説明

栄養補助剤

【課題】L−カルニチンを初めとする各種栄養素を手軽に、しかも、透析患者のように厳しい食事制限が課せられている場合でも、その制限範囲内でバランスよく摂取できる栄養補助剤を提供する。
【解決手段】L−カルニチンと、必須アミノ酸と、水溶性ビタミンと、ミネラルとを含有する。必須アミノ酸として、少なくともL−リジンおよびL−バリンを含有する。水溶性ビタミンとして、少なくともビタミンB1、ビタミンB6、ナイアシンおよび葉酸を含有する。ミネラルとして、少なくとも鉄、ナトリウム、カリウム、リンおよびマグネシウムを含有する。さらに、有機酸として、クエン酸を含有する。さらに、ビタミン様物質として、ヘスペリジンを含有する。さらに、カルノシンおよびアンセリンを含有する。また、L−カルニチンは天然抽出されたものである。また、L−カルニチンの含有量は50〜350mgとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、有効成分の一つとしてL−カルニチンを含有する栄養補助剤であって、特に、透析療法によってもたらされる疲労感、痙攣、低血圧症等の諸症状を改善乃至は緩和することを目的とするものである。
【背景技術】
【0002】
医療の進歩によって透析患者のQOL(クオリティー・オブ・ライフ)が高まってきている。しかし、人工透析療法では、尿毒素や過剰水分を除去する過程で、血中の必要な栄養素までもが透析膜を通過して除去されてしまう。このため、透析終了後に疲労感や痙攣(特に下肢のこむらがえり)、貧血等を訴える透析患者が今なお多い。そして、近年の研究によって、これら諸症状と人工透析によるL−カルニチン欠乏との因果関係が次第に明らかになってきている。
【0003】
なお、L−カルニチンを有効成分とする透析用補充製剤が提案されている(特許文献1を参照)。また、L−カルニチンは、体脂肪のエネルギー代謝に関わり、長鎖脂肪酸をミトコンドリア内に取り込むことができる唯一の物質であることが知られており、当該L−カルニチンを含有した体力補強・疲労回復食品(特許文献2)、ダイエット食品(特許文献3)なども既に公知である。
【0004】
【特許文献1】特開2002−165875号公報
【特許文献2】特開2001−46021号公報
【特許文献3】特許第3719478号特許掲載公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術のうち、特許文献1に開示の透析用補充製剤は、腎不全等によってL−カルニチンを生合成できない患者に対して透析中にL−カルニチンを補充できるが、当該製剤は点滴投与するものであるから、患者の肉体的負担が大きいという課題がある。
【0006】
一方、特許文献2に開示の体力補強・疲労回復食品や特許文献3に開示のダイエット食品は、食品という形で手軽にL−カルニチンを摂取することができるが、体力補強・疲労回復やダイエットなどの効能は、他の添加物(タウリンやキトサン)との相乗効果によるところが大きいと考えられる上、これらは通常の食事で充分な栄養素を摂取している健常者向けのものと考えられる。
【0007】
なお、人工透析療法を受けている患者は、上述のように人工透析によって体内からL−カルニチンの他、水溶性ビタミン群や鉄などの重要な栄養素が排出されるにもかかわらず、食事・水分・塩分などの摂取に関して多くの制限が課せられているため、その制限の範囲内で欠乏した栄養素を摂取できる栄養補助剤の開発が望まれていたのである。
【0008】
本発明は上述した課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、L−カルニチンを初めとする各種栄養素を手軽に、しかも、透析患者のように厳しい食事制限が課せられている場合でも、その制限範囲内でバランスよく摂取できる栄養補助剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために本発明では、L−カルニチンと、必須アミノ酸と、水溶性ビタミンと、ミネラルとを含有するという手段を用いた。L−カルニチンは、リジンとメチオニンの二つのアミノ酸からなる分子量161という非常に小さな物質で、長鎖脂肪酸をミトコンドリア内に取り込む機能をもつ。このL−カルニチンは、体内中の約95%が心筋と骨格筋に含まれており、これら筋肉の活動エネルギー産生に関与する。なお、L−カルニチンは充分な栄養摂取下において腎臓等で生合成されるのであるが、透析患者は腎臓での生合成能力低下および人工透析による排出によって、体内蓄積量が通常値よりも小さい。そして、L−カルニチンが欠乏することで、ひどい倦怠感や手足のしびれ・痙攣、貧血、低血圧症などを引き起こすことが近年の研究で明らかになってきている。
【0010】
一方、必須アミノ酸は、人間が必要とするアミノ酸のうち、体内で生合成されないアミノ酸をいい、L−カルニチンの原料となるリジンやメチオニンの他、トリプトファン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、ヒスチジン、アルギニンの10種が知られている。これらの一つでも欠乏すると重大な栄養障害を引き起こすため、本発明では、必須アミノ酸を含有させる。特に、L型のリジンおよびバリンを含有することが好ましい。L−リジンは、抗体、ホルモン、酵素を産生すると共に、細胞の成長と組織の修復作用や筋肉増強作用も備え、さらに肝機能の増強やブドウ糖の代謝やカルシウムの吸収を高めるなどの機能があるが、これが不足すると視覚障害を引き起こす他、筋肉の断続的な痙攣による疲労感を生ずる。また、L−バリンは、細胞の成長に関与し、血液中の窒素バランスを調整する他、消化管の円滑な機能を促進し、新陳代謝や同化作用を進行させる働きがある。
【0011】
なお、本発明の栄養補助剤に他の必須アミノ酸を含有することもあり、この場合、それぞれは次のような働きをする。
トリプトファン
・ビタミンB3の原料、造血に関与
・脳内でセロトニンを転換する
・不眠と時差ぼけを改善する
・鎮静鎮痛効果がある
・食欲を抑える
・アルコールや覚醒剤の渇望を緩和する
・過呼吸とパニックを防ぐ
メチオニン
・鉛、水銀、カドミウムなどに結合し排泄する。
・記憶低下を防ぐ
・血液中のコレステロール値を下げたり、活性酸素を取り除く作用
・不足すると肥満の原因になる
フェニルアラニン
・アドレナリン、甲状腺ホルモン、チロキシンの原料となる
・L型は、記憶力を高め頭脳を明晰にする
・食欲を抑え、減量に有用である
・エネルギーを増し、毒物を解毒し、ストレスに抵抗力をつける
・D型は、うつ症状を緩和する
・D型は、脳内エントルフィンの分解を防ぎ、その作用を持続させ慢性痛の鎮痛作用
・脳と神経細胞の間で信号を伝達する、神経伝達物質となる必須アミノ酸
・抑うつ症状を解消し気分を高揚する働きがある
ロイシンやイソロイシン
・精神に活力を与える
・知的能力を高める
・情緒を安定させる
・筋肉たんぱく質の主成分
スレオニン
・小腸の働きを高め消化吸収をよくする
・成長促進、肝臓に脂肪が蓄積して脂肪肝になるのを防ぐ
ヒスチジンの働き:
・胃酸の分泌を刺激する
・神経伝達を強める
・アレルギーを緩和する
・慢性関節リウマチの症状を緩和する
・ストレスを軽減する
・リビドを高める
・成長に関与、神経機能の補助、紫外線の害を防ぐ
アルギニン
・成長ホルモンの分泌を促す
・子供の成長、成人の組織修復に必要
・傷の治りをよくする
・白血球の成長を促し免疫能力を高める
・ガンを防ぐ
・脂肪を燃焼し、筋肉を増し減量に有用
・肝臓を守り有害物質を解毒
・男性の精子数の増加と運動性を高める
・脳下垂体に働きかけて成長ホルモンの分泌を促す
・血行促進、免疫機能の向上、肝機能増強、脂肪の燃焼などの作用もある
【0012】
また、体内で生合成可能な非必須アミノ酸を含有させることも排除するものではなく、非必須アミノ酸として、グルタミン(筋肉のたんぱく質合成を補助する)、アラニン(脂肪の燃焼に関与)、プロリン(脂肪の燃焼に関与)、グリシン(保湿作用、制菌作用、キレート作用、酸化防止作用がある)、アスパラギン(加水分解されるとアスパラギン酸に変化)、グルタミン酸(脳の働きを高め、潰瘍の治癒を早める)、アスパラギン酸(体内の老廃物の処理、肝機能の促進)、システイン(傷の治癒の促進、ブドウ糖の代謝、皮膚へのメラニン色素の沈着を防ぐ)、チロシン(甲状腺ホルモンや皮膚や髪の黒色色素であるメラニン、神経伝達物質であるアドレナリン・ノルエピネフリン・ドーバーミンを生成する原料)、セリン(天然保湿因子の主成分で皮膚の潤いを保つ)がある。
【0013】
また、水溶性ビタミンは、栄養を保ち成長を遂げさせるために人間にとって不可欠な有機物であり、補酵素として働くため、本発明では水溶性ビタミンを含有する。特に、ビタミンB1、ビタミンB6、ナイアシンおよび葉酸を含有することが好ましい。ビタミンB1は、硝酸チアミンに代表され、糖質の代謝に不可欠である。このビタミンB1が不足すると、末梢神経が冒されるため、足がしびれたり、疲労感、心臓肥大、動悸、息切れやむくみが生じ、食欲も減退する。ビタミンB6は、塩酸ピリドキシンに代表され、タンパク質や脂肪の吸収・代謝に関与し、体内でのタンパク質合成に不可欠である。また、中枢神経系を正常に働かせる。このビタミンB6が欠乏すると、神経過敏、不眠が生じ、脚気を引き起こす。ナイアシンは、ニコチン酸アミドに代表され、糖質、脂質の代謝、遺伝子の修復やインスリンの合成などに関係する。血液循環をよくし、コレステロールを低下させる。このナイアシンが欠乏すると、口内炎、神経症、食欲不振などに陥る。葉酸は、プテロイルグルタミン酸に代表され、タンパク質の代謝を助け、ヘモグロビンや赤血球、核酸の合成に関与する。この葉酸が欠乏すると、貧血、食欲不振になり、口腔粘膜や舌がただれやすくなる。なお、より好ましくは、ビタミンB2を含有させる。ビタミンB2はリン酸リボフラビシナトリウムに代表され、細胞の再生や成長を促進する。健康な皮膚、毛髪、爪を作り、脂肪や糖質の代謝にも影響している。このビタミンB2が不足すると、口内炎、口角炎、目の充血、角膜炎などを発症しやすく、動脈硬化を引き起こすおそれもある。
【0014】
さらに、ミネラルは、栄養素として生理作用に必要な無機物であるため、本発明ではミネラルを含有する。特に、鉄、ナトリウム、カリウム、リンおよびマグネシウムを含有することが好ましい。鉄は、赤血球の原料であり、不足すると鉄欠乏症貧血を引き起こす。例えば、クエン酸第一鉄ナトリウムによって摂取される。ナトリウムは、浸透圧の維持、pHの調節、水分平衡の維持などの機能を有する。カリウムは、エネルギー代謝、浸透圧・pHの維持、血圧調節、神経刺激の伝達、電位差の維持、水分保持などの機能を受け持つ。リンは、骨・歯の成分、細胞の構成成分となり、エネルギー代謝、体液の浸透圧、酸塩基平衡の調節などの働きを行う。マグネシウムは、エネルギー代謝、筋肉の収縮、神経機能、ホルモン分泌、体温調節などの機能を有する。
【0015】
さらに、本発明では、有機酸として、クエン酸を含有するという手段を用いる。クエン酸は、クエン酸サイクルによるエネルギー代謝と、乳酸の生成を抑制するなどの疲労回復作用がある。
【0016】
さらに、本発明では、ビタミン様物質として、ヘスペリジン(ビタミンP)を含有するという手段を用いる。ヘスペリジンは柑橘類に多く含まれる毛細血管壁を増強する二種以上のフラボノイド化合物である。このうちメチルヘスペリジンは、ヘスペリジンをジメチル酸でメチル化し、水に可溶化したものであるが、毛細血管を強化し、細菌の侵入を防ぐなどの働きを行う。また、高血圧を予防する働きもあり、さらに、ビタミンの吸収を改善し、抗酸化作用を有する。
【0017】
さらに、本発明では、カルノシンおよびアンセリンを含有するという手段を用いる。アンセリンとカルノシンは、β−アラニンとL−ヒスチジンが結合したジペプチドであり、生体pH平衡能、金属キレート作用およびラジカル消去能による抗酸化作用を有する。
【0018】
なお、L−カルニチンは、羊肉や牛肉に多量に含まれ、畜肉から抽出することが可能である。また、細菌合成や人工合成によっても生成することができるが、L−カルニチンは天然抽出されたものであること好ましい。カルニチンは、光学異性体を有し、このうちD−カルニチンはL−カルニチンに対して拮抗作用を有するが、天然に存在するものは全てL−カルニチンだからである。
【0019】
また、L−カルニチンの含有量は、50〜350mgであることが好ましい。一度の摂取量として適当だからである。なお、他の栄養素については、特に数値を限定しないが、過不足がない量を含有する。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明に係る栄養補助剤は、L−カルニチン、必須アミノ酸、水溶性ビタミン、ミネラルを手軽にバランスよく摂取できるため、特に透析によってこれら栄養素が流出して、倦怠感・疲労感や足の痙攣、さらには血圧低下や貧血等を引き起こしている透析患者の上記諸症状を改善乃至は緩和することができる。また、クエン酸などの有機酸を配合することで、疲労回復効果を高めることができる。さらに、ビタミン様物質としてヘスペリジンを含有させることで、その抗酸化作用等によって倦怠感を改善乃至は緩和することができる。さらにまた、カルノシンおよびアンセリンを含有させることで、その抗酸化作用によって倦怠感や疲労感を改善乃至は緩和することができる。また、天然抽出したL−カルニチンを使用することで、畜肉処理の廃液などから容易且つ安価にL−カルニチンを抽出することでき、またD−カルニチンが混ざることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の最良の実施形態は、L−カルニチン、必須アミノ酸、水溶性ビタミン、ミネラルを含有することであり、また、有機酸としてクエン酸、ビタミン様物質としてヘスペリジン、さらにカルノシンおよびアンセリンを適宜含有させることである。剤の形態は、液剤(清涼飲料水などのドリンク形態)、錠剤、顆粒剤、粉末剤の何れであってもよい。
【実施例1】
【0022】
図1に示す成分表の栄養補助剤を調製した。なお、この実施例1に係る栄養補助剤は各成分を水溶化したドリンクであり、図1は50ml当たりの成分量を示している。
【0023】
実施例1に係る栄養補助剤によれば、L−カルニチンを天然抽出によって得たため、必須アミノ酸を含めて10種類以上のアミノ酸も同時に配合されたバランスのよい栄養補助剤とすることができた。また、50mlを1本分の単位として、1〜2本を数ヶ月以上、継続的に飲み続けることで、透析後の倦怠感・疲労感、貧血、血圧低下などが改善乃至は緩和された。
【実施例2】
【0024】
図2に示す成分の栄養補助剤を調製した。なお、この実施例2に係る栄養補助剤もドリンク形態であり、図2は20ml当たりの成分量を示している。
【0025】
実施例2に係る栄養補助剤によれば、一度の全体摂取量を20mlと少なくし、水分摂取量を抑える一方、実施例1よりもL−カルニチンおよび鉄の配合量を多くした。また、L−カルニチンは天然抽出法以外の合成方法で得たので、特に糖質の配合量を減らして、低カロリーとなった。従って、食事や水分摂取に関して厳しい制限のある透析患者でも、手軽に、しかもバランスよく栄養素を補充することができ、少ない分量でありながら、同じく継続的に飲み続けることで、実施例1と同程度の改善乃至は緩和作用が得られた。
【0026】
なお、実施例1、2において、鉄はクエン酸第一鉄ナトリウムを含有させることで摂取させるものとし、クエン酸第一鉄ナトリウムの実際の含有量は、実施例1、2とも45mgである。また、図1、2は、全ての成分を表出したものではなく、図表の成分以外に甘味料を加えることもある。甘味料としては、例えば、エリスリトールやアスパルテームなどを採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例1に係る栄養補助剤の成分表
【図2】実施例2に係る栄養補助剤の成分表

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L−カルニチンと、必須アミノ酸と、水溶性ビタミンと、ミネラルとを含有することを特徴とした栄養補助剤。
【請求項2】
必須アミノ酸として、少なくともL−リジンおよびL−バリンを含有する請求項1記載の栄養補助剤。
【請求項3】
水溶性ビタミンとして、少なくともビタミンB1、ビタミンB6、ナイアシンおよび葉酸を含有する請求項1または2記載の栄養補助剤。
【請求項4】
ミネラルとして、少なくとも鉄、ナトリウム、カリウム、リンおよびマグネシウムを含有する請求項1、2または3記載の栄養補助剤。
【請求項5】
さらに、有機酸として、クエン酸を含有する請求項1から4のうち何れか一項記載の栄養補助剤。
【請求項6】
さらに、ビタミン様物質として、ヘスペリジンを含有する請求項1から5のうち何れか一項記載の栄養補助剤。
【請求項7】
さらに、カルノシンおよびアンセリンを含有する請求項1から6のうち何れか一項記載の栄養補助剤。
【請求項8】
L−カルニチンは天然抽出されたものである請求項1から7のうち何れか一項記載の栄養補助剤。
【請求項9】
L−カルニチンの含有量を50〜350mgとした請求項1から8のうち何れか一項記載の栄養補助剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−197363(P2007−197363A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17759(P2006−17759)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(595036080)ベータ食品株式会社 (1)
【Fターム(参考)】