説明

栄養組成物及び食事の酸−塩基のポテンシャルを最適化するための方法

代謝性酸負荷を軽減するポテンシャルを有する栄養組成物及び上記栄養組成物の製造方法及び使用方法を提供する。1つの実施形態では、本開示は患者へ投与する栄養組成物の選択方法及び投与方法を提供する。上記方法は、栄養組成物の代謝性酸ポテンシャルの算出、栄養組成物の塩基含有量の算出、及び上記酸含有量から上記塩基含有量を差し引き、潜在的腎臓酸負荷(「PRAL」)の値を決定する方法への変更を含み得る。本開示はまた、PRALの値を予測するためのコンピュータ実行プロセスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[背景]
[0001]本開示は、一般的に健康及び栄養に関する。より具体的には、本開示は、代謝性酸負荷を軽減する可能性を有する栄養組成物及び患者の健康、特に長期の経管栄養を施されている個人の改善された健康を最適とし、提供するために栄養組成物を製造及び使用する方法に関する。
【0002】
[0002]現在、市場には多くのタイプの栄養組成物がある。栄養組成物は、栄養組成物の特定の成分に基づいて、例えば、若者、高齢者、スポーツ選手、及び更に慢性又は急性の状態又は疾患に罹患している人のような特定の顧客タイプをターゲットにすることができる。栄養組成物は、栄養組成物が管理し、治療し又は改善することを目的とした特定の生理学的状態に基づいて処方することもできる。
【0003】
[0003]栄養補給の目標の1つは、不活動性、偏った食習慣、又は主要な臓器の機能不全をもたらす疾患から生じることのある患者の代謝障害を改善することである。例えば、長期の経管栄養製剤を投与されている患者は、数週間、数ヶ月間、又は更に数年間にわたり1つの食事供給源を続けることが多い。その結果、食事の酸塩基ポテンシャルは、患者の健康に重要な役割を果たすことがある。経管栄養患者は、食事の選択が制限され、又腎機能不全になる恐れがあるので、この機会は、選択的で目標を絞った栄養補給により、酸塩基平衡に良い影響を与える。患者は、酸塩基の不均衡を防止するため、又患者の疾患をより良く管理するため及び/又は他の慢性疾患(例えば、低骨塩密度、骨粗しょう症、骨格筋の萎縮)の発症を予防するために特定の栄養組成物を要求することがある。栄養製剤の使用による酸塩基平衡の改善の特定の健康上の利益には、骨、骨格筋及び免疫健康の維持、並びに肺機能の改善が挙げられる。栄養製剤の使用による酸塩基平衡の改善には又、腎機能不全の予防、及び顕在性腎臓疾患の調節も挙げることができる。過剰な食事性酸負荷から生ずる過剰な尿カルシウムは、1日当たり66mgと推定される。短期間の研究から推定されるこのカルシウムの損失を適応することなく長期間に外挿すると、1日当たり66mgの連続的な損失により、1年で24g、又は20年間で480gになる。成人の骨格には、約1150gのカルシウムが存在する。Fentonら、「Meta−analysis of the quantity of calcium excretion associated with the net acid excretion of the modern diet under the acid−ash diet hypothesis」、Am.J.Clin.Nutr.、88:1159−66(2008)を参照。したがって、現代の食生活と関係するカルシウム尿は、過剰なカルシウムが直接に骨から出る場合、骨粗しょう症の進行を説明できるほど十分な量である。
【0004】
[0004]本開示の使用により恩恵を受けることが期待される個人には、例えば、長期間経管栄養を施されている患者が挙げられる。このような個人は、アルツハイマー障害、認知症、認知機能障害、及び/又は例えば、脳性麻痺、筋萎縮性側索硬化症、及び一般的な神経学的障害などの他の神経変性障害に罹患している患者を含むことができる。現行の経管栄養剤の多くが、例えば低度のアシドーシスなどの様々な合併症を引き起こすので、長期の経管栄養を施されている個人は、栄養剤による問題を経験する恐れがある。
【0005】
[0005]本開示の使用により恩恵を受けることが期待される個人には、例えば、腎機能障害を有する急性疾患の個人、筋骨格上の健康問題の危険性を抱える、又は筋骨格上の健康問題に直面している高齢者、在宅ケアを受けている個人、寝たきりの人、肥満者、睡眠時無呼吸肥満者、除脂肪体重を維持しようとして減量プログラムを実施している個人、高血圧の妊婦、呼吸又は呼吸容量が減少した個人(人工呼吸器装着患者を含む)、代謝性アシドーシス又は呼吸性アシドーシスに罹患している個人、妊娠糖尿病を含む糖尿病患者、腎機能及び/又は肺機能が低下している小児も含むことができる。
【0006】
[0006]呼吸不全の例として、例えば、疾患、外傷、脳損傷などから引き起こされた慢性閉塞性肺疾患(「COPD」)、慢性換気、うっ血性心不全(「CHF」)、肺気腫及び呼吸不全を挙げることができる。腎機能不全の例としては、1型糖尿病及び2型糖尿病、代謝異常症候群、老化、全身性エリテマトーデス、膠原病、腎損傷、慢性透析、末期腎疾患などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。腎機能不全患者は、一般的に、ナトリウム以外についてのミネラル制限食を食べることはない。又、本開示で説明されている食事のような低酸性灰分食は、腎機能不全から慢性腎疾患への進行を予防することができた。一般的にカリウム、リン、カルシウム、及びマグネシウムが制限された食事を摂取する慢性透析を受けている患者は例外である。
【0007】
[0007]上述の患者集団だけではなく、完全食事代替治療を受けている患者も又、本開示の使用により、恩恵を受けることができる。例えば、中心静脈栄養法(「TPN」)は、消化器系をバイパスして、栄養溶液を直接、血管に点滴することにより人体の栄養必要量の全てを供給する方法である。患者が、TPNにより栄養を与えられるときは、食物は他のいかなる経路によっても患者に供給されることはない。経腸栄養(「EN」)は、鼻、胃又は小腸に設置したチューブから食物を供給する方法である。患者の中には、TPN及びENの両方を含む食事代替法を受けていて、本開示で説明されるもののような食事を必要とする場合がある。
【0008】
[0008]他の単一の流動食に依存する患者も又、本開示を使用することにより恩恵を受けることができる。このような患者は、例えば、高齢者や体に必要な栄養を供給すると同時にカロリー摂取量を制限するように製造された液体製剤のみを摂取することにより減量を試みている個人を含む。そのような完全食事代替液体製剤の一例として、ネスレS.A.のオプティファースト(Nestle S.A.’s OPTIFAST)(登録商標)がある。
【0009】
[0009]一般的に、静脈注射(「IV」)又は経口経路を通して投与された特定の薬剤も、アシドーシスを引き起こす可能性がある。したがって、このようなIVを受けている又は経口薬剤を投与されている患者集団も、本開示を使用することにより恩恵を受けることができる。
【0010】
[0010]酸塩基の不均衡が長期間続いた結果の1つに、体内カルシウムが徐々に失われることによる骨粗しょう症の進行が考えられる。骨粗しょう症は、骨折のリスクの増大を引き起こす骨量の低下及び脆弱性を特徴とする主要な公衆衛生上の脅威である。骨粗しょう症は、推定で4400万人の米国人、又は50歳以上の55%の人が罹患している。この衰弱性疾患を治療するために、国民はタンパク質、カフェイン、リン、及びナトリウムの摂取を制限するように忠告されているが、これはこれらの要因がカルシウム代謝に悪影響を及ぼすという仮説に基づいている。しかしながら、特にタンパク質とリンに関して、この忠告の根拠は、異論が多く、多くの議論の的となっている。最新のデータは、Remer及びManzの計算で予測したこととは相反するタンパク質とリンの影響を示している。Fentonら「Phosphate decreases urine calcium and increases calcium balance:a meta−analysis of the osteoporosis acid−ash diet hypothesis」、Nutrition J.、8:41(2009)を参照。リン酸1モル当たり、尿中カルシウムが僅かに0.004mmol/d減少し、平衡カルシウムは0.10mmol/d増加する。タンパク質の骨の健康への影響を研究する疫学研究は、この論争を解決するのに役に立たずに、又、功罪相半ばする結果となった。
【0011】
[概要]
[0011]栄養組成物の酸負荷を軽減する処方の方法を提供する。上記栄養組成物を製造及び使用する方法も提供し、上記方法は、例えば、低酸性灰分量を供給する経管栄養製剤、経口栄養製剤、及び補給剤製剤を含む。
【0012】
[0012]酸成分は、以下の式を使用して算出される(特記部を除き、全てmg/dで測定)。酸含有量=[(P×0.0366)+(タンパク質(g/日)×タンパク質源(複数可)の酸ポテンシャル(mEq/100gタンパク質))+(Cl×0.0268)]。栄養組成物の塩基成分は、以下の式を使用して算出される:塩基含有量=[(Ca×0.0125)+(Mg×0.0263)+(K×0.0211)+(Na×0.0413)]。しかしながら、治療食P及び治療食Naの観察結果は、潜在的腎臓酸負荷(「PRAL」)の式から予測される値と一致していない。本開示は、食品のアルカリ度を高めるためのツールとして、カチオン(Ca、Mg、K、及びP)を増加させることを含む。
【0013】
[0013]正味酸産生を推定するのに使用する他の方法は、タンパク質対カリウムの比である。増加した値が、腎臓の正味の酸排出(「RNAE」)の測定値と相関性があった。
【0014】
[0014]1つの実施形態では、栄養組成物はタンパク質源を含む。該タンパク質源は、動物性タンパク質(乳タンパク質、食肉タンパク質、又は卵タンパク質など)、植物性タンパク質(大豆タンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質、キャノーラタンパク質及びエンドウタンパク質など)又はこれらの組合せを含むがこれらに限定されるものではない食事タンパク質でもよい。1つの実施形態では、該タンパク質は、エンドウ、ホエー、鶏肉、トウモロコシ、カゼイン塩、小麦、アマ、大豆、イナゴマメ、キャノーラ、エンドウ又はこれらの組合せからなる群から選択される。
【0015】
[0015]1つの実施形態では、該栄養組成物は炭水化物源を含む。スクロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、コーンシロップ固形分、マルトデキストリン、加工でんぷん、アミロースでんぷん、タピオカ粉でんぷん、コーンスターチ、イソマルト、イソマルツロース、又はこれらの組合せを含むがこれらに限定されることはない全ての適切な炭水化物を、本栄養組成物に使用できる。
【0016】
[0016]1つの実施形態では、該栄養組成物は脂肪源を含む。脂肪源は、あらゆる適切な脂肪又は脂肪混合物を含むことができる。例えば、脂肪源は、植物性脂肪(オリーブ油、コーン油、ヒマワリ油、菜種油、ヘーゼルナッツ油、大豆油、ヤシ油、ココナッツ油、キャノーラ油、レシチンなど)及び動物性脂肪(乳脂肪など)、構造脂質、又は中鎖脂肪酸トリグリセリドなどの他の改変脂肪を含んでもよいがこれらに限定されることはない。
【0017】
[0017]1つの実施形態では、該栄養組成物は1つ又は複数のプレバイオティクス及び/又は繊維(可溶性及び/又は不溶性)を更に含む。本明細書で使用されるように、「プレバイオティクス」は、好ましくは、腸内で有益な細菌の成長を選択的に促進し、或いは病原性細菌の成長又は粘膜接着を阻止する食品である。プレバイオティクスは、胃及び/又は腸上部で消化されることはない。それらを摂取した人の胃腸管で吸収されることもない。しかし、プレバイオティクスは、胃腸管のミクロフローラ及び/又はプロバイオティクスにより発酵される。プレバイオティクスは、例えば、Glenn R.Gibson and Marcel B. Roberfroid、「Dietary Modulation of the Human Colonic Microbiota: Introducing the Concept of Prebiotics」、J.Nutr.1995 125:1401−1412で定義されている。プレバイオティクスは、アカシアゴム、αグルカン、アラビノガラクタン類、アラビノキシラン類、βグルカン、デキストラン類、フラクトオリゴ糖類、ガラクトオリゴ糖類、ガラクトマンナン類、ゲンチオオリゴ糖類、グリコオリゴ糖類、グアーガム、イヌリン、イソマルトオリゴ糖類、ラクトスクロース、ラクツロース、レバン、マルトデキストリン類、一部加水分解されたグアーガム、ペクチンオリゴ糖類、耐性でんぷん、老化でんぷん、大豆オリゴ糖類、糖アルコール類、キシロオリゴ糖類、又はこれらの加水分解物、又はこれらの組合せでも可能である。プレバイオティクスの発酵中に発生する短鎖脂肪酸により、プレバイオティクスは、本組成物中でカチオン(アルカリ性灰分のミネラル)の摂取を強化するのに有用である。
【0018】
[0018]1つの実施形態では、該栄養組成物は1つ又は複数のプロバイオティクスを更に含む。本明細書で使用するように、プロバイオティクス微生物(以下、「プロバイオティクス」と称する)は、好ましくは、適切な量で投与した場合に健康上の恩恵を宿主に与えることができ、より具体的には、宿主の腸管内微生物バランスを改善することにより、宿主の健康及び健全性に利益をもたらす微生物(半生存又は弱っている状態を含めた生存状態、及び/又は非複製)、代謝産物、微生物細胞調製物、又は、微生物細胞の成分である。Salminen S、Ouwehand A. Benno Y.ら「Probiotics: how should they be defined」、Trends Food Sci. Technol. 1999:10 107−10を参照。一般的に、これらの微生物は、腸管内で、病原性細菌の成長、及び/又は代謝を抑制し、或いは影響を及ぼすと考えられている。プロバイオティクスも、宿主の免疫機能を活性化することができる。したがって、プロバイオティクスを食品に取り込むための多くの異なるアプローチが行われてきた。プロバイオティクスは、サッカロミセス属、デバロマイセス属、カンジダ菌、ピチア属、トルロプシス属、アスペルギルス属、クモノスカビ属、ケカビ属、アオカビ属、ビフィドバクテリウム属、バクテロイデス属、クロストリディウム属、フゾバクテリウム属、メリソコッカス属、プロピオン酸菌属、連鎖球菌、腸球菌、乳酸連鎖球菌、ブドウ球菌、ペプトストレプトコッカス属、バチルス属、ペジオコッカス属、単球菌、乳酸菌、ワイセラ、エアロコッカス属、オエノコッカス属、ラクトバシラス属、又はこれらの組合せを含む細菌、酵母、又は真菌由来でもよい。
【0019】
[0019]他の実施形態では、該栄養組成物は1つ又は複数のアミノ酸を更に含む。該アミノ酸は、イソロイシンアラニンロイシンアスパラギンリシンアスパラギン酸塩メチオニンシステイン、シスチン、フェニルアラニングルタミン酸塩トレオニングルタミントリプトファン、シトルリン、グリシンバリンプロリンセリンチロシンアルギニンヒスチジン、又はこれらの組合せであってもよい。
【0020】
[0020]1つの実施形態では、該栄養組成物は1つ又は複数のビタミンK(メナキノン)、シンバイオティクス、魚油、ファイトニュートリエント及び/又は酸化防止剤を更に含む。該酸化防止剤は、例えばビタミンA、カロテノイド、ビタミンC、ビタミンE、セレニウム、フラボノイド、乳酸クコ、クコ、ポリフェノール、リコペン、ルテイン、リグナン、補酵素Q10(「CoQ10」)及びグルタチオンであってもよい。
【0021】
[0021]該栄養組成物は、酸度に対する代謝性アルカリ度を促進する形態で、種々の有機酸、アミノ酸又は脂肪酸に結合したミネラル、或いは実際の食事の一部としての天然のミネラルを含む。一例として、マグネシウムの様々な形態として、水酸化マグネシウム(HMgO)、リン酸三マグネシウム(Mg(PO)、酸化マグネシウム(MgO)、オレイン酸マグネシウム(C3666MgO)が挙げられる。
【0022】
[0022]該栄養組成物は、遊離補酵素A、遊離カルニチン及びこれらの組合せを更に含んでもよい。1つの実施形態では、該栄養組成物は遊離カルニチンを含む。
【0023】
[0023]1つの実施形態では、該栄養組成物は、医薬製剤、栄養製剤、経管栄養製剤、栄養補助食品、機能性食品、飲料製品、又はこれらの組合せなどの投与形態を採っている。
【0024】
[0024]他の実施形態では、本開示は患者に投与する栄養組成物を選択するための方法を提供する。該方法は、ホエー、鶏肉、トウモロコシ、カゼイン塩、小麦、アマ、大豆、イナゴマメ、キャノーラ、エンドウ又はこれらの組合せからなる群から選択されるタンパク質、及びMg、Ca、K、及びPを含むがこれらに限定されることはない選ばれたミネラルの組合せを提供することを含む。従来の方法を使用して、以下のPRALの式から該栄養組成物の酸含有量を推定することができる:酸含有量=[(P×0.0366)+(タンパク質(g/日)×タンパク質(複数可)の酸ポテンシャル(mEq/100gタンパク質))+(Cl×0.0268)]、又、以下の式から該栄養組成物の塩基含有量を算出する:塩基含有量=[(Ca×0.0125)+(Mg×0.0263)+(K×0.0211)+(Na×0.0413)]。該方法は、塩基含有量を酸含有量から減じてPRALの値を得ること、及びそのPRAL値がマイナスの場合に、患者に投与するためにその栄養組成物を選択することを含む。発明者らは、Pが、患者に恩恵をもたらすと見ているので(しかし、PRALの酸側の式に記載されている)、この栄養剤については別に説明する。最終的なPRALは、P、Ca、K及びMgなどのミネラルを使用することにより減少する。
【0025】
[0025]代替の実施形態では、本開示は栄養組成物を必要とする患者にそれを投与する方法を提供する。該方法は、ホエー、鶏肉、トウモロコシ、カゼイン塩、小麦、アマ、大豆、イナゴマメ、エンドウ、キャノーラ、綿の種子、ジャガイモ、米、卵、又はこれらの組合せからなる群から選択されるタンパク質、及びMg、Ca、K、及びPを含むがこれらに限定されることはない選ばれたミネラルの組合せを提供すること、上述の式を改変して使用することにより、該栄養組成物の酸含有量を算出すること、つまり、酸含有量=[(Px0.0366)+(タンパク質(g/日)×タンパク質の酸ポテンシャル(mEq/100gタンパク質))+(Cl×0.0268)]、又、以下の式から該栄養組成物の塩基含有量を算出することを含む:塩基含有量=[(Ca×0.0125)+(Mg×0.0263)+(K×0.0211)+(Na×0.0413)]。該方法は又、塩基含有量を酸含有量から減じてPRALの値を得ること、及びそのPRAL値がマイナスの場合に、患者に栄養組成物を投与することを含む。最終PRALは、P、Ca、K及びMgなどのミネラルを使用することにより減少する。
【0026】
[0026]更に別の実施形態では、PRALの値を決定するためのコンピュータ実行プロセスを提供する。該プロセスは、P及びNaを正確に計上するために改変したPRALの式を使用して、栄養組成物の代謝性酸ポテンシャルを算出するように構成及び配置された入力デバイス及びコンピュータプロセッサを備えたコンピュータを提供することを含む。タンパク質は、ホエー、鶏肉、トウモロコシ、カゼイン塩、小麦、アマ、大豆、イナゴマメ、エンドウ、又はこれらの組合せからなる群から選択する。1つの実施形態では、PRAL値がマイナスになる。該製剤のミネラル含有量を調整してPRALを減少させる。
【0027】
[0027]なお更に別の実施形態では、本開示は骨量の減少及び骨格筋量を維持及び/又は防止するための方法を提供する。該方法は、タンパク質及びホエー、鶏肉、トウモロコシ、カゼイン塩、小麦、アマ、大豆、イナゴマメ、エンドウ、キャノーラ、綿の種子、ジャガイモ、米、卵、又はこれらの組合せからなる群から選択される選択ミネラル(Mg、Ca、K、Pなど)の組合せを提供すること、改変したPRAL式を使用して、該栄養組成物の酸含有量を算出することを含む。
【0028】
[0028]他の実施形態では、アシドーシスの緩衝を必要とする患者にアシドーシスを緩衝するための方法を提供する。該方法は、ホエー、鶏肉、トウモロコシ、カゼイン塩、小麦、アマ、大豆、イナゴマメ、キャノーラ、エンドウ、又はこれらの組合せからなる群から選択されるタンパク質を提供すること、改変したPRAL式を使用して、栄養組成物の酸含有量を算出することを含む。
【0029】
[0029]本開示の利点は、腎臓の健康を促進する正味アルカリ負荷を有する改善した経管栄養製剤を提供することである。
【0030】
[0030]更に本開示の他の利点は、骨の健康を促進する栄養組成物を提供することである。
【0031】
[0031]なお更に別の本開示の利点は、骨格筋量を維持する栄養組成物を提供することである。
【0032】
[0032]本開示の他の利点は、栄養組成物の投与方法を提供することである。
【0033】
[0033]本開示の他の利点は、臨床患者の転帰、患者の機能的運動性を改善し、生活の質を高めることである。
【0034】
[0034]更に本開示の他の利点は、栄養組成物のPRALを決定するためのコンピュータ実行プロセスを提供することである。
【0035】
[0035]追加の特徴及び追加の利点が本明細書で記述され、以下の詳細な説明から明らかになる。
【0036】
[図面の簡単な説明]
[0036]図1は、正味の酸排出(「NAE」)予測と骨ミネラル濃度(「BMD」)の間の関係を実証しているグラフを示す。
【0037】
[詳細な説明]
[0037]食事性タンパク質がカルシウム損失を増加させるという意見が20世紀の初頭に提唱され始め、後に1つの仮説へと公式化された。この仮説の根底にあるメカニズムは、全身の水素イオン濃度を厳密に調節して腎臓及び肺を補助する緩衝リザーバとしての骨の役割に基づいている。高タンパク質及びリンが多く含まれる食事などの酸性灰分の慢性的な産生をもたらす食生活は、このアルカリリザーバに侵入し、骨のミネラルが徐々に溶解すると仮定され、これにより高カルシウム尿症及び骨粗しょう症のリスクが考えられる。内因性の酸産生の増加も又、糸球体濾過率を増大させ、その結果腎臓におけるカルシウムの再吸収を低下させ、尿中カルシウムの増加及び骨量の減少を引き起こすと考えられる。反対に、果物のような食物は酸を含有することができるが、本来は、酸塩基均衡によい影響を及ぼすことができる純アルカリを生成する。Remer及びManzは、カチオンつまりナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムが、「アルカリ性」に分類され、リン酸塩、硫酸塩、塩化物などのアニオンが、「酸性」イオンとして分類される潜在的な腎臓の酸を見積もる計算方法を開発した。この計算方法に基づくと、肉、魚、乳製品、及び穀物は、硫酸塩含有量及びリン酸塩含有量が高いため、骨の健康に有害であると考えられる。これに対して、果物や野菜などの高カリウム含有食品は、骨の健康を保護することが考えられる。食事性タンパク質及びリン酸塩の役割について調査している調節研究からの最近の証拠では、酸性灰分仮説を支持していない。また、この証拠については、下記でより詳しく説明する。逆説的に言うと、この製剤はナトリウムにカルシウム平衡を守る役割を与えている。しかしながら、ナトリウムは、カルシウムと腎臓の再吸収に関して競合することが示されているので、カルシウムの残留を減少させることができる。食塩負荷の研究及び自由生活ポピュレーションの報告では、正常な大人において、食事ナトリウムが各100mmol(2300mg)増加に対して、尿中のカルシウムの排出は約1mmol(40mg)増加することが判明している。本開示の栄養組成物及び製剤は、ナトリウム含有量を増やして、消費者の食事のアルカリ度を増加させることはない。
食事性タンパク質
【0038】
[0038]酸性灰分仮説と一致して、リンの摂取を一定に保った場合の精製タンパク質源及び通常のタンパク質源の両方を使用した研究で、硫酸塩の高カルシウムの影響が実証されている。しかしながら、リン含有量を調整せずに、増加したタンパク質を通常の食品へ加えた場合、高カルシウムは観察されない。含硫アミノ酸は、高カルシウムを引き起こすと考えられるが、これらのタンパク質の高いリン含有量は、この効果を打ち消すことが分かった。小麦や米などの多くの主要な植物性タンパク質は、肉の含硫アミノ酸含有量と同じか、又は肉の含硫アミノ酸含有量よりも高い含硫アミノ酸含有量を有する。しかし、共生するアルカリは、食事の酸負荷を低下させると考えられる。
【0039】
[0039]更に、より高タンパク質摂取で観察されるアンモニア産生の増加は、部分的に酸産生を中和することができる。更に、高タンパク質摂取は、腸管のカルシウム吸収を増加させることができる。したがって、タンパク質源のカルシウム平衡への正味の影響は、タンパク質源及び全食事の両方における多くの共生要因によって決定され、したがって、予測するのが困難である。
カルシウム代謝に対する食事性タンパク質のメリット
【0040】
[0040]全身メソドロジー及び数週間継続して食事を慎重に管理した、安定同位元素を使用した最近の研究により、タンパク質摂取量の増加は全身のカルシウム保持、又はいかなる骨代謝指標にも悪影響を及ぼさないことが示された。また、穏やかな高タンパク質摂取量(例えば、エネルギーの約20%)は、骨吸収のマーカー(尿中デオキシピリジノリン)を減少させ、また、PTHに影響することなく、血清インスリン様成長因子(IGF−1)を増加させた。実際の食事状況では、食事性タンパク質の増加は、カルシウムバランスや骨の健康に有害ではないとの結論に達した。実際に、この発見はまた、拮抗作用ではなく、カルシウム摂取量が低い(例えば、約600mg/d)場合に食事性タンパク質とカルシウムとの間に、高タンパク質摂取量がカルシウム吸収を増加させる相乗的相互作用を示した。高タンパク質摂取のこの有益な効果の一因は、高タンパク質摂取に伴う高リン酸塩摂取である可能性がある。この見解は、Fentonとその同僚が健康な成人の骨量の減少に対するリン酸塩摂取の寄与を定量化した最近の12の研究(269の対象を含む)のメタ分析により強く支持されている。このデータは、尿中カルシウム損失は、カルシウム摂取又はリンの形態とは無関係に、リン酸塩摂取に応じて減少することを示した。Fentonら「Phosphate decreases urine calcium and increases calcium balance:a meta−analysis of the osteoporosis acid−ash diet hypothesis」、Nutrition J.、8:41(2009)を参照。
【0041】
[0041]リン酸塩増加のメリットは、炎症反応から生じる代謝変化の結果、感染症の危険性が増大することに特徴がある重症患者に特にメリットがある可能性がある。この患者集団では、宿主の状況が細菌の反応及び毒性を決定する。高リン酸塩は、クオラムセンシング、つまり細菌間の細胞間情報伝達を喪失させるが、腸内の低リン酸塩濃度は細菌の毒性を誘発することが示されてきた。細胞外リン酸塩は、急性外科損傷後に枯渇することが示されてきた。腸のリン酸塩濃度は、重症患者の感染リスクに影響を与える。Longら、「Depletion of Intestinal Phosphate following Surgical Injury Activates the Virulence of P.aeruginosa causing Lethal Gut−Derived Sepsis」、Surgery、144:189−197(2008);Zaborinら、「Red death in Caenorhabditis elegans caused by Pseudomonas aeruginosa PAO1」、PNAS 1009;106:6327−6332(2009)を参照。食事性リン酸塩、又はリン酸塩類似体が、細胞外リン酸塩濃度又は腸内リン酸塩濃度の上昇に影響することが見出されれば、次にタンパク質を増やし、その結果食事リン酸塩濃度も増加した栄養製剤は、重症患者の感染リスクを減少させることだけでなく、骨の健康に対しても影響する、二重のメリットをもたらすことができる。
【0042】
[0042]骨の健康への食事性タンパク質の効果は、主に酸塩基平衡及び尿中カルシウム損失への効果に焦点が置かれてきたが、最近の証拠ではこの関係を支持していない。Fentonとその同僚らによる最近のメタ分析は、尿中の酸の尺度である正味の酸排出(「NAE」)(NAE=滴定可能な酸+NH−HCO)の増加と尿中カルシウムの間には有意な直線的関係が存在するにもかかわらず、NAEの変化と骨破壊のマーカー(例えば、尿N−テロペプチド)の間には何の関係性もなかった。質の高い研究からの証拠では、高いNAEと関連するカルシウム尿症は、全身のカルシウムの正味喪失を反映するという意見、及び食事性酸負荷が増加すれば、骨格の骨のミネラルの喪失、又は骨粗しょう症を促進させるという意見を支持していないという結論が出された。蓄積された証拠は、尿中カルシウムの変化の効果が、混合された様々な食事を摂取する人の体内カルシウム平衡への食事性タンパク質の効果及びその結果としての骨の健康を判定する上で過度に強調されてきた可能性を示している。しかしながら、経管栄養補給患者の場合、たとえ僅かの正味酸負荷でも徐々に害になる可能性がある。
【0043】
[0043]食事性タンパク質の増加は、カルシウム排出に対するその効果を超えた有益な全身性効果があることを示す十分な証拠がある。実験的及び臨床的な研究により、タンパク質の摂取は、IGF−1のような成長因子の産生及び成長因子の作用の両方に影響を及ぼすことが示唆されている。IGF−1の血清濃度の減少は、動物における骨強度の低下及びヒトにおける骨粗しょう症性骨折のリスクの増大と強く関連することが広く認識されている。IGF−1の肝臓での産生及び総IGF−1濃度の両方が、食事性タンパク質の影響下にあり、タンパク質制限は、ヒトにおける血漿IGF−1を低下させ、成長ホルモンの作用に対する標的器官の抵抗性を引き起こすことが示されている。管理された1年間の介入研究では、最近腰部骨折した高齢患者で1日にタンパク質補助食品20g/dで、寛骨ミネラル密度(BMD)(及び血清IGF−1)が改善された。
【0044】
[0044]長期にわたり精製タンパク質で調製された経管栄養剤を摂取している患者に臨床適用されることがある。例えば、これまでで最も長期のアルカリ補給の試験である2年間の無作為化対照比較試験において、クエン酸カリウム補給は、骨代謝の回転又はBMDに影響を与えなかったが、このことは果物及び野菜を摂取するいかなるメリットも、カリウムの摂取だけでは説明できないことを示唆している。
【0045】
[0045]骨の健康における酸性灰分仮説及びタンパク質の役割に対する我々の理解の漸進的変化についての綿密な検査を以下に記載する。
【0046】
[0046]1)タンパク質の効果がその含硫アミノ酸(付随するリンは考慮しない)に帰され、尿中カルシウムが骨の健康における正味効果のインジケータとして使用されている(カルシウム吸収及び食事性タンパク質の全身的な効果の変化は無視する)従来の科学的な還元主義は、最近の証拠で否定される公衆へのアドバイスをもたらした。
【0047】
[0047]2)単離した栄養剤ではなく複合食品を消費するため、及びヒトの健康は、複雑な相互関係と動的適応能力を持つ器官システムであるため、ヒトの健康における全ての食品の効果についての研究は、複雑な設計を必要とし、またこの科学的なものは、複数の変数を許容する。栄養士及び登録栄養士は、独自に公衆衛生の関連性の科学的な質問を特定し、全システムにおける全ての食品の効果を試験するために意図された仮説の定式化を支援し、関連した実証された公衆衛生のアドバイスを生み出す態勢にある。
【0048】
[0048]活動性の低い患者も長期間にわたり比較的高い酸ポテンシャルを有する1種類の食事を摂取している患者のどちらもが代謝性障害に罹患しやすい。例えば、長期経管栄養患者は、そのような障害を患う恐れがある。患者の栄養必要量は、例えば経管栄養療法を通じて満たされる場合があるが、現在の栄養処方は、長期間にわたり、患者の酸塩基状態を維持するために最適化されていない。
【0049】
[0049]長期にわたり経管栄養を摂取している患者は、数週間、数ヶ月間、或いは数年間も食事供給源が1種類のままであることが多い。主に腎臓及び肺による制御により、患者の血液のpHは、長い間、極めて順調に維持される一方で、食事摂取が体の酸塩基平衡に大きな影響を与える可能性がある。入院患者、施設収容患者、及び回復期にある患者は、腎臓機能の低下及び/又は肺機能の低下により引き起こされる代謝性障害のリスクが増加する恐れがある。結果として、筋骨格の健康及び免疫健康を含めた患者の健康を維持するのに、食事の酸塩基ポテンシャルはますます重要になる。
【0050】
[0050]摂取時及び代謝の後、食物は、正味酸性生成又は正味アルカリ性生成のどちらかに分類することができる。例えば、「酸性灰分」食品及び「アルカリ性灰分」食品は、従来よりアニオン(Cl、P、S)とカチオン(Na、K、Mg、Ca)の間のバランスとして定義されてきた。しかしながら、Pが増加すれば尿中カルシウム損失が減少することが示されている。酸性灰分食品、又はより多く酸を生成する食品は、カチオンに対してアニオンが超過している(アルカリ性灰分食品の場合は、この逆になる)。酸生成食品は、筋骨格の健康及び免疫健康に徐々に悪影響を及ぼすことが分かってきた。
【0051】
[0051]長期にわたる経管栄養補給患者は、食物供給源のバリエーションが不足するため、特に酸形成性食事の影響を受けやすい場合がある。腎臓は、酸を効率よく中和するが、長期間、高い酸性に曝されることにより酸を中和する腎臓の能力が損なわれると考えられ、潜在的なダメージが起こる可能性がある。その結果、これらの食事由来の酸を中和するのにカルシウムを含むが、これに限定されないアルカリ化合物が使用される(骨格筋の場合、グルタミンがバッファとして作用することができる)。体内で最も簡単に入手できるカルシウム源は骨である。一説では、高酸性の食事は、体が貯蔵カルシウムを動員して代謝性の酸を中和するため、骨の減少の原因となる可能性がある。仮説として、低酸性の食事は、腎臓の健康を維持すると同時に、骨の減少の減弱及び骨格筋減少の減弱などのメリットをもたらすことができることが挙げられる。Wachman,A.ら、「Diet and Osteoporosis」Lancet、1:958−959(1968)を参照。又、Frassetto Lら、「Potassium Bicarbonate Reduces Urinary Nitrogen Excretion in Postmenopausal Women」、J.Clin.Endocrinol.Metab.、82:254−259(1997)を参照。
【0052】
[0052]個人の中には、配合食品又は合成食品から栄養所要量の全て又は一部を摂取可能な人もいる。食事摂取は、補給剤を通して栄養素必要量の50〜100%を含んでもよい。その補給剤の範囲は口腔方式でも、経管栄養方式でもよい。食事の補給を特別な方法で完了する理由の一部として、身体的及び/又は精神的な制限(例えば、疲労症、咀嚼している間又は飲み込んでいる間の窒息恐怖症、及びエネルギー需要の増加)により、十分な食事を取ることが困難な施設内介護患者、在宅介護患者、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者、エネルギーとタンパク質の需要が増え、通常の食事では十分なタンパク質又は栄養素を摂取できない大手術を受けている患者、筋萎縮性側索硬化症(「ALS」)などの神経筋疾患に罹患している個人で、食事の殆どを、経管栄養補給で取ることができ、口腔による摂取は楽しみである患者、食事の制限がある、又は十分な食事を消費する能力を制限する身体的、経済的、社会的な状況にある高齢介護患者、栄養所要量を満たすために経管栄養補給を介して食事補給剤が一晩中投与される嚢胞性繊維症などの小児患者、口腔摂取が不可能であり、消化管の組織の損傷により直接に胃への経管栄養補給を受けている頭頸部癌患者、及び個人が様々な理由によりその栄養所要量を満たすことができない他の分解代謝状態の患者などの健康状態が挙げられる。
【0053】
[0053]栄養組成物の代謝後の酸度とアルカリ度を測定するために種々の測定方法が採用されてきた。上述したように、生理学的指標に依存する測定方法に、NAEが挙げられる。NAEは、尿中の酸アニオンを合計して、アルカリカチオンを差し引くことにより決定されるので、NAEは食事の影響を予測することに使用することはできない。したがって、食事の効果を概算するために異なる手法を使用する必要がある。最も広く受け入れられている食事性酸負荷又は食事性塩基負荷を概算するための理論モデルは、潜在的腎臓酸負荷(「PRAL」)と呼ばれている。PRALは、酸のミリ当量(mEq)で表示され、測定される。Remer及びManzが、「Potential renal acid load of foods and its influence on urine pH」、J.Am.Diet Assoc.、95:791−797(1995)で説明しているように、PRALの計算を、以下に示す。
【0054】
[0054]PRAL(mEq/d)=酸−塩基
【0055】
[0055]酸=[(P×0.0366)+(タンパク質(g/日)×0.4888)+(Cl×0.0268)]
【0056】
[0056]塩基=[(Ca×0.0125)+(Mg×0.0263)+(K×0.0211)+(Na×0.0413)]
【0057】
[0057]式中、Pは食品のリン含有量(mg/日)である。Clは食品の塩化物含有量(mg/日)である。Caは食品のカルシウム含有量(mg/日)である。Mgは、食品のマグネシウム含有量(mg/日)である。Kは食品のカリウム含有量(mg/日)である。又、Naは食品のナトリウム含有量(mg/日)である。式中の変数の値(例えば、食品中のP、Cl、Caの含有量など)は、例えば、ESHA Research社のFood Processor、又はAxxya Systems LLC社のNutritionist Pro(商標) Diet Analysisなどの市販の食事分析ソフトウェアプログラムから入手することができる。同様に、この変数の値は又、米国農務省の標準参照資料に対する国家栄養データベース(http://www.nal.usda.gov/fnic/foodcomp/search/)で参照することができる。正味酸産生を概算するために単純化されたアプローチは、タンパク質とカリウムの比率である。値の増加は、腎臓の正味酸排出(RNAE)量に関係する。Frassetto LAら、「Estimation of net endogenous noncarbonic acid production in humans from diet potassium and protein contents」、Am.J.Clin.Nutr.(1998)を参照。
【0058】
[0058]該栄養組成物の酸−塩基ポテンシャルに対して単一で最も大きく貢献するのはタンパク質である。しかし、「タンパク質」という一般用語は、食事の酸塩基平衡に非常に様々な影響を与えることができる異なるタンパク質源の間では区別しない。これらの相違は、代謝後の組成物の酸の影響を予測するために使用される式でこれまで考慮されていない。実際に、Remer及びManz式中の、「タンパク質」は、使用するタンパク質の種類とは無関係に、或いは異なるタンパク質の混合物が使用されたかにかかわらず単に該組成物中のタンパク質の量である。
【0059】
[0059]骨の健康に関して、25の研究のメタ分析によるデータは、酸産生性食事は筋骨格の健康に悪影響を及ぼす恐れがあるという結論を支持している。実際、図1で示されるように、NAEとカルシウム排出骨ミネラル密度(「BMD」)の間には有意な関係が見て取れる。Fenton TRら、「Meta−analysis of the quantity of calcium excretion associated with the net acid excretion of the modern diet under the acid−ash diet hypothesis」、Am.J.Clin.Nutr.、88:1159−1166(2008)を参照。又、Jehle,S.ら、「Partial Neutralization of the Acidogenic Western Diet with Potassium Citrate Increases Bone Mass in Postmenopausal Women with Osteopenia」、J.Am.Soc.Nephrol.、17:3213−3222(2006)を参照。同様に、Jajooらは、腎臓のNAEは、尿中のカルシウム排出、PTH濃度、及び尿N−テロペプチド(骨破壊マーカー)と関連があることを発見した。Jajoo R,ら、「Dietary acid−base balance, bone resorption,and calcium excretion」、J.Am.Coll.Nutr.、25:224−230(2006)を参照。
【0060】
[0060]食事PRAL値を使用して、Alexyらは、子供における高い食事PRAL、低い皮質領域及び骨ミネラル含有量の間の相関関係を報告した。Alexy U,ら、「Long−term protein intake and dietary potential renal acid load are associated with bone modeling and remodeling at the proximal radius in healthy children」、Am.J.Clin.Nutr.、82:1107−1114(2005)を参照。更に、大量の果物、アルカリ産生性食品を摂取する若い女性は、踵骨のミネラル密度が高かった。McGartland CPら、「Fruit and vegetable consumption and bone mineral density:the Northern Ireland Young Hearts Project」、Am.J.Clin.Nutr.、80:1019−1023(2004)を参照。
【0061】
[0061]PRALの計算によれば、高タンパク質の食事は、含硫アミノ酸により酸塩基平衡を酸方向に押し込む。しかしながら、食事性タンパク質のこの効果は、骨に対する同化作用なのか、それとも異化作用なのかについての論争がある。精製した食事性タンパク質(殆どの腸内栄養処方で使用されるホエー分離物、カゼイン塩類など)は、以前から尿中カルシウムの排出を増加させると考えられてきた。Schuette SA,ら、「Studies on the mechanism of protein−induced hypercalciuria in older men and women」、J.Nutr.、110:305−315(1980)を参照。又、Allen LH,ら、「Protein−induced hypercalciuria:a longer term study」、Am.J.Clin.Nutr.、32:741−749(1979)を参照。他の調査によると、低カルシウムの食事では、総タンパク質をより多く含む食事が恩恵をもたらすことがある。Hunt JRら、「Dietary protein and calcium interact to influence calcium retention:a controlled feeding study」、Am.J.Clin.Nutr.、89:1357−1365(2009)を参照。同化IGF応答の全身的な効果及び動物性タンパク質に付随するPの潜在的な予防効果が論争に加わっている。
【0062】
[0062]前述のように、生理学的計測法NAEは、内在性の酸産生を正確に推定し、骨量の変化に反比例して相関する。12ヶ月に及ぶ研究では、NAEは、BMDの減少と相関した。Jehleら、2006を参照。更に、長期のアルカリ投与後にBMDの増加が認められた。しかしながら、骨形成への効果は、まだ明らかになっていない。観察されたBMDの増加は、骨の形成よりも抗吸収作用に多く関係する可能性が高い。したがって、骨ミネラル密度は、特定の酸性度を有する特定の経管栄養補給剤を使用することにより改善することができる。
【0063】
[0063]骨特定の効果だけでなく、ヒトに関する相関データは、果物及び野菜の食事摂取は、代謝恒常性を制御するのに役立つ正味アルカリ環境を支えることを示している。正味アルカリ状態は、高齢者における脂肪のない体の維持の強化に関係している。Dawson−Hughesら、「Alkaline diets favor lean tissue mass in older adults」、Am.J.Clin.Nutr.、Mar;87(3):662−5(2008)を参照。したがって、完全栄養製剤でP、Na、Mg、K及びCaを調整すれば、正味アルカリ生産を高めて、脂肪のない体を維持するだけでなく、更に内在性の骨格筋タンパク質分解を最小にすることができる。栄養製剤で供給されるミネラルの形態は、正味アルカリ生産に影響することがある。
【0064】
[0064]細胞エネルギーの充足は、細胞が同化過程と異化過程のどちらかを支持するための重要な制御手段として提唱されている。代謝性ストレス、栄養ストレス、又はその両方がアデニル酸プールからヌクレオチドの損失をもたらす恐れがあり、これらの条件下では、条件付きで必須となる。細胞エネルギーの充足の維持は、タンパク質の分解を含む代謝性ストレス、栄養ストレス、又はその両方から生じた異化過程のアップレギュレーションを弱めることができる。
【0065】
[0065]タンパク質分解に関連する他のメカニズムには、例えば細胞内で特定のタンパク質、カルパイン(極めて特徴的な3種類のタンパク質、μ−カルパイン、m−カルパイン及びカルパスタチンからなるプロテアーゼのカルパイン族)及びリソソーム(消化酵素を含む細胞小器官)の分解を厳格に制限することにより、タンパク質の代謝回転を制限するように機能するユビキチン(「Ub」)などが挙げられる。AMPタンパク質キナーゼ(「AMPK」)は、ホスホクレアチン/クレアチン(「PCr」/「Cr」)と同様にATP/AMPに反応して、入手可能なエネルギーに基づき、細胞の優先度処理の比率を変更する細胞エネルギーの充足センサとして作用するタンパク質である。特に、AMPKは、ユビキチン−プロテアソーム経路をアップレギュレートするだけでなく、骨格筋タンパク質合成の翻訳調節をターゲットとすることができる。
【0066】
[0066]更に、代謝性アシドーシスに関して、様々な異なる状況(例えば、慢性腎機能不全、減量食での肥満)で消耗していく骨格筋との関連について説明されており、概説の主題であった。Caso G,ら、「Control of muscle protein kinetics by acid−base balance」、Curr.Opin.Clin.Nutr.Metab.Care、8:73−76(2005)を参照。アシドーシス中、骨格筋タンパク質分解は、適応反応が見られる。骨格筋からのグルタミン分解物は、プロトンを受け入れ、アシドーシスを減らす可能性があるアンモニア基質である。グルタミンの脱アミノの最中に遊離したアンモニウム(グルタミンの2個のアンモニア群から1個の喪失)は、アシドーシスの最小化を促すことがあるプロトンを受け入れることにより酸の排出を促進する。腎臓がグルタミンの排出を増やせば、腸内でのグルタミンの利用は減少すると同時に、より多くのグルタミンを骨格筋及び肝臓から放出させる必要がある。このことは、脂肪分の少ない骨格筋量の損失、急速に増大する腸細胞に利用可能なグルタミンの減少などの負の結果を含んでいる可能性がある。グルタミンの減少は、免疫機能に悪影響を及ぼす可能性がある。Wellbourneら、「The Glutamine/Glutamate Couplet and Cellular Function」、News in Physiological Sciences、16(4):157−160(2001)を参照。アシドーシスの是正は、骨格筋量の保存を促し、グルコース耐性を改善し、機能的運動性を高め、更にアシドーシスと関連する状態にある患者の健康を改善することができる。
【0067】
[0067]グルタミンは、体内で別の役割を有する。1つは、シトルリンを経たアルギニン前駆体としての役割である。シトルリンはグルタミンを保護し、より多くのグルタミンがプロトン受容体として作用するように機能するため、外来性シトルリンを添加すれば、筋タンパク質分解を許容する可能性がある。この図表は、シトルリンの添加がどのようにしてオルニチンのシトルリンへの転化を阻止するのかを示している。更に、アルギニン前駆体として作用するために提供されたシトルリンにより、アルギニン濃度が高ければ、グルタミンからではなくアルギニンから生ずるより多くのオルニチンを許容することになる。
【化1】

【0068】
[0068]慢性の低悪性代謝性アシドーシスは、酸に代謝される食品の摂取量が、塩基に代謝される食品の摂取量を上回る場合に起こることがある。高タンパク質食事(酸産生)の閉経後の女性の例を含む研究では、重炭酸カリウムの消費は、内因性酸産生の正味速度及び総尿窒素濃度を減少させた。Frassetto、1997を参照。更に最近では、高齢者におけるKHCOの補給は、窒素の損失を遅らせることが分かった。Ceglia L,ら、「Potassium bicarbonate attenuates the urinary nitrogen excretion that accompanies an increase in dietary protein and may promote calcium absorption」、J.Clin.Endocrinol.Metab.、94:645−653(2009)を参照。
【0069】
[0069]更に、尿中カリウム排出量(食事によるカリウム摂取のマーカー)は、除脂肪体重の割合と相関関係があった。Dawson−Hughesら、「Alkaline diets favor lean tissue mass in older adults」、Am. J.Clin.Nutr.、Mar;87(3):662−5(2008)を参照。この窒素節約は、「潜在的に骨格筋量の年齢が関係した継続的損失を防止し又以前に発生した損失を回復するのに十分である」と結論付けられた。同上。
【0070】
[0070]骨の健康及び骨格筋の健康の両方に加えて、栄養組成物の最適化はまた、代謝性アシドーシス(慢性、又は急性)より悪影響をもたらされる恐れのある腎臓の健康を支援することができる。特に、代謝性アシドーシスは、体内の水分平衡を制御するホルモンに影響を与えることができる。水分平衡も、酸塩基平衡の維持に重要なミネラルの排出(電解質)に関与する。
【0071】
[0071]「アシドーシス」を緩衝するために、食事グルタミン及び食事シトルリンを使用できる。例えば、グルタミンに関して、急性アシドーシス又は慢性アシドーシスの状態の間、骨格筋の分解は、グルタミンの必要性などにより駆られる適応反応と思われる。Eplerら、「Metabolic acidosis stimulates intestinal glutamine absorption」、J.Gastro.Surg.(2003)を参照。プロトン消光に使用可能なグルタミンは、僅か2つの供給源、つまり食事と骨格筋から供給されるだけである。非常に望ましくない慢性の骨格筋異化作用は、骨格筋萎縮症の原因となる可能性がある。グルタミンは、年齢や病気が原因で引き起こされる慢性閉塞性肺疾患や腎機能不全などの状態で、乱れる可能性があるプロトン(水素)を消滅させる。
【0072】
[0072]上述のように、アルカリ性の食事はまた呼吸不全を軽減するために利用できる。例えば、集中治療室(「ICU」)では、患者は人工呼吸が必要な場合が多い。患者は、自発的に呼吸速度を上げて余分な二酸化炭素やプロトンを「放出する」ことができないため、この状況では、プロトンビルドアップになり、代謝性アシドーシスを引き起こす恐れがある。したがって、経管栄養療法及び腸管外投与の両方のためにグルタミンを本開示の最適化したアルカリ製剤組成物と組み合わせて使用することが有益である。実際に、アシドーシスの是正は、骨格筋量を維持し、アシドーシスに関係した状態にある患者の健康を改善する。更に、ICU患者は通常、低濃度ではあるがグルタミンを非常に必要とする。
【0073】
[0073]更に、腸細胞へのグルタミンの供給が減少すると、アシドーシスを是正するためのグルタミン短絡がまた、免疫を抑制するのに貢献する。したがって、代謝性アシドーシスを補助し、是正すれば患者の免疫状態を改善できる。
【0074】
[0074]グルタミンだけでなく、食事シトルリンもまた、アシドーシスの緩衝に使用することができる。前述のように、NAE式は体内の全酸負荷を決定するのに使用される。NAEの量は、尿中の滴定酸及びアンモニウムから重炭酸塩を減じた量(例えば、NAE=((滴定酸+NH+)−重炭酸塩))と等しいので、アミノ酸と結合していない循環窒素量を減らすことが望ましい。シトルリンは、アルギニンよりも1つ窒素が少なく、アルギニンの代替とすることができる。
【0075】
[0075]食事脂肪酸の酸化及び肝臓におけるパルミチン酸の不飽和化/鎖長延長は、腹部肥満患者の肥満度を増大させる可能性がある。酸化の上昇は、肝臓における脂肪の蓄積を予防するために、脂肪酸が肝臓へ取り込まれるのを方向転換する代償機構を示す可能性がある。しかしながら代謝性アシドーシスの条件下では、減少した遊離補酵素Aの濃度及び遊離カルニチン濃度が、酸化のための長鎖脂肪酸のカルニチン仲介によるミトコンドリアへの伝達を制限する恐れがある。したがって、本アルカリ製剤は、こうした反応を軽減し、最小にしようとするが、代謝性アシドーシスの条件下では、肥満患者は肝臓における脂肪の蓄積の影響をより受けやすくなる可能性がある。この代謝の改善は、除脂肪体重の維持を改善できる。患者の脂肪組織エネルギー貯蔵の非効率な動員は、除脂肪体重を維持するために高タンパク質を摂取する必要性をもたらす。このシステムのよりよい機能は、筋肉を維持すること、及び/又は非常に高レベルのタンパク質を摂取する必要を減らすことを助長できる。したがって、1つの実施形態では、本開示の栄養組成物は、遊離補酵素A、遊離カルニチン又はこれらの組合せを含んでもよい。1つの実施形態では、該栄養組成物は遊離カルニチンを含む。1つの実施形態では、該栄養組成物はコンプリートフィード当たり約1mg〜約220mgの遊離カルニチンを含む。他の実施形態では、該栄養組成物はコンプリートフィード当たり約100mg〜約200mgの遊離カルニチンを含む。
【0076】
[0076]更に、食事の酸性ポテンシャルを最小にする食事性タンパク質源の選択が、インスリン様成長因子−1(IGF−1)及びその結合タンパク質(IGFBP)を維持する付加的利益をもたらすことが期待される。同化性成長因子IGF−1は、腎不全の患者では減衰する(病気及び年齢が原因)。したがって、高濃度で摂取できるが、供給する含硫アミノ酸が最も少なく、その結果、酸状態への貢献がより少ないタンパク質(複数可)の選択が有益である。
【0077】
[0077]上述のように、栄養組成物の代謝後の体内における食事性酸負荷又は食事性塩基負荷を概算するための最も広く受け入れられている理論的モデルは、Remer及びManzが提唱したPRAL算出法である。しかしながら、この方法は正確ではない。Remer及びManzの式の総酸ポテンシャルに対するタンパク質の影響は、一般的なものであり、使用するタンパク質の量だけを考慮して、タンパク質の種類(複数可)は無視している。したがって、Remer及びManzの式は、本質的に異なった酸ポテンシャルを有し、組成物中に様々な量で供給される場合がある異なったタンパク質源により調製される各種貢献を反映していない。対照的に、出願者はPRAL式の酸の成分をより正確に決定することにより、栄養組成物の酸−塩基ポテンシャルをより正確に計算でき、よりよい公式の開発が可能なことを容易に予測できたことを見出した。
【0078】
[0078]特に出願者は、特有の量の含硫アミノ酸(メチオニン及びシスチン)を含むタンパク質の種類を考慮すること、タンパク質中の各アミノ酸のモル量を算出すること、そしてこれらの値を使用してタンパク質中の硫黄のモル量を決定すること、上記のPRAL式の改変版を使用して食品のタンパク質成分のより正確な酸ポテンシャルを決定できることを見出した。例えば、本開示の栄養組成物の酸ポテンシャルは、Remer及びManz酸式の「(タンパク質(g/日)×0.4888)」の値を「(タンパク質(g/日)×タンパク質の酸ポテンシャル(mEq/100gタンパク質))」で置き換えることにより得られる。結果として、PRAL値を決定するために改変した式は以下に示す通りである。
【0079】
[0079]PRAL(mEq/d)=酸−塩基
【0080】
[0080]酸=[(P×0.0366)+(タンパク質(g/日)×タンパク質の酸ポテンシャル(mEq/100gタンパク質))+(Cl×0.0268)]
【0081】
[0081]塩基=[(Ca×0.0125)+(Mg×0.0263)+(K×0.0211)+(Na×0.0413)]
【0082】
[0082]改変した式は、Remer及びManz式と類似し、Pは食品のリン含有量(mg/日)、Clは食品の塩素含有量(mg/日)、Caは食品のカルシウム含有量(mg/日)、Mgは食品のマグネシウム含有量(mg/日)、Kは食品のカリウム含有量(mg/日)、及びNaは食品のナトリウム含有量(mg/日)である。しかしながら、出願者が改変した現在の式は、特定のタンパク質源の酸ポテンシャルを考慮している。
【0083】
[0083]前述のように、栄養組成物の酸/塩基のポテンシャルへの単独の最大の寄与者は、少なくとも部分的には各タンパク質の種類によって異なる含硫アミノ酸の含有量に影響されるタンパク質である。タンパク質で発見され、かつ硫黄を含有する2つの主要なアミノ酸は、メチオニンとシスチンである。各個別のタンパク質の酸ポテンシャルを算出するために、タンパク質100グラム当たりのメチオニンのグラム量及びタンパク質100グラム当たりのシスチンのグラム量が必要である。メチオニンとシスチンの量から、それぞれのモル質量を使用して各モル量を算出できる。メチオニンのモル質量は149.2g/mol、シスチンのモル質量は240.3g/molである。次いで、硫黄のモル量は、以下の式を使用して算出できる。
【0084】
[0084]mmol硫黄(mEq/食事)=(メチオニン(mg)/149.2g/mol)+(2×(シスチン(mg)/240.3g/mol))。
【0085】
[0085]タンパク質の酸ポテンシャルを得るために、硫黄のモル量に2を乗じる。例えば、ホエータンパク質の酸ポテンシャルは、以下のように算出される。
【0086】
[0086]硫黄(mEq/食事)=2×[(2200mgメチオニン/149.2g/mol)+(2×(2400mgシスチン/240.3g/mol))]。
【0087】
[0087]表1は、含硫アミノ酸含有量に基づく様々なタンパク質源のいくつかの付加的酸ポテンシャルを提供する。
【表1】

【0088】
[0088]したがって、改変した式にしたがって、表1で示されるタンパク質源から得られるタンパク質各100g又はそれらの画分における1日の食事の総酸性度(ミリ当量酸又はmEqで表記される)を算出できる。生成物が完全にホエータンパク質から調製された場合、この値(例えば、100gのホエータンパク質分離物=69.48mEq酸)は、Remer及びManz式のタンパク質の一般的な算出方法に置き換える。つまり、この式では「タンパク質」の酸性度(mEq)が、1日のタンパク質のグラム数×0.4888で表される。同様に、改変した式を使用すれば、ホエータンパク質50g×69.48mEq/100gタンパク質=34.74mEq酸となる。これは、特定のタンパク質の酸ポテンシャルが(34.74mEq)と考えられるのに対して、一般的な「タンパク質」50gでは、(50g×0.4888=24.44mEq酸)を使用することによるタンパク質の酸性度の相違を明確に示している。したがって、低い酸ポテンシャルを有するタンパク質(例えば、エンドウタンパク質や大豆タンパク質)では、タンパク質の一般的な算出方法を使用する場合よりも、合計の酸平衡に対する貢献度が低いという結果になる。
【0089】
[0089]経口投与したタンパク質の75%が吸収されると仮定すると、表1の一番右の列(mEq)の最終値は、この吸収を考慮して特定のファクタ−つまり0.75を乗ずるべきである。
【0090】
[0090]単一で、特定の種類のタンパク質の使用だけでなく、混合タンパク質の酸性度も、その含硫アミノ酸含有量に基づいた各タンパク質源の部分貢献を使用して改変した式で容易に決定することができる。したがって、改変した式の使用は、PRALのより正確な予測を可能にしながら、同時にいくつかの異なる種類のタンパク質を有する栄養組成物の調製を可能にする。この式は、栄養組成物中でミネラルと併用したタンパク質及び混合タンパク質のアルカリ度影響の正確な決定を可能にする。
【0091】
[0091]更に、これらの計算により、低いPRALの食事(より多くのアルカリ産生及びより多くの酸産生)は、筋骨格、免疫、及び腎臓の健康に有益な効果を有する可能性があると思われる。Nestle社の混合経管栄養製剤Compleat(登録商標)and Isosource(登録商標) Mixには、既に低く算出されたPRAL値がある。しかしながら、これらの製剤を更に最適化して、より大きな利益を実現することができる。このような最適化された経管栄養製剤の長期の使用は、骨の維持、骨格筋量及び骨格筋力の維持、及び腎又は肺機能の維持に適している場合がある。利益を受けることが期待される人々は、長期の在宅療養患者、高齢者、ICU患者、医学的栄養を必要とする小児患者、寝たきりの患者、慢性閉塞性肺疾患(「COPD」)の患者、人工呼吸器装着患者、心的外傷から回復中の患者、糖尿病患者、肝疾患患者、腎不全患者などである。
【0092】
[0092]改変した式の算出は、ユーザーが手作業で実施してもよく、或いはコンピュータ実行プロセスを使用して自動的に生成してもよい。例えば、プロセッサを有するコンピュータを使用して、該栄養組成物の酸性度を推定することができる。プロセッサは、前述のPRALの改変した式を使用して、酸成分を算出できるように構成、配置しなければならない。
【0093】
[0093]したがって、栄養組成物の調製及び/又は使用のための本開示の改変した式の利用は、いくつかの利益をもたらす。例えば、改変した式及びその使用方法により、患者の食事におけるリン及びナトリウムに対する生理的反応を正確に予測する。更に、該改変した式は、患者に対する食事の酸−塩基ポテンシャルの影響を最小にする食事を配合する能力をユーザーに提供する。また、改変した式を使用して得られる栄養組成物の消費は、結果的に除脂肪体重及び骨ミネラル密度の維持などを含むが、それだけに限定されない患者の筋骨格の健康に臨床的利益をもたらす。
【0094】
[0094]本明細書で使用する用語「栄養組成物」は完全栄養組成物、部分栄養組成物又は不完全栄養組成物、疾患又は状態に固有の栄養組成物を含むが、これらに限定されることはない。完全栄養組成物(つまり、全ての必須微量元素及び微量栄養素を含有する栄養組成物)を、患者の唯一の栄養源として使用できる。患者は、このような完全栄養組成物から栄養所要量の100%を摂取することができる。部分組成物又は不完全組成物は、全ての必須微量元素及び微量栄養素は含有していないし、患者の唯一の栄養源として使用できない。部分栄養組成物又は不完全栄養組成物は、栄養補給剤として使用可能である。病気又は状態に固有の栄養組成物は、栄養素又は薬剤を運び、完全栄養組成物或いは部分栄養組成物である場合がある組成物である。
【0095】
[0095]したがって、該栄養組成物は、完全栄養供給食又は経口栄養補助食とすることができる。本明細書で使用する用語「経口栄養補助食」は、経口投与製剤、経腸栄養製剤、及び経管栄養剤を含むがこれらに限定することはない。該栄養組成物は、ヒト又は動物などの全ての哺乳類に合わせて調製された製剤であり得る。該栄養組成物の主要な酸又は塩基の寄与成分も、補助剤食品として提供できる。補助剤食品は、補給剤として1つ又は複数の固有の栄養素の投与方法と定義することができ、単独の栄養源に使用することを意図していない。1つの実施形態では、該栄養組成物は、医薬製剤、栄養製剤、経管栄養製剤、中心静脈栄養製剤、経腸栄養製剤、栄養補助食品、機能性食品、及び飲料製品からなる群から選択される投与形態になっている。
【0096】
[0096]本明細書で使用するように、「経管栄養」製剤は、好ましくは、経口アクセスポート、経鼻胃管チューブ、オロガストリックチューブ、胃チューブ、経皮空腸瘻チューブ(Jチューブ)、経皮的内視鏡下胃瘻造設術(PEG)、胃へのアクセスを提供する胸壁ポート、空腸ポート、及び他の適切なアクセスポートなどの動物の消化管系に投与される完全、又は不完全な栄養食品である。
【0097】
[0097]本明細書で使用されるように、「有効な量」は、好ましくは栄養不足を予防し、患者の病気又は疾患を治療し、より一般的には、症状を軽減し、病気の進行を管理し、又は患者に栄養上の、生理学上の、又は医学上の利益をもたらす量である。治療は、患者関連、又は医師関連のものでも可能である。更に、ヒトを指すために、用語「個人」及び「患者」をしばしば使用しているが、本開示では、特に制限をしない。したがって、用語「個人」及び「患者」は、治療により恩恵を受けることが可能な疾患を持つ、又は疾患のリスクがある全ての動物、哺乳動物、又はヒトを指す。
【0098】
[0098]1つの実施形態では、該栄養組成物はタンパク質源を含む。該タンパク質源は、食事性タンパク質でもよい。該食事性タンパク質は、動物性タンパク質(乳タンパク質、食肉タンパク質、又は卵タンパク質など)、植物性タンパク質(大豆タンパク、小麦タンパク質、米タンパク質、及びエンドウタンパク質など)又はこれらの組合せを含むが、これらに限定されない全ての適切な食事性タンパク質である。1つの実施形態では、該タンパク質は、ホエー、鶏肉、トウモロコシ、カゼイン塩、小麦、アマ、大豆、イナゴマメ、エンドウ、キャノーラ、綿の実、ジャガイモ、米、卵、又はこれらの組合せからなる群から選択される。他の実施形態では、該タンパク質はエンドウタンパク質を含む。タンパク質源が何であっても、タンパク質は、低い酸ポテンシャルを持っていなければならない。
【0099】
[0099]1つの実施形態では、経管栄養製剤のPRALの値は、約20mEqと約100mEqの間である。他の実施形態では、経管栄養製剤のPRALの値は、約22mEqと約95mEqの間である。他の実施形態では、経管栄養製剤のPRALの値は、約24mEqと約90mEqの間である。他の実施形態では、経管栄養製剤のPRALの値は、約26mEqと約85mEqの間である。他の実施形態では、経管栄養製剤のPRALの値は、約28mEqと約80mEqの間である。他の実施形態では、経管栄養製剤のPRALの値は、約29mEqと約75mEqの間である。他の実施形態では、経管栄養製剤のPRALの値は、約30mEqと約70mEqの間である。
【0100】
[0100]1つの実施形態では、経管栄養製剤のタンパク質:Kは、0.5(g/mEq)から1.25(g/mEq)の間である。他の実施形態では、タンパク質:Kの比率は、0.75(g/mEq)から1.2(g/mEq)の間である。他の実施形態では、タンパク質:Kの比率は、0.9(g/mEq)から1.1(g/mEq)の間である。
【0101】
[0101]1つの実施形態では、該タンパク質は、大きな負のPRAL値を持つ栄養組成物をもたらすのに有効な量で提供される。1つの実施形態では、該タンパク質は、栄養組成物中に約1gと約200gの間の量で存在する。他の実施形態では、該タンパク質は、栄養組成物中に約50gと約150gの間の量で存在する。
【0102】
[0102]更に、大抵の植物性タンパク質(特にエンドウタンパク質)は、酸ポテンシャルが低い(つまり、エンドウ分離タンパク質=31.411mEq/100gタンパク質)ため、栄養組成物における植物性タンパク質の利用は、低い酸ポテンシャルを持つ組成物をもたらす。したがって、1つの実施形態では、該栄養組成物はエンドウタンパク質を含む。
【0103】
[0103]1つの実施形態では、該栄養組成物は炭水化物源を含む。いかなる適切な炭水化物も、スクロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、コーンシロップ固形分、マルトデキストリン、加工でんぷん、アミロースでんぷん、タピオカ粉でんぷん、コーンスターチ、又はこれらの組合せを含むが、これらに限定されない該栄養組成物で使用することができる。
【0104】
[0104]1つの実施形態では、該栄養組成物は脂肪源を含む。該脂肪供給源は、全ての適切な脂肪、又は脂肪混合物を含んでもよい。例えば、該脂肪供給源は、植物性脂肪(オリーブ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、菜種油、ヘーゼルナッツオイル、大豆油、パーム油、ココナッツ油、キャノーラ油、レシチン類など)及び動物性脂肪(乳脂肪など)を含んでもよいがこれらに限定されることはない。
【0105】
[0105]1つの実施形態では、該栄養組成物は1つ又は複数のプレバイオティクス及び/又は繊維(可溶性及び/又は不溶性)を更に含む。本明細書で使用するように、プレバイオティクスは、胃腸管微生物相における組成及び/又は活性の双方に特異的変化をもたらし、宿主の健康及び健常性に利益をもたらす選択的に発酵した成分である。プレバイオティクスの非限定例としては、フラクトオリゴ糖類、イヌリン、ラクツロース、ガラクトオリゴ糖類、アカシアゴム、大豆オリゴ糖類、キシロオリゴ糖類、イソマルトオリゴ糖類、アラビノキシラン類、ゲンチオオリゴ糖類、ラクトスクロース、グルコオリゴ糖類、ペクチンオリゴ糖類、耐性でんぷん類、糖アルコール類、又はこれらの組合せが挙げられる。
【0106】
[0106]1つの実施形態では、該栄養組成物は1つ又は複数のプロバイオティクスを更に含む。本明細書で使用するように、プロバイオティクス微生物(以下、「プロバイオティクス」と称する)は、好ましくは、適切な量を投与した場合に健康上の恩恵を宿主に与えることができ、より具体的には、宿主の腸管内微生物バランスを改善することにより、宿主の健康及び健常性に利益をもたらす微生物(半生存又は弱っている状態を含めた生存状態、及び/又は非複製)、代謝産物、微生物細胞調製物、又は、微生物細胞の成分である。一般的に、これらの微生物は、腸管内で、病原性細菌の成長、及び/又は代謝を抑制し、或いは影響を及ぼすと考えられている。プロバイオティクスも、宿主の免疫機能を活性化することができる。したがって、プロバイオティクスを食品に取り込むための多くの異なる方法がある。プロバイオティクスの非限定例としては、サッカロミセス属、デバロマイセス属、カンジダ菌、ピチア属、トルロプシス属、アスペルギルス属、クモノスカビ属、ケカビ、アオカビ属、ビフィドバクテリウム属、バクテロイデス属、クロストリディウム属、フゾバクテリウム属、メリソコッカス属、プロピオン酸菌属、連鎖球菌、腸球菌、乳酸連鎖球菌、ブドウ球菌、ペプトストレプトコッカス属、バチルス属、ペジオコッカス属、単球菌、乳酸菌、ワイセラ属、エアロコッカス属、オエノコッカス属、ラクトバシラス属、又はこれらの組合せが挙げられる。
【0107】
[0107]他の実施形態では、該栄養組成物は1つ又は複数のアミノ酸を更に含む。アミノ酸の非限定例としては、イソロイシンアラニンロイシンアスパラギンリシンアスパラギン酸塩メチオニンシステイン、シスチン、フェニルアラニングルタミン酸塩トレオニングルタミントリプトファン、シトルリン、グリシンバリンプロリンセリンチロシンアルギニンヒスチジン、又はこれらの組合せが挙げられる。
【0108】
[0108]1つの実施形態では、該栄養組成物は1つ又は複数のシンバイオティクス、魚油、及び/又は植物性栄養素を更に含む。本明細書で使用するように、シンバイオティクスは、共同で作用して腸の微生物相を改善するプレバイオティクスとプロバイオティクスの両方を含む栄養補助食品である。魚油の非限定例としては、ドコサヘキサエン酸(DHA)及びエイコサペンタエン酸(EPA)が挙げられる。植物性栄養素の非限定例としては、ケルセチン、クルクミン、リモニン又はこれらの組合せを含むフラボノイド、及び同類のフェノール化合物及びポリフェノール化合物、カロテノイドなどのテルペノイド、及びアルカロイドなどが挙げられる。
【0109】
[0109]1つの実施形態では、該栄養組成物は酸化防止剤を更に含む。酸化防止剤は、他の分子の酸化を遅延させることができ、或いは酸化を防止することができる分子である。酸化防止剤の非限定例としては、ビタミンA、カロテノイド、ビタミンC、ビタミンE、セレン、フラボノイド、ラクトクコ、クコ、ポリフェノール、リコピン、ルテイン、リグナン、補酵素Q10、グルタチオン、又はこれらの組合せなどが挙げられる。
【0110】
[0110]他の実施形態では、本開示は患者へ投与する栄養組成物の選択方法を提供する。該方法は、ホエー、鶏肉、トウモロコシ、カゼイン塩、小麦、アマ、大豆、イナゴマメ、エンドウ、又はこれらの組合せからなる群から選択されるタンパク質を提供すること、及び改変したPRAL式を使用して該栄養組成物の酸含有量を算出することを含む。
【0111】
[0111]他の実施形態では、本開示は栄養組成物を必要とする患者への栄養組成物の投与方法を提供する。該方法は、ホエー、鶏肉、トウモロコシ、カゼイン塩、小麦、アマ、大豆、イナゴマメ、エンドウ、キャノーラ、綿の実、ジャガイモ、米、卵、又はこれらの組合せからなる群から選択されるタンパク質を提供すること、及び改変したPRAL式を使用して該栄養組成物の酸含有量を算出することを含む。
【0112】
[0112]更に他の実施形態では、潜在的腎臓酸負荷(PRAL)の値を決定するためのコンピュータ実行プロセスが提供される。該プロセスは、改変したPRAL式を使用して、栄養組成物の代謝性酸ポテンシャルを算出するために構成及び配置された入力デバイス及びコンピュータプロセッサを備えたコンピュータを提供することを含む。
【0113】
[0113]なお更に他の実施形態では、本開示は骨粗しょうの治療方法及び/又は予防方法、及び骨格筋量を維持する方法を提供する。該方法は、ホエー、鶏肉、トウモロコシ、カゼイン塩、小麦、アマ、大豆、イナゴマメ、エンドウ、又はこれらの組合せからなる群から選択されるタンパク質を提供すること、及び該式を使用して該栄養組成物の酸含有量を算出することを含む。
【0114】
[0114]他の実施形態では、アシドーシスの緩衝を必要とする患者にアシドーシスの緩衝方法を提供する。該方法は、ホエー、鶏肉、トウモロコシ、カゼイン塩、小麦、アマ、大豆、イナゴマメ、エンドウ、又はこれらの組合せからなる群から選択されるタンパク質を提供すること、及びアルカリ負荷を達成するためにP及び他のカチオン(Mg、Ca、K)を調整することを含む。
【0115】
[0115]改変した式及び組成物、及びこれらから導いた方法を使用して、非活性な患者、又は長期間にわたり酸性度の高い食事を摂取している患者のいずれにおいても、骨格筋、骨、及び免疫の健康に関する問題を改善することができる。実際に、該改変した式は、ミネラルと結合したタンパク質又はタンパク質混合物のそれを摂取する患者の骨格筋、骨、及び免疫の健康に対するアルカリ度影響を正確に決定するための栄養組成物又は食事の酸性度(酸性灰分量)を予測する方法を提供する。
【0116】
[0116]本明細書に記載された現在の好ましい実施形態に対する種々の変更及び修正が、当業者には明白であることが理解されるべきである。そのような変更及び修正は、本主題の精神及び範囲から逸脱することなく、かつその意図された利点を低減することなくなされ得る。それ故に、そのような変更及び修正は、添付の請求項によって網羅されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】図1は、正味の酸排出(「NAE」)予測と骨ミネラル濃度(「BMD」)の間の関係を実証しているグラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪源、
炭水化物源、及び
タンパク質源、
高いアルカリ性灰分をもらたすためのミネラル源
を含む栄養補給製剤であって、
前記は、エンドウ、カゼイノグリコマクロペプチド、イナゴマメ、大豆、キャノーラ、アマ、小麦、トウモロコシ、又はジャガイモのタンパク質からなる、低酸性灰分タンパク質を含んでも含まなくてもよい、全タンパク質又は濃縮タンパク質若しくはタンパク質分離物を含み、少なくとも20質量%タンパク質の量のエンドウタンパク質を含み、
前記組成物は、代謝性アシドーシス、アシドーシスから引き起こされる合併症、又は動物の酸塩基平衡を調節することにより改善できる状態を軽減するためのものであり、
前記製剤は、患者のカロリーの少なくとも90%である、栄養補給製剤。
【請求項2】
遊離カルニチンを更に含む、請求項1に記載の栄養補給剤。
【請求項3】
前記製剤が、患者のカロリーの100%である、請求項1に記載の栄養補給剤。
【請求項4】
前記製剤が、完全栄養剤である、請求項1に記載の栄養補給剤。
【請求項5】
前記製剤が、経口栄養補給剤である、請求項1に記載の栄養補給剤。
【請求項6】
前記製剤が、経管栄養である、請求項1に記載の栄養補給剤。
【請求項7】
前記製剤が、消費者の食事のアルカリ度を高めるために任意の経管栄養に追加することができる補助剤である、請求項1に記載の栄養補給剤。
【請求項8】
プレバイオティクス、可溶性繊維、不溶性繊維、プロバイオティクス、アミノ酸、魚油、植物性栄養素、酸化防止剤、及びこれらの組合せの少なくとも1つを更に含む、請求項1に記載の栄養補給剤。
【請求項9】
前記アミノ酸が、リシン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミン、グリシン、又はこれらの組合せからなる群から選択される、請求項8に記載の栄養補給剤。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の栄養補給剤を哺乳動物に投与するステップを含む、代謝性アシドーシス、アシドーシスから引き起こされる合併症、又は哺乳動物の酸塩基平衡を調節することにより改善できる状態を軽減する方法。
【請求項11】
前記哺乳動物が、長期間経管栄養療法を受けている患者である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記哺乳動物が、腎不全に罹患している患者である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記哺乳動物が、腎不全のリスクがある患者である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記哺乳動物が、筋骨格衰退のリスクがある患者である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記哺乳動物が、経腸栄養療法と組み合わせて腸管外栄養療法を受けている患者であり、各療法が請求項1〜9のいずれか一項に記載の栄養補給剤である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記哺乳動物が、アシドーシス患者であり、前記栄養補給剤が前記アシドーシスを緩衝する、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
栄養組成物から恩恵を受けることができる患者に投与する栄養組成物を選択する方法であって、
ホエー、鶏肉、トウモロコシ、カゼイン塩、小麦、アマ、大豆、イナゴマメ、エンドウ、及びこれらの組合せからなる群から選択されるタンパク質を供給するステップ、
改変した式:酸含有量=[(P×0.0366)+(タンパク質(g/日)×タンパク質の酸ポテンシャル(mEq/100gタンパク質))+(Cl×0.0268)]を使用して、栄養組成物の酸含有量を算出するステップ、
式:塩基含有量=[(Ca×0.0125)+(Mg×0.0263)+(K×0.0211)+(Na×0.0413)]を使用して、栄養組成物の塩基含有量を算出するステップ、
前記酸含有量から前記塩基含有量を減じて、潜在的腎臓酸負荷(PRAL)の値を得るステップ、及び、
前記PRALの値が負の場合に、患者へ投与するために前記栄養組成物を選択するステップを含み、
ここで、
P=前記栄養組成物のリン含有量(mg/日)(元の製剤に対してアルカリ度を上昇するため)
酸ポテンシャル=2×[(タンパク質100g中に存在するメチオニン(mg)/149.2(g/mol))+(2×(タンパク質100g中に存在するシスチン(mg)/240.3(g/mol)))]、
Cl=前記栄養組成物の塩素含有量(mg/日)、
Ca=前記栄養組成物のカルシウム含有量(mg/日)、
Mg=前記栄養組成物のマグネシウム含有量(mg/日)、
K=前記栄養組成物のカリウム含有量(mg/日)、及び
Na=前記栄養組成物のナトリウム含有量(mg/日)
である、方法。
【請求項18】
前記栄養組成物が、医薬製剤、栄養製剤、経管栄養製剤、栄養補助食品、機能性食品、及び飲料製品からなる群から選択される投与形態である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記栄養組成物が、完全栄養剤である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記投与が、長期間投与である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記患者が、腎不全であるか、又は腎不全のリスクがある、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記患者が、アシドーシスである、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記栄養組成物が、アシドーシスを緩衝する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記製剤が、患者の骨粗しょうを治療及び/又は予防する、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
潜在的腎臓酸負荷(PRAL)値を決定するためのコンピュータ実行プロセスであって、
a)式:酸含有量=[(P×0.0366)+(タンパク質(g/日)×タンパク質の酸ポテンシャル(mEq/100gタンパク質))+(Cl×0.0268)]を使用して、栄養組成物の酸含有量を算出し、
b)式:塩基含有量=[(Ca×0.0125)+(Mg×0.0263)+(K×0.0211)+(Na×0.0413)]を使用して、前記栄養組成物の塩基含有量を算出し、
c)前記酸含有量から前記塩基含有量を減じて、PRALの値を得る
ように構成及び配置された入力装置及びコンピュータプロセッサを有するコンピュータを提供するステップを含み、
前記タンパク質は、ホエー、鶏肉、トウモロコシ、カゼイン塩、小麦、アマ、大豆、イナゴマメ、エンドウ、及びこれらの組合せからなる群から選択され、
ここで、
P=前記栄養組成物のリン含有量(mg/日)
酸ポテンシャル=2×[(タンパク質100gに存在するメチオニン(mg)/149.2(g/mol))+(2×(タンパク質100gに存在するシスチン(mg)/240.3(g/mol)))]、
Cl=前記栄養組成物の塩素含有量(mg/日)、
Ca=前記栄養組成物のカルシウム含有量(mg/日)、
Mg=前記栄養組成物のマグネシウム含有量(mg/日)、
K=前記栄養組成物のカリウム含有量(mg/日)、及び
Na=前記栄養組成物のナトリウム含有量(mg/日)
である、プロセス。
【請求項26】
入力装置を使用して、前記栄養組成物のリン、塩素、カルシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウム含有量のそれぞれについて数値を入力するステップを更に含む、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
入力装置を使用して、ホエー、鶏肉、トウモロコシ、カゼイン塩、小麦、アマ、大豆、イナゴマメ、エンドウ、及びこれらの組合せからなる群から選択されるタンパク質の酸ポテンシャルを入力するステップを更に含む、請求項25に記載のプロセス。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2013−514812(P2013−514812A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546132(P2012−546132)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/061444
【国際公開番号】WO2011/087769
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】