説明

核医学診断装置

【課題】継続して動作させスループットを向上させる核医学診断装置を提供する。
【解決手段】医学診断装置を構成するデータ収集システムユニットには、IC基板の温度上昇に伴う故障防止のため複数の冷却ファンが備えられ、冷却ファンそれぞれの回転速度を第一閾値と比較し、上回っていれば放熱が十分と判断する。次に、第一閾値を下回っている冷却ファンの回転速度を第一閾値よりも小さい第二閾値と比較し、第二閾値を超えていた場合には警告信号を発生させる。また、少なくとも1つの冷却ファンの回転速度が第二閾値以下である場合、その冷却ファンの回転速度を上昇させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、核医学診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
核医学診断装置は、例えば、以下のようにPET収集を行っている(例えば、特許文献1参照)。まず、陽電子(positron)を放出する放射性同位元素で標識された薬剤が被検体に投与される。核医学診断装置は、被検体の周囲にリング状に配置された複数の光検出器を利用して、被検体内から放出されるガンマ線を繰り返し検出する。そして、ガンマ線の検出時刻をタイムスタンプとして利用し、所定の時間枠内で検出された2本のガンマ線を同定する。同定された2本のガンマ線は、同一の対消滅点から発生されたものと推定される。核医学診断装置は、同時計測された一対の検出器を結ぶ線(LOR:line of resp onse)上に対消滅点があると推定する。このように、同一の対消滅点から発生された2本のガンマ線を同定することは、同時計測(コインシデンス)と呼ばれている。核医学診断装置は、LORに関する光検出器からの出力信号に基づいてPET画像のデータを発生している。
【0003】
従来の核医学診断装置においては、データ収集システムに設けられるIC基板が、温度により故障する可能性を検出した場合に、IC基板の故障を防止するために装置全体をOFFする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−279652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の方法では、IC基板が温度により故障する可能性をした場合に装置全体をOFFするため、ユーザーは臨床の場において検査を継続することができない。
【0006】
目的は、装置ができるだけ継続して動作することによりスループットを向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る核医学診断装置は、被検体に投与された放射線同意元素から放出されるガンマ線を検出する複数のガンマ線検出器と、前記複数のガンマ線検出器にそれぞれ隣接して設けられ、アナログーデジタル回路が形成された複数のデータ収集システムと、前記複数のデータ収集システムそれぞれに対して電力を供給する電力供給部と、前記複数のデータ収集システムそれぞれを冷却するための複数の冷却ファンを有する複数の冷却ファンユニットと、前記複数の冷却ファンそれぞれの回転速度を第一閾値と比較する第一比較部と、前記複数の冷却ファンのうち、前記第一閾値を超える冷却ファンの回転速度を第二閾値と比較する第二比較部と、前記複数の冷却ファンそれぞれの回転速度が前記第一閾値を超えた場合、前記複数のデータ収集システムそれぞれに対して電力供給を続けさせるために前記電力供給部を制御し、前記複数の冷却ファンそれぞれの回転速度が前記第一閾値以下であり、前記第二閾値を超えた場合、警告信号を発生させるための出力制御信号を発生するとともに、前記複数のデータ収集システムそれぞれに対して電力供給を続けさせるために前記電力供給部を制御し、前記複数の冷却ファンのうち少なくとも1つの冷却ファンの回転速度が前記第二閾値以下である場合、前記回転速度が前記第二閾値以外を示す冷却ファンの回転速度を上昇させるために前記冷却ファンユニットを制御する第一制御部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】本実施形態に係るPET−CTの構成を示すブロック図である。
【図1B】図1AにおけるPET架台2の構成をより詳細に示したブロック図である。
【図2】図1Bにおけるガンマ線検出器21の詳細を示す図である。
【図3】図1Bにおける、PET装置におけるデータ収集システムユニット22とガンマ線検出器21とシステム制御部11と、IC基板75及び電力供給部40との関係をより詳細に示した図である。
【図4A】図3における、PET装置におけるデータ収集システムユニット22の構造を詳細に示した図である。
【図4B】冷却ファン84と、冷却ファンユニット841の構造を模式的に示した図である。
【図5】本実施形態に係る、PET装置における同一のデータ収集システムユニット22に存在する冷却ファン843それぞれについての冷却ファン回転速度検出から始まる縮退モードの流れを示した図である。
【図6】本実施形態に係る、PET装置における同一のデータ収集システムユニット22に存在する冷却ファン843毎の放熱温度検出から始まる縮退モードの流れを示した図である。
【図7】本実施形態に係る、PET装置における同一のデータ収集システムユニット22に存在するIC基板75の周囲温度検出から始まる縮退モードの流れを示した図である。
【図8】図7に記載された画像補正の詳細を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる核医学診断装置について説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。なお本実施形態に係る核医学診断装置とは、ガンマカメラ、SPECT、PETのいずれかである。以下の説明では、PETを有するPETーCT装置として説明する。
【0010】
図1Aは、本発明によるPET−CT装置全体の構成を示すブロック図である。PET−CT装置100は、X線により被検体Pの断層撮像を行う撮影部を有するCT架台1と、被検体Pに放射線薬剤を投与し、被検体Pの体内から放出されるポジトロンを撮影することにより被検体Pの断層撮影を行う撮影部を有するPET架台2と、被検体Pを戴置する天板59と、天板59を支持すると共に天板59を移動させる寝台5と、CT架台1におけるX線照射に必要な高電圧を発生する高電圧発生部92、及びX線制御部91とを備えている。
【0011】
また、PET−CT装置100は、CT架台1のチルト、PET架台2の移動、寝台5の移動、或いは天板59の移動を行う機構部4と、CT架台1及びPET架台2の検出器において検出、収集されたデータの処理を行う画像発生部6と、画像発生部6で処理された画像データの表示を行う表示部9とを備えている。
【0012】
更に、PET−CT装置100は、CT架台1或いはPET架台2による撮影で被検体Pを所望の撮影部位に設定する際、寝台5の位置決めを行うための寝台位置検出部7と、PET架台2の位置決めを行うためのPET位置検出部8とを備えている。
【0013】
そして、PET−CT装置100は、被検体情報、撮影条件、表示条件など諸条件の選択や入力、種々のコマンドの入力を行う操作部10と、PET−CT装置100の上記各ユニットを統括して制御するシステム制御部11とを備えている。
【0014】
CT架台1は、中央に天板59の被検体Pが送りこまれるほぼ円筒状のCT開口部14と、被検体Pに対しX線を照射するX線管15と、被検体Pを介してX線管15に対向して配置され、被検体Pを透過したX線を検出し電気信号に変換するX線検出器12と、X線検出器12から出力される電気信号を収集して処理するデータ収集システム13と、CT架台1のCT開口部14の外周にX線管15、X線検出器14、及びデータ収集システム部13を回転可能に支持する回転リング(図示しない)を備えている。そして、CT架台1は、図示しない保持部によってこの回転リングの中心を通り回転リング面に平行な水平軸を軸にしてチルト可能に保持されている。
【0015】
一方、PET架台2は、中央に天板59上の被検体Pが送り込まれるほぼ円筒状のPET開口部23と、PET開口部23の外周にリング状に配列された、放射性同位元素を投与した被検体Pの体内から放出されるポジトロンを光信号に変換し、更に変換された光信号を電気信号に変換して出力するガンマ線検出器21と、ガンマ線検出器21から出力される電気信号を処理するデータ収集システム94とを備えている。
【0016】
機構部4は、CT架台1をチルトするCT架台チルト機構41と、天板59を上下及び天板59の長手方向に水平移動させる天板移動機構42と、PET架台2を被検体Pの体軸方向に移動させるPET架台移動機構43と、CT架台1或いはPET架台2による撮影のために寝台5をCT架台1及びPET架台2の開口部方向に移動させる寝台移動機構44と、CT架台チルト機構41、天板移動機構42、PET架台移動機構43、及び寝台移動機構44、及び図1Bに示される電力供給部40とを制御する架台・天板・寝台機構制御部45とを備えている。
【0017】
高電圧発生部92には、X線管15の陰極から発生する熱電子を加速するために、陽極と陰極との間に印加する高電圧を発生させる高電圧発生部92と、システム制御部11からの指示信号に従い、高電圧発生部92における管電流、管電圧、照射時間等のX線照射条件の制御を行うX線制御部91とを備えている。
【0018】
画像発生部6は、CT架台1から送られてきたデータを処理してCT画像データを発生するCT画像処理部61と、PET架台2から送られてきたデータを処理してPET画像データを発生するPET画像処理部62と、CT画像処理部61が発生したCT画像データをPET画像処理部62が発生したPET画像データに重ね合わせて合成処理を行いPET−CT画像データを発生する画像処理部63とを備えている。
【0019】
寝台位置検出器7は、CT架台1による撮影を行う場合に、PET架台撮影位置からCT撮影位置へ移動する寝台5を検出するためのCT撮影用寝台位置検出器71と、PET架台2による撮影を行う場合に、CT撮影位置からPET架台撮影位置へ移動する寝台5を検出するためのPET撮影用寝台位置検出器72とを備えている。
【0020】
PET位置検出器8は、PET架台2による撮影の場合にPET架台2のPET架台待機位置からPET架台撮影位置へ移動するPET架台2を検出するためのPET架台撮影位置検出器81と、CT架台1による撮影の場合にPET架台撮影位置からPET架台2のPET架台待機位置へ移動するPET架台2を検出するためのPET架台待機位置検出器82とを備えている。
【0021】
そして、寝台位置検出部7及びPET位置検出器8で検出された信号は、サーボアンプ等で構成された架台・天板・寝台機構制御部45に送られ、架台・天板・寝台機構制御部45はそれらの信号に基づき、寝台移動機構44及びPET架台移動機構43の駆動モータを表示する液晶やCRT等のモニタを備えている。
【0022】
表示部9は、再構成部57により再構成されたPET画像を表示デバイスに表示する。表示デバイスとしては、CRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等が適宜利用可能である。
【0023】
操作部10は、キーボード、トラックボールジョイスティック、マウス等の入力デバイスや表示パネル、更には、各種スイッチ等を備えたインターフェイスであり、年齢、性別、体格、検査部位、検査方法、過去の診断履歴等被検体の情報等の各種撮影条件の設定、各種コマンドの入力を行う。
【0024】
システム制御部11は、システム制御部11は、PET−CT装置の中枢として機能する。システム制御部11は、メモリやCPUなどを有する。例えば、自身が有するメモリに専用プログラムを展開し、この専用プログラムに従って各部を制御することによりPET収集やPET画像の再構成処理を行う。操作部10から供給されるコマンド信号、撮影条件等の情報を一旦記憶した後、これらの情報に基づいたCT画像データ、PET画像データ、或いはPET/CT画像データの発生と表示、移動機構に関する制御、及び図2に示される電力供給部40への電力供給のオンとオフを制御する。
【0025】
図1Bは、図1AにおけるPET架台2とPET画像処理部62とシステム制御部11との関係をより具体的に示したブロック図である。図1Bに示すようにPETは、PET架台2とPET画像処理部62とを有している。PET架台2は、筐体内部に検出器ブロック30を有している。
【0026】
ガンマ線検出器21を備えている回転リングの開口部には、被検体Pを戴置可能な天板59が挿入される。ガンマ線検出器21を備えている回転リングは、天板の長軸周りに円周状に配列された複数の検出器ブロック30を有している。典型的には、ガンマ検出器21を備える回転リングは、天板の長軸に沿って複数配列される。
【0027】
図2は、検出器ブロック30の詳細な構造を示す図である。なお図2(図1も同様)には、簡単のため1つの検出器ブロック30しか図示されていないが、実際の筐体内部にはより多くの検出器ブロック30を搭載可能である。
【0028】
各検出器ブロック30は、図2に示すように、ガンマ線検出器21とフロントエンド回路35とを装備している。
【0029】
ガンマ線検出器21は、ガンマ線を検出し、検出されたガンマ線の強度に応じた電気信号を生成する。具体的には、ガンマ線検出器21は、被検体内から放出されたガンマ線を検出し、検出されたガンマ線の強度に応じたアナログの電気信号を生成する。また、ガンマ線検出器21は、レーザーパルス発生器(図示しない)から入射されたレーザーパルスを検出し、検出されたレーザーパルスの強度に応じたアナログの電気信号を発生する。
【0030】
具体的には、各ガンマ線検出器21は、図2に示されるように複数のシンチレータ(クリスタル)331、ライトガイド333、及び光電子増倍管335が接合されている。
【0031】
各シンチレータ331は、直方体状に成形されたシンチレータ結晶からなる。シンチレータ結晶は、ガンマ線が入射されると蛍光を発生する物質である。シンチレータ結晶は、例えば、NaI(ヨウ化ナトリウム)やBGO(ビスマス酸ジャーマネイト)、LSO(ケイ酸ルテチウムにセリウムを一定量添加したもの)等が用いられる。1つの検出器ブロック30には、2次元状に配列された複数のシンチレータ331が搭載される。
【0032】
図1Bにおけるエネルギー計算部351は、光電子増倍管335からの電気信号に基づいて、ガンマ線検出器21に入射された光のエネルギー値に応じた強度を有する電気信号(エネルギー信号)を発生する。
【0033】
光電子増倍管335は、光電面がライトガイド333側に向くようにライトガイド333に光学的に接合されている。光電子増倍管335の光電面の反対側の面には、フロントエンド回路35が接合されている。光電子増倍管335は、ライトガイド333を介してシンチレーター331から蛍光を受光し、受光された蛍光を増幅し、増幅された蛍光の光量に応じたパルス状の電気信号を発生する。また、光電子増倍管335は、ライトガイド333に入射されたレーザーパルスを受光し、受光されたレーザーパルスを増幅し、増幅されたレーザーパルスの光量に応じたパルス状の電気信号を発生する。このように光電子増倍管335は、電気信号発生部として機能する。発生された電気パルスは、フロントエンド回路35に供給される。なお、光電子増倍管335の代わりに、電気信号発生部として機能するフォトダイオ―ドを設けても良い。
【0034】
フロントエンド回路35は、図1Bに示すエネルギー計算部351、位置計算部353、及び検出時刻計測部355の機能を有する。
【0035】
位置計算部353は、光電子増倍管335からの電気信号に基づいて、光が入射した位置座標に応じた強度を有する電気信号(位置信号)を生成する。典型的には、位置座標は、光が発生したシンチレーター331の位置座標である。ガンマ線は実際にシンチレータ331に入射する。従って、位置計算部353により計算されるガンマ線は実際にシンチレーター331に入射しない。従って、位置計算部353により計算されるレーザーパルスの位置座標は、架空の位置座標であるといえる。生成された位置信号は、PET画像処理部62の検出時刻リスト記憶部51に供給される。
【0036】
PET画像処理部62は、検出時刻リスト記憶部51、出力値推定部53、同時計測部55、再構成部57とを有する。
【0037】
検出時刻リスト記憶部51は、検出時刻リストのデータを記憶する。検出時刻リストは、少なくともイベントデータと検出時刻データとがイベント毎に関連付けられたリストである。検出時刻リスト上においては、ガンマ線イベントの検出時刻がタイムスタンプとして利用されている。検出時刻リストは、全ての光電子増倍管335について1つ発生されるとしても、検出器ブロック30毎に発生されるとしてもよい。
【0038】
出力値推定部53は、故障したIC基板75が存在する場合に、故障したIC基板75以外の複数のIC基板75を用いて、前述した故障したIC基板75の出力値を推定する。出力値推定部53における詳しい出力推定方法については後述する。
【0039】
同時計測部55は、相対時間を利用してガンマ線イベントの同時計測を行う。具体的には、同時計測部55は、相対時間リストの中から予め定められた時間枠内に収まる2つのガンマ線イベントを繰り返し同定し、この2つのガンマ線イベントに関するイベントデータを繰り返し同定する。特定された2つのガンマ線イベントは、同一の対消滅点から発生された一対のガンマ線に由来すると推定される。一対のガンマ線を検出した一対のガンマ線検出器21間を結ぶ線は、LOR(line of interest)と呼ばれている。同時計測を繰り返し行うことにより、LORに関するイベントデータが同定される。
【0040】
再構成部57は、被検体内の放射性同位元素の濃度分布を表すPET画像のデータを再構成する。
【0041】
図3は、図1Aに示されるPET装置におけるデータ収集システム94の構造をより詳細に示した図である。データ収集システム94は、複数のデータ収集システムユニット22から構成されている。各データ収集システムユニット22は、複数のIC基板75、及び複数のIC基板75の周辺に配置され、複数のIC基板75それぞれに対応した複数の温度センサーとを有する。データ収集システムユニット22が円弧状に4個配置されているものとして図3に記載しているが、その数は4個に限定されるものではない。同様に、1つのデータ収集システムユニット22に配置されるIC基板75の個数についても4個配置されるものとして記載されているが、その個数についても4個に限定されるものではない。電力供給部40は、電力供給線90を介して、データ収集システムユニット22それぞれに対して電力を独立に供給する。電力供給部40は、電力供給線90に対して個別に電力供給を停止するのに必要な構成を備える。IC基板75の周辺には、IC基板75それぞれからの放熱温度を検出するための温度センサー95が、IC基板75毎に配置される。図3では、一例としてIC基板75の上部に温度センサー95を配置するものとして図示している。ある条件(後述する)を満たすデータ収集システムユニット22に対して電力供給を止めるように、システム制御部11は、電力供給部40を制御する。IC基板75は、基板自体の温度上昇に伴い、故障する可能性があるため、故障防止のために、データ収集システムユニット22内部の熱を放出するための冷却ファン843、回転速度比較部46、及び温度比較部47とが設けられる。
【0042】
図4Aは、図3における本実施形態に係るPET装置におけるデータ収集システムユニット22内の構造をより詳細に示した図である。データ収集システムユニット22の内部から外部へ向かって放出される温度が閾値を超えているかどうかを比較する温度比較部47、冷却ファン843の回転速度を閾値と比較する回転速度比較部46、及び冷却ファン部84が設けられている。
【0043】
図4Bは、図4Aにおける冷却ファン部84をさらに詳細に示した図である。冷却ファン部84は、冷却ファン843及び冷却ファンユニット841で構成されている。
【0044】
以下図5から図7の流れを説明する。図5から図7各々における制御は、データ収集システムユニット22内の状態の悪化程度に応じて、装置の動作状態を変化させるため縮退モードと呼ばれる。
【0045】
図5は、本実施形態に係る同一のデータ収集システムユニット22に存在する冷却ファン843それぞれについての冷却ファン回転速度検出から始まる縮退モードの流れを示した図である。つまり、図5は、ある1個のデータ収集システムユニット22内に限っての制御を示したフローである。まず、回転速度比較部46において、冷却ファン843の回転速度がある閾値(ここでは、第一閾値とする)より上回っているかどうかを比較する(S11)。冷却ファン843の回転速度が第一閾値を上回っている場合においては、データ収集システムユニット22から外部へ放出される熱が十分であるため、第一閾値を上回る回転速度を有する冷却ファン843を設けるデータ収集システムユニット22それぞれに対して電力供給を続ける。冷却ファン843の回転速度が第一閾値以下である場合においては、再度、回転速度比較部46において冷却ファン843の回転速度を、第一閾値よりも下回る数値である第二閾値と比較する(S12)。冷却ファン843の回転速度が第二閾値を上回る場合には、システム制御部11において、警告信号を発生させるための出力制御信号を発生するとともに、複数のデータ収集システムユニット22それぞれに対して電力供給を続けるために電力供給部40を制御する。冷却ファン843の回転速度が第二閾値以下である場合には、システム制御部11において、同一のデータ収集システムユニット22内に存在し、第二閾値以下である回転速度を有する冷却ファン843以外の少なくとも1つの冷却ファン843を対象として、回転速度を上げる(S13)。次に、温度比較部47において、同一のデータ収集システムユニット22内に存在する冷却ファン843からの放熱温度が第三閾値より上回っているかどうかを比較する(S14)。冷却ファン843からの放熱温度が第三閾値以下である場合、警告信号を発生させるための出力制御信号を発生するとともに、第三閾値以下の放熱温度を有する冷却ファン843を備えるデータ収集システムユニット22に対して電力供給を続けさせるためにシステム制御部11は、電力供給部40を制御する。冷却ファン843からの放熱温度が第三閾値より上回る場合、警告信号を発生させるための出力制御信号を発生するとともに、第三閾値を上回る放熱温度を有する冷却ファン843を設けるデータ収集システムユニット22に対して電力供給を止めるように電力供給線90を介してシステム制御部11が制御する(S15)。電力供給が続いているデータ収集システムユニット22を用いて装置の動作が継続される。
【0046】
図6は、本実施形態に係るPET装置における同一のデータ収集システムユニット22に存在する冷却ファン843毎の放熱温度検出から始まる縮退モードの流れを示した図である。つまり、図6は、ある1個のデータ収集システムユニット22内に限っての制御を示したフローである。さらに、図6は、ある1個のデータ収集システムユニット22内に備えられるある特定の1個の冷却ファン843の温度検出に関するフローである。初めに、温度比較部47において、冷却ファン843からの放熱温度を第一閾値と比較する(S21)。冷却ファン843からの放熱温度が第一閾値以下である場合、システム制御部11は、第一閾値以下である放熱温度を有するIC基板75を設けるデータ収集システムユニット22それぞれに対して、電力供給部40が電力を送るようシステム制御部11は、電力供給部40を制御する。冷却ファン843からの放熱温度が第一閾値を超えた場合、冷却ファン843の回転速度を上げる(S22)。その後、同様にして、温度比較部47において、冷却ファン843からの放熱温度を第一閾値と比較する(S23)。冷却ファン843からの放熱温度が第一閾値以下である場合、システム制御部11は、第一閾値以下である放熱温度を有するIC基板75を設けるデータ収集システムユニット22それぞれに対して、電力を供給するよう電力供給部40をシステム制御部11が制御する。冷却ファン843からの放熱温度が第一閾値より上回る場合、放熱温度が第一閾値以上である冷却ファン843を有するデータ収集システムユニット22それぞれに対して電力供給を止めるようにシステム制御部11は、電力供給線90を介して電力供給部40を制御する(S24)。電力供給を止めたデータ収集システムユニット22以外の複数のデータ収集システムユニット22を用いて装置の操作を継続させる。
【0047】
図7は、本実施形態に係る同一のデータ収集システムユニット22に存在するIC基板75の周囲温度検出から始まる縮退モードの流れを示した図である。すなわち、図7は、ある1個のデータ収集システムユニット22内に限っての制御を示したフローである。また、図7のフローは、ある特定の1つのデータ収集システムユニット22において設けられるIC基板75全てを対象としたフローである。まず、同一のデータ収集システムユニット22における複数のIC基板75を対象として、温度比較部47において、IC基板75それぞれ周囲の温度を第一閾値と比較する(S31)。放熱温度が第一閾値を超えるIC基板75が、同一のデータ収集システムユニット22内に存在しない場合、システム制御部11は、放熱温度が第一閾値を超えるIC基板75が存在しないデータ収集システムユニット22それぞれに対して電力を供給し続けるように電力供給部40を制御する。第一閾値を超える放熱温度を有するIC基板75が同一のデータ収集システムユニット22において1個存在する場合、警告信号を発生させるための出力制御信号を発生するとともに、出力値推定部32において後述する画像補正処理を行い、装置の動作を継続させる(S32)。放熱温度が第一閾値を超えるIC基板75が、同一のデータ収集システムユニット22内において2つ以上存在する場合、警告信号を発生するとともに、放熱温度が第一閾値を超えるIC基板75を2つ以上有するデータ収集システムユニット22それぞれに対して電力供給を止める(S33)。電力供給を止めたデータ収集システムユニット22以外の複数のデータ収集システムユニット22を用いて装置の操作を継続させる。
【0048】
また、図5から図7それぞれに示されるようなフローチャート(縮退モード動作)を組み合わせて装置を動作させても良い。
【0049】
図8は、放熱温度が第一閾値を超えるIC基板75が1つである場合の画像補正方法である。以下図8におけるガンマ線検出器21(D)が使用不可の状態であるものとする。ガンマ線検出器21(D)の両端に存在する2つのガンマ線検出器21(D及びD)と、ガンマ検出器21(D)の両端に存在する2つのガンマ線検出器21(D及びD)と対向する位置に存在する2つのガンマ線検出器21(D及びD)の出力値に基づいて、出力値推定部32において、ガンマ線検出器21(D)の出力値を推定する。被検体に投与された放射線同意元素から放出されるガンマ線は、消滅放射線発生点を挟んで対向するガンマ線検出器21で検出される。エネルギー保存則により、対向するガンマ線検出器21(例えば、D及びD)で検出される放射線エネルギーの総和は、一定である。また、ガンマ線検出器21(D)に隣接する2つのガンマ線検出器21(D及びD)と、対向する位置に存在する2つのガンマ線検出器21(D及びD)で検出されるガンマ線の起点は同一であると推定される。さらに、ガンマ線検出器21(D)に隣接している2つのガンマ線検出器21のペア((D及びD)と(D及びD))の出力は、ガンマ線検出器21(D及びD)の出力の仕方と類似していると考えられるため、ガンマ線検出器21(D)の出力がわかれば、ガンマ線検出器21(D)の出力が推定できる。従って、推定されたガンマ線検出器21(D)の出力値に基づいて画像補正が可能となる。
【0050】
以上本発明によれば、PET装置におけるデータ収集システムユニット22内の悪化状態に応じた制御を行うことで、ユーザーの負担を軽減した上で、スループットの向上を可能にする核医学診断装置の提供を実現することができる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
P…被検体、1…CT架台、2…PET架台、4…機構部、5…寝台、6…画像発生部、7…寝台位置検出器、8…PET位置検出器、9…表示部、10…操作部、11…システム制御部、12…X線検出器、13…CT装置におけるデータ収集システム、14…CT開口部、15…X線管、21…ガンマ線検出器、22…PET装置におけるデータ収集システムユニット、23…PET開口部、30…検出器ブロック、32…出力値推定部、331…シンチレータ、333…ライトガイド、335…光電子増倍管、35…フロントエンド回路、351…エネルギー計算部、353…位置計算部、355…検出時刻計測部、40…電力供給部、41…CT架台チルト機構、42…天板移動機構、43…PET架台移動機構、44…寝台移動機構、45…架台・天板・寝台機構制御部、46…回転速度比較部、47…温度比較部、51…検出時刻リスト記憶部、53…出力値推定部、55…同時計測部、57…再構成部、59…天板、61…CT画像処理部、62…PET画像処理部、63…画像処理部、71…CT撮影用寝台位置検出器、72…PET撮影用寝台位置検出器、75…IC基板、81…PET架台撮影位置検出器、82…PET架台待機位置検出器、84…冷却ファン部、841…冷却ファンユニット、843…冷却ファン、90…電力供給線、91…X線制御部、92…高電圧発生部、94…PET装置におけるデータ収集システム、95…温度センサー、100…PET−CT装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に投与された放射線同意元素から放出されるガンマ線を検出する複数のガンマ線検出器と、
前記複数のガンマ線検出器にそれぞれ隣接して設けられ、アナログーデジタル回路が形成された複数のデータ収集システムと、
前記複数のデータ収集システムそれぞれに対して電力を供給する電力供給部と、
前記複数のデータ収集システムそれぞれを冷却するための複数の冷却ファンを有する複数の冷却ファンユニットと、
前記複数の冷却ファンそれぞれの回転速度を第一閾値と比較する第一回転速度比較部と、
前記複数の冷却ファンのうち、前記第一閾値を超える冷却ファンの回転速度を第二閾値と比較する第二回転速度比較部と、
前記複数の冷却ファンそれぞれの回転速度が前記第一閾値を超えた場合、前記複数のデータ収集システムそれぞれに対して電力供給を続けさせるために前記電力供給部を制御し、
前記複数の冷却ファンそれぞれの回転速度が前記第一閾値以下であり、前記第二閾値を超えた場合、警告信号を発生させるための出力制御信号を発生するとともに、前記複数のデータ収集システムそれぞれに対して電力供給を続けさせるために前記電力供給部を制御し、
前記複数の冷却ファンのうち少なくとも1つの冷却ファンの回転速度が前記第二閾値以下である場合、前記回転速度が前記第二閾値以外を示す冷却ファンの回転速度を上昇させるために前記冷却ファンユニットを制御する制御部と、
を具備する核医学診断装置。
【請求項2】
前記複数のデータ収集システムそれぞれに設けられ、前記複数の冷却ファンそれぞれからの放熱温度を検出する複数の放熱温度検出部と、
前記複数の冷却ファンそれぞれからの放熱温度を第三閾値と比較する温度比較部とを具備し、
前記制御部は、前記第三閾値を超える放熱温度を検出した前記放熱温度検出部が取り付けられたデータ収集システムに対して電力供給を止めるために前記電力供給部を制御し、
前記第三閾値以下の放熱温度を検出した前記放熱温度検出部が取り付けられたデータ収集システムに対して電力供給を続けるために前記電力供給部を制御するとともに、警告信号を発生させるための出力制御信号を発生することを特徴とする
請求項1記載の核医学診断装置。
【請求項3】
被検体に投与された放射性同位元素から放出される複数のガンマ線を検出する複数のガンマ線検出器と、
前記複数のガンマ線検出器に隣接して設けられ、アナログーデジタル回路が形成された複数のデータ収集システムと、
前記複数のデータ収集システムそれぞれに対して電力を供給する電力供給部と、
前記複数のデータ収集システムそれぞれを冷却するための複数の冷却ファンを有する複数の冷却ファンユニットと、
前記複数のデータ収集システムそれぞれに複数設けられ、前記複数の冷却ファンそれぞれからの放熱温度を第一閾値と比較する第三比較部と、
前記放熱温度が前記第一閾値を上回る場合、前記複数の冷却ファンそれぞれの回転速度を上げるために前記複数の冷却ファンユニットそれぞれを制御する制御部と、
を具備する
核医学診断装置。
【請求項4】
前記第一比較部は、前記制御部により冷却ファン回転速度を上昇させた後、前記放熱温度を前記第一閾値と比較し、
前記制御部は、前記放熱温度が前記第一閾値を超えたと判定した場合、警告信号を発生させるための出力制御信号を発生するとともに、前記複数のデータ収集システムのうち、前記第一閾値を超える放熱温度を放出するデータ収集システムに対して電力供給を止めるために前記電力供給部を制御する制御し、
前記放熱温度が前記第一閾値を下回ると判定した場合、前記複数のデータ収集回路それぞれに対して電力供給を続けるために前記電力供給部を制御することを特徴とする
請求項3記載の核医学診断装置。
【請求項5】
被検体に投与された放射性同位元素から放出されるガンマ線を検出する複数のガンマ線検出器と、
前記複数のガンマ線検出器に隣接して設けられ、アナログーデジタル変換回路が形成された複数のデータ収集システムと、
前記複数のガンマ線検出器にそれぞれ対応し、前記複数のデータ収集システムそれぞれの中に設けられた複数のIC基板と、
前記複数のデータ収集システムそれぞれに対して電力を供給する電力供給部と、
前記複数のデータ収集システム内に設置され、前記複数のIC基板各々周辺の温度を検出する温度センサーと、
前記温度センサーの出力値に基づいて、前記複数のIC基板各々からの放熱温度を第一閾値と比較する温度比較部と、
前記複数のIC基板のうち、前記第一閾値を超えたIC基板が二つ以上存在する場合、前記第一閾値を超えた二つ以上のIC基板を有するデータ収集システムに対して電力供給を止めるために前記電力供給部を制御し、
前記複数のIC基板のうち、前記第一閾値を超えたIC基板が一つである場合、警告信号を発生させるための出力制御信号を発生するとともに、前記複数のデータ収集システムそれぞれに対して電力供給を続けるために前記電力供給部を制御し、
前記第一閾値を超えたIC基板がない場合、前記複数のデータ収集システムそれぞれに対して電力供給を続けるために前記電力供給部を制御する制御部とを具備する
核医学診断装置。
【請求項6】
被検体に投与された放射性同位元素から放出される複数のガンマ線を検出する複数のガンマ線検出器と、
前記複数のIC基板のうち、前記第一閾値を超えたIC基板が一つである場合、前記第一閾値を超えた一つのIC基板に対応する第一検出器に隣接する二つの第二検出器と前記二つの第二検出器と消滅放射線発生点を挟んで位置する二つの第三検出器とを用いて前記第一の検出器の出力値を推定する方法を用いて前記第一検出器の出力を推定する出力値推定部とを具備する
請求項5記載の核医学診断装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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