説明

柔軟管接続継手

【課題】柔軟管接続継手は柔軟管を締め付け環によって固定する方法が採られているが、締め付け環回動の際の接続管との共回り滑動、継手本体の漏水、接続管の抜け止めが問題となっており、これに対処して共回り滑動の防止、継手本体の密閉構造、接続管係止力の強化を目的とする。
【解決手段】接続管Aの挿入先端が当接する管挿入コア筒2の基部に、接続管の挿入方向に沿って筋状の突起片21を並列して形成し、締め付け環先端部にスペーサー8を介して環状パッキン9を設定し、締め付け環7の螺進によってスペーサーが環状パッキンを圧潰して接続管外周に密着するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道管、空調管等としてポリエチレン管等の柔軟管を継手して用いる場合に、管挿入部に挿入した接続管を袋ナットにより締め付け環を介して管挿入コア筒に締め付ける際に、袋ナットの回動と共に接続管が管挿入コア筒の外表面を滑動して共に回動してしまうことを防止し、接続管のコア筒への締め付けを確実にできる柔軟管接続継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、柔軟管の接続継手としては、胴部1の一端に管挿入コア筒2とこれを囲周する管挿入部外枠3の間に構成される管挿入部4に接続管を挿入し、挿入した接続管を袋ナット6により締め付け環7を介して管挿入コア筒に締め付けるように構成したものが用いられてきている。
【0003】
この管挿入コア筒に対する接続管Aの締め付けは、袋ナットがコア筒を囲周する管挿入部外枠3の外周に刻設された雄ネジ部31と螺合して基部側に推進するに従って袋ナットの後端絞り部63の内径が胴部雄ネジ部内壁とコア筒2の間に介装された締め付け環7の外表テーパー面72を絞って行なわれるようになっている。
【0004】
しかし、袋ナット6のテーパー接面部62が締め付け環7の外表面の袋ナット側雄型テーパー面73を締め付け回動する際に、回動摩擦によって締め付け環7が把持する接続管Aが袋ナットの回動と共に回動してしまう問題があり、締め付け環7の管挿入部側雄型テーパー面72が袋ナット6の内径の雌型テーパー面62を滑動して締め付け環7の回動と共に接続管が管挿入コア筒2の外表面を滑動して共に回動してしまう事態を発生させており、接続管の締め付け作業に支障を生じさせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
この接続管の締め付けに対する共回り防止については、特許文献1記載のように接合管締め付け部の締め付け側内周と締め付けを受ける側の外周に両部材の滑動を防止する雌雄の係合部を設けたり、特許文献2記載のように管挿入部外枠の内周面や同内周面に当接する外周面を細粒材の固着や鋳物地肌を残存させる防滑面とする提案がなされている。
【特許文献1】実開昭63−187792号公報
【特許文献2】特開2000−291852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、共回り滑動を防止するために両部材に雌雄の係合部を設けるには両部材の仕様に影響を及ぼす加工が必要であり、加工にも多大な時間と労力を要すると共に係合部にガタつきが発生することも避けられない。
【0007】
また、両部材の当接面に防滑面を形成する方法については、管の厚みの誤差により防滑効果にバラつきが生ずる問題があると共に、接合管の硬度が高くなると接合管が柔軟で管肉に弾性がある場合と異なり、接合管に対する抜け止め耐久力の強化や漏水についても対応が必要であるという問題があった。
【0008】
すなわち、従来の柔軟管接続継手においては、継手本体が接合管を係止する抜け止め力を、袋ナットと締め付け環による接合管外表面に対する締め付け力と締め付け環内周面の凹凸による握持力に頼ってきたが、接続管が硬質化するに従って締め付け力が接合管の外表面を滑動するようになるため、抜け止めについて対応する必要を生じてきた。
【0009】
更に、締め付け環と継手本体との防水は、接続管の硬質化に対し継手本体内に設定されたOリングによる対応しかなされておらず極めて不完全な状態にあり、水道管として用いる場合には漏水に繋がる問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記した問題に対応しようとするものであり、接続管Aの挿入先端aが当接する管挿入コア筒2の基部に、接続管の挿入方向に沿って立ち上がる突起片21、21・・を並列して形成することにより、管挿入コア筒2の基部に向けて螺進される接続管Aの挿入先端aに突起片21、21・・が食い込んで接続管Aの回動方向への動きが固定されて接続管Aが回動方向に滑動するのを防止するようにした。
【0011】
すなわち、袋ナット後端絞り部63の内径のテーパー面62と締め付け環の袋ナット側雄型テーパー面73との回動摩擦によって締め付け環7に回動方向に働くトルクが発生しても、接続管Aの挿入先端aに突起片21、21・・が食い込んで接続管Aの回動方向への動きが固定阻止されるので、押し込み方向に働くトルクが有効に作用して共回りを防止することができる。
【0012】
また、接続管の挿入方向に沿って立ち上がり並列する突起片の中腹部に、凹陥部を形成するようにし、接続管Aの挿入先端aが突起片21の先端立ち上がり部21aを越えて凹陥部21bに螺進されると、凹陥により鉤状に形成された21aの後端が挿入先端aの下面に食い込んで接続管Aの抜去方向への移動が阻止される。
【0013】
更に、締め付け環先端部にスペーサー8を介して環状パッキン9を設定し、締め付け環7の螺進によってスペーサー8が環状パッキン9を圧潰して管挿入部内壁に環状パッキンの内周が迫り出して接続管外周に密着するように構成し、継手本体の胴部と接続管Aの外周面の間隙を密封するように構成した。
【0014】
このスペーサー8は、介在する締め付け環7の先端と環状パッキン9とに当接する両側端面を傾斜面に構成することにより、接合面の密着度が増すと共にスペーサー8の環状パッキン9の外周部を押圧圧潰してパッキンの肉厚を内周側に押し出して接続管Aの外周面に対する密着度を効率的に強化する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上のような構成により、軸方向に沿って並列する突起片21により、接続管Aの共回り回動を阻止すると共に、突起片の中腹部に形成される凹陥部が接続管Aの抜け止め力を強化し、スペーサー8と環状パッキン9により本体の胴部と接続管Aの外周面の間隙を密封して漏水を防止する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による柔軟管接続継手の実施例を示すもので、胴部本体と管挿入コア筒及び締め付け環、袋ナットの関係を分解して示す上部半分を内部構造を示す断面とした柔軟管接続継手全体の分解側面図
【図2】同じく、柔軟接続管を管継手に挿入し、袋ナットによる締め付けがなされていない状態における構成部材の関係を、上部半分を内部構造を示す断面とし、下部半分は管挿入コア筒を外観図として他の部分は上部半分に対応する断面とした柔軟管接続継手の縦断面側面図
【図3】同じく、図2を柔軟接続管の袋ナットによる締め付けがなされた状態における構造とした柔軟管接続継手の縦断面側面図
【図4】同じく、スペーサーと圧潰状態の環状パッキン及び管挿入コア筒の突起片と接続管の挿入先端が突起片に食い込んだ状態を示す管挿入コア筒とこれを囲周する管挿入部外枠の間に構成された管挿入部の拡大縦断面側面図
【図5】同じく、管挿入コア筒に形成された他の実施例による突起片を示すもので、管挿入コア筒に形成された突起片の拡大側面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。1は本体を構成する胴部で、胴部1の一端に、管挿入コア筒2と、これを囲周し外周に雄ネジ31を刻設する管挿入部外枠3の間に構成される間隙として、接続管を挿入する管挿入部4が構成され、他端部には金属管等が螺合により継手される螺合継手部11が構成されている。
【0018】
胴部1の管挿入部外枠3の螺合継手部11側端の内径には、管挿入コア筒2を螺入する雌ネジ32となっていて、この雌ネジ32に管挿入コア筒2の雄ネジ22が螺合組み付けされ、管挿入コア筒2の外周と管挿入部外枠3の内周の間に構成される間隙が管挿入部4を構成している。
【0019】
管挿入コア筒2は、筒体23の一端にフランジ状に張り出して刻設された雄ネジ22によって管挿入部外枠3の内部に螺合組み付けされ、挿入される接続管Aを覆着するが、フランジ状に張り出した雄ネジ22の基部には接続管Aの挿入方向に沿って立ち上がる突起片21、21・・が並列して形成されている。
【0020】
突起片21、21・・はローレット加工等によって縦筋状に形成され、管挿入コア筒2の基部に向けて螺進される接続管Aの挿入先端aが突起片21、21・・に乗り上げ、食い込んで接続管Aの回動方向への動きが固定されて接続管Aが回動方向に滑動するのを防止するように構成されている。
【0021】
筒体23の他端は、接続管Aの挿入を行い易いようにテーパー面24に構成され、袋ナット6を介して挿入される接続管Aを筒体23に覆着して管挿入部4に導入する。袋ナット6は、その後端絞り部63が雌ねじ61の刻設部から内径に縮径するテーパー面62として形成され、雌ねじ61が管挿入部外枠3の雄ネジ32と螺合して胴部1の基部方向に螺進するようになっている。
【0022】
本体胴部1の後端を形成する管挿入部外枠3には、フランジ33が設けられていて袋ナット6の螺進に対するストッパーを構成し、雌ねじ61の刻設部の内径は管挿入部4の径よりも大径となっていて、袋ナット後端絞り部の締め付け環食い込みスペースと共にスペーサー8と環状パッキン9の収容スペース5を形成するようになっている。
【0023】
7は締め付け環で、金属や、ポリアセタール樹脂等、適度な弾性素材で構成され、袋ナット後端絞り部に食い込み当接する側の外表面が管挿入部側雄型テーパー面72に形成され、他端側はスペーサー8の傾斜端面81と傾斜接合する傾斜面となっている。
【0024】
また、締め付け環7には両側から交互に縮径のための切り割り74の切込みがなされてリングが断裂しており、袋ナット6が螺進するにしたがって袋ナット絞り部63のテーパー面62が締め付け環7の外表テーパー面72を摺動押圧して絞り込んで行くことによって縮径され、締め付け環7の内壁面に形成された凹凸71が接続管Aの外表面に食い込み、接続管Aのコア筒2への締め付けが行なわれるようになっている。
【0025】
8はスペーサーで、ポリアセタール樹脂等、適度な弾性素材で構成され、外周面には管挿入部外枠3と袋ナット6との締め込みスペースに挟持固定される鍔82が形成され、両側端面は断面が台形状に外側に拡開して内側に傾斜する斜面形状となっていて、収容スペース5に隣接して格納される環状パッキン9の断面が台形状に内側に拡開する斜面形状の側端面に対応して相互に嵌合する斜面接合に構成されている。
【0026】
以上のように構成された柔軟管接続継手は、先ず、接続管Aの差し込み先端から管挿入コア筒2の筒体23の基部に形成された並列突起片21、21・・の立ち上がり部から管挿入部外枠3に螺合した袋ナット6の後端位置までの長さ位置にマーキングを行い、本体胴部1に管挿入コア筒2を螺合設定して管挿入部外枠3の収容スペース5に環状パッキン9、スペーサー8、締め付け環7を嵌入して袋ナット6を締め代bを残した位置まで螺合して組み付ける。
【0027】
接続管Aを袋ナット6の後端から挿入して、前記マーキング位置まで接続管Aが接続継手に挿入されたことを確認したうえで、袋ナット6を回動螺進させると、管挿入コア筒2の基部に向けて螺進される接続管Aの挿入先端aに突起片21、21・・が食い込んで接続管Aの回動方向への動きが固定されて接続管Aが回動方向に滑動する共回りを防止しつつ、締め付け環7が基部側に推進する。
【0028】
締め付け環7の基部側への推進により、締め付け環7の端面がスペーサー8の端面を押し、更に、スペーサー8の端面が環状パッキン9を収容スペース5の壁面に環状パッキンを圧潰することにより管挿入部内壁に環状パッキンの内周が迫り出して挿入されている接続管Aの外周に密着して継手内の水密性が確保されるものである。
【0029】
同時に、袋ナット6の後端絞り部63の内径が胴部雄ネジ部31の内壁とコア筒2の間に介装された締め付け環7の外表テーパー面72を絞って袋ナット6の後端絞り部63の内径が胴部雄ネジ部内壁と管挿入コア筒2の間に介装された締め付け環7の外表テーパー面72を絞って接続管Aを管挿入コア筒2の外周に圧着して継手管の固定接合が行なわれる。
【0030】
接続管の挿入方向に沿って立ち上がる並列突起片の形成に関する他の実施例として、接続管の挿入方向に沿って立ち上がり並列する突起片の中腹部に、凹陥部を形成するようにすると、接続管Aの挿入先端aが突起片21の先端立ち上がり部21aを越えて凹陥部21bに螺進されると、凹陥により鉤状に形成された21aの後端が挿入先端aの下面に食い込んで接続管Aの抜去方向への移動が阻止される。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は以上のように構成したので、袋ナット後端絞り部63の内径のテーパー面62と締め付け環の袋ナット側雄型テーパー面73との回動摩擦によって締め付け環7に回動方向に働くトルクが発生しても、管挿入コア筒2の接続管Aの突合端に形成された並列突起片21に接続管Aの挿入先端aが食い込んで接続管Aの回動方向への動きを阻止するので、接続管Aの共回りを防止することができる柔軟管接続継手として水道施設産業上に高度の利用価値を有する。
【符号の説明】
【0032】
1 継手本体の胴部
11 継手本体の螺合継手部
2 管挿入コア筒
21 並列突起片
21a 他の実施例による並列突起片先端立ち上がり部
21b 他の実施例による並列突起片中腹部の凹陥部
21 並列突起片
22 管挿入コア筒のフランジ状雄ネジ
23 管挿入コア筒の筒体
24 管挿入コア筒の筒体テーパー面
3 管挿入部外枠
31 管挿入部外枠の雄ネジ
32 管挿入部外枠内径の雌ネジ
33 管挿入部外枠のフランジ
4 管挿入部
5 管挿入部外枠の部材収容スペース
6 袋ナット
61 雌ねじ刻設部
62 絞り部内径のテーパー面
63 袋ナット絞り部
7 締め付け環
71 締め付け環の内壁面に形成された凹凸
72 管挿入部側雄型テーパー面
73 切り割り部
8 スペーサー
81 スペーサーの傾斜端面
82 スペーサーの外周鍔部
9 環状パッキン
A 柔軟接続管
a 柔軟接続管の挿入先端
b 袋ナットの締め代

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部の管挿入部に挿入した接続管を締め付けナットにより締め付け環を介して管挿入コア筒に締め付けるようにした柔軟管接続継手において、接続管の挿入先端が当接する管挿入コア筒の基部に、接続管の挿入方向に沿って立ち上がる複数の突起片を並列して形成したことを特徴とする柔軟管接続継手
【請求項2】
接続管の挿入方向に沿って立ち上がり並列する突起片の中腹部に、凹陥部を形成するようにした請求項1記載の柔軟管接続継手
【請求項3】
締め付け環先端部にスペーサーを介して環状パッキンを設定し、締め付け環の螺進によってスペーサーが環状パッキンを圧潰して管挿入部内壁に環状パッキンの内周が迫り出して接続管外周に密着するように構成した請求項1又は請求項2記載の柔軟管接続継手
【請求項4】
締め付け環先端と環状パッキンの間に介在させるスペーサーの両側端面を傾斜面に構成した請求項3記載の柔軟管接続継手

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−153657(P2011−153657A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15009(P2010−15009)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000201593)前澤給装工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】