説明

栄養補給用途のために適合されかつ合致している細菌の液体濃縮物

本発明は、栄養補給用途のために適合されかつ合致している細菌の液体濃縮物に関する。好ましいが非限定的な様式において、産生される細菌は乳酸菌である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用途のために適合されかつ生存可能である細菌の液体濃縮物に関する。好ましくは、しかし非限定的な様式において、この製造される細菌は乳酸菌である。
【背景技術】
【0002】
特定の細菌株、特に乳酸菌(Lactobacillus)属およびビフィズス菌(Bifid bacterium)属に属するものの消化は、特に腸内細菌叢の適切な機能を促進することによって、健康のために特に有益である。確かに、これらの細菌は、バクテリオシンおよび乳酸を産生し、これらは食品の消化能力を増加させ、腸のぜん動を促進し、および糞便の排出を加速する。さらに、これらの細菌は、特定のビタミンB群を産生し、そして一般的に、ビタミンおよびミネラルの吸収を促進し、血液コレステロールを減少し、免疫系を強化し、ならびに有害な微生物の侵入および作用から腸粘膜を保護するためにそれらの内側を覆う。
【0003】
それゆえに、何年もの間、農業食品産業は、それらの最終製品、最も一般的にはヨーグルトの中にこのような細菌を取り込むことを試みてきた。
【0004】
現在、これらの細菌は、凍結または凍結乾燥の形態で使用されている。しかし、これらの製造プロセスは、細菌にとって傷害性であり、このことは細菌の活性のいくつか、時折細菌の生存可能性を喪失する。このことは、これらの製品の製造者および消費者にとって有害である。なぜなら、細菌は、可能であれば何ヶ月もの間、品質の要求性および技術的な性能を満たさなければならないからである。それゆえに、それらの生存可能性および最大活性を保証する方法によって製造された細菌を使用することが所望される。この目的のために、ある方法は、液体形態で細菌を製造する工程からなる。しかし、この方法もまた、細菌が最終製品に加えられる後で、細菌の高い割合の死滅を引き起こすことが実証された。
【0005】
加えて、細菌の貯蔵のコストを減少させるために、および最終製品への細菌の添加を容易にするために、液体形態で細菌を濃縮することが所望される。このことを行うために、当業者は、通常、遠心分離および濾過の工程を使用する。しかし、遠心分離は、細菌にとって傷害性のプロセスであり、これは、特に、強力な剪断力によって顕著な細胞死を引き起こし得、さらに、この方法は、食品にプロバイオティックとして加えられることが意図される細菌の産生において必要とされるようなものなどの少量の遠心分離のために非常に適切であるというわけではない。従来的な濾過工程に関しては、これもまた、細菌の死滅および細菌によるフィルターの目詰まりの問題を提示する。
【0006】
それゆえに、濃縮工程の後、および最終製品への添加後に、最大の生存可能性および活性を有する細菌の液体濃縮物の所望される量を製造することが所望される。
【発明の開示】
【0007】
驚くべくことに、および予想外に、本発明者らは、細菌を適合させる工程が、最終製品に細菌を添加した後で、細菌の活性および生存可能性を顕著に増加させることを可能にすることを示した。
【0008】
さらに、本発明者らは、ある特定の条件下での(圧力、濃度、膜の多孔率など)タンジェンシャル濾過(tangential filtration)工程が、生存可能性を保ちながら、かつフィルターを目詰まりさせることなく、大量の細菌培養物を濃縮させることを可能にすることを示した。
【0009】
タンジェンシャル濾過は、膜の型および構造に従う2つの流れ:透過液(細菌を実質的に含まない培養培地)および保持液(細菌を含む、濃縮液とも呼ばれる)を生じることが可能にする。タンジェンシャル濾過において、液体循環は、膜の表面に対して垂直方向ではなく平行方向であり、従って、その流速によって、濾過表面を詰まらせる沈着物の蓄積(一般的にフィルターの目詰まりとも呼ばれる)を妨害する自己洗浄を確実にする。
【0010】
それゆえに、本発明の目的は、濃縮物が液体であること、および細菌が適合され、生存可能であり、かつ5.1010から5.1011ufc/mlの間の濃度であることを特徴とする、細菌濃縮物である。
【0011】
細菌によって、本発明に従って、本発明者らは、以下の属の乳酸菌:乳酸菌種(Lactobacillus spp.)、ビフィズス菌種(Bifidobacterium spp.)、連鎖球菌種(Streptococcus spp.)およびラクトコッカス種(Lactococcus spp.)、特に、ラクトバチルス カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ビフィドバクテリウム アニマリス(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウム ブラベ(Bifidobacterium breve)、ストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)およびラクトコッカス ラクティズ(Lactococcus lactis)に好ましく言及している。
【0012】
本発明に従って、本発明者らは、適合された細菌によって、特に種々の物理化学的ストレスに付随する種々のストレスに対してより耐性である細菌に言及している。
【0013】
適合されかつ生存可能な細菌によって、本発明に従って、本発明者らは、食品中、特に乳製品または飲料中で、28日後に、60%より高く、および有利には80%より高い生存率を有する細菌に言及している。
【0014】
細菌の生存率は、当業者に公知である計数技術、例えば、塊計数、表面計数、Malassez細胞、直接計数、濁度、比濁分析、電子計数、フローサイトメトリー、蛍光、インペディメトリーおよび画像分析によって測定される。
【0015】
本発明に従って、濃縮物は、適合された細菌が、食品に添加されたときに以下の特徴の少なくとも1つを有することを特徴とする:
i)3から7の間のpHを有する該食品の、4℃から45℃の間の温度における該食品中での、14日後の80%より高い生存率、または
ii)3から7の間のpHを有する該食品の、4℃から45℃の間の温度における該食品中での、28日後の60%より高い、有利には80%より高い生存率。
【0016】
本発明に従って、濃縮物は、細菌がi)およびii)の両方の特徴を有することを特徴とする。
【0017】
本発明に従って、濃縮物は、食品が乳製品および/または飲料であることを特徴とする。
【0018】
本発明に従って、濃縮物の細菌は、細菌が4から6週間の間の期間生存可能である。
【0019】
本発明に従って、濃縮物は、培養培地中での細菌の増殖、細菌の適合、タンジェンシャル精密濾過による適合した細菌を含む培養培地の洗浄、およびタンジェンシャル精密濾過によって洗浄した培地中の細菌の濃縮の連続的な工程を包含する方法によって得ることが可能であることを特徴とする。
【0020】
本発明に従って、増殖工程の培養培地は合成培地である。
【0021】
合成培地によって、本発明に従って、本発明者らは、厳密な定量的および定性的な制御に供せられた構成成分が加えられる培地に言及している。
【0022】
本発明に従って、洗浄工程において使用される溶液は、細菌濃縮物の食品用途のために適切であり、細菌の生存可能性と適合可能である浸透圧を有する。
【0023】
本発明者らは、細菌の適合工程が、それらの培養培地と、それらが加えられる最終食品製品との間の細菌の培地の変化によって引き起こされる、それらの死滅率を減少させることを可能にすることを示した。
【0024】
本発明に従って、細菌の適合は、細菌の培養培地のパラメーターおよび/または細菌のパラメーターの測定によって決定される。本発明に従って、培養培地のパラメーターは、好ましくは、pH、浸透圧および/または温度である。
【0025】
細菌の適合を決定するための細菌培養培地の他のパラメーターが可能であり、これは例えば、細菌培地の糖の濃度などである。
【0026】
好ましくは、培養培地のパラメーターがpHである場合、適合工程は、自然の酸性化によってpHを減少させることによって実行される。
【0027】
自然の酸性化によるpHに対する細菌の適合の工程を実行するために、例えば、発酵培地の糖濃度を測定することが可能であり、および各細菌種についての閾値濃度より上では、pHがもはや調節されず、かつ培地を適合させることが非常に容易になることが公知である。
【0028】
従って、例えば、ラクトバチルス カゼイの発酵培地の糖濃度が9g/Lである場合、pHはもはや調節されず、かつ5周辺に等しい。次いで、適合された株にとって、新たな培地に加えられることがより容易になり、そしてこのことは、最終培地中での細菌のより良好な生存可能性を許容する。
【0029】
加えて、本発明に従って、タンジェンシャル濾過は、細菌適合工程のために使用することができる。
【0030】
本発明に従って、タンジェンシャル濾過膜は、0.01から0.05μmの間、好ましくは0.1から0.3μmの間の多孔性を有する。
【0031】
これらの膜は、本発明の方法の洗浄工程および濃縮工程、ならびにおそらく細菌適合工程のために使用される。
【0032】
この濾過膜は、以下によって特徴付けられる:
-浸透流がそれらに依存する、濾過層の多孔性および厚さ;
-分離効率がそれらに依存する、孔の直径およびそれらの分布;
-機械的、化学的および熱的耐性ならびに洗浄の容易さがそれらに依存する、使用される材料。
【0033】
濾過膜によって、本発明者らは、有機またはミネラルの膜に言及する。
【0034】
有機膜は、とりわけ、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリスルホン、セルロースエステル、セルロース、硝酸セルロース、PVCまたはポリプロピレンからなり得る。
【0035】
ミネラル膜は、とりわけ、焼結セラミック、焼結金属、炭素またはガラスからなり得る。
【0036】
本発明に従って、細菌のパラメーターは、そのサイズである。
【0037】
好ましくは、適合が細菌のサイズによって決定される場合には、該濃縮物の各細菌の長さの分布は、主として0.1から10マイクロメートルの間、および有利には0.5から5マイクロメートルの間である。
【0038】
細菌のサイズの測定は適切な手段を使用して実行される。
【0039】
適切な手段は、例えば、通常の細菌の試料、続いてフローサイトメトリーによる細菌サイズの測定であり得る。
【0040】
本発明に従って、濃縮物のpHは3から6の間である。
【0041】
本発明に従って、濃縮物の使用の温度は、25℃から45℃の間、および好ましくは35℃から39℃の間である。
【0042】
使用の温度によって、本発明者らは、本発明において、それが食品に添加されるときの濃縮物の温度に言及している。
【0043】
本発明に従って、濃縮物は、柔軟性の、密封され、かつ滅菌性のバッグ中にパッケージされる。
【0044】
柔軟性の、密封されたバッグによって、本発明者らは、本発明において、好ましくは食品安全バッグに言及している。
【0045】
本発明に従って、柔軟性の、密封されたバッグ中にパッケージされた濃縮物は、パッケージング後に、-50から4℃の間の温度で保存可能である。
【0046】
任意に、例えば、柔軟性の、密封されたバッグ中にパッケージされ、かつ低温で保存された、適合されかつ生存可能である細菌の液体濃縮物に、サッカロースなどの凍結保護剤を加えることが可能である。
【0047】
本発明に従って、柔軟性の、密封されたバッグ中にパッケージされ、-50から4℃の間の温度で保存された濃縮物は、使用される前に、適切な手段によって、25℃から45℃の間、および有利には35℃から39℃の間の温度に再加熱される。
【0048】
適切な手段によって、本発明者らは、本発明において、例えば、細菌にとって非致死的な温度、例えば、37℃における二重鍋(bain-marie)の使用に言及している。
【0049】
本発明の目的はまた、食品添加物としての、本発明に従う、適合されかつ生存可能な細菌の液体濃縮物の使用である。
【0050】
食品添加物によって、本発明者らは、本発明において、所望の技術的効果を得るために、その調製の間または貯蔵目的のために食品に添加される任意の化学物質に言及している。加えて、本発明に従って、細菌は、それらが加えられた最終製品中で生存可能であり、かつ発酵しないので、細菌の液体濃縮物は、安定な計数を有する。
【0051】
本発明の目的はまた、使用される食品添加物が、本発明に従って適合され、かつ生存可能である細菌の液体濃縮物であることを特徴とする物質が加えられている食品である。
【0052】
本発明に従って、食品は乳製品および/または飲料である。
【0053】
乳製品によって、本発明者らは、本発明において、乳に加えて、乳由来製品、例えば、クリーム、アイスクリーム、バター、チーズ、ヨーグルト;二次製品、例えば、ホエイ、カゼイン、ならびに、主成分として乳または乳構成成分を含む種々の調製食品に言及している。
【0054】
飲料によって、本発明者らは、本発明において、例えば、糖分または香料が加えられてもよいし加えられなくてもよい、例えば、フルーツジュース、乳およびフルーツジュースの混合物、植物ベースのジュース、例えば、豆乳、オートミルクまたはライスミルクなど、アルコール飲料、例えば、ケフィアなど、ソーダ、およびわき水またはミネラルウォーターなどの飲料に言及している。
【0055】
本発明の目的はまた、適合され、かつ生存可能である細菌の液体濃縮物が、製造ラインの最後に、および好ましくは食品のパッケージングの前に食品に加えられることを特徴とする、本発明に従う物質が加えられる食品を製造するための方法である。
【0056】
本発明に従って、物質が加えられる食品を製造するための方法は、適合され、かつ生存可能である細菌の液体濃縮物が、ポンピングによってライン中の食品に加えられることを特徴とする。
【0057】
本発明は、本発明に従う液体濃縮物の細菌の生存可能性および適合を測定する実施例に言及する、以下の説明を用いてより良好に理解され得る。
【0058】
しかし、これらの実施例は本発明の目的を例証するのみのために提供され、いかなる場合においても限定を構成するものではあり得ないことは言うまでもない。
【0059】
実施例
実施例1:L.カゼイ株の、それらの生存可能性に対する適合の結果
ラクトバチルス カゼイ株の、それらの生存可能性に対する適合の工程の結果を評価する。
【0060】
これを行うために、ラクトバチルス カゼイ対照細菌のバッチを調製し、MRS培地(Man, de Rogosa およびSharpeによって開発された、ラクトバチルスの増殖を可能にする特別の培地)中の培養に配置する。
【0061】
同時に、ラクトバチルス カゼイ細菌のバッチを調製し、これを、MRS培地中の培養に配置された後で、自然の酸性化の工程によって適合させる。
【0062】
これを行うために、培養の17時間後、pHの減少は、pH 6.5からpH 5までpHを変化させるための1時間にわたる自然の酸性化によって達成される。
【0063】
次いで、細菌の2つのバッチを、タンジェンシャル精密濾過によって、洗浄し、および細菌を濃縮する。
【0064】
これらの2つの細菌濃縮物を、ヨーグルト塊にpH 5.5で、10℃の温度で別々に加える。
【0065】
D+1における生細菌の量を、2つのヨーグルトバッチにおいて測定する。
【0066】
次いで、毎日、試料を、対照細菌濃縮物および適合された細菌濃縮物がそれぞれ加えられた2つのヨーグルトのバッチから採取し、および生存している株の数を、D+1における生きている株の数に関して定量する。塊の計数をこのために使用する。
【0067】
最終製品の保存の期間の間の各々の生存可能性測定のために、この最終製品を、試料が収集される前に十分にホモジナイズする。1mlの製品の滅菌試料を収集する。10の因数による段階希釈を実行する。製品の種々の希釈物をペトリ皿に配置し、液体寒天培地(事前に50℃に加熱したもの)をこれらの製品の画分に注ぎ込む。注がれる培地は、計数される細菌の型に従って選択される。寒天培地は固化する。次いで、ペトリ皿は、37℃で数日間(2〜5日間)の間のインキュベーションに配置される。結果を図1に示す。
【0068】
7日後、対照細菌バッチ中の生存細菌の数が80%であり、適合された細菌バッチのそれは105%である(わずかな細菌の増殖が存在した)ことが観察される。
【0069】
14日後、対照細菌バッチ中の生存細菌の数は58%であり、適合された細菌バッチのそれは110%である(わずかな細菌の増殖が存在した)。
【0070】
28日後、対照細菌バッチ中の生存細菌の数は42%であり、適合された細菌バッチのそれは110%である(わずかな細菌の増殖が存在した)。
【0071】
結論として、細菌適合工程は、ヨーグルト中で、28日後で、適合されていない対照細菌のバッチに対して、60%のオーダーで、細菌の致死性の減少を引き起こす。
【0072】
実施例2:酸ストレスに供せられた、適合された細菌および適合されていない細菌のサイズの変化
酸ストレスに供せられた、適合された細菌および適合されていない細菌のサイズの変化をモニターする。
【0073】
これを行うために、ラクトバチルス カゼイ対照細菌のバッチを調製し、MRS培地(Man, de Rogosa およびSharpeによって開発された、ラクトバチルスの増殖を可能にする特別の培地)中の培養に配置する。
【0074】
同時に、ラクトバチルス カゼイ細菌のバッチを調製し、これを、MRS培地中の培養に配置された後で、自然の酸性化の工程によって適合させる。
【0075】
これを行うために、培養の17時間後、pHの減少は、pH 6.5からpH 5までpHを変化させるための1時間にわたる自然の酸性化によって達成される。
【0076】
次いで、細菌の2つのバッチを、タンジェンシャル精密濾過によって、洗浄し、および細菌を濃縮する。
【0077】
次いで、細菌の試料を収集し、およびフローサイトメトリーによってそれらのサイズを測定する。従って、適合された細菌および適合されていない細菌(対照バッチ)のサイズ分布のヒストグラムを確立する(図2a)。2つのロットの細菌のサイズ分布は非常に似ていることが観察される。
【0078】
次いで、これらの2つの細菌のバッチは、3のpHを有する培地に細菌を加えることによって酸ストレスに供される。
【0079】
次いで、細菌の試料を収集し、それらのサイズをフローサイトメトリーによって測定する。酸ストレス後の適合された細菌および適合されていない細菌(対照バッチ)のサイズ分布のヒストグラムをこのようにして確立する(図2b)。2つのロットの細菌サイズ分布は非常に異なっていることが観察される。適合された細菌のバッチにおいて、最大サイズの頻度は3.2μm(0.016の頻度)である。適合されない細菌のバッチにおいて、最大サイズの頻度は5.45μm(0.012の頻度)である。
【0080】
結論として、細菌適合工程は、細菌が酸ストレスに供せられるときに、適合されていない対照細菌のバッチに対して、60%のオーダーで細菌のサイズの減少を引き起こす。それゆえに、それらのサイズを測定することによって、細菌の適合を示すことが可能である。
【0081】
実施例3:培養培地の「温度」のパラメーターの影響を測定することによる細菌の適合の決定
細菌の適合を、培養培地の温度パラメーターの影響を測定することによって決定する。
【0082】
これを行うために、ラクトバチルス カゼイ細菌の2つのバッチを同じ接種物から調製する。次いで、これらの2つのバッチを、2つのMRS培地(Man, de Rogosa およびSharpeによって開発された、ラクトバチルスの増殖を可能にする特別の培地)中の培養に配置する。
【0083】
相対的誘電率εRが測定されることを可能にするバイオマスセンサーを使用する。この目的のために使用することができるプローブは、当業者に公知である(特に、FR 2835921を参照されたい)。相対的誘電率εRは、真空の誘電率ε0(ε0=8.854187×10-2pF/cm)によって割った、誘電率ε(pF/cmで表現される)に等しい無次元の量である。相対的誘電率の変化を経時的に測定する。相対的な誘電率は、生細胞の数およびこれらの細胞のサイズに依存する。
【0084】
同じ数の細菌を含む2つの厳密に同一な培養培地を、1つは37℃で、他方は39℃で培養する。
【0085】
株の数は時間とともに増加する。これが正常である。
【0086】
本発明者らは、2つの培養培地間で全体の細胞の数に違いがなかったことを確認することができた。光学密度を測定するための従来的な技術(吸収スペクトル測定)をこの目的のために使用することができ、またはWedgewood光学プローブ(近赤外において微生物懸濁液の光学密度を測定する系)を使用することができる。スペクトル分析装置によって測定された培地の吸光度は、培地中の細胞の総数に依存する。ペトリ皿中での計数のための技術もまた、使用することができる。
【0087】
使用されるバイオマスセンサーによって、細菌が形状およびサイズを変化させたこと、ならびにそれゆえに培養培地の温度に従って適合されたことを実証することが可能であった。図3はこの観察を示す。
【0088】
実施例4:培養培地の「温度」および「pH」のパラメーターの影響を測定することによる細菌の適合の決定
細菌の適合を、温度およびpHである、培養培地の2つのパラメーターの影響を測定することによって決定する。
【0089】
これを行うために、ラクトバチルス カゼイ細菌の3つのバッチを同じ接種物から調製する。
【0090】
これらの3つの培養培地を、3つの異なる温度(35℃、37℃および39℃)において、培地のpHをpH 3まで低下させることによって、細菌を各時点で酸ストレスに供しながら、培養する。
【0091】
細胞のサイズの変化は、培地の条件に対するそれらの適合を生じる。このサイズは、顕微鏡によって測定される。
【0092】
表1において、得られた結果は、これらの細菌がサイズを変化させるために、細菌が、培地の温度およびpHのパラメーターに従って適合することを明確に示す。
【0093】
(表1)細菌のサイズに対する温度およびpHの影響(μmで示す)

【0094】
実施例5:培養培地の「浸透圧」のパラメーターの影響を測定することによる細菌の適合の決定
細菌の適合を、培養培地の浸透圧のパラメーターの影響を測定することによって決定する。
【0095】
これを行うために、ラクトバチルス カゼイ細菌の3つのバッチを同じ接種物から調製する。次いで、これらのバッチを、MRS培地(Man, de Rogosa およびSharpeによって開発された、ラクトバチルスの増殖を可能にする特別の培地)中の培養に配置する。
【0096】
同じ数の細菌を含む3つの培養培地は、それぞれ、1リットルの培養培地あたり20、40、および80gの量のグルコースを含む。培地のグルコース濃度が高いほど、該培地の浸透圧が高い。
【0097】
相対的誘電率を測定することを可能にするセンサーを使用する。この目的のために使用することができるプローブは、当業者に公知である(FR 2835921)。経時的なこの相対的な誘電率の変化を測定する。誘電率ε(pF/cmで表現される)は、真空の誘電率ε0(ε0=8.854187×10-2pF/cm)によって、測定した相対的誘電率εRを乗算することによって計算する。
【0098】
光学密度を測定するための従来的な技術(吸収スペクトル測定)、またはWedgewood光学プローブ(近赤外において微生物懸濁液の光学密度を測定する系)を、培地の光学密度の変化を経時的に測定するために使用する。得られる光学密度(OD)値は、培地中の細胞の総数に依存する。
【0099】
ODの関数として誘電率を表現することによって、得られる曲線(図4)は、生存可能性の変化(誘電率測定によって表現される)、および培地の浸透圧の関数としての細胞のサイズを決定することを可能にする。これらの結果は、細菌がサイズを変化させることを示す。確かに、細胞のサイズの変化が存在しない場合、図4に観察される結果は直線である。この場合、曲線が観察され得る(非直線回帰)。
【0100】
それゆえに、細菌は、培養培地の浸透圧に従って適合する。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】ヨーグルト型食品中での28日間の期間にわたる適合されたおよび適合されていないラクトバチルス カゼイ株の生存可能性の表示である。
【図2】2a:酸ストレスに供せられる前の、適合されたおよび適合されていないラクトバチルス カゼイ株のサイズ分布のヒストグラムである。 2b:酸ストレスに供せられた後の、適合されたおよび適合されていないラクトバチルス カゼイ株のサイズ分布のヒストグラムである。
【図3】培養培地の温度(37および39℃)に関するラクトバチルス カゼイの適合を示す曲線である。相対的誘電率εR(真空の誘電率ε0で割った、pF/cmで表現された誘電率εに等しい無次元の量)が、細菌の齢に従って(時間で)表現される。
【図4】浸透圧の関数のしてのラクトバチルス カゼイの適合を示す曲線である(20、40、および80g/Lのグルコース濃度、それぞれ、明灰色、暗灰色、および黒色)。pF/cmで表現された誘電率εは、光学密度(OD)の関数として表現される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃縮物が液体であること、および細菌が適合され、生存可能であり、かつ5.1010から5.1011ufc/mlの間の濃度であることを特徴とし、該適合された細菌が、特に種々の物理化学的ストレスと関連する種々のストレスに対してより耐性である、細菌濃縮物。
【請求項2】
細菌が、乳酸菌、特に、乳酸菌種(Lactobacillus spp.)、ビフィズス菌種(Bifid bacterium spp.)、連鎖球菌種(Streptococcus spp.)およびラクトコッカス種(Lactococcus spp.)の属の細菌であることを特徴とする、請求項1記載の濃縮物。
【請求項3】
適合された細菌が食品に添加されるときに以下の特徴の少なくとも1つを有することを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の濃縮物:
i)3から7の間のpHを有する該食品の、4℃から45℃の間の温度における該食品中での、14日後の80%より高い生存率、または
ii)3から7の間のpHを有する該食品の、4℃から45℃の間の温度における該食品中での、28日後の60%より高い、有利には80%より高い生存率。
【請求項4】
細菌がi)およびii)の両方の特徴を有することを特徴とする、請求項3記載の濃縮物。
【請求項5】
食品が乳製品および/または飲料であることを特徴とする、請求項3または4のいずれか一項記載の濃縮物。
【請求項6】
細菌が4から6週間の間の期間生存可能であることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の濃縮物。
【請求項7】
培養培地中での細菌の増殖、細菌の適合、タンジェンシャル精密濾過による適合した細菌を含む培養培地の洗浄、およびタンジェンシャル精密濾過によって洗浄した培地中の細菌の濃縮の連続的な工程を含む方法によって得ることが可能であることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の濃縮物。
【請求項8】
細菌の適合が、細菌の培養培地のパラメーターおよび/または細菌のパラメーターを測定することによって決定されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の濃縮物。
【請求項9】
培養培地のパラメーターがpH、浸透圧および/または温度であることを特徴とする、請求項8記載の濃縮物。
【請求項10】
培養培地のパラメーターがpHであり、適合工程が自然の酸性化によってpHを減少させることによって実行されることを特徴とする、請求項9記載の濃縮物。
【請求項11】
細菌がタンジェンシャル精密濾過法によって適合されることを特徴とする、請求項1から10の記載の濃縮物。
【請求項12】
細菌のパラメーターがそのサイズであることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか一項記載の濃縮物。
【請求項13】
濃縮物の各細菌の長さの分布が主として0.1から10マイクロメートルの間、および有利には0.5から5マイクロメートルの間であることを特徴とする、請求項12記載の濃縮物。
【請求項14】
そのpHが3から6の間であることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の濃縮物。
【請求項15】
パッキング後に-50℃から4℃の間の温度で保存されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項記載の濃縮物。
【請求項16】
使用される前に適切な手段によって、25℃から45℃の間、および有利には35℃から39℃の間の温度に再加熱されることを特徴とする、請求項15記載の濃縮物。
【請求項17】
食品添加物としての、請求項1〜16のいずれか一項記載の濃縮物の使用。
【請求項18】
25℃から45℃の間、および有利には35℃から39℃の間の温度における、請求項1〜16のいずれか一項記載の濃縮物の使用。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれか一項記載の濃縮物を含む、柔軟性の、密封され、かつ滅菌性のバッグの形態である容器。
【請求項20】
使用される食品添加物が、請求項1から16のいずれか一項記載の、適合されかつ生存可能である細菌の液体濃縮物であることを特徴とする物質が加えられている、食品。
【請求項21】
乳製品および/または飲料であることを特徴とする物質が加えられている、請求項20記載の食品。
【請求項22】
適合されかつ生存可能である細菌の液体濃縮物が、製造ラインの最後に、および有利には食品のパッケージングの前に食品に加えられることを特徴とする、請求項20〜21のいずれか一項記載の、物質が加えられる食品を製造するための方法。
【請求項23】
適合されかつ生存可能である細菌の液体濃縮物が、ポンピングによってライン中の食品に加えられることを特徴とする、請求項22記載の、物質が加えられる食品を製造するための方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−524416(P2007−524416A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500264(P2007−500264)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000478
【国際公開番号】WO2005/090551
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(500223925)
【氏名又は名称原語表記】COMPAGNIE GERVAIS DANONE
【Fターム(参考)】