説明

核磁気共鳴技術のための細胞標識

本発明は、部分的には、フルオロカーボン画像化試薬及び細胞の生体外標識用の組成物を提供する。標識された細胞は、磁気共鳴映像法(MRI)又は磁気共鳴分光法(MRS)のような核磁気共鳴技術によって生体内又は生体外で検出できる。さらに、本発明は、様々な臨床的手法において該画像化試薬を使用するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核磁気共鳴技術によって検出できるフルオロカーボン画像化試薬のような画像化試薬により生体外で細胞を標識するための新規な方法及び試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
多くの生物学的過程は、動的な移動細胞集団によって成し遂げられる。例えば、免疫系の細胞は、血流から炎症又は感染領域に補充され、この関係部位で免疫細胞の蓄積が生ずる。自己免疫疾患、癌及び感染症に冒された組織では、多くの場合、免疫細胞の著しい浸潤が生ずる。同様に、移植の拒絶反応は、移植された組織に入り込み、そしてこれを破壊する宿主免疫細胞によって仲介される。また、骨髄に由来する幹細胞が血流を介して移動し、そして損傷を受けた組織の再生に関与するという証拠も増えつつある。
【0003】
動的細胞集団は、重大な疾患において重要な役割を果たすが、細胞の移動を生体内で監視するための現在の技術は非常に限られている。典型的には、細胞の移動は、組織生検の組織学的分析によって得られる「スナップ写真」でのみ監視されている。しかしながら、組織の試料を採取する方法は、しばしば細胞の挙動を変化させ、そして特定の組織又は器官から限定された数の生検しか得られない。試験管内アッセイによる細胞の移動及び生体外での単離組織を検査することによっていくらかの進展が見られた。生体の非浸潤分析用の既存装置は、現時点では、生細胞を追跡するのには不適当である。生物発光(例えば、ルシフェラーゼ)技術のような光系画像化技術は、多くの場合、ほとんどのほ乳類組織が光学的に不透明なため、深層構造の視覚化には効果がない。放射活性物質で標識されたプローブを使用する陽電子放出型断層撮影(PET)技術は高感度である。しかしながら、PET計測器は、多くの場合数ミリメートルの解像度に制限され、しかも組織及び器官の細部を分解することができない。さらに、標識された細胞は、典型的なPET放射性同位元素の半減期を超える期間については検出できず、そして一般に、PETは、長期間にわたる研究には有用でない。細胞過程に対する根本的な理解を深めるためには、特定の細胞型の集団動態を生体内で視覚化するための新規な方法を開発しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気共鳴映像法(MRI)は、非浸潤性であり、光学的に不透明な被検体を見える状態にし、そして適度に高い空間分解能で軟組織間の対照を与えるため、幅広く使用されている臨床診断ツールである。従来のMRIは、ほぼ例外なく生体構造を視覚化することに重点を置いており、かつ、任意の特定の細胞型に対するいかなる特異性も有していない。従来のMRIで使用される「プローブ」は、移動性の水分子中に偏在するプロトン(1H)である。外因性MRIプローブ又は試薬の新規な部類は、生体での細胞特異的な画像化を容易にする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
ある種の態様では、この開示は、核磁気共鳴技術によって検出できるフルオロカーボン画像化試薬のような画像化試薬により生体外で細胞を標識するための新規な方法及び試薬を提供する。標識された細胞は、被検体に投与され、そしてその後核磁気共鳴技術によって検出できる。核磁気共鳴技術の例としては、磁気共鳴映像法(MRI)及び局所的磁気共鳴分光法(MRS)が挙げられる。核磁気共鳴技術は非浸潤的手法として一般的に実施されているため、標識された細胞は、生体において1以上の時点で検出できる。また、標識された細胞は、細胞培養液、又は、本質的には、組織移植物、被検体から取り出された器官及び組織(移植者に移植される前でもよい)、人工的に発生させた組織及び様々なマトリックス並びに細胞を接種した構造体のような、核磁気共鳴技術が実施できる任意の他の環境中でも検出できる。
【0006】
ある種の態様では、この開示は、細胞を標識するための方法を提供する。このような方法は、生体外で細胞とフルオロカーボン画像化試薬とを該フルオロカーボン画像化試薬が該細胞と会合した状態になるような条件下で接触させることを含む。ペルフルオルポリエーテル(PFPE)が好適なフルオロカーボン画像化試薬の例である。ペルフルオルポリエーテルは、直鎖状又は環状であることができる(例えば、ペルフルオルクラウンエーテル)。随意に、細胞は、フルオロカーボン画像化試薬の取り込みを向上させる試薬の存在下で該フルオロカーボン画像化試薬と接触できる。陽イオン性脂質が好適な取り込み向上用の試薬である。他の当該試薬は本明細書に記載しており、また本明細書を考慮すると、斯界には公知である。フルオロカーボン画像化試薬は細胞によって内在化され得るが、また、このものは、細胞の細胞外表面とも会合し得る。細胞外表面との会合は、該画像化試薬を細胞の標的部位に結合させることによって増大できる。細胞の標的部分は、本質的には、細胞外の環境に露出したエピトープに結合する抗体のような、所望の細胞に結合する任意の分子的実体であることができる。画像化試薬の細胞への取り込みは、該画像化試薬を内在化部分に結合させることによって増大し得る。内在化部分とは、該画像化試薬が細胞に入るのを刺激し又は促進させる任意の分子的実体である。例としては、例えば、受容体仲介エンドサイトーシスによって内在化される受容体又は他の細胞表面蛋白質に結合する内在性ペプチド及び内在性部分が挙げられる。画像化試薬は、エマルジョンとして処方できる。細胞は、本質的に、真核細胞及び原核細胞を含めた任意の細胞であることができる。好ましい具体例では、該細胞は、ほ乳類細胞である。ある種の具体例では、該細胞は、樹状細胞のような免疫系の細胞である。また、細胞は、幹細胞、又は、細胞治療若しくは末梢血幹細胞移植若しくは骨髄移植のような移植の一部分として被検体に投与するために調製された細胞であることもできる。
【0007】
ある種の態様では、この開示は、フルオロカーボン画像化試薬を提供する。好ましいフルオロカーボン画像化試薬は、次の特性のうちの一つ以上を有する:単純で、理想的には化学シフトによるアーチファクトを最小化するための単一の狭い共鳴を有する19F NMRスペクトル;1分子当たり非常に多数のNMR当量弗素原子;及び多くの細胞型の効率的な標識を可能にするための処方に対する適合性。好ましいフルオロカーボン画像化試薬としては、直鎖状又は環状ペルフルオルエーテル(例えば、ペルフルオルクラウンエーテル)が挙げられる。好ましいペルフルオルクラウンエーテルとしては、ペルフルオル−15−クラウン−5、ペルフルオル−18−クラウン−6及びペルフルオル−12−クラウン−4が挙げられる。ある種の具体例では、フルオロカーボン画像化試薬は、平均式:
XO(Y−O)n
(式中、Yは、
【化1】

から選択され、nは8〜20の整数であり、X及びZは同一のものであり、しかもペルフルオルアルキル、ペルフルオルエーテル、フルオルアルキルであってフルオルアシル、カルボキシル、アミド又はエステルを末端基とするもの、メチロール、酸塩化物、アミド、アミジン、アクリレート及びエステルよりなる群から選択される。)
を有する過弗素化ポリエーテルである。特に好ましい具体例では、nは10〜12、最も好ましくは11である。さらなる具体例では、X及び/又はZは、さらなる部分の付加を促進させる基(例えば、カルボキシル基)を末端基とする。随意に、該画像化試薬は、追加の官能性部分を含む。この追加の官能性部分は、核磁気共鳴技術以外の技術による該試薬の検出を容易にする検出部分であることができる。検出部分の例としては、蛍光検出部分及びPET検出部分が挙げられる。したがって、本開示は、少なくとも1個の官能性部分を有する1個以上の重合体末端で誘導体化された直鎖状フルオロカーボンにおいて、該少なくとも1個の官能性部分が検出部分、親水性部分、標的部分及び細胞取り込み部分よりなる群から選択される、直鎖状フルオロカーボンを提供する。検出部分を取り入れると、1種以上の技術(例えば、PETとMRI又は蛍光顕微鏡とMRS)による検出を容易にする二重(又はそれよりも高次の)標識部分が創り出される。随意に、画像化試薬は、エマルジョンとして処方できる。好ましいエマルジョンは、体温(ヒトについては37℃)及び4℃又は室温(20〜25℃)のような貯蔵温度で安定であろう。好ましくは、エマルジョンは、対象の細胞による画像化試薬の取り込みを促進させるように設計される。エマルジョンは、10〜500nmの直径の平均粒度を有し得る(斯界に知られている方法によって算出されたときに、該エマルジョンが直径10nmよりも小さい又は直径500nmのよりも大きい粒子を含み得るが、10〜500nmの間に収まる相加平均粒径を有することを意味する。)。好ましくは、エマルジョンの平均粒径は、30〜300nm又は30〜200nmの間にあるであろう。ある態様では、本発明は、被検体の細胞の検出方法を提供する。方法は、該被検体にフルオロカーボン画像化試薬で標識された細胞を投与し、そして核磁気共鳴技術によって該被検体の少なくとも一部分を検査することを含み得る。このような分析としてはMRI又はMRSが挙げられるが、これは19Fの分布についてのデータを集め、かつ、その画像を生成することを含み得る。また、画像化には、慣用の解剖学的1H画像についてのデータを集め、かつ、これを生成することが含まれ得る。好ましい具体例では、19F及び1H画像は、随意に重ね合わせ又はオーバーレイによって生成され、そして比較される。随意に、標識された細胞が19F MRSを使用して検出され得る。好ましい具体例では、慣用の解剖学的1H画像をテンプレートとして使用して19F MRSについての1以上の局在化ボクセルの位置を案内する。
【0008】
いくつかの態様では、本発明は、標識細胞処方物を提供する。被検体への投与用の標識細胞処方物は、細胞と、該細胞と会合するフルオロカーボン画像化試薬と、随意成分として、薬剤として許容できる賦形剤とを含むことができる。
【0009】
この開示から明らかなように、ここに記載される方法は、様々な臨床診断法に有用であろう。例えば、本開示は、移植物受容体又はその他のタイプの細胞に基づいた治療の受容体のような受容体内でドナー細胞を検出するための方法を提供する。このような方法は、移植用細胞であって該移植用細胞の少なくとも一部分がフルオロカーボン画像化試薬で標識されたものを移植物受容体に投与し、そして該被検体の少なくとも一部分を核磁気共鳴技術によって検査し、それによって該標識細胞を検出することを含むことができる。標識細胞の検出は、1回又は繰り返し行われ、しかも移植物受容体における標識細胞の位置及び輸送についての情報を提供するように実施できる。細胞受容体の例としては、骨髄移植(又は造血幹細胞を含有するが、一般にはもっぱら骨髄、末梢血又は臍帯血に由来する細胞画分)の受容体及びその他の細胞又は臓器移植物の受容体が挙げられる。臓器移植物受容体としては、肝臓、心臓、肺、腎臓、膵臓組織、神経組織又はその他の移植物のようなドナー臓器の受容体が挙げられる。また、受容体としては、ドナー(自己細胞の場合には、該「ドナー」は、受容体と同一の個体である)から直接に得られ又は使用前に限定された若しくは広範囲の培養に付され得るドナー細胞の受容体も挙げられる。ドナー細胞は、本質的に、有用な細胞源として役立つ任意の組織に由来し、そしてこれには幹細胞(前駆細胞を含む)、例えば、造血幹細胞、血管芽細胞、肝幹細胞、神経幹細胞、筋肉幹細胞(例えば、衛星細胞)、心筋細胞の前駆細胞、膵幹細胞、血管内皮前駆細胞、間充織幹細胞、骨若しくは軟骨前駆細胞が含まれ、又は成熟細胞、例えば、樹状細胞、免疫細胞(例えば、T細胞、B細胞)、軟骨細胞、骨芽細胞などが含まれ得る。投与用の細胞は、同種、異種又はさらにはブタのような別の生物から得られ得る。本発明の他の態様は、以下の開示から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図面の簡単な説明
図1:19F NMRにより、様々な細胞型におけるPEPP標識を確認する。パネル(a)は、PFPE標識DCの282MHzでの19F NMRスペクトルを示す(右のピーク)。また、基準化合物であるトリフルオル酢酸(左)も示している。ペルフルオル−15−クラウン−5−エーテルからなるこのPFPE化合物は、右上に示している。パネル(b)は、PFPEで標識されたラット9L神経膠肉腫細胞、T細胞及びマクロファージについての19F NMRスペクトルを示している。しかして、多くの異なる細胞型が同程度の効率でPFPEで容易に標識できる。(b)のデータは、(a)と同様の標識及び測定手順を使用して測定した。
図2:PFPE標識DC(DCs+PFPE)及び非標識DC(コントロール)を含有する毛細管の試験管内(in vitro)MRIである。それぞれ1mmの直径の毛細管は、PBS中3×106個の細胞を含有した。左は慣用の1H画像であり、右は19F画像である。この毛細管は、アガロース中に埋め込まれる。両方の画像は、11.7T MRIシステムにおいて標準的な2DFTスピンエコーパルスシーケンスを使用して取得した。1H画像は、256×256の像点、〜25μmの面内解像度及び1mmのスライス厚で取得し、19Fは64×64点、100μmの面内解像度及び1mmのスライス厚で取得した。
図3:PFPE標識DCを筋肉注射した後のマウス大腿四頭筋の生体内(in vivo)MRIである。19F及び1H冠状画像並びに19F+1H複合画像を示している(左〜右)。19F画像は、「熱した鉄」強度のスケールで示しており、そして複合画像(右)では、19Fは半透明にしている。1H画像は、256×256の像点、〜50μmの面内解像度及び1mmのスライス厚で取得し、そして19Fは、64×64の像点、〜200μmの面内解像度及び1mmのスライス厚で取得した。右下隅のスケールバーは5mmである。このマウスは、画像化セッションの間、麻酔がかけられ、挿管され、そしてベンチレーター上に置かれた。
図4:後足のパッドへの注射後のマウス膝窩リンパ節へのDCの移動の生体内MRIである。PFPE標識DC(3×106)を〜4時間前に注射した。左足は、足首並びに膝窩リンパ節と一致する位置での標識DCの蓄積を明らかに示している。これらの冠状画像は、図3で説明したのと同様の態様で取得し、そして処理した。1H画像は、256×256の像点、〜50μmの面内解像度及び1.25mmのスライス厚で取得した。19F画像は、128×64の像点、〜200μmの面内解像度及び1.25mmのスライス厚で取得した。
図5:PFPE標識DCを接種したマウスの腹部を斜めにスライスしたものである(生体内)。19F画像は、熱した鉄の偽色スケールで示されており、しかも濃淡の解剖学的1H画像上に重ね合わされている。細胞は、肝臓、脾臓及びおそらく肺ではっきりと見える。この画像は、10×106個の標識DCを尾静脈から注射後およそ4時間で取得した。画像は、図4で説明したのと同様の方法及びパラメーターを使用して取得した。
図6:PFPE標識(太線)及び非標識(細線)の骨髄(BM)由来DCの表現型FACS分析である。BM細胞を4日間にわたってGMで成長させ、そしてTNF−α+PGE2の存在下(上のパネル)又はなし(下のパネル)のいずれかで成熟させた。細胞をCD11c−PE(DCマーカー)及び指示FITC結合抗体で染色した。結果は、CD11cの発現についてゲートされた細胞のヒストグラムを示している。陰付きのヒストグラムはコントロールを表している。
図7:PFPE標識DCの電子顕微鏡写真。低倍率(a)及びそれよりも高い倍率(b)での代表的な標識DCが示されている。(a)では、多数の光点(PFPE粒子)が細胞内で観察されるが、これは非標識細胞では観察されない(データは示さない)。(b)では、粒子は滑らかな回転楕円面として見える。該粒子の外周部をオスミウムで染色する。この粒径は〜100−200nmである。スケールバーは(a)では1μmを表し、(b)では50nmを表す。
図8:DC標識後の時間の関数としての有効細胞内PFPE濃度(黒四角)及び全細胞数(白丸)。PFPE粒子の保持は、試験管内で何日間も続く。それぞれの時点で、単一の組織培養ウェルを集め、そして1×106個の細胞をカウントした。次いで、これらのものをペレット化し、そして19F NMRでアッセイした。左軸は、同時に測定された基準化合物(トリフルオル酢酸)に標準化された19F NMRピーク下での組み込み領域を示す。標準化されたシグナルは、PFPE濃度に直接関連する。右軸は、該プレートにおける全細胞数を示す。〜2日目で、該プレートにおける細胞は合流するようになり、次いでその後正味の細胞の損失がある。同時に、19Fシグナルは、細胞分裂の結果としての希釈化により予期される通り、初めに減少する。細胞が異常増殖の状態になり、そして死滅し始めた後に、残りの細胞は培地中のいかなる過剰のPFPEも取り込み、そして細胞当たりの正味の19Fが増加する。
図9:添加されたリポフェクタミンの関数としての、19F NMRにより測定されたDC中のPFPE濃度。PFPE取り込みの最大の増加は、〜26倍であることが分かる。全てのデータは、同一(4時間)のインキュベーション時間後に取得した。
図10:G6PD酵素の放出によって測定されるPFPE標識DCの細胞毒性。標識後0、18及び24時間目での細胞及びコントロールを示している。インキュベーション条件(左〜右)は、全細胞溶解(すなわち、100%の毒性に近似する)、何も添加しない(未処理)、リポフェクタミン添加(Lipo)、PFPE添加(PFPE)及びPFPE+リポフェクタミン添加(PFPE+Lipo)である。値は、N=8についての平均±SEM(標準誤差)として与えている。
図11:MTT(a)及びdsDNA(b)によってアッセイされたPFPE標識DCの増殖。細胞は、37℃で3時間にわたり、(左〜右)何も添加しない(非標識)、リポフェクタミン添加(Lipo)、PFPE添加(PFPE)、PFPE+リポフェクタミン添加(PFPE+Lipo)でインキュベートした。値は、N=16についての平均±SEM(標準誤差)として与えている。
図12:PFPEエステルの分子構造(a)及びこの分子から作られたエマルジョンの19F NMRスペクトル(b)。直鎖状PFPE(a)は、平均48個のF原子を有する。このNMRは、内部CF2基からの−92ppmでの一つの主ピーク及び末端基からの非常に小さな二つのピークを示している。この非乳化嵩高PFPE化合物は、同一のNMRスペクトルを有する(データは示さない)。この19F NMRデータは282MHzで取得した。
図13:直鎖状PFPEエマルジョン粒子の電子顕微鏡写真(a)及び粒度のヒストグラム(b)。(b)から、平均粒度は42±19nm(N=133)である。これらのエマルジョンは、炭素被覆グリッド上にスプレーすることによって製造され、空気乾燥され、そして画像化された。スケールバー=100nm。
図14:直鎖状PFPE画像化試薬の例示及び誘導体を生成させるための反応例。
【0011】
詳細な説明
1.概説
ある態様では、本発明は、細胞を生体外でフルオロカーボン画像化試薬のような核磁気共鳴画像化試薬により標識するための新規な方法及び試薬を提供する。次いで、標識された細胞は、19F核磁気共鳴技術(例えば、MRI/MRS)によって検出できる。19F核磁気共鳴技術は、内因的なバックグラウンドシグナルが存在しないため、生体系のための優れた画像化ツールである。弗素は、仮にあったとしても極めて低いレベルで生体に存在するが、一般には液体状態核磁気共鳴技術によって検出できる化学形態では存在しない。これは、細かな解剖学的詳細の視覚化を与えるが特定の細胞集団の選択的な検出を可能にしない慣用の1H MRIとは完全に異なる。ここに開示される方法は、全身又は身体の一部を、生体における標識細胞の分布を視覚化させるためにスクリーニングすることを可能にする。19F核磁気共鳴によって検出される標識細胞の正確な解剖学的部位は、例えば、解剖学的詳細を提供する1H MRI画像を重ね合わせることによって決定できる。好ましい具体例では、この1H画像は、位置合わせを確実にするために19F画像と同一の画像セッション中に取得される(被検体を移動させることなく)。さらに、ここで開示される核磁気共鳴技術は、組織試料、切除した器官及び細胞培養液の場合と同様に、生体外の環境で効果的に適用できる。ここに開示される画像化技術は、多数の生物学的及び医学的問題に適用できる。
【0012】
ある態様では、本発明の方法は、生体外で19F画像化試薬により細胞を標識し、該標識細胞を被検体に投与し、そして被検体において標識細胞を検出することを含み得る。標識されるべき細胞は、粗細胞画分又は組織試料であることができ、又は該細胞は標識の前に培養され及び/又は富化に付され得る。例えば、特定の細胞型は、標識前に蛍光活性化細胞分類(FACS)によって選択できる。対象となりそうな様々な異なる細胞型についてのその他の分類法又は選択的富化法が斯界に知られている。また、標識される細胞のタイプは、画像化試薬の性質によって制御することもできる。例えば、画像化試薬の単純なコロイド懸濁液は、食作用活性を有する細胞によってさらに迅速に取り込まれやすいであろう。別の例として、ある種の画像化試薬は、該画像化試薬の特定細胞集団への選択的標的化を容易にする標的部分と共に処方でき、又はそれに共有結合できる。画像化試薬は、以下に詳しく説明する。標識後に、細胞は直ちに投与され、又は細胞は、このような細胞の使用目的と適合しなくはない任意の方法で保存され、さらに培養され、精製され、富化され、分離され若しくは処理され得る。
【0013】
ある態様では、標識された細胞は、治療の目的で投与されるであろう。ここに説明した技術は、生体内で又は組織外植片のような任意の他の望ましい環境中で細胞治療剤の移動を監視するために使用できる。骨髄細胞移植物は、癌のための切除治療の受容者において長年にわたり幅広く使用されてきた。また、造血幹細胞が富化された細胞集団のような様々な精製細胞集団も骨髄の代わりに使用されてきた。例えば、細胞は、臍帯血又は末梢血から採取できる。血流に入り込んだ後に、該幹細胞は、一般に骨髄に移動し、この場所で新たな白血球細胞、赤血球細胞及び血小板を産生し始める。この生着は、通常、移植後約2〜4週間以内に生じる。従来から、生着は、頻繁に血球数を検査することによって監視され、そして免疫機能の完全な回復には、一般に、数ヶ月(自己移植受容者について)から数年(同種移植又は同系移植を受けた患者)を要する。骨髄穿刺による細胞採取は、移植された細胞の機能に関するさらなる情報を与えることができる。これら監視技術は、移植されるべき細胞(又はこのような細胞のほんの少量)を生体外で標識することによって向上でき、しかして核磁気共鳴技術によって移植細胞の位置及び移動を非侵襲的に監視することを可能にする。非骨髄破壊的同種移植(すなわち、激しさの少ない移植)は、いくつかのタイプの癌を治療するために有効であり得る類似の細胞療法である。一般に、この技術は、十分な抗癌活性を与えるために、より低い放射線照射量及び/又は化学療法薬投与量と、制限された移植片対宿主病(任意の残留宿主癌細胞に対する移植片からの免疫細胞の作用)とに依存し、並びに患者の造血細胞系を回復させる移植片細胞の造血能力に依存する。従来の切除移植と同様に、本発明の技術は、非骨髄破壊的同種移植における移植片細胞の位置及び移動を監視するために使用できる。
【0014】
また、細胞療法は、治療用蛋白質の送達に使用するための開発段階にある。一具体例では、細胞を単離し、生体外で大量に増殖させ、次いで移植して可溶性因子を産生及び分泌させることができるが、これは、局所的に(例えば、酵素、サイトカイン及び神経伝達物質)又はある距離をおいて(例えば、ホルモン及び成長調節因子)活性であり得る。また、細胞は、体内の特定の部位に存在し、循環から出て、そして周囲の組織に一体化し又は損傷を受けた組織に取って代わるように分化することができるそれらの能力に基づき、組織、器官又は免疫応答を再構築するような複合的な治療目的を達成するためにも患者に投与できる。また、幹細胞治療は、神経疾患、特に細胞死を特徴とするもの(例えば、パーキンソン病、脳梗塞及び外傷に起因する脳損傷)、心臓血管疾患(例えば、心筋梗塞)、筋肉再生(例えば、悪液質又はその他の消耗病に罹患した患者における)、糖尿病における膵臓再生、肝臓再生などを含め、無数の疾患に対しても提案されている。どの場合にも、細胞又はその亜母集団は、投与前に生体外で画像化試薬により標識できるため、これらの細胞を生体内で監視することが可能である。核磁気共鳴技術による生体内での監視は、例えば、投与された細胞の生存度を評価するのに有用であり得る。医師は、標識細胞が投与後に患者で検出される程度に応じて投与量を調節できる。また、生体内監視は、治療用細胞が所望の位置に局在しているかどうかを決定する際にも有用であり得る。一般に、生体内での治療細胞の移行挙動並びに生体内での治療用細胞の数及び/又は残存数と、治療帰結との相関関係を研究することが可能であろう。このような相関関係が立証されれば、治療用細胞の生体内での画像化を、患者のためになるであろう好適な投与量、投与形態及び追加の治療行為を選択するのに役立ち得る予後指標として使用できる。本発明の画像化の進歩は、幅広い細胞治療戦略の利益になるであろう。というのは、これらの画像化手法は、治療用細胞が生体内で所望の標的に送達された時に、その場所で及びその場合に検出できるからである。
【0015】
ここに開示された技術の適用の一例は、樹状細胞(DC)を追跡する際である。DCは、最も効率的な抗原提示細胞であることが知られており、しかもナイーブT細胞を刺激して免疫応答を開始させる能力を有する。DCは、体内での免疫応答についての最も有力な刺激因子であるため、DCは、患者の免疫系に腫瘍の「可視度」を増大させる有力な治療方法を表す。DCは、開発段階にある腫瘍ワクチンの主眼である。様々な方法を使用して樹状細胞を生体外で腫瘍抗原に露出させ、その後に感作樹状細胞を再度注入してT細胞仲介腫瘍致死の発達を刺激する。これらの例において、以下、本出願人は、本発明の具体例をDCの標識及び追跡に適用するデータを提供する。
【0016】
ある態様では、標識細胞は、非治療目的で被検体に投与される。例えば、細胞は、生体外で標識され、被検体に投与され、次いで検出されるが、ここで、この標識細胞は、生体内で非標識細胞と同様の挙動を示すため、内因的な細胞集団の挙動を監視するために使用できることが見込まれる。監視は、特に、免疫系の細胞、多くのタイプの幹細胞及び血液産生細胞のような高移動性であることが知られている細胞の場合には、細胞の移行を追跡する目的のために使用できる。また、監視は、移植部位での非移動細胞の生存度又は接着を追跡する目的でも使用できる。筋肉、肝臓、膵臓、腎臓、脳又は肌のような多くの組織の細胞は、比較的静的であるという傾向にあるが、標識の消失は、高い致死率、低い接着又はその他の情報を表し得る。最新の細胞培養及び分取技術は、様々な幹細胞型、免疫細胞型及びその他の血液細胞型を含め、任意の所望の細胞集団を選択的に事実上貯留し及び標識することを可能にする。
【0017】
例として、標識された免疫細胞は、患者における免疫細胞の移動のための検出可能な代理として使用できる。免疫細胞は、炎症性疾患及び自己免疫疾患並びに癌及びアテローム斑形成のホストに関与し、しかもそのホストのためのマーカーである。一般的な手法としては、免疫細胞のリクルートメントを伴う任意のプロセスが、患者に標識免疫細胞を投与することによって患者において検出できる。特定領域における標識の蓄積は、身体のその部分で生じる免疫応答の程度の表示となる。従来より、これらのタイプの研究は、生体と適合しない組織学的技術を必要とする。本発明のある種の方法は、ヒトの疾患を治療するための治療方針の開発を促進できる。選択された免疫細胞集団を非侵襲的にかつ放射性同位元素を使用することなく追跡できることは、多発性硬化症、糖尿病、臓器移植拒絶反応の監視及び癌のような基礎免疫学及び臨床免疫学の多くの領域に大きな影響を与え得る。例えば、腫瘍は、多くの場合、免疫細胞によって高度に浸潤される。標識細胞は、腫瘍の位置を明らかにするように被検体内で画像化でき、そして場合によっては、非侵襲的検出スクリーンとして有用であり得る。癌の早期発見は、最初期段階の癌が化学療法剤を弱体化させる手段をとることなく外科的処置によって容易に治療されるため、大きな問題であった。同様に、その他の炎症性疾患の進行も患者における免疫細胞の動態を追跡することによって監視できる。免疫抑制療法の有効性も同様に評価できる。臓器移植受容体の場合には、該受容体は、移植を受ける前に標識免疫細胞の投与を受けることができる。このときに、移植物における免疫細胞の蓄積の生体内監視を拒絶反応の初期警告兆候として使用できる。移植の場合には、ここに開示される方法が特に望ましい。というのは、この代わりの生検は、臓器拒絶反応の危険性を増大させることがよく知られているからである。
【0018】
追加の例として、骨髄細胞移植又は末梢血幹細胞移植に使用するための細胞をここで説明した通りに生体外で標識し、投与し、そして核磁気共鳴技術によって生体内で監視することができる。このような監視は、受容体の骨空洞内でのドナー細胞の生着並びに受容体における標識細胞の残存及び移動を評価するために使用できる。医師は、受容体におけるドナー細胞の追跡に関する情報を、その処置がおそらく成功したこと又は失敗したことの早期の兆候として使用することができる。このタイプの早期検出は、医師がそれに従って移植後の治療計画を調整することを可能にするであろう。この検出技術が適用できる別の細胞癌治療は、同種非骨髄機能破壊的移植又は強度が低減した移植である。この処置は、癌細胞を破壊する移植片対腫瘍効果を増強するために、ドナーリンパ球の注入と共に使用できる。ここで、移植された細胞の全集団又は部分を注入前に標識できる。次いで、核磁気共鳴技術を使用してこれらの細胞が体内でどこに移動するのかを決定できるので、これは、処置の効能を示し得る。多くの場合に同種異系細胞の投与量を制限して拒絶反応を最小にすることが望ましいのと同様に、該細胞の移動パターンを使用して投与量を校正することができる。上記の癌細胞療法では、治療効果を有すると思われる移植細胞の1種以上の亜母集団(例えば、CD34+幹細胞又はT細胞)を選択的に標識することが望ましいかもしれない。
【0019】
さらなる例として、血管形成のような新たな組織の形成に関与する細胞を標識し、被検体に投与し、そして検出して組織形成のホットスポットを特定することができる。例えば、平滑筋細胞及び/又は内皮前駆細胞を標識し、そして血流に導入することができる。このような細胞は、血管形成活性部位で蓄積することが予期される。血管形成活性は、月経周期、妊娠初期、動脈閉塞に応答した側副血管形成、腫瘍成長及び創傷治癒のような生理学的及び病理学的事象に関連し得る。同様に、繊維芽細胞のような創傷治癒に関与する細胞を標識し、そして細胞の挙動を監視するために全身的に又は疑わしい損傷部位に投与できる。
【0020】
場合によっては、細胞は、標識された細胞が構造の画像化を助成することを唯一の目的として投与され得る対象の生物学的部位又は生物学的構造と完全に関連があることが判明するかもしれない。上記のように、免疫細胞は、特徴的には、腫瘍に浸潤する。したがって、標識免疫細胞は、腫瘍を視覚化させるという目的で投与できる。
【0021】
ここに開示される技術は、ヒトの疾患の動物モデルの研究に適用できる。疾患の様々な動物モデルは、1種以上の細胞集団の動態変化又は生存変化を明らかにする。このような細胞集団を標識し、動物に投与し、そして監視することができる。例えば、糖尿病についてのNODマウスモデルの膵臓への免疫細胞の浸潤を監視することができる。動物モデルの他の例としては、実験的アレルギー性脳脊髄炎(多発性硬化症モデル)、 神経膠肉腫モデル及び臓器拒絶反応が挙げられる。表現型が確定した免疫細胞集団をこれらのモデルにおいて追跡することによって、病気の原因の様相を解明し、そして細胞の輸送が治療にどのような影響を与えるのかを監視することができる。この方法は、例えば、動物モデルにおいて所望の効果を有する薬剤をスクリーニングするために使用できる。薬剤スクリーニングアッセイは、標識細胞を動物に投与し、そして該細胞を検査薬の存在下で生体内で検出することを含むことができる。該試験薬の存在と関連する細胞挙動の変化は、治療効果を示し得る。このような変化は、例えば、試験薬による治療前後の同一の動物又は別個の未治療動物を含め、好適な基準に対する比較によって検出できる。試験薬のほかに、該方法は、運動内容、損傷、遺伝子変化などのような試験条件の影響を評価するために使用できる。例として、自己免疫疾患の治療薬は、冒された組織に免疫細胞が蓄積する傾向を低減させるであろうことが予期される。定常状態の評価のほかに、ここに開示される方法は、細胞が特定の部位に到達する速度及びある部位でのシグナルの持続時間のような、細胞の力学的特性を評価するために使用できる。薬剤スクリーニングアッセイは、様々な疾患にかかわるある種の免疫細胞群のような、しっかりと定義された細胞集団の生体内監視と組み合わされたときに、特に強力である。例えば、標識細胞傷害T細胞の監視は、移植物拒絶反応を阻害する際に有用であり得る薬剤を同定するのに特に有用である。細胞を生体内で監視する能力は、例えば、これまでに作製されている様々な遺伝子導入マウス又はさもなくば変異マウスのうち任意のものを含め、本質的に任意の実験動物の分析に適用できる新規の強力なアッセイ法を提供する。
【0022】
いくつかのグループがMRI造影剤を使用して免疫細胞を標識しそして視覚化することを研究してきた。その他の研究者は、幹細胞及び神経前駆細胞のような細胞型を標識するためにMRI造影剤を使用した。これらの研究の大多数は、これらの細胞を、超常磁性酸化鉄(SPIO)剤の取り込みにより磁気によって区別している。また、他のタイプの金属イオン、特にガドリニウム及びマンガンを取り入れた造影剤で標識された細胞も使用されてきた。これらの金属イオンをベースとする薬剤を使用した研究において、これらの化合物は直接的には画像化されない。その代わりに、周囲の水に及ぼすそれらの間接的な影響が観察される。この薬剤の存在は、該化合物のすぐ近くにある水の緩和時間(T1、T2又はT2*)を短縮する傾向にある。これらの効果は、緩和時間加重画像で検出できる。SPIO剤は、例えば、すぐ近くの移動水分子が受ける磁場を局所的に混乱させることによって慣用の1H画像とは対照をなし、そしてこれは次にT1、T2又はT2*を調整する。ここで説明した方法は、金属イオンをベースとする薬剤を使用する方法とは明らかに異なる。というのは、画像化試薬中の19F核からシグナルが直接検出され、そして随意に画像化され得るからである。
【0023】
金属イオンをベースとする造影剤を使用して標識細胞を検出することに特有の欠点は、多くの場合、標識細胞を含有すると考えられる領域における濃淡コントラストの微妙な変化を解明することが必要な状況にあるということである。組織内に存在する高濃度の移動水からの大きな1H背景シグナルは、標識細胞を含む領域を明らかに特定することを困難にし得る。これは、標識細胞の生体内分布が先験的に知られていない場合に特に問題となる。「スナップ写真」画像の結果は、多くの場合、標識細胞が特定の組織に存在するかどうかについて不明瞭である。これは、肝臓又は脾臓のような、解剖学的(T2又はT2*加重)画像において本質的に暗く見える鉄含有臓器でSPIO標識細胞を検出しようとするときに、特に当惑させる問題である。これは、多くの場合、標識細胞が蓄積したことを確認するために、数時間にわたって特定の臓器における低速度撮影画像の強度変化を検出する手段を取らなければならない。
【0024】
したがって、ここに開示される方法及び組成物は、医薬及び生物学の分野において要望が非常に高いツールを提供する。
【0025】
2.画像化試薬及び処方物
主題の方法で使用される画像化試薬は、フルオルカーボン、すなわち、少なくとも1個の炭素−弗素結合を含む分子である。19F原子により、ここに開示される画像化試薬は、19F MRI及びMRS技術のような他の核磁気共鳴技術によって検出できる。ある種の好ましい具体例では、フルオロカーボン画像化試薬は、次の特性の一つ以上を有するであろう:(1)許容し得る細胞毒性、(2)簡便で、理想的には化学シフトによるアーチファクトを最小にするように単一の狭い共鳴を有する19F NMRスペクトル、(3)それぞれの分子における多数のNMR当量の弗素原子による高い感度、(4)多くの細胞型の効率的な標識を可能にするように処方され、かつ、食作用を示す細胞に制限されないこと。
【0026】
代表的な化合物としては、アリール又はヘテロアリールトリフルオルメチルスルホン酸エステル(トリフレート)又はスルホンアミド(トリフルアミド)、弗素化アルコール(例えば、2,2,2−トリフルオルエタノール、ペルフルオル−t−ブタノール及び2,2,3,3,3−ペンタフルオルプロパノール)のエステル、ペルフルオルアルカン酸(例えば、トリフルオル酢酸、ペルフルオルテトラデカン酸及びノナフルオルペンタン酸)のエステル及びアミド、ペルフルオルアルカンのエステルなどが挙げられる。好ましくは、画像化試薬は、炭素に結合した複数の弗素、例えば、炭素に結合した5個以上、10個以上、15個以上又は20個以上の弗素を含む。好ましくは、弗素の少なくとも4個、少なくとも8個、少なくとも12個又は少なくとも16個は、ほぼ同等のNMR化学シフトを有する。
【0027】
ある種の具体例では、画像化試薬は、ペルフルオル−15−クラウン−5、ペルフルオル−18−クラウン−6、ペルフルオル−12−クラウン−4などのような、環状ペルフルオルエーテル(環状PFPE)とも呼ばれるペルフルオルクラウンエーテルである。このような化合物は、これらの分子の19F核が化学シフト画像によるアーチファクトの減少によって又はそれが存在しないことによって高いシグナル対ノイズの比を生じさせる、同様の又は同一のNMR共鳴を有するという点で有利である。大環状ペルフルオル−15−クラウン−5−エーテルは、特に好ましい特徴を有する。このものは、ペルフルオルポリエーテルには典型的であるが、親油性でも親水性でもなく、しかも水溶液に乳化される。典型的なエマルジョンは、水溶液中で安定で、かつ、細胞によって取り込まれ得る微粒子(10〜500nmの直径)である。当業者であれば、その他の弗素化化合物、特にそれぞれの弗素が同様の化学的環境にある弗素化化合物が望ましい特性を有することを認識するであろう。ペルフルオル−t−ブタノール、1,3,5−トリス(トリフルオルメチル)ベンゼン、ヘキサフルオルアセトン、ポリ(トリフルオルメチルエチレン)及びペルフルオルシクロヘキサンのエステル類が、同一又はほとんど同一のラーモア周波数を有する19F共鳴の多数の弗素原子を有する化合物の例である。
【0028】
ある具体例では、画像化試薬は重合体である。ある具体例では、画像化試薬は、直鎖状ペルフルオル重合体(直鎖状PFPE)、例えば、−[O−CF2(CF2xCF2n−(ここで、xは0〜10、好ましくは0〜3の整数であり、nは2〜100、好ましくは4〜40の整数である。)の反復単位を含む構造若しくはその部分を有する化合物であり、又はそれを包含する。例えば、過弗素化直鎖状ポリエチレンオキシドは、エクスフロアー社(米国テキサス州ラウンドロック)から得られ得る。いずれか又は両方の末端(又は分岐重合体の場合には複数の末端)は、追加の所望の官能性を与える部分によって誘導体化され得る。例えば、画像化試薬は、A−B−Cの式(ここで、A及び/又はCは官能性部分であることができ、Bは−[O−CF2(CF2xCF2n−(ここで、xは0〜10、好ましくは0〜3の整数であり、nは2〜100、好ましくは4〜40の整数である。)の反復単位を含む。)を有し得る。官能性部分(例えば、特定の望ましい官能基を与える非弗素化単量体)を以下で検討する。
【0029】
また、直鎖状ペルフルオルポリエーテルは、次の平均式:
XO(Y−O)n
(式中、Yは、
【化2】

から選択され、nは8〜30の整数であり、X及びZは同一のものであり、そしてペルフルオルアルキル、ペルフルオルエーテル、フルオルアルキルであってフルオルアシル、カルボキシル、アミド又はエステルを末端基とするもの、メチロール、酸塩化物、アミド、アミジン、アクリレート及びエステル並びに官能性部分によって誘導体化された前記のものうち任意のものよりなる群から選択される。)
を有する組成物として説明することもできる。
【0030】
完全に弗素化された重合体は、例えば、過弗素化された二酸と過弗素化されたジハロカーボン(1,4−ジヨードオクタフルオルブタンのようなもの)とを反応させることによって形成できるが、弗素化された単量体をその他の単量体(随意に、非弗素化であってもよい官能性部分)と反応させて画像化試薬として有用なハイブリッド重合体を形成させることができる。様々な異なる非弗素化単量体を使用して重合体全体の化学的性質及び物理的性質を変化させることができ、また特定の用途に画像化試薬を適合させることを可能にする。例えば、高度に親油性の画像化試薬は、含脂肪細胞及びその他の脂肪細胞に集中し得るが、高度に親水性の画像化試薬は、循環系又はリンパ系を画像化するために有用であり得る。
【0031】
細胞を標識するために、該画像化試薬は、少なくとも3つのモダリティ:(1)いかなる共有結合又はその他の結合の形成なしに標的細胞によって内在化され又はさもなくば吸収される画像化試薬、(2)標的細胞に共有結合する画像化試薬及び(3)標的細胞上に存在する分子に結合する抗体又はリガンドのような分子に結合する画像化試薬のうちの一つ以上で使用され得る。
【0032】
第1のタイプの画像化試薬としては、ペルフルオルクラウンエーテル及び細胞によって取り込まれ、しかも好ましくは、十分な期間にわたって分解することなく細胞内に保持されるその他のPFPE、例えば、細胞内で少なくとも1時間、少なくとも4時間、少なくとも約1日、少なくとも約3日又はさらに少なくとも約1週間の半減期を有するPFPEが挙げられる。明白な理由で、画像化試薬は、標識のために使用される濃度で通常の細胞機能を妨害せず又は細胞毒性を示さないことが好ましい。ここで立証するように、ペルフルオルポリエーテルは、標識された細胞に最小の毒性効果しか示さない。
【0033】
第2のタイプの画像化試薬としては、露出したチオール、アミノ及び/又はヒドロキシル基のような、細胞表面上にある求核性部位と反応する求電子化合物が挙げられる。したがって、マレイミド、沃化アルキル、N−ヒドロキシスクシンイミド又はN−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(NHS又はスルホNHSエステル)、アシルスクシンイミドなどのような画像化試薬は、細胞表面と共有結合を形成できる。蛋白質カップリングに使用できる他の技術は、画像化試薬を細胞表面の蛋白質にカップリングさせるのに適し得る。このようなカップリングのさらなる手法については、Means外(1990),Bioconjugate Chemistry1:2−12を参照されたい。
【0034】
第3のタイプの画像化試薬は、第2のタイプの画像化試薬と、細胞自体ではなく細胞標的リガンド又は抗体である官能性部分とを反応させることによって調製できる。好適なリガンド及び抗体は、対象の用途に対して選択できる。例えば、造血細胞を選択的に標的にするリガンドをここに説明した画像化試薬で標識し、そして、例えば注射によって患者に投与することができる。
【0035】
或いは、画像化試薬を、アンテナペディア蛋白質、HIV転写活性化(TAT)蛋白質、マストパラン、メリチン、ボンボリチン、デルタヘモリシン、パルダキシン、シュードモナスエキソトキシンA、クラスリン、ジフテリアトキシン、C9補体蛋白質又はこれらの任意の断片のような無秩序な内在化ペプチドに結合させることができる。この無秩序な分子により生体外で処理された細胞は、画像化試薬を吸収するであろう。このような標識細胞をほ乳類のような動物に移植すると、該画像化試薬を使用して核磁気共鳴技術によって該移植細胞を視覚化し及び/又は追跡することができる。
【0036】
一具体例では、該内在化ポリペプチドは、ショウジョウバエのアンテナペディア蛋白質又はそのホモログから誘導される。ホメオ蛋白質であるアンテナペディアの60アミノ酸長ホメオドメインは、生体膜を貫いて転位し、かつ、結合する非相同ポリペプチドの転位を促進できることが証明されている。例えば、Derossi外(1994),J Biol Chem 269:10444−10450及びPerez外(1992),J Cell Sci 102:717−722を参照されたい。この蛋白質の16アミノ酸長程度の小さい断片は、内在化させるのに十分なものである。Derossi外(1996),J Biol Chem 271:18188−18193を参照されたい。
【0037】
内在化ペプチドの別の例は、HIV転写活性因子(TAT)蛋白質である。この蛋白質は、4個のドメインに分割されるように思われる(Kuppuswamy外(1989),Nucl.Acids.Res.17:3551−3561)。精製されたTATは、組織培養中の細胞によって取り込まれ(Frankel及びPabo(1989)Cell 55:1189−1193)、そしてTATの37〜62残基に相当する断片のようなペプチドは、試験管内で細胞によって迅速に取り込まれる(Green及びLoewenstein(1989)Cell 55:1179−1188)。この高塩基性領域は、内在化及び該内在化性部分の核へのターゲッティングを仲介する(Ruben外(1989)J.Virol.63:1−8)。CFITKALGISYGRKKRRQRRRPPQGSのような、高塩基性領域に存在する配列を含むペプチド又はアナログを弗素化画像化試薬に結合させて内在化及びこれらの試薬の細胞内環境へのターゲッティングを助成させることができる。
【0038】
別の対象のPFPE組成物は、様々な末端基で誘導体化された直鎖状PFPEである。この直鎖状化合物は、様々なタイプの官能性部分のような、様々な官能性の実体をそれらの末端基に結合させることができるという利点を有する。これらの直鎖状化合物の19F NMRスペクトルは、一般に、大環状化合物よりも複雑であるが、2つのよく分離したNMRシグナルを有するPFPEも使用できる。この場合には、化学シフトによるいかなるアーチファクトも除去するために、この小さい方の共鳴に適用される1以上の非共鳴飽和パルスを取り入れるMRIパルスシーケンスを使用することが望ましいかもしれない。
【0039】
直鎖状PFPEの特に有用な用途は、19F核磁気共鳴技術によって検出でき、かつ、第2の検出方法による検出を容易にする検出部分を含む「二重形態」剤の合成である。例として、末端基に結合した蛍光部分を使用して19F MRI及び蛍光顕微鏡で視覚化できる画像化試薬を生成させることができる。広範な蛍光部分を二重形態剤に使用することができる。フルオレセイン、リサミン、フィコエリトリン、ローダミン(Perkin Elmer Cetus)、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、FluorX(Amersham)を含め、多くの好適な蛍光プローブが知られている。蛍光部分としては、フルオレセイン、ベンゾオキサジアゾール、クマリン、エオシン、ルシファーイエロー、ピリジルオキサゾール及びローダミンの誘導体が挙げられる。これらの及び多くの他の典型的な蛍光部分は、蛍光プローブハンドブック及びリサーチケミカルズ(2000,モレキュラープローブ社)に見出され得る。追加の蛍光部分としては、クォンタムドット社(カリフォルニア州ヘイワード)から入手できる製品である「クォンタム・ドット」のような蛍光ナノ結晶が挙げられる。このようなナノ結晶は、好適な発光スペクトルを有する半導体コア(例えば、CdS、CdSe、CdTe)と、該下層のコア材料(例えばZnS)に効率的に結合できる非放出性の透明でかつ比較的非反応性の材料からなるシェルと、所望の溶解度(例えば、生理学的水溶液への溶解度について)及びここで説明したフルオロカーボンへの結合用の可能な反応性基を与える被膜とで構築され得る。
【0040】
蛍光検出を可能に二重形態画像化試薬は、様々な用途に特に有用である。例えば、蛍光標識は、蛍光活性化細胞分類(FACS)のような、蛍光を基礎とする細胞分類メカニズムの使用を可能にする。細胞分類は、例えば、成功裏に標識された細胞の集団について富化することが望ましい。これは、特に、標識がさらに希少な細胞集団に向けられた場合に有用である。また、二重形態剤は、標識細胞を生体に移植した後にこれらを発見し、そして特徴付けるためにも有用である。本願では、細胞は生検され、又は他の手段によって、ある期間にわたってそこに滞在した後に被検体から採取され得る。次いで、採取された細胞の生物学的解析が実行され得る。例えば、FACS解析を採取細胞について実行することができるが、この場合には、蛍光PFPE標識に対して細胞を積極的に選択した後、これらの細胞を特定の細胞表面マーカーの発現についてアッセイして(異なる色の蛍光プローブを使用する)移植後に生じた細胞の表現型の任意の変化を調査することができる。また、蛍光標識は、特に三次元共焦点蛍光顕微鏡を使用する細胞の蛍光顕微鏡分析のために使用することもできる。蛍光顕微鏡は、一般に、標識細胞を含む深部組織の生体内での視覚化には有用ではないが、表面組織は組織試料と同様に視覚化できる。任意の新規なフルオロカーボン系核磁気共鳴標識法を校正しかつ確認する際には、二重標識が特に有用であろう。例えば、MRI/MRSによって得られる結果は、可能な範囲内で、培養された標識細胞(生検又は別の方法)で及び生体内で蛍光検出によって得られた結果と比較できる。単位分子当たりの既知の蛍光シグナル強度を使用してMRI/MRS測定値を校正することができる。
【0041】
また、PET画像化のために好適な検出部分を使用して核磁気共鳴技術及びPET技術によって検出できる二重形態画像化試薬を創作することもできる。例えば、18F同位元素は、PET検出方法のための有力な標識である。フルオロカーボン画像化試薬は、18F及び19F同位元素の混合物を含むことができるため、MRI/MRS及びPETのために好適な二重形態標識を提供することができる。また、18F及び19Fを別個の単量体に添加して混合共重合体を形成させることもでき、又は、18F部分は、ほとんどの他の官能性部分が付加されるであろう位置にある、直鎖状ポリエーテルのいずれかの末端に位置し得る。18Fは、いかなるNMRシグナルも有しないため、例えばNMR線幅を減少させ、NMRスペクトルを簡略化し又は核磁気共鳴技術によって得られる読み出しに悪影響を及ぼす共鳴からの化学シフトを軽減する傾向にある位置に付加し得る。さらに、フルオロカーボン画像化試薬の分子は、11C、15O及び13Nのような、効果的なPETプローブである他の放射性同位元素を取り入れることもできる。当業者であれば、本明細書を参酌して、本発明の画像化試薬に取り入れることができる、又は、例えば、その末端基に結合できる多くの他のPET検出可能部分を創作することができる。
【0042】
ある具体例では、直鎖状ペルフルオルポリエーテルは、一方の末端又は好ましくは両方の末端で比較的親水性の部分により誘導体化できる。例えば、親水性部分はポリエチレングリコールであることができ、しかして、それぞれの末端に水溶性領域を有し、しかもその中央に疎水性領域を有するトリブロック共重合体を形成する。水性環境で混合されると、このタイプの画像化試薬は、PFPEコアが水溶性のコートによって取り囲まれたミセルを形成しやすいであろう。アミノ−PEGブロックは、所定の分子量の範囲で商業的に入手できる。PFPEと、親水性区分の代わりの脂肪族アミン(例えば、図14のRxn2及び4a参照)及びホスファチジルエタノールアミン(例えば、図14のRxn3)のようなその他の基とのカップリングは、異なる溶解度特性を有する誘導体を与えるであろう。
【0043】
ある具体例では、本発明は、細胞による取り込みに好適な画像化試薬の処方物を提供する。PFPEのようなフルオロカーボン画像化試薬を含むエマルジョンは、好ましくは、十分な細胞取り込みを可能にする粒度分布を有するであろう。例えば、平均粒度は、一般に10nm〜500nmの範囲、30nm〜150nmの範囲又は約350nm〜500nmの範囲内にあることが望ましいであろう。随意に、粒子の25%、50%、75%又はそれ以上も、この選択された範囲内にあるであろう。粒度は、例えば、光散乱技術によって又はEM顕微鏡写真を使用してエマルジョンを視覚化することによって評価され得る。ほとんどの幹細胞のような、比較的少量の細胞質を有するある種の細胞型においては、好ましい粒度は、直径10〜50nmの範囲にあるであろう。細胞において使用するためのエマルジョンは、好ましくは、広範な温度で安定であるべきである。例えば、多くの場合、エマルジョンを2〜10℃、好ましくは4℃の範囲の冷温で保存し、次いで該エマルジョンを室温(例えば、18〜28℃、より典型的には20〜25℃)に暖めることが望ましいであろう。細胞を標識した後に、エマルジョンは、約37℃の温度を受ける。したがって、好ましいエマルジョンは、冷蔵温度から体温までの範囲の温度で所望の粒度範囲を保持するであろう。界面活性剤は、大量のPFPEを水性相に運ぶ安定なエマルジョンを形成させるように設計され得る。さらに、このものは、最も短い可能なインキュベーション時間でエマルション粒子の細胞内送達を増大させるという特性を有し得る。PFPEの細胞内充填量を増加させると、標識された細胞に対する感受性が改善される。さらに、インキュベーション時間を短くすることは、初代培養細胞で研究するときに重要であり得る。というのは、細胞の表現型は、時間経過と共に進化し得るからである。細胞内取り込みの効率は、細胞型に依存する。例えば、マクロファージ及び樹状細胞は、いかなる微粒子でもほとんど取り込むが、対象の他の細胞型は、弱い食作用を示すに過ぎない。いずれの場合でも、取り込み効率は、陽イオン性資質を界面活性剤に取り入れることによって、ペプチド(例えば、オリゴArg9及びTAT様ペプチド)を使用することによって、又は特定の細胞表面分子を標的とする抗体を取り入れることによって実質的に高めることができる。
【0044】
エマルジョンの特性は、主として、画像化試薬自体の特性、使用される界面活性剤及び/又は溶媒の性質並びに処理(例えば、超音波処理など)によって制御され得る。PFPEエマルジョンを形成させるための方法は、米国特許第5330681号及び同4990283号に広く記載されている。ポリアルコール及び多糖類のようなポリヒドロキシル化化合物の濃縮水溶液連続相が効果的であり得る。次のポリアルコール及び多糖類が特に効果的であることが分かった:グリセリン、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、グルコース、フルクトース、サッカロース、マルチトール、グリセリン(ジグリセリン又はビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)エーテルの2量体化合物、砂糖のような固形水溶性ポリヒドロキシル化化合物並びにトリグリセリン及びテトラグリセリンのようなグリセリン縮合物。エマルジョンの分散は、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤(イオン性界面活性剤が好ましい)を含め、慣用の界面活性剤の存在下で実行できる。好適な界面活性剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホスクシネート(スルホ琥珀酸ヘミエステル)、ココアンホカルボキシグリシネート、セチル燐酸カリウム、ナトリウムアルキルポリオキシエチレンエーテルカルボキシレート、塩化カリウムベンザルコニウム、アルキルアミドプロピルベタイン、セチルステアリンエトキシル化アルコール及びソルビタンエトキシレート(20)モノオレエートTween20が挙げられる。所望の粒度及び安定性を有するエマルジョンを与えるであろう画像化試薬の混合物の予測を試みるために熱力学方程式を使用してもよいが、一般には様々な混合物を実際に試験することが最も効果的であろうと認められる。混合物の乳化は単純かつ迅速であるため、ここに開示された方法に使用するのに好適なエマルジョンを生じさせる組合せを同定するために広範囲の組合せを迅速に試験することを可能にする。
【0045】
3.細胞及び標識
ここに説明する方法は、原核細胞及び真核細胞の両方を含め、広範な細胞、好ましくはほ乳類細胞で使用できる。細胞調製のための技術としては、細胞培養、クローニング、核移植、遺伝子組換え及びカプセル化が挙げられる。
【0046】
好適なほ乳類細胞の部分的な列挙としては、血液細胞、筋芽細胞、骨髄細胞、末梢血細胞、臍帯血細胞、心筋細胞(及びその前駆体)、軟骨細胞(軟骨の細胞)、樹状細胞、胎児神経組織、繊維芽細胞、肝細胞(肝臓の細胞)、膵島細胞、角化細胞(皮膚細胞)及び幹細胞が挙げられる。ある好ましい具体例では、使用すべき細胞は、分画された免疫細胞集団である。認められる免疫細胞亜集団としては、Bリンパ球(Fc受容体、MHCクラスII、CD19+、CD21+)、ヘルパーTリンパ球(CD3+、CD4+、CD8−)、細胞傷害性Tリンパ球(CD3+、CD4−、CD8+)、ナチュラルキラー細胞(CD16+)、単核食細胞(単球、好中球及びマクロファージを含む)及び樹状細胞が挙げられる。対象となり得る他の細胞型としては、好酸球及び好塩基球が挙げられる。
【0047】
細胞は自系(すなわち、同一の個体由来)又は同系(すなわち、同系の同腹子又は一卵性双生児のような遺伝的に同一の個体由来)であることができるが、同種異系細胞(すなわち、同一種のうち遺伝的に異なる個体由来の細胞)も意図される。さほど好ましいわけではないが、遺伝子導入ブタ由来細胞のような異種(すなわち、受容体とは異なる種由来)も投与できる。ドナー細胞が異種であるときには、該細胞を同一の目内、好ましくは同一の上科内又は科内の種の個体から得ることが好ましい(例えば、受容体がヒトであるときには、該細胞は霊長類、より好ましくはヒト上科の一員から得ることが好ましい)。
【0048】
細胞は、医学的に及び倫理的に適切な場合には、出生前(例えば、胚又は胎児)、幼児(例えば、ヒトでは出生〜およそ3歳)、小児(例えば、ヒトでは約3歳〜約13歳)、青年期(例えば、ヒトでは約13歳〜約18歳)、若年成人(例えば、ヒトでは約18歳〜約35歳)、成人(ヒトでは約35歳〜約55歳)又は高齢者(例えば、ヒトでは約55以上)を含め、ドナー個体の任意の発育段階から得られ得る。
【0049】
多くの具体例では、画像化試薬が細胞によって取り込まれるように、細胞を該細胞と画像化試薬のエマルジョンとを接触させることによって標識する。食細胞及び非食細胞の両方をこのような方法によって標識することができる。例えば、ここで立証するように、樹状細胞(食細胞)及び神経膠肉腫(非食細胞)の両方を、該細胞と画像化試薬のエマルジョンとを接触させることによって標識することができる。
【0050】
ある具体例では、標識されるべき細胞は幹細胞である。幹細胞治療は、高線量放射線及び/又は化学療法剤で癌を治療するための切除療法の一部分として一般的に使用されている。切除療法は、一般に、例えば末梢血、臍帯血又は骨髄から得られ得るような造血幹細胞又は造血幹細胞を含む細胞集団を使用する。このタイプの細胞又はその一部分を標識し、そして生体内で追跡して適切な位置での生存と生着を監視することができる。その他のタイプの幹細胞は、様々な疾患のための治療剤としてますます魅力的である。
【0051】
例として、細胞はマウスの胚幹細胞又は別のモデル動物からのES細胞であることができる。このような細胞を標識することは、随意に胚幹細胞治療を発達させるための前臨床研究の一部分としてマウスに投与されたこのような細胞の運命を追跡するのに有用であり得る。マウス胚幹細胞の例としては、M.Qui外,Genes Dev 9,2523(1995)に記載されたJM1 ES細胞株、及びG.Friedrich,P.Soriano,Genes Dev 5,1513(1991)に記載されたROSA株、及び米国特許第6190910号に記載されたマウスES細胞が挙げられる。多くの他のマウスES株がジャックソンラボラトリーズ(米国メイン州バーハーバー)から入手できる。ヒト胚幹細胞の例としては、次の業者:アルコースバイオサイエンス社(米国カリフォルニア州フォスターシティー)、キュテラ社(カリフォルニア州サンディエゴ)、ブレサゲン社(ジョージア州アセンズ)、ESセルインターナショナル社(豪州メルボルン)、ジェロン社(カリフォルニア州メンロパーク)、イェーテボリ大学(スウェーデン国イェーテボリ)、カロリンスカ研究所(スウェーデン国ストックホルム)、マリアバイオテック社−マリア不妊病院メディカル研究所(韓国ソウル)、ミズメディ病院−ソウル国際大学(韓国ソウル)、国立生物科学センター/タタ研究所(インド国バンガロール)、ポチョンCHA大学(韓国ソウル)、リライアンスライフサイエンセズ(インド国ムンバイ)、テクニオン大学(イスラエル国ハイファ)、カリフォルニア大学(カリフォルニア州サンフランシスコ)及びウィスコンシン大学同窓研究財団を介して入手できるものが挙げられる。さらに、胚幹細胞の例は、次の米国特許及び公開特許出願:第6245566号、第6200806号、第6090622号、第6331406号、第6090622号、第5843780号、第2002−0045259号、同2002−0068045号に記載されている。好ましい具体例では、ヒトES細胞は、国立保健研究所によって提供され、そして http://escr.nih.gov. でアクセスできる認可済み細胞株のリストから選択される。ある好ましい具体例では、胚幹細胞株は、J.Thomson博士(ウィスコンシン大学)から得られるWA09株、並びにUC01株及びUC06株(両者とも現在NIHに登録中である)から選択される。
【0052】
ある具体例では、開示される方法に使用するための幹細胞は、中枢神経系(例えば、米国特許第6468794号、同6040180号、同5753506号、同5766948号参照)、神経堤(例えば、米国特許第5589376号、同5824489号参照)、嗅球又は末梢神経細胞(例えば、公開米国特許出願第2003−0003574号、同2002−0123143号、同2002−0016002号及びGritti外2002 J Neurosci 22(2):437−45参照)、脊髄(例えば、米国特許第6361996号、同5851832号参照)又は神経内分泌系統、例えば、副腎、下垂体若しくは腸の所定部分(例えば、米国特許第6171610号及びKimura外,1994 J.Biol.Chem.269:18961−67に記載されるようなPC12細胞を参照)からの幹細胞のような神経又は神経内分泌起源の幹細胞である。好ましい具体例では、神経幹細胞は、末梢組織又は容易に治癒した組織から得られ、それによって移植用細胞の自己集団を与える。
【0053】
造血幹細胞又は間充織幹細胞を開示された方法に使用することができる。近年の研究から、容易に単離される骨髄由来の造血幹細胞(HSC)及び間充織幹細胞(MSC)は、以前に認識されていたよりも広い分化能を有することが示唆されている。精製されたHSCは、血液中の全ての細胞しか生み出さないが、肝細胞のような通常内胚葉に由来する細胞にも成長し得る(Krause外,2001,Cell 105:369−77、Lagasse外,2000,Nat Med 6:1229−34)。同様に、末梢血及び臍帯血からのHSCは、有用な発生能の範囲を与えることが予期される。MSCも同様に多様性であるように思われ、例えば、神経細胞マーカーを発現できる後代を生み出すと思われる(Pittenger外,1999 Science 284:143−7、Zhao外,2002 Exp Neurol 174:11−20)。造血幹細胞の例としては、米国特許第4714680号、同5061620号、同5437994号、同5914108号、同5925567号、同5763197号、同5750397号、同5716827号、同5643741号、同5061620号に記載されたものが挙げられる。間充織幹細胞の例としては、米国特許第5486359号、同5827735号、同5942225号、同5972703号に記載されたもの、国際公開パンフレットWO00/53795号、WO00/02654号、WO98/20907号に記載されたもの並びにPittenger及びZhao外(前出)に記載されたものが挙げられる。
【0054】
幹細胞株は、好ましくは、齧歯類(例えば、マウス又はラット)、霊長類(例えば、サル、チンパンジー又はヒト)、ブタ及び反芻類(例えば、ウシ、ヒツジ及びヤギ)から得られる(特に、ヒトから得られる)。ある具体例では、幹細胞は、自系源又はHLA型適合源から得られる。例えば、幹細胞は、膵臓ホルモン産生細胞を必要とする被検体(例えば、インスリン産生細胞を必要とする糖尿病患者)から得られ、そしてこれを培養して自己インスリン産生細胞を生み出すことができる。筋肉組織からの幹細胞、肌(真皮又は表皮)からの幹細胞及び脂肪からの幹細胞のような他の幹細胞源は、被検体から容易に得られる。
【0055】
いくつかの好ましい具体例では、ヒトへの投与用の細胞は、米国食品医薬品局(FDA)又は他国の同等の管理機関が定めた優良な組織使用指針に準拠すべきである。このような細胞株を発育させるための方法は、医師による検査及びヒト以外の細胞と産物への暴露の回避を包含し得る。
【0056】
ドナー(随意に患者がドナーである)由来の細胞は、細胞を送達する目的に従って、分画されていない又は分画された細胞として投与できる。細胞は、投与前にある種の細胞型について富化させるために分画され得る。分画方法は斯界に周知であり、一般には正の選択(すなわち、特定の特性に基づく細胞の保持)及び負の選択(すなわち、特定の特性に基づく細胞の排除)の両方を包含する。当業者には明らかなように、正の選択及び負の選択のために使用される特定の特性(例えば、表面マーカー)は、所望の細胞集団に依存するであろう。細胞の選択/富化のための方法としては、免疫親和性技術又は密度遠心分離法が挙げられる。免疫親和性技術は、斯界に周知の通り、様々な形態をとることができるが、一般には、抗体又は抗体誘導体をいくつかのタイプの分離技術と組み合わせて使用する。この分離技術は、一般に、抗体が結合した細胞と抗体が結合していない細胞との物理的分離を生じさせるが、場合によっては、抗体が結合した細胞を死滅させる分離技術を負の選択のために使用することができる。
【0057】
蛍光活性化細胞分類法(FACS)、パニング法、免疫磁気分離法、免疫親和性クロマトグラフィー、抗体仲介補体結合法、抗毒素法、密度勾配分離法などを含め、使用されるべき選択された細胞の選択/富化のために任意の好適な免疫親和性技術を使用することができる。免疫親和性方法で処理した後に、所望の細胞(正の選択の場合には免疫親和性試薬が結合した細胞及び負の選択の場合には免疫親和性試薬が結合していない細胞)を集め、そして免疫親和性選択/富化のさらなるラウンドに付し、又は患者に投与するために保存しておく。
【0058】
免疫親和性選択/富化は、典型的には、所望の細胞型を含む細胞の調製物を抗体又は抗体由来の親和性試薬(例えば、所定の表面マーカーに特異的な抗体)と共にインキュベートし、次いでこの結合した親和性抗体を使用して該抗体が結合した細胞について又はこの細胞に対して選択することによって実施される。この選択方法は、一般に、結合親和性試薬の存在又は非存在に応じて単一の細胞を含有する液滴を異なる容器に注ぐことによって(FACS)、固相基材に結合(直接的に又は間接的に)した抗体利用することによって(パニング、免疫親和性クロマトグラフィー)、又は親和性試薬を介して磁性粒子に結合する細胞を集めるために磁場を使用することによって(免疫磁性分離)達成できるような物理的分離を伴う。別法として、望ましくない細胞は、親和性試薬であって該親和性試薬が結合した細胞に細胞毒性傷害を向けるものを使用して調製物から除去できる。細胞毒性傷害は、親和性試薬(例えば、補体結合)によって活性化でき、又は親和性試薬(例えば、リシンB鎖のような抗毒素)によって標的細胞に局限できる。
【0059】
ここに開示された方法を細胞の生体内監視のために頻繁に使用することが予期されるが、これらの手法は、培養液中、組織試料中又は他の生体外細胞物質中で細胞を監視するためにも同様に効果的であることに留意すべきである。治療的使用について、細胞は、患者への投与のための調製中の所望の工程で標識できる。
【0060】
様々な方法を使用して細胞を画像化試薬で標識できる。一般に、細胞は、画像化試薬が細胞と会合するようになるように画像化試薬と接触した状態に置かれるであろう。条件は、多くの場合、細胞の生存を維持することを目的とした標準的な細胞培養条件であろう。用語「会合」とは、画像化試薬と細胞が、生体内であるか試験管内であるかを問わず、該画像化試薬が細胞の位置について有用な情報を与えるのに十分な時間にわたって十分に近い物理的な近接の状態にとどまる任意の態様を包含することを意図する。画像化試薬は、例えば、食作用後に又は界面活性剤を介して細胞に入った後に、細胞内に位置し得る。樹状細胞、マクロファージ及びT細胞のような免疫細胞は高度な食作用を示し、しかもここに与えるデータ及び他の研究で提供されたデータから、このような細胞及び他の食細胞型は容易に標識されることが立証される。実験用アレルギー性脳脊髄炎(EAE)動物モデルにおける一研究[21]から、乳化されたPFPEのボーラス注入後にその場で標識された単球は、19F MRIを使用したCNSで検出できたことが示された。また、幹細胞のような他の細胞型も、食作用活性にかかわらず標識できる。画像化試薬は、細胞膜に挿入され、又は細胞の細胞外成分に共有結合し若しくは非共有結合し得る。例えば、ここで説明したある種の直鎖状フルオロカーボンは、1種以上の標的部分を結合させるように誘導体化できる。標的部分は、画像化試薬と標識されるべき細胞との会合を促進させるように選択されるでろう。標的部分は、フルオロカーボンを細胞膜に非特異的に挿入させるように設計され(疎水性アミノ酸配列又はパルミトイル部分若しくはミリストイル部分のような他の疎水性部分)、又は細胞に非特異的に入るのを促進させるように設計され得る。標的部分は、受容体リガンドの場合と同様に細胞表面成分に結合できる。標的部分は、特異的結合対の一員であることができ、ここで、この相手は、細胞表面成分である。該標的部分は、例えば、受容体に対するリガンド、又はモノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体のような抗体、又は免疫グロブリンの可変部分を含む様々なポリペプチド結合因子のうち任意のもの(例えば、Fv断片、単鎖Fv(scFv)断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、単一ドメイン抗体、ラクダ化抗体、ヒト化抗体、ダイアボディー(diabody)、トリボディー(tribody)、テトラボディー(tetrabody))であることができる。
【0061】
細胞を治療計画のなかで使用すべき場合には、注射及び特別な装置の使用を含めて細胞の送達のために様々な方法を使用して細胞を様々な器官に移植している。本発明は、任意の特定の送達方法に拘泥されない。ここで与えたデータから、標識された細胞は、これらの細胞が特定の部位に直接送達されるか又は全身に送達さるかどうかにかかわらず監視できることが立証される。標識されたDCは、組織に直接的に限局移植した後又は静脈内注射した後に首尾よく画像化された。細胞は、被検体への注射又は移植による導入を促進させる送達装置に挿入できる。このような送達装置としては、細胞及び流体を受容被検体の体内に注入するためのチューブ、例えば、カテーテルが挙げられる。好ましい具体例では、これらのチューブは、さらに、本発明の細胞を被検体に所望の位置で導入できる針、例えばシリンジを有する。これらの細胞は、様々な異なる形態での送達のために調製できる。例えば、細胞は、溶液若しくはゲル中に懸濁され、又はこのような送達装置に含まれるときには支持マトリックス中に埋め込まれ得る。細胞は、本発明の細胞が生存できる状態を保持する、薬剤として許容できるキャリア又は希釈剤と混合できる。薬剤として許容できるキャリア又は希釈剤としては、生理食塩水、水性緩衝溶液、溶媒及び/又は分散媒体が挙げられる。このようなキャリア及び希釈剤を使用することは斯界に周知である。この溶液は、好ましくは無菌でかつ流動性である。好ましくは、該溶液は、製造及び保存の条件下で安定であり、かつ、パラベン、クロルブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどを使用することによって細菌及び真菌のような微生物の汚染作用に対して保護される。本発明の溶液は、ここに説明したような細胞を薬剤として許容できるキャリア又は希釈剤及び、必要に応じて、ろ過滅菌後の上に列挙された他の成分を取り入れることによって調製できる。
【0062】
4.核磁気共鳴技術
ここで説明するように、核磁気共鳴技術を使用して標識細胞の集団を検出することができる。用語「検出」は、特に核磁気共鳴技術によって標識分子又は標識細胞が存在すること又は存在しないことを確かめる任意の試みを包含するように使用する。また、用語「検出」は、定量的測定及び2次元又は3次元画像の生成を含め、さらに高度な測定法を包含することも意図する。例えば、MRIを使用してこのような細胞の画像を生成させることができる。多くの場合、標識された細胞は、生体に投与され得る。細胞の投与後に、該被検体のある部分又は被検体の全体をMRIで検査してMRIデータセットを生成させることができる。本明細書で使用するときに、「データセット」には、対象の素材の磁気共鳴プロービング中に収集された生データ並びに該生データから処理され、変換され又は抽出された情報が包含されるものとする。処理された情報の例としては、対象の素材の2次元又は3次元画像図が挙げられる。抽出された情報の別の例は、対象の素材中の画像化試薬又は19Fシグナルの量又は濃度を表すスコアである。例えば、19Fシグナルのシグナル対ノイズ比(SNR)を測定し、そしてこれを使用して標識細胞の存在度を算出することができる。このタイプのデータは、例えば、脾臓又は標識細胞と特に関連のある別の器官のような、被検体の単一領域で収集できる。標識された細胞は、被検体以外の環境で検査され得る。標識細胞を培養液中で検査することが望ましいかもしれない。ある具体例では、標識細胞は、組織試料若しくは組織培養液に適用され又はその中で生成できるため、標識細胞は、同様の環境中で画像化できる。例えば、移植されるべき器官、組織又はその他の細胞物質を、このような移植物を被検体に移植する前に画像化試薬と接触させて標識細胞を生成させることができる。
【0063】
一般に、本発明の標識剤は、慣用のMRI検出システムで使用するために設計される。最も一般的なMRIの実施を行う際に、対象の素材中に含まれる移動水の分子内の水素核(プロトン、1H)を観察する。ここに開示した標識を検出するために、代わりの核19Fが検出される。19F MRIは、1Hと比較して僅かに少ない固有感度のみを有する。その相対感度は、ほぼ0.83である。両者は、+1/2のスピンを有する。19Fの天然同位元素存在率は100%であり、これは1Hについての99.985%に匹敵する。検出及び画像形成の背景にある物理的原理は、1H及び19F MRIの両者について同一である。対象の素材は、大きな静磁場に置かれる。この静磁場は、該磁場の方向に沿って1H又は19Fに関連する磁気モーメントを整列させる傾向がある。これらの核は、ラーモア周波数(これは、核が共鳴によりエネルギーを吸収する場合の磁場強度に比例する特徴的な周波数である)でのパルス高周波により平衡から乱される。RFの除去中に、この核は、受信機であるアンテナ内に過渡電圧を誘導する。この過渡電圧は、核磁気共鳴(NMR)シグナルを構成する。空間的情報は、大きな静的場上に重ね合わされる磁場勾配の選択的適用によってNMRシグナルの周波数及び位相の両方に符号化される。この過渡電圧は、一般にデジタル化され、次いでこれらのシグナルは、例えば、画像を生成するためにコンピューターを使用することによって処理され得る。
【0064】
一定の磁場強度では、19Fのラーモア周波数は、1Hと比較してわずかに低い(〜6%)。したがって、19Fのデータを取得するために、慣用のMRIスキャナーと、ハードウェア及びソフトウェアの両方とを適合させることは簡単である。19Fの検出は、MRI、MRS又は他の技術のような異なるタイプの磁気共鳴断層撮影装置と組み合わせることができる。典型的には、19F画像と比較するために1H MRI画像を得ることが望ましいであろう。生体又はその他の生体組織において、プロトンMRIは、対象の素材の画像を与え、かつ、19F画像で検出された標識細胞の解剖学的背景を明確にすることを可能にするであろう。本発明の好ましい具体例では、データを同一のセッション中に19Fと1Hの両方について収集する。この2つのデータセットが空間的な重ね合わせの状態にあることをさらに確実にするために、この対象をこれらの取得中に移動させない。通常、19Fと1Hのデータセットは、いずれかの順序で連続的に取得される。別法として、MRI装置のハードウェア及び/又はソフトウェアを適切に変更することにより、例えば、両方のデータセットを同時に取得して画像化の時間を節約することができる。蛍光検出のような他の画像化技術を19F MRIと組み合わせてもよい。これは、特に、フルオロカーボン画像化試薬が蛍光部分で誘導体化される場合に望ましい。
【0065】
MRI試験は、斯界に知られている任意の好適な手法に従って実施できる。画像データを収集し及び処理するために、データの収集を組織化するためにMRI装置によって使用される多くの異なるタイプのMRIパルスシーケンス又は命令のセット及びシグナル処理技術(例えば、フーリエ変換及び投影復元法)が長年にわたって開発されてきた(例えば、Magnetic Resonance Imaging,第三版,D.D.Stark及びW.G.Bradley著,Mosby社,米国ミズーリ州セントルイス,1999を参照)。本発明の試薬及び方法は、原NMRシグナルの任意の特定のイメージングパルスシーケンス又は処理方法に拘束されない。例えば、本発明に適用できるMRI方法は、スピンエコー法、励起エコー法、勾配エコー法、自由誘導減衰をベースとする画像化法及びこれらの任意の組み合わせを広く包含する。また、k空間における1本以上のライン又はk空間の大きなセグメントをそれぞれの励起シグナルから取得する場合には、19F(又は1H)データを取得するために高速画像化技術も非常に好適である。高速画像化技術の例としては、高速スピンエコー法(例えば、FSE、ターボSE、TSE、RARE又はHASTE)、エコープラナー撮像法(EPI)、勾配エコーとスピンエコーを組み合わせた技術(例えば、GRASE)、スパイラル撮像法及びバースト撮像法が挙げられる。新規でかつ改善されたパルスシーケンス及びシグナル処理方法の開発は継続して発展しつつある分野であり、当業者であれば、19F標識細胞をこれらの解剖学的背景において画像化するための多数の方法を創作し得る。
【0066】
核磁気共鳴技術の別の例として、MRSを使用して局所的な組織又は器官におけるフルオロカーボン標識細胞の存在を検出することができる。通常、MRS方法は、慣用のMRIスキャナーで実施される。多くの場合、この局所的な関心体積(VOI)は、慣用の解剖学的1H MRIスキャン内で定義される。その後、このVOI内で確認される19F NMRシグナルの強さを標識細胞の数及び/又は組織若しくは器官内に存在する細胞当たりの平均PFPE濃度に直接関連させる。非常に大きな対象内でVOIを単離するための方法は斯界に周知である(例えば、Magnetic Resonance Imaging,第三版,第9章,D.D.Stark及びW.G.Bradley著,Mosby社,米国ミズーリ州セントルイス,1999)。例としては、VOIに近い局所的RF表面コイル、表面スポイリング、表面コイルB1勾配法、スライス選択的B0勾配技術、STEAM、PRESS、画像選択的 in vivo 分光分析法(ISIS)及び磁気共鳴分光画像化法(MRSI)を使用することが挙げられる。新規でかつ改善されたパルスシーケンス及びシグナル処理方法の開発は継続的に発展しつつある分野であるため、当業者であれば、VOIでフルオロカーボン標識細胞から放射される19F NMRシグナルを検出するために多数の方法を創作し得る。
【0067】
本願は、本発明のある種の側面及び具体例を単に例示する目的として包含される次の実施例を参照することによって容易に理解されるであろう。この実施例は、本願を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0068】

この節において、本発明の実施可能性を証明するデータを提供する。本発明の代表的な具体例は、培養細胞を標識するために弗素系画像化試薬を使用する。標識された細胞を生体に導入し、そして19F MRIを使用して生体内で追跡する。19F MRI画像を1H MRI画像に重ねて標識細胞の解剖学的位置を立証する。
【0069】
1.PFPE標識樹状細胞のNMR特性
これらのデータは、PFPEによる免疫細胞の試験管内標識を示す。胎児の皮膚由来の細胞株からの樹状細胞(FSDC)[24]を生理学的条件下で4時間にわたって培地(RPMI−1640、10%のウシ胎仔血清、100μg/mLのストレプトマイシン、100U/mLのペニシリン及び2mMのグルタミンを含有する)中でPFPE(すなわち、ペルフルオル−15−クラウン−5−エーテル)エマルジョン粒子と共にインキュベートした。次いで、これらの細胞から過剰のPFPEを徹底的に洗浄し、そして3×106個の細胞をNMRキャピラリーチューブ中に置いた。これらの標識FSDCからの典型的な19F NMRスペクトルを図1に示す。このスペクトルは、標準的な高分解能NMR分光計を使用して282MHzで得た。単一のNMRピークが、DCにおけるPFPEから良好なシグナル対ノイズ比で観察された(図1)。このNMRの線幅(半値全幅)は、〜150Hzであり、これは、MRIの適用に対して十分に狭い。基準19F化合物(トリフルオル酢酸)を、DCを含有するキャピラリーの隣にある別個のチューブ中に置いた(図1)。これら2つのピーク下でこれらの統合された領域を比較することによって、細胞によって取り込まれたPFPE分子の総数を定量することができる。その他の細胞型をPFPEでラベルし、そして同様の結果が得られた。図1bは、PFPEで標識されたラットの9L神経膠肉腫細胞、T細胞富化脾臓細胞及びマクロファージについての19F NMRスペクトルを示している。図1bのデータは、(a)と同様の標識手順及び測定手順を使用して得た。ラット9L神経膠肉腫細胞(ATCC社,米国バージニア州マナッサス)を、10%のFBS、2mMのL−グルタミン、100U/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンで強化されたダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で培養した。PFPEをリポフェクタミンと予備混合し、次いで、これを該細胞培養液に添加し、そして4時間インキュベートした。細胞を徹底的に洗浄し、ペレット化させ、そして19F NMRでアッセイした(図1b)。T細胞富化脾細胞は、C57BL/6Jマウスから得た。脾臓を採取し、ガラススライドの間で押し潰し、そして5%FBSを有するRPMIに懸濁した。赤血球を除去した。T細胞の富化を、付着細胞を除去するように調製済ナイロンカラム上で細胞をインキュベートすることによって達成した。残りの細胞を、生理学的条件で3時間にわたって10%FBSを有するRPMI中でインキュベートすることにより、懸濁液状のPFPEで標識した。これらの細胞については、リポフェクタミンを使用しなかった。次いで、細胞を集め、そしてこれをフィコール溶液と共に遠心分離管に装填していかなる残留PFPEの細胞懸濁液も清浄にした。遠心分離後、細胞は該管の底部でペレット化し、そしてPFPEはフィコール中に残る。この細胞ペレットを回収し、そして19F NMRでアッセイした。付着性EOC−20マウス細胞株(ATCC社)からマクロファージを得た。これらのマクロファージを追加DMEM培地中で納入業者の取扱説明書に従って培養した。該培地にPFPEを添加し、そして一晩インキュベートした。次いで、細胞を徹底的に洗浄し、採取し、そして19F NMRのためにペレット化させた。T細胞の場合と同様に、マクロファージを標識する際にもリポフェクタミンを使用しなかった。というのは、これらの細胞はかなりの食作用を有し、しかもエマルジョン粒子を容易に取り込むからである。
【0070】
本出願人は、骨髄由来DC(BMDC)及び胎児の肌由来の細胞株[24]からのDC(FSDC)を含め、いくつかの異なるタイプのDCを首尾良く標識した。また、出願人は、マクロファージ、T細胞及び神経膠肉腫も首尾良く標識したが、これらの結果は、その標識効率が、DCにおいて観察されるものに匹敵することを示している。そのままの細胞懸濁液で得られる19F NMRスペクトルを使用して細胞内PFPE標識を確認し、そして取り込み量を定量した。
【0071】
2.PFPE標識DCの試験管内MRI
PFPE標識免疫細胞がMRIのために有用であることを確認するために、DC懸濁液の試験管内19F画像化を実施した。FSDCを上記と同一の態様で標識した。2個の1mmの直径のガラス製毛細管をアガロース中に埋め込むことによってファントムを調製したが、この場合、それぞれの毛細管は、燐酸緩衝化生理食塩水(PBS)中3×106個のDCを含有していた。これらの毛細管のうちの一つは、標識されていない細胞を含有していた(コントロール)。このファントムを、1H又は19Fのいずれかに適合できる研究室で構築されたRF表面コイル上に置くと同時に、磁石穴中にも置いた。11.7T MRIシステムにおいて標準2DFTスピンエコーパルスシーケンスを使用して画像を取得した。図2は画像化の結果を示しており、ここで、左のパネルが1H画像であり、右のパネルが19F画像である。この19F画像は、標識細胞を有する毛細管を含有する領域における単一の強いスポットを示している。いかなる化学シフトによるアーチファクトも検出できなかった。19F画像は、いかなる背景1Hシグナルも有しなかった。これは、画像化技術の高い選択性を立証する。
【0072】
3.PFPE標識免疫細胞の生体内MRI
PFPE標識細胞は、様々な条件下でのMRIを使用して生体内で視覚化できる。標識したDCを、組織に直接局所的に移植し又は静脈内注射した後に画像化した。これらのデータは、該画像化技術の感度が様々な細胞送達方法と共に生体内で使用するのに十分であることを示している。
【0073】
実験の一セットにおいて、PBS中3×106個のPFPE標識FSDCをマウスの片方の大腿四頭筋に直接注射した。標識方法は上記と同様であった。画像データは、注射後〜4時間で取得した。注射された脚を1H又は19Fのいずれかに適合できる研究室で構築された表面コイル上に配置した。画像を、麻酔をかけたマウスにおいて〜2時間にわたって取得した。両方の核についての画像を、標準的な2DFTスピンエコーパルスシーケンスを使用して11.7T MRIシステムで得た。典型的な結果を図3に示している。19Fシグナルは、注射部位から上を追跡しているように見えることに留意されたい。この動きは、集まったリンパ節への該DCの移動を表し得る。この態様で注入されたDCのごく一部分は、数時間以内にリンパ節で見いだされ得ることが知られている。また、1H画像において、少量の超強度が標識細胞と同一の位置の筋肉中で観察される(これは、常在炎症細胞及び移植DCの存在と一致する)ことも留意されたい。
【0074】
図4は、標識PFPE−DCが生体内でリンパ節に移動することができることを示している。この実験では、3×106個の標識FSDCを後足のパッドの先端部に直接注射した。画像を図3と同様のパラメーターを使用して取得した。およそ4時間後に、注射された脚の画像は、該細胞が膝の近傍に位置する膝窩リンパ節に移動し、そして蓄積したことを示している(図4)。注射していない脚(右)は、いかなる19Fシグナルも示さない。
【0075】
その他の研究では、静脈内注射後にPFPE標識DCを全身的に画像化することの実施可能性を調査した。マウスの胴体を生体内で画像化し、そして標識細胞の高濃度の蓄積を含む領域を視覚化した。これらの実験では、〜10×106個の標識FSDCを上記と同一の方法を使用して標識し、そしてこれを尾静脈を介して注入した。代表的なデータを図5に示している。この胴体を貫く斜めの薄片において、19Fシグナルは、肝臓、脾臓及びことによると肺において最も明白である(図5)。
【0076】
4.PFPE標識DCの表現型試験
出願人は、PFPEによるDCの標識が細胞の表現型を変化させるかどうかを決定するためにいくつかの実験を実施した。蛍光活性化細胞分類(FACS)実験を初代BMDC培養及びFSDC株で実施した。初代DCをNODマウスから抽出された骨髄細胞から採取した。BM細胞を、先に[1]に記載したようにGM−CSFの存在下で4日間培養した。4日目に、TNFα+PGE2からなる成熟条件をこれらの細胞のいくつかに加え、そして残りの細胞をGM−CSF単独で培養した。GM−CSFのみで培養されたDCは、低レベルの共刺激分子の発現を特徴とする未熟な表現型を有するが、TNF−α+PGE2は、これらの分子の発現並びにIL−12p70サイトカインの産生レベルを増大させる。細胞を上記のようにPFPEでラベルした。DCを、抗CD11cをコートした電磁マイクロビーズを使用した磁気細胞選別法によって精製した。これらの細胞の表現型を、DC及び成熟特異的マーカーの発現に対してフローサイトメトリー分析によって決定した。該細胞がIL−12を分泌することができることを、該DCをCD40L導入J558細胞と共に48時間にわたってインキュベートすることによって決定した。細胞をPFPE化合物で標識したときに、表現型の変化は観察されなかった(図6)。DC株についても同様の結果が得られた(データは示さない)。
【0077】
5.PFPE標識DCの電子顕微鏡検査
PFPEエマルジョン粒子の細胞内分布を解明するために、本出願人は、標識細胞について電子顕微鏡検査(EM)を実行した。図7は、単一の細胞における典型的な結果を示している。エマルジョン粒子は、多数がより容易に明らかになり(図7a)、そして滑らかな回転楕円体として現れる。これらの粒子は、食作用を示す小胞と一致する領域内で区分されるように見える(図7b)。また、細胞内構造を強調するために使用されるオスミウム染色は、PFPE粒子の境界を描写する傾向をも有する(図7b)。
【0078】
FSDCを上記のようにPFPEエマルジョン粒子で標識した。次いで、該DCを洗浄し、ペレット化させ、そして2%のグルタルアルデヒドを含有するPBS中で30分間室温で固定し、そして4℃で一晩維持した。これらの細胞をPBSで3回洗浄し、そして1%OsO4のPBS溶液で10分間処理した。これらの試料の全てをH2Oで3回洗浄し、そして上昇系列のエタノールで脱水した。プロピレンオキシド(PO)を移行溶媒として使用した。これらの細胞を、POとエポン−アラルダイト(EA)の1:1混合物を含有する溶液中で一晩浸透させた。次の日に、該混合物を100%EAと交換し、そして試料をデシケーター内に8時間にわたって置いた。この試料を、EAを含有するプラスチックカプセル中に置き、そして60℃で48時間にわたって重合させた。薄い(0.1μm)切片を、ミクロトームを使用してカットし、そして200メッシュのCu格子上に置いた。これらの試料を1%の水性酢酸ウラニル及びレイノルズクエン酸鉛で染色した。切片を日立7100透過型電子顕微鏡を使用して画像化した。
【0079】
6.PFPEエマルジョンの細胞内保持時間
FSDCにおけるPFPE粒子の細胞内保持時間を試験管内で評価するために実験を実施した。その結果は、細胞が経時的にPFPEを分解し又は排出する傾向がほとんど又は全くないことを示している。実験開始時に、多数の同一の組織培養皿をFSDCと共に培養し、そして全てを上記のようにPFPEで標識した。標識後、該培地中の過剰のPFPEを完全に洗浄することによって除去した。次いで、これらの細胞を生理学的条件で1週間インキュベートした。1週間のうち様々な時点で、単一の培養皿中のDCから、該培地中に放出されたいかなるPFPEも洗浄した。次いで、該細胞を採取し、ペレット化させ、そして残りの細胞内PFPE濃度を、該ペレットの19F NMRスペクトルを取得することによってアッセイした(第1節に記載した通り)。図8は、1週間にわたるPFPE保持についての経時的分析を示している。初日〜2日目の間では、細胞分裂は正常な速い速度で生じた。これは、PFPEが細胞分裂に影響を及ぼさなかっただけでなく、毒性でもないことを示している。〜2日の初期の後は、細胞はプレート上で融合化し、そして予期されるようにいくつかの細胞の欠失が生じた。その結果として、19Fシグナルは、溶解したアポトーシス細胞によって放出されたPFPE粒子の再取り込みのために、残りのDC内で増大するように思われる。
【0080】
7.陽イオン性脂質を使用したPFPE標識効率の増大
この節の実験は、PFPEエマルジョンを生成させるために界面活性剤に陽イオン性脂質を取り入れると、細胞内取り込みが増大することを示す(図9)。図9におけるぞれぞれのデータポイントについては、1×106個のFSDCを第1節に記載した通りにPFPEで標識した。様々な量の陽イオン性脂質(リポフェクタミン(商標),インビトロゲン社)をPFPEエマルジョンと予備混合してから、これを培地に添加した。インキュベーション後に、細胞から過剰のPFPEを洗浄し、そして該細胞をペレット化し、そしてPFPE含有量を上記のような標準化19F NMRシグナルからアッセイした。これらの結果は、細胞内取り込みの劇的な増加が所定のリポフェクタミン濃度範囲について達成できることを示している(図9)。およそ26倍の取り込みの増加が、検討したリポフェクタミンの最も高いレベルで観察される(図9)。固定細胞におけるEMの結果から、該PFPE粒子が細胞内にあったことが確認された。
【0081】
8.PFPEの細胞毒性及び細胞増殖に及ぼす影響
PFPEは、本質的に、取り込み後に細胞にいかなる毒性の影響も及ぼさない。PFPE標識後に、細胞が生存している画分を、ビブラント細胞毒性アッセイ(モレキュラープローブス社,オレゴン州ユージーン)を使用して決定した。このアッセイは、細胞質からの周囲の培地への特定の酵素(グルコース6−燐酸デヒドロゲナーゼ:G6PD)の漏出量を測定するが、これは、ある集団における生存能力のない細胞の数を推定するために広く認められている方法である。G6PDは、反応混合物中に与えられるNAD+をNADHに還元させるが、これは、次に非蛍光レサズリンの蛍光レソルフィンへの還元を助ける。1時間以内に、僅か500個の細胞の細胞毒性をマイクロプレートリーダーを使用して測定することができる。出願人は、FSDCを3時間にわたって37℃でPFPE、PFPE+リポフェクタミントランスフェクション剤(細胞内取り込みを増加させるための)、リポフェクタミン単独及びそのままの細胞と共にインキュベートした。次いで、これらの細胞を洗浄し、カウントし、そして96ウェルマイクロプレートに接種した。標識後0時間、18時間及び24時間目に、該細胞を製造業者の指示に従ってアッセイした。図10はその結果を示している。全体として、検討した全ての時点について明白な毒性はほとんど又は全くない。。
【0082】
PFPE標識が細胞増殖に任意の悪影響を及ぼすかどうかについて試験するために、本出願人は、MTT及び全二重鎖DNA(dsDNA)アッセイを含め、2つの相補的な方法を使用した。ミトコンドリアアッセイ又はMTTアッセイ(ATCC社,バージニア州マナッサス)は、外部要因に対する細胞の応答についての情報を与える。黄色のメチルチアゾールテトラゾリウム(MTT)は、そのままのミトコンドリア内のデヒドロゲナーゼによって紫色のホルマザンに還元される。細胞溶解後に、このホルマザンの吸光度を96ウェルマイクロプレートリーダーで光度計により定量する。PFPE標識細胞及びコントロールをG6PD細胞毒性アッセイ(上記)について説明したのと同様に調製した。製造業者の説明に従い、MTTの増殖を標識後0、18及び24時間目にアッセイした。図11aは、標準化MTT吸収対時間を示している。これらの群間ではいかなる有意な相違も観察されない。
【0083】
また、経時的な全細胞数も蛍光技術によって正確に測定できる。出願人は、細胞浸透性染料(ヘキスト33258)を含有するFluoReporter Blue Fluorometric dsDNA Quantificationキット(モレキュラープローブス社,オレゴン州ユージーン)を使用した。dsDNAのA/Tリッチ領域にインターカレートでなく結合することにより、ビスベンズイミダゾールの蛍光収率は、試料中の細胞数と共に直線的に増加する。標識FSDC及びコントロールをMTT及びG6PD細胞毒性アッセイと同一の態様で調製した。細胞を、製造業者の指示に従いマイクロプレートリーダーを使用して標識後0、18及び24時間目にアッセイした。結果を図11bに示している。標識細胞と非標識細胞との間で細胞増殖における有意な相違は全く又はほとんど観察されない。
【0084】
9.直鎖状PFPE画像化試薬
メチルエステル官能基を末端基とする1600MWの直鎖状ポリエチレンオキシドを、米国特許第5539059号に記載された方法に従って合成した。本出願人は、直鎖状PFPEエステルからエマルジョンをうまく合成した(図12a)。これまで、最終産物は、19F NMR(図12b)及びEM(図13a)によって特徴付けられてきた。この物質は、一つの主要な19F NMR共鳴を、MRI用途について容認できる小さな副ピークと共に与える。必要ならば、非共鳴飽和RFパルスを使用してこの小さなピークからの多重像を除去することができる。このEMデータを使用してエマルジョンの粒度をアッセイした。図13bは、多数のEM顕微鏡写真から算出された粒度のヒストグラムを示している。寸法は、市販のソフトウェアプログラム(サイオン社,メリーランド州フレドリック)を使用して自動化された方法で算出した。平均粒度を算出したところ、42±19nm(誤差は標準偏差である)であった。この粒度は、上に示した結果について使用したペルフルオル−15−クラウン−5−エーテルエマルジョンよりも小さく、しかもこの小さな寸法は、画像化技術に良く適合する。これらのエマルジョンを作るために、ジメチルエステルPFPEをポリエチレングリコール(PEG)600MW及びO−(2−アミノエチル)−O−メチルポリエチレングリコール750(シグマ−アルドリッチ)と共に85℃で48時間加熱した。2:1のPEG:PFPEモル比を使用した。塩化メチレン及びレシチン(卵リン脂質由来,シグマ社,ミシシッピ州セントルイス)を該混合物に添加し、純粋な窒素で乾燥させた。蒸留H2Oを添加し、そしてこの混合物を3時間にわたって超音波処理してエマルジョンを形成させた。
【0085】
直鎖状PFPEエステルは容易に反応して所定の範囲の特性を有する誘導体を生成する。ポリエチレングリコールの末端基の反応化学はよく理解されており、しかも所定の範囲の結合画像化試薬を製造するために利用できる。図14に概説するように、親水性部分と親油性部分は、このPFPE形成用の水溶性結合体及び脂溶性結合体にそれぞれ結合できる。このPFPEにポリエチレングリコール(PEG)基をカップリングさせると、それぞれの末端に水溶性領域を有し、しかも中心部に疎水性領域を有するトリブロック共重合体ができるであろう(図14のRxn1)。該トリブロック共重合体の特性は、PPO部分に対してPEG部分の寸法を変化させることによって調節される。水溶性部分、フルオロカーボン部分及び炭化水素部分を含むブロック共重合体は、それぞれの重合体種類がそれ自体とのみ会合したドメインに分離することが知られている[46]。PEG−PFPE−PEG共重合体は同様の挙動を示し、水溶性PEGコートによって取り囲まれたPFPEコアを有するミセルを形成することが予期される。アミノ−PEGブロックは、所定の範囲の分子量で商業的に入手できる。PFPEコアを、PEG部分の代わりに脂肪族アミン(図14のRxn2及び4a)及びホスファチジルエタノールアミン(図14のRxn3)のような他の基とカップリングさせると、異なる溶解度特性を有する誘導体を与える。Cy5(図14のRxn4b)のような蛍光染料末端基を有するPFPEからなる二重形態の薬剤が調製できる。蛍光標的蛋白質の場合と同様に、蛍光染料は、細胞内での該結合体の分布及び局在化のためのマーカーとして作用することができ、かつ、FACS分析及び光学顕微鏡分析で使用できる。
【0086】
先に調製したように、ペルフルオル−15−クラウン−5−エーテルは、2%のレシチンと2%のベニバナ油との混合物中で超音波処理を使用して乳化でき、〜100−200nmの平均液滴を形成する。当業者に知られている多くの他の界面活性剤組成物(例えば、プルロニクス)を同様のエマルジョンの形成に使用することができる。また、直鎖状PFPE誘導体のミセルも超音波処理によって形成できる。ペルフルオルポリエーテルの乳化は、Visca外[44]及びBrunetta[43]によって説明されている。これらの手順は、PFPE誘導体のエマルジョンを製造するための基礎として使用されるであろう。Cy染料の水への高い溶解度は、PEG−PFPEの対に類似するミセルを生じさせるであろう。レシチンのような追加の界面活性剤を必要に応じて添加して小さい安定なミセルを製造することができる。ミセルの形成は、最大のPFPE含有量のために最適化できる。
【0087】
エマルジョン及びミセルの最終PFPE含有量は、19F NMRを使用してトリフルオル酢酸の既知濃度に対して測定できる。それぞれのエマルジョンの平均粒度は、EM又は光散乱技術によって推定できる。また、EM顕微鏡写真又は光散乱を使用して粒径のヒストグラムを算出することもできる。
【0088】
引用による編入
ここで言及する全ての文献及び特許文献は、あたかもそれぞれここの文献又は特許文献を具体的にかつ個別的に引用によって編入したことを示したように、それらの全体の引用によってここに編入されるものとする。対立がある場合には、本願は、ここでの任意の定義を含めて調整するものとする。
【0089】
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23. Noth,U.,外,養子免疫伝達実験的アレルギー性脳脊髄炎におけるペルフルオル−15−クラウン−5−エーテル標識マクロファージ。Artificial Cells Blood Substitutes and Immobilization Biotechnology, 1997.25 (3): p.243-254.
24. Girolomoni,G.,外,胎児マウスの肌からの初期樹状細胞前駆体による細胞株の確立。European Journal of Immunology,1995.25 (8): p.2163-2169.
【0090】
均等
主題の発明の具体例をここに明確に開示しているが、上記明細書は例示であって限定ではない。当業者であれば、本発明の多くのバリエーションは、本明細書及び特許請求の範囲の再検討することにより明白になるであろう。本発明の完全な範囲は、特許請求の範囲をそれらの完全な均等の範囲と共に及び本明細書をそのようなバリエーションと共に参照することによって決定すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】PFPEで標識されたDC、ラット9L神経膠肉腫細胞、T細胞及びマクロファージについての19F NMRを示す図である。
【図2】PFPE標識DC(DCs+PFPE)及び非標識DC(コントロール)を含有する毛細管の試験管内(in vitro)MRIである。
【図3】PFPE標識DCを筋肉注射した後のマウス大腿四頭筋の生体内(in vivo)MRIである。
【図4】後足のパッドへの注射後のマウス膝窩リンパ節へのDCの移動の生体内MRIである。
【図5】PFPE標識DCを接種したマウス腹部を斜めに切ったものである(生体内)。
【図6】PFPEで標識(太線)及び非標識(細線)の骨髄(BM)由来DCの表現型FACS分析である。
【図7】PFPE標識DCの電子顕微鏡写真。低倍率(a)及びそれよりも高い倍率(b)での代表的な標識DCを示す図である。
【図8】DC標識後の時間の関数としての有効細胞内PFPE濃度(黒四角)及び全細胞数(白丸)を示す図である。
【図9】添加されたリポフェクタミンの関数としての、19F NMRにより測定されたDC中のPFPE濃度を示す図である。
【図10】G6PD酵素の放出によって測定されるPFPE標識DCの細胞毒性を示す図である。
【図11】MTT(a)及びdsDNA(b)によってアッセイされたPFPE標識DCの増殖を示す図である。
【図12】PFPEエステルの分子構造(a)及びこの分子から作られたエマルジョンの19F NMRスペクトル(b)を示す図である。
【図13】直鎖状PFPEエマルジョン粒子の電子顕微鏡写真(a)及び粒度のヒストグラム(b)を示す図である。
【図14−1】PFPE画像化試薬の例示及び誘導体を生成させるための反応例を示す図である。
【図14−2】PFPE画像化試薬の例示及び誘導体を生成させるための反応例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を標識するための方法において、生体外で該細胞とフルオロカーボン画像化試薬とを該フルオロカーボン画像化試薬が該細胞と会合した状態になるような条件下で接触させることを含む、細胞を標識するための方法。
【請求項2】
フルオロカーボン画像化試薬がペルフルオルポリエーテルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細胞とフルオロカーボン画像化試薬とを取り込み促進剤の存在下で接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
取り込み促進剤が陽イオン性脂質を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
フルオロカーボン画像化試薬の少なくとも一部分が細胞に内在化される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
フルオロカーボン画像化試薬の少なくとも一部分が細胞の細胞外表面と会合する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
フルオロカーボン画像化試薬が細胞の標的部分に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
細胞の標的部分が、細胞外の環境に露出したエピトープに結合する抗体を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
フルオロカーボン画像化試薬が内在化部分に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
細胞がほ乳類細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
細胞が免疫系の細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
細胞が樹状細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
フルオロカーボン画像化試薬がエマルジョンとして処方される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
エマルジョンが30〜500nmの平均直径を有する粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
フルオロカーボン画像化試薬がペルフルオルクラウンエーテルである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
画像化試薬がペルフルオル−15−クラウン−5−エーテルである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
フルオロカーボンが次の平均式:
XO(Y−O)n
(式中、Yは、
【化1】

よりなる群から選択され、nは8〜20の整数であり、X及びZは同一であり、そしてペルフルオルアルキル、ペルフルオルエーテル、フルオルアルキルであってフルオルアシル、カルボキシル、アミド又はエステルを末端基とするもの、メチロール、酸塩化物、アミド、アミジン、アクリレート及びエステルよりなる群から選択される。)
を有する過弗素化ポリエーテルである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
画像化試薬が追加の官能性部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
追加の官能性部分が検出部分である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
検出部分が蛍光検出部分及びPET検出部分よりなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
次の平均式:
XO(Y−O)n
(式中、Yは、
【化2】

よりなる群から選択され、nは8〜20の整数であり、X及びZは同一であり、そしてペルフルオルアルキル、ペルフルオルエーテル、フルオルアルキルであってフルオルアシル、カルボキシル、アミド又はエステルを末端基とするもの、メチロール、酸塩化物、アミド、アミジン、アクリレート及びエステルよりなる群から選択される。)
を有する画像化試薬。
【請求項22】
n=11である請求項21に記載の画像化試薬。
【請求項23】
X及びZがカルボキシル基を末端基とするペルフルオルエーテルである、請求項21に記載の画像化試薬。
【請求項24】
それぞれのカルボキシルがポリエチレングリコールにより誘導体化された請求項21に記載の画像化試薬。
【請求項25】
X及びZが蛍光検出部分により誘導体化された請求項21に記載の画像化試薬。
【請求項26】
1個以上の重合体末端で少なくとも1個の官能性部分により誘導体化された直鎖状フルオロカーボンにおいて、該少なくとも1個の官能性部分が検出部分、親水性部分、標的部分及び細胞取り込み部分よりなる群から選択される、直鎖状フルオロカーボン。
【請求項27】
直鎖状フルオロカーボンが直鎖状ペルフルオルポリエーテルである、請求項26に記載の直鎖状フルオロカーボン。
【請求項28】
少なくとも1個の官能性部分が検出部分である、請求項26に記載の直鎖状フルオロカーボン。
【請求項29】
検出部分が蛍光検出部分及びPET検出部分よりなる群から選択される、請求項28に記載の直鎖状フルオロカーボン。
【請求項30】
ペルフルオルポリエーテルを含み、しかも10〜500nmの範囲の粒度を有するエマルジョン。
【請求項31】
エマルジョンが4℃〜37℃の範囲の温度で安定である、請求項30に記載のエマルジョン。
【請求項32】
被検体内の細胞を検出するための方法において、
(a)該被検体に、フルオロカーボン画像化試薬で標識された細胞を投与し、及び
(b)該被検体の少なくとも一部分を核磁気共鳴技術によって検査し、それによって該被検体内の標識細胞を検出すること
を含む、被検体内の細胞を検出するための方法。
【請求項33】
核磁気共鳴技術による検査が19Fのデータセットを収集することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
1Hのデータセットを収集することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
19F画像と1H画像とを生成し、そしてこれらを比較することをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
核磁気共鳴技術が磁気共鳴映像法(MRI)である、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
核磁気共鳴技術が磁気共鳴分光法(MRS)である、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
フルオロカーボン画像化試薬がペルフルオルポリエーテルである、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
フルオロカーボン画像化試薬が直鎖状ペルフルオルポリエーテル、環状ペルフルオルポリエーテル及びそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
細胞がほ乳類細胞である、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
細胞が免疫系の細胞である、請求項32に記載の方法。
【請求項42】
細胞が樹状細胞である、請求項32に記載の方法。
【請求項43】
細胞を細胞療法の一部分として被検体に投与する、請求項32に記載の方法。
【請求項44】
細胞が幹細胞である、請求項31に記載の方法。
【請求項45】
被検体への投与用の標識細胞処方物であって、
(a)細胞、及び
(b)該細胞と会合するフルオロカーボン画像化試薬
を含む、被検体への投与用の標識細胞処方物。
【請求項46】
薬剤として許容できる賦形剤をさらに含む、請求項45に記載の処方物。
【請求項47】
フルオロカーボン画像化試薬がペルフルオルポリエーテルである、請求項45に記載の処方物。
【請求項48】
フルオロカーボン画像化試薬の少なくとも一部分が細胞に内在化される、請求項45に記載の処方物。
【請求項49】
フルオロカーボン画像化試薬が細胞の細胞外表面と会合する、請求項45に記載の処方物。
【請求項50】
フルオロカーボン画像化試薬が細胞標的部分と結合する、請求項45に記載の処方物。
【請求項51】
細胞標的部分が、細胞外の環境に露出したエピトープに結合する抗体を含む、請求項50に記載の処方物。
【請求項52】
フルオロカーボン画像化試薬が内在化部分に結合する、請求項45に記載の処方物。
【請求項53】
細胞がほ乳類細胞である、請求項45に記載の処方物。
【請求項54】
細胞が免疫系の細胞である、請求項45に記載の処方物。
【請求項55】
細胞が樹状細胞である、請求項45に記載の処方物。
【請求項56】
細胞が、細胞療法に使用するために調製された、請求項45に記載の処方物。
【請求項57】
移植受容体内の移植細胞を検出するための方法において、
(a)移植用の細胞を移植受容体に投与し、ここで、該移植用の細胞の少なくとも一部分はフルオロカーボン画像化試薬で標識されているものとし、
(b)該被検体の少なくとも一部分を核磁気共鳴技術によって検査し、それによって該標識細胞を検出すること
を含む、移植受容体内の移植細胞を検出するための方法。
【請求項58】
標識細胞の位置及び随意にその輸送を移植受容体内で検出する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
核磁気共鳴技術が磁気共鳴映像法及び磁気共鳴分光法よりなる群から選択される、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
移植受容体が骨髄移植受容体である、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
移植用の細胞が造血幹細胞を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項62】
移植用の細胞が骨髄、臍帯血又は末梢血に由来する、請求項56に記載の方法。
【請求項63】
移植受容体がドナー臓器の受容体である、請求項56に記載の方法。
【請求項64】
ドナー臓器の細胞の少なくとも一部分がフルオロカーボン画像化試薬で標識されている、請求項62に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【公表番号】特表2007−526245(P2007−526245A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549518(P2006−549518)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/000800
【国際公開番号】WO2005/072780
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(504337958)カーネギー メロン ユニバーシティ (15)
【Fターム(参考)】