説明

栗皮の処理方法

【課題】エクストルーダー処理時における圧力を低圧で処理することにより、抽出効率の優れた栗皮処理物を得る。
【解決手段】栗の鬼皮および栗の渋皮の少なくともの1つの栗皮を含む組成物を、1軸または2軸エクストルーダーにより加工して栗皮処理物を得る栗皮の処理方法であって、そのエクストルーダー加工時において、組成物に作用する圧力が0kg/cm〜10kg/cm、組成物の加工温度が80℃〜130℃、組成物に含まれる水の含有量が30%〜50%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栗果実を構成する栗皮、すなわち果皮(鬼皮)、種皮(渋皮)のいずれか1つ、またはこれらの混合物についての成分抽出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
栗はブナ科の果実で、世界中でよく栽培されている品種群としては、日本栗、中国栗、ヨーロッパ栗の3種がある。栗の皮にはプロアントシアニジンやカテキン、その他のポリフェノールを含むことが知られており、古来より渋皮煮などに見られるように、薬用植物として経験的にも使用されてきた。
【0003】
しかしながら、各地において収穫された栗を加工する際に排出する栗皮のほとんどは排出物として処理されているのが現状である。
【0004】
従来、栗の皮に含まれるポリフェノールが、水や親水性溶媒、あるいはアルコール等により抽出され、抗酸化能効果や血糖値上昇抑制効果を示すことが報告されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−189956号公報
【特許文献2】特開2004−352634号公報
【特許文献3】特開2006−104181号公報
【特許文献4】特開2006−131916号公報
【特許文献5】特開2006−1872号公報 従来の有効成分の抽出方法としては、栗を含む植物体を、チップ状や粉末状の形状に破砕若しくは粉砕し、水、低級アルコール、多価アルコールなどの極性溶媒を用いて有効成分を抽出している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の方法では栗皮に含まれる有効成分の抽出効率には限界があった。
【0007】
さらに、本発明者らの調査により、特に日本栗の渋皮にはポリフェノール類を多量に含むことが分かり、従来の抽出方法では、多くのポリフェノール成分が栗皮中に残存することになる。従って、栗皮から有効成分を効率よく抽出する方法が望まれるところである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、抽出効率の優れた栗皮処理物を得ることに成功した。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下の手段を提供する:
項目1.栗の鬼皮および栗の渋皮の少なくともの1つの栗皮を含む組成物を、エクストルーダーにより加工して栗皮処理物を得る栗皮の処理方法であって、そのエクストルーダー加工時において、該組成物に作用する圧力が0kg/cm〜10kg/cmである栗皮の処理方法。
【0010】
項目2.エクストルーダー加工時における該組成物の加工温度が80℃〜130℃である項目1に記載の方法。
【0011】
項目3.エクストルーダー加工時における該組成物に含まれる水の含有量が30%〜50%である項目1又は2に記載の方法。
【0012】
項目4.前記栗皮処理物を酵素処理することを特徴とする項目1〜3のいずれかに記載の方法。
【0013】
項目5.前記栗皮処理物を発酵処理することを特徴とする項目1〜3のいずれかに記載の方法。
【0014】
項目6.項目1〜5に記載の栗皮処理物を、水、アルコール水溶液、アルカリ性水溶液およびアルカリ性アルコール水溶液からなる群から選択される少なくとも1つの抽出溶媒により抽出することを特徴とする栗皮抽出物の製造方法。
【0015】
項目7.栗の鬼皮および栗の渋皮の少なくともの1つの栗皮100重量部に対して水を10〜80重量部加え、栗皮および水を含む組成物を調製する工程、
該組成物を、該組成物に作用する圧力が0kg/cm〜10kg/cmであるエクストルーダーを用いて混練する工程、および
得られた栗皮処理物からポリフェノールを抽出する工程、
を包含するポリフェノールの製造方法。
【0016】
項目8.エクストルーダー加工時における該組成物の加工温度が80℃〜130℃である項目7に記載の方法。
【0017】
項目9.エクストルーダー加工時における該組成物に含まれる水の含有量が30%〜50%である項目7又は8に記載の方法。
【0018】
項目10.さらに前記栗皮処理物を酵素処理する工程、を包含する項目7〜9のいずれかに記載の方法。
【0019】
項目11.さらに前記栗皮処理物を発酵処理する工程、を包含する項目7〜9のいずれかに記載の方法。
【0020】
項目12.前記得られた栗皮処理物からポリフェノールを抽出する工程が、栗皮処理物を、水、アルコール水溶液、アルカリ性水溶液およびアルカリ性アルコール水溶液からなる群から選択される少なくとも1つの抽出溶媒により抽出する工程を包含する項目7に記載の方法。
【0021】
項目13.前記得られた栗皮処理物からポリフェノールを抽出する工程が、栗皮処理物を前記抽出溶媒とともにオートクレーブ内にて100℃〜150℃にて抽出する工程を包含する項目12に記載の方法。
【発明の効果】
【0022】
通常のエクストルーダー処理のように栗皮を高圧で処理すると有効成分の抽出効率が低下してしまう。しかし、エクストルーダー処理時における圧力を低圧で処理することにより、抽出効率の優れた栗皮処理物が得られる。特に、温度条件と加水量を調整したエクストルーダー処理を行うことで栗皮の繊維組織をせん断破壊し、抽出効率の優れた栗皮処理物が得られる。
【0023】
本発明の方法で得られた栗皮処理物と、未処理の栗皮について同条件での抽出操作を行った結果、本発明の処理方法に従ってエクストルーダーで処理した栗皮処理物から抽出されるポリフェノール量が、未処理の栗皮に比べて1.5倍程度高くなった。すなわち、栗皮の処理別ポリフェノール抽出量データ(温水抽出)は、栗皮をそのまま使用して温水抽出した場合には、12(カテキン相当量mg/g)、粉砕処理した栗皮を使用して同条件で温水抽出した場合には18(カテキン相当量mg/g)、エクストルーダー処理(後述する実施例2において品温120℃)した栗皮を使用して同条件で温水抽出した場合には27(カテキン相当量mg/g)であった。また、エクストルーダー処理した栗皮では、没食子酸が約1.8倍、(+)−カテキンが2.6倍に増えていることから、せん断破壊効果以外においてもポリフェノール成分の増大作用がある。
【0024】
このように、本発明の処理方法に従ったエクストルーダー処理により栗皮の抽出率が上昇した。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下において本発明について詳細に説明する。
【0026】
本発明に使用される栗皮は、栗果実を構成する果皮(鬼皮)、種皮(渋皮)のいずれか1つ、またはこれらの混合物である。また、栗の品種については、日本栗、中国栗、ヨーロッパ栗などを使用することができるが、これらに限定されるものではない。さらに栗皮の状態としては、生の状態や、生冷凍状態、乾燥状態、あるいは焼成後の状態など、あらゆる状態の栗皮を使用することができる。本発明で使用される栗皮は、上記多品種の栗を混合して使用することも可能である。
【0027】
栗皮には、通常、乾燥した鬼皮および渋皮の混合物を主要成分(90重量%以上)として含むが、栗の実が混入していてもよい。
【0028】
栗皮をエクストルーダーで処理する際にはそのままでもよいが、乾燥させてマスコロイダーあるいはミル等の微粉粉砕機で栗皮を粉砕したものを使用することが加工上望ましい。
【0029】
本発明で使用するエクストルーダーとは、スクリュー、バレル、ダイヘッド、駆動装置、原料供給装置、制御装置から構成され、機械処理と熱処理を同時に行う機能を有するものである。
【0030】
具体的には、移送、圧縮、粉砕、混合、混練、脱液、脱気、加熱、冷却、膨化、形成などの工程を必要に応じて組合せ、短時間で連続的に行う能力を持ったものであり、低利用資源の高度利用への道を切り開く機械である。
【0031】
1軸式もしくは2軸式のエクストルーダーが使用されるが、2軸式のエクストルーダーが望ましい。例えば、神鋼テクノ社製の食品加工用2軸押出機(エクセルーダTCO−50)等があるが、上記のような機能を有していれば特に限定されるものではない。
【0032】
スクリューが格納されている部分はバレルと呼ばれ、バレル内の出口付近の材料温度は80℃〜130℃が好ましい。さらに好ましい材料温度は、100〜120℃である。
【0033】
バレル内の出口付近の材料温度が80℃未満の場合には、得られた栗皮処理物から抽出する際の効率が低下する傾向にあり、130℃を超える場合には、栗皮が焦げて異臭をする場合がある。
【0034】
エクストルーダー内への加水量については、栗皮を含む組成物に含まれる水の含有量が10%〜80%(全て重量%)であるのが好ましい。特に好ましい水の含有量は30%〜50%であり、中でも30〜40%が好ましい。
【0035】
水の含有重が10%未満の場合には、エクストルーダーでの混練処理が不十分になり易く、抽出する際の効率が低下する傾向にあり、80%を超えると組成物の粘度が低すぎてエクストルーダーでの混練処理が不十分になり、組成物が流出してしまう。
【0036】
バレル内の出口付近の圧力(つまり、エクストルーダー内の組成物に作用する圧力)は、0kg/cm〜10kg/cmである。0kg/cm〜5kg/cmが特に好ましい。バレル内の出口付近の圧力が10kg/cmを超えると、栗皮を含む組成物が加圧され過ぎるので、栗皮の繊維組織が充分に解されず(つまり栗皮が凝集する状態となり)、栗皮の処理物を抽出する際の効率が低下する。
【0037】
エクストルーダー加工時における特に好ましい条件は、組成物に作用する圧力が0kg/cm〜5kg/cm、加工温度が100℃〜120℃、組成物に含まれる水の含有量が30%〜40%である。
【0038】
しかし、抽出効率を高める上で、エクストルーダー加工時における条件のうち、組成物に作用する圧力が、加工温度および組成物に含まれる水の含有量に比べて大きく影響するものである。
【0039】
バレルの先端に取り付けられるダイは、主に製品の形成を目的としており、形成用、膨化用、組織化用の3種類があるが特に限定されるものではない。形成用が好ましく、出口の直径も限定されないが、直径2mm以上が好ましい。
(有効成分の抽出方法)
上記の方法で得られた栗皮処理物から有効成分を抽出するには従来公知の方法を採用することができる。
【0040】
抽出に用いられる溶媒としては、特に制限されず、水、アルカリ性水溶液、低級アルコール、多価アルコール、並びにその他の極性溶媒を用いることができる。好ましくは、水、エチルアルコール水溶液、アルカリ性水溶液、アルカリ性エチルアルコール水溶液を挙げることができる。アルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0041】
抽出方法としては、一般に用いられる方法を採用することができる。制限はされないが、例えば溶媒中に上記栗皮処理物を、冷浸、温浸若しくは加熱しながら浸漬することによって抽出する方法、またはパーコレーション法等を挙げることができる。
【0042】
抽出温度は特に制限されず、4〜100℃の範囲で適宜選択して行うことができる。通常は室温で行うことができる。
【0043】
また、オートクレーブで加圧しながら抽出溶媒を抽出してもよく、その場合の抽出温度は100℃を超えてもよい。例えば、オートクレーブ内で100℃〜180℃で抽出してもよく、特に110℃〜150℃がよい。
【0044】
また、オートクレーブ抽出する場合の時間は、110℃〜150℃の抽出を5〜60分間行うのが好ましく、さらに好ましくは5〜30分間である。
【0045】
オートクレーブ抽出条件が上記範囲未満であると、抽出効率が低下する傾向になり、抽出温度が上記範囲を超えると、製造管理が困難となったり、有効成分が過度に分解する場合があり、また経済的にも不利となる。
【0046】
浸漬は静置状態で行ってもよいし、また攪拌若しくは振盪しながら行ってもよい。抽出時間も特に制限されず、1時間〜2週間の範囲で適宜選択して行うことができる。
【0047】
また、抽出溶媒の容量も特に制限されない。好ましくは抽出に使用する栗皮処理物の乾燥重量1に対して10〜100倍(重量比)の割合の溶媒を使用して2〜3回繰り返して行うことが好ましい。また超臨界状態または亜臨界状態の溶媒を用いて抽出することもできる。
【0048】
得られた抽出物は、必要に応じてろ過または遠心分離等の固液分離法によって固形物を除去した後、使用の態様に応じて、そのまま用いるか、または溶媒を留去して一部濃縮するかまたは乾燥して、エキスまたはエキス乾燥物の状態で用いることができる。
【0049】
抽出物は、例えば、食品、医薬品、飼料または試薬などの成分として用いることができる。
【0050】
このように、栗皮の抽出処理の前に、低圧でエクストルーダー処理を施すことにより、栗皮の組織を効果的に破壊し、抽出効率を上げることができる。
【0051】
なお、本明細書において、通常は次の条件でエクストルーダー処理が実施される。
(1)原料供給量 5(kg/h)
(2)スクリュー回転数 120(rpm)
(3)添加水 2(l/h)
(4)材料温度 120(℃)
(5)圧力 0(kgf/cm
(6)温度:第1室 100℃、第2室 120℃、第3室 130℃
次に、必要に応じて、エクストルーダー処理後の栗皮処理物を酵素処理する。
【0052】
酵素処理は、栗皮処理物の重量に対して約20〜50倍、特に30倍の蒸留水を加え、酵素反応条件は、120分間、温度45〜50℃、pH4.5〜5.0で撹拌するのが好ましい。
【0053】
酵素は従来より公知のものを使用することができるが、pH値の範囲がより広く、しかも高い抽出効率が得られることから、繊維素分解酵素を使用することが好ましく、より好ましくはセルラーゼあるいはヘミセルラーゼなどである。
【0054】
酵素の使用量は、例えば、セルラーゼの場合、栗皮1000gあたり、3.0×10unit〜9.0×10unitの値とすることが好ましい。この理由は、酵素の使用量が、3.0×10unit未満となると、単位時間あたりの抽出効率が著しく低下する場合があり、酵素の使用量が9.0×10unitを超えると、不純物が多くなったり、得られる抽出成分(有効成分)の平均分子量の調整が困難となる場合がある。
【0055】
また、ヘミセルラーゼの場合、栗皮1000gあたり、9.0×10unit〜2.7×10unitの値とすることが好ましい。この理由は、酵素の使用量が、9.0×10unit未満となると、単位時間あたりの抽出効率が著しく低下する場合があり、酵素の使用量が2.7×10unitを超えると、不純物が多くなったり、得られる抽出成分(有効成分)の平均分子量の調整が困難となる場合がある。
【0056】
なお、セルラーゼの酵素単位は、繊維消化力試験法(天野法)に準拠して求めた。すなわち、基質とするカルメロースナトリウムに、酵素を作用させ、分解生成物(還元糖)について、ソモギーネルソン法によりグルコースとして比色定量する方法である。また、ヘミセルラーゼの酵素単位は、キシラナーゼ力試験法(天野法)に準拠して求めた。すなわち、基質とするキシランに、酵素を作用させ、分解生成物(還元糖)について、ソモギーネルソン法によりキシロースとして比色定量する方法である。
【0057】
本発明では、必要に応じて、エクストルーダー処理後の栗皮処理物を発酵処理してもよい。発酵処理は、従来より公知の方法に従って実施することができる。
【0058】
次に、酵素処理又は発酵処理後の栗皮処理物から有効成分を抽出する。有効成分の抽出方法は、上記した方法に従って行うことができる。また以下に示すように熱水抽出することもできる。
【0059】
常圧で熱水抽出する場合は、60℃〜100℃の熱水抽出を30〜60分間行うのが好ましい。90℃〜100℃の熱水抽出を30〜60分間行うのがさらに好ましい。
【0060】
抽出温度が60℃未満であると、抽出効率が著しく低下する場合があり、抽出温度が100℃を超えると、製造管理が困難となったり、有効成分が過度に分解する場合がある。
【0061】
抽出時間が0.5時間未満となると、抽出効率が著しく低下する場合があり、抽出時間が1時間を超えると、経済的に不利となる。
【0062】
次に、必要に応じて、抽出工程で得られた抽出溶媒を、室温まで冷却し、吸引ろ過する。
【0063】
本発明で得られた有効成分(プロアントシアニジンやカテキン、その他のポリフェノール)は、飲食品や化粧品、医薬品等に添加することが可能である。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。本発明は本実施例により限定されるものではない。
【0065】
なお、以下の実施例における熱水抽出法は、以下のとおりとした。
(熱水抽出工程)
サンプル(栗皮試料)9gに対して水300mlを加え、90℃の熱水抽出を30分間行う。
【0066】
次に、抽出工程で得られた抽出溶媒を、室温まで冷却し、吸引ろ過する。
【0067】
また、カテキン量(mg/g)の算出方法は、Folin-Ciocalteu法により吸光度を測定し、カテキンを標準物質として算出した。
【0068】
以下の実施例では、原料として乾燥した鬼皮および渋皮の混合物を用いた。
【0069】
なお、原料には、乾燥した鬼皮および渋皮の混合物が主要部分を占めるが、栗の実が混入していてもよい。
(実施例1)
栗皮粉末(原料)のエクストルーダー処理における圧力の検討を行った。
【0070】
栗皮粉末(原料)を、マスコロイダー(増幸産業株式会社製)を用いて室温にて処理した。
【0071】
次に、シリンダー内の温度を80〜120℃、加水重量を原料100重量部に対し40重量部に設定し、エクストルーダーの出口圧力を0、5、10、12kgf/cmの間で変化させて栗皮粉末のエクストルーダー処理を行った。
【0072】
得られた栗皮処理物について熱水抽出を行い、熱水抽出物(ポリフェノール)の含有量を測定し、カテキン相当量(mg/g)に換算した。その結果を表1に示す。
【0073】
【表1】

(実施例2)
栗皮粉末(原料)のエクストルーダー処理における温度の検討を行った。
【0074】
栗皮粉末(原料)を、マスコロイダー(増幸産業株式会社製)を用いて室温にて処理した。
【0075】
次に、加水重量を原料100重量部に対し40重量部に設定し、エクストルーダーの出口圧力を0kgf/cmに設定し、シリンダー内の温度を80℃、100℃、120℃、130℃に変化させて栗皮粉末のエクストルーダー処理を行った。
【0076】
なお、エクストルーダーの出口圧力は、栗皮粉末、水の供給量、温度などを調節することにより、その圧力が0kgf/cmになるようにした。
【0077】
得られた栗皮処理物について熱水抽出を行い、熱水抽出物(ポリフェノール)の含有量を測定し、カテキン相当量(mg/g)に換算した。その結果を表2に示す。
【0078】
【表2】

(実施例3)
栗皮粉末(原料)のエクストルーダー処理における加水量の検討を行った。
【0079】
栗皮粉末(原料)を、マスコロイダー(増幸産業株式会社製)を用いて室温にて処理した。
【0080】
次に、シリンダー内の温度を100℃、エクストルーダーの圧力を0kgf/cmに設定し、原料100重量に対する加水量を30、40、50重量の間で変化させて栗皮粉末の処理を行った。
【0081】
得られた栗皮処理物について熱水抽出を行い、熱水抽出物の増加率を測定した。その結果を表3に示す。
【0082】
【表3】

(実施例4)
栗皮粉末(原料)5000gを、マスコロイダー(増幸産業株式会社製)を用いて室温にて処理した。
【0083】
次に、得られた栗皮粉末5000gに対して、2000mlの水を加え、以下の処理条件でエクストルーダーを用いて加熱、混練した。
(1)スクリュー回転数120(rpm)
(2)材料温度120(℃)
(3)圧力0(kgf/cm
得られた栗皮処理物に50倍量の水を加え、この組成物に酵素処理を行った。
【0084】
酵素処理条件は、酵素としてセルラーゼ又はヘミセルラーゼを用い(表4−1および表4−2に示す量)、45℃〜50℃、2時間、pH4.5〜5.0で行った。この酵素処理が水抽出を兼ねている。
【0085】
得られた酵素処理組成物についてろ過、遠心分離し、抽出液中のポリフェノールの含有量を測定した。結果を表4−1および表4−2に示す。
【0086】
【表4−1】

【0087】
【表4−2】

(実施例5)
栗皮粉末(原料)5000gを、マスコロイダー(増幸産業株式会社製)を用いて室温にて処理した。
【0088】
次に、得られた栗皮粉末5000gに対して、2000mlの水を加え、以下の処理条件でエクストルーダーを用いて加熱、混練した。
(1)スクリュー回転数120(rpm)
(2)材料温度120(℃)
(3)圧力0(kgf/cm
得られた栗皮処理物に50倍量の水を加え、この組成物に発酵処理を行った。
【0089】
発酵処理条件は、表5に示す菌を用い、25℃〜35℃、45時間、pH4.0〜6.0で行った。
【0090】
得られた発酵処理組成物を用い、121℃のオートクレーブ中で20分間の抽出を行った。
【0091】
抽出液中のポリフェノールの含有量を測定した。結果を表5に示す。
【0092】
【表5】

(実施例6)
上記実施例1(材料圧力0kgf/cm)で得られた栗皮処理物についてアルカリ性水溶液抽出を行い、アルカリ度の変化による抽出物(ポリフェノール)の変化を測定した。抽出方法は、栗皮試料1gに水100mlを加えて行った以外は上記熱水抽出工程と同じである。
【0093】
その結果を表6に示す。
【0094】
【表6】

(実施例7)
上記実施例1(材料圧力0kgf/cm)で得られた栗皮処理物1gに対して水50mlを加えたものについてアルコール水溶液抽出(70℃、20分)を行い、エタノール濃度の変化による抽出物(カテキン)の変化を測定した。
【0095】
その結果を表7に示す。
【0096】
【表7】

(実施例8)
上記実施例1(材料圧力0kgf/cm)で得られた栗皮処理物について、表8に示す各種の抽出溶媒を用いて抽出を行い、各抽出溶媒によるポリフェノール総量を測定した。その結果を表8にカテキンmg相当量/gで示す。
【0097】
なお、上記抽出において、栗皮処理物1gに対して各溶媒50mlを用い、それぞれ20分間(常圧)の抽出を行った。溶媒として水とアルカリ性水溶液を使用する場合は、抽出温度が20℃、50℃、90℃の場合は常圧で、抽出温度が121℃の場合は、オートクレーブ中で20分間の抽出を行った。
【0098】
その結果を表8に示す。
【0099】
【表8】

表8の結果から、水、アルコール水溶液、アルカリ性アルコール水溶液、アルカリ性水溶液において、それぞれ抽出温度が高いほど、抽出量が増大することがわかる。また、水とアルカリ性水溶液の2つの場合においては、オートクレーブで121℃(20分)での抽出が従来の100℃以内の抽出よりも効果が高いことがわかる。
(実施例9)
栗皮粉末(原料)のマスコロイダー処理と、さらにエクストルーダー処理における没食子酸と(+)−カテキンの抽出効率の比較を行った。
【0100】
マスコロイダー処理は、増幸産業株式会社製のものを用いて、原料(乾燥した鬼皮および渋皮の混合物)を室温にて処理した。
【0101】
マスコロイダー処理した後に、得られた栗皮粉末について熱水抽出を行い、没食子酸と(+)−カテキンの含有量を測定した。
【0102】
その結果、没食子酸が0.47mg/g、(+)−カテキンが0.15mg/gであった。
【0103】
エクストルーダー処理は、神鋼テクノ社製の食品加工用2軸押出機(エクセルーダTCO−50)を用い、上記マスコロイダー処理して得られた栗皮粉末100重量部に対し、加水重量を40重量部に設定し、エクストルーダーの出口圧力を0kgf/cmに設定し、品温(シリンダー内の温度)を120℃に設定して実施した。
【0104】
エクストルーダー処理した後に、得られた栗皮処理物について熱水抽出を行い、没食子酸と(+)−カテキンの含有量を測定した。
【0105】
その結果、没食子酸が0.87mg/g、(+)−カテキンが0.37mg/gであった。
【0106】
このように、エクストルーダー処理した栗皮では、マスコロイダー処理しただけの栗皮に比べて、没食子酸の抽出量が約1.8倍、(+)−カテキンの抽出量が2.6倍に増えていた。
【0107】
以上の実施例から、乾燥栗皮(鬼皮)粉末を低圧でエクストルーダー処理することにより、ポリフェノールの抽出含有量が増加したことがわかる。
【0108】
また、栗皮処理物を酵素又は発酵処理することにより、ポリフェノールの抽出含有量がさらに増加することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明によれば、栗皮からポリフェノールなどの有効成分を効率よく抽出する方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栗の鬼皮および栗の渋皮の少なくともの1つの栗皮を含む組成物を、エクストルーダーにより加工して栗皮処理物を得る栗皮の処理方法であって、
そのエクストルーダー加工時において、該組成物に作用する圧力が0kg/cm〜10kg/cmである栗皮の処理方法。
【請求項2】
エクストルーダー加工時における該組成物の加工温度が80℃〜130℃である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
エクストルーダー加工時における該組成物に含まれる水の含有量が30%〜50%である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記栗皮処理物を酵素処理することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記栗皮処理物を発酵処理することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の栗皮処理物を、水、アルコール水溶液、アルカリ性水溶液およびアルカリ性アルコール水溶液からなる群から選択される少なくとも1つの抽出溶媒により抽出することを特徴とする栗皮抽出物の製造方法。
【請求項7】
栗の鬼皮および栗の渋皮の少なくともの1つの栗皮100重量部に対して水を10〜80重量部加え、栗皮および水を含む組成物を調製する工程、
該組成物を、該組成物に作用する圧力が0kg/cm〜10kg/cmであるエクストルーダーを用いて混練する工程、および
得られた栗皮処理物からポリフェノールを抽出する工程、
を包含するポリフェノールの製造方法。
【請求項8】
エクストルーダー加工時における該組成物の加工温度が80℃〜130℃である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
エクストルーダー加工時における該組成物に含まれる水の含有量が30%〜50%である請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
さらに前記栗皮処理物を酵素処理する工程、を包含する請求項7〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
さらに前記栗皮処理物を発酵処理する工程、を包含する請求項7〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記得られた栗皮処理物からポリフェノールを抽出する工程が、栗皮処理物を、水、アルコール水溶液、アルカリ性水溶液およびアルカリ性アルコール水溶液からなる群から選択される少なくとも1つの抽出溶媒により抽出する工程を包含する請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記得られた栗皮処理物からポリフェノールを抽出する工程が、栗皮処理物を前記抽出溶媒とともにオートクレーブ内にて100℃〜150℃にて抽出する工程を包含する請求項12に記載の方法。

【公開番号】特開2009−203229(P2009−203229A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18813(P2009−18813)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000132172)株式会社スギヨ (23)
【出願人】(591040236)石川県 (70)
【Fターム(参考)】