説明

柱状構造物の補強構造及び補強方法

【課題】柱状構造物の補強構造及び補強方法を提供すること。
【解決手段】柱状構造物1における柱体部分から離れた状態で鋼製筒状体3が地盤4に圧入されて、前記柱状構造物1におけるコンクリート基礎5に設置され、前記柱体部分2とその外側の鋼製筒状体3との間の土砂を排出した空間内におけるコンクリート基礎5上に止水層10が設けられて鋼製筒状体3の下端内側が止水され、前記止水層10及びコンクリート基礎5に渡ってアンカー用縦孔16が柱体部分2の周方向に間隔をおいて複数設けられ、前記各アンカー用縦孔16にそれぞれ棒状鋼材19の下端側が挿入配置されてアンカー用縦孔16内に充填された接着剤18により固定され、前記棒状鋼材19を埋め込むように、前記空間にセメント系充填材21が充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋脚或は杭基礎等における柱状構造物の補強構造及び補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート製の柱状構造物の周囲に、柱状構造物における柱体部分を囲むように鋼製筒状体を地盤に圧入し、柱状構造物と柱体部分との間の土砂を排出して空間を形成し、前記空間部分にモルタル等を充填して、柱状構造物を補強する柱状構造物の補強構造あるいは補強方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、プレキャストコンクリート製ブロックを圧入すると共にコンクリートブロック内に配置したPC鋼材を緊張定着することも知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、既設橋脚の周囲に仮設設備を設置し、PC鋼材を帯鉄筋として用いて巻き付けて緊張定着させ、既設橋脚の耐震補強を図る工法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−336946号公報
【特許文献2】特開2007−162448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の場合は、柱状構造物と柱体部分との間の空間にモルタル等を充填した場合に、鉛直荷重等に対して補強することができても、柱状構造物における柱体部分とこれに接続するコンクリート基礎との水平方向のせん断力に対する補強が困難であるため、前記のモルタル等の厚みを増して対応することが考えられるが、経済的でないという問題があった。
また、プレキャストコンクリートブロックを用いそのブロック内に配置されたPC鋼材を緊張定着させる形態では、PC鋼材に大きなせん断抵抗力を期待することができないため、柱状構造物の周りの断面積を大きくして、せん断抵抗力を期待するようになるため、横断面が大きくなり経済的でないという問題がある。
また、既設橋脚の周囲に仮設材を設置し、PC鋼材を帯鉄筋として用いて既設橋脚に巻き付けて緊張定着させ、既設橋脚の耐震補強を図る工法の場合は、仮設設備が大掛かりとなり、また河川内では浚渫を行うので、河川環境面において悪影響を及ぼすことになる。
前記のように、従来の補強工法では、既設橋脚等の既設柱状構造物のせん断抵抗力を増強するせん断補強に加えて、曲げ抵抗力を増強する曲げ補強を満足する工法が無く、前記のPC鋼材を既設橋脚に巻き付けて緊張定着させる工法の場合は、そうであっても前記の通り、環境にやさしくないという問題がある。
従来工法では、前記のような課題があることから、橋脚等の柱状構造物のせん断補強及び曲げ補強が可能で、河川内の場合では環境面でさらに環境にやさしい補強構造及び補強方法が望まれる。
本発明は、前記の課題を有利に解消することができ、橋脚等の柱状構造物のせん断補強及び曲げ補強が可能で、河川内の場合では環境面でさらに環境にやさしい柱状構造物の補強構造及び補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の柱状構造物の補強構造では、柱状構造物における柱体部分から離れた状態で鋼製筒状体が地盤に圧入されて、前記柱状構造物におけるコンクリート基礎に設置され、前記柱体部分とその外側の鋼製筒状体との間の土砂を排出した空間内におけるコンクリート基礎上に止水層が設けられて鋼製筒状体の下端内側が止水され、前記止水層及びコンクリート基礎に渡ってアンカー用縦孔が柱体部分の周方向に間隔をおいて複数設けられ、前記各アンカー用縦孔にそれぞれ棒状鋼材の下端側が挿入配置されてアンカー用縦孔内に充填された接着剤により固定され、前記棒状鋼材を埋め込むように、前記空間にセメント系充填材が充填されていることを特徴とする。
また、第2発明の柱状構造物の補強方法では、第1発明の柱状構造物の補強構造を構築するための柱状構造物の補強方法であって、柱状構造物における柱体部分から離れた状態で鋼製筒状体を地盤に圧入して、前記柱状構造物におけるコンクリート基礎に設置し、前記柱体部分とその外側の鋼製筒状体との間の土砂を排出した空間内におけるコンクリート基礎上に止水層を設けて鋼製筒状体の下端内側を止水し、前記止水層及びコンクリート基礎に渡ってアンカー用縦孔を柱体部分の周方向に間隔をおいて複数設け、前記空間をドライとした状態で、前記各アンカー用縦孔にそれぞれ棒状鋼材の下端側を挿入配置してアンカー用縦孔内に充填された接着剤により固定した後、前記棒状鋼材を埋め込むように、前記空間にセメント系充填材を充填することを特徴とする。
第3発明では、第2発明の柱状構造物の補強方法において、前記各アンカー用縦孔はウォータージェット工法により削孔されることを特徴とする。
第4発明の柱状構造物の補強方法では、第2発明又は第3発明の柱状構造物の補強方法において、鋼製筒状体は、複数の鋼板ブロックが筒状に順次継ぎ足されて形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
第1発明によると、柱状構造物における柱体部分から離れた状態で鋼製筒状体が地盤に圧入されて、前記柱状構造物におけるコンクリート基礎に設置され、前記柱体部分とその外側の鋼製筒状体との間の土砂を排出した空間内におけるコンクリート基礎上に止水層が設けられて鋼製筒状体の下端内側が止水され、前記止水層及びコンクリート基礎に渡ってアンカー用縦孔が柱体部分の周方向に間隔をおいて複数設けられ、前記各アンカー用縦孔にそれぞれ棒状鋼材の下端側が挿入配置されてアンカー用縦孔内に充填された接着剤により固定され、前記棒状鋼材を埋め込むように、前記空間にセメント系充填材が充填されているので、鉄筋等の安価な棒状鋼材の下端部をコンクリート基礎に確実に固定しているため、地震時における水平力が作用した場合のせん断抵抗力を格段に高めて補強することができる等の効果が得られる。
また、第2発明の柱状構造物の補強方法では、第1発明の柱状構造物の補強構造を構築するための柱状構造物の補強方法であって、柱状構造物における柱体部分から離れた状態で鋼製筒状体を地盤に圧入して、前記柱状構造物におけるコンクリート基礎に設置し、前記柱体部分とその外側の鋼製筒状体との間の土砂を排出した空間内におけるコンクリート基礎上に止水層を設けて鋼製筒状体の下端内側を止水し、前記止水層及びコンクリート基礎に渡ってアンカー用縦孔を柱体部分の周方向に間隔をおいて複数設け、前記空間をドライとした状態で、前記各アンカー用縦孔にそれぞれ棒状鋼材の下端側を挿入配置してアンカー用縦孔内に充填された接着剤により固定した後、前記棒状鋼材を埋め込むように、前記空間にセメント系充填材を充填するので、鉄筋等の安価な棒状鋼材の下端部をコンクリート基礎に確実に固定して、地震時における水平力が作用した場合のせん断抵抗力を格段に高めた状態で補強することができ、施工も容易である等の効果が得られる。
また、止水層を設けた後、空間をドライとした状態で、各アンカー用縦孔にそれぞれ棒状鋼材の下端側を挿入配置してアンカー用縦孔内に充填した接着剤により固定した後、前記棒状鋼材を埋め込むように、前記空間にセメント系充填材を充填するので、棒状鋼材の下端側をコンクリート基礎のアンカー用縦孔に確実に固定することができる等の効果が得られる。
第3発明の柱状構造物の補強方法では、前記各アンカー用縦孔はウォータージェット工法により削孔されるので、既設柱状構造物における鉄筋を含む鋼材等の補強材料を損傷することなく、しかもピンポイントでアンカー用縦孔を既設柱状構造物に削孔できるため、既設柱状構造物を必要以上に損傷することなく、容易に各アンカー用縦孔を削孔することができ、しかも鋼製筒状体内の空間で行うため、周囲を汚濁することがなく、環境にやさしい工法となっている等の効果が得られる。
第4発明の柱状構造物の補強方法では、鋼製筒状体は、その上部に複数の鋼板ブロックが筒状に順次継ぎ足されて形成されるので、鋼製筒状体の形成が容易である等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】柱状構造物を補強した状態を示す一部縦断正面図である。
【図2】図1に示す横断平面図で、補強構造の全体を示す横断平面図である。
【図3】柱状構造物の側周面から間隔をおいて柱状構造物を囲むように、鋼製筒状体を水底地盤又は海底地盤に圧入して、柱状構造物におけるコンクリート基礎に着座させ、鋼製筒状体の下端内側の止水処理をした状態の片側を示す一部縦断正面図である。
【図4】鋼製筒状体の内側において、コンクリート基礎にアンカー用縦孔をウォータージェット式削孔装置からなるアンカー用縦孔掘削装置により削孔している状態の片側を示す一部縦断正面図である。
【図5】アンカー用縦孔を所定の深さまで削孔した後、アンカー用縦孔掘削装置を撤去した状態を示す一部縦断正面図である。
【図6】コンクリート基礎に設けた複数のアンカー用縦孔の配置形態を示す横断平面図である。
【図7】鋼製筒状体の内側において、コンクリート基礎に設けたアンカー用縦孔に棒状鋼材の下端部を挿入した状態を示す一部縦断正面図である。
【図8】図7の横断平面図で、アンカー用縦孔及び棒状鋼材の全体の配置形態を示す横断平面図である。
【図9】棒状鋼材の下端部をアンカー用縦孔内において接着剤により定着した後、鋼製筒状体内にセメント系充填材を充填した状態を示す一部縦断正面図である。
【図10】鋼製筒状体の上端部に鋼板製ブロックを継ぎ足すと共に棒状鋼材を継ぎ足している状態を示す一部切欠き縦断正面図である。
【図11】棒状鋼材の連結形態の一例を示す縦断正面図である。
【図12】柱状構造物の柱状部上端付近まで、鋼板製ブロック及び棒状鋼材を継ぎ足し、空間にセメント系充填材を充填した状態を示す一部縦断概略正面図である。
【図13】圧入装置により鋼製筒状体を地盤に圧入する場合の一形態を示す一部縦断概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0009】
図1及び図2には、本発明の柱状構造物の補強構造を実施して、鉄筋コンクリート製橋脚あるいは鉄筋コンクリート製杭等の柱状構造物1を補強した状態の片側が示されている。
【0010】
図1及び図2に示されている補強構造を施工するまでの工程について順次説明すると、図3に示すように、鉄筋コンクリート製の柱状構造物1における柱体部分2から離れた状態で、鋼製筒状体3が海底地盤又は水底地盤等の地盤4に圧入されて、前記柱状構造物1におけるコンクリート基礎5に、鋼製筒状体3の下端部が着座するように設置されている。本発明においては、鋼製筒状体3を海底地盤又は水底地盤等の地盤4に圧入する形態であるので、周囲を汚濁する恐れが少なく環境にやさしい工法となっている。
前記の鋼製筒状体3は、図13に示すように、柱状構造物1の周囲にこれを囲むように鋼板製ブロック6が既設側の鋼製筒状体3の上部に継ぎ足すように配置されて、付き合わせ溶接されて、組立形成される。
鋼製筒状体3を地盤4に圧入する場合には、図13に示すように、柱状構造物1の上部に、液圧ジャッキ等の伸縮式ジャッキ7を備えた圧入装置8を設置すると共に、伸縮式ジャッキ7と分割型の鋼製加圧リングからなる加圧部材9の間にスペーサ材(コマ材)を適宜介在させ、前記圧入装置8における加圧部材9を介して、鋼製筒状体3の上端を下方に向かって押圧して、圧入すると共に、鋼板製ブロック6を圧入された鋼製筒状体3の上部に溶接等により継ぎ足すことを繰り返すことで、鋼製筒状体3の下端部をコンクリート基礎5に着座させることができる。前記の鋼板製ブロック6の溶接接合にあたっては、適宜、柱状構造物1の周囲に設けた組立式浮体23上の作業員により行われる。鋼板製ブロック6は、柱状構造物1の周囲を囲むように、組立式浮体23上のクレーン(又はクレーン船、図示を省略)等により吊り上げ搬送され、仮固定又は仮保持された状態で溶接により接合される。
【0011】
所定の高さの鋼製筒状体3が形成された後、前記柱体部分2とその外側の鋼製筒状体との間が掘削・洗浄されて、その間の土砂が排出され、前記柱体部分2とその外側の鋼製筒状体3の内側部分で、鋼製筒状体3の下端内側を塞ぐように、止水用のコンクリート等の止水材が打設されて、底部の止水層10が形成されて鋼製筒状体3の下端内側が止水された後、鋼製筒状体3内の水が排水されて、空間11が形成されている。
【0012】
次いで、図4に示すように、先端に高圧水噴射ノズル12を有する高圧水供給用縦管13を備えたアンカー用縦孔掘削装置14が、適宜、ガイド治具15によりガイドされて前記空間11内に配置されて、所定圧力の高圧水により、止水層10及びコンクリート基礎5にアンカー用縦孔16が、所定の深さ設けられている。前記のアンカー用縦孔16は、鋼製筒状体3の内側面及び柱体部分2の外面から半径方向で離れた位置に設けられる。
前記のガイド治具15は、図示を省略するが、ボルトにより上下方向の複数のガイド治具ユニットが連結されて構成され、前記のガイド治具15の下端部が底部の止水層10におけるアンカー用縦孔16の近傍に位置するように調整されて着座され、ガイド治具15の上端側は、適宜、柱状構造物1に連結(図示を省略)されて所定の位置を保持するようにされ、ガイド治具15の中間部には、環状のガイド部材17が設けられ、高圧ホース等を介して高圧水供給源(装置)に接続された高圧水供給用縦管13は、前記ガイド部材内に挿入配置されて、高圧水供給用縦管先端の高圧水噴射ノズル12が所定の位置となるようにされる。高圧水供給用縦管13は適宜管体が継ぎ足されて形成される。
高圧水噴射ノズル12から高圧水を噴射する場合、コンクリート基礎5内の鉄筋を切断しないように、高圧水内に研削材(又は研磨材)を含まないと共に、所定の噴射圧力によるウォータージェット工法により、コンクリート部のみを切削して、止水層10及びコンクリート基礎5の上部に渡って前記アンカー用縦孔16は掘削形成され、周方向に等角度間隔等の間隔をおいてアンカー用縦孔16は形成されている。
前記のように、ウォータージェット工法により削孔されるので、既設柱状構造物における鉄筋を含む鋼材等の補強材料(主に、鉄筋、鋼製金具、溶接部)を損傷することなく、しかもピンポイントでアンカー用縦孔を既設柱状構造物に削孔できるため、既設柱状構造物を必要以上に損傷することなく、容易に各アンカー用縦孔を削孔することができ、しかも鋼製筒状体内の空間で行うため、周囲を汚濁することがなく、環境にやさしい工法となっている。
【0013】
図5及び図6に示すように、鋼製筒状体3の内側において、前記のアンカー用縦孔16は、柱状構造物1の周方向に間隔をおいて、柱状構造物1の全周に渡って、前記コンクリート基礎5に多数設けられている。アンカー用縦孔16を設ける数は、柱状構造物1の横断面形態、補強設計条件等により、適宜設定される。
【0014】
前記の空間11内の水は排水されてドライな状態とされる。その後、図7及び図8に示すように、棒状鋼材が吊り降ろされて、前記各アンカー用縦孔16にそれぞれ棒状鋼材19の下端側が挿入配置されて、図9(又は図1)に示すように、前記アンカー用縦孔内に充填されたエポキシ樹脂等の接着剤18により、前記棒状鋼材19の下端部が固定されている。
前記の接着剤18の充填にあたっては、適宜、接着剤供給用縦管(図示を省略)の先端がアンカー用縦孔内に位置するようにされて充填することでもよい。この場合に、前記の棒状鋼材19をガイド部材として利用して接着剤供給用縦管を吊り降ろすようにしてもよい。
前記の棒状鋼材19としては、異径鉄筋又は異径棒鋼等の市販の棒状鋼材19を用いると安価である。前記の棒状鋼材19は、図11に示すように、適宜、両端部に雄ねじ軸部を有する棒状短尺鋼材19aを、雌ねじ孔を有する鋼製等の連結スリーブ20により連結して形成するようにしてもよく、両端部に接続用のネジ部を有する短尺棒状鋼材相互又は、雌ねじ孔を有する鋼製スリーブ等の接続金具を用いて、短尺棒状鋼材相互を接続する形態としてもよい。前記の棒状鋼材19は、一端側に雄ねじ部を有し他端側に雌ねじ孔を有する短尺鋼製ロッドを連結した形態であってもよい。
【0015】
前記の各棒状鋼材19の下端部がコンクリート基礎5に定着された状態で、前記空間内に、図1に示すように、コンクリートあるいは無収縮モルタル等のモルタルからなるセメント系充填材21が充填されて硬化されて、柱状構造物1が補強されている。
図示の形態では、図10に示すように、圧入装置8における加圧部材9及び伸縮式ジャッキ7並びにジャッキ取り付け部材22等が取り外された後、柱状構造物1の柱体部分2の上端付近まで、棒状短尺鋼材19a及び鋼板製ブロック6が順次継ぎ足されて、鋼製筒状体3及び縦向きに棒状鋼材19が形成され、さらに、コンクリート又は無収縮モルタル等のセメント系充填材21aがさらに充填・硬化されて、柱体部分2の上端部付近まで補強されている。圧入装置8としては、適宜、他の公知の圧入装置を用いるようにしてもよい。
【0016】
前記のように補強された柱状構造物1に地震時に水平力が作用した場合には、前記棒状鋼材19が、水平方向のせん断力に抵抗できるため、柱体部分2下端部とコンクリート基礎5との接合部付近のせん断抵抗力を格段に高めることができる。
【0017】
前記のように、実施形態の柱状構造物の補強構造では、柱状構造物1における柱体部分2から離れた状態で鋼製筒状体3が地盤4に圧入されて、前記柱状構造物1におけるコンクリート基礎5に設置され、前記柱体部分2とその外側の鋼製筒状体3との間の土砂を排出した空間11内におけるコンクリート基礎5上に止水層10が設けられて鋼製筒状体3の下端内側が止水され、前記止水層10及びコンクリート基礎5に渡ってアンカー用縦孔16が柱体部分2の周方向に間隔をおいて複数設けられ、前記各アンカー用縦孔16にそれぞれ棒状鋼材19の下端側が挿入配置されてアンカー用縦孔16内に充填された接着剤18により固定され、前記棒状鋼材19を埋め込むように、前記空間11にセメント系充填材21が充填されているので、鉄筋等の安価な棒状鋼材19の下端部をコンクリート基礎5に確実に固定しているため、地震時における水平力が作用した場合のせん断抵抗力を格段に高めて補強することができる等の効果が得られる。
また、前記実施形態の柱状構造物の補強方法では、柱状構造物1における柱体部分2から離れた状態で鋼製筒状体3を地盤4に圧入して、前記柱状構造物1におけるコンクリート基礎5に設置し、前記柱体部分2とその外側の鋼製筒状体3との間の土砂を排出した空間11内におけるコンクリート基礎5上に止水層10を設け、前記止水層10及びコンクリート基礎5に渡ってアンカー用縦孔16を柱体部分2の周方向に間隔をおいて複数設け、前記各アンカー用縦孔16にそれぞれ棒状鋼材19の下端側を挿入配置してアンカー用縦孔16内に充填された接着剤18により固定した後、前記棒状鋼材19を埋め込むように、前記空間11にセメント系充填材21を充填するので、鉄筋等の安価な棒状鋼材19の下端部をコンクリート基礎5に確実に固定して、地震時における水平力が作用した場合のせん断抵抗力を格段に高めた状態で補強することができ、施工も容易である等の効果が得られる。
また、前記実施形態の柱状構造物の補強方法では、止水層10を設けた後、空間をドライとした状態で、各アンカー用縦孔16にそれぞれ棒状鋼材19の下端側を挿入配置してアンカー用縦孔16内に充填した接着剤18により固定した後、前記棒状鋼材19を埋め込むように、前記空間11にセメント系充填材21を充填するので、棒状鋼材19の下端側をコンクリート基礎5のアンカー用縦孔16に確実に固定することができる等の効果が得られる。
また、前記実施形態の柱状構造物の補強方法では、棒状鋼材19は、順次短尺鋼材が継ぎ足されて形成されるので、柱状構造物1の補強高さ範囲に適宜対応して補強することができる等の効果が得られる。
さらに前記実施形態の柱状構造物の補強方法では、鋼製筒状体3は、その上部に複数の鋼板製ブロック6が筒状に順次継ぎ足されて形成されるので、鋼製筒状体3の形成が容易である等の効果が得られる。
【0018】
前記実施形態のように、棒状鋼材19の先端部をアンカー用縦孔16内に配置して接着剤18により埋め込む形態では、アンカー用縦孔16の直径を小さくすることができる。また、本発明では、棒状鋼材19の先端部に定着プレートを設けていないので、アンカー用縦孔16の直径が大きくなることはなく、コンクリート基礎5内の鉄筋を切断する必要もなく、アンカー用縦孔16を形成することができ、棒状鋼材19の先端部のみを確実に定着させることができる。
【0019】
本発明を実施する場合、高圧水供給用縦管に代えて、高圧水供給用ホースを用いるようにしてもよい。
前記実施形態のように、棒状鋼材は、順次短尺鋼材が継ぎ足されて形成されると、柱状構造物の補強高さ範囲に適宜対応して補強することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 柱状構造物
2 柱体部分
3 鋼製筒状体
4 地盤
5 コンクリート基礎
6 鋼板製ブロック
7 伸縮式ジャッキ
8 圧入装置
9 加圧部材
10 止水層
11 空間
12 高圧水噴射ノズル
13 高圧水供給用縦管
14 アンカー用縦孔掘削装置
15 ガイド治具
16 アンカー用縦孔
17 ガイド部材
18 接着剤
19 棒状鋼材
19a 棒状短尺鋼材
20 連結スリーブ
21 セメント系充填材
21a セメント系充填材
22 ジャッキ取り付け部材
23 組立式浮体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状構造物における柱体部分から離れた状態で鋼製筒状体が地盤に圧入されて、前記柱状構造物におけるコンクリート基礎に設置され、前記柱体部分とその外側の鋼製筒状体との間の土砂を排出した空間内におけるコンクリート基礎上に止水層が設けられて鋼製筒状体の下端内側が止水され、前記止水層及びコンクリート基礎に渡ってアンカー用縦孔が柱体部分の周方向に間隔をおいて複数設けられ、前記各アンカー用縦孔にそれぞれ棒状鋼材の下端側が挿入配置されてアンカー用縦孔内に充填された接着剤により固定され、前記棒状鋼材を埋め込むように、前記空間にセメント系充填材が充填されていることを特徴とする柱状構造物の補強構造。
【請求項2】
請求項1に記載の柱状構造物の補強構造を構築するための柱状構造物の補強方法であって、柱状構造物における柱体部分から離れた状態で鋼製筒状体を地盤に圧入して、前記柱状構造物におけるコンクリート基礎に設置し、前記柱体部分とその外側の鋼製筒状体との間の土砂を排出した空間内におけるコンクリート基礎上に止水層を設けて鋼製筒状体の下端内側を止水し、前記止水層及びコンクリート基礎に渡ってアンカー用縦孔を柱体部分の周方向に間隔をおいて複数設け、前記空間をドライとした状態で、前記各アンカー用縦孔にそれぞれ棒状鋼材の下端側を挿入配置してアンカー用縦孔内に充填された接着剤により固定した後、前記棒状鋼材を埋め込むように、前記空間にセメント系充填材を充填することを特徴とする柱状構造物の補強方法。
【請求項3】
前記各アンカー用縦孔はウォータージェット工法により削孔されることを特徴とする請求項2に記載の柱状構造物の補強方法。
【請求項4】
鋼製筒状体は、複数の鋼板ブロックが筒状に順次継ぎ足されて形成されることを特徴とする請求項2又は3に記載の柱状構造物の補強方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−167473(P2012−167473A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28618(P2011−28618)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000103769)オリエンタル白石株式会社 (136)
【出願人】(596105208)第一カッター興業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】