説明

核内受容体の賦活剤

【課題】ジャガイモの新たな有効利用を提供すること。
【解決手段】ジャガイモを低温で、抽出した抽出液または抽出物質を含有することを特徴とする核内受容体賦活剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャガイモの抽出液または抽出物質を含有する核内受容体の賦活剤に関する。より詳しくは、本発明は、ジャガイモの抽出液または抽出物質を含有する、核内受容体であるPPAR(ペルオキシソーム増殖剤受容体)α、PPARδ、PPARγ並びにRXR(レチノイドX受容体)α、RXRβ、RXRγの賦活剤に関する。
【背景技術】
【0002】
PPARは、核内受容体スーパーファミリーに属する転写因子であり、脂質およびグルコース代謝の制御に関与し、肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化などの種々の疾患に関与する重要なレセプターのひとつであると考えられている。PPARは、哺乳類においてはPPARα、PPARβ/δ、PPARγの3種のサブタイプが同定されている。また、PPARγにはスプライシングの相違によりγ1およびγ2の2種類のアイソフォームが存在する。PPARの各サブタイプは、RXRとヘテロ2量体を形成し、リガンド依存的にプロモーター領域にPPAR応答配列(PPRE)を有する標的遺伝子の発現を誘導する(非特許文献1、2参照)。
【0003】
核内受容体を賦活化する化合物は、例えば、糖尿病、高脂血症、肥満症などのインスリン抵抗性症候群、炎症性腸炎などの炎症性疾患、アルツハイマー病や脳梗塞などの神経疾患、睡眠障害などの生体リズム障害疾患に対する予防、改善作用、並びに皮膚障害の予防、改善などのスキンケア効果が期待される。しかし、これまで核内受容体の賦活化作用が確認されているフィブラート系薬剤やチアゾリジン系薬剤は長期摂取により、重篤な肝障害などの副作用が問題となっている。
一方、糖尿病、高脂血症、高血圧症などの生活習慣病や肥満は、遺伝的要因も関係するが、食生活などの生活習慣も深く関わっていると考えられている。このため、日常的に摂取できる素材、例えば、飲食用品の中に生活習慣病や肥満の予防または改善に有用な素材を見つけ出すことができれば、安全に利用することが可能となる。
【0004】
このような中、乳脂肪を含む乳汁または乳汁画分を含有することを特徴とする核内受容体賦活剤(特許文献1)や甜菜の抽出物、クマザサの抽出物、ショウガの粉末およびその抽出物、行者ニンニクの抽出物、ペパーミントの抽出物、ナツメの抽出物、レッドカラントの抽出物、ハスカップの抽出物、サフランの抽出物、サジーの抽出物、オリーブの抽出物、ハチミツなどを含有するPPAR活性化剤(特許文献2)が知られている。
【0005】
ジャガイモは、ナス科の多年性植物で、原産地は南米アンデス山脈の高地であるといわれているが、日本においては北海道を中心に広く栽培されている。主要な品種は男爵薯やメイクイーンの知名度が高いが、近年レッドルビーやノーザンルビーなどのアントシアン系色素を含む品種や、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を有するはるかなどの品種の栽培も広がってきている。
【0006】
ジャガイモの成分としては、デンプンの他、デンプン製造時に排出される成分(未利用残渣)を有効利用する目的で、未利用残渣の機能性研究がなされている。例えば、ジャガイモ由来のペプチド混合物(ポテトペプチド)がアンジオテンシン変換酵素阻害活性を有すること(特許文献3)や、肝機能の改善に有効であること(特許文献4)が知られている。また、ジャガイモジュースのアルコール可溶性画分を胃腸疾患の予防または治療において使用するための組成物が知られている。(特許文献5)。さらに、水溶性ポテトペプチドを含む、生活習慣病の予防食品または生活習慣病の改善食品(特許文献6)などが知られている。しかし、前記水溶性ポテトペプチドは、ジャガイモ由来タンパク質をタンパク質分解酵素で消化して得ることができ、その分子量は、最大10kDaである(特許文献6)。
しかし、タンパク質分解酵素で処理していないジャガイモの抽出物が核内受容体を賦活化することは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−100551号公報
【特許文献2】特開2010−106001号公報
【特許文献3】特開2000−4799号公報
【特許文献4】特開2007−295832号公報
【特許文献5】特表2010−508339号公報
【特許文献6】特開2008−169129号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Willson−TMら、J.Med.Chem、第43巻、p.527−550、2000年
【非特許文献2】Lehrke−Mら、Cell、第123巻、p.993−999、2005年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ジャガイモの新たな有効な利用手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意努力し、ジャガイモの抽出物が核内受容体賦活作用を示すことを見出し、これらの知見に基づいて、さらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
[1]ジャガイモを低温で、抽出した抽出液または抽出物質を含有することを特徴とする核内受容体賦活剤、
[2]前記抽出が搾汁または極性溶媒による抽出であることを特徴とする前記[1]記載の核内受容体賦活剤、
[3]前記極性溶媒が水または/および低級アルコールであることを特徴する前記[2]記載の核内受容体賦活剤、
[4]前記低級アルコールがエタノールであることを特徴する前記[3]記載の核内受容体賦活剤、
[5]前記核内受容体が、PPARおよびRXRから選択される少なくとも1の受容体である前記[1]から[4]のいずれかに記載の賦活剤、
[6]前記PPARが、PPARα、PPARδおよびPPARγから選択される少なくとも1の受容体である前記[5]に記載の賦活剤、
[7]前記RXRが、RXRα、RXRβおよびRXRγから選択される少なくとも1の受容体である前記[5]に記載の賦活剤、
[8]高脂血症、糖尿病、動脈硬化、高血圧症または肥満、あるいはメタボリックシンドロームの予防、治療または改善用である前記[1]から[7]のいずれかに記載の賦活剤、
[9]炎症の予防、治療または改善用である前記[1]から[7]のいずれかに記載の賦活剤、
[10]アルツハイマー症候群の予防、治療または改善用である前記[1]から[7]のいずれかに記載の賦活剤、および
[11]各種癌の予防、治療または改善用である前記[1]から[7]のいずれかに記載の賦活剤、
に関する。
【0012】
また本発明は、ジャガイモを低温で、抽出した抽出液または抽出物質を動物に投与することを含む、核内受容体の賦活方法;高脂血症、糖尿病、動脈硬化、高血圧症または肥満あるいはメタボリックシンドロームの予防、治療または改善方法;炎症の予防、治療または改善方法;アルツハイマー症候群の予防、治療または改善方法;および、各種癌の予防、治療または改善方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る賦活剤は、脂質代謝、糖代謝を制御するPPARのサブタイプα、δおよび/またはγを賦活させることができる。また、本発明に係る賦活剤は、PPARα、PPARδおよび/またはPPARγとヘテロダイマーを形成して、PPAR機能を補助し、更に細胞増殖、分化を制御する機能を有するRXRα、RXRβおよびRXRγを賦活させることができる。
つまり、本発明の賦活剤は、PPARαを賦活させるので、中性脂肪の分解と脂肪酸の代謝を活性化し、血中の中性脂肪濃度を低減させ、臓器の中性脂肪含量を減少させることで、インスリン抵抗性を改善できる。さらに、PPARαおよび/またはPPARγの賦活は、LDL(low density lipoprotein)コレステロールの構成蛋白質の発現を抑制し、HDL(high density lipoprotein)コレステロールの構成蛋白質の発現を亢進して、血中脂質濃度を低下させ得るので、本発明の賦活剤は、高脂血症に対する予防、治療効果を発揮し得る。
また、PPARδの賦活は、アテローム性動脈硬化、炎症性腸疾患などの疾患を改善し得る(Graham
TL. et al., Atherosclerosis. , 第181巻, p.29-37, 2005年)。また、PPARδおよび/またはPPARγの賦活は、肥満を改善し得うる。さらに、PPARδおよび/またはPPARγの賦活は、耐糖能およびインスリン感受性を改善し得るので(Staels B. et al.,
Diabetes. , 第54巻、p.2460-2470、2005年;Tanaka T. et al., Proc. Natl. Acad.
USA. , 第100巻, p.15924-15929,
2003年)、本発明の賦活剤は、2型糖尿病を治療、予防し得る。
さらにPPARγの賦活は、脂肪細胞の分化を促進し、インスリン抵抗性を惹起する因子(TNFαなど)を産生する大型脂肪細胞にアポトーシスを誘導し細胞数を減少させ得る。それを補うように前駆脂肪細胞から小型脂肪細胞への分化が促進され、アディポネクチンなどのインスリン抵抗性を改善する因子の産生を増大させ得る。従って、PPARγの賦活は、インスリン抵抗性を改善することにより、糖尿病や肥満などのインスリン抵抗性疾患を予防、治療できる。
【0014】
またPPARαの賦活は、炎症のマスターレギュレーターであるNF−kB(nuclear
factor-kappa B)やAP−1(activator protein 1)と直接相互作用してそれらの標的遺伝子の転写を抑制、あるいはIkB(カッパーB阻害因子)α遺伝子の発現を誘導してNF−kBの核内移行を抑制し得る(Staels B. et al.,
Nature、, 第399巻, p.790-793, 1998年;Delerive P. et al., J. Biol. Chem., 第275巻, p.36703-36707, 2000年)。また、PPARδの賦活は、ヒト単球走化因子(MCP−1)、インターロイキン(IL)−1β、マトリクスメタロプロテアーゼ9(MMP−9)などの炎症性蛋白の発現を転写レベルで抑制し得る(Lee CH.et al., Science, 第302巻, p.453-457, 2003年)。さらにPPARγは、転写因子NF−kBやAP−1と拮抗的に作用し(Ricote M. et al.,
Nature, 第391巻, p.79-82, 1998年)、PPARγの賦活は、アレルギー性炎症、炎症性大腸炎を治療し得る(Woerly G. et al.,
J. Exp. Med., 第198巻, p.411-421,
2003年;Su CG. et al., J. Clin
Invest., 第104巻, p.383-389, 1999年)。従って、本発明の賦活剤は、抗炎症効果を発揮できる。
RXRα、RXRβおよび/またはRXRγ賦活は、皮膚表皮の増殖を抑制し、細胞の分化を促進し、また炎症を抑制できる。
【0015】
さらにPPARα、PPARδ、RXRα、RXRβおよび/またはRXRγの賦活は、表皮細胞の分化を誘導し、メラノサイトの分化を抑制するので(Hanley K. et al., J. Invest Dermatol., 第110巻, p.368-375, 1998年; Di-Poi N. et al., Lipids,、第39巻, p.1093-1099, 2004年;Schmuth M. et al., J. Invest Dermatol., 第122巻, p.971-983, 2004年;Mao-Qiang M. et al., J. Invest. Dermatol., 第123巻, p.305-312, 2004年; Bhagavathula
N, J. Invest. Dermatol., 第122巻, p.130-139, 2004年)、本発明の賦活剤は、肌に透明感を出し、美白効果を発揮し得る。特にPPARαの賦活は表皮セラミドを産生増強し、表皮透過障壁機能を増強し得るので、皮膚を保湿させ得る。
PPARγの賦活は、炎症、免疫反応を伴う皮膚疾患である乾癬を改善する効果も報告されている(Ellis CN. et al., Arch. Dermatol., 第136巻, p.609-616, 2000年)。従って、PPARγの賦活は、乾癬を含む皮膚疾患を予防、治療し得る。
【0016】
PPARδおよび/またはPPARγは、アルツハイマー病の主要因であるアミロイドβの脳内蓄積を抑制し得る(Camacho IE. et al., J. Neurosci., 第24巻, p.10908-10917, 2004年)。また、PPARδおよび/またはPPARγの賦活は、脳梗塞の梗塞部位を縮小させ得る(Zhao Y. et
al., FASEB J., 第20巻,
p.1162-1175, 2006年)。従って、本発明の賦活剤は、アルツハイマー病や脳梗塞などの神経疾患を予防、治療し得る。
RXRα、RXRβおよび/またはRXRγの賦活は、細胞増殖作用の阻害、アポトーシスの誘導を介して癌を抑制、予防し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、各種ジャガイモ抽出物のPPARα賦活作用を示す図である。図中(a)は「男爵薯」のルシフェラーゼ活性を、(b)は「レッドムーン」のルシフェラーゼ活性を、(c)は「ノーザンルビー」のルシフェラーゼ活性を、(d)は「はるか」のルシフェラーゼ活性を示す。
【図2】図2は、各種ジャガイモ抽出物のPPARδ賦活作用を示す図である。図中(a)は「男爵薯」のルシフェラーゼ活性を、(b)は「レッドムーン」のルシフェラーゼ活性を、(c)は「ノーザンルビー」のルシフェラーゼ活性を、(d)は「はるか」のルシフェラーゼ活性を示す。
【図3】図3は、各種ジャガイモ抽出物のPPARγ賦活作用を示す図である。
【図4】図4は、各種ジャガイモ抽出物のRXRα賦活作用を示す図である。
【図5】図5は、各種ジャガイモ抽出物のRXRβ賦活作用を示す図である。
【図6】図6は、ジャガイモ抽出物のRXRγ賦活作用を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
ジャガイモ(学名:Solanum tuberosum L.)は、いずれの品種も使用できるが、種苗法に基づき登録されている例えば、男爵薯、はるか、レッドムーンまたはノーザンルビーなどが好ましい。ジャガイモはそのままでもよいが、皮(周皮)を剥いて用いてもよい。
【0019】
ジャガイモの抽出は、低温が好ましい。ここで、低温は、ジャガイモに含まれるデンプンが糊化しない温度であれば良く、例えば、室温(約20〜25℃)または常温(約0〜40℃)を含むが、約0〜40℃、約3〜20℃が好ましく、約3〜10℃(3,4,5,6,7,8,9,10℃)がさらに好ましい。
【0020】
ジャガイモの抽出は、搾汁または極性溶媒による抽出が好ましい。搾汁は、公知の方法、例えば、ジャガイモをそのまま、または切断、細切、破砕あるいはすりおろして、例えば、圧搾、遠心分離またはろ過などにより固形分を除去することにより得ることができる。ろ過は、布、ろ紙などにより実施できる。圧搾は、強い圧力を加えること、および強くしぼることを含む。圧搾は、例えば、水圧式または油圧式圧搾プレス機、圧搾ローラーなどにより実施できる。遠心分離は、遠心分離機(例えば、バスケット型など)などにより実施できる。圧搾または遠心分離、あるいはろ過などは、1以上を組み合わることができる。
【0021】
本発明で抽出に用いられる極性溶媒としては、水または有機極性溶媒およびこれらの混合溶媒などを挙げることができる。水としては、飲用可能なものであれば特に制限はなく、例えば水道水または井水などの常水;常水を蒸留、イオン交換、超濾過(逆浸透法/限界濾過)のいずれか、あるいはこれらを組み合わせた方法で処理した精製水;地下水または涌水などの天然水;注射用水;滅菌水またはアルカリイオン水などが挙げられる。中でも精製水または滅菌精製水が好ましい。
【0022】
有機極性溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、低級アルコール、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン(NMP)、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トリクロロエチレン、アセトニトリルなどが挙げられる。中でも低級アルコールが好ましい。低級アルコールとしては、炭素数が1ないし4のアルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノールなど)を挙げることができ、エタノールがとりわけ好ましいる。
【0023】
混合溶媒は、有機極性溶媒と水との混合溶媒が好ましく、例えば低級アルコールと水との混合溶媒(例えば、メタノールと水との混合溶媒、エタノールと水との混合溶媒、イソプロパノールと水との混合溶媒、プロパノールと水との混合溶媒、ブタノールと水との混合溶媒など)が挙げられる。水と有機極性溶媒との混合溶媒中の有機極性溶媒の濃度は、約0.1〜99.9%(V/V)、好ましくは約30〜99.9%(V/V)、さらに好ましくは約50〜99.9%(V/V)である。本発明における好ましい混合溶媒としては、エタノールと水との混合溶媒が挙げられる。なお、有機極性溶媒と水との混合溶媒には、含水エタノールなどの含水低級アルコール[水分5%(V/V)以下]も当然に包含される。
【0024】
ジャガイモの極性溶媒による抽出方法としては、特に限定されるものではなく、極性溶媒をジャガイモと接触させることにより行うことができる。ジャガイモは、そのまま、または皮を剥いたものを用いることができる。ジャガイモは生または乾燥したものいずれでもよいが、乾燥したものが好ましい。ジャガイモの乾燥は公知の乾燥手段を用いることができるが、低温で乾燥させることが好ましい。具体的には、凍結乾燥が好ましく挙げられる。低温で乾燥することにより、ジャガイモに含まれる有効成分が変化するのを抑制できる。ジャガイモは、例えば粉砕、破砕、切断もしくは細切したものなどを用いることができる。中でも乾燥したジャガイモ、好ましくは皮を剥いた後に乾燥したジャガイモを、粉砕したもの(粉末)が好ましい。粉砕することにより、抽出効率を向上させることができる。粉砕または粉末は、公知の手段で行うことができる。前記手段としては、例えばミルまたはフードプロセッサーなどの粉砕機を用いる方法が挙げられる。抽出は、例えば粉砕または粉末にしたジャガイモを5〜20倍量(ジャガイモに対する重量比;5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20倍量)の極性溶媒中に浸漬させて、例えば超音波照射または撹拌などの公知の方法またはこれら方法を組み合わせて行うことができる。抽出に要する時間は、温度条件や抽出方法にもよるが、通常約1〜48時間、好ましくは約3〜24時間程度である。
【0025】
次いで、抽出後のジャガイモ浸漬溶液は、例えばロ紙、布(例えば、ガーゼなど)、ガラスフィルターもしくはメンブランフィルター(例えば、ステリフリップ(Steriflip;ミリポア社)またはマイレクス(Millex;ミリポア社)など)などによるろ過、ろ過滅菌、遠心分離など公知の方法、あるいはこれら公知の方法を組み合わせて使用して、抽出液と抽出残渣を分離するのが好ましい。抽出残渣をさらに、極性溶媒で上記抽出方法を通常約1〜10回、好ましくは約2〜5回繰返し適用することが好ましい。このようにして、ジャガイモ中の成分を十分に抽出し得る。抽出を繰り返し行なった抽出液は合わせる。
【0026】
得られた抽出液は、そのままジャガイモ抽出物として用いてもよく、抽出液に含まれる極性溶媒を除去してもよい。特に有機極性溶媒は除去することが好ましい。極性溶媒の除去は、公知の手段で実施できる。例えば、極性溶媒の除去は、抽出液を常圧、加圧または減圧下に濃縮することにより実施できる。中でも減圧下に濃縮を行う遠心濃縮が好ましい。濃縮は常温(約1〜40℃)または室温(約20−25℃)で行われても低温下で行われてもよい。中でも低温下で行われるのが好ましい。低温温度は特に限定されないが、溶媒の沸点以下であることが好ましく、通常約0〜40℃、好ましくは約4〜10℃、さらに好ましくは約4〜5℃である。また、得られた濃縮液はそのまま使用することもできるが、公知の方法、例えば凍結乾燥あるいは遠心濃縮乾燥などで乾燥させてもよい。前記遠心濃縮乾燥は、低温(約0〜40℃、好ましくは3〜20℃、さらに好ましくは3〜10℃(3,4,5,6,7,8,9,10℃))下で行うことが好ましい。また、これらの抽出物は、核内受容体の賦活活性を失わない範囲内で脱臭、精製などの操作を加えることが出来る。溶媒除去した抽出物は、そのまま、または適切な溶媒や担体で希釈などして用いることができる。
【0027】
核内受容体としては、PPARα、PPARδ、PPARγ、LXR(Liver X
receptor)α、LXRβ、FXR(ファーネソイドX受容体)、RAR(レチノイン酸受容体)γ、RXRα、RXRβ、RXRγ、ER(エストロゲン受容体)α、
VDR(ビタミンD受容体)、TR(甲状腺ホルモン受容体)α、TRβ、PXR(Pregnane X Receptor)およびNrf−2(NF-E2-related factor 2)などが挙げられるが、好ましくはPPARα、PPARδ、PPARγ、RXRα、RXRβまたはRXRγである。
【0028】
本発明に係る賦活剤のPPARに対する賦活作用は、脂肪細胞の分化誘導、脂肪細胞由来分泌因子であるアディポネクチンの産生増強、TNFαの産生抑制、アディポステロイド合成酵素11βHSD1の産生抑制、脂肪代謝関連酵素LPL、FATPの産生増強、糖代謝関連酵素グリセロールキナーゼ、PEPCK−Cの産生増強などを介して、高脂血症、糖尿病、動脈硬化、高血圧症、肥満あるいはこれらを複合したメタボリックシンドロームの予防、治療に有用であることを含む。また、本発明に係る賦活剤のPPARに対する賦活作用は、転写因子NFκBなどの活性阻害を介して抗炎症作用を有することを含む。更に最近のPPARδとPPARγ賦活剤がアルツハイマー症候群の予防、治療に有用であることが示されていることから、本発明に係る賦活剤もアルツハイマー症候群の予防、治療に有用であることを含む。さらに、PPARに対する本発明に係る賦活剤の賦活作用は以下の作用を介して、皮膚機能の改善に有用であることを含む。すなわち、PPARδの賦活作用は架橋酵素トランスグルタミナーゼ−1(transglutaminase-1)、架橋蛋白インボルクリン(involucrin)やCD36の産生を増強し、またPPARαの賦活作用は表皮セラミドを産生増強し、表皮透過障壁機能の増強による皮膚保湿に有用であることを含む。
【0029】
本発明に係る賦活剤のRXRα、RXRβおよび/またはRXRγに対する賦活作用は、ヘテロダイマー形成を介するPPARに対する補助作用を通じて、PPARの各種薬理作用を増強することを含む。また、RXRα、RXRβおよび/またはRXRγに対する賦活作用は、細胞増殖作用の阻害、アポトーシスの誘導を介して抗癌作用を有することを含む。更に、本発明に係る賦活剤のRXRα、RXRβおよび/またはRXRγ賦活に基づく皮膚に対する作用として、皮膚表皮の増殖抑制、分化誘導および抗炎症作用を有することを含む。なお、これら核内受容体の体内分布の違いから、肝臓、腎臓等主要臓器ではRXRαがより好ましく賦活され、全身においてはRXRβがより好ましく賦活され、大脳を含む神経系においてはRXRγがより好ましく賦活され得る(Trends in Endocrinology and Metabolism Vol.21 No.11, 676-683; Cell
Death and Differentiation (2004) 11, S126–S143)。
【0030】
本発明係る賦活剤は食品衛生上許容される添加物とともに種々の組成物とすることができる。組成物の形態は限定されず、例えば、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)や健康食品などの飲食品、医薬品、医薬部外品などとして用いることが出来る。組成物は、例えば、飲食用もしくは動物用が含まれる。該組成物は、「予防剤」、「改善剤」、「飲食用組成物」、「飲料」、「食品」または「飼料」などと表記することもできる。
【0031】
本発明に係る賦活剤は、生理学的または製剤学的に許容される添加物、例えば、担体、賦形剤、あるいは希釈剤などと混合し、組成物として経口、あるいは非経口的に投与することができる。経口用組成物としては、顆粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤、溶剤、乳剤、あるいは懸濁剤などの剤型とすることができる。非経口用組成物としては、外用薬剤などの剤型を選択することができる。外用薬剤としては、経鼻投与剤、あるいは軟膏剤、液剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、パップ剤などを挙げることができる。上記剤型は、公知の製剤技術を使用して製造できる。
【0032】
例えば、経口投与用の錠剤は、賦形剤、崩壊剤、結合剤および滑沢剤などを加えて混合し、圧縮整形することにより製造することができる。賦形剤としては、例えば、乳糖、デンプン、あるいはマンニトールなどが挙げられる。崩壊剤としては、例えば、炭酸カルシウムやカルボキシメチルセルロースカルシウムなどが挙げられる。結合剤としては、例えば、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、あるいはポリビニルピロリドンなどが挙げられる。滑沢剤としては、タルクやステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0033】
錠剤は、マスキングや、腸溶性製剤とするために、白糖などによる糖衣や公知のコーティングを施すことができる。コーティング剤には、例えば、エチルセルロースやポリオキシエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートなどを用いることができる。
【0034】
本発明に係る賦活剤の投与量は、投与方法、病状、患者の年齢などによって変化し得るが、通常、乾燥抽出物として、成人の場合、通常約1mg〜100mg/kg体重(50mg〜5g/man)程度であり、約1mg〜20mg/kg体重(50mg〜1g/man)が好ましい。
【0035】
また、本発明に係る賦活剤は、種々の形態の飲料、スナック類、乳製品、調味料、でんぷん加工製品、加工肉製品などあらゆる食品に適宜配合することができる。
【0036】
本発明の飲食品としては、例えば、飲料が好ましく挙げられる。飲料としては、茶系飲料、清涼飲料、果実飲料、野菜飲料、発泡性飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、またはアルコール性飲料などを挙げることができる。また、本発明の飲食品としては、液状、固形状、粉末状の嗜好飲料類、調味料および香辛料類、もしくは調理加工食品、および、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品などを挙げることができる。本発明に係る賦活剤を含む飲食品は、上述の各種疾患、症状または病態を予防または改善し得る。
【0037】
前記飲食品には、その種類に応じて種々の添加物を配合することができる。添加物としては、食品衛生上許容される成分であれば特に制限されず、例えば、ブドウ糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤、還元型アスコルビン酸(ビタミンC)、ビタミンE、還元型グルタチン、トコトリエノール、カロチン、カロチノイド、リコピン、カテキン、イソフラボン、フラボノイド類、ポリフェノール、コウジ酸、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンD、ナイアシン、パントテン酸、葉酸カルシウム、アルブミン、エイコサペンタエン酸(EPA)、イヌリン、オリゴ糖、オルニチン、果糖、L−カルニチン、還元麦芽糖、乳酸オリゴマー、γ−アミノ酪酸、絹タンパク、グルコマンナン、クレアチン、ゲルマニウム、コエンザイムQ10、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、植物繊維、食物繊維、ゼラチン、チオクト酸、デキストリン、ドコサヘキサエン酸(DHA)、乳清、乳糖、ホスファチジルセリン、リノール酸またはリノレン酸などの食品添加物、マグネシウム、亜鉛、クロム、セレン、カリウムなどが挙げられる。
【0038】
本発明に係る賦活剤を飲食品に適用する場合の添加量としては、飲食品に対して、乾燥抽出物として約0.1〜10質量%であるのが好ましい。
【0039】
また本発明は、本発明に係る賦活剤もしくは上記組成物を個体へ投与する工程を含む、上述の各種疾患の予防または改善方法を提供する。
【0040】
本発明の予防または改善方法の対象となる動物は、上述の各種疾患を発症し得る生物であれば特に制限されず、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタなどの哺乳動物あるいはニワトリ、カモ等の鳥類などが挙げられるが、好ましくはヒトである。
【0041】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例において、略語は以下を意味する。
PPAR:ペルオキシソーム増殖剤受容体(peroxisome proliferator-activated receptor)
RXR:レチノイドX受容体(retinoid X receptor)
DMEM:ダルベッコ改変イーグル培地(Doulbecco’s modified Eagle’s Medium)
FBS:ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum)
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
CMV:サイトメガロウイルス(cytomegarovirus)
9cRA:9−シスレチノイン酸(9-cis-retinoic acid)
DNA:デオキシリボ核酸(Deoxyribonucleic acid)
%は、特に明記しない場合は質量%を示す。
【実施例1】
【0042】
ジャガイモ抽出物
試験材料:ジャガイモは以下の品種を用い、周皮を除いた後、凍結乾燥した。乾燥したジャガイモをフードプロセッサー(機種名:タイガーミル、会社名:TIGER)で粉砕し粉末にしたものを試験材料とした。
(1)バレイショ(Solanum tuberosum L.)品種「男爵薯」
男爵薯は、北海道内で一般的に広く作られている品種である。
(2)バレイショ(Solanum tuberosum L.)品種「レッドムーン」
周皮及び髄部が赤いジャガイモで、カラフルポテトの一つである。
(3)バレイショ(Solanum tuberosum L.)品種「ノーザンルビー」
周皮は赤く、髄部は橙黄色のジャガイモで、カラフルポテトの一つである。
(4)バレイショ(Solanum tuberosum L.)品種「はるか」
ジャガイモシストセンチュウ耐性のあるジャガイモである。
表1に乾燥前後のジャガイモの重量を示す。
【0043】
【表1】

【0044】
抽出方法:ジャガイモの乾燥粉末にエタノール、50%エタノール、または滅菌精製水を10倍量加えた。エタノールおよび50%エタノールを加えたものは、室温で3時間振盪した後、ステリフリップ(Steriflip;ミリポア社)またはマイレクス(Millex;ミリポア社)を用いてろ過滅菌を行った。次いでマイクロチューブまたは15mLのファルコンチューブにろ過滅菌したろ過液を入れ、4℃で6時間〜96時間、遠心濃縮乾燥を行った。得られた乾燥粉末をそれぞれ、エタノール抽出物及び50%エタノール抽出物とした。滅菌精製水を加えたものは、4℃で24時間振盪した後、ステリフリップ(Steriflip;ミリポア社)またはマイレクス(Millex;ミリポア社)を用いてろ過滅菌を行った。得られたろ液を水抽出物とした。なお、水抽出物はマイクロチューブに分注し、保存した。
表2に抽出結果を示す。
【0045】
【表2】

【実施例2】
【0046】
核内受容体の賦活化試験
(1)被験物質の調製
被験物質は、実施例1で得られたジャガイモの各抽出物を用いた。前記エタノール抽出物及び50%エタノール抽出物は、それぞれジメチルスルホキシド(DMSO)に100mg/mLとなるように溶解し、前記抽出物を溶解したDMSO溶液を、DMEM培地に添加し、培地における抽出物の濃度が、それぞれ0.1%(0.1mg/mL)、0.25%(0.25mg/mL)および0.5%(0.5mg/mL)となるよう調製し、核内受容体の賦活化試験において被験物質を含むDMEM培地として使用した。水抽出物は、DMEM培地に0.5%(v/v)、2.0%(v/v)及び10.0%(v/v)となるよう添加し、核内受容体の賦活化試験において被験物質を含むDMEM培地として使用した。
【0047】
(2)PPARα賦活化試験
PPARα活性はPPARα依存的な遺伝子の転写活性(ルシフェラーゼ活性)を指標に検討した。すなわち、サル由来CV−1細胞株を、2×105細胞/wellとなるよう、6穴プレートに播種し、DMEM(10%FBSを含む)中で1日培養した。Gal4のDNA結合ドメイン(Gal4−DBD)およびPPARαのリガンド結合ドメイン(PPARα−LBD)のキメラタンパク発現プラスミド(pGal4DBD/PPARαLBD)、Gal4応答配列(配列番号1:CGGAGGACAGTACTCCG)およびホタルルシフェラーゼ遺伝子を含むレポータープラスミド(pG5−Luc)、およびウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子の上流にCMVプロモーターを連結したコントロールプラスミド(pGL4.75hRluc−CMV;
Promega社製)を同時に各々1μg、0.9μg、0.1μg/wellとなるようトランスフェクション試薬(FuGENE
HD;Roche社製)と共に加え、前記培養した細胞にプラスミドを導入した。その後形質転換細胞をトリプシンによりはがし、細胞をPBSにて洗浄後、96穴プレートに、1.6×104細胞/wellとなるよう再度播種しなおした。この際、培養液を、被験物質を含むDMEM培地に交換し、さらに48時間培養した。PBSにて細胞を洗浄後、デュアルルシフェラーゼアッセイシステム(Promega社製)を用いてホタルルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼ活性を各々測定した。すなわち細胞溶解液で細胞を溶解し、ルシフェリンを含む基質溶液を加え、ルミノメーターにてホタルおよびウミシイタケルシフェラーゼの発光量を各々測定した。なお、PPARα依存的な遺伝子の転写活性(ルシフェラーゼ活性)は以下のように定義した。陰性対照(ネガティブコントロール)はDMSOまたは滅菌精製水(DW)を用い、DMSOを0.5%(v/v)、またはDWを10%(v/v)となるよう添加したDMEM培地を使用した。陽性対照(ポジティブコントロール)は、WY14643(Tocris
Bioscience社製)を用い、WY14643を100μMとなるよう添加したDMEM培地を使用した。
【0048】
PPARα依存遺伝子の転写活性(ルシフェラーゼ活性)=(pG5−Lucによるホタルルシフェラーゼ活性)/(hRluc−CMVによるウミシイタケルシフェラーゼ活性)
【0049】
各種ジャガイモ抽出物のPPARαのルシフェラーゼ活性の結果を図1に示すように、PPARα賦活化作用を有する。図の縦軸は、陰性対照のルシフェラーゼ活性に対する活性比(被験物質のルシフェラーゼ活性値/陰性対照のルシフェラーゼ活性値)を示す。
【0050】
(3)PPARδ賦活化試験
PPARδ活性はPPARδ依存的な遺伝子の転写活性(ルシフェラーゼ活性)を指標に検討した。すなわち、PPARα賦活化試験に記載の方法のうち、pGal4DBD/PPARαLBDの代わりにpGal4DBD/PPARδLBDを用いる以外はPPARα賦活化試験と同様に実施した。なお、pGal4DBD/PPARδLBDは、Gal4のDNA結合ドメイン(Gal4−DBD)およびPPARδのリガンド結合ドメイン(PPARδ−LBD)のキメラタンパク発現プラスミドである。陰性対照(ネガティブコントロール)はDMSOまたはDWを用い、DMSOを0.5%(v/v)、またはDWを10%(v/v)となるよう添加したDMEM培地を使用した。陽性対照(ポジティブコントロール)は、GW501516(ALEXIS
Biochemicals社製)を用い、GW501516を1μMとなるよう添加したDMEM培地を使用した。
【0051】
PPARδ依存遺伝子の転写活性(ルシフェラーゼ活性)=(pG5−Lucによるホタルルシフェラーゼ活性)/(hRluc−CMVによるウミシイタケルシフェラーゼ活性)
【0052】
各種ジャガイモ抽出物のPPARδのルシフェラーゼ活性の結果を図2に示すように、PPARδ賦活化作用を有する。図の縦軸は、陰性対照のルシフェラーゼ活性に対する活性比(被験物質のルシフェラーゼ活性値/陰性対照のルシフェラーゼ活性値)を示す。
【0053】
(4)PPARγ賦活化試験
PPARγ活性はPPARγ依存的な遺伝子の転写活性(ルシフェラーゼ活性)を指標に検討した。すなわち、PPARα賦活化試験に記載の方法のうち、pGal4DBD/PPARαLBDの代わりにpGal4DBD/PPARγLBDを用いる以外はPPARα賦活化試験と同様に実施した。なお、pGal4DBD/PPARγLBDは、Gal4のDNA結合ドメイン(Gal4−DBD)およびPPARγのリガンド結合ドメイン(PPARγ−LBD)のキメラタンパク発現プラスミドである。陰性対照(ネガティブコントロール)はDMSOまたはDWを用い、DMSOを0.5%(v/v)、またはDWを10%(v/v)となるよう添加したDMEM培地を使用した。陽性対照(ポジティブコントロール)は、ピオグリタゾン(Pioglitazone;
Alexis Biochemical製)を用い、ピオグリタゾンを10μMとなるよう添加したDMEM培地を使用した。
【0054】
PPARγ依存遺伝子の転写活性(ルシフェラーゼ活性)=(pG5−Lucによるホタルルシフェラーゼ活性)/(hRluc−CMVによるウミシイタケルシフェラーゼ活性)
【0055】
各種ジャガイモ抽出物のPPARγのルシフェラーゼ活性の結果を図3に示すように、PPARγ賦活化作用を有する。図の縦軸は、陰性対照のルシフェラーゼ活性に対する活性比(被験物質のルシフェラーゼ活性値/陰性対照のルシフェラーゼ活性値)を示す。
【0056】
(5)RXRα賦活化試験
RXRα活性はRXRα依存的な遺伝子の転写活性(ルシフェラーゼ活性)を指標に検討した。すなわち、PPARα賦活化試験に記載の方法のうち、pGal4DBD/PPARαLBDの代わりにpGal4DBD/RXRαLBDを用いる以外はPPARα賦活化試験と同様に実施した。なお、pGal4DBD/RXRαLBDは、Gal4のDNA結合ドメイン(Gal4−DBD)およびRXRαのリガンド結合ドメイン(RXRα−LBD)のキメラタンパク発現プラスミドである。陰性対照(ネガティブコントロール)はDMSOまたはDWを用い、DMSOを0.5%(v/v)、またはDWを10%(v/v)となるよう添加したDMEM培地を使用した。陽性対照(ポジティブコントロール)は、9cRA(和光純薬製)を用い、9cRAを0.1μMとなるよう添加したDMEM培地を使用した。
【0057】
RXRα依存遺伝子の転写活性(ルシフェラーゼ活性)=(pG5−Lucによるホタルルシフェラーゼ活性)/(hRluc−CMVによるウミシイタケルシフェラーゼ活性)
【0058】
各種ジャガイモ抽出物のRXRαのルシフェラーゼ活性の結果を図4に示すように、RXRα賦活化作用を有する。図の縦軸は、陰性対照のルシフェラーゼ活性に対する活性比(被験物質のルシフェラーゼ活性値/陰性対照のルシフェラーゼ活性値)を示す。
【0059】
(6)RXRβ賦活化試験
RXRα活性はRXRβ依存的な遺伝子の転写活性(ルシフェラーゼ活性)を指標に検討した。すなわち、PPARα賦活化試験に記載の方法のうち、pGal4DBD/PPARαLBDの代わりにpGal4DBD/RXRβLBDを用いる以外はPPARα賦活化試験と同様に実施した。なお、pGal4DBD/RXRβLBDは、Gal4のDNA結合ドメイン(Gal4−DBD)およびPRXRβのリガンド結合ドメイン(RXRβ−LBD)のキメラタンパク発現プラスミドである。陰性対照(ネガティブコントロール)はDMSOまたはDWを用い、DMSOを0.5%(v/v)、またはDWを10%(v/v)となるよう添加したDMEM培地を使用した。陽性対照(ポジティブコントロール)は、9cRAを用い、9cRAを0.1μMとなるよう添加したDMEM培地を使用した。
【0060】
RXRβ依存遺伝子の転写活性(ルシフェラーゼ活性)=(pG5−Lucによるホタルルシフェラーゼ活性)/(hRluc−CMVによるウミシイタケルシフェラーゼ活性)
【0061】
各種ジャガイモ抽出物のRXRβのルシフェラーゼ活性の結果を図5に示すように、RXRβ賦活化作用を有する。図の縦軸は、陰性対照のルシフェラーゼ活性に対する活性比(被験物質のルシフェラーゼ活性値/陰性対照のルシフェラーゼ活性値)を示す。
【0062】
(7)RXRγ賦活化試験
RXRγ活性はRXRγ依存的な遺伝子の転写活性(ルシフェラーゼ活性)を指標に検討した。すなわち、PPARα賦活化試験に記載の方法のうち、pGal4DBD/PPARαLBDの代わりにpGal4DBD/RXRγLBDを用いる以外はPPARα賦活化試験と同様に実施した。なお、pGal4DBD/RXRγLBDは、Gal4のDNA結合ドメイン(Gal4−DBD)およびRXRγのリガンド結合ドメイン(RXRγ−LBD)のキメラタンパク発現プラスミドである。陰性対照(ネガティブコントロール)はDMSOまたはDWを用い、DMSOを0.5%(v/v)、またはDWを10%(v/v)となるよう添加したDMEM培地を使用した。陽性対照(ポジティブコントロール)は、9cRAを用い、9cRAを0.1μMとなるよう添加したDMEM培地を使用した。
【0063】
RXRγ依存遺伝子の転写活性(ルシフェラーゼ活性)=(pG5−Lucによるホタルルシフェラーゼ活性)/(hRluc−CMVによるウミシイタケルシフェラーゼ活性)
【0064】
各種ジャガイモ抽出物のRXRγのルシフェラーゼ活性の結果を図6に示すように、RXRγ賦活化作用を有する。図の縦軸は、陰性対照のルシフェラーゼ活性に対する活性比(被験物質のルシフェラーゼ活性値/陰性対照のルシフェラーゼ活性値)を示す。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る賦活剤は、核内受容体、とりわけPPARα、PPARδ、RXRα、RXRβ及びRXRγを賦活させる作用を有するので、核内受容体、とりわけPARα、PPARδ、RXRα、RXRβまたはRXRγが関与する疾患、例えば、高脂血症、糖尿病、肥満あるいはこれらを複合したメタボリックシンドローム、炎症、アルツハイマー症候群、皮膚機能障害(皮膚乾燥症および皮膚炎症)の予防、治療または改善に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャガイモを低温で、抽出した抽出液または抽出物質を含有することを特徴とする核内受容体賦活剤。
【請求項2】
前記抽出が搾汁または極性溶媒による抽出であることを特徴とする請求項1記載の核内受容体賦活剤。
【請求項3】
前記極性溶媒が水または/および低級アルコールであることを特徴する請求項2記載の核内受容体賦活剤。
【請求項4】
前記低級アルコールがエタノールであることを特徴する請求項3記載の核内受容体賦活剤。
【請求項5】
前記核内受容体が、PPARおよびRXRから選択される少なくとも1の受容体である請求項1から4のいずれかに記載の賦活剤。
【請求項6】
前記PPARが、PPARα、PPARδ及びPPARγから選択される少なくとも1の受容体である請求項5に記載の賦活剤、
【請求項7】
前記RXRが、RXRα、RXRβ及びRXRγから選択される少なくとも1の受容体である請求項5に記載の賦活剤、
【請求項8】
高脂血症、糖尿病、動脈硬化、高血圧症または肥満、あるいはメタボリックシンドロームの予防、治療または改善用である請求項1から7のいずれかに記載の賦活剤。
【請求項9】
炎症の予防、治療または改善用である請求項1から7のいずれかに記載の賦活剤。
【請求項10】
アルツハイマー症候群の予防、治療または改善用である請求項1から7のいずれかに記載の賦活剤。
【請求項11】
各種癌の予防、治療または改善用である請求項1から7のいずれかに記載の賦活剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−149004(P2012−149004A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8336(P2011−8336)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(507186687)株式会社セラバリューズ (13)
【Fターム(参考)】