポリグリセリドやソルビタンエステルのエチレンオキシド(5〜50モル)付加物などが挙げられる。
【0071】
多価アルコールの脂肪酸エステル成分の配合量は組成物中0〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%、特に好ましくは0.1〜1質量%である。
【0072】
さらに、柔軟剤組成物にジメチルポリシロキサン、部分的にアミノ基又はポリオキシアルキレン基で変性されたジメチルポリシロキサン等のシリコーン化合物、特に好ましくは部分的にポリオキシアルキレン基で変性されたジメチルポリシロキサンを配合することにより、吸水性能を損なうことなく、柔軟処理された衣料の肌触りを改良できる。
【0073】
これらのシリコーン化合物は、柔軟剤組成物に対し0.3〜0.5質量%配合するのが好ましい。
【0074】
柔軟剤組成物には、さらに柔軟効果及び風合いを向上させるために、炭素数8〜36、好ましくは14〜36のアルキル基又はアルケニル基等の炭化水素基と、−SO3M基及び/又は−OSO3M基[M:対イオン]とを分子中に有する陰イオン性界面活性剤を配合してもよい。具体的にはアルキル基又はアルケニル基が上記炭素数を有するアルキルベンゼンスルホン酸、アルキル(又はアルケニル)硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸エステル、オレフィンスルホン酸、アルカンスルホン酸、α−スルホ脂肪酸、α−スルホ脂肪酸エステル及びこれらの塩が好ましい。これらの中でも特に炭素数14〜26のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル(又はアルケニル)硫酸エステル、炭素数14〜26アルキル基又はアルケニル基を有し、EO平均付加モル数が1〜6、好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜3であるポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸エステルおよびこれらの塩から選ばれる1種以上が好ましい。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩が貯蔵安定性の点から良好である。
【0075】
上記陰イオン性界面活性剤の柔軟剤組成物への配合量は、好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは1〜25質量%、特に好ましくは2〜20質量%含有することが柔軟効果及び風合いの点から好ましい。
【0076】
柔軟剤組成物には、無機塩を含有することができる。無機塩としては塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種が貯蔵安定性の点から好ましく、組成物中0〜1000ppm、好ましくは10〜500ppm配合することが良好である。但し、脂肪酸塩類等の界面活性剤にはナトリウム塩やカリウム塩が含まれているが、このような界面活性剤の使用によって組成物に混入する無機塩は上記制限を受けるものではない。
【0077】
柔軟剤組成物には、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールから選ばれる溶剤を配合してもよい。組成物中に0〜20質量%、特に0.5〜10質量%配合することができる。なお、エタノールを使用する場合は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩変性エタノールや8−アセチル化蔗糖変性エタノールを使用することが望ましい。
【0078】
柔軟剤組成物には、貯蔵後の色や匂いを改善するため、通常知られている金属封鎖剤や酸化防止剤を配合しても差し支えない。金属封鎖剤としてはエチレンジアミン四酢酸塩、ジエチレントリアミン五酢酸塩等に代表されるアミノカルボン酸類、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩に代表される無機リン化合物、1−ヒドロキシエタン−1、1−ジホスホン酸塩やポリホスホン酸類、フィチン酸に代表される有機リン酸類を挙げることができ、酸化防止剤としては2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール及び2(3)−ブチル−4−オキシアニソール等が挙げられる。これらは酸でも塩として配合してもよい。これら金属封鎖剤及び酸化防止剤は、本発明の柔軟剤組成物中に、(C)成分に対して0.1〜1000ppmの範囲で配合される。
【0079】
柔軟剤組成物には、柔軟仕上げ基剤として既知の非イオン或いはカチオン化合物、長鎖アルコール等を併用しても良い。また、製品の外観のために顔料又は染料を、仕上がりの白さのために蛍光増白剤を、或いは製造時及び輸送時やハンドリング時の消泡のためにシリコーンなどの消泡剤を配合することもできる。
【0080】
柔軟剤組成物には、透明な柔軟剤にするためにlogPが−2.0〜3.0の有機溶剤を配合してもよい。さらに、好ましくはlogPが0.5〜3.0、更に好ましくは1.0〜1.9の有機溶剤を用いることが柔軟剤組成物の外観及び貯蔵安定性の点から好ましい。ここで好ましい外観とは、柔軟剤組成物の均一な分散状態又は透明な状態を言い、本発明では特に審美的に好ましい透明な状態を言う。
【0081】
また、logPとは、有機化合物の水と1−オクタノールに対する親和性を示す係数であり、1−オクタノール/水の分配係数Pは、1−オクタノールと水の2液相の溶媒に、微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPの形で示すのが一般的である。多くの化合物のlogP値が報告され、Daylight Chemical Information Systems, Inc. (Daylight CIS)などから入手しうるデータベースには多くの値が掲載されているので参照できる。
【0082】
実測のlogP値が無い場合には、Daylight CISから入手できるプログラム”CLOGP”で計算すると最も便利である。このプログラムは、実測のlogP値がある場合にはそれと共にHansch Leoのフラグメントアプローチにより算出される“計算logP(ClogP)”の値を出力する。フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している(cf. A. Leo Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4 C.Hansch、P.G. Sammens, J.B Taylor and C.A. Ramsden, Eds., P.295, Pergamon Press, 1990)。
【0083】
このClogP値は現在最も汎用的で信頼できる推定値であるので、化合物の選択に際して実測のlogP値の代わりに用いることができる。本発明では、logPの実測値があればそれを、無い場合にはプログラムCLOGP v4.01により計算したClogP値を用いる。このようなlogPを有する有機溶剤としては、下記式(11)、式(12)及び式(13)で表される化合物が好適である。
28−OH 式(11)
(式中、R28は、炭素数4〜8の炭化水素基、好ましくはアルキル基、アリール基、又はアリールアルキル基である。)
【0084】
29−(O−R30)h−O−R31 (12)
【0085】
(式中、R29及びR31はそれぞれ独立に、水素原子、R32CO−(R32は炭素数1〜3のアルキル基)で示される基、炭素数1〜7の炭化水素基、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基またはアリールアルキル基であり、R30は炭素数2〜9の分岐鎖を有していてもよいアルキレン基である。hは1〜5の数である。)
【0086】
33−O−CH2CH(O−R34)CH2−O−R35 (13)
【0087】
(式中、R33は、炭素数3〜8のアルキル基であり、R34、R35は水素原子又はヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基である。)
【0088】
より具体的に、好ましい有機溶剤としては、n−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、フェノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、テトラエチレングリコールモノフェニルエーテル、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ノナン−1,6−ジオール、ノナン−1,9−ジオール、2−メチルオクタン−1,8−ジオールが挙げられる。
【0089】
また、その他の有機溶剤として、2−ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、2−(2−メチル)プロポキシエタノール、ジエチレングリコールモノ−2−メチルプロピルエーテル、2−プロポキシ−1−プロパノール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、2−ブトキシ−1−プロパノール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、2−t−ブトキシ−1−プロパノール、2−フェノキシ−1−プロパノール、2−エトキシプロピル−1−アセテートが挙げられる。
【0090】
さらに、有機溶剤として、2−プロポキシプロピル−1−アセテート、1,2−ジアセトオキシプロパン、3−ジメチル−3−メトキシ−1−プロパノール、1,3−ジメチルブチルグリセリルエーテル、ペンチルグリセリルエーテル、ヘキシルグリセリルエーテル、1,2−ヘキサンジオール、1、2−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1.5−ヘキサンジオール又は2,4−ジメチル2,4−ペンタンジオールを挙げることができる。
有機溶剤は柔軟剤組成物中、0.5〜40質量%、更に好ましくは1〜35質量%、特に好ましくは5〜30質量%含有することができる。
【0091】
柔軟剤組成物は、水で希釈した水溶液の形態であり、使用する水は蒸留水又はイオン交換水が好ましい。貯蔵安定性の点で、水は柔軟剤組成物中に30〜95質量%、好ましくは50〜95質量%配合される。
さらに、本発明の柔軟剤組成物は、貯蔵安定性の点から、組成物の20℃におけるpHを1〜8、更に2〜7、特に2〜6に調整することが好ましい。
【0092】
前記香料組成物と(C)成分を含む本発明の柔軟剤組成物の製造方法としては、水に、必要に応じて、非イオン界面活性剤及びエタノール、イソプロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールから選ばれる溶剤を溶解させ、40〜70℃、好ましくは45〜65℃に加熱昇温し、その後(C)成分、必要に応じて陰イオン界面活性剤、logPが−2.0〜3.0の有機溶剤、炭素数12〜36の飽和又は不飽和脂肪酸またはその塩、無機塩及び炭素数12〜22の飽和または不飽和脂肪酸と多価アルコールとのエステル化合物を添加して撹拌混合し、酸で所定のpHに調整し、香料を配合し、冷却した後にその他の成分を添加する方法が貯蔵安定性の点から好ましい。また、炭素数12〜36の飽和又は不飽和脂肪酸またはその塩を配合する時は、あらかじめ(C)成分と混合しておくことが好ましい。
【実施例】
【0093】
(組成物の調製)
<香料組成物の調製方法>
表1及び表2に示す成分(A)、成分(B)及びその他の香料成分を混合して、実施例1〜8及び比較例1〜2の香料組成物とした。試料が粉末あるいは粘度の高いものである場合は、適宜熱を加えて溶解させた。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
<柔軟剤の調製方法>
表3〜表5に示す組成の実施例及び比較例の柔軟剤を調製した。その中で、表1及び表2に示す香料組成物を、表3〜表5に示す量で柔軟剤に配合した。
【0097】
具体的には、300mLビーカーに、柔軟剤組成物の出来あがり質量が200gになるのに必要な量の90%相当量のイオン交換水を入れ、ウォーターバスで60℃に昇温した。1つの羽根の長さが2cm、幅0.8cmの攪拌羽根が、傾斜角度45℃で3枚ついたタービン型の攪拌羽根で攪拌しながら(200r/min)、所要量のエタノールを添加し、次に加熱溶融させた(C)成分を添加した。また、ゲルベ型アルキル(C24)硫酸エステルナトリウム(2−デシルテトラデシル硫酸エステルナトリウム)を添加する場合は(C)成分と同時に添加した。塩化カルシウムまたは塩化ナトリウムを添加する場合には(C)成分を添加した後に添加した。また、脂肪酸を添加する場合には、予め(C)成分と加熱溶融した状態で混合し、均一な溶融液を調製して添加した。そのまま5分間攪拌後、10%塩酸水溶液と10%水酸化ナトリウム水溶液で所定のpHに調整した。次に出来あがり質量にするのに必要な量の60℃のイオン交換水を添加した。その後、香料組成物を添加し、10分間攪拌し、5℃の水を入れたウォーターバスにビーカーを移し、攪拌しながら(80r/min)30℃まで冷却した。
【0098】
【表3】

【0099】
【表4】

【0100】
【表5】

【0101】
(評価)
各実施例及び比較例で得られた組成物について、下記の手順により、衣類に残った香りの強さと印象を評価した。評価結果は表6に示す。
【0102】
【表6】

【0103】
<評価方法>
1.柔軟剤組成物で処理し脱水した後の濡れた衣類に残った香りの評価
新品のブラウス(アクリル60%、ポリエステル20%、ナイロン20%)3枚、バスタオル(綿100%)2枚を市販の弱アルカリ洗剤(花王(株)アタック)を用いて洗濯機で洗浄した(東芝製2槽式洗濯機VH-360S1、洗剤濃度0.0667質量%、水道水30L使用、水温20℃、10分間)。その後、洗浄液を排水し、3分間脱水後、30Lの水道水を注入して5分間すすぎを行い、排水後3分間脱水を行った。その後、再度30Lの水道水を注入し、同様にすすぎ及び脱水を行った。この操作をもう一度繰り返した後、第2表に示す配合の柔軟剤組成物を添加し、5分間攪拌した。柔軟剤の添加量は、実施例10〜17、比較例50、51は20ml、その他の実施例および比較例は、7mlとした。その後、脱水し、濡れた衣類の香りの強さを10人の専門パネラーで評価した。
以下に示す評価基準で評価を行い、10人の評価点の平均値でランク分けした。
かなり強く匂う : 5
強く匂う : 4
あきらかに匂う : 3
かすかに匂う : 2
ごくわずかに匂う: 1
匂わない : 0
10人の評価点の平均値が4以上の場合を「◎」、3以上4未満の場合を「○」、2以上3未満の場合を「△」、2未満を「×」とした。
【0104】
2.柔軟剤組成物で処理し、脱水後、干して乾燥した衣類に残った香りの強さの評価
上記の評価方法1において柔軟剤で処理した衣類を、自然乾燥させた。その乾燥した衣類の香りを10人の専門パネラーで評価した。
以下に示す評価基準で評価を行い、10人の評価点の平均値でランク分けした。
かなり強く匂う : 5
強く匂う : 4
あきらかに匂う : 3
かすかに匂う : 2
ごくわずかに匂う: 1
匂わない : 0
10人の評価点の平均値が4以上の場合を「◎」、3以上4未満の場合を「○」、2以上3未満の場合を「△」、2未満を「×」とした。
【0105】
3.柔軟剤組成物で処理し、脱水した後干して乾燥した衣類に残った香りの印象(やわらかい香り)の評価
上記の評価方法2において乾燥した衣類の香りの質を、10人の専門パネラーで評価した。
以下に示す評価基準で評価を行い、10人の評価点の平均値でランク分けした。
柔軟剤らしいやわらかさがある : 2
柔軟剤らしいやわらかさがややある : 1
柔軟剤らしいやわらかさは無い : 0
10人の評価の平均値が1.5以上の場合を「◎」、1.0以上1.5未満を「○」、1.0未満を「×」とした。
【0106】
4.柔軟剤組成物で処理し、脱水した後干して乾燥した衣類に残った香りの印象(清潔な香り)の評価
上記の評価方法2において、乾燥した衣類の香りの質を、10人の専門パネラーで評価した。
以下に示す評価基準で評価を行い、10人の評価点の平均値でランク分けした。
柔軟剤らしい清潔感がある : 2
柔軟剤らしい清潔感がややある : 1
柔軟剤らしい清潔感は無い : 0
10人の評価の平均値が1.5以上の場合を「◎」、1.0以上1.5未満を「○」、1.0未満を「×」とした。
【0107】
<評価の結果>
実施例10〜41は、いずれも脱水布における残香性が優れていた。特に実施例10、14、15、18、22、23、26、30、31、34、38、39は、乾燥布における残香性の強さまで特に優れている。また(A)群の素材のみ使用した、実施例12、20、28、36は乾燥布における香りの印象で、特に優れた清潔感を有し、(B)群の素材のみ使用した、実施例13、21、29、37は、乾燥布における香りの印象で、やわらかさを特に強く賦与した。そして(A)群と(B)群を併用している実施例10、11、14、15、16、17、18、19、22、23、24、25、26、27、30、31、32、33、34、35、38、39、40、41は、柔軟剤に求められる香りの印象である、やわらかさと清潔感を特に強く有した。
【0108】
一方、比較例50〜57は、脱水布まではいくらかの香りを感じるが、乾燥後は香りが弱く、実施例と比較して残香性は明らかに劣る結果であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)群と(B)群から選ばれる、それぞれ1種以上の香料素材を含有する高残香性柔軟剤用香料組成物:
(A)群素材
オークモス油、1‐メチル‐3,4‐ジオキシ(シクロアセトニル)ベンゼン、2‐(2,4‐ジメチル‐3‐シクロヘキセニル)‐5‐メチル‐5‐(1‐メチルプロピル)‐1,3‐ジオキサン、2,4‐ジメチル‐4‐フェニルテトラヒドロフラン、3‐イソカンフィルシクロヘクサノールの異性体混合物、3,3,5,5‐テトラメチル‐4‐(1‐エトキシビニル)シクロヘキサノン、メチル 2,4‐ジヒドロキシ‐3,6‐ジメチルベンゾエート
(B)群素材
4‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐2‐ブタノン、4‐(4‐メトキシフェニル)‐2‐ブタノン、アニスアルデヒド、アンスラニル酸メチル、アンスラニル酸メチルと4‐(4‐ヒドロキシ‐4‐メチルペンチル)‐3‐シクロヘキセン‐1‐カルボキシアルデヒドのシッフベース。
【請求項2】
請求項1に記載の高残香性柔軟剤用香料組成物及び、柔軟剤成分(C)として下記式(1)、若しくは(2)、若しくは(3)、若しくは(4)で表わされる化合物の酸中和物、または下記式(1)、若しくは(2)、若しくは(3)、若しくは(4)で表わされる化合物の第4級化物、または下記式(5)で表わされる4級アンモニウム塩よりなる群から選ばれる1種以上の化合物を含有する柔軟剤組成物。
【化1】

(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。R2、R3は夫々独立して、−COO−結合又は−CONH−結合で中断していてもよい、直鎖又は分岐鎖の炭素数12〜32のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【化2】

(式中、R4及びR5は夫々独立して、炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。R6及びR7は夫々独立して、直鎖又は分岐鎖の炭素数12〜32のアルキル基又はアルケニル基を示す。aは1〜10の数を示す。)
【化3】

(式中、R8は−COO−結合又は−CONH−結合で中断していてもよい、直鎖又は分岐鎖の炭素数12〜32のアルキル基又はアルケニル基を示す。R9は直鎖又は分岐鎖の炭素数11〜31のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【化4】

(式中、R12は炭素数13〜36のアルキル基又はアルケニル基、R13は炭素数1〜6のアルキレン基であり、R14、R15は夫々独立して、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。Aは−COO−、−OCO−、−CONH−及び−NHCO−から選ばれる基を示し、dは0又は1の数を示す。)
【化5】

(式中、R16は炭素数13〜36のアルキル基又はアルケニル基、R17は、炭素数1〜6のアルキレン基を示す。R18、R19、及びR20は夫々独立して、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。Bは−COO−、−OCO−、−CONH−及び−NHCO−から選ばれる基であり、eは0又は1の数であり、Yは陰イオン基である。)

【公開番号】特開2009−41035(P2009−41035A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259759(P2008−259759)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【分割の表示】特願2002−382631(P2002−382631)の分割
【原出願日】平成14年12月27日(2002.12.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】