説明

柔軟性の成形又は押出製品及びそれらを製造するための半導電性化合物(関連出願の相互参照)本願は、参照によりその内容が全体として本明細書に組み込まれる2009年9月22日に出願された米国特許仮出願第61/244,618号明細書の利益を主張するものである。

成形又は押出製品、例えば電気部品又は遮蔽ケーブルは、少なくとも1つの絶縁層及び少なくとも1つの半導電性層を含み、前記半導電性層は厚く、重量%で:A.1〜30重量%の導電性充填剤;B.10〜90重量%の非オレフィンエラストマー;C.10〜90重量%のオレフィンエラストマー;及びD.任意で、0.5〜2.5重量%の過酸化物を含んでいる。カーボンブラック及び/又は金属粒子又は粉末は、典型的には、充填剤、非オレフィンエラストマーであるシリコーンまたはウレタンゴム、及びオレフィンエラストマーであるEPR若しくはEPDMを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性の成形又は押出しプラスチック製品に関する。1つの実施形態では、本発明は、半導電性で柔軟性の成形又は押出しプラスチック製品に関するが、又別の態様では、本発明は当該製品を製造するための方法に関する。さらに又別の態様では、本発明は、導電性カーボンブラックと異なるエラストマー化合物のブレンドとの混合物を含む1つ又はそれ以上の成分を含む当該製品に関する。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルのコネクター用途における所望の機能は、容易な架設のためのコネクターの柔軟性である。これは特に、工場で事前延伸されていない、及びケーブル接続への湿気侵入(電気的故障を引き起こす)を防止するために密接な適合が必要とされるいわゆる事前成形「スリップオン」コネクターのために重要である。
【0003】
これらのコネクターは、一般には内側半導電性層、より厚い絶縁層及び部品の全体を被覆する外側半導電性層を含んでいる。半導電性層の導電性の所望レベルは、材料の体積抵抗率によって測定され、このタイプの用途のためには1,000Ω/cm(Ω−cm)未満(<)及び好ましくは<500Ωcmである。好ましくは、体積抵抗率は、ケーブル作動条件(一般には0〜95℃)下で安定性である。
【0004】
エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)をベースとする材料から製造された典型的な部品については、必要とされる体積抵抗率を達成するために必要とされる導電性カーボンブラックの量は、一般には30質量%(wt%)より多い(>)。これは、浸透限界として公知である。カーボンブラックは補強材として作用するので、このレベルの導電性充填剤のレベルは、材料の柔軟性を該半導電性層が絶縁層と比較してはるかに堅いポイントまで大きく低下させることができる。すなわち、完成成形部品の柔軟性は、外側及び内側半導電性層のより高度の硬さのために重大に損なわれる。
【0005】
柔軟性を改善するための可塑化用オイル及びろうを使用する処方アプローチは文献において公知であるが、一般には範囲及び教示が限定されている。そこで、部品全体の柔軟性を改善させ、それでも尚該ケーブルの所望の体積抵抗率をその予想作動条件で維持するために、半導電性層の柔軟性を改善するための工学技術の必要が存在する。1つのアプローチは、非ポリオレフィンをベースとする樹脂、例えば半導体化合物のためのシリコーンゴムの使用である。そのような工学技術は存在し、例えば、いわゆるコールドシュリンク(cold shrink)コネクターにおいて使用されている。しかし、これらの材料のコストは、ポリオレフィンをベースとする化合物のコストに比較して有意に高い。さらに、シリコーンゴムの引裂強度は、一般にポリオレフィンゴム材料の引裂強度と比較して低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1つの実施形態では、本発明は、少なくとも1つの絶縁層及び少なくとも1つの半導電性層を含む成形又は押出製品であって、該半導電性層は、重量%で:
A.1〜30重量%の導電性充填剤;
B.10〜90重量%の非オレフィンエラストマー;
C.10〜90重量%のオレフィンエラストマー;及び
D.任意で、0.5〜2.5重量%の過酸化物
を含む成形又は押出製品である。
1つの実施形態では、充填剤は、導電性カーボンブラック及び/又は金属微粒子又は粉末である。1つの実施形態では、非オレフィンエラストマーは、シリコーン及び/又はウレタンゴムである。1つの実施形態では、オレフィンエラストマーは、エチレン−プロピレンゴム及び/又はEPDMゴムである。
【0007】
1つの実施形態では、本発明は、半導電性層を含む射出成形製品である。1つの実施形態では、本発明は、内側及び外側(又は第1及び第2)半導電性層の間に挟まれた絶縁層であって、典型的には内側及び外側半導電性層の両方と直接接触している絶縁層を含む射出成形電気コネクターである。電気コネクターは、典型的には1,000Ω−cm未満、好ましくは500Ω−cm未満の体積抵抗率を有する。
【0008】
1つの実施形態では、本発明は、半導電性層を含む押出製品である。1つの実施形態では、本発明は、内側及び外側(又は第1及び第2)半導電性層の間に挟まれた絶縁層であって、典型的には内側及び外側半導電性層の両方と直接接触している絶縁層を含む柔軟性の遮蔽ケーブルである。電気コネクターは、典型的には1,000Ω−cm未満、好ましくは500Ω−cm未満の体積抵抗率を有する。
【0009】
1つの実施形態では、本発明は、重量%で:
A.1〜30重量%の導電性充填剤;
B.10〜90重量%の非オレフィンエラストマー;
C.10〜90重量%のオレフィンエラストマー;及び
D.任意で、0.5〜2.5重量%の過酸化物
を含む半導電性組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
状況又は当分野における慣習から相違する意味の記述がない限り、全ての部及び%は重量に基づき、全試験方法は本開示の出願時現在に最新である。米合衆国特許を実施するために、任意の参照した特許、特許出願又は刊行物の内容は、特に合成技術、用語の定義(本開示に詳細に提供した任意の用語の定義と矛盾しない程度まで)、及び当分野における一般的知識に関して、参照により全体として組み込まれる(又はそれと同等の米国版が同様に参照により組み込まれる)。
【0011】
本開示における数値範囲は近似値であり、特記がない限りその範囲の外側の数値も含むことができる。数値範囲には、下方値及び上方値を含むその間の全ての数値を1単位の増分で包含するが、ただし任意の下方値と任意の上方値との間は少なくとも2単位離れているものとする。1つの例として、組成、物理的又はその他の特性、例えば、分子量、粘度、メルトインデックスなどが100〜1,000である場合は、全ての個別値、例えば100、101、102など、及び部分範囲、例えば100〜144、155〜170、197〜200などは明示的に列挙されていると意図されている。1より小さい数値を含有する範囲又は1より大きい分数(例えば、1.1、1.5など)を含有する範囲については、1単位は、必要に応じて0.0001、0.001、0.01又は0.1であると見なされる。10より小さい単一桁数(例えば、1〜5)を含有する範囲については、1単位は、典型的には0.1であると見なされる。これらは、特に意図される例に過ぎず、列挙される最低値及び最高値の間の数値の全ての考えられる組み合わせは、本開示において明示的に記述されていると見なされるべきである。本開示内で提供される数値範囲は、特に、組成物の成分量及び組成物成分の様々な特性を表すものである。
【0012】
「ケーブル」及び類似の用語は、保護絶縁、ジャケット又はシース内の少なくとも1本のワイヤー又は光ファイバーを意味する。典型的には、ケーブルは、典型的には通常の保護絶縁、ジャケット又はシース内にあり、一緒に結合された2本又はそれ以上のワイヤー又は光ファイバーである。ジャケットの内側の個別ワイヤー又はファイバーは、裸、被覆又は絶縁であってよい。組み合わせケーブルは、電線及び光ファイバーの両方を含有していてよい。ケーブルなどは、低、中及び高電圧用途のために設計することができる。典型的なケーブル設計は、米国特許第5,246,783号明細書、第6,496,629号明細書及び第6,714,707号明細書に例示されている。
【0013】
「ポリマー」は、同一又は相違するいずれのタイプのモノマーを反応させる(即ち、重合させる)工程によって製造された化合物を意味する。そこで一般用語の「ポリマー」は、通常は、単一タイプのモノマーから製造されるポリマーを意味するために使用される用語「ホモポリマー」、及び以下で規定する用語「インターポリマー」を含んでいる。
【0014】
「インターポリマー」及び「コポリマー」は、少なくとも2つの相違するタイプのモノマーの重合によって製造されるポリマーを意味する。これらの一般用語には、従来のコポリマー、即ち2種類の相違するモノマーから製造されたポリマー、及び3種類以上の相違するモノマーから製造されたポリマー、例えばターポリマー、テトラポリマーなどの両方が包含される。
【0015】
「オレフィン」などの用語は、1つ又はそれ以上の二重結合を有する不飽和、脂肪族又は脂環式の置換又は未置換炭化水素を意味する。「置換オレフィン」は、該オレフィンの任意の炭素に結合した1つ又はそれ以上の水素原子が別の基、例えばハロゲン、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロ−シクロアルキル、置換ヘテロ−シクロアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシ、ホスフィド、アルコキシ、アミノ、チオ、ニトロ、又は、2つ又はそれ以上のそのような置換基の組み合わせによって置換される。
【0016】
「エラストマー」などの用語は、その原長の少なくとも2倍に伸長させることができ、伸長させる力が解放された際にほぼその原長へ極めて迅速に収縮するゴム状ポリマーを意味する。エラストマーは、約10,000psi(68.95MPa)又はそれ以下の弾性係数、及びASTM D638−72、欧州特許第274888号明細書の方法を使用して室温で未架橋状態で通常は200%より高い伸長率を有する。
【0017】
「オレフィンエラストマー」などの用語は、1つ又はそれ以上のオレフィンに由来する少なくとも50モル%(mol%)を含むエラストマーポリマーを意味する。
【0018】
「非オレフィンエラストマー」などの用語は、オレフィン以外のモノマーに由来する少なくとも50モル%を含有するエラストマーポリマーを意味する。
【0019】
「エチレンエラストマー」などの用語は、エチレンに由来する少なくとも50モル%を含むエラストマーポリマーを意味する。
【0020】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」などの用語は、2つ又はそれ以上のポリマーのブレンドを意味する。そのようなブレンドは、混和性であっても混和性でなくてもよい。そのようなブレンドは、相分離されていてもされていなくてもよい。そのようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱法、X線散乱法、及び当分野において公知の任意の他の方法から決定される1つ又はそれ以上のドメイン配置を含有していてもしていなくてもよい。
【0021】
「組成物」などの用語は、2つ又はそれ以上の成分の混合物又はブレンドを意味する。例えば、本発明の半導電性射出成形製品を製造する状況においては、組成物は、少なくとも1つの導電性充填剤、少なくとも1つの非オレフィンエラストマー、少なくとも1つのオレフィンエラストマー、及び少なくとも1つのフリーラジカル開始剤を包含することになる。
【0022】
「架橋結合した」、「硬化した」及び類似の用語は、ポリマーが、それが製品に成形される前又は後に、架橋結合を誘導する、及び40〜100重量%(即ち40重量%又はそれ以上のゲル含量)のキシレン又はデカレン抽出物を有する処理にかけられた、又は曝露させられたことを意味する。
【0023】
「架橋結合可能」、「硬化可能」などの用語は、ポリマーが、製品に成形される前又は後に、硬化又は架橋結合されず、実質的架橋結合を誘導した処理にかけられていない、又は曝露させられていないが、該ポリマーが、そのような処理にかけられる、又は曝露させられる(例、水への曝露)と実質的架橋結合を誘発する、促進する、又は可能にする添加物又は官能性を含むことを意味する。
【0024】
オレフィンエラストマー
本発明の実施において有用なオレフィンエラストマーには、ポリオレフィンホモポリマー及びインターポリマーの両方が包含される。ポリオレフィンホモポリマーの例は、エチレン及びプロピレンのホモポリマーである。ポリオレフィンインターポリマーの例は、エチレン/α−オレフィンインターポリマー及びプロピレン/α−オレフィンインターポリマーである。α−オレフィンは、好ましくはC3−20直鎖状、分枝状又は環式α−オレフィンである(プロピレン/α−オレフィンインターポリマーについては、エチレンはα−オレフィンであると考えられる)。C3−20α−オレフィンの例には、プロペン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、及び1−オクタデセンが包含される。α−オレフィンは、さらに又、α−オレフィン、例えば3−シクロヘキシル−1−プロペン(アリルシクロヘキサン)及びビニルシクロヘキサンを生じさせる環式構造、例えばシクロヘキサン又はシクロペンタンを含有することができる。この用語の従来の意味におけるα−オレフィンではないが、本発明のためには、所定の環式オレフィン、例えばノルボルネン及び関連オレフィンはα−オレフィンであり、上述したα−オレフィンの一部又は全部の代わりに使用できる。同様に、スチレン及びその関連オレフィン(例えば、α−メチルスチレンなど)は、本発明のためにはα−オレフィンである。例示的ポリオレフィンコポリマーには、エチレン/プロピレン、エチレン/ブテン、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/1−オクテン、エチレン/スチレンなどが包含される。例示的ターポリマーには、エチレン/プロピレン/1−オクテン、エチレン/プロピレン/ブテン、エチレン/ブテン/1−オクテン、及びエチレン/ブテン/スチレンが包含される。コポリマーは、ランダム又はブロックであってよい。
【0025】
オレフィンエラストマーは、さらに1つ又はそれ以上の官能基、例えば、不飽和エステル若しくは酸を含むことができ、これらのエラストマー(ポリオレフィン)は周知であり、従来型高圧技術によって製造することができる。不飽和エステルは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、又はビニルカルボキシレートであってよい。アルキル基は、1〜8個の炭素原子、及び好ましくは1〜4個の炭素原子を有することができる。カルボキシレート基は、2〜8個の炭素原子、及び好ましくは2〜5個の炭素原子を有することができる。エステルコモノマーに属するコポリマーの部分は、コポリマーの重量に基づいて1〜50重量%の範囲内にあってよい。アクリレート及びメタクリレートの例は、エチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、及び2−エチルヘキシルアクリレートである。ビニルカルボキシレートの例は、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、及びビニルブタノエートである。不飽和酸の例には、アクリル酸又はマレイン酸が包含される。
【0026】
官能基は、さらに又当分野において一般に公知であるように実施できるグラフト化を通してオレフィンエラストマー内に包含することもできる。1つの実施形態では、グラフト化は、典型的にはオレフィンポリマー、フリーラジカル開始剤(例えば過酸化物など)、及び1個の官能基を含有する化合物の溶融混合する工程を包含するフリーラジカル官能化によって発生することができる。溶融混合する工程中、フリーラジカル開始剤は、オレフィンポリマーと反応して(反応性溶融混合)ポリマーラジカルを形成する。官能基を含有する化合物は、ポリマーラジカルの骨格に結合して、官能化ポリマーを形成する。官能基を含有する典型的な化合物には、アルコキシシラン、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及びビニルカルボン酸並びに無水物、例えばマレイン酸無水物が包含されるが、それらに限定されない。
【0027】
本発明において有用なオレフィンエラストマーのより具体的な例には、超低密度ポリエチレン(VLDPE)(例、The Dow Chemical社製造のFLEXOMER(登録商標)エチレン/1−ヘキセンポリエチレン)、均質に分岐した、直鎖状エチレン/α−オレフィンコポリマー(例、Mitsui Petrochemicals社製のTAFMER(登録商標)及びExxon Chemical社製のEXACT(登録商標))、均質に分岐した、略直鎖状のエチレン/α−オレフィンポリマー(例、The Dow Chemical社から入手できるAFFINITY(登録商標)及びENGAGE(登録商標)ポリエチレン)、及び米国特許第7,355,089号明細書に開示されたようなオレフィンブロックコポリマー(例、The Dow Chemical社から入手できるINFUSE(登録商標))が包含される。より好ましいポリオレフィンコポリマーは、均質に分岐した直鎖状及び略直鎖状エチレンコポリマーである。略直鎖状エチレンコポリマーは特に好ましく、米国特許第5,272,236号明細書、第5,278,272号明細書及び第5,986,028号明細書により詳しく記載されている。
【0028】
本発明の実施において有用なオレフィンエラストマーには、さらに又プロピレン、ブテン及び他のアルケンをベースとするコポリマー、例えばプロピレンに由来する大多数の単位及び他のα−オレフィン(エチレンを包含する)に由来する小数の単位を含むコポリマーが包含される。本発明の実施において有用な代表的なプロピレンポリマーには、The Dow Chemical社から入手できるVERSIFY(登録商標)ポリマー、及びExxonMobil Chemical社から入手できるVISTAMAXX(登録商標)ポリマーが包含される。
【0029】
上記のオレフィンエラストマーのいずれかのブレンドも又本発明において使用することができ、オレフィンエラストマーは1つ又はそれ以上の他のポリマーを用いて、好ましい様式で、本発明のオレフィンエラストマーが該ブレンドの熱可塑性ポリマー成分の少なくとも約50、好ましくは少なくとも約75及びより好ましくは少なくとも約80重量%を構成し、それらの柔軟性を維持する程度までブレンド又は希釈することができる。余り好ましくない様式では探求することのできる他の特性に依存して、オレフィンエラストマー含量は、該熱可塑性ポリマー成分含量の50重量%未満の場合がある。
【0030】
本発明の実施において有用なオレフィンエラストマー、特にエチレンエラストマーは、典型的には、グラフト化する前には、1立方センチメートル当たり0.91未満、好ましくは0.90グラム(g/cm)未満の密度を有する。エチレンコポリマーは、典型的には0.85より高い、好ましくは0.86g/cmより高い密度を有する。密度は、ASTM D−792の手順によって測定する。一般に、インターポリマーのα−オレフィン含量が高いほど、密度はより低く、インターポリマーはより非晶質になる。低密度ポリオレフィンコポリマーは、一般に半結晶性、柔軟性であり、優れた光学特性、例えば可視光線及び紫外線の高い透過率及び低いヘイズを有すると特徴付けられる。
【0031】
本発明の実施において有用なエチレンエラストマーは、典型的には、グラフト化する前には、10分当たり0.10より大きい、及び好ましくは1グラム(g/10分)より大きいメルトインデックスを有する。エチレンエラストマーは、典型的には500未満、及び好ましくは100g/10分未満のメルトインデックスを有する。メルトインデックスは、ASTM D−1238(190℃/2.16kg)の手順によって測定される。
【0032】
オレフィンエラストマーは、典型的には組成物の重量に基づいて10〜90重量%の量で使用される。好ましくは、オレフィンエラストマーは、組成物の重量に基づいて20〜80、より好ましくは25〜50重量%の範囲内の量で使用される。
【0033】
非オレフィンエラストマー
本発明の実施において有用な非オレフィンエラストマーには、シリコーン及びウレタンエラストマー、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム、クロロプレン、フルオロエラストマー、パーフルオロエラストマー、ポリエーテルブロックアミド及びクロロスルホン化ポリエチレンが包含される。シリコーンエラストマーは、典型的には直鎖状若しくは部分的分枝状構造を有する可能性があるが好ましくは直鎖状である平均単位式RSiO(4−a)/2を有するポリオルガノシロキサンである。各Rは、同一又は相違していてよい。Rは、例えば、アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、及びオクチル基;アリール基、例えばフェニル及びトリル基;アラルキル基;アルケニル基、例えば、ビニル、アリル、ブテニル、ヘキセニル、及びヘプテニル基;及びハロゲン化アルキル基、例えばクロロプロピル及び3,3,3−トリフルオロプロピル基であってよい置換又は未置換一価炭化水素基である。ポリオルガノシロキサンは、上述の基のいずれか又はヒドロキシル基が末端であってよい。Rがアルケニル基である場合は、アルケニル基は、好ましくはビニル基又はヘキセニル基である。実際に、アルケニル基は末端基及び/又はポリマー側鎖上のポリオルガノシロキサン内に存在してよい。
【0034】
代表的なシリコーンゴム又はポリオルガノシロキサンには、ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、メチルビニルシロキサン及びジメチルシロキサンのトリメチルシロキシ末端コポリマー、メチルビニルシロキサン及びジメチルシロキサンのジメチルビニルシロキシ末端コポリマー、ジメチルヒドロキシシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、メチルビニルシロキサン及びジメチルシロキサンのジメチルヒドロキシシロキシ末端コポリマー、メチルビニルシロキサン及びジメチルシロキサンのメチルビニルヒドロキシシロキシ末端コポリマー、ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、メチルヘキセニルシロキサン及びジメチルシロキサンのトリメチルシロキシ末端コポリマー、メチルヘキセニルシロキサン及びジメチルシロキサンのジメチルヘキセニルシロキシ末端コポリマー、メチルフェニルシロキサン及びジメチルシロキサンのジメチルビニルシロキシ末端コポリマー、メチルフェニルシロキサン及びジメチルシロキサンのジメチルヘキセニルシロキシ末端コポリマー、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン及びジメチルシロキサンのジメチルビニルシロキシ末端コポリマー、並びにメチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン及びジメチルシロキサンのジメチルヘキセニルシロキシ末端コポリマーが包含されるがそれらに限定されない。
【0035】
ウレタンエラストマーは、反応性ポリマー、例えばポリエーテル及びポリエステル及びイソシアネート官能性有機化合物から製造される。1つの典型的な例は、ヒドロキシの全部が反応させられてウレタン結合を形成し、その後の反応のためのイソシアネート基を残す、ジヒドロキシ官能性ポリエーテル及び/又はトリヒドロキシ官能性ポリエーテルとトルエンジイソシアネートの反応生成物である。このタイプの反応生成物は、水分に曝露させられると自然に、又はポリカルビノール若しくはイソシアネートと反応する他の多官能性反応性材料の化学量論的添加によって硬化できるプレポリマーと称される。ウレタンエラストマーは、様々な比率のイソシアネート化合物及びポリエーテル又はポリエステルを有して商業的に製造される。
【0036】
最も一般的なウレタンエラストマーは、ヒドロキシル官能性ポリエーテル又はポリエステル、及び低分子量多官能性ポリマーイソシアネートを含有するウレタンエラストマーである。ヒドロキシル官能性ポリエーテル及びポリエステルと一緒に使用するための又別の一般的材料は、トルエンジイソシアネートである。
【0037】
適切なウレタンゴムの非限定的例には、Lubrizol Corporation社から入手できるPELLETHANE(商標)熱可塑性ポリウレタンエラストマー;Noveon社から入手できるESTANE(商標)熱可塑性ポリウレタン、TECOFLEX(商標)熱可塑性ポリウレタン、CARBOTHANE(商標)熱可塑性ポリウレタン、TECOPHILIC(商標)熱可塑性ポリウレタン、TECOPLAST(商標)熱可塑性ポリウレタン、TECOTHANE(商標)熱可塑性ポリウレタン;BASF社から入手できるELASTOLLAN(商標)熱可塑性ポリウレタン及び他の熱可塑性ポリウレタン;並びにBayer社、Huntsman社、Lubrizol Corporation社、Merquinsa社及びその他の供給業者から入手できる追加の熱可塑性ポリウレタン材料が包含される。好ましいウレタンゴムは、いわゆる「製粉可能な」ウレタン、例えばTSI Industries社製のMILLATHANE(商標)グレードのウレタンゴムである。
【0038】
そのようなウレタン材料に関する追加の情報は、特にGolding, Polymers and Resins, Van Nostrande, 1959, pages 325 et seq.及びSaunders and Frisch, Polyurethanes, Chemistry and Technology, Part II, Interscience Publishers, 1964の中に見いだすことができる。
【0039】
シリコーン及びウレタンゴムは、単独又は相互に組み合わせて使用することができ、典型的には組成物の重量に基づいて90〜10重量%の範囲内の量で使用される。好ましくは、ゴムは、組成物の重量に基づいて、80〜20重量%、より好ましくは50〜75重量%の範囲内の量で使用される。
【0040】
導電性充填剤
本発明の実施においては、1,000未満、好ましくは500未満及びより好ましくは250Ω−cm未満の体積抵抗率を半導電性組成物に付与する任意の導電性充填剤を使用できる。代表的な導電性充填剤には、導電性カーボンブラック及び金属微粒子が包含されるがそれらに限定されない。導電性カーボンブラックは、それらのASTM名称に従って列挙されたカーボンブラックを包含する、ASTM D−1765−76に列挙されたカーボンブラック:N110 N242 N326 N358 N568 N765 N121 N270 N327 N363 N601 N774 N166 N285 N330 N375 N650 N785 S212 N293 N332 N440 N660 N787 N219 N294 N339 N472 N683 N880 N220 S300 N347 N539 N741 N907 N231 S301 N351 N542 N754 N990 N234 S315 N356 N550 N762のいずれかから選択することができる。当然ながら、類似の性質の、ゴム配合において使用するために適合して有効である任意の他のカーボンブラック、例えばKetjenblack EC、Vulcan C及びXCブラック、アセチレンブラック、及び他のいわゆる「導電性ブラック」、上記のいずれかに類似するが他の番号が指定されてもよいより新規のカーボンブラック、及び当然ながら混合物も又、本発明の実施において使用できる導電性ブラックに包含される。
【0041】
1つの実施形態では、カーボンブラックは、グラフェン、例えばグラファイト、カーボンナノチューブ及び/又はフラーレン又は他のカーボンブラックとのそれらの混合物である。そのような材料の平均粒径は、典型的にはナノスケール比率の粒径である。
【0042】
任意で単独、又はカーボンブラックとともに、導電性の性質の少なくとも1つの金属粉末又は粒子は、導電性充填剤として使用できる。これらの金属粉末又は粒子は、典型的にはX線線幅拡大によって測定して0.1〜100、より典型的には0.3〜30ミクロンの平均粒径を有する。これらの金属粒子/粉末は、所望の任意の粒子形状を有することができるが、公知であるように、形状選択は、金属充填生成物の意図された最終用途に依存してよい。球状の形状、小さな板状体、角柱形、ホイスカーなどを使用できる。
【0043】
導電性充填剤として使用できる金属には、単独又は1つ又はそれ以上の他のそのような金属との混合物で、又は微細粉末状の合金、アルミニウム、インジウム、スズ、鉛、ビスマス並びに周期系の第II−B〜VII−B元素、例えば亜鉛、カドミウム、スカンジウム、チタニウム、ジルコニウム、バナジウム、クロミウム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金などが包含される。便宜性及び相対的安価さについて特に満足できるのは、アルミニウム、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ、鉛、及び銀である。銅は、導電性であるが、その金属形で一部のゴム配合調製物内で不都合な場合がある。
【0044】
1つ又はそれ以上のカーボンブラックと1つ又はそれ以上の金属粉末又は粒子との混合物は、任意の相対的比率、例えば1:99〜99:1の重量比で使用できる。
【0045】
充填剤は、様々な表面コーティング又は処理、例えばシラン、脂肪酸などを有する、又は含有することができる。
【0046】
本発明の実施において使用される導電性充填剤は、本組成物の少なくとも1、好ましくは少なくとも10及びより好ましくは少なくとも20重量%を含んでいる。本組成物中の充填剤の最高量に関する唯一の限度は、実質的検討事項、例えばコスト及び性能によって課される限度であるが、典型的には、一般的な最高量は本組成物の40重量%未満、より典型的には35重量%を含んでいる。
【0047】
添加物
本発明の組成物は、さらに添加物も含有することができる。代表的な添加物には、酸化防止剤、硬化剤、架橋結合協力剤、硬化ブースター及びスコーチ遅延剤、加工処理助剤、カップリング剤、紫外線安定剤(紫外線吸収剤を包含する)、帯電防止剤、核形成剤、スリップ剤、可塑剤(特に可塑化オイル)、潤滑剤、粘度調節剤、粘着付与剤、抗ブロッキング剤、界面活性剤、エキステンダー油、酸スカベンジャー、難燃剤及び金属不活性化剤が包含されるがそれらに限定されない。これらの添加物は、典型的には従来方法及び従来量、例えば本組成物の重量に基づいて0.01重量%又はそれ以下から20重量%又はそれ以上で使用される。
【0048】
適切な硬化剤には、より適切には120℃より高い温度で1時間の半減期を備える有機過酸化物が包含される。有用な有機過酸化物の例には、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチル−クミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、及び2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキシンが包含される。スコーチ阻害剤には、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシル(TEMPO)及び4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシル(4−ヒドロキシTEMPO)が包含される。
【0049】
適切な紫外線安定剤には、ヒンダードアミン光線安定剤(HALS)及び紫外線吸収剤(UVA)添加物が包含される。代表的な紫外線吸収剤(UVA)添加物には、ベンゾトリアゾールタイプ、例えばCiba社から市販で入手できるTinuvin 326及びTinuvin 328が包含される。HALS及びUVA添加物のブレンドも又効果的である。酸化防止剤の例には、ヒンダードフェノール、例えばテトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ−シンナメート)]メタン;ビス[(β−(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)メチルカルボキシエチル)]−スルファイド、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、及びチオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)−ヒドロシンナメート;ホスファイト及びホスフォナイト、例えばトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト及びジ−tert−ブチルフェニル−ホスフォナイト;チオ化合物、例えばジラウリルチオジプロピオネート、ジメリスチルチオジプロピオネート、及びジステアリルチオジプロピオネート;様々なシロキサン;重合2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、n,n’−ビス(1,4−ジメチルペンチル−p−フェニレンジアミン)、アルキル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、混合ジ−アリール−p−フェニレンジアミン、及びその他のヒンダードアミン抗劣化剤又は安定剤が包含される。
【0050】
加工処理助剤の例には、カルボン酸の金属塩、例えばステアリン酸亜鉛若しくはステアリン酸カルシウム;脂肪酸、例えばステアリン酸、オレイン酸、若しくはエルカ酸;脂肪アミド、例えばステアラミド、オレアミド、エルカミド、若しくはN,N’−エチレンビス−ステアラミド;ポリエチレンろう;酸化ポリエチレンろう;エチレンオキシドのポリマー;エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー;植物ろう;石油ろう;非イオン性界面活性剤;シリコーン油及びポリシロキサンが包含されるがそれらに限定されない。
【0051】
配合
1つの実施形態では、本発明の実施において使用される組成物の成分は、溶融混合のためにバッチミキサー又は押出成形機に加えられる。成分は、任意の順序で、又は他の成分とブレンドするために1つ又はそれ以上のマスターバッチを最初に調製するために加えることができる。1つの実施形態では、樹脂の1つ又はブレンド中の導電性充填剤のマスターバッチが調製され、次に他の1つ又はそれ以上の樹脂に加えられる。添加物は、通常はバルク樹脂及び/又は充填剤に加えられる前に1つ又はそれ以上の他の成分とブレンドされる。典型的には、溶融混合は、最高溶融ポリマーより高いが、(過酸化物が存在する場合は)過酸化物の活性化温度より低い温度で実施される。溶融混合された組成物は、次に所望の製品に成形するために鋳型に送達される、又はダイを通過させられる、又は貯蔵若しくは次の成形若しくは加工処理工程に供給するための材料を調製する目的でペレット、フィルム若しくは何らかの他の形状に転換させられる。1つの好ましい製品は、配合された材料が所定のデザインの成形部品を製造するために射出成形機に供給される射出成形プロセスによって製造された成型電気製品である。任意で、ペレット又は何らかの類似の構造に成形されると、次にペレットなどは、保管中の取り扱いを容易にするためにブロッキング防止剤でコーティングすることができる。
【0052】
組成物を配合する工程は、当業者には公知の標準装置によって実行することができる。配合装置の例は、内部バッチミキサー、例えばBanbury(商標)又はBolling(商標)内部ミキサーである。或いは、連続単軸又は二軸ミキサー、例えばFarrel(商標)連続ミキサー、Werner and Pfleiderer(商標)二軸ミキサー、又はBuss(商標)混練連続押出機を使用できる。利用されるミキサーのタイプ、及びミキサーの作動条件は、組成物の特性、例えば粘度、体積抵抗率、及び押出された表面平滑性に影響を及ぼすことになる。
【0053】
本発明の組成物を含む半導電性層を含有するケーブルは、様々なタイプ、例えば単軸又は二軸型の押出機を用いて調製することができる。これらの組成物は、熱可塑性ポリマー押出しに適した任意の装置上では押出し能力を有するはずである。ワイヤー及びケーブル製品のために最も一般的な作製装置は、単軸可塑化押出機である。従来型単軸押出機の説明は、米国特許第4,857,600号明細書の中に見いだすことができる。このため共押出及び押出機の例は、米国特許第5,575,965号明細書の中に見いだすことができる。典型的な押出機は、その上流端にホッパー及び下流端にダイを有する。ポリマー化合物の顆粒はホッパーを通って、螺旋飛行のスクリューを含有する押出機バレル内に供給される。押出機バレル及びスクリューの長さ対直径比は、典型的には約15:1〜約30:1の範囲内にある。スクリューとダイの末端間の下流端には、典型的にはポリマーメルトからの任意の大きな粒子状汚染物を濾過するために使用されるブレーカープレートによって支持されるスクリーンパックが存在する。押出機のスクリュー部分は、典型的には3つの区間、固体供給区間、圧縮若しくは溶融区間、及び計量若しくはポンピング区間に分けられる。ポリマーの顆粒は、供給ゾーンを通して圧縮ゾーンへ運ばれ、圧縮ゾーンでは材料を圧縮するためにスクリューチャネルの深さが減少させられ、熱可塑性ポリマーは押出機のスクリュー部分からの熱入力、及びスクリューによって生成された摩擦剪断熱の組み合わせによって流動させられる。大多数の押出機は、上流から下流に向かって走るバレル軸に沿って(2つより多い)多数のバレル加熱ゾーンを有する。各加熱ゾーンは、典型的にはバレルの全長に沿った温度プロファイルの確立を可能にするために別個の加熱器及び熱制御器を有する。クロスヘッド及びダイアッセンブリ内には追加の加熱ゾーンが存在し、クロスヘッド及びダイアッセンブリでは押出機スクリューによって生成された圧力がメルトを流動させ、典型的には押出機バレルに対して垂直に移動するワイヤー及びケーブル製品に成形する。成形後、熱可塑性押出ラインは、典型的にはポリマーを冷却させて最終ワイヤー又はケーブル製品に固化させるための水槽を有し、次にこの製品の長い長さを集めるためのリール巻き取りシステムを有する。ワイヤー及びケーブル作製プロセスには多数の変形があるが、例えば、又別のタイプのスクリューデザイン、例えばバリヤミキサー若しくはその他のタイプ、及び又別の加工処理装置、例えば吐き出し圧力を生成するためのポリマーギヤポンプが存在する。本開示において概説した組成物は、典型的には、ワイヤー及びケーブル組成物の押出しに適した任意の作製装置上で加工処理できる。
【0054】
絶縁層
典型的には本発明の実施における半導電性層に隣接する絶縁層は、当分野において周知であり、その組成物は広汎に変動する可能性があるが、本発明の実施にとって決定的に重要ではない。絶縁層は、例えば、オレフィンエラストマー、オレフィンブロックコポリマー、EPDM、EPR若しくはシリコーン、特に官能化されたポリオレフィン、例えばシラングラフト化ポリオレフィン又は1つ又はそれ以上の架橋剤、例えばヒドロキシ末端シリコーンで架橋されたシランオレフィンコポリマーの内の1つ又はそれ以上を含むことができる。絶縁層は充填することができる、又は充填しなくてもよいが、典型的には半導電性層より厚い。代表的な絶縁層については、特に米国特許第5,246,783号明細書、国際公開第00/41187号パンフレット及び欧州特許出願公開第1619217(A1)号明細書に記載されている。
【0055】
以下の実施例は本発明の様々な実施形態について例示する。全ての部及びパーセンテージは、特記しない限り重量部及び重量%である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
サンプルの調製
全サンプルは、実験室規模のBrabenderバッチミキサーを使用して調製する。ミキサーは、最初は120℃及び1分当たり35回転(rpm)の回転速度に設定する。最初に、ポリマー樹脂をミキサー内に装填し、次にカーボンブラックを緩徐に加え、15分間に渡り混合する。可能な限り、ポリオレフィン及び/又は炭化水素ゴムが最初に、次にカーボンブラック、次に非ポリオレフィンゴムが加えられるが、これは一部の組成物がミキサーを充填することを非現実的にするので必ずしも可能ではないことがある。しかしどんな場合にも、非オレフィンゴムを後に添加するためにマスターバッチが作製されることはない。カーボンブラックのレベル及び樹脂のタイプに依存して、溶融温度は、混合サイクルの終了時に130〜140℃の範囲に及ぶ。一部の場合には、除去せずにミキサー内で材料を冷却することが可能である;他の場合には、過酸化物添加の前に冷却目的でミキサーから化合物を除去することが不可欠である。そのような場合には、過酸化物添加のために材料が再装填される。全ての場合に、過酸化物を添加した後、早期の架橋結合を防止するために化合物温度が125℃未満に留まることを保証しながら、過酸化物を組み込むために混合物を35rpmでさらに10分間混合する。このようにして調製した化合物は75ミルのプラークに圧縮成形し、プラークはプレス(Wabash Model #30−1212−451−4ST MBX)内で175℃で10分間硬化させる。試験片は、機械的特性測定のために硬化したプラークから切断する。組成物の成分及びそれらの各特性は、表1に報告した。比較例については表2に報告し、本発明の実施例については表3に報告した。
【0057】
体積抵抗率試験片は、熱可塑性条件下で当該の化合物の圧縮成形によって調製された8×2×0.75インチのプラークである。試験片は室温に冷却し、鋳型から取り出す。扁平な銅導電体(16AWG)は、導電体が2cm離れており、各々がプラーク端部から約1インチであるように、プラークの各端部で各プラークの周囲に巻き付けられる。巻き付けられたプラークを8×2インチの鋳型内に戻し、このプラークを175℃で10分間に渡りプレス内に取り付けた導電体を用いて硬化させる。次にプラークを冷却させ、鋳型から取り外すと、試験準備が整う。
【表1】


【表2】

【0058】
CE1は、ポリオレフィンエラストマー(0.865g/cmの密度、5MI、ショアA=64)と34.1%のカーボンブラック及び2.5%の過酸化物とのブレンドについてのデータを示している。この化合物は、ショアA=85、M100=1306psiを備えて用途のために極めて堅く、引張強度は優れているが、291%の低い伸長率及び低い引裂抵抗を備える。体積抵抗率は不安定であり、最初は233Ω−cmであったが、95℃で7日間の経過後には2,300Ω−cmを超えた。
【0059】
CE2は、炭化水素ゴム(0.880g/cmの密度、ショアA=71)と34.1%のカーボンブラック及び2.5%の過酸化物とのブレンドについてのデータを示している。この化合物も又、ショアA=90、M100>2,000psiを備えて用途のために極めて堅く、優れた引張強度を備えるが、145%の低い伸長率及び低い引裂抵抗を備える。体積抵抗率はCE1より安定性であり、最初は600Ω−cmだが、次に95℃で7日間後にたった771Ω−cmへ増加した。
【0060】
CE3は、ポリオレフィンエラストマー(0.862g/cmの密度、1.2MI、ショアA=51)、炭化水素ゴム(0.860g/cmの密度、ショアA=54)と31.45%のカーボンブラック、柔軟性を改善するための14.74%の可塑化油、1.97%の酸化亜鉛及び1.72%の過酸化物とのブレンドについてのデータを示している。この化合物は、最初の2種に比較してショアA=67及びM100=271を備えて有意に改善された柔軟性を示し、さらに改善された689%の伸長率、優れた引張強度及び有意に改善された引裂抵抗を示した。このレベルのカーボンブラックでは、体積抵抗率も又90℃で7日間後に約560Ω−cmで安定性であった。
【0061】
CE4は、炭化水素ゴム(0.860g/cmの密度、ショアA=54)と30%のカーボンブラック、15%の可塑化油、2%の酸化亜鉛及び2.15%の過酸化物とのブレンドについてのデータを示している。この化合物も又ショアA=55、M100=165psiを備えて先行実施例に比較して有意に改善された、相対的に優れた引張強度(953psi)、優れた伸長率(653%)及び優れた引裂抵抗を示した。体積抵抗率は90℃での7日間後に約1550Ω−cmで安定性であったが、このレベルのカーボンブラックでは、化合物は標的体積抵抗率が<1000Ω−cm及び好ましくは<500Ω−cmであるこの用途のためには容認できない。
【表3−1】

【表3−2】

【0062】
実施例Iは、39%のポリオレフィンエラストマー(0.865g/cmの密度、5MI、ショアA=64)、39%のポリウレタンゴム(1.210の密度、ショアA=60)、19.5%のカーボンブラック及び2.44%の過酸化物を含有するブレンドについてのデータを示している。CE1に比較して、この化合物はショアA=79、M100=767、高い引張強度、いまだ比較的低い伸長率、しかし劇的に改善された引裂抵抗を示している。しかし最も重要なことは、約42%未満のカーボンブラックを利用するが、95℃での7日間経過後には約100Ω−cmでより低く、はるかにより安定性の体積抵抗率を有するという事実である。
【0063】
実施例2は、34.15%のポリオレフィンエラストマー(0.862g/cmの密度、1.2MI、ショアA=51)、24.39%のポリウレタンゴム(1.210g/cmの密度、ショアA=60)、14.63%の可塑化油及び2.44%の過酸化物を含有するブレンドについての結果を示している。このデータは、改善されたショアA=69、M100=313、優れた引張(952psi)及び改善された伸長率(561%)及び優れた引裂抵抗を示している。実施例2と同様に、たった24.4%のカーボンブラックでは、本化合物は95℃での7日間経過後に低く安定性の体積抵抗率約55Ω−cmを示す。
【0064】
実施例3は、37.3%のポリオレフィンエラストマー(0.862g/cmの密度、1.2MI、ショアA=51)、24.56%のポリウレタンゴム(1.210g/cmの密度、ショアA=60)、14.73%の可塑化油、19.65%のカーボンブラック、1.96%の酸化亜鉛及び1.77%の過酸化物を含有するブレンドについての結果を示している。このデータは、より低い化合物のショアA=67、M100=300、優れた引張強度(1,033psi)及び改善された伸長率(659%)及び優れた引裂抵抗を示している。実施例2と同様に、そしてたった19.65%のカーボンブラックでは、本化合物は95℃での7日間経過後に安定性の約350Ω−cmの体積抵抗率を示す。
【0065】
実施例4は、19.65%のポリオレフィンエラストマー(0.862g/cmの密度、1.2MI、ショアA=51)、19.65%の炭化水素ゴム(0.860g/cmの密度、ショアA=54)、17.68%のシリコーンゴム(1.090g/cmの密度、ショアA=34)、24.56%のカーボンブラック、14.73%の可塑化油、1.96%の酸化亜鉛及び1.77%の過酸化物を含有するブレンドについての結果を示している。データは、さらに改善されたショアA=60、M100=184、優れた引張強度(942psi)、高い伸長率(833%)及び優れた引裂抵抗を示している。実施例2と同様に、たった24.56%のカーボンブラックでは、本化合物は95℃での7日間経過後に安定性の体積抵抗率約520Ω−cmを示す。これらの結果は、31.45%のカーボンブラック(約22%多い)を使用したCE3と比較されなければならない。
【0066】
実施例5は、28.38%の炭化水素ゴム(0.860g/cmの密度、ショアA=54)、35%のシリコーンゴム(1.090g/cmの密度、ショアA=34)、25%のカーボンブラック、7.5%の可塑化油、2.0%の酸化亜鉛及び2.15%の過酸化物を含有するブレンドについての結果を示している。CE4と比較して、このデータは、たった25%のカーボンブラックでは、本化合物が95℃での7日間経過後にはるかに低く安定性の体積抵抗率約60Ω−cmを有することを示している。
【0067】
実施例6は、28.38%の炭化水素ゴム(0.860g/cmの密度、ショアA=54)、35%のシリコーンゴム(1.090g/cmの密度、ショアA=22)、25%のカーボンブラック、7.5%の可塑化油、2.0%の酸化亜鉛及び2.15%の過酸化物を含有するブレンドについての結果を示している。CE4と比較して、本化合物は、同等のショアA=56を有するが、このデータはさらに、たった25%のカーボンブラックでは、本化合物が95℃での7日間経過後にはるかに低く安定性の体積抵抗率約15Ω−cmを有することを示している。このサンプルの機械的特性は、この低い体積抵抗率を前提にするとさらに改善することができる。
【0068】
実施例7は、化合物の特性をどのようにして平衡を取ることができるか、及び33.38%の炭化水素ゴム(0.860g/cmの密度、ショアA=54)、35%のシリコーンゴム(1.090g/cmの密度、ショアA=34)、20%のカーボンブラック、7.5%の可塑化油、2.0%の酸化亜鉛及び2.15%の過酸化物を含有するブレンドについての結果を示している。CE4と比較して、このデータははるかに低いショアA=46、低いM100=145を示すが、しかし最も重要なことに、20%のカーボンブラックでさえ、本化合物は同様に95℃での7日間経過後にはるかに低く安定性の体積抵抗率約230Ω−cmを有し、上記の実施例5及び6に比較して引張強度、伸長率及び引裂抵抗の改善された平衡を備える。
【0069】
本発明を先行する特定の実施形態を通してある程度詳細に記載してきたが、この詳細は主として例示する目的のためである。多数の変形及び修飾は、当業者であれば、以下の特許請求の範囲に記載した本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの絶縁層及び少なくとも1つの半導電性層を含む成形又は押出製品であって、前記半導電性層は重量%で:
A.1〜30重量%の導電性充填剤;
B.10〜90重量%の非オレフィンエラストマー;
C.10〜90重量%のオレフィンエラストマー;及び
D.任意で、0.5〜2.5重量%の過酸化物
を含む製品。
【請求項2】
前記製品は、電気部品又は遮蔽ケーブルである、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記製品は、第2半導電性層を含み、前記絶縁層は前記第1及び第2半導電性層の間にある、請求項2に記載の製品。
【請求項4】
前記導電性充填剤は、導電性カーボンブラックを含む、請求項2に記載の製品。
【請求項5】
前記導電性充填剤は、金属粒子又は粉末を含む、請求項2に記載の製品。
【請求項6】
前記導電性充填剤は、カーボンブラック及び金属粒子又は粉末のブレンドを含む、請求項2に記載の製品。
【請求項7】
前記非オレフィンポリマーは、シリコーン樹脂及びウレタンゴムの内の少なくとも1つである、請求項2に記載の製品。
【請求項8】
前記オレフィンエラストマーは、エチレン−プロピレンゴム及びエチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴムの内の少なくとも1つである、請求項7に記載の製品。
【請求項9】
前記オレフィンエラストマーは、直鎖状の均質に分岐したポリエチレン樹脂である、請求項8に記載の製品。
【請求項10】
前記非オレフィン及びオレフィンエラストマーは、10:90〜90:10の非オレフィン:オレフィンエラストマー重量比で存在する、請求項2に記載の製品。
【請求項11】
前記半導電性層は、少なくとも1つの添加物をさらに含む、請求項2に記載の製品。
【請求項12】
少なくとも1つの添加物は、可塑化油である、請求項11に記載の製品。
【請求項13】
半導電性組成物であって、前記組成物の重量に基づいて:
A.1〜30重量%の導電性充填剤;
B.10〜90重量%の非オレフィンエラストマー;
C.10〜90重量%のオレフィンエラストマー;及び
D.任意で、0.5〜2.5重量%の過酸化物
を含む組成物。
【請求項14】
前記絶縁層は、シラングラフト化ポリオレフィン又はヒドロキシ末端シリコーンで架橋されたシラン−オレフィンコポリマーを含む、請求項1に記載の製品。
【請求項15】
前記絶縁層は、オレフィンエラストマー、オレフィンブロックコポリマー、EPDM、EPR又はシリコーンの内の一つまたはそれ以上を含む、請求項3に記載の製品。

【公表番号】特表2013−505555(P2013−505555A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530917(P2012−530917)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/048075
【国際公開番号】WO2011/037747
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(591123001)ユニオン カーバイド ケミカルズ アンド プラスティックス テクノロジー エルエルシー (85)
【Fターム(参考)】