柱状チタン酸アルミニウム及びその製造方法並びにハニカム構造体
【課題】熱膨張係数が小さく、かつ機械的強度に優れたハニカム構造体などの焼結体を製造することができる柱状チタン酸アルミニウム及びその製造方法並びに該柱状チタン酸アルミニウムを用いて作製されるハニカム構造体を得る。
【解決手段】平均アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)が1.3以上の柱状チタン酸アルミニウムであって、柱状チタン酸アルミニウムに対し、5〜25重量%のムライト及び2〜10重量%の酸化アルミニウムが表面に付着していることを特徴としている。
【解決手段】平均アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)が1.3以上の柱状チタン酸アルミニウムであって、柱状チタン酸アルミニウムに対し、5〜25重量%のムライト及び2〜10重量%の酸化アルミニウムが表面に付着していることを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱状チタン酸アルミニウム及びその製造方法並びに該柱状チタン酸アルミニウムを用いて作製したハニカム構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チタン酸アルミニウムは、低熱膨張性で耐熱衝撃性に優れ、かつ融点が高いため、自動車の排ガス処理用触媒担体や、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)等に用いられる多孔質材料として期待され、種々の開発が行われている。
【0003】
特許文献1においては、チタン酸アルミニウムが有する高融点、低熱膨張性を損なうことなく、高強度を有し、繰り返しの熱履歴に対して機械的強度の劣化が少ないチタン酸アルミニウム焼結体を得るため、チタン酸アルミニウムに、酸化マグネシウム及び酸化ケイ素を添加したものを焼結することが提案されている。
【0004】
特許文献2においては、柱状チタン酸アルミニウムを用いて排ガスフィルタを製造することが開示されており、柱状粒子の長手方向が負の熱膨張係数であるとき長手方向と垂直な方向が正の熱膨張係数であるか、あるいは柱状粒子の長手方向が正の熱膨張係数であるとき長手方向と垂直な方向が負の熱膨張係数である排ガスフィルタを製造することが提案されている。
【0005】
しかしながら、柱状チタン酸アルミニウムの具体的な製造方法については開示されていない。
【0006】
また、チタン酸アルミニウムを焼結して得られるハニカム構造体などの焼結体においては、焼結体の機械的強度を高めることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−249657号公報
【特許文献2】特開平9−29023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、熱膨張係数が小さく、かつ機械的強度に優れたハニカム構造体などの焼結体を製造することができる柱状チタン酸アルミニウム及びその製造方法並びに該柱状チタン酸アルミニウムを用いて作製されるハニカム構造体を適用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の柱状チタン酸アルミニウムは、平均アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)が1.3以上の柱状チタン酸アルミニウムであって、柱状チタン酸アルミニウムに対し、5〜25重量%のムライト及び2〜10重量%の酸化アルミニウムが表面に付着していることを特徴としている。
【0010】
本発明の柱状チタン酸アルミニウムは、平均アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)が1.3以上である。このため、ハニカム構造体のように押出成形した成形体を焼結して製造する焼結体においては、柱状チタン酸アルミニウム粒子の長手方向が押出方向に整列されやすいため、押出方向に線膨張係数が小さいハニカム構造体を製造することができる。
【0011】
また、本発明においては、柱状チタン酸アルミニウムに対し、5〜25重量%のムライト及び2〜10重量%の酸化アルミニウムが表面に付着しているので、焼結する際に、この表面のムライト及び酸化アルミニウムが焼結助剤として機能し、高い機械的強度を有する焼結体を得ることができる。
【0012】
本発明において、平均アスペクト比の上限値は、特に限定されるものではないが、一般には、5以下である。
【0013】
ムライトの付着量は、上述のように柱状チタン酸アルミニウムに対し5〜25重量%である。従って、柱状チタン酸アルミニウム100重量部に対して、5〜25重量部のムライトがチタン酸アルミニウムの表面に付着している。ムライトの付着量が5重量%未満であると、高い機械的強度を有する焼結体を得ることができない。また、ムライトの付着量が25重量%を越えると、ムライトの熱膨張係数がチタン酸アルミニウムよりも大きいので、焼結体の熱膨張係数を小さくすることができなくなる。
【0014】
酸化アルミニウムの付着量は、上述のように柱状チタン酸アルミニウムに対し2〜10重量%であり、さらに好ましくは4〜6重量%である。従って、柱状チタン酸アルミニウム100重量部に対し、2〜10重量部の酸化アルミニウムがチタン酸アルミニウムの表面に付着している。酸化アルミニウムの付着量が2重量%未満であると、高い機械的強度を有する焼結体を得ることができない。また、酸化アルミニウムの付着量が10重量部を越えると、酸化アルミニウムの熱膨張係数がチタン酸アルミニウムよりも大きいので、焼結体の熱膨張係数を小さくすることができなくなる。
【0015】
本発明において、柱状チタン酸アルミニウムの個数平均短軸径は、10μm以下であることが好ましい。個数平均短軸径は、5〜10μmの範囲内であることがさらに好ましい。また、個数平均長軸径は、7〜17μmの範囲内であることが好ましい。
【0016】
柱状チタン酸アルミニウムの個数平均長軸径及び個数平均短軸径は、例えば、フロー式粒子像分析装置により測定することができる。
【0017】
本発明において、柱状チタン酸アルミニウムの表面に付着しているムライト及び酸化アルミニウムは微粒子であり、一般には、50nm〜500nmの範囲内の平均粒子径を有しており、さらに好ましくは100nm〜300nmの範囲内の平均粒子径を有している。
【0018】
なお、ムライト及び酸化アルミニウムの平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察で測定することができる。
【0019】
本発明の製造方法は、上記本発明の柱状チタン酸アルミニウムを製造することができる方法であり、チタン源、アルミニウム源、ケイ素源、及びマグネシウム源を含む原料をメカノケミカルに粉砕しながら混合する工程と、粉砕した混合物を焼成する工程とを備えることを特徴としている。
【0020】
チタン酸アルミニウム(Al2TiO5)は、チタン(Ti)1モルに対し、アルミニウム(Al)が2モル含まれている。Ti1モルに対し、2モルより多くのAlとなるようにチタン源及びアルミニウム源を混合することにより、2モルを越えるAlは、柱状チタン酸アルミニウムの表面に付着するムライト及び酸化アルミニウムとなる。ムライト(Al6Si2O13)は、ケイ素(Si)を含んでいるので、原料中にケイ素源を含む必要がある。原料中に含まれるケイ素源の一部がムライトを構成するケイ素となる。Ti1モルに対して、Alが2モルより過剰な量となるようにチタン源とアルミニウム源を含有し、さらにケイ素源を含有した原料を用いることにより、本発明の柱状チタン酸アルミニウムを製造することができる。
【0021】
また、チタン源、アルミニウム源、ケイ素源、及びマグネシウム源を含む原料を、メカノケミカルに粉砕しながら混合した粉砕混合物を用い、この粉砕混合物を焼成することにより、平均アスペクト比が1.3以上である柱状のチタン酸アルミニウムを製造することができる。すなわち、原料中にマグネシウム源を含み、かつメカノケミカルに粉砕しながら混合した粉砕混合物を用いることにより、柱状のチタン酸アルミニウムを製造することができる。
【0022】
粉砕混合物を焼成する温度としては、1300〜1600℃の範囲内の温度であることが好ましい。このような温度範囲内で焼成することにより、本発明の柱状チタン酸アルミニウムをより効率的に製造することができる。
【0023】
焼成時間は、特に限定されるものではないが、0.5時間〜20時間の範囲内で行うことが好ましい。
【0024】
本発明の製造方法において、メカノケミカルな粉砕としては、物理的な衝撃を与えながら粉砕する方法が挙げられる。具体的には、振動ミルによる粉砕が挙げられる。振動ミルによる粉砕処理を行うことにより、混合粉体の摩砕による剪断応力によって、原子配列の乱れと原子間距離の減少が同時に起こり、異種粒子の接点部分の原子移動が起こる結果、準安定相が得られると考えられる。これにより、反応活性の高い粉砕混合物が得られ、この反応活性の高い粉砕混合物を焼成することにより、上記本発明の柱状チタン酸アルミニウムを製造することができる。
【0025】
本発明におけるメカノケミカルな粉砕は、一般に、水や溶剤を用いない乾式処理として行われる。
【0026】
メカノケミカルな粉砕による混合処理の時間は特に限定されるものではないが、一般には0.1時間〜6時間の範囲内であることが好ましい。
【0027】
本発明において用いる原料には、チタン源、アルミニウム源、ケイ素源、及びマグネシウム源が含まれる。チタン源としては、酸化チタンを含有する化合物を用いることができ、具体的には、酸化チタン、ルチル鉱石、水酸化チタンウェットケーキ、含水チタニアなどが挙げられる。
【0028】
アルミニウム源としては、加熱により酸化アルミニウムを生じる化合物を用いることができ、具体的には、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどが挙げられる。これらの中でも、特に酸化アルミニウムが好ましく用いられる。
【0029】
マグネシウム源としては、加熱により酸化マグネシウムを生じる化合物を用いることができ、具体的には、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。これらの中でも、特に水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムが好ましく用いられる。
【0030】
マグネシウム源は、チタン源及びアルミニウム源の合計に対してそれぞれ酸化物換算で0.5〜2.0重量%の範囲内となるように原料中に含まれていることが好ましい。0.5重量%未満であると、低い熱膨張係数及び高い機械的強度を有する焼結体が得られない場合がある。また、2.0重量%より多くなると、平均アスペクト比が1.3以上である柱状チタン酸アルミニウムが得られない場合がある。
【0031】
また、本発明の製造方法においては、原料中にケイ素源がさらに含まれている。
【0032】
ケイ素源が含有させることにより、チタン酸アルミニウムの表面にムライトを析出させることができるとともに、チタン酸アルミニウムの分解を抑制することができ、高温安定性に優れた柱状チタン酸アルミニウムを製造することができる。
【0033】
ケイ素源としては、酸化ケイ素、ケイ素などが挙げられる。これらの中でも、特に酸化ケイ素が好ましく用いられる。ケイ素源の原料中における含有量は、チタン源及びアルミニウム源の合計に対してそれぞれの酸化物換算で、3〜7重量%の範囲内であることが好ましい。このような範囲内とすることにより、柱状チタン酸アルミニウムをより安定して製造することができる。
【0034】
アルミニウム源は、上述のように、Ti1モルに対してAlが2モルより過剰となる量を原料中に含有させる。表面に付着させるムライト及び酸化アルミニウムの量を考慮して、Tiに対し過剰な量となるアルミニウム源の量を調整する。
【0035】
本発明の柱状チタン酸アルミニウムを焼結した焼結体は、上述のように、表面にムライト及び酸化アルミニウムが付着しており、このムライト及び酸化アルミニウムが焼結助剤として働くので、機械的強度の高い焼結体とすることができる。
【0036】
本発明のハニカム構造体は、上記本発明の柱状チタン酸アルミニウムを用いて作製したハニカム構造体であり、ハニカム構造体の押出方向の30〜800℃の間の熱膨張係数が1.0×10−6/℃以下であり、ハニカム押出方向に対するC軸の結晶配向比が0.75以上であることを特徴としている。
【0037】
ハニカム構造体の押出方向の30〜800℃の間の熱膨張係数が1.0×10−6/℃以下であるので、耐熱衝撃性に優れた特性を得ることができる。
【0038】
ハニカム構造体の押出方向の熱膨張係数の下限値は、特に限定されるものではないが、一般には−1.0×10−6/℃以上である。
【0039】
また、ハニカム押出方向に対するC軸の結晶配向比は、0.75以上である。ハニカム押出方向に対するC軸の結晶配向比が0.75以上であることにより、ハニカム構造体の押出方向における熱膨張係数を小さくすることができる。
【0040】
本発明におけるハニカム押出方向に対するC軸の結晶配向比は、以下の式から求めることができる。
【0041】
ハニカム押出方向のC軸の結晶配向比=A/(A+B)
A:ハニカム押出方向のC軸配向度=I002/(I002+I203)
B:ハニカム垂直方向のC軸配向度=I002/(I002+I230)
【0042】
I002及びI230は、押出方向については押出面を、垂直方向については垂直面をX線回折したときの(002)面のピーク強度(I002)及び(230)面のピーク強度(I230)である。
【0043】
本発明の柱状チタン酸アルミニウムは、柱状体の長手方向に沿ってC軸が延びている。このため、ハニカム構造体を押出成形した際、押出方向にC軸が整列するため、押出方向の熱膨張係数を低くすることができる。
【0044】
本発明のハニカム構造体は、チタン酸アルミニウムに、例えば、造孔剤、バインダー、分散剤、及び水を添加した混合組成物を作製し、これを、例えば押出成形機を用いてハニカム構造体となるように成形し、セルの開口が市松模様となるように片側の目封止を行った後、乾燥して得られた成形体を焼成して製造することができる。焼成温度としては、例えば、1400〜1600℃が挙げられる。
【0045】
造孔剤としては、黒鉛、グラファイト、木粉、ポリエチレンが挙げられる。また、バインダーとしては、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコールが挙げられる。分散剤としては、脂肪酸石鹸、エチレングリコールが挙げられる。造孔剤、バインダー、分散剤、及び水の量は適宜調整することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、熱膨張係数が小さく、かつ機械的強度に優れたハニカム構造体などの焼結体を製造することができる。
【0047】
本発明の製造方法によれば、本発明の柱状チタン酸アルミニウムを効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に従う実施例において得られた柱状チタン酸アルミニウムを示す走査型電子顕微鏡写真。
【図2】本発明に従う実施例において得られた柱状チタン酸アルミニウムを拡大して示す走査型電子顕微鏡写真。
【図3】本発明に従う実施例1で得られた柱状チタン酸アルミニウムのX線回折チャートを示す図。
【図4】本発明に従う実施例2で得られた柱状チタン酸アルミニウムのX線回折チャートを示す図。
【図5】本発明に従う実施例3で得られた柱状チタン酸アルミニウムのX線回折チャートを示す図。
【図6】比較例1で得られたチタン酸アルミニウムのX線回折チャートを示す図。
【図7】比較例2で得られたチタン酸アルミニウムのX線回折チャートを示す図。
【図8】ハニカム構造体を示す斜視図。
【図9】ハニカム構造体から切り出した測定サンプルを示す斜視図。
【図10】ハニカム構造体の曲げ強度の測定方法を説明するための模式図。
【図11】ハニカム構造体から切り出した測定サンプルを示す斜視図。
【図12】ハニカム構造体を示す斜視図。
【図13】ハニカム構造体から切り出した押出面のX線回折を測定するための測定サンプルを示す斜視図。
【図14】ハニカム構造体を示す斜視図。
【図15】ハニカム構造体から切り出した垂直面のX線回折を測定するための測定サンプルを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明を具体的な実施例により詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
〔柱状チタン酸アルミニウムの製造〕
(実施例1)
酸化チタン322.7g、酸化アルミニウム428.9g、水酸化マグネシウム17.5g及び酸化ケイ素30.9gを振動ミルにて粉砕しながら、2.0時間混合した。
【0051】
酸化アルミニウムは、酸化チタン中のTi1モルに対し、酸化アルミニウム中のAlが2モルより過剰量となるように混合されている。本実施例では、チタン酸アルミニウム100重量部に対し、酸化アルミニウムとして約10重量%過剰となるように酸化アルミニウムと酸化チタンが混合されている。
【0052】
以上のようにして得られた粉砕混合粉500gをルツボに充填し、電気炉にて1500℃で4時間焼成した。
【0053】
得られた生成物のX線回折チャートを図3に示す。図3に示すように、得られた生成物は、Al2TiO5とAl6Si2O13とAl2O3であった。図3の下方に示すピークは、それぞれJCPDSのAl2TiO5、Al6Si2O13及びAl2O3のピークである。
【0054】
得られた生成物中に含まれるAl6Si2O13及びAl2O3の含有量を、内部標準の定量により求めた。Al6Si2O13の含有量は、Al2TiO5に対し5.3重量%であり、Al2O3の含有量は、Al2TiO5に対し5.1重量%であった。
【0055】
フロー式粒子像分析により、得られた生成物の個数平均長軸径及び個数平均短軸径を測定し、アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)を算出した。測定結果を表1に示す。
【0056】
(実施例2)
酸化チタン295.3g、酸化アルミニウム447.8g、水酸化マグネシウム16.0g及び酸化ケイ素40.9gを振動ミルにて粉砕しながら、2.0時間混合した。
【0057】
酸化アルミニウムは、酸化チタン中のTi1モルに対し、酸化アルミニウム中のAlが2モルより過剰量となるように混合されている。本実施例では、チタン酸アルミニウム100重量部に対し、酸化アルミニウムとして約20重量%過剰となるように酸化アルミニウムと酸化チタンが混合されている。
【0058】
以上のようにして得られた粉砕混合粉500gをルツボに充填し、電気炉にて1500℃で4時間焼成した。
【0059】
得られた生成物のX線回折チャートを図4に示す。図4に示すように、得られた生成物は、Al2TiO5とAl6Si2O13とAl2O3であった。図4の下方に示すピークは、それぞれJCPDSのAl2TiO5、Al6Si2O13及びAl2O3のピークである。
【0060】
得られた生成物中に含まれるAl6Si2O13及びAl2O3の含有量を、内部標準の定量により求めた。Al6Si2O13の含有量は、Al2TiO5に対し16.7重量%であり、Al2O3の含有量は、Al2TiO5に対し4.8重量%であった。
【0061】
フロー式粒子像分析により、得られた生成物の個数平均長軸径及び個数平均短軸径を測定し、アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)を算出した。測定結果を表1に示す。
【0062】
(実施例3)
酸化チタン272.2g、酸化アルミニウム463.8g、水酸化マグネシウム14.7g及び酸化ケイ素49.3gを振動ミルにて粉砕しながら、2.0時間混合した。
【0063】
酸化アルミニウムは、酸化チタン中のTi1モルに対し、酸化アルミニウム中のAlが2モルより過剰量となるように混合されている。本実施例では、チタン酸アルミニウム100重量部に対し、酸化アルミニウムとして約30重量%過剰となるように酸化アルミニウムと酸化チタンが混合されている。
【0064】
以上のようにして得られた粉砕混合粉500gをルツボに充填し、電気炉にて1500℃で4時間焼成した。
【0065】
得られた生成物のX線回折チャートを図5に示す。図5に示すように、得られた生成物は、Al2TiO5とAl6Si2O13とAl2O3であった。図5の下方に示すピークは、それぞれJCPDSのAl2TiO5、Al6Si2O13と及びAl2O3のピークである。
【0066】
得られた生成物中に含まれるAl6Si2O13及びAl2O3の含有量を、内部標準の定量により求めた。Al6Si2O13の含有量は、Al2TiO5に対し23.1重量%であり、Al2O3の含有量は、Al2TiO5に対し5.3重量%であった。
【0067】
フロー式粒子像分析により、得られた生成物の個数平均長軸径及び個数平均短軸径を測定し、アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)を算出した。測定結果を表1に示す。
【0068】
(比較例1)
酸化チタン334.7g、酸化アルミニウム427.3g、水酸化マグネシウム17.9g及び酸化ケイ素20.1gを振動ミルにて粉砕しながら、2.0時間混合した。
【0069】
酸化アルミニウムは、酸化チタン中のTi1モルに対し、酸化アルミニウム中のAlが2モルとなるように混合されている。
【0070】
以上のようにして得られた粉砕混合粉500gをルツボに充填し、電気炉にて1500℃で4時間焼成した。
【0071】
得られた生成物のX線回折チャートを図6に示す。図6に示すように、得られた生成物は、Al2TiO5であった。図6の下方に示すピークは、それぞれJCPDSのAl2TiO5及びAl2O3のピークである。
【0072】
フロー式粒子像分析により、得られた生成物の個数平均長軸径及び個数平均短軸径を測定し、アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)を算出した。測定結果を表1に示す。
【0073】
(比較例2)
酸化チタン252.5g、酸化アルミニウム477.4g、水酸化マグネシウム13.7g及び酸化ケイ素56.4gを振動ミルにて粉砕しながら、2.0時間混合した。
【0074】
酸化アルミニウムは、酸化チタン中のTi1モルに対し、酸化アルミニウム中のAlが2モルより過剰量となるように混合されている。ここでは、チタン酸アルミ100重量部に対し、酸化アルミニウムとして約35重量%過剰となるようにアルミニウムが酸化チタンに混合されている。
【0075】
以上のようにして得られた粉砕混合粉500gをルツボに充填し、電気炉にて1500℃で4時間焼成した。
【0076】
得られた生成物のX線回折チャートを図7に示す。図7に示すように、得られた生成物は、Al2TiO5とAl6Si2O13とAl2O3であった。図7の下方に示すピークは、それぞれJCPDSのAl2TiO5、Al6Si2O13及びAl2O3のピークである。
【0077】
得られた生成物中に含まれるAl6Si2O13及びAl2O3の含有量を、内部標準の定量により求めた。Al6Si2O13の含有量は、Al2TiO5に対し28.6重量%であり、Al2O3の含有量は、Al2TiO5に対し5.5重量%であった。
【0078】
フロー式粒子像分析により、得られた生成物の個数平均長軸径及び個数平均短軸径を測定し、アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)を算出した。測定結果を表1に示す。
【0079】
(比較例3)
実施例1で得られた柱状チタン酸アルミニウムを自動乳鉢にて50時間粉砕処理し、粒状のチタン酸アルミニウムを得た。
【0080】
得られた生成物について、フロー式粒子像分析にて、個数平均長軸径、個数平均短軸径を測定し、アスペクト比を算出した。測定結果を表1に示す。
【0081】
〔走査型電子顕微鏡(SEM)による観察〕
実施例2で得られたチタン酸アルミニウムについて、走査型電子顕微鏡で観察した。図1は、このチタン酸アルミニウムを示す走査型電子顕微鏡写真(倍率1000倍)である。図1から明らかなように、柱状のチタン酸アルミニウムが得られている。
【0082】
図2は、上記のチタン酸アルミニウムを拡大して示す走査型電子顕微鏡(倍率7000倍)である。図2に示すように、チタン酸アルミニウムの表面に、ムライト及び酸化アルミニウムが付着している。
【0083】
〔ハニカム焼結体の製造〕
上記各実施例及び各比較例で得られたチタン酸アルミニウムを用いて、以下のようにしてハニカム焼結体を製造した。
【0084】
チタン酸アルミニウム100重量部に対し、黒鉛20重量部、メチルセルロース10重量部、脂肪酸石鹸0.5重量部を配合し、さらに水を適当量添加して混練し、押出成形可能な坏土を得た。
【0085】
得られた坏土を押出成形機にてハニカム構造体となるように押し出して成形し、次に熱風乾燥機で乾燥した後、得られた成形体を1500℃で焼成し、ハニカム焼結体を得た。
【0086】
〔ハニカム焼結体の評価〕
得られた各ハニカム焼結体について気孔率、曲げ強度、熱膨張係数、及び結晶配向比を以下のようにして測定した。
【0087】
(気孔率)
図8は、ハニカム焼結体(ハニカム構造体)を示す斜視図である。図8に示すように、ハニカム焼結体1は、8×8セルを有し、端面1aは、縦1.8cm、横1.8cmの大きさを有している。矢印Aは、押出方向を示しており、矢印Bは押出方向Aに対し垂直な方向を示している。
【0088】
気孔率は、上記の8×8セルのハニカム焼結体1の中心部2から、2×2セルに相当する部分を、押出方向Aに沿う長さが2cm程度となるように切り出し、測定サンプルとした。
【0089】
図9は、測定サンプル3を示す斜視図である。図9に示す測定サンプル3を用い、JIS R1634に準拠して気孔率を測定した。
【0090】
(曲げ強度)
図10に示すように、上記の8×8セルのハニカム焼結体1を、支持点11及び12に支持した状態で、焼結体1の中心部を押圧棒10で押圧することにより、JIS R1601に準拠して、曲げ強度を測定した。
【0091】
(熱膨張係数)
図8及び図9を参照して説明した、気孔率の測定サンプル3と同様にして、8×8セルのハニカム焼結体1の中心部2から、押出方向Aに沿う長さが2cm程度となるように切り出し、測定サンプル3とした。図11に示すように、測定サンプル3の押出方向Aにおける線膨張係数を、JIS R1618に準拠して測定した。
【0092】
(結晶配向比)
得られたハニカム焼結体についてのC軸結晶配向比を、結晶配向比とした測定した。
【0093】
結晶配向比は、以下の式に示すように、押出方向の結晶配向度と、押出方向と垂直な方向の結晶配向度(垂直方向の結晶配向度)から算出した。
【0094】
結晶配向比=押出方向の結晶配向度/(押出方向の結晶配向度+垂直方向の結晶配向度)
【0095】
結晶配向度は、X線回折により求めた。押出方向の結晶配向度は、ハニカム焼結体の押出面のX線回折を測定し、(002)面の回折強度(=I(002))及び(230)面の回折強度(=I(230))より、以下の式により算出した。
【0096】
結晶配向度=I(002)/{I(002)+I(230)}
【0097】
垂直方向の結晶配向度は、ハニカム焼結体の垂直面のX線回折を測定し、上記と同様にして、I(002)及びI(230)を求めることにより算出した。
【0098】
なお、(002)面の回折強度は、2θ=50.8°付近に現れるピークであり、(230)面の回折ピークは、2θ=33.7°付近に現れるピークである。
【0099】
図12及び図13は、押出面のX線回折を測定するための測定サンプルの作製を示す斜視図である。
【0100】
図12に示すように、ハニカム焼結体1の端面1aを含む領域4を切り取り、図13に示す測定サンプルを作製した。図13に示す測定サンプル5を用い、この測定サンプル5の押出面5aのX線回折を測定した。
【0101】
図14及び図15は、垂直面、すなわち、押出面に垂直な方向の面のX線回折を測定するためのサンプルの作製を示す斜視図である。
【0102】
図14に示すように、ハニカム焼結体1の8×2セルに相当する領域6を、押出方向Aに沿って切り出し、図15に示す測定サンプル7を得た。この測定サンプル7の押出方向Aに沿う面(押出面)7aのX線回折の測定を行った。
【0103】
以上のようにして、各ハニカム焼結体についての結晶配向比を算出し、結果を表1に示した。
【0104】
なお、(002)面はC軸に垂直な面であり、(002)面の強度が高いということは、C軸が配向していることを意味する。
【0105】
【表1】
【0106】
表1に示すように、本発明に従う実施例1〜3の柱状チタン酸アルミニウムを用いたハニカム焼結体は、比較例1の柱状チタン酸アルミニウムを用いたハニカム焼結体に比べ、高い曲げ強度を有している。これは、本発明に従う柱状チタン酸アルミニウムが、ムライト微粒子及び酸化アルミニウム微粒子を表面に付着させており、表面に存在するムライト微粒子及び酸化アルミニウムが焼結助剤として働き、機械的強度に優れたハニカム焼結体が得られるためであると考えられる。
【0107】
また、実施例1〜3の焼結体は、比較例3の焼結体に比べ、低い線膨張係数を有している。比較例3の結晶配向比が実施例1〜3に比べ低いことから、比較例3のアスペクト比が小さいため、ハニカム焼結体の押出方向にチタン酸アルミニウムのC軸方向が整列せず、低い線膨張係数が得られていないものと考えられる。これに対し、実施例1〜3の柱状チタン酸アルミニウムは、アスペクト比が大きいため、ハニカム焼結体の押出方向にチタン酸アルミニウムのC軸方向が整列し、低い線膨張係数が得られているものと考えられる。
【0108】
また、比較例2においては、ムライトが25重量%より多く含有されているため、線膨張係数が高くなっている。また、ムライトの付着量が多いため、粉体のアスペクト比も小さくなっており、このため、押出方向にチタン酸アルミニウムが配向しにくくなっており、このことからも線膨張係数が高くなっているものと思われる。
【符号の説明】
【0109】
1…ハニカム焼結体(ハニカム構造体)
1a…ハニカム構造体の端面
2…ハニカム構造体の中心部
3…ハニカム構造体から切り出した測定サンプル
4…ハニカム構造体の端面近傍の領域
5…ハニカム構造体の押出面をX線回折測定するためのサンプル
5a…押出面
6…ハニカム構造体の8×2セルの領域
7…ハニカム構造体の垂直面をX線回折測定するためのサンプル
7a…垂直面
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱状チタン酸アルミニウム及びその製造方法並びに該柱状チタン酸アルミニウムを用いて作製したハニカム構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チタン酸アルミニウムは、低熱膨張性で耐熱衝撃性に優れ、かつ融点が高いため、自動車の排ガス処理用触媒担体や、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)等に用いられる多孔質材料として期待され、種々の開発が行われている。
【0003】
特許文献1においては、チタン酸アルミニウムが有する高融点、低熱膨張性を損なうことなく、高強度を有し、繰り返しの熱履歴に対して機械的強度の劣化が少ないチタン酸アルミニウム焼結体を得るため、チタン酸アルミニウムに、酸化マグネシウム及び酸化ケイ素を添加したものを焼結することが提案されている。
【0004】
特許文献2においては、柱状チタン酸アルミニウムを用いて排ガスフィルタを製造することが開示されており、柱状粒子の長手方向が負の熱膨張係数であるとき長手方向と垂直な方向が正の熱膨張係数であるか、あるいは柱状粒子の長手方向が正の熱膨張係数であるとき長手方向と垂直な方向が負の熱膨張係数である排ガスフィルタを製造することが提案されている。
【0005】
しかしながら、柱状チタン酸アルミニウムの具体的な製造方法については開示されていない。
【0006】
また、チタン酸アルミニウムを焼結して得られるハニカム構造体などの焼結体においては、焼結体の機械的強度を高めることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−249657号公報
【特許文献2】特開平9−29023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、熱膨張係数が小さく、かつ機械的強度に優れたハニカム構造体などの焼結体を製造することができる柱状チタン酸アルミニウム及びその製造方法並びに該柱状チタン酸アルミニウムを用いて作製されるハニカム構造体を適用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の柱状チタン酸アルミニウムは、平均アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)が1.3以上の柱状チタン酸アルミニウムであって、柱状チタン酸アルミニウムに対し、5〜25重量%のムライト及び2〜10重量%の酸化アルミニウムが表面に付着していることを特徴としている。
【0010】
本発明の柱状チタン酸アルミニウムは、平均アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)が1.3以上である。このため、ハニカム構造体のように押出成形した成形体を焼結して製造する焼結体においては、柱状チタン酸アルミニウム粒子の長手方向が押出方向に整列されやすいため、押出方向に線膨張係数が小さいハニカム構造体を製造することができる。
【0011】
また、本発明においては、柱状チタン酸アルミニウムに対し、5〜25重量%のムライト及び2〜10重量%の酸化アルミニウムが表面に付着しているので、焼結する際に、この表面のムライト及び酸化アルミニウムが焼結助剤として機能し、高い機械的強度を有する焼結体を得ることができる。
【0012】
本発明において、平均アスペクト比の上限値は、特に限定されるものではないが、一般には、5以下である。
【0013】
ムライトの付着量は、上述のように柱状チタン酸アルミニウムに対し5〜25重量%である。従って、柱状チタン酸アルミニウム100重量部に対して、5〜25重量部のムライトがチタン酸アルミニウムの表面に付着している。ムライトの付着量が5重量%未満であると、高い機械的強度を有する焼結体を得ることができない。また、ムライトの付着量が25重量%を越えると、ムライトの熱膨張係数がチタン酸アルミニウムよりも大きいので、焼結体の熱膨張係数を小さくすることができなくなる。
【0014】
酸化アルミニウムの付着量は、上述のように柱状チタン酸アルミニウムに対し2〜10重量%であり、さらに好ましくは4〜6重量%である。従って、柱状チタン酸アルミニウム100重量部に対し、2〜10重量部の酸化アルミニウムがチタン酸アルミニウムの表面に付着している。酸化アルミニウムの付着量が2重量%未満であると、高い機械的強度を有する焼結体を得ることができない。また、酸化アルミニウムの付着量が10重量部を越えると、酸化アルミニウムの熱膨張係数がチタン酸アルミニウムよりも大きいので、焼結体の熱膨張係数を小さくすることができなくなる。
【0015】
本発明において、柱状チタン酸アルミニウムの個数平均短軸径は、10μm以下であることが好ましい。個数平均短軸径は、5〜10μmの範囲内であることがさらに好ましい。また、個数平均長軸径は、7〜17μmの範囲内であることが好ましい。
【0016】
柱状チタン酸アルミニウムの個数平均長軸径及び個数平均短軸径は、例えば、フロー式粒子像分析装置により測定することができる。
【0017】
本発明において、柱状チタン酸アルミニウムの表面に付着しているムライト及び酸化アルミニウムは微粒子であり、一般には、50nm〜500nmの範囲内の平均粒子径を有しており、さらに好ましくは100nm〜300nmの範囲内の平均粒子径を有している。
【0018】
なお、ムライト及び酸化アルミニウムの平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察で測定することができる。
【0019】
本発明の製造方法は、上記本発明の柱状チタン酸アルミニウムを製造することができる方法であり、チタン源、アルミニウム源、ケイ素源、及びマグネシウム源を含む原料をメカノケミカルに粉砕しながら混合する工程と、粉砕した混合物を焼成する工程とを備えることを特徴としている。
【0020】
チタン酸アルミニウム(Al2TiO5)は、チタン(Ti)1モルに対し、アルミニウム(Al)が2モル含まれている。Ti1モルに対し、2モルより多くのAlとなるようにチタン源及びアルミニウム源を混合することにより、2モルを越えるAlは、柱状チタン酸アルミニウムの表面に付着するムライト及び酸化アルミニウムとなる。ムライト(Al6Si2O13)は、ケイ素(Si)を含んでいるので、原料中にケイ素源を含む必要がある。原料中に含まれるケイ素源の一部がムライトを構成するケイ素となる。Ti1モルに対して、Alが2モルより過剰な量となるようにチタン源とアルミニウム源を含有し、さらにケイ素源を含有した原料を用いることにより、本発明の柱状チタン酸アルミニウムを製造することができる。
【0021】
また、チタン源、アルミニウム源、ケイ素源、及びマグネシウム源を含む原料を、メカノケミカルに粉砕しながら混合した粉砕混合物を用い、この粉砕混合物を焼成することにより、平均アスペクト比が1.3以上である柱状のチタン酸アルミニウムを製造することができる。すなわち、原料中にマグネシウム源を含み、かつメカノケミカルに粉砕しながら混合した粉砕混合物を用いることにより、柱状のチタン酸アルミニウムを製造することができる。
【0022】
粉砕混合物を焼成する温度としては、1300〜1600℃の範囲内の温度であることが好ましい。このような温度範囲内で焼成することにより、本発明の柱状チタン酸アルミニウムをより効率的に製造することができる。
【0023】
焼成時間は、特に限定されるものではないが、0.5時間〜20時間の範囲内で行うことが好ましい。
【0024】
本発明の製造方法において、メカノケミカルな粉砕としては、物理的な衝撃を与えながら粉砕する方法が挙げられる。具体的には、振動ミルによる粉砕が挙げられる。振動ミルによる粉砕処理を行うことにより、混合粉体の摩砕による剪断応力によって、原子配列の乱れと原子間距離の減少が同時に起こり、異種粒子の接点部分の原子移動が起こる結果、準安定相が得られると考えられる。これにより、反応活性の高い粉砕混合物が得られ、この反応活性の高い粉砕混合物を焼成することにより、上記本発明の柱状チタン酸アルミニウムを製造することができる。
【0025】
本発明におけるメカノケミカルな粉砕は、一般に、水や溶剤を用いない乾式処理として行われる。
【0026】
メカノケミカルな粉砕による混合処理の時間は特に限定されるものではないが、一般には0.1時間〜6時間の範囲内であることが好ましい。
【0027】
本発明において用いる原料には、チタン源、アルミニウム源、ケイ素源、及びマグネシウム源が含まれる。チタン源としては、酸化チタンを含有する化合物を用いることができ、具体的には、酸化チタン、ルチル鉱石、水酸化チタンウェットケーキ、含水チタニアなどが挙げられる。
【0028】
アルミニウム源としては、加熱により酸化アルミニウムを生じる化合物を用いることができ、具体的には、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどが挙げられる。これらの中でも、特に酸化アルミニウムが好ましく用いられる。
【0029】
マグネシウム源としては、加熱により酸化マグネシウムを生じる化合物を用いることができ、具体的には、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。これらの中でも、特に水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムが好ましく用いられる。
【0030】
マグネシウム源は、チタン源及びアルミニウム源の合計に対してそれぞれ酸化物換算で0.5〜2.0重量%の範囲内となるように原料中に含まれていることが好ましい。0.5重量%未満であると、低い熱膨張係数及び高い機械的強度を有する焼結体が得られない場合がある。また、2.0重量%より多くなると、平均アスペクト比が1.3以上である柱状チタン酸アルミニウムが得られない場合がある。
【0031】
また、本発明の製造方法においては、原料中にケイ素源がさらに含まれている。
【0032】
ケイ素源が含有させることにより、チタン酸アルミニウムの表面にムライトを析出させることができるとともに、チタン酸アルミニウムの分解を抑制することができ、高温安定性に優れた柱状チタン酸アルミニウムを製造することができる。
【0033】
ケイ素源としては、酸化ケイ素、ケイ素などが挙げられる。これらの中でも、特に酸化ケイ素が好ましく用いられる。ケイ素源の原料中における含有量は、チタン源及びアルミニウム源の合計に対してそれぞれの酸化物換算で、3〜7重量%の範囲内であることが好ましい。このような範囲内とすることにより、柱状チタン酸アルミニウムをより安定して製造することができる。
【0034】
アルミニウム源は、上述のように、Ti1モルに対してAlが2モルより過剰となる量を原料中に含有させる。表面に付着させるムライト及び酸化アルミニウムの量を考慮して、Tiに対し過剰な量となるアルミニウム源の量を調整する。
【0035】
本発明の柱状チタン酸アルミニウムを焼結した焼結体は、上述のように、表面にムライト及び酸化アルミニウムが付着しており、このムライト及び酸化アルミニウムが焼結助剤として働くので、機械的強度の高い焼結体とすることができる。
【0036】
本発明のハニカム構造体は、上記本発明の柱状チタン酸アルミニウムを用いて作製したハニカム構造体であり、ハニカム構造体の押出方向の30〜800℃の間の熱膨張係数が1.0×10−6/℃以下であり、ハニカム押出方向に対するC軸の結晶配向比が0.75以上であることを特徴としている。
【0037】
ハニカム構造体の押出方向の30〜800℃の間の熱膨張係数が1.0×10−6/℃以下であるので、耐熱衝撃性に優れた特性を得ることができる。
【0038】
ハニカム構造体の押出方向の熱膨張係数の下限値は、特に限定されるものではないが、一般には−1.0×10−6/℃以上である。
【0039】
また、ハニカム押出方向に対するC軸の結晶配向比は、0.75以上である。ハニカム押出方向に対するC軸の結晶配向比が0.75以上であることにより、ハニカム構造体の押出方向における熱膨張係数を小さくすることができる。
【0040】
本発明におけるハニカム押出方向に対するC軸の結晶配向比は、以下の式から求めることができる。
【0041】
ハニカム押出方向のC軸の結晶配向比=A/(A+B)
A:ハニカム押出方向のC軸配向度=I002/(I002+I203)
B:ハニカム垂直方向のC軸配向度=I002/(I002+I230)
【0042】
I002及びI230は、押出方向については押出面を、垂直方向については垂直面をX線回折したときの(002)面のピーク強度(I002)及び(230)面のピーク強度(I230)である。
【0043】
本発明の柱状チタン酸アルミニウムは、柱状体の長手方向に沿ってC軸が延びている。このため、ハニカム構造体を押出成形した際、押出方向にC軸が整列するため、押出方向の熱膨張係数を低くすることができる。
【0044】
本発明のハニカム構造体は、チタン酸アルミニウムに、例えば、造孔剤、バインダー、分散剤、及び水を添加した混合組成物を作製し、これを、例えば押出成形機を用いてハニカム構造体となるように成形し、セルの開口が市松模様となるように片側の目封止を行った後、乾燥して得られた成形体を焼成して製造することができる。焼成温度としては、例えば、1400〜1600℃が挙げられる。
【0045】
造孔剤としては、黒鉛、グラファイト、木粉、ポリエチレンが挙げられる。また、バインダーとしては、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコールが挙げられる。分散剤としては、脂肪酸石鹸、エチレングリコールが挙げられる。造孔剤、バインダー、分散剤、及び水の量は適宜調整することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、熱膨張係数が小さく、かつ機械的強度に優れたハニカム構造体などの焼結体を製造することができる。
【0047】
本発明の製造方法によれば、本発明の柱状チタン酸アルミニウムを効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に従う実施例において得られた柱状チタン酸アルミニウムを示す走査型電子顕微鏡写真。
【図2】本発明に従う実施例において得られた柱状チタン酸アルミニウムを拡大して示す走査型電子顕微鏡写真。
【図3】本発明に従う実施例1で得られた柱状チタン酸アルミニウムのX線回折チャートを示す図。
【図4】本発明に従う実施例2で得られた柱状チタン酸アルミニウムのX線回折チャートを示す図。
【図5】本発明に従う実施例3で得られた柱状チタン酸アルミニウムのX線回折チャートを示す図。
【図6】比較例1で得られたチタン酸アルミニウムのX線回折チャートを示す図。
【図7】比較例2で得られたチタン酸アルミニウムのX線回折チャートを示す図。
【図8】ハニカム構造体を示す斜視図。
【図9】ハニカム構造体から切り出した測定サンプルを示す斜視図。
【図10】ハニカム構造体の曲げ強度の測定方法を説明するための模式図。
【図11】ハニカム構造体から切り出した測定サンプルを示す斜視図。
【図12】ハニカム構造体を示す斜視図。
【図13】ハニカム構造体から切り出した押出面のX線回折を測定するための測定サンプルを示す斜視図。
【図14】ハニカム構造体を示す斜視図。
【図15】ハニカム構造体から切り出した垂直面のX線回折を測定するための測定サンプルを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明を具体的な実施例により詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
〔柱状チタン酸アルミニウムの製造〕
(実施例1)
酸化チタン322.7g、酸化アルミニウム428.9g、水酸化マグネシウム17.5g及び酸化ケイ素30.9gを振動ミルにて粉砕しながら、2.0時間混合した。
【0051】
酸化アルミニウムは、酸化チタン中のTi1モルに対し、酸化アルミニウム中のAlが2モルより過剰量となるように混合されている。本実施例では、チタン酸アルミニウム100重量部に対し、酸化アルミニウムとして約10重量%過剰となるように酸化アルミニウムと酸化チタンが混合されている。
【0052】
以上のようにして得られた粉砕混合粉500gをルツボに充填し、電気炉にて1500℃で4時間焼成した。
【0053】
得られた生成物のX線回折チャートを図3に示す。図3に示すように、得られた生成物は、Al2TiO5とAl6Si2O13とAl2O3であった。図3の下方に示すピークは、それぞれJCPDSのAl2TiO5、Al6Si2O13及びAl2O3のピークである。
【0054】
得られた生成物中に含まれるAl6Si2O13及びAl2O3の含有量を、内部標準の定量により求めた。Al6Si2O13の含有量は、Al2TiO5に対し5.3重量%であり、Al2O3の含有量は、Al2TiO5に対し5.1重量%であった。
【0055】
フロー式粒子像分析により、得られた生成物の個数平均長軸径及び個数平均短軸径を測定し、アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)を算出した。測定結果を表1に示す。
【0056】
(実施例2)
酸化チタン295.3g、酸化アルミニウム447.8g、水酸化マグネシウム16.0g及び酸化ケイ素40.9gを振動ミルにて粉砕しながら、2.0時間混合した。
【0057】
酸化アルミニウムは、酸化チタン中のTi1モルに対し、酸化アルミニウム中のAlが2モルより過剰量となるように混合されている。本実施例では、チタン酸アルミニウム100重量部に対し、酸化アルミニウムとして約20重量%過剰となるように酸化アルミニウムと酸化チタンが混合されている。
【0058】
以上のようにして得られた粉砕混合粉500gをルツボに充填し、電気炉にて1500℃で4時間焼成した。
【0059】
得られた生成物のX線回折チャートを図4に示す。図4に示すように、得られた生成物は、Al2TiO5とAl6Si2O13とAl2O3であった。図4の下方に示すピークは、それぞれJCPDSのAl2TiO5、Al6Si2O13及びAl2O3のピークである。
【0060】
得られた生成物中に含まれるAl6Si2O13及びAl2O3の含有量を、内部標準の定量により求めた。Al6Si2O13の含有量は、Al2TiO5に対し16.7重量%であり、Al2O3の含有量は、Al2TiO5に対し4.8重量%であった。
【0061】
フロー式粒子像分析により、得られた生成物の個数平均長軸径及び個数平均短軸径を測定し、アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)を算出した。測定結果を表1に示す。
【0062】
(実施例3)
酸化チタン272.2g、酸化アルミニウム463.8g、水酸化マグネシウム14.7g及び酸化ケイ素49.3gを振動ミルにて粉砕しながら、2.0時間混合した。
【0063】
酸化アルミニウムは、酸化チタン中のTi1モルに対し、酸化アルミニウム中のAlが2モルより過剰量となるように混合されている。本実施例では、チタン酸アルミニウム100重量部に対し、酸化アルミニウムとして約30重量%過剰となるように酸化アルミニウムと酸化チタンが混合されている。
【0064】
以上のようにして得られた粉砕混合粉500gをルツボに充填し、電気炉にて1500℃で4時間焼成した。
【0065】
得られた生成物のX線回折チャートを図5に示す。図5に示すように、得られた生成物は、Al2TiO5とAl6Si2O13とAl2O3であった。図5の下方に示すピークは、それぞれJCPDSのAl2TiO5、Al6Si2O13と及びAl2O3のピークである。
【0066】
得られた生成物中に含まれるAl6Si2O13及びAl2O3の含有量を、内部標準の定量により求めた。Al6Si2O13の含有量は、Al2TiO5に対し23.1重量%であり、Al2O3の含有量は、Al2TiO5に対し5.3重量%であった。
【0067】
フロー式粒子像分析により、得られた生成物の個数平均長軸径及び個数平均短軸径を測定し、アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)を算出した。測定結果を表1に示す。
【0068】
(比較例1)
酸化チタン334.7g、酸化アルミニウム427.3g、水酸化マグネシウム17.9g及び酸化ケイ素20.1gを振動ミルにて粉砕しながら、2.0時間混合した。
【0069】
酸化アルミニウムは、酸化チタン中のTi1モルに対し、酸化アルミニウム中のAlが2モルとなるように混合されている。
【0070】
以上のようにして得られた粉砕混合粉500gをルツボに充填し、電気炉にて1500℃で4時間焼成した。
【0071】
得られた生成物のX線回折チャートを図6に示す。図6に示すように、得られた生成物は、Al2TiO5であった。図6の下方に示すピークは、それぞれJCPDSのAl2TiO5及びAl2O3のピークである。
【0072】
フロー式粒子像分析により、得られた生成物の個数平均長軸径及び個数平均短軸径を測定し、アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)を算出した。測定結果を表1に示す。
【0073】
(比較例2)
酸化チタン252.5g、酸化アルミニウム477.4g、水酸化マグネシウム13.7g及び酸化ケイ素56.4gを振動ミルにて粉砕しながら、2.0時間混合した。
【0074】
酸化アルミニウムは、酸化チタン中のTi1モルに対し、酸化アルミニウム中のAlが2モルより過剰量となるように混合されている。ここでは、チタン酸アルミ100重量部に対し、酸化アルミニウムとして約35重量%過剰となるようにアルミニウムが酸化チタンに混合されている。
【0075】
以上のようにして得られた粉砕混合粉500gをルツボに充填し、電気炉にて1500℃で4時間焼成した。
【0076】
得られた生成物のX線回折チャートを図7に示す。図7に示すように、得られた生成物は、Al2TiO5とAl6Si2O13とAl2O3であった。図7の下方に示すピークは、それぞれJCPDSのAl2TiO5、Al6Si2O13及びAl2O3のピークである。
【0077】
得られた生成物中に含まれるAl6Si2O13及びAl2O3の含有量を、内部標準の定量により求めた。Al6Si2O13の含有量は、Al2TiO5に対し28.6重量%であり、Al2O3の含有量は、Al2TiO5に対し5.5重量%であった。
【0078】
フロー式粒子像分析により、得られた生成物の個数平均長軸径及び個数平均短軸径を測定し、アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)を算出した。測定結果を表1に示す。
【0079】
(比較例3)
実施例1で得られた柱状チタン酸アルミニウムを自動乳鉢にて50時間粉砕処理し、粒状のチタン酸アルミニウムを得た。
【0080】
得られた生成物について、フロー式粒子像分析にて、個数平均長軸径、個数平均短軸径を測定し、アスペクト比を算出した。測定結果を表1に示す。
【0081】
〔走査型電子顕微鏡(SEM)による観察〕
実施例2で得られたチタン酸アルミニウムについて、走査型電子顕微鏡で観察した。図1は、このチタン酸アルミニウムを示す走査型電子顕微鏡写真(倍率1000倍)である。図1から明らかなように、柱状のチタン酸アルミニウムが得られている。
【0082】
図2は、上記のチタン酸アルミニウムを拡大して示す走査型電子顕微鏡(倍率7000倍)である。図2に示すように、チタン酸アルミニウムの表面に、ムライト及び酸化アルミニウムが付着している。
【0083】
〔ハニカム焼結体の製造〕
上記各実施例及び各比較例で得られたチタン酸アルミニウムを用いて、以下のようにしてハニカム焼結体を製造した。
【0084】
チタン酸アルミニウム100重量部に対し、黒鉛20重量部、メチルセルロース10重量部、脂肪酸石鹸0.5重量部を配合し、さらに水を適当量添加して混練し、押出成形可能な坏土を得た。
【0085】
得られた坏土を押出成形機にてハニカム構造体となるように押し出して成形し、次に熱風乾燥機で乾燥した後、得られた成形体を1500℃で焼成し、ハニカム焼結体を得た。
【0086】
〔ハニカム焼結体の評価〕
得られた各ハニカム焼結体について気孔率、曲げ強度、熱膨張係数、及び結晶配向比を以下のようにして測定した。
【0087】
(気孔率)
図8は、ハニカム焼結体(ハニカム構造体)を示す斜視図である。図8に示すように、ハニカム焼結体1は、8×8セルを有し、端面1aは、縦1.8cm、横1.8cmの大きさを有している。矢印Aは、押出方向を示しており、矢印Bは押出方向Aに対し垂直な方向を示している。
【0088】
気孔率は、上記の8×8セルのハニカム焼結体1の中心部2から、2×2セルに相当する部分を、押出方向Aに沿う長さが2cm程度となるように切り出し、測定サンプルとした。
【0089】
図9は、測定サンプル3を示す斜視図である。図9に示す測定サンプル3を用い、JIS R1634に準拠して気孔率を測定した。
【0090】
(曲げ強度)
図10に示すように、上記の8×8セルのハニカム焼結体1を、支持点11及び12に支持した状態で、焼結体1の中心部を押圧棒10で押圧することにより、JIS R1601に準拠して、曲げ強度を測定した。
【0091】
(熱膨張係数)
図8及び図9を参照して説明した、気孔率の測定サンプル3と同様にして、8×8セルのハニカム焼結体1の中心部2から、押出方向Aに沿う長さが2cm程度となるように切り出し、測定サンプル3とした。図11に示すように、測定サンプル3の押出方向Aにおける線膨張係数を、JIS R1618に準拠して測定した。
【0092】
(結晶配向比)
得られたハニカム焼結体についてのC軸結晶配向比を、結晶配向比とした測定した。
【0093】
結晶配向比は、以下の式に示すように、押出方向の結晶配向度と、押出方向と垂直な方向の結晶配向度(垂直方向の結晶配向度)から算出した。
【0094】
結晶配向比=押出方向の結晶配向度/(押出方向の結晶配向度+垂直方向の結晶配向度)
【0095】
結晶配向度は、X線回折により求めた。押出方向の結晶配向度は、ハニカム焼結体の押出面のX線回折を測定し、(002)面の回折強度(=I(002))及び(230)面の回折強度(=I(230))より、以下の式により算出した。
【0096】
結晶配向度=I(002)/{I(002)+I(230)}
【0097】
垂直方向の結晶配向度は、ハニカム焼結体の垂直面のX線回折を測定し、上記と同様にして、I(002)及びI(230)を求めることにより算出した。
【0098】
なお、(002)面の回折強度は、2θ=50.8°付近に現れるピークであり、(230)面の回折ピークは、2θ=33.7°付近に現れるピークである。
【0099】
図12及び図13は、押出面のX線回折を測定するための測定サンプルの作製を示す斜視図である。
【0100】
図12に示すように、ハニカム焼結体1の端面1aを含む領域4を切り取り、図13に示す測定サンプルを作製した。図13に示す測定サンプル5を用い、この測定サンプル5の押出面5aのX線回折を測定した。
【0101】
図14及び図15は、垂直面、すなわち、押出面に垂直な方向の面のX線回折を測定するためのサンプルの作製を示す斜視図である。
【0102】
図14に示すように、ハニカム焼結体1の8×2セルに相当する領域6を、押出方向Aに沿って切り出し、図15に示す測定サンプル7を得た。この測定サンプル7の押出方向Aに沿う面(押出面)7aのX線回折の測定を行った。
【0103】
以上のようにして、各ハニカム焼結体についての結晶配向比を算出し、結果を表1に示した。
【0104】
なお、(002)面はC軸に垂直な面であり、(002)面の強度が高いということは、C軸が配向していることを意味する。
【0105】
【表1】
【0106】
表1に示すように、本発明に従う実施例1〜3の柱状チタン酸アルミニウムを用いたハニカム焼結体は、比較例1の柱状チタン酸アルミニウムを用いたハニカム焼結体に比べ、高い曲げ強度を有している。これは、本発明に従う柱状チタン酸アルミニウムが、ムライト微粒子及び酸化アルミニウム微粒子を表面に付着させており、表面に存在するムライト微粒子及び酸化アルミニウムが焼結助剤として働き、機械的強度に優れたハニカム焼結体が得られるためであると考えられる。
【0107】
また、実施例1〜3の焼結体は、比較例3の焼結体に比べ、低い線膨張係数を有している。比較例3の結晶配向比が実施例1〜3に比べ低いことから、比較例3のアスペクト比が小さいため、ハニカム焼結体の押出方向にチタン酸アルミニウムのC軸方向が整列せず、低い線膨張係数が得られていないものと考えられる。これに対し、実施例1〜3の柱状チタン酸アルミニウムは、アスペクト比が大きいため、ハニカム焼結体の押出方向にチタン酸アルミニウムのC軸方向が整列し、低い線膨張係数が得られているものと考えられる。
【0108】
また、比較例2においては、ムライトが25重量%より多く含有されているため、線膨張係数が高くなっている。また、ムライトの付着量が多いため、粉体のアスペクト比も小さくなっており、このため、押出方向にチタン酸アルミニウムが配向しにくくなっており、このことからも線膨張係数が高くなっているものと思われる。
【符号の説明】
【0109】
1…ハニカム焼結体(ハニカム構造体)
1a…ハニカム構造体の端面
2…ハニカム構造体の中心部
3…ハニカム構造体から切り出した測定サンプル
4…ハニカム構造体の端面近傍の領域
5…ハニカム構造体の押出面をX線回折測定するためのサンプル
5a…押出面
6…ハニカム構造体の8×2セルの領域
7…ハニカム構造体の垂直面をX線回折測定するためのサンプル
7a…垂直面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)が1.3以上の柱状チタン酸アルミニウムであって、柱状チタン酸アルミニウムに対し、5〜25重量%のムライト及び2〜10重量%の酸化アルミニウムが表面に付着していることを特徴とする柱状チタン酸アルミニウム。
【請求項2】
個数平均短軸径が、10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の柱状チタン酸アルミニウム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の柱状チタン酸アルミニウムを製造する方法であって、
チタン源、アルミニウム源、ケイ素源、及びマグネシウム源を含む原料をメカノケミカルに粉砕しながら混合する工程と、
粉砕した混合物を焼成する工程とを備えることを特徴とする柱状チタン酸アルミニウムの製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の柱状チタン酸アルミニウムを用いて作製したハニカム構造体であって、
ハニカム構造体の押出方向の30〜800℃の間の熱膨張係数が1.0×10−6/℃
以下であり、ハニカム押出方向に対するC軸の結晶配向比が0.75以上であることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項1】
平均アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)が1.3以上の柱状チタン酸アルミニウムであって、柱状チタン酸アルミニウムに対し、5〜25重量%のムライト及び2〜10重量%の酸化アルミニウムが表面に付着していることを特徴とする柱状チタン酸アルミニウム。
【請求項2】
個数平均短軸径が、10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の柱状チタン酸アルミニウム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の柱状チタン酸アルミニウムを製造する方法であって、
チタン源、アルミニウム源、ケイ素源、及びマグネシウム源を含む原料をメカノケミカルに粉砕しながら混合する工程と、
粉砕した混合物を焼成する工程とを備えることを特徴とする柱状チタン酸アルミニウムの製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の柱状チタン酸アルミニウムを用いて作製したハニカム構造体であって、
ハニカム構造体の押出方向の30〜800℃の間の熱膨張係数が1.0×10−6/℃
以下であり、ハニカム押出方向に対するC軸の結晶配向比が0.75以上であることを特徴とするハニカム構造体。
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1】
【図2】
【公開番号】特開2010−285294(P2010−285294A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138033(P2009−138033)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000206901)大塚化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000206901)大塚化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】
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