説明

核酸ベクターの改変

本発明は、核酸ベクターがポリマーに共有結合しているポリマー改変核酸ベクターであって、該ポリマーは1個以上の陽性荷電4級アミノ基を有し、ここで該核酸ベクターは、ウイルス、細菌若しくはバクテリオファージ、真菌、胞子、真核細胞の核、又は遺伝情報を含む他の微生物断片若しくは成分よりなる群から選択される微生物であり、ここで(a)該ポリマー及び/又はこれと核酸ベクターとの結合は加水分解的、還元的、又は酵素的に分解可能であり、及び/又は(b)該陽性荷電4級アミノ基のそれぞれは、1個以上の分解性又は生体分解性結合を介してポリマー骨格に結合している、ポリマー改変核酸ベクター、を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは治療用トランス遺伝子又は活性の送達のための粒子ベクター(ウイルス、ウイルスの断片、及び自己集合性合成ベクターを含む)の生物学的及び/又は物理化学的性質を改変するための改良法に関する。本発明はまた、本発明の生物学的及び/又は物理化学的性質の改変、又は変化をもたらすように改変された核酸ベクター、これらの調製法、及び様々な分野(医学を含む)の種々のバイオテクノロジー法におけるこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスを含む微生物は、バイオテクノロジーの広い分野を通して多くの用途を有する。これらは、医学、農業、工業的製造法(特に石油産業や醸造産業を含む)、及びバイオレメディエーション(bioremediation)に関係している。そのような生物学的物質のために、多くの有用な用途や機能が特定され、開発されている。しかしこれらの活性の開発又は強化はその厳密な性質により制限され、理論的には可能であるが実際はその範囲を超えている仕事を遂行する能力を限定する。一般的によく遭遇するこの状態では、その必要な目的により適した性質を付与するように、ウイルス又は微生物の性質を再度遺伝子操作することが好ましいことがしばしばある。
【0003】
すなわち、例えばバキュロウイルスのような生物学的殺虫性物質は、不適切な標的特異性と環境中での有害な生存特性のためにその有用性が制限されることがある。イオウ代謝細菌は不適切な拡散と分布パターンのために、石油化学産業ではその有用な用途が限定される。ヒトや家畜の遺伝子治療では、治療遺伝子の送達を仲介することを目的とするウイルスは、標的組織中のトランス遺伝子発現の非効率性のためにその有用性が限定されている。
【0004】
体細胞遺伝子治療の分野は、多くの異なる種類の疾患[遺伝子疾患(例えば、嚢胞性線維症、筋ジストロフィー、酵素欠損)と、年齢によるか傷害による生理学的不調により起きる疾患(癌、心臓病、成人発症性糖尿病)との両方を含む]の治療を改善する可能性があるため、近年大きな関心が寄せられている。しかしこの分野は急速かつ広範に進展している(100を超える臨床治験が始まっている)が、患者に対する明らかな治療効果を示した例は極めて少ない。あるアンチセンス技術のヒトでの使用が最近認可されたが、まだその本来の目的を達成した遺伝子治療法は無く、近い将来にルーチン的な臨床応用で認可されそうなものも無い。
【0005】
ウイルスはまた、例えば組換えアデノウイルス「ベクター」内にマラリア又はインフルエンザタンパク質をコードして、ワクチン抗原用の効率的な送達ベクターとして使用することもできる。この種類のワクチンは、実験室での研究で広範囲の重要な病原体に対する使用できる大きな可能性を示している。
【0006】
関連する技術分野は「ウイルス療法(virotherapy)」として知られており、溶解性ウイルス(これは、治療遺伝子を有するよう遺伝子操作されるか又はされない)は癌細胞内で選択的に複製することができ、こうして腫瘍内でウイルスの増幅、腫瘍細胞の溶解、隣接する腫瘍細胞への感染(ここで、溶解性複製サイクルが繰り返される)の拡散を引き起こす。
【0007】
治療効果の欠如の理由は、一部は患者集団(これらの実験的治療のために登録された多くの患者はすでかなり重症であり、従って有効な治療法でもあまり治療効果を示さないかも知れない)を反映するが、達成される治療遺伝子発現の不充分なレベル、持続、及び分布を主に反映している。主要な問題は、ヒト被験体がウイルスベクター(病原体のいない環境で飼育された実験動物と異なり)に対して既存の免疫を有していることである。治療ウイルスベクターに対する既存の免疫を実験動物に付与すると、その動物ではヒトと同様に効果を示さなくなる。集団がまだ曝露されていない(従って既存の免疫の無い)ウイルスベクターの使用により、ヒトの既存免疫が避けられる時でも問題が残る。新規なウイルスベクターを初めて投与すると、我々の免疫系はそれに対して応答を開始し、そのベクターの以後の使用を妨害する。これは、複数の薬剤の使用が必要な多くの用途で特に重要である。例えば通常ワクチンは、2回目又は3回目の投与を行って強化する必要がある。簡単に言うと、優れた治療法の応用の成功は、遺伝子送達と発現が不充分なベクターにより制限される。
【0008】
遺伝子治療用途で使用される2種類の主要なベクターがこれまで研究されている。すなわち、非ウイルスベクター(通常陽イオン性リポソームに基づく)とウイルスベクター[通常、レトロウイルス、アデノウイルス(後にアデノ関連ウイルス(aav))、及びレンチウイルス]である。
【0009】
ウイルス療法のために開発された溶解性ウイルスには、アデノウイルス(すべての血清型)、ヘルペスウイルス、トガウイルス(特にアルファウイルス、例えばシンドビスウイルスとセムリキ森林熱ウイルス)、カルジオウイルス(特にセネカバレー(Seneca Valley)ウィルス)、ワクシニアウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、麻疹ウイルス、及びレオウイルスがある。
【0010】
ウイルスは自然界では基本的に単独で機能するため、遺伝子送達のためのベクターとして当然の選択である。従ってウイルスは今日まで遺伝子治療や遺伝子ワクチンで広く使用されており、臨床研究で使用されているベクターの大半を構成している。その適用の成功を妨げているアデノウイルスの主要な特性は、その免疫原性である。アデノウイルスは極めて効率的な遺伝子送達ベクターとして何百万年にもわたって進化してきた専門家用の病原体であるが、その宿主も同様に非常に有効な防御機構を開発してきた。癌患者の血清と腹水は、高希釈でもインビトロでウイルス感染を完全に予防できる抗体を含有する。
【0011】
アデノウイルスを含む典型的なヒトプロトコールにより、顕著な炎症性応答と標的細胞の非効率的感染とが起きている。
【0012】
非ウイルス系ははるかに良好な安全性記録を有し、大量に生産することが容易であるが、これらは特異的トランスフェクション活性が低い。標的組織中の遺伝子発現の効率はまた、非ウイルス系に関連する大きな問題である。
【0013】
疾患の治療のために現在利用可能なベクター適用の成功に対するもう一つの大きな制約は、直接適用又は動脈内投与により疾患部位に直接投与する必要があることである。どのベクターも、静脈注射後に特異細胞にターゲティングすることはできない。陽イオン性脂質系は、最初に遭遇する毛細血管床である肺血管床を詰まらせ、アデノウイルス/レトロウイルスは肝臓により急速に摂取され、(動物試験では)局所毒性を仲介する。いくつかの疾患(例えば気管支上皮細胞嚢胞性線維症)の治療には局所的投与が有効であるが、他の疾患(特に臨床的癌及びアテローム性動脈硬化症)はより広がった分布を有し、遺伝子治療の成功の可能性を利用するには静脈内ターゲティング遺伝子送達が必須である。
【0014】
これらの問題を克服するために、遺伝子送達ベクター(例えば、DNAベースの多価電解質複合体又はポリマー改変ウイルス)が開発されている。
【0015】
ウイルスの臨床的利用を促進するためのWO98/44143に記載されている1つのアプローチは、末端アミン反応性基を有するポリ(エチレングリコール)(PEG)のような単官能性ポリマーを用いてウイルスの表面を改変することである。これは、血清抗体による感染中和の低下を引き起こす。このアプローチは、標的細胞の正常な受容体結合と感染を保持する(5型アデノウイルスのCAR受容体を介して)が、通常の感染性の排除(非標的細胞の不要な感染を排除すること)を仲介せず、有用かつ治療に関連する性質を得るために選択された受容体へのウイルスの再ターゲティングを促進しないという問題を有する。
【0016】
WO00/74722は、複数の反応性基を有する多価ポリマーのコーティングをウイルスに提供することにより、ウイルスのような生物学的要素の生物学的及び/又は物理化学的性質を改変する方法を記載する。このアプローチは、宿主の生物系で特定の部位に一部の生物学的要素をターゲティング又は再ターゲティングすることを可能にし、遺伝子治療又は抗腫瘍治療のためのウイルスベクターに関連して有用となり得る。
【0017】
しかしこれらの既存の方法は、核酸ベクターを完全にコーティングすることはできず、抗体による認識を最も受けやすいベクターの領域を選択的にコーティングすることもできない。
【0018】
驚くべきことに、陽性荷電した4級アミン基を含む反応性ポリマーを使用すると、核酸ベクターははるかに迅速かつ効率的にコーティングされることがわかった。さらに本発明に従ってコーティングした時、本来は抗体に認識されるであろう核酸ベクターのいくつかの領域が遮蔽されることがある。そのような領域は典型的には、核酸ベクターの表面上の陰性荷電領域又は酸性領域である。
【0019】
陽性荷電を有する多価反応性ポリマーでコーティングされた核酸ベクター(特にウイルス)は、細胞に感染する能力を喪失することがあることもわかっている。しかし、コーティングポリマー中に分解性又は生体分解性配列が導入されると、驚くべきことに標的細胞に感染する能力が回復されることがわかっている。細胞内に侵入後、陽性荷電ポリマーコーティングと細胞表面との静電的相互作用により仲介されるこの感染回復が起きることがあり、選択された細胞表面受容体を介して細胞侵入を促進するために、ポリマーコーティングされたウイルス上に受容体結合リガンドを導入することにより、感染が回復することがある。いずれの場合も感染の成功は、ポリマーコーティング中の生体分解性配列の存在に依存する。
【0020】
生体分解性は3種類の方法でポリマー中に導入することができ、すなわち(i)ポリマー骨格が生体分解性であるか、(ii)ポリマー骨格と核酸ベクターとの結合が生体分解性であるか、又は(iii)ポリマー骨格と陽性荷電4級アミノ基との結合が生体分解性である。生体分解性結合は典型的には、還元性であるか、加水分解性であるか、又は酵素により切断可能である。
【0021】
本発明のこの具体的な利点は、標的部位への送達中又は到着後に、細胞の中若しくは外でプロセシングされることによりポリマーコーティングから放出される核酸ベクターの能力により発生すると考えられる。すなわちポリマー、又はポリマー骨格と核酸ベクターとの結合が生体分解性である場合、これらの生体分解性結合の切断後、ポリマーはベクターの表面と陽性荷電4級アミノ基との静電的相互作用により核酸ベクターに緩く結合するであろう。ポリマー骨格と陽性荷電4級アミノ基との結合が生体分解性である場合、これらの分解性結合の切断後、生じる中性ポリマーはベクターの表面に弱く結合するであろう。
【0022】
初期の試験は、ヒドラゾン基を含むリンカーにより核酸ベクターに結合したポリマーが、標的細胞への驚くほど高い感染性を有することを示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
発明の要約
従って本発明は、核酸ベクターがポリマーに共有結合しているポリマー改変核酸ベクターであって、該ポリマーは1個以上の陽性荷電4級アミノ基を有し、ここで該核酸ベクターは、ウイルス、細菌若しくはバクテリオファージ、真菌、胞子、真核細胞の核、又は遺伝情報を含む他の微生物断片若しくは成分よりなる群から選択される微生物であり、ここで
(a)ポリマー及び/又はこれと核酸ベクターとの結合は加水分解的、還元的、又は酵素的に分解可能であり、及び/又は
(b)陽性荷電4級アミノ基のそれぞれは、1個以上の分解性又は生体分解性結合を介してポリマー骨格に結合している、ことを特徴とするポリマー改変核酸ベクターを提供する。
【0024】
また、該核酸ベクターにポリマーを反応させることを含んでなる、核酸ベクターの生物学的及び/又は物理化学的性質を改変する方法であって、ポリマー改変核酸ベクターを得るために核酸ベクターが1個以上の共有結合によりポリマーに結合するように、該ポリマーは1個以上の陽性荷電4級アミノ基と1個以上の反応性基を含み、ここで核酸ベクターは、ウイルス、細菌若しくはバクテリオファージ、真菌、胞子、真核細胞の核、又は遺伝情報を含む他の微生物断片若しくは成分よりなる群から選択される微生物であり、ここで
(a)ポリマー、及び/又はこれと核酸ベクターとの1個以上の共有結合は加水分解的、還元的、又は酵素的に分解可能であり、及び/又は
(b)陽性荷電4級アミノ基のそれぞれは、1個以上の分解性又は生体分解性結合を介してポリマー骨格に結合している、ことを特徴とする方法を提供する。
【0025】
また、本発明の方法により得られるポリマー改変核酸ベクターが提供される。
また、適切な希釈剤又は担体とともに本発明のポリマー改変核酸ベクターを含む組成物が提供される。
【0026】
また、治療の必要な患者に、治療活性のある非毒性量の本発明のポリマー改変核酸ベクター又は本発明の組成物を投与することを含んでなる遺伝子治療法(遺伝子ワクチン接種を含む)であって、ポリマー改変核酸ベクターは治療用遺伝子物質を含むことを特徴とする方法が提供される。
【0027】
また、ポリマー改変核酸ベクターが治療用遺伝子物質を含むことを特徴とする、ワクチン接種又は遺伝子治療で使用するための薬剤の製造における本発明のポリマー改変核酸ベクターの使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
(原文記載なし)
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
本明細書において用語「核酸ベクター」は、核酸を含むビヒクルを示す。典型的には核酸ベクターは治療用遺伝子物質を含む。
【0030】
本明細書において用語「治療用遺伝子物質」は広い意味では、治療に有用なタンパク質又はRNAの発現により、治療効果を得るために投与される任意の遺伝物質又は核酸を示すのに使用されることは理解されるであろう。
【0031】
本発明のポリマー改変核酸ベクターにおいて、未反応の反応性基は通常存在しないことは理解されるであろう。しかし、いくつかの未反応の反応性基がポリマー改変核酸ベクター中に存在し、従って例えば生物活性物質が導入される場合がある。従ってこれらの状況で、ポリマー改変核酸ベクターはさらに1個以上の反応性基を含む。
【0032】
一般に核酸ベクターへのポリマーの結合と核酸ベクターの改変により、核酸ベクターが宿主生物学的系で、それらが本来は通常相互作用する他の分子との相互作用能力の阻害か、又はそれらが本来は通常結合する部位若しくは受容体に核酸ベクターが結合する能力の阻害を引き起こす。核酸ベクターのいくつかの好ましい相互作用は、もちろん維持されるであろう。核酸ベクターへのポリマーの結合は典型的には、通常は核酸ベクターを中和する血清抗体のような分子と相互作用する核酸ベクターの能力の阻害を引き起こす。
【0033】
典型的には核酸ベクターは、ウイルス、細菌若しくはバクテリオファージ、真菌、胞子、真核細胞の核、又は細胞核よりなる群から選択される微生物である。
【0034】
ウイルス及びウイルス粒子が好ましい。さらに詳しくは核酸ベクターは、治療用遺伝子物質を含むウイルスベクターであるか、又は固有の治療活性を有するウイルスである。原理的に本発明において、任意の既知ウイルスが核酸ベクターとして使用される。ウイルスは好ましくは組換え遺伝子操作ウイルスである。組換えウイルスは場合によりトランス遺伝子を含有する。本明細書において用語「トランス遺伝子」は、ウイルスに固有ではない核酸を示すことは理解されるであろう。例えばトランス遺伝子は、生物学的に機能性のタンパク質又はペプチド、アンチセンス分子、又はマーカー分子を含む。ウイルスはRNA又はDNAであり、場合により以下の科及び属の1つに由来する:アデノウイルス科(Adenoviridae);アルファモウイルス(Alfamoviruses); ブロモウイルス科(Bromoviridae);アルファクリプトウイルス(Alphacryptoviruses);パルティティウイルス科(Partitiviridae);バキュロウイルス科(Baculoviridae);バンダウイルス(Badnaviruses);ベータクリプトウイルス(Betacryptoviruses);パルティティウイルス科(Partitiviridae);ビゲミニウイルス(Bigeminiviruses);ジェミニウイルス科(Geminiviridae);ビルナウイルス科(Birnaviridae);ブロモウイルス(Bromoviruses);ブロモウイルス科(Bromoviridae);ビモウイルス(Bymoviruses);ポチウイルス科(Potyviridae);ブニヤウイルス科(Bunyaviridae);カリシウイルス科(Caliciviridae);カプロウイルス(Capillovirus)属;カルラウイルス(Carlavirus)属;カルモウイルスウイルス(Carmovirus virus)属;カリモウイルス(Caulimovirus)属;クロステロウイルス(Closterovirus)属;コメリナ黄色斑紋ウイルス(Commelina yellow mottle virus)属;コモウイルスウイルス(Comovirus virus)属;コロナウイルス科(Coronaviridae);PM2ファージ群;コルシオウイルス科(Corcicoviridae);潜在ウイルス(Cryptic virus);潜在ウイルス(Cryptovirus)属;ククモウイルスウイルス(Cucumovirus virus)属;CD6ファージ群;シストウイルス科(Cystoviridae);サイトラブドウイルス(Cytorhabdoviruses);ラブドウイルス科(Rhabdoviridae);カーネーションリングスポットウイルス(Carnation ringspot)属;ダイアンソウイルス(Dianthovirus virus)属;ソラマメウイルトウイルス(Broad bean wilt)属;エナモウイルス(Enamoviruse);ファバウイルスウイルス(Fabavirus virus)属;フィジーウイルス(Fijiviruses);レオウイルス科(Reoviridae);フィロウイルス科(Filoviridae);フラビウイルス科(Flaviviridae);フロウイルス(Furovirus)属;ジエミニウイルス(Geminivirus)属;ジアルジアウイルス(Giardiavirus)属;ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae);ヘルペスウイルス科(Herpesviridae);ホルデイウイルス(Hordeivirus virus)属;ヒブリジェミニウイルス(Hybrigemini viruses);ジェミニウイルス科(Geminivirida);イダエオウイルス(Idaeoviruses);イラルウイルスウイルス(Ilarvirus virus)属;イノウイルス科(Inoviridae);イポモウイルス(Ipomoviruses);ポチウイルス科(Potyviridae);イリオドウイルス科(Iriodoviridae);レビウイルス科(Levivridae);リポスリクスウイルス科(Lipothrixviridae);ルテオウイルス(Luteovirus)属;マクロモウイルス(Machlomo viruses);マクルラウイルス(Macluraviruses);マラフィウイルスウイルス(Marafivirus virus)属;トウモロコシ白化萎縮ウイルス(Maize chlorotic dwarf virus)属;イクロウイルス科(icroviridae);モノジェミニウイルス(Monogeminiviruses);ジェミニウイルス科(Geminiviridae);ミオウイルス科(Myoviridae);ナナウイルス(Nanaviruses);ネクロウイルス(Necrovirus)属;ネポウイルスウイルス(Nepovirus virus)属;ノダウイルス科(Nodaviridae);ヌクレオラブドウイルス(Nucleorhabdoviruses);ラブドウイルス科(Rhabdoviridae);オルトミキソウイルス科(Orthomyxoviridae);オリザウイルス(Oryzaviruses);レオウイルス科(Reoviridae);ウルミアウイルス(Ourmiaviruses);パポバウイルス科(Papovaviridae);パラミキソウイルス科(Paramyxoviridae);パースニップ黄色斑点ウイルス(Parsnip yellow fleck virus)属;パルチチウイルス科(Partitiviridae);パルボウイルス科(Parvoviridae)、アデノ随伴ウイルスを含む;エンドウヒダ葉モザイクウイルス(Pea enation mosaic virus)属;フィコドナウイルス科(Phycodnaviridae);リトレオウイルス(Phytoreo viruses);レオウイルス科(Reoviridae);ピコルナウイルス科(Picornaviridae);プラズマウイルス科(Plasmarviridae);ポドウイルス科(Podoviridae);ポリドナウイルス科(Polydnaviridae);ポテクスウイルス(Potexvirus)属;ポチウイルス(Potyvirus);ポックスウイルス科(Poxviridae);レオウイルス科(Reoviridae);レトロウイルス科(Retroviridae);ラブドウイルス科(Rhabdoviridae);リジジオウイルス(Rhizidiovirus)属;リモウイルス(Rymoviruses);ポチウイルス科(Potyviridae);サテライトRNA;サテリウイルス(Satelliviruses);セキウイルス(Sequiviruses);セキウイルス科(Sequiviridae);ソベモウイルス(Sobemoviruses);シフォウイルス科(Siphoviridae);ソベモウイルス(Sobemovirus)属;SSVI型ファージ;テクティウイルス科(Tectirividae);テヌイウイルス(Tenuivirus);テトラウイルス科(Tetravirirdae);トバモウイルス(Tobamovirus)属;トブラウイルス(Tobravirus)属;トガウイルス科(Togaviridae);トムブスウイルス(Tombusvirus);トスポウイルス(Tospoviruses);ブニヤウイルス科(Bunyaviridae);トロウイルス(Torovirus);トリウイルス科(Totiviridae);チモウイルス(Tymoviruses);チモウイルス(Tymovirus)属;植物ウイルスサテライト;ウムブラウイルス(Umbraviruses);未確定ポチウイルス(potyviruses);ポチウイルス科(Potyviridae);未確定ラブドウイルス(rhabdoviruses);ラブドウイルス科(Rhabdoviridae);バリコサウイルス(Varicosaviruses);ワイカウイルス(Waikaviruses);セキウイルス科(Sequiviridae);未分類ウイルス。
【0035】
一般に核酸ベクターは通常、宿主の特定の部位又は受容体に相互作用するウイルスであり、ここで陽性荷電4級アミノ基を有する1価又は多価の反応性ポリマーは、ウイルスの正常な受容体結合活性を遮蔽するか、及び/又は宿主の新しい又は異なる部位若しくは受容体への再ターゲティングを可能にする。
【0036】
核酸ベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、バキュロウイルス、ヘルペスウイルス、パポバウイルス、又はポックスウイルスでもよい。ある用途では核酸ベクターは、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、又はアルファウイルスに基づく組換えウイルスでもよい。
【0037】
好ましくは核酸ベクターは、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、パルボウイルス、ポックスウイルス、トガウイルス、ロタウイルス、又はピコルナウイルスに基づくウイルスである。
【0038】
アデノウイルスが特に好ましい。アデノウイルスには、鳥類アデノウイルスCELOのような非ヒトアデノウイルスがある。
【0039】
核酸ベクターが外部エンベロープを有するウイルスである場合、これをポリマーと反応させる前の予備工程は、エンベロープをはがす工程を含んでよい。
【0040】
核酸ベクターとして使用するのに適した核酸ベクターの成分、例えばウイルスコア又はプロウイルス(例えばポックスウイルスから)が提供される。ウイルスコアの例は、Russell, W.C., M., K., Skehel, J.J. (1972) "The preparation and properties of adenovirus cores" Journal of General Virology 11, 35-46 に開示された方法により調製されるアデノウイルスコア、及びその改変物がある。
【0041】
典型的には核酸ベクターは、ウイルス又はウイルスコアである。
【0042】
本発明を実施するのに使用される細菌核酸ベクターには、例えば実験的遺伝子治療で使用される細菌(例えばサルモネラ(Salmonella))、生物学的殺有害生物剤で使用される細菌若しくはバキュロウイルス(例えば、核多角体病ウイルス(Nuclear Polyhedrosis Virus:NPV)、ノノクルードウイルス(nonocclude virus)NV、顆粒病ウイルス、又はバシラス・ツリンギエンシス(Baccilus thuringiensis))、含油スラッジ/流出油を分解するのに有用な細菌株又はその遺伝子改変物(例えば、腸内細菌科(enterobacteriaceae), アニトラツム(anitratum)、シュードモナス(pseudomonas)、ミクロコッカス(micrococcus)、コマモナス(comamonas)、ザントモナス(zanthomonas)、アクロバクター(achromobacter)又はビブリオ−エアロモナス(vidrio-aeromonas))、油中のイオウからH2Sへの還元に関与する細菌株(例えば、ペトロトガ・スノビリス(petrotoga snobilis)、ペトロトガ・オテルマ(petrotoga miotherma)、デスルフォトマクルム・ニグリフ・カンズ(desulfotomaculum nigrif cans)、デスルホ・ビブリオ(desulpho vibrio)、又は油からイオウを酸化することができる細菌株(例えば、ロドコッカス(rhodococcus)属菌種、ECRD−I株)がある。
【0043】
核酸ベクターとして使用するのに適した細菌のさらなる例は、リケッチエラ・ポピリイ(Rickettsiella popiliae)、バシラス・ポピリイ(Bacillus popiliae)、バシラス・ツリンギエンシス(B. thuringiensis)(その亜種であるイスラエレンシス(israelensis)、クルスタキ(kurstaki)、及びバシラス・スファエリクス(B. sphaericus)を含む)、バシラス・レンチモルブス(Bacillus lentimorbus)、バシラス・スフェリクス(B. sphaericus)、クロストリジウム・マラコソーム(Clostridium malacosome)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、及びゼノルハブヅス・ネマトフィルス(Xenorhabdus nematophilus)よりなる群から選択されるものである。
【0044】
核酸ベクターとして使用するのに適したファージは、例えば以下の群の1つからのものである:シアノファージ(Cyanophages)、ラムダファージ(Lambdoid phages)、イノウイルス(Inovirus)、レビウイルス科(Leviviridae)、スチロウイルス科(Styloviridae)、ミコウイルス科(Microviridae)、プレクトウイルス(Plectrovirus)、プラズマウイルス科(Plasmaviridae)、コルチコウイルス科(Corticoviridae)、サテライトバクテリオファージ、ミオウイルス科(Myoviridae)、ポドウイルス科(Podoviridae)、T偶数ファージ。具体的なファージの例は、MV−L3、PI、P2、P22、d)29、SPOI、T4、T7、MV−L2、PM2、Fl、MV−L51、oul74,06、MS2、M13、Qp、テクチウイルス科(tectiviridae)(例えばPRDl)。
【0045】
核酸ベクターとして使用するのに適した真菌は、例えば、担子菌類(これは担子胞子を作る、これは、腹菌類(Gasteromycetes)、帽菌類(hymenomycetes)、ウレジニオミセーテス(urediniomycetes)、ウスチラギオミセーテス(ustilaginomycetes)のような綱を含む)、ビューベリア属(Beauveria):ベタリジウム属(Vetarrhizium)、ハエカビ属(Entomophthora)又はボウフラ菌属(Coelomomyces)からのものである。核酸ベクターとして使用するのに適した胞子は、担子胞子、アクチノミセレス(actinomyceres)、アルスロバクター(arthrobacter)、ミクロバクテリウム、クロストリジウム、ロドコッカス、サーモモノスポラ(Thermomonospora)、又はアスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)である。
【0046】
核酸ベクターとして使用するのに適した細菌のさらなる例は、リケッチエラ・ポピリイ(Rickettsiella popiliae)、バシラス・ポピリイ(Bacillus popiliae)、バシラス・ツリンギエンシス(B. thuringiensis)(その亜種であるイスラエレンシス(israelensis)、クルスタキ(kurstaki)、及びバシラス・スファエリクス(B. sphaericus)を含む)、バシラス・レンチモルブス(Bacillus lentimorbus)、バシラス・スフェリクス(B. sphaericus)、クロストリジウム・マラコソーム(Clostridium malacosome)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、及びゼノルハブヅス・ネマトフィルス(Xenorhabdus nematophilus)よりなる群から選択されるものである。
【0047】
ある状況では核酸ベクターは、核酸と陽性荷電ポリマー及び/又は脂質との間の自己集合により形成することができる。用語「核酸」は、siRNA、アンチセンスRNA、及びアンチセンスDNAのような合成分子を含む。通常核酸はmRNA又はDNAである。この実施態様において、こうして形成された多価電解質ベクターは、真の陰性表面電荷を有する。すなわち核酸と陽性荷電脂質又はポリマーとの電荷比(+/−)は典型的には1未満である。電荷比0.8〜0.9が好ましい。
【0048】
典型的には本発明のポリマー改変核酸ベクター中に存在するポリマーは多価ポリマーである。
【0049】
典型的にはポリマーは、2個又はそれ以上の結合により核酸ベクターに結合しており、ポリマーは多価ポリマーとして使用され、すなわちこれは、複数の反応性基を含む。ポリマーと核酸ベクター間の結合の数は、好ましくは3又はそれ以上、さらに好ましくは4又はそれ以上である。結合の数は、例えば12又は14でもよい。より多くの結合を有する利点は、ポリマー改変核酸ベクターがより安定になることである。
【0050】
ポリマー骨格は、好ましくはN−2−ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)、N−(2−ヒドロキシエチル)−1−グルタミン(HEG)、エチレングリコール−オリゴペプチドのようなモノマー単位に基づくか、又はポリシアル酸若しくはポリマンナンポリマーである。HPMAが好ましい。骨格がエチレングリコール−オリゴペプチドに基づく場合、オリゴペプチド基は好ましくは1〜4個のペプチド基を含む。
【0051】
典型的には本発明で使用されるポリマーは、リビングラジカル重合法、例えばATRP(原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization))、又は例えばScales, C. W.; Vasilieva, Y. A.; Convertine, A. J.; Lowe, A. B.; McCormick, C. L. Biomacromolecules 2005, 6, 1846-1850; Yanjarappa, M. J.; Gujraty, K. V.; Joshi, A.; Saraph, A.; Kane, R. S. Biomacromolecules 2006, 7, 1665-1670; Convertine, A. J.; Ayres, N.; Scales, C. W.; Lowe, A. B.; McCormick, C. L. Biomacromolecules 2004, 5, 1177-1180(これらのすべては、参照のためその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されたようなRAFT(可逆的付加開裂連鎖移動(Reversible addition-fragmentation chain transfer))を使用して調製される。
【0052】
関連する教示はまた、'Macromolecular design via reversible addition-fragmentation chain transfer (RAFT)/xanthates (MADIX) polymerization.' Perrier, Sebastien; Takolpuckdee, Pittaya. J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem. (2005), 43(22), 5347-5393(これは参照のため本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0053】
ポリマー、及び/又はこれと核酸ベクターとの結合は、加水分解的、還元的、又は酵素的に分解可能である。
【0054】
ある実施態様においてポリマー、及び/又はこれと核酸ベクターとの結合は、加水分解的又は酵素的に分解可能である。
【0055】
好ましくはポリマー、及び/又はこれと核酸ベクターとの結合は、加水分解的に分解可能である。
【0056】
好ましくはポリマーと核酸ベクターとの結合は、加水分解的、還元的、又は酵素的に分解可能である。
【0057】
典型的には加水分解的、還元的、又は酵素的に分解可能なポリマー、及び/又はこれと核酸ベクターとの結合は、ジスルフィド、ヒドラゾン、又はヒドラジド基、好ましくはイドラジド又はヒドラゾン基、さらに好ましくはヒドラゾン基を含む。これらの基とその切断条件は、より詳細に後述される。
【0058】
ある実施態様において、加水分解的、還元的、又は酵素的に分解可能なポリマー、及び/又はこれと核酸ベクターとの結合は、ジスルフィド基を含み、次に本明細書で定義される生物活性物質がポリマーに結合されるか又は含まれる。この実施態様において生物活性物質は、好ましくは糖、さらに好ましくはマンノースである。これは、インビボでベクターを再ターゲティングする作用を有する。
【0059】
別の実施態様において、加水分解的、還元的、又は酵素的に分解可能なポリマー、及び/又はこれと核酸ベクターとの結合は、ヒドラゾン基を含み、陽性荷電ポリマー自体がインビボでベクターを再ターゲティングする作用を有する。
【0060】
加水分解的分解性により与えられる不安定性は、核酸ベクターが防御される時間の調節を可能にするため、好ましいことがある。すなわちポリマーに組織特異的ターゲティング基(すなわち本明細書で定義される生物活性物質)が付与されると、改変核酸ベクターが分解して、核酸ベクターを放出して組織と相互作用する前に、修飾核酸ベクターが標的組織内の適切な位置に到達するのに必要な時間、ポリマーが核酸ベクターを防御するようにポリマー(又はポリマーと核酸ベクターとの結合)が設計される。あるいはポリマーは、核酸ベクターの放出の最適な動態を与える速度で分解するように設計することができる。
【0061】
加水分解性結合の例には、ヒドラジド結合とヒドラゾン結合がある。
【0062】
酵素的分解性により与えられる不安定性は、ポリマー(又はポリマーと核酸ベクターとの結合)が、選択された酵素により選択的に切断されるように設計することを可能にするため、好ましいことがある。そのような酵素は標的部位に存在して、標的部位で分解を開始する可能性を改変核酸ベクターに付与し、こうして標的組織との相互作用のために核酸ベクターを放出する。酵素はまた、核酸ベクターの活性を増強するために、標的細胞の選択された細胞コンパートメント内の改変核酸ベクターの分解をもたらすことができる細胞内酵素でもよい。あるいは酵素切断部位は、適切な生物活性(例えば、メタロプロテイナーゼを発現する侵入性又は転移性腫瘍細胞の到着)に応答して、改変核酸ベクターの分解を促進するように設計される。さらなる変更態様において、改変核酸ベクターを活性化することができる酵素は、適切な時間に又は適切な部位に投与されて、改変核酸ベクターの必要な分解を仲介し、以後の核酸ベクターと組織との相互作用を仲介する。
【0063】
酵素分解性結合の例には、特異的酵素(例えばカテプシンD又はフリン)による切断のための基質であるオリゴペプチド配列があり、例えばカテルシンBによる分解のためののGlyPheLeuGlyがある。
【0064】
少なくともいくつかの実施態様で核酸ベクターを改変するのに使用されるポリマーは、好ましくはヒドロゲルを形成するように架橋している。ヒドロゲルは好ましくは加水分解的に不安定であるか、又は酵素(例えばメタロプロテイナーゼ2又は9)により分解される。これは、核酸ベクターがヒドロゲル内に固定化されて、その結果核酸ベクターの放出が調節されるようにするためである。すなわち本発明のある好適な特徴において、本発明の方法は、架橋とヒドロゲル形成を促進し易いような条件下(例えば高濃度の試薬であるが、過剰に存在するものは無い)で、又は架橋を促進し易いジアミンのような物質の存在下で行われる。改変核酸ベクターを含有するヒドロゲルの形成は一般に、Subr, V., Duncan, R. and Kopeck, J. (1990)"Release of macromolecules and daunomycin from hydrophilic gels containing enzymatically degradable bonds", J. Biomater. Sci. Polymer Edn., 1(4) 61-278に記載された化学的アプローチを使用して行われるであろう。
【0065】
本発明で使用されるポリマーは典型的には、ポリマー骨格中に又は側鎖中に、好ましくは側鎖に1個以上の陽性荷電4級アミノ基を含む。
【0066】
一般に1個以上の陽性荷電4級アミノ基のそれぞれは、直接又はスペーサー基を介してポリマー骨格に結合している。典型的にはスペーサー基は本明細書で定義されるものである。ある実施態様において該スペーサー基は、本明細書で定義される基Lである。
【0067】
ポリマー中の陽性荷電4級アミノ基の数は、好ましくはポリマーの総重量に基づいて0.25〜10モル%、さらに好ましくは0.5〜7.5モル%、最も好ましくは1.5〜5モル%の陽性荷電4級アミノ基である。
【0068】
通常陽性荷電4級アミノ基は、ポリマー内にランダムに配置されている。
【0069】
ポリマーが1価ポリマーである時、すなわち反応性基を1個のみ有する時、陽性荷電4級アミノ基は好ましくは反応性基の近くに存在する。
【0070】
典型的にはポリマー骨格に結合した陽性荷電4級アミノ基は、本明細書で定義される式Ia、Ib、Ic、Id、及びIeの陽性荷電4級アミノ基から選択される。式Iaの陽性荷電4級アミノ基が好ましい。
【0071】
ある好適な実施態様において陽性荷電4級アミノ基のそれぞれは、1個以上の分解可能な又は生体分解可能な結合、好ましくは1つの分解可能な又は生体分解可能な結合を介してポリヌクレオチドに結合している。これらの結合は、陽性荷電4級アミノ基とポリマー骨格との直接結合、又は該スペーサー基中の結合でもよい。典型的には該結合は、還元性、加水分解性、又は他の切断性の結合を示す。そのような結合の例には、ジスルフィド結合、−N−N−結合(例えばヒドラジド基又はヒドラゾン基中に存在する時)、酵素的に切断可能なアセタール部分若しくは結合がある。
【0072】
ジスルフィド結合(−S−S−)は、典型的には穏和な還元条件(例えば金属亜硫酸塩)を使用して、又は適切に選択された酵素(例えばチオレドキシン)を使用して切断される。
【0073】
典型的には切断条件は、ベクターの生存活性が影響を受けないように選択される。
【0074】
ヒドラジド基又はヒドラゾン基中に存在してもよい−N−N−結合は典型的には低pH又は穏和な酸化条件若しくは還元条件を使用して切断される。好ましくはそのような結合は、水性の酸性条件下で、典型的にはpH約4〜約7、好ましくは4〜6.5、さらに好ましくは4.4〜6.4で切断される。繰り返すが、切断条件は典型的には、ベクターの生存活性が影響を受けないように選択される。
【0075】
ヒドラジド基は、−N−NR−成分(Rはアシル成分である)を含む基である。そのような基は当業者に公知である。
【0076】
ヒドラゾン基は、−C=N−N−成分を含む基である。そのような基は当業者に公知である。
【0077】
アセタール部分は当業者に公知であり、水性の酸を使用して容易に切断される。
【0078】
酵素的に切断可能な結合は典型的には、反応性基とポリマー骨格との結合に関連して本明細書で説明される。
【0079】
ある実施態様において核酸ベクターと陽性荷電4級アミノ基の両方は、分解可能な結合を介してポリマーに結合している。この実施態様において核酸ベクターとポリマーとの結合、及び陽性荷電4級アミノ基とポリマーとの結合は、同じ条件下で切断されてもよい。しかし、核酸ベクターとポリマーとの結合及び陽性荷電4級アミノ基とポリマーとの結合は、同じ条件下で切断されていないことが好ましい。すなわち陽性荷電4級アミノ基とポリマーとの結合を切断し、一方核酸ベクターとポリマー骨格との結合をそのままにしておくことが可能である。こうすると陽性荷電4級アミノ基はポリマー改変核酸ベクターから取り除かれて、ポリマーは核酸ベクターに結合されて残る。
【0080】
本発明に従って改変されたウイルスのような感染性核酸ベクターは、通常その本来の感染性を失うことがわかっている。いくつかの好適な実施態様において、陽性荷電コーティングポリマーの存在は、それ自体が細胞膜との静電的相互作用を介して細胞への摂取を促進するように作用し、これは感染を引き起こす。あるいは生物活性物質をポリマーに結合させることにより、感染性が回復されるか又は置き換えられることがある。生物活性物質は、核酸ベクターと組合わされる前又は後に、ポリマーと随時結合される。ターゲティング物質(すなわち生物活性物質)が複数の反応性基を有する場合、これは好ましくは、結合反応を妨害することを避けるためポリマーが核酸ベクターをコーティングした後、ポリマーに結合されるが、別の場合には、核酸ベクターをコーティングする前に、これをポリマーに結合させることでうまくいく場合もある。典型的には生物活性物質は、ポリマーに結合されるか又はポリマー中に含まれる。
【0081】
生物活性物質は、反応性ポリマーを核酸ベクターに結合させるのに使用されるものと同じ種類の反応性基を使用して取り込まれるか、又はこれは異なる化学を使用して結合される。後者の場合、ヘテロ多官能性反応性ポリマー(例えば、混合ONpエステル及びチオール基を含むもの)が使用されるであろう。
【0082】
このような生物活性物質は好ましくは、ターゲティング、組織浸透、薬物動態、又は免疫刺激若しくは免疫抑制を改良するために本発明に従って取り込まれる。生物活性物質は例えば、増殖因子若しくはサイトカイン、糖、ホルモン、脂質、リン脂質、脂肪、アポリポタンパク質、細胞接着促進剤、酵素、毒素、ペプチド、糖タンパク質、血清タンパク質、ビタミン、ミネラル、補助分子、核酸、免疫調節要素、Toll様受容体のリガンド、又は受容体(例えば増殖因子受容体)を認識するか、若しくは特異的抗原若しくは腫瘍関連抗原を認識する抗体でもよい。この物質は、内皮組織をターゲティングするのに使用できるシアリルルイスXでもよい。
【0083】
抗体は好ましくは、改変核酸ベクターを異なる標的部位(例えば、種々の受容体、異なる細胞、細胞外環境、及び他のタンパク質)に再ターゲティングするための生物活性物質として使用される。広範囲の異なる型の抗体が使用され、例えばモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ダイアボディ、キメラ抗体、ヒト化抗体、二重特異的抗体、カマリド(camalid)抗体、Fabフラグメント、Fcフラグメント、及びFv分子がある。
【0084】
腫瘍をターゲティングするのに使用するために、適切な生物活性物質は、例えば癌関連抗原(例えば、癌胎児性抗原、アルファフェトプロテイ、テネイシン、HER−2癌原遺伝子、前立腺特異抗原、若しくはMUC−1を)認識する抗体、又は腫瘍関連内皮細胞に関連する抗原(例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)の受容体、Tie1、Tie2、P−セレクチン、E−セレクチン、又は前立腺特異膜抗原(PSAM))を認識する抗体である。
【0085】
一般的なリンカーとして機能し適用の柔軟性を可能にする生物活性物質として使用するのに好適な多目的タンパク質は、プロテインG(これは抗体と結合し、ほとんどの種からの任意のIgGクラス抗体で表面を改変することを可能にする)、プロテインA(これは、プロテインGと同様の性質を有する)、アビジン(これはビオチンと非常に高い親和性で結合し、表面上にビオチン標識された任意の要素の導入を可能にする)、ストレプトアビジン(これは、アビジンと同様の性質を有する)、エクストラアビジン(これは、アビジンと同様の性質を有する)、ブンガロトキシン結合ペプチド(これはブンガロトキシン融合タンパク質に結合する)、小麦胚芽アグルチニン(これは、糖と結合する)、ヘキサヒスチジン(これは、ニッケルキレートカラム上での穏やかな精製を可能にする)、GST(これは、アフィニティークロマトグラフィーによる穏やかな精製を可能にする)である。
【0086】
生物活性物質として使用するのに好適な増殖因子又はサイトカインは、例えば、脳由来神経栄養因子、毛様体神経栄養因子、b−内皮増殖因子、上皮増殖因子(EGF)、繊維芽細胞増殖因子 酸性(aFGF)、繊維芽細胞増殖因子 塩基性(bFGF)、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、成長ホルモン放出ホルモン、肝細胞増殖因子、インスリン様増殖因子−I、インスリン様増殖因子−II、インターロイキン−1a、インターロイキン−1b、インターロイキン2、インターロイキン3、インターロイキン4、インターロイキン5、インターロイキン6、インターロイキン7、インターロイキン8、インターロイキン9、インターロイキン10、インターロイキン11、インターロイキン12、インターロイキン13、ケラチノサイト増殖因子、レプチン、肝細胞増殖因子、マクロファージコロニー刺激因子、マクロファージ炎症性タンパク質1a、マクロファージ炎症性タンパク質1b、単球走化タンパク質1、2−メトキシエストラジオール、b−神経増殖因子、2.5s神経増殖因子、7s神経増殖因子、ニューロトロピン−3、ニューロトロピン−4、血小板由来増殖因子AA、血小板由来増殖因子AB、血小板由来増殖因子BB、性ホルモン結合グロブリン、幹細胞因子、トランスフォーミング増殖因子−β1、トランスフォーミング増殖因子−β3、腫瘍壊死因子α、腫瘍壊死因子β、血管内皮増殖因子、及び血管内皮増殖因子Cである。
【0087】
取り込みのための生物活性物質として使用される適切な糖は、モノサッカライド、ジサッカライド、又は分岐ポリサッカライドを含むポリサッカライドであり、例えば、D−ガラクトース、D−マンノース、D−グルコース、L−グルコース、L−フコース、及びラクトースである。ある実施態様においてマンノースが特に好ましい。糖は典型的には、アミノ誘導体化により取り込まれる。
【0088】
生物活性物質としての使用に適したホルモンは、例えば、アドレノメデュリン、副腎皮質刺激ホルモン、絨毛性性腺刺激ホルモン、コルチコステロン、エストラジオール、エストリオール、卵胞刺激ホルモン、ガストリン1、グルカゴン、ゴナドトロピン、成長ホルモン、ヒドロコルチゾン、インスリン、レプチン、メラニン細胞刺激ホルモン、メラトニン、オキシトシン、副甲状腺ホルモン、プロラクチン、プロゲステロン、セクレチン、トロンボポエチン、チロトロピン、甲状腺刺激ホルモン、及びバソプレシンである。
【0089】
ポリマー修飾核酸ベクターをターゲティングするか又は立体的防御を与えるための生物活性物質としての使用に適した脂質、脂肪、又はリン脂質は、例えば、コレステロール、グリセロール、糖脂質、長鎖脂肪酸、特にオレイン酸のような不飽和脂肪酸、血小板活性化因子、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、又はホスファチジルセリンである。
【0090】
生物活性物質としての使用に適した細胞接着プロモーターは、例えば、フィブロネクチン、ラミニン、トロンボスポンジン、ビトロネクチン、ポリカチオン、インテグリン、又は、インテグリンもしくテトラスパン(tetraspan)タンパク質に結合するオリゴペプチド配列である。
【0091】
生物活性物質としての使用に適したアポリポプロテインはまた、立体的防御を提供することもでき、例えば、高密度リポプロテインもしくは低密度リポプロテイン、又はこれらの成分である。
【0092】
生物活性物質としての使用に適した酵素、例えば、特定の環境を経由して修飾核酸ベクターの移動性を促進させるための酵素は、細胞外マトリックスを分解することができる酵素(例えば、ゼラチナーゼ、例えばマトリックスメタロプロテアーゼタイプ1〜11、又はヒアルロニダーゼ)、核酸を分解することができる酵素(例えば、デオキシリボヌクレアーゼI、デオキシリボヌクレアーゼII、ヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼA)、タンパク質を分解することができる酵素(例えば、カルボキシペプチダーゼ、プラスミン、カテプシン、エンドプロテイナーゼ、ペプシン、プロテイナーゼK、トロンビン、トリプシン、組織型プラスミノーゲンアクチベーター、又はウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター)、検出を促進する酵素(例えば、ルシフェラーゼ、ペルオキシダーゼ、b−ガラクトシダーゼ)、又は他の有用な酵素、例えば、アミラーゼ、エンドグリコシダーゼ、エンド−b−ガラクトシダーゼ、ガラクトシダーゼ、ヘパリナーゼ、HIV逆転写酵素、b−ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼ、インスリン受容体キナーゼ、リゾチーム、ノイラミニダーゼ、一酸化窒素合成酵素、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼである。
【0093】
生物活性物質としての使用に適した毒素であって、受容体に結合するか又は細胞膜と相互作用する毒素は、例えば、コレラ毒素Bサブユニット、クロトキシンBサブユニット、デンドロトキシン、リシンB鎖である。
【0094】
生物活性物質としての使用に適したペプチドは、例えば、トランスフェリン、グリーン/ブルー/イエロー蛍光タンパク質、アドレノメデュリン、アミロイドペプチド、アンギオテンシンI、アンギオテンシンII、Arg−Gly−Asp、アトリオペプチン、エンドセリン、フィブリノペプチドA、フィブリノペプチドB、ガラニン、ガストリン、グルタチオン、ラミニン、ニューロペプチド、Asn−Gly−Arg、インテグリン結合モチーフを含むペプチド、ファージライブラリーを使用して同定されるターゲティングペプチド、核局在化配列を含むペプチド、及びミトコンドリアルホーミング配列を含むペプチドにより与えられる。
【0095】
生物活性物質としての使用に適した血清タンパク質は、例えば、アルブミン、補体タンパク質、トランスフェリン、フィブリノゲン、又はプラスミノーゲンである。
【0096】
生物活性物質としての使用に適したビタミン又はミネラルは、例えば、ビタミンB12、ビタミンB6又は葉酸である。
【0097】
Toll様受容体に適したリガンドは当業者に公知である。例としてはリポペプチドPam3cysがある。
【0098】
典型的には核酸ベクターの改変は、核酸ベクターを生物学的宿主中の異なる受容体に再ターゲティングする作用を有する。
【0099】
従って本発明のポリマー改変核酸ベクターは、高度に特異的な細胞セット、例えば腫瘍細胞をターゲティングするように合成できることがわかるであろう。しかし同時に、本発明のポリマー改変核酸ベクターは、概して中和抗体によって不活性にされないことも見出された。これは、改変された核酸ベクターがポリマーによって遮蔽されるためと考えられる。ポリマーによる核酸ベクターの遮蔽は、寿命の延長と低pHへの耐性の改善を含む、他の潜在的な利点を有するものと認められている。また既存の非改変核酸ベクターで実施可能な方法より、よりアグレッシブな技術を使用して精製することが可能である。
【0100】
場合によりポリマーは、例えば、生物学的環境下での核酸ベクターの検出を可能にするために、放射性同位元素と結合することができる。
【0101】
ある実施態様において核酸ベクターの改変は、非水性環境内の核酸ベクターの溶解度、分散、及び安定性特性を改変する作用を有する。この実施態様において核酸ベクターは一般に、油分解活性を有する微生物である。好ましくは核酸ベクターはバキュロウイルス粒子である。この実施態様においてポリマーは典型的には、オレイル又は他の疎水性基を取り込む。
【0102】
コーティングされるウイルス粒子は、通常高度に精製されいて、汚染性のタンパク質又はペプチドを含まないことが必要である。コーティング反応は、通常pH範囲7.4〜8.4で行われ、7.8〜8.0が好ましい。ポリマーと反応する緩衝液(例えばトリスベースの緩衝液)とは別に、任意の適切な緩衝液が所望のpHを達成するのに使用される。反応は生理学的塩(150mM NaCl)濃度と、ウイルス調製物を安定化するのに使用される他の安定剤(例えばMg2+又はCa2+)との存在下で起きても良い。この反応プロセスでアジ化ナトリウム又は他の保存剤を使用することは好ましくない。室温ではポリマー反応は1時間後に飽和に達するが、より低い温度ではより長い時間が必要であろう。
【0103】
再ターゲティング又は機能を追加するために、既に記載されているようにコーティング反応中に、抗体、リガンド、又はペプチドのような追加の生物学的物質を加えることができ、例えば Fisher KD, Stallwood Y, Green NK, Ulbrich K, Mautner V, Seymour LW. Polymer-coated adenovirus permits efficient retargeting and evades neutralising antibodies. Gene Ther. Mar 2001 ;8(5):341-348(これは参照のため本明細書に組み込まれる)を参照されたい。あるいはコーティングは、ターゲティング要素にあらかじめ結合したポリマーを用いて行われる。例えば Stevenson M, Hale AB, Hale SJ, Green NK, Black G, Fisher KD, Ulbrich K, Fabra A, Seymour LW. Incorporation of a laminin-derived peptide (SIKVAV) on polymer-modified adenovirus permits tumor- specific targeting via alpha[delta]-integrins. Cancer Gene Ther. Apr 2007;14(4):335-345(これは参照のため本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0104】
本明細書において用語「反応性基」は、特に他の分子の相補的反応性基(典型的には核酸ベクターの表面上の基)との結合又は連結に関連して、顕著な化学反応性を示す基を示すために使用される。
【0105】
典型的には反応性基は、核酸ベクターの表面上に存在する基(例えば、アミン基、チオール基、ヒドロキシ基、アルデヒド基、ケトン基、チロシン残基、カルボン酸基、又は糖基)と共有結合を形成することができる基である。核酸ベクターの表面上に存在する該基は、遺伝子操作、例えばその繊維分子中に遊離のチオール基を有するシステイン残基を含むようにアデノウイルスを遺伝子操作することにより、導入してもよい。
【0106】
ある実施態様において反応性基は、核酸ベクターの表面上のアミン基と共有結合を形成することができる。この実施態様において好適な種類の反応性基の例には、酸塩化物、アシル−チアゾリジン−2−チオン、マレイミド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHSエステル)、スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(スルホ−NHSエステル)、4−ニトロフェノールエステル、エポキシド、2−イミノ−2−メトキシエチル−1−チオグリコシド、塩化シアヌール、ギ酸イミダゾリル、コハク酸スクシンイミジル、グルタル酸スクシンイミジル、アシルアジド、アシルニトリル、ジクロロトリアジン、2,4,5−トリクロロフェノール、アズラクトン、及びクロロ蟻酸がある。このような基は、アミンと容易に反応する。アシル−チアゾリジン−2−チオン及びスルホ−NHSエステルが好適である。アシルチアゾリジン−2−チオンは、水溶液中のその高い反応性と相対的安定性のために好適である。
【0107】
別の実施態様において反応性基は、核酸ベクターの表面上のチオール基と共有結合を形成することができる。この実施態様において好適な種類の反応性基の例には、ハロゲン化アルキル、ハロアセトアミド、及びマレイミドがある。
【0108】
別の実施態様において反応性基は、核酸ベクターの表面上のヒドロキシル基と共有結合を形成することができる。この実施態様において好適な種類の反応性基の例には、クロロ蟻酸塩、及びハロゲン化物がある。
【0109】
あるいは核酸ベクターの表面上のヒドロキシル基は、酸化剤(例えば過ヨウ素酸)で酸化し、次にヒドラジン、ヒドロキシルアミン、又はアミンを含む反応性基と反応させることができる。
【0110】
別の実施態様において反応性基は、核酸ベクターの表面上のチロシン残基と共有結合を形成することができる。この実施態様において好適な種類の反応性基の例には、塩化スルホニル、及びヨードアセトアミドがある。
【0111】
別の実施態様において反応性基は、核酸ベクターの表面上のアルデヒド又はケトン基と共有結合を形成することができる。この実施態様において好適な種類の反応性基の例には、ヒドラジド、セミカルバジド、1級脂肪族アミン、芳香族アミン、及びカルボヒドラジドがある。
【0112】
別の実施態様において反応性基は、核酸ベクターの表面上のカルボン酸と共有結合を形成することができる。この作用は、例えば水溶性カルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を使用して化合物を活性化し、次に反応性基としてアミンと反応させることにより行われる。
【0113】
別の実施態様において反応性基は、核酸ベクターの表面上の糖と反応し共有結合を形成することができる。この作用は、例えばガラクトースオキシダーゼによる糖の酵素性酸化でアルデヒドを形成し、次に反応性基としてヒドラジドのようなアルデヒド反応性化合物と反応させることにより行われる。
【0114】
ポリマー上の反応性基の数は、好ましくはポリマーの総重量に基づいて0.5〜10モル%、さらに好ましくは1〜6モル%、最も好ましくは2〜5モル%の反応性基である。一般にポリマーは生物学的に不活性なポリマーである。ポリマー骨格は一般的に前記反応性基で置換される。通常ポリマーは、1個以上の反応性基により置換される骨格を有する生物学的に不活性なポリマーである。
【0115】
これらの反応性基はポリマー骨格に、直接にまたはスペーサー基を介して連結されることができる。そのようなスペーサー基の例にはオリゴペプチド結合がある。このようなオリゴペプチド結合は好ましくは、1〜4個の、特に2または4個のペプチド基を含む。好適な結合の例には、−Gly−Gly−、−Glu−Lys−Glu−;及び−Gly−Phe−Leu−Gly−がある。エチレングリコール−オリゴペプチドポリマーの場合、反応性基(場合により、上記で定義したスペーサー基)で置換されるオリゴペプチド基である。ある実施態様において該スペーサーは、本明細書で定義される基Lである。
【0116】
本発明で使用されるポリマーは、好ましくは1個以上の該反応性基を含む合成親水性ポリマーである。
【0117】
さらに好ましくは本発明で使用されるポリマーは、複数の該反応性基を含む合成親水性多価ポリマーである。
【0118】
本発明における使用に適したポリマーの例は、WO98/19710に開示されており、ポリHPMA−GlyPheLeuGly−ONp、ポリHPMA−GlyPheLeuGly−NHS、ポリHPMA−Gly−Gly−ONp、ポリHPMA−Gly−Gly−NHS、ポリ(pEG−オリゴペプチド(−ONp))、ポリ(pEG−GluLysGlu(ONp))、pHEG−ONp、pHEG−NHSである。これらの化合物の調製は、WO98/19710に開示されている。WO98/19710は参照のためその全体が本明細書に組み込まれる。
【0119】
好ましくは各反応性基はポリマー骨格に、スペーサー基を介して連結されることができ、スペーサー基は1個以上の切断可能な基を含む。典型的には1個以上の切断可能基は加水分解可能な基である。典型的には加水分解可能な基は、ヒドラゾン又はヒドラジド基、好ましくはヒドラゾン基である。
【0120】
好適な実施態様においてポリマーは、1個以上の式:
【化1】

の単位を含む。
【0121】
別の好適な実施態様においてポリマーは、1個以上の式IVa:
【化2】

(ここで、XはNHであり、nは2であり、Lは−S−S−である)の単位を含む。
【0122】
別の好適な実施態様においてポリマーは、1個以上の式:
【化3】

の単位、及び場合により、1個以上の式IVa(ここで、XはNHであり、nは2であり、Lは−S−S−である)の単位を含む。
【0123】
さらに好適な実施態様においてポリマーは、以下の3個のモノマー単位:
【化4】

(ここで、mは典型的には85〜96モル%であり、nは典型的には3〜10モル%であり、oは典型的には1〜5モル%である)を含む。上記の3種類の単位が典型的にはブロックコポリマーとして存在しないことは、当業者には明らかであろう。これらは典型的には、基本的に特定のモル比のモノマー単位のランダムコポリマーとして存在する。このようなポリマーは典型的には、ATRP又はRAFTにより製造される。
【0124】
さらに別の好適な実施態様においてポリマーは、式Aに示す以下の4個のモノマー単位:
【化5】

(ここで、EGFは表皮増殖因子である)を含む。上記の4個の単位が典型的にはブロックコポリマーとして存在しないことは、当業者には明らかであろう。これらは典型的には、基本的に記載のモノマー単位のランダムコポリマーとして存在する。このようなポリマーは典型的には、ATRP又はRAFTにより製造される。
【0125】
さらに別の好適な実施態様においてポリマーは、以下の4個のモノマー単位:
【化6】

(ここで、aは85〜93モル%であり、bは1〜5モル%であり、cは4〜6モル%であり、dは2〜4モル%である)を含む。上記の4個の単位が典型的にはブロックコポリマーとして存在しないことは、当業者には明らかであろう。これらは典型的には、基本的に特定のモル比のモノマー単位のランダムコポリマーとして存在する。このようなポリマーは典型的には、ATRP又はRAFTにより製造される。
【0126】
本発明の方法のある実施態様において、陽性荷電4級アミノ基のそれぞれは、1個以上の分解可能な又は生体分解可能な結合を介して、典型的には還元性又は加水分解可能な結合により、ポリマー骨格に結合され、該方法は、4級陽性荷電アミノ基とポリマー骨格との分解可能な又は生体分解可能な結合を切断する追加の工程を含む。典型的には4級陽性荷電アミノ基とポリマー骨格との分解可能な又は生体分解可能な結合を切断するこの工程は、加水分解的に、還元的に、又は酵素的に分解可能なポリマーを、又はポリマーとベクター(存在する場合)との結合を切断しない。
【0127】
一般に本発明のポリマー改変核酸ベクターにおいてポリマーは、本来はポリマー改変核酸ベクターの活性を中和することができる抗体による認識を受けるであろう核酸ベクターの領域を遮蔽する。典型的には該領域は核酸ベクターの表面の陰性荷電領域若しくは酸性領域である。
【0128】
核酸ベクターがアデノウイルスである時、該陰性荷電領域は典型的には、アデノウイルスヘキソンタンパク質の陰性荷電領域(例えば、モチーフ147−162:EDEEEEDEDEEEEEEE)である。このような領域は典型的には、ポリマー上の反応性基に対して非反応性であり、わずかに陰性荷電しているポリマー(例えば、HPMAに基づくポリマー)に反発する。すなわちポリマーへの陽性荷電4級アミノ基の取り込みは、ポリマーをこれらの領域に静電的に結合させ、これらの領域とポリマーとの可能な反発力を最小にする。従ってこれは、ベクターと、陽性荷電4級アミノ基を有するポリマーとの反応速度を上昇させる。
【0129】
本発明の組成物は典型的には、インビトロでの使用又は植物若しくは動物での使用に適している。動物(特に哺乳動物)で使用するための組成物である場合、担体は好ましくは医薬的に許容し得る添加剤、希釈剤、又は賦形剤である。好適な組成物は、微生物や発熱物質の混入が無い。
【0130】
本発明のポリマー改変核酸ベクターは、種々の剤形で投与される。すなわちこれらは経口的に、例えば水性懸濁物又は油性懸濁物として投与することができる。本発明のポリマー改変核酸ベクターはまた非経口的に、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内、腹腔内、皮内、経皮的、又は注入法により投与してもよい。腹腔内及び皮内投与が好ましい。ポリマー改変核酸ベクターは、吸入器又はネブライザーによりエアゾルの形で投与してもよい。
【0131】
経口投与用製剤は、例えばポリマー改変核酸ベクターとともに、可溶化剤、例えばシクロデキストリン、若しくは改変シクロデキストリン;希釈剤、例えば乳糖、ブドウ糖、ショ糖、セルロース、コーンスターチ、若しくはバレイショデンプン;滑沢剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム若しくはカルシウム、及び/又はポリエチレングリコール;結合剤、例えばデンプン、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、若しくはポリビニルピロリドン;崩壊剤、例えばデンプン、アルギン酸、アルギン酸塩、若しくはデンプングリコール酸ナトリウム;発泡剤;色素;甘味剤;湿潤剤、例えばレシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸塩;及び一般に薬剤で使用される非毒性で薬理学的に不活性な物質を、含んでよい。
【0132】
経口投与用の液体分散物は、液剤、シロップ剤、エマルジョン、及び懸濁剤でもよい。液剤は、可溶化剤、例えばシクロデキストリン又は改変シクロデキストリンを含んでよい。シロップ剤は、担体として例えばショ糖、又はグリセリン及び/又はマンニトール及び/又はソルビトールとともにショ糖を含んでよい。
【0133】
懸濁剤及びエマルジョンは、担体として、例えば天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、又はポリビニルアルコールを含んでよい。筋肉内注射用の懸濁物又は液剤は、活性化合物とともに、医薬的に許容し得る担体、例えば無菌水、オリーブ油、オレイン酸エチル、グリコール、例えばプロピレングリコール;可溶化剤、例えばシクロデキストリン若しくは改変シクロデキストリン、及び所望であれば適切な量の塩酸リドカインを含んでよい。
【0134】
静脈内投与又は注入用の液剤は、担体として、例えば無菌水、及び可溶化剤、例えばシクロデキストリン若しくは改変シクロデキストリンを含むか、又は好ましくは無菌、水性、等張食塩水の形でもよい。
【0135】
本発明のポリマー改変核酸ベクターの治療用有効量が、患者に投与される。ウイルス療法用のポリマー改変腫瘍崩壊ウイルスの場合、典型的な用量は、個々のウイルスにより異なり107〜1013個のウイルス粒子を含むであろう。本発明のポリマー改変核酸ベクターは、典型的には非毒性量で患者に投与される。
【0136】
本発明のポリマー改変核酸ベクターは、例えば遺伝子治療又は遺伝的ワクチン接種治療の実施において、患者に治療用遺伝子物質をインビボ投与するのに有用であり、ここでポリマー改変核酸ベクターは、治療用遺伝子物質を含む本発明のポリマー改変核酸ベクターである。
【0137】
遺伝子治療は全分野のヒトの疾患において用途があり、特に限定されないが、癌(直接注入に適した局所的にアクセスできる腫瘍小結節、ならびに全身性治療を必要とする転移癌を含む)、パーキンソン病、X−SCID、鎌状赤血球症、レッシュ・ナイハン症候群、フェニルケトン尿症(PKU)、ハンチントン舞踏病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、血友病、嚢胞性繊維症、リソソーム蓄積症、心血管障害、及び糖尿病の治療を含む。
【0138】
本発明のポリマー改変核酸ベクターはまた、ウイルスワクチンの投与のために使用される。HIV、結核、マラリア、インフルエンザ、癌、及び他の疾患に対するワクチン接種が企図される。ワクチンはプライムブースト法(すなわち、複数回の投与)又は補助剤と組合せて投与される。
【0139】
本発明のポリマー改変核酸ベクターは、例えばウイルス療法を含む微生物療法を実施するのに、患者に治療薬をインビボ投与するのに有用であり、ここでポリマー改変核酸ベクターは、本発明のポリマー改変核酸ベクターである。
【0140】
ある実施態様において本発明のポリマー改変核酸ベクターは、他の薬剤、例えば癌の治療に有効な他の薬剤と組合せて使用される。
【0141】
本発明はまた、(a)1個以上の陽性荷電4級アミノ基と、(b)1個以上の反応性基とを含む、1価又は多価のポリマーを提供する。
【0142】
典型的には、(a)ポリマー及び/又はポリマーと1個以上の反応性基との結合は、加水分解的に、還元的に、又は酵素的に分解可能であり;及び/又は(b)1個以上の陽性荷電4級アミノ基のそれぞれは、1個以上の分解性の又は生体分解性の結合を介してポリマーに結合している。
【0143】
これらのポリマーは、本発明の方法で使用するのに好適なポリマーでもよい。
【0144】
ポリマーは一般に骨格と側鎖とを含む。側鎖はポリマー骨格に結合している。
【0145】
ある実施態様において1個以上の陽性荷電4級アミノ基は、1個以上の式Iaの陽性荷電4級アミノ基である:
【化7】

(ここで、R1、R2、及びR3はそれぞれ、直鎖または分岐鎖のC1〜C6アルキル基、直鎖または分岐鎖のC2〜C6アルケニル基、直鎖または分岐鎖のC2〜C6アルキニル基、6〜10員のアリール基、5〜10員のヘテロアリール基、C3〜C8シクロアルキル基、及び3〜8員のヘテロシクリル基から独立に選択され、これらのC1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、C2〜C6アルキニル基、6〜10員アリール基、5〜10員ヘテロアリール基、C3〜C8シクロアルキル基、及び3〜8員ヘテロシクリル基は、非置換であるか、又はハロゲン原子、−CN基、−NH2基、ヒドロキシ基、環−COOH基、−NO2基、直鎖又は分岐鎖の非換てC1〜C4アルキル基、直鎖または分枝鎖のC1〜C4アルコキシ基、直鎖又は分枝鎖のC1〜C4アルキルチオ基、直鎖または分枝鎖のC1〜C4アルキルアミノ基、6〜10員のアリールオキシ基、及びフェニル基から選択される1、2、若しくは3個の置換基で置換され、このフェニル基は典型的には、非置換であるか、又はハロゲン原子、−CN基、−NH2基、ヒドロキシ基、及び−NO2基から選択される1、2、若しくは3個の置換基で置換される)。式Iaの陽性荷電4級アミノ基は一般に、ポリマー骨格に結合した側鎖中に存在する。式Iaの陽性荷電4級アミノ基は典型的には、記載のように1重結合によりポリマー骨格に結合している。
【0146】
別の実施態様において1個以上の陽性荷電4級アミノ基は、1個以上の式Ibの陽性荷電4級アミノ基である:
【化8】

(ここで、R2とR3は上記で定義したものである)。式Ibの陽性荷電4級アミノ基は一般に、ポリマー骨格中に、又はポリマー骨格に結合した側鎖中に存在する。式Ibの陽性荷電4級アミノ基は、側鎖中にある時、典型的には記載のように1個又は2個の1重結合(好ましくは1個の1重結合)によりポリマー骨格に結合している。
【0147】
別の実施態様において1個以上の陽性荷電4級アミノ基は、1個以上の式Icの陽性荷電4級アミノ基である:
【化9】

(ここで、R3は上記で定義したものである)。式Icの陽性荷電4級アミノ基は一般に、ポリマー骨格中に、又はポリマー骨格に結合した側鎖中に存在する。式Icの陽性荷電4級アミノ基は、側鎖中にある時、典型的には記載のように1個、2個、又は3個の1重結合(好ましくは1個の1重結合)によりポリマー骨格に結合している。
【0148】
別の実施態様において1個以上の陽性荷電4級アミノ基は、1個以上の式Idの陽性荷電4級アミノ基である:
【化10】

(ここで、Aは、R2とR3が結合した窒素原子を含む3〜8員のヘテロシクリル環であり、R2とR3は上記で定義したものである)。式Id中のA環は場合により、R2、R3が結合した窒素原子以外に、O、S、及びNから選択される1個又は2個のヘテロ原子を含有することができる。式Idの陽性荷電4級アミノ基は一般に、ポリマー骨格に結合した側鎖中に存在する。式Idの陽性荷電4級アミノ基は典型的には、記載のように1重結合によりポリマー骨格に結合している。
【0149】
別の実施態様において1個以上の陽性荷電4級アミノ基は、1個以上の式Ieの陽性荷電4級アミノ基である:
【化11】

(ここで、Bは、R3が結合した窒素原子を含む6〜10員のヘテロアリール環であり、R3は上記で定義したものである)。式IeのB環は場合により、R3が結合した窒素原子以外に、O、S、及びNから選択される1個又は2個のヘテロ原子を含有することができる。式Ieの陽性荷電4級アミノ基は一般に、ポリマー骨格に結合した側鎖中に存在する。式Iaの陽性荷電4級アミノ基は典型的には、記載のように1重結合によりポリマー骨格に結合している。
【0150】
本明細書において用語C1〜C6アルキルは、飽和直鎖及び分岐鎖アルキル基の両方を含む。C1〜C6アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル、及びn−ヘキシルがある。好ましくはC1〜C6アルキル基は、C14アルキル基、さらに好ましくはC13アルキル基、さらに好ましくはメチル又はエチル基、最も好ましくはメチル基である。
【0151】
本明細書において用語C2〜C6アルケニルは、直鎖または分岐鎖でもよい1個以上の炭素−炭素2重結合を含む基を示す。好ましくはC2〜C6アルケニル基はC2〜C4アルケニル基である。さらに好ましくはC2〜C6アルケニル基はビニル、アリル、又はクロチル基、最も好ましくはアリル基である。
【0152】
本明細書において用語C2〜C6アルキニルは、直鎖または分岐鎖でもよい1個以上の炭素−炭素3重結合を含む基を示す。
【0153】
本明細書において用語6〜10員アリールは、フェニル又はナフチルのような単環式又は多環式芳香環系を示す。フェニルが好適である。
【0154】
本明細書において用語5〜10員ヘテロアリールは、少なくとも1個の芳香族複素環を含み、かつO、S、及びNから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む芳香環系を示す。ヘテロアリール基は、単一の環又は2個またはそれ以上の環であり、ここで少なくとも1個の環はヘテロ原子を含む。例としては、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリアジニル、フリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、チエニル、ピロリル、ピリジニル、ベンゾチアゾリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、キノリジニル、シノリニル、トリアゾリル、インドリジニル、インドリニル、イソインドリニル、イソインドリル、イミダゾリジニル、プテリジニル、及びピラゾリル基がある。ピリジル、チエニル、フラニル、ピリダジニル、ピリミジニル、及びキノリル基が好ましい。好ましくはヘテロアリール基は5又は6員の単一環であり、例えばピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、フリル、オキサジゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、チエニル、ピロリル、及びピリジニルである。
【0155】
本明細書において用語C3〜C8シクロアルキル基は、飽和又は不飽和基を示す。好ましくはC3〜C8シクロアルキル基は飽和している。C3〜C8シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルがある。好ましくはC3〜C8シクロアルキル基はシクロヘキシル基である。
【0156】
本明細書において用語C3〜C8複素環基は、飽和又は不飽和の非芳香族の炭素環、例えば5、6、又は7員環であり、ここで1個以上の、例えば1、2、又は3個の炭素原子、好ましくは1又は2個の炭素原子は、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子により置換される。飽和複素環基が好ましい。複素環基は、単一の環であるか、又は2個またはそれ以上の縮合環であり、ここで少なくとも1個の環はヘテロ原子を含む。
【0157】
複素環基の例には、ピペリジル、ピロリジル、ピロリニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、キヌクリジニル、トリアゾリル、ピラゾリル、テトラゾリル、クロマニル、イソクロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリル、オキシラニル、アザリジニル、4,5−ジヒドロ−オキサゾリル、及び3−アザ−テトラヒドロフラニルがある。
【0158】
本明細書において用語ハロゲン原子は、塩素、フッ素、臭素、又はヨウ素原子を示し、典型的にはフッ素、塩素、又は臭素原子、最も好ましくは塩素又はフッ素を示す。用語ハロは、同じ意味を有する接頭辞として使用される。
【0159】
本明細書においてC1〜C4アルコキシ基は、酸素原子に結合している該C1〜C4アルキル基、例えば C1〜C2アルキル基である。非置換C1〜C4アルコキシ基が好ましい。好ましくはC1〜C4アルコキシ基はメトキシ基である。
【0160】
本明細書においてC1〜C4アルキルチオ基は、イオウ原子に結合している該C1〜C4アルキル基、例えばC1〜C2アルキル基である。非置換C1〜C4アルキルチオ基が好ましい。
【0161】
本明細書においてC1〜C4アルキルアミノ基は、窒素原子に結合している該C1〜C4アルキル基、例えばC1〜C2アルキル基である。非置換C1〜C4アルキルアミノ基が好ましい。
【0162】
本明細書において用語6〜10員アリールオキシ基は、酸素原子に結合している該6〜10員アリール基である。非置換フェノキシ基が好ましい。
【0163】
典型的にはポリマーは、式Ia、Ib、Ic、Id、及びIeの群から選択される1個以上の陽性荷電4級アミノ基を含む。式Iaの1個以上の陽性荷電4級アミノ基を含むポリマーが好ましい。
【0164】
実際はポリマーは典型的には、適切な対イオンとの塩の形である。すなわち窒素原子上の陽性電荷は、典型的には陰イオンA-に結合している。A-は鉱酸の陰イオン、例えばハロゲン化物、例えば塩化物、臭化物、又はヨウ化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、及びテトラフルオロホウ酸塩、又は有機酸の陰イオン、例えば酢酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩である。A-は好ましくは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硝酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、又はトリフルオロ酢酸塩から選択される陰イオンである。さらに好ましくはA-は塩化物、中華物、ヘキサンフルオロリン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、トリフルオロ酢酸塩、又はメタンスルホン酸塩ある。さらに好ましくはA-は塩化物である。
【0165】
陽性荷電4級アミノ基は側鎖中に存在する時、ポリマー骨格に直接結合しているか又はリンカーLを介して結合している。Lは通常、オリゴ及びポリ(アルキレングリコール)及びアルキレンスルフィド、例えば1〜20個のアミノ酸の短いペプチド配列、アルキル基、例えばC1〜C6アルキル基、及び短いポリエステル又はポリカーボネート鎖、例えば10〜30個の炭素原子を有するポリエステル又はポリカーボネート鎖から選択される。Lは好ましくは親水性である。Lは場合により、1個以上の、典型的には1個の切断可能な基を含む。切断可能な基は一般に還元性基(例えば−S−S−)又は酸性切断可能な基、例えばアセタール基、ヒドラジド若しくはヒドラゾン基である。
【0166】
この1個以上の反応性基は典型的には、骨格に結合した側鎖中に存在する。
1個以上の式Iaの陽性荷電4級アミノ基を含むポリマーが好適である。
【0167】
通常R1、R2、R3は、それぞれ直鎖または分岐鎖のC1〜C4アルキル基、フェニル基、5〜6員ヘテロアリール基、C3〜C6シクロアルキル基、及びC5〜C6ヘテロシクリル基から独立に選択され、このC1〜C4アルキル基、フェニル基、5〜6員ヘテロアリール基、C3〜C6シクロアルキル基、及びC5〜C6ヘテロシクリル基は非置換であるか、又はハロゲン原子、ヒドロキシ基、−CN基、−NH2基、及び−NO2基から選択される1又は2個の置換基で置換される。
【0168】
好ましくはR1、R2、R3はそれぞれ、直鎖または分岐鎖のC1〜C4アルキル基及びフェニル基から独立に選択され、このC1〜C4アルキル基及びフェニル基は非置換であるか、又はハロゲン原子及びヒドロキシ基から選択される1個の置換基で置換される。
【0169】
さらに好ましくはR1、R2、R3はそれぞれ、直鎖または分岐鎖のC1〜C2アルキル基から独立に選択され、このC1〜C2アルキル基は非置換であるか、又はハロゲン原子及びヒドロキシ基から選択される1個の置換基で置換される。
【0170】
さらに好ましくはR1、R2、R3は同じであり、それぞれ非置換のメチル基である。
【0171】
典型的にはポリマー骨格は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、スチリルモノマー、ビニルモノマー、ビニルエーテルモノマー、ビニルエステルモノマー、シアル酸モノマー、マンノースモノマー、N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミン(HEG)モノマー、及びエチレングリコール-オリゴペプチドモノマーから選択されるモノマー単位(M)に基づく。好ましくはポリマー骨格は、N−2−ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)、N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミン(HEG)、及びエチレングリコール−オリゴペプチドから選ばれたモノマー単位に基づくか、又はポリシアル酸又はポリマンナンポリマーである。
【0172】
HPMAに基づくポリマー骨格がより好ましい。
【0173】
すなわちポリマーは典型的には、1個以上の式II:
【化12】

の単位を含む。
【0174】
ポリマー骨格がHPMAモノマー単位に基づき、1個以上の陽性荷電4級アミノ基が式Iaである時、ポリマーは典型的には1個以上の式IIIa及び/又はIIIb:
【化13】

(ここでWはS、NH又はOであり、nは1〜4の整数であり、R1、R2、及びRは上記で定義したものである)、
【化14】

(ここでLは、上記で定義した分解性の又は生体分解性の結合であり、W、n、R1、R2、及びR3は上記で定義したものである)の単位を含み、
Wは好ましくはNH又はOであり、さらに好ましくはOである。
nは好ましくは1〜2の整数であり、さらに好ましくは2である。
【0175】
上記式IIIaとIIIbにおいて、R1、R2、及びR3は好ましくは同じであり、それぞれ非置換メチル基である。式IIIaとIIIb中の窒素原子上の陽性荷電は一般に、上記の適切な対イオンに結合している。
【0176】
上記式IIIbにおいて、Lは典型的には−N−N−又は−S−S−であり、好ましくは−S−S−である。
式IIIaの単位が好ましい。
【0177】
通常反応性基は、核酸ベクターの表面上に存在する基(例えばアミノ基)と反応する基である。アミノ基と反応する適切な反応性基には、p−ニトロフェノール(ONp)エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、及びチアゾリジン−2−チオン基がある。チアゾリジン−2−チオン基が好ましい。
【0178】
典型的にはポリマー骨格と反応性基との結合は、加水分解的に、還元的に、又は酵素的に分解可能である。
【0179】
ある実施態様においてポリマー骨格と反応性基との結合は、加水分解的に又は酵素的に分解可能である。
【0180】
好ましくはポリマー骨格と反応性基との結合は、加水分解的に分解可能である。
【0181】
典型的にはポリマー骨格と反応性基との加水分解的に、還元的に、又は酵素的に分解可能な結合は、ジスルフィド、ヒドラゾン、又はヒドラジド基、好ましくはヒドラジド又はヒドラゾン基、さらに好ましくはヒドラゾン基を含む。これらの基とその切断条件は、上記でより詳細に記載されている。
【0182】
ポリマー骨格がHPMAに基づき、反応性基がチアゾリジン−2−チオン基を含む時、ポリマーは典型的には1個以上の式IVa、IVb、及び/又はIVc:
【化15】

(ここでXはO、S、又はNHであり、Lとnは上記で定義したものである)、
【化16】

(ここでGlyはアミノ酸グリシンである)、
【化17】

(ここで、XはO、S、又はNHであり、nは上記で定義したものであり、Aは6〜10員のアリール又は5〜10員のヘテロアリール基であり、Rは水素原子又はC1〜C6アルキル基であり、R’は水素原子又はC1〜C6アルキル基である)の単位を含む。典型的にはAは5〜10員のヘテロアリール基、好ましくはピリジン基である。典型的にはRはC1〜C6アルキル基、好ましくはメチル基である。典型的にはR’は水素原子である。
【0183】
Xは好ましくはNHである。
【0184】
式IVaの単位が好ましい。
【0185】
ある実施態様においてポリマーはさらに、上記で定義した1個以上の生物活性物質を含む。該1個以上の生物活性物質は一般に、骨格に結合した側鎖中に存在する。
【0186】
ポリマー骨格がHPMAに基づき、ポリマーがさらに1個以上の生物活性物質を含む時、ポリマーは典型的には1個以上の式V:
【化18】

(ここで、
【化19】

は上記で定義した生物活性物質であり、X、L、及びnは上記で定義したものである)の単位を含む。
【0187】
上記式Vにおいて、
【化20】

は好ましくは表皮増殖因子(EGF)又はマンノースである。
【0188】
好ましくはポリマーは、0〜10モル%の式IIIa及び/又はIIIb、好ましくはIIIaの単位、0〜14モル%の式IVa、Ivb、若しくはIVc、好ましくはIVa若しくはIVcの単位、及び0〜20モル%の式Vの単位を含み、残りのモル%は一般に式IIの単位からなる。
【0189】
さらに好ましくは式IIIa及び/又はIIIbの単位の量は好ましくは0.25〜10モル%、さらに好ましくは0.5〜7.5モル%、さらに好ましくは1.5〜5モル%である。
【0190】
さらに好ましくは式IVa、IVb、又はIVcの単位の量は、0.5〜10モル%、さらに好ましくは1〜6モル%、さらに好ましくは2〜5モル%である。
【0191】
さらに好ましくは式IIIa又はIIIbにおいて、nは2であり、R1、R2、及びR3は同じであり、それぞれ非置換メチル基であり、X-は塩化物であり、上記式IVa又はIVbにおいて、XはNHであり、nは2であり、Lは−S−S−であり、上記式IVcにおいて、XはNHであり、nは2であり、Rはメチル基であり、Aはピリジン基であり、R’は水素原子であり、上記式Vにおいて、XはNHであり、nは2であり、Lは−S−S−であり、BはEGFである。
【0192】
本発明のさらなる好適な実施態様において、ポリマーは骨格と側鎖とを含み、ポリマー骨格はHPMAに基づき、1個以上の陽性荷電4級アミノ基は式Iaであり、骨格に結合した側鎖中に存在し、R1、R2、及びR3は同じであり、それぞれ非置換メチル基である。
【0193】
本発明のポリマーは、公知の方法、例えば Konak, et al., Langmuir, 2008, 24, 7092-7098(参照のためその全体が本明細書に組み込まれる)に記載された方法との類推により調製することができる。
【0194】
すなわち本発明のポリマーは典型的には、1個以上のモノマー単位、例えば1個以上のN−2−ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)、N−(2−ヒドロキシエチル)−1−グルタミン(HEG)、エチレングリコール−オリゴペプチド、シアル酸、若しくはマンノースモノマー単位、好ましくはHPMAモノマー単位を、陽性荷電4級アミノ基を含む1個以上の官能基化モノマー単位と、反応性基を含む1個以上の官能基化モノマー単位と、場合により生物活性物質を含む1個以上の官能基化モノマー単位とともに共重合することにより調製される。
【0195】
典型的には本発明のポリマーは、本明細書で定義される1個以上のモノマー単位Mを、反応性基で官能基化されている1個以上のモノマー単位Mと、1個以上のモノマー単位M−L−N+123(ここで、M、L、R1、R2、及びR3は本明細書で定義される)と共重合することにより調製される。
【0196】
あるいはポリマーは、本明細書で定義される1個以上のモノマー単位を重合し、こうして得られたポリマーを1個以上の陽性荷電4級アミノ基と1個以上の反応性基と、場合により1個以上の生物活性物質とを用いて官能基化することにより調製される。
【0197】
すなわちポリマー骨格がHPMAに基づく場合、本発明のポリマーは、1個以上の式II'の単位と、1個以上の式III'a及び/又はIII'b、好ましくはIII'a、1個以上の式IV'a、IV'b、又はIV'c、好ましくはIV'a若しくはIV'cの単位、及び場合により、1個以上の式V’の単位:
【化21】

【化22】

(ここで、W、n、R1、R2、及びR3は上記で定義したものである)、
【化23】

(ここで、W、n、L1、R1、R2、及びR3は上記で定義したものである)、
【化24】

(ここで、X、n、及びLは上記で定義したものである)、
【化25】

(ここで、Glyはアミノ酸グリシンである)、
【化26】

(ここで、X、n、R、R’、及びAは上記で定義したものである)、
【化27】

(ここで、X、n、L、及びBは上記で定義したものである)、
とを重合することにより調製される。
【0198】
典型的には、該共重合反応に開始剤、好ましくはAIBNが使用される。反応は一般に有機溶媒(典型的にはDMSO)中で行われる。反応は通常、50〜70℃、好ましくは約60℃に加熱される。反応は通常4〜8時間、好ましくは5〜7時間、さらに好ましくは約6時間、上記温度で加熱される。こうして得られたポリマーは典型的には、アセトン−ジエチルエーテル(3:1)混合液中で沈殿させ、ろ別し、アセトンとジエチルエーテルで洗浄し、真空下で乾燥する。こうして得られたポリマーは、セファデックス−LH20カラムでメタノールを使用してさらに精製される。
【0199】
重合反応用のモノマーは、典型的には市販されているか、又は公知の方法、例えば Konak, et al., Langmuir, 2008, 24, 7092-7098 に記載された方法との類推により調製することができる。
【実施例1】
【0200】
ELISAにより測定される抗体相互作用からのウイルス粒子の防御
ある範囲の4級アミン(QA)を有する異なる濃度のポリマーと反応性チアゾリジン−2−チオン(TT)基を用いて、アデノウイルス粒子(Ad5野生型)をコーティングした(図1参照)。アデノウイルス粒子をコーティングするのに適したポリマーは、図4Aに示すように調製される。ポリマーEC236は図3と4Aに示す通りである。ポリマー改変前に、ウイルス粒子は高度に精製され、TT基に対して競合し得る汚染物質を無しにする。本例では塩化セシウム勾配でウイルス粒子をバンド形成させ、次にBenzonase(登録商標)で処理した(適切なプロトコールは文献に報告されている)。
【0201】
あるいはイオン交換クロマトグラフィー又はサイズ排除クロマトグラフィーによる精製も好適であろう。精製後、ウイルス粒子を反応緩衝液(150mM NaCl、50mM ヘペス、pH7.8、2mM CaCl2、MgCl2)に透析した。ウイルス粒子を反応緩衝液で20℃で1時間コーティングし、次に4℃に一晩置いた。次にポリマーコーティングウイルス粒子を、S400カラム(Pharmacia)を使用してスピンカラムにより未反応ポリマーから分離した。
【0202】
ウイルス粒子に結合するポリクローナル抗体の能力を捕捉ELISAにより測定した。この例ではELISAプレートを、Ad5に対するポリクローナルウサギ抗体でコーティングした。ブロッキングと洗浄後、コーティングウイルス粒子を1e9粒子/ウェルで1時間加えた。ビオチン化ヤギポリクローナル抗体を2次アビジン西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体とともに使用して検出を行った。データは、ポリマーコーティング濃度を上昇させると、抗体に対する防御が改善されることを示す。さらに4級アミノ基を有するポリマーは、低濃度でより大きな防御を与えた。
【実施例2】
【0203】
許容(permissive)細胞のウイルス感染を阻止するポリマーの能力に対する4級アミンの影響
E1の代わりにcmvプロモーターの制御下でルシフェラーゼを発現するアデノウイルス5型粒子を、0%又は7.8%の4級アミン(それぞれEC221とEC160)を含有するポリマーを用いてコーティング(上記)した。コーティングウイルス粒子が細胞に感染する能力を、インビトロでA549(肺癌)単層で評価した。簡単に説明するとウイルス粒子(1000粒子/細胞)を、96ウェルプレート中で増殖している細胞(50,000細胞/ウェル)に1.5時間加えた。さらに24時間後、細胞を溶解し、ルシフェラーゼ発現をルミノメトリーで評価した。再ターゲティングの無いポリマーコーティングは、ウイルスがその正常な細胞表面受容体にアクセスすることを妨害することにより、自然のウイルス向性を無くさせる。4級アミン(EC221)の添加は、向性喪失がより効率的にかつはるかに低い濃度で起きることを可能にする。
【実施例3】
【0204】
4級アミンを有するポリマーは血液細胞との相互作用からAd5を防御し、高力価中和血清の存在下での感染を可能にする
この試験で使用されたポリマーは4級アミンを有し、N末端を介してポリマーに結合した表皮増殖因子(EGF)を用いて再ターゲティングされた(図3A)。中和性血漿中の正常感染とEGF性感染の比較を図3Bに示す。簡単に説明するとAd5又はEGF−P−Ad5を、中和抗血清の希釈物とインキュベートし、次にA431細胞の単層に加え、90分後培地を取り出し、PBS中で洗浄し、24時間後ルシフェラーゼ発現を分析した。この個体は、平均的個体と比較して極端に高力価の中和抗体(1:20,000)を有することに注意されたい。図3Cは、コーティングウイルス粒子が、PBS/1%BSAに懸濁された赤血球又は新鮮な全ヒト血清との相互作用を回避することを示した。インキュベーション後、赤血球と液体画分を分離し、定量PCRによりAd5ゲノムについて測定した(白=液体画分、灰色=細胞画分)。
【0205】
図3Dは、ヒト赤血球の存在下での正常感染とEGF性感染の比較を示す。A431細胞を、PBS又は血漿に懸濁した赤血球の1:5希釈物の存在下で、Ad5又はEGF−P−Ad5で感染させた。90分後培地を取り出し、PBS中で洗浄し、24時間後ルシフェラーゼ発現を分析した。黒い棒=Ad5、白い棒=EGF−P−Ad5。N=4。SEMを示す、**p<0.005。
【実施例4】
【0206】
E1の代わりにルシフェラーゼを発現する複製欠陥アデノウイルス5型粒子を、陽性荷電4級アミノ基を含むが生体分解性結合の無いポリマー(Ad5.luc−QA−HPMA)と、反応性エステル基とポリマー骨格との間に分解性側鎖を有する陽性荷電4級アミノ基を含むポリマー(Ad5.luc−QA(SS)−HPMA、図1と4に示す)とで、種々の濃度でコーティングした。コーティングウイルス粒子が細胞に感染する能力を、インビトロでA549(肺癌)細胞で評価した。すべての濃度のポリマーコーティングについて、生体分解性ポリマーでコーティングしたウイルス粒子は、生体分解性ではないポリマーでコーティングしたウイルス粒子より、優れたウイルス感染性を示すことがわかる。
【実施例5】
【0207】
培養中の細胞に侵入するウイルスゲノムの数を定量PCRにより測定した(図6)。この試験は、懸濁細胞を使用して1000粒子/細胞を投入して90分行った。アデノウイルス粒子(Ad)、HPMAポリマーでコーティングしたアデノウイルス粒子(Ad.luc−HPMA)、陽性荷電4級アミノ基を含むが生体分解性結合を含まないポリマーでコーティングしたアデノウイルス粒子(Ad5.luc−QA−HPMA)、及び反応性エステル基とポリマー骨格との間に分解可能な側鎖を有する陽性荷電4級アミノ基を含むポリマーでコーティングしたアデノウイルス粒子(Ad5.luc−QA(SS)−HPMA)を比較した。中性ポリマーでコーティングしたウイルスの取り込みが阻止されることがわかる。これは、カプシドタンパク質が天然のウイルス受容体と結合することを妨害されるためと考えられる。一方陽性荷電4級アミノ基を含むポリマーでコーティングしたウイルスの取り込みは上昇している。これは、細胞表面との電荷に基づく相互作用のためであり、この取り込み機構により感染が成功すると考えられる。陽性荷電反応性ポリマーでコーティングされたウイルスの取り込みレベルは、分解可能な側鎖の有無にかかわらず同様であることは、重要である。しかし分解可能なもののみの感染が成功する(図5)。
【実施例6】
【0208】
ルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現する組換え複製欠陥E1/E3欠失アデノウイルス5型を、二重CsCl遠心分離により精製した。次に精製したAd5粒子を、ヘペス緩衝化食塩水(pH7.8)中の20mg/ml EC236ポリマー(図1、3、4に示すポリマー)を用いて室温で1時間コーティングした。次にコーティングしたウイルス粒子を液体窒素で瞬間凍結し、使用するまで−80℃で保存した。EC236コーティングアデノウイルス5型を使用して、ヒト前立腺癌細胞(PC3)を、1000粒子/細胞で中和血清希釈物の存在下又は非存在下で感染させた。種々の中和血清濃度での、コーティング及び非コーティングアデノウイルス粒子発現レベルの比較を図7に示す。血清の非存在下ではEC236コーティングウイルスは、細胞中で非コーティング粒子に匹敵(わずかに高い)するレベルのトランス遺伝子発現を示す。しかし1/50又は1/500希釈の血清の存在下では、非改変ウイルスは顕著に阻害され、一方EC236コーティングウイルスは血清によりあまり影響を受けなかった。
【実施例7】
【0209】
インビトロイメージング装置(IVIS100)の使用は、ウイルス活性とトランス遺伝子発現の非侵襲的定量を可能にする。ウイルストランス遺伝子活性は、トランス遺伝子抗原に対する免疫応答に密接に相関し、ワクチンの効果のモデルとして使用することができる。ウイルス粒子のインビボ中和をは、ウイルス粒子と抗体の同時投与により行うことができる(図8)。抗体の存在下では、トランス遺伝子発現とトランス遺伝子抗原に対する免疫応答の両方が抑制される。ヒト抗体を同時投与する理由は、ヒトはマウスと比較すると、ウイルスカプシドタンパク質に対して異なるパターンの抗体応答を生成するためであり、従ってヒト抗体の同時投与(局所的「受動」免疫を効果的に導入する)は、臨床的課題の良好なモデルとなる。
【0210】
この試験では1e9コーティング(Ad.luc−QA(Hz)HPMA)又は非コーティングウイルス粒子(Ad.luc)は、中和ヒト血清の存在下又は非存在下で、マウスに同時に投与された。この実験の結果を図8に示す。中和ヒト血清(ser)の存在下では、非コーティングAd−ルシフェラーゼのインビボ発現は低下する。抗体による非コーティングアデノウイルスの中和と異なり、ヒドラゾンベースの陽性荷電反応性ポリマー(ポリマーの構造は図4Bに示す)でコーティングしたアデノウイルスは、インビボで非常に効率的な感染とトランス遺伝子発現を示し、非改変ウイルスより高いレベルに達し、抗アデノウイルス抗体による中和に対して極めて耐性であった。特に中和抗血清の存在下でこのウイルス調製物により達成されるトランス遺伝子発現のレベルは、中和抗血清の非存在下で非改変アデノウイルスが示すレベルより高かった。これは、この系を使用すると、高レベルの抗体耐性送達が達成され、抗ベクター抗体が存在しても、トランス遺伝子又はウイルス抗原の発現が促進されることを示唆する。この方法はまた、繰り返し投与又は免疫応答の「追加免疫」に非常に有用である。結論として非コーティングウイルスを使用するトランス遺伝子発現は、同時投与ヒト中和抗体の存在下で阻害される。これに対してポリマーコーティングウイルス(陽性荷電4級アミノ基と、ウイルスとポリマーコーティングとの間にヒドラゾン基を含む側鎖とを含む)は、強固な抗体耐性感染を示す。
【実施例8】
【0211】
この試験では、試験の11日前にマウスを1e9複製機能不全アデノウイルス5型で免疫した。既存免疫の存在下では、非コーティングAd5の筋肉内注射からのトランス遺伝子発現は低く、あらかじめ免疫していないマウスの予測されるレベルの約10%である。しかし陽性荷電4級アミノ基と、ポリマー骨格とアミノ反応性基(これがウイルスを連結する)との分解可能な結合とを含むポリマーでコーティングしたウイルスは、高レベルの発現を示す。この試験の結果は図9に示す通りである。ポリマーコーティングは、ターゲティング要素と組合せて、標的細胞に選択的に取り込むことを助けることができる。この試験ではポリマーをマンノースアミンでターゲティングして、これらのマンノース受容体を介して樹状細胞へのターゲティングを改良することを助ける。このポリマーの構造は図4Cに示す。
【0212】
この場合、マウスは動物を血清転換するために、1e9アデノウイルス粒子で能動的にあらかじめ免疫されている。ヒトでは、環境中のこのウイルスへの曝露の結果、集団の大半はAd5に対する抗体を有し、このアプローチはマウスと同等のモデルである。この試験は、非改変アデノウイルスによる感染を大きく阻害した既存の免疫の存在にもかかわらず、再ターゲティングされたウイルスによる優れた筋肉内形質導入を示す。
【実施例9】
【0213】
本例は、わずかに酸性のpH(エンドソームpHに近い)で処理することにより、ヒドラゾンベースのコーティングポリマーを除去できることを示す。アデノウイルス粒子をヒドラゾン含有反応性ポリマー(sEC191、構造は図4Bに示す)でコーティングし、次に種々のpHで再度インキュベートした後、中和し、インビトロで感染性を評価した。ポリマーコーティングウイルス粒子はインビトロでその感染性を喪失したが、pH4.4、5.4、又は6.4でインキュベートすると感染性が回復し、これはおそらく、ヒドラゾン基の酸性−触媒切断により、ウイルス表面からポリマーが遮断されたためと考えられる(図10)。興味深いことにpH7.4でインキュベートしたポリマーコーティングしたウイルスは活性の回復を示さず、このコーティングが予想通りpH7.4では安定であることを示している。pH4.4、5.4、6.4、又は7.4でインキュベートした非改変アデノウイルスを使用する対照試験は、ウイルス感染性に対して比較的小さい阻害作用を示した。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4A】

【図4B】

【図4C】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸ベクターがポリマーに共有結合しているポリマー改変核酸ベクターであって、該ポリマーは1個以上の陽性荷電4級アミノ基を有し、ここで該核酸ベクターは、ウイルス、細菌若しくはバクテリオファージ、真菌、胞子、真核細胞の核、又は遺伝情報を含む他の微生物断片若しくは成分よりなる群から選択される微生物であり、ここで
(a)該ポリマー及び/又はこれと核酸ベクターとの結合は加水分解的、還元的、又は酵素的に分解可能であり、及び/又は
(b)該陽性荷電4級アミノ基のそれぞれは、1個以上の分解性又は生体分解性結合を介してポリマー骨格に結合している、
ポリマー改変核酸ベクター。
【請求項2】
ポリマーと核酸ベクターとの結合は、加水分解的、還元的、又は酵素的に分解可能である、請求項1のポリマー改変核酸ベクター。
【請求項3】
加水分解的、還元的、又は酵素的に分解可能なポリマー、及び/又はこれと核酸ベクターとの結合は、ヒドラゾン、ヒドラジド、又はジスルフィド基を含んでなる、請求項1又は2のポリマー改変核酸ベクター。
【請求項4】
陽性荷電4級アミノ基のそれぞれは、還元性又は加水分解性結合を含むリンカーによりポリマー骨格に結合している、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリマー改変核酸ベクター。
【請求項5】
陽性荷電4級アミノ基のそれぞれをポリマー骨格に連結する1個以上の分解性の又は生体分解性の結合は、ジスルフィド結合、ヒドラジド結合、アセタール部分、又は酵素的に切断可能な結合を含んでなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリマー改変核酸ベクター。
【請求項6】
核酸ベクターは、ウイルス、細菌若しくはバクテリオファージ、真菌、胞子、又は真核細胞の核よりなる群から選択される微生物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリマー改変核酸ベクター。
【請求項7】
核酸ベクターは治療用又は抗原性遺伝物質を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリマー改変核酸ベクター。
【請求項8】
ポリマーの核酸ベクターへの結合と核酸ベクターの改変により、核酸ベクターが宿主生物学的系で、それらが本来は通常相互作用する他の分子と相互作用する能力の阻害か、又はそれらが本来は通常結合する部位若しくは受容体に核酸ベクターが結合する能力の阻害が引き起こされる、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリマー改変核酸ベクター。
【請求項9】
核酸ベクターは治療用又は抗原性遺伝物質を含むウイルスベクターである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリマー改変核酸ベクター。
【請求項10】
核酸ベクターは、通常宿主の特定の部位又は受容体に相互作用するウイルスであり、ここで陽性荷電4級アミノ基を有するポリマーは、ウイルスの正常な受容体結合活性を遮蔽するか、及び/又は宿主の新しい又は異なる部位又は受容体への再ターゲティングを可能にする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリマー改変核酸ベクター。
【請求項11】
核酸ベクターは、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、パルボウイルス、ポックスウイルス、トガウイルス、ロタウイルス、又はピコルナウイルスに基づくウイルスである、請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリマー改変核酸ベクター。
【請求項12】
ポリマーは多価ポリマーである、請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリマー改変核酸ベクター。
【請求項13】
ポリマーは、少なくとも2個の結合、典型的には少なくとも3個の結合により核酸ベクターに結合している、請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリマー改変核酸ベクター。
【請求項14】
ポリマー骨格は、N−2−ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)、N−(2−ヒドロキシエチル)−1−グルタミン(HEG)、エチレングリコール−オリゴペプチドのようなモノマー単位に基づくか、又はポリシアル酸若しくはポリマンナンポリマーである、請求項1〜13のいずれか1項に記載のポリマー改変核酸ベクター。
【請求項15】
核酸ベクターを改変するのに使用されるポリマーは、ヒドロゲルを形成するように架橋している、請求項1〜14のいずれか1項に記載のポリマー改変核酸ベクター。
【請求項16】
陽性荷電4級アミノ基のそれぞれは、直接又はスペーサー基を介してポリマー骨格に結合している、請求項1〜15のいずれか1項に記載のポリマー改変核酸ベクター。
【請求項17】
生物活性物質はポリマーに結合しているか又は含まれている、請求項1〜16のいずれか1項に記載のポリマー改変核酸ベクター。
【請求項18】
生物活性物質は、増殖因子若しくはサイトカイン、糖、ホルモン、脂質、リン脂質、脂肪、アポリポタンパク質、細胞接着促進剤、酵素、毒素、ペプチド、糖タンパク質、血清タンパク質、ビタミン、ミネラル、Toll様受容体のリガンド、及び/又は受容体を認識する抗体の1個以上である、請求項17のポリマー改変核酸ベクター。
【請求項19】
生物活性物質は抗体又は抗体断片である、請求項18のポリマー改変核酸ベクター。
【請求項20】
核酸ベクターの改変は、核酸ベクターを生物学的宿主中の異なる受容体に再ターゲティングする作用を有する、請求項1〜19のいずれか1項に記載のポリマー改変核酸ベクター。
【請求項21】
核酸ベクターとポリマーとを反応させることを含んでなる、核酸ベクターの生物学的及び/又は物理化学的性質を改変する方法であって、ポリマー改変核酸ベクターを得るために核酸ベクターが1個以上の共有結合によりポリマーに結合するように、該ポリマーは1個以上の陽性荷電4級アミノ基と1個以上の反応性基を含み、ここで核酸ベクターは、ウイルス、細菌若しくはバクテリオファージ、真菌、胞子、真核細胞の核、又は遺伝情報を含む他の微生物断片若しくは成分よりなる群から選択される微生物であり、ここで
(a)ポリマー、及び/又はこれと核酸ベクターとの1個以上の共有結合は加水分解的、還元的、又は酵素的に分解可能であり、及び/又は
(b)陽性荷電4級アミノ基のそれぞれは、1個以上の分解性又は生体分解性結合を介してポリマー骨格に結合している、方法。
【請求項22】
核酸ベクターは請求項6〜11のいずれか1項の特徴を含み、そして/あるいはポリマーは請求項2〜5又は12〜20のいずれか1項の特徴を含んでなる、請求項21の方法。
【請求項23】
ポリマーは、1個以上の該反応性基により置換される骨格を有する生物学的に不活性なポリマーである、請求項21又は請求項22の方法。
【請求項24】
反応性基のそれぞれは、直接又はスペーサー基を介してポリマー骨格に結合している、請求項21〜23のいずれか1項の方法。
【請求項25】
反応性基のそれぞれはスペーサー基を介してポリマー骨格に結合し、スペーサー基は1個以上の切断可能な基を含んでなる、請求項24の方法。
【請求項26】
1個以上の切断可能な基は加水分解可能な基である、請求項25の方法。
【請求項27】
加水分解可能な基はヒドラゾン又はヒドラジド基である、請求項26の方法。
【請求項28】
請求項21〜27のいずれか1項の方法であって、1個以上の陽性荷電4級アミノ基は、請求項1、4、及び5のいずれか1項で定義した1個以上の分解性の又は生体分解性の結合を介してポリマー骨格に結合しており、該方法は、1個以上の陽性荷電4級アミノ基とポリマー骨格との該分解性の又は生体分解性の結合を切断する追加の工程を含んでなる方法。
【請求項29】
ポリマーは1個以上の式IVa:
【化1】

(ここで、XはNHであり、nは2であり、Lは−S−S−である)の単位を含んでなる請求項21〜28のいずれか1項の方法。
【請求項30】
ポリマーは1個以上の式:
【化2】

の単位を含んでなる、請求項21〜28のいずれか1項の方法。
【請求項31】
ポリマーは以下の3個のモノマー単位:
【化3】

(ここで、mは85〜96モル%であり、nは3〜10モル%であり、oは1〜5モル%である)を含んでなる、請求項21〜28又は30のいずれか1項の方法。
【請求項32】
ポリマーは以下の4個のモノマー単位:
【化4】

(ここで、aは85〜93モル%であり、bは1〜5モル%であり、cは4〜6モル%であり、dは2〜4モル%である)を含んでなる、請求項21〜29のいずれか1項の方法。
【請求項33】
請求項21〜32のいずれか1項の方法により得られるポリマー改変核酸ベクター。
【請求項34】
ポリマーは、本来はポリマー改変核酸ベクターの活性を中和することができる抗体による認識を受けるであろう核酸ベクターの領域を遮蔽し、該領域は典型的には核酸ベクターの表面の陰性荷電領域若しくは酸性領域である、請求項1〜20又は33のいずれか1項のポリマー改変核酸ベクター。
【請求項35】
適切な希釈剤又は担体とともに、請求項1〜20、33、又は34のいずれか1項で定義したポリマー改変核酸ベクターを含んでなる組成物。
【請求項36】
治療の必要な患者に、治療活性のある非毒性量の請求項1〜20、33、又は34のいずれか1項で定義したポリマー改変核酸ベクター、又は請求項33で定義した組成物を投与することを含んでなり、ポリマー改変核酸ベクターは治療用遺伝子物質を含んでなる、遺伝子治療法。
【請求項37】
ワクチン接種又は遺伝子治療で使用するための薬剤の製造における、請求項1〜20、33、又は34のいずれか1項のポリマー改変核酸ベクター使用であって、ポリマー改変核酸ベクターは治療用遺伝子物質を含んでなる使用。

【公表番号】特表2012−511320(P2012−511320A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540199(P2011−540199)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002869
【国際公開番号】WO2010/067081
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(511140611)サイオクサス セラピューティクス リミティド (3)
【Fターム(参考)】