説明

柱梁接合構造

【課題】 固有周期を変えることによって外乱に対応する応答変位、応答速度、応答加速度を低減することが可能な柱梁接合構造を提供する。
【解決手段】 剛性調整部材38が電気信号によって締結ボルト32の軸方向に伸びると、締結用ボルト32による梁16の下側のフランジ163に対する締結力が増大し、柱14と梁16の接合部分の剛性が高い状態となる。剛性調整部材38が締結ボルト32の軸方向に縮むと、締結用ボルト32による梁16の下側のフランジ163に対する締結力が減少し、柱14と梁16の接合部分の剛性が低い状態となる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固有周期を変えることができる柱梁接合構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、建築物の主体骨組の梁と柱の接合部分(以下柱梁接合部という)は、剛接合された柱梁接合構造となっており、その剛性は柱梁接合部に損傷がない限りは一定の値である。このような柱梁接合構造を有して構成された主体骨組は、その固有周期が一定であり、例えば地震動や風などの外乱を受けた場合にはこれら外乱に応じた応答、すなわち振動を生じる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような主体骨組の固有周期と、外乱の卓越周期(すなわち、この外乱の周期成分のうち、特に大きな比率を示す周期成分)とが非常に近い値となると、主体骨組に共振現象が生じ、上記外乱に対する主体骨組の応答変位、応答加速度、応答速度は大きな値になりやすい。従来の梁柱接合構造では、先に述べたようにその固有周期が一定であるため、外乱の卓越周期が上記固有周期に近い値となった場合に大きな応答となることを防ぐことが困難であった。本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、固有周期を変えることによって外乱に対応する応答変位、応答速度、応答加速度を低減することが可能な柱梁接合構造を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため本発明は、柱と梁の間を連結部材で連結することによって前記柱と梁を接合する柱梁接合構造であって、前記柱と梁と連結部材との間の連結強度を変化させることで前記柱と梁の接合部分の剛性を調整する剛性調整部材を設けたことを特徴とする。また、本発明は、前記柱の部分または梁の部分の一方の被挟持片が、前記柱の部分または梁の部分の他方の一対の挟持片の間に挟まれるように配置され、前記連結部材は、前記一対の挟持片に設けられこれら挟持片の間に出没し一対の挟持片の間で被挟持片を締結するボルトから構成され、前記剛成調整部材は前記被挟持片と前記ボルトとの間に配設され、前記挟持片とボルトによる締結力を調整するように構成されていることを特徴とする。また、本発明は、前記連結部材はボルトとナットから構成され、前記柱と梁との連結は、柱の部分と梁の部分が前記ボルト、ナットにより締結されることで行なわれ、前記剛成調整部材は前記ボルトとナットの間に配設され、ボルト、ナットによる締結力を調整するように構成されていることを特徴とする。また、本発明は、前記剛性調整部材は入力信号に応じて前記ボルトの軸方向の寸法が増減し、それに伴いボルト軸方向に応力が加わる圧電素子または超磁歪素子で構成されていることを特徴とする。また、本発明は、前記剛性調整部材による前記柱と梁との間の連結強度の調整を外乱に基いて制御する制御手段が設けられていることを特徴とする。また、本発明は、前記外乱は、前記梁と柱を有する建築物に加わる地震動や風による荷重の変化であることを特徴とする。また、本発明は、前記制御手段による前記柱と梁との間の連結強度の調整の制御は前記外乱の卓越周期に応じて行なわれることを特徴とする。そのため、剛性調整部材によって柱と梁の接合部分の剛性を調整することによって柱と梁を有して構成される建築物の主体骨組の固有周期を変化させることで、主体骨組の共振現象の発生を防止することができ、外乱に対する主体骨組の応答(応答変位、応答加速度、応答速度)を抑制することができる。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明に係る柱梁接合構造の第1の実施の形態の構成を示す正面図、図2は図1をAA線から見た状態を示す側面図、図3は図1、図2に矢印Bで示した箇所を示す部分拡大図、図4は本発明に係る柱梁接合構造の第2の実施の形態の構成を示す部分拡大図、図5は建築物の主体骨組の構成を示す説明図である。
【0006】図5に示されているように、建築物の主体骨組10は、地盤12から鉛直方向に延在して設けられた柱14と、地盤12に対して水平方向に延在され各柱14の間を連結する梁16とから構成されている。柱14と梁16はそれらの長手方向が直交する部分、すなわち柱梁接合部17の箇所で連結されている。そして、本発明の柱梁接合構造は柱梁接合部17に適用される。
【0007】次に、図1乃至図3、図5を参照して第1の実施の形態における柱梁接合構造の構成について説明する。第1の実施の形態における柱梁接合構造100は、柱14、梁16、山形鋼18、20、22、24、ウェブ接合部26、ボルト28、ナット30、締結用ボルト32(特許請求の範囲のボルトに相当)、固定用ナット34、座金36、剛性調整部材38、弾性部材40などを備えて構成されている。
【0008】図1、図2に示されているように、柱14はH形鋼から構成されその材軸141が鉛直方向に延在するように設けられている。柱14は、ウェブ142とウェブ142を挟むフランジ143とから構成されている。梁16はH形鋼から構成されその材軸161が水平方向に延在するように設けられている。梁16は、ウェブ162とウェブ162を挟む上側と下側のフランジ163とから構成されている。柱14の一方のフランジ143は、対向する外側面143Aと内側面143Bを有し、外側面143Aからその外方に向けて矩形板状のウェブ接合部26が突設されている。ウェブ接合部26は対向する面26A、26Bを有している。梁16のウェブ162は対向する面162A、162Bを有しており、ウェブ接合部26は、その面26Aが梁16の面162Aに接触した状態でボルト28とナット30によって梁16に締結されている。
【0009】山形鋼18は、一方の片部181が柱14のフランジ143の外側面143Aに接した状態でボルト28とナット30によって柱14に締結され、他方の片部182が梁16の上側のフランジ163の外側面163Aに接した状態でボルト28とナット30によって梁16に締結されている。山形鋼20は、梁16のウェブ162の面162Bと下側のフランジ163の内側面163Bに間隔をおいて臨む位置に配設され、一方の片部201が柱14のフランジ143の外側面143Aに接した状態でボルト28とナット30によって柱14に締結されている。山形鋼22は、梁16のウェブ162の面162Aと下側のフランジ163の内側面163Bに間隔をおいて臨む位置に配設され、一方の片部221が柱14のフランジ143の外側面143Aに接した状態でボルト28とナット30によって柱14に締結されている。山形鋼24は、前記山形鋼20、23と梁16の下側のフランジ163を挟んで反対側で、梁16の下側のフランジ163の外側面163Aに臨む位置に配設され、一方の片部241が柱14のフランジ143の外側面143Aに接した状態でボルト28とナット30によって柱14に締結されている。
【0010】そして、山形鋼20の他方の片部202は互いに対向する一方の面202Aと他方の面202Bを有し、山形鋼22の他方の片部222は互いに対向する一方の面222Aと他方の面222Bを有している。また、山形鋼24の他方の片部242は互いに対向する一方の面242Aと他方の面242Bを有している。山形鋼20、22の他方の片部202、222の一方の面202A、222Aは、梁16の下側のフランジ163の内側面163Bと間隔をおいて位置し、山形鋼24の他方の片部242の一方の面242Aは、梁16の下側のフランジ163の外側面163Aと間隔をおいて位置している。すなわち、山形鋼20、22の他方の片部202、222および山形鋼24の他方の片部242と(特許請求の範囲の一対の挟持片に相当)は、梁16の下側のフランジ163(特許請求の範囲の被挟持片に相当)を挟んで対向している。なお、上記山形鋼20、22の他方の片部202、222および山形鋼24の他方の片部242と、梁16の下側のフランジ163によって特許請求の範囲の連結部材が構成されている。
【0011】山形鋼20の他方の片部202には、その厚み方向に貫通したねじ孔203が複数個、本例では6個設けられている。同様に山形鋼22の他方の片部222にも、その厚み方向に貫通した図略のねじ孔が複数個、本例では6個設けられている(以下、他方の片部222に設けられたねじ孔についてもねじ孔203として説明する)。締結用ボルト32は、上部が平坦な面からなる頭部321とこの頭部321の下部に接続され山形鋼20、22、24の一方の片部202、222、242の厚さ方向の寸法寄りも長い寸法を有するねじ部322を有して構成されている。
【0012】山形鋼20、22に形成されたねじ孔203には、締結用ボルト32がその頭部321を梁16の下側のフランジ163の内側面163Bに臨ませた状態でねじ部322が螺合されている。したがって、締結用ボルト32をその軸回り方向に回動させることによって頭部321が山形鋼20、22の一方の片部202、222と山形鋼24の一方の片部242との間に出没し得るようになっている。そして、締結用ボルト32は、各ねじ孔203から突出したねじ部322の部分が座金36に挿通された状態で固定用ナット34に螺合されている。したがって、固定用ナット34を締め付けることによって各締結用ボルト32が山形鋼20、22に固定されるようになっている。
【0013】一方、山形鋼24の他方の片部242にも、その厚み方向に貫通したねじ孔243が複数個設けられている。山形鋼24の他方の片部242に形成されたねじ孔243には、締結用ボルト32がその頭部321を梁16の下側のフランジ163の外側面163Aに臨ませた状態でねじ部322が螺合されている。したがって、締結用ボルト32をその軸回り方向に回動させることによって頭部321が山形鋼20、22の一方の片部202、222と山形鋼24の一方の片部242との間に出没し得るようになっている。そして、締結用ボルト32は、各ねじ孔243から突出したねじ部322の部分が座金36に挿通された状態で固定用ナット34に螺合されている。したがって、固定用ナット34を締め付けることによって各締結用ボルト32が山形鋼24に固定されるようになっている。ここで、山形鋼20、22に設けられたねじ孔203と、山形鋼24に設けられたねじ孔243とはそれぞれ同一の軸線上に位置するように構成されている。
【0014】そして、山形鋼20、22に螺合された締結用ボルト32の頭部321の上面321Aと梁16の下側のフランジ163の内側面163Bとの間に後述する剛性調整部材38が配設され、山形鋼24に螺合された締結用ボルト32の頭部321の上面321Aと梁16の下側のフランジ163の外側面163Aとの間にも剛性調整部材38が配設されている。剛性調整部材38は、それに印加される電気信号に対応して締結用ボルト32の軸方向、すなわち山形鋼20、22、24の一方の片部202、222、242の厚さ方向に寸法が変化するように構成されている。すなわち、剛性調整部材38は入力信号に応じて締結用ボルト32の軸方向の寸法が増減し、それに伴いボルト軸方向に応力が加わるようになっている。剛性調整部材38は、例えば電圧に応じて寸法が変化する圧電素子あるいは与えられる磁界に応じて寸法が変換する超磁歪素子から構成することができる。なお、剛性調整部材38の寸法を変化させるための電圧や磁界を印加する回路については図示を省略している。
【0015】各剛性調整部材38は締結用ボルト32の軸方向と直交し、互いに対向する第1、第2面381、382を有している。各剛性調整部材38は、第1面381が締結用ボルト32の頭部321の上面321Aに当接し、第2面382が弾性部材40を挟んで梁16の下側のフランジ163の内側面163B、外側面163Aにそれぞれ当接されるように設けられている。上記弾性部材40は、上下方向すなわち締結用ボルト32の軸方向(剛性調整部材38の寸法が変化する方向)に加わる荷重に対しては剛く、かつ、水平方向すなわち締結用ボルト32の軸方向と直交する方向に加わる荷重に対しては柔らかい特性を有する、例えばゴムなどから構成されている。したがって、この弾性部材40によって上記剛性調整部材38に加わるせん断方向の力が吸収されることで弾性部材40の破損が防止されるようになっている。なお、図2は図面の煩雑化を避けるために締結用ボルト32、固定用ナット34、座金36、弾性部材40の図示を省略している。
【0016】また、図示されていないが、地震動や風によって建築物10に加わる荷重の変化を検知するための検知手段が建築物10の内部または外部に設けられている。そして、これら検知手段から出力される検知信号を入力すると共に、入力した検知信号に基いて電気信号を生成して剛性調整部材38に与える制御手段が設けられている。
【0017】次に、上述のように構成された柱梁接合構造100の作用について説明する。まず、各締結用ボルト30を軸回り方向に回動させることによって頭部321の位置を調整することで、各剛性調整部材38の第1面381が締結用ボルト32の頭部321の上面321Aに、第2面382が弾性部材40を挟んで梁16の下側のフランジ163の内側面163B、外側面163Aにそれぞれ適当な圧接力でそれぞれ当接されるようにする。そして、各固定用ナット34を締結用ボルト32を山形鋼20、22、24に対して締め付けることによって締結用ボルト32の位置が調整された位置からずれないように固定する。
【0018】この状態で剛性調整部材38が電気信号によって締結ボルト32の軸方向に伸びると、締結用ボルト32による梁16の下側のフランジ163に対する締結力が増大する。すなわち、柱14と梁16の連結強度が増大し、梁16の下側のフランジ163に生じる曲げ引っ張り力または曲げ圧縮力が柱14に伝達される度合いが高くなり、柱14と梁16の接合部分の剛性が高い状態となる。一方、剛性調整部材38が締結ボルト32の軸方向に縮むと、締結用ボルト32による梁16の下側のフランジ163に対する締結力が減少する。すなわち、すなわち、柱14と梁16の連結強度が減少し、梁16の下側のフランジ163に生じる曲げ引っ張り力または曲げ圧縮力が柱14に伝達される度合いが低くなり、柱14と梁16の接合部分の剛性が低い状態となる。すなわち、剛性調整部材38に与える電気信号によって柱14と梁16の接合部分の剛性の高低を調整することが可能となる。したがって、剛性調整部材38に与える電気信号を制御することによって柱14と梁16の接合部分の剛性の高低を調整することで、柱14と梁16から構成される建築物10の主体骨組の固有周期を変化させることができる。
【0019】前述した検知手段は、地震動や風が建築物10に与える荷重の変化、すなわち外乱を検知して検知信号を制御手段に入力する。制御手段は、この検知信号に基いて外乱の卓越周期に応じて前記固有周期を変化させるように電気信号を生成して剛性調整部材38に与える。つまり、制御手段が前記固有周期が外乱の卓越周期と近い値にならないように固有周期を変化させれば、主体骨組の共振現象の発生を防止することができ、外乱に対する主体骨組の応答(応答変位、応答加速度、応答速度)を抑制することができる。
【0020】次に、図4を参照して第2の実施の形態における柱梁接合構造の構成について説明する。なお、図4R>4において、図1乃至図3と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、第1の実施の形態と異なる部分について主体的に説明する。
【0021】第2の実施の形態における柱梁接合構造200は、概略的には第1の実施の形態と同様に図1に示されている柱14、梁16、山形鋼18、20、22、24、ウェブ接合部26、ボルト28、ナット30などを備えて構成されている。なお、図4には山形鋼18、22が省略されている。図4に示されているように、柱梁接合構造200は、締結用ボルト50(特許請求の範囲のボルトに相当)、締結用ナット52(特許請求の範囲のナットに相当)、座金54、剛性調整部材56などを備えて構成されている。
【0022】山形鋼20は、一方の片部201が柱14のフランジ143の外側面143Aに接した状態でボルト28と図略のナットによって柱14に締結されている。そして、山形鋼20の他方の片部202は互いに対向する一方の面202Aと他方の面202Bを有している。なお、梁16のウェブ162を挟んで山形鋼20の反対側には図1と同様の山形鋼22が設けられているが、以下の説明では山形鋼20についてのみ説明する。
【0023】山形鋼20の他方の片部202の一方の面202Aは、梁16の下側のフランジ163の内側面163Bに面した状態で配設されている。すなわち、山形鋼20の他方の片部202と山形鋼24の他方の片部242とは、梁16の下側のフランジ163を挟んで対向している。
【0024】山形鋼20、24の他方の片部202、242には、その厚み方向に貫通したねじ挿通孔204、244が互いに対応する位置にそれぞれ複数個設けられている。同様に梁16の下側のフランジ163にもその厚み方向に貫通したねじ挿通孔164が上記ねじ挿通孔204、244に対応する位置に設けられている。
【0025】締結用ボルト50は、頭部501と、この頭部501の下部に接続されたねじ部502を有して構成されている。山形鋼20、24のねじ挿通孔204、244と、山形鋼20、24の一方の片部202、242に挟まれた梁16の下側のフランジ163のねじ挿通孔164とが軸線を一致させた状態で、締結用ボルト50のねじ部502がその頭部501を下方に向けてすなわち梁16の下側のフランジ163の外側面163Aに臨ませた状態で上記ねじ挿通孔204、164、244に挿通されている。
【0026】ここで、頭部501とフランジ163の外側面163Aとの間には、環状に形成された剛性調整部材56と座金54がねじ部502に挿通された状態で配設されている。剛性調整部材56は頭部501に近い方に、座金54は山形鋼54に近い方に位置されている。そして、山形鋼20の他方の片部202から上方に突出したねじ部502には座金54が挿通され、座金54の上方のねじ部502には締結用ナット52が螺合され、座金54と締結用ナット52の間のねじ部502には、環状に形成された剛性調整部材56が挿通された状態で配設されている。
【0027】各剛性調整部材56は締結用ボルト50の軸方向と直交し、互いに対向する第1、第2面561、562を有している。各剛性調整部材56は、第1面561が座金54の上面に当接し、第2面562が締結用ボルト50の頭部501、締結用ナット52にそれぞれ当接されるように設けられている。
【0028】したがって、締結用ボルト50と締結用ナット52を締め付けることによって梁16の下側のフランジ163の部分が山形鋼20、24の他方の片部202、204の部分に挟みこまれた状態で連結されるようになっている。
【0029】剛性調整部材56は、それに印加される電気信号に対応して締結用ボルト50の軸方向、すなわち山形鋼20、24の一方の片部202、242の厚さ方向に寸法が変化するように構成されている。すなわち、剛性調整部材56は入力信号に応じて締結用ボルト50の軸方向の寸法が増減し、それに伴いボルト軸方向に応力が加わるようになっている。剛性調整部材56は、第1の実施の形態の場合と同様に、電圧に応じて寸法が変化する圧電素子あるいは与えられる磁界に応じて寸法が変換する超磁歪素子から構成することができる。なお、剛性調整部材56の寸法を変化させるための電圧や磁界を印加する回路については図示を省略している。
【0030】次に、上述のように構成された柱梁接合構造200の作用について説明する。まず、各締結用ボルト50と締結用ナット52を軸回り方向に回動させることによって、各剛性調整部材56の第1面561が締結用ボルト50の頭部501または締結用ナット52に、第2面562が座金54にそれぞれ適当な圧接力で当接されるようにする。
【0031】この状態で剛性調整部材56が電気信号によって締結用ボルト50の軸方向に伸びると、締結用ボルト50と締結用ナット52による梁16の下側のフランジ163に対する締結力が増大する。すなわち、柱14と梁16の連結強度が増大し、梁16の下側のフランジ163に生じる曲げ引っ張り力または曲げ圧縮力が柱14に伝達される度合いが高くなり、柱14と梁16の接合部分の剛性が高い状態となる。一方、剛性調整部材56が締結用ボルト50の軸方向に縮むと、締結用ボルト50と締結用ナット52による梁16の下側のフランジ163に対する締結力が減少する。すなわち、、柱14と梁16の連結強度が減少し、梁16の下側のフランジ163に生じる曲げ引っ張り力または曲げ圧縮力が柱14に伝達される度合いが低くなり、柱14と梁16の接合部分の剛性が低い状態となる。すなわち、剛性調整部材56に与える電気信号によって柱14と梁16の接合部分の剛性の高低を調整することが可能となる。したがって、剛性調整部材56に与える電気信号を制御することによって柱14と梁16の接合部分の剛性の高低を調整することで、柱14と梁16から構成される建築物10の主体骨組の固有周期を変化させることができる。
【0032】また、この第2の実施の形態における検知手段と制御手段の構成と作用は、前述した第1の実施の形態と同様である。したがって、制御手段が検知手段から入力される検知信号に基いて外乱の卓越周期に応じて前記固有周期を変化させるように電気信号を生成して剛性調整部材38に与えることで、制御手段が前記固有周期が外乱の卓越周期と近い値にならないように固有周期を変化させれば、主体骨組の共振現象の発生を防止することができ、外乱に対する主体骨組の応答(応答変位、応答加速度、応答速度)を抑制することができる。
【0033】なお、上述した第1の実施の形態では、弾性部材40が剛性調整部材38に作用するせん断力を吸収することで剛性調整部材38の破損を防止する構成としたが、剛性調整部材38がせん断力に対して弱いものでなければ、弾性部材40を省略してもよい。また、第2の実施の形態では、弾性部材を設けない構成としたが、剛性調整部材56と締結用ボルト50の頭部501の間、剛性調整部材56と締結用ナット52の間、あるいは剛性調整部材56と座金54の間に弾性部材を配設する構成としてもよい。また、第1、第2の実施の形態では、柱に固定された山形鋼と梁との間の柱梁接合部に剛性調整部材を設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、梁に固定された山形鋼と柱との間の柱梁接合部に剛性調整部材を設ける構成としてもよい。
【0034】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように本発明は、柱と梁の間を連結部材で連結することによって前記柱と梁を接合する柱梁接合構造であって、前記柱と梁と連結部材との間の連結強度を変化させることで前記柱と梁の接合部分の剛性を調整する剛性調整部材を設けた構成とした。そのため、本発明の柱梁接合構造によれば、前記柱と梁の接合部分の剛性を調整することによって柱と梁を有して構成される建築物の主体骨組の固有周期を変化させることで、主体骨組の共振現象の発生を防止することができ、外乱に対する主体骨組の応答(応答変位、応答加速度、応答速度)を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る柱梁接合構造の第1の実施の形態の構成を示す正面図である。
【図2】図1をAA線から見た状態を示す側面図である。
【図3】図1、図2に矢印Bで示した箇所を示す部分拡大図である。
【図4】本発明に係る柱梁接合構造の第2の実施の形態の構成を示す部分拡大図である。
【図5】建築物の主体骨組の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
100、200 柱梁接合構造
10 主体骨組
14 柱
142 ウェブ
143 フランジ
16 梁
162 ウェブ
163 フランジ
17 柱梁接合部
18、20、22、24 山形鋼
32 締結用ボルト
38 剛性調整部材
50 締結用ボルト
52 締結用ナット
56 剛性調整部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】 柱と梁の間を連結部材で連結することによって前記柱と梁を接合する柱梁接合構造であって、前記柱と梁と連結部材との間の連結強度を変化させることで前記柱と梁の接合部分の剛性を調整する剛性調整部材を設けたこと、を特徴とする柱梁接合構造。
【請求項2】 前記柱の部分または梁の部分の一方の被挟持片が、前記柱の部分または梁の部分の他方の一対の挟持片の間に挟まれるように配置され、前記連結部材は、前記一対の挟持片に設けられこれら挟持片の間に出没し一対の挟持片の間で被挟持片を締結するボルトから構成され、前記剛成調整部材は前記被挟持片と前記ボルトとの間に配設され、前記挟持片とボルトによる締結力を調整するように構成されている、ことを特徴とする請求項1記載の柱梁接合構造。
【請求項3】 前記連結部材はボルトとナットから構成され、前記柱と梁との連結は、柱の部分と梁の部分が前記ボルト、ナットにより締結されることで行なわれ、前記剛成調整部材は前記ボルトとナットの間に配設され、ボルト、ナットによる締結力を調整するように構成されている、ことを特徴とする請求項1記載の柱梁接合構造。
【請求項4】 前記剛性調整部材は入力信号に応じて前記ボルトの軸方向の寸法が増減し、それに伴いボルト軸方向に応力が加わる圧電素子または超磁歪素子で構成されていることを特徴とする請求項2または3記載の柱梁接合構造。
【請求項5】 前記剛性調整部材による前記柱と梁との間の連結強度の調整を外乱に基いて制御する制御手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載の柱梁接合構造。
【請求項6】 前記外乱は、前記梁と柱を有する建築物に加わる地震動や風による荷重の変化であることを特徴とする請求項5記載の柱梁接合構造。
【請求項7】 前記制御手段による前記柱と梁との間の連結強度の調整の制御は前記外乱の卓越周期に応じて行なわれることを特徴とする請求項5または6記載の柱梁接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2000−345612(P2000−345612A)
【公開日】平成12年12月12日(2000.12.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−157341
【出願日】平成11年6月4日(1999.6.4)
【出願人】(000112668)株式会社フジタ (20)
【Fターム(参考)】