説明

柚子黒豆飲料

【課題】
黒豆の水抽出液に特有の豆臭のマスキング、まろやかな酸味の付加、芳醇な香りの付加により、風味が改善された柚子黒豆飲料を提供する。
【解決手段】
本発明の柚子黒豆飲料は、黒豆の水抽出液および柚子の果汁を含有してなることを特徴とする。黒豆に対する柚子の重量比は14倍以上であることが好ましい。また、黒豆の水抽出液は、70℃〜100℃の水による黒豆の抽出液、又は5℃〜25℃の水による黒豆の抽出液であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風味の改善された柚子黒豆飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
黒豆は、黒大豆とも呼ばれる大豆の一品種であり、栄養成分の面では大豆と同等であるが、その種皮は通常の大豆と異なり黒色の外観を呈している。この黒色の色素成分は、アントシアニンや、プロアントシアニジンなどのアントシアニン系色素で、強い抗酸化作用がある他、近年、内臓脂肪沈着、血中のコレステロール、中性脂肪の低下、血糖値の上昇抑制等の効果についても注目されており、これを原料とした黒豆煮汁などの黒豆飲料も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭和6 3 − 2 0 2 3 6 4号公報
【特許文献2】特開2 0 0 6 − 1 5 8 3 47 号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この黒豆煮汁には、アントシアニン系色素が多く含まれているものの、黒豆に由来する独特の生臭い臭い、いわゆる豆臭が強く、飲料としての風味に欠けているため、その需要拡大の大きな障壁となっている。黒豆煮汁の需要拡大の試みとして、例えば、上記特許文献1に記載の黒豆飲料では、だいだい、すだち、かぼす等の酸味が強く且つ果汁分が非着色系の柑橘類煮出し成分と黒豆の煮出し成分との混合物を主成分とする健康飲料組成物が開示されているが、これは、だいだい、すだち、かぼす等の果汁分が無着色であるために飲料としての商品価値が乏しい点を、健康飲料に好適な天然着色成分である黒豆の色素を用いて改善することを目的としたものである。この例では、だいだい、すだち、かぼす等が本来有する強い酸味を和らげるために更に甘味料を添加するなどの方法を講じる必要があり、また好適な飲料とするためには、更に風味を改善する必要がある。
【0005】
また、上記特許文献2に記載の黒豆飲料では、焙煎した黒ごまと生豆の黒豆から加温下および加熱下で水抽出して製したアントシアニンに富む飲料および飲料の製造方法が開示されているが、これは、高カロリーの黒大豆の摂取量を増やさずにアントシアニンの摂取効率を高めることを目的とするものである。この黒豆飲料は、特許文献1の黒豆飲料と異なり、依然として飲料の外観が黒色を呈さざるを得ず、また黒豆の豆臭を打ち消すために焙煎した黒ごまを用いているために強い焙煎臭が残存しており、好適な飲料とするためには更に風味を改善する必要がある。
【0006】
すなわち、上記特許文献1および特許文献2にそれぞれ開示されている従来の黒豆飲料では、黒豆の外皮に含有されるアントシアニンは、天然着色成分としてまたは健康成分として用いられておりそれぞれ外観の改善、健康成分の増量に優れているとはいうものの、飲料として具えるべき風味の点では課題を残していた。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、黒豆の水抽出液に特有の豆臭のマスキング、爽快感があり且つまろやかな酸味の付加、芳醇な香りの付加により、風味が改善された柚子黒豆飲料を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の柚子黒豆飲料は、黒豆の水抽出液および柚子の果汁を含有してなることを特徴とする。
本発明の柚子黒豆飲料は、黒豆煮汁に代表される黒豆の水抽出液の特有の豆臭をマスキングし、爽快感があり且つまろやかな酸味を付加し、又は芳醇な香りを付加し、その風味を改善することができるためである。 かかる風味改善に伴う黒豆水抽出液に対する嗜好性の向上により、黒豆抽出液に含まれるエキス分やミネラル分等の微量成分の摂取が喚起されるため、この柚子黒豆飲料は健康維持用のドリンクとしても好適である。
【0009】
黒豆に対する柚子の重量比は14倍以上であることが好ましい。ここで、黒豆に対する柚子の重量比とは、生の黒豆の重量に対する生の柚子の重量の比率(生の柚子の重量/生の黒豆の重量)をいう。
【0010】
また、黒豆の水抽出液は、70℃〜100℃の水による黒豆の抽出液であることが好ましい。70℃〜100℃の水抽出によれば、抽出に要する時間を短縮することができ、且つ、豆臭の発生に関与する酵素を熱変性させその後の豆臭の発生を抑制することができるからである。
また、黒豆の水抽出液は、5℃〜25℃の水による黒豆の抽出液であることが好ましい。加熱による抽出では黒豆の蛋白質成分等が熱変性を受けるが、5℃〜25℃の水による抽出ではかかる変性による影響が少ないため、抽出後に回収する黒豆を豆腐などの製造原料にそのまま使用することができるからである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の柚子黒豆飲料は、黒豆の水抽出液と柚子の果汁を含有してなるものである。
ここで、黒豆とは、大豆の品種のひとつであり黒大豆とも呼ばれ、種皮にアントシアニン系の色素を含むものをいう。黒豆の代表的な品種として兵庫県篠山市原産の丹波黒などが挙げられるが、本発明の柚子黒豆飲料に用いる黒豆は、上記の定義に該当するものであればよい。
【0012】
本発明において、黒豆の水抽出液は、抽出温度については特に制限はないが、5℃〜25℃の水によって抽出された抽出液、又は70℃〜100℃の水によって抽出された抽出液であることが好ましい。更に好ましいのは、約16℃の水によって抽出された抽出液である。地下水の水温は16℃であるため、何らのエネルギーの供給を要することなく黒豆の抽出に使用することができるからである。抽出時間についても特に制限はないが、5℃〜25℃の水によって抽出する場合は、10〜20時間が好ましい。また、70℃〜100℃の水によって抽出する場合は、5分〜2時間が好ましい。抽出に使用する水の量についても特に制限はないが、黒豆の1重量に対して2倍〜130倍の容量の水を用いるのが好ましい。
【0013】
また、黒豆の抽出条件は、抽出後に分離除去する黒豆の用途を考慮して選択することができる。分離除去した黒豆を豆腐等の製造において生豆のまま原料として使用する場合においては、例えば、生の黒豆1Kgに対して2Lの水を加え、約16℃にて15時間抽出し、黒豆を分離除去して得た抽出液を用いてもよい。一方、分離除去した黒豆を、加熱処理後の黒豆を佃煮等の製造原料として用いる場合においては、例えば、生の黒豆1Kgに対して130Lの水を加え、100℃にて10分間抽出し、黒豆を分離除去して得た抽出液を用いてもよい。
【0014】
本発明において、柚子とは、学名がCitrus Junos、シノニムC.ichangensisx C.reticulata
var. austeraであるミカン科の常緑樹が産する果実をいう。また、柚子の産地として、高知県の物部村や馬路村、同県北川村、山梨県富士川町等の日本国内の産地の他、韓国の済州島などが挙げられるが、本発明の柚子黒豆飲料に用いる柚子は、上記定義に該当するものであればよい。
【0015】
また、本発明において、柚子の果汁とは、柚子の搾り汁または柚子の水抽出液をいう。柚子の搾り汁の製法としては、柚子果実の外皮を剥皮後にプレス又はスクリュープレス等により搾汁する方法、果実を2分割後に専用プレス搾汁機により搾汁する方法等が知られているが、本発明における柚子の搾り汁は、その搾汁方法により制限されない。また、水抽出液の製造方法としては、柚子の成分が水抽出できる方法であれば何れの方法でも良く、例えば、柚子果実を分割後水抽出する方法などを例示することができる。ただし、果皮部に含まれる苦味の混入が少ない搾り汁または水抽出液を用いることが風味改善効果を高める上で好ましい。
【0016】
本発明において、黒豆に対する柚子の重量比は、14倍以上であることが好ましい。
上記重量比の柚子を用いることにより、後述の実施例に示すように、豆臭が完全にマスクされ、爽快感があり且つまろやかな酸味と芳醇な香りを具え、且つ飲みやすく風味が改善され、その結果、嗜好性を高めた柚子黒豆飲料が得られるからである。
【0017】
さらに、本発明の柚子黒豆飲料は、甘味料としてスクラロースおよび/または、はちみつを配合すると、酸味を和らげる等の風味改善効果があるので嗜好性がさらに一段と向上した柚子黒豆飲料とすることができる。なお、スクラロースやはちみつを配合するときは、適度の甘みを感じる程度がよく、これが甘すぎにならないよう配合量を抑えることが好ましい。
【0018】
また、本発明の柚子黒豆飲料には、上記以外の成分としてビタミンCなどの酸化防止剤等の添加物を適宜配合しても差し支えない。
【0019】
以下、本発明を実施例と比較例により具体的に説明するが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
市販の生の黒豆1.8Kgおよび市販の柚子35Kg(400個をそれぞれ4つ割したもの)を100℃に加熱した水240L中に加え、100℃で10分間加熱し水冷した後、柚子および黒豆をろ過(3ミクロンメッシュ)水洗し、ろ液と洗液を合せて240Lの柚子黒豆飲料1−1を得た(実施例1−1)。
【0021】
また、前記柚子黒豆飲料1−1の抽出条件のうち、抽出温度を70℃とし、加熱時間を2時間とする以外は、前記実験条件と同一条件により240Lの柚子黒豆飲料1−2を得た(実施例1−2)。
【0022】
また、前記柚子黒豆飲料1−1の抽出条件のうち、抽出温度を5℃とし、抽出時間を20時間とする以外は、前記実験条件と同一条件により240Lの柚子黒豆飲料1−3を得た(実施例1−3)。
【0023】
更にまた、前記柚子黒豆飲料1−1の抽出条件のうち、抽出温度を25℃とし、抽出時間を10時間とする以外は、前記実験条件と同一条件により240Lの柚子黒豆飲料1−4を得た(実施例1−4)。
【実施例2】
【0024】
前記市販の生の黒豆125gに水10Lを加え、100℃で10分間加熱し水冷後、当該黒豆を分離除去水洗して、ろ液と洗液を合せて10Lの黒豆煮汁を得た。一方、前記市販の柚子15kgを搾汁し果汁1600mLを得た。柚子果汁1mLを、それぞれ黒豆煮汁4L、2L、1L、0.5L、0.25L、0.125Lに対して加え、それぞれ柚子黒豆飲料2−1、2−2、2−3、2−4、2−5、2−6を得た(実施例2−1、2−2、2−3、2−4、2−5、2−6)。また、柚子果汁10mL、20mL、40mL、80mLをそれぞれ、黒豆煮汁100mLに対して加え、それぞれ柚子黒豆飲料2−7、2−8、2−9、2−10を得た(実施例2−7、2−8、2−9、2−10)。
【実施例3】
【0025】
前記市販の生の黒豆300gに水1.2Lを加え、16℃で14時間放置し、当該黒豆を分離除去水洗し、ろ液と洗液を合せて1.2Lの黒豆抽出液を得た。当該抽出液の各10mLに対してそれぞれ実施例3で得た柚子果汁を1mL、2mL、4mL、8mLを加え、それぞれ柚子黒豆飲料3−1、3−2、3−3、3−4を得た(実施例3−1、3−2、3−3、3−4)。また、当該抽出液400gに対して水350gを加えて希釈して得た希釈液の各10mLに対してそれぞれ前記柚子果汁を1mL、2mL、4mL、8mLを加え、それぞれ柚子黒豆飲料3−5、3−6、3−7、3−8を得た(実施例3−5、3−6、3−7、3−8)。
【0026】
[比較例1]
前記市販の生の黒豆1.8Kgを100℃に加熱した水240L中に加え、10分間100℃に加熱し水冷後、黒豆をろ過(3ミクロンメッシュ)水洗して、ろ液と洗液を合せて240Lの黒豆煮汁を得た。
【0027】
[比較例2]
前記市販の生の黒豆1.8Kgおよび市販のかぼす35Kg(400個をそれぞれ4つ切りしたもの)を100℃で加熱した水240L中に加え、10分間100℃で加熱し水冷した後、黒豆およびかぼすをろ過(3ミクロンメッシュ)して、ろ液と洗液を合せて240Lのかぼす黒豆飲料を得た。
【0028】
[比較例3]
前記市販の生の黒豆1.8Kgおよび市販の焙煎黒ごま315gを100℃に加熱した水21L中に加え、10分間100℃で加熱し水冷した後、焙煎黒ごまおよび黒豆をろ過(3ミクロンメッシュ)水洗して、ろ液と洗液を合せて21Lの黒ごま黒豆飲料を得た。
【0029】
[評 価]
次に、上記実施例及び比較例の黒豆飲料についての風味改善に関する評価について示す。すなわち、よく訓練した官能評価パネラー4名が、下記の評価基準に基づき採点し、酸味、豆臭、香り及び風味の評価項目ごとに平均点を算出し、その点数により改善効果を比較できるようにした。
【0030】
[評価基準]
各評価項目について4段階の評価点を設け、強い(4点)、中程度(3点)、弱い(2点)、無し(1点)とした。評価項目のうち、風味の評価では、各パネラーが酸味、豆臭、香りの評価結果も考慮に入れて、総合的に評価対象が飲料として好ましいか否かについて評価したものである。
酸味の点数が高いほど爽快感が感じられ飲料として望ましいが、酸味成分の特性により若しくは中程度の酸味によりまろやかさが得られること、香りの点数が高いほど、芳醇な香りを呈し飲料として望ましいこと、風味の点数が高いほど総合的に飲料として望ましいことを意味する。但し、豆臭については、その点数が低ければ低いほど豆類特有の生臭さが抑えられており、飲料として望ましいことを意味する。
【0031】
実施例1−1、比較例1、比較例2、比較例3について、それぞれ官能評価をした結果を表1に示す。また、表2には、原料として使用した黒豆、柚子、カボス、黒ごまそれぞれの水1mL当たりの重量(mg/mL)及び黒豆に対する柚子の重量比(柚子重量/黒豆の重量)を示す。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
表1及び表2より、酸味については、酸味成分の無い比較例1及び比較例3には認められず、酸味成分を含む比較例2と実施例1−1が、比較例2では鋭い酸味を、実施例1−1では爽快感があり且つまろやかな酸味をそれぞれ、強いレベルで呈している。豆臭については、比較例1の強い豆臭は、比較例2では弱いレベルで、比較例3では中程度のレベルで、それぞれ抑制されたものの依然として残存していたのに対して、実施例1−1では、完全に消失した。香りについては、比較例1では当初から認められず、比較例2では当初存在していた香りが消失しているのに対して、比較例3および実施例1−1では、黒ごまの焙煎臭および芳醇な柚子の香りがそれぞれ強いレベルで認められた。これらの官能評価の結果を考慮に入れた総合的評価である風味については、比較例1〜3では、無しのレベルでありいずれにも風味が認められず、実施例1−1にのみ比較的強いレベルの風味が認められ、風味が著しく改善された。以上より、黒豆に対する柚子の重量比が約19倍(19.44)である柚子黒豆飲料1−1は、従来の黒豆飲料である黒豆煮汁(比較例1)、かぼす黒豆飲料(比較例2)、黒ごま黒豆飲料(比較例3)と比較して、嗜好性が著しく向上しており、飲料として好適であることが理解される。
【0035】
つぎに、実施例2において得られた、黒豆に対する柚子の重量比が異なる10種類の柚子黒豆飲料2−1乃至2−10(実施例2−1乃至2−10)について、それぞれ官能評価を行った結果を表3に示す。また、表4には、原料として使用した黒豆、柚子それぞれの水1mL当たりの重量(mg/mL)及び黒豆に対する柚子の重量比(柚子重量/黒豆の重量)を示す。
【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
表3及び表4より、酸味については、黒豆に対する柚子の重量比が0.18(実施例2−1)から603.9(実施例2−10)へ増加するにつれて、無し(1点)のレベルから、重量比74.8以上においては強い(4点)レベルまで増加した。豆臭については、黒豆に対する柚子の重量比の増加に比例して抑制され、中程度のレベルから、重量比74.8以上においては無し(1点)のレベルまで減少した。香りについては、黒豆に対する柚子の重量比の増加に比例して、中程度のレベルから、重量比74.8以上においては強い(4点)レベルまで増加した。総合的評価である風味については、黒豆に対する柚子の重量比の増加に対して、弱いレベルから重量比74.8以上における強い(4点)レベルまで増加した。重量比0.18(実施例2−1)関する評価点の平均点1.75は、弱いレベルではあるが従来の黒豆飲料(前記表1及び表2参照)の風味より優れていた。以上より、実施例2−1〜2−10の柚子黒豆飲料は、従来の黒豆飲料(表1参照)に比較して、いずれも風味が改善されており、特に黒豆に対する柚子の重量比が74.8以上においては、豆臭が完全に消失しており、爽快感のある酸味及び芳醇な香りを強く呈し、風味が著しく改善されている。
【0039】
つぎに、実施例3において得られた、黒豆に対する柚子の重量比が異なる8種類の柚子黒豆飲料3−1乃至3−8(実施例3−1乃至3−8)について、それぞれ官能評価を行った結果を表5に示す。また、表6には、原料として使用した黒豆、柚子それぞれの水1mL当たりの重量(mg/mL)及び黒豆に対する柚子の重量比(柚子重量/黒豆の重量)を示す。
【0040】
【表5】

【0041】
【表6】

【0042】
表5及び表6より、酸味については、黒豆に対する柚子の重量比が3.7(実施例3−1)から56.2(実施例3−8)へ増加するにつれて、弱いレベルから重量比15以上における強い(4点)レベルまで増加した。豆臭については、黒豆に対する柚子の重量比の増加に比例して抑制され、中程度のレベルから、重量比14以上においては無し(1点)のレベルまで減少した。香りについては、黒豆に対する柚子の重量比の増加に比例して、中程度のレベルから、重量比28.1以上においては強い(4点)レベルまで増加した。なお、重量比14以上においては芳醇な香りが比較的強く認められた。総合的評価である風味については、黒豆に対する柚子の重量比の増加に比例して、中程度のレベルから重量比28.1以上においては強い(4点)レベルまで増加した。なお、重量比14以上においては比較的強い風味が認められた。以上より、実施例3−1〜3−8の柚子黒豆飲料は、従来の黒豆飲料(表1参照)に比較して、いずれも風味が改善されており、特に黒豆に対する柚子の重量比が14以上においては、豆臭が完全に消失しており、爽快感のある酸味及び芳醇な香りを強く又は比較的強く呈し、風味が大幅に改善されている。
【0043】
つぎに、実施例1において得られた、黒豆に対する柚子の重量比が異なる4種類の柚子黒豆飲料1−1乃至1−4(実施例1−1乃至実施例1−4)について、それぞれ官能評価を行った結果を表7に示す。なお、原料として使用した黒豆、柚子それぞれの水1mL当たりの重量(mg/mL)および黒豆に対する柚子の重量比(柚子重量/黒豆の重量)は、柚子黒豆飲料1−1乃至1−4で同一であり、それぞれ7.5mg/mL、145.8mg/mL、19.44であった。
【0044】
【表7】

【0045】
表7より、黒豆飲料1−1乃至1−4は、酸味、豆臭、香り、風味の何れの評価項目についても、ほぼ同一の評価結果を示している。この結果は、抽出媒体である水の温度が黒豆の水抽出に対して殆ど影響を及ぼしていないことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の柚子黒豆飲料は、豆臭が極めて少なく、且つまろやかな酸味と芳醇な香りを具えているため、嗜好性の高い抗酸化性物質であるアントシアニンに富む飲料として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒豆の水抽出液および柚子の果汁を含有してなることを特徴とする柚子黒豆飲料。
【請求項2】
黒豆に対する柚子の重量比が14倍以上である請求項1に記載の柚子黒豆飲料。
【請求項3】
黒豆の水抽出液は70℃〜100℃の水による黒豆の抽出液であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の柚子黒豆飲料。
【請求項4】
黒豆の水抽出液は5℃〜25℃の水による黒豆の抽出液であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の柚子黒豆飲料。