説明

核酸を単離するためのろ過装置

【課題】核酸の単離及び検出に関する方法および装置を提供する。
【解決手段】a)複数の多孔膜を含むろ過装置を試料と、試料が第一多孔膜から始まって次に少なくとも第二多孔膜へと続く複数の多孔膜に順次接触するように、接触させること、b)試料を、第二多孔膜の名目上の孔径よりも小さい名目上の孔径を有する第一多孔膜上で、溶解すること、c)ろ過装置に外力を加え、これによって核酸を複数の多孔膜の少なくとも1つの膜上で単離することを含む、試料から核酸を単離する方法、およびそのためのろ過装置。第三多孔膜は捕獲プローブを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全般に分子生物学の分野に関する。ある特定実施形態では、本発明は、核酸の単離及び検出に関する装置、キット及び方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
核酸を単離することは、典型的には、転写/増幅反応及びcDNAライブラリーの構築を含む、PCR、遺伝子クローニング、配列決定、サザン分析、ノーザン分析、ヌクレアーゼ保護アッセイ、RT−PCR、RNAマッピング、インビトロ翻訳、インビトロ転写を含む大部分の分子生物学的探求の最初の工程である。従って、分析に適した高品質の無傷核酸を得ることは、しばしばその後の分析のための有用で望ましい出発点である。試料から核酸を単離するための様々な手法が記述されているが(例えば米国特許第5,075,430号;同第5,234,809号;同第5,155,018号;同第6,274,308号;同第6,277,648号;同第6,958,392号;同第6,953,686号;同第6,310,199号;同第6,992,182号;同第6,475,388号;同第5,075,430号;米国特許公開第20060024701号;欧州特許第EP0765335号;Boomら、1990、J.Clinical Microbiology 28:495)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これにもかかわらず、迅速で、経済的であり、高い収率を生じさせる、試料から核酸を単離する方法を提供することは有益である。また、この方法が試料の必要な操作を最小限に抑え、主として液体取り扱い工程の使用を許容し、単一装置、例えばろ過装置を用いて実施される場合は有用である。ここで述べる本発明のある実施形態はこのような方法を提供する。ここで述べる本発明の他の実施形態は、試料から核酸を単離するために使用し得る装置及びキットを提供する。本発明のさらなる他の実施形態は、試料中の核酸の検出を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ある実施形態では、本発明は、a)複数の多孔膜を含むろ過装置を試料と、試料が第一多孔膜から始まって次に少なくとも第二多孔膜へと続く複数の多孔膜に順次接触するように、接触させること、b)試料を、第二多孔膜の名目上の孔径よりも小さい名目上の孔径を有する第一多孔膜上で、溶解すること、c)ろ過装置に外力を加え、これによって核酸を複数の多孔膜の少なくとも1つの膜上で単離することを含む、試料から核酸を単離する方法を提供する。試料は、細胞試料又はウイルス試料であり得、例えばウイルス粒子で構成され得る。場合により、単離された核酸を多孔膜の1つから溶出し得る。
【0005】
他の実施形態では、本発明は、複数の多孔膜を含むろ過装置を試料と、試料がポリマーを含む第一多孔膜から始まって次にケイ酸塩を含む少なくとも第二多孔膜へと続く複数の多孔膜に順次接触するように接触させ、これによって複数の多孔膜の少なくとも1つの膜上で核酸を単離することを含む、試料から核酸を単離する方法を提供する。ポリマー膜は、ケイ酸塩膜と比較してより小さな名目上の孔径を有し得る。試料は、膜の1つ、例えば第一多孔膜上でインサイチューで溶解し得る細胞試料又はウイルス試料又はこの両方であり得る。場合により、単離された核酸を多孔膜の1つから溶出し得る。
【0006】
さらなる他の実施形態では、本発明は、複数の多孔膜を含むろ過装置を試料と、試料が多糖を含む第一多孔膜から始まって次にケイ酸塩を含む少なくとも第二多孔膜へと続く複数の多孔膜に順次接触するように接触させ、これによって複数の多孔膜の少なくとも1つの膜上で核酸を単離することを含む、試料から核酸を単離する方法を提供する。多糖膜は、ケイ酸塩膜と比較してより小さな名目上の孔径を有し得る。試料は、膜の1つ、例えば第一多孔膜上でインサイチューで溶解し得る細胞試料又はウイルス試料又はこの両方であり得る。場合により、単離された核酸を多孔膜の1つから溶出し得る。
【0007】
さらなる他の実施形態では、本発明は、複数の多孔膜を含むろ過装置を試料と、試料がスルホニル基からなるポリマーを含む第一多孔膜から始まって次にケイ酸塩を含む少なくとも第二多孔膜へと続く複数の多孔膜に順次接触するように接触させ、これによって複数の多孔膜の少なくとも1つの膜上で核酸を単離することを含む、試料から核酸を単離する方法を提供する。スルホニル基からなるポリマー膜は、ケイ酸塩膜と比較してより小さな名目上の孔径を有し得る。試料は、膜の1つ、例えば第一多孔膜上でインサイチューで溶解し得る細胞試料又はウイルス試料又はこの両方であり得る。場合により、単離された核酸を多孔膜の1つから溶出し得る。
【0008】
さらなる他の実施形態では、本発明は、複数の多孔膜を含むろ過装置を試料と、試料がスルホン基からなるポリマーを含む第一多孔膜から始まって次に多糖を含む少なくとも第二多孔膜へと続く複数の多孔膜に順次接触するように接触させ、これによって複数の多孔膜の少なくとも1つの膜上で核酸を単離することを含む、試料から核酸を単離する方法を提供する。スルホニル基からなるポリマー膜は、多糖膜と比較してより小さな名目上の孔径を有し得る。試料は、膜の1つ、例えば第一多孔膜上でインサイチューで溶解し得る細胞試料又はウイルス試料又はこの両方であり得る。場合により、単離された核酸を多孔膜の1つから溶出し得る。
【0009】
一部の実施形態では、本発明は、複数の多孔膜を含むろ過装置を試料と、試料が最初に混合セルロースエステルを含む膜から次いでガラス繊維を含む膜へと接触するように(但し混合セルロースエステル膜の名目上の孔径はガラス繊維膜の名目上の孔径より小さい。)接触させること、及び場合により装置からRNAを溶出し、これによって試料からRNAを単離することを含む、試料からRNAを単離する方法を提供する。試料は、膜の1つ、例えば第一多孔膜上でインサイチューで溶解し得る細胞試料又はウイルス試料又はこの両方であり得る。
【0010】
一部の実施形態では、本発明は、複数の多孔膜を含むろ過装置を試料と、試料が最初にスルホニル基からなるポリマーを含む膜から次いでガラス繊維を含む膜へと接触するように(但しスルホニル基からなるポリマー膜の名目上の孔径はガラス繊維膜の名目上の孔径より小さい。)接触させること、及び装置からDNAを溶出し、これによって試料からDNAを単離することを含む、試料からDNAを単離する方法を提供する。ある実施形態では、DNAの少なくとも一部はスルホニル基からなるポリマー膜上で単離される。他の実施形態では、DNAの少なくとも一部はガラス繊維膜上で単離される。試料は、膜の1つ、例えば第一多孔膜上でインサイチューで溶解し得る細胞試料又はウイルス試料又はこの両方であり得る。場合により、単離されたDNAを多孔膜の1つから溶出し得る。
【0011】
さらなる他の実施形態では、本発明は、a)細胞試料を、ポリマーを含む第一膜と接触させること;b)細胞試料が第一膜の表面に保持されるように第一膜に外力を加えること;c)第一膜の表面に保持されている細胞試料を、試料中の細胞が溶解するように溶解緩衝液と、及び試料中のRNAが第一膜から溶出してシリカからなる第二膜と接触するようにRNA捕獲緩衝液と、接触させること;d)溶解緩衝液及びRNA捕獲緩衝液がc)の第一及び第二膜を通って流れるように、第一及び第二膜に外力を加えること;e)場合によりd)の第一及び/又は第二膜を1以上の洗浄緩衝液と接触させること;f)場合により洗浄緩衝液が第一及び/又は第二膜を通って流れるように、e)の第一及び/又は第二膜に外力を加えること;g)RNAの少なくとも一部がシリカ膜から溶出するようにRNアーゼ不含水を添加し、これによって試料からRNAを単離することを含む、細胞試料からRNAを単離する方法を提供する。一部の実施形態では、溶解緩衝液は、試料に含まれる細胞が溶解するように、RNA捕獲緩衝液と同じ緩衝液であってよい。
【0012】
さらなる他の実施形態では、本発明は、a)複数の膜と試料を接触させること(第一膜は、ポリマーからなり及び第一ポリマー膜の後に試料と接触するシリカからなる少なくとも1つの付加的な膜を含む。);b)試料がポリマー膜の表面に保持されるようにポリマー膜に外力を加えること;c)DNAを含む試料が溶解するようにポリマー膜の表面に保持される試料を溶解緩衝液と接触させること;d)溶解緩衝液がc)の第一及び第二膜を通って流れるように、第一及び第二膜の少なくとも1つに外力を加えること;e)場合によりd)の第一及び/又は第二膜を1以上の洗浄緩衝液と接触させること;f)場合により洗浄緩衝液が少なくとも第二膜を通って流れるように、少なくともe)の第二膜に外力を加えること;g)DNAの少なくとも一部が少なくとも1つの膜から溶出するように複数の膜にヌクレアーゼ不含水を添加し、これによって試料からDNAを単離することを含む、試料からDNAを単離する方法を提供する。
【0013】
ある実施形態では、本発明は、ろ過装置に適用された試料が第一多孔膜から次いで少なくとも第二多孔膜へと接触するように順次的に配置された複数の多孔膜を含み、第一多孔膜が第二多孔膜の名目上の孔径よりも小さい名目上の孔径を有する、試料から核酸を単離するのに適したろ過装置を提供する。
【0014】
さらなる実施形態では、本発明は、ろ過装置に適用された試料がポリマーを含む第一多孔膜から次いでシリカを含む少なくとも第二多孔膜へと接触するように順次的に配置された複数の多孔膜を含む、試料から核酸を単離するのに適したろ過装置を提供する。ポリマー膜は、ケイ酸塩膜と比較してより小さい名目上の孔径を有し得る。
【0015】
さらなる他の実施形態では、本発明は、ろ過装置に適用された試料がスルホニル基からなるポリマーを含む第一多孔膜から次いでシリカを含む少なくとも第二多孔膜へと接触するように順次的に配置された複数の多孔膜を含む、試料から核酸を単離するのに適したろ過装置を提供する。スルホニル基からなるポリマー膜は、ケイ酸塩膜と比較してより小さい名目上の孔径を有し得る。
【0016】
さらなる他の実施形態では、本発明は、ろ過装置に適用された試料が多糖を含む第一多孔膜から次いでシリカを含む少なくとも第二多孔膜へと接触するように順次的に配置された複数の多孔膜を含む、試料から核酸を単離するのに適したろ過装置を提供する。多糖膜は、ケイ酸塩膜と比較してより小さい名目上の孔径を有し得る。
【0017】
さらなる他の実施形態では、本発明は、ろ過装置に適用された試料がスルホニル基からなるポリマーを含む第一多孔膜から次いで多糖を含む少なくとも第二多孔膜へと接触するように順次的に配置された複数の多孔膜を含む、試料から核酸を単離するのに適したろ過装置を提供する。スルホニル基からなるポリマー膜は、多糖膜と比較してより小さい名目上の孔径を有し得る。
【0018】
さらなる他の実施形態では、本発明は、ろ過装置に適用された試料が混合酢酸セルロースを含む第一多孔膜から次いでガラス繊維を含む少なくとも第二多孔膜へと接触するように順次的に配置された複数の多孔膜を含み、第一多孔膜が第二多孔膜の名目上の孔径よりも小さい名目上の孔径を有し得る、試料からRNAを単離するのに適したろ過装置を提供する。
【0019】
さらなる実施形態では、本発明は、ろ過装置に適用された試料がスルホニル基からなるポリマーを含む第一多孔膜から次いでガラス繊維を含む少なくとも第二多孔膜へと接触するように順次的に配置された複数の多孔膜を含み、第一多孔膜が第二多孔膜の名目上の孔径より小さくてもよい名目上の孔径を有する、試料からDNAを単離するのに適したろ過装置を提供する。
【0020】
さらなる他の実施形態では、本発明は、ろ過装置に適用された試料がスルホニル基からなるポリマーを含む第一多孔膜から次にスルホニル基からなるポリマーを含む第二多孔膜へ次にガラス繊維を含む少なくとも第三多孔膜と接触するように順次的に配置された複数の多孔膜を含み、第一多孔膜がガラス繊維膜の名目上の孔径より小さい名目上の孔径を有する、試料からDNAを単離するのに適したろ過装置を提供する。
【0021】
さらなる他の実施形態では、本発明は、a)ろ過装置に適用された試料が第一多孔膜から次いで少なくとも第二多孔膜へと接触するように順次的に配置された複数の多孔膜を含み、第一多孔膜が第二多孔膜の名目上の孔径よりも小さい名目上の孔径を有し得る、試料から核酸を単離するのに適したろ過装置;及びb)少なくとも1つの容器を含む、試料から核酸を単離するためのキットを提供する。
【0022】
さらなる他の実施形態では、本発明は、a)ろ過装置に適用された試料がポリマーを含む第一多孔膜から次いでシリカを含む少なくとも第二多孔膜へと接触するように順次的に配置された複数の多孔膜を含む、試料から核酸を単離するのに適したろ過装置;及びb)少なくとも1つの容器を含む、試料から核酸を単離するためのキットを提供する。ポリマー膜は、ケイ酸塩膜と比較してより小さい名目上の孔径を有し得る。
【0023】
さらなる他の実施形態では、本発明は、a)ろ過装置に適用された試料が多糖を含む第一多孔膜から次いでケイ酸塩を含む少なくとも第二多孔膜へと接触するように順次的に配置された複数の多孔膜を含む、試料から核酸を単離するのに適したろ過装置;及びb)少なくとも1つの容器を含む、試料から核酸を単離するためのキットを提供する。多糖膜は、ケイ酸塩膜と比較してより小さい名目上の孔径を有し得る。
【0024】
さらなる他の実施形態では、本発明は、a)ろ過装置に適用された試料がスルホニル基からなるポリマーを含む第一多孔膜から次いでケイ酸塩を含む少なくとも第二多孔膜へと接触するように順次的に配置された複数の多孔膜を含む、試料から核酸を単離するのに適したろ過装置;及びb)少なくとも1つの容器を含む、試料から核酸を単離するためのキットを提供する。スルホニル基からなるポリマー膜は、ケイ酸塩膜と比較してより小さい名目上の孔径を有し得る。
【0025】
さらなる他の実施形態では、本発明は、a)ろ過装置に適用された試料がスルホニル基からなるポリマーを含む第一多孔膜から次いで多糖を含む少なくとも第二多孔膜へと接触するように順次的に配置された複数の多孔膜を含む、試料から核酸を単離するのに適したろ過装置;及びb)少なくとも1つの容器を含む、試料から核酸を単離するためのキットを提供する。スルホニル基からなるポリマー膜は、多糖膜と比較してより小さい名目上の孔径を有し得る。
【0026】
さらなる実施形態では、本発明は、a)試料から核酸を単離するのに適したろ過装置、b)ポンプ、c)シーケンス制御装置(PLC)、d)試料を保持するための少なくとも1つの容器、e)場合により1以上の試薬又は緩衝液を保持するのに適した1以上の容器、f)場合によりろ過装置からのろ液、ろ過装置からの溶出液及び/又はろ過装置からの廃棄溶液を受け取るのに適した1以上の貯蔵容器(receptacles)、g)複数のピンチ弁、h)配管、及びi)場合により配管から1以上の液体をろ過装置に供給するシリンジカートリッジを含む、試料から核酸を単離するための自動システムを提供する。
【0027】
さらなる実施形態では、本発明は、試料中の微生物を検出するのに適する1以上のオリゴヌクレオチドを提供する。微生物は、マイコプラズマ、ウイルス等を含み得る。
【0028】
さらなる実施形態では、本発明は、a)試料を、微生物のゲノムの少なくとも一部を含む標的核酸に特異的に結合する1以上のオリゴヌクレオチドと接触させること、b)標的核酸を増幅し、これによって試料中の微生物を検出することを含む、試料中の微生物を検出する方法を提供する。場合により、標的核酸は、標的核酸の少なくとも一部に特異的に結合し、これによって試料中の微生物を検出するオリゴヌクレオチドプローブに連結し得る。
【0029】
図面の簡単な説明
図1a及び図1bは微量分配装置からなる本発明のろ過装置の一例を示す。
図2は本発明のろ過装置の一例を示す。
図3a及び図3bは多数の試料又は大容量の試料を受け取るのに適したマルチウエル形式の本発明のろ過装置の一例を示す。
図4は多数の試料又は大容量の試料を受け取るのに適したマルチウエル形式の本発明のろ過装置のもう1つ別の例を示す。
図5は単一試料型の本発明のろ過装置を示す。
図6aは通気口付き及び通気口なしの閉鎖型の本発明のろ過装置を示す。
図6bは積み重ね型の本発明のろ過装置を示す。
図7は通気口付き閉鎖型の本発明のろ過装置を含む制御可能な自動システムを示す。
図8はRNAeasy(登録商標)カラム(Qiagen,Valencia,CA)を用いて単離したrRNAと比較して、本発明の方法に従って単離したrRNAを示すアガロースゲルの写真である。
図9は試料からのRNAの相対精製を示すグラフである。
【0030】
実施態様の簡単な説明
核酸を単離する方法
一部の実施形態では、本発明は、迅速で実施し易く、試料に対して最小数の操作しか必要としない、試料から標的核酸を単離する方法を提供する。本方法は、粗細胞投入物、例えば原核又は真核細胞を受け入れ、選択的生体分子産出物を排出するという利点を提供する。粗細胞投入物は、例えばろ過装置を構成する複数の膜の1つの表面上でインサイチューで、単に細胞試料を溶解することを含み得る。溶解産物は、例えば遠心分離によって溶解産物を清澄化する必要なしに、ここで述べる方法に従って核酸を単離するように処理し得る。従って、溶解産物は、細胞デブリ、増殖培地及び増殖培地添加物と共に標的核酸を含み得る。
【0031】
特定実施形態では、本発明は、複数の膜を含むろ過装置の一部であるガラス繊維膜上でRNAを単離する方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、複数の膜を含むろ過装置の一部である、スルホニル基からなるポリマー膜のようなポリマー膜上でDNAを単離する方法を提供する。
【0032】
標的核酸がRNAである場合、本発明は、DNアーゼの使用を必要とせず、又はこれまでに述べられている方法、例えばQiagenカラム(Qiagen,Inc.,Valencia,CA)によって必要とされるよりも少ないDNアーゼの使用しか必要とせず、これによって時間と試薬コストを節約する、RNAを単離する方法を提供する。典型的には、核酸は、変性状態で多孔膜上で単離され、従ってその後の操作、例えばRT−PCRを含むPCR、転写を介した増幅(TMA)を容易にする。標的核酸の単離は、例えば細菌のような、対象とする病原性又は非病原性生物の特定を含む、多くの下流分析適用のために使用し得る。
【0033】
ある実施形態では、本発明は、原核又は真核細胞のような全細胞からなる試料から核酸を単離する方法を提供する。細胞を第一膜と接触させ、溶解して、標的核酸を第二膜又はその後の膜上で単離し得る。標的核酸は第一膜及び第二膜の両方で単離し得る。試料が複数の膜の各々と連続的に接触するように、複数の膜からなるろ過装置に試料を適用し得る。従って、試料は第一膜と接触し、次に少なくとも第二膜と接触し得る。一部の実施形態では、試料は3またはそれ以上の膜と接触し得る。
【0034】
試料が装置の第一膜と接触した後、試料(例えば標的核酸又は標的核酸の少なくとも一部)は第一膜の表面に保持されるが、試料を含有する溶液又は液体、例えば培地はろ過装置を貫流するように、外力を装置に加え得る。一部の実施形態では、外力は、例えば装置の底の出口を通して、ろ過装置に接続された重力又は真空によって与えられ得る。外力が真空であるとき、真空は20−800mbarの圧差を与え得る。他の実施形態では、外力は、例えば装置が円筒からなる場合は、ピストン又は構材の作用により、ろ過装置の上部から適用され得る陽圧によって、又はシリンジの力によって提供され得る。さらなる他の実施形態では、外力は、装置を遠心分離機内に置くことによって適用される遠心力であり得る。1×g−15,000×gの範囲の遠心力を使用し得る。さらなる他の実施形態では、溶媒を、例えば第一膜の上面から、吸引によって除去し得るか、又は試料を沈降させた後単に傾瀉し得る。
【0035】
本発明の方法は、試料をろ過装置を構成する複数の多孔膜の最初の膜に接触させた後、試料を様々な緩衝液と接触させることを含み得る。従って、試料を、ろ過装置を構成する第一膜と接触させ、場合により上述した力をろ過装置に加えた後、試料を第一緩衝液と接触させ得る。試料が細胞及び/又はウイルス粒子からなる場合、第一緩衝液は溶解緩衝液であり得る。当分野で公知のいかなる溶解緩衝液も使用し得る。典型的には、溶解緩衝液は、緩衝塩、洗浄剤及び酵素、例えばプロテアーゼを含み得る。酵素は、例えばプロテイナーゼK又はリゾチームであり得る。1つの実施形態では、溶解緩衝液は、50mMトリス−HCl、pH8.0、100mMEDTA、2%トリトン(Triton)X−100で構成され得る。
【0036】
溶解後、試料を、試料中に含有される核酸の少なくとも一部が第一多孔膜の表面上に沈殿するように、沈殿試薬と接触させ得る。沈殿試薬は、グアニジン塩(例えば塩酸グアニジン、チオシアン酸グアニジン)及びアルコール(例えばエタノール)を含む溶液であり得る。一部の実施形態では、沈殿試薬は25−50%の範囲の最終アルコール濃度を含む。試料を、核酸の少なくとも一部が第一膜の表面に沈殿するのに十分な時間、沈殿試薬と共にインキュベートし得る。一部の実施形態では、インキュベーション時間は、1−10分間、1−5分間、30秒間−3分間、30秒間−20分間、30秒間−1時間又は1時間以上の範囲である。沈殿試薬及び溶解緩衝液は、試料から溶媒を除去するための上述した手法のいずれか、例えば外力の適用を用いて、試料から除去し得る。
【0037】
標的分析物がRNAである場合、標的核酸が第一膜を通過し、標的核酸が試料から単離されるように第二膜上に吸着又は沈殿することを可能にする、RNA捕獲緩衝液を添加し得る。適切なRNA捕獲緩衝液の例は、4M塩酸グアニジン;50mMトリス−HCl、pH8.0、100mMEDTA、2%トリトンX−100、50%エタノールを含む。1%ドデシル硫酸ナトリウムを2%トリトンX−100の代用品として使用し得る。もう1つのRNA捕獲緩衝液は、4M塩酸グアニジン、50mMトリス(Tris)−HCl、pH8.0、100mMEDTA、5%酢酸エチル、50%エタノールで構成され得る。
【0038】
a)試料をろ過装置と接触させること、b)沈殿、c)標的の溶出を含む、工程のいずれかの間に、装置上に保持された試料に1以上の洗浄緩衝液を適用し得る。例えば沈殿試薬と溶解緩衝液の除去後、溶解及び酵素分解から生じる望ましくない物質を除去するために試料を洗浄緩衝液と接触させ得る。当分野で公知のいかなる洗浄緩衝液も使用でき、例えば少なくとも50%のエタノール、メタノール又はイソプロパノール又は10mMトリス−EDTA、pH8又は4M塩酸グアニジンを含むリン酸緩衝食塩水(PBS)を使用し得る。洗浄緩衝液は、試料から溶媒を除去するための上述した手法のいずれかを用いて除去し得る。
【0039】
単離された標的核酸は、膜から溶出し得るか又はさらなる分析のために膜上に保持し得る。標的核酸を溶出することが望ましい場合、第一膜又は第二膜から標的核酸を収集するために溶出緩衝液を使用し得る。又は、溶出緩衝液は第一膜又は第二膜から物質、例えば望ましくない核酸を溶出し、これによって標的核酸を第一膜又は第二膜上に残してもよい。溶出緩衝液は、単離する核酸の種類に従って選択し得る。一例として、核酸がRNAである場合、溶出緩衝液は、第二膜から又は第一膜と第二膜が互いに接触している又は積み重なっているときは第一及び第二膜から標的RNAを溶出するために使用し得るRNアーゼ不含水であり得る。他の適切な溶出緩衝液は、トリス−エチレンジアミン四酢酸(TE)緩衝液及び10mMトリス−HCl、pH8.0を含み得る。
【0040】
ろ過装置が3以上の膜を含むある実施形態では、標的核酸を第一又は第二膜から又は第一と第二の両方の膜から第三膜上に溶出し得る。第三膜は、捕獲プローブ、例えば標的核酸が標的核酸と標的プローブの間の特異的な化学的相互作用の結果として第三膜上に選択的に保持されるように、標的核酸についての特異的結合パートナーを含み得る。捕獲プローブは標的核酸と共有結合的又は非共有結合的に相互作用し得る。相互作用は、電荷−電荷相互作用、水素結合、疎水性相互作用、ファンデルワールス力及び双極子−双極子相互作用を含み得る。捕獲プローブの例は、対象とする特定核酸配列に相補的なオリゴ、並びに核酸に結合するペプチド、タンパク質及び低分子を含む。抗生物質の一例として、例えば16sRNAに特異的に結合するエデインは、膜に結合し得る。捕獲プローブのもう1つの例は、ポリA RNA、例えばmRNAを捕獲するのに適するオリゴdTプローブを含み得る。膜は、アビジン又はストレプトアビジン又はニュートラアビジンのような公知のリガンドで誘導体化し得る。ビオチニル化捕獲プローブを膜に添加し、これによって標的核酸配列に特異性を付与することができる。
【0041】
特定実施形態において、本発明は、複数の膜[例えば、ポリマー膜(例えば混合セルロース膜)、シリカ膜又はフィルター(例えばガラス繊維又はガラス繊維膜)]からなる、マルチウエルプレート内の1以上のウエルを試料と接触させることを含む、細胞試料(例えば23s及び16s rRNAを含む全細胞RNA、細胞DNA、マイコプラズマDNA又はRNA、ウイルスDNA又はRNA)から核酸を単離する方法を提供する。試料を最初にポリマー膜と接触させ、次にシリカ膜と接触させ得る。試料が接触する最初の膜は、試料が接触するその後の膜、例えば第二膜の名目上の孔径よりも小さい名目上の孔径を有し得る。膜は、積み重ねた形状に配置し得る。細胞試料が第一膜から単離されるように、マルチウエルプレートに真空を適用し、試料からのろ液を廃棄し得る。細胞試料を溶解緩衝液、例えばリゾチームのような1以上の溶解酵素を含む緩衝液と接触させ得る。試料を、グアニジン塩及びエタノールのような1以上の沈殿剤と接触させ得る。試料を適切な時間インキュベートし得る。マルチウエルプレートに真空を適用し、ろ液を廃棄し得る。試薬又は非標的物質を洗い流すために、50%以上のエタノールを含むPBSのような、1以上の洗浄液をマルチウエル装置に適用し得る。真空を適用し、ろ液を廃棄し得る。第二のマルチウエルプレート、すなわち収集プレートは、標的核酸を受け取るために提供され得る。第二マルチウエルプレートは、試料を受け取るマルチウエルプレートと同じ数からなり、例えば、マルチウエルプレートの各々のウエルが第二マルチウエルプレートのウエルと整列し、肩又は縁を連結する又はかみ合わせることによって、対応するように下のマルチウエルプレートと堅固に適合する寸法にし得る。
【0042】
マルチウエルプレートからの標的核酸を収集プレートに溶出するために、試料を溶出緩衝液、例えばRNアーゼ不含水、TE緩衝液と接触させ得る。又は、pH6.0−8.0の低イオン強度溶液(0−50mM)が、RNAのような標的核酸を装置から溶出するのに適する。
【0043】
自動システム
ある実施形態では、本発明は、試料から核酸を単離するための自動システムを提供する。試料をろ過装置に適用すること、試料を溶解すること、試料を洗浄すること、試料を溶出することを含む工程のいずれか又は全部を自動化し得る。自動システムは、コンピュータ、例えばここで述べる方法の工程の各々を実施するようにプログラムされたパーソナルコンピュータを含み得る。本発明はまた、多重方式で多数の試料を処理することも考慮する。
【0044】
自動装置の一例を図7に示す。さらなる実施形態では、本発明は、a)試料から核酸を単離するのに適するろ過装置(74)、b)ポンプ(75)、c)シーケンス制御装置(PLC)(76)、d)試料を保持するのに適した少なくとも1つの容器(71)、e)場合により1以上の試薬又は緩衝液を保持するのに適した1以上の容器(71)、f)場合によりろ過装置からのろ液、ろ過装置からの溶出液及び/又はろ過装置からの廃棄溶液を受け取るのに適した1以上の貯蔵容器(77)、g)複数のピンチ弁(72)、h)配管(73)及びi)場合により配管から1以上の液体をろ過装置(74)に供給する、シリンジバレルホルダー内に位置するシリンジカートリッジ(79)を含む、試料から核酸を単離するための自動システムを提供する。ろ過装置からの液体の適用及び/又は除去を可能にする逆止め弁(78)を備える。
【0045】
このように、本発明に従った自動システムは、試薬、緩衝液、試料等を含む液体が、ポンプの移動部のようないかなる移動部分とも絶対に接触しない形状をとり得る。これは、システムを通過する液体との接触を必要としないピンチ弁を使用することによって達成され得る。システムにおいて使用される配管及びろ過装置は単回使用に適してもよく、従って使い捨てであり得る。使い捨て配管とピンチ弁の組合せは、保守整備、例えば各使用と使用の間の洗浄をほとんど必要としないシステムを提供する。さらに、配管とろ過装置は1回しか使用されないので、試料の汚染の危険性が排除される又は最小限に抑えられる。これは、試料が核酸を含み、核酸の下流検出がPCR又はTMAのような増幅プロトコールに基づくときに特に有用である。卓越した感受性を提供するが、増幅プロトコールは同時に、標的核酸の代わりに汚染核酸を増幅する重大な危険性も伴う。ここで述べる自動システムは、システムを通る液体がポンプの移動部に接触する際使用可能な(典型的には金属製)部分からなるより伝統的なクロマトグラフィーシステムと比較したとき、このような危険性を最小限に抑えるか又は排除し、同時に核酸単離を実施するための安価なシステムを提供する。
【0046】
自動システムにおける使用に適したろ過装置は、ここで述べる本発明の何らかの実施形態に従ったろ過装置であり得る。このシステムは、以下のように構成され得る。1)配管が試料とろ過装置の間の液体連通を提供する;2)配管がろ過装置と1以上の選択的容器の各々との間の液体連通を提供する;3)ポンプが、a)試料又は緩衝液又は試薬を容器からろ過装置へと及び/又はろ過装置を通って移動させることができる外力及び/又はb)何らかの液体、例えば試薬、緩衝液、試料を膜の表面から、例えばろ過装置を構成する膜の最初の表面から除去することができる外力を提供し得るような形状をとり得る。最初の表面は、液体が最初に接触する表面、例えば複数の膜が連続的に配置されている場合は一番上の表面であり得る。
【0047】
一部の実施形態では、PLCは、システムによって実施される工程の順序及び時間を制御し得る。例えばPLCは、1以上のピンチ弁がいつ開く及び/又は閉じるかを制御し得る。同様にPLCは、1以上の容器及び/又はろ過装置に加えられる外力の適用の期間及びタイミングを制御し得る。システムはまた、1以上の容器から設定容量の液体を回収し、この液体をろ過装置と接触させることができるシリンジポンプのようなポンプを含み得る。ポンプは、容器から得られる及び/又はろ過装置と接触する液体の容量が指定及び制御され、容器及び/又はろ過装置からの液体の回収及び/又は適用の割合が指定及び制御され得るように、プログラムすることができる。もう1つの実施形態では、PLCは、システムによって実施される工程のタイミングと期間の両方、並びに容器又は膜の表面から得られる液体の容量、システムを通る液体の流量及び/又は容器及び/又はろ過装置からの液体の回収及び/又は適用の割合を制御し得る。
【0048】
装置を自動化する場合、以下の工程を実施し得る。初期設定において、全ての必要溶液が溶液の容器に負荷され得る。容器はピンチ弁によって制御され、シリンジに接続された二方弁に配管される。シリンジの取り込みと供給はシリンジポンプによって制御され得る。試料は二重フィルターを通して注入され得る。ろ液は廃棄物へと進む。膜は残留物を空気乾燥し得る。溶解液が二重フィルターを通して注入され得る。ろ液は廃棄物へと進む。膜は残留物を空気乾燥し得る。洗浄液が二重フィルターを通して注入され得る。ろ液は廃棄物へと進む。膜は残留物を空気乾燥し得る。溶出緩衝液が二重フィルターを通して注入され得る。ろ液は収集物貯蔵容器へと進む。膜は残留物を空気乾燥し得る。ろ液からの核酸の検出は、ゲル、PCR又はTMAによって実施され得る。
【0049】
ろ過装置
様々なろ過装置様式の使用が考慮される。ろ過器は、簡単な手動装置であるか又は自動システムの一部であり得る。ろ過装置の寸法及び数は、試料の性質及び標的分析物によって指示される。一部の実施形態では、ろ過装置は、独立ユニット、例えばカートリッジで構成され得る。カートリッジは、複数の膜及び1以上の注入口と1以上の排出口を納めるための框体、例えば中空の本体を含み得る。注入口と排出口は、標準シリンジと適合性であるための寸法にし得るか又は真空源又は陽圧源を収容する寸法にし得る。カートリッジはさらに、流入物を収集するためのろ液カップで構成され得る。カートリッジは、遠心分離機に取り付けるための寸法にし得る。
【0050】
ろ過装置は、カラムの上部に適用された試料が、指定された順序でカラム内の複数の多孔膜の各々と接触するように、この中に連続的に配置された複数のろ過器を含むカラムで構成され得る。例えば第一接触膜は、その後に接触する膜よりも小さな名目上の孔径を有し得る。もう1つの例として、ろ過装置は、装置に圧又は真空を適用するために使用され得る1以上の連続的に配置されたシリンジ円筒で構成され得る。
【0051】
ろ過装置は、例えばウエルの少なくとも1つが、ろ過装置に適用された試料が第一膜、次いで1以上のその後の膜と接触するように順次的に配置された複数の膜を含むろ過装置からなる、マルチウエルプレートで構成される多重装置(multiplex)であり得る。多重装置の少なくとも1つのウエルは、例えば、第一膜がその後の膜よりも小さな名目上の孔径を有する場合、ここで述べるろ過装置のいずれかで構成され得る。ろ過装置は、例えばウエルの少なくとも1つが、ここで様々な実施形態において述べたような複数の膜を含むろ過装置からなる、マルチウエルプレートからなる多重装置であり得る。従ってマルチウエルプレートの少なくとも1つのウエルは、ろ過器に適用された試料が第一膜、次いで1以上のその後の膜と接触するように順次的に配置された複数の膜で構成されていてよく、例えば前記第一膜はポリマーからなり、第二膜はシリカからなる。
【0052】
全て、上述したろ過装置を有すマルチウエルプレートのウエルで構成することも考慮される。適切なマルチウエルプレートは、複数のウエル、例えば6ウエル、12ウエル、48ウエル、96ウエル、384ウエル又はそれ以上からなるプレートを含む。マルチウエルプレートは、1つをもう1つの上に積み重ね得る。加えて、単一ウエルプレートからなる本発明のろ過装置も考慮される。一部の実施形態では、流入物及び廃棄物を受け取るためのプレート、すなわちドレーンプレートを備え得る。ドレーンプレートは、特定分析物及び試料ソース及び流入物のその後の分析が必要かどうかに依存して単一ウエル又は複数のウエルで構成され得る。プレートの少なくとも1つは、試料又は緩衝液をろ過装置に送達するのに適した1以上の注入口で構成され得る。プレートの少なくとも1つは、流入物及び廃棄物の除去を容易にする排出口で構成され得る。排出口は、真空源への連結部を収容する寸法であり得る。マルチウエルプレートは、ひとたび試料がろ過装置に適用された後、試料の処理を促進するように遠心分離機に取り付けられる寸法であり得る。
【0053】
1つの特定実施形態では、ろ過装置は、例えばAPFFガラス繊維膜(Millipore Corp,Billerica,MA)の上に重ねた0.45ミクロンの名目上の孔径を有する、混合セルロースエステル膜からなり得る。ろ過装置がカートリッジとして形作られている場合は、膜は13mmの直径を有し得る。あるいは、ろ過装置がマルチウエルプレートとして形作られている場合は、膜は市販のマルチウエルプレートに適合する寸法であり得る。もう1つの特定実施形態では、ろ過装置は、0.7ミクロンの名目上の孔径を有するガラス繊維膜の上に重ねた、28ナノメートルの名目上の孔径を有する、スルホニル基からなるポリマー膜を含み得る。
【0054】
図1は、本発明に従った構成部品からなる、単回使用の再利用可能なろ過装置の一例を示す。試料容器のふた(1)をはずし、試料を試料容器(2)に適用して、試料が複数の多孔膜(4)の第一多孔膜と接触するように、重力又は装置に加えられる何らかの外力の結果として試料が流動する。複数の多孔膜は、溶出した標的のための貯蔵容器としての役割も果たし得るろ液キャップと液体連通がある膜支持体(5)上に位置し得る。ろ液キャップ(6)も提供される。装置は、分解して、複数の多孔膜を交換し得るので、再利用に適する。図2は、再利用できない本発明の単回使用ろ過装置の一例を示す。
【0055】
図3aは、本発明に従ったマルチウエルろ過装置の一例を示す。各々のウエルは、一方が他方の上に積み重ねられた少なくとも2つの膜(30及び31)を含む。図3bは、本発明に従ったマルチウエルろ過装置を含む装置のもう1つの例を示す。装置は、カラー内に位置するカラーガスケット(33)を含む、取り外し可能なカラー(32)を含み得る。カラー(32)は、ウエルの少なくとも1つが2以上の多孔膜からなり、第一多孔膜が第二多孔膜より小さい名目上の孔径を有する、複数のウエルを含むろ過プレート(34)とかみ合っている。多孔膜は、一方が他方の上に積み重ねられ得る。ろ過プレート(34)は、複数のウエルからなる収集プレート(35)の上に位置し得る。収集プレートのウエルは、ろ過プレートのウエルに1つずつ対応し得る。収集プレートは、真空多岐管を含み得る基部(36)上に位置し得る。
【0056】
図4は、本発明に従ったマルチウエルろ過装置のもう1つの例を示す。この装置は、試料を受け取り、これを、ウエルの少なくとも1つが1以上の多孔膜からなる、試料、例えば大容量試料を受け取るための複数のウエルからなる取り外し可能なろ過プレート(42)に接触させるためのホッパー(41)を含み得る。ろ過プレートは、マルチウエルプレート、例えばZiptip(登録商標)(Millipore Corp,Billerica,MA)(43)の上に位置し得る。Ziptip(登録商標)プレートのウエルは、ろ過プレートのウエルに1つずつ対応し得る。Ziptip(登録商標)は、RNAのような核酸を保持するのに適した樹脂又は他の固体支持体を含み得る。特定実施形態において、樹脂はポリA、ポリU又はポリTセファロースからなり得る。Ziptip(登録商標)プレートは、複数のウエルからなる収集プレート(44)の上に位置し得る。ウエルは、Ziptip(登録商標)プレートのウエルに1つずつ対応し、増幅オリゴ再構成酵素と共に再構成増幅試薬のようなTMA試薬を含有し得る。収集プレートは、マルチスクリーン真空多岐管を含む基部(45)内に位置し得る。
【0057】
図5は、本発明に従った単一試料ろ過装置のもう1つの例を示す。この装置は、細胞を保持するのに適した1以上の多孔膜を含むMicrofil(登録商標)又はMilliflex(登録商標)(51)(Millipore Corporation,Billerica,MA)のような貯蔵容器を含む。貯蔵容器は、標的核酸分析物を保持するのに適した核酸捕獲樹脂を負荷したマイクロカラム(53)の上に位置し得る。マイクロカラムは、カラムを通して溶解産物を引き上げるのに適したシリンジ(53)と液体連通であり得る。
【0058】
図6aは、密封閉鎖ドーム型ろ過装置の3つの例を示す。閉鎖ドーム型装置は、無菌状態の下で試料を処理することを提供し得る。ドームは、1以上の多孔膜のための框体として使用でき、試料又は試薬のための注入口の役割をしない、1以上の通気口をさらに含み得る。通気口は、空気及び他の気体の通過を許容するが、微生物のような微粒子物の通過を妨げる何らかの適切な材料からなり得る。1つの実施形態では、通気口は、気体アクセス可能な疎水性障壁からなる。親水性障壁も考慮される。一部の実施形態では、通気口はドーム型框体構造の表面に位置し得る。もう1つの実施形態では、通気口は、1以上の多孔膜を含有するドーム型框体の一部と連通している注入口のようなドーム型框体の一部へと導く側枝として位置し得る。試料がろ過装置を通って流れるとき、通気口は、ルアーロック型栓を使用することによって閉じた状態に保持され得る。栓は、固体材料で構成され得るか、又はそれ自体に通気口があり、従って疎水性膜のような膜障壁で構成され得る。通気口の使用は、圧を低減し、従ってろ過器への損傷を防ぐ手段を提供し得る。
【0059】
図6bは、複数の積み重ねられた膜カートリッジを含む、本発明に従った単回使用膜装置の一例を示す。装置内の各々のカートリッジは、次の隣接カートリッジと液体交通がある。カートリッジは、1以上の多孔膜からなり得る。カートリッジが2以上の多孔膜を含む場合、膜は、カートリッジ内に含有されるその他の多孔膜と同じか又は異なり得る。一部の実施形態では、カートリッジ内の多数の膜は、加熱ポリプロピレンを用いて融合し得る。一例として、第一カートリッジは混合セルロースエステル(MCE)膜からなり、第一カートリッジの下に積み重ねられた第二カートリッジはガラス繊維膜からなり得る。MCEはガラス繊維フィルターより小さい名目上の孔径を有し得る。
【0060】
図7は、本発明の1つの実施形態に従った複数膜の通気口付き装置の一例を示す。この装置は、二方真空弁(逆止め弁組立部品)によってシリンジに接続され得る。二方向真空弁は溶液多岐管に配管され得る。溶液多岐管から、溶液容器(すなわち試料、溶解、洗浄、溶出溶液/緩衝液)及び空気通気口に接続された多数のラインが出て行く。各々の溶液ラインは、電気ピンチ弁によって制御され得る。装置内の第一多孔膜の表面上で細胞を捕獲し、溶解するため、及びその後装置内の積み重ねられた膜から核酸を捕獲し、洗浄し、溶出するために、試料、次いで溶解緩衝液、次いで洗浄液、次いで溶出緩衝液が各々順次導入され得る。装置の第一多孔膜は、MCE、PESのようなポリマーからなり得る。第二多孔膜は、ガラス繊維のようなシリカからなり得る。ポリマー膜の名目上の孔径は、シリカ膜の名目上の孔径より小さくてよい。図7に示すシステムは、いかにして自動化を実施し得るかの一例である。
【0061】

分析物の吸着又はクロマトグラフィーのために多孔性ビーズに比べて膜を使用することの重要な利点は、2つの様式の間での液体の流動パターンの違いである。充填層におけるような多孔性ビーズを使用するとき、適用される対流中の分析物はフィルム表面に拡散し、その後ビーズの細孔内にも緩やかに拡散する。膜を使用するとき、適用される対流中の分析物は膜を通して速やかに移動し、フィルム表面に拡散するだけでよい。分析物の飽和結合は、潜在的に、ビーズよりも膜を使用してより迅速に達成され得る。膜によって意味されるのは、これを通して様々な推進力下で質量移動が起こり得る、この縦寸法よりもはるかに大きい横寸法を有する構造である。
【0062】
バルク対流が膜表面に対して垂直である通常の流動装置に加えて、放射状流動装置も分析物の吸着及びクロマトグラフィーのために使用できる。放射状流動装置においては、流れは、多孔性円筒状フリットの周りを包む膜を通過する。流れは、内から外へ又は外から内に向かって起こり得る。
【0063】
本発明において使用する膜は、当分野で公知のいかなる多孔性材料でも構成され得る。適切な多孔性材料の例は、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、例えばアガロース、セルロース、多糖、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエステル、フッ化ポリビニリデン、ポリプロピレン、フルオロカーボン、例えばポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル))、ポリカーボネート、ポリエチレン、ガラス、ポリカーボネート、セラミック、ナイロン、グラファイト繊維及びカーボンナノチューブのような金属及び炭素ベースの材料を含むが、これらに限定されない。
【0064】
ある特定実施形態では、第一膜は、混合セルロースエステル膜(MCE)のような混合セルロース又はポリエーテルスルホン(PES)のようなスルホン基からなるポリマーで構成され得る。第二膜は、ガラス又はガラス繊維で構成され得る。一部の実施形態では、核酸、例えばRNAを保持するのに適した樹脂を第二膜の代わりに使用し得る。捕獲プローブを含む選択的第三膜を所望する場合、第三膜はナイロンで構成され得る。
【0065】
当業者は、本発明における使用に適した材料からなる他の膜を、膜の疎水性及びζ電位に基づいて選択し得る。液体と接触している全ての微粒子物又は巨視材料は、これらの表面で電子電荷を獲得する。ζ電位はこの電荷の表示であり、コロイド状懸濁液又は乳剤の安定性を予測し、制御するために使用できる。流動電位/荷電電流法が膜のζ電位を測定するために使用し得る(例えばLuら、2006,J.Colloid.Interface Sci.299(2)972;Haggardら、2005,Langmuir 21(16):7433;Wernerら、1998,J.Colloid.Interface Sci.208(1)239参照)。ζ電位は物質の表面静電状態の指標である。核酸と物質の相互作用が主として静電気によって導かれる場合、pH範囲全体にわたって同じζ電位プロフィールを有する2つの物質は、同じセットの条件下で核酸と相互作用するこれらの能力に関して同様に反応するはずである。高塩から低塩条件への切り替えを含む核酸精製プロトコールは、核酸を捕獲するために使用される物質のζ電位に対して感受性であると予想される。
【0066】
本発明の膜は、0.01μm−300μm、0.1μm−100μm、0.1μm−50μm、0.1μm−20μmの範囲の孔径を有し得る。ある実施形態では、膜の少なくとも1つは0.45μmの名目上の孔径を有する。特定実施形態では、膜の少なくとも1つは0.2μmの名目上の孔径を有する。本発明の膜は、0.1mm−10mmの範囲の厚さを有し得る。厚さとは、1つの外側表面からもう1つの外側表面までの距離を指し、力、例えば重力、真空を膜に適用したときに試料が膜を横切る間に移動する距離に相当する。膜は、対称又は非対称であり得る。膜はそれ自体、1つまたはそれ以上の層からなり得る。
【0067】
核酸試料
ここで使用する試料は、何らかの生物学的ソースに由来する核酸を含む物質を指す、生物学的ソースは、植物、動物、ウイルス粒子のような何らかの生物であり得る。生物学的ソースは、全生物又は生物に由来する器官又は組織を含む。生物学的ソースは、単細胞、例えば細菌、マイコプラズマ、又は多細胞、例えば動物又は植物、又は非細胞、例えばウイルスであり得る。細胞ソースは、真核細胞、原核細胞を含み得る。真核細胞の例は、何らかの哺乳動物、例えばヒト、非ヒト霊長動物、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ラット、ウサギ、マウス、モルモットに由来する細胞を含み得る。原核細胞の例は、エシエリヒア・コリ(Escherichia coli)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、スタフィロコッカル・アウレウス(Staphylococcal aureus)のようなグラム陰性菌及びグラム陽性菌を含む。試料は、全細胞又はこの溶解産物を含み得る。試料は、天然に生じる試料又は人の手によって部分的に又は全面的に創造された又は操作されたものを含み得る。
【0068】
ここで開示する方法に従った単離のための標的核酸は、DNA、RNA、PNA、LNA、及び2つ以上の種類の核酸の雑種を含む、試料中に認められる何らかの核酸を含む。核酸は、二本鎖、一本鎖又は多重鎖であり得る。標的がDNAである場合、DNAは、プラスミドDNA、ベクターDNA、ゲノムDNA(ミトコンドリアDNAを含む)又は前記のいずれかのフラグメントであり得る。標的がRNAからなる場合、RNAは、mRNA、tRNA又はrRNA、例えば16s RNA、23s RNA又はこれらの何らかの組合せであり得る。核酸は、ヌクレオチド類似体、例えば鎖ターミネータからなり得る。標的核酸の大きさは2−30ヌクレオチドの範囲をとり得るか、又はキロベース以上の範囲であり得る。
【0069】
キット
本発明はまた、試料から核酸を単離するために使用し得るキットを提供する。キットは、1以上の本発明に従ったろ過装置及び1以上の容器を含み得る。装置は、1以上の対照又は試料標的核酸又は標本を含有し、本発明の方法において有用な種々の緩衝液を場合により含み得る。一例として、キットは、ウイルス粒子又は細胞を溶解するのに適した溶解緩衝液を含み得る。試薬又は非特異的に保持された又は結合された物質を除去するための洗浄緩衝液も、場合によりキットに含まれ得る。他の任意に用いられるキット試薬は、結合標的核酸を膜から溶出するための溶出緩衝液を含む。緩衝液の各々は、溶液として別々の容器中で提供され得る。あるいは、緩衝液は、乾燥形態で又は粉末として提供されてよく、使用者の所望適用に応じて溶液として作製されてよい。この場合、緩衝液はパケット中で提供され得る。キットは、装置が自動化される場合は電源を提供し、並びに真空ポンプのような外力を与える手段を提供し得る。キットはまた、装置を使用するため及び/又は本発明に従った装置及び方法と共に使用するのに適した試薬を作製するための指示書を含み得る。本発明の方法を実施する間又は本発明の装置を使用する間に得られるデータを記録し、分析するための選択的ソフトウエアも含まれ得る。
【0070】
微生物を検出するための方法及びオリゴヌクレオチド
ある実施形態では、本発明は、試料中の微生物を検出するのに適したオリゴヌクレオチドを提供する。このオリゴヌクレオチドは、DNA又はRNAからなり得、微生物のゲノムの少なくとも一部に特異的に結合し得る。微生物は、マウス微小ウイルス(MVM)を含むパルボウイルス又はマイコプラズマのようなウイルスであり得る。
【0071】
ここで使用する、特異的に結合するとは、窒素含有塩基の対合、例えばグアニンを含むヌクレオチドがこの相補物、すなわちシトシンを含むヌクレオチドに特異的に結合することを指す。同様に、アデニンを含むヌクレオチドは、この相補物、すなわちチミジンを含むヌクレオチドに特異的に結合する。典型的には、配列は、中ストリンジェンシー条件下でこの相補物に特異的に結合し得る。
【0072】
1以上の前記オリゴヌクレオチドは、1以上の種のマイコプラズマ又はMVMのゲノムの少なくとも一部に特異的に結合する、DNA配列又はRNA配列のような短い核酸配列を含み得る。典型的には、オリゴヌクレオチドは、10ヌクレオチドから40ヌクレオチド長の、15ヌクレオチドから35ヌクレオチド長の、20ヌクレオチドから30ヌクレオチド長の範囲である。
【0073】
従って、本発明は、(a)配列番号4、5、6、7、8、9、10、11及び/又は12のヌクレオチド配列を含むDNA;(b)中ストリンジェンシー条件下で配列番号4、5、6、7、8、9、10、11及び/又は12のいずれかによってコードされるDNAにハイブリダイズすることができるDNA;(c)高ストリンジェンシー条件下で(a)のDNAにハイブリダイズすることができるDNAから選択される単離DNA配列を提供する。
【0074】
もう1つの実施形態では、本発明の核酸分子はまた、配列番号4、5、6、7、8、9、10、11及び/又は12に少なくとも80%同一であるヌクレオチド配列を含む。核酸分子が、配列番号4、5、6、7、8、9、10、11及び/又は12に少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、又は少なくとも99.9%同一である配列を含む実施形態も考慮される。一致率は、配列の長さ全体にわたる同一性を含み得る、例えば1以上のヌクレオチドが1以上の異なるヌクレオチドで置換されていてもよく、又は配列の一部のトランケーションを含み得るか、又はこの両方の組合せを含み得る。一致率は、視覚検査及び数学上の計算によって決定され得る。又は、2個の核酸配列の一致率は、Devereuxら、1984,Nucl.Acids Res.12:387によって記述され、ウィスコンシン大学遺伝学コンピュータグループ(the University of Wisconsin Genetics Computer Group)(UWGCG)より入手可能なGAPコンピュータプログラム、バージョン6.0を用いて配列情報を比較することによって決定できる。GAPプログラムのための好ましいデフォールトパラメータは、(1)ヌクレオチドに関する単一比較マトリックス(同一に対し1及び非同一に対し0の値を含む)、及びSchwartzとDayhoff編集、1979、Atlas of Protein Sequence and Structure,National Biomedical Research Foundation,pp.353−358によって述べられているような、GribskovとBurgess 1986,Nucl.Acids Res.14:6745の加重比較マトリックス、(2)各々のギャップについて3.0のペナルティー及び各々のギャップ内の各々のシンボルについて付加的な0.10ペナルティー;及び(3)末端ギャップについてはペナルティーなしを含む。配列比較の当業者によって使用される他のプログラムも使用し得る。
【0075】
ここで使用する、中ストリンジェンシーは、例えばDNAの長さに基づき、当業者によって容易に決定され得る条件を含む。基本条件は、Sambrookら、1989、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版、1:1、101−104、Cold Spring Harbor Laboratory Pressによって述べられ、5X SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)を含む予備洗浄溶液、42℃で50%ホルムアミド、6XSSCのハイブリダイゼーション条件(又は42℃で50%ホルムアミド中の、スターク溶液のような他の類似ハイブリダイゼーション溶液)、及び60℃、0.5X SSC、0.1%SDSの洗浄条件の使用を含む。
【0076】
ここで使用する、高ストリンジェンシーは、例えばDNAの長さに基づき、当業者によって容易に決定される条件を含む。一般に、このような条件は、約68℃、0.2XSSC、0.1%SDSでの洗浄を伴う、上記のようなハイブリダイゼーション条件と定義される。当業者は、温度及び洗浄溶液の塩濃度は、オリゴヌクレオチドの長さのような因子に従って必要に応じて調節できることを認識する。
【0077】
2個のオリゴヌクレオチドは、重合反応、例えばRT−PCR、リアルタイムPCRを含むPCRにおけるプライマーとして働き得る。PCRにおいては、特定DNA配列にハイブリダイズし、従ってポリメラーゼによるDNA合成の開始を促進する2個のプライマーを使用する。プライマーは相補的DNA鎖に結合し、反対方向のDNA合成を開始させる。3番目のオリゴヌクレオチドは、増幅された配列内に含有される核酸配列の少なくとも一部に結合することにより、PCR増幅配列を検出するためのプローブとして働き得る。オリゴヌクレオチドの少なくとも1個は、ペプチド核酸(PNA)であり得る。ペプチド核酸は、通常DNA及びRNA内に存在する、デオキシリボース又はリボース糖骨格がペプチド骨格に置き換えられた核酸分子である。PNAを作製する方法は当分野において公知である(例えばNielson,2001,Current Opinion in Biotechnology 12:16参照)。
【0078】
ある実施形態では、微生物中に含有される標的核酸配列を検出することが望まれ得る。そこで、オリゴヌクレオチドの少なくとも1個を検出可能な物質で修飾し得る。適切な検出可能物質は、蛍光染料のような染料、32Pのような放射性標識及び1以上の付加的な分子の結合によって検出される分子を含む。例えばオリゴヌクレオチドは、1以上の抗体に結合することによって検出され得る、ジオキシゲニンの付加によって修飾し得る。抗体もまた、1以上の検出可能な物質を含むように修飾し得る。検出可能物質はオリゴヌクレオチドプローブ上に位置し得るか、又は検出可能物質は、増幅反応におけるプライマーとして働くオリゴヌクレオチドの1個以上に位置し得る。
【0079】
検出可能物質がリアルタイムPCRにおいて使用される蛍光染料である場合、オリゴヌクレオチドはまた、消光剤で標識し得る。リアルタイムPCRは一般に、隣接位置に保持される蛍光レポーターと消光剤を有するプローブで実施される。消光剤とレポーターの密接な近接がこの蛍光を妨げ、蛍光が見られるのはプローブが分解したときだけである。このプロセスは、関与するポリメラーゼの5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性に依存する。DNAの融解して、プローブは鋳型DNAの対象領域内のこの相補的配列に結合することができる(プライマーも同様である)。ポリメラーゼを活性化するためにPCRを加熱するとき、ポリメラーゼはプライミングされた一本鎖DNAに対する相補鎖の書き込みを開始する。重合が持続して、この相補的配列に結合したプローブに達する。化学的には、ポリメラーゼがプローブに「過剰書き込みし」、これを別々のヌクレオチドに分解して、これによって蛍光レポーターと消光剤を分離する。これは蛍光の上昇を生じさせる。PCRが進行すると共に、ますます多くの蛍光レポーターがこの消光剤から遊離され、広く定義された蛍光の幾何上昇を生じさせる。これは、最終的な、及び従って最初のDNAの量の正確な測定を可能にする。
【0080】
特定実施形態では、本発明は、試料中のマイコプラズマを検出するのに適した1以上のオリゴヌクレオチドを提供する。意外にも、本発明者らは、複数のマイコプラズマ種のゲノムの少なくとも一部に特異的に結合する複数のオリゴヌクレオチドを発見した。従ってある実施形態では、オリゴヌクレオチドは少なくとも12種のマイコプラズマに特異的に結合する。本発明に従った1以上のオリゴヌクレオチドを用いて検出し得るマイコプラズマ種は、マイコプラズマ・オラーレ(M.orale)、マイコプラズマ・ヒオリニス(M.hyorhinis)、マイコプラズマ・ガリセプチカム(M.gallisepticum)、マイコプラズマ・ニューモニエ(M.pneumoniae)、マイコプラズマ・シノヴィエ(M.synoviae)、マイコプラズマ・ファーメンタンス(M.fermentans)、A.laidlwaii、マイコプラズマ・アルギニニ(M.arginini)、マイコプラズマ・ホミニス(M.hominis)、M.pirum、マイコプラズマ・サリバリウム(M.salivarium)、マイコプラズマ・アルスリチジス(M.arthritidis)を含む。
【0081】
本発明はまた、a)試料から核酸を単離すること;b)単離した核酸を本発明に従った複数のオリゴヌクレオチドと接触させること;c)試料からの単離核酸の少なくとも一部を増幅し、これによって試料中の微生物を検出することを含む、試料中の微生物を検出する方法を提供する。前記方法は、増幅した核酸を、検出可能物質で標識したオリゴヌクレオチドプローブと接触させる任意のステップをさらに含み得る。あるいは、一部の実施形態では、例えばリアルタイムPCRを使用する場合、ステップb)は、単離した核酸を、検出可能物質、例えばプローブからなる少なくとも1個のオリゴヌクレオチドと接触させることを含み得る。
【実施例1】
【0082】
シュードモナス・エルギノーサからのrRNAの単離
トリプティックソイブロス(TSB)4ml中で一晩増殖させたシュードモナス・エルギノーサ培養物を、35℃で対数期まで増殖させるためにTSB20ml中に移した。600nmでの測定光学密度は0.888であった。プレートの計数は、4.1E08コロニー形成単位/ミリリットル(cfu/ml)のコロニー濃度を明らかにした。培養物をTSB中で100倍希釈した(4.1E06cfu/ml)。
【0083】
ミリポア微量分配装置(図1)(Millipore Corporation,Billerica,MA)に、提供されたYMT膜の代わりに13mmのAPFF0.7ミクロンガラスフィルター(下部膜)及び13mmの混合セルロースエステル(MCE)0.45ミクロン膜(上部膜)を取り付けた。2番目のミリポア微量分配装置には、提供されたYMT膜の代わりに13mmのMCE0.45ミクロンだけを取り付けた。
【0084】
TSB中に4.1E06cfuシュードモナス・エルギノーサ1mlを含む陽性対照を4℃、10,000rpmで10分間遠心分離にかけてペレットにした。
【0085】
微量分配装置にシュードモナス・エルギノーサ(4.1E08cfu又は4.1E06cfu)1mlを添加した。負荷した装置を4℃、4000rpmで5分間遠心分離した。ろ液を廃棄した。TE中の鶏卵白リゾチーム(100μl、0.4mg/ml)を微量分配装置に添加した。室温で上部膜と10分間接触させた後、Qiagen RNAeasy Minikit(登録商標)(Qiagen,Inc.,Valencia,CA)からの25−50%チオシアン酸グアニジニウムを含むRLT緩衝液350ul及びエタノール250μlを含む溶液600μlを添加し、5分間上部膜上に置いた。装置を4℃、4000rpmで5分間遠心分離した。2つの膜を有する微量分配装置からのろ液を廃棄した。1つの膜だけを有する微量分配装置からのろ液を、Qiagen RNAeasy Minikit(登録商標)(Qiagen,Inc.,Valencia,CA)からのQiagenミニカラムに添加した。陽性対照ペレットを同様にマイクロチューブでの溶解に供し、その後同じくQiagen RNAeasy Minikit(登録商標)カラム(Qiagen,Inc.,Valencia,CA)に添加した。微量分配装置及びQiagenカラムを、2.5−10%チオシアン酸グアニジニウム及び2.5−10%エタノール含むRW1緩衝液700μl(Qiagen RNAeasy Minikit(登録商標))(Qiagen,Inc.,Valencia,CA)で洗浄し、4℃、4000rpmで5分間遠心分離して、その後Qiagen RNAeasy Minikit(登録商標)(Qiagen,Inc.,Valencia,CA)からのRPE緩衝液500μlで2回洗浄した。全てのろ液を廃棄した。RNアーゼ不含水100μlを2回連続的に添加して溶出を実施した。
【0086】
2つの膜装置、Qiagenカラムと接続した1つの膜装置、又はQiagenカラム単独からの溶出物試料を、製造者の指示に従って(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)1.2%アガロース前染色したSybersafe E−gel PowerBase(商標)のウエルに適用した。ゲルを15分間泳動させた。LAS−3000(Fujifilm Global,Japan)でUV励起及び青色光放出を用いて核酸バンドを視覚化した。結果は、本発明の二重膜ろ過装置から単離したrRNAが、いかなる見かけ上のゲノムDNA汚染も含まない16s及び23s RNAを生じたことを明らかにする。これに対し、Qiagenカラムを通した試料は、有意の検出可能なゲノムDNAバンドを有した(図8)。MCEフィルター上で溶解し、その後Qiagenカラムを通した試料は、見かけ上のゲノムDNA汚染を有さなかった(データは示していない)。
【実施例2】
【0087】
単離RNAの定量
上記実施例1で述べたようにMCE膜、次にガラス膜を通して並びにMCE膜、次にQiagenカラム(Qiagen,Inc.,Valencia,CA)を通して処理した試料から単離したRNAを定量するためにRT−PCRを使用した。細菌細胞ペレット(同じく上記実施例1で述べた)を対照として使用した。
【0088】
以下の23Sシュードモナス・エルギノーサ特異的プライマーを購入した。
【0089】
【化1】

【0090】
蛍光タグ及び消光剤で標識した上記プローブを用いてリアルタイムPCRを実施した。PCR産物の生産はプローブ上のタグ及び消光剤の切断を生じさせ、従って蛍光シグナルの生成をもたらし、この蛍光シグナルを、標準曲線と共に使用して、PCR産物を定量した。公知濃度のシュードモナス・エルギノーサrRNA転写産物を、出現時間(CT)及び核酸分子の標準を生成するために使用した。閾値サイクル数(CT)は、RT−PCRの反応についての蛍光シグナルがあらかじめ定められた蛍光閾値と交差する部分サイクル数(fractional cycle number)を指す。rRNAコピー数をCT値と相関させるために、シュードモナス・エルギノーサrRNAの公知量とCT値の間の直線関係をまず確立した。この標準曲線を、次に、処理した試料から精製したシュードモナス・エルギノーサrRNAのコピー数を測定するために使用した。
【0091】
ワンステップRT−PCRマスターミックスキット(ABI)を使用した。15μlの最終容量になるように、正プライマー(300nM)を逆プライマー(10nM)、プローブ(50nM)、2X RT−PCRミックス、逆転写酵素及び試料からの溶出物RNA10μlと混合した。ABI7000サイクラー(Applied Biosystems,Inc.,Foster City,CA)において、以下のサイクリングプログラムを実施した。
【0092】
1.50℃、30分間
2.95℃、10分間
3.95℃、0.15分間、40サイクル
4.62℃、1分間。
【0093】
逆転写酵素を含む及び含まない、試料及び陽性及び陰性対照(鋳型なし)中に存在するRNAの定量を三重で実施した。
【0094】
ガラスフィルターでの捕獲の前にMCE膜を使用することによって得られる選択的RNA精製の程度を、定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR)(リアルタイムPCR)を用いて明らかにした(図9及び表1)。各々の試料についてのDNA対RNAの相対量を、各々の試料について逆転写酵素の存在下と不在下でPCRを実施することによって確立した。逆転写酵素の不在下では、ゲノムDNAだけが増幅された。逆転写酵素の存在下では、その後PCRを実施したときDNAとRNAの両方が増幅されたが、特定標的配列についてのRNAの出発コピー数は、ゲノムDNAに由来する出発コピーに比べて実質的に過剰(≧1000の係数)であった。この事実のために、リボソームRNAに関するPCRで逆転写酵素を使用したとき、認められた増幅シグナルは基本的にRNAのシグナルだけであった。逆転写酵素の存在下と不在下での標的遺伝子コピー数の比率(公知の出発核酸濃度による標準曲線から導かれる)を測定することにより、MCE膜上での捕獲細胞の溶解に関してゲノム汚染DNAの劇的な低下が達成された。増幅核酸シグナルについてのコピー数は、実験的CT値を、シュードモナス・エルギノーサrRNAの公知量に関して定義した標準曲線上のこれの対応するコピー数値に相関させることによって決定した。noRT(逆転写酵素なし)コピー数は、試料中に存在するDNAコピーの数(又はRNAを所望する場合はDNA汚染のレベル)を表わす。ペレット対照を標準として設定した場合、MCE膜又は二重膜アプローチの使用によって達成されるRNA精製の程度は容易に決定された(表1)。3つの試料のnoRT反応についてのコピー数は以下の数値を有した。陽性対照(6.63E+07コピー)、MCE膜、次にQiagenカラム(1.42E+06コピー)、MCE/APFF膜(3.05E+05コピー)。MCE膜を通して処理した試料は、はるかに少ない回収可能DNAを示し、従ってより純粋なRNA試料を提供する。従って、2桁に近い相対精製がMCE膜を使用して達成された(図9)。
【0095】
【表1】

【実施例3】
【0096】
単離RNAのマルチスクリーン分析
シュードモナス・エルギノーサ細胞(1.83E06cfu)を、Millipore Multiscreenマニホールド(Millipore Corporation,Billerica,MA)上に挿入した、0.01%ペプトンのあらかじめ湿らせた0.45ミクロンMCE96穴プレート上で捕獲した。次に、捕獲した細胞を0.01%ペプトン300ulで洗った。1.0ミクロンのガラス繊維B型プレート(Millipore Corporation,Billerica,MA)をMCEプレート(Millipore Corporation,Billerica,MA)の下に積み重ねた。Qiagen RNAeasy Minikit(登録商標)(Qiagen Inc.,Valencia,CA)からのRLT緩衝液100ul及びエタノール1000μlを含む溶液200μlを添加し、上部プレートの上に5分間置いた。溶解産物溶液のろ過後、上部フィルタープレートを除去し、廃棄した。ガラス繊維フィルタープレートをRW1緩衝液(Qiagen,Inc.,Valencia,CA)200μl及びRPE緩衝液(Qiagen,Inc.,Valencia,CA)200μlで1回洗った。次に、ウエルを乾燥させるためにフィルタープレートをエタノール300μlで2回洗った。回収収集プレート(Millipore Corporation,Billerica,MA)をガラスフィルタープレートの下に加えた。各々RNアーゼ不含水100μlでの連続溶出により、核酸をガラス繊維プレートから溶出した。
【0097】
細菌リボソームRNAの相対純度を測定するため、48ウエル2%透明アガロースE−ゲル(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)に、まず1:1000希釈したSyber Gold染料(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)5μl及び試料溶出物15μl又は0.5−10Kb RNAラダー60ng(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)を負荷した。ゲルを30分間泳動させた。LAS−3000(Fujifilm Global,Japan)でUV励起及び青色光放出を用いて核酸バンドを視覚化した。
【0098】
細胞捕獲、溶解及び選択的核酸単離のプロセス全体を、Milliporeマルチスクリーンマニホールド(Millipore Corporation,Billerica,MA)のマルチフィルタープレート型を用いて実施した。細胞を、まずMCEフィルタープレートでの真空ろ過によって捕獲した。次にガラス繊維フィルタープレートをMCEフィルタープレートの下に置いた。QiagenのグアニジンベースのRLT緩衝液(Qiagen,Inc.,Valencia,CA)の50%溶液及びエタノールで細胞溶解を実施した。2つのプレートでのろ過は、ガラス繊維プレー上のRNA保持を生じさせた。上部MCEプレートを廃棄した後、ガラス繊維プレートをQiagen RW1及びRPE緩衝液(Qiagen,Inc.,Valencia,CA)で洗った。次にエタノールろ過によってプレートを乾燥させた。水100μlによる2回の連続溶出を実施した。
【0099】
結果は、見かけ上汚染ゲノムDNAを伴わないリボソームRNA(16S、23S)が多重様式で得られることを明らかにした。
【実施例4】
【0100】
細胞培養上清からのウイルスDNAの単離と検出
マウスのパルボウイルス微小ウイルスに感染させた指標細胞系ヒトNB−324Kから上清を収集した。上清のウイルス力価は8log10TCID50/mlと算定された。
【0101】
限外ろ過ポリエーテルスルホン膜(名目上の孔径28nm)の2つの層を密封通気口付きドーム型Millipore装置に挿入した(図6a)。2番目の密封通気口付きドーム型Millipore装置は、Millipore APFFガラス繊維膜(0.7ミクロン)を含有した。この装置を、ルアーロック型排出口を注入口に接続するルアースリップによって1つをもう1つの上に積み重ねた。
【0102】
ウイルス含有細胞培養上清0.5mlを第一膜装置に適用した。第二装置を順次第一装置の後に置いた。Qiagen RNAeasy Minikit(登録商標)(Qiagen,Inc.,Valencia,CA)からの25−50%チオシアン酸グアニジニウムを含むRLT緩衝液500ul及びエタノール500μlを含む溶液1mlをシリンジによって添加し、10分間上部膜上に置いた。シリンジを用いて装置を空気で洗い流すことによって過剰の液体を除去した。連続する密封通気口付きドーム型装置を、2.5−10%チオシアン酸グアニジニウム及び2.5−10%エタノールを含むRW1緩衝液1ml(Qiagen RNeasy Minikit(登録商標))(Qiagen,Inc.,Valencia,CA)で洗浄し、その後Qiagen RNeasy Minikit(登録商標)(Qiagen,Inc.,Valencia,CA)からのRPE緩衝液1mlをシリンジで添加して2回洗浄した。全てのろ液を廃棄した。シリンジで空気を添加して微小分配装置を乾燥させた。装置を分離し、ヌクレアーゼ不含水500μlを添加して各々からの溶出を実施した。
【0103】
微小分配装置及びQiagen緩衝液によって単離したDNAを定量するためにリアルタイムPCRを使用した。あらかじめ定量したウイルス核酸を対照として使用した。正及び逆プライマー、蛍光標識及び消光剤と結合したプローブ、水、鋳型及びABI 2X Universal TaqMan PCR Master Mixを、最終容量20ulになるように添加した。MVMに特異的な以下のプローブ及びプライマーを使用した;
正プライマー(MVMJ02275f1):
【0104】
【化2】

【0105】
BioRad Chromo4装置でサイクリングを実施した。1)50℃、2分間、
2)95℃、10分間、3)95℃、0.15分間、4)60℃、1分間、5)工程3に進む、39回。
【0106】
【表2】

【0107】
対照標準核酸は、予想されたように増幅した。ウイルスDNAは、APFF及び限外ろ過ポリエーテルスルホン(UF PES)膜(表2ではVRと表わされている)から成功裏に回収され、検出された。APFF膜はUF PES膜よりも多くの核酸を保持した。
【実施例5】
【0108】
マイコプラズマ・ヒオリニスからのrRNAの単離と定量
マイコプラズマ・ヒオリニスの1日培養物を、37℃、7%COにおいて、マイコプラズマブロス培地を含有する血清50ml中で増殖させた。この培養物は、2.4×10cfu/mlのコロニー濃度を有した。培養物を0.1%ペプトン中で1000倍希釈した。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の培養物を計数し、1.1×10細胞/mlの濃度を有することを認めた。
【0109】
10ミクロンの名目上の孔径を有する25mm Milliporeポリプロピレンプレフィルター(Millipore Corporation,Billerica,MA)と、0.5μm−0.1μmポリエーテルスルホン膜(PP10−HVEP)を含有する密封ドーム型通気口付きMillipore装置を用意した。25mm APFFガラスフィルターを含有する第二装置も用意した。
【0110】
陽性対照は、細菌を含有する溶液試料についての製造者の提示プロトコールに従ってQiagen RNAeasy Kit(Qiagen,Valencia,CA)を通して処理した、0.1%ペプトン1ml中2.4×10のマイコブラズマ・ヒオリニスであった。
【0111】
試料を導入する前に、10mlシリンジを用いて0.1%ペプトン3mlを各々の装置に通した。2個のPP10−HVEP装置に0.1%ペプトン3mlを添加した。2個のPP10−HVEP装置に、0.1%ペプトン3ml中の100倍希釈マイコプラズマ・ヒオリニス100μlを添加した。さらに2個のPP10−HVEP装置に、CHO細胞懸濁液3ml中の100倍希釈マイコプラズマ・ヒオリニス100μlを添加した。試料を添加し、10mlシリンジで装置に通した。各装置に付きQiagen RLT緩衝液+エタノール(1:1)溶液1mlを10mlシリンジに取り、液体1又は2滴が装置の底部から出現するまで装置に添加した。APFF装置を各々のPP10−HVEP装置の底部にしっかりと付加した。RLT−エタノール溶液を室温で5分間フィルター上に置き、その後溶液を装置から除去した。装置を分離し、APFFフィルターを有する装置をさらに処理した。Qiagen RW1緩衝液1mlを10mlシリンジでAPFFフィルター装置に通した。Qiagen RPE緩衝液1mlを10mlシリンジでAPFFフィルター装置に通し、その後1回反復した。次にヌクレアーゼ不含水500μlをAPFFフィルター装置に添加し、通過させて、チューブに収集した。
【0112】
装置を通して処理した試料をウルトラフリーザーで30分間凍結し、その後Savant DNA120 SpeedVac(中、手動設定でのシステム)(Thermo Electron Corp.,Waltham,MA)に入れた。SpeedVacでの濃縮の間、試料には熱を適用しなかった。乾燥物質をヌクレアーゼ不含水50μlに再懸濁した。
【0113】
リアルタイムPCRを実施した。出現時間(CT)及び核酸分子の標準を生成するために公知濃度のRNA転写産物を使用した。閾値サイクル数(CT)は、RT−PCRの反応についての蛍光シグナルがあらかじめ定められた蛍光閾値と交差する部分サイクル数を指す。rRNAコピー数をCT値と相関させるために、マイコプラズマ・ヒオリニスrRNAの公知量とCT値の間の直線関係を最初に確立した。この標準曲線を、次に、処理した試料から精製したマイコプラズマ・ヒオリニスrRNAのコピー数を測定するために使用した。
【0114】
ワンステップRT−PCRマスターミックスキット(Applied Biosystems,Foster City,CA)を使用した。25μlの最終容量になるように、正プライマー(400nM)を逆プライマー(400nM)、プローブ(300nM)(蛍光タグ及び消光剤で標識)、2X RT−PCRミックス、逆転写酵素、及び試料からの溶出物RNA5μlと混合した。このアッセイで使用したプライマー及びプローブは以下の通りであった。
【0115】
【化3】

【0116】
ABI7000サイクラーにおいて、以下のサイクリングプログラムを実施した。
【0117】
1.50℃、30分間
2.95℃、10分間
3.95℃、0.15分間、40サイクル
4.55℃、1分間。
【0118】
逆転写酵素を含む及び含まない、試料及び陽性及び陰性対照(鋳型なし)中に存在するRNAの定量を三重で実施した。結果を表3に示す。
【0119】
【表3】


【0120】
試料Neg No.1及びNeg No.2は陰性対照であり、マイコプラズマは存在しなかった。試料Myco No.3及びMyco No.4は、マイコプラズマを有するがCHO細胞を有さず、膜を通して処理された。試料CHO+Myco No.5及びCHO+Myco No.6は、マイコプラズマとCHO細胞の両方を有し、膜を通して処理された。試料Myco Tube No.1及びMyco Tube No.2は、チューブ内でペレット化され、処理されたマイコプラズマを有する。試料、溶解ろ液No.1、溶解ろ液No.2、溶解ろ液No.3、溶解ろ液No.4、溶解ろ液No.5及び溶解ろ液No.6は、それぞれ試料Neg No.1、Neg No.2、Myco No.3、Myco No.4、CHO+Myco No.5及びCHO+Myco No.6への溶解緩衝液の添加後のろ液を指す。ろ液は、製造者の指示に従ってQiagen RNAeasy(登録商標) Minikitカラム(Qiagen,Valencia,CA)を使用して処理した。試料NoRTは、試料Myco No.3及びMyco No.4に関して逆転写酵素の不在下で実施した増幅反応を指し、試料中のDNA汚染の指標として含まれる。
【0121】
本明細書及び特許請求の範囲の中で使用する成分の量、反応条件等を表わす全ての数字は、全ての場合に「約」という用語によって修正されると理解されるべきである。従って、異なる指示がない限り、本明細書及び付属の特許請求の範囲において述べる数字パラメータは、本発明によって得られることを目指す所望特性に依存して変動し得る近似値である。少なくとも、及び特許請求の範囲の均等の原則の適用を制限しようとするのでなく、各々の数字パラメータは、有効桁数及び通常の数字丸めアプローチに照らして解釈されるべきである。
【0122】
当業者に明白であるように、本発明の多くの修正及び変法が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく実施し得る。ここで述べる特定実施形態は例としてのみ提供され、いかなる意味においても限定を意図しない。明細書及び実施例は単なる説明とみなされ、本発明の真の範囲と精神は以下の特許請求の範囲によって指示されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1a】微量分配装置からなる本発明のろ過装置の一例を示す。
【図1b】微量分配装置からなる本発明のろ過装置の一例を示す。
【図2】本発明のろ過装置の一例を示す。
【図3a】多数の試料又は大容量の試料を受け取るのに適したマルチウエル形式の本発明のろ過装置の一例を示す。
【図3b】多数の試料又は大容量の試料を受け取るのに適したマルチウエル形式の本発明のろ過装置の一例を示す。
【図4】多数の試料又は大容量の試料を受け取るのに適したマルチウエル形式の本発明のろ過装置のもう1つ別の例を示す。
【図5】単一試料型の本発明のろ過装置を示す。
【図6a】通気口付き及び通気口なしの閉鎖型の本発明のろ過装置を示す。
【図6b】積み重ね型の本発明のろ過装置を示す。
【図7】通気口付き閉鎖型の本発明のろ過装置を含む制御可能な自動システムを示す。
【図8】RNAeasy(登録商標)カラム(Qiagen,Valencia,CA)を用いて単離したrRNAと比較して、本発明の方法に従って単離したrRNAを示すアガロースゲルの写真である。
【図9】試料からのRNAの相対精製を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)複数の多孔膜を含むろ過装置を試料と、試料が第一多孔膜から始まって次に少なくとも第二多孔膜へと続く複数の多孔膜に順次接触するように、接触させること、b)試料を、第二多孔膜の名目上の孔径よりも小さい名目上の孔径を有する第一多孔膜上で、溶解すること、c)ろ過装置に外力を加え、これによって核酸を複数の多孔膜の少なくとも1つの膜上で単離することを含む、試料から核酸を単離する方法。
【請求項2】
ろ過装置を1以上の緩衝液又は洗浄試薬と接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ろ過装置を溶出緩衝液と接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
試料を第三多孔膜と接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第三多孔膜が捕獲プローブを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第一多孔膜がポリマーからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ポリマーが、多糖及びポリエーテルスルホンから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第二多孔膜がシリカからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
シリカがガラス繊維である、請求項9に記載の方法。
【請求項10】
試料が細胞からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
試料がウイルス粒子からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
試料がマイコプラズマからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ろ過装置に適用される試料が多糖を含む第一多孔膜から次にシリカを含む少なくとも第二多孔膜へと接触するように、順次配置された複数の多孔膜を含む、試料から核酸を単離するのに適したろ過装置。
【請求項14】
多糖がセルロースである、請求項13に記載のろ過装置。
【請求項15】
セルロースが混合セルロースエステルである、請求項14に記載のろ過装置。
【請求項16】
シリカがガラス繊維である、請求項13に記載のろ過装置。
【請求項17】
捕獲プローブからなる第三多孔膜をさらに含む、請求項13に記載のろ過装置。
【請求項18】
第一多孔膜が第二多孔膜の名目上の孔径よりも小さい名目上の孔径を有する、請求項13に記載のろ過装置。
【請求項19】
ろ過装置に適用された試料がスルホン基からなるポリマーを含む第一多孔膜から次にシリカを含む少なくとも第二多孔膜へと接触するように、順次配置された複数の多孔膜を含む、試料から核酸を単離するのに適したろ過装置。
【請求項20】
ポリマーがポリエーテルスルホンである、請求項19に記載のろ過装置。
【請求項21】
シリカがガラス繊維である、請求項19に記載のろ過装置。
【請求項22】
捕獲プローブからなる第三多孔膜をさらに含む、請求項19に記載のろ過装置。
【請求項23】
第一多孔膜が第二多孔膜の名目上の孔径よりも小さい名目上の孔径を有する、請求項19に記載のろ過装置。
【請求項24】
核酸がDNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
核酸がRNAである、請求項1に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−54660(P2008−54660A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−152593(P2007−152593)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】