説明

柱状物周囲の仮締切装置及び同仮締切方法

【課題】断面形状の異なった橋脚等の柱状物に対する施工や、複数本並んだ柱状物に対しても、1つの作業空間形成用底板付隔壁体を移動させて再使用できる柱状物周囲の仮締切装置の提供。
【解決手段】縦割りに複数分割した分割ユニット20aを柱状物10の周囲を囲むように組み立てて作業空間形成用底板付隔壁体20を形成し、内部をドライとするの仮締切装置であって、底板22に、上下に開口した窓部25を備え、窓部25を閉鎖し、柱状物10が上下に挿通される装着孔26を有する止水用受け板24を備え、止水用受け板24は、複数分割された受け板ユニットを組み立てることにより、柱状物装着用の装着孔26が形成され、止水用受け板24を、装着孔内に柱状物を挿通した柱状物外周に固定し、止水用受け板24と作業空間形成用底板付隔壁体20の底板22とを、両者間に止水パッキンを介在させて互いに上下配置に重ね、底板22の窓部25を閉鎖する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として各種ドルフィンや作業用桟橋の支持杭等の柱状物に支持させてその周囲にドライな作業用空間を形成するための柱状物の仮締切装置及び同仮締切方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、船舶の接岸用ドルフィン、係留用ドルフィン、作業用桟橋に使用されている杭、或いは水面に近い高さに橋桁がある橋梁の橋脚等、水底に立設した柱状物に支持された構造物に対し、柱状物の上端に支持させたコンクリート床版の裏面の補修、潮位変動によって水没と気中露出が繰り返される柱状物上端部の補修や補強が必要となっている。
【0003】
これらの補修、補強作業に際し、従来から、ドライな作業空間を形成する仮締切装置が使用されている。
【0004】
柱状物に装着する仮締切装置として、いわゆる抱付式仮締切装置がある。この従来の仮締切装置は、図13に示すように、底板1と、周縁部上面に立設した隔壁部2とから構成され、底板1に杭3が上下に挿通されるようにした柱状物装着孔4を有する作業空間形成用底板付隔壁体(以下、本明細書では単に「隔壁体」と略記する)Aを使用し、この隔壁体Aの主として隔壁部2を中空の浮力調整室とし、その内部に注排水することによって浮力調整できるようにしている。
【0005】
また、隔壁体Aは、柱状物装着孔4がその中心より複数分割される位置にて縦割りに複数分割したユニットa,bをもって構成され、このユニットa,bを水面に浮上させて施工現場まで曳航し、両者を柱状物Bの両側から抱き付かせるようにして柱状物装着孔4内に柱状物Bを嵌合させた状態で隔壁体Aを組み立て、ユニットa,b間及び柱状物Bの周囲と柱状物装着孔4との間を止水する。
【0006】
然る後、隔壁体A内の水を排出し、底板1と隔壁2によって囲まれたドライな作業空間を形成する(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−249685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した所謂抱付式の仮締切装置では、例えば杭式のドルフィンや桟橋のように、柱状物である支持杭が列状に並んでいる場合においても、杭1本について1つの隔壁体を使用した仮締切装置を使用して施工していたが、この場合、杭の間隔が狭いと、隔壁体内からのドルフィン底面に対する作業範囲が狭くなり、図14に示すように、各杭に対して支持させた隔壁体内でのドルフィン底面に対する作業可能範囲Sが、オーバーラップしない部分Dが生じ、補修できない部分が発生するという問題があった。
【0009】
また、1つの隔壁体に複数の柱状物装着孔を形成しておき、複数本の杭に跨らせて1つの隔壁体を装着する仮締切方法が考えられるが、杭の間隔は、設計上は同一寸法であっても、施工誤差等を考慮する必要があり、実際には同一寸法になっていない場合が多いため、1つの隔壁体を別の箇所で再使用することができないという問題があった。
【0010】
更に、橋脚などのように、柱状物の間隔が大きい場合においても、柱状物の断面形状毎に、異なった隔壁体を使用する必要があり、その分コスト高となるという問題があった。
【0011】
更に、この種の従来の抱付式の仮締切装置では、隔壁体の底面にかかる浮力が大きく、浮き上がりを防止するために、上部工に対して支持させた山留め材等を用いた浮き上がり防止措置が必要となり、前記隔壁体が形成する作業空間を狭めてしまうという問題があった。また、山留め材の設置により、補修対象箇所を直接支障する場合があるという問題もあった。
【0012】
本発明は、このような従来の問題に鑑み、断面形状の異なった橋脚等の柱状物に対する施工や、複数本並んだドルフィンや桟橋の支持杭等の柱状物に対しても、1つの隔壁体を移動させて再使用でき、かつ杭間隔の異なった別の箇所に対する再利用も可能となり、結果として工程の短縮とコストダウンを実現し、更に、浮き上がり防止措置によって作業空間が狭められることのない柱状物周囲の仮締切装置の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、水中に立設された柱状物が上下に挿通される底板部と、該底板部の周囲上面に立設した筒状の隔壁部とからなり、縦割りに複数分割した分割ユニットをもって構成される隔壁体を備え、前記分割ユニットを前記柱状物の周囲を囲むように配置させ、前記柱状物との間および分割ユニット相互間の水密性を維持させて前記隔壁体を組み立てて該隔壁体内を排水することによりドライな作業空間を形成する柱状物周囲の仮締切装置において、前記隔壁体の底板の所望の位置に、上下に開口した窓部を備えるとともに、該窓部を閉鎖し、前記柱状物が上下に挿通される装着孔を有する止水用受け板を備え、該止水用受け板は、複数分割された受け板ユニットを組み立てることにより、前記柱状物装着用の装着孔が形成され、該止水用受け板を、その装着孔内に前記柱状物を挿通した状態に組み立てて前記柱状物外周に固定し、該止水用受け板と前記隔壁体の底板とを、両者間に止水パッキンを介在させて互いに上下配置に重ね、前記底板の窓部を止水用受け板にて閉鎖することによって前記隔壁体を柱状物の外周に装着されるようにしたことにある。
【0014】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記柱状物外周に対し、前記止水用受け板を上下動不能に固定し、該止水用受け板に前記底板を固定することによって、前記隔壁体の浮力および重力に対抗させるようにしたことにある。
【0015】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記隔壁体を複数の柱状物を囲む形状及び大きさに形成し、前記底板の止水用受け板に、複数の既設の柱状物の形状及び間隔に合わせた複数の装着孔を形成し、複数本の柱状物の周囲を同時に仮締切させるようにしたことにある。
【0016】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記隔壁体の底板に複数の前記窓部を形成し、各窓部を別々に閉鎖する前記止水用受け板を備え、その各止水用受け板に、複数の装着孔を形成し、複数列の柱状物の周囲を同時に仮締切させるようにしたことにある。
【0017】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項1〜4の何れか1の請求項の構成に加え、前記柱状物外周の水面下部分に対し、前記止水用受け板を上下動不能に固定し、該止水用受け板の下に前記底板を、止水パッキンを介在させて固定し、前記隔壁体の浮力によって前記止水パッキンが圧縮状態となるようにしたことにある。
【0018】
請求項6に記載の発明の特徴は、水中に立設された柱状物が上下に挿通される底板部と、該底板部の周囲上面に立設した筒状の隔壁部とからなり、縦割りに複数分割した分割ユニットをもって構成される作業空間形成用底板付隔壁体を備え、前記分割ユニットを前記柱状物の周囲を囲むように配置させ、前記柱状物との間および分割ユニット相互間の水密性を維持させて前記作業空間形成用底板付隔壁体を組み立てて該作業空間形成用底板付隔壁体内を排水することによりドライな作業空間を形成する柱状物周囲の仮締切方法において、前記作業空間形成用底板付隔壁体は、その底板の所望の位置に、上下に開口した窓部を備えたものを使用するとともに、該窓部を閉鎖し、前記柱状物が上下に挿通される装着孔を有する複数分割された止水用受け板を使用し、該止水用受け板を、その装着孔内に前記柱状物を挿通した状態に組み立てて前記柱状物外周に固定し、然る後、前記作業空間形成用底板付隔壁体を構成する分割ユニットの底板を前記柱状体に固定された止水用受け板の下側に挿入し、該止水用受け板下面との間に止水パッキンを介在させて互いに上下配置に重ねた状態で前記作業空間形成用底板付隔壁体を組み立てて、該作業空間形成用底板付隔壁体の底板の窓部を前記止水用受け板にて閉鎖した状態にて該作業空間形成用底板付隔壁体を柱状物の外周に装着することにある。
【0019】
請求項7に記載の発明の特徴は、請求項6の構成に加え、前記作業空間形成用底板付隔壁体を複数の柱状物を囲む形状及び大きさに形成し、前記底板の止水用受け板に、複数の既設の柱状物の形状及び間隔に合わせた複数の装着孔を形成し、複数本の柱状物の周囲を同時に仮締切させることにある。
【0020】
請求項8に記載の発明の特徴は、請求項6又は8の構成に加え、前記作業空間形成用底板付隔壁体の底板に複数の前記窓部を形成し、各窓部を別々に閉鎖する前記止水用受け板を備え、その各止水用受け板に、複数の装着孔を形成し、複数列の柱状物の周囲を同時に仮締切させることにある。
【発明の効果】
【0021】
本発明においては、上述したように、隔壁体の底板の所望の位置に、上下に開口した窓部を備えるとともに、該窓部を閉鎖し、前記柱状物が上下に挿通される装着孔を有する止水用受け板を備え、該止水用受け板は、複数分割された受け板ユニットを組み立てることにより、前記柱状物装着用の装着孔が形成され、該止水用受け板を、その装着孔内に前記柱状物を挿通した状態に組み立てて前記柱状物外周に固定し、該止水用受け板と前記隔壁体の底板とを、両者間に止水パッキンを介在させて互いに上下配置に重ね、前記底板の窓部を止水用受け板にて閉鎖することによって前記隔壁体を柱状物の外周に装着されるようにしたことにより、断面形状の異なった橋脚や杭に等の柱状物に装着させる際に、装着孔を施工現場の柱状物の断面形状や配置、間隔等の実寸法に合わせて形成した止水用受け板のみを取り換えることにより、隔壁体を多数回使用することができる。その結果として、工期短縮とコストダウンを実現することが可能となる。
【0022】
また、本発明では、前記柱状物外周に対し、前記止水用受け板を上下動不能に固定し、該止水用受け板に前記底板を固定することによって、前記山留め材等を用いた浮き上がり防止措置のように隔壁体内の作業エリアを狭めることなく、効果的な浮き上がり防止が可能となり、更に、山留め材の設置が補修対象箇所とならざるを得ない場合、その設置のために補修できない部分ができるという支障も解消する。
【0023】
更に本発明では、前記隔壁体を複数の柱状物を囲む形状及び大きさに形成し、前記底板の止水用受け板に、複数の既設の柱状物の形状及び間隔に合わせた複数の装着孔を形成し、複数本の柱状物の周囲を同時に仮締切させることにより、杭間隔が狭いドルフィンや桟橋に実施する際にも、1つの隔壁体の装着によって広範な作業空間が形成されることとなり、上部構造底面の補修などの際に、補修不能域を生じさせることがなくなる。
【0024】
更に本発明では、前記隔壁体の底板に複数の前記窓部を形成し、各窓部を別々に閉鎖する前記止水用受け板を備え、その各止水用受け板に、複数の装着孔を形成し、複数列の柱状物の周囲を同時に仮締切させるようにすることにより、より広いドライな作業空間が形成できる。
【0025】
更に本発明では、前記柱状物外周の水面下部分に対し、前記止水用受け板を上下動不能に固定し、該止水用受け板の下に前記底板を、止水パッキンを介在させて固定し、前記隔壁体の浮力によって前記止水パッキンが圧縮状態となるようにしたことにより、浮力によって止水性が高くなり、効果的な止水が容易に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る柱状物周囲の仮締切装置の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】図1中のA−A線断面図である。
【図3】図1に示す装置に使用している止水受け板の固定状態の一例を示す部分断面図である。
【図4】同上の他の例を示す縦断面図である。
【図5】図1に示す仮締切装置の止水受け板取り付け状態を示す平面図である。
【図6】同上の止水受け板を杭に対して固定する状態を示す縦断面図である。
【図7】図1に示す仮締切装置の隔壁体の分割ユニットの組み立て状態を示す平面図である。
【図8】同上の縦断面図である。
【図9】同上の組み立て完了状態を示す平面図である。
【図10】同上の組み立て完了後の排水状態を示す縦断面図である。
【図11】本発明における浮き上がり防止措置の他の例の縦断面図である。
【図12】同上の更に他の例の縦断面図である。
【図13】従来の抱付式の仮締切装置を示す縦断面図である。
【図14】従来の抱付式の仮締切装置を使用する際に補修できない部分が生じる場合の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に本発明の実施の形態を図面に示した実施例に基づいて説明する。図1〜図10は、水底に2列に並べて立設された4本の、柱状物である鋼管杭10に支持されたドルフィン等の上部工11の底面を補修する際に使用する仮締切装置を示している。
【0028】
この仮締切装置は、4本の鋼管杭10の周囲を1の隔壁体20をもって仮締切し、ドルフィン上部工11の全底面を連続したドライ空間内に露出させるものである。
【0029】
この隔壁体20は、上部工11の水面下全域を囲む大きさの縦向きの隔壁部21と、その隔壁部内の水平な作業床を構成する底板22とから構成されている。図1、図2に示すように後述する止水受け板24,24を介して鋼管杭10に装着し、内部を排水するとによって上部工の底面下及び下部外周を囲むドライ作業空間23が形成されるようになっている。
【0030】
隔壁部21の壁厚内は中空に形成されその中空部に注排水することによって浮力調整できるようになっており、水面下への沈降高さの調整や水面上への浮上が自らの浮力調整によって操作できるようになっている。
【0031】
底板22には、各列の2本の鋼管杭10,10がそれぞれ上下に挿通される2つの窓部25,25が形成されており、各止水用受け板24,24によって各窓部25,25がその底面側から閉鎖されている。
【0032】
各止水用受け板24には、2本の鋼管杭10,10が上下に貫通される装着孔26,26が上下に貫通して形成されている。この各止水受け板24は、2分割された受け板ユニット24a,24aを、止水パッキンを介在させて互いに突き合わせ配置に固定することによって1枚の板状に組み立てられるようになっており、各受け板ユニット24a,24aの接合縁部には、2本の鋼管杭10,10が嵌り合う間隔及び形状をした半円形の凹部26a,26aが形成されており、両受け板ユニット24a,24aを接合させることにより、互いに向き合う凹部26a,26a(図5に示す)によって円形の装着孔26が形成されるようになっている。
【0033】
凹部26a,26aの周縁部には、鋼管杭10の外周面に固定する複数の固定金具27が下側に向けて連結されている(図3に示す)。この固定金具27としては、図3に示すように鉄筋又は板材27aを止水用受け板24から垂下させたものであってもよく、図4に示すように止水用受け板24の下面にブラケット27bを下向きに突設したものであってもよい。
【0034】
隔壁体20は、図7に示すように、これを縦割りに2分割された半体からなる分割ユニット20a,20aによって構成され、これを互いに向き合わせ、接合部分に止水パッキンを介在させて固定することによって組み立てられるようになっている。各分割ユニット20a,20aは、隔壁部21を半割にした形状の隔壁半体部21aと、底板22を2分割した形状の底板部半体22aとをもって構成されている。
【0035】
両分割ユニット20a,20aの各底板部半体22a,22aには、互いに向き合って接合される接合縁部に、前述した窓部25を2分割した形状の凹部25a,25aが形成されており、分割ユニット20a,20aを接合させたときに、両底板部半体22a,22aが接合されることによって、窓部25が形成されるようになっている。
【0036】
各窓部25と、これを閉鎖した止水受け板24との間には、図3に示すように、チューブ状の止水パッキン30を介在させ、窓部25の周縁部の底板底面と止水用受け板24の上面との間の水密性を維持させるようになっている。
【0037】
このように構成される仮締切装置の使用に際しては、前述した各止水受け板24の各装着孔26,26を、施工現場の隣り合う2本の鋼管杭10,10の間隔及び杭径に合わせた形状及び配置に形成しておき、図5に示すように各受け板ユニット24a,24aの凹部25a,25a内に鋼管杭10,10を嵌め合わせ、両受け板ユニット24a,24aを鋼管杭に抱き付かせる。この時、両半体間の接合面間に止水パッキンを介在させるとともに、凹部内面と鋼管杭外周面との隙間に止水パッキン31を介在させる。
【0038】
次いで図6に示すように、固定金具27を鋼管杭10に溶接して、止水用受け板24を鋼管杭10に対して上下動不能に固定する。
【0039】
このようにして、2列の鋼管杭の列毎に止水用受け板24,24を装着させた後、分割ユニット20a,20の浮力を調整して沈め、図7、図8に示すように、底板部半体22a,22aの凹部25a,25a内に2本の鋼管杭10,10が挿入され、該半体22a22aが先に固定されている止水用受け板24,24の下側に入るようにして両分割ユニット20a,20aを接合させて組み立て、止水用受け板24,24と底板22とを両者の間に止水パッキン30を介在させて固定する。
【0040】
このようにして図9に示すように、隔壁体20を4本の鋼管杭10に対して抱付配置に組み立てて固定した後、隔壁体20内の水を抜く、これによって上部工11の下面全域を囲む配置のドライな作業空間23が形成される。
【0041】
また、隔壁体20内の水を排出することにより、図10に示すように、浮力が増し、これが止水パッキン31を圧縮する方向に作用して止水効果が高まる。また、水の排出によって増大する浮力は、止水用受け板24,24を介して4本の鋼管杭10にて受けることとなり、隔壁体20内作業空間や上方開放部を狭める他の浮き上がり防止措置が不要となる。
【0042】
上述の実施例では、柱状物が鋼管杭である場合について説明したが、コンクリート杭であってもよい。ただし、コンクリート杭に対し前述した固定金具27を杭表面に溶接することが適当でないため、別途に浮き上がり防止措置が必要となる。その例としては、図11に示すように上部工11の下面と止水用受け板24との間に支柱35を介在させる方式や、図12に示すように従来と同様に上部工11から張り出した押さえ部材36をもって隔壁体20の隔壁部上面を下向きに押さえる方式が採用できる。
【0043】
また、上述の実施例では、4本の杭に支持させたドルフィン等の上部工補修の際の仮締切装置について説明したが、1本の橋脚などの柱状物に対して施工する場合にも適用でき、この場合には、図には示してないが、2分割した1の止水用受け板に、橋脚の断面形状に合わせた装着孔を形成しておき、底板には、この1枚の止水用受け板によって閉鎖される1つの窓部を形成したものを使用する。
【0044】
更に、作業用桟橋のように、1列に多数本の杭が使用されている場合においても適用することができ、この場合には、図には示してないが、1列の本数、杭断面形状及び間隔に合わせて装着孔を形成した止水用受け板を使用する。
【符号の説明】
【0045】
10 鋼管杭(柱状物)
11 上部工
20 隔壁体
20a 分割ユニット
21 隔壁部
22 底板
23 ドライ作業空間
24 止水用受け板
24a 受け板ユニット
25 窓部
25a 凹部
26 装着孔
26a 凹部
27 固定金具
30 止水パッキン
31 止水パッキン
35 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に立設された柱状物が上下に挿通される底板部と、該底板部の周囲上面に立設した筒状の隔壁部とからなり、縦割りに複数分割した分割ユニットをもって構成される作業空間形成用底板付隔壁体を備え、
前記分割ユニットを前記柱状物の周囲を囲むように配置させ、前記柱状物との間および分割ユニット相互間の水密性を維持させて前記作業空間形成用底板付隔壁体を組み立てて該作業空間形成用底板付隔壁体内を排水することによりドライな作業空間を形成する柱状物周囲の仮締切装置において、
前記作業空間形成用底板付隔壁体の底板の所望の位置に、上下に開口した窓部を備えるとともに、該窓部を閉鎖し、前記柱状物が上下に挿通される装着孔を有する止水用受け板を備え、
該止水用受け板を、その装着孔内に前記柱状物を挿通した状態に組み立てて前記柱状物外周に固定し、該止水用受け板と前記作業空間形成用底板付隔壁体の底板とを、両者間に止水パッキンを介在させて互いに上下配置に重ね、前記底板の窓部を止水用受け板にて閉鎖することによって前記作業空間形成用底板付隔壁体を柱状物の外周に装着されるようにしたことを特徴としてなる柱状物周囲の仮締切装置。
【請求項2】
前記柱状物外周に対し、前記止水用受け板を上下動不能に固定し、該止水用受け板に前記底板を固定することによって、前記作業空間形成用底板付隔壁体の浮力および重力に対抗させるようにした請求項1に記載の柱状物周囲の仮締切装置。
【請求項3】
前記作業空間形成用底板付隔壁体を複数の柱状物を囲む形状及び大きさに形成し、前記底板の止水用受け板に、複数の既設の柱状物の形状及び間隔に合わせた複数の装着孔を形成し、複数本の柱状物の周囲を同時に仮締切させるようにしてなる請求項1又は2に記載の柱状物周囲の仮締切装置。
【請求項4】
前記作業空間形成用底板付隔壁体の底板に複数の前記窓部を形成し、各窓部を別々に閉鎖する前記止水用受け板を備え、その各止水用受け板に、複数の装着孔を形成し、複数列の柱状物の周囲を同時に仮締切させるようにしてなる請求項1又は2に記載の柱状物周囲の仮締切装置。
【請求項5】
前記柱状物外周の水面下部分に対し、前記止水用受け板を上下動不能に固定し、該止水用受け板の下に前記底板を、止水パッキンを介在させて固定し、前記作業空間形成用底板付隔壁体の浮力によって前記止水パッキンが圧縮状態となるようにしてなる請求項1〜4の何れか1の請求項に記載の柱状物周囲の仮締切装置。
【請求項6】
水中に立設された柱状物が上下に挿通される底板部と、該底板部の周囲上面に立設した筒状の隔壁部とからなり、縦割りに複数分割した分割ユニットをもって構成される作業空間形成用底板付隔壁体を備え、
前記分割ユニットを前記柱状物の周囲を囲むように配置させ、前記柱状物との間および分割ユニット相互間の水密性を維持させて前記作業空間形成用底板付隔壁体を組み立てて該作業空間形成用底板付隔壁体内を排水することによりドライな作業空間を形成する柱状物周囲の仮締切方法において、
前記作業空間形成用底板付隔壁体は、その底板の所望の位置に、上下に開口した窓部を備えたものを使用するとともに、該窓部を閉鎖し、前記柱状物が上下に挿通される装着孔を有する複数分割された止水用受け板を使用し、
該止水用受け板を、その装着孔内に前記柱状物を挿通した状態に組み立てて前記柱状物外周に固定し、
然る後、前記作業空間形成用底板付隔壁体を構成する分割ユニットの底板を前記柱状体に固定された止水用受け板の下側に挿入し、該止水用受け板下面との間に止水パッキンを介在させて互いに上下配置に重ねた状態で前記作業空間形成用底板付隔壁体を組み立てて、該作業空間形成用底板付隔壁体の底板の窓部を前記止水用受け板にて閉鎖した状態にて該作業空間形成用底板付隔壁体を柱状物の外周に装着することを特徴としてなる柱状物周囲の仮締切方法。
【請求項7】
前記作業空間形成用底板付隔壁体を複数の柱状物を囲む形状及び大きさに形成し、前記底板の止水用受け板に、複数の既設の柱状物の形状及び間隔に合わせた複数の装着孔を形成し、複数本の柱状物の周囲を同時に仮締切させる請求項6に記載の柱状物周囲の仮締切方法。
【請求項8】
前記作業空間形成用底板付隔壁体の底板に複数の前記窓部を形成し、各窓部を別々に閉鎖する前記止水用受け板を備え、その各止水用受け板に、複数の装着孔を形成し、複数列の柱状物の周囲を同時に仮締切させる請求項6又は7に記載の柱状物周囲の仮締切方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−11123(P2013−11123A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145433(P2011−145433)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)