説明

核酸、ポリペプチドおよびその利用

新規な甘味受容体タンパク質、対応する核酸配列、発現ベクター、トランスフェクトされた宿主細胞、および上記物質を利用する甘味応答のリガンドを含む調節剤のためのスクリーニング方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は35 U.S.C. §111(b)による特許仮出願である。
本発明は新規な甘味受容体タンパク質に基づくアッセイ、前記甘味受容体タンパク質を形成する核酸構築物を含む異種発現システム、およびスクリーニングにおける甘味受容体タンパク質の利用に関する。
【背景技術】
【0002】
新規な甘味受容体タンパク質のアッセイは、ヒトにおいて味覚応答を調整することができる剤(甘味調節剤)を同定するのに利用され得、したがってある食べ物をより口当たりのよいものとし、または経口薬剤および栄養補助食品に対する患者コンプライアンスを増大させる。かかる甘味調節剤はヒトにおいて味覚応答を誘発する甘味料を含む。
【0003】
甘味の感知は受容体、味覚受容体細胞に特異的に発現し、甘味受容体ダイマー複合体(T1R2/T1R3ヘテロダイマー)を形成する、2つのサブユニットT1R2およびT1R3を含む受容体によって媒介されることが知られている。双方のサブユニットはともに、「Gタンパク質共役受容体」またはGPCRと呼ばれるファミリー、特にクラスC GPCRに属する。
【0004】
他のほとんどのGPCRのように、クラスC受容体は7本へリックス膜貫通ドメイン(TMD)を有する。しかしながら他のタイプのGPCRとは異なり、クラスC GPCRは2つの部分:リガンド結合に関連する「ビーナスフライトラップモジュール」(VFTM)と、高度に保存された9つのシステインを含有し、VFTMをTMDに連結しているシステインリッチドメイン(CRD)、からなる大きな細胞外ドメインも有する。様々な長さの細胞内C末端によってクラスC受容体が完成する。
【0005】
甘味受容体応答の活性化には甘味受容体ダイマー複合体の両サブユニットが必要であると考えられており、これまでのところ、全ての試験された甘味料はT1R2/T1R3ヘテロダイマーを活性化する。T1R2/T1R3ヘテロダイマーが、天然の糖(スクロース、フルクトース、グルコース、マルトース)、甘味アミノ酸(D−トリプトファン)、および人工甘味料(アセスルファム−K、アスパルテーム、サイクラミン酸塩、サッカリン、スクラロース)から、甘味タンパク質(モネリン、ソーマチン、ブラゼイン)に至る範囲の、広範囲の化学的に異なった甘味料に応答するにもかかわらず、ヒト甘味受容体の分離したサブユニット(T1R2ホモマーまたはT1R3ホモマー)による公知の試験は、何らの活性も示さなかった(例えばLi et al., 2002, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99(7),4692〜6など参照)。
【0006】
キメラT1R受容体および部位特異的変異導入の研究は、甘味化合物サイクラミン酸塩がT1R3のTMDに結合し、したがってヘテロダイマーT1R2/T1R3受容体複合体を活性化することを示している。反対に、甘味タンパク質ブラゼインはT1R3のシステインリッチドメインに結合し、したがってヘテロダイマーT1R2/T1R3受容体複合体を活性化することが報告されている。
【0007】
T1R2ホモマー結合アッセイは、US20050032158に記載されている。結合アッセイは、機能的受容体活性化ではなく結合のみを示し、エンドポイントに基づくものであり、反応速度測定を含むより迅速な機能アッセイと比較すると時間がかかる。US20050032158はさらに、知られた機能的受容体T1R1/T1R3およびT1R2/T1R3に適した、T1Rの細胞ベースのアッセイを含む、機能アッセイについても記載している。
【0008】
今まで、1つのTAS1RモノマーのTMDは甘味化合物と結合し得るだけでなく他の必須のモノマーパートナーの不在下でGタンパク質を活性化することは知られていなかっただけでなく、両サブユニットの存在がシグナル伝達に不可欠であることもまた信じられていた。
本発明者らは、T1R2/T1R3ヘテロダイマー受容体複合体のT1R2ホモマーの重度に切断された配列に相当する新規な受容体タンパク質が、驚くべきことに、甘味リガンドと結合する機能的甘味受容体を形成し、Gタンパク質を活性化することができることを見出した。
【0009】
本明細書で以下に使用されている、T1R2「ホモマー」または「ホモマーの」ポリペプチド、タンパク質、または受容体という用語は、ヘテロダイマーT1R2/T1R3受容体複合体ではなく、T1R2ポリペプチドまたはタンパク質のモノマーモノマー、ダイマーまたはオリゴマーを包含することを意味する。
【0010】
この新規な受容体タンパク質T1R2−TMDは全長T1R2ホモマーに比べて異なるアゴニスト範囲を有することがわかった。後者は驚くべきことにリガンドと結合できるだけではなく、下流シグナリングの活性化もできることがわかった。
【0011】
本明細書で提供される方法によれば、T1R2−TMDおよびGタンパク質の両方を発現するがT1R3は発現しない細胞を、任意に知られたまたは新たに決定された甘味物質と組み合わせた試験剤と、前記剤の甘味調節剤としての特性を決定するために、接触させる。本明細書で提供されるアッセイは、したがって、甘味料または(甘味料、T1R2、または下流イベントの)甘味応答の調節剤である試験剤を同定するために利用することができる。
【0012】
受容体およびGタンパク質における剤の機能的な効果は、例えば細胞内IPおよびCa2+などの伝達経路のパラメータの変化を計測するアッセイなど、適した機能的アッセイによって、またはGTPγSを標識するなどの当業者に知られた技術に従った他のGタンパク質特異的アッセイによって決定される。
代替的に、結合アッセイは、T1R2-TMDと結合するリガンドの決定に利用してもよい。
【0013】
本明細書に記載されているクローニング、リガンド−受容体ペアの解明、および甘味応答の調節剤の検索に関する様々な側面および態様の実践において、分子生物学、微生物学および組換え技術および甘味試験における慣習的な技術が利用される。これらには、T1R2−TMDを含むGタンパク質共役受容体(GPCR)に適した様々な知られた方法を含む。したがって、当業者にはかかる技術が十分に知らされており、それゆえ以下では本発明の状況をより十分に記載するために、かかる技術はごく簡略化して論じる。
【発明の開示】
【0014】
概略
最初の側面において、ペリラルチンと結合でき、ペリラルチンにより活性化され得るT1R2−TMD甘味受容体であって、1または2以上の
配列番号2と実質的に相同なポリペプチド、
配列同一性によって決定される、配列番号1に記載のヌクレオチド配列と実質的に相同なヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、
ハイブリダイゼーションによって決定される、配列番号2に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と実質的に相同なヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、
ヌクレオチド配列同一性によって決定される、配列番号2に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に実質的に相同なヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、
を含み、
【0015】
ここで、実質的に相同なポリペプチドは少なくとも74%の配列同一性を有し、
配列同一性によって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、少なくとも65%の配列同一性を有し、および
ハイブリダイゼーションによって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、50%のホルムアミド、5×SSC、および1%のSDSからなる溶液中での42℃の温度、ならびに0.2×SSCおよび0.1%のSDSからなる溶液中での65℃での洗浄のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、
【0016】
ただし、T1R2−TMD受容体は1または2以上の
配列番号10または配列番号12と相同なポリペプチド、
配列同一性によって決定される、配列番号9または配列番号11に記載のヌクレオチド配列と相同なヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、
ハイブリダイゼーションによって決定される、配列番号10または配列番号12に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と相同なヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、
ヌクレオチド配列同一性によって決定される、配列番号10または配列番号12に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と相同なヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、
を含まず、
【0017】
ここで、配列番号10または配列番号12と相同なポリペプチドは少なくとも60%の配列同一性を有し、
配列同一性によって決定される、配列番号9または配列番号11に記載のヌクレオチド配列に相同なヌクレオチド配列は、少なくとも50%の配列同一性を有し、
ハイブリダイゼーションによって決定される、配列番号9または配列番号11に記載のヌクレオチド配列に相同なヌクレオチド配列は、50%のホルムアミド、5×SSC、および1%のSDSからなる溶液中での42℃の温度、ならびに0.2×SSCおよび0.1%のSDSからなる溶液中で42℃での洗浄の中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする、
前記甘味受容体が提供される。
【0018】
他の側面において、本発明は、
配列番号2と実質的に相同なポリペプチド、
配列同一性によって決定される、配列番号1に記載のヌクレオチド配列と実質的に相同なヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、
ハイブリダイゼーションによって決定される、配列番号2に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と実質的に相同なヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、
ヌクレオチド配列同一性によって決定される、配列番号2に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に実質的に相同なヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、
からなる群より選択され、
【0019】
実質的に相同なポリペプチドは少なくとも74%の配列同一性を有し、
配列同一性によって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、少なくとも65%の配列同一性を有し、および
ハイブリダイゼーションによって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、50%のホルムアミド、5×SSC、および1%のSDSからなる溶液中での42℃の温度、ならびに0.2×SSCおよび0.1%のSDSからなる溶液中での65℃での洗浄のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする、
T1R2−TMD甘味受容体に関する。
【0020】
さらなる側面において、ペリラルチンと結合でき、ペリラルチンにより活性化され得るT1R2−TMD甘味受容体をコードする核酸であって、1または2以上の
配列同一性によって決定される、配列番号1に記載のヌクレオチド配列と実質的に相同な核酸、
ハイブリダイゼーションによって決定される、配列番号1に記載のヌクレオチド配列と実質的に相同な核酸、
T1R2−TMD甘味受容体をコードするヌクレオチド配列と実質的に相同な核酸、
を含み、
ここで、配列同一性によって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、少なくとも65%の配列同一性を有し、
ハイブリダイゼーションによって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、50%のホルムアミド、5×SSC、および1%のSDSからなる溶液中での42℃の温度、ならびに0.2×SSCおよび0.1%のSDSからなる溶液中での65℃での洗浄のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、
【0021】
ただし、前記核酸は、1または2以上の
配列同一性によって決定される、配列番号9または配列番号11に記載のヌクレオチド配列と相同な核酸、
ハイブリダイゼーションによって決定される、配列番号9または配列番号11に記載のヌクレオチド配列と相同な核酸、
配列番号10または配列番号12に記載のポリペプチドと相同なポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と相同な核酸、
を含まず、
【0022】
ここで、配列同一性によって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、少なくとも50%の配列同一性を有し、および
ハイブリダイゼーションによって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、50%のホルムアミド、5×SSC、および1%のSDSからなる溶液中での42℃の温度、ならびに0.2×SSCおよび0.1%のSDSからなる溶液中での42℃での洗浄の中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする、
前記核酸が提供される。
【0023】
他の側面において、
配列同一性によって決定される、配列番号1に記載のヌクレオチド配列と実質的に相同な核酸、
ハイブリダイゼーションによって決定される、配列番号1に記載のヌクレオチド配列と実質的に相同な核酸、
T1R2−TMD甘味受容体をコードするヌクレオチド配列と実質的に相同な核酸、
からなる群より選択される核酸であって
配列同一性によって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、少なくとも65%の配列同一性を有し、
ハイブリダイゼーションによって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、50%のホルムアミド、5×SSC、および1%のSDSからなる溶液中での42℃の温度、ならびに0.2×SSCおよび0.1%のSDSからなる溶液中での65℃での洗浄のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする、
前記核酸が提供される。
【0024】
他の側面において、上記で定義された核酸を含む発現ベクターが提供される。
他の側面において、上記で定義された発現ベクターでトランスフェクトされたがT1R3を含有しない宿主細胞が提供される。
ある具体的な態様において、上記で定義された宿主細胞は、上記で定義されたT1R2−TMD甘味受容体およびGタンパク質を安定的に発現する。
他の態様において、上記で定義された宿主細胞は、上記で定義されたT1R2−TMD甘味受容体およびGタンパク質を一過性に発現する。
【0025】
他の側面において、上記で定義されたT1R2−TMD甘味受容体およびGタンパク質甘味受容体を産生する方法であって、発現に十分な条件下でT1R2−TMD甘味受容体をコードする発現ベクターをその中に含有する宿主細胞を培養し、それによってT1R2−TMD甘味受容体を形成し、任意に細胞からそれを回収することを含む、前記方法が提供される。
【0026】
他の側面において、味覚細胞において甘味シグナリングを調節する剤を同定する方法であって、
(i)甘味刺激に応答するT1R2−TMD甘味受容体を発現する細胞を、任意に他の剤の存在下で、剤と接触させること、および
(ii)前記細胞中の少なくとも1つの機能的応答によって、少なくとも1つの剤が、前記細胞中の前記T1R2−TMD甘味受容体の機能的活性に影響するかを同定すること、
を含み、
ここで、前記T1R2−TMD甘味受容体が、配列番号2と実質的に相同なポリペプチド、配列同一性によって決定される、配列番号1と実質的に相同なヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、およびハイブリダイゼーションによって決定される、配列番号1と実質的に相同なヌクレオチドによってコードされるポリペプチドからなる群より選択され、
【0027】
実質的に相同なポリペプチドは少なくとも74%の配列同一性を有し、
配列同一性によって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、少なくとも65%の配列同一性を有し、
ハイブリダイゼーションによって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、50%のホルムアミド、5×SSC、および1%のSDSからなる溶液中での42℃の温度、ならびに0.2×SSCおよび0.1%のSDSからなる溶液中での65℃での洗浄のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、
T1R2甘味受容体発現細胞はT1R3受容体を発現しない、前記方法を提供する。
【0028】
ある具体的な態様では、上記で定義された方法はGタンパク質をも発現する細胞を利用する。
他の態様では、上記で定義された方法において、Gタンパク質はGaq−ガストデューシンに基づくキメラGタンパク質である。
さらなる態様では、上記で定義された方法において、Gタンパク質はキメラGタンパク質Gであるアルファ16−ガストデューシン44である。
またさらなる態様では、上記で定義された方法において、(ii)は細胞内メッセンジャーにおけるまたはそれに起因する変化の計測によって実施される。
さらに、さらなる態様では、上記で定義された方法において、機能的応答はIPおよびカルシウム2+から選択される細胞内メッセンジャーの変化を計測することによって決定される。
【0029】
他の態様では、上記で定義された方法において、細胞は、細菌細胞、真核細胞、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳類細胞、両生類細胞、およびぜん虫細胞からなる群より選択される。
ある態様では、上記で定義された方法において、細胞は哺乳類細胞である。
さらなる態様では、上記で定義された方法において、細胞は、CHO、COS、HeLaおよびHEK−293からなる群より選択される哺乳類細胞である。
またさらなる態様では、上記で定義された方法において、(i)はさらにT1R2甘味受容体を甘味物質の存在下で試験剤と接触させることを含む。
さらに別の態様では、上記で定義された方法において、甘味物質はペリラルチンおよびメチルカビコールからなる群より選択される。
【0030】
他の側面において、キットが提供され、キットは:
(i)T1R2−TMD甘味受容体、または実質的に類似するそのホモログを発現するが、T1R3受容体は発現しない組換え細胞、および
(ii)T1R2−TMD甘味受容体のアゴニスト、
を、試験剤をT1R2−TMDの調節剤として同定するために組み合わせて利用するために含む。
【0031】
他の側面において、上記で定義されたキットを利用する方法が提供される。方法は:
(i)固体支持体上で組換え細胞を成長させること、
(ii)定義されたプレートまたはウェルの培養培地へ、アゴニストの存在下、適切な濃度で試験剤を添加すること、および
(iii)試験剤の存在下および非存在下での応答を比較することにより、細胞の機能的応答の変化を決定し、それにより、試験剤がT1R2甘味受容体またはその実質的に類似するホモログの調節物質であることを同定すること
を含む。
【0032】
他の側面において、T1R2−TMDを調節する剤の同定方法を提供し、方法は:
(i)T1R2−TMDへのリガンドの結合に応答して変化するパラメータ計測すること、
(ii)任意にリガンドの存在下で、ネガティブコントロールとの比較で試験剤に応答したパラメータの変化を決定し、それにより調節剤またはリガンドを同定すること、
を含む。
ある態様において、上記で定義された方法において、リガンドは、ペリラルチンおよびメチルカビコールからなる群より選択されるリガンドである。
【0033】
ある態様において、上記で定義された方法において、(i)は、蛍光分光法、NMR分光法、1または2以上の吸収、屈折率の計測、流体力学法、クロマトグラフィ、溶解度計測、生物化学的方法からなる群より選択される方法で行われ、これらの方法は、溶液、二重膜、固相への連結、単脂質膜中、膜上への結合、および小胞内からなる群より選択された適切な環境においてT1R2−TMDポリペプチドの特性を計測する。
【0034】
詳細な説明
アッセイに利用する細胞
本発明によるスクリーニングまたはアッセイに有用な細胞は、T1R3を含まない細胞である。トランスフェクトされたまたは内在性のT1R3は、T1R2−TMDのアゴニスト応答または他の調節剤による前記応答の変化を決定する方法を否定的に妨害し得る。T1R3の非存在は、T1R2−TMD活性化の決定にヌルバックグラウンド(null background)を提供し、観察されるシグナルは直接T1R2−TMD活性の結果とすることができる。このことは、T1R2−TMDを特異的に調節する剤の同定を可能にし、T1R3が甘味およびうま味ヘテロダイマー両方の一部であるため、うま味物質をも含み得るT1R3を活性化する剤を排除できる。
【0035】
適切な真核細胞は、T1R3を含まない真核細胞、例えば、限定することなく、哺乳類細胞、酵母細胞、または昆虫細胞(Sf9を含む)、両生類細胞(メラニン保有細胞を含む)、またはCaenorhabditis細胞(Caenorhabditis elegansを含む)を含むぜん虫細胞などを含む。T1R3を含まない適切な哺乳類細胞は、例えば、限定することなく、COS細胞(Cos−1およびCos−7を含む)、CHO細胞、HEK293細胞、HEK293T細胞、HEK293T−RexTM細胞、または他のトランスフェクト可能な真核細胞細胞系を含む。T1R3を含有しない適切な細菌細胞は、限定することなく、E.Coliを含む。
【0036】
細胞は、当業者によく知られているように、GPCRおよびGタンパク質(受容体をホスホリパーゼCシグナル伝達経路に連結する)を一過性にまたは安定的にトランスフェクトされる。味覚GPCRとの増強されたカップリングを提供するキメラGタンパク質Gアルファ16−ガストデューシン44の優れた異種発現系はWO2004/055048(G.sub..alpha.16 gust(ducin)44、G.sub.alpha.16gust(ducin)44、Gα16gust(ducin)44、Ga16gust(ducin)44、Gα16−ガストデューシン 44、または以下で使用されているように「G16gust44」としても知られている)に詳細に記載されている。代替的に、WO2004/055048に記載されているGαq−ガストデューシンに基づいた他のキメラGタンパク質、または、例えばG16またはG15などの、他のGタンパク質もまた利用してよい。
【0037】
T1R2−TMDは、受容体を、例えばホスホリパーゼCシグナル伝達経路などの、シグナル伝達経路、または例えば後述のものを含むシグナル伝達経路に連結するGタンパク質とともに、細胞内で発現させることが可能である:アデニル酸シクラーゼ、グアニル酸シクラーゼ、ホスホリパーゼC、IP、GTPase/GTP結合、アラキドン酸、cAMP/cGMP、DAG、プロテインキナーゼc(PKC)、MAPキナーゼ、チロシンキナーゼ、またはERKキナーゼ。代替的に、以下に詳述するように、いかなる適切なリポーター遺伝子もT1R2−TMD活性化応答プロモーターに連結し、T1R2−TMD活性の決定に利用することができる。
【0038】
上述の細胞に利用されるベクター構築物
かかる細胞中でGPCRならびに/あるいはGタンパク質を発現するベクター構築物は、本質的にポリメラーゼ連鎖反応を利用する知られた手法によって産生することができる。配列の確認後、cDNA断片は、例えばpcDNA3.1哺乳類細胞用哺乳類発現ベクターなど、適切なベクター内へサブクローニングされてよく、正しい遺伝子の発現を可能にするために対応する宿主細胞に一過性にトランスフェクトされてよい。
【0039】
例えば48時間の、トランスフェクト後期間の後、タンパク質の正しい発現を確認するために細胞溶解物を調製し、ウェスタンブロットによって解析される。一度正しいタンパク質の発現が確認されれば、例えばHEK293T細胞およびHEK T−RexTMを含む哺乳類細胞などの適切な細胞は、当業者に知られた技術に従って、安定してタンパク質を発現する細胞を生成するためにトランスフェクトされてよい。
【0040】
代替的に、様々な非哺乳類発現ベクター/宿主システムが、Gタンパク質共役受容体(GPCR)T1R2−TMDをコードする配列の含有および発現に利用可能である。これらは、例えば組換えバクテリオファージ、プラスミド、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌を含む微生物、酵母発現ベクターで形質転換された酵母、ウィルス発現ベクター(例えばバキュロウィルス)、または細菌発現ベクター(例えばpBR322プラスミド)で感染させた昆虫細胞システムなどを含む。以上に記載された系とともに利用することができる特定のベクターの例は、G-protein coupled receptors, Signal Transduction Series, 編者:Tatsuya Haga and Gabriel Berstein、第1版、CRC Press - Boca Raton FL; September 1999に記載されている。
【0041】
細菌系において、多くのクローニングおよび発現ベクターが、GPCRをコードするポリヌクレオチド配列について意図する利用に応じて選択し得る。例えば、GPCRをコードするポリヌクレオチド配列のルーチンのクローニング、サブクローニング、および増殖が、pBLUESCRIPT(Stratagene, La Jolla Calif.)またはpSPORT1プラスミド(Life Technologies)などの多機能性大腸菌ベクターを利用して行える。GPCRをコードする配列の、ベクターのマルチクローニングサイトへのライゲーションはlacZ遺伝子を妨害し、組換え分子を含有する形質転換細菌の同定のための比色スクリーニング手法を利用可能にする。加えて、これらベクターはインビトロ転写、ジデオキシシークエンシング、ヘルパーファージによる一本鎖レスキュー(single strand rescue)、およびクローニングされた配列内のネストされた欠失の作出にも有用であり得る。例えば抗体の産生など、多量のGPCRが必要な場合、GPCRの高発現を導くベクターが利用し得る。例えば強い、誘導可能なSP6またはT7バクテリオファージプロモーターを含むベクターなどが利用し得る。
【0042】
酵母発現系はGPCRの産生に利用されてよい。アルファファクター、アルコールオキシダーゼ、およびPGHプロモーターなどの構成的または誘導プロモーターを含む多数のベクターが酵母Saccharomyces cerevisiaeまたはPichia pastorisに利用し得る。加えて、かかるベクターは、発現タンパク質の分泌または細胞内の保持を導き、安定的増殖のための外来性配列の宿主遺伝子への統合を可能にする。
【0043】
異種タンパク質の昆虫細胞細胞系での発現のために、例えば、Lepidopteran baculovirusまたはAutographia californicaマルチカプシドヌクレオウィルス(AcMNPV)の誘導体が利用可能である。このシステムにおいて、外来性遺伝子発現は、ポリヘドリンまたはp10プロモーターのいずれかの、非常に強い後期ウィルスプロモーターに導かれ、多様なベクターが、組換えタンパク質の発現および回収の最適化に利用可能である。これらのベクターは膜結合型および分泌型タンパク質の両方を高度に発現することが可能であり、また哺乳類システム中で起こることが知られる、N−およびO−連結糖鎖付加、リン酸化、アシル化、タンパク質分解および分泌ワクチン成分を含む多くの翻訳後修飾も可能である。例えばInvitrogenのInsectSelectTMなどの多くのベクターが商業的に入手可能である。
【0044】
発現系
求めるタンパク質(例えばGPCRおよびGタンパク質)をコードするcDNAを発現するために、転写を導く強力なプロモーター、転写/翻訳ターミネーターおよび翻訳開始のためのリボソーム結合領域を含む、適切なcDNAが入った発現ベクターを典型的にサブクローニングする。例えばE.coli、Bacillus sp.、およびSalmonellaなど、適切な細菌プロモーターは当業者によく知られており、かかる発現系のためのキットが商業的に入手可能である。同様に、哺乳類細胞、酵母、および昆虫細胞のための真核細胞発現系も商業的に入手可能である。真核細胞発現ベクターは、例えばアデノウィルスベクター、アデノ随伴ベクター、またはレトロウィルスベクターなどであってよい。
【0045】
プロモーターに加えて、発現ベクターは典型的に、宿主細胞においてタンパク質をコードする核酸を発現するのに必要な付加的要素の全てを含む、転写ユニットまたは発現カセットを含む。典型的な発現カセットはしたがって、タンパク質をコードする核酸配列に作動可能に連結したプロモーターおよび、転写の効率的なポリアデニレーションに必要なシグナル、リボソーム結合領域、および翻訳ターミネーションを含む。タンパク質をコードする核酸配列は典型的に、組換えタンパク質の効率的な細胞表面発現を推進するために、ラットソマトスタチン−3受容体配列のN末端45アミノ酸などの、細胞表面受容体に有用な膜標的化シグナルに連結していてよい。付加的な要素は、例えばエンハンサーなどを含んでもよい。発現カセットはまた、構造遺伝子の下流に、効果的なターミネーションを提供するための転写終止領域も含むべきである。終止領域はプロモーター配列と同じ遺伝子から得てもよく、また異なる遺伝子から得てもよい。
【0046】
タンパク質の発現のために、真核細胞または原核細胞における発現のために当業者によく知られた、慣用のベクターを利用してよい。ベクターの例は、例えばpBR322ベースのプラスミド、pSKF、およびpET23Dを含むプラスミドなどの細菌発現ベクター、および例えばGSTおよびLacZなどの融合発現系を含む。
【0047】
真核ウィルス由来の制御要素を含む発現ベクター、例えばSV40ベクター、サイトメガロウィルスベクター、パピローマウィルスベクター、およびエプスタイン・バーウィルス由来のベクターなどは、典型的に真核発現ベクターとして利用される。他の真核ベクターの例には、pMSG、pAV009/A、pMTO10/A、pMAMneo−5、バキュロウィルスpDSVE、pcDNA3.1、pIRES、およびSV40早期プロモーター、SV40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウィルスプロモーター、ラウス肉腫ウィルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、または真核細胞内での発現に効果を示す他のプロモーターの指揮下でタンパク質を発現させられる他のいかなるベクターも含む。いくつかの発現系は、チミジンキナーゼ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、ジヒドロ葉酸リダクターゼなどの遺伝子増幅を提供するマーカーを有する。
【0048】
典型的に発現ベクターに含まれる要素には、E.Coli中で機能するレプリコン、組換えプラスミドを取り込んだ細菌の選別を可能にする薬剤耐性をコードする遺伝子、および真核配列の挿入を可能にするプラスミドの本質的でない領域のユニークな制限部位なども含んでよい。選択される特定の薬剤耐性遺伝子は重大ではなく、当該技術分野で知られたあらゆる多くの薬剤耐性遺伝子が適している。必要に応じて、原核配列は、真核細胞内でのDNAの複製を妨害しないように任意に選択される。
【0049】
細菌システムにおいて、GPCRのcDNA断片は、単独で、または、対象となるGPCRが、E.Coliペリプラズムマルトース結合タンパク質(MBP)であって、シグナルペプチドを含むMBPがGPCRのアミノ末端に連結しているものに融合した融合タンパク質として発現されてよい。野生型GPCRのcDNAあるいはMBP:GPCR融合cDNAは、例えばE.Coli GPCRの発現がlac野生型プロモーターによって駆動されるpBR322など、適切なプラスミドへサブクローニングされる。E.ColiにおけるGPCRの発現方法は、例えばG-protein coupled receptors, Signal Transduction Series, 編者:Tatsuya Haga and Gabriel Berstein, 第1版, CRC Press - Boca Raton FL; September 1999などに記載されている。
【0050】
内在性GPCRを欠損した遺伝子操作酵母システムおよび昆虫細胞システムは、T1R2−TMD活性化スクリーニングに対してヌルバックグラウンドであるという利点を提供する。遺伝子操作酵母システムはヒトGPCRおよびGαタンパク質を、対応する内在性酵母フェロモン受容体経路の成分と代替するものである。下流シグナル経路はまた、通常の酵母シグナル応答が選択培地上でのプラス成長またはレポーター遺伝子発現に転換するように、改変される(Broach, J. R. and J. Thorner, 1996, Nature, 384 (supp.):14〜16に記載)。遺伝子操作された昆虫システムは、受容体をホスホリパーゼCシグナル経路に連結できるヒトGPCRおよびGαタンパク質を組み込んでいる(例えばKnight and Grigliatti, 2004, J. Receptors and Signal Transduction, 24: 241〜256参照)。両生類細胞システム、特にメラニン含有細胞は、例えばGPCR発現系について記載した国際特許出願92/01810などに記載されている。
【0051】
T1R2−TMDの過剰発現
T1R2−TMDは、例えばCMV早期プロモーターなどの強力な構成的プロモーターの制御下に置くことにより過剰発現されることができる。代替的に、保存されているGPCRアミノ酸またはアミノ酸ドメインのある変異を導入し、利用するGPCRを構成的に活性化させることが可能である。
【0052】
T1R2−TMD発現ベクター構築物の細胞内へのトランスフェクション
大量のタンパク質を発現する細菌、哺乳類、酵母または昆虫細胞セルラインを産生するのに、標準的なトランスフェクション法が利用可能である。
核酸配列を宿主細胞に導入するために知られたいかなる方法も利用してよい。用いる特定の遺伝子操作手順は、対象となるタンパク質を発現できる宿主細胞中に関係する遺伝子を首尾良く導入できさえすればそれでよい。これらの方法は、クローニングされたゲノムDNA、cDNA、合成DNAまたは他の外来性の遺伝物質を宿主細胞中に導入することを伴ってもよく、リン酸カルシウムトランスフェクション、ポリブレン、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム、マイクロインジェクション、プラズマベクター、ウィルスベクターなどを含む。
【0053】
例えば、限定することなく、T−RexTM発現系(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を用いることができる。T−RexTMシステムは、E.Coli Tn10にコードされたテトラサイクリン(Tet)耐性オペロン由来の調節エレメントを利用したテトラサイクリン制御哺乳類発現系である。T−RexTMシステム中のテトラサイクリン調節は、テトラサイクリンのTetリプレッサーへの結合および対象となる遺伝子の発現を制御するプロモーターの抑制解除に基づいている。
【0054】
細胞培養
トランスフェクト後、トランスフェクトされた細胞は、当業者によく知られた標準的な培養条件で培養することができる。異なる細胞は、適切な温度および細胞培養培地を含む、異なる培養状態を要求することは、当業者に明らかである。
【0055】
T1R2−TMD受容体タンパク質回収
必要に応じて、タンパク質を標準的な技術を利用して細胞培養から回収することができる。例えば、沈殿およびクロマトグラフィ工程に供する前に細胞を機械的にまたは浸透圧ショックによって破裂させてよく、その性質と順序は回収される特定の組換え物質次第である。あるいは、組換えタンパク質を、組換え細胞が培養された培養培地から回収することもできる。
【0056】
本明細書のアッセイによって同定され得る調節物質
T1R2−TMD受容体活性の調節物質(リガンド、アゴニスト、部分的アゴニスト、アンタゴニスト、逆アゴニスト、阻害剤、増強剤)は、以下に記載されたように同定可能である。これから前記アッセイによって同定される剤の定義について述べる。
【0057】
調節剤は、1または2以上の後述のものの増大または減少を引き起こす剤である:受容体の細胞表面発現、リガンドの受容体への結合、または受容体の活性化形態によって開始される細胞内応答(アゴニストの存在下または非存在下における)。調節剤はそれ自身が受容体に結合し、それを活性化し、それによって細胞内応答の増大を調節するアゴニストであり得る。
【0058】
調節剤は、小分子、ペプチド、タンパク質、核酸、抗体またはその断片を含む様々なタイプの化合物を含む。それらは、合成または天然物質、天然材料の抽出物を含む様々な給源、例えば動物、哺乳類、昆虫、植物、細菌または真菌細胞材料または培養細胞、またはかかる細胞の馴化培地などに由来し得る。
【0059】
リガンドは受容体と結合する剤であり、アゴニスト、部分的アゴニスト、増強剤、アンタゴニスト、または逆アゴニストであってもよい。アゴニスト(甘味物質)は、受容体を活性化し、受容体に結合したときにアゴニストの非存在下での細胞内応答と比較して、細胞内応答を増大させるT1R2−TMD受容体のリガンドである。付加的にまたは代替的に、アゴニストは、アゴニストの非存在下で細胞表面に存在する細胞表面受容体の数と比較して、受容体の細胞表面発現を増大させるように、細胞表面受容体の内在化を減少させ得る。
【0060】
部分的アゴニストは、受容体を最大限活性化する他のアゴニストと比べて、部分的にしか作用しないアゴニストである。アンタゴニストは、アゴニストと同じ(競合的アンタゴニスト)または異なる(アロステリックアンタゴニスト)受容体の部位に結合するが、受容体の活性化形態によって起こる細胞内応答を活性化せず、それゆえアゴニストの存在下およびアンタゴニストの非存在下と比較して、アゴニストによって誘導される細胞内応答を阻害するリガンドである。受容体と結合する逆アゴニストは、受容体によって媒介される構成的細胞内応答を、逆アゴニストの非存在下における細胞内応答と比較して減少させる。阻害剤は、阻害剤の非存在下におけるアゴニストの結合と比較して、アゴニストと受容体との結合を減少させ、および/またはアゴニストによって誘導される細胞内応答を減少させる。増強剤は、アゴニストの受容体への結合を、増強剤の非存在下におけるアゴニストの結合と比較して増大させ、および/またはアゴニストによって誘導される細胞内応答を増大させる。
【0061】
リガンドを結合し、例えばGタンパク質(すなわち増強剤との種々の相互作用に起因して)などによりシグナルを伝達する受容体の活性または活性の変化は、以下に記載されるアッセイによって決定可能である。
【0062】
T1R2−TMD受容体の調節剤同定のためのアッセイ
調節剤は、機能的効果/パラメータを決定および比較するための、多種多様なインビトロおよびインビボアッセイを利用して、または代替的に結合アッセイによって、同定可能である。受容体の機能上の試験剤の効果は適切な機能的パラメータを分析することで計測可能である。受容体活性に影響するあらゆる生理学的変化は、調節剤の同定のために利用可能である。
【0063】
かかる機能的アッセイは、例えば動物から単離された無傷の細胞または組織を利用したアッセイおよび濃度または活性またはそれらの二次メッセンジャーの変化(例えば細胞内カルシウム(Ca2+)、cAMP、cGMP、イノシトールリン酸(IP)、ジアシルグリセロール/DAG、アラキドン酸、MAPキナーゼまたはチロシンキナーゼなどを含む)、イオンフラックス、リン酸化レベル、転写レベル、神経伝達物質レベルの計測に基づいたアッセイ、およびGTP結合性、GTP分解酵素、アデニル酸シクラーゼ、リン脂質分解、ジアシルグリセロール、イノシトール三リン酸、アラキドン酸放出、PKC、キナーゼおよび転写レポーターに基づいたアッセイなど、当業者によく知られている。いくつかの適切なアッセイが、例えばWO 01/18050に記載されている。
【0064】
受容体活性化は、典型的には例えば、例えば細胞内に貯蔵されたカルシウムイオンを放出するIPなどの二次メッセンジャーの増大など、後続する細胞内イベントの起点となる。いくつかのGタンパク質共役受容体活性化は、ホスホリパーゼC媒介ホスファチジルイノシトール加水分解を通したイノシトール三リン酸(IP)の形成を刺激する。IPは次に細胞内に貯蔵されたカルシウムイオンの放出を刺激する。全ての機能的アッセイは、例えば受容体をその表面または単離細胞膜画分上に発現する細胞を含有するサンプルで行うことができる。有用な細胞は上述されている。また、例えば遺伝子組換え動物からの組織も利用してよい。
【0065】
それ自身がアゴニストではない調節剤(例えば、拮抗剤、部分的アゴニスト、逆アゴニスト、阻害剤、または増強剤)を同定するため、試験剤を有するおよび有さないサンプルを比較する。例えば、コントロール(アゴニストを含むが増強剤は含まない)の相対受容体活性値を100とする。コントロールに対する活性の減少で阻害剤、拮抗剤または逆アゴニストが同定され、その増大で増強剤が同定される。通常、試験剤を含まないサンプルとの比較における、または試験剤を含むが、T1R2を発現しない細胞(モックトランスフェクションされた細胞)に基づくサンプルとの比較における、試験剤を含むサンプルにおける10%またはそれ以上の計測された活性の増大または減少は、有意とみなすことができる。
【0066】
アゴニストまたは部分的アゴニストの同定
アゴニストまたは部分的アゴニストを同定するために、試験剤を有するサンプルを、アゴニスト(例えばペリラルチンまたはメチルカビコール)を有するポジティブコントロールと比較し、または代替的に/付加的に、試験剤を有するおよび有さないサンプルが、その受容体活性について比較される。例えば、アゴニストまたは部分的アゴニストは、アゴニストまたは部分的アゴニストが100mMまたはそれ以下で存在していた場合、ポジティブコントロール甘味物質の最大生物学的活性の少なくとも10%に相当する生物学的活性を有しており、例えばアゴニストの最大生物学的活性に匹敵するまたはそれ以上の最大生物学的活性を有し得る。
【0067】
最大生物学的活性は、与えられた受容体アッセイフォーマット内で達成可能なアゴニスト、例えばペリラルチンまたはメチルカビコールなどアッセイに対する最大達成可能な受容体応答であって、その応答が、同じアゴニストの濃度を増大させて適用してもさらに増大できないものと定義される。
【0068】
代替的に、試験剤を有するサンプルにおける、例えば10%またはそれ以上の計測活性の増大が、試験剤を有さないサンプルまたは試験剤を有するがT1R2−TMDを発現しない細胞(モックトランスフェクション細胞)に基づくサンプルと比較される。
【0069】
アンタゴニストを同定するために、知られたアゴニストの存在下における、試験剤の存在下および非存在下での受容体活性が比較される。アンタゴニストは、例えば少なくとも10%の、アゴニスト刺激性受容体活性の減少を示す。逆アゴニストを同定するために、知られたアゴニストの存在下における試験剤の存在下および非存在下での受容体活性が、上述のように、受容体を過剰発現する動物/細胞/膜を含有するサンプルで比較される。逆アゴニストは、例えば少なくとも10%の、受容体の構成的活性の減少を示す。
【0070】
上述のアッセイにおけるT1R2−TMD受容体活性を計測する適切な検出法の様々な例を以下に記載する。
【0071】
細胞質イオンまたは膜電位の変化の検出
G-protein coupled receptors, (Signal Transduction Series), CRC Press 1999; 第1版; Haga and Berstein編に詳述されているように、細胞を受容体活性を報告するためのイオン感受性色素で染色する。細胞質におけるイオン濃度または膜電位の変化は、それぞれイオン感受性または膜電位蛍光指標を利用して計測される。
【0072】
カルシウムフラックス
GPCRの活性化によって誘導される細胞内カルシウム放出は、カルシウムに結合する細胞持続性(cell-permanent)色素を利用して決定される。カルシウム結合性色素は、細胞内のカルシウム上昇に比例する蛍光シグナルを発生する。この方法は、受容体活性の迅速かつ定量的な計測を可能にする。
【0073】
用いる細胞は、上述のようにホスホリパーゼC経路に連結できるようにするために、T1R2−TMD GPCRとGタンパク質とを共発現するトランスフェクト細胞である。ネガティブコントロールは、候補化合物の可能な非特異的効果を排除するために、T1R2−TMDを発現しない細胞またはその膜(モックトランスフェクションしたもの)を含む。カルシウムフラックス検出手順はG-protein coupled receptors, Signal Transduction Series, 編者:Tatsuya Haga and Gabriel Berstein, 第1版, CRC Press - Boca Raton FL; September 1999に詳述されており、適合させたバージョンの概略を以下に記載する。
【0074】
0日目:96ウェルプレートに、1ウェルあたり8500個の細胞を播種し、栄養成長培地中、一晩37℃で維持する。
1日目:1ウェルあたり150ngのGPCR DNAおよび0.3μlのリポフェクタミン2000(Invitrogen)を利用して、細胞をトランスフェクトする。トランスフェクトされた細胞は栄養成長培地中、一晩37℃で維持する。
【0075】
2日目:成長培地を捨て、細胞を、1.5μMのFluo-4 AM(Molecular Probes)および2.5μMのプロベニシド(probenicid)を、10mMのHepes、200μMのCaClおよび0.1%のウシ血清アルブミンを添加したハンクス平衡塩溶液(HBSS)、37℃でpH7.4、に溶かしたもので、1時間(室温暗所で)インキュベートする。2.5μMのプロベニシド(probenicid)を、10mMのHepes、200μMのCaClおよび0.1%のウシ血清アルブミンを添加したハンクス平衡塩溶液(HBSS)、37℃でpH7.4、に溶かしたものからなる洗浄緩衝液125μlをそれぞれのウェルに加え、プレートをさらに30分室温暗所でインキュベートする。緩衝溶液を捨て、プレートを100μlの洗浄緩衝液で5回洗浄し、200μlの洗浄緩衝液に戻し、37℃で15分間インキュベートする。
【0076】
プレートを、例えばFlexstation(Molecular Devices)またはFLIPR(Molecular Devices)などの蛍光マイクロプレートリーダーに設置し、20μlの10倍濃縮リガンドストック溶液を加えて受容体活性化を開始する。
【0077】
蛍光は、リガンドを加える15秒前からリガンドを加えた後45〜110秒後まで継続的に監視する。受容体活性化レベルは以下の2つの方程式で定義される:活性化の%=(最大蛍光−基準蛍光/基準蛍光)×100、または蛍光増加=最大蛍光−基準蛍光、式中基準蛍光はリガンド添加前の平均蛍光レベルを表す。
【0078】
有用な細胞は、例えばHEK293T細胞およびHEK293T−RexTM細胞などの上述した哺乳類細胞である。細胞は、当該技術分野でよく知られているとおりに、GPCRとGタンパク質で一過性にまたは安定的にトランスフェクトすることができる。優れた異種発現系は、WO2004/055048に詳述されている。カルシウムフラックスアッセイは、例えば後述の例1に記載されているように行うことができる。
【0079】
調節剤の同定は上述の方法を後述のとおりに変更して行う。シグナルは、アゴニストの存在下だが試験剤の非存在下でT1R2−TMDを発現する遺伝子組換え細胞から得られた、T1R2−TMD活性の基準レベルと比較される。例えば、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍またはそれ以上などの、T1R2−TMD活性における増大または減少は調節剤を同定する。
【0080】
代替的に、同定は、調節剤が存在しないサンプルと比較した場合または調節剤は存在するがT1R2−TMDポリペプチドを発現しない細胞(モックトランスフェクションした細胞)のサンプルと比較した場合、例えば10%またはそれ以上の、蛍光強度の増大または減少を伴う。
【0081】
アデニル酸シクラーゼ活性
アデニル酸シクラーゼ活性のためのアッセイは、例えばKenimer & Nirenberg, 1981, Mol. Pharmacol. 20: 585〜591に詳述されているように行われる。反応混合物は通常37℃で10分以下インキュベートされる。インキュベーション後、反応混合物は0.9mlの冷6%トリクロロ酢酸を添加して除タンパクする。チューブを遠心し、それぞれの上清をDowex AG50w−X4カラムに加える。カラムからのcAMP画分を、アゴニストによる受容体活性化を受けて発生したcAMPレベルを計測するために、4mlの0.1mMイミダゾール−HCl(pH7.5)で計数バイアル中に溶出する。コントロール反応もまた、T1R2−TMDポリペプチドを発現しない細胞のタンパク質ホモジネートを利用して行うべきである。
【0082】
IP/Ca2+シグナル
Gタンパク質を発現している細胞中で、イノシトール三リン酸(IP)/Ca2+およびその結果としての受容体活性に相当するシグナルを、蛍光を利用して決定可能である。GPCRを発現している細胞は、細胞内貯蔵およびイオンチャネルの活性化経由の寄与の結果、細胞質カルシウムレベルの増大を見せ得、必須ではないが、カルシウムフリー緩衝液中でかかるアッセイを実施し、内在ストアからのカルシウム放出の結果による蛍光応答と区別するために、任意にEDTAなどのキレート剤を補完することが望ましいだろう。
【0083】
ホスホリパーゼC/細胞内Ca2+シグナル
T1R2−TMDは、受容体とホスホリパーゼCシグナル伝達経路を連結するGタンパク質を有する細胞で発現される。細胞内Ca2+濃度の変化は、例えば蛍光Ca2+指示色素および/または蛍光イメージングなどを利用して、計測する。
【0084】
GTPase/GTP結合
T1R2−TMDを含むGPCRにとって、受容体活性の指標はGPCRを含む細胞膜によるGTPの結合である。計測されるのは、標識GTPの結合を検出することで膜と連結するGタンパク質である。受容体を発現する細胞から単離された膜は、35S−GTPγSおよび未標識GDPを含有する緩衝液中でインキュベートされる。活性を有するGTPaseは無機リン酸塩として標識を放出し、これは20mMのHPO中の活性炭5%懸濁液中で遊離無機リン酸塩を分離した後にシンチレーションカウンティングによって決定される。混合物をインキュベートし、未結合標識GTPをGF/Bフィルターでろ過して取り除く。結合した標識GTPを液体シンチレーションカウンティングで計測する。コントロールは、試験剤の非特異的効果の可能性を排除するために、T1R2−TMDを発現しない細胞(モックトランスフェクションしたもの)から単離した膜を利用するアッセイを含む。方法はTraynor and Nahorski, 1995, Mol. Pharmacol., 47: 848〜854に詳述されている。
【0085】
調節剤を同定するために、上述の、GTP結合またはGTPase活性などの、10%またはそれ以上の変化(増大または減少)は通常十分である。しかしながら、作用薬を同定するためには、上述のアッセイは以下のように変更して実施する。剤は、化合物が100mMまたはそれ以下、例えば10から500μM、例えば約100μMで存在したときに、活性が、知られた作用薬(例えばペリラルチン)のそれの少なくとも50%であった場合、または知られた作用薬によって誘導されるレベルと同じまたはそれ以上のレベルを誘導する場合、通常作用薬として同定される。
【0086】
マイクロフィジオメーターまたはバイオセンサー
かかるアッセイはHafner, 2000, Biosens. Bioelectron. 15: 149〜158に詳述されているように行うことができる。
アラキドン酸
アラキドン酸の細胞内レベルは受容体活性の指標として採用される。かかる方法はGijon et al., 2000, J. Biol. Chem., 275:20146〜20156に詳述されている。
【0087】
cAMP/cGMP
細胞内または細胞外cAMPは、cAMPラジオイムノアッセイ(RIA)または、例えばHorton & Baxendale, 1995, Methods Mol. Biol. 41: 91〜105に記載されているような、cAMP結合タンパク質を利用して計測される。代替的に、例えばLJL BiosystemsおよびNEN Life Science Productsの高効率蛍光偏光ベースホモジニアスアッセイなど、複数のcAMP計測のためのキットもまた商業的に入手可能である。代替的に、cGMPの細胞内または細胞外レベルもまた、例えばイムノアッセイを利用して計測可能である。例えば、Felly-Bosco et al., Am. J. Resp. Cell and Mol. Biol., 11:159〜164(1994)に記載の方法などが、cGMPレベルを決定するのに利用され得る。代替的に、米国特許4,115,538に記載されているcAMPおよび/またはcGMPを計測するアッセイキットもまた利用可能である。試験剤の非特異的効果の可能性を排除するためのモックトランスフェクションされた細胞またはその抽出物を有するネガティブコントロールが利用され得る。
【0088】
DAG/IP
例えばPhospholipid Signaling Protocols, Ian M. Bird, Totowa, N.J.編, Humana Press, 1998に記載のように、受容体活性に起因するリン脂質分解によって放出される、二次メッセンジャーのジアシルグリセロール(DAG)および/またはイノシトール三リン酸(IP)を検出し、T1R2−TMD活性の指標として利用することが可能である。代替的に、Perkin Elmer and CisBio Internationalから商業的に入手可能な、イノシトール三リン酸の計測のためのキットが利用可能である。試験剤の非特異的効果の可能性を排除するためのモックトランスフェクションされた細胞またはその抽出物を有するネガティブコントロールが利用され得る。
【0089】
PKC活性
成長因子受容体チロシンキナーゼは、リン脂質およびカルシウム活性化タンパク質キナーゼファミリーの、タンパク質キナーゼC(PKC)の活性化を伴う経路を通してシグナリング可能である。PKCに誘導される遺伝子産物の増大は、PKCの活性化およびその結果としての受容体の活性化を示す。これらの遺伝子産物は、例えばガン原遺伝子転写因子コード遺伝子(c−fos、c−mycおよびc−junを含む)、プロテアーゼ、プロテアーゼ阻害剤(コラーゲナーゼタイプIおよびプラズミノーゲン活性化因子阻害剤を含む)、および接着分子(細胞内接着因子I(ICAM I)を含む)などを含む。PKC活性はKikkawa et al., 1982, J. Biol. Chem., 257: 13341に記載されているように、その後ホスホセルロースペーパーに結合することによって分離されるPKC基質ペプチドのリン酸化を計測することで、直接計測し得る。これは精製キナーゼまたは粗細胞抽出物中の活性の計測に利用可能である。タンパク質キナーゼCサンプルは20mM HEPES/2mM DTTでアッセイ直前に希釈可能である。代替的なアッセイは、PanVeraから商業的に入手可能なタンパク質キナーゼCアッセイキットを利用して行うことも可能である。
【0090】
上述のPKCアッセイは、T1R2−TMDを発現する細胞からの抽出物に対して行う。代替的に、活性は、PKC活性化によって活性化される遺伝子の制御配列によって駆動するリポーター遺伝子構築物の利用を通して計測可能である。試験剤の非特異的効果の可能性を排除するためのモックトランスフェクションされた細胞またはその抽出物を有するネガティブコントロールが利用され得る。
【0091】
MAPキナーゼ活性
MAPキナーゼ活性は、例えばNew England Biolabsのp38MAPキナーゼアッセイキット、またはPerkin-Elmer Life ScienceのFlashPlateTM MAPキナーゼアッセイなど、商業的に入手可能なキットを利用して計測可能である。p42/44MAPキナーゼまたはERK1/2は、GqおよびGi結合GPCRを有する細胞を利用している場合、T1R2−TMD活性を示すために計測可能であり、GPCR活性化に続く内在性ERK1/2キナーゼのリン酸化を計測するERK1/2アッセイキットはTGR Biosciencesによって商業的に入手可能である。代替的に、知られた合成または天然チロシンキナーゼ基質および標識リン酸塩を通したチロシンキナーゼ活性の直接計測はよく知られており、他のタイプのキナーゼ(例えばセリン/スレオニンキナーゼ)の活性も同様に計測可能である。
【0092】
全てのキナーゼアッセイは、精製キナーゼおよびT1R2−TMDポリペプチドを発現する細胞から調製した粗抽出物両方で行うことができる。利用するキナーゼの基質は、全長タンパク質または基質の代わりとなる合成ペプチドであり得る。Pinna & Ruzzene(1996, Biochem. Biophys. Acta 1314: 191〜225)は、キナーゼ活性の検出に有用な複数のリン酸化基質部位を列挙している。複数のキナーゼ基質ペプチドが商業的に入手可能である。特に有用なものは、多くの受容体および非受容体チロシンキナーゼの基質である、「Src−関連ペプチド」RRLIEDAEYAARG(Sigmaから商業的に入手可能)である。いくつかの方法は、ペプチド基質のフィルターへの結合を必要とし、そこでペプチド基質は、結合を促進するために、正味で正に荷電しているべきである。一般的に、ペプチド基質は少なくとも2つの塩基性残基および遊離アミノ末端を有しているべきである。反応は一般的に、0.7〜1.5mMのペプチド濃度を利用する。試験剤の非特異的効果の可能性を排除するためのモックトランスフェクションされた細胞またはその抽出物を有するネガティブコントロールが利用され得る。
【0093】
転写レポーター/T1R2−TMD応答性プロモーター/レポーター遺伝子
レポーター遺伝子アッセイで調節剤を同定するためには、シグナルにおける少なくとも2倍の増大または10%の減少が顕著である。アゴニストは、試験剤の存在下および非存在下における活性を比較した場合、例えば少なくとも2倍、5倍、10倍またはそれ以上活性化する。
T1R2−TMDへのアゴニストの結合によって開始される細胞内シグナルは、細胞内事象のカスケードを作動させ、最終結果として1または2以上の遺伝子の転写または翻訳における迅速かつ検出可能な変化をもたらす。受容体の活性はしたがって、T1R2−TMD活性化に応答するプロモーターによって駆動されるレポーター遺伝子の発現の計測によって決定される。
【0094】
本明細書で使用される「プロモーター」は、遺伝子発現の受容体媒介制御に必要な1または2以上の転写制御エレメントまたは配列であり、これは受容体調節発現に必要な1または2以上の基本プロモーター、エンハンサーおよび転写因子結合部位を含む。T1R2−TMDへのアゴニストの結合の結果もたらされる細胞内シグナルに応答するプロモーターは、選択され、転写、翻訳または絶対的活性が容易に検出および計測可能な、対応するプロモーター制御レポーター遺伝子に作動可能に連結される。
【0095】
レポーター遺伝子は、例えばルシフェラーゼ、CAT、GFP、β−ラクタマーゼ、β−ガラクトシダーゼ、およびいわゆる「前初期」遺伝子、c−fosガン原遺伝子、転写因子CREB、血管作動性腸ペプチド(VIP)遺伝子、ソマトスタチン遺伝子、プロエンケファリン遺伝子、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)遺伝子、NF−κBに応答する遺伝子、およびAP−1応答遺伝子(FosおよびJun、Fos関連抗原(Fra)1および2、IκBα、オルニチンデカルボキシラーゼ、およびアネキシンIおよびIIの遺伝子を含む)から選択されてよい。プロモーターは、当業者には明らかなように、選択されたレポーター遺伝子に応じて選択される。ルシフェラーゼ、CAT、GFP、β−ラクタマーゼ、β−ガラクトシダーゼおよびその産物の検出のためのアッセイは当該技術分野でよく知られている。さらなるレポーター遺伝子の例は以下に記載されている。
【0096】
「前初期」遺伝子は好適であり、速やかに誘導される(例えば受容体とエフェクタータンパク質またはリガンドとの接触から数分以内)。レポーター遺伝子の求められる特性には、次の1または2以上のものが含まれる:リガンド結合に対する速やかな応答性、休眠細胞における低発現または検出できない発現、新たなタンパク質合成の一過性かつ独立した誘導、後続する転写の遮断に新たなタンパク質合成が必要であること、およびこれらの遺伝子から転写されたmRNAが数分から数時間の短い半減期を有すること。同様に、プロモーターも、これらの特性を1つ、数個、または全て有し得る。
【0097】
c−fosガン原遺伝子は、複数の異なる刺激に応答し、速やかな誘導を有する遺伝子の例である。c−fos調節エレメントは、転写開始に必要なTATAボックス、基本転写のための2つの上流エレメント、および、二回対称性を有するエレメントを含む、TPA、血清、EGF,およびPMAによる誘導に必要なエンハンサーを含む。c−fosのmRNAキャップ部位の上流−317〜−298bpの間に位置する20bpのc−fos転写エンハンサーエレメントは、血清枯渇NIH3T3細胞の血清誘導に不可欠である。2つの上流エレメントのうちの1つは−63〜−57に位置し、cAMP調節のためのコンセンサス配列に類似する。
【0098】
転写因子CREB(サイクリックAMP応答エレメント結合タンパク質)は細胞内cAMPのレベルに応答する。したがって、cAMPレベルの調節を通してシグナルする受容体の活性化は、転写因子の結合か、またはCREB結合エレメント(CRE、またはcAMP応答エレメントと称する)に連結されたレポーター遺伝子の発現を検出することで決定可能である。CREのDNA配列はTGACGTCAである。CREB結合活性に応答するレポーター構築物は米国特許5,919,649に記載されている。
【0099】
他の好適なレポーター遺伝子およびそのプロモーターは、血管作動性腸ペプチド(VIP)遺伝子およびcAMP応答性のそのプロモーター、ソマトスタチン遺伝子およびcAMP応答性のそのプロモーター、プロエンケファリンおよびcAMP、ニコチンアゴニストおよびホルボールエステルに応答性のそのプロモーター、およびホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)遺伝子およびcAMP応答性のそのプロモーターを含む。
【0100】
GPCR活性の変化に応答するレポーター遺伝子およびそのプロモーターのさらなる例は、AP−1転写因子およびNF−κBを含む。AP−1プロモーターは、回文配列TGA(C/G)TCAであるコンセンサスAP−1結合部位により特徴付けられる。AP−1はまた、ホルボールエステル12−O−テトラデカノイルホルボール−β−アセテート(TPA)を含む腫瘍プロモーターによる誘導の媒介に関与しており、したがって、TRE(TPA応答性エレメント)と呼ばれることもある。AP−1は、増殖刺激に対する細胞の早期の応答に関与する複数の遺伝子を活性化する。AP−1応答性遺伝子の例は、FosおよびJun(タンパク質それ自体がAP−1活性を組成する)、Fos関連抗原(Fra)1および2、IκBα、オルニチンデカルボキシラーゼ、およびアネキシンIおよびIIの遺伝子を含む。
【0101】
NF−κBプロモーター/結合エレメントはコンセンサス配列GGGGACTTTCCを有する。多くの遺伝子がNF−κB応答性であると同定されていて、その制御エレメントをリポーター遺伝子と連結し、GPCR活性を監視することが可能である。NF−κBに応答する遺伝子は、例えばIL−1β、TNF−α、CCR5、P−セレクチン、Fasリガンド、GM−CSFおよびIκBαをコードするものを含む。NF−κB応答性レポーターをコードするベクターは当該技術分野で知られているか、または当該技術分野の通常の技術、例えば合成NF−κBエレメントおよび最小プロモーターを用いて、またはNF−κB制御に従うことが知られる遺伝子のNF−κB応答性配列を用いて容易にに形成可能である。さらに、NF−κB応答性レポーター構築物は、例えばCLONTECHから商業的に入手可能である。
【0102】
与えられたプロモーター構築物は、構築物をトランスフェクトした、T1R2−TMD発現細胞を、アゴニスト(例えばペリラルチン)に曝露することで簡単に試験できる。アゴニストに応答するレポーター遺伝子の発現における、少なくとも2倍の増大は、レポーターがT1R2−TMD活性を計測するのに適していることを示す。転写アッセイのためのコントロールは、T1R2−TMDを発現しないがレポーター構築物を保持している細胞およびプロモーターのないレポーター構築物を有する細胞の両方を含む。
【0103】
レポーター遺伝子の活性化によって示されるT1R2−TMD活性を調節する剤は、他のプロモーターおよび/または他の受容体を用いて、シグナルのT1R2−TMD特異性を立証し、およびその活性範囲を決定することによって立証可能であり、これにより、あらゆる非特異的シグナル、例えばレポーター遺伝子経路経由の非特異的シグナルなどを排除する。
【0104】
イノシトールリン酸(IP)計測
ホスファチジルイノシトール(PI)加水分解は、少なくとも48時間またはそれ以上のH−ミオイノシトールによる細胞標識を伴う、米国特許5,436,128に記載されているように決定されてよい。標識細胞は試験剤に1時間接触させ、次いでそれらの細胞を溶解し、クロロホルム−メタノール−水に抽出する。その後、イノシトールリン酸をイオン交換クロマトグラフィで分離し、シンチレーションカウンティングで定量する。アゴニストに関して、刺激比(fold stimulation)は、試験剤の存在下における計数毎分(cpm)の、緩衝液コントロールの存在下でのcpmに対する比を計算して決定される。同じように、阻害剤、アンタゴニストおよび逆アゴニストに関して、阻害比は、試験剤の存在下における計数毎分(cpm)の、緩衝液コントロール(アゴニストを含有してもしなくてもよい)の存在下でのcpmに対する比を計算して決定される。
【0105】
結合アッセイ:
以上に記載されている、リガンド結合に対する機能的応答に起因するパラメータ変化を計測する機能的アッセイに代替して、リガンド結合を、T1R2−TMD受容体へのリガンドの結合を計測する結合アッセイで決定してもよい。
結合アッセイは当業者によく知られており、溶液中、任意に固層に付着した二重膜中、単脂質膜中、または小胞中で試験可能である。T1R2−TMDポリペプチドへの調節剤の結合は、例えば分光特性(例えば蛍光、吸収、または屈折率)の変化の計測、水力学的手法(例えば形状の使用)、クロマトグラフィ、T1R2−TMDの溶解特性を計測すること等によって決定可能である。1つの態様において、結合アッセイは生物化学的および組換えT1R2−TMDポリペプチドを発現する細胞/組織からの膜抽出物を利用する。
結合アッセイは、例えば、T1RについてAdler et al.によってアメリカ特許出願20050032158の段落[0169]から[0198]に記載されている、その中でアメリカ特許出願20050032158が「細胞ベース結合アッセイ」と呼ぶ機能アッセイと区別するために「インビトロ結合アッセイ」と呼ばれていたもののように実施されてよい。
【0106】
T1R2−TMD受容体ポリペプチドおよび核酸、ならびに実質的に相同なポリペプチドおよび核酸
【0107】
本発明による方法に有用なT1R2−TMD受容体は配列番号2の受容体か、または代替的に、実質的に相同な受容体(またはT1R2−TMD受容体を形成する核酸配列)であって、依然として機能的である(すなわちリガンドと結合し、リガンドによって活性化される)受容体であってよい。かかる相同的な受容体は、例えば配列番号2の対立遺伝子変異体であるか、あるいはラット(約77.9%のアミノ酸配列同一性および約81.2%の核酸配列同一性)、マウス(約76.2%のアミノ酸配列同一性および約80.9%の核酸配列同一性)、イヌ(約74.4%のアミノ酸配列同一性および約82.6%の核酸配列同一性)、またはヒト受容体と十分なアミノ酸配列同一性を有する他のあらゆる種を含む異なる種の対応する相同配列などであってよい。
【0108】
さらに、実質的に相同なT1R2−TMD核酸またはポリペプチド配列は、保存的変異および/または点突然変異により形成されてもよく、下記のあらゆる保存的に改変された変異体を含む。
核酸配列について、保存的に改変された変異体は、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列(保存的に置換されたアミノ酸、すなわちアルギニンに差し替えられたリシンおよび下記に説明されているさらなる例など)をコードする核酸を意味する。
【0109】
遺伝コードの縮重によって、配列は異なるが機能的に同一な複数の核酸が任意の与えられたポリペプチド/タンパク質をコードする。かかる核酸変異は「サイレント変異」であり、保存的に改変された変異の1種である。ポリペプチドをコードするそれぞれの核酸配列はまた、全ての可能な核酸のサイレント変異を記載している。したがって、それぞれの核酸中のコドン(通常メチオニンの唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)は、同一のポリペプチドを産生する機能的に同一の核酸配列を得るために改変し得る。したがって、ポリペプチドをコードする核酸のそれぞれのサイレント変異は、それぞれの与えられた核酸配列に内在する。
【0110】
アミノ酸配列について、アミノ酸置換は、かかる変化をT1R2−TMD配列に導入するのに利用することができる、PCR、遺伝子クローニング、cDNAの部位特異的突然変異誘発法、宿主細胞のトランスフェクション、およびインビトロ転写を含む、遺伝子組換え技術の知られた手順を利用して導入することができる。次いで、変異体を、味覚細胞特異的GPCR機能活性についてスクリーニングすることができる。機能的に類似しているアミノ酸を提供する保存的置換表は当該技術分野でよく知られている。例えば、保存的置換を選択する1つの典型的な指針は(オリジナルの残基の後に典型的な置換が続く):ala/glyまたはser、arg/lys、asn/glnまたはhis、asp/glu、cys/ser、gln/asn、gly/asp、gly/alaまたはpro、his/asnまたはgln、ile/leuまたはval、leu/ileまたはval、lys/argまたはglnまたはglu、met/leuまたはtyrまたはile、phe/metまたはleuまたはtyr、ser/thr、thr/ser、trp/tyr、tyr/trpまたはphe、val/ileまたはleuを含む。
【0111】
代替的な典型的な指針は、お互いが保存的置換であるアミノ酸をそれぞれ含有する後続の6群:1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、4)アルギニン(R)、リシン(K)、5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、および6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)を利用する。他の代替的な指針は、全ての荷電アミノ酸を、正であるか負であるかで、相互の保存的置換を認めるものである。加えて、独立的コードされた配列における単一のアミノ酸または小さい割合(例えば26%まで、または20%まで、または10%まで、または5%まで)のアミノ酸を変化させ、追加し、または削除する個別の置換、欠失または付加もまた保存的に改変された変異とみなされる。実質的に相同なヌクレオチドまたはペプチド配列は、以下に示す配列同一性の度合いを有するか、または以下に示すある一定のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。
【0112】
%配列同一性
実質的に相同なヌクレオチド配列は、例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の%配列同一性を有する。実質的に相同なポリペプチド配列は、例えば少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の%配列同一性を有する。
【0113】
配列同一性の計算は、後述のように決定される:BLAST(Basic Local Alignment Serch Tool)は、http://www.ncbi.nlm.nih.govで利用可能なプログラムblastnに使用されているヒューリスティックな検索アルゴリズムである。他のヌクレオチド配列に対するヌクレオチドクエリー配列の%同一性を決定するために、10のEXPECT(データベース配列に対する一致を報告するための統計学的に有意な閾値)、およびDUSTフィルタリングを含む、BLASTバージョン2.2.1.3のデフォルトパラメーターを用いたBlastnが利用される。他のポリペプチド配列に対するポリペプチドクエリー配列の%同一性を決定するために、10のEXPECT、およびDUSTフィルタリングを含む、BLASTバージョン2.2.1.3のデフォルトパラメーターを用いたBlastpが利用される。
【0114】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件
ヌクレオチド配列は、本明細書で提示するヌクレオチド配列、またはその相補体と、以下に詳述するストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で選択的にハイブリダイズできた場合、実質的に相同であると考えられる。
ストリンジェントな条件は、50%のホルムアミド、5×SSC、および1%のSDSからなる溶液中の42℃の温度、および0.2×SSCおよび0.1%のSDS(1×SSC=0.15MのNaCl、0.015Mのクエン酸ナトリウム、pH7.0)からなる溶液中での65℃での洗浄である。バックグラウンドハイブリダイゼーションは、他のヌクレオチド配列が、例えばスクリーニングされるcDNAまたはゲノムDNA中に存在するために起こり得る。バックグラウンドのシグナル強度の少なくとも2倍、任意にバックグラウンドハイブリダイゼーションのシグナル強度の10倍の陽性シグナルが、標的DNAとの特異的相互作用(すなわち選択的ハイブリダイゼーション)であるとみなされる。任意に、標的DNAで観察される特異的相互作用の10倍以下の強度のシグナルはバックグラウンドであると考えられる。相互作用の強度は、例えば、プローブを、例えば32Pによって放射性標識して計測することができる。
【0115】
調節剤を同定するためのキット
キットは、例えば、T1R2−TMDホモマー、もしくはそれと実質的に相同な配列を発現するがT1R3は発現しない組換え細胞を含み、かつ、T1R2−TMDホモマーのアゴニスト、例えば、ペリラルチンまたはメチルカビコールなどを含む、スクリーニングキットまたはハイスループットスクリーニングキットを含む。
【0116】
任意に、細胞はさらに例えばカルシウムシグナリングのためのGタンパク質を含む。好適なGタンパク質は既知であり、上述されており、当業者は必要な場合にそれをどのように細胞に導入すればよいかを承知している。非常に有用なキメラGタンパク質はGアルファ16−ガストデューシン44である。アゴニストは、例えば1nMから10mM、または0.1マイクロM〜1ミリM、例えば0.1マイクロM〜100マイクロMなどの好適な濃度で提供される。
【0117】
キットの任意構成要素は、提供される組換え細胞を培養するための好適な培地、および、細胞をその上で成長させるための固体支持体、例えば細胞培養皿またはマイクロタイタープレートなどを含んでよく、これらの任意構成要素は当業者が容易に入手できる。
キットは以下のように利用されてよい:
(i)組換え細胞を固体支持体上で成長させる。
(ii)約1nMまたはそれ以下から100mMまたはそれ以上までの濃度の試験剤を、所定のプレートまたはウェルの培養培地に好適な濃度のアゴニストの存在下で加える。
(iii)細胞の機能的応答の変化が、試験剤の存在下および非存在下での応答を比較することで決定され、その結果試験剤が調節剤であり得るかどうかが決定される。
【0118】
例えば、(iii)は上述のアッセイのいずれかに従い、上述の受容体活性を報告する検出方法のいずれかと組合せて行うことができる。これは、同じく上述された、特別に選択したまたは適応させた組換え細胞を必要とすることがある。好適なアッセイは、例えば、T1R2−TMDの活性化および試験剤に応答したその変化を決定するためのカルシウムフラックスアッセイである。
【0119】
同定された調節剤の確認
上述の方法によって同定された調節剤は、フレーバリストのパネルまたは試験者に同定された調節剤をテイスティングさせる単純な官能試験によって簡単に確認し得る。化合物は、例えば、甘味を確認するために水中で、または甘味を増強する調節剤であることを確認するために甘味料と一緒に、調節剤のないネガティブコントロールと比較してテイスティングする。
【0120】
大規模スクリーニングアッセイ
上述の転写レポーターアッセイおよびほとんどの細胞ベースのアッセイは、ライブラリーをT1R2−TMD活性を調節する剤についてスクリーニングするのに適している。アッセイは、アッセイ工程の自動化および、典型的には平行して実行される(例えばロボットアッセイにおけるマイクロタイタープレート上のマイクロタイター形式など)、任意の好都合な給源からの化合物のアッセイへの供給によって、巨大な化学的ライブラリをスクリーニングするように設計され得る。
【0121】
アッセイは、多くの潜在的調節剤を含むコンビナトリアルケミカルまたはペプチドライブラリーの提供を伴う、ハイスループットスクリーニング法で実行されてもよい。かかるライブラリーは、次いで、上述の活性を呈するライブラリー剤(特に化学種またはサブクラス)を同定するために、上述の1またはそれ以上のアッセイでスクリーニングされる。こうして同定された調節剤は直接利用でき、または、誘導体を製造および試験することでさらなる調節剤を同定するためのリードとして利用することができる。合成化合物ライブラリは、Maybridge Chemical Co.(Trecillet, Cornwall, UK)、Comgenex(Princeton, N.J.)、Brandon Associates(Merrimack, N.H.)、およびMicrosource(New Milford, Conn.)を含む多くの企業から商業的に入手可能である。
【0122】
試験剤のライブラリ
コンビナトリアルケミカルライブラリは、試薬などの多くの化学的「ビルディングブロック」の組合せることにより、化学合成または生物学的合成のいずれかによって生成された様々な化学化合物のコレクションである。例えば、ポリペプチドライブラリなどのリニアコンビナトリアルケミカルライブラリは、所定の化合物長(すなわち、ポリペプチド化合物中のアミノ酸の数)について、化学的ビルディングブロック(アミノ酸)のセットをあらゆる可能な方法で組合せることによって形成される。何百万もの化学的化合物が、かかる化学的ビルディングブロックの組合せ混合を通して合成可能である。レアケミカルライブラリはAldrich(Milwaukee, Wis.)から入手可能である。
【0123】
細菌、真菌、植物および動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリは、例えばPan Laboratories(Bothell, Wash.)またはMycoSearch(NC)から商業的に入手可能であり、あるいは、当該技術分野で知られた方法で容易に生成可能である。さらに、天然および合成的に産生されたライブラリおよび化合物は、慣用の化学的、物理的および生化学的手法で容易に改変される。他のライブラリとしては、タンパク質/発現ライブラリ、例えば食物、植物、動物、細菌を含む天然給源からのcDNAライブラリ、1または2以上のポリペプチドをランダムにまたは体系的に変異させた変異体を発現するライブラリ、および1つの細胞または組織のmRNA内容を発現させるのに利用されるウィルスベクターでのゲノムライブラリを含む。
【0124】
ハイスループットアッセイでは、数千の異なる調節剤またはリガンドを1日でスクリーニングすることが可能である。特に、マイクロタイタープレートの各ウェルは、選択された潜在的調節剤に対する別個のアッセイの実施に利用でき、または、濃度またはインキュベーション時間の効果を観察すべき場合、各5〜10ウェルで1つの増強物を試験可能である。したがって、1つの標準的なマイクロタイタープレートは約100の調節剤をアッセイ可能である。1536ウェルプレートを利用した場合、1つのプレートは、約100から約1500の異なる化合物を、簡単にアッセイ可能である。1日にいくつかの異なるプレートをアッセイ可能なので、約6,000〜20,000の異なる化合物のためのアッセイスクリーニングが可能である。
【0125】
本アッセイ方法でT1R2−TMDの調節効果を試験し得る試験剤のタイプ
試験剤は、小化学化合物、化学ポリマー、生物ポリマー、ペプチド、タンパク質、糖、炭水化物、核酸および脂質を含む任意の剤であってもよい。剤は、合成化合物、化合物の混合物、天然産物または天然サンプル、例えば植物抽出物、培養上清、または組織サンプルなどであり得る。
【0126】
甘味料、または甘味を改変する化合物の例として、テアサポニンE1、アセスルファムK、アリテーム、アスパルテーム、CH401、ズルチン、エリスリトール、グアニジン甘味料、イソマルト、イソマルトシルフルクトシド(isomaltosylfructoside)、イソラフィノース、NC174、ネオテーム、フェニルアセチルグリシル−L−リシン、サッカリン、SC45647、サイクラミン酸ナトリウム、ソルビトール、スクラロース、スクロノン酸(sucrononic acid)、スオサン(Suosan)、スーパーアスパルテーム、メチルアルファ−L−アラビノシド、メチルベータ−L−アラビノシド、メチルベータ−D−グルコシド、メチルa−D−マンノシド、メチルベータ−L−キシロピラノシド、メチルアルファ−D−キシロシド、メチルアルファ−D−グルコシド2,3−ジ−スレオニン、メチルアルファ−D−グルコシド2,3−ジ−イソロイシン、プロトカテク酸、シナリン、グリシフィリン、
【0127】
レバウジオシドC、アブルソシドA(Abrusoside A)、アブルソシドB、アブルソシドC、アブルソシドD、アブルソシドE、アピオグリチルリチン、アラボグリチルリチン、バイユノシド、ブラゼイン、ブリオズルコシド、カルノシフルオシドV(Carnosifloside V)、カルノシフルオシドVI、D.クミンシー、シクロカリオシドA、シクロカリオシドI、ズルコシドA、フルオレン−4−アルファ,6−ジカルボキシル酸、4−ベータ,10−アルファ−ジメチル−1,2,3,4,5,10−ヘキサヒドロ−ガウジカウジオシドA(4-beta, 10-alpha-dimethyl-1,2,3,4,5,10-hexahydor-Gaudichaudioside A)、グリチルリチン酸、ヘルナンズルチン、ヘルナンズルチン、4ベータ−ヒドロキシ−ヘスペリチン−7−グルコシドジヒドロカルコン、ハンキオシドE(Huangqioside E)、ハンキオシドE、
【0128】
3−ヒドロキシフロリジン、ケンフェロール、2,3−ジヒドロ−6−メトキシ3−O−アセテート、マビンリンマルトシル−アルファ−(1,6)−ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、モグロシドIIE、モグロシドIII、モグロシドIIIE、モグロシドIV、モグロシドV、11−オキソモグロシドV、モナチン、モネリン、モノアンモニウムグリチルリチン塩(Mag)、ムクロジオシドIib(Mukurozioside Iib)、ナリンジンジヒドロカルコン、ネオアスチルビン、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン(NHDHC)、ネオモグロシド、オスラジン、ペンタジン、ペリアンドリンI、ペリアンドリンII、ペリアンドリンIII、ペリアンドリンIV、ペリアンドリンV、フロミソシドI(Phlomisoside I)、フロリジン、フィロズルチン、ポリポドシドA、グリチルリチンカリウムマグネシウムカルシウム、プテロカリオシドA(Pterocaryoside A)、プテロカリオシドB、クエルセチン、
【0129】
2,3−ジヒドロ−3−O−アセテート、クエルセチン、2,3−ジヒドロ−6−メトキシ−クエルセチン、2,3−ジヒドロ−6−メトキシ−3−O−アセテート、レバウジオシドA、レバウジオシドB、ルブソシド、スカンデノシドR6(Scandenoside R6)シアメノシドI、グリチルリチン酸ナトリウム、ステビオールビオシド、ステビオシド、ステビオシド、アルファ−グリコシルスアビオシドA、スアビオシドB、スアビオシドG、スアビオシドH、スアビオシドI、スアビオシドJ、タウマチン、グリチルリチン酸トリアンモニウム(TAG)、トリロバチンセリゲアインA(Trilobatin Selligueain A)、ヘマトキシリン、マルチトール、マンニトール、メチルアルファ−D−グルコシド2,3−ジ−アスパラギン酸、安息香酸、2−(4−ジメチルアミノベンゾイル)−安息香酸、2−ヒドロキシ−4−アミノメチル安息香酸、2−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾイル)−メチルベータ−D−フルクトシド、
【0130】
メチルアルファ−D−ガラクトシド、メチルベータ−D−ガラクトシド、クルクリン、ストロジン1、ストロジン2、ストロジン4、ミラクリン、フェニル酢酸、3,4−ジメトキシ−アミノ安息香酸、3−アニス酸、ベンジルアルコール、3−アミノ−4−n−プロポキシル3,4−カフェイン酸、ケイ皮酸、ジヒドロキシケイ皮酸、2,4−フェルラ酸、加水分解グアーガム、ヒドロキシアミノ安息香酸、2,4−ニゲロオリゴサッカリン酸塩、サトウキビバガス抽出物、ジヒドロ安息香酸、2,3−ジヒドロ安息香酸、2,4−クマル酸、p−ジヒドロ安息香酸、3,5−ヒドロキシ安息香酸、3−グルマリン、ギムネマサポニンIII、ギムネマサポニンIV、ギムネマサポニンV、ギムネマサポニンIII、ギムネム酸I、ギムネム酸II、ギムネム酸III、ギムネム酸IV、ホダルシン、ジュジュバサポニンII、ジュジュバサポニンIII、プロピオン酸、(−)−2−(4−メトキシフェノキシ)ジジフィン、
【0131】
エチルマルトール、マルトール、ブタン酸、2−オキソ−3−メチルアラニン、N−(1−メチル−4−オキソ−2−イミダゾリン−2−イル)クレアチニン、アブルソシドE、モノ−メチルエステル、ラクチトール、ペリアンドリン酸I、モノグルクロニド、ペリアンドリン酸II、モノグリクロニド、キシリトール、タガトース、d−ベンゾイルオキシ酢酸、4−メトキシホズロシドI(4-Methoxy Hoduloside I)、4−ニトロフェニルa−D−ガラクトシド、4−ニトロフェニルアルファ−D−グルコシド、4−ニトロフェニルベータ−D−グルコシド、4−ニトロフェニルアルファ−D−マンノピラノシド、尿素、(N−(4−シアノフェニル)−N’−((ソディオスルホ)メチル)クロランフェニコール、クロロゲン酸、メチルアルファ−D−グルコース、メチルアルファ−D−グルコシド2,3−ジ−アラニン、メチルアルファ−D−グルコシド2,3−ジ−グリシン、
【0132】
メチルアルファ−D−グルコシド2,3−ジ−プロリン、メチルアルファ−D−グルコシド2,3−ジ−バリン、アニリン、2−ブトキシ−5−ニトロ−アニリン、2−エトキシ−5−ニトロ−アニリン、2−メトキシ−5−ニトロ−アニリン、3−ニトロ−(+)−バイユノール−ベータ−D−グルコシド−アルファ−D−グルコシド、アニリン、1,3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジルアニリン、2−プロポキシ−5−ニトロ−(P4000)ベンゾ−1,4−ジオキサン2−(3−ヒドロキシー4−メトキシフェニル)−ベンゾ−1,3−ジオキサン−4−オン2−(3−ヒドロキシ4−メトキシフェニル)安息香酸、2−ベンゾイル−4−メトキシ−安息香酸、2−(4−メトキシベンゾイル)−ベンゾ−1,3(4H)−キサチアン、2−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−ベンゾ−1,4−キサチアン3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−ブタン酸、
【0133】
4−[3,5−ジヒドロキシ−4−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1−オキソプロピル]フェノキシ]−2−ヒドロキシ−モノナトリウム塩、ブタン酸、4−[3,5−ジヒドロキシ−4−[3−(3ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1−オキソプロピル]フェノキシ]−3−オキソ−モノナトリウム塩、シクロヘキサジエン−1,41−カルボキシアルデヒド−4−(メトキシメチル)−、(E)オキシムエチルベンゼン、ベータ−(1,3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジル)−ヘスペルチンジヒドロカルコン、3’−カルボキシ−ヘスペルチンジヒドロカルコン、3’−ホルミル−イソクマリン、3,4−ジヒドロ−3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシ)−ペリラルチン、8,9−エポキシ−フェニル3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジルエーテル、リン酸、[3−[3,5−ジヒドロキシ−4−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1−オキソプロピル]フェノキシ]プロピル]モノカリウム塩、
【0134】
ステビオシドアナログ、スルファミン酸、[2−[3,5−ジヒドロキシ−4−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1−オキソプロピル]フェノキシ]エチル]−モノカリウム塩、尿素、およびN−(4−シアノフェニル)−N’−(2−カルボキシエチル)−L−テアニンを挙げることができる。
【0135】
同定された甘味料は、例えば、甘味知覚を誘発することが可能な人工甘味料が含まれてよい。これらは、例えばカロリーを減少させるためまたは歯にとってより健康な消費材を提供するために、糖化合物の代わりに利用可能であるという点で特に興味がある。消費材は食料製品、飲料、口腔ケア製品、およびかかる製品を混合した組成物、特に風味組成物を含む。風味組成物は、加工食品または飲料の産生を通して添加され得る、またはそれら自身が、例えばソースなどの調味料など、実際に消費材となり得る。甘味料は、菓子類およびデザートを含む他の甘味消費材において特に有用であるが、風味のあるおよび甘酸っぱい消費材においても同じである。消費材の例は、菓子製品、ケーキ、シリアル製品、パン屋製品、パン製品、ガム、チューインガム、ソース(調味料)、スープ、加工食品、調理果物および野菜製品、肉および肉製品、卵製品、乳および乳製品、チーズ製品、バターおよび代替バター製品、代替乳製品、大豆製品、食用油および油脂製品、薬剤、飲料、アルコール飲料、ビール、ソフトドリンク、食品抽出物、植物抽出物、肉抽出物、調味料、甘味料、栄養補助食品、薬剤および非薬剤ガム、錠剤、トローチ、ドロップ、乳剤、エリキシル剤、シロップおよび飲料を作るための他の調製物、インスタント飲料および発泡錠を含む。
【0136】
T1R2−TMD配列
配列は後述の配列表に示されている。配列番号1はT1R2−TMD受容体をコードするヌクレオチド/核酸配列に対応し、配列番号2はT1R2−TMD受容体タンパク質のポリペプチド/アミノ酸配列に対応する。
トランスフェクトされた構築物において、新規T1R2−TMDタンパク質をコードする核酸(配列番号1)がSSTタグ(配列番号3)に後続し、その後にHSVタグ核酸(配列番号5)が続いている。
したがって、得られるタンパク質は、以下のアミノ酸を指示された順序で含む:配列番号4、配列番号2および配列番号6のアミノ酸。
【0137】
配列番号1+2:T1R2−TMD核酸およびタンパク質
配列番号3+4:SSTタグ核酸およびタンパク質
配列番号5+6:HSVタグ核酸およびタンパク質
配列番号7+8:T1R2−TMDベクター構築物のフォワードおよびリバースプライマー
配列番号9+10:T1R2全長(核酸およびタンパク質)
配列番号11+12:T1R3全長(核酸およびタンパク質)
【0138】
これより以下に、上述の方法を例証する一連の例が続く。以下の例は単なる例示であって、いかようにも本方法またはキットを限定すると解すべきではない。
【0139】

全ての例においてヒト受容体を利用する。
例1
Fluo−4カルシウムアッセイ
Fluo−4は、細胞内カルシウムの蛍光指示薬であり、カルシウム濃度の変化、特にリガンド(例えばペリラルチンまたはメチルカビコール)添加後に起こる受容体活性化に応答した増加の決定を可能にする。
Gアルファ16−ガストデューシン44(Gα16gust44)を安定発現し、例3に記載されているようにT1R2−TMDをトランスフェクトしたHEK293細胞を宿主細胞として利用した。
【0140】
黒く、底が透明な96ウェルプレートを全てのアッセイで利用した。アッセイの前日、プレートに、ウェル毎に8500個のトランスフェクト細胞を播種し、用いた細胞に適した成長培地中、37℃で一晩維持した。HEK293については、高グルコース、L−グルタミン、塩酸ピロキシジンを含有し、10%ウシ胎仔血清を添加したダルベッコ改変イーグル培地をHEK293細胞の成長および維持に利用した。
【0141】
アッセイの際に成長培地を廃棄し、細胞を1時間(37℃にて暗所で)、C1緩衝溶液に溶解した1.5μMのFluo−4AM(Molecular ProbesTM, Invitrogen, US)および2.5μMのプロベニシド(Sigma-Aldrich)からなる50μlのカルシウムアッセイ溶液でインキュベートした。C1緩衝溶液は130mMのNaCl、5mMのKCl、10mMのHepes、2mMのCaClおよび10mMのグルコース(pH7.4)を含有する。
【0142】
最初の1時間の負荷期間の後、プレートをウェルあたり100μlのC1緩衝液で5回、自動プレート洗浄機(BioTek)を利用して洗浄し、洗浄の後、Fluo−4−AMの完全な脱エステル化をもたらすために、プレートを室温にて30分間暗所でさらにインキュベートした。緩衝溶液を廃棄し、プレートを100μlのC1洗浄緩衝液で洗浄し、最終的に細胞を180μlのC1洗浄緩衝液中に入れた。
【0143】
アッセイの読み取りのため、プレートをFLIPR(蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR-Tetra, Molecular Devices))中に置き、受容体活性化を、20μlの10×濃縮リガンドストック溶液の添加後に開始させた。
蛍光は、リガンド添加前15秒間およびリガンド添加後105秒間で継続的に監視した(45〜105秒で十分であろう)。
受容体活性化は相対蛍光単位(RFU)で与えられ、次の等式で定義される:
蛍光増加=最大蛍光−基準蛍光
式中、基準蛍光はリガンド添加前の最初の10〜15秒について計算した平均蛍光を表す。
【0144】
ネガティブコントロールとして、モックトランスフェクションした細胞を同濃度のリガンドに曝露し、シグナルに対応しない微量のカルシウム濃度を決定した。活性化された受容体を有する細胞は、ネガティブコントロールを有意に上回るシグナル(RFU)によって同定した。
【0145】
例2
T1R2−TMDベクター構築物の調製
Pfuポリメラーゼ(Invitrogen)を利用したPCRを、下記に列挙した特定のプライマーを利用して、T1R2−TMD構築物を生成するのに用いた。
T1R2−TMDフォワードプライマー
5’−TAT AGA ATT CGC ACC CAC CAT CGC TGT GGC C − 3’
T1R2−TMDリバースプライマー
5’−ATA TGC GGC CGC AGT CCC TCC TCA TGG T − 3’
【0146】
PCR増幅の鋳型は、ヒト茸状乳頭味覚組織から生成されたcDNAライブラリから単離されたヒトT1R2の全長cDNAであった。反応条件は、94℃で5分間の後、94℃で45秒、54℃で15秒および68℃で1分を35サイクル、その後最終伸長サイクルの68℃で10分間であった。
【0147】
得られた核酸断片(配列番号1を参照)をゲル電気泳動によって分離し、精製し、およびpCR−Topo−IIベクター(Invitrogen)にサブクローニングし、PCR増幅によって起こった変異が無いことを保証するために、得られたクローンをDNAシークエンシングによって確認した。シークエンシングの後、T1R2−TMD挿入物をpcDNA4/TO(Invitrogen)に基づく発現カセットにサブクローニングした。クローニングカセットは、導入遺伝子の細胞表面膜標的化を促進するために、ラットソマトスタチンタイプ3受容体の最初の45アミノ酸をN末端に既に含んでいる(Bufe et al., 2002, Nat. Genet. 32(3), 397〜401に記載)。
【0148】
このベクターのC末端は単純ヘルペスウィルス(HSV)糖タンパク質Dエピトープをコードしており、このエピトープに結合する特異抗体を利用した免疫細胞化学研究に利用可能である。得られたベクター構築物は、配列番号4(ラットソマトスタチンの45アミノ酸)が前に位置し、配列番号6(HSVエピトープ)が後続する(アミノ末端からC末端方向に)配列番号2(T1R2−TMD)の連結アミノ酸配列のT1R2−TMDタンパク質の発現を可能にする。
【0149】
例3
細胞へのT1R2−TMDのトランスフェクション、T1R2−TMDおよびG16gust44を安定的に発現する細胞
ヒトT1R2−TMDを安定的に発現するヒト細胞系を、ヒトT1R2−TMD(2で記載したように形成)を含む線状化pcDNA4/TOベクター(Invitrogen)をWO2004/055048に記載されているように形成したG16gust44発現細胞系へトランスフェクトすることで作出した。この細胞系は味覚受容体への増強された結合を示し、テトラサイクリンによって誘導され、非特異的Gタンパク質G16gust44を安定的に発現し、HEK−293−T−Rex細胞系(Invitrogen, USAから商業的に入手可能)に基づいている。
【0150】
トランスフェクションは以下のように行われた。
0日目に、HEK293T/G16gust44細胞を6ウェルの黒い、透明底のプレートに、ウェルあたり900,000個の密度で播種し、選択的成長培地で一晩成長させた。1日目に、培地を抗生物質不含かつ血清不含の成長培地に変更し、細胞を4μgの線状化T1R2 TMDベクター構築物DNAおよび0.3μlのリポフェクタミン2000(Invitrogen)を利用してトランスフェクトした。リポフェクタミン/DNA混合物を細胞上で3〜4時間インキュベートし、その後抗生物質不含の血清含有成長培地に交換した。24時間後、細胞を10%FBS、0.005mg/mlのブラストシジン、0.36mg/mlのG418、および0.1mg/mlのゼオシン(Invitrogen)を添加したDMEMを含有する選択培地に37℃で再播種した。2〜4週間後ゼオシン耐性コロニーを選択し、拡大し、50μMのペリラルチンへの応答について例1に記載したようにカルシウムイメージングで試験した。
【0151】
耐性コロニーを拡大し、T1R2−TMDを含有していことを、10μg/mlのテトラサイクリンによるT1R2−TMD発現の誘導の後に例1に記載されている方法を利用して、FLIPR-Tetra装置(Molecular Devices)での自動蛍光イメージングを介して決定される50μMのペリラルチンへのその応答によって同定した。
【0152】
全ての潜在的クローンはまた、低レベルであるが機能的に十分なレベルのT1R2−TMD受容体を基底的に発現するあらゆるクローンを同定するために、テトラサイクリン誘導の非存在下での50μMのペリラルチンへの機能的応答も評価した(T−Rex HEK−293(Invitrogen)などのテトラサイクリン調節システムは、システムの固有の漏出性に起因して、導入遺伝子が基底的に低レベルで発現していることが知られている)。
【0153】
前記評価の結果として、これらの細胞系をペリラルチンに曝露した場合、多くの細胞クローンがこの刺激に対して、ネガティブコントロール(非特異的Gタンパク質G16gust44を発現するがT1R2−TMDは発現しない細胞)のシグナルと比較して10倍以上のシグナルの有意な蛍光の増加を伴って応答することが分かった。
【0154】
シグナルは、T1R2−TMDの過剰発現を誘導するためにテトラサイクリンで処理した細胞において顕著に低い。テトラサイクリン誘導T1R2−TMD細胞における応答の欠如は、T1R2−TMDのテトラサイクリン誘導性の過剰発現によって起こった細胞毒性に起因するものと考えられる。
【表1】

【0155】
例4
T1R2/T1R3甘味受容体ヘテロダイマーおよびG16gust44を安定的に発現する細胞のトランスフェクション
T1R3は、テトラサイクリン調節T1R2の存在下において、両タンパク質の構成的過剰発現の細胞毒性効果の可能性を回避するために構成的に過剰発現させた。ヘテロダイマーの1つのサブユニットをテトラサイクリン調節ベクター内に置くことにより、その発現レベルを調節し、その結果、安定クローン株の生存率および機能性を最適化することが可能となる。
【0156】
ヒトT1R2/T1R3甘味ヘテロダイマーを安定的に発現するヒト細胞系は、まずヒトT1R3を含む線状化pIRES−Puroベクター(Clontech)を、WO2004/055048に記載されているように形成したG16gust44発現細胞系にトランスフェクトすることで作出する。この細胞系は、味覚受容体への増強された結合を示し、テトラサイクリンによって誘導され、非特異的Gタンパク質G16gust44を安定的に発現し、HEK−293−T−Rex細胞系(Invitrogen, USAから商業的に入手可能)に基づいている。T1R3を安定的に発現する不均一な細胞集団の作出後、ヒトT1R2 cDNAを含む線状化pcDNA4/TOベクター(Invitrogen)をトランスフェクトした。
【0157】
24時間後、細胞を、10%FBS、0.005mg/mlのブラストシジン、0.36mg/mlのG418、および0.4μg/mlのピューロマイシンを添加したGlutamax DMEM(Invitrogen)を含有する選択培地に、1:150,000までの10×希釈で37℃にて再播種した。2週間後、ピューロマイシン耐性のT1R3発現細胞の不均一な集団を、次いで4μgの線状化T1R2ベクター構築物DNAおよび0.3μlのリポフェクタミン2000(Invitrogen)を利用してトランスフェクトした。リポフェクタミン/DNA混合物を細胞上で3〜4時間インキュベートし、その後抗生物質不含の血清含有成長培地に交換した。24時間後、細胞を10%FBS、0.005mg/mlのブラストシジン、0.36mg/mlのG418、0.4μg/mlのピューロマイシンおよび0.1mg/mlのゼオシンを添加したGlutamax DMEMを含有する選択培地に37℃で再播種した。
【0158】
耐性コロニーを拡大し、T1R2/T1R3甘味ヘテロダイマーを含むことを、例1に記載されている方法を利用して、FLIPR-Tetra装置(Molecular Devices)上の自動蛍光イメージングにより決定される、スクロース、スクラロース、アスパルテームおよびアセスルファムKを含む様々な甘味化合物へのその応答によって同定した。全ての潜在的クローンはまた、10μg/mlのテトラサイクリン(T1R2の過剰発現を誘導するため)の存在下における甘味物質に対する機能的な応答ついて評価し、同様に、低レベルであるがT1R3と合わさって機能的な甘味ヘテロダイマー複合体を成すことができるのに十分なレベルのT1R2を基底的に発現するあらゆるクローンを同定するために、テトラサイクリン誘導の非存在下でも試験した(T−Rex HEK−293(Invitrogen)などのテトラサイクリン調節システムは、システム固有の漏出性に起因して、導入遺伝子が基底的に低レベルで発現していることが知られている)。
【0159】
前記評価の結果として、テトラサイクリン処理されていないこれらの細胞系が甘味物質に曝露した場合、多くの細胞クローンがこの刺激に対して、有意な蛍光の増加(ネガティブコントロールと比較して10倍以上のシグナル)を伴って応答することが分かった。シグナルは、T1R2の過剰発現を誘導するためにテトラサイクリンで処理した細胞において顕著に低い。テトラサイクリン誘導T1R2/T1R3細胞における低応答は、T1R2のテトラサイクリン誘導性の過剰発現によって起こった細胞毒性に起因するものと考えられる。甘味物質に対する最も大きな応答を見せた1つのクローン細胞系を増殖させ、T1R2−TMD安定セルラインとの後続の比較に利用した。
【0160】
シグナルは、T1R2の過剰発現を誘導するためにテトラサイクリンで処理した細胞において低い。テトラサイクリン誘導T1R2/T1R3細胞における低応答は、T1R2のテトラサイクリン誘導過剰発現によって起こった細胞毒性に起因するものであろう。甘味物質に対する最も大きな応答を見せた1つのクローンセルラインを増殖し、後続のT1R2−TMD安定セルラインに対する比較に利用した。
【0161】
例5
9.T1R2−TMDアゴニストとしてのペリラルチンの同定
用いた細胞は、例3に記載されているように形成した、G16gust44を安定的に発現し、T1R2−TMDを安定的にトランスフェクトされたHEK293T細胞であった。
50μMのペリラルチンに対する細胞内カルシウム応答が決定された。
【0162】
細胞を、黒い、透明底のプレート(Costar)に、8500細胞/ウェルの密度で播種し、例1で記載したように受容体活性決定の前に選択的成長培地(例3で記載のもの)中で48時間維持した。
選択した特定のクローンは、リガンド刺激に続く細胞内カルシウムの強い増大を生成するのに十分なレベルのT1R2−TMDを既に基底的に発現しているため、細胞をテトラサイクリンで誘導しなかった。
【0163】
データは例1で記載したように計算され、50μMのペリラルチンによる細胞刺激後の蛍光の基準値以上の正味の増大を示した。データは平均値±6回の反復実験の標準偏差を表している。
ペリラルチン刺激によって、カルシウムシグナリングにおける顕著な増大が、ヒトT1R2−TMDを発現する細胞内で観察されたが、ネガティブコントロール(G16gust44キメラGタンパク質のみを発現する宿主細胞)では観察されなかった。
【表2】

【0164】
例6
10.T1R2−TMDホモマーおよびT1R2/T1R3ヘテロダイマーのペリラルチンに対する用量反応曲線
本方法は、T1R2−TMD活性を定量し、例えば、甘味物質を含む同定された候補調節剤の有効性の予測を可能にする。
Gα16gust44およびT1R2−TMD(例6で記載されているように形成した)を安定的に発現するHEK293T細胞にカルシウム色素Fluo−4を負荷し、そのペリラルチンに対する応答を、例1に記載されているように蛍光カルシウムシグナルを利用して計測する。データは例1に記載されているように計算した(0.1〜200マイクロモーラーの範囲に及ぶ、ペリラルチンの増大する用量による細胞刺激に続く基準値を超える蛍光の正味の増大量)。データは平均値±3回の反復実験の標準偏差を含んでいる。
【0165】
インビボでの妥当性を確認するため、T1R2−TMD発現細胞中でペリラルチンによって誘発されるシグナルの用量反応曲線を、T1R2/T1R3ヘテロダイマーを安定的に発現する細胞中で得られるシグナルと比較した。二つの用量反応曲線は厳密に一致することが見出された(図1参照)。
【0166】
結果は下表に示されており、用量反応曲線は図1に示されている。表中のデータはGraphPad Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Software, Inc.)で、下に示す4パラメータロジスティック非線形回帰方程式を利用して曲線適合した:
Y=基底値+(最高値−基底値)/(1+10^((LogEC50−X)×傾斜)
式中、Xはペリラルチン濃度の対数であり、Yは応答である。
Yは下から始まり、上に向かってS字状の姿をとる。
【0167】
これらのデータから最大応答の50%を誘発するアゴニスト濃度を表し、受容体感受性を示す(低いEC50値はアゴニストに対する大きな感受性を示す)、EC50値がこの回帰分析から計算された。計算されたT1R2−TMDのEC50値は6.2マイクロモーラーであり、T1R2/T1R3ヘテロダイマーのものは3.5マイクロモーラーである。同様の用量依存性および、同じ感受性範囲にある、同様のEC50は、T1R2−TMDが生物学的に関連性のある受容体であることを示している。
【表3】

【表4】

図1 T1R2−TMDホモマー(黒三角)およびT1R2/T1R3ヘテロダイマー(白三角)の用量反応曲線
【0168】
例7
T1R2−TMDを活性化するがT1R2/T1R3ヘテロダイマーは活性化しない化合物の同定
例1に記載のカルシウムフラックスアッセイを利用して、88個の試験剤のパネルがT1R2−TMD受容体依存性応答について評価された。試験剤は最終濃度100マイクロモーラーでデュプリケートで試験した。G16gust44を安定的に発現する細胞およびT1R2−TMD含有細胞(例3に記載されているように形成した)内で試験剤によって誘発されたシグナルは、G16gust44およびT1R2/T1R3ヘテロダイマーを安定的に発現する細胞(例4に記載されているように形成した)内で得られたシグナルと比較し、そしてネガティブコントロールとしてG16gust44を安定的に発現する細胞を利用した。
【0169】
データは例1で記載したように計算し(試験剤による細胞刺激後の蛍光の基準値以上の正味の増大)、T1R2−TMDを強く活性化するがT1R2/T1R3ヘテロダイマーまたはネガティブコントロールは僅かにしか誘発しないまたは活性化しない、同定された剤のカルシウムシグナルの結果を下表に示す。データは、1つの代表実験からの2つの複製の平均に対応し、その代表実験は引き続く試験によって確認した。
【0170】
下表に示されている同定された化合物では、T1R2−TMDを安定的に発現する細胞内における前記化合物による刺激でカルシウムシグナルの顕著な増大が観察された。T1R2/T1R3ヘテロダイマーを発現する細胞ではネガティブコントロールを顕著に上回るシグナルは見られなかった。
結果は、T1R2−TMDがT1R2/T1R3ヘテロダイマーを活性化しない化合物によって活性化されることを示しており、したがって、T1R2−TMDホモマーに基づくアッセイは、T1R3の存在下で行われるT1R2/T1R3ヘテロダイマーに基づくアッセイを利用しては同定できない調節剤を同定できる。
【0171】
メチルカビコール(FEMA#2411、エストラゴール、p−メトキシアリルベンゼン)は、甘味を有することが記載されている既知の香味料であり、その味は次のように記載されている:「甘く、草のような、アニス−ウイキョウ臭(anise-fennel odour)」、「甘く、フェノール性の、アニスのような、辛辣な、香辛料のような、青々とした、ハーブのような、ミントのような」臭いおよび10ppmで「甘い、甘草の、フェノール性の、雑草のような、香辛料のような、セロリのような」味。
【表5】

【0172】
本甘味受容体タンパク質、核酸、方法およびキットは、上記においてある例示的な態様に関して記載されているが、同様の機能を実施するために、他の同様の態様が利用されてよく、または改変および付加が加えられてもよいと理解されるべきである。さらに、全ての開示された実施例は必ずしも互いに排他的ではなく、様々な実施例は必要な特性を提供するために組み合わせてもよい。当業者は、本開示の精神と範囲から離れることなく変更を加えることができる。したがって、本方法およびキットはいかなる単一の態様に限定されるべきではなく、むしろ請求項の記載にしたがった幅および範囲をもって解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリラルチンと結合でき、ペリラルチンにより活性化され得るT1R2−TMD甘味受容体であって、1または2以上の
配列番号2と実質的に相同なポリペプチド、
配列同一性によって決定される、配列番号1に記載のヌクレオチド配列と実質的に相同なヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、
ハイブリダイゼーションによって決定される、配列番号2に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と実質的に相同なヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、
ヌクレオチド配列同一性によって決定される、配列番号2に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に実質的に相同なヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、
を含み、
ここで、実質的に相同なポリペプチドは少なくとも74%の配列同一性を有し、
配列同一性によって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、少なくとも65%の配列同一性を有し、および
ハイブリダイゼーションによって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、50%のホルムアミド、5×SSC、および1%のSDSからなる溶液中での42℃の温度、ならびに0.2×SSCおよび0.1%のSDSからなる溶液中での65℃での洗浄のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、
ただし、T1R2−TMD受容体は1または2以上の
配列番号10または配列番号12と相同なポリペプチド、
配列同一性によって決定される、配列番号9または配列番号11に記載のヌクレオチド配列と相同なヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、
ハイブリダイゼーションによって決定される、配列番号10または配列番号12に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と相同なヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、
ヌクレオチド配列同一性によって決定される、配列番号10または配列番号12に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と相同なヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、
を含まず、
ここで、配列番号10または配列番号12と相同なポリペプチドは少なくとも60%の配列同一性を有し、
配列同一性によって決定される、配列番号9または配列番号11に記載のヌクレオチド配列に相同なヌクレオチド配列は、少なくとも50%の配列同一性を有し、
ハイブリダイゼーションによって決定される、配列番号9または配列番号11に記載のヌクレオチド配列に相同なヌクレオチド配列は、50%のホルムアミド、5×SSC、および1%のSDSからなる溶液中での42℃の温度、ならびに0.2×SSCおよび0.1%のSDSからなる溶液中で42℃での洗浄の中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする、
前記甘味受容体。
【請求項2】
ペリラルチンと結合でき、ペリラルチンにより活性化され得るT1R2−TMD甘味受容体をコードする核酸であって、1または2以上の
配列同一性によって決定される、配列番号1に記載のヌクレオチド配列と実質的に相同な核酸、
ハイブリダイゼーションによって決定される、配列番号1に記載のヌクレオチド配列と実質的に相同な核酸、
請求項1で定義されたT1R2−TMD甘味受容体をコードするヌクレオチド配列と実質的に相同な核酸、
を含み、
ここで、配列同一性によって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、少なくとも65%の配列同一性を有し、
ハイブリダイゼーションによって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、50%のホルムアミド、5×SSC、および1%のSDSからなる溶液中での42℃の温度、ならびに0.2×SSCおよび0.1%のSDSからなる溶液中での65℃での洗浄のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、
ただし、前記核酸は、1または2以上の
配列同一性によって決定される、配列番号9または配列番号11に記載のヌクレオチド配列と相同な核酸、
ハイブリダイゼーションによって決定される、配列番号9または配列番号11に記載のヌクレオチド配列と相同な核酸、
配列番号10または配列番号12に記載のポリペプチドと相同なポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と相同な核酸、
を含まず、
ここで、配列同一性によって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、少なくとも50%の配列同一性を有し、および
ハイブリダイゼーションによって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、50%のホルムアミド、5×SSC、および1%のSDSからなる溶液中での42℃の温度、ならびに0.2×SSCおよび0.1%のSDSからなる溶液中での42℃での洗浄の中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする、
前記核酸。
【請求項3】
配列番号2と実質的に相同なポリペプチド、
配列同一性によって決定される、配列番号1に記載のヌクレオチド配列と実質的に相同なヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、
ハイブリダイゼーションによって決定される、配列番号2に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と実質的に相同なヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、
ヌクレオチド配列同一性によって決定される、配列番号2に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に実質的に相同なヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、
からなる群より選択され、
実質的に相同なポリペプチドは少なくとも74%の配列同一性を有し、
配列同一性によって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、少なくとも65%の配列同一性を有し、および
ハイブリダイゼーションによって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、50%のホルムアミド、5×SSC、および1%のSDSからなる溶液中での42℃の温度、ならびに0.2×SSCおよび0.1%のSDSからなる溶液中での65℃での洗浄のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする、
T1R2−TMD甘味受容体。
【請求項4】
配列同一性によって決定される、配列番号1に記載のヌクレオチド配列と実質的に相同な核酸、
ハイブリダイゼーションによって決定される、配列番号1に記載のヌクレオチド配列と実質的に相同な核酸、
請求項3で定義されたT1R2−TMD甘味受容体をコードするヌクレオチド配列と実質的に相同な核酸、
からなる群より選択される核酸であって
配列同一性によって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、少なくとも65%の配列同一性を有し、
ハイブリダイゼーションによって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、50%のホルムアミド、5×SSC、および1%のSDSからなる溶液中での42℃の温度、ならびに0.2×SSCおよび0.1%のSDSからなる溶液中での65℃での洗浄のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする、
前記核酸。
【請求項5】
請求項4で定義された核酸を含む発現ベクター。
【請求項6】
請求項5で定義された発現ベクターでトランスフェクトされたがT1R3を含有しない宿主細胞。
【請求項7】
請求項3で定義されたT1R2−TMD甘味受容体およびGタンパク質を安定的に発現する、請求項6で定義された宿主細胞。
【請求項8】
請求項3で定義されたT1R2−TMD甘味受容体およびGタンパク質を一過性に発現する、請求項6で定義された宿主細胞。
【請求項9】
請求項1で定義されたT1R2−TMD甘味受容体を産生する方法であって、発現に十分な条件下でT1R2−TMD甘味受容体をコードする発現ベクターをその中に含有する宿主細胞を培養し、それによってT1R2−TMD甘味受容体を形成し、任意に細胞からそれを回収する工程を含む、前記方法。
【請求項10】
請求項3で定義されたT1R2−TMD甘味受容体を産生する方法であって、発現に十分な条件下でT1R2−TMD甘味受容体をコードする発現ベクターをその中に含有する宿主細胞を培養し、それによってT1R2−TMD甘味受容体を形成し、任意に細胞からそれを回収する工程を含む、前記方法。
【請求項11】
味覚細胞において甘味シグナリングを調節する剤を同定する方法であって、
(i)甘味刺激に応答するT1R2−TMD甘味受容体を発現する細胞を、任意に他の剤の存在下で、剤と接触させること、および
(ii)前記細胞中の少なくとも1つの機能的応答によって、少なくとも1つの剤が、前記細胞中の前記T1R2−TMD甘味受容体の機能的活性に影響するかを同定すること、
を含み、
ここで、前記T1R2−TMD甘味受容体が、配列番号2と実質的に相同なポリペプチド、配列同一性によって決定される、配列番号1と実質的に相同なヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、およびハイブリダイゼーションによって決定される、配列番号1と実質的に相同なヌクレオチドによってコードされるポリペプチドからなる群より選択され、
実質的に相同なポリペプチドは少なくとも74%の配列同一性を有し、
配列同一性によって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、少なくとも65%の配列同一性を有し、
ハイブリダイゼーションによって決定される実質的に相同なヌクレオチドは、50%のホルムアミド、5×SSC、および1%のSDSからなる溶液中での42℃の温度、ならびに0.2×SSCおよび0.1%のSDSからなる溶液中での65℃での洗浄のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、
T1R2甘味受容体発現細胞はT1R3受容体を発現しない、前記方法。
【請求項12】
細胞が、Gタンパク質もまた発現する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Gタンパク質が、Gaq−ガストデューシンに基づくキメラGタンパク質である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
Gタンパク質が、キメラGタンパク質であるGアルファ16−ガストデューシン44である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
(ii)が、細胞内メッセンジャーにおける変化または細胞内メッセンジャーに起因する変化の計測によって行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
機能的応答が、IPおよびカルシウム2+から選択される細胞内メッセンジャーの変化を計測することによって決定される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
細胞が、細菌細胞、真核細胞、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳類細胞、両生類細胞、およびぜん虫細胞からなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
細胞が、哺乳類細胞である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
細胞が、CHO、COS、HeLaおよびHEK−293からなる群より選択される哺乳類細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
(i)が、T1R2甘味受容体を甘味物質の存在下で試験剤と接触させることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
甘味物質が、ペリラルチンおよびメチルカビコールからなる群より選択さる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
(i)T1R2−TMD甘味受容体、または実質的に類似するそのホモログを発現するが、T1R3受容体は発現しない組換え細胞、および
(ii)T1R2−TMD甘味受容体のアゴニスト、
を、試験剤をT1R2−TMDの調節剤として同定するために組み合わせて利用するために含むキット。
【請求項23】
請求項22に記載のキットを使用する方法であって、
(i)固体支持体上で組換え細胞を成長させること、
(ii)定義されたプレートまたはウェルの培養培地へ、アゴニストの存在下、適切な濃度で試験剤を添加すること、および
(iii)試験剤の存在下および非存在下での応答を比較することにより、細胞の機能的応答の変化を決定し、それにより、試験剤がT1R2甘味受容体またはその実質的に類似するホモログの調節物質であることを同定すること
を含む、前記方法。
【請求項24】
約1nM〜100mMまたはそれ以上の量の試験剤を、適切な濃度のアゴニストの存在下で、定義されたプレートまたはウェルの培養培地に添加することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
T1R2−TMDを調節する剤の同定方法であって、
(i)T1R2−TMDへのリガンドの結合に応答して変化するパラメータ計測すること、
(ii)任意にリガンドの存在下で、ネガティブコントロールとの比較で試験剤に応答したパラメータの変化を決定し、それにより調節剤またはリガンドを同定すること、
を含む、前記方法。
【請求項26】
リガンドが、ペリラルチンおよびメチルカビコールからなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
(i)が、蛍光分光法、NMR分光法、1または2以上の吸収、屈折率の計測、流体力学法、クロマトグラフィ、溶解度計測、生物化学的方法からなる群より選択される方法で行われ、これらの方法は、溶液、二重膜、固相への連結、単脂質膜中、膜上への結合、および小胞内からなる群より選択される適切な環境においてT1R2−TMDポリペプチドの特性を計測する、請求項25または26に記載の方法。

【公表番号】特表2009−534017(P2009−534017A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505697(P2009−505697)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際出願番号】PCT/CH2007/000186
【国際公開番号】WO2007/121600
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】