説明

校正具および拡大観察装置

【課題】拡大観察装置の校正を簡単かつ短時間で行うことを可能にする校正具および拡大観察装置を提供する。
【解決手段】校正板400は、ガラス板からなる透光性プレート420を含む。透光性プレート420は、3つの校正区域421,422,423を有する。各校正区域421,422,423は、第1の領域AR1および第2の領域AR2を含む。各校正区域421,422,423の中央に第1の領域AR1が設けられ、第1の領域AR1を取り囲むように第2の領域AR2が設けられる。第1の領域AR1には校正目盛Cが形成され、第2の領域AR2には複数のガイドマーカGMが分散して形成される。第1の領域AR1の校正目盛Cが撮像されることにより拡大観察装置の校正が行われる。第2の領域AR2の各ガイドマーカGMは、当該ガイドマーカGMから第1の領域AR1の中央部分TPに向かう方向を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、校正具および拡大観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の顕微鏡観察システムにおいて、ステージ上に載置された標本がカメラ部により撮像される。この場合、撮像された標本に対応する標本画像が生成される。標本画像における2つの地点に対応する標本の2つの地点間の実寸法が既知である場合には、その標本画像に基づいて一画素当たりの実寸法が算出される。
【0003】
上記の顕微鏡観察システムのような拡大観察装置において、上記の標本のように種々の校正を行うための校正具が用いられる。例えば、校正具には予め定められた寸法を有する目盛が設けられる。校正具の目盛が撮像装置により撮像されることにより、拡大観察装置の校正が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−258495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
拡大観察装置において、対象物の観察倍率が高くなると撮像装置の撮像範囲(視野範囲)が狭くなる。そのため、使用者は、校正具の撮像開始時に撮像装置の撮像範囲内に目盛が存在しない場合、校正具が載置されたステージを水平方向に移動させつつ校正具の目盛を探索し、その目盛を撮像装置の撮像範囲内に移動させる。
【0006】
校正具は、例えばガラス製の透明なプレート上の一部に上記の目盛が設けられた構成を有する。そのため、撮像装置の撮像範囲内に目盛が存在しない場合、使用者は撮像により得られる画像を視認しても、撮像装置の撮像範囲と目盛との位置関係を知ることはできない。したがって、使用者は目盛の探索に長い時間を要する。
【0007】
本発明の目的は、拡大観察装置の校正を簡単かつ短時間で行うことを可能にする校正具および拡大観察装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)第1の発明に係る校正具は、対象物の画像を表示する拡大観察装置に用いられる校正具であって、一面を有する基材を備え、基材の一面の一部領域に、拡大観察装置の校正に用いられる第1の指標が設けられ、基材の一面の一部領域以外の他の領域に、一部領域に向かう方向を示す第2の指標が設けられるものである。
【0009】
その校正具においては、一部領域および他の領域にそれぞれ設けられた第1および第2の指標のいずれかが拡大観察装置により撮像される。他の領域に設けられた第2の指標が撮像される場合には、第2の指標により示される方向に基づいて一部領域に設けられた第1の指標を拡大観察装置の撮像範囲内に移動させることができる。それにより、校正具の第1の指標を容易に撮像することができる。その結果、拡大観察装置の校正を簡単かつ短時間で行うことが可能となる。
【0010】
(2)第2の指標は、当該第2の指標から第1の指標までの距離に関する情報を含んでもよい。
【0011】
この場合、他の領域に設けられた第2の指標が撮像される場合に、第2の指標に含まれる距離に関する情報に基づいて第1の指標を拡大観察装置の撮像範囲内に正確に移動させることができる。その結果、拡大観察装置の校正をより短時間で行うことが可能となる。
【0012】
(3)第2の指標は、一部領域に向かう方向を示す形状を有してもよい。
【0013】
この場合、第2の指標の形状に基づいて第2の指標から第1の指標に向かう方向を容易に認識することができる。
【0014】
(4)第2の指標は、他の領域に分散的に複数設けられてもよい。
【0015】
この場合、拡大観察装置による撮像範囲内に少なくとも1つの第2の指標が存在する確立が高くなる。それにより、第1または第2の指標を探索するための作業時間が短縮される。その結果、第1の指標を拡大観察装置の撮像範囲内に短時間で移動させることができる。
【0016】
(5)基材の一面は、拡大観察装置の複数種類の校正にそれぞれ対応した複数の区域を有し、複数の区域の各々における一部領域に第1の指標が設けられ、複数の区域の各々における一部領域以外の他の領域に第2の指標が設けられ、各区域の第1の指標は、対応する種類の校正に用いられるように設けられてもよい。
【0017】
この場合、複数の区域のうちいずれかの区域の第1の指標が撮像されることにより、その区域に対応する種類の校正が可能となる。また、複数の区域のうち他の区域の第1の指標が撮像されることにより、その区域に対応する種類の構成が可能となる。したがって、校正の種類ごとに複数の校正具を用意する必要がなくなる。
【0018】
(6)第2の発明に係る拡大観察装置は、観察対象物の画像を表示する拡大観察装置であって、観察対象物または第1の発明に係る校正具が載置可能なステージと、観察対象物または校正具を撮像することにより撮像範囲の画像を表示するための画像データを生成する撮像装置と、撮像装置の光軸と垂直な方向におけるステージと撮像装置との相対的な位置関係を変更することにより撮像範囲をステージ上で移動させる移動部と、ステージに校正具が載置された場合に、撮像装置により生成される画像データに基づいて校正具の第2の指標が示す方向に従って撮像範囲が一部領域に移動するように移動部を制御する制御部とを備えるものである。
【0019】
その拡大観察装置においては、ステージに載置された観察対象物または校正具が撮像装置により撮像され、撮像範囲の画像を表示するための画像データが生成される。ステージに校正具が載置された状態で校正具の他の領域に設けられた第2の指標が撮像された場合、生成される画像データに基づいて校正具の第2の指標が示す方向に従って撮像範囲が一部領域に移動される。それにより、第1の指標が撮像範囲内に移動する。撮像範囲内の第1の指標が撮像されることにより、拡大観察装置の校正が可能となる。
【0020】
これにより、使用者は、拡大観察装置の校正時に、撮像装置により校正具の第1の指標を探索するための操作を行う必要がない。その結果、使用者は、拡大観察装置の校正を簡単かつ短時間で行うことができる。
【0021】
(7)制御部は、ステージに上記の複数の区域を有する基材を備える校正具が載置された状態で複数種類の校正のうち一の種類の校正が行われる場合に、撮像範囲が校正具の一の種類に対応する区域に移動するように移動部を制御してもよい。
【0022】
この場合、使用者は、撮像範囲を校正具の一の種類に対応する区域に移動させるための操作を行う必要がない。その結果、使用者は、拡大観察装置に複数種類のうち所望の種類の校正を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、拡大観察装置の校正を簡単かつ短時間で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施の形態に係る拡大観察装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態に係る拡大観察装置の顕微鏡を示す斜視図である。
【図3】顕微鏡の撮像装置がZ方向と平行に固定されている状態を示す模式図である。
【図4】顕微鏡の撮像装置がZ方向から所望の角度まで傾斜された状態を示す模式図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る校正板の平面図である。
【図6】図5の校正区域の一部拡大平面図である。
【図7】図1の拡大観察装置の校正処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施の形態に係る校正具および拡大観察装置について図面を参照しながら説明する。
【0026】
(1)拡大観察装置の構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る拡大観察装置の構成を示すブロック図である。
【0027】
以下において、水平面内で直交する2方向をX方向およびY方向とし、X方向およびY方向に垂直な方向(鉛直方向)をZ方向とする。
【0028】
図1に示すように、拡大観察装置300は、顕微鏡100および画像処理装置200を備える。
【0029】
顕微鏡100は、撮像装置10、ステージ装置20および回転角度センサ30を含む。撮像装置10は、カラーCCD(電荷結合素子)11、ハーフミラー12、対物レンズ13、ズーム調整部13a、レンズ検出部13b、A/D変換器(アナログ/デジタル変換器)15、落射照明用光源16、レンズ駆動部17および透過照明用光源26を含む。ステージ装置20は、ステージ21、ステージ駆動部22およびステージ支持部23を含む。ステージ21上には、観察対象物Sが載置される。
【0030】
落射照明用光源16は、例えば白色光を発生するハロゲンランプまたは白色LED(発光ダイオード)である。落射照明用光源16により発生された白色光は、ハーフミラー12により反射された後、対物レンズ13によりステージ21上の観察対象物Sに集光される。
【0031】
透過照明用光源26は、例えば白色光を発生するハロゲンランプまたは白色LEDである。透過照明用光源26は、ステージ支持部23の内部に設けられる。後述するステージ21の開口部21b(図2)に透光性の載置プレート21c(図2)が取り付けられている場合、透過照明用光源26により発生された白色光は、載置プレート21cを通して観察対象物Sに照射される。
【0032】
観察対象物Sにより反射された白色光または観察対象物Sを透過した白色光は、対物レンズ13およびハーフミラー12を透過してカラーCCD11に入射する。カラーCCD11は複数の画素を有する。各画素は、赤色波長の光、緑色波長の光、および青色波長の光をそれぞれ受光する3種類の副画素から構成される。複数の画素が一定の画素ピッチ(隣り合う各2つの画素の中心間の距離)で二次元的に配列される。カラーCCD11の各画素からは、受光量に対応する電気信号が出力される。カラーCCD11の出力信号は、A/D変換器15によりデジタル信号に変換される。A/D変換器15から出力されるデジタル信号は、画像データとして画像処理装置200に順次与えられる。カラーCCD11に代えてCMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサ等の撮像素子が用いられてもよい。
【0033】
撮像装置10においては、対物レンズ13が着脱可能に設けられる。対物レンズ13としては、広角ズームレンズ、標準ズームレンズ等の種々のレンズを用いることができる。複数種類のレンズのうちのいずれかが対物レンズ13として撮像装置10に取り付けられる。ズーム調整部13aは画像処理装置200の制御により対物レンズ13の倍率を変化させる。レンズ検出部13bは対物レンズ13の倍率を検出し、検出結果を画像処理装置200に与える。これにより、対物レンズ13の倍率は画像処理装置200により一定範囲内で任意の倍率に調整可能である。なお、使用者がズーム調整部13aを操作することにより対物レンズ13の倍率が調整されてもよい。この場合、調整された対物レンズ13の倍率が、レンズ検出部13bにより検出され、画像処理装置200に与えられる。
【0034】
また、レンズ検出部13bは、対物レンズ13の種類を検出し、検出結果を画像処理装置200に与える。例えば、レンズ検出部13bは、対物レンズ13の種類として、撮像装置10に取り付けられている対物レンズ13が低倍ズームレンズ、標準ズームレンズおよび高倍ズームレンズのいずれであるかを検出するとともに、検出されたズームレンズの調整可能な倍率の範囲を検出する。
【0035】
対物レンズ13は、Z方向に移動可能に設けられる。レンズ駆動部17は、画像処理装置200の制御により対物レンズ13をZ方向に移動させる。それにより、撮像装置10の焦点位置がZ方向において移動する。
【0036】
ステージ21は、Z方向の軸の周りで回転可能にステージ支持部23上に設けられる。ステージ駆動部22は、画像処理装置200から与えられる移動指令信号(駆動パルス)に基づいてステージ21をステージ支持部23に対して相対的に後述するx方向およびy方向に移動させる。ステージ駆動部22には、ステッピングモータが用いられる。回転角度センサ30は、ステージ21の回転角度を検出し、検出した角度を示す角度検出信号を画像処理装置200に与える。画像処理装置200においては、移動指令信号に対するステージ駆動部22からの応答信号および回転角度センサ30からの角度検出信号に基づいて、X方向およびY方向におけるステージ21の位置および回転角度が取得される。
【0037】
画像処理装置200は、インタフェース210、CPU(中央演算処理装置)220、ROM(リードオンリメモリ)230、記憶装置240、入力装置250、表示部260および作業用メモリ270を含む。
【0038】
ROM230には、システムプログラムが記憶される。記憶装置240は、ハードディスク等からなる。記憶装置240には、画像処理プログラムおよび校正プログラムが記憶されるとともに、顕微鏡100からインタフェース210を通して与えられる画像データ等の種々のデータを記憶する。校正プログラムの詳細は後述する。入力装置250は、キーボードおよびポインティングデバイスを含む。ポインティングデバイスとしては、マウスまたはジョイスティック等が用いられる。
【0039】
表示部260は、例えば液晶ディスプレイパネルまたは有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルにより構成される。
【0040】
作業用メモリ270は、RAM(ランダムアクセスメモリ)からなり、種々のデータの処理のために用いられる。
【0041】
CPU220は、記憶装置240に記憶された画像処理プログラムまたは校正プログラムを実行することにより作業用メモリ270を用いて画像データに基づく画像処理を行うとともに、画像データに基づく画像を表示部260に表示させる。また、CPU220は、インタフェース210を通して顕微鏡100のカラーCCD11、ズーム調整部13a、落射照明用光源16、レンズ駆動部17、ステージ駆動部22および透過照明用光源26を制御する。
【0042】
図2は、第1の実施の形態に係る拡大観察装置300の顕微鏡100を示す斜視図である。図2においては、X方向、Y方向およびZ方向が矢印で示される。
【0043】
図2に示すように、顕微鏡100はベース1を有する。ベース1上には、第1の支持台2が取り付けられるとともに、この第1の支持台2の前面に嵌め込まれるように第2の支持台3が取り付けられる。
【0044】
第1の支持台2の上端部には、連結部4がY方向に延びる回動軸R1の周りに回動可能に取り付けられる。連結部4には回動支柱5が取り付けられる。それにより、回動支柱5は連結部4の回動に伴って回動軸R1を支点としてZ方向に平行な垂直面内で傾斜可能である。使用者は、固定つまみ9により連結部4を第1の支持台2に対して固定することができる。
【0045】
連結部6の前面には環状の支持部7が取り付けられる。支持部7には、略円筒状の撮像装置10が取り付けられる。図2の状態では、撮像装置10の光軸R2はZ方向に平行である。支持部7は、撮像装置10を水平面内で移動させるための複数の調整ネジ41を有する。複数の調整ネジ41を用いて撮像装置10の光軸R2が回動軸R1に垂直に交差するように撮像装置10の位置を調整することができる。
【0046】
ベース1上の第2の支持台3の前面には、Z方向に摺動可能にスライダ8が取り付けられる。第2の支持台3の側面には、調整つまみ42が設けられる。スライダ8のZ方向(高さ方向)の位置は、調整つまみ42により調整可能である。
【0047】
ステージ装置20のステージ支持部23は、スライダ8上に取り付けられる。ステージ21は、ステージ支持部23に対してZ方向の回転軸R3の周りに回転可能に設けられる。また、ステージ21には、水平面内で互いに直交するx方向およびy方向が設定される。ステージ21は、図1のステージ駆動部22によりx方向およびy方向に移動可能に設けられる。ステージ21が回転軸R3の周りに回転すると、ステージ21のx方向およびy方向も回転する。それにより、ステージ21のx方向およびy方向は、X方向およびY方向に対して水平面内で傾斜する。
【0048】
ステージ21の中央には円形状の開口部21bが形成されている。その開口部21bを覆うように円形状の載置プレート21cが着脱可能にステージ21に取り付けられる。載置プレート21cとしては、遮光性の載置プレートおよび透光性の載置プレートを選択的に用いることができる。反射光により観察対象物Sが観察される場合には、遮光性の載置プレートが用いられる。透過光により観察対象物Sが観察される場合には、透光性の載置プレートが用いられる。
【0049】
ステージ21の開口21bには、上記の載置プレート21cに代えて後述する校正板400(図5)を取り付けることができる。
【0050】
撮像装置10の撮像範囲(視野範囲)は、撮像装置10の倍率により異なる。以下、撮像装置10の撮像範囲を単位領域と呼ぶ。ステージ21をx方向およびy方向に移動させることにより複数の単位領域の画像データを取得することができる。複数の単位領域の画像データを連結することにより複数の単位領域の画像を図1の表示部260に表示することができる。このように、本実施の形態では撮像装置10の撮像範囲を単位領域と呼ぶが、単位領域は必ずしも撮像装置10の撮像範囲でなくてもよい。例えば、撮像装置10の撮像範囲内の一部の領域を単位領域としてもよい。この場合、単位領域は撮像装置10の撮像範囲よりも小さくなる。
【0051】
図3は顕微鏡100の撮像装置10がZ方向と平行に固定されている状態を示す模式図である。また、図4は顕微鏡100の撮像装置10がZ方向から所望の角度まで傾斜された状態を示す模式図である。
【0052】
図3に示すように、回動支柱5がZ方向に平行な状態で固定つまみ9を締めることにより連結部4が第2の支持台3に固定される。それにより、撮像装置10の光軸R2がZ方向に平行な状態で回動軸R1に垂直に交差する。この場合、撮像装置10の光軸R2はステージ21の表面に垂直となる。
【0053】
固定つまみ9を緩めることにより連結部4が回動軸R1の周りに回動可能となり、回動支柱5が回動軸R1を支点として傾斜可能となる。それにより、図4に示すように、撮像装置10の光軸R2をZ方向に対して任意の角度θ傾斜させることができる。この場合、撮像装置10の光軸R2は回動軸R1に垂直に交差する。同様にして、撮像装置10の光軸R2をZ方向に対して図4と逆側に任意の角度傾斜させることができる。
【0054】
したがって、ステージ21上の観察対象物の表面の高さを回動軸R1の高さに一致させることにより、観察対象物の同じ部分を垂直な方向および斜め方向から観察することができる。
【0055】
(2)校正板
本実施の形態において、拡大観察装置300の校正とは、対物レンズ13の倍率が任意の倍率に設定された状態で、観察対象物Sの観察前に図1のカラーCCD11の画素ピッチに対応する観察対象物Sの実寸法(以下、画素寸法と呼ぶ。)を算出することをいう。これにより、図1の表示部260に表示される観察対象物Sの画像に基づいて観察対象物Sの所望の部分の実寸法を正確に算出することができる。
【0056】
図5は、本発明の一実施の形態に係る校正板400の平面図である。図5に示すように、この校正板400は、枠部材410および透光性プレート420により構成される。
【0057】
枠部材410は、例えば円形状の金属板の中央に矩形の開口部410hが形成された構成を有する。透光性プレート420は、例えば矩形のガラス板からなり、枠部材410の開口部410hに嵌め込み可能に構成される。透光性プレート420は一面および他面を有する。
【0058】
透光性プレート420の一面は、3つの校正区域421,422,423を有する。校正区域421は、透光性プレート420の約半分の大きさを有し、透光性プレート420の一辺から略中央までの範囲に渡って設けられる。校正区域422,423は、それぞれ透光性プレート420の約1/4の大きさを有する。校正区域422,423は、それぞれ校正区域421に隣接しかつ互いに隣接するように設けられる。
【0059】
拡大観察装置300においては、図1の対物レンズ13の種類にそれぞれ対応する複数種類の校正が行われる。3つの校正区域421,422,423は、拡大観察装置300の複数種類の校正にそれぞれ対応付けられる。
【0060】
例えば、校正区域421は、撮像装置10に設けられる対物レンズ13が20倍よりも大きく100倍以下の範囲で倍率を変化させることが可能な標準ズームレンズであるときの拡大観察装置300の校正(以下、低倍率校正と呼ぶ。)に対応付けられる。
【0061】
校正区域422は、撮像装置10に設けられる対物レンズ13が100倍よりも大きく500倍以下の範囲で倍率を変化させることが可能な標準ズームレンズであるときの拡大観察装置300の校正(以下、中倍率校正と呼ぶ。)に対応付けられる。
【0062】
校正区域423は、撮像装置10に設けられる対物レンズ13が500倍よりも大きく2500倍以下の範囲で倍率を変化させることが可能な標準ズームレンズであるときの拡大観察装置300の校正(以下、高倍率校正と呼ぶ。)に対応付けられる。
【0063】
上記のように、透光性プレート420の一面が、低倍率校正、中倍率校正および高倍率校正にそれぞれ対応する3つの校正区域421,422,423を有する。この場合、拡大観察装置300の校正の種類ごとに複数の校正板を用意する必要がない。
【0064】
各校正区域421,422,423は、第1の領域AR1および第2の領域AR2を含む。各校正区域421,422,423の中央に第1の領域AR1が設けられる。また、各校正区域421,422,423においては、第1の領域AR1を取り囲むように第2の領域AR2が設けられる。
【0065】
図5の校正区域421に示すように、第1の領域AR1に校正目盛Cが形成され、第2の領域AR2に複数のガイドマーカGMがほぼマトリクス状に並ぶように分散して形成される。校正目盛Cおよび複数のガイドマーカGMは、例えば透光性プレート420の一面上にクロム膜を蒸着させることにより形成される。図5では、校正区域422,423における校正目盛Cおよび複数のガイドマーカGMの図示を省略する。
【0066】
3つの校正区域421,422,423にそれぞれ形成される校正目盛Cおよび複数のガイドマーカGMの大きさは、3つの校正区域421,422,423にそれぞれ対応付けられた校正の種類に応じてそれぞれ適切に定められる。
【0067】
例えば、低倍率校正に対応する校正区域421の校正目盛Cおよび複数のガイドマーカGMのそれぞれの面積は中倍率校正に対応する校正区域422の校正目盛Cおよび複数のガイドマーカGMのそれぞれの面積よりも大きく、中倍率校正に対応する校正区域422の校正目盛Cおよび複数のガイドマーカGMのそれぞれの面積は高倍率校正に対応する校正区域423の校正目盛Cおよび複数のガイドマーカGMのそれぞれの面積よりも大きい。
【0068】
また、第2の領域AR2において、互いに隣接する各2つのガイドマーカGM間の間隔も3つの校正区域421,422,423にそれぞれ対応付けられた対物レンズ13の倍率範囲に応じてそれぞれ適切に定められる。例えば、校正区域421において互いに隣接する各2つのガイドマーカGM間の間隔は校正区域422において互いに隣接する各2つのガイドマーカGM間の間隔よりも大きく、校正区域422において互いに隣接する各2つのガイドマーカGM間の間隔は校正区域423において互いに隣接する各2つのガイドマーカGM間の間隔よりも大きい。
【0069】
校正区域421の校正目盛Cおよび複数のガイドマーカGMについて詳細を説明する。なお、校正目盛Cの面積の大きさ、複数のガイドマーカGMの面積の大きさ、および複数のガイドマーカGMの配置間隔を除き、校正区域422,423の校正目盛Cおよび複数のガイドマーカGMは、それぞれ校正区域421の校正目盛Cおよび複数のガイドマーカGMと同じ構成を有する。
【0070】
図6は、図5の校正区域421の一部拡大平面図である。図6に示すように、第1の領域AR1に形成される校正目盛Cは、複数本の校正用ラインCaおよび2本の倍率提示用ラインCbを含む。
【0071】
複数本の校正用ラインCaは、予め定められた一定の間隔で一方向に配列されている。拡大観察装置300の校正時には、複数本の校正用ラインCaが撮像されることにより、互いに隣接する各2つの校正用ラインCa間の実寸法に基づいて上記の画素寸法が算出される。以下では、複数本の校正用ラインCaの配列方向を第1方向と呼び、校正区域421上で第1方向に直交する方向を第2方向と呼ぶ。
【0072】
2本の倍率提示用ラインCbは、複数本の校正用ラインCaに近接する位置で、上記の第1方向に平行に延びるように配置されている。
【0073】
本例では、倍率提示用ラインCbの数が当該校正目盛Cに対応する拡大観察装置300の校正の種類を示す。例えば、図6の2本の倍率提示用ラインCbは、その校正目盛Cが低倍率校正に対応することを示す。この場合、3本の倍率提示用ラインCbが中倍率校正に対応し、4本の倍率提示用ラインCbが高倍率校正に対応してもよい。
【0074】
第2の領域AR2に形成される複数のガイドマーカGMは、それぞれ略長方形状を有する。各ガイドマーカGMの一端部は尖るように形成されている。以下、尖るように形成された各ガイドマーカGMの一端部を先端部と呼ぶ。
【0075】
複数のガイドマーカGMは、先端部が第1の領域AR1の中央部分TPに向かうようにそれぞれ設けられる。これにより、第2の領域AR2においては、各ガイドマーカGMの先端部の形状により、各ガイドマーカGMから第1の領域AR1の中央部分TPに向かう方向が示される。図6の第2の領域AR2においては、第1の領域AR1の中央部分TPに向かう方向が第1方向または第2方向に平行に示される。
【0076】
各ガイドマーカGMには、当該ガイドマーカGMから第1の領域AR1の中央部分TPまでの距離を示す二次元コードが含まれる。図6の例では、第1方向に平行な各ガイドマーカGMに、第1方向における当該ガイドマーカGMから第1の領域AR1の中央部分TPまでの距離を示す二次元コードが含まれる。一方、第2方向に平行な各ガイドマーカGMに、第2方向における当該ガイドマーカGMから第1の領域AR1の中央部分TPまでの距離を示す二次元コードが含まれる。
【0077】
(3)拡大観察装置の校正処理フロー
図1の拡大観察装置300においては、図5の校正板400を用いることにより、以下の手順で校正処理が行われる。図7は図1の拡大観察装置300の校正処理を示すフローチャートである。
【0078】
初期の状態では、図1の落射照明用光源16が白色光を発生し(発光状態)、図1の透過照明用光源26が白色光を発生しない(消灯状態)。また、図2のステージ21の開口21bに、載置プレート21cに代えて校正板400が取り付けられる。この状態で、例えば使用者により表示部260に表示される図示しない校正ボタンが操作される。それにより、図1の記憶装置240に記憶される校正プログラムに従って以下の校正処理が実行される。
【0079】
上述のように、本実施の形態において、校正板400は透光性プレート420上に校正目盛Cが形成された構成を有する。そこで、CPU220は、まず照明の切り替えを行う(ステップS11)。本例では、CPU220は、図1の落射照明用光源16を消灯状態にし、図1の透過照明用光源26を発光状態にする。初期状態で落射照明用光源16が消灯状態でありかつ透過照明用光源26が発光状態である場合、CPU220は上記のステップS11の処理を行わなくてもよい。
【0080】
ステップS11の処理時に、CPU220は、照明の切り替え処理とともに校正板400の少なくとも一部が撮像されることにより生成される画像データに基づいて拡大観察装置300の撮像条件の自動設定を行ってもよい。例えば、CPU220は、拡大観察装置300の撮像条件の自動設定として、カラーCCD11のゲイン、露光時間、ホワイトバランス、透過照明用光源26の光量、図示しない絞りの開度、および図示しないフィルタの透過率の等種々の自動設定を行ってもよい。
【0081】
続いて、CPU220は、図1のレンズ検出部13bから対物レンズ13の倍率および種類についての検出結果を取得する(ステップS12)。本例では、図1のステージ21の開口21bに取り付けられる校正板400の位置および方向が予め定められている。また、図1の記憶装置240には、拡大観察装置300の複数種類の校正にそれぞれ対応する複数の校正区域421,422,423(図5)の位置が位置情報として予め記憶されている。
【0082】
CPU220は、取得された対物レンズ13の倍率および種類に対応する拡大観察装置300の校正の種類を識別し、記憶装置240に記憶された位置情報に基づいて、識別した校正の種類に対応する校正区域(以下、対応校正区域と呼ぶ。)の少なくとも一部が撮像されるようにステージ21を移動させる(ステップS13)。
【0083】
上記のように、校正板400の複数の校正区域421,422,423においては、第1の領域AR1に校正目盛Cが形成され、第2の領域AR2に複数のガイドマーカGMが形成される。
【0084】
したがって、ステップS13においては、対応校正区域内の校正目盛Cおよび複数のガイドマーカGMのうちの少なくとも一部が撮像装置10の撮像範囲内に存在する。
【0085】
そこで、CPU220は、校正目盛Cおよび複数のガイドマーカGMのうちの少なくとも一部が撮像されることにより生成される画像データに基づいて、対物レンズ13のZ方向の位置(以下、Z位置と呼ぶ。)の自動設定を行う(ステップS14)。
【0086】
対物レンズ13のZ位置の自動設定は例えば次のように行われる。CPU220は、対応校正区域と対物レンズ13とが対向する状態で、図1のレンズ駆動部17を制御することにより対物レンズ13をZ方向に移動させ、対物レンズ13の焦点位置をZ方向において移動させつつ対応校正区域の少なくとも一部を撮像する。このとき、CPU220は、A/D変換器15から与えられる画像データに基づいて対物レンズ13の焦点が撮像された校正目盛Cまたは複数のガイドマーカGMに一致するときの対物レンズ13のZ位置(以下、合焦点位置と呼ぶ。)を検出する。その後、CPU220は、対物レンズ13を検出した合焦点位置に移動させる。このようにして、撮像時の対物レンズ13のZ位置が合焦点位置に設定される。
【0087】
続いて、CPU220は、対物レンズ13のZ位置が合焦点位置にある状態で、校正板400の撮像を行う(ステップS15)。CPU220は、撮像により生成される画像データに基づいて、対応校正区域の校正目盛C(図6)が撮像されたか否かを判定する。
【0088】
校正目盛Cが撮像されなかった場合、CPU220は、撮像により生成される画像データに基づいて、対応校正区域の複数のガイドマーカGM(図6)のうちのいずれかが撮像されたか否かを判定する(ステップS17)。
【0089】
複数のガイドマーカGMのうちのいずれかが撮像された場合、CPU220は、撮像されたガイドマーカGMの形状に基づいて当該ガイドマーカGMから第1の領域AR1(図6)の中央部分TP(図6)に向かう方向を識別する。また、CPU220は、撮像されたガイドマーカGMの二次元コードに基づいて中央部分TPに向かう方向における当該ガイドマーカGMから第1の領域AR1の中央部分TPまでの距離を識別する。このようにして、CPU220は、撮像されたガイドマーカGMにより示される方向および距離を識別し、識別した方向および距離に基づいて、撮像装置10による撮像範囲が第1の領域AR1の中央部分TPに一致するようにまたは近づくようにステージ21を移動させる(ステップS18)。その後、CPU220は、ステップS14の処理に戻る。
【0090】
上記のステップS16において、校正目盛Cが撮像された場合、CPU220は、撮像された校正目盛Cの画像データに基づいて拡大観察装置300の校正を行う(ステップS20)。
【0091】
本例では、拡大観察装置300の校正は例えば次のように行われる。まず、撮像装置10により校正目盛Cが撮像され、校正目盛Cに対応する画像データが生成される。CPU220は、図1のカラーCCD11の画素ごとの画像データの値(明るさまたはコントラストを示す値等)に基づいて、複数本の校正用ラインCaのうち隣り合う各2本の校正用ラインCa間の実寸法に対応するカラーCCD11の画素数を検出する。次に、CPU220は、各2本の校正用ラインCa間の実寸法を検出された画素数で除算する。CPU220は、複数の除算結果の平均値を上記の画素寸法として算出する。その後、拡大観察装置300の校正処理が終了する。
【0092】
上記のステップS17において、複数のガイドマーカGMのいずれも撮像されない場合には、対応校正区域が撮像装置10の撮像範囲内に存在しないと考えられる。この場合、CPU220は、拡大観察装置300の校正を行うことなく校正処理を終了する。このとき、CPU220は、拡大観察装置300の校正が失敗したことを示す情報を図1の表示部260に表示させてもよい。それにより、使用者は、拡大観察装置300の校正の失敗を容易に認識することができる。
【0093】
(4)効果
(4−1)校正板に関して
拡大観察装置300の校正開始時に、校正板400の第1の領域AR1および第2の領域AR2にそれぞれ設けられた校正目盛Cおよび複数のガイドマーカGMのいずれかが撮像装置10により撮像される。各ガイドマーカGMにおいては、先端部の形状により当該ガイドマーカGMから第1の領域AR1の中央部分TPに向かう方向が示される。また、各ガイドマーカGMには、当該ガイドマーカGMから第1の領域AR1の中央部分TPまでの距離を示す情報として二次元コードが含まれる。
【0094】
これにより、第2の領域AR2に設けられた複数のガイドマーカGMのうちの少なくとも1つが撮像される場合には、撮像されたガイドマーカGMが示す方向およびガイドマーカGMに含まれる二次元コードに基づいて、第1の領域AR1の中央部分TPに設けられた校正目盛Cを撮像装置10の撮像範囲内に正確に移動させることができる。それにより、校正板400の校正目盛Cを容易に撮像することができる。その結果、拡大観察装置300の校正を簡単かつ短時間で行うことが可能となる。
【0095】
校正板400の各校正区域421,422,423において、第2の領域AR2は第1の領域AR1に比べて大きい面積を有する。第2の領域AR2では、複数のガイドマーカGMが分散的に配置されている。これにより、拡大観察装置300の校正の開始時に校正板400の位置決めを行う場合、または上記のステップS13でステージ21が移動した場合に少なくとも1つのガイドマーカGMが撮像装置10の撮像範囲内に存在する確立が高くなる。それにより、校正目盛Cを撮像装置10の撮像範囲内に短時間で移動させることができる。また、拡大観察装置300の校正の失敗も低減される。
【0096】
校正目盛Cを各校正区域421,422,423の全面に形成した場合には、対応校正区域の少なくとも一部が撮像されることにより、ステージ21の移動を行うことなく拡大観察装置300の校正を行うことができる。この場合、高い寸法精度が要求される校正目盛Cを広範囲に形成する必要があるため、校正板の製造時に校正目盛Cの寸法および配置間隔についての製品検査を高精度で行なわなければならない。その結果、校正板が高価になる。
【0097】
図5の校正板400に形成される複数のガイドマーカGMには高い寸法精度が要求されない。この場合、校正板400の製造時に、複数のガイドマーカGMの寸法および配置間隔についての製品検査を高精度で行う必要がない。そのため、校正目盛Cを各校正区域421,422,423の全面に形成する場合に比べて校正板400の製造コストが十分に低減される。
【0098】
校正目盛Cが撮像装置10の撮像範囲内に存在しない場合でも、少なくとも1つのガイドマーカGMが撮像装置10の撮像範囲内に存在する場合には、撮像されたガイドマーカGMに対応する画像データに基づいて対物レンズ13のZ位置を合焦点位置に容易に設定することができる。
【0099】
(4−2)拡大観察装置に関して
上記の拡大観察装置300においては、ステージ21に校正板400が取り付けられた状態で、第2の領域AR2の複数のガイドマーカGMの少なくとも1つが撮像されることにより、生成される画像データに基づいて撮像されたガイドマーカGMが示す方向に従って撮像装置10の撮像範囲が第1の領域AR1の中央部分TPに移動される。その後、拡大観察装置300の校正が行われる。
【0100】
これにより、使用者は、拡大観察装置300の校正時に校正板400の校正目盛Cを探索する操作を行う必要がない。したがって、使用者は、拡大観察装置300の校正を簡単かつ短時間で行うことができる。
【0101】
上記のように、校正板400は、複数種類の校正にそれぞれ対応する複数の校正区域421,422,423を有する。また、拡大観察装置300の記憶装置240には、複数種類の校正にそれぞれ対応する複数の校正区域421,422,423の位置が位置情報として予め記憶されている。それにより、拡大観察装置300の校正時には、対物レンズ13の倍率および種類に基づいて拡大観察装置300の校正の種類が識別され、識別された校正の種類に対応する対応校正区域の少なくとも一部が撮像されるようにステージ21が移動される。
【0102】
この場合、使用者は、撮像装置10の撮像範囲を対応校正区域に移動させるための操作を行う必要がない。その結果、使用者は、拡大観察装置300に複数種類のうち所望の種類の校正を容易に行うことができる。
【0103】
(5)他の実施の形態
(5−1)上記の実施の形態において、各ガイドマーカGMは、必ずしも当該ガイドマーカGMから第1の領域AR1の中央部分TPまでの距離を示す情報を含まなくてもよい。例えば、CPU220は、図7のステップS17で複数のガイドマーカGMのうちのいずれかが撮像された場合に、ステップS18の処理を行う代りに、撮像装置10による撮像範囲が撮像されたガイドマーカGMにより示される方向に一単位領域分移動するようにステージ21を移動させてもよい。その後、CPU220はステップS14の処理に戻ってもよい。このようにして、ステップS14から一単位領域分のステージ21の移動動作までの上記の一連の処理が繰り返されることにより、最終的に第1の領域AR1の中央部分TPが確実に撮像される。
【0104】
上記のように、各ガイドマーカGMが距離を示す情報を含まない場合、ガイドマーカGMを単純な一定形状にすることができる。これにより、校正板400におけるガイドマーカGMの形成が容易となり、校正板400の製造コストが低減される。
【0105】
(5−2)上記の実施の形態において、図6の複数のガイドマーカGMがそれぞれ示す方向は、複数本の校正用ラインCa(図6)の配列方向である第1方向および第1方向に直交する第2方向のいずれかの方向と平行な方向に限られる。すなわち、図6の例では、複数のガイドマーカGMが90度の角度間隔で第1の領域AR1の中央部分TPに向かう方向を示す。
【0106】
これに限らず、複数のガイドマーカGMは、45°の角度間隔で第1の領域AR1の中央部分TPに向かう方向を示してもよいし、30°または15°の角度間隔で第1の領域AR1の中央部分TPに向かう方向を示してもよい。このように、複数のガイドマーカGMはそれぞれ任意の角度間隔で方向を示してもよい。
【0107】
(5−3)図5および図6の例では、第2の領域AR2に形成される各ガイドマーカGMは、略長方形状を有し、各ガイドマーカGMの一端部は尖るように形成されている。これに限らず、各ガイドマーカGMは、第1の領域AR1の中央部分TPに向かう方向を示すことができるのであれば、矢印形状を有してもよい。また、各ガイドマーカGMは第1の領域AR1の中央部分TPに向かう方向を示す二次元コードで構成されてもよいし、上、下、右および左等の文字で構成されてもよい。
【0108】
(5−4)図5および図6の例では、第2の領域AR2に形成される各ガイドマーカGMには、当該ガイドマーカGMから第1の領域AR1の中央部分TPまでの距離を示す二次元コードが含まれる。
【0109】
これに限らず、各ガイドマーカGMから第1の領域AR1の中央部分TPまでの距離は、各ガイドマーカGMの面積の大きさまたは長さにより示されてもよい。例えば、複数のガイドマーカGMがそれぞれ矢印で示される場合には、第1の領域AR1の中央部分TPに近づくほど矢印の長さを大きくし、第1の領域AR1の中央部分TPから遠ざかるほど矢印の長さを小さくしてもよい。
【0110】
さらに、各ガイドマーカGMから第1の領域AR1の中央部分TPまでの距離は、各ガイドマーカGM内または各ガイドマーカGMの近傍に距離を示す数字を付加することにより示されてもよい。
【0111】
(5−5)上記の実施の形態において、複数のガイドマーカGMは、それぞれ対応付けられた拡大観察装置300の校正の種類を示す情報をさらに含んでもよい。この場合、CPU220は、複数のガイドマーカGMの少なくとも1つが撮像されることにより生成される画像データに基づいて、現在の撮像装置10の撮像範囲が複数の校正区域のうちのいずれの校正区域に位置するかを容易に識別することができる。
【0112】
(5−6)図5および図6の校正板400では、透光性プレート420の一面上に校正目盛Cおよび複数のガイドマーカGMが形成される。これに限らず、遮光性プレートに校正目盛Cおよび複数のガイドマーカGMが形成されてもよい。この場合、図1の透過照明用光源26を発光状態にし、図1の落射照明用光源16を消灯状態にする代わりに、落射照明用光源16を発光状態にし、透過照明用光源26を消灯状態にし、校正板400からの反射光に基づいて拡大観察装置300の校正を行ってもよい。
【0113】
(5−7)上記では、図1のCPU220により拡大観察装置300の校正処理が行われる例を説明したが、これに限らず図7のステップS11〜S18の処理が、使用者による拡大観察装置300の操作により行われもよい。
【0114】
例えば、使用者は、校正板400を撮像することにより表示部260に表示される画像に基づいて校正目盛Cの探索を行う。この場合、ガイドマーカGMは、当該ガイドマーカGMの形状または文字により第1の領域AR1の中央部分TPに向かう方向を示すことが好ましい。また、この場合、ガイドマーカGMは、当該ガイドマーカGMの面積の大きさ、長さまたは文字により当該ガイドマーカGMから第1の領域AR1の中央部分TPまでの距離を示すことが好ましい。これにより、使用者は、校正目盛Cの探索時に、表示部260に表示される各ガイドマーカGMの画像を視認することにより、各ガイドマーカGMから第1の領域AR1の中央部分TPに向かう方向および各ガイドマーカGMから第1の領域AR1の中央部分TPまでの距離を容易に認識することができる。
【0115】
(5−8)上記の実施の形態では、拡大観察装置300の複数種類の校正として、低倍率校正、中倍率校正および高倍率校正について説明した。これに限らず、拡大観察装置300の複数種類の校正のうちの一つとして、対物レンズ13が広角ズームレンズであるときの拡大観察装置300の校正がある。
【0116】
広角ズームレンズにより撮像された画像においては、撮像装置10の撮像範囲の中心から離れた外縁部およびその近傍の部分に歪が生じやすい。そのため、画像データに基づく画像に生じる歪の度合いを検出するために、ドットチャート(一定の外径を有する複数のドットが一定間隔で格子状に並んだチャート)による校正が行われる。この校正に対応付けられる校正板400の校正区域においては、第1の領域AR1に上記の校正目盛Cに代えてドットチャートが形成される。
【0117】
(5−9)上記の実施の形態では、白色光を用いて観察対象物Sの表面を観察する顕微鏡100を備える拡大観察装置300において校正板400を用いた校正処理が行われる。これに限らず、上記の校正板400および校正処理は、観察対象物Sを拡大して観察する他の拡大観察装置に適用することができる。このような拡大観察装置として、例えば、光干渉法を用いた顕微鏡を備える拡大観察装置、共焦点顕微鏡を備える拡大観察装置、走査電子顕微鏡を備える拡大観察装置、走査型プローブ顕微鏡を備える拡大観察装置、および蛍光顕微鏡を備える拡大観察装置等がある。
【0118】
(5−10)上記の実施の形態において、対物レンズ13がZ方向に移動されることにより対物レンズ3に対する観察対象物Sの相対的なZ方向の位置が変化されるが、これに限定されない。ステージ21がZ方向に移動されることにより対物レンズ13に対する観察対象物Sの相対的なZ方向の位置が変化されてもよい。
【0119】
(6)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0120】
上記実施の形態においては、校正板400が校正具の例であり、透光性プレート420が基材の例であり、第1の領域AR1が一部領域の例であり、校正目盛Cが第1の指標の例であり、第2の領域AR2が他の領域の例であり、複数のガイドマーカGMが第2の指標の例であり、校正区域421,422,423が複数の区域の例である。
【0121】
また、観察対象物Sが観察対象物の例であり、拡大観察装置300が拡大観察装置の例であり、撮像装置10が撮像装置の例であり、ステージ21がステージの例であり、ステージ駆動部22が移動部の例であり、CPU220が制御部の例である。
【0122】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、種々の顕微鏡を用いた拡大観察装置に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0124】
1 ベース
2 第1の支持台
3 第2の支持台
4 連結部
5 回動支柱
6 連結部
7 支持部
8 スライダ
9 固定つまみ
10 撮像装置
11 カラーCCD
12 ハーフミラー
13 対物レンズ
13a ズーム調整部
13b レンズ検出部
15 A/D変換器
16 落射照明用光源
17 レンズ駆動部
20 ステージ装置
21 ステージ
21b 開口部
21c 載置プレート
22 ステージ駆動部
23 ステージ支持部
26 透過照明用光源
30 回転角度センサ
41 調整ネジ
42 調整つまみ
100 顕微鏡
200 画像処理装置
210 インタフェース
220 CPU
230 ROM
240 記憶装置
250 入力装置
260 表示部
270 作業用メモリ
300 拡大観察装置
400 校正板
410 枠部材
410h 開口部
420 透光性プレート
421,422,423 校正区域
AR1 第1の領域
AR2 第2の領域
C 校正目盛
Ca 校正用ライン
Cb 倍率提示用ライン
GM ガイドマーカ
R1 回動軸
R2 光軸
R3 回転軸
S 観察対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の画像を表示する拡大観察装置に用いられる校正具であって、
一面を有する基材を備え、
前記基材の前記一面の一部領域に、前記拡大観察装置の校正に用いられる第1の指標が設けられ、
前記基材の前記一面の前記一部領域以外の他の領域に、前記一部領域に向かう方向を示す第2の指標が設けられる、校正具。
【請求項2】
前記第2の指標は、当該第2の指標から前記第1の指標までの距離に関する情報を含む、請求項1記載の校正具。
【請求項3】
前記第2の指標は、前記一部領域に向かう方向を示す形状を有する、請求項1または2記載の校正具。
【請求項4】
前記第2の指標は、前記他の領域に分散的に複数設けられる、請求項1〜3のいずれかに記載の校正具。
【請求項5】
前記基材の前記一面は、前記拡大観察装置の複数種類の校正にそれぞれ対応した複数の区域を有し、前記複数の区域の各々における一部領域に前記第1の指標が設けられ、前記複数の区域の各々における前記一部領域以外の他の領域に前記第2の指標が設けられ、各区域の前記第1の指標は、対応する種類の校正に用いられるように設けられる、請求項1〜4のいずれかに記載の校正具。
【請求項6】
観察対象物の画像を表示する拡大観察装置であって、
前記観察対象物または請求項1〜5のいずれかに記載の校正具が載置可能なステージと、
前記観察対象物または前記校正具を撮像することにより撮像範囲の画像を表示するための画像データを生成する撮像装置と、
前記撮像装置の光軸と垂直な方向における前記ステージと前記撮像装置との相対的な位置関係を変更することにより前記撮像範囲を前記ステージ上で移動させる移動部と、
前記ステージに前記校正具が載置された場合に、前記撮像装置により生成される画像データに基づいて前記校正具の前記第2の指標が示す方向に従って前記撮像範囲が前記一部領域に移動するように前記移動部を制御する制御部とを備える、拡大観察装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記ステージに請求項5記載の校正具が載置された状態で前記複数種類の校正のうち一の種類の校正が行われる場合に、前記撮像範囲が前記校正具の前記一の種類に対応する区域に移動するように前記移動部を制御する、請求項6記載の拡大観察装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−80102(P2013−80102A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219894(P2011−219894)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】