説明

核酸−リポポリマー組成物

核酸のトランスフェクションの効率を高める組成物、方法及び応用が提供される。1つの態様において、医薬組成物は、等張液に懸濁されたカチオン性リポポリマーと縮合された少なくとも約0.5mg/ml濃度の核酸を含むことができ、該カチオン性リポポリマーは、コレステロール及びポリエチレングリコールがそこに共有結合されたカチオン性ポリマー骨格を含み、コレステロール対カチオン性ポリマー骨格のモル比は、約0.1から約10の範囲内であり、ポリエチレングリコール対カチオン性ポリマー骨格のモル比は、約0.1から約10の範囲内にある。該組成物はさらにフィラー賦形剤を含むこともできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸及びリポポリマーを含む、濃縮され、安定性のある製剤、その組成物、調製方法及び応用に関する。したがって、本発明は、分子生物学及び生化学の分野に関わる。
【背景技術】
【0002】
合成遺伝子送達ベクターは、より良い安全性コンプライアンス、単純な化学及び費用効果の高い製造のため、ウイルスベクターに比べ、相当な利点がある。しかし、ウイルスベクターに比べて、合成ベクターはトランスフェクション効率が低いため、合成遺伝子送達システムにおける発展の大半は、送達効率を向上することに集中してきた。結果として、製剤の安定性、スケールアップ及び投薬の柔軟性に問題が見つかっていたにもかかわらず、合成送達システムの薬学的発展には、ほとんど注意が向けられてこなかった。自己組織化してナノ粒子を形成するDNAを含む薬剤は、特に製剤が水性懸濁液であるとき、しばしば低い安定性を示す。そのような製剤において、合成ベクターを有するDNAは、一般に、とりわけ臨床現場で最適投薬のために必要とされる濃度では、時間の経過に伴い凝集する。そのような製剤は、DNA濃度>0.3mg/mlでは、調製が困難であることが多く、とりわけ、容量の制約によって、柔軟な投薬が制限される局所送達では、商用的応用が限定されてしまう。DNA凝集は、DNAの活性を減少又は除去するため、組成物を治療での使用に不適とする。
【0003】
この物理的不安定性は、トランスフェクション活性の損失の根幹にある理由の1つである。脂質二重層の高い屈曲又はDNAからの脂質の物理的解離を原因とする、粒子の破裂又は融合の発現も、カチオン性脂質ベースの遺伝子送達複合体の低い安定性及び凝集の潜在的な根幹的理由と仮定されている。送達ベクターの酸化的加水分解等の化学修飾も、粒子の不安定性に寄与している可能性がある。
【0004】
安定性が低いため、初期の臨床試験において、DNA製剤は臨床で調製することが要求された。最適投薬に必要とされる濃度で臨床生成物を調製及び保管することができないことは、非ウイルス性DNA生成物の広い臨床診療及び商用化の主要な障害になっている。これでは、薬剤の処方について医師の訓練が必要となり、現場での品質管理対策が課されることになる。
【0005】
凍結乾燥は、いくつかの調合薬の長期的安定性を改善するために有用な方法である。しかし、この工程は調合薬の物理化学的特性を変化させる傾向があり、再構成時にトランスフェクションの凝集及び損失に繋がるため、合成ベクターを有するDNA複合体を乾燥させるのに、通常、適さない。
【0006】
凍結乾燥時の製剤の凝集及び損傷を防止するために、いくつものアプローチが試みられてきた。ある種の場合において、低分子量の糖、デキストラン及びポリエチレングリコール等の凍結保護物質の存在下でのDNA複合体の凍結乾燥は、生成物に対し、より良い安定性を提供することもできるが、このアプローチは投薬の柔軟性を改善するようには見えない。糖の添加は、この目的のために、多くの場合、最も一般的に利用されるアプローチである。試験された糖の多くは、ある程度まで、製剤の損傷及び粒子の凝集を防ぐことが判明したが、この作用の質は、糖の種類及び使用される送達ベクターによって変化する。
【0007】
凍結乾燥は、製剤の貯蔵寿命においてある程度の改善をもたらすが、凍結乾燥されたDNA生成物を生産するために必要な条件は、限定された薬剤学的応用のみを可能とする。最も有効な凍結保護糖を使用した場合でさえも、安定性のためには、極めて高い糖/DNAモル比(一般に、1000:1を超える)が必要とされる。結果として、凍結乾燥された生成物は、等張性製剤を得るためには、多くの場合、非常に大きな倍率で希釈しなければならず、事前凍結乾燥されたDNA濃縮物に対して、最終DNA濃縮物の低下が生じる。カチオン性担体の多くにとって、最終的なDNA濃度は、一般に約0.1〜0.2mg/mlとすることができ、多くの場合、0.1mg/mlを下回る。低濃度製剤は、in vitro研究には十分であるが、最適投薬に大容量が要求されるため、それらの臨床応用は制限される可能性がある。例えば、安定性のために必要とされる最適糖濃度において、1mg投与量のDNAは、等張性を維持するために、5〜10mlで希釈する必要がある可能性があるが、それでは、局所的in vivo投与には、容量が多すぎる。この調剤上の制約は、柔軟な投薬の妨げとなり、ヒトの臨床試験における合成遺伝子送達システムの準最適な有効性の主要な原因の1つであり、安定性及び生物学的に活性のある、より高濃度のDNA製剤が必要であるという根拠となる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、高核酸濃度で予想外の安定性を示し、核酸トランスフェクションの有効性及び投薬の柔軟性を向上する組成物を提供する。本明細書に記載する組成物は、核酸の生物学的活性又は凝集を失うことなく、効率的に凍結乾燥し、高核酸濃度を含め、様々な核酸濃度に再構成することができる。
【0009】
1つの態様において、本発明は、カチオン性リポポリマーと少なくとも約0.5mg/mlの核酸との混合物を含み、その混合物が水溶液に懸濁される組成物、好ましくは医薬組成物を提供する。該カチオン性リポポリマーは、コレステロール及びポリエチレングリコール基が独立に、共有結合されている、カチオン性ポリマー骨格を有する。コレステロール対カチオン性ポリマー骨格のモル比は、約0.1から約10の範囲内であり、ポリエチレングリコール対カチオン性ポリマー骨格のモル比は、約0.1から約10の範囲内である。該組成物は、さらに、フィラー賦形剤を含むこともある。ある種の態様において、核酸とリポポリマーとの混合物は、複合体を形成する。ある種の態様において、該組成物は、縮合核酸を含む。縮合される核酸の量は、一般に、核酸の組成的構造と組成物を調製する条件に依存する。
【0010】
本発明は、さらに、前述の組成物を作製する方法も提供する。
【0011】
もう1つの態様において、本発明は、核酸とリポポリマーとの凍結乾燥された組成物を提供する。本発明の凍結乾燥された組成物、好ましくは、凍結乾燥された医薬組成物は、フィラー賦形剤、縮合核酸及びカチオン性リポポリマーの混合物を含む。前述のとおり、カチオン性リポポリマーは、コレステロール及びポリエチレングリコールが共有結合され、コレステロール対カチオン性ポリマー骨格のモル比が、約0.1から約10の範囲内であり、ポリエチレングリコール対カチオン性ポリマー骨格のモル比が、約0.1から約10の範囲内である、カチオン性ポリマー骨格を有する。
【0012】
本発明は、さらに、例えば、種々の細胞及び組織をトランスフェクトすることにより、本明細書に記載の組成物を、疾患及び/又は障害の治療に使用するための方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の製造工程を示す概略図である。
【図2】濃縮状態及び非濃縮状態での核酸の粒径を示すグラフである。
【図3】核酸の縮合を示すために、電気泳動実験の結果を示す図である。
【図4】本発明のさらなる実施形態に従うトランスフェクション活性を示すグラフである。
【図5A】IL−12を使用しない、リポポリマーによる治療結果を示す神経スライスの写真である。
【図5B】IL−12を使用した、リポポリマーによる治療結果を示す神経スライスの写真である。
【図6】対照と比較した、リポポリマーによるIL−12の抗がん効果を示す2つのグラフである。
【図7A】種々の核酸/カチオン性ポリマー混合物の粒径を示すグラフである。
【図7B】種々の核酸/カチオン性ポリマー混合物の粒径を示すグラフである。
【図8A】種々の核酸/カチオン性ポリマー混合物から生じるルシフェラーゼ発現を示すグラフである。
【図8B】種々の核酸/カチオン性ポリマー混合物から生じるルシフェラーゼ発現を示すグラフである。
【図9】長期保管後の核酸/カチオン性リポポリマー組成物の生物活性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明が開示及び記載される前に、本発明は、本明細書に開示される特定の構造、工程ステップ又は材料に限定されるものではなく、関連技術分野の当業者により認識される、それらに相当するものにも拡大されるものであることを理解されるべきである。さらに、本発明の範囲は付属の特許請求の範囲及びそれに相当するものによってのみ制限されるため、本明細書中で用いられる用語は、具体的な実施形態のみを記述する目的に使用されるものであり、範囲を制限する意図はないことも理解されるべきである。
【0015】
本明細書及び付属の特許請求の範囲で用いられているように、単数の表現「1つの」、「ある」(a,an)及び「この」(the)には、そうでない旨が明確に断られていない限り、複数も含まれることに留意される必要がある。
【0016】
本明細書で用いられる用語「縮合した核酸」及び「部分的に縮合した核酸」は、本発明のカチオン性リポポリマーによって接触させた核酸を指すために用いられる。ある種の態様において、縮合した核酸は、カチオン性リポポリマーと接触したままの状態を維持する。縮合した核酸は、一般に、縮合していない核酸よりも、著しく少ない容積を占める。しかし、縮合した核酸の量は、局所的な環境(例えば、脂質は水性環境に抵抗する等)によって変動し得ることが認識されている。本発明の種々の態様において、縮合した核酸は、約50nmから約300nm、より好ましくは、約50〜200、さらにより好ましくは約50〜150nmの大きさを有する、核酸及びカチオン性リポポリマーのナノ粒子形態のものである。「部分的に縮合した核酸」は、本発明のカチオン性リポポリマーによって接触されている核酸であって、その核酸が完全に縮合された状態には達していないが、それでも縮合されていない核酸よりも占める容積が著しく少ないものを指す。
【0017】
本明細書で用いられる用語「複合体」は、リポポリマー、好ましくはカチオン性リポポリマーに結合されている核酸を意味する。縮合した核酸及びカチオン性リポポリマーを含む複合体は、通常、粒子、好ましくはナノ粒子として存在する。
【0018】
本明細書で用いられる用語「トランスフェクトする」及び「トランスフェクション」は、特に細胞質及び/又は細胞核に関係して、核酸を細胞にとって外部の環境から、細胞の内部環境へと移送することを指す。いかなる特定の理論にも制約されることなく、核酸は、1つ又は複数のカチオン性ポリマー/核酸複合体の中に封入されるか、そこに粘着するか、又はそれに同伴させた後、細胞に送達され得ることを理解されるべきである。特定のトランスフェクトインスタンスは、核酸を細胞核に送達する。
【0019】
本明細書で用いられる「被験者」は、本発明の医薬組成物の投与又は方法から利益を得ることのできる哺乳動物を指す。被験者の例には、ヒトが含まれ、さらに、その他にも、ウマ、ブタ、ウシ、イヌ、ネコ、ウサギ及び水棲哺乳類等の動物が含まれることがある。
【0020】
本明細書で用いられる「組成物」は、2つ又はそれ以上の化合物、元素又は分子の混合物を指す。いくつかの態様において、用語「組成物」は、核酸及び送達システムの混合物を指して用いられることもある。
【0021】
本明細書で用いられる「N:P比」は、官能性カチオン性リポポリマー中のアミン窒素及び核酸中のリン酸基のモル比を指す。
【0022】
本明細書で用いられる「物理化学的特性」は、以下に制限されるものではないが、カチオン性ポリマーを有する核酸複合体の粒径及び表面電荷、粒子解のpH及びオスモル濃度等の様々な特性を指す。
【0023】
本明細書で用いられる用語「投与」、「投与する」及び「送達する」は、組成物を被験者に提供する方法を指す。投与は、経口、非経口、経皮、吸入、植込み等の様々な当技術分野で周知の経路により達成することができる。したがって、経口投与は、該組成物を含む経口剤形の嚥下、咀嚼、吸引によって達成することができる。非経口投与は、組成物を静脈内、動脈内、筋肉内、関節内、髄腔内、腹腔内、皮下等で注入することにより、達成することができる。このような用途のための注入物質は、液状溶液若しくは懸濁液のいずれかとしての従来の形、又は注入に先立って、液体中溶液又は懸濁液として調製するのに適した固体の形で、又は乳剤として調製することができる。さらに、経皮投与は、経皮組成物を皮膚表面に塗布する、貼る、ロールする、接着する、注ぐ、押し付ける、擦り付ける等により、達成することができる。これら及び追加の投与方法は、当技術分野でよく知られている。1つの特定の態様において、投与には、組成物が全身的に循環し、エンドサイトーシスにより摂取されるように、標的細胞に結合するように、組成物を被験者に送達することも含むことができる。
【0024】
本明細書で用いられる用語「核酸」は、DNA及びRNA並びにそれらの合成コンジナーも指す。核酸の例としては、以下に限定されないが、タンパク質をコードするプラスミドDNA又はヌクレオチド配列、一本鎖若しくは二本鎖の合成配列、ミスセンス、アンチセンス、ナンセンス並びにオン及びオフを生成する阻害性RNA、並びにタンパク質、ペプチド及び核酸の産生を制御する速度調節ヌクレオチドを挙げることができる。さらに、核酸は、以下に限定されないが、ゲノムDNA、cDNA、siRNA、shRNA、mRNA、tRNA、rRNA、ハイブリッド配列又は合成若しくは半合成配列、及び天然由来及び人工由来の配列を含むことができる。1つの態様において、ヌクレオチド配列には、治療タンパク質の合成又は阻害をコードするものも含むことができる。このような治療タンパク質の例としては、以下に限定されないが、抗がん剤、成長因子、低血糖剤、抗血管新生薬、細菌抗原、ウイルス抗原、腫瘍抗原又は代謝酵素を含むことができる。抗がん剤の例としては、インターロイキン−2、インターロイキン−4、インターロイキン−7、インターロイキン−12、インターロイキン−15、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージ刺激因子、抗血管新生薬、腫瘍抑制遺伝子、チミジンキナーゼ、eNOS、iNOS、p53、p16、TNF−α、Fasリガンド、突然変異したがん遺伝子、腫瘍抗原、ウイルス抗原又は細菌抗原を挙げることができる。別の態様において、プラスミドDNAは、腫瘍細胞又はその他の過剰増殖細胞の成長又は維持に関与するタンパク質(単数又は複数)を阻害するように設計されたshRNA分子をコードすることができる。さらに、いくつかの態様において、プラスミドDNAは、治療タンパク質及び1つ又は複数のshRNAを同時にコードすることもできる。他の態様において、核酸は、プラスミドDNAと、センスRNA、アンチセンスRNA、リボザイム等も含む、合成RNAとの混合物とすることもできる。さらに、核酸は、大きさを可変とすることができ、オリゴヌクレオチドから染色体まで及ぶ。これらの核酸は、ヒト、動物、野菜、細菌、ウイルス又は合成に由来するものとすることができる。これらは、当業者に知られている任意の技法により得ることができる。
【0025】
本明細書に用いられる用語「濃縮された」は、その希釈が減った組成物を指す。本発明のいくつかの態様において、「濃縮された」組成物は、縮合されたDNAを好ましくは、等張液で含有する。本発明の特定の態様において、濃縮された組成物は、等張液に懸濁された、縮合されたDNAを少なくとも約0.5mg/ml含む。
【0026】
本明細書で用いられる用語「ポリマー骨格」は、指定範囲内の重量平均分子量を有するポリマー骨格分子の集合を指して用いられる。したがって、コレステロール等の分子がモル比の範囲内でそこに共有結合されていることを記述しているとき、そのような比は、ポリマー骨格分子の集合に結合しているコレステロール分子の平均数を表すことを理解されるべきである。例えば、コレステロールが、モル比0.5で、ポリマー骨格に共有結合していると記述されている場合、平均で、ポリマー骨格分子の2分の1に、コレステロールが結合される。もう1つ例を挙げれば、コレステロールが、モル比1.0で、ポリマー骨格に共有結合していると記述されている場合、平均で、1つのコレステロール分子が、ポリマー骨格の各々に結合される。しかし、現実には、この場合、一部のポリマー骨格分子には、コレステロール分子が1つも結合しない一方、他のポリマー骨格分子には、複数のコレステロール分子が結合している可能性もあり、値はその比を導き出すもととなる結合したコレステロール分子の平均数であることを理解されるべきである。同じ論理が、ポリマー骨格に対するポリエチレングリコールのモル比にも当てはまる。
【0027】
本明細書で用いられる用語「ペプチド」は、1つのアミノ酸のカルボキシル基によって、別のアミノ酸のα−アミノ基に結合されるアミノ酸を2つ以上含む、天然又は合成の分子を指すために用いることができる。本発明のペプチドは、長さによって制限されず、したがって、「ペプチド」には、ポリペプチド及びタンパク質も含むことができる。
【0028】
本明細書で用いられる用語「共有(covalent)」及び「共有で(covalently)」は、電子が原子対の間で共有されることになる化学結合を指す。
【0029】
本明細書で用いられる複数の項目、構造要素、組成要素及び/又は物質は、便宜のために、共通した列挙の形で提示される可能性がある。しかし、その種の列挙では、列挙された各々の要素が、別個で独自の要素として個別に識別されるものと解釈されるべきである。したがって、そうでないと断られていない限り、その種の列挙の個々の要素は、共通のグループで提示されていることのみを根拠として、同じグループで列挙されている任意の他の要素に事実上、相当しているものと解釈されるべきではない。
【0030】
濃度、量及びその他の数値データは、本明細書において、範囲形式で表現又は提示される場合がある。このような範囲形式は、単に便宜上及び簡潔さのために用いられているということを理解されるべきであり、したがって、範囲の上限及び下限として明示的に挙げられた数値のみならず、その範囲内に含有される、個々の数値又は部分範囲のすべてが、明示的に列挙されているのと同様に含まれているものとして柔軟に解釈されるべきである。例えば、「約1から約5」という数値範囲は、明示的に挙げられた約1から約5の値のみならず、指示された範囲内の個々の値及び部分範囲も含むものとして解釈されるべきである。したがって、この数値範囲には、2、3及び4等の個々の値並びに1〜3、2〜4及び3〜5等の部分範囲、さらには1、2、3、4及び5も個別に含まれている。同じ原則が、最小又は最大として1つの数値だけが挙げられている範囲にも適用される。さらに、このような解釈は、記載されている範囲の幅又は特性に関係なく、適用されるものとする。
【0031】
本発明は、低濃度の核酸組成物(例えば、0.15mg/ml)を、その核酸又は核酸組成物の物理化学的特性又は生物学的特性に影響を及ぼすことなく、高度に濃縮することのできる手法を提供する。1つの態様において、核酸組成物は、これらの特性に影響を及ぼすことなく、33倍又はそれ以上に濃縮することができる。このように高度に濃縮された核酸組成物は、約0.3mg/mlを超える濃度を達成しようとした過去の試みでは、低い安定性の問題が生じたために極めて困難であった、in vivoでの広範囲の投与レジメンを可能にする。
【0032】
より具体的には、本発明は、濃縮され、安定性のある医薬組成物を、このような組成物の調製及び使用のための方法も含めて提供する。例えば、1つの態様において、核酸がカチオン性リポポリマーと複合体を形成し、その複合体が等張液に懸濁されている、少なくとも約0.5mg/mlの核酸を含む、医薬組成物が提供される。等張液に懸濁される複合体は、部分的又は完全に縮合された核酸分子を含む。カチオン性リポポリマーは、コレステロール及びポリエチレングリコール基(即ち、分子)がそこに共有結合される、カチオン性ポリマー骨格を含む。コレステロール分子対カチオン性ポリマー骨格のモル比は、約0.1から約10の範囲内であり、ポリエチレングリコール分子対カチオン性ポリマー骨格のモル比は、約0.1から約10の範囲内である。別の態様において、カチオン性リポポリマー中のポリエチレングリコール分子対カチオン性ポリマー骨格のモル比は、約1から約10の範囲内である。さらに別の態様において、カチオン性リポポリマー中のポリエチレングリコール分子対カチオン性ポリマー骨格のモル比は、約1から約5の範囲内である。さらなる態様において、カチオン性リポポリマー中のコレステロール分子対カチオン性ポリマー骨格のモル比は、約0.3から約5の範囲内である。さらに別の態様において、カチオン性リポポリマー中のコレステロール分子対カチオン性ポリマー骨格のモル比は、約0.4から約1.5の範囲内である。
【0033】
組成物は、さらに、フィラー賦形剤を含む。得られる組成物は、核酸を標的細胞に送達し、核酸の機能に応じて、生体応答の引き出し、阻害又は修正を行うのに適している。
【0034】
1つの態様において、コレステロール及びポリエチレングリコール分子は、カチオン性ポリマー骨格に独立して、直接に共有結合することができる。別の態様において、コレステロール及びポリエチレングリコール分子は、それぞれ、カチオン性ポリマー骨格に間接的に共有結合される。例えば、コレステロール分子は、リンカー又はスペーサーを介して、ポリエチレングリコール分子に直接的又は間接的に結合することができ、そのポリエチレングリコール分子がカチオン性ポリマー骨格に共有結合する。或いは、コレステロール分子がカチオン性リポポリマー骨格に直接結合し、ポリエチレングリコール分子がリンカー又はスペーサーを介して、間接的に、リポポリマーに結合することもできる。
【0035】
ポリエチレングリコールとカチオン性ポリマー骨格との間の特定のリンカーは、末端カルボキシ基を有するアルキレン基、好ましくは、炭素原子数1から20、より好ましくは、炭素原子数約2から約4の直鎖アルキレン基である。リンカー上の末端カルボキシ基は、カチオン性ポリマー骨格のアミノ基に結合すると、カチオン性リポポリマーとポリエチレングリコールとの間にアミド結合を形成する。カチオン性ポリマー骨格分子と反応するのに適した開始ポリエチレングリコールは、活性化基、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルにより終端されるリンカー分子を有するポリエチレングリコールである。このようなポリエチレングリコールの例の1つは、メトキシポリエチレングリコール−プロピオン酸N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルである。
【0036】
ポリエチレンイミン、クロロギ酸コレステリル(立体化学は省略)及びメトキシポリエチレングリコール−プロピオン酸N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルの間の反応から生じるカチオン性リポポリマー構造体の一部の例は、以下の構造体である。図形的表現法は、ポリエチレンイミンにおける一級、二級及び三級アミノ基の近似分布を反映し、ここでは、明確にするために、実在していないが、ポリエチレンイミン鎖に規則性があるものと仮定している。
【化1】

【0037】
本発明の様々な態様において、nは、通常、約8から約20、より限定すると、約10から約15、さらにより限定すると、約12であり、xは、通常、約2から約3、より限定すると、約2.5であり、yは、通常、約6から約10、より限定すると、約7から約9、さらにより限定すると、7.5であり、zは、通常、約0.4から約0.8、より限定すると、約0.5から約0.7、さらにより限定すると、約0.6である。
【0038】
さらに、いくつかの態様において、2次的な縮合システムを使用して、既に縮合されている核酸を、本明細書に提示した技法を使用してさらに縮合し、高濃度での核酸の安定性をより高めることもできる。したがって、本発明の態様に従う縮合に先立って、核酸は部分的に縮合された形又は縮合されていない形とすることができる。2次的な縮合システムには、これに限定されないが、カチオン性脂質、カチオン性ペプチド、シクロデキストリン、カチオン化ゼラチン、デンドリマー、キトサン及びそれらの組合せを含め、当業者に知られている任意の縮合用物質又は技法が含まれ得る。
【0039】
本発明の態様に従う組成物のために、核酸の様々な縮合度を達成することができる。1つの態様において、組成物中のすべての核酸又は核酸の大部分は、カチオン性ポリマーを有する複合体を形成することにより、縮合される。もう1つの態様において、組成物中の約30重量%の核酸が縮合される。さらにもう1つの態様において、組成物中の約50重量%の核酸が縮合される。さらなる態様において、組成物中の約70重量%の核酸が縮合される。さらにもう1つの態様において、90重量%の核酸が縮合される。
【0040】
さらに、組成物中の核酸の濃度は、組成物で使用される物質、濃縮方法及び核酸の意図された用途に応じて、変化する。しかし、1つの態様において、核酸の濃度は、少なくとも約0.5mg/mlである。もう1つの態様において、核酸の濃度は、少なくとも約1mg/mlである。さらにもう1つの態様において、核酸の濃度は、少なくとも約3mg/mlである。さらなる態様において、核酸の濃度は、少なくとも約5mg/mlとすることができる。さらにもう1つの態様において、核酸の濃度は、少なくとも約10mg/mlとすることができる。もう1つの態様において、核酸の濃度は、少なくとも約20mg/mlとすることができる。さらにもう1つの態様において、核酸の濃度は、約10mg/mlから約40mg/mlとすることができる。
【0041】
様々な方法を利用して、核酸組成物の縮合度を決定することができる。例えば、1つの態様において、組成物中の核酸が、組成物にカチオン性ポリマーを添加された複合体を形成している程度を判定するために、組成物を電気泳動することができる。正に帯電したカチオン性リポポリマーに対する負に帯電した核酸の静電気引力により、核酸はアガロースゲルの中を移動することが阻害される。したがって、電気泳動に従って、カチオン性ポリマーと複合体を形成することにより縮合された核酸は、ゲルの中で不動のまま留まるのに対し、縮合されていない核酸、即ちカチオン性ポリマーと対応付けられていない核酸は、ゲル内の電流の力に相当する距離を移動する。別の例では、核酸の縮合は、組成物内の粒径により判定することができる。粒径は、動的光散乱により測定することができる。通常、縮合された核酸は、縮合されていない核酸に比べて、粒径が小さくなる。好ましい縮合された核酸は、核酸及びカチオン性リポポリマーのナノ粒子が、約50nmから約300nm、より好ましくは、約50〜200、さらにより好ましくは約50〜150nmの大きさを有するものである。
【0042】
前述した例も含め、本発明の態様に従う組成物及び方法において、既知の任意の核酸を利用することができる。したがって、本明細書に記載する核酸は、限定の意図があるものと解釈されるべきではない。例えば、1つの態様において、核酸は、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードするプラスミドを含むことができる。本発明の態様に従う医薬組成物として形成されたとき、有益性が示される多くのペプチドがよく知られている。これに限定するものではないが、そのようなペプチドの例をいくつか挙げれば、インターロイキン−2、インターロイキン−4、インターロイキン−7、インターロイキン−12、インターロイキン−15、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、血管形成剤、凝固因子、血糖降下薬、アポトーシス因子、抗血管新生薬、チミジンキナーゼ、p53、IP10、p16、TNF−α、Fasリガンド、腫瘍抗原、神経ペプチド、ウイルス抗原、細菌抗原及びそれらの組合せがあり得る。1つの具体的な態様において、核酸は、インターロイキン−12をコードするプラスミドとすることができる。もう1つの態様において、核酸は、阻害リボ核酸をコードするプラスミドすることができる。さらに1つの態様において、核酸は、合成の短い干渉リボ核酸とすることができる。さらなる態様において、核酸は、治療ペプチドの発現を阻害するように設計されたアンチセンス分子である。
【0043】
前述のとおり、カチオン性リポポリマーには、コレステロール及びポリエチレングリコールが共有結合されているカチオン性ポリマー骨格が含まれ得る。カチオン性ポリマー骨格には、本発明の様々な態様に従って、核酸を縮合及び濃縮するために使用することのできる、当業者に知られている任意のカチオン性ポリマーが含まれ得る。但し、1つの態様において、カチオン性ポリマー骨格には、ポリエチレンイミン、ポリ(トリメチレンイミン)、ポリ(テトラメチレンイミン)、ポリプロピレンイミン、アミノグリコシド−ポリアミン、ジデオキシ−ジアミノ−b−シクロデキストリン、スペルミン、スペルミジン、ポリ(2−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、ポリ(リシン)、ポリ(ヒスチジン)、ポリ(アルギニン)、カチオン化ゼラチン、デンドリマー、キトサン及びそれらの組合せを含むことができる。1つの具体的な態様において、カチオン性ポリマー骨格は、ポリエチレンイミンとすることができる。
【0044】
特定の態様において、リポポリマーは、コレステロール及びポリエチレングリコールに独立に共有結合されたポリエチレンイミン(PEI)からなる。この態様において、カチオン性リポポリマーのPEG:PEI:コレステロールの平均モル比は、約2〜3:1:0.25〜1、好ましくは、約2.25〜2.75:1:0.4〜0.8、より好ましくは約2.5:1:0.6である。特定の態様において、このようなリポポリマーの分子量は、(遊離塩基として)約3〜4kD、好ましくは約3.25〜3.75kD、より好ましくは約3.54kDであり、対応する塩酸塩の分子量は、約4〜5kD、好ましくは約4.5kDである。
【0045】
さらに、核酸の特性、組成物の意図した用途等を含め、多くの要因に応じて、カチオン性ポリマー骨格の分子量は変化する可能性がある。但し、1つの態様において、カチオン性ポリマー骨格の分子量は、約100から約500,000ダルトンになり得る。さらに、カチオン性リポポリマーの他の様々な成分の分子量も変化する可能性がある。例えば、1つの態様において、ポリエチレングリコールの分子量は、約50から約20,000ダルトンになり得る。
【0046】
本発明の医薬組成物を構成する際、官能性カチオン性リポポリマー中のアミン窒素と核酸中のリン酸塩とのモル比(N:P比)は、核酸を縮合及び/又は濃縮することのできる程度に影響を及ぼす可能性があることが発見されている。最適なN:P比は、核酸の化学的特性に応じて多少変動する可能性があるが、1つの態様において、カチオン性ポリマー骨格中のアミン窒素対核酸中のリン酸塩の比は、約0.1:1から約100:1である。もう1つの態様において、カチオン性ポリマー骨格中のアミン窒素対核酸中のリン酸塩の比は、約3:1から約20:1である。さらに1つの態様において、カチオン性ポリマー骨格中のアミン窒素対核酸中のリン酸塩の比は、約6:1から約15:1である。他の態様において、核酸中のアミン窒素対リン酸塩の比は、約3:1から約100:1、又は約5:1から約100:1、又は約7:1から約100:1である。さらに別の態様において、この比は、約10:1から約100:1、又はより好ましくは10:1から約20:1である。1つの具体的な態様において、カチオン性ポリマー骨格中のアミン窒素対核酸中のリン酸塩の比は、約11:1である。
【0047】
さらに、フィラー賦形剤を医薬組成物に含有することも検討される。このようなフィラーは、凍結乾燥及び再構成中の凍結保護、結合、等張性均衡、安定化等、製剤に種々の有益な特性を与えることができる。フィラー材料は、組成物間で変えることもでき、使用される特定のフィラーは、それだけに限定されるものとして見られるべきでないことを理解されるべきである。例えば、1つの態様において、フィラー賦形剤は、様々な糖、糖アルコール、デンプン、セルロース及びそれらの組合せを含むことができる。もう1つの態様において、フィラー賦形剤は、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストロース、ガラクトース、マンニトール、マルチトール、マルトース、ソルビトール、キシリトール、マンノース、グルコース、フルクトース、ポリビニルピロリドン、グリシン、マルトデキストリン、ヒドロキシメチルデンプン、ゼラチン、ソルビトール、フィコル(ficol)、塩化ナトリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ポリエチレングリコール及びそれらの組合せを含むことができる。さらに1つの態様において、フィラー賦形剤は、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストロース、ガラクトース、マンニトール、マルチトール、マルトース、ソルビトール、キシリトール、マンノース、グルコース、フルクトース、ポリビニルピロリドン、グリシン、マルトデキストリン及びそれらの組合せを含むことができる。1つの具体的な態様において、フィラー賦形剤は、スクロースを含むことができる。もう1つの具体的な態様において、フィラー賦形剤は、ラクトースを含むことができる。
【0048】
本組成物中のフィラー賦形剤の濃度は、約0.01%から約5%、より厳密には、約0.1%から約3.0%、さらにより厳密には、約0.1%から約0.3%とすることができる。
【0049】
いくつかの態様において、被験者又は培養物中の特定の細胞又は組織の標的化を可能にするように、カチオン性リポポリマーを官能化することが有益となる可能性がある。このような標的化はよく知られており、本明細書に記載する例は、それだけに制限するものと見られるべきではない。例えば、1つの態様において、カチオン性リポポリマーは、カチオン性リポポリマー又はポリエチレングリコール分子のいずれかに共有結合している標的部分を含むことができる。このような標的部分は、カチオン性リポポリマーが、被験者の体内を全身的に循環し、特定の細胞の種類又は組織を見つけて、特異的に標的とすることを可能にすることができる。このような標的部分の例としては、トランスフェリン、アシアロ糖タンパク質、抗体、抗体フラグメント、低比重リポタンパク質、細胞受容体、成長因子受容体、サイトカイン受容体、葉酸塩、トランスフェリン、インシュリン、アシアロオロソムコイド、マンノース−6−リン酸塩、マンノース、インターロイキン、GM−CSF、G−CSF、M−CSF、幹細胞因子、エリスロポエチン、上皮成長因子(EGF)、インシュリン、アシアロオロソムコイド、マンノース−6−リン酸塩、マンノース、Lewis及びシアリルLewis、N−アセチルラクトサミン、葉酸塩、ガラクトース、ラクトース及びトロンボモジュリン、ポリミキシンB及びヘマグルチニンHA2等の融合誘導因子、ライソソモトロフィック因子(lysosomotrophic agent)、T−抗原等の核局在シグナル(NLS)及びそれらの組合せを含むことができる。特定の標的化部分の選択及び結合は、十分に当業者の知識の範囲内である。
【0050】
本発明は、また、長期間保管し、使用前に再構成することのできる凍結乾燥された医薬組成物を提供する。1つの態様において、凍結乾燥された医薬組成物は、カチオン性リポポリマーが、コレステロール及びポリエチレングリコールがそこに共有結合されているカチオン性ポリマー骨格を含み、コレステロール対カチオン性ポリマー骨格のモル比が、約0.1から約10の範囲内であり、ポリエチレングリコール対カチオン性ポリマー骨格のモル比が、約0.1から約10の範囲内である、カチオン性リポポリマーと縮合されたフィラー賦形剤及び核酸の凍結乾燥混合物を含むことができる。凍結乾燥された医薬組成物は、乾燥粉末から部分的に再構成された混合物に至るまで、多種多様な形を取ることができる。
【0051】
本発明には、また、縮合された核酸を含む様々な医薬組成物を作製する方法も含まれる。例えば、1つの態様において、等張液中で少なくとも0.5mg/mlに濃縮された、縮合された核酸を有する医薬組成物を作製する方法が提供される。このような方法は、カチオン性リポポリマーが、コレステロール及びポリエチレングリコールが共有結合されているカチオン性ポリマー骨格を含み、コレステロール対カチオン性ポリマー骨格のモル比が、約0.1から約10の範囲内であり、ポリエチレングリコール対カチオン性ポリマー骨格のモル比が、約0.1から約10の範囲内である、フィラー賦形剤中で核酸及びカチオン性リポポリマーを混合することも含むことができる。該混合物は、核酸混合物を濃縮するために、粉末に凍結乾燥しておき、後で希釈剤を使用して、等張液中に少なくとも約0.5mg/mlの縮合された核酸を含む溶液を形成するように再構成することができる。
【0052】
一般に、該組成物は、二糖類の存在下で、核酸溶液をカチオン性リポポリマー溶液と混合した後、凍結乾燥し、等張液中で再構成することにより得ることができる。この工程は、スケーラブルであり、延長された保管寿命を有する、高度に濃縮された核酸製剤を数ミリグラム(ベンチスケール)から数千ミリグラム(GMPスケール)まで生産する。前述のように、カチオン性リポポリマーは、ポリエチレングリコール及びコレステロールが、共有結合によって結合されているカチオン性ポリマー骨格を有する。ポリエチレンイミン骨格の場合、1つの態様において、ポリエチレングリコールとポリエチレンイミンとの間及びコレステロールとポリエチレンイミンとの間の化学量論は、それぞれ0.5〜10、0.1〜10の範囲内である。カチオン性ポリマーの化学組成は、高度に濃縮された、安定した核酸製剤を得るために重要である場合もある。コレステロール及びPEG結合を示さないカチオン性ポリマーは、以下の実施例に示すように、安定した、高度に濃縮された製剤を産生しにくい。
【0053】
本発明の態様に従う組成物は、高い核酸濃度で、複合体のより高い安定性を達成するために、核酸の他の縮合された複合体と組み合わせることもできる。例えば、様々な量のPEG−PEI−コレステロールを添加することで、通常、高い核酸濃度では不安定な、他の核酸送達システムの安定性を高めることが可能である。
【0054】
様々な態様において、合成送達システムには、当技術分野で利用可能な様々な技法により調製することのできる核酸及びカチオン性担体が含まれる。核酸のカチオン性担体は数多く知られている。例えば、ポリエチレンイミン、ポリ(トリメチレンイミン)、ポリ(テトラメチレンイミン)、ポリプロピレンイミン、アミノグリコシド−ポリアミン、ジデオキシ−ジアミノ−b−シクロデキストリン、スペルミン、スペルミジン、ポリ(2−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、ポリ(リシン)、ポリ(ヒスチジン)、ポリ(アルギニン)、カチオン化ゼラチン、デンドリマー、キトサン、カチオン性脂質、例えば、1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP)、N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1−[2−(オレオイルオキシ)エチル]−2−オレイル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロリド(DOTIM)、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、3β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロールヒドロクロリド(DC−コレステロールHCl)ジヘプタデシルアミドグリシルスペルミジン(DOGS)、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N−(1,2−ジミリスチルオキシプロプ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリドDODAC)及びそれらの組合せが挙げられる。これらの送達システムをPEG−PEI−コレステロールと組み合わせると、核酸送達システムの安定性が高まる。
【0055】
本発明の態様は、また、医薬組成物を使用する方法も提供する。例えば、1つの態様において、哺乳類細胞にトランスフェクトする方法には、哺乳類細胞を、本明細書に記載の組成物に接触させ、哺乳類細胞を、該組成物が細胞に入り、核酸の生物活性を引き出すことができるようにする条件下でインキュベートすることも含むことができる。このようなトランスフェクション技法は、当業者に知られている。さらに、もう1つの態様において、組成物を温血の生命体又は被験者に送達することにより、標的組織にトランスフェクトすることができる。このような送達は、腫瘍内、腹腔内、静脈内、動脈内、気管内、肝内門、経口、頭蓋内、筋肉内、関節内及びそれらの組合せ等の投与形態によることができる。このような標的組織には、トランスフェクションから利益を得られる任意の組織又は組織のサブセットを含むことができる。以下に制限するものではないが、このような標的組織の例には、卵巣、子宮、胃、結腸、直腸、骨、血液、腸、膵臓、胸部、頭部、頚部、肺、脾臓、肝臓、腎臓、脳、甲状腺、前立腺、膀胱、甲状腺、皮膚、腹腔、胸腔及びそれらの組合せが含まれ得る。
【実施例】
【0056】
以下の例は、本発明の特定の実施形態のより明確な理解を促すために提供されるものであり、本発明に制限を課す意図は一切ない。
【0057】
調製A
1グラムの分岐性ポリエチレンイミン(PEI)1800Da(0.56mM)を、5mlのクロロホルムに溶解し、ml丸底フラスコに入れ、室温で20分間攪拌する。クロロギ酸コレステリル(0.84mM)380ミリグラム及び活性化したメトキシポリエチレングリコール(MPEG−SPA、メトキシポリエチレングリコール−プロピオン酸N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル)(550Da)(0.91mM)500mgを5mlのクロロホルムに溶解し、PEI溶液を含有している丸底フラスコの上部に置かれた添加漏斗に移す。クロロホルム中でクロロギ酸コレステリル及びMPEG−SPAの混合物を、室温で5〜10分かけて、ゆっくりとPEI溶液に添加する。溶液をさらに室温で4時間攪拌する。溶媒をロータリーエバポレーターにより除去した後、残留している粘着物質を、酢酸エチル20mlに攪拌しながら、溶解する。n−ヘキサン20mlをゆっくりと添加することにより、生成物を溶媒から沈殿させ、液体を生成物から静かに注ぐ。生成物を酢酸エチル/n−ヘキサン(1/1;v/v)の20ml混合物を使って、2回洗浄する。液体を静かに注いだ後、10〜15分窒素ガスをパージすることにより、物質を乾燥させる。物質を10mlの0.05N HClに溶解し、アミン基の塩形態を調製する。水溶液を0.2μmの濾過紙で濾過する。最終生成物を凍結乾燥により得る。
【0058】
この例の調製のモル比は、3.0モルのMPEG−SPA及び1.28モルのコレステロールを1モルのPEI分子に共役させる。
【0059】
調製B
分岐性PEI(BPEI)20グラム(11.1mmol)及び乾燥クロロホルム200mLを一緒に混合し、BPEIを溶解する。溶解後、乾燥クロロホルム200mL中にクロロギ酸コレステリル4g及び活性化したメトキシポリエチレングリコール(MPEG−SPAメトキシポリエチレングリコール−プロピオン酸N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、MPEG MW550、エステルMW719)18.7g(26mmol)を含有する溶液を、20〜30分かけて、攪拌しながら、反応混合物に滴下添加した後、3〜4時間のインキュベーション期間を置く。次いで、混合物を真空下で放置し、溶液を濃縮し、残留クロロホルムを除去する。得られた残留物を1Mの水性HCl320mLに溶解し、攪拌する。PPC塩酸塩のこの溶液を再度、真空下で濃縮し、非常に粘着性のある物質を得る。PPC塩酸塩を単離し、反応副生成物及び未反応出発物質を除去するために、濃縮した混合物をアセトン(<0.4%水)と混合して攪拌し、自由流動物質として、PPC塩酸塩の沈殿を生じさせる。沈殿の後、上澄み液を廃棄する。吸湿性のPPC塩酸塩を真空下で乾燥させる。
【0060】
10%ラクトース中で適切な濃度でPPC及びDNAを調製することにより、まずポリマーDNA複合体を生成する。注入用の水中のカチオン性ポリマー(5mg/ml)及びDNA(3mg/ml)の貯蔵液を、0.3〜3%のラクトース溶液で希釈する。これらは再構成時に、最終的な10%ラクトース濃度を達成するために必要とされる。次に、DNAをPPC溶液に攪拌しながら、滴下添加し、複合体を形成するために、室温で15分間インキュベートする。
【0061】
調製した組成物500μlを2mlのホウケイ酸ガラス瓶に添加し、フリードライヤー(freedryer)に入れる。1次乾燥を開始する前に、瓶を4時間、−34℃に冷却する。24時間後、棚温度を20℃に上昇させ、さらに24時間真空下で維持する。最後に、棚温度を4℃に上昇させ、真空下で瓶に蓋をする。
【0062】
調製C
分岐性PEI1800(0.1mM)180ミリグラムをクロロギ酸エステル4mlに溶解し、室温で30分間攪拌する。クロロギ酸コレステリル(0.14mM)70ミリグラム及びPEG330(0.14mM)48mgをクロロギ酸エステル1mlに溶解し、シリンジを使用して、3〜10分かけて、ゆっくりとPEI溶液に添加する。混合物を室温で4時間攪拌する。沈殿のために、酢酸エチル10mlを添加した後、溶液を−20℃で一晩かけてインキュベートした後、液体をフラスコから静かに注ぐ。残留物質を酢酸エチル/n−ヘキサン(l/l;v/v)の5ml混合物を使って、2回洗浄する。10〜15分の窒素パージにより、残留物質を乾燥させ、10mlの0.05N HClに20分間溶解した後、溶液を0.2μmシリンジフィルターで濾過する。水溶液をフリーズドライ法により凍結乾燥させ、ポリマーから水分を除去する。
【0063】
この調製物のモル比は、PEG0.85モル及びコレステロール0.9モルをPEI分子1モルに共役させる。
【0064】
調製D
25kDa直鎖状PEI(0.02mM)500ミリグラムを30mlに溶解し、30分間、65℃で攪拌する。三口フラスコに縮合及び添加漏斗を装備する。クロロホルム5ml中のmPEG−NHS1000(0.2mM)200mgとクロロギ酸コレステリル(0.08mM)40mgとの混合物を、3〜10分かけて、PEI溶液にゆっくりと添加する。溶液をさらに4時間、65℃で絶えず攪拌し、容積をロータリーエバポレーターで約5mlに減少する。溶液をエチルエーテル50mlに沈殿させ、遊離コレステロールを除去し、液体をフラスコから静かに注ぎ、エチルエーテル20mlを使って、残留物質を2回洗浄する。純窒素で乾燥させた後、物質を2.0N HCl10ml及びトリフルオロ酢酸2mlの混合物に溶解する。溶液をMWCO 15000透析管を使って、脱イオン水に対して48時間透析し、12時間ごとに新鮮な水に交換する。溶液を凍結乾燥し、水分を除去する。
【0065】
この調製物のモル比は、PEG12.0モル及びコレステロール5.0モルをPEI分子1モルに共役させる。
【0066】
調製E
PEI(MW:1200ダルトン)1グラムを、無水メチレンクロリド15mLとトリエチルアミン(TEA)100μlとの混合物に溶解する。30分間、氷の上で攪拌後、クロロギ酸コレステリル溶液1.2gをPEI溶液にゆっくりと添加し、混合物を氷の上で一晩攪拌する。得られた生成物を、エチルエーテルを添加して沈殿させた後、遠心分離し、続いて追加のエチルエーテル及びアセトンを使って洗浄する。非水溶性リポポリマーをクロロホルムに溶解し、最終濃度0.08g/mLを得る。合成及び精製に続き、MALDI−TOFF MS及びH NMRを使って、非水溶性リポポリマーの特性を求める。
【0067】
非水溶性リポポリマー1200のNMR測定では、PEIに共役したコレステロールの量は約40%と示される。非水溶性リポポリマーのMALDI−TOF質量分光分析では、その分子量が約1600と示される。
【0068】
調製F
PEI(MW:1800ダルトン)3グラムを、無水エチレンクロリド10mlとトリエチルアミン100μlとの混合物中で、氷の上で30分間攪拌する。クロロギ酸コレステリル1グラムを、氷のように冷たい無水メチレンクロリド5mlに溶解した後、30分かけて、PEI溶液にゆっくりと添加する。混合物を氷の上で12時間攪拌し、得られた生成物をロータリーエバポレーターで乾燥する。粉末を0.1N HCl50mlに溶解する。メチレンクロリド100mLを使って、水溶液を3回抽出した後、ガラスマイクロファイバフィルターで濾過する。生成物を溶媒蒸発により濃縮し、大過剰なアセトンで沈殿させ、真空下で乾燥させる。MALDI−TOFマススペクトロフォトメトリー及び10H NMRを使って、生成物を分析する。水溶性リポポリマー1800のNMR結果は、PEIに共役したコレステロールの量が約47%と示される。PEACEのMALDI−TOFF質量分光分析では、その分子量が約2200と示される。これは、一部は共役していない又はモル比2/1(コレステロール/PEI)で共役しているが、PEACE1800の大多数では、コレステロールとPEIとのモル比は1/1であることを示唆する。
【0069】
調製G
50ミリグラムのPEI1800を、氷の上で無水メチレンクロリド2mLに溶解する。次に、クロロギ酸ベンジル200μLを反応混合物にゆっくりと添加し、溶液を氷の上で4時間攪拌する。攪拌の後、メチレンクロリド10mLを添加し、飽和NHCl15mLを使って、溶液を抽出する。硫酸マグネシウムを使って、メチレンクロリド相から水を除去する。溶液の容積を真空下で減少させ、エチルエーテルを使って、生成物である、CBZで保護されたPEIを沈殿させる。一級アミンCBZ保護されたPEI50ミリグラムを、メチレンクロリドに溶解し、クロロギ酸コレステロール10mgを添加し、溶液を12時間、氷の上で攪拌する。エチルエーテルを使って、生成物である、CBZで保護されたリポポリマーを沈殿させ、アセトンで洗浄した後、水素供与体としてのHのもとで、触媒としてパラジウム活性化炭素を含むDMF中で溶解する。混合物を室温で15時間攪拌し、CELITE(登録商標)で濾過し、溶液の容積をロータリーエバポレーターで減少させる。エチルエーテルによる沈殿から、最終生成物を得る。
【0070】
調製H
NH−PEG−COOH3400(0.15mM)500ミリグラムを、室温で30分間、無水クロロホルム5mlに溶解した。無水クロロホルム1ml中クロロギ酸コレステロール(1.5mM)676mgの溶液を、PEG溶液にゆっくりと添加した後、さらに4時間、室温で攪拌する。混合物を1時間、氷の上でエチルエーテル500ml中に沈殿させた後、エチルエーテルを使って3回洗浄し、共役していないコレステロールを除去する。窒素パージで乾燥させた後、粉末を0.05N HCl5mlに溶解し、PEG上のカルボキシル基を酸性化させる。物質をフリーズドライヤーで乾燥させる。PEI1800(0.056mM)100ミリグラム、DCC50mg及びNHS50mgを室温でクロロホルム5mlに溶解し、混合物を20分間攪拌した後、クロロホルム1ml中chol−PEG−COOH380mgの溶液をPEI溶液にゆっくりと添加する。室温で6時間攪拌した後、ロータリーエバポレーターを使って、有機溶媒を除去した。残留物質を脱イオン水10mlに溶解し、FPLCで精製した。
【0071】
(例1)
カチオン性リポポリマーを有する縮合された核酸の濃縮液体製剤の調製
この例では、ベンチスケール産生での完全に縮合された核酸の高度に濃縮された製剤の調製を説明する。これは、カチオン性ポリマーを有する核酸複合体の調製の後、凍結乾燥し、等張液に再構成することを含む。使用される核酸は、IL−12又はルシフェラーゼ遺伝子をコードするプラスミドDNAであり、ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)及びコレステロール(Chol)に共有結合したポリエチレンイミン(PEI)骨格を含んでいた(PEG−PEI−Chol又はPPC)。PEGとPEIとの間及びコレステロールとPEIとの間のモル比は、それぞれ0.5〜10、0.1〜10である。まず、DNA及びPPC溶液を、注入用の水中で、5mg/mlで別々に調製し、その後、3%ラクトースで0.15mg/ml(DNA)及び0.554mg/ml(PPC)に希釈する。マイクロピペットを使って、窒素対リン酸塩比(N:P比)11:1で、ラクトース溶液中DNAを、ラクトース溶液中PPCに添加し、製剤を室温で15分間インキュベートし、複合体が形成できるようにする。3%ラクトース中PPC/DNA複合体を、ミズーリ州カンザスシティのLABCONCO社のFREEZONEフリーズドライシステムを使って、凍結乾燥する。調製した製剤500μlを2mlのホウケイ酸ガラス瓶に添加し、次に以下のセグメントからなるフリーズドライプログラムを使って凍結乾燥した:
1)凍結セグメント(0.25℃/分でランプ、34℃で4時間保持)
2)1次乾燥セグメント(34℃で24時間保持)
3)2次乾燥セグメント(20℃にランプし、24時間保持)及び
4)0.25℃/分で4℃にランプ。
【0072】
注射用の水を使って、0.1mg/mlから20mg/mlDNAまでの様々な濃度に、得られた凍結乾燥粉末を再構成する。小規模調製の代表的なバッチは、完全に製剤されたDNAの量が100〜200mgになった。
【0073】
(例1A)
上記の実施例1で概要を記した手順に基本的に従って、11:1のN:P比で、カチオン性リポポリマー及びIL−12核酸を使って、核酸/カチオン性リポポリマー製剤を調製する。カチオン性リポポリマーは、PEG:PEI:コレステロールのモル比約2.5:1:0.6及び分子量(遊離塩基)約3.54kDを有する。ラクトースを含有する、得られた製剤は凍結乾燥され、核酸の凝集又は大幅なトランスフェクション活性の損失を伴わずに、少なくとも約0.5mg/mlの核酸濃度に再構成することができる。
【0074】
(例2)
カチオン性リポポリマーを有する縮合された核酸の濃縮液体製剤の調製
この例では、図1に示すように、縮合された核酸の高度に濃縮された製剤の調製を説明する。このプロトコルは、(実施例1に記載の小規模調製から産生される100〜200mgのDNAとは対照的に)6000mgを超える完全に製剤化されたDNAを産生し、さらに高い産生量にまで拡大することが可能である。スケールアップした方法は、蠕動ポンプを使って、大量のDNA及びポリマー溶液を混合し、オンライン混合シナリオを達成し、複合体を形成した後、大容量に対応可能なフリーズドライサイクルを実施することを伴った。簡単に言うと、DNA及びPPC溶液を、3%ラクトース中で、それぞれ0.3mg/ml、1.1mg/mlで調製する。シリコン管(WATSON MARLOW、Z982−0088)の内径が0.89mmの蠕動ポンプ(WATSON MARLOW、SCI400)を使って、流量225±25ml/分で、2つの成分を、一定の流量で結合させる。2つの混合物を、各管の端でポリプロピレンTコネクターを使って接合する。ポリマー及びDNA溶液の混合により、ナノ粒子が即座に形成された。製剤された複合体40ミリリットルを100mlのガラス瓶に入れ、次のセグメントからなるフリーズドライプログラムを使って凍結乾燥する:
1)最大720分間−50℃で予備凍結し、
2)65μmHgで、最大180分間−40℃で、次に最大1980分間−34℃で1次乾燥し、
3)65μmHgで、最大720分間−25℃で、最大3180分間−15℃で、最大1500分間−10℃で、そして最大1440分間4℃で2次乾燥する。
【0075】
注射用の水を使って、0.1mg/mlから20mg/mlDNAまでの様々な濃度に得られた凍結乾燥粉末を再構成する。この規模の代表的なバッチは、完全に製剤化されたDNAの量が6000mgになる。
【0076】
(例3)
カチオン性リポポリマーを有する縮合された核酸の濃縮液体製剤の粒径の測定
カチオン性リポポリマーを有するプラスミドDNA、即ちPPC、の高度に濃縮された製剤を、実施例1及び2に記載されているとおりに調製する。ポリマー/核酸の粒径の測定のために、ニューヨーク州ホルツビルのBROOKHAVEN INSTRUMENTS社の90Plus/BI−MAS Particle Sizerを使って、一定分量の液体製剤を分析する。具体的には、分析のために、製剤50μlを、ポリスチレンキュベットに入れたミリQ水950μlに添加する。
【0077】
図2に、予備乾燥凍結された製剤又は濃縮されていない製剤(0.15mg/mlDNA)中のDNA/PPC複合体及び0.5mg/mlから10mg/mlまでのより高い濃度で、IL−12プラスミド(図2A)又はルシフェラーゼプラスミド(図2B)を使って、再構成した後のDNA/PPC複合体の粒径を示す。より高い濃度での再構成は、粒径に有意な影響は及ぼしておらず、これは複合体が安定していることを示唆する。
【0078】
(例4)
カチオン性リポポリマーを有する核酸の濃縮液体製剤の核酸縮合体の分析
この例では、PPCポリマーがプラスミドDNAを縮合する能力を評価する。カチオン性リポポリマーを有するプラスミドDNAの高度に濃縮された製剤、即ちPPC、を、実施例1及び2に記載されているとおりに調製する。1%のアガロースゲルを使って、核酸/ポリマー複合体を電気泳動させる。正に帯電したPPCポリマーに対する負に帯電したプラスミドDNAの静電気引力により、DNAはアガロースゲルの中を移動することができない。図3に示すように、高度に濃縮された製剤中に存在するDNAはすべて縮合される。
【0079】
(例5)
カチオン性リポポリマーを有する核酸の濃縮液体製剤の核酸濃度の測定
AGILENT 8453分光光度計(カリフォルニア州サンタクララのAGILENT TECHNOLOGIES社)を使って、DNA及びPPC複合体中の高度に濃縮された製剤中の核酸の量を測定する。クオーツキュベット中の注入用の水(WFI)950μlを使って、製剤50μlを希釈し、波長260nmを使って、吸光速度を測定する。(260nmにおいて)1光学密度=DNA 50μg/mlと仮定して、DNA濃度を測定する。
【0080】
(例6)
カチオン性リポポリマーを有する核酸の濃縮液体製剤のトランスフェクション活性の測定
DNA及びPPC複合体の高度に濃縮された製剤のトランスフェクション活性をin vitroで測定する。濃縮されていない製剤との直接的な比較を実施する。実施例1及び2に記載の方法により、ルシフェラーゼ又はIL−12プラスミドを含むトランスフェクション複合体を調製し、0.15mg/mlから10mg/mlまでのDNA濃度で再構成する。Cos−1細胞(1.5×10細胞/ウェル)を、10%のウシ胎仔血清(FBS)中で、12ウェルの組織培養プレートに播種する。合計容積500μlのDulbecco/Vogt Modified EagleのMinimal Essential Medium(DMEM)で、FBSの非存在下で、複合体DNA4μgを使って、各ウェルを6時間、インキュベートする。インキュベーション期間が終了したら、さらに40時間、10%FBSを補給して、培地を1mlの新鮮DMEMに交換する。インキュベーション期間の終了時に、トランスフェクション活性を細胞培養培地(IL−12)又は細胞溶解物(ルシフェラーゼ)で測定した。IL−12レベルの測定には、IL−12 ELISA分析により、細胞培養培地を直接分析する。ルシフェラーゼ測定には、リン酸緩衝食塩水を使って、細胞を洗浄し、TENT緩衝液(50mM Tris−Cl[pH8.0]2 Mm EDTA、150mM NaCl、1%Triton X−100)を使って溶解する。Orion Microplate Luminometer(テネシー州オークリッジのBERTHOLD DETECTION SYSTEMS)を使って、細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性を相対的な光強度値(RLU)として測定する。ルシフェラーゼの最終的な値は、RLU/総タンパク質量(mg)の単位で報告される。合計タンパク質レベルは、BCAタンパク質分析キット(イリノイ州ロックフォードのPIERCE BIOTECHNOLOGY社)を使って測定する。IL−12及びルシフェラーゼプラスミド/PPC複合体の高度に濃縮された製剤からのIL−12及びルシフェラーゼ発現のレベルを、それぞれ図4A及び4Bに示す。データは、高度に濃縮された形態での核酸複合体のトランスフェクション活性が保存されることを示している。
【0081】
(例7)
カチオン性リポポリマーを有する核酸の濃縮液体製剤の調製物における様々な賦形剤の糖及びその特性の評価
2つの一般に用いられている糖、ラクトース及びスクロースを、高度に濃縮された製剤の調製物の凍結乾燥工程中に利用可能な膨化剤又はフィラー剤の候補として評価する。PPC/DNA複合体を、各々、ラクトース及びスクロースで、3%、1.5%及び0.3%で調製する。実施例1のプロトコルを使って、製剤を凍結乾燥する。フリーズドライ工程後、WFIを使って、製剤を再構成し、最終的なDNA濃度を0.5mg/ml、1mg/ml及び5mg/mlとして再構成する。粒径及びin vitro遺伝子導入をこれらの種々の製剤について評価する。表1に示すように、凍結防止フィラーがスクロースとラクトースのいずれであっても、粒径及びトランスフェクション活性はどちらも保存される。これらの結果は、カチオン性ポリマーを有する核酸の物理化学的及び生物学的に安定な高濃縮物を調製する目的に、2種類以上の糖が利用できることを示している。
表1
カチオン性リポポリマーを有する核酸の濃縮された等張製剤の調製物における賦形剤の糖の評価
【表1】

【0082】
(例8)
カチオン性リポポリマーを有する核酸の濃縮液体製剤の頭蓋内発現後の正常脳実質におけるIL−12発現
核酸及びカチオン性リポポリマーの高度に濃縮された製剤がin vivoで生物学的に活性であるかどうかを判断するために、カチオン性ポリマーを有するIL−12プラスミド、即ち、PPCの正常脳組織への直接投与を調べる。治療後、14日後又は1カ月後に安楽死させた動物から得た脳のスライスに、IL−12の免疫組織化学染色を施す。PPCのみで治療した動物の脳実質は、IL−12染色を一切示さなかった(図5A)。対照的に、pmIL−12/PPCを注入したマウスの脳実質は、頭蓋内でIL−12にポジティブな染色を示した(図5B)。この実験は、カチオン性ポリマーを有する核酸複合体の生物活性が、濃縮工程中に保存されることを実証している。加えて、注入後、サイトカインが少なくとも1カ月間、存在し続けると結論づけることもできる。さらに、安楽死させるまで生存していた動物の脳内にこのサイトカインが存在していることは、IL−12の実際の発現は、脳に致命的な有毒性を引き起こさないことを示唆する。
【0083】
(例9)
マウスの神経膠腫モデルにおけるカチオン性リポポリマーを有する核酸の濃縮液体製剤の有効性
IL−12遺伝子を発現している、完全に複合化された核酸の高度に濃縮された製剤の抗がん効果を、マウスの神経膠腫モデルで調べる。5mg/mlのIL−12プラスミドDNAの高度に濃縮された製剤からの3μlのIL−12/PPC複合体の同時注入と一緒に、1×10のGL261神経膠腫細胞の頭蓋内注入を行い、マウスの大脳皮質に腫瘍を植え込む。神経毒性の兆候の有無について動物を監視し、可能なときは、死亡の原因が頭蓋内腫瘍であることを確認するために、死体を解剖する。カプラン−マイヤー生存分析法を使って、生存をプロットする。プラスミド投与量15μgで投与されるpmIL−12/PPC複合体の単回頭蓋内注入は、有意な有害事象は観察されていないため、十分に許容される。プラスミド投与量15μgでのpmIL−12/PPC複合体の単回注入は、動物の生存を有意に向上する結果を示した(図6)。
【0084】
(例10)
卵巣がん患者におけるカチオン性リポポリマーを有する核酸の濃縮液体製剤の生物活性
IL−12遺伝子を発現している、完全に縮合された核酸の高度に濃縮された製剤の生物活性を、再発性卵巣がん患者で調べる。IL−12プラスミド及びPPCの高度に濃縮された等張性製剤を、再発性卵巣がんを罹患している女性に、毎週1回の腹腔内投与を4回実施した結果、治療患者の腹水において、IL−12の代理マーカー、IFN−γの有意なレベルが生じた。IFN−γレベルは、腹水1ml当たり20から275pgまで変動する。これらのデータは、IL−12核酸の高度に濃縮された製剤は、臨床応用に適していることを実証している。
【0085】
(例11)
カチオン性リポポリマーを有する核酸の濃縮液体製剤の特性におけるカチオン性ポリマーの化学組成の影響の評価
脂質又はポリマー等のカチオン性遺伝子担体を有する核酸製剤の濃縮は、濃縮工程の結果、安定性が低く、トランスフェクションが失われるため、極めて困難であることが、これまでの試みで明らかにされてきた。物理化学的及び生物学的に安定した、高濃度の完全に縮合された核酸の製造に成功したのは、テストカチオン性ポリマー、PEG−PEI−コレステロール(PPC)の化学組成に固有であるかを判定するために、遊離PEI、コレステロールに結合したPEI又はPEGに結合したPEI及びカチオン性リポソームDOTAPを含めて、他のカチオン性ポリマーをテストする。実施例1に記載されているとおりに、DNA複合体を0.15mg/mlで調製した後、0.5及び5mg/mlに濃縮する。実施例3及び6に記載されているとおりに、粒径及びトランスフェクション活性を測定する。図7及び8に示すように、遊離PEI(PEI1800、PEI15000、PEI25000)又はPEI−コレステロール、PEI−PEG又はカチオン性脂質DOTAPを使って調製したDNA複合体は、凍結乾燥し、0.5mg/ml又は5mg/mlに再構成した後、凝集し、トランスフェクション活性を失ったため、安定した複合体を産生しなかった。不安定化作用は、0.5mg/mlよりも5mg/mlでより顕著である。対照的に、PEG−PEI−コレステロール(PPC)を使って調製されたDNA複合体は、凍結乾燥中及び高いDNA濃度での再構成中も物理化学的特性及びトランスフェクション特性を維持する(図7及び8)。これらの結果は、コレステロール及びPEGによるカチオン性ポリマーの共有結合修飾は、濃縮工程中の活性保存に不可欠であることを示唆する。
【0086】
(例12)
カチオン性ポリマーを有する核酸の凍結乾燥又は濃縮した液体製剤の長期安定性
凍結乾燥したIL−12/PPC複合体の大規模ロットを、実施例2に概要を示した方法を使って、cGMPのもとで調製し、安定性評価のために、−80℃、−20℃、4℃及び25℃(60%RH)で保管する。分析時に、瓶を保管場所から取り出し、2.4mLのWFIを添加する。試料ごとに、pH、DNA濃度、オスモル濃度、粒径及び生物活性を測定した。図9に示すように、IL−12/PPC複合体のDNA濃度、pH、オスモル濃度及び粒径は、指示温度で2年間、保存される。pIL−12/PPCの遺伝子導入活性は、実施例6に記載されているとおりに、COS−1細胞で定量化する。COS−1細胞に、DNA4μgで生物由来物質を使ってトランスフェクトする。細胞培養培地のIL−12のレベルを、市販されているELISAキットを使って、トランスフェクションの48時間後、定量化する。2年間の安定性研究から得た生物活性結果を図9に示す。−80℃又は−20℃での保管期間中、生物学的生成物の生物活性に有意な変化はない。0時間で、活性は151±130pg/mLであり、時間の経過に従い、常に低下を示す25℃を除き、残りのデータは、この標準偏差の範囲内で変動する。4℃では、トランスフェクション活性の低下が360日後に観察されるが、試料の不足のため、結論的な評価に到達できるだけの追跡時点がない。
【0087】
(例13)
カチオン性ポリマーを有する核酸の濃縮液体製剤の再構成した物質の安定性
再構成した物質の安定性を別の研究で調べる。凍結乾燥したIL−12プラスミドDNA/PPC複合体を、実施例2に記載の方法に従って調製し、注入用の水の中で0.5mg/mlに再構成する。再構成した物質を4℃で保管する。60日後及び90日後に試料を取り出し、粒径、オスモル濃度及び遺伝子発現について分析する。密封瓶に入れ、−80℃で保管された凍結乾燥生成物を、比較のために、同時に分析する。表2に示すように、再構成したEGEN−001は、WFIによる再構成後、少なくとも90日間、4℃で安定性がある。DNA濃度、粒径、オスモル濃度又は遺伝子発現も含めて、安定性のパラメーターは、密封瓶に入れ、−80℃で保管された凍結乾燥物質と比較して、有意な変化はない。
表2
4℃でカチオン性ポリマーを有する核酸の高度に濃縮され、完全に縮合された、等張性製剤の再構成された形態の長期安定性
【表2】

【0088】
(例14)
PEG−PEI−コレステロールを使った共製剤化による合成核酸送達システムの高度に濃縮され、安定性のあるDNA製剤の調製
PEG−PEI−コレステロールを既存の合成核酸送達システムに添加し、高い核酸濃度では、通常、不安定な核酸製剤の安定性を高める。
【0089】
1つの例において、PEG−PEI−コレステロールを、直鎖状ポリエチレンイミン25kDa(LPEI25kD)を使って調製されるDNA製剤に添加する。3%ラクトースの存在下で、0.15mg/ml濃度のDNA製剤を、10:1(N:P比)のLPEI25kDを使って調製することができる。次に、製剤されたDNAに対して様々なPPC比で、PEG−PEI−コレステロールリポポリマーを、LPE125kD/DNA複合体に添加することができる。例えば、PPC/DNA(N:P比)は、(0:1)、(1:1)、(5:1)、(7.5:1)、(11:1)、(15:1)及び(20:1)とすることができる。各製剤500μlを2mlのホウケイ酸ガラス瓶に添加した後、フリーズドライシステムで凍結乾燥することができる。フリーズドライプログラムは、次のセグメントからなる:
1)凍結セグメント(0.25℃/分でランプ、−34℃で4時間保持)、
2)1次乾燥セグメント(−34℃で24時間保持)、
3)2次乾燥セグメント(−20℃にランプし、24時間保持)及び
4)0.25℃/分で4℃にランプ。
【0090】
乾燥凍結した製剤は、注入用の水を使って0.5mg/ml又はその他の適切な濃度に再構成することができる。
【0091】
上述した組成物及び応用方式は、本発明の好ましい実施形態を説明することだけを目的としたものであることを理解されたい。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者は、多くの変更及び代替配置を案出することが可能であり、付属の特許請求の範囲は、そのような変更及び配置を網羅することを意図している。したがって、本発明の最も実用的で、好ましい実施形態であると、現在、見なされているものと関連して、これまで、具体的に詳しく、本発明を記述してきたが、本明細書に規定された原理及び概念から逸脱することなく、これに限定されないが、大きさ、材質、形状、形式、機能及び操作方法、組立て及び使用のバリエーションも含め、多くの変更を加えることができることは、当業者に明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水溶液に懸濁されたカチオン性リポポリマーと少なくとも約0.5mg/mlの核酸の混合物であって、該カチオン性リポポリマーがコレステロール及びポリエチレングリコール基に独立に共有結合されたカチオン性ポリマー骨格を含み、コレステロール対カチオン性ポリマー骨格のモル比が約0.1から約10であり、ポリエチレングリコール対カチオン性ポリマー骨格のモル比が約0.1から約10である混合物、及び
(b)フィラー賦形剤
を含む組成物。
【請求項2】
核酸とリポポリマーとの混合物が複合体を形成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
水溶液が等張液である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
縮合核酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
核酸の少なくとも約30重量%が縮合された、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
核酸の少なくとも約90重量%が縮合された、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
核酸の凝集を伴わずに、乾燥され、少なくとも0.5mg/mlの核酸濃度に再構成することのできる、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
カチオン性ポリマー骨格が、ポリエチレンイミン、ポリ(トリメチレンイミン)、ポリ(テトラメチレンイミン)、ポリプロピレンイミン、アミノグリコシド−ポリアミン、ジデオキシ−ジアミノ−b−シクロデキストリン、スペルミン、スペルミジン、ポリ(2−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、ポリ(リシン)、ポリ(ヒスチジン)、ポリ(アルギニン)、カチオン化ゼラチン、デンドリマー、キトサン及びそれらの組合せからなる群から選択される要素である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
核酸の濃度が少なくとも1mg/mlである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
核酸の濃度が少なくとも10mg/mlである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
カチオン性ポリマー骨格中のアミン窒素対核酸中のリン酸塩の比が約0.1:1から約100:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
核酸が、インターロイキン−2、インターロイキン−4、インターロイキン−7、インターロイキン−12、インターロイキン−15、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、血管形成剤、凝固因子、血糖降下薬、アポトーシス因子、抗血管新生薬、チミジンキナーゼ、p53、IP10、p16、TNF−α、Fasリガンド、腫瘍抗原、神経ペプチド、ウイルス抗原、細菌抗原及びそれらの組合せからなる群から選択されるペプチドをコードするプラスミドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
カチオン性ポリマー骨格の分子量が、約50から約500,000ダルトンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
カチオン性リポポリマーにおけるポリエチレングリコール対カチオン性ポリマー骨格のモル比が、約1から約10の範囲内にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
フィラー賦形剤が、糖、糖アルコール、デンプン、セルロース及びそれらの組合せからなる群から選択される要素である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
フィラー賦形剤が、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストロース、ガラクトース、マンニトール、マルチトール、マルトース、ソルビトール、キシリトール、マンノース、グルコース、フルクトース、ポリビニルピロリドン、グリシン、マルトデキストリン、ヒドロキシメチルデンプン、ゼラチン、ソルビトール、フィコル、塩化ナトリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ポリエチレングリコール及びそれらの組合せからなる群から選択される要素である、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
フィラー賦形剤がスクロースである、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
フィラー賦形剤がラクトースである、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
核酸がインターロイキン−12遺伝子をコードするプラスミドであり、カチオン性ポリマー骨格がポリエチレンイミン(PEI)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
カチオン性ポリマー骨格中のアミン窒素対核酸中のリン酸塩の比が、約10:1から約100:1である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
カチオン性ポリマー骨格中のアミン窒素対核酸中のリン酸塩の比が、約11:1から約20:1である、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
核酸が阻害リボ核酸をコードするプラスミドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
核酸が合成の短い干渉リボ核酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
等張液に懸濁される核酸を少なくとも約0.5mg/ml含む医薬組成物を作製する方法であって、
水性溶媒中で核酸、カチオン性リポポリマー及びフィラー賦形剤を混合し、該カチオン性リポポリマーがコレステロール及びポリエチレングリコール基に独立に共有結合されたカチオン性ポリマーを含み、コレステロール対カチオン性ポリマー骨格のモル比を約0.1から約10とし、ポリエチレングリコール対カチオン性ポリマー骨格のモル比を約0.1から約10とすること、
混合物を粉末に凍結乾燥すること、及び
希釈液で粉末を再構成して、等張液に少なくとも約0.5mg/mlの縮合核酸を含む溶液を形成することを含む方法。
【請求項25】
カチオン性ポリマー骨格中のアミン窒素対核酸中のリン酸塩の比が、約10:1から約100:1である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
フィラー賦形剤、核酸及びカチオン性リポポリマーの混合物であって、前記カチオン性リポポリマーが、少なくとも1つのコレステロール分子及び少なくとも1つのポリエチレングリコール分子がそこに独立に共有結合されたカチオン性リポポリマー骨格を含み、カチオン性ポリマー骨格中のアミン窒素対核酸中のリン酸塩の比が約10:1から約100:1である混合物
を含む乾燥医薬組成物。
【請求項27】
哺乳類細胞を請求項1に記載の組成物に接触させること、及び
請求項1に記載の組成物が細胞に入り、核酸の生物活性を引き出せるようにする条件下で哺乳類細胞をインキュベートすること
を含む、哺乳類細胞の形質移入方法。
【請求項28】
請求項1に記載の組成物を温血生命体に送達することを含む、標的組織の形質移入方法。
【請求項29】
組成物の送達が、腫瘍内、腹腔内、静脈内、動脈内、気管内、肝内門、経口、頭蓋内、筋肉内、関節内及びそれらの組合せからなる群から選択される投与形態をさらに含むことができる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
標的組織が、卵巣、子宮、胃、結腸、直腸、骨、血液、腸、膵臓、胸部、頭部、頚部、肺、脾臓、肝臓、腎臓、脳、甲状腺、前立腺、膀胱、甲状腺、皮膚、腹腔、胸腔及びそれらの組合せからなる群から選択される要素に局所化される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
(a)核酸及びカチオン性リポポリマーにより形成される複合体であって、カチオン性リポポリマーが、ポリエチレングリコール:ポリエチレンイミン:コレステロールのモル比が約2〜3:1:0.25〜1の範囲内で、コレステロール及びポリエチレングリコール基に独立に共有結合されたカチオン性ポリマー骨格を含み、等張液に懸濁されている複合体、及び
(b)フィラー賦形剤
を含む組成物。
【請求項32】
核酸がインターロイキン−12である、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
リポポリマーが、PEG:PEI:コレステロールの平均モル比が約2〜3:1:0.25〜1の範囲内で、コレステロール及びポリエチレングリコールに独立に共有結合されたポリエチレンイミン(PEI)からなる、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
リポポリマーの遊離塩基としての分子量が約3.5kDである、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
フィラー賦形剤及び核酸を少なくとも約0.5mg/ml含む核酸送達システムであって、核酸の少なくとも一部が、複合体を形成し、水性溶媒中に懸濁されたカチオン性リポポリマーと縮合され、カチオン性リポポリマーが、コレステロール及びポリエチレングリコール基に独立に共有結合されたカチオン性ポリマー骨格を含み、コレステロール対カチオン性ポリマー骨格のモル比が約0.1から約10であり、ポリエチレングリコール対カチオン性ポリマー骨格のモル比が約0.1から約10である核酸送達システム。
【請求項36】
カチオン性ポリマー骨格がポリエチレンイミン(PEI)であり、カチオン性リポポリマー中のPEG:PEI:コレステロールのモル比が約2〜3:1:0.25〜1の範囲内にある、請求項35に記載の核酸送達システム。
【請求項37】
カチオン性リポポリマーが約3〜4kDの遊離塩基分子量を有する、請求項36に記載の核酸送達システム。
【請求項38】
カチオン性ポリマー骨格中のアミン窒素対核酸中のリン酸塩の比が、約10:1から約100:1である、請求項37に記載の送達システム。
【請求項39】
カチオン性ポリマー骨格中のアミン窒素対核酸中のリン酸塩の比が約11:1から約20:1である、請求項37に記載の送達システム。
【請求項40】
カチオン性リポポリマー中のPEG:PEI:コレステロールモル比が、約2〜3:1:0.25〜1の範囲内である、請求項21に記載の組成物。
【請求項41】
核酸の凝集を伴わずに、乾燥させて、少なくとも0.5mg/mlの核酸濃度に再構成することが可能な、核酸及びカチオン性リポポリマーを含む水性組成物。
【請求項42】
核酸とカチオン性リポポリマーとの混合物が複合体を形成する、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
縮合核酸を含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
水溶液を等張液に再構成することが可能な、請求項37に記載の組成物。
【請求項45】
核酸の少なくとも約30重量%が縮合された、請求項38に記載の組成物。
【請求項46】
カチオン性ポリマー骨格中のアミン窒素対核酸中のリン酸塩の比が約10:1から約100:1である、請求項39に記載の組成物。
【請求項47】
カチオン性ポリマー骨格中のアミン窒素対核酸中のリン酸塩の比が約11:1から約20:1である、請求項40に記載の組成物。
【請求項48】
カチオン性リポポリマー中のPEG:PEI:コレステロールのモル比が約2〜3:1:0.25〜1の範囲内にある、請求項41に記載の組成物。
【請求項49】
核酸の凝集を伴わずに、少なくとも0.5mg/mlの核酸濃度に再構成することが可能な、請求項26に記載の乾燥組成物。
【請求項50】
フィラー賦形剤をさらに含む、請求項41に記載の水性組成物。
【請求項51】
核酸及びカチオン性担体を含む核酸送達システムの安定化方法であって、コレステロール及びポリエチレングリコール基に独立に共有結合されたカチオン性ポリマー骨格を含むカチオン性リポポリマー及びフィラー賦形剤を含む組成物に送達システムを接触させることを含み、コレステロール対カチオン性ポリマー骨格のモル比が約0.1から約10であり、ポリエチレングリコール対カチオン性ポリマー骨格のモル比が約0.1から約10である方法。
【請求項52】
カチオン性担体が、ポリエチレンイミン、ポリ(トリメチレンイミン)、ポリ(テトラメチレンイミン)、ポリプロピレンイミン、アミノグリコシド−ポリアミン、ジデオキシ−ジアミノ−b−シクロデキストリン、スペルミン、スペルミジン、ポリ(2−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、ポリ(リシン)、ポリ(ヒスチジン)、ポリ(アルギニン)、カチオン化ゼラチン、デンドリマー、キトサン、1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP)、N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1−[2−(オレオイルオキシ)エチル]−2−オレイル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロリド(DOTIM)、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、3β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロール塩酸塩(DC−コレステロールHCl)ジヘプタデシルアミドグリシルスペルミジン(DOGS)、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N−(1,2−ジミリスチロキシプロプ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項51に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−535800(P2010−535800A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520274(P2010−520274)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/072306
【国際公開番号】WO2009/021017
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(510033583)エーゲン、インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】