説明

核酸の検出方法

【課題】マイクロRNA等の低分子核酸を高感度且つ簡便に検出することができる、核酸の検出方法及び検出用キットを提供する。
【解決手段】第1の核酸プローブ、第2の核酸プローブ、及び互いにハイブリダイズ可能な相補的塩基配列領域を有し自己集合反応によるプローブポリマーの形成が可能な複数種のシグナル増幅用プローブを含む、標的核酸の検出に用いられる検出用キットであって、前記第1の核酸プローブは、標的核酸に相補的な第1の塩基配列及び前記第2の核酸プローブに相補的な第2の塩基配列を有し且つ該第1の塩基配列と該第2の塩基配列が隣接してなり、前記第2の核酸プローブは、前記複数種のシグナル増幅用プローブ中の1つのシグナル増幅用プローブの一部又は全てと同じ塩基配列を有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロRNA等の低分子核酸を高感度且つ簡便に検出することができる、核酸の検出方法及び検出用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロRNA(microRNA、miRNA)はヒトを含む様々な真核生物で転写されている低分子RNAの一種である。ゲノム上の非遺伝子領域やイントロン部分から一次転写産物(pri-miRNA)として転写され、プロセッシングにより、ヘアピン構造のマイクロRNA前駆体(pre-miRNA)を生成した後、22塩基程度の成熟型のマイクロRNA(mature-miRNA)となる(非特許文献1)。このマイクロRNAは、転写されたmRNAからたんぱく質への翻訳過程における調節因子として働いていることが明らかにされた(非特許文献2)。現在、ヒトゲノム上には800種以上のマイクロRNAが存在すると予想されているが(非特許文献3)、その調節機能の対象となるmRNAが同定されていないものも多い。
【0003】
しかしこれまでの研究から、多くのマイクロRNAが多細胞生物の発生や分化、細胞増殖などに関与している遺伝子の発現調節を行っていることが明らかになっている(非特許文献4)。また、細胞のがん化やがん抑制機構において機能していると考えられるマイクロRNAも報告され、それらはがん細胞内での発現量が正常細胞と比較して増加もしくは減少しているものも多い(非特許文献5)。そこで、将来的にはマイクロRNAの発現量を調べることで、その細胞や組織のがん化についてのプロファイリングを行うことも可能になると考えられ、今後は細胞や組織でのマイクロRNAの同定、定量を行うことが癌の診断にとって重要な項目のひとつとなると予期される。
【0004】
これまでにマイクロRNA検出方法として、ノーザン・ブロット法(非特許文献6)、プライマー伸長法(非特許文献7及び8)、インベーダー法(非特許文献9)、リボザイムのシグナル増幅法(非特許文献10)、mirMASAビーズベースの技術(非特許文献11)、ビーズベースのフロー・サイトメトリー(非特許文献12)、リアルタイムRT−PCR(非特許文献13及び14)、マイクロアレイ(非特許文献15)等が報告されており、金粒子を用いたラベル方法(非特許文献16)が試みられている。また研究用試薬として、RNアーゼプロテクションアッセイを用いたキットも発売されている(非特許文献17)。
【0005】
しかしながら、上記の方法は、感度が充分でない(ノーザン・ブロット法)、標的となるマイクロRNA前駆体をPCRによって増幅させる必要がある(リアルタイムRT−PCR等)、検出までに時間がかかり操作が煩雑である(ビーズベースのフロー・サイトメトリー)、多種の標的核酸を同時に解析するのが難しい(プライマー伸長法)等の問題点がある。
【0006】
一方、特許文献1〜4は、酵素を使用しない新規な等温でのシグナル増幅方法を開示している。この方法は、互いに相補的塩基配列領域を保持させた複数種のオリゴヌクレオチド・プローブを自己集合反応させてプローブ同士の集合体(プローブポリマー)を形成させる方法であり、該ポリマーを定量することにより、試料中の標的核酸の検出に応用するものである。この方法は、例えば、使用するプローブの相補的塩基配列領域の1箇所を試料中の標的核酸と相補的塩基配列とすることにより、該プローブと標的核酸とを結合させてからプローブのポリマーを形成させることにより標的核酸を有効に検出する方法であって、パルサー(PALSAR)法と呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3267576号公報
【特許文献2】特許第3310662号公報
【特許文献3】国際公開第02/31192号パンフレット
【特許文献4】特開2002−355081号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Kim VN, Nam JW. Genomics of microRNA. Trends Genet. 2006 Mar; 22(3):165-73.
【非特許文献2】Sontheimer, E., J. Assembly and function of RNA silencing complex. Nature Reviews Molecular Cell Biology. 2005 Feb; 6 127-138
【非特許文献3】Bentwich I, Avniel A, Karov Y, Aharonov R, Gilad S, Barad O, Barzilai A, Einat P, Einav U, Meiri E, Sharon E, Spector Y, Bentwich Z. Identification of hundreds of conserved and nonconserved human microRNAs. Nat Genet. 2005 Jul; 37(7):766-70
【非特許文献4】Alvarez-Garcia I, Miska EA. MicroRNA functions in animal development and human disease. Development. 2005 Nov; 132(21):4653-62.
【非特許文献5】Esquela-Kerscher A, Slack FJ. Oncomirs - microRNAs with a role in cancer. Nat Rev Cancer. 2006 Apr; 6(4):259-269
【非特許文献6】Lagos-Quintana, M., Rauhut, R., Meyer, J., Borkhardt, A., and Tuschl, T. New microRNAs from mouse and human. RNA. 2003 Feb; 9(2):175-179.
【非特許文献7】Zeng, Y. and Cullen, B.R. Sequence requirements for micro RNA processing and function in human cells. RNA. 2003 Jan; 9(1):112-123.
【非特許文献8】Raymond CK, Roberts BS, Garrett-Engele P, Lim LP, Johnson JM. Simple, quantitative primer-extension PCR assay for direct monitoring of microRNAs and short-interfering RNAs. RNA. 2005 Nov; 11:1737-1744
【非特許文献9】Allawi, H.T., Dahlberg, J.E., Olson, S., Lund, E., Olson, M., Ma, W.P., Takova, T., Neri, B.P., and Lyamichev, V.I. Quantitation of microRNAs using a modified Invader assay. RNA. 2004 Jul; 10(7):1153-1161.
【非特許文献10】Hartig, J.S., Grune, I., Najafi-Shoushtari, S.H., and Famulok, M. Sequence-specific detection of MicroRNAs by signal-amplifying ribozymes. J. Am. Chem. Soc. 2004 Jan 28; 126(3): 722-723.
【非特許文献11】Barad O, Meiri E, Avniel A, Aharonov R, Barzilai A, Bentwich I, Einav U, Gilad S, Hurban P, Karov Y, Lobenhofer EK, Sharon E, Shiboleth YM, Shtutman M, Bentwich Z, Einat P. MicroRNA expression detected by oligonucleotide microarrays: system establishment and expression profiling in human tissues. Genome Res. 2004 Dec; 14(12):2486-94.
【非特許文献12】Lu J, Getz G, Miska EA, Alvarez-Saavedra E, Lamb J, Peck D, Sweet-Cordero A, Ebert BL, Mak RH, Ferrando AA, Downing JR, Jacks T, Horvitz HR, Golub TR. MicroRNA expression profiles classify human cancers. Nature. 2005 Jun 9; 435(7043):834-8
【非特許文献13】Chen C, Ridzon DA, Broomer AJ, Zhou Z, Lee DH, Nguyen JT, Barbisin M, Xu NL, Mahuvakar VR, Andersen MR, Lao KQ, Livak KJ, Guegler KJ. Real-time quantification of microRNAs by stem-loop RT-PCR. Nucleic Acids Res. 2005 Nov 27; 33(20):e179.
【非特許文献14】Tang F, Hajkova P, Barton SC, Lao K, Surani MA. MicroRNA expression profiling of single whole embryonic stem cells. Nucleic Acids Res. 2006 Jan 24; 34(2):e9.
【非特許文献15】Liu CG, Calin GA, Meloon B, Gamliel N, Sevignani C, Ferracin M, Dumitru CD, Shimizu M, Zupo S, Dono M, Alder H, Bullrich F, Negrini M, Croce CM. An oligonucleotide microchip for genome-wide microRNA profiling in human and mouse tissues. Proc Natl Acad Sci U S A. 2004 Jan 29; 101(26):9740-4.
【非特許文献16】Liang RQ, Li W, Li Y, Tan CY, Li JX, Jin YX, Ruan KC. An oligonucleotide microarray for microRNA expression analysis based on labeling RNA with quantum dot and nanogold probe. Nucleic Acids Res. 2005 Jan 31; 33(2):e17.
【非特許文献17】mirVana miRNA Detection kit (Ambion Inc.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、マイクロRNA等の低分子核酸を高感度且つ簡便に検出することができる、核酸の検出方法及び検出用キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を行った結果、驚くべきことに、パルサー法において用いられるシグナル増幅用プローブと、標的核酸に相補的な配列を有する第1の核酸プローブと、該第1の核酸プローブに相補的な配列を有し標的核酸と隣接する状態で第1の核酸プローブと結合可能であり且つシグナル増幅用プローブの一つと結合可能な第2の核酸プローブを用いて試料中の標的核酸を検出することにより、試料中に標的核酸が存在する場合は、シグナル増幅用プローブの自己集合反応により形成されたプローブポリマーが、標的核酸と第1の核酸プローブと第2の核酸プローブとを含む複合体に結合した状態で検出されるが、試料中に標的核酸が存在しない場合は、第2の核酸プローブが第1の核酸プローブから解離し、複合体に結合したプローブポリマーは検出されないことを見出した。
【0011】
即ち、本発明の標的核酸の検出方法は、(a)標的核酸、該標的核酸に相補的な第1の塩基配列と第2の塩基配列とを有する第1の核酸プローブ、及び該第1の核酸プローブの第2の塩基配列に相補的な塩基配列を有する第2の核酸プローブを反応させ、該標的核酸、該第1の核酸プローブ及び該第2の核酸プローブを含む複合体を形成させる工程;(b)前記複合体に対し、互いにハイブリダイズ可能な相補的塩基配列領域を有し自己集合反応によるプローブポリマーの形成が可能な複数種のシグナル増幅用プローブを添加し、前記複合体と結合したプローブポリマーを形成させる工程;及び(c)前記プローブポリマーを検出する工程;を含み、前記第1の核酸プローブの前記第1の塩基配列と前記第2の塩基配列は隣接してなり、前記第2の核酸プローブは、前記複数種のシグナル増幅用プローブ中の1つのシグナル増幅用プローブの一部又は全てと同じ塩基配列を有することを特徴とする。
【0012】
前記第1の核酸プローブが、担体に固定されているか担体に固定可能な部分が導入されていることが好ましい。
【0013】
前記複数種のシグナル増幅用プローブの少なくとも1つが標識物質で標識されてなることが好ましい。
【0014】
前記複数種のシグナル増幅用プローブが第1のシグナル増幅用プローブと第2のシグナル増幅用プローブとからなり、該第1のシグナル増幅用プローブが3箇所以上の核酸領域を含み、且つ5’端側から順に少なくとも核酸領域X、核酸領域Y及び核酸領域Zを含む核酸プローブであり、該第2のシグナル増幅用プローブが3箇所以上の核酸領域を含み、且つ5’端側から順に少なくとも前記核酸領域Xに相補的な核酸領域X’、前記核酸領域Yに相補的な核酸領域Y’及び前記核酸領域Zに相補的な核酸領域Z’を含む核酸プローブであることが好適である。
【0015】
本発明の標的核酸の検出方法により、標的核酸としてマイクロRNA等の低分子核酸の検出も可能である。
【0016】
本発明の検出用キットは、第1の核酸プローブ、第2の核酸プローブ、及び互いにハイブリダイズ可能な相補的塩基配列領域を有し自己集合反応によるプローブポリマーの形成が可能な複数種のシグナル増幅用プローブを含む、標的核酸の検出に用いられる検出用キットであって、前記第1の核酸プローブは、標的核酸に相補的な第1の塩基配列及び前記第2の核酸プローブに相補的な第2の塩基配列を有し且つ該第1の塩基配列と該第2の塩基配列が隣接してなり、前記第2の核酸プローブは、前記複数種のシグナル増幅用プローブ中の1つのシグナル増幅用プローブの一部又は全てと同じ塩基配列を有することを特徴とする。
【0017】
前記第1の核酸プローブが、担体に固定されているか担体に固定可能な部分が導入されていることが好ましい。
【0018】
前記複数種のシグナル増幅用プローブの少なくとも1つが標識物質で標識されてなることが好ましい。
【0019】
前記複数種のシグナル増幅用プローブが第1のシグナル増幅用プローブと第2のシグナル増幅用プローブとからなり、該第1のシグナル増幅用プローブが3箇所以上の核酸領域を含み、且つ5’端側から順に少なくとも核酸領域X、核酸領域Y及び核酸領域Zを含む核酸プローブであり、該第2のシグナル増幅用プローブが3箇所以上の核酸領域を含み、且つ5’端側から順に少なくとも前記核酸領域Xに相補的な核酸領域X’、前記核酸領域Yに相補的な核酸領域Y’及び前記核酸領域Zに相補的な核酸領域Z’を含む核酸プローブであることが好適である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、標的核酸を高感度且つ簡便に検出することができる。本発明によれば、低分子核酸や少量の核酸分子を直接標的核酸として使用することが可能であり、逆転写反応やPCRを用いた増幅が不要であり、操作が簡便であり、比較的短時間で測定できるという甚大な効果を奏する。さらに、本発明によれば、複数の標的核酸の同時検出も可能である。本発明は、マイクロRNAや少量のRNA分子の検出に特に著しい効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】標的核酸及び本発明に用いられる核酸プローブ及びシグナル増幅用プローブの第1の例を示す概略説明図であり、(a)は標的核酸、(b)は第1の核酸プローブ、(c)は第2の核酸プローブ、及び(d)はシグナル増幅用プローブをそれぞれ示す。
【図2】本発明の標的核酸の検出方法の一例を示す概略説明図であり、試料中に標的核酸が存在する場合の工程(a)の概略説明図である。
【図3】本発明の標的核酸の検出方法の一例を示す概略説明図であり、試料中に標的核酸が存在する場合の工程(b)の概略説明図である。
【図4】本発明の標的核酸の検出方法の一例を示す概略説明図であり、試料中に標的核酸が存在しない場合の工程(b)の概略説明図である。
【図5】本発明に用いられる核酸プローブ及びシグナル増幅用プローブの第2の例を示す概略説明図であり、(a)は第1の核酸プローブ、(b)は第2の核酸プローブ、及び(c)はシグナル増幅用プローブをそれぞれ示す。
【図6】本発明に用いられる核酸プローブ及びシグナル増幅用プローブの第3の例を示す概略説明図であり、(a)は第1の核酸プローブ、(b)は第2の核酸プローブ、及び(c)はシグナル増幅用プローブをそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明するが、図示例は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0023】
本発明は、第1の核酸プローブ、第2の核酸プローブ、及び複数種のシグナル増幅用プローブを用いて、試料中の標的核酸の存在を検出するものである。
図1は、標的核酸及び本発明に用いられる核酸プローブ及びシグナル増幅用プローブの第1の例を示す概略説明図である。図2〜図4は、本発明の標的核酸の検出方法の一例を示す概略説明図であり、図1記載の核酸プローブ及びシグナル増幅用プローブを用いた例を示した。図1において、(a)は標的核酸10、(b)は第1の核酸プローブ12a、(c)は第2の核酸プローブ14a、並びに(d)はシグナル増幅用プローブ16をそれぞれ示す。
【0024】
本発明方法に用いられる複数種のシグナル増幅用プローブは、互いにハイブリダイズ可能な相補的塩基配列領域を有し、自ら自己集合して集合体(プローブポリマー)を形成することができるものであり、例えば、特許文献1〜4記載のオリゴヌクレオチド・プローブが用いられる。
【0025】
前記複数種のシグナル増幅用プローブとしては、例えば、図1(d)に示した如く、5’端部から順に核酸領域X、核酸領域Y及び核酸領域Zが設けられ、下記化学式(1)の構造を有する、3箇所の核酸領域からなるプローブ(符号16a,HCP−1と称する)と、5’端部から順に核酸領域X’、核酸領域Y’及び核酸領域Z’が設けられ、下記化学式(2)の構造を有する、3箇所の核酸領域からなるプローブ(符号16b,HCP−2と称する)と、からなる一対のプローブ(HCPと称する)が好適である。
【化1】

【化2】

【0026】
前記化学式(1)及び(2)において、核酸領域Xと核酸領域X’、核酸領域Yと核酸領域Y’、核酸領域Zと核酸領域Z’はそれぞれハイブリダイズ可能な相補的領域であり、前記第1及び第2プローブをハイブリダイズさせることにより、下記化学式(3)に示されるポリマーを形成することができる。
【化3】

【0027】
また、前記複数種のシグナル増幅用プローブとして、下記化学式(4)及び化学式(5)で示される第1及び第2ダイマープローブを使用することが好適である。各ダイマープローブは化学式(6)及び化学式(7)のヌクレオチドをハイブリダイズすることにより作製される。
【化4】

【化5】



【化6】



【化7】


【0028】
ここで、核酸領域AとA’、BとB’、CとC’、DとD’、EとE’、FとF’はそれぞれハイブリダイズ可能な相補的領域であり、前記第1及び第2ダイマープローブをハイブリダイズさせることにより、前記化学式(3)に示されるポリマーを形成することができる。
【0029】
また、ダイマープローブとして、前記化学式(5)の構造を有するダイマープローブの代わりに下記化学式(8)の構造を有するダイマープローブを用いることもできる。
【化8】

【0030】
また、前記複数種のシグナル増幅用プローブとして、下記化学式(9)に示される第1ダイマープローブと下記化学式(10)に示される2本のオリゴヌクレオチドである架橋プローブを使用することが好ましい。
【化9】


【化10】


【0031】
ここで、核酸領域AとA’、BとB’、CとC’、DとD’、EとE’、FとF’はそれぞれハイブリダイズ可能な相補的領域であり、前記第1ダイマープローブ及び架橋プローブをハイブリダイズさせることにより、前記化学式(12)に示されるポリマーを形成することができる。
【化11】


【0032】
また、架橋プローブとして、前記化学式(10)の構造を有するヌクレオチドの代わりに下記化学式(12)の構造を有する2本のヌクレオチドを用いることもできる。
【化12】


【0033】
上記に加え、例えば相補的塩基配列領域の数が4箇所でも5箇所でもポリマーの形成は可能であり(特許文献1〜4)、またダイマープローブは2種類を使用しているが、相補的塩基配列領域の位置関係を工夫すれば、さらに多種類のダイマープローブを使用することもできる(特許文献3)。このように、使用するプローブは、上記に記載のプローブの他にも相補的塩基配列領域の配置を工夫することによって他の種類のプローブも使用可能であり、自己集合するポリマーを形成するのであれば本発明に含まれる。
【0034】
前記シグナル増幅用プローブの各相補的塩基配列領域の長さは、塩基数にして、少なくとも5塩基であり、好ましくは少なくとも8塩基、さらに好ましくは10塩基〜100塩基、さらに好ましくは12〜30塩基である。また、それぞれのプローブにおける相補的塩基配列領域の長さは同じであることが望ましい。
【0035】
図1〜図4では、複数種のシグナル増幅用プローブ16として、一対のHCP[符号16a:HCP−1(核酸領域XYZ)、符号16b:HCP−2(核酸領域X’Y’Z’)]を用いた場合の例を示した。
【0036】
前記複数種のシグナル増幅用プローブ16は、標識物質で標識されたものを用いることが好ましい。前記標識物質としては、放射性同位元素、ビオチン、ジゴキシゲニン、蛍光物質、発光物質又は色素等が好適な例として挙げられる。
【0037】
図1(a)において、符号10は標的核酸であり、標的配列Tを含む。本発明において、標的核酸の種類は特に限定されず、DNA、RNA(例えばmRNA,tRNA,rRNA,ncRNA、dsRNA、snRNA,snoRNAなど)、その他の核酸が使用可能である。標的核酸及び標的核酸の標的配列の長さも特に限定されず、マイクロRNA等の低分子核酸の検出も可能である。また、同時に多種の核酸分子を検出することも出来る。なお、図1では標的核酸10の全配列を標的配列Tとした例を示したが、本発明はこれに限定されず、標的核酸の一部の配列を標的配列としてもよい。
【0038】
図1(b)に示した如く、第1の核酸プローブ12aは、標的核酸10の標的配列Tに相補的な第1の塩基配列T’と、該第1の塩基配列T’に隣接する位置に任意の塩基配列からなる第2の塩基配列Pと、を含む。
第1の核酸プローブ12aにおいて、第1の塩基配列T’の長さは特に制限はなく、標的核酸の標的配列の長さに応じて設定すればよい。
第1の核酸プローブ12aにおいて、第2の塩基配列Pは、前記第1の塩基配列T’と間隔なく配置される。第2の塩基配列Pの長さは6〜20塩基が好ましい。
【0039】
前記第1の核酸プローブ12aは、担体13に固定されているかもしくは担体13に固定可能な部分が導入されていることが好ましい。
前記担体13としては、例えば、蛍光微小粒子、磁気粒子、マイクロプレート、マイクロアレイ、スライドガラス、電気伝導性基板等の基板を用いることが好ましい。なお、図は微小粒子を用いた場合の例を示したが、本発明において担体13は特に限定されないものである。
【0040】
担体13は、図1に示した如く、第1の塩基配列T’側に結合されることが好ましい。なお、図1では、第1の核酸プローブ12aに直接担体13を結合させた例を示したが、他の核酸プローブや有機物等を介して第1の核酸プローブ12aと担体13とを結合せしめてもよい。例えば、第1の核酸プローブ12aが捕捉領域Kをさらに有するように構成し、該捕捉領域Kに相補的な領域K’を有する捕捉用プローブを固定化した担体13を用いてもよい。また、第1の核酸プローブ12aが、第1の塩基配列T’と担体13との結合部分との間に、他の核酸領域や炭素鎖を始めとする有機物等を含んでいてもよく、図5(a)に示した如く、標的核酸及び使用するプローブのいずれとも結合しないスペーサー領域Sを含むことが好適である。
【0041】
なお、図1(b)では、第1の核酸プローブの核酸領域が、第1の塩基配列T及び第2の塩基配列Pからなる場合を示したが、本発明において、第1の核酸プローブは、第1の塩基配列T及び第2の塩基配列Pに加えて、他の核酸領域を含んでいてもよい[例えば、図5(a)及び図6(a)]。但し、他の核酸領域を含む場合は、第1の塩基配列T及び第2の塩基配列Pが隣接されるように他の核酸領域を設けなければならない。
【0042】
図1(c)に示した如く、第2の核酸プローブ14aは、シグナル増幅用プローブ16中の1つのシグナル増幅用プローブ16aの一部又は全てと同じ塩基配列を含む第1の塩基配列(例えば、配列XYZ)と、第1の核酸プローブ12aの第2の塩基配列Pに相補的な第2の塩基配列P’と、を含む。
なお、図1(c)では、第2の核酸プローブの核酸領域が、第1の塩基配列(配列XYZ)及び第2の塩基配列P’からなる場合を示したが、本発明において、第2の核酸プローブは、第1の塩基配列及び第2の塩基配列に加えて、他の核酸領域を含んでいてもよい[例えば、図5(b)]。
【0043】
図1では、第2の核酸プローブ14aの第1の塩基配列が、シグナル増幅用プローブ16aの全てと同じ塩基配列(配列XYZ)を有する例を示したが、本発明において、該第1の塩基配列は第2の核酸プローブ14aとシグナル増幅用プローブ16が特異的に結合できる配列であれば特に限定されず、シグナル増幅用プローブの一部と同じ塩基配列を有する配列(例えば、配列X、配列Y、配列Z、配列XY、配列YZ、配列ZYZ、配列XYXまたはこれら配列の部分配列等)を用いてもよい。
【0044】
図2〜図4は、図1記載の2種の核酸プローブ12a,14a及び2種のシグナル増幅用プローブ16a,16bを用いた本発明の標的核酸の検出方法の一例を示す概略説明図である。図2は、試料中に標的核酸10が存在する場合の工程(a)の概略説明図である。図3は、試料中に標的核酸10が存在する場合の工程(b)の概略説明図である。図4は、試料中に標的核酸10が存在しない場合の工程(b)の概略説明図である。
【0045】
標的核酸10を含む可能性のある試料、前記第1の核酸プローブ12a、前記第2の核酸プローブ14aを反応させる[工程(a)]。試料中に標的核酸が存在する場合は、標的核酸10と第2の核酸プローブ14aが隣接する状態で第1の核酸プローブ12aとハイブリダイズし、標的核酸10と第1の核酸プローブ12aと第2の核酸プローブ14aとを含む複合体18が形成される(図2)。
【0046】
前記工程(a)後、複数種のシグナル増幅用プローブ(16a,16b)を添加し、第2の核酸とシグナル増幅用プローブ16bをハイブリダイズさせると共にシグナル増幅用プローブ16a,16bの自己集合体反応によりプローブポリマー20を形成させる。試料中に標的核酸10が存在する場合は、第2の核酸プローブ14aを介して複合体18と結合したプローブポリマー20が形成され、プローブポリマー20は担体13に捕捉されるが(図3)、標的核酸10が存在しない場合は、第2の核酸プローブ14aは第1の核酸プローブ12aから解離し、プローブポリマー20は担体13に捕捉されない(図4)。
【0047】
よって、プローブポリマー20を検出することにより、標的核酸10の存在を検出することができる[工程(c)]。プローブポリマーの検出方法は特に限定されず、例えば、蛍光、発光、発色等により検出することが好適である。
【0048】
なお、図2〜図4では、予め担体13に固定化させた第1の核酸プローブ12aを用いた例を示したが、第1の核酸プローブ12aを担体13に固定化させる時期は特に制限はなく、複合体形成時又は複合体形成後に第1の核酸プローブ12aと担体13とを直接又は間接的に結合せしめてもよい。
【0049】
本発明において、第1の塩基配列T’が異なる複数の第1の核酸プローブ12aを併用することにより、複数種の標的核酸を同時に検出することが可能である。複数種の標的核酸の同時検出において、複数種のシグナル増幅用プローブ16及び第2の核酸プローブ14aは同一のものが使用可能であり、担体13及び第1の核酸プローブ12aのみを複数種準備すればよく、作業性に優れ、低コストである。
【0050】
図5は、本発明で用いられる核酸プローブ及びシグナル増幅用プローブの第2の例を示す概略説明図であり、(a)は第1の核酸プローブ12b、(b)は第2の核酸プローブ14b、(c)はシグナル増幅用プローブ16をそれぞれ示す。図5は、シグナル増幅用プローブ16として、図1と同様の例を示した。
図5(a)において、第1の核酸プローブ12bは、標的核酸に相補的な第1の塩基配列T’及び第2の塩基配列Pに加えて、標的核酸、第2の核酸プローブ及びシグナル増幅用プローブのいずれとも結合しないスペーサー領域Sをさらに有する。図5(a)に示した如く、第1の核酸プローブは、第1の塩基配列T’又は第2の塩基配列Pと、担体13との結合部分の間に、標的核酸、第2の核酸プローブ及びシグナル増幅用プローブのいずれとも結合しないスペーサー領域Sを含むことが好適である。
【0051】
第1の核酸プローブがスペーサー領域Sを含む場合、該スペーサー領域Sに相補的なアンチスペーサー領域S’を含む核酸プローブをさらに用いることにより、検出感度をさらに向上させることができる。
【0052】
図5(b)において、第2の核酸プローブ14bは、シグナル増幅用プローブの一部と同じ塩基配列を含む第1の塩基配列(配列ZYZ)、及び第1の核酸プローブに相補的な第2の塩基配列P’に加えて、標的核酸、第1の核酸プローブ及びシグナル増幅用プローブのいずれとも結合しないスペーサー領域Sをさらに有する。図5(b)に示した如く、第2の核酸プローブは、第1の塩基配列及び第2の塩基配列の間に、標的核酸、第1の核酸プローブ及びシグナル増幅用プローブのいずれとも結合しないスペーサー領域Sを含むことが好適である。
【0053】
図6は、本発明で用いられる核酸プローブ及びシグナル増幅用プローブの第3の例を示す概略説明図であり、(a)は第1の核酸プローブ12c、(b)は第2の核酸プローブ14c、(c)はシグナル増幅用プローブ16をそれぞれ示す。図6は、シグナル増幅用プローブ16として、図1と同様の例を示した。
図6において、第1の核酸プローブ12cは、標的核酸に相補的な第1の塩基配列T’、第2の塩基配列P、及びスペーサー領域Sを含む核酸プローブであり、第2の塩基配列Pが、シグナル増幅用プローブの一部(配列X)と相補的な配列(配列X’)である。第2の核酸プローブ14cは、シグナル増幅用プローブの一部と同じ塩基配列を含む第1の塩基配列(配列YZ)と、第1の核酸プローブに相補的な第2の塩基配列P’(配列X)とを含む核酸プローブであって、シグナル増幅用プローブ16aと同一である。
図6に示した如く、第1の核酸プローブの任意の塩基配列である第2の塩基配列Pをシグナル増幅用プローブの一部と相補的な配列とすることにより、シグナル増幅用プローブの1つ(16a)を第2の核酸プローブ14cとして用いることができる。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
標的核酸として21塩基のターゲットオリゴDNA−1を用いた。
ターゲットオリゴDNA−1の塩基配列(5'-T1-3')
5'-GCATTGAGGCTCGCTGAGAGT-3'(配列番号1)
【0055】
第1の核酸プローブとして、標的核酸に相補的な塩基配列(21塩基)及び任意の塩基配列(12塩基)からなる核酸プローブ[第1の核酸プローブ−1]を用いた。
第1の核酸プローブ−1の塩基配列(5'-P1-T1'-3')
5'-CCAATAAAAGTG ACTCTCAGCGAGCCTCAATGC-3'(配列番号2)
前記第1の核酸プローブの3’末端を蛍光微小粒子(Luminex bead、Luminex社製)の表面に固定して用いた。第1の核酸プローブの蛍光微小粒子への固定はLuminex社の方法に準じて行った。
【0056】
シグナル増幅用プローブとして、3’末端がCy3で標識されている2種類の核酸プローブ[HCP−1及びHCP−2]を用いた。
HCP−1の塩基配列(5'-X-Y-Z-3')
5'-CATCTCTGCTGGTC CCACATTCAGACCC GTTCGCCATAGACG-3'(配列番号3)
HCP−2の塩基配列(5'-X'-Y'-Z'-3')
5'-GACCAGCAGAGATG GGGTCTGAATGTGG CGTCTATGGCGAAC-3'(配列番号4)
【0057】
第2の核酸プローブとして、前記第1の核酸プローブ−1に相補的な塩基配列(12塩基)及びHCP−1の一部と同じ塩基配列(配列ZYZ)を有する核酸プローブ[第2の核酸プローブ−1]を用いた。
第2の核酸プローブ−1の塩基配列(5'-P1'-Z-Y-Z-3')
5'-CACTTTTATTGG GTTCGCCATAGACG CCACATTCAGACCC GTTCGCCATAGACG-3'(配列番号5)
【0058】
0.2mLチューブに0、0.1、1、10又は100fmolの標的核酸、第1の核酸プローブを表面に固定した微小粒子を1×10個、並びに10fmolの第2の核酸プローブをTMAC緩衝液[1.5M TMAC (tetra-methyl ammonium chloride)、50mM Tris-HCl (pH8.0)、4mM EDTA (pH8.0)、0.1% N-lauroylsarcosine]50μLに加え、95℃で2分間反応させた後、56℃で2時間反応させ、15℃に保持した。
その後、2種のシグナル増幅用プローブ(HCP−1及びHCP−2)を各々50pmol含むTMAC緩衝液50μLを加え、計100μLとし、56℃で1時間反応させ、15℃に保持した。
反応終了後、フローサイトメトリー(Luminex社、Luminex 100)でCy3の蛍光及び蛍光微小粒子の蛍光を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
(実施例2)
標的核酸として22塩基のオリゴRNAを用いた。
ターゲットオリゴRNAの塩基配列(5'-T2-3')
5'-UAGCUUAUCAGACUGAUGUUGA-3'(配列番号6)
【0060】
第1の核酸プローブとして、任意の塩基配列(10塩基)、標的核酸に相補的な塩基配列(22塩基)、いずれのプローブ及び標的核酸とも結合しないスペーサー領域(20塩基)からなる核酸プローブ[第1の核酸プローブ−2]を用いた。
第1の核酸プローブ−2の塩基配列(5'-P2-T2'-S1-3')
5'-GAGAAGGTGT TCAACATCAGTCTGATAAGCTA GATCTCGCTCACGGTAGTGC-3'(配列番号7)
前記第1の核酸プローブの3’末端を蛍光微小粒子(Luminex bead、Luminex社製)の表面に固定して用いた。
【0061】
シグナル増幅用プローブとして、実施例1で用いた3’末端がCy3で標識されているHCP−1及びHCP−2を用いた。
【0062】
第2の核酸プローブとして、前記第1の核酸プローブ−2に相補的な塩基配列(10塩基)、いずれのプローブ及び標的核酸とも結合しないスペーサー領域(5塩基)、及びHCP−1の一部と同じ塩基配列(配列ZYZ)を有する核酸プローブ[第2の核酸プローブ−2]を用いた。
第2の核酸プローブ−2の塩基配列(5'-P2'-S2-Z-Y-Z-3')
5'-ACACCTTCTC CTTCA GTTCGCCATAGACG CCACATTCAGACCC GTTCGCCATAGACG-3'(配列番号8)
【0063】
0.2mLチューブに0、0.1又は1fmolの標的核酸、第1の核酸プローブを表面に固定した微小粒子を500個、並びに20fmolの第2の核酸プローブを4×SSC緩衝液[0.06M クエン酸ナトリウム、0.6M 塩化ナトリウム、0.1% N-lauroylsarcosine、50mM Tris-HCl (pH8.0)、4mM EDTA (pH8.0)]25μLに加え、65℃で2分間反応させた後、46.3℃で2時間反応させ、15℃に保持した。
その後、2種のシグナル増幅用プローブ(HCP−1及びHCP−2)を各々50pmol含む溶液[0.1% N-lauroylsarcosine、50mM Tris-HCl (pH8.0)、4mM EDTA (pH8.0)]25μLを加え、計50μLとし、53.7℃で1時間反応させ、15℃に保持した。
反応終了後、フローサイトメトリーでCy3の蛍光及び蛍光微小粒子の蛍光を測定した。結果を表1に示す。
【0064】
(実施例3)
第1の核酸プローブ−2のスペーサー領域に相補的な核酸プローブ[アンチスペーサー領域オリゴ]を更に用いた以外は実施例2と同様に実験を行った。
アンチスペーサー領域オリゴの塩基配列(5'-S1'-3')
5'-GCACTACCGTGAGCGAGATC-3'(配列番号9)
【0065】
0.2mLチューブに0、0.1又は1fmolの標的核酸、第1の核酸プローブを表面に固定した微小粒子を500個、20fmolの第2の核酸プローブ、並びに100fmolのアンチスペーサー領域オリゴを4×SSC緩衝液25μLに加え、65℃で2分間反応させた後、46.3℃で2時間反応させ、15℃に保持した。
その後、2種のシグナル増幅用プローブ(HCP−1及びHCP−2)を各々50pmol含む溶液[0.1% N-lauroylsarcosine、50mM Tris-HCl (pH8.0)、4mM EDTA (pH8.0)]25μLを加え、計50μLとし、53.7℃で1時間反応させ、15℃に保持した。
反応終了後、フローサイトメトリーでCy3の蛍光及び蛍光微小粒子の蛍光を測定した。結果を表1に示す。
【0066】
(実施例4)
標的核酸として、22塩基のターゲットオリゴDNA−2を用いた。
ターゲットオリゴDNA−2の塩基配列(5'-T3-3')
5'-TAGCTTATCAGACTGATGTTGA-3'(配列番号10)
【0067】
シグナル増幅用プローブとして、実施例1で用いた3’末端がCy3で標識されているHCP−1及びHCP−2を用いた。第2の核酸プローブとして、実施例1で用いたHCP−1を用いた。
【0068】
第1の核酸プローブとして、HCP−1に相補的な塩基配列(11塩基)、標的核酸に相補的な塩基配列(21塩基)及びいずれのプローブ及び標的核酸とも結合しないスペーサー領域(20塩基)からなる核酸プローブ[第1の核酸プローブ−3]を用いた。
第1の核酸プローブ−3の塩基配列(5'-X1'-T3'-S3-3')
5'-CAGCAGAGATG TCAACATCAGTCTGATAAGCTA GATCTCGCTCACGGTAGTGC-3'(配列番号11)
前記第1の核酸プローブの3’末端を蛍光微小粒子(Luminex bead、Luminex社製)の表面に固定化した。
【0069】
0.2mLチューブに0、0.1、1又は10fmolの標的核酸、第1の核酸プローブを表面に固定した微小粒子を1×10個、並びに100fmolの第2の核酸プローブ(HCP−1)をTMAC緩衝液50μLに加え、95℃で2分間反応させた後、48℃で2時間反応させ、15℃に保持した。
その後、2種のシグナル増幅用プローブ(HCP−1及びHCP−2)を各々50pmol含むTMAC緩衝液50μLを加え、計100μLとし、54℃で1時間反応させ、15℃に保持した。
反応終了後、フローサイトメトリーでCy3の蛍光及び蛍光微小粒子の蛍光を測定した。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
表1に示すように、試料中に標的核酸が存在しない場合は、十分なシグナルが検出されなかったのに対し、試料中に標的核酸が存在する場合は、その含有量に応じたシグナルが検出され、21塩基及び22塩基の低分子核酸が簡便且つ高感度に検出された。
【符号の説明】
【0072】
10:標的核酸、12a,12b,12c:第1の核酸プローブ、13:担体、14a,14b,14c:第2の核酸プローブ、16,シグナル増幅用プローブ、16a:HCP−1、16b:HCP−2、18:複合体、20:プローブポリマー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)標的核酸、該標的核酸に相補的な第1の塩基配列と第2の塩基配列とを有する第1の核酸プローブ、及び該第1の核酸プローブの第2の塩基配列に相補的な塩基配列を有する第2の核酸プローブを反応させ、該標的核酸、該第1の核酸プローブ及び該第2の核酸プローブを含む複合体を形成させる工程;
(b)前記複合体に対し、互いにハイブリダイズ可能な相補的塩基配列領域を有し自己集合反応によるプローブポリマーの形成が可能な複数種のシグナル増幅用プローブを添加し、前記複合体と結合したプローブポリマーを形成させる工程;及び
(c)前記プローブポリマーを検出する工程;を含み、
前記第1の核酸プローブの前記第1の塩基配列と前記第2の塩基配列は隣接してなり、
前記第2の核酸プローブは、前記複数種のシグナル増幅用プローブ中の1つのシグナル増幅用プローブの一部又は全てと同じ塩基配列を有することを特徴とする標的核酸の検出方法。
【請求項2】
前記第1の核酸プローブが、担体に固定されているか担体に固定可能な部分が導入されていることを特徴とする請求項1記載の標的核酸の検出方法。
【請求項3】
前記複数種のシグナル増幅用プローブの少なくとも1つが標識物質で標識されてなることを特徴とする請求項1又は2記載の標的核酸の検出方法。
【請求項4】
前記複数種のシグナル増幅用プローブが第1のシグナル増幅用プローブと第2のシグナル増幅用プローブとからなり、
該第1のシグナル増幅用プローブが3箇所以上の核酸領域を含み、且つ5’端側から順に少なくとも核酸領域X、核酸領域Y及び核酸領域Zを含む核酸プローブであり、
該第2のシグナル増幅用プローブが3箇所以上の核酸領域を含み、且つ5’端側から順に少なくとも前記核酸領域Xに相補的な核酸領域X’、前記核酸領域Yに相補的な核酸領域Y’及び前記核酸領域Zに相補的な核酸領域Z’を含む核酸プローブであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の標的核酸の検出方法。
【請求項5】
前記標的核酸がマイクロRNAであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の標的核酸の検出方法。
【請求項6】
第1の核酸プローブ、第2の核酸プローブ、及び互いにハイブリダイズ可能な相補的塩基配列領域を有し自己集合反応によるプローブポリマーの形成が可能な複数種のシグナル増幅用プローブを含む、標的核酸の検出に用いられる検出用キットであって、
前記第1の核酸プローブは、標的核酸に相補的な第1の塩基配列及び前記第2の核酸プローブに相補的な第2の塩基配列を有し且つ該第1の塩基配列と該第2の塩基配列が隣接してなり、
前記第2の核酸プローブは、前記複数種のシグナル増幅用プローブ中の1つのシグナル増幅用プローブの一部又は全てと同じ塩基配列を有することを特徴とする検出用キット。
【請求項7】
前記第1の核酸プローブが、担体に固定されているか担体に固定可能な部分が導入されていることを特徴とする請求項6記載の検出用キット。
【請求項8】
前記複数種のシグナル増幅用プローブの少なくとも1つが標識物質で標識されてなることを特徴とする請求項6又は7記載の検出用キット。
【請求項9】
前記複数種のシグナル増幅用プローブが第1のシグナル増幅用プローブと第2のシグナル増幅用プローブとからなり、
該第1のシグナル増幅用プローブが3箇所以上の核酸領域を含み、且つ5’端側から順に少なくとも核酸領域X、核酸領域Y及び核酸領域Zを含む核酸プローブであり、
該第2のシグナル増幅用プローブが3箇所以上の核酸領域を含み、且つ5’端側から順に少なくとも前記核酸領域Xに相補的な核酸領域X’、前記核酸領域Yに相補的な核酸領域Y’及び前記核酸領域Zに相補的な核酸領域Z’を含む核酸プローブであることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項記載の検出用キット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−70635(P2012−70635A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17906(P2009−17906)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】