説明

柱の接合構造、柱接合用部材

【課題】 上下の柱のサイズが異なる場合において、柱の接合位置に応じて適切に補強が可能な柱の接合構造および柱接合用部材を提供する。
【解決手段】 リブ25bは、接合される柱5cと略同一のサイズである。リブ25bは、本体23に対して一方の方向に偏心して設けられる。偏心方向とは逆側のリブ25bの辺は、一定の高さで形成され、これと接続される両側の二辺は、偏心方向に向かって徐々に高さが低くなるように形成され、偏心方向側の辺は高さが0のリブとなる。すなわち、偏心方向側は、リブ25bが形成されず、コの字状に形成される。本体23の上面21の柱接合部27は、リブ25bと同一の偏心方向に偏心して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管柱を用いた構造物の柱の接合部に用いられる柱接合用部材およびこれを用いた柱の接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管柱を用いた構造物において、上下方向に柱を接合する部位がある。このような柱の接合部においては、上下に接合する柱のサイズが異なる場合がある。たとえば、下方の柱に対して、上方の柱のサイズが小さい場合である。このような場合には、接合する柱の間に、テーパ形状の接合部材を用いる方法がある。
【0003】
しかし、このようなテーパ状部材は、その製造が困難である。また、テーパ状部材とこれと接合される上下の水平面とは斜めに接触するため、テーパ状部材と水平面との接合部に設けられる板状部材である裏当て金の端面と水平面とが面接触ではなく、線接触となる。このため、この部位での溶接が困難であり、溶接不良の原因ともなる。したがって、サイズの異なるより簡易な柱の接合構造が検討されている。
【0004】
このような柱の接合構造としては、例えば、少なくとも一側面をテーパ形状とする枠状コラム部の上下にダイアフラムを接合し、ダイアフラムの側面と面一となるように枠状コラムのテーパ形状と対応するリブが設けられた接続コラムがある(特許文献1)。
【0005】
また、上下面に柱との接合部を有し、柱と接合される部位の中央に台形断面形状となる貫通孔等を有する接合部用金物がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案第3053480号公報
【特許文献2】実公平7−51524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の接続コラムは、梁との接合部は垂直になるが、テーパ形状の側面を有するため、その製造が困難であり、また、前述のように、テーパ形状の側面の上下の端面と、上下の水平面との接合も困難である。
【0008】
また、特許文献2に記載の接合部用金物は、テーパ形状側面を有するものではなく、製造は簡易であるが、上下の柱の位置関係のバリエーションを考慮した場合、最適な形状とは言えない。
【0009】
一方、上下に接合される柱は、必ずしも同一軸心上に設置されるわけではない。例えば、構造物における柱の位置によって、中柱、側柱、隅柱に分類され、それぞれの柱構造において、上下の柱の接合位置が同一ではない。また、このように柱の接合位置が異なる場合には、その柱の接合位置に応じて、柱接合用部材に必要な強度が異なる。しかし、全てに対応可能なように過剰に厚肉としたのでは、重量増やコスト増となる。このため、各部位において適切な形状で補強する必要がある。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、上下の柱のサイズが異なる場合において、柱の接合位置に応じて適切に補強が可能な柱の接合構造および柱接合用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、柱接合用部材を用いた柱の接合構造であって、柱接合用部材は、本体部と、前記本体部の下面に設けられたリブとを有し、前記柱接合用部材の下面に、中空の第1の柱が接合され、前記柱接合用部材の上面には、前記第1の柱よりもサイズの小さな中空の第2の柱が接合され、前記第2の柱を前記本体部に対して一方の側に偏心させ、前記第2の柱の当該一方の側の外側面の位置を、前記第1の柱の対応する外側面の位置と一致させた側柱と、前記第2の柱を前記本体部に対して一方の側に偏心させ、前記第2の柱の当該一方の側の外側面の位置を、前記第1の柱の対応する外側面の位置と一致させ、かつ、一方の側と直交する他方の側に前記第2の柱を前記本体部に対して偏心させ、前記第2の柱の当該他方の側の外側面の位置を、前記第1の柱の対応する外側面の位置と一致させた隅柱と、を少なくとも具備し、前記側柱および前記隅柱において、前記柱接合用部材は、前記第2の柱の偏心方向とは逆方向であって、平面視において、前記第1の柱からの距離が最も遠い前記第2の柱の対応する部位に、前記リブが最大高さとなるように形成されるとともに、前記第2の柱の偏心方向であって、前記第1の柱の位置と一致する前記第2の柱の対応する部位に向かって、前記リブの高さが徐々に低くなるように形成されることを特徴とする柱の接合構造である。
【0012】
リブの最大高さは、平面視における、前記第2の柱の偏心方向とは逆方向であって、前記第1の柱からの距離が最も遠くなる部位における距離に比例して形成され、前記側柱における前記柱接合用部材の前記リブの最大高さに対し、前記隅柱における前記柱接合用部材の前記リブの最大高さが√2倍の高さであることが望ましい。
【0013】
前記第2の柱の中心が前記第1の柱の中心と一致する中柱において、前記リブは、前記第2の柱の各辺に対応する部位に同一高さで形成され、前記リブの高さは、前記側柱における前記柱接合用部材の前記リブの最大高さの1/2の高さであることが望ましい。
【0014】
前記柱接合用部材の上面には、前記第2の柱の接合位置を示す柱接合部が設けられ、前記柱接合部は、前記本体部の面上に形成されたマークであることが望ましい。
【0015】
前記マークは、前記本体部の面上において、柱接合部以外の部位に対して凸形状または凹形状であってもよい。
【0016】
第1の発明によれば、本体部の上面に接合される第2の柱が、本体部に対して偏心しており、本体部の裏面には、柱の接合位置に応じた形状のリブが設けられる。このため、確実に柱接合用部材に必要な強度を確保できるとともに、過剰に大きなリブを形成する必要がない。
【0017】
また、リブの高さは、下部の第1の柱の側壁位置から、上部の第2の柱の側壁位置までの距離に応じて決定することで、設計が容易である。具体的には、第2の柱が本体部の中心に接合される中柱の場合には、第1の柱の側壁位置と第2の柱の側壁位置との距離は、全周にわたって均一となる。このため、リブ高さは、均一な高さに設定すればよい。
【0018】
これに対し、側柱は、一方の方向に偏心し、偏心方向の逆側において、第1の柱の側壁位置と第2の柱の側壁位置との距離が最大となり、中柱における距離の2倍となる。このため、最大リブ高さは中柱における場合に対して2倍の最大高さとすればよい。
【0019】
同様に、隅柱は、互いに直行する二方向に偏心し、偏心方向と逆側において、第1の柱の側壁位置と第2の柱の側壁位置との距離が最大となり、側柱における距離の√2倍となる。このため、最大リブ高さは側柱における場合に対して√2倍の最大高さとすればよい。
【0020】
また、本体部の第2の柱との接合部側の面に柱接合部が形成され、柱接合部が第2の柱接合位置に応じて本体部に対して偏心しているため、第2の柱の接合位置を間違えることがない。また、このような柱接合部を複数のマークで構成することで容易に柱接合位置を把握することもできる。特に、柱接合部が面に対して凸または凹であれば、確実に柱の接合位置を確認することができる。
【0021】
第2の発明は、柱接合用部材であって、本体部と、前記本体部の下面に設けられ、前記柱接合用部材の対応する辺に平行に設けられるリブとを有し、前記本体部の上面には、接合される柱の接合位置を示す柱接合部が設けられ、前記柱接合部は、前記本体部の面上に形成されたマークであり、前記柱接合部は、前記本体部に対して少なくとも一方の側に偏心しており、前記リブは、前記柱接合部の偏心方向とは逆方向の端部が最大高さとなるように形成されるとともに、前記柱接合部の偏心方向の端部の高さが0となるように形成され、かつ、前記リブの最大高さの部位から高さが0となる部位に向かって、前記リブの高さが徐々に低くなるように形成されることを特徴とする柱接合用部材である。
【0022】
また、前記マークは、前記本体部の面上において、柱接合部以外の部位に対して凸形状または凹形状であってもよい。
【0023】
第2の発明によれば、軽量であり強度の高い柱接合用部材を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、上下の柱のサイズが異なる場合において、柱の接合位置に応じて適切に補強が可能な柱の接合構造および柱接合用部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】接合部材3aを用いた、柱の接合構造1を示す斜視図。
【図2】柱の接合構造1における柱の配置を示す模式図。
【図3】接合部材3aを示す斜視図であり、(a)は裏面斜視図、(b)は表面斜視図。
【図4】中柱9の柱と梁との接合部を示す図であり、図5のB−B線断面図。
【図5】中柱9の柱の接合構造を示す立面図であり、図4のA−A線断面図。
【図6】接合部材3bを示す図であり、(a)は裏面斜視図、(b)は表面斜視図。
【図7】側柱11の柱と梁との接合部を示す図であり、図8のE−E線断面図。
【図8】側柱11の柱の接合構造を示す立面図であり、図7のD−D線断面図。
【図9】接合部材3cを示す図であり、(a)は裏面斜視図、(b)は表面斜視図。
【図10】隅柱13の柱と梁との接合部を示す図であり、図11(a)のJ−J線断面図。
【図11】隅柱13の柱の接合構造を示す立面図であり、(a)は図10のG−G線断面図、(b)は図10のI−I線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態にかかる柱の接合構造1について説明する。図1は、柱の接合構造1の一部(中柱)を示す斜視図である。柱の接合構造1は、下方から柱5a、5b、5cが鉛直方向に配置され、それぞれの柱間には柱接合用部材である接合部材3、3aが設けられる。下方の接合部材3の下面19aには柱5aの上端が接合され、上面21aには柱5bの下端が接合される。また、柱5bの上端は接合部材3aの下面19と接合される。さらに接合部材3aの上面21には柱5cの下端が接合される。なお、接合部材3は、通常の平板形状の接合部材でよい。
【0027】
柱5a、5bは同一サイズの中空の角型鋼管である。柱5cは、柱5a、5bよりもサイズの小さな中空の角型鋼管である。接合部材3aは、柱5bのサイズよりもわずかに大きなサイズの矩形形状の平板状部材である。なお、接合部材3aは例えば鋼製であり、概ね300〜1000mm角程度の大きさであるが、接合される柱のサイズにより任意に設定することができる。
【0028】
接合部材3、3aで挟まれた範囲の柱5bには、水平方向に梁7が接合される。したがって、梁7のフランジ部の端部は、接合部材3、3aの側面に接合され、梁7のウェブ部の端部が柱5bの側面と接合される。すなわち、上下の接合部材3、3aの設置間隔(柱5bの長さ)は、梁7の高さとほぼ一致する。なお、梁7のウェブ部の上下端部(フランジ部近傍)は、接合部材3、3aとの干渉を避けるため、切欠きが設けられる。
【0029】
図2は、柱の接合構造1を示す平面模式図である。柱の接合構造1は、周囲を外壁17で覆われ、所定間隔で柱5b(5a)が設置される。柱5b(5a)同士は梁7によって接続されている。なお、図2においては簡単のため接合部材3等は図示を省略する。下方に設置された柱5b(5a)上には、柱5b(5a)よりもサイズの小さな柱5cが設置される。
【0030】
ここで、四方向に梁7が接合される部位の柱を中柱9と称する。また、一方の側に外壁17が形成される部位の柱を側柱11と称する。また、柱の接合構造1の隅に形成され、二方向に外壁17が形成される部位の柱を隅柱13と称する。
【0031】
中柱9は、水平方向の縦横両方に梁7が接合されており、柱5b(5a)に対して、柱5cは同心に配置される。すなわち、下方の柱5b(5a)の中心と、よりサイズの小さな柱5cの中心位置が一致する。
【0032】
これに対し、側柱11は、下方の柱5b(5a)の中心と、よりサイズの小さな柱5cの中心位置が一致せず、柱5b(5a)に対して、柱5cは一方向に偏心して配置される(例えば図中上方向)。柱5cは、外壁17側に偏心し、柱5b(5a)の外壁17側の側面と柱5cの外壁17側の側面とが同一の位置となるように配置される。すなわち、柱5cは、柱5b(5a)の一方向側(外壁17側)に偏心し、偏心方向とは垂直な方向(例えば図中左右方向)には偏心しない。
【0033】
一方、隅柱13は、二方向に接する外壁17方向それぞれの方向に偏心する。柱5cは、それぞれの外壁17側に偏心し、柱5b(5a)のそれぞれの外壁17側の側面と柱5cの対応する外壁17側の側面とが同一の位置となるように配置される。すなわち、柱5cは、柱5b(5a)の一方向側(例えば図中上側の外壁17側)に偏心するとともにこれと垂直な方向(例えば図中右側の外壁17側)にも同量だけ偏心し、柱5cの各辺に対して斜め方向に偏心する。
【0034】
次に、接合部材3aについて詳細を説明する。図3(a)は中柱用の接合部材3aを示す裏面斜視図、図3(b)は表面斜視図である。接合部材3aの本体23は、略矩形の平板状部材である。接合部材3aの下面19には、リブ25aが設けられる。リブ25aは、略矩形に下面19に突出する。
【0035】
リブ25aは、接合される柱5cと略同一のサイズであり、全て同一高さ、同一厚みで形成される。なお、リブ25aは、本体23と一体で形成されてもよく、本体23に板部材を接合してもよく、または柱5cと同一の角型鋼管を切断して本体23に接合してもよい。
【0036】
本体23の上面21には、必要に応じてマークである柱接合部27が設けられる。柱接合部27は、上面21において他の部位よりもわずかに肉厚が厚く形成される。柱接合部27は、上面21側において柱と接合される範囲となり、柱5cよりもわずかに広い範囲に形成され、柱5cとの溶接代が確保される。
【0037】
また、柱接合部27の高さとしては、目視で隙間が認識できれば良く、2mm〜5mm程度であれば良い。なお、図3(b)において破線で示した部位は、下面19側のリブ25aの位置を、上面21側に投影して示したものである。接合部材3aの柱接合部27の外縁は、リブ25aの外周部と略一致するように(柱接合部27がわずかに大きく)形成される。
【0038】
図4は、中柱9における柱の接合構造を示す平面断面図であり、図5のB−B線断面図であり、図5は、中柱9における柱の接合構造を示す立面断面図であり、図4のA−A線断面図である。図4に示すように、中柱9では、柱5b上に接合部材3aが設置され、接合部材3aの上面21の中心に柱5cが設置される。すなわち、柱5cは、接合部材3aの中心に接合される。なお、接合部材3aの下面に設置される柱5bの中心は、柱5cの設置位置によらず、接合部材の中心と一致する。また、柱5cは前述した柱接合部27内に接合される。
【0039】
また、図5に示すように、リブ25aは、柱5cの接合位置に対応する部位に形成される。すなわち、接合部材3aを介して、上下の同一位置に柱5cとリブ25aが設けられる。
【0040】
なお、通常、接合部材3aの上下に設置される異なるサイズの柱は、サイズが50mm〜150mm程度異なるものが多い。したがって、柱5bの側面と柱5cの側面との距離(図中L1)は25〜75mm程度となる。中柱9においては、柱5cの全位置で、図に示す柱5bの側面と柱5cの側面との距離が一定となる。本発明においては、柱5bの側面と柱5cの側面との距離に応じて、リブ25aの高さが設定される。したがって、中柱9においては、リブ25aの高さ(図中H1)は、リブ25aの全ての位置で一定となる。
【0041】
図6(a)は側柱用の接合部材3bを示す裏面斜視図、図6(b)は表面斜視図である。接合部材3bは接合部材3aと略同様の構成であるが、リブ25bの形態および柱接合部27の配置が異なる。なお、以下の説明において、接合部材3a等と同一の機能を奏する構成については図3〜図5と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0042】
リブ25bは、接合される柱5cと略同一のサイズである。リブ25bは、本体23に対して一方の方向(図中矢印C方向)に偏心して設けられる。偏心方向とは逆側のリブ25bの辺は、一定の高さで形成され、これと接続される両側の二辺は、偏心方向に向かって徐々に高さが低くなるように形成され、偏心方向側の辺は高さが0のリブとなる。すなわち、偏心方向側の辺には、リブ25bが形成されず、リブ25bは全体としてコの字状に形成される。なお、リブ25bもリブ25aと同様の方法で形成すればよい。
【0043】
本体23の上面21の柱接合部27は、リブ25bと同一の偏心方向(図中矢印C方向)に偏心して配置される。なお、図6(b)において破線で示した部位は、下面19側のリブ25bの位置を、上面21側に投影して示したものである。接合部材3bの柱接合部27の外縁は、リブ25bの三辺の外周部と略一致するように(柱接合部27がわずかに大きく)形成される。
【0044】
図7は、側柱11における柱の接合構造を示す平面断面図であり、図8のE−E線断面図であり、図8は、側柱11における柱の接合構造を示す立面断面図であり、図7のD−D線断面図である。図7に示すように、側柱11では、接合部材3bを挟んで、下方の柱5bの一方の側面(図中上方)と、上方の柱5cの一方の側面(図中上方)とが一致するように設置される。すなわち、柱5cは、接合部材3bの一方にのみ偏心する。
【0045】
なお、側面が一致する側に対して垂直な方向(図中左右方向)の配置においては、接合部材3bの中心と柱5cの中心は一致する。また、柱5cは前述した柱接合部27内に接合される。
【0046】
また、図8に示すように、リブ25bは、柱5cの接合位置に対応する部位に形成される。すなわち、接合部材3bを介して、上下の同一位置に柱5cとリブ25bが設けられる。なお、柱5bと柱5cとの側面が一致する部位(図中右側)では、リブ25bが形成されないため、接合部材3bの上下の同一位置に柱5b、5cが接合される。
【0047】
ここで、偏心方向(図中矢印C方向)とは逆側において、柱5bの側面と柱5cの側面との距離(図中L2)が最大となる。すなわち、側柱11においては、偏心方向とは逆側の柱5cの辺が、最も距離L2が大きくなる。この場合、L2の最大値は、中柱9における当該距離(図5のL1)の2倍となる。
【0048】
本発明においては、柱5bの側面と柱5cの側面との距離(偏心方向の延長線上における柱5bの側面と柱5cの側面との距離)に応じて、リブ25bの高さが設定される。したがって、側柱11においては、リブ25bの高さ(図中H2)は、柱5bの側面と柱5cの側面との距離が最大となる部位で最大高さとなり、柱5bの側面と柱5cの側面との距離が0となる部位に向かって徐々に低くなるように設定される。
【0049】
なお、リブ25bの最大高さH2は、中柱9におけるリブ25aの高さの2倍となる。これは、偏心方向延長線上における柱5bの側面と柱5cの側面との距離の最大値は、中柱9の距離L1に対して側柱11の距離L2が2倍となるためである。すなわち、リブ25bの最大高さは、柱5bの側面と柱5cの側面との距離に比例して設定すればよい。
【0050】
図9(a)は隅柱用の接合部材3cを示す裏面斜視図、図9(b)は表面斜視図である。接合部材3cは接合部材3aと略同様の構成であるが、リブ25cの形態および柱接合部27の配置が異なる。
【0051】
リブ25cは、接合される柱5cと略同一のサイズである。リブ25cは、本体23に対して一方の方向(図中矢印F方向)に偏心して設けられる。偏心方向とは逆側のリブ25cの角が最大高さとなり、これと接続される両側の二辺は、偏心方向に向かって徐々に高さが低くなるように形成され、偏心方向側の二辺は高さが0のリブとなる。すなわち、偏心方向側は、リブ25cが形成されず、L字状に形成される。なお、リブ25cもリブ25aと同様の方法で形成すればよい。
【0052】
本体23の上面21の柱接合部27は、リブ25cと同一の偏心方向(図中矢印F方向)に偏心して配置される。なお、図9(b)において破線で示した部位は、下面19側のリブ25cの位置を、上面21側に投影して示したものである。接合部材3cの柱接合部27の外縁は、リブ25cの二辺の外周部と略一致するように(柱接合部27がわずかに大きく)形成される。
【0053】
図10は、隅柱13における柱の接合構造を示す平面断面図であり、図11(a)のJ−J線断面図であり、図11は、側柱11における柱の接合構造を示す立面断面図であり、図11(a)は図10のG−G線断面図、図11(b)は図10のI−I線断面図である。
【0054】
図10に示すように、隅柱13では、接合部材3cを挟んで、下方の柱5bの一方の側面(図中上方)と、上方の柱5cの一方の側面(図中上方)とが一致するとともに、これと直行する他方の側面(図中右側)と、上方の柱5cの他方の側面(図中右側)とが一致するように設置される。すなわち、柱5cは、接合部材3cの各辺に対して斜めに偏心する(図中矢印F方向)。
【0055】
また、図11(a)、図11(b)に示すように、リブ25cは、柱5cの接合位置に対応する部位に形成される。すなわち、接合部材3cを介して、上下の同一位置に柱5cとリブ25cが設けられる。なお、柱5bと柱5cとの側面が一致する部位(図中右側)では、リブ25c高さが0となり、リブが形成されないため、接合部材3cの上下の同一位置に柱5b、5cが接合される。
【0056】
ここで、図11(b)に示すように、偏心方向(図中矢印F方向)とは逆側(この場合、接合部材3cの各辺に対して斜めの方向)において、柱5bの側面と柱5cの側面との距離(図中L3)が最大となる。すなわち、隅柱13においては、偏心方向とは逆側の柱5cの角が、最も距離L3が大きくなる。この場合、L3の最大値は、側柱11における当該距離(図8のL2)の√2倍となる。
【0057】
本発明においては、柱5bの側面と柱5cの側面との距離(偏心方向の延長線上における柱5bの側面と柱5cの側面との距離)に応じて、リブ25cの高さが設定される。したがって、隅柱13においては、リブ25cの高さ(図中H3)は、柱5bの側面と柱5cの側面との距離が最大となる部位で最大高さとなり、柱5bの側面と柱5cの側面との距離が0となる部位に向かって徐々に低くなるように設定される。
【0058】
なお、リブ25cの最大高さH3は、側柱11におけるリブ25bの最大高さの√2倍となる。これは、偏心方向延長線上における柱5bの側面と柱5cの側面との距離の最大値は、側柱11の距離L2に対して隅柱13の距離L3が√2倍となるためである。すなわち、リブの最大高さは、柱5bの側面と柱5cの側面との距離に比例して設定すればよい。
【0059】
本実施の形態にかかる接合部材3a、3b、3cによれば、中柱9、側柱11、隅柱13のそれぞれの位置における柱5cに対しても、最適な形状の接合部材を適用することができる。このため、過剰に重量増となることがなく、必要な強度を確保することができる。また、柱が接続される範囲に柱接合部27が形成されるため、柱の接合位置を間違えることがない。
【0060】
また、柱5bの側面と柱5cの側面との距離に応じて、リブの高さが設定される。したがって、接合部材の設計が容易である。
【0061】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0062】
例えば、柱の形状は実施例のような略正方形の角型柱に限られず、略長方形や円断面など柱の形状によらず、本発明は適用可能である。また、柱接合部27は、それぞれ他の部位に対して突出するように形成したが、当該部分を他の部位より薄肉に凹むように形成してもよい。
【0063】
また、接合部材の上面には、柱の接合位置を示すマークとして柱接合部27を凸状、または凹上に示す例を説明したが、接合位置を示すマークとしてとしては、柱接合位置を示す線、例えばけがき線や微小な溝、インク等により描かれた線等であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1………柱の接合構造
3、3a、3b、3c………接合部材
5a、5b、5c………柱
7………梁
9………中柱
11………側柱
13………隅柱
15………構造体
17………外壁
19、19a………下面
21a、21b………上面
23………本体
25a、25b、25c………リブ
27………柱接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱接合用部材を用いた柱の接合構造であって、
柱接合用部材は、本体部と、前記本体部の下面に設けられたリブとを有し、
前記柱接合用部材の下面に、中空の第1の柱が接合され、前記柱接合用部材の上面には、前記第1の柱よりもサイズの小さな中空の第2の柱が接合され、
前記第2の柱を前記本体部に対して一方の側に偏心させ、前記第2の柱の当該一方の側の外側面の位置を、前記第1の柱の対応する外側面の位置と一致させた側柱と、
前記第2の柱を前記本体部に対して一方の側に偏心させ、前記第2の柱の当該一方の側の外側面の位置を、前記第1の柱の対応する外側面の位置と一致させ、かつ、一方の側と直交する他方の側に前記第2の柱を前記本体部に対して偏心させ、前記第2の柱の当該他方の側の外側面の位置を、前記第1の柱の対応する外側面の位置と一致させた隅柱と、を少なくとも具備し、
前記側柱および前記隅柱において、前記柱接合用部材は、前記第2の柱の偏心方向とは逆方向であって、平面視において、前記第1の柱の端部からの距離が最も遠い前記第2の柱の対応する部位に、前記リブが最大高さとなるように形成されるとともに、前記第2の柱の偏心方向であって、前記第1の柱の位置と一致する前記第2の柱の対応する部位に向かって、前記リブの高さが徐々に低くなるように形成されることを特徴とする柱の接合構造。
【請求項2】
リブの最大高さは、平面視における、前記第2の柱の偏心方向とは逆方向であって、前記第1の柱からの距離が最も遠くなる部位における距離に比例して形成され、
前記側柱における前記柱接合用部材の前記リブの最大高さに対し、
前記隅柱における前記柱接合用部材の前記リブの最大高さが√2倍の高さとなることを特徴とする請求項1記載の柱の接合構造。
【請求項3】
前記第2の柱の中心が前記第1の柱の中心と一致する中柱において、前記リブは、前記第2の柱の各辺に対応する部位に同一高さで形成され、
前記リブの高さは、前記側柱における前記柱接合用部材の前記リブの最大高さの1/2の高さであることを特徴とする請求項2記載の柱の接合構造。
【請求項4】
前記柱接合用部材の上面には、前記第2の柱の接合位置を示す柱接合部が設けられ、前記柱接合部は、前記本体部の面上に形成されたマークであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の柱の接合構造。
【請求項5】
前記マークは、前記本体部の面上において、柱接合部以外の部位に対して凸形状または凹形状であることを特徴とする請求項4記載の柱の接合構造。
【請求項6】
柱接合用部材であって、
本体部と、前記本体部の下面に設けられ、前記柱接合用部材の対応する辺に平行に設けられるリブとを有し、
前記本体部の上面には、接合される柱の接合位置を示す柱接合部が設けられ、前記柱接合部は、前記本体部の面上に形成されたマークであり、
前記柱接合部は、前記本体部に対して少なくとも一方の側に偏心しており、
前記リブは、前記柱接合部の偏心方向とは逆方向の端部が最大高さとなるように形成されるとともに、前記柱接合部の偏心方向の端部の高さが0となるように形成され、かつ、前記リブの最大高さの部位から高さが0となる部位に向かって、前記リブの高さが徐々に低くなるように形成されることを特徴とする柱接合用部材。
【請求項7】
前記マークは、前記本体部の面上において、柱接合部以外の部位に対して凸形状または凹形状であることを特徴とする請求項6記載の柱接合用部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−49950(P2013−49950A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186804(P2011−186804)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000233239)日立機材株式会社 (225)
【Fターム(参考)】