説明

校正システム、増幅装置、診断装置、コンピュータプログラム

【課題】 回転機の振動等を検出して診断するための装置について行う校正作業を容易にすると共に、正確且つ短時間で校正を行うことができる校正システムを提供する。
【解決手段】 基準振動台が発生する基準振動を、振動ピックアップが検出している場合に出力される信号が増幅装置23に与えられると、比較回路29が、基準信号に基づく増幅回路27の出力信号レベルと基準電圧発生回路28からの基準電圧のレベルとを比較する。制御回路32は、その比較結果に応じて両信号のレベルが同一となるように増幅回路27の増幅度を増幅度設定回路34により制御し、両者のレベルが略同一になったと判断すると、その時点で設定している増幅度を保持するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機器等の振動や音響を検出し解析することにより、回転機器等に異常が発生しているか否かを診断するための装置について、校正を行う校正システム及びその校正システムに使用される増幅装置並びに診断装置、また、その診断装置を制御するコンピュータにより実行されるプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、回転機等の回転機器においては、回転時に発生する振動や音響を検出し解析することにより、回転機器等に機械的な異常が発生しているか否かの診断が行われている(例えば特許文献1参照)。
図9は、上記した診断に使用される診断システムの一構成例を示す。診断システム1は、振動ピックアップ2(検出装置)、増幅装置3、及び診断装置4を備えて構成されている。
【0003】
即ち、回転機5の軸受6(ハウジング7に内蔵されている)部分に振動ピックアップ2を取付け、回転機5に発生した振動を振動ピックアップ2により検出する。振動ピックアップ2により検出された振動は、電気信号に変換されて増幅装置3に出力される。増幅装置3に入力された電気信号は、増幅装置3で増幅された後、診断装置4に出力される。診断装置4は、入力された信号をA/D変換して波形解析することにより回転機5に異常が発生しているか否かの診断を行うようになっている。
【特許文献1】特開2004−279322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した構成の診断システムにおいて、検出装置により変換される電気信号のレベルは、検出装置として使用する振動ピックアップ2や集音マイク等の特性によってばらつきがある。そのため、信号を一定のレベルで扱いシステムの性能を一定に保つため、信号レベルの校正を行う必要がある。
この校正は、アンプ8の増幅度を調整することにより行われている。図10は、振動ピックアップ2について校正を行う場合を示す。具体的に説明すると、基準となる加速度(振動)を発生させる基準振動台9に振動ピックアップ2を取り付けて、発生させた振動(基準振動)を検出させる。この時、増幅装置3より基準となるレベルの信号が出力されるようにアンプ8の増幅度を調整することで、校正が行われる。
【0005】
しかしながら、上記した調整作業は、ユーザがレベルメータ10を見ながら増幅度を調整するためのボリウム11を手動で調整することにより行われている。そのため、アンプ8の出力レベルを基準レベルに合わせるための微調整が難しく、また、調整完了までに時間を要するという問題がある。また、調整を行う者によって感覚が微妙に異なったり、同一の者であっても調整時の環境や状態によって感覚が微妙に異なったりするため、常に同じ調整が行われるとは限らず、校正を正確に行うことが困難であった。
本発明の目的は、校正作業を容易にすると共に、正確且つ短時間で校正を行うことができる校正システム及びその校正システムに使用される増幅装置、診断装置、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の校正システムは、回転機の振動又は音響を検出して電気信号に変換する検出装置と、前記電気信号を増幅手段により増幅する増幅装置と、前記増幅された電気信号の波形を解析して前記回転機の異常を診断する診断装置とで構成される回転機の診断システムについて信号レベルの校正を行うものであり、前記検出装置に対し、基準となる振動信号又は音響信号を発生させる基準信号発生装置を備え、前記増幅装置は、増幅基準信号を発生させる増幅基準信号発生手段と、前記増幅基準信号のレベルと、前記増幅手段の出力信号のレベルとを比較する比較手段と、この比較手段による比較結果に応じて前記増幅手段の増幅度を制御する制御手段とを備え、前記増幅手段は、前記基準信号発生装置によって発生された基準信号を前記検出装置が検出している場合に、前記比較手段による比較結果に基づいて前記増幅基準信号と前記増幅手段の出力信号とが略同一のレベルになったと判断すると、その時点で前記増幅手段に設定している増幅度を保持するように構成されていることに特徴を有する。
【0007】
即ち、増幅装置の校正を行う場合、基準信号発生装置が発生する基準信号を検出装置に検出させて、その検出信号を増幅装置に与える。この時、増幅装置では、基準信号に基づく増幅手段の出力信号レベルと増幅基準信号のレベルとが比較され、制御手段は、その比較結果に応じて両信号のレベルが同一となるように増幅手段の増幅度を制御する。そして、制御手段が両者のレベルが略同一になったと判断すれば、その時点で設定している増幅度が保持され、校正処理は終了する。従って、増幅装置の校正処理が自動的に行われるようになる。
【0008】
請求項4記載の校正システムは、回転機の振動又は音響を検出して電気信号に変換する検出装置と、前記電気信号を増幅手段により増幅する増幅装置と、前記増幅された電気信号の波形を解析して前記回転機の異常を診断する診断装置とで構成される回転機の診断システムについて信号レベルの校正を行うものであり、前記増幅装置は、増幅基準信号を発生させる増幅基準信号発生手段を備え、前記診断装置は、前記増幅装置より出力される信号を増幅する増幅手段と、この増幅手段の出力信号のレベルを基準レベルと比較する比較手段と、この比較手段による比較結果に応じて前記増幅手段の増幅度を制御する制御手段とを備え、前記増幅手段は、前記増幅装置より前記増幅基準信号が出力されている場合に、前記比較手段による比較結果に基づいて前記増幅手段の出力信号のレベルと前記基準レベルとが略同一になったと判断すると、その時点で前記増幅手段に設定している増幅度を保持するように構成されていることに特徴を有する。
【0009】
即ち、診断装置の校正を行う場合、増幅装置が発生する増幅基準信号を診断装置に与える。この時、診断装置では、増幅基準信号に基づく増幅手段の出力信号レベルと基準レベルとが比較され、制御手段は、その比較結果に応じて両者のレベルが同一となるように増幅手段の増幅度を制御する。そして、制御手段が両者のレベルが略同一となったと判断すれば、その時点で設定している増幅度が保持され、校正処理は終了する。従って、診断装置の校正処理が自動的に行われるようになる。
【0010】
請求項10記載の増幅装置は、検出装置が回転機の振動又は音響を検出して変換した電気信号を増幅手段により増幅するもので、信号波形を解析して前記回転機の異常を診断するための診断装置に出力する増幅装置において、前記検出手段によって出力される信号を擬似的に出力する擬似信号発生手段と、この擬似信号発生手段からの出力信号と前記検出装置からの出力信号との何れかを選択して前記増幅手段に入力するための入力切替手段と、増幅基準信号を発生させる増幅基準信号発生手段と、前記増幅基準信号のレベルと、前記増幅手段の出力信号のレベルとを比較する比較手段と、この比較手段による比較結果に応じて前記増幅手段の増幅度を制御する制御手段とを備え、前記増幅手段は、校正処理を開始すると、前記入力切替手段に前記擬似信号発生手段からの出力信号を選択させるように制御すると共に、前記比較手段による比較結果に基づいて前記増幅基準信号と前記増幅手段の出力信号とが略同一のレベルになったと判断すると、その時点で前記増幅手段に設定している増幅度を保持するように構成されていることに特徴を有する。
【0011】
即ち、校正処理を開始すると、擬似信号発生手段からの出力信号が自動的に選択されて校正が行われる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の校正システムによれば、増幅装置の校正は自動的に行われるので、従来とは異なり、作業者が信号の出力状態を観測しながら手動で増幅度の調整を行う必要がない。そのため、校正作業が容易になると共に、正確且つ短時間で校正を行うことができ、作業者の負担を軽減することができる。
請求項4記載の校正システムによれば、診断装置の校正を自動的に行うことができ、請求項1と同様の効果を得ることができる。
請求項10記載の校正システムによれば、増幅装置のみで増幅度の校正を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施例について図1乃至図3を参照して説明する。尚、図9と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下、異なる部分についてのみ説明する。
図3は、増幅装置について信号レベルの校正を行う状態を示したものである。校正システム21は、基準振動台9(基準信号発生装置)と、振動ピックアップ2(検出装置)と、増幅装置23とを備えて構成されている。基準振動台9は、前述したように校正用の基準振動を発生する。振動ピックアップ2は、振動を検出すると圧電素子によってその振動をアナログの電気信号(振動信号)に変換して出力する。増幅装置23は、振動信号を所定の増幅度で増幅する。
【0014】
ここで、増幅装置23の電気的構成について、その機能ブロックを示した図1を参照して説明する。増幅装置23は、入力端子24と、擬似信号発生回路25(擬似信号発生手段)と、入力切替回路26(入力切替手段)と、増幅回路27(増幅手段)と、基準電圧発生回路28(増幅基準信号発生手段)と、比較回路29(比較手段)と、出力切替回路30(出力切替手段)と、出力端子31と、制御回路32(制御手段)とを備えて構成されている。
【0015】
入力端子24は、入力切替回路26の一方の入力端子に接続されている。また、入力端子24には、振動ピックアップ2が自身に接続されているか否かを検出する検出スイッチ24a(接続状態検出手段)を備えており、検出スイッチ24aは、振動ピックアップ2が接続された場合に、例えばONすることで、接続検出信号を制御回路32へ出力する。擬似信号発生回路25は、信号設定スイッチ33を備え、この信号設定スイッチ33を操作することにより、擬似信号発生回路25が出力する擬似信号のレベルを調整可能に構成されている。そして、擬似信号発生回路25は、発生させた擬似信号を入力切替回路26の他方の入力端子に出力するようになっている。
入力切替回路26の出力端子は、増幅回路27の入力端子に接続されており、上記した振動ピックアップ2からの振動信号と擬似信号発生回路25からの振動信号(擬似信号)との何れかを選択して増幅回路27へ出力する。
【0016】
増幅回路27は、増幅度設定回路34と、オペアンプ35と、抵抗回路部36とを備えて構成されている。オペアンプ35の反転入力端子とグランドとの間には、抵抗36aが接続されており、反転入力端子と出力端子との間には、増幅度設定回路34を介して複数の抵抗36bが並列に接続され、これらが抵抗回路部36を構成している。増幅度設定回路34は、複数の抵抗36bと出力端子との間の導通をスイッチ(図示せず)により制御することで増幅回路27の増幅度を設定する。オペアンプ35の出力端子は、出力切替回路30の一方の入力端子に接続されていると共に、常開型の校正用スイッチ100及びピークホールド回路101を介して、比較回路29を構成するコンパレータ38の非反転入力端子及びコンパレータ39の反転入力端子に接続されている。校正用スイッチ100は、増幅装置23の校正を行う場合に制御回路32によりONされるようになっており、ピークホールド回路101は、その場合に増幅回路27より出力される信号レベルのピークを検出してコンパレータ38,39に出力する。
【0017】
基準電圧発生回路28は、後述する自動校正処理に使用される直流レベルの基準電圧を比較回路29へ出力する。
比較回路29は、分圧回路37と、コンパレータ38、39で構成されたウインドウコンパレータとを備えている。分圧回路37は、基準電圧発生回路28の出力端子とグランドとの間に直列に接続された3つの抵抗37a〜37cで構成されている。基準電圧発生回路28の出力電圧は、上限基準信号SHとしてコンパレータ38の反転入力端子に与えられる。そして、コンパレータ38は上限基準信号SHとオペアンプ35の出力信号Soutとを比較した結果を制御回路32へ出力する。抵抗37b及び37cの分圧電位は、下限基準信号SLとしてコンパレータ39の非反転入力端子に与えられる。そして、コンパレータ39は下限基準信号SLとオペアンプ35の出力信号Soutとを比較した結果を制御回路32へ出力する。抵抗37a及び37bの共通接続点は、出力切替回路30の他方の入力端子に接続されている。
【0018】
制御回路32は、CPU40と、メモリ41と、レジスタ42と、設定スイッチ43と、制御出力端子44と、制御入力端子45とを備えて構成されている。ここで、CPU40は、接続検出信号の出力状態に応じて入力切替回路26へ入力切替信号を出力し、また、設定スイッチ43の設定に応じて出力切替回路30へ出力切替信号を出力する。また、CPU40は、コンパレータ38,39の比較結果に基づいてレジスタ42にデータを書き込むと共に、必要に応じてメモリ41にデータを記憶させる。レジスタ42は、書込まれたデータを増幅度設定信号として増幅度設定回路34へ出力する。メモリ41には、CPU40によって実行される制御プログラムや増幅回路27に設定される増幅度の初期値等が記憶されている。
【0019】
増幅装置23は、設定スイッチ43により、通常の測定を行う通常モードと、自身の校正を行う増幅装置校正モードと、診断装置側の校正を行う診断装置校正モードとの何れかが設定されるようになっている。診断装置校正モードについては第2実施例にて説明する。CPU40は、上記した設定スイッチ43により増幅装置校正モードが選択されている場合に、上記した基準振動台9に対して基準振動を発生させるための制御信号を、制御出力端子44を介して出力する。
【0020】
次に、本実施例の作用について図2を参照して説明する。図2は、CPU40による制御内容を示すフローチャートである。増幅装置23を起動すると、CPU40は、設定スイッチ43の操作が行われたか否かを監視する(ステップS1)。そして、作業者が設定スイッチ43を操作すると(「YES」)、CPU40は、作業者が増幅装置校正モードを選択したか否かを判断する(ステップS2)。増幅装置校正モードが選択されていれば(「YES」)、校正用スイッチ100をONさせた後(ステップS3)、メモリ41に記憶されていた増幅度の初期値データを読み出して、レジスタ42に書き込みを行い増幅回路27に設定する(ステップS4)。
【0021】
次に、CPU40は、入力端子24に振動ピックアップ2が接続されているか否かを検出し(ステップS5)、接続されていれば(「YES」)、入力切替回路26が入力端子24側を選択するように切替える(ステップS6)。一方、振動ピックアップ2が接続されていなければ(「NO」)、擬似信号発生回路25側を選択するように切替える(ステップS7)。
即ち、基準振動台9が基準振動を発生している場合に振動ピックアップ2から出力される振動信号の出力レベルが既知であれば、信号設定スイッチ33により設定を行うことで、擬似信号発生回路25が出力する擬似信号の出力レベルを前記既知の信号出力レベルに等しくすることができる。この場合、基準振動台9を使用しなくても、校正処理を行うことができる。
【0022】
次に、ステップS8では、CPU40は、基準振動台9に対して基準振動を発生させるための制御信号を出力すると共に、基準電圧発生回路28に基準電圧を出力させる。続くステップS9では、CPU40は、コンパレータ38、39の比較結果を参照し、ステップS10〜S13では、ステップS9で参照した比較結果に基づいて増幅度の調整を行う。即ち、コンパレータ39の出力信号レベルがハイであれば、Sout<SLであるから(ステップS10、「YES」)、増幅回路27の増幅度を1段階上昇させるように、即ち、抵抗36bの接続数を1つ減らすようにレジスタ42にデータを設定する(ステップS12)。また、コンパレータ38の出力信号レベルがハイであれば、Sout>SHであるから(ステップS11,「YES」)、増幅回路27の増幅度を1段階下降させるように、即ち、抵抗36bの接続数を1つ増やすようにレジスタ42にデータを設定する(ステップS13)。
そして、コンパレータ38,39の出力信号レベルが何れもロウであれば(ステップS11、「NO」)、SL≦Sout≦SHとなっているので、CPU40は、その時点で増幅回路27に設定している増幅度を維持するようにして、設定データをメモリ41に書き込んで記憶させる(ステップS14)。
【0023】
次に、CPU40は、基準振動台9を停止させ(ステップS15)、増幅回路27へ出力される信号を入力端子24側の出力信号に切替える(ステップS16)。そして、校正が完了した旨を記憶するため、校正完了フラグをセットし(ステップS17)、校正用スイッチをOFFにする(ステップS18)。
最後に、第2実施例で説明する診断装置側の校正が終了(診断装置の校正完了フラグがセットされている状態)しているか(ステップS19、「YES」)、若しくは、校正の必要がない場合は、出力切替回路30を増幅回路27側に切替え(ステップS20)、校正処理を終了する。以上により、増幅装置23は回転機の異常診断が開始可能な状態となる。
【0024】
以上に説明したように本実施例によれば、増幅装置23を、作業者が設定スイッチ43を操作して増幅装置校正モードに設定すれば校正処理が自動的に行われるように構成したので、従来と異なり、作業者は信号の出力状態を観測しながら手動で増幅度の調整を行う必要がなない。そのため、校正作業が容易になると共に、正確且つ短時間で校正を行うことができ、作業者の負担を軽減することができる。また、基準振動台9の有無に拘らず校正を行うことができるように構成したので、例えば、外出先等で基準振動台9がない場合や基準振動台9が故障した場合であっても校正を行うことができ、ユーザは基準振動台9を持ち歩く必要がなく、また、基準振動台9の故障を心配する必要もない。
【0025】
また、増幅装置23を生産ラインにおいて組み立て、製品として出荷する際に、例えば、標準的に使用される振動ピックアップ2が予め想定される場合は、本実施例と同様の校正処理をライン上で行っておき、校正用の初期値を予めメモリ41に記憶させておくこともできる。その場合の校正処理も迅速に行うことができるので、増幅装置23の生産効率を向上させることができる。
【0026】
(第2実施例)
以下、本発明の第2実施例について図1、図4、図5及び図6を参照して説明する。尚、図1及び図9と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下、異なる部分についてのみ説明する。
図4は、診断装置について信号レベルの校正を行う状態を示したものである。校正システム51は、増幅装置23と、診断装置としてパーソナルコンピュータ52(以下、パソコン52と称す)とを備えて構成されている。パソコン52は、例えば、高速フーリエ変換処理等により振動信号の波形を解析し、その解析結果を基に回転機の異常診断を行う。尚、診断の詳細な内容については特許文献1等に開示されている。
【0027】
ここで、パソコン52の電気的構成を、本発明の要旨にかかる部分について機能ブロックで示した図5を参照して説明する。パソコン52は、CPU53(比較手段、制御手段)と、メモリ54と、音声入力端子55と、増幅回路56(増幅手段)と、A/D変換器57と、D/A変換器58と、オペアンプ59と、音声出力端子60(音声出力手段)とを備えて構成されている。
【0028】
音声入力端子55(マイク入力)は、増幅回路56に接続されており、自身に入力された信号を増幅回路56に与える。増幅回路56は、基本的に第1実施例の増幅回路27と同様に、オペアンプ61と、増幅度設定回路部62とを備えて構成されている。オペアンプ61の入力端子には、音声入力端子55からの信号が入力されるようになっていて、一方、オペアンプ61の出力端子は、A/D変換器57に接続されている。従って、オペアンプ61の入力端子に入力された信号は所定の増幅度で増幅された後、A/D変換器57へ出力される。増幅度設定回路部62は、オペアンプ61に接続されており、第1実施例の増幅度設定回路34と抵抗回路部36とを組み合わせたような構成である。そして、後述するCPU53からの増幅度制御信号によりオペアンプ61の増幅度を設定する。A/D変換器57は、入力された信号をデジタルデータに変換しCPU53に与える。
【0029】
メモリ54には、CPU53によって実行される自動校正プログラム63(コンピュータプログラム)、診断装置として動作するためのアプリケーションプログラム及びこれらのプログラムで使用されるデータ等が、図示しない記憶装置(例えば、ハードディスク)からロードされている。CPU53は、メモリ54に読出し及び書込み可能に接続されていると共に、増幅度設定回路部62に上述した増幅度制御信号を出力し、また、D/A変換器58に出力データを与える。D/A変換器58は入力されたデジタルデータをアナログ信号に変換し、オペアンプ59に出力する。オペアンプ59に入力された信号は増幅されて、音声出力端子60(スピーカ出力)を介して外部に音声信号を出力される。
そして、増幅装置23の出力端子31は、信号線L1を介してパソコン52の音声入力端子55に接続されており、パソコン52の音声出力端子60は、信号線L2を介して増幅装置23の制御入力端子45に接続されている。
【0030】
次に、第2実施例の作用について図6を参照して説明する。図6は、増幅装置23のCPU40による制御内容と、パソコン52のCPU53が実行する自動校正プログラム63とを時系列的に示すフローチャートである。尚、以降では説明を容易にするため、夫々の処理をなす主体を増幅装置23、パソコン52と記述することにする。
まず、増幅装置23は、作業者が診断装置校正モードを選択したか否かを判断する(ステップS71)。診断装置校正モードが選択されていれば(「YES」)、CPU40は、出力切替回路30を基準電圧発生回路28側に切替える(ステップS72)。そして、パソコン52から開始信号が入力されるまで待機する(ステップS73)。
【0031】
一方、パソコン52では、作業者がパソコン52にて自動校正プログラム63を起動すると、パソコン52のディスプレイには校正開始画面が表示される(ステップS74)。ここでは、例えば、校正開始ボタンが表示されており、作業者がこのボタンをマウス等によりクリックすると(「YES」)、パソコン52は、音声出力端子60を介して増幅装置23に校正を開始する旨の指令信号(開始信号)を、所定パターンの音声信号として出力する(ステップS75)。
そして、増幅装置23は、開始信号が入力されると(ステップS73、「YES」)基準電圧発生回路28に基準電圧の出力を開始させ、抵抗37a及び37bの分圧電位を増幅基準信号Sinとしてパソコン52の音声入力端子55に出力する(ステップS76)。その後は、パソコン52から終了信号が入力されるまで待機する(ステップS77)。
【0032】
一方、パソコン52に入力された増幅基準信号Sinは、増幅回路56で増幅された後、A/D変換されてCPU53に入力される(ステップS78)。そして、ステップS79〜S82では、CPU53が、メモリ54から読み出した上限値及び下限値と増幅基準信号Sinのレベル相当のデジタルデータとを比較し、その比較結果に基づいて増幅度の調整を行う。即ち、Sin<下限値であれば(ステップS79、「YES」)、増幅度設定回路部62の増幅度を1段階上昇させる(ステップS81)。また、Sin>上限値であれば(ステップS80,「YES」)、増幅度設定回路部62の増幅度を1段階下降させる(ステップS82)。
そして、下限値≦Sin≦上限値となっていれば(ステップS80、「NO」)、CPU53は、その時点で増幅度設定回路部62に設定している増幅度を維持するようにして、設定データをメモリ54に書き込んで記憶させる(ステップS83)。
【0033】
次に、CPU53は、音声出力端子60を介して増幅装置23に校正を終了する旨の指令信号(終了信号)を所定パターンの音声信号として出力する(ステップS84)。以上で、パソコン52側の自動校正プログラム63は終了する。
一方、増幅装置23は、終了信号が入力されると(ステップS77、「YES」)、出力切替回路30を増幅回路27側に切替える(ステップS85)。
最後に、増幅装置23のCPU40は、校正が完了した旨を記憶するため校正完了フラグをセットする(ステップS86)。そして、第1実施例で説明した増幅装置23側の校正が終了(増幅装置23の校正完了フラグがセットされている状態)しているか(ステップS87、「YES」)、若しくは、校正の必要がない場合は、校正処理を終了する。
【0034】
以上に説明したように第2実施例によれば、増幅装置23とパソコン52とを接続し、作業者がパソコン52において校正処理プログラムを開始させれば、増幅装置23より出力される増幅基準信号に基づいてパソコン52の校正が自動的に行われるように構成した。そのため、校正作業が容易になると共に、正確且つ短時間で校正を行うことができ、作業者の負担を軽減することができる。また、増幅装置23において、出力切替回路30を基準電圧発生回路28側と増幅回路27側とに切替えるように構成したので、増幅装置23の出力端子31を共通化することができ、増幅装置23とパソコン52との夫々において基準信号を出力、入力するための端子を増設する必要がない。さらに、パソコン52より出力される指令信号により校正を開始、終了するタイミングを制御するように構成し、音声出力端子60からの音声信号をこの指令信号として使用するようにした。即ち、パソコン52は、音声入力端子55及び音声出力端子60を備えるのが通常であるから、それらを利用することで増幅装置23を制御するための通信I/Fが不要である。
【0035】
(第3実施例)
図7及び図8は本発明の第3実施例であり、第1実施例と異なる部分についてのみ説明する。図7に示すように、第3実施例の増幅装置71は、第1実施例の増幅装置23より、入力端子24に配置されている検出スイッチ24a、校正用スイッチ100及びピークホールド回路101を削除し、擬似信号発生回路25に代わる擬似信号発生回路72及びCPU40に代わるCPU40Aを配置したものとなっている。擬似信号発生回路72は、信号設定スイッチ33により設定が行われることで、振動ピックアップ2が、基準振動台9が発生している基準振動を検出している場合に出力する振動レベルのピークに相当する電圧レベルを出力するように構成されている。
図8は、図2の一部相当図である。CPU40Aは、ステップS4を実行するとステップS7に移行し、入力切替回路26が擬似信号発生回路72側を選択するように切替える。そして、ステップS8へ進み、その後の処理は図2に示すものと同様である。
【0036】
以上に説明したように第3実施例によれば、作業者が設定スイッチ43を操作し増幅装置校正モードを選択して校正処理を開始させれば、自動的に擬似信号発生回路72からの擬似信号を使用して校正処理が行われるので、振動ピックアップ2、基準振動台9を接続せずとも増幅装置71のみで増幅度を校正することができる。そして、増幅装置71の構成をより簡単にすることができる。
【0037】
尚、本発明は、上記し、且つ図面に示す実施例にのみ限定されるものではなく、次のような変形、拡張が可能である。
増幅装置23側の校正を行った後、自動的にパソコン52側の校正を行うように移行させても良い。その場合、パソコン52より開始信号が与えられたことをトリガとして、出力切替回路30を基準電圧発生回路28側に切替えるようにしても良い。
増幅回路27の増幅度を切替える部分に、電子ボリウムを使用しても良い。
入力切替回路26の切替えを、作業者が外部スイッチを操作して行うようにしても良い。
擬似信号発生回路25及び入力切替回路26は、必要に応じて設ければ良い。
増幅装置23とパソコン52との間で行う制御を、例えば、RS−232CやUSB(Universal Serial Bus)、IrDA等の通信インターフェイスを使用して行っても良い。
出力切替回路30も、必要に応じて設ければ良く、増幅装置23を、自身の自動校正を行う機能のみ備えるように構成しても良い。
診断装置は、パーソナルコンピュータ52で構成するものに限ることなく、周波数解析装置(FFTアナライザ)を用いても良い。
検出装置は、振動ピックアップ2に限られることなく、集音マイク等でも良い。その場合、使用する検出装置に合わせて、例えば、基準信号発生装置は、基準音を発生するものを使用すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施例であり、増幅装置の電気的構成を示す機能ブロック図
【図2】校正処理の内容を示すフローチャート
【図3】増幅装置について校正を行う状態を示す図
【図4】本発明の第2実施例であり、診断装置たるパソコンについて校正を行う状態を示す図
【図5】パソコンの電気的構成を示す機能ブロック図
【図6】増幅装置の制御内容と、パソコンの処理内容とを時系列的に示すフローチャート
【図7】本発明の第3実施例であり、増幅装置の電気的構成を示す機能ブロック図
【図8】図2相当図
【図9】従来技術において回転機器の異常診断を行う状態を示した図
【図10】増幅装置の校正を行う状態を示した図
【符号の説明】
【0039】
図面中、2は振動ピックアップ(検出装置)、9は基準振動台(基準信号発生装置)、21、51は校正システム、23、71は増幅装置、24aは検出スイッチ(接続状態検出手段)、25、72は擬似信号発生回路(擬似信号発生手段)、26は入力切替回路(入力切替手段)、27、56は増幅回路(増幅手段)、28は基準電圧発生回路(増幅基準信号発生手段)、29は比較回路(比較手段)、30は出力切替回路(出力切替手段)、32は制御回路(制御手段)、52はパソコン(診断装置)、53はCPU(比較手段、制御手段)、63は自動校正プログラム(コンピュータプログラム)を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機の振動又は音響を検出して電気信号に変換する検出装置と、
前記電気信号を増幅手段により増幅する増幅装置と、
前記増幅された電気信号の波形を解析して前記回転機の異常を診断する診断装置とで構成される回転機の診断システムについて信号レベルの校正を行うものであり、
前記検出装置に対し、基準となる振動信号又は音響信号を発生させる基準信号発生装置を備え、
前記増幅装置は、
増幅基準信号を発生させる増幅基準信号発生手段と、
前記増幅基準信号のレベルと、前記増幅手段の出力信号のレベルとを比較する比較手段と、
この比較手段による比較結果に応じて前記増幅手段の増幅度を制御する制御手段とを備え、
前記増幅手段は、前記基準信号発生装置によって発生された基準信号を前記検出装置が検出している場合に、前記比較手段による比較結果に基づいて前記増幅基準信号と前記増幅手段の出力信号とが略同一のレベルになったと判断すると、その時点で前記増幅手段に設定している増幅度を保持するように構成されていることを特徴とする校正システム。
【請求項2】
前記基準信号発生装置が基準信号を発生している場合に、前記検出装置によって出力される信号を擬似的に出力する擬似信号発生手段と、
この擬似信号発生手段からの出力信号と前記検出装置からの出力信号との何れかを選択して前記増幅手段に入力するための入力切替手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載の校正システム。
【請求項3】
検出装置が接続されているか否かを検出する接続状態検出手段を備え、
前記制御手段は、校正処理を開始すると、前記接続状態検出手段が、前記検出装置が接続されている状態を検出した場合は、前記入力切替手段に前記検出装置からの出力信号を選択させるように制御し、一方、前記接続状態検出手段が、前記検出装置が接続されていない状態を検出した場合は、前記入力切替手段に前記擬似信号発生手段からの出力信号を選択させるように制御することを特徴とする請求項2記載の校正システム。
【請求項4】
回転機の振動又は音響を検出して電気信号に変換する検出装置と、
前記電気信号を増幅手段により増幅する増幅装置と、
前記増幅された電気信号の波形を解析して前記回転機の異常を診断する診断装置とで構成される回転機の診断システムについて信号レベルの校正を行うものであり、
前記増幅装置は、増幅基準信号を発生させる増幅基準信号発生手段を備え、
前記診断装置は、
前記増幅装置より出力される信号を増幅する増幅手段と、
この増幅手段の出力信号のレベルを基準レベルと比較する比較手段と、
この比較手段による比較結果に応じて前記増幅手段の増幅度を制御する制御手段とを備え、
前記増幅手段は、前記増幅装置より前記増幅基準信号が出力されている場合に、前記比較手段による比較結果に基づいて前記増幅手段の出力信号のレベルと前記基準レベルとが略同一になったと判断すると、その時点で前記増幅手段に設定している増幅度を保持するように構成されていることを特徴とする校正システム。
【請求項5】
前記増幅装置は、前記増幅基準信号発生手段からの出力信号と自身が有する増幅手段からの出力信号との何れかを選択して前記診断装置に出力するための出力切替手段を備えることを特徴とする請求項4記載の校正システム。
【請求項6】
前記増幅装置の制御手段は、前記診断装置から校正を開始する旨の指令信号を受信すると、前記出力切替手段に前記増幅基準信号発生手段からの出力信号を選択させることを特徴とした請求項5記載の校正システム。
【請求項7】
前記診断装置は、音声出力手段を備えたパーソナルコンピュータであり、
前記指令信号は、前記音声出力手段から出力される音声信号であることを特徴とする請求項6記載の校正システム。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の校正システムに使用されることを特徴とする増幅装置。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れかに記載の校正システムに使用されることを特徴とする診断装置。
【請求項10】
検出装置が回転機の振動又は音響を検出して変換した電気信号を増幅手段により増幅するもので、信号波形を解析して前記回転機の異常を診断するための診断装置に出力する増幅装置において、
前記検出手段によって出力される信号を擬似的に出力する擬似信号発生手段と、
この擬似信号発生手段からの出力信号と前記検出装置からの出力信号との何れかを選択して前記増幅手段に入力するための入力切替手段と、
増幅基準信号を発生させる増幅基準信号発生手段と、
前記増幅基準信号のレベルと、前記増幅手段の出力信号のレベルとを比較する比較手段と、
この比較手段による比較結果に応じて前記増幅手段の増幅度を制御する制御手段とを備え、
前記増幅手段は、校正処理を開始すると、前記入力切替手段に前記擬似信号発生手段からの出力信号を選択させるように制御すると共に、前記比較手段による比較結果に基づいて前記増幅基準信号と前記増幅手段の出力信号とが略同一のレベルになったと判断すると、その時点で前記増幅手段に設定している増幅度を保持するように構成されていることを特徴とする増幅装置。
【請求項11】
回転機の振動又は音響を検出して電気信号に変換する検出装置と、前記電気信号を増幅手段により増幅する増幅装置と、前記増幅された電気信号の波形を解析して前記回転機の異常を診断する診断装置とで構成される診断システムにおいて、前記診断装置を構成するコンピュータによって実行されるプログラムであって、
前記増幅装置より増幅基準信号が与えられている場合に、当該信号を増幅する増幅手段の出力信号のレベルと基準レベルとを比較させ、
その比較結果に応じて前記増幅手段の増幅度を制御させ、
前記増幅手段の出力信号レベルと前記基準レベルとが略同一になったと判断された場合に、その時点で前記増幅手段に設定させている増幅度を保持させることを特徴とするコンピュータプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−234487(P2006−234487A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47299(P2005−47299)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】