核酸ベクター標的のための樹状細胞のペプチドリガンド
a)PX1X2X3T(配列番号1);b)PSX4S(配列番号2);c)QX5X6X7Q(配列番号3)およびd)SX8S(配列番号4)(式中、X1、X2、X3は同一または異なっていてもよく、それぞれアミノ酸残基を表し、X4は、アミノ酸残基を表し、X5、およびX7は同一または異なっていてもよく、それぞれアミノ酸残基を表し、そしてX6はアミド側鎖を有するアミノ酸残基を表わし、X8は脂肪族側鎖を有するアミノ酸残基を表す。)から選択されるアミノ酸配列よりなる、または含むペプチド。そのペプチドは樹状細胞および他のタイプの細胞に結合する。そのペプチドはそのような細胞に対して標的非ウイルスおよびウイルスベクターとして用いられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹状細胞に結合するペプチドリガンド、および改良された効率の遺伝子移転を有するとりわけベクターシステムにおけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療および遺伝子ワクチン化は、アンチセンス治療と同様に様々な病気の治療および/または予防のための興味ある可能性を提供する技術である。そのような技術は、問題の核酸を標的細胞に導入する必要がある。充分な核酸を特別な標的細胞に移転させる能力は、遺伝子治療、アンチセンス治療および遺伝子ワクチン化の発展に対する主な制限の1つとして残っている。ウイルスおよび非ウイルス核酸運搬システムの両方が提案されている。核酸は通常DNAであるが、ある場合にはRNAを用いる。
【0003】
「遺伝子」という用語は遺伝子ワクチン化および特に遺伝子治療に関連して幾分曖昧に使用されている。最初にこれに関連して「遺伝子」という用語は、例えばタンパク質のコード配列を示すのに用いられたが、その用語は有用な核酸を指すため一般的な意味で今用いられる。遺伝子治療および/または遺伝子ワクチン化に用いることができる核酸の例は、タンパク質のコード配列およびcDNAコピーおよびそのゲノムバージョンを含み、後者はイントロンそしてまたエクソン、並びに調節上流および下流配列をも含む。他の有用な核酸は、修復遺伝子および相同的組換えに関与する配列を含む。これらはRNA/DNAキメラ(Bandyopadhyay et al., 1999; Cole-Strauss et al., 1996; Kren et al., 1998; Yoon et al., 1996)またはDNAオリゴヌクレオチド(Goncz et al., 1998)等の分子であり得る。有用な核酸はプラスミドに含まれる短い配列、または核酸の組み込みを媒介する酵素をコードする核酸、例えばφC31ファージattB/インテグラーゼシステム(Groth et al., 2000; Olivares et al., 2001; Stoll et al., 2002; Thyagarajan et al., 2000; Thyagarajan et al., 2001)、および「眠れる美)」トランスポゾン/トランスポゼーズ(Yant et al., 2000)をコードする他の大きい核酸であり得る。
【0004】
DNAオリゴヌクレオチドはアンチセンス調節の目的に(Bachmann et al., 1998; Knudsen and Nielsen, 1997; Mannion et al., 1998; Woolf et al., 1995) または転写因子デコイとして(Ehsan et al., 2001; Ehsan et al., 2002; Mann et al., 1999; Morishita et al., 1995)運搬されうる。CpGの豊富なオリゴヌクレオチド配列は、ワクチン応答を押し上げるためのアジュバンドとして有用でありうる(Kreig et al,1993)。
【0005】
遺伝子治療に用い得る他の重要な新しい種類の核酸は。スモールインターフェアリング(siRNA)として知られる長さ20−30ntの2本鎖RNAを含む。哺乳動物におけるRNAインターフェアレンスは、高度の特異性を有する遺伝子発現の調節への重要な新しいアプローチとして過去2または3年に明らかになった(レビュー Shi 2003)。siRNA分子はmRNAのホモロガス領域を標的にし、次にmRNA標的の崩壊に導く保存された経路を活性化する。siRNAの作用の正確な機構は熱心な研究中であるが、哺乳動物細胞へのsiRNAの適用は機能的ゲノムの分野に革命を起こす可能性を有する。哺乳動物細胞での遺伝子の発現を簡単に、効果的に、そして特異的に下方調節する能力は、巨大な科学的、商業的、そして治療的可能性を保持する。
【0006】
現在有効なsiRNA標的を予言する方法はなく、非常に多くの配列のスクリーニングが行われ、非常に多くの可能性のある分子をスクリーニングしなければならない。そのようなスクリーニングは、非ウイルスベクターにより運搬される化学的に合成したsiRNA分子で最も便利に行われる。siRNAトランスフェクションのための改良されたベクターは、価格効果性そしてまたより大きい機能性という利益を提供する。動物モデルにおけるsiRNAのインビボの使用は開発のおおいに早期の段階にあるが可能性も巨大である。
【0007】
核酸を細胞に移動させる2つの主な様式がある。即ち裸の核酸の移動およびベクターを媒介する移動である。非ウイルス性または合成ベクターは3つの主なグループがある。脂質ベクター(リポレックスベクター)、ペプチド、デンドリマーおよびポリエチレンイミン(PEI)を含む他の非脂質性カチオン性ポリマ−を含むベクター(ポリプレックスベクター)、カチオン性ポリマ−および脂質の両方を含むベクター(Felgner et al., 1997)。標的にするベクターはウイルスベクターおよび受容体標的合成ベクターを含む。
【0008】
遺伝子導入、並びに従って遺伝子治療および遺伝子ワクチン化に一般的に用いるウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)の遺伝的に操作された複製に欠陥のある誘導体を含む。それらは、ウイルスがトロフィックである、即ち天然の受容体を含む細胞の種類において、インビトロで、そしてある場合にはインビボで高効率の遺伝子導入を一般的に示す。しかしながら、遺伝子導入はウイルスに対する天然の受容体を含まない細胞タイプでは不十分である。更に、レトロウイルスは、素早く分裂するトランスデューシング細胞に限定される。更に、たいていのウイルスベクターは、核酸に対するパッケージ容量が限定される。例えば、AAV 5kb;アデノウイルス 7−8kb;ヘルパー依存性アデノウイルス 35kb;およびレトロウイルス10kbである。HSVは135kbまでのずっと大きい構築物をパッケージできる(Wade-Martins et al., 2003)。複製に欠陥のあるウイルスベクターを製造する方法は一般的に長いプロセスであり、ある場合にはウイルスの収率は低い。
【0009】
受容体媒介遺伝子導入は受容体媒介エンドサイトーシスの生理学的な細胞の過程を利用して核酸を自己のものとする遺伝子導入の非ウイルス方法である。例としてはインスリン受容体に対して標的とするベクター(例えばRosenkranz et al Experimental Cell Research 199, 323-329 (1992)を参照)ベクター、アシアログリコプロテイン受容体に対して標的とするベクター(例えばWu & Wu, Journal of Biological Chemistry 262, 4429-4432 (1987), Chowdhury et al Journal of Biological Chemistry 268, 11265-11271 (1993)を参照)、トランスフェリン受容体に対して標的とするベクター(例えば、Ciriel et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA88, 8850-8854を参照。)を含む。ベクターの更なる例は神経芽細胞腫細胞上の受容体を標的とするモノクローナル抗体((Yano et al, 2000))、リポソームに共役した葉酸(Reddy & Low 2000, Reddy et al. 1999)、肝臓細胞を標的とするガラクトース(Han et al. 1999 Bettinger et al. 1999)、および肝臓細胞に対するアシアロジルコプロテイン(Wu et al. 1991)を含む。
【0010】
受容体媒介非ウイルスベクターはウイルスベクターに優るいくつかの利点がある。特にそれらは病原性を欠いている。それらは特定の細胞型へ標的にした遺伝子運搬を可能にし、パッケージされる核酸分子のサイズに限定されない。遺伝子発現は、トランスフェクション複合体の核酸成分がエンドソームから、細胞液に無傷で放出され、次に核膜を横切り核転写機構にアクセスする時にのみ達成される。しかしながら、トランスフェクション効率は、核酸成分のエンドソーム分解、核酸が核に入るのに失敗すること、およびクラスリン被覆小孔から約150nmより大きい凝集物の排除のために、ウイルスベクターに比べて一般的に悪い。
【0011】
ベクターについての標的にするリガンドの望ましい性質は、それらが細胞表面の受容体に高い親和性および特異性で結合すべきであり、効果的なベクター自己化を媒介すべきことである。短いペプチドは標的リガンドとして特別な利点を有する。何故ならそれらは高純度で合成することが簡単であり、重要なことはインビボ使用でそれらが低い免疫原性を有するからである。
【0012】
WO98/54347はインテグリン結合性成分、ポリカチオン性核酸結合成分および脂質成分を含む混合物を開示し、
(i)核酸、特に問題の配列をコードする核酸、
(ii) インテグリン結合性成分、
(iii) ポリカチオン性核酸結合成分、および
(iv)脂質成分
を含むトランスフェクション複合体をも開示する。
トランスフェクション複合体は主としてインテグリン媒介トランスフェクションベクターである。
【0013】
WO98/54347に記載された成分は静電的に会合し、ベクター複合体を形成すると考えられ、そのベクターはリポポリプレックス型である。WO98/54347のベクター複合体はある範囲の細胞系および初代細胞培養を高効率で、インテグリン特異的に低毒性でトランスフェクトすることが見出された。例えば血管平滑筋細胞を50%の効率で、内皮細胞を30%の効率で、造血細胞を10%の効率でトランスフェクトする。更に、ラットの肺およびブタの肺の気管支上皮のインビボトランスフェクションはアデノウイルスベクターのそれと匹敵する効率を有することが示された。
【0014】
遺伝子移転を媒介するインテグリン受容体を用いるベクターは、それらがインテグリン受容体が比較的広くゆきわたっているので、身体の多数の様々なタイプの細胞を標的にする利点を有する。例えば、ある環境においては、インビトロ処理においてはしかしながら、より特異的に受容者の細胞を標的にすることが好ましいかも知れない。
【0015】
樹状細胞は免疫系のもっとも強力な抗原提示細胞であり、ナイーブなT細胞クローンを刺激することができる唯一の抗原提示細胞である。ナイーブなT細胞クローンはMHCにより提示された抗原性ペプチドばかりでなく、共刺激分子を結合することも必要である。未熟な樹状細胞の主な機能は周囲の環境からの抗原取り込みである。危険シグナルに細胞がさらされると成熟が起こり、その細胞の機能は抗原取り込みからMHC分子上へのペプチド提示に変化する。これは樹状細胞のリンパ節への運搬と組み合わさる。樹状細胞がリンパ節内に入った時完全な成熟が起こり、成熟樹状細胞の注入または他の投与は細胞のホーミングの障害を起こす。
【0016】
未熟な樹状細胞の形質導入またはトランスフェクションはサイトカイン遺伝子の導入を可能にし、免疫応答を増加させながら、それらが注入された環境から取り込んだペプチドの提示を可能にする。
【0017】
非ウイルスベクターを用いる未熟な樹状細胞への形質導入の効率は、部分的には毒性のため低かった。アデノウイルスを用いる未熟な樹状細胞へのトランスフェクションの効率は、少なくとも部分的には、未熟な樹状細胞表面での主たるアデノウイルス受容体、コックスサッキー−アデノウイルス受容体(CAR)の少量のため高い力価を必要とした。非ウイルスベクターを用いて、効率は用いる脂質を変えることにより増加した、樹状細胞のアデノウイルス形質導入を増加させるために様々な戦略が試みられ、これには2特異的抗体断片(scFV) (Brandao 2003)を用いる標的化を含む。より少ないアデノウイルスとより短い形質導入時間は、臨床目的のための ex vivo形質導入のため好ましいであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
高められた細胞標的性を有する改良されたベクター複合体を提供するのが本発明の目的である。本発明は、従来のリガンドより、より細胞型選択的であるリガンドを有する合成の標的非ウイルス性ベクター複合体の開発に基づく。
【0019】
効果的な標的ベクターの開発においては数個の異なる標的結合リガンドを用いることができるのが有用である。効果的な標的化されたトランスフェクションは良好な標的化ばかりでなくベクター核酸の標的細胞の核への効果的な同入をも必要とする。リガンドが標的化および標的細胞への結合において効果的であるとしても効果的な遺伝子トランスフェクションは必ずしも起こらない。その理由は現在明らかではない。したがって、標的細胞に効果的に結合するリガンドが効果的なトランスフェクションをもたらすかどうかに関しαある程度の非予測可能性がある。従って、有効なトランスフェクションリガンド選択されうるいずれかの特別な細胞表面受容体に対する利用可能なリガンドの「プール」を有することが望ましい。そのような選択は、例えばリポーター遺伝子を用いる遺伝子運搬アッセイにより、またはいずれかの他の適当な手段により起こりうる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は特殊なアミノ酸モチーフを含むペプチドの同定に基づき、そのペプチドはヒトの未熟な樹状細胞に結合する。同定されたペプチドモチーフはヒト樹状細胞への結合を媒介し、他の型の細胞への結合をも媒介する。
【0021】
本発明は、
a)PX1X2X3T(配列番号1)
b)PSX4S(配列番号2)
c)QX5X6X7Q(配列番号3)
d)SX8S(配列番号4)
から選択されるアミノ酸配列を有する、よりなる、または含むペプチドに関する。
式中、X1、X2、X3は同一または異なっていてもよく、それぞれアミノ酸残基を表し、X4は、アミノ酸残基を表し、X5およびX7は同一または異なっていてもよく、それぞれアミノ酸残基を表し、そしてX6はアミド側鎖、例えばNまたはQを有するアミノ酸残基を表わし、X8は脂肪族側鎖、例えばLまたはIを有するアミノ酸残基を表す。
【0022】
慣用の1文字省略をアミノ酸を表すために用いる。
【0023】
本発明は、核酸または他の分子、例えば治療的にまたは薬学的に活性な分子、または細胞に対して検出可能な標識を含む分子であり得る物質を標的とする本発明のペプチドの使用を提供する。
【0024】
本発明は、式A−B−C
(式中、Aは本発明のペプチドであり、Bは化学結合またはスペーサー要素であり、そしてCは,ポリカチオン性核酸結合性成分である)
のペプチド誘導体をも提供する。
【0025】
本発明は更に、
(i)脂質成分
(ii)ポリカチオン性核酸結合性成分および
(iii)本発明のペプチド
を含むトランスフェクション混合物を提供する。
【0026】
本発明は更に、
(i)脂質成分
(ii)ポリカチオン性核酸結合性成分
(iii)本発明のペプチド
(iv)核酸
を含む非ウイルス性トランスフェクション複合体を提供する。
【0027】
本発明のトランスフェクション混合物またはトランスフェクション複合体において成分(ii)および(iii)は、好ましくは本発明のペプチド誘導体の形である。
【0028】
本発明はウイルスベクターをも提供し、そのベクターは本発明のペプチドを含む。
【0029】
1つの態様において、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターに、例えばアデノウイルスタイプ5のキャプシド中の繊維タンパク質のHI領域に、本発明のペプチドを導入することにより天然のCAR受容体から再標的化されたアデノウイルスである。
【0030】
本発明は本発明のトランスフェクション混合物、トランスフェクション複合体、およびウイルスベクターの製造方法をも提供する。
【0031】
本発明は更に医薬組成物を提供し、その組成物は医薬的に適当な担体と混合して、または結合して、トランスフェクション混合物、トランスフェクション複合体、またはウイルスベクターを含む。
【0032】
本発明は更に、遺伝子の欠陥および/または欠乏によりヒトまたは非ヒト動物において起こる状態の治療または予防の方法を提供し、その方法はヒトまたは非ヒト動物に本発明のトランスフェクション複合体およびウイルスベクターを投与することを含む。
【0033】
本願明細書で使用する「遺伝子の欠陥および/または欠乏」という用語は、遺伝子のコード領域における欠陥および/または欠乏のみならず、遺伝子の調節因子、例えばトランスおよびシスの調節因子の欠陥および/または欠乏、または直接的か間接的かを問わず遺伝子の転写または翻訳に関与するいずれかの他の因子の欠陥および/または欠乏をもしめす。
【0034】
本発明はヒトまたは非ヒト動物の治療的予防的免疫化方法を提供し、その方法は、ヒトまたは非ヒト動物に対するアンチセンス核酸を含む本発明のトランスフェクション複合体、またはウイルスベクターを投与することを含む。
【0035】
本発明は、アンチセンス治療の方法を提供し、その方法は、核酸がアンチセンス治療での使用に適した核酸である、ヒトまたは非ヒト動物に対する本発明のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターを投与することを含む。
【0036】
本発明は更に、医薬またはワクチンとしての使用のための本発明のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターを提供する。
【0037】
本発明は、ヒトまたは非ヒト動物において遺伝子の欠陥および/または欠乏により起こる状態の予防のための、治療的または予防的免疫化のための、またはアンチセンス治療のための薬剤の製造のための本発明のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターの使用を提供する。
【0038】
本発明は更に、
(i)核酸
(ii)脂質成分
(iii)ポリカチオン性核酸結合性成分
(iv)本発明のペプチド
を含むキット;
(i)核酸
(iii)ポリカチオン性核酸結合性成分
(iv)本発明のペプチド、
を含むキット;そして
(ii)脂質成分
(iii)ポリカチオン性核酸結合性成分
(iv)本発明のペプチド、
を含むキットを提供する。
【0039】
本発明のキットにおいて、成分(iii)および(iv)は好ましくは上に記載したように本発明のペプチド誘導体の形である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明は、特殊なアミノ酸モチーフを含むペプチドの同定に基づき、そのペプチドは樹状細胞に結合する。同定されたペプチドモチーフは、ヒトの未熟単球由来樹状細胞、およびヒト一次マクロファージ、N2a細胞(ニューロ2A細胞ともよばれる)、マウス神経芽細胞腫細胞系、HAEo−細胞(ヒト気道上皮細胞系)、HepG2細胞(ヒト肝細胞細胞系)を含む他のタイプの細胞系、並びに骨髄由来樹状細胞およびScal+veマウス幹細胞を含むマウス一次細胞への結合を媒介する。
【0041】
本発明は、
a)PX1X2X3T(配列番号1)
b)PSX4S(配列番号2)
c)QX5X6X7Q(配列番号3)
d)SX8S(配列番号4)
から選択されるアミノ酸配列を有する、よりなる、または含むペプチドに関する。
式中、X1、X2、およびX3は同一または異なっていてもよく、それぞれアミノ酸残基を表し、X4は、アミノ酸残基を表し、X5およびX7は同一または異なっていてもよく、それぞれアミノ酸残基を表し、そしてX6はアミド側鎖、例えばNまたはQを有するアミノ酸残基を表表わし、X8は脂肪族側鎖、例えばLまたはIを有するアミノ酸残基を表す。
【0042】
ペプチドそれ自体に関する本発明の態様において、本発明は、そのペプチドは天然に存在する完全長タンパク質である、配列番号1,2,3または4のアミノ酸配列を含むペプチドを含まない。
【0043】
慣用の1文字省略をアミノ酸を表すために用いる。そのシステムによればAはアラニン、Rはアルギニン、Nはアスパラギン、Dはアスパラギン酸、Cはシステインまたはシスチン、Gはグリシン、Eはグルタミン酸、Qはグルタミン、Hはヒスチジン、Iはイソロイシン、Lはロイシン、Kはリシン、Mはメチオニン、Fはフェニルアラニン、Pはプロリン、Sはセリン、Tはトレオニン、Wはトリプトファン、YはチロシンおよびVはバリンを表わす。本明細書では「X}は、任意のアミノ酸を表わすために用いる。
【0044】
ペプチドPX1X2X3T(配列番号1)において、X2は、例えばNまたはLであり得、ペプチドPXNLXT(配列番号39)を与え、時々生ずるモチーフである(下記参照)。X1は例えばS,A,またはPであり得る。X3は例えばS,KまたはTであり得、またはAであり得る。
【0045】
X2がLであるペプチドPX1X2X3TはPX1LX3T(配列番号5)である。X1およびX3は同一または異なり、上に定義した通りである。例えば、X1はS,A,またはP,例えばAであり得る。例えば、X3はS,K,またはY,例えばKであり得る。PX1LX3Tの例はPALKT(配列番号6)である。
【0046】
ペプチドPX1X2X3T(配列番号1)においてX2はNであり得、そのペプチドはPX1NX3T(配列番号7)であり、時々起こるモチーフである(下記参照)。X3は例えばSまたはT,例えばSであり、PXNT/ST(配列番号40)を与え、時々生ずるモチーフである(下記参照)。X1およびX3は同一または異なる。X1は例えばSまたはP,例えばSである。X1およびX3の両方がSであり得る。ペプチドPX1NX3Tの例はペプチドPSNST(配列番号8)、およびPPNTT(配列番号9)である。
【0047】
ペプチドPX1X2X3T(配列番号1)はN末端および/またはC末端に1以上の更なる残基を含ンでもよい。例えば、ペプチドPX1X2X3T、上記の配列番号1のいずれかは更なる残基、例えばAまたはY残基を含んでもよい。そのようなペプチドはPX1X2X3TX9(配列番号10)を有し、X9はアミノ酸残基、例えばAまたはVを表す。そのようなペプチドの例はPX1LX3TX9(配列番号11)およびPX1NX3TX9(配列番号12)である。
【0048】
独立に、ペプチドPX1X2X3TはN末端に更なる残基を有してもよく、そのペプチドは配列X10PX1X2X3T(配列番号13)(式中、X10はアスパラギン酸残基、例えばA、SまたはT残基を表す)を有する。
【0049】
更なる残基がN末端およびC末端の両方に存在する場合、ペプチドX10PX1X2X3TX9のペプチド中でX10PX1X2X3TX9(配列番号14)を有し、X1、X2、X3、X9、およびX10は上に与えた好ましい意味を有する。
【0050】
更なる残基を有する配列番号1のペプチドの例はAPSNSTA(配列番号15)、SPALKTV(配列16)、およびSTPPNTT(配列番号17)を含む。そのようなペプチドの変異体はN−末端および/またはC末端残基が省略される。
【0051】
ペプチドPSX4S(配列番号2)においてX4は、例えばNまたはLであり得る。ペプチドPSX4Sの例はPSNS(配列番号18)およびPSLS(配列番号19)を含む。
【0052】
ペプチドPSX4Sは独立にN−末端および/またはC末端に1以上のアミノ酸残基、例えばN末端にAまたはL残基を有し、ペプチドX11PSX4S(配列番号20)を与える(式中、X11はAまたはLを表す)。そのようなペプチドALPSXS(配列番号41)であり,それは時々生ずるモチーフである。下記参照。そのようなペプチドにおいてX4はNまたはLであり得る。そのようなペプチドの例はAPSNS(配列番号21)およびLPSLS(配列番号22)を含む。
【0053】
望ましいなら、1以上の更なる残基がN末端に、例えばMLPSLS(配列番号23)およびPMLPSLS(配列番号24)におけるように、存在しうる。
【0054】
ペプチドQX5X6X7Q(配列番号3)において、X6はNまたはQ残基であり得る。そのようなペプチドはQXN/QXQ(配列番号42)であり、時々生ずるモチーフである。X3は例えばKまたはSであり得る。X5は例えばPまたはYであり得る。
【0055】
ペプチドQX5X6X7Qは、独立にN−末端および/またはC末端に1以上のアミノ酸残基を有しうる。ペプチドQX5X6X7Qは、例えばN末端にSまたはF残基を有し、C末端に独立にMまたはK残基を有し得る。そのようなペプチドは例えば、SQKNPQM(配列番号25)およびFQSQYQK(配列番号26)およびN−末端および/またはC末端残基が除かれている変異体を含む。
【0056】
本発明の更なるペプチドはモチーフSX8S(配列番号4)(式中、X8は脂肪族側鎖例えばLまたはIを有するアミノ酸残基である)を有する。そのようなペプチドSL/IS(配列番号43)であり、時々生ずるモチーフである。下記参照。ペプチドSX8Sは独立にN−末端および/またはC末端に1以上のアミノ酸残基を有しえる。そのようなペプチドの例はMASISMK(配列番号27)およびN−末端および/またはC末端残基の1以上が除かれる誘導体を含む。
【0057】
本発明のペプチドは長さが30までのアミノ酸であり得、またはより長くても良い。本発明のペプチドは少なくとも約5のアミノ酸を有するが、例えば配列番号2および3のペプチドの場合におけるようにより少なくても良い。一般的に本発明のペプチドは約6〜約30のいずれかの数のアミノ酸を有する。ペプチドは6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,29,または30のアミノ酸を有しえる。一般的に、本発明のペプチドは25またはそれ以下のアミノ酸、例えば20またはそれ以下、例えば15またはそれ以下のアミノ酸を有しえる。例えば本発明のペプチドは12のアミノ酸またはそれ以下、例えば10アミノ酸またはそれ以下を有する。一般的に、本発明のペプチドは5またはそれ以上を有することが好ましい。例えば本発明のペプチドは6またはそれ以上のアミノ酸、例えば7またはそれ以上のアミノ酸を有する。配列番号2を含むペプチドの場合、最小の大きさは4アミノ酸であり;配列番号1を含むペプチドの場合、最小の大きさは5アミノ酸であり;配列番号3を含むペプチドの場合、最小の大きさは5アミノ酸である。一般的に、臨床的用途の場合、免疫原性反応を避けるために短いペプチドを用いるのが好ましい。
【0058】
一般的に本発明のペプチドは、長さで100またはそれ以下のアミノ酸、例えば50またはそれ以下のアミノ酸であり、例えば100のアミノ酸またはそれ以下、例えば95のアミノ酸またはそれ以下、例えば90のアミノ酸またはそれ以下、例えば85のアミノ酸またはそれ以下、例えば80のアミノ酸またはそれ以下、例えば75のアミノ酸またはそれ以下、例えば70のアミノ酸またはそれ以下、例えば65のアミノ酸またはそれ以下、例えば60のアミノ酸またはそれ以下、例えば55のアミノ酸またはそれ以下、例えば50のアミノ酸またはそれ以下、例えば45のアミノ酸またはそれ以下、例えば40のアミノ酸またはそれ以下、例えば35のアミノ酸またはそれ以下、例えば30のアミノ酸またはそれ以下がある。典型的にはそれらは上に記載した大きさを有する。
【0059】
本発明のモチーフまたはペプチドのいずれかは公知の天然のタンパク質中に存在する限りでは(実施例4を参照)、ペプチドそれ自体に関する本発明の態様は、そのような公知の天然の完全長のタンパク質を含まない。
【0060】
本発明のペプチドは環状領域を含み得る。例えば本発明のモチーフは、1またはそれ以上のジサルファイド結合を形成することができる2またはそれ以上のシステインにより隣接されうる。
【0061】
ある場合には、ペプチドが上に記載したより大きいのが望ましい。本発明のペプチドは組み換えポリペプチドの部分または融合タンパク質、例えば所望の機能、例えばアフィニティクロマトグラフィーに適した配列を有するアミノ酸配列に融合したタンパク質の部分であり得る。融合タンパク質の更なる例は本発明のペプチドおよびウイルスキャプシドタンパク質または標的化された運搬のためのその領域、または標的目的のためペプチド表示を促進するタンパク質を含む。
【0062】
更なる融合タンパク質は本発明のペプチドおよびウイルスキャプシドタンパク質またはそのサブユニットに対する抗体を含む。抗体成分はいずれの種類の抗体であっても浴、適当な抗原結合ドメインであってもよく、およびキメラまたはヒト化抗体であってもよく、それらに由来するモノでも良い。ウイルスベクターを再標的化する場合に用いうるそのような融合タンパク質は本発明の一部である。
【0063】
本発明のペプチドは樹状細胞、特にヒト樹状細胞、例えば未熟なヒト樹状細胞およびマウス樹状細胞に結合する。従って本発明のペプチドはそのような細胞にたいする所望の物質を標的にするため用いられる。例えば本発明のペプチドは、核酸または樹状細胞に対する抗原を標的にするために用いうる。本発明のペプチドは樹状細胞に対する医薬的に活性な物質を標的にするのに用いうる。
【0064】
樹状細胞のどの受容体に本発明のペプチドが結合するのかは未だ知られていない。しかしながら、本発明のペプチドが、ヒト一次マクロファージ、N2a細胞(Neuro2A細胞、マウス神経芽腫細胞系)、HAEo細胞(ヒト気道上皮細胞系)、HepG2細胞(ヒト肝細胞系)および骨髄由来樹状細胞およびSca1+veマウス幹細胞を含む一次マウス細胞を含む他の細胞および他の種類の細胞にも結合することを我々は見出した。本発明のペプチドはそのような細胞に対して物質、例えば核酸、抗原、および医薬的に活性な物質を標的にするのに用いられ得る。
【0065】
本発明のペプチドの同定および様々な細胞型に対するその結合は容易に、例えば全細胞フローサイトメトリー、例えばFACSまたはファージの力価決定を用いるファージペプチドクローンスクリーニングアッセイにより、または問題のペプチドを有する再標的化アデノウイルスでの細胞の形質導入により、容易に決定しうる。
【0066】
本発明のペプチド、例えば樹状細胞結合成分はオリゴマーペプチドのペプチドライブラリー、例えば、一般的に同じ長さのランダムペプチドオリゴマーのライブラリーからの選択により同定しうる。原理的にはオリゴマーペプチドはいかなる長さをも有し得るが、長すぎるペプチドは化学的合成の困難性を示し、インビボで免疫原性であり、一方短すぎるペプチドは結合ドメインを有しないかも知れない。一般的に適当な標的モチーフの例は約4〜約30のアミノ酸残基を有するものである。下記参照。
【0067】
以下の実施例で詳細に記載する研究において、繊維状のファージ粒子上に提示されるランダム7マー(7つのアミノ残基を有するペプチド)を用いた。用いたその7マーライブラリーはC7Cライブラリー、即ちシステイン残基により隣接されるランダム7マーペプチドであり、New England Biolabs Incから得た。
【0068】
上記の様に、本発明の樹状細胞結合ペプチドはシステイン残基により隣接され環化を可能にする長さ7つの残基のランダムペプチド配列を含むファージディスプレーライブラリーからの選択により同定した。そのような選択方法は一般的に知られている。そのような方法によれば、ファージの懸濁液を標的細胞とともにインキュベートする。非結合のファージを次に洗い去り、次に結合ファージを、残存細胞を低pHの緩衝液で洗浄するか、細胞を溶解することにより抽出する。E.coliを次に放出されたファージで感染させ。第一ラウンドのファージの製造物を得る。そのサイクルは繰り返し、例えば3回行い、標的にするファージを豊富にするためにストリンジェンシー条件は選択の後のラウンドでは、例えば洗浄工程の数を増加させる、溶出前に低pH洗浄を導入する、および培地ブロッカーでコートしたウエルで前選択することにより増加させうる。
【0069】
ファージ増幅の連続したラウンドによる選択の後、樹状細胞に高い親和性を有するファージを更にホールセルフローサイトメトリーおよびファージ力価決定(titration)アッセイにより選択しうることを我々は見出した。
【0070】
第一の実験において細胞溶解溶出C7Cファージから得たクローンのアミノ酸配列を表1に示す。
【表1】
【0071】
上にリストしたそれぞれのペプチドは上に記載したようにそのより長いおよびより短い誘導体と同様に本発明の部分である。
【0072】
表1に示したファージクローンからの16の結合配列の分析は、4つの最小モチーフ、即ちPX1X2X3T(配列番号1)、PSX4S(配列番号2)、QX5X6X7Q(配列番号3)およびSX8S(配列番号4)を同定した。これらは樹状細胞上の受容体への結合に重要な役割を果たしている可能性があると考えられる。PX1X2X3Tは、PXXXTA/V(配列番号37)、PXNXT(配列番号38)、PXN/LXT(配列番号39)、およびPXNT/ST(配列番号40)を含む数個のモチーフを含む。PSX4Sに基づく時々起こるモチーフはA/LPSXS(配列番号41)であり、QX5X6X7Qに基づく時々起こるモチーフはQXN/QXQ(配列番号42)である。SL/IS(配列番号43はモチーフSXSの時々起こる形である。
【0073】
配列決定したクローンの中で46%は上のモチーフの1またはそれ以上を含み、最も頻繁なクローンはAPSNSTAであり3つの他のペプチド配列SPALKTV,STPPNTTおよびPMLPSLSとある程度の相同性を示す。
【0074】
ファージを回収し、未熟な樹状細胞へのファージクローン結合の各ラウンドから力価決定した。その過程を要約すると、2x1011のブロックされたファージを5x104のブロックされた単球由来の未熟な樹状細胞に氷上で1時間加えた後、細胞を3回PBS−0.05%のTween20で洗浄し、TBS pH5.5でファージを溶出し、細胞を溶解し結合されて残っているファージを収穫した。細胞溶解により収穫したファージの数はプラーク生成単位(pfu)として計算した。図1はいくつかの力価決定結果を示す。図1に示した結合したファージの配列決定は、ペプチドをAPSNSTA,QLLTGAS,TARDYRL,FQSQYQK,PLMPSLS,FPRAPHH,MASISMK,DWWHTSA,SHVKLNSおよびSPALKTVとして同定した。
【0075】
未熟な樹状細胞に結合するファージクローンの力価決定の第三ラウンドからの細胞会合画分からの81ファージクローンの配列決定は16の様々な配列を同定した。表2を参照。
【表2】
【0076】
3つの最も頻繁なファージクローンは21%(APSNSTA)、20%(DWWHTSA)および12%(SHVKLNS)存在し、残りは7%以下で存在する。ファージクローンからの16の結合配列の分析は5つの最小モチーフ、即ちPXNT/ST、PXXXTA/V、A/LPSXS、SL/ISおよびQXN/QXQを同定した。表3参照。そのモチーフは樹状細胞上の受容体への結合に重要な役割を果たし得る。配列決定したすべてのクローンの内、46%は1またはそれ以上のモチーフを含み、最も頻繁なクローンはAPSNSTAであり、3つの他のペプチド配列とある程度の相同性を示す。表3参照。
【表3】
【0077】
同一のアミノ酸は太字でかつイタリックで、類似のアミノ酸はイタリックで示す。
【0078】
たいていの場合、樹状細胞に結合するファージクローンの力価決定は、ペプチド挿入物を有するクローンは、細胞中に挿入物を有しないファージより、細胞により大きい程度で結合することを示した。2つのクローンFPRAPHHおよびMASISMKは、マウスの樹状細胞へのファージ結合の力価決定を含め、すべての力価決定において最高の数で結合した。プラスチックに対するファージ結合の数は試験したすべてのクローンについて低く、これらの実験における高力価により示されるファージ結合は細胞の結合のためであって、ウエルまたはブロッキング分子へのバックグラウンドの非特異的結合のためではないことを示唆する。
【0079】
6の最も頻繁なクローン、即ちAPSNSTA,FQSQYQK、DWWHTSA、SHVKLNS、SPALKTVおよびSQKNPQMでの5つの異なる樹状細胞ドナーからの樹状細胞へのファージ結合のFACS分析は、1つのクローンSPALKTVを除くすべてのクローンは挿入物を有しないファージクローンより高いパーセントの細胞に結合することが検出された。
【0080】
結合のパターンは、ペプチドAPSNSTA、DWWHTSA、およびSHVKLNSを含むものと同様に樹状細胞に最高量で結合する3つのクローンを同定した。そのクローンも選択から3つの最も頻繁に単離されたものであった。試験した第2のセットの6つのクローン、即ちペプチドQLLTGAS、TARDYRL,PMLPSLS,FPRAPHH、MASISMK,およびSTPPNTTを含むものについては、すべてのクローンが挿入物を有しない対照より結合されたファージについて陽性のより高いパーセントの細胞を示した。QLLTGASは他よりわずかに多い細胞に結合する。図3を参照。
【0081】
16ファージの配列のうちの5つ、即ちSHVKLNS(ペプチドA)、APSNSTA(ペプチドB)、MASISMK(ペプチドC)、FPRAPHH(ペプチドD)およびDWWHTSA(ペプチドF)は、それらが最も頻繁なクローンであり、ファージクローン結合のFACSアッセイにおけるトップのバインダーであるという根拠に基づいて合成のために選択した。
【0082】
表からモチーフがいくつかのクローンに存在することが見られる。これはこれらのモチーフが樹状細胞結合のために重要であることを示唆する。どの樹状細胞受容体にその配列が結合するのか現在のところ分からない。様々なモチーフが同じ受容体を標的にするかもしれないし、それらが樹状細胞上の異なる受容体を標的にするかも知れない。
【0083】
良好な結合は、高いアフィニティ相互作用および/または細胞表面に多数存在する細胞表面受容体の結合を示す。
【0084】
ペプチドA〜FをDNA結合[K]16ドメイン、GAC(インターおよびC末端 CGグループを有するコンストレインされた形で合成した。そのペプチド誘導体を、DNAおよび脂質を有するトランスフェクション複合体で未熟な樹状細胞をトランスフェクトするそれらの能力について試験した(「LID]または「リポポリプレックス」ベクター、Lは脂質を表わし、Iはペプチド誘導体を表わし、Dは核酸を表す)。結果を図4に示す。
【0085】
FACSにより測定したリポーター遺伝子EGFRに対して陽性の細胞のパーセントにより非最適化実験で測定した6日細胞におけるトランスフェクション効率、正の対照、ペプチド6(それはインテグリン結合ペプチドRRETAWAである)、および負の対照6J(ペプチド6のスクランブルバージョン)の約1.5倍のレベルまでファージ由来のペプチドA(SHVKLNS)の使用により増加した。ペプチドB(APSNSTA)はペプチド6のそれと等しいトランスフェクションレベルを示した。図4a参照。個々のペプチドに対する条件の最適化はトランスフェクション効率の改良をもたらすかも知れない。トランスフェクトされた細胞のパーセントはおそらく樹状細胞におけるトランスフェクション過程の毒性効果のため5%に達しなかった。
【0086】
リポフェクチンおよび4日の樹状細胞トランスフェクションを用いるLIDフォーマットにおけるすべての5つのペプチド合成誘導体のトランスフェクション効率の比較は、A,BおよびDを最良のトランスフェクション効率を与えるものとして同定し、すべては樹状細胞の10%以上をトランスフェクトし、ペプチドCはその値の約半分を与え、ペプチドFは劣って行われ、細胞の1%未満がトランスフェクトされた。図4bを参照。
【0087】
FACSにより測定したリポーター遺伝子EGFPに陽性の細胞のパーセントにより測定したトランスフェクション効率は、正の対照、ペプチド6,インテグリン結合ペプチドRRETAWAおよび負の対照ペプチド6J(ペプチド6のスクランブルバージョン)の約1.5倍のレベルまで、ファージ由来ペプチドA(SHVKLNS)の使用により増加した。ペプチドB(APSNSTA)はペプチド6のそれと等しいトランスフェクションレベルを与えた。トランスフェクトされた細胞のパーセントは、おそらく樹状細胞におけるトランスフェクション過程の毒性効果により5%に達しなかった。
【0088】
DNA結合性[K]16ドメインと共に合成した4つのコンストレインされたペプチドA,B,CおよびDを、商業的に利用できる脂質リポフェクチンおよびリポフェクタミンを含むリポポリプレックス(LID)トランスフェクションにおける4日の未熟な樹状細胞をトランスフェクトするそれらの能力について試験した。図5a参照。リポフェクチンを用いた場合、すべてのペプチドはペプチド6(インテグリン結合ペプチド)のそれ以上のトランスフェクション効率を得た。ペプチドAは17%という最高の効率を与え、ペプチドBおよびDは11%の陽性の細胞を与え、Cは7%、ペプチド6およびペプチドなしの対照で達成されたより僅か2%上であった。脂質を用いなかった場合、トランスフェクションはペプチドAについて1%未満であって、複合体の効率についての脂質の重要性を示す。
【0089】
リポフェクタミン2000は、3%の陽性の細胞を与えるペプチド6を除いてリポフェクチンより一般的に低いトランスフェクション効率、5および8%の間を与えた。毒性はすべての場合、40および53%の間で高く(図5b参照)、リポフェクチンはペプチドCおよびペプチドのない場合を除いて(その場合リポフェクタミン2000はリポフェクチンより顕著に毒性が高い)リポフェクタミン2000と類似の毒性レベルを与える。この毒性は実験の間変わり得、リポフェクチンは17〜46%の範囲で細胞死をもたらし、リポフェクタミン2000は26〜53%の範囲で細胞死をもたらす。メタフェテンを製造者の指示に従って使用した場合、ずっと高いレベルの細胞死、78〜84%が見られ(データ示さず)、脂質の選択がトランスフェクション後の細胞死にひどく影響することを示唆する。
【0090】
3日の樹状細胞のトランスフェクション効率は、7%EFP陽性細胞で低く、対照ペプチド6(それは14%の効率を与える)を除いて4日の樹状細胞よりかなり低い(図6a参照)。細胞死は28%と48%の間ですべての試料において高く、リポフェクチンはリポフェクタミン2000より僅かに毒性が低い。図6b参照。
【0091】
標的ペプチドを用いる単球のトランスフェクションはペプチド6を用いるトランスフェクションに匹敵する効率を与え、ペプチドA,B,およびDは再度最高のパーセントのトランスフェクトされた細胞を与えたが、レベルは4日樹状細胞より低く、僅か6%がEGFP(ペプチドAをリポフェクチンと組み合わす)について陽性の最高のパーセントであった。毒性は、ペプチドFまたはペプチドなしがリポフェクチンと組み合わされた場合を除いて(その場合細胞死はそれぞれ25%および20%に上昇した)、5および14の間の細胞死でかなり低かった(図7b参照)。興味深いことにこれらはトランスフェクション効率が最低である条件であった。
【0092】
未熟な4日の樹状細胞のトランスフェクションは細胞表面でのHLA−DRおよびCD86分子の上方調節をもたらし(図8参照)、樹状細胞の活性化が起こりつつあることを示す。EGFP陽性および陰性細胞の両方は上方調節されたマーカーを示し、すべてではないトランスフェクトされた樹状細胞は上方調節されたマーカーを示し、トランスフェクション過程はおよびEGFPの発現しないことは活性化の原因であることを示唆する。
【0093】
LPSを用いるトランスフェクション後の樹状細胞の成熟はLPSなしのトランスフェクトされた樹状細胞へのHLA−DRおよびCD86の類似の程度の上方調節を示したが、LPSとインキュベートしたトランスフェクトされない樹状細胞と比べて活性化の程度は小さく、トランスフェクションは活性化に僅かに阻害作用を有することを示唆する(図9更に)。4日または6日細胞に対するLPSの添加は活性化レベルに小さい影響を有し、CD86は、4日に比べて6日にLPSとともに細胞をインキュベートする場合、僅かに小さい活性化を示した。
【0094】
本発明のペプチド配列は、樹状細胞を用いて同定されたが、それらの有用性は樹状細胞での使用に限定されない。ペプチドが結合する受容体は他の細胞タイプにおいても発現しうる。本発明のペプチドが使用しうる細胞のタイプはいずれかの適当なスクリーニング方法で同定しうる。
【0095】
例えば、トランスフェクションベクターにおけるペプチドAおよびBを、他の細胞系をトランスフェクトするそれらの能力について試験した。トランスフェクション効率を存在するタンパク質1mgあたりのルシフェラーゼ活性により測定した。試験したすべての細胞系、即ち、HMEC−1,HAEo−およびN2a細胞において、ペプチドAおよびBの少なくとも1つがペプチド6,インテグリン標的ペプチドでみられたのと等しい、またはそれ以上のトランスフェクション効率を与えた。
【0096】
HMEC−1細胞において、ペプチドAはペプチド6で見られたのとほぼ等しいトランスフェクション効率を有し、ペプチドBはペプチド6のそれの1.5倍効率を増加させることができる。図5参照。
【0097】
HAEo−細胞においては、ペプチドAは最高のトランスフェクション効率、ペプチド6でみられるものの約2倍を与え、ペプチドBを用いる効率はペプチド6を用いるそれの1.5倍であった。図6を参照。
【0098】
N2a(Neuro2A)細胞においては、ペプチドAのみがペプチド6で見られるのと等しいトランスフェクション効率を与え、ペプチドBはその値の半分以下の効率を有した。図7を参照。
【0099】
更に、以下で詳細に記載する様に、本発明のペプチドはその普通の標的以外の細胞に対しウイルスベクターを再標的化するのに用い得る。
【0100】
完全培地において100000ウイルス粒子/細胞で2つの異なったドナーからの未熟な樹状細胞に再標的化したEGFP−リポーター遺伝子を有するアデノウイルス構築物の遺伝子導入をFACSにより測定した。両方のドナーにおいて、ペプチドAまたはペプチドBでアデノウイルスを再標的化することは、64および79%の間の形質導入効率を得、両方は類似の効率であり、両方はキャプシドにおける野生タイプの繊維タンパク質(43および46%の間陽性)、KO1繊維タンパク質(0.7および1.4%の間)、および無関係なペプチドを有する繊維タンパク質(12および20%の間)を有するアデノウイルスと比べて顕著に高いパーセントの細胞を形質導入した。顕著な毒性はいずれの形質導入でも見られず、その細胞死は5および15%の間で測定された(図8参照)。
【0101】
同じウイルスベクターを用いて、2.5%の血清中の10000ウイルス粒子/細胞でヒト単球由来一次マクロファージの形質導入も、ペプチドA(67.6%の細胞が形質導入された)またはペプチドB(34.6%の細胞が形質導入された)をウイルスのこと中に導入することは野生タイプの繊維タンパク質(13.3%)またはKO1繊維タンパク質(9.2%細胞が形質導入された)を有するウイルスにみられる以上の形質導入の効率を顕著に増加させた(図8参照)。
【0102】
すべての他の細胞タイプにおいて、そして同じウイルスベクターを用いて、ウイルスをOptiMEMにおいて細胞あたり10,000粒子で添加した場合、ペプチドAまたはペプチドBを有するウイルスは、野生タイプの繊維タンパク質、KO1繊維タンパク質、および無関係なペプチドを有する繊維タンパク質を有するウイルスより顕著に高い形質導入効率をもたらした。
【0103】
N2a細胞において、ペプチドAを有するウイルスは63.5%の形質導入された細胞を、ペプチドBは53.7%の形質導入された細胞を作ったが、野生タイプのウイルスは24.3%を、KO1ウイルスは1.4%を、および無関係なペプチドウイルスは1.3%を形質導入した。
【0104】
HAEo−細胞において、ペプチドAは82.9%の形質導入された細胞を、ペプチドBは79%の形質導入された細胞を作ったが、野生タイプの繊維タンパク質を有するウイルスは45.8%を、KO1ウイルスは2%を、および無関係なペプチドを有するウイルスは3.2%を形質導入した。
【0105】
同じパターンの形質導入効率はHMEC細胞(ペプチドA 95.7%、ペプチドB94.2%、野生タイプ73.3%、KO1 2.7%、および無関係25.1%)およびHepG2細胞(ペプチドA 88.5%、ペプチドB 79.7%、野生タイプ63.8%、KO1 1.7%、および無関係9.7%)について見られた。
【0106】
ペプチドSHVKLNSまたはAPSNSTAのアデノウイルスHIループへの導入は、一次マウス樹状細胞の形質導入効率を、それぞれ71.7%および54.1%まで増加させ、レベルは野生タイプのAd5(13.5%)(表6参照)より顕著に良好であった。マウスのScal陽性の幹細胞のずっと低い形質導入効率がすべてのアデノウイルス試料で達成され、SHVKLNSまたはAPSNSTAで再標的化されたアデノウイルス5.45という最良の形質導入効率、Ad5ウイルス2.2%を形質導入し、KO1は0.6%を形質導入した。ネズミ科の神経芽腫細胞(Neuro−2A)も野生タイプウイルスより効率的に形質導入され、野生タイプウイルスについての24%と比べてSHVKLNSおよびAPSNSTA再標的化ウイルスについてそれぞれ63.5%および53.7%のGFP陽性の細胞を作った。
【0107】
LPSに反応して成熟する樹状細胞の能力を、5つの成熟マーカー;HLA−DR,CD40,CD83およびコスチミュラトリー分子CD80およびCD86を研究することにより、ウイルス的に形質導入したおよび形質導入しない試料で測定した。すべての5のマーカーのレベル(フローサイトメトリーで試験)は、LPSにより形質導入しない細胞の成熟に基づいて増加した。表11参照。
【0108】
本発明は式A−B−Cのペプチド誘導体を提供し、式中、Aはポリカチオン性核酸結合成分であり、Bは化学結合またはスペーサー要素であり、Cは本発明のペプチドである。
【0109】
ポリカチオン性核酸結合成分AはDNAまたはRNAに結合できるいずれかのポリカチオンである。ポリカチオンはポリカチオンそのものでも良いが、DNAまたはRNAに結合する能力が保持されるならいずれかの数のカチオン性モノマー有しても良い。例えば、3〜100のカチオン性モノマーが存在してもよく、例えば10〜20,例えば14〜18,例えば約16のカチオン性モノマーが存在しても良い。
【0110】
核酸結合ポリカチオン分子の例は1またはそれ以上のカチオン性アミノ酸を含むオリゴペプチドである。そのようなオリゴペプチドは例えば、3〜35,例えば5〜25のリシン残基、例えば10〜20リシン残基、例えば14〜18のリシン残基、例えば16のリシン残基を有するオリゴリシン分子、例えば3〜35の、例えば5〜25の,例えば10〜20の、例えば14〜18、例えば16のヒスチジンまたはアルギニンを有するオリゴヒスチジン分子またはオリゴアルギニン分子、またはヒスチジン、アルギニン、リシン残基のいずれかの組み合わせを含み、例えば、全体で3〜35の、例えば5〜25,好ましくは例えば10〜20、例えば14〜18、例えば16残基を有する組み合わされたオリゴマーでありえる。
【0111】
例えば3〜35の,例えば2〜25のリシン残基、例えば10〜20のリシン残基、例えば13〜19の、例えば14〜18のリシン残基、例えば15〜17の、例えば16の残基、即ち[K]16を有するオリゴリシン(「K]はリシンを示す)が特に好ましい。
【0112】
ポリカチオン性成分の更なる例は、デンドリマーおよびポリエチレンイミンを含む。ポリエチレンミン(PEI)は非毒性の架橋性のカチオン性ポリマ−であり、遺伝子運搬可能性を有する(Proc. Natl. Acad. Sci., 1995, 92, 7297-7301)。ポリエチレンミンはFluka(800kDa)またはSigma(50kDa)から、またはPolyPlus−トランスフェクション(Illkirch、フランス)からトランスフェクション目的のためにあらかじめ希釈されて入手できる。典型的には、PEIはpH5〜8で、DNAの9倍過剰に用いられた場合最も有効であり、過剰比はPEI窒素:DNA燐酸として計算される。そのようなパラメーターは当業者によく知られた方法で最適化される。
【0113】
ポリカチオン性核酸結合成分は、本発明のペプチドと結合するかさもなければ付着してA−B−C(式中、Cは本発明のペプチドを表わし、Bは結合またはスペーサー要素を表わし、Aはポリカチオン性核酸結合成分を表わす)のペプチド誘導体を形成しうる。ポリカチオン性成分はペプチドのいずれかの適当な位置で結合しうる。ポリカチオン性核酸結合成分は例えば本発明のペプチドに化学的に直接結合してもよい。その場合成分Bは化学結合を表す。例えば本発明のペプチドはペプチド結合により、例えばオリゴリシンポリカチオン性核酸結合成分の場合は結合してもよい。本発明のペプチド誘導体の例は例えば本発明のペプチド、例えば上記のペプチドにペプチド結合により結合した、オリゴリシン、例えば[K]16である。本発明のペプチド誘導体の更なる例は本発明のペプチド、例えば上記のペプチドに共有結合により結合したポリエチレンイミンである。そのような共有結合は例えば、当業界で知られた方法、例えばGene Therapy, 1999, 6, 138-145を用いるジサルファイド橋またはスクシンイミヂル橋であり得る。
【0114】
他の態様では、本発明のペプチドはスペーサーを介してポリカチオン性核酸結合成分に結合し、本発明のペプチド誘導体を形成してもよい。
【0115】
スペーサー要素は一般的にペプチドである、即ちそれはアミノ酸残基を含む。そのアミノ酸は天然のまたは非天然であり得る。それらはL−またはD−立体配置を有し得る。スペーサーは2以上のアミノ酸を有しうる。それは例えば3以上、例えば4以上、例えば5以上、例えば10までのアミノ酸残基またはそれ以上のアミノ酸残基を有し得る。アミノ酸は同一でも異なってもよいが多数のリシン残基(またはベクター複合体のポリカチオン性核酸結合成分での使用に適する他のカチオン性アミノ酸)の使用は、オリゴリシン配列はポリカチオン性核酸結合成分としての活性を有するので一般的にスペーサーにおいては避けるべきである。
【0116】
スペーサーは例えばジペプチドグリシン−グリシン(GG)またはグリシン−アラニン(GA)で有り得る。一般的にはスペーサーはジペプチドスペーサーGGおよびGAより長くおよび/または疎水性であるのが好ましい。
【0117】
スペーサーはジペプチドGGおよびGAより疎水性で有り得る。例えばグリシンおよびアラニンより疎水性であるアミノ酸を用い得る。疎水性アミノ酸の例はよく知られ、ε−アミノヘキサン酸を含む。
【0118】
スペーサーはジペプチドGGおよびGAより長くまたは疎水性であり得、より長くまたはより疎水性で有り得る。後者のタイプのスペーサーの例はXSXGA(式中、Sはセリン、Gはグリシン、Aはアラニン、Xはε−アミノヘキサン酸である)。このスペーサーは高度に疎水性である。
【0119】
組み合わせたペプチド/ポリカチオン性核酸結合成分、即ち本発明のペプチド誘導体は以下で成分「I」と呼ぶ。
【0120】
本発明は、
(i)脂質成分
(ii)ポリカチオン性核酸結合性成分、および
(iii)本発明のペプチド
を含むトランスフェクション混合物を更に提供する。
【0121】
本発明は、
(i)脂質成分
(ii)ポリカチオン性核酸結合性成分、
(iii)本発明のペプチド、および
(iv)核酸
を含む非ウイルストランスフェクション複合体をも更に提供する。
【0122】
本発明のトランスフェクション混合物またはトランスフェクション複合体において、成分(ii)および(iii)は、好ましくは例えば上記のように本発明のペプチド誘導体の形である。
【0123】
本発明のトランスフェクション混合物またはトランスフェクション複合体の脂質成分はカチオン性リポソームであるかカチオン性リポソームを形成しうる。
【0124】
脂質成分はカチオン性脂質および膜不安定化またはフソジェニック性を有する脂質、特にカチオン性脂質および膜不安定化性を有する脂質の組み合わせ、より選択される1以上の脂質であり、または脂質を含む。
【0125】
好ましい脂質成分(「L])は、中性の脂質ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(本願明細書で「DOPE]と呼ぶ)であるか、または含む。DOPEは膜不安定化の性質を有し、時には「フソジェニック(fusogenic)」と呼ばれる(Farhood et al. 1995)。他の脂質、例えば膜不安定化性、特にDOPEのそれのように膜不安定化性を有する中性の脂質はDOPEの代わりに、または同様に用い得る。
【0126】
少なくとも1つの長鎖アルキル基を有する他のリン脂質、例えばジ(長鎖アルキル鎖)ホスホリピッドを用い得る。リン脂質はホスファチジル基、例えばホスファチジルアルカノールアミン基、例えばホスファチジル−エタノールアミン基を含み得る。
【0127】
更なる好ましい脂質成分はN−〔1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル〕−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(本明細書では「DOTMA]と言う)であり、または含む。DOTMAはカチオン性を有する。他のカチオン性脂質、特にDOTMAと類似の性質を有するカチオン性脂質もDOTMAに加え、または代わりに用い得る。そのような脂質は例えば3つの短鎖アルキル基と1つの長鎖アルキルにより置換された4級アンモニウム塩である。短鎖アルキル基は同一または相異なり得、メチルおよびエチル基より選択しうる。少なくとも1つのそして3つ迄の短鎖アルキル基はメチル基でありえる。長鎖アルキル基は直鎖または分枝鎖、例えばジ(直鎖アルキル)アルキル基を有し得る。
【0128】
他の好ましい脂質成分は、脂質2,3−ジオレイルオキシ−N−〔2-(スペルミジンカルボキサミド)エチル〕−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオリドアセテート(本明細書では「DOSPA]と言う)であるか、含む。類似の脂質DOSPAに加えて、またはその代わりに、特にDOSPAと類似の性質を有する脂質を用い得る。そのような脂質は例えばDOSPAにおけるそれとは異なる短鎖を有する。
【0129】
好ましい脂質成分はDOPEおよび1以上の、例えば上に記載した脂質成分を含む。特に好ましいのはDOPEおよびDOTMAの混合物を含む脂質成分である。そのような混合物はカチオン性リポソームを形成する。DOPEおよびDOTMAの等モル混合物は特に効果的であることが解っている。そのような混合物は「リポフェクチン」として一般的に知られ、「リポフェクチン」の名前で商業的に利用できる。用語「リポフェクチン」はDOPEおよびDOTMAの等モル混合物を示すのに一般的に用いる。リポフェクチンと似た性質を有するカチオン性リポソームである他の脂質混合物は用いうる。リポフェクチンは試験したすべての細胞タイプで効果的であるので特に有用である。
【0130】
更に好ましい脂質成分はDOPEおよびDOSPAの混合物を含む。そのような混合物もカチオン性リポソームを形成する。重量比3:1のDOSPA:DOPEのDOPEおよびDOSPAの混合物は特に効果的である。膜濾過した水中のそのような混合物は「リポフェクタミン」、例えばリポフェクタミン2000の名で商業的に利用できる。DOPE,DOTMAおよびDOSPAを含む混合物は、例えばリポフェクチンおよびリポフェクタミン混合物は用い得る。
【0131】
他のカチオン性脂質例えばDOTAP(Beringer-Mannheim)およびTfx範囲(Promega)中の脂質は商業的に利用できる。DOTAPはN-〔1-(2,3-ジオリルオキシ)プロピル〕−N,N,N-トリメチルアンモニウムメチルサルフェートである。Tfx試薬は合成カチオン性脂質、N,N,N',N'-テトラメチル−N,N'-ビス(2−ヒドロキシエチル)−2,3−ジ(オレイルオキシ)−1,4−ブタンジアンモニウムおよびDOPEの混合物である。すべての試薬は同量のカチオン性脂質成分を含むが、異なるモル量のfusogenic脂質液、DOPEを含む。
【0132】
しかしながら、リポフェクチンとリポフェクタミンは、DOTPAおよびTfx試薬より核酸で細胞のトランスフェクションを促進するのに著しくより効果的であるようである。
WO 03/094974(PCT/GB03/01985)は数個の脂質を記載する。そのような脂質はジカチオン性脂質、カチオン中心の間にスペーサーを導入するPEGをベースとする脂質、およびエリスリトールをベースとする脂質を含む。
【0133】
WO 03/094974に記載された脂質の2つは、一般式(I)または(II)を有する:
【化1】
(式中、
X1およびX2は同一または異なり、−OCH2−および−O−C(O)−から選択され;
R1およびR2は同一または異なり、直鎖または分枝の、飽和または不飽和のC7〜C24カルビル基であり、ヒドロキシ、ハロゲンおよびOR’から選択された1以上の置換基により置換され置換されず、R’はC1〜C6のヒドロカルビル基であり;
それぞれのR3およびR4は同一または異なり直鎖または分枝の、飽和または不飽和のC1〜C10ヒドロカルビル基であり、ヒドロキシ、ハロゲン、OR’、−C(O)OH.−CN,NR’R”,および−C(O)R”から選択される1以上の置換基により置換されまたは置換されず、R’およびR”は同一または異なり、C1〜C6のヒドロカルビル基である)
【化2】
(式中、
X1およびX2は同一または異なり、上に定義した通りである。
R1およびR2は同一または異なり、上に定義した通りである。
R5は−N+(R3)2−R6(各R3は同一または異なり、上に定義した通りである)である。
R6は
(a)−[A−Y−]−nR4
(式中、
各Yは同一または異なり、−N+(R4)2−であり、R4は上に定義した通りである
各AはC1-20アルキレン基であり、ヒドロキシ、ハロゲン、OR’、−C(O)OH、−CN,NR’R”,および−C(O)R”から選択される(R’およびR”は同一または異なり、C1〜C6のヒドロカルビル基である)1以上の置換基で置換されまたは置換されない。
nは1〜10である)、または
(b) −[B-O-]-mB−Q
各Bは同一または異なり、ヒドロキシ、ハロゲン、OR’、−C(O)OH.−CN,NR’R”,および−C(O)R”から選択される(R’およびR”は同一または異なり、C1〜C6のヒドロカルビル基である)1以上の置換基で置換されまたは置換されないC1-10アルキレン基であり、
mは1〜10であり;
Qは−N+(R3)3、−OH,OR’、−C(O)R’,およびハロゲンから選択され、R3およびR’は上に定義した通りである。)
である。
【0134】
WO 03/094974は構造式IIIを記載し、それはエリスリトールをベースにした脂質である。
【化3】
(式中、
Rは,同一または異なり、
(a)H,
(b)−CH2−N+(R2)2−CH2−CH2−[Y−(CH2)p]q−Z、または
(c)−CH2−N+(R4)3
である。但し1つのRはHで、他は基(b)であるか、両方のRが(c)群である。
Xは同一または異なり、OCH2またはO−C(O)である。
R1は同一または異なりC7〜C23の飽和または不飽和鎖である。
R2は同一または異なりC1〜C6の飽和または不飽和鎖である。
YはNH,CH2,O,またはN(アセチル)である。
ZはO(C1〜C4),OC(O)R3,N+R34,OH,F,Cl,BrまたはIでる(R3はC1〜C6アルキルである)である。
R4は同一または異なり、C1〜C6鎖である。
nは2,3,または4である。
mは1〜200であり、それが少なくとも2の場合、生じた繰り返し単位は同一または異なる)
【0135】
WO 03/094974に記載された脂質のいずれも本発明による脂質成分として、または本発明による脂質成分の1要素として用いてもよく、例えば上記の WO 03/094974による脂質は他のいずれかの脂質成分、例えば上に記載した好ましい脂質の1つと組み合わせて使用してもよい。好ましい比は例えば上に記載した通りである。
【0136】
本発明のトランスフェクション複合体の核酸成分は例えば天然源から得てもよく、組換え的にまたは化学合成により製造しうる。
【0137】
核酸成分は例えば特殊な機能を有する分子、例えば各標的分子よりなるか、または含む。核酸はDNAまたはRNAで有り得る。DNAは単鎖または2本鎖で有り得る。核酸配列は、遺伝子治療において、遺伝子ワクチンにおいて、またはアンチセンス治療における使用に適している。核酸は特定の遺伝子治療に対する標的であり得るか、関係しうるか、または遺伝子ワクチンとして、またはアンチセンス治療剤として機能できる分子で有り得る。核酸は完全なコード配列であり得るか、対応し得、コード配列の部分であり得る。
【0138】
或いは、核酸は商業的に有用な、例えば産業的にまたは科学的に有用なタンパク質、例えば酵素であるタンパク質をコードしうる。それは例えば薬剤またはワクチンとして治療的にまたは予防的に使用できる医薬的に有用なタンパク質であり、タンパク質はELISAにおける使用のための抗原として診断的に有用である。商業的に有用なタンパク質を製造できる宿主細胞は時に「細胞工場」と呼ばれる。
【0139】
発現されるべき核酸配列の場合には適当な転写および翻訳調節因子が一般的に提供される。
【0140】
核酸は一般的にはDNAであるが、RNAはある場合、例えば癌ワクチンにおいて用いられる。核酸成分は以下で「プラスミド成分」または成分「D]と呼ぶかも知れない。
【0141】
遺伝子治療および/または遺伝子ワクチンにおいて用いることができる核酸の例は、タンパク質のコード配列、cDNAコピー、およびそのゲノムバージョン(イントロンそしてまたエクソンを含む)、調節上流および下流配列を含む。他の有用な核酸は遺伝子修復および相同的組換えに関与する配列である。これらは、RNA/DNAキメラ(Bandyopadhyay et al., 1999; Cole-Strauss et al., 1996; Kren et al., 1998; Yoon et al., 1996)またはDNAオリゴヌクレオチド(Goncz et al., 1998)であり得る。有用な核酸はプラスミドに含まれる短い配列、またはプラスミドまたは核酸の組み込みを媒介する他の大きい核酸、例えばファージインテグラゼ(Groth et al., 2000; Olivares et al., 2001; Stoll et al., 2002; Thyagarajan et al., 2000; Thyagarajan et al., 2001)および「眠れる美」トランスポゾン(Yant et al., 2000)であり得る。
【0142】
DNAオリゴヌクレオチドはアンチセンス調節(Bachmann et al., 1998; Knudsen and Nielsen, 1997; Mannion et al., 1998; Woolf et al., 1995)の目的で、または転写因子デコイ(Ehsan et al., 2001; Ehsan et al., 2002; Mann et al., 1999; Morishita et al., 1995)として運搬される。CpGリッチなオリゴヌクレオチド配列はブーストワクチン反応に対するアジュバンドとして有用であり得る(Krieg et al., 1995)。
【0143】
遺伝子治療で用いることができる他の重要な新しい種類の分子は、スモール・インターフェアリングRNAである。上で説明したように、哺乳動物細胞におけるRNAインターフェアレンスは、高度の特異性を有する遺伝子発現の調節への重要な新しいアプローチとして過去2または3年内に出現した(レビユー Shi 2003)。スモール・インターフェアリングRNA(siRNA)として知られる長さ20−30ntの2本鎖RNA分子はmRNAの相同的領域を標的にする。次にそれらはmRNA標的を崩壊へと導く保存された経路を活性化する。siRNAの作用の正確なメカニズムは熱心な研究中であるが、siRNAの哺乳動物への適用は機能的ゲノムの分野を革命化する可能性を有する。簡単に、効果的に、特異的に哺乳動物における遺伝子の発現をした方調節する能力は巨大な科学的、商業的、および治療的可能性を保持する。
【0144】
現在効果的なsiRNA標的を予測する方法はないので多数の配列のスクリーニングがおこなわれ多数の可能性のある分子をスクリーニングしなければならない。そのようなスクリーニングは非ウイルスベクターにより運搬される化学的に合成したsiRNA分子を用いて最も便利に行われる。サブシークエントスクリーニングのためのsiRNA分子をトランスフェクトするための本発明のトランスフェクション複合体の使用は従って費用効果性そしてまたより大きい機能性の利益を提供する。siRNA分子は治療的にも使用しうる。そのようなトランスフェクションおよびsiRNAのその後のスクリーニングは本発明の部分である。
【0145】
本発明のペプチドのトランスフェクションの効率、ポリカチオン性核酸結合成分、本発明のペプチド誘導体、脂質成分、またはそれらのいずれかの組み合わせは本明細書に記載した方法を用いて容易に決定しうる。
【0146】
トランスフェクションベクターとして上記したトランスフェクション複合体を用いるトランスフェクションの効率は脂質成分:ペプチド/ポリカチオン性核酸結合成分の比、即ち本発明のペプチド誘導体:DNAまたはRNAの比により影響される。トランスフェクトされるべきいずれかの個々の細胞タイプに対する成分のいずれかの選択された組み合わせについて、最適比は異なる割合の成分を混合し、その細胞タイプについて例えば上記のように測定することにより簡単に測定できる。
【0147】
リポフェクチンおよびリポフェクタミンが上記したシステムにおいてトランスフェクションを高めるのに特に効果的であるようである。リポフェクチンは非常に少量のみが必要であるという利点を有する。生じ得るいずれかの副作用は従って最小化される。WO 03/94974に記載されたカチオン性脂質も特に効果的である。
【0148】
脂質およびDNA成分の間の適当な重量比は0.75〜4:1で有り得る。0.75:1の比が適当であることが見出された。いずれかのあるトランスフェクション実験においてこの比は当業者に知られた方法で最適化されうる。
【0149】
本発明のトランスフェクション混合物は、成分(i)、脂質成分、成分(ii)、ポリカチオン性核酸結合成分、成分(iii)本発明のペプチドを混合することにより製造されうる。上記のトランスフェクション複合体は(i)、(ii)、(iii)および(iv)を混合することにより製造しうる。成分(ii)および(iii)は好ましくは本発明のペプチド誘導体の形である。
【0150】
成分はいずれの順序で混合してもよいが、脂質成分は最後に加えないことが一般的に好ましい。ペプチド誘導体を用いる場合、次の順序:脂質成分;ペプチド誘導体;DNAまたはRNA成分、で成分を混合する、即ち脂質成分とペプチドを混合し最後に核酸成分を脂質/ペプチド混合物を混合することが好ましい。
【0151】
ペプチド誘導体および脂質成分を含むトランスフェクション混合物を用いて、核酸のトランスフェクション混合物での導入、例えば混合により核酸を含むトランスフェクション複合体を作りうる。或いは、トランスフェクション混合物を核酸成分ではなくポリカチオン性核酸結合成分、例えばタンパク質を含むベクター複合体の製造に用い得る。
【0152】
本発明のトランスフェクション混合物は一般に4℃での貯蔵に安定である。従って、トランスフェクション混合物をバルクで作って、必要に応じ、必要な場合トランスフェクション混合物の部分を用いて選択した核酸を導入するトランスフェクション複合体を製造するのが便利である。
【0153】
本発明のトランスフェクション混合物は脂質成分として等モル混合物のDOPEおよびDOTMA(リポフェクチン)、本発明のペプチド、特に本発明のペプチド誘導体、例えば[K]16ペプチドを好ましくは含む。上記のスペーサーはペプチド誘導体中に存在してもよい。好ましいモル比、リポフェクチン:ペプチド誘導体は0.75:4である。
【0154】
本発明のトランスフェクション混合物の個々の成分はそれぞれ本明細書に記載する。トランスフェクション混合物およびトランスフェクション複合体について、好ましい成分、好ましい成分の組み合わせ、好ましい成分の比、および好ましい混合順序およびその製造は本明細書に記載する。
【0155】
本発明は更に、
(i)核酸、
(iii)ポリカチオン性核酸結合成分、および
(iv)本発明のペプチド
を含む非ウイルストランスフェクション複合体を提供する。
【0156】
本発明のペプチドを含むトランスフェクション複合体によりトランスフェクトされうる細胞は、例えば内皮および上皮細胞、例えば気管支および肺の上皮を含む気道のいずれかの部分の細胞を含む。気道上皮は嚢胞性繊維症および喘息のための遺伝子療法に対する重要な標的である。
【0157】
本発明はウイルスベクターをも提供し、そのベクターは本発明のペプチドを含む。
【0158】
ウイルスベクターはウイルスが結合する受容体を標的にし、その宿主細胞への入り口を得る。そのようなベクターは、本発明のペプチドをベクターに結合することにより再標的化されうる。ペプチドはそのような方法でそのような部位で結合されるべきであるのでベクター宿主細胞に結合できなおベクターとして作用する。
【0159】
ウイルスベクターは目的の核酸をも含む。そのような核酸は本発明のトランスフェクション複合体と関連して上に記載した通りであル。ウイルスベクターへの本発明のペプチドの導入は核酸で妨げるべきではない。本発明のペプチドは、核酸がベクターに挿入される前または後にウイルスベクターと共に導入され得る。
【0160】
ウイルスベクター、例えばアデノウイルスは、コックスサキー−アデノウイルス受容体(CAR)である天然の受容体である。これはアデノウイルスのための主な受容体である。第2の受容体はインテグリンおよびプロテオグリカンを含む。CARは多くの細胞タイプに見出されるが、樹状細胞では低レベルでのみ、そして気道上皮細胞の先端の表面ではないかまたは低レベルでのみ見出され、そのことが細胞および組織におけるアデノウイルスベクターの効率を限定する。アデノウイルスベクターは、例えばキャプシドの繊維タンパク質のHI領域への、本発明のペプチドの導入により再標的化される(Nicklin et al., 2001)。
【0161】
例えばアデノウイルスタイプ5は、広い範囲の細胞タイプを高効率で形質導入するので原理的には良いベクターであるが、樹状細胞につてはそのような細胞が低レベルのCAR受容体を有しているので貧弱なベクターである。本発明のペプチドをキャプシドの繊維タンパク質のHI領域に挿入すると樹状細胞についてのトランスフェクション効率はキャプシドの野生タイプの繊維タンパク質を有するアデノウイルスタイプ5ベクターを用いて測定して20〜45%から64および79%の間まで増加した。更に、トランスフェクション効率の増加は、樹状細胞ばかりでなく他の細胞でも認められた。例えば、本発明のペプチドを導入する再標的化アデノウイルスを用いるヒトの一次マクロファージは、野生タイプウイルスで認められた約13%からペプチドSHVKLNSについて約67%迄、ペプチドAPSNSTAについて約35%まで増加した。N2a細胞の場合、トランスフェクション効率は野生タイプベクターについての約24%と比較して再標的化したベクターについて約83%であり;HAEo細胞の場合、その値はペプチドSHVKLNSについて約79%、APSNSTAについて約79%であるのに対し、野生タイプ繊維を有するベクターは約45%の形質導入効率、KO1ウイルスは約2%、そして無関係なペプチドを有するウイルスは約32%であった。同じパターンの形質導入効率がHMEC−1内皮細胞について見られた。ペプチドSHVKLNSは約95%、ペプチドAPSNSTAは約94%、野生タイプは約73%、KO1ウイルスは約3%2.7%および無関係なペプチドは約25%であり、HepG2肝癌細胞ではペプチドSHVKLNSは約88%、ペプチドAPSNSTAは約80%、野生タイプは約64%、KO1は約2%および無関係なペプチドは約10%であった。
【0162】
或いは、ウイルスベクターは静電的にウイルスキャプシドまたは外被に結合することができるカチオン性ドメインを含む本発明のペプチドとの複合体の形成により再標的化されうる。そのようなペプチドの例は本発明のペプチド誘導体であり、それはポリカチオン性核酸結合成分、例えば3〜32のリシン、例えば上記のように例えば[K]16を有するポリカチオン性オリゴリシンを含む。ウイルスと修飾したペプチドの間の静電的複合体はウイルスおよびペプチドの溶液を混合することにより製造しうる。そのような複合体は本発明の部分である。
【0163】
更なる代替では、本発明のペプチドをウイルスに結合することができる抗体によってウイルスベクターで導入する。抗体はペプチドおよびウイルスに結合することができる2特異性であってもよいし、ペプチドおよび抗体が融合タンパク質の形であってもよい。どちらの場合もペプチドを用いてアデウイルス結合を媒介しウイルス上で提示し、再標的化形質導入を可能にする(Watkins et al., 1997)。抗体成分はいずれの種類の抗体であってもよく、適当な抗原結合ドメインであってもよく、キメラまたはヒト化抗体であってもよく、由来しても良い。そのような融合タンパク質は本発明の部分である。2特異的抗体およびペプチド、またはペプチド−抗体融合タンパク質はウイルスベクターと接触し、結合を可能にする。2特異的抗体およびペプチド/抗体融合タンパク質を製造し、選択する方法は当業者に知られている。例えば(Nicklin et al., 2001; Pereboev et al., 2002; Tillman et al., 1999; Watkins et al., 1997; Wickham et al., 1997)を参照。
【0164】
複合体、2特異的抗体、およびペプチド−抗体融合タンパク質は本発明のすべての部分である。
【0165】
野生タイプのベクターの効率と比較して、いずれかの個々の細胞または細胞タイプについての本発明のウイルスベクターのトランスフェクション効率は、例えば以下の実施例3に記載のように容易に決定できる。アデウイルスに関して上に記載したが、本発明のウイルスベクターは、本発明のペプチドを用いて再標的化できるウイルスベクターである。そのようなウイルスベクターの例は、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)および単純ヘルペスウイルスの遺伝的に操作され、複製欠陥性の誘導体である。
【0166】
特に述べない限り、本発明のウイルスベクターは本発明のトランスフェクション複合体と類似的に、例えば同じ目的に用い得る。
【0167】
本発明は宿主細胞中で核酸を発現させる方法をも提供し、その方法は宿主細胞をインビトロまたはインビボで核酸を含む本発明のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターに接触させ、宿主細胞を細胞が核酸を発現させることができる条件下に培養することを含む。
【0168】
本発明は更に宿主細胞中でタンパク質を製造する方法を提供し、その方法は宿主細胞をインビトロまたはインビボでタンパク質をコードする核酸を含む本発明のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターに接触させ、細胞がタンパク質を発現することを可能にし、タンパク質を得ることを含む。タンパク質は宿主細胞から、または培地から得られ得る。適当な宿主はよく知られている。適当な宿主細胞の例はチャイニーズハムスターオバリー(CHO)細胞(Watkins et al., 1997)、BHK細胞(Cruz et al., 2002)、293細胞(Castilho et al、2002)およびSf9等の昆虫細胞[Wang, 2000 #1964]を含む。
【0169】
本発明は更に細胞をトランスフェクトする方法を提供宿主、その方法は細胞を本発明によるトランスフェクション複合体またはウイルスベクターと接触させることを含む。そのようなトランスフェクションはインビトロまたはインビボで行い得る。インビトロでトランスフェクトされた細胞は、望むなら、治療目的のためヒトまたは非ヒト動物に投与しうる。以下参照。
【0170】
本発明は更に本発明による方法により核酸でトランスフェクトされた細胞およびそのような細胞の子孫を提供する。
【0171】
本発明は、医薬的に適当な担体と混合して、または結合して核酸を含む本発明のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターを含む医薬組成物をも提供する。その組成物はワクチンであり得、その場合アジュバンドを含み得る。
【0172】
本発明は遺伝子の欠陥および/または欠陥によりヒトまたは非ヒト動物において起こされる状態の治療または予防方法をも提供し、その方法は欠陥および/または欠陥を正すに適当な核酸を含む本発明のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターをヒトまたは非ヒト動物に投与することを含む。
【0173】
本発明はヒトまたは非ヒト動物の治療的または予防的免疫方法を提供宿主、その方法はヒトまたは非ヒト動物に、適当な核酸を含む本発明のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターを投与することを含む。
【0174】
本発明はヒトまたは非ヒト動物のアンチセンス治療方法をも提供し、その方法はヒトまたは非ヒト動物にアンチセンス核酸を含む本発明のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターをアンチセンスDNAを投与することを含む。
【0175】
本発明は、遺伝子の欠陥および/または欠陥によりヒトまたは非ヒト動物に起こされる状態の予防のための薬剤の製造のための本発明のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターの使用、ヒトまたは非ヒト動物の治療的または予防的免疫のための使用、およびヒトまたは非ヒト動物のアンチセンス治療のための使用を提供する。
【0176】
本発明の複合体またはベクターの投与の代替はインビトロでトランスフェクトした細胞を投与することである。
【0177】
非ヒト動物は例えば哺乳動物、鳥、魚であり、商業的に育てられた動物である。
【0178】
トランスフェクション複合体またはウイルスベクターにおける核酸、DNAまたはRNAは意図した使用のため、例えば遺伝子治療、遺伝子ワクチン、アンチセンス治療またはタンパク質生産に適当である(上記参照)。DNAまたはRNA従ってトランスフェクション複合体またはウイルスベクターは意図する目的に有効量投与する。
【0179】
治療および上記の使用はそれぞれのトランスフェクション複合体、ウイルスベクター、または薬剤または薬品を適当な方法で投与することにより行いうる。例えば投与は標的細胞の部位および意図する効果によって全身的、区域的の、または局所的であり得る。例えば気道上皮の場合には運搬は一般的に区域的の、または局所的であり、噴霧療法または気管支鏡法を含む。目の治療のためには投与は眼内である。他の標的の場合には全身的投与が必要であるかも知れず、その場合投与は注射、例えば静脈内、筋肉内、または腹膜内であり得る。
【0180】
更なる態様において本発明は、核酸を含むトランスフェクション複合体またはウイルスベクターを含むキットを提供する。
【0181】
本発明は次のものを含むキットをも提供する:(a)本発明のペプチド;(b)ポリカチオン性核酸結合成分;および(c)脂質成分。そのようなキットは更に、(d)核酸を含み得る。成分(a)および(b)は好ましくは本発明のペプチド誘導体の形である。或いは、キットは(a)、(b)および(d)を含み得る。
【0182】
そのような核酸は単鎖または2本鎖であり得、プラスミドまたは人工的染色体であり得る。核酸成分はその核酸の発現に適当なトランスフェクション複合体により提供去れ、ベクター複合体は空であるかまたは核酸を含む。
【0183】
成分(a)〜(d)キットは例えばトランスフェクションベクター混合物またはトランスフェクション複合体に関して記載した通りである。
【0184】
ポリカチオン性核酸結合成分は上に記載したように好ましくはオリゴリシンである。脂質成分は好ましくはカチオン性リポソームを形成でき、好ましくはDOPEおよび/またはDOTMA、であるか、それらを含み、例えばそれらの等モル混合物であるか、またはDOSPAであるか、それを含み、例えばDOPEおよびDOSPAの混合物、例えば重量比1:3のDOPE:DOSPAの混合物である。成分間の比は、成分の混合順序と同様に好ましくは上に記載した通りである。
【0185】
キッは一般的に指示を含み、例えば上記のように好ましくは成分の好ましい比、および成分の使用または混合の好ましい順序を含む。キットは遺伝子治療、遺伝子ワクチン、またはアンチセンス治療に用いうる。或いは、商業的に有用なタンパク質をコードする核酸で宿主細胞形質転換するのに、いわゆる「細胞工場」を作るのに用いうる。
【0186】
遺伝子治療の標的はよく知られており、単一遺伝子による障害、例えば嚢胞性線維症、様々な癌、および感染症、例えばウイルス感染、例えばHIVによる感染を含む。例えば、p53遺伝子によるトランスフェクションは癌治療のための大きい可能性を提供する。遺伝子ワクチンの標的もよく知られており、天然の源に由来するワクチンがヒトへの使用にあまりに危険であり、組み換えワクチンが必ずしも有効出ない、例えばB型肝炎、HIV、HCVおよび単純ヘルペスウイルス病原に対するワクチンを含む。アンチセンス治療の標的も知られている。遺伝子治療およびアンチセンス治療の更なる標的は、遺伝子ワクチンの更なる標的と同様に、病気の遺伝的基礎についての知識が増加するに従い、提案されつつある。本発明はトランスフェクションの効率、従って治療の有効性を高める。
【0187】
プロ炎症性サイトカインによる細胞のトランスフェクションは、自己免疫病、例えばリュウマチ性関節炎および多発性硬化症癌の治療においてアンチ炎症性サイトカインと共に癌免疫治療で用い得る。
【0188】
細胞を抗脈管形成性の遺伝子、例えば癌治療のための可溶性VEGF−R、または心筋の病気、または末梢脈管病のため脈管形成性の遺伝子、例えばVEGFでトランスフェクトしうる。
【0189】
本発明の非ウイルス性のトランスフェクション複合体は、例えば通常のベクターを用いて特に困難な125kbより大きいDNAの細胞内輸送に有効であり得る。これは人工染色体を細胞に導入することを可能にする。
【0190】
気道、例えば気管支の上皮のトランスフェクションは、嚢胞性繊維症、肺気腫、喘息、肺線維症、肺高血圧、および肺癌等の例えば呼吸器の病気の遺伝子治療に対して有用性を示す。
【0191】
嚢胞性繊維症(CF)は、コーカーシア人における最も一般的な単一遺伝子障害である。病的状態は主に肺の病気を伴う。CFは嚢胞性繊維症膜貫通伝導性調節タンパク質(CFTR)、クロライドイオンの分泌を媒介する細胞膜チャンネルをコードする遺伝子における突然変異により起こる。CFTR遺伝子導入による気管支細胞のこの欠陥の修正は、生化学的な輸送の欠陥および従って肺の病気を修正するであろう。現在までの臨床的試みは、勇気づけるデータを生み出したがもっと有効で非毒性のベクターの必要性を強調している。
【0192】
高められたレベルのトランスフェクションは本発明の方法を所望のタンパク質を製造できる宿主細胞、いわゆる「細胞工場」の製造に特に適している。長期の製造のために、導入された核酸が宿主細胞のゲノムに導入されるか、さもなければ安定に維持されることが望ましい、それは容易に確かめることができる。上に示したように、この方法で製造されるタンパク質は大きく、科学的および産業的使用のための酵素、治療および予防のためのタンパク質、ワクチンにおける使用のための免疫源、診断に使用する抗原を含む。
【0193】
本発明は高効率のトランスフェクションができる受容体標的ベクター複合体について特に有用である。好ましい態様では、ベクター複合体は4つのモジュラー要素;オリゴリシン、特に[K]16、DNA結合性またはRNA結合性因子;本発明のペプチド、例えば本明細書に記載したペプチド;場合によりプラスミド中の、そして場合によりウイルスプロモーターおよびエンハンシング因子により調節されるDNAまたはRNA;カチオン性のリポソームDOTMA/DOPE(リポフェクチン)を含む。オリゴリシン−ペプチド/DNAまたはRNA複合体のカチオン性リポソーム処方DOTMA/DOPEの組み合わせは強力な組み合わせである。或いは、DOPE/DOSPA処方をDOTMA/DOPE処方の代わりに、またはそれに加えて用い適しても良い。複合体形成に関する変数およびLIDベクター複合体によるトランスフェクション様式の最適化は示されている。
【0194】
最適のトランスフェクション複合体の形成における最も重要な変数は3つの成分の比およびその混合順序のようである。
【0195】
本発明は更にsiRNAを同定する方法を提供する。20−30のヌクレオチドの長さのsiRNA分子のパネルを標的遺伝子配列を通してばらまかれた領域に対する相同性について設計する。siRNA分子は商業的源、例えばQiagen Promegaにより合成できる。標的遺伝子を発現する細胞を個々のsiRNAでトランスフェクトし、発現レベルを標準的な関連したタンパク質アッセイまたはmRNAアッセイにより定量する。
【0196】
本発明はペプチドが結合する細胞または細胞タイプに対する物質を標的にするための本発明のペプチドの使用を提供する。その物質は核酸または他の分子、例えば治療的または薬学的に活性な分子、または検出可能な標識を含む分子であり得る。次の非限定的な実施例は本発明を説明する。
【0197】
実施例
実施例1:ペプチドモチーフの同定
材料および方法
(i)抗体
次の抗ヒト抗体をフローサイトメトリーに用いた。HLA−DR,CD40,CD86並びにマウスIgG1およびIgG2蛍光イソタイプ対照抗体(Beckton Dickinson UK Ltd, Cowley, UK)およびCD80およびCD83(Caltag Medsystems Lts, Towcester, UK)、そのすべてはフィコエリスリン(PE)で標識された。
【0198】
(ii)細胞系
次の細胞系を用いた、HMEC−1(CDC, Atlanta, GA 30333, U.S.A.),HAEo細胞(courtesy DC Gruenert, Human Molecular Genetics Unit, Department of Medicine, University of Vermont, Burlington, VT 05405, USA)、N2a細胞としても知られているNeuro−2a細胞(LGC Promochem, Teddington, Middlesex, UK)、およびHepG2細胞。
【0199】
ヒト気道上皮細胞系(1HAEo−)を、10%の胎児子牛血清(FCS, Sigma, Poole, UK)、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(InVitrogen, Paisley, U. K.)および2mM L-グルタミン(InVitrogen, Paisley, U. K.)を補ったEagleの最少必須培地(MEM)HEPES改変(Sigma, Poole, U.K.)中に保持した。
【0200】
ヒト微小血管の内皮細胞系HMEC-1を1HAEo−細胞の場合のようにだが1mg/Lハイドロコーチゾン(R & D Systems Europe Ltd, Abingdon, U. K.)10mg/Lの表皮性増殖因子(EGF; Sigma, Poole, U.K)を補ったMCDB31培地(Invitrogen, Paisly, U.K)中に保持した。
【0201】
マウス神経芽腫細胞系Neuro-2Aは、10%FCS,1mMピルビン酸ナトリウム(InVitrogen, Paisley, U. K.)、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンおよび0.1mM非必須アミノ酸を有するGlutamax−1(InVitrogen, Paisley, U. K.)を有するダルベッコのMEM中に保持した。
【0202】
ヒト肝癌細胞系HepG2はイーグルのベイシック塩溶液(BSS)、1.5g/L炭酸水素ナトリウム、0.1mM非必須アミノ酸(Sigma, Poole, U.K.)を含むイーグルのMEM中に保持し、1mMピルビン酸ナトリウムを除いて1HAEo細胞の場合のように補った。
【0203】
(iii)マクロファージの生成
単球は上記のように末梢血から調製した。単核細胞を10%FCS,RPMI中に1−2時間25cm3のフラスコ中にプレートした(10mlの血液あたり1フラスコ)した後、上澄みを除去し、新鮮な10%FCS、RPMI+10ng/ml MCSF(マクロファージコロニー刺激因子)(R&D System)を添加した。48時間後、培地の半分を新鮮な10%FCS、RPMI+MCSF(10ng/ml)で置換し、細胞6日に用い、ウエルから細胞を削ることにより収穫した。
【0204】
(iv)ペプチドライブラリー
用いたライブラリーC7CはNew England Biolabs Incから商業的に得、ファージ、力価決定および増殖課程は製造者のハンドブックに記載された通り行った。ライブラリーはランダムペプチド配列長さで7の残基よりなり、システイン残基が隣接し、環化を可能にする。コンストレインされた環状ペプチドはその線状対応物より高い結合親和性をしばしば示す。
【0205】
(v)未熟なヒト樹状細胞の生成
未熟な樹状細胞を以下に記載するように末梢血液単球から調製した。この方法を用いてヒトおよびマウスの樹状細胞を作り得る。
【0206】
10mlまたは40mlの末梢血試料をハンクス緩衝塩溶液(HBSS;Gibco BRL-InVitrogen, Paisley, U.K.)で1:1希釈し、次にLymphoprep(Nycomed (UK) Ltd, Sheldon , Birmingham)に層にし、750gで30分間遠心分離し、リンパ球を界面から単離した。過剰のLymphoprepは細胞を250gで10分間スピンダウンすることにより除去し、存在する血小板はHBSSで2度洗浄し、細胞を1200rpmで10分間遠心分離することにより除去した。次に単球を、製造者のプロトコールに記載のようにMACs CD14磁気マイクロビーズ(Miltenyi Biotec Ltd., Bisley, Surrey)を用いて除去した。単球を、ウェルあたり3mlの、組み換えヒトGM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(Schering Plough/ Sandoz, Innishannon, Irelandから得た)およびIL-4(PreproTech EC Ltd, London,UK) cytokinesから得た)サイトカインを補った(それぞれ100ng/mlおよび25ng/ml最終濃度)完全培地(HEPES緩衝RPMI)(InVitogenn,Paisley, U.K.)+10%胎児子牛血清(FCS Myclone low LPS, InVitogenn, Paisley, U.K.)、100U/mlのペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンで6ウエルプレートにウエル当たり1x106細胞で接種し、37℃、5%CO2でインキュベートした。新鮮なサイトカインGM−CSFおよびIL−4をインキュベーションの3日に添加し、非付着性の未熟な樹状細胞をウイルス形質導入のために6日に、非ウイルス形質導入のために3または4日に収穫した。
【0207】
(vi)溶液中の樹状細胞選択(「パンニング」)
ペプチドライブラリーからの樹状細胞結合ファージの選択(「パンニング」)は、溶液中でラウンドあたり実施例1(iv)に記載した方法により得た約1x106の生存している樹状細胞を用いて、そしてC7Cライブラリーから2x1011ファージを用いて(実施例1(i)参照)行った。
【0208】
細胞にファージライブラリーを添加する前に、両者は1mlの2%のマーベル(ドライミルク)5%のBSA−PBS(燐酸塩緩衝の血清、pH7中のウシ血清アルブミン)4℃でアップアンドダウンターンテーブル(垂直に回転する輪)中で30分間ブロックして非特異的相互作用を減少させた。そのファージを回転することにより混合して4℃で2時間細胞に結合させた後、細胞を315g(2000rpm)で3分間遠心分離し、上澄みを除去する。上澄みは非結合性のファージを含む。次に細胞を2%BSA−PBSで、5回、各5分洗浄し、細胞を各時にきれいな試験管に移し、非特異的または弱く結合するファージを除去した。PBSのみにおける2回の洗浄を次に行い、アップアンドダウンターンテーブル(垂直に回転)中で混合することで10分間76mMクエン酸緩衝液を用いて溶出した。細胞はスピンダウンし、溶出液を除去し、600μlの1M Tris pH7.5の添加により中和し、4℃で貯蔵した(「溶出した画分」)。残った細胞を1ml 30mM Tris pH8.0、1mM EDTAで1時間氷上で溶解した後、短くボルテックスし、後のファージ力価決定のために4℃で貯蔵した。以下の実施例1(vii)を参照。
【0209】
各細胞溶解画分から収穫したファージは、プラーク形成単位(PFU)として力価決定した後、E.coli ER2738(New England Biolabs (UK) Ltd, Hitchin, Herts)中で製造者の指示に記載のように増幅させ、力価決定し、次のパンニングラウンドのためのインプットファージとして用いた。第3ラウンドのパンニングは、HLA特異的結合ペプチドの単離を避けるため、各ラウンドについて2つの異なるドナーからの樹状細胞を用いて行った。すべてのパンニングは4℃またはそれ以下で行い、樹状細胞表現型の変化を妨げた。第2および第3ラウンドのパンニングの場合、少ない数のファージが収穫されるなら、2%BSA−PBSで3度およびPBSのみで2度に洗浄ストリンジェンシーを減少させうる。第3ラウンドの画分からのファージの力価決定後、単一のよく単離されたプラークを選び取り、配列決定およびFACSまたは力価決定によるクローン結合特性決定のために精製した。
【0210】
ファージを回収し、各ラウンドの選択から次の様に力価決定した。2x1011のブロックしたファージを5x104のブロックした単球由来未熟な樹状細胞に氷上で1時間添加した後、細胞を3度0.05% Tween20−PBSで洗浄し、ファージをTBS pH5.5で溶出し、細胞を溶解し、結合して残っているファージを収穫した。細胞溶解により収穫したファージの数をプラーク形成単位(pfu)として計算した。図1はいくつかの力価決定の結果を示す。図1に示した結合したファージの配列決定は、ペプチドをAPSNSTA、QLLTGAS,TARDYRL,FQSQYQK,PLMPSLS,FPRAPHH、MASISMK、DWWHTSA、SHVKLNSおよびSPALKTVとして同定した。
【0211】
(vii)選択したファージの細胞結合の特性決定
ヒト単球由来未熟な樹状細胞(樹状細胞)へのファージの結合は全細胞フローサイトメトリーおよびファージ力価決定アッセイにより研究した。
【0212】
(a)全細胞フローサイトメトリー
実施例1(v)で記載したように製造し非粘着性未熟なヒト樹状細胞を収穫した。5x104の樹状細胞および2x1011の個々の精製したファージクローンを1ml MBSA(2% Marvel、PBS中で5%BSA)中でターンテーブルで混合して4℃で30分間ブロックした。その樹状細胞を2000rpmでスピンダウンし、それらを溶解することなく5分間4℃でペレット細胞までゆるやかな遠心分離し、そのペレットをブロックしたファージ溶液に再懸濁した。その混合物を氷上で30分間保ち、ファージを結合した後、細胞をスピンダウンし、上澄みを除き、細胞を1mlの1%BSA,0.05%のTween20-PBSで洗浄した。その細胞を再びスピンし、上澄みを除き、細胞を1mlの1%パラホルムアルデハイド中で氷上で30分固定した。細胞をPBS中で2度洗浄し、1mlの1%Marvel、PBS中の2.5%BSAおよび2μlのFITC(フルオレセイン−イソチオシアネート)標識抗Fd抗体(Sigma, Poole, Dorset)(3mg/ml)に再懸濁した。細胞を氷上で30分抗体とインキュベートした後、スピンダウンし、0.05%のTween20、1%のBSA PBS中で2度洗浄し、200μlのPBS中に再懸濁し、FACS分析によるFITCについて陽性の細胞のパーセントを測定した。
【0213】
或いは、5x104の樹状細胞をファージライブラリーのパンニングについて記載したように2x1011の個々のファージクローンと混合物した。ファージおよびDC懸濁液の混合物を氷上で30分間保った後、細胞を遠心分離し上澄みを除去し、1mlの1%BSA、0.05%のTween20-PBSで洗浄した。細胞を再び遠心分離によりペレットにし、次に1mlの1%パラホルムアルデヒド中に氷上で30分間再懸濁することによりフローサイトメトリーのために固定した。固定した樹状細胞をPBSで2度洗浄し、1%のマーベル、PBS中の2.5%のBSA中に再懸濁し、2 lのFITC-抗fdファージ抗体溶液と3mg/ml(Sigma, Poole, U. K.)で混合した。細胞を抗体と氷上でインキュベートし、次に遠心分離によりペレットにし、0.05%のTween20、1%のBSA PBSで2度洗浄し、200 lのpBSに再懸濁した。FITC陽性の細胞のパーセントはEpics XLフローサイトメーター(Beckman Coulter, High Wycombe, UK.)を用いてフローサイトメトメトリーにより測定した。
【0214】
(b)細胞に結合するファージクローンの力価決定
各力価決定について、5x104の単球由来樹状細胞(5または6日)を、200μlのブロック用緩衝液(DMEM/2%マーベル/1%BSA)中で30分間4℃でインキュベートし、コンスタントに混合することにより、最初にブロックした。2x1011のファージも200μlのブロック用緩衝液で30分間4℃でブロックした。樹状細胞を2000rpmで5分間4℃でスピンダウンし、ファージ溶液に再懸濁し、ファージを1時間氷上で時々混合しながら結合させた。次に細胞をPBS-Tween 20(0.05%)で三回洗浄した後、ファージを166μlのTBS pH5.5で10分間、氷上で溶出させた。溶出液は34μlの1M Tris-HCl pH8で中和し、細胞をスピンダウンし、上澄みを除去し、溶出液として貯蔵した。細胞ペレットを200μlの細胞溶解緩衝液(30mM Tris-HCl、1mM EDTA pH8.0)中に1時間氷上で振とうしながら再懸濁した。細胞断片を5000rpmで5分間スピニングすることにより除去し、上澄みを回収した。溶出液中のファージおよび細胞溶解液をNEB C7C技術ビュレチンに記載するようにE,coli ER2738中でプラーク形成単位(pfu)を測定することにより力価決定した。
【0215】
ファージクローン結合の力価決定は、対照としてプラスチックへの結合を用いて、ヒトおよびマウス樹状細胞を用いて行った。ヒト細胞は以下に述べるドナーから得た。
【0216】
(c)ファージペプチド挿入物の配列決定
第3ラウンドの樹状細胞選択後の細胞溶解画分から単離した81の個別のファージクローンを、少スケールポリエチレングリコール(PEG)生成物から精製し(NEBテクニカルビュレチンを参照)、単鎖ファージDNAを配列決定のために作った[Kay, 1996 #50]。
【0217】
簡単に言えば、タンパク質の外被をフェノールクロロホルム抽出により試料から除去し、DNAをエタノール沈殿によりペレットにした。微量の塩はペレットから氷冷70%エタノールで洗浄した後、そのDNAをトリEDTA(TE)(10 mM Tris Hcl, ImMEDIA, pH7.5)に再懸濁した。50−100ngの精製したDNAをビッグダイ(Applied Biosystems, Foster City, California, USA)ターミネーターサイクル配列決定反応に、96プライマー(5’-CCCTCATTAGCGTAACG-3’)(C7Cライブラリーで供給)を用いキットの指示に記載されたようにエタノール沈殿によりローディングするために精製した。試料はABI377シークエンサー(Applied Biosystems, Foster City, California, USA)上で操作し、結果はプログラム(Informax Inc, Oxford UK)のVector NTI Suiteを用いて分析した。
【0218】
結果
ペプチドの同定
「パンニング」は実施例1(vi)に記載するように行って、ファージの力価決定を得た。図1はいくつかの力価決定の結果を示す。図1に示された結合したファージの配列決定はペプチドを、APSNSTA、QLLTGAS,TARDYRL,FQSQYQK,PLMPSLS,FPRAPHH、MASISMK、DWWHTSA、SHVKLNSおよびSPALKTVとして同定した。
【0219】
未熟な樹状細胞に結合するファージクローンの力価決定の第3ラウンドから細胞に関連する画分からの81ファージクローンの配列決定は16の異なった配列を同定した。
【表4】
【0220】
3つの最も頻繁なファージクローンは、21%(APSNSTA)、20%(DWWHTSA)および12%(SHVKLNS)で残りは7%以下存在した。ファージクローンからの16の結合配列の分析は5つの最小モチーフ、即ち、PXNT/ST,PXXXA/V,A/LPSXS,SL/ISおよびQXN/QXQを同定し(表3参照)、そのモチーフは樹状細胞上の受容体への結合に重要な役割を果たしているかもしれない。配列決定したすべてのクローンの中で、46%は1以上のモチーフを含み、最も頻繁なクローンは、APSNSTAであり、3つの他のペプチド配列とある程度の相同性を示した、表3参照。
【表5】
【0221】
同一のアミノ酸は太字およびイタリックで、類似のアミノ酸はイタリックのみで示した。
【0222】
大部分の場合樹状細胞に対して結合するファージクローンの力価決定は、クローンは細胞中に挿入物を有さないファージより、大きい程度で細胞に結合することを示した。2つのクローンFPRAPHHおよびMASISMKは、マウス樹状細胞へ結合するファージ結合の力価決定を含み、すべての力価決定で最高数で結合した。プラスチックに結合するファージの数は試験したすべてのクローンで低く、これらの実験において、高力価により証明されるファージ結合は細胞への結合によるものであり、ウエルへのバックグラウンドの非特異的結合または分子ブロッキングでないことを示唆する。図1および表4参照。
【表6】
【0223】
6つの最も頻繁なクローン、即ちAPSNSTA、FQSQYQK、DWWHTSA、SHVKLNS、SPALKTVおよびSQKNPQMは、1つSPALKTVを除いてすべてのクローンが挿入物を有さないファージクローンより高いパーセントまで結合が検出された。図2aおよび2bを参照。
【0224】
結合のパターンは3つのクローンが、これらがペプチドAPSNSTA、DWWHTSAおよびSHVKLNSを含むので最高量で樹状細胞に結合することを示し。そのクローンは選択から最も頻繁に単離された。試験した6つのクローンの第2セット、即ちペプチドQLLTGAS、TARDYRL、PMLPSLS,FPRAPHH、MASISMKおよびSTPPNTTを含むものについて、すべてのクローンは挿入物を有さない対照より結合したファージについて高いパーセントの細胞が陽性であることを示した。QLLTGASは他よりわずかに多い細胞に結合する。図3aおよび3bを参照。
【0225】
16のファージ配列のうち、5つ、即ちAPSNSTA、SHVKLNS、MASISMK、FPRAPHHおよびDWWHTSAが、それらが最も頻繁なクローンの内であり、ファージクローン結合のFACSアッセイにおけるトップのバインダーの内であることを根拠に合成のために選ばれた。
【0226】
実施例2:非ウイルストランスフェクション
材料および方法
(i)ペプチドの合成
望ましい細胞結合およびエントリー特性を示すファージから同定されたペプチドA,B,C,DおよびF(表7参照)を標準的な合成化学を用いて合成し、16のリシンの尾、GACリンカーおよびC−末端 CG基を有する。ペプチド6,RRETEWAはインテグリン結合ペプチドである。ペプチド6J、ATRWAREはペプチド6のスクランブルバージョンであり、対照ペプチドとして役立つ。ペプチド誘導体という用語は以下に示す合成したペプチド配列を示すのに用いる。即ち、「ペプチドA」はSHVKLNSを示し、「ペプチドA誘導体」は[K]16−GACSHVKLNSCGを示す。ペプチドおよびペプチド誘導体の詳細は以下の表5に示す。
【表7】
【0227】
(ii)リポポリプレックス(LID)トランスフェクション複合体の形成および未熟な樹状細胞のトランスフェクション
(a)未熟な樹状細胞のためのトランスフェクション複合体
脂質(L)、ペプチド(上に記載したペプチド誘導体の形で)(I)およびDNA(D)を含むリポポリプレックス(LID)トランスフェクション複合体を製造した。脂質成分はリポフェクチンまたはリポフェクタミン2000(Invitrogen Ltd, Paisley, UK)であり、ペプチドは上の表7に記載した合成したペプチドA〜F,6または6J誘導体であり、DNAはプラスミドpEGFP−N1(Clontech, BD Biosciences, Palo Alto, CA)であった。
【0228】
トランスフェクション複合体において、ペプチド成分対DNA電荷の比(+/-)は1.5:1,3:1および7:1で用いた。脂質成分(リポフェクチンまたはリポフェクタミン2000)DNAに対して重量で0.75:1という一定の割合で保持した。トランスフェクション複合体の製造の前に、方法Aでは脂質成分を15μg/mlの濃度に希釈し。ペプチドは0.1mg/mlで、DNA(プラスミド pEGFP-N1, BD Biosciences, Cowley, UK, EndoFree プラスミドキット, Qiagen Ltd, Crawley, UKを用いて製造)は10μg/mlで調製した。すべての希釈はOptiMEMを減少させた組織培養培地((Life Technologies Ltd, Paisley, UK))で行った。方法Bではトランスフェクション複合体を作る前に脂質成分を30μg/mlの濃度まで希釈し、ペプチドは0.1mg/mlで調製し、DNA(プラスミドpEGFP−N1、BD Biosciences, Cowley, UK,
EndeFree プラスミドキット Quiagen Ltd, Crawley UK)40μg/mlであった。すべての希釈は血清を含まないRPMIで行った。
【0229】
トランスフェクション複合体は成分を1)脂質(50μl)、次に2)ペプチド(70μl)および最後に3)DNA(50μl)の順に混合し、次にOptiMEMまたは血清を含まないRPMIで、300μl(OptiMEM)あたり、または500μl(RPMI)あたり2μgのDNA成分に対する濃度まで、適当なように希釈した。
【0230】
(b)未熟な樹状細胞および単球のトランスフェクション
実施例1(v)で記載したように得られた未熟な6日樹状細胞を完全培地中にウエルあたり5x104細胞で48ウエルプレートにプレートし、3時間37℃でかすを沈殿させた。上記のように得たトランスフェクション複合体の300μlまたは500μl(適当に応じて)を各ウエルに加えた。トランスフェクション複合体は製造5分以内に細胞に加えた。トランスフェクションインキュベーションは37℃で4時間行い、その後、培地を24時間サイトカインを有する完全培地で置換した。細胞をスクレイピングにより収穫し、スピンダウンし、FACS分析のために300 lのPBSに再懸濁し、リポーター遺伝子EGFP(Enhanced Green Fluorescent Protein)に陽性の細胞のパーセントを決定した。各トランスフェクションは3つのウエルで行った。
【0231】
単球のトランスフェクションのために、末梢血単球を、実施例1(v)において単球由来樹状細胞の製造方法において記載するようにLymphoprep遠心分離およびCD14ビーズ選択を用いて調製した。これらの細胞を次に単球のトランスフェクション(および3または4日の未熟な樹状細胞のも)を溶液中で行ったことを除いて樹状細胞につて記載したようにトランスフェクトした。
【0232】
(iii)他の細胞タイプのトランスフェクション
(a)他の細胞タイプ
用いた他の細胞タイプは、HMEC-1細胞(CDC, Atlanta, GA 30333, U.S.A)、HAEo細胞(courtesy DC Gruenert, Human Molecular Genetics Unit, Department of Medicine, University of Vermont, Burlington, VT 05405, USA))、およびNeuro-2a(N2a細胞としても知られている)(LGC Promochem, Teddington, Middlesex, UK)。
【0233】
(b)他の細胞タイプについてのトランスフェクション複合体
脂質、ペプチド、およびDNAを含むトランスフェクション複合体を調製した。脂質成分はリポフェクチン(Invitrogen Ltd, Paisley, UK)であり、ペプチド成分は、上記のようにペプチドA〜F、6,または6J誘導体であり、DNAはプラスミドpCILuc (Promega UK Ltd, Southampton)であった。トランスフェクション複合体においてペプチド対DNA電荷比(+/−)は3:1,5:1および7:1で用いた。脂質成分はDNAに対して重量で0.75:1の一定の比を維持した。トランスフェクション複合体の製造の前に、脂質成分を15μgまたは30μg/mlの濃度に希釈した。ペプチドは0.1mg/mlで、DNAは40μg/mlであった。すべての希釈はOptiMEM減少血清組織培養培地(Life Technologies)で行った。トランスフェクション複合体は成分を1)脂質、次に2)ペプチドおよび最後に3)DNAの順に混合し、次にOptiMEMで、300μl(OptiMEM)あたり、または200μlあたり0.25μgのDNA成分に対する濃度まで希釈した。
【0234】
(c)他の細胞タイプのトランスフェクション
これらのタイプの細胞、即ちHMEC, HAEo-、N2aおよびHepG2のトランスフェクションのために、1x104の細胞を96ウエルプレートに一晩接種した。(b)に従って製造したトランスフェクション複合体の200μl懸濁液を各ウエルに加えた。懸濁液は調製の5分以内に細胞に加えた。トランスフェクションインキュベーションは37℃で4時間行い、その後、培地を24時間適当な完全培地で置換した。各トランスフェクションは6回行った。
【0235】
細胞を含まない抽出物におけるルシフェラーゼリポーター遺伝子アッセイを、製造者のプロトコールを用いてPromega UK Ltdからのルシフェラーゼアッセイを用いて24時間インキュベートした後行った。光単位は各抽出物内部でタンパク質濃度に標準化された。
【0236】
(iv)トランスフェクトされた樹状細胞のフェノタイピング
未熟な4日の樹状細胞を、ペプチドAをDNA(プラスミドpEGFP)に対して7:1の電荷比でLID複合体でトランスフェクトし、リポフェクチンをRPMI中で4時間DNAに対して重量比0.75で加えた後、24時間サイトカインを有する完全培地中でインキュベートした。対照として、樹状細胞を24時間完全培地中でインキュベートした(未熟な樹状細胞)。細胞をかきとることにより収穫し、成熟マーカーの存在について次の様に染色した:2ml以下の培地の体積中の最小5x104の細胞を推奨される量の抗体に添加し20分間氷上でインキュベートした。2mlの氷冷却PBSを添加した後、300xgで5分間4℃で遠心分離した。上澄みを飛ばし去りペレットを300 lの氷冷1%パラホルムアルデハイド−PBS中に再懸濁した。各試料からの細胞をHLA-DRに対する抗体で、およびCD86およびアイソトープマッチした対照抗体で染色した。細胞をEpics XL(Beckman Coulter, High Wycombe, UK.)およびEXPO32分析ソフトウエア(Beckman Coulter)を用いてフローサイトメトリーにより分析した。
【0237】
(v)トランスフェクトされた樹状細胞の成熟とフェノタイピング
未熟な4日の樹状細胞を、ペプチドDをDNA(プラスミドpEGFP-N1)に対して7:1の電荷比でLID複合体でトランスフェクトし、リポフェクチンRPMI中で4時間DNAに対して重量比0.75で加えた(上記のように)。1つの試料において、24時間のトランスフェクションの直後LPSを完全培地に50ng/mlの濃度で添加し、他では細胞を完全培地で2日間インキュベートした後、LPSを更に24時間添加した。対照として、樹状細胞を完全培地中で(未熟なDC)、またはLPSを有する完全培地中で(成熟DC)で24時間インキュベートした。次に細胞をスクレイピングで収穫試料、成熟マーカーの存在について次のように染色した。細胞をかきとりにより収穫し、成熟マーカーの存在にゆいて次のように染色した。2ml以下の培地の体積中の最小5x104の細胞を推奨される量の抗体に添加し20分間氷上でインキュベートした。2mlの氷冷却PBSを添加した後、300xgで5分間4℃で遠心分離した。上澄みを飛ばし去りペレットを300 lの氷冷1%パラホルムアルデハイド−PBS中に再懸濁した。各試料からの細胞をHLA-DRに対する抗体、およびCD86およびアイソトープマッチした対照抗体で染色した。細胞をEpics XL(Beckman Coulter, High Wycombe, UK.)およびEXPO32分析ソフトウエア(Beckman Coulter)を用いてフローサイトメトリーにより分析した。
【0238】
結果
DNA結合[K]16を有する合成した束縛されたペプチドを、未熟な樹状細胞をDNAおよび脂質を有するリポポリプレックス(LID)トランスフェクション複合体でトランスフェクトするそれらの能力について試験した。結果を図4に示す。
【0239】
リポフェクチンおよび4日樹状細胞を用いるLIDフォーマット中のすべての5つの合成されたペプチド誘導体A、B、C、DおよびFのトランスフェクション効率の比較は、ペプチドA,B,およびDを最良のトランスフェクション効率を与えると同定し、すべては樹状細胞の10%以上をトランスフェクトしペプチドCはおよそ半分の価を与え、ペプチドFは不十分に挙動し、細胞の1%未満がトランスフェクトされた。図4bを参照。
【0240】
FACSにより測定したリポーター遺伝子EGFPについて陽性の細胞のパーセントで測定したトランスフェクション効率は正の対照、ペプチド6,インテグリン結合ペプチドPRETAWAおよび負の対照、ペプチド6J(ペプチド6のスクランブルバージョン)のそれの約1.5倍レベルまで、ファージ由来ペプチドA(SHVKLNS)の使用により増加した。ペプチドB(APSNSTA)はペプチド6のそれと等しいレベルのトランスフェクションレベルを与えた。トランスフェクトされた細胞のパーセントは、多分樹状細胞におけるトランスフェクション過程の毒性効果のため5%に達しなかった。
【0241】
DNA結合〔K〕16ドメインを有する合成された4つのコンストレインされたペプチドA,B,CおよびDを、商業的に利用できる脂質リポフェクチンおよびリポフェクタミンを含むリポポリプレックス(LID)トランスフェクションにおける4日の未熟な樹状細胞をトランスフェクトするそれらの能力について試験した。図5a参照。リポフェクチンを用いた場合、すべてのペプチドはペプチド6(インテグリン結合細胞)のそれを超えるトランスフェクション効率を得た。ペプチドAは17%という最高の効率を得、ペプチドBおよびDは11%の陽性の細胞を得、Cは約7%陽性であり、ペプチド6および非ペプチド対照で達成された2%の少し上であった。脂質を用いなかった場合、ペプチドAについてトランスフェクションは1%以下であり、複合体の効率のための脂質の重要性を証明する。
【0242】
リポフェクタミン2000は、3%陽性の細胞を与えたペプチド6を除いて、リポフェクチンより低いトランスフェクション効率、5および8%の間を与えた。毒性はすべての場合に高く(図5b参照)40および53%の間であり、リポフェクチンは、リポフェクタミンが、リポフェクチンより顕著により毒性であるペプチドCおよびペプチドなしの場合を除いてリポフェクタミン2000と似たレベルの毒性を与えた。この毒性は実験間で変化し、リポフェクチンは17-46%の間、リポフェクタミン2000は26-53%の間の細胞死であった。メタフェテンを製造者の指示に従って用いた場合、ずっと高いレベルの細胞死、78-84%の間が見られ、脂質の選択はトランスフェクション後の細胞死にひどく影響しうることを示唆する。
【0243】
3日の樹状細胞のトランスフェクション効率は、7%EGFP陽性細胞で対照ペプチド6(14%の効率を与えた)を除いて4日樹状細胞よりかなり低かった。細胞死はすべての試料で28および48%の間で高く、リポフェクチンはリポフェクタミン2000より毒性が僅かに低かった。図6b参照。
【0244】
標的ペプチドを用いる単球のトランスフェクションはペプチド6を用いるトランスフェクションに匹敵する効率を与え、ペプチドA、BおよびDはトランスフェクトされた細胞の最高のパーセントを与えたが(図7a参照)、レベルは4日樹状細胞より低く、僅か6%がEGFPについて陽性の最高のパーセントであった(ペプチドAをリポフェクチンと組み合わせる)。毒性はほとんどの場合5および14%の細胞死であった(図7b参照)。但しペプチドFまたはペプチドなしをリポフェクチンと共に用いた場合は除き、それらの細胞死はそれぞれ25%および20%に上昇した、興味深いことに、これらはトランスフェクション効率が最低の条件であった。
【0245】
未熟な4日樹状細胞のトランスフェクションは細胞表面でのHLA−DRおよびCD86分子の上方調節をもたらし、樹状細胞の活性化が生じつつあることを示す。EGFP陽性および陰性の両方の細胞は上方調節されたマーカーを示し、すべてではないトランスフェクトされた樹状細胞は上方調節されたマーカーを示し、トランスフェクション過程およびEGFPの発現のないことは活性化の原因であることを示唆する。
【0246】
LPSを用いるトランスフェクション後の樹状細胞の成熟は、LPSなしのトランスフェクトされた樹状細胞と同程度のHLA−DRおよびCD86の上方調節を示したが、LPSとインキュベートしたトランスフェクトしない樹状細胞に比べ低い程度の活性化であり、トランスフェクションは活性化に僅かに阻害的効果を有し得ることを示唆する。4日または6日の細胞に対するLPSの添加は活性化レベルに小さい影響を有し、CD86は細胞が、4日に比べ6日でLPSとインキュベートした場合僅かに小さい活性化を示した。
【0247】
他の細胞タイプの場合、トランスフェクション効率は存在するタンパク質1mgあたりのルシフェラーゼ活性により測定した。試験したすべての細胞系、即ちHMEC−1,HAEo−、およびN2a細胞において、少なくとも1つのペプチドがペプチド6で見られたのと等しいか、または以上のトランスフェクション効率を与えた。
【0248】
HMEC−1細胞においてはペプチドAはペプチド6で見られたのとほぼ等しいトランスフェクション効率を与えたが、ペプチドBはペプチド6の1.5倍効率を増加させることができる。図10参照。
【0249】
HAEo−細胞においては、ペプチドAは最高のトランスフェクション効率、ペプチド6で見られたそれのおよそ2倍を与え、ペプチドBを用いる効率はペプチド6を用いたそれ1.5倍であった。図11参照。
【0250】
Neuro2A(N2a)においては、ペプチドAのみがペプチド6を用いる場合に見られたのと等しいトランスフェクション効率を与え、ペプチドBは半分以下の効率を与えた。図12参照。
【0251】
実施例3:再標的化アデノウイルス
材料および方法
(i)マウス骨髄由来樹状細胞
マウス樹状細胞を5週齢A/Jマウスの大腿骨および頸骨の髄腔から流した全骨髄から調製し、10%FCS,ペニシリンおよびストレプトマイシンおよび2ng/mlの組み換えGM−CSFを補ったHepes緩衝RPMI+Glutax(InVitrogen, Paisley, U. K.)中で培養した。サイトカインを3日に同じ濃度まで添加死、樹状細胞を6日にMACs CD11cマイクロビーズ(Milteny Biotec, Bisley, UK)により浮いている細胞画分から単離した。
【0252】
(ii)マウスScal+ve幹細胞
マウス骨髄細胞を上のように単離しScal+ve細胞をMACs Scalマイクロビーズ(Milte nyi Biotec, Bisley, U. K.)を用いて単離した。これらの細胞を、30%FCSおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含んだGlutamax-1および次のサイトカインネズミSCF(50 ng/ml; Preprotech, London, UK)、IL−6(20ng/ml; Preprotech, London, UK)およびFlt3−L(10ng/ml)(R&D Systems, Oxford, U. K.)と共に、7x104細胞/RPMI中の500 lでプレートした。
【0253】
(iii)再標的化アデノウイルス/組換えアデノウイルスの製造および定量
ペプチドA〜Fを有し、またはキャプシドの線維タンパク質のHI領域に挿入された再標的化アデノウイルスタイプ5(Ad5)を構築し、Nicklin 2001 Mol Ther 2001 Dec;4(6):534-42に記載された方法を用いてDr Dan von Seggern, Scripps Research Institute, California, USAの実験室で生産した。
【0254】
線維タンパク質のHIループに挿入されたDC結合タンパク質を有するAd5粒子を実質的に以前に記載したように製造した。ペプチド配列SHVKLNS ( 5' CC GGA AGC CAC GTG AAG CTG AAC AGC G 3' および 5' CC GGC GCT GTT CAG CTT CAC GTG GCTT 3') または APSNSTA ( 5' CC GGA GCC CCC AGC AAC AGC ACC GCC G 3' および 5' CC GGC GGC GGT GCT GTT GCT GGG GGCT 3')をコードする相補的オリゴヌクレオチドを合成した(Operon Technologies, Alameda CA U. S. A.)。オリゴペアをキナーゼ化し、アニールし、pDV137のユニークなBspE1部位に結合し、CAR結合およびHIループ中のリンカー/制限部位をブロックしてpDV178(SHVKLNS)およびpDV179(APSNSTA)を作る2重ポイント変異体を有するAd5線維タンパク質をコードする発現構築物を作った。配列確認の後、そのプラスミドを用いて、上記のように293細胞に一時的にトランスフェクションすることにより線維を除いたベクターAd5.GFP. Fをtrans補足した。ウイルス粒子を凍結/解凍溶解およびCsClグラジエント遠心分離により精製し、40mM TRIS−pH8.1/0.9%NaCl/10%グリセロール中で透析し、−80℃で貯蔵した。ウイルスをBSA標準に対するタンパク質アッセイ(BioRad, Hercules CA, U. S. A.)により、そして1μgのウイルスタンパク質は4x109ウイルス粒子に等しいという関係を用いて定量した。
【0255】
(iv)アデノウイルスを用いる形質導入
ペプチドAまたはBを有する再標的化アデノウイルスを以下に記載する形質導入実験に用いた。野生タイプのアデノウイルスタイプ5およびKO1線維を有するタイプ5アデノウイルスはすべてDr Dan von Seggernにより提供され、Nicklin 2001 Mol Ther 2001 Dec;4(6):534-42)に記載のように、対照として用いた。
【0256】
(a)樹状細胞の形質導入
6日樹状細胞(上記実施例1(v)参照)またはマウス骨髄由来樹状細胞またはScal+ve幹細胞((i)および(ii)参照)500μlの完全培地中で48ウエルプレート中でウエルあたり5x104細胞でプレートし、3時間37℃で静置した。形質導入は完全培地中で行い、ウイルスは24時間の間100000ウイルス粒子/細胞で添加した。細胞をかき取り、650g(2000rpm)で5分間スピンダウンし、300μlのPBS中に再懸濁し、分析前に氷上で保った。GFP陽性の細胞のパーセントにより測定したウイルス形質導入はFACS分析により測定した。生存力パーセントを測定するため、10μlの7−アミノ−アクチノマイシンD(7AAd; Sigma, Poole Dorst)を分析の直前に添加した。
【0257】
マクロファージのウイルス形質導入は、2.5%のFCSを含む培地中で10,000粒子/細胞で行った。他の細胞タイプについては、細胞を適当な培地中で24ウエルプレート中でウエルあたり5x104細胞で一晩接種した。アデウイルス10,000ウイルス粒子/細胞、ウエルあたり1mlでOptiMEM中で3回添加し、24時間、37℃でインキュベートした。次に細胞をPBSで2回洗浄し、トリプシン化し、3回のウエルをプールし、350gで5分間スピンダウンし、300μlのPBS中に再懸濁した後、細胞生存力を測定するフローサイトメトリーにより分析し、10 lの7AADを分析の直前に添加した。
【0258】
細胞を結果の計算のため3回の別の形質導入実験からプールした。
【0259】
(b)ヒト一次マクロファージの形質導入
1次マクロファージ以下に記載のように末梢血液単球から作った。
【0260】
10mlの末梢血液をHBSSで1:1に希釈し、次にLymphoprep(Nycomed)上に層にし、750gで30分間スピンアウトし、精製したリンパ球を界面から単離した。過剰のLymphoprepを、細胞を250gで10分間遠心分離することにより除き、存在する血小板をHBSS中で洗浄し、1200rpmで10分間細胞を遠心分離することにより除いた。次に単球を製造者のプロトコールに記載のようにMACs CD14マイクロビーズを用いて単離した。単核細胞を10%FCS,RPMI中で1−2時間、25cm3フラスコ(10mlの血液あたり1フラスコ)にプレートした後、上澄みを除き、新鮮な10%FCS,RPMI+10ngMCSF(マクロファージコロニー刺激因子)を添加した。半分の培地を新鮮な10%FCS,RPMI+MCSF(10ng/ml)で48時間後置き換え、細胞をウエルから引きはがすことにより収穫し、6日に用いた。
【0261】
ウイルス形質導入は2.5%FCSを含む培地中で10000粒子/細胞で行った。GFP陽性細胞のパーセントにより決定したウイルス形質導入はFACS分析により測定した。細胞を結果の計算のため3つの別の形質導入実験からプールした。
【0262】
(c)他の細胞タイプの形質導入
N2a細胞、HAEo−細胞、HMEC−1細胞およびHepG1細胞を再標的化したアデノウイルスで形質導入した。N2a細胞、HAEo−細胞、HMEC−1細胞は上の実施例2(iii)(a)に記載した源から得た。HepG1細胞はLGC Promochem, Teddington, Middlesex, UKから得た。
【0263】
これらの他の細胞タイプの形質導入のために、細胞を適当な培地中で24ウエルプレート中でウエルあたり5x104細胞で一晩接種した。アデノウイルスはOptiMEM中に10000ウイルス粒子/細胞、ウエルあたり1ml、3回添加し、37℃で24時間インキュベートした。次に細胞を2回PBS中で洗浄し、トリプシン化し、3回のウエルをプールし、1200rpmで5分間遠心分離し、300μlのPBS中に再懸濁した後、FACSにより分析した。細胞生存可能性を測定すべき場合、10μlの7−アミノ−アクチノマイシンD(7AAD; Sigma, Poole, Dorset)を分析直前に添加した。細胞を結果の計算のため3つの別の形質導入実験からプールした。
【0264】
(d)再標的化アデノウイルスで形質導入後の6日の未熟な樹状細胞の成熟とフェノタイピング
6日の未熟な樹状細胞を再標的化したAdまたはAd5で完全培地中で24時間、細胞あたり100,000粒子で感染させ、E.coli 026:B6リポポリサッカライド(LBS)を3時間のインキュベーションの後50ng/mlの濃度で添加した。対照として、樹状細胞を完全培地で24時間インキュベートするか、完全培地中で24時間LPSの添加により成熟させた。すべての試料において、IL−4およびGN−CSFがそれぞれ25ng/mlおよび100ng/ml存在した。細胞を次に次の様に染色することにより表現型化した。2ml以下の容積の培地中に最小5x104の細胞を推奨される量の抗体に添加し、氷上で20分インキュベートした。2mlの氷冷PBSを添加後、300gで5分間4℃で遠心分離した。上澄みを飛ばし、ペレットを300 lの冷pBS中に再懸濁した。各試料からの細胞をHLA−DR、CD40,CD80,Cd83,CD86に対する抗体およびイソタイプにマッチした対照抗体で染色した。細胞の生存可能性も測定する場合、10 lの7AADを分析の直前に添加した。細胞をEpics XL(Beckman Coulter, High Wycombe, UK)およびEXPO32分析ソフトウエア(Beckman Coulter)を用いてフローサイとめとりーにより分析した。
【0265】
結果
アデウイルス形質導入
Ad5ベクターの貧弱な樹状細胞DC伝染性は細胞表面上にAd5線維受容体(CAR)の欠如によることが示された。線維タンパク質を向け直して樹状細胞を結合するために、SHVKLNSまたはAPSNSTAペプチドを改変したAd5線維タンパク質のHIループ中に遺伝的に挿入した。この線維もCAR結合をブロックすることが以前に示されている2重ポイント変異(KO1)の包含により「脱標的化」された。生じた線維で偽タイプ化したGFP−マークしたAd5粒子の感染性を修飾しないAd5線維の場合のそれと、またはKO1変異のみを含む線維と比較した。
【0266】
完全培地中の100000ウイルス粒子/細胞で2つの異なるドナーからの未熟樹状細胞への再標的EGFPリポーター遺伝子を有するアデノウイルス構築物の遺伝子導入をFACSにより測定した。両方のドナーにおいて、ペプチドAまたはBのどちらかによるアデノウイルスの再標的化は64%および79%の間、例えば78.9%の形質導入効率を与え、両方は、キャプシド中に野生タイプ線維タンパク質を有するアデノウイルス、43および46%の間、と比較して、顕著に高いパーセントの細胞を形質導入し、KO1線維タンパク質では0.7%および1.4%の間、例えば0.7%であった。表6および図13を参照。
【0267】
顕著な毒性はいずれの形質導入でも見られず、細胞死は5%および15%の間で測定され、ウイルス間に差はなかった。
【表8】
【0268】
2.5%血清中の10000ウイルス粒子/細胞でのヒト一次マクロファージの形質導入も、ペプチドA(67.6%の細胞形質導入)またはペプチドB(34.6%の細胞が形質導入)をウイルスの外被に導入することは野生タイプの線維タンパク質(13.3%)またはKO1線維タンパク質(9.2%の細胞が形質導入された)を有するウイルスで見られた以上に形質導入効率を顕著に増加させた。表7を参照。
【表9】
【0269】
すべての他の細胞タイプにおいて、ウイルスがOptiMEM中の細胞あたり10000粒子で添加された場合、ペプチドAまたはペプチドBを有するウイルスは野生タイプの線維タンパク質または無関係なペプチドを有する線維タンパク質を有するウイルスより顕著に高い形質導入効率をもたらした。表8を参照。
【表10】
【0270】
Neuro−2A(N2a)細胞においては、ペプチドAを有するウイルスは63.5%の形質導入細胞を、ペプチドBでは53.7%を与え、一方野生タイプは24.3%,KO1は1.4%を無関係なペプチドは1.3%を与えた。
【0271】
HAEo−細胞においては、ペプチドAは82.9%の形質導入細胞を、ペプチドBでは79%を与え、一方野生タイプは45.8%,KO1ウイルスは2%を無関係なペプチドは3.2%を与えた。
【0272】
同じパターンの形質導入効率はHMEC細胞(ペプチドA95.7%、ペプチドB94.2%、野生タイプ73.3%、KO1 2.7%、無関係25.1%)、そしてHepG2細胞(ペプチドA88.5%、ペプチドB79.7%、野生タイプ63.8%、KO1 1.7%および無関係9.7%)でも見られた。
【0273】
ネズミ細胞の形質導入
SHVKLNSまたはAPSNSTAのアデノウイルスHIループへの導入は一次マウス樹状細胞の形質導入効率をそれぞれ71.7%および54.1%まで増加させ、そのレベルは野生タイプAd5(13.5%)(表6参照)で達成されたより顕著に良好なレベルであった。マウスScal陽性の幹細胞のずっと低い形質導入効率がすべてのアデノウイルス試料で達成され、SHVKLNSまたはAPSNSTAペプチドで再標的化されたアデノウイルスは、最良の形質導入効率5.4%を与え、Ad5ウイルスは2.2%の形質導入を、KO1は0.6%を与えた。ネズミ神経芽腫細胞(Neuro−2A)も野生タイプウイルスより効率的に形質導入し、野生タイプウイルスの24%と比較して、SHVKLNSおよびAPSNSTA再標的ウイルスについてそれぞれ63.5%および53.7%のGFP陽性の細胞を得た。
【0274】
樹状細胞の成熟
LPSに反応して成熟する樹状細胞の能力をウイルス的に形質導入したおよび形質導入しない試料において、5つの成熟マーカー;HLA−DR,CD40.CD83および共刺激分子CD80およびCD86を研究することにより測定した。すべての5つのマーカー(フローサイトメトリーで試験した)のレベルはLPSによる形質導入しない細胞の成熟について増加した。表9参照。
【表11】
【0275】
アデノウイルス形質導入細胞は、形質導入しない細胞とLPSに反応してマーカーにおいて同じ増加を示さなかった。CD86のレベルはウイルス感染に関係なくすべてのLPS処理細胞で増加したが、HLA−DR,CD40、CD80およびCD86の誘導は野生タイプウイルスに感染したものと比べて再標的化アデノウイルスで形質導入した細胞においては減少した(表6)。CD40の場合、少ない(0.5%)未熟な樹状細胞が検出可能なレベルを示したが、これは形質導入されないLPS成熟樹状細胞での30.2%まで増加し、似たレベルの成熟が野生タイプウイルス(26.4%)で形質導入細胞で見られた。しかしながら、再標的化ウイルスで形質導入した樹状細胞上のCD40のレベル波、野生タイプウイルスで形質導入後誘導されたそれ以下であった(SHVKLNSについて15.6%およびAPSNSTAについて9.8%)。ペプチド再標的化ウイルスが野生タイプウイルスに比べてLPSに反応して樹状細胞上で成熟マーカーの低レベルをもたらすこのパターンはHLA−DR,CD80およびCD83についても見られた。HLA−DR,およびCD83染色についてのフローサイトメトリープロットは、成熟はEGFPの最大域値まで発現するウイルス的に感染した細胞で起こり、それ以上成熟は阻害されるようであることを示す。図14参照。この効果はEGFP発現が域値を超える野生タイプのウイルスでも見られるが、多分形質導入されEGFPを発現する細胞のより多い数のため再標的化されたアデノウイルスで感染した試料でより著しい。
【0276】
実施例4 BLASTによるペプチド配列分析
ペプチドAPSNSTAおよびSHVKLNSを2つの標的ペプチドのBLAST配列分析により公知のリガンドに対する類似性について研究した。表10はペプチドAPSNSTAに対する相同性を有することが見出されたタンパク質を示す。表10において、太字でハイライトされた残基は同一性を示し、イタリックで示した残基は類似性を示す。
【表12】
【0277】
3つの異なったウイルスの受容体標的タンパク質がペプチドAPSNSTAと相同性を有することが見出された。これらのタンパク質はHIV−1のgp120(アクセッションナンバー:AAR95712)、ヒトエコウイルス-7のVP−1(EV−7)(アクセッションナンバー:AAK13411)およびヒトヘルペス6(HHV6)のgp82/105およびHHV7( アクセッションナンバー:AAF06020)であった。gp120はHIVビリオン粒子をCD4およびCタイプレクチン受容体(CLR)によって樹状細胞と結合し、一方EV−7のVP1は樹状細胞を含むたいていの細胞で発現する崩壊促進因子(DAF;CD55)を結合し、gp82−105は樹状細胞にも存在するヘパリンおよびヘパリン硫酸塩グリコプロテインに結合する。しかしながら、ペプチドの完全長の機能的タンパク質との単なる相同性はペプチドがタンパク質と同じ方法で機能するかどうかを決定するのに十分ではない。
【0278】
ペプチドSHVKLNSは多くのタンパク質と近い類似性を共有するが、いずれも可能性ある樹状細胞リガンドとして候補物ではない。
【0279】
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【図面の簡単な説明】
【0280】
【図1】プラスチックに対する結合を対照としてヒトおよびマウス樹状細胞へのファージクローンの結合の力価決定の結果を示す。図1はドナーJD,SおよびLAから得た6日ヒト単球由来未熟な樹状細胞への結合を示す。多くのファージをプラーク形成単位(pfu)として示した。結合したファージの配列決定はペプチドAPSNSTA、QLLTGAS、TARDYRL、FQSQYQK、PLMPSLS、FPRAPHH、MASISMK、DWWHTSA、SHVKLNSおよびSPALKTVを同定し、非挿入ペプチドを有するファージをも示す。
【0281】
【図2a】蛍光活性細胞ソーティング(FACS)により測定した、4日ヒト単球由来未熟な樹状細胞に対するファージクローンの結合を示す。FITCに対して陽性の細胞のパーセントをFACS分析により測定した。図2aはドナーSB,U,SH,KGおよびAMからの細胞に対する結合を示す。
【図2b】図2bはドナーA〜Eからの細胞に対する結合を示す。両方の場合において、結合ファージの配列決定はペプチドAPSNSTA、FQSQYQK、DWWHTSA、SHVKLNS、SPALKTVおよびSQKNPQMを同定した。
【0282】
【図3a】FACSにより測定した、4日ヒト単球由来未熟な樹状細胞に対するファージクローンの結合を示す。図3aはKGおよびSBからの細胞への結合を示す。
【図3b】図3bはドナーAおよびBの細胞への結合を示す。両方の場合において、結合したファージの次の配列決定はペプチドQLLTGAS、TARDYRL、PLMPSLS、FPRAPHH、MASISMK、STPPNTTを同定した。
【0283】
【図4a】脂質−ペプチド−DNA(LID)におけるファージ由来標的ペプチドを用いるヒト単球由来未熟な樹状細胞のトランスフェクションを示す。図4aはファージ由来ペプチドA誘導体([K]16−GACSHVKLNSCG)、ペプチドB誘導体([K]16−GACAPSNSTACG)、ペプチド6誘導体([K]16−GACRREEWACG)またはスクランブル対照ペプチド6J([K]16−GACATRWARECG)で6日単球由来樹状細胞のトランスフェクションを示す。ペプチドAおよびB誘導体はファージDNAに対する比で1.5:1(A1.5,B1.5)3:1(A3,B3)および7:1(A7,B7)のトランスフェクション複合体で用いた。対照はトランスフェクション複合体を添加しないもの(OptiMEMのみ)、並びにペプチド6誘導体およびペプチド6J(そのスクランブル対照)でトランスフェクションしたものをペプチド:DNAの3:1の比で含む。それぞれの結果は3つのプールしたトランスフェクション反応からのGFP陽性の細胞のパーセントである。
【図4b】図4bはファージ由来ペプチドA、B、C([K]16−GACMASISMKCQ)、D([K]16−GACFPRAPHHCG)およびF([K]16−GACDWWHTSACG)で4日の単球由来樹状細胞のトランスフェクションの結果を示す。
【0284】
【図5】脂質−ペプチド−DNA(LID)トランスフェクションベクターを用いた4日未熟な単球由来樹状細胞のトランスフェクション後のトランスフェクションと細胞死を示す(図4の注を参照)。ペプチド誘導体A,B,C,Dおよび6を用い、ペプチドを含まないベクターを対照として用いた。脂質としてリポフェクチンまたはリポフェクタミン2000を含むベクターを用い、ペプチド誘導体Aを含むベクターおよび脂質を用いないのも対照として用いた。脂質:DNAの比は重量で0.75:1であった。すべてのペプチド:DNA電荷比は7:1であった。図5bは図5aのベクターを用いたトランスフェクション後の細胞死を示す。細胞死はトランスフェクション後24時間のフローサイトメトリーにより測定した7AADの保持により測定した。
【0285】
【図6】図5の短い記述で記載した同じベクターシステムにおけるペプチド誘導体A,B,C,D,Fおよび6を用いる3日樹状細胞のトランスフェクション後のトランスフェクションおよび細胞死を示す。図6aはトランスフェクション効率を示す。図6bは細胞死を示す。
【0286】
【図7】ペプチド誘導体A,B,C,D,Fおよび6並びに対照ちしてペプチドを用いないで、図5の注に記載したLIDベクターシステムを用いてヒト末梢血単球のトランスフェクション後のトランスフェクションと細胞死を示す。図7aはトランスフェクション効率を示す。図7bは細胞死を示す。
【0287】
【図8】ペプチドAおよびリポフェクチンを含むLIDトランスフェクションベクター(図5の注を参照)でトランスフェクトした4日の未熟な樹状細胞がCD86とHLA−DRを上方調節することを示す。セル(A)の上の列はトランスフェクトしておらず、セル(B)の上の列はトランスフェクトしている。各試料からの細胞を、フローサイトメトリーの前にHLA−DRおよびCD86に対するPEコンジュゲート抗体で染色した。結果は2つの別のトランスフェクションからのプールした細胞を示し、他のドナーからの樹状細胞の場合も再現可能であった。
【0288】
【図9a】LPS(リポポリサッカライド)に反応して4日樹状細胞のトランスフェクションの成熟を示す。未熟な細胞をペプチドDおよびリポフェクチンを含みLIDベクターでトランスフェクトした(図5の注を参照)。細胞を図8のように抗体で染色した。示した結果は2つの別のトランスフェクションからのプールした細胞である。列Aは未熟な細胞を示し、列BはLPSで成熟した細胞を示す。
【図9b】列Cは4日にトランスフェクトしLPSで成熟した細胞を示し、列Dは4日にトランスフェクトし、6日にLPSで成熟した細胞を示す。
【0289】
【図10】ファージ由来ペプチドAおよびB誘導体(図4の注を参照)でのHMEC−1細胞系のトランスフェクションを示す。結果はRLU/mgで示す。RLUは比較の光単位である。ペプチドAおよびB誘導体、および対照ペプチド6誘導体およびそのスクランブル対照ペプチド6Jを用いる細胞のトランスフェクションは、3:1,5:1および7:1を含むペプチド:DNA電荷比で行われた(A3,A5,A7,B3,B5およびB7,63、65および6J5)。対照はトランスフェクション複合体を添加しない細胞(OptiMEMのみ)、インテグリン結合ペプチド(ペプチド6誘導体)でトランスフェクトした細胞、ペプチド6J誘導体でトランスフェクとした細胞(ペプチド6Jはペプチド6のスクランブルした対照である)を含む。各結果は3のプールしたトランスフェクション反応からのGFP陽性の細胞のパーセントである。各結果は6つの値の平均であり、誤差の棒は平均についての標準偏差である。
【0290】
【図11】ファージ由来合成ペプチドおよび図10について記載した対照についてのHAEo−細胞系のトランスフェクションを示す。
【0291】
【図12】ファージ由来合成ペプチドおよび図10について記載した対照についてのN2a(Neuro2a)ネズミ細胞のトランスフェクションを示す。
【0292】
【図13】ペプチドA(カラムA)またはペプチドB(カラムB)をキャプシドの線維タンパク質のHI領域に導入することにより再標的化した6日のヒト単球由来未熟な樹状細胞のトランスフェクションを、キャプシドのKO1線維タンパク質(カラムKO1)、キャプシドの野生タイプの線維タンパク質(カラムWT)、ブランクを対照として示す。暗い影にしたカラムは形質導入を示し、明るい影にしたカラムは細胞死%を示す。
【0293】
【図14a】LPSに反応して成熟する6日の樹状細胞の能力におよぼすアデノウイルス形質導入の影響を示す。未熟な樹状細胞を野生タイプのAD5で、またはペプチドSHBKLNSまたはペプチドAPSNSTAで再標的化したAD5で感染させた。LPSは3時間のインキュベートの後、添加した。上の列はHLA−DRを示し、下の列はCD83を示す。示した結果は3つの別の形質導入からプールした細胞であり、他のドナーからの樹状細胞について再現可能である。
【図14b】図14aの続きである。
【技術分野】
【0001】
本発明は樹状細胞に結合するペプチドリガンド、および改良された効率の遺伝子移転を有するとりわけベクターシステムにおけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療および遺伝子ワクチン化は、アンチセンス治療と同様に様々な病気の治療および/または予防のための興味ある可能性を提供する技術である。そのような技術は、問題の核酸を標的細胞に導入する必要がある。充分な核酸を特別な標的細胞に移転させる能力は、遺伝子治療、アンチセンス治療および遺伝子ワクチン化の発展に対する主な制限の1つとして残っている。ウイルスおよび非ウイルス核酸運搬システムの両方が提案されている。核酸は通常DNAであるが、ある場合にはRNAを用いる。
【0003】
「遺伝子」という用語は遺伝子ワクチン化および特に遺伝子治療に関連して幾分曖昧に使用されている。最初にこれに関連して「遺伝子」という用語は、例えばタンパク質のコード配列を示すのに用いられたが、その用語は有用な核酸を指すため一般的な意味で今用いられる。遺伝子治療および/または遺伝子ワクチン化に用いることができる核酸の例は、タンパク質のコード配列およびcDNAコピーおよびそのゲノムバージョンを含み、後者はイントロンそしてまたエクソン、並びに調節上流および下流配列をも含む。他の有用な核酸は、修復遺伝子および相同的組換えに関与する配列を含む。これらはRNA/DNAキメラ(Bandyopadhyay et al., 1999; Cole-Strauss et al., 1996; Kren et al., 1998; Yoon et al., 1996)またはDNAオリゴヌクレオチド(Goncz et al., 1998)等の分子であり得る。有用な核酸はプラスミドに含まれる短い配列、または核酸の組み込みを媒介する酵素をコードする核酸、例えばφC31ファージattB/インテグラーゼシステム(Groth et al., 2000; Olivares et al., 2001; Stoll et al., 2002; Thyagarajan et al., 2000; Thyagarajan et al., 2001)、および「眠れる美)」トランスポゾン/トランスポゼーズ(Yant et al., 2000)をコードする他の大きい核酸であり得る。
【0004】
DNAオリゴヌクレオチドはアンチセンス調節の目的に(Bachmann et al., 1998; Knudsen and Nielsen, 1997; Mannion et al., 1998; Woolf et al., 1995) または転写因子デコイとして(Ehsan et al., 2001; Ehsan et al., 2002; Mann et al., 1999; Morishita et al., 1995)運搬されうる。CpGの豊富なオリゴヌクレオチド配列は、ワクチン応答を押し上げるためのアジュバンドとして有用でありうる(Kreig et al,1993)。
【0005】
遺伝子治療に用い得る他の重要な新しい種類の核酸は。スモールインターフェアリング(siRNA)として知られる長さ20−30ntの2本鎖RNAを含む。哺乳動物におけるRNAインターフェアレンスは、高度の特異性を有する遺伝子発現の調節への重要な新しいアプローチとして過去2または3年に明らかになった(レビュー Shi 2003)。siRNA分子はmRNAのホモロガス領域を標的にし、次にmRNA標的の崩壊に導く保存された経路を活性化する。siRNAの作用の正確な機構は熱心な研究中であるが、哺乳動物細胞へのsiRNAの適用は機能的ゲノムの分野に革命を起こす可能性を有する。哺乳動物細胞での遺伝子の発現を簡単に、効果的に、そして特異的に下方調節する能力は、巨大な科学的、商業的、そして治療的可能性を保持する。
【0006】
現在有効なsiRNA標的を予言する方法はなく、非常に多くの配列のスクリーニングが行われ、非常に多くの可能性のある分子をスクリーニングしなければならない。そのようなスクリーニングは、非ウイルスベクターにより運搬される化学的に合成したsiRNA分子で最も便利に行われる。siRNAトランスフェクションのための改良されたベクターは、価格効果性そしてまたより大きい機能性という利益を提供する。動物モデルにおけるsiRNAのインビボの使用は開発のおおいに早期の段階にあるが可能性も巨大である。
【0007】
核酸を細胞に移動させる2つの主な様式がある。即ち裸の核酸の移動およびベクターを媒介する移動である。非ウイルス性または合成ベクターは3つの主なグループがある。脂質ベクター(リポレックスベクター)、ペプチド、デンドリマーおよびポリエチレンイミン(PEI)を含む他の非脂質性カチオン性ポリマ−を含むベクター(ポリプレックスベクター)、カチオン性ポリマ−および脂質の両方を含むベクター(Felgner et al., 1997)。標的にするベクターはウイルスベクターおよび受容体標的合成ベクターを含む。
【0008】
遺伝子導入、並びに従って遺伝子治療および遺伝子ワクチン化に一般的に用いるウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)の遺伝的に操作された複製に欠陥のある誘導体を含む。それらは、ウイルスがトロフィックである、即ち天然の受容体を含む細胞の種類において、インビトロで、そしてある場合にはインビボで高効率の遺伝子導入を一般的に示す。しかしながら、遺伝子導入はウイルスに対する天然の受容体を含まない細胞タイプでは不十分である。更に、レトロウイルスは、素早く分裂するトランスデューシング細胞に限定される。更に、たいていのウイルスベクターは、核酸に対するパッケージ容量が限定される。例えば、AAV 5kb;アデノウイルス 7−8kb;ヘルパー依存性アデノウイルス 35kb;およびレトロウイルス10kbである。HSVは135kbまでのずっと大きい構築物をパッケージできる(Wade-Martins et al., 2003)。複製に欠陥のあるウイルスベクターを製造する方法は一般的に長いプロセスであり、ある場合にはウイルスの収率は低い。
【0009】
受容体媒介遺伝子導入は受容体媒介エンドサイトーシスの生理学的な細胞の過程を利用して核酸を自己のものとする遺伝子導入の非ウイルス方法である。例としてはインスリン受容体に対して標的とするベクター(例えばRosenkranz et al Experimental Cell Research 199, 323-329 (1992)を参照)ベクター、アシアログリコプロテイン受容体に対して標的とするベクター(例えばWu & Wu, Journal of Biological Chemistry 262, 4429-4432 (1987), Chowdhury et al Journal of Biological Chemistry 268, 11265-11271 (1993)を参照)、トランスフェリン受容体に対して標的とするベクター(例えば、Ciriel et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA88, 8850-8854を参照。)を含む。ベクターの更なる例は神経芽細胞腫細胞上の受容体を標的とするモノクローナル抗体((Yano et al, 2000))、リポソームに共役した葉酸(Reddy & Low 2000, Reddy et al. 1999)、肝臓細胞を標的とするガラクトース(Han et al. 1999 Bettinger et al. 1999)、および肝臓細胞に対するアシアロジルコプロテイン(Wu et al. 1991)を含む。
【0010】
受容体媒介非ウイルスベクターはウイルスベクターに優るいくつかの利点がある。特にそれらは病原性を欠いている。それらは特定の細胞型へ標的にした遺伝子運搬を可能にし、パッケージされる核酸分子のサイズに限定されない。遺伝子発現は、トランスフェクション複合体の核酸成分がエンドソームから、細胞液に無傷で放出され、次に核膜を横切り核転写機構にアクセスする時にのみ達成される。しかしながら、トランスフェクション効率は、核酸成分のエンドソーム分解、核酸が核に入るのに失敗すること、およびクラスリン被覆小孔から約150nmより大きい凝集物の排除のために、ウイルスベクターに比べて一般的に悪い。
【0011】
ベクターについての標的にするリガンドの望ましい性質は、それらが細胞表面の受容体に高い親和性および特異性で結合すべきであり、効果的なベクター自己化を媒介すべきことである。短いペプチドは標的リガンドとして特別な利点を有する。何故ならそれらは高純度で合成することが簡単であり、重要なことはインビボ使用でそれらが低い免疫原性を有するからである。
【0012】
WO98/54347はインテグリン結合性成分、ポリカチオン性核酸結合成分および脂質成分を含む混合物を開示し、
(i)核酸、特に問題の配列をコードする核酸、
(ii) インテグリン結合性成分、
(iii) ポリカチオン性核酸結合成分、および
(iv)脂質成分
を含むトランスフェクション複合体をも開示する。
トランスフェクション複合体は主としてインテグリン媒介トランスフェクションベクターである。
【0013】
WO98/54347に記載された成分は静電的に会合し、ベクター複合体を形成すると考えられ、そのベクターはリポポリプレックス型である。WO98/54347のベクター複合体はある範囲の細胞系および初代細胞培養を高効率で、インテグリン特異的に低毒性でトランスフェクトすることが見出された。例えば血管平滑筋細胞を50%の効率で、内皮細胞を30%の効率で、造血細胞を10%の効率でトランスフェクトする。更に、ラットの肺およびブタの肺の気管支上皮のインビボトランスフェクションはアデノウイルスベクターのそれと匹敵する効率を有することが示された。
【0014】
遺伝子移転を媒介するインテグリン受容体を用いるベクターは、それらがインテグリン受容体が比較的広くゆきわたっているので、身体の多数の様々なタイプの細胞を標的にする利点を有する。例えば、ある環境においては、インビトロ処理においてはしかしながら、より特異的に受容者の細胞を標的にすることが好ましいかも知れない。
【0015】
樹状細胞は免疫系のもっとも強力な抗原提示細胞であり、ナイーブなT細胞クローンを刺激することができる唯一の抗原提示細胞である。ナイーブなT細胞クローンはMHCにより提示された抗原性ペプチドばかりでなく、共刺激分子を結合することも必要である。未熟な樹状細胞の主な機能は周囲の環境からの抗原取り込みである。危険シグナルに細胞がさらされると成熟が起こり、その細胞の機能は抗原取り込みからMHC分子上へのペプチド提示に変化する。これは樹状細胞のリンパ節への運搬と組み合わさる。樹状細胞がリンパ節内に入った時完全な成熟が起こり、成熟樹状細胞の注入または他の投与は細胞のホーミングの障害を起こす。
【0016】
未熟な樹状細胞の形質導入またはトランスフェクションはサイトカイン遺伝子の導入を可能にし、免疫応答を増加させながら、それらが注入された環境から取り込んだペプチドの提示を可能にする。
【0017】
非ウイルスベクターを用いる未熟な樹状細胞への形質導入の効率は、部分的には毒性のため低かった。アデノウイルスを用いる未熟な樹状細胞へのトランスフェクションの効率は、少なくとも部分的には、未熟な樹状細胞表面での主たるアデノウイルス受容体、コックスサッキー−アデノウイルス受容体(CAR)の少量のため高い力価を必要とした。非ウイルスベクターを用いて、効率は用いる脂質を変えることにより増加した、樹状細胞のアデノウイルス形質導入を増加させるために様々な戦略が試みられ、これには2特異的抗体断片(scFV) (Brandao 2003)を用いる標的化を含む。より少ないアデノウイルスとより短い形質導入時間は、臨床目的のための ex vivo形質導入のため好ましいであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
高められた細胞標的性を有する改良されたベクター複合体を提供するのが本発明の目的である。本発明は、従来のリガンドより、より細胞型選択的であるリガンドを有する合成の標的非ウイルス性ベクター複合体の開発に基づく。
【0019】
効果的な標的ベクターの開発においては数個の異なる標的結合リガンドを用いることができるのが有用である。効果的な標的化されたトランスフェクションは良好な標的化ばかりでなくベクター核酸の標的細胞の核への効果的な同入をも必要とする。リガンドが標的化および標的細胞への結合において効果的であるとしても効果的な遺伝子トランスフェクションは必ずしも起こらない。その理由は現在明らかではない。したがって、標的細胞に効果的に結合するリガンドが効果的なトランスフェクションをもたらすかどうかに関しαある程度の非予測可能性がある。従って、有効なトランスフェクションリガンド選択されうるいずれかの特別な細胞表面受容体に対する利用可能なリガンドの「プール」を有することが望ましい。そのような選択は、例えばリポーター遺伝子を用いる遺伝子運搬アッセイにより、またはいずれかの他の適当な手段により起こりうる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は特殊なアミノ酸モチーフを含むペプチドの同定に基づき、そのペプチドはヒトの未熟な樹状細胞に結合する。同定されたペプチドモチーフはヒト樹状細胞への結合を媒介し、他の型の細胞への結合をも媒介する。
【0021】
本発明は、
a)PX1X2X3T(配列番号1)
b)PSX4S(配列番号2)
c)QX5X6X7Q(配列番号3)
d)SX8S(配列番号4)
から選択されるアミノ酸配列を有する、よりなる、または含むペプチドに関する。
式中、X1、X2、X3は同一または異なっていてもよく、それぞれアミノ酸残基を表し、X4は、アミノ酸残基を表し、X5およびX7は同一または異なっていてもよく、それぞれアミノ酸残基を表し、そしてX6はアミド側鎖、例えばNまたはQを有するアミノ酸残基を表わし、X8は脂肪族側鎖、例えばLまたはIを有するアミノ酸残基を表す。
【0022】
慣用の1文字省略をアミノ酸を表すために用いる。
【0023】
本発明は、核酸または他の分子、例えば治療的にまたは薬学的に活性な分子、または細胞に対して検出可能な標識を含む分子であり得る物質を標的とする本発明のペプチドの使用を提供する。
【0024】
本発明は、式A−B−C
(式中、Aは本発明のペプチドであり、Bは化学結合またはスペーサー要素であり、そしてCは,ポリカチオン性核酸結合性成分である)
のペプチド誘導体をも提供する。
【0025】
本発明は更に、
(i)脂質成分
(ii)ポリカチオン性核酸結合性成分および
(iii)本発明のペプチド
を含むトランスフェクション混合物を提供する。
【0026】
本発明は更に、
(i)脂質成分
(ii)ポリカチオン性核酸結合性成分
(iii)本発明のペプチド
(iv)核酸
を含む非ウイルス性トランスフェクション複合体を提供する。
【0027】
本発明のトランスフェクション混合物またはトランスフェクション複合体において成分(ii)および(iii)は、好ましくは本発明のペプチド誘導体の形である。
【0028】
本発明はウイルスベクターをも提供し、そのベクターは本発明のペプチドを含む。
【0029】
1つの態様において、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターに、例えばアデノウイルスタイプ5のキャプシド中の繊維タンパク質のHI領域に、本発明のペプチドを導入することにより天然のCAR受容体から再標的化されたアデノウイルスである。
【0030】
本発明は本発明のトランスフェクション混合物、トランスフェクション複合体、およびウイルスベクターの製造方法をも提供する。
【0031】
本発明は更に医薬組成物を提供し、その組成物は医薬的に適当な担体と混合して、または結合して、トランスフェクション混合物、トランスフェクション複合体、またはウイルスベクターを含む。
【0032】
本発明は更に、遺伝子の欠陥および/または欠乏によりヒトまたは非ヒト動物において起こる状態の治療または予防の方法を提供し、その方法はヒトまたは非ヒト動物に本発明のトランスフェクション複合体およびウイルスベクターを投与することを含む。
【0033】
本願明細書で使用する「遺伝子の欠陥および/または欠乏」という用語は、遺伝子のコード領域における欠陥および/または欠乏のみならず、遺伝子の調節因子、例えばトランスおよびシスの調節因子の欠陥および/または欠乏、または直接的か間接的かを問わず遺伝子の転写または翻訳に関与するいずれかの他の因子の欠陥および/または欠乏をもしめす。
【0034】
本発明はヒトまたは非ヒト動物の治療的予防的免疫化方法を提供し、その方法は、ヒトまたは非ヒト動物に対するアンチセンス核酸を含む本発明のトランスフェクション複合体、またはウイルスベクターを投与することを含む。
【0035】
本発明は、アンチセンス治療の方法を提供し、その方法は、核酸がアンチセンス治療での使用に適した核酸である、ヒトまたは非ヒト動物に対する本発明のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターを投与することを含む。
【0036】
本発明は更に、医薬またはワクチンとしての使用のための本発明のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターを提供する。
【0037】
本発明は、ヒトまたは非ヒト動物において遺伝子の欠陥および/または欠乏により起こる状態の予防のための、治療的または予防的免疫化のための、またはアンチセンス治療のための薬剤の製造のための本発明のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターの使用を提供する。
【0038】
本発明は更に、
(i)核酸
(ii)脂質成分
(iii)ポリカチオン性核酸結合性成分
(iv)本発明のペプチド
を含むキット;
(i)核酸
(iii)ポリカチオン性核酸結合性成分
(iv)本発明のペプチド、
を含むキット;そして
(ii)脂質成分
(iii)ポリカチオン性核酸結合性成分
(iv)本発明のペプチド、
を含むキットを提供する。
【0039】
本発明のキットにおいて、成分(iii)および(iv)は好ましくは上に記載したように本発明のペプチド誘導体の形である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明は、特殊なアミノ酸モチーフを含むペプチドの同定に基づき、そのペプチドは樹状細胞に結合する。同定されたペプチドモチーフは、ヒトの未熟単球由来樹状細胞、およびヒト一次マクロファージ、N2a細胞(ニューロ2A細胞ともよばれる)、マウス神経芽細胞腫細胞系、HAEo−細胞(ヒト気道上皮細胞系)、HepG2細胞(ヒト肝細胞細胞系)を含む他のタイプの細胞系、並びに骨髄由来樹状細胞およびScal+veマウス幹細胞を含むマウス一次細胞への結合を媒介する。
【0041】
本発明は、
a)PX1X2X3T(配列番号1)
b)PSX4S(配列番号2)
c)QX5X6X7Q(配列番号3)
d)SX8S(配列番号4)
から選択されるアミノ酸配列を有する、よりなる、または含むペプチドに関する。
式中、X1、X2、およびX3は同一または異なっていてもよく、それぞれアミノ酸残基を表し、X4は、アミノ酸残基を表し、X5およびX7は同一または異なっていてもよく、それぞれアミノ酸残基を表し、そしてX6はアミド側鎖、例えばNまたはQを有するアミノ酸残基を表表わし、X8は脂肪族側鎖、例えばLまたはIを有するアミノ酸残基を表す。
【0042】
ペプチドそれ自体に関する本発明の態様において、本発明は、そのペプチドは天然に存在する完全長タンパク質である、配列番号1,2,3または4のアミノ酸配列を含むペプチドを含まない。
【0043】
慣用の1文字省略をアミノ酸を表すために用いる。そのシステムによればAはアラニン、Rはアルギニン、Nはアスパラギン、Dはアスパラギン酸、Cはシステインまたはシスチン、Gはグリシン、Eはグルタミン酸、Qはグルタミン、Hはヒスチジン、Iはイソロイシン、Lはロイシン、Kはリシン、Mはメチオニン、Fはフェニルアラニン、Pはプロリン、Sはセリン、Tはトレオニン、Wはトリプトファン、YはチロシンおよびVはバリンを表わす。本明細書では「X}は、任意のアミノ酸を表わすために用いる。
【0044】
ペプチドPX1X2X3T(配列番号1)において、X2は、例えばNまたはLであり得、ペプチドPXNLXT(配列番号39)を与え、時々生ずるモチーフである(下記参照)。X1は例えばS,A,またはPであり得る。X3は例えばS,KまたはTであり得、またはAであり得る。
【0045】
X2がLであるペプチドPX1X2X3TはPX1LX3T(配列番号5)である。X1およびX3は同一または異なり、上に定義した通りである。例えば、X1はS,A,またはP,例えばAであり得る。例えば、X3はS,K,またはY,例えばKであり得る。PX1LX3Tの例はPALKT(配列番号6)である。
【0046】
ペプチドPX1X2X3T(配列番号1)においてX2はNであり得、そのペプチドはPX1NX3T(配列番号7)であり、時々起こるモチーフである(下記参照)。X3は例えばSまたはT,例えばSであり、PXNT/ST(配列番号40)を与え、時々生ずるモチーフである(下記参照)。X1およびX3は同一または異なる。X1は例えばSまたはP,例えばSである。X1およびX3の両方がSであり得る。ペプチドPX1NX3Tの例はペプチドPSNST(配列番号8)、およびPPNTT(配列番号9)である。
【0047】
ペプチドPX1X2X3T(配列番号1)はN末端および/またはC末端に1以上の更なる残基を含ンでもよい。例えば、ペプチドPX1X2X3T、上記の配列番号1のいずれかは更なる残基、例えばAまたはY残基を含んでもよい。そのようなペプチドはPX1X2X3TX9(配列番号10)を有し、X9はアミノ酸残基、例えばAまたはVを表す。そのようなペプチドの例はPX1LX3TX9(配列番号11)およびPX1NX3TX9(配列番号12)である。
【0048】
独立に、ペプチドPX1X2X3TはN末端に更なる残基を有してもよく、そのペプチドは配列X10PX1X2X3T(配列番号13)(式中、X10はアスパラギン酸残基、例えばA、SまたはT残基を表す)を有する。
【0049】
更なる残基がN末端およびC末端の両方に存在する場合、ペプチドX10PX1X2X3TX9のペプチド中でX10PX1X2X3TX9(配列番号14)を有し、X1、X2、X3、X9、およびX10は上に与えた好ましい意味を有する。
【0050】
更なる残基を有する配列番号1のペプチドの例はAPSNSTA(配列番号15)、SPALKTV(配列16)、およびSTPPNTT(配列番号17)を含む。そのようなペプチドの変異体はN−末端および/またはC末端残基が省略される。
【0051】
ペプチドPSX4S(配列番号2)においてX4は、例えばNまたはLであり得る。ペプチドPSX4Sの例はPSNS(配列番号18)およびPSLS(配列番号19)を含む。
【0052】
ペプチドPSX4Sは独立にN−末端および/またはC末端に1以上のアミノ酸残基、例えばN末端にAまたはL残基を有し、ペプチドX11PSX4S(配列番号20)を与える(式中、X11はAまたはLを表す)。そのようなペプチドALPSXS(配列番号41)であり,それは時々生ずるモチーフである。下記参照。そのようなペプチドにおいてX4はNまたはLであり得る。そのようなペプチドの例はAPSNS(配列番号21)およびLPSLS(配列番号22)を含む。
【0053】
望ましいなら、1以上の更なる残基がN末端に、例えばMLPSLS(配列番号23)およびPMLPSLS(配列番号24)におけるように、存在しうる。
【0054】
ペプチドQX5X6X7Q(配列番号3)において、X6はNまたはQ残基であり得る。そのようなペプチドはQXN/QXQ(配列番号42)であり、時々生ずるモチーフである。X3は例えばKまたはSであり得る。X5は例えばPまたはYであり得る。
【0055】
ペプチドQX5X6X7Qは、独立にN−末端および/またはC末端に1以上のアミノ酸残基を有しうる。ペプチドQX5X6X7Qは、例えばN末端にSまたはF残基を有し、C末端に独立にMまたはK残基を有し得る。そのようなペプチドは例えば、SQKNPQM(配列番号25)およびFQSQYQK(配列番号26)およびN−末端および/またはC末端残基が除かれている変異体を含む。
【0056】
本発明の更なるペプチドはモチーフSX8S(配列番号4)(式中、X8は脂肪族側鎖例えばLまたはIを有するアミノ酸残基である)を有する。そのようなペプチドSL/IS(配列番号43)であり、時々生ずるモチーフである。下記参照。ペプチドSX8Sは独立にN−末端および/またはC末端に1以上のアミノ酸残基を有しえる。そのようなペプチドの例はMASISMK(配列番号27)およびN−末端および/またはC末端残基の1以上が除かれる誘導体を含む。
【0057】
本発明のペプチドは長さが30までのアミノ酸であり得、またはより長くても良い。本発明のペプチドは少なくとも約5のアミノ酸を有するが、例えば配列番号2および3のペプチドの場合におけるようにより少なくても良い。一般的に本発明のペプチドは約6〜約30のいずれかの数のアミノ酸を有する。ペプチドは6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,29,または30のアミノ酸を有しえる。一般的に、本発明のペプチドは25またはそれ以下のアミノ酸、例えば20またはそれ以下、例えば15またはそれ以下のアミノ酸を有しえる。例えば本発明のペプチドは12のアミノ酸またはそれ以下、例えば10アミノ酸またはそれ以下を有する。一般的に、本発明のペプチドは5またはそれ以上を有することが好ましい。例えば本発明のペプチドは6またはそれ以上のアミノ酸、例えば7またはそれ以上のアミノ酸を有する。配列番号2を含むペプチドの場合、最小の大きさは4アミノ酸であり;配列番号1を含むペプチドの場合、最小の大きさは5アミノ酸であり;配列番号3を含むペプチドの場合、最小の大きさは5アミノ酸である。一般的に、臨床的用途の場合、免疫原性反応を避けるために短いペプチドを用いるのが好ましい。
【0058】
一般的に本発明のペプチドは、長さで100またはそれ以下のアミノ酸、例えば50またはそれ以下のアミノ酸であり、例えば100のアミノ酸またはそれ以下、例えば95のアミノ酸またはそれ以下、例えば90のアミノ酸またはそれ以下、例えば85のアミノ酸またはそれ以下、例えば80のアミノ酸またはそれ以下、例えば75のアミノ酸またはそれ以下、例えば70のアミノ酸またはそれ以下、例えば65のアミノ酸またはそれ以下、例えば60のアミノ酸またはそれ以下、例えば55のアミノ酸またはそれ以下、例えば50のアミノ酸またはそれ以下、例えば45のアミノ酸またはそれ以下、例えば40のアミノ酸またはそれ以下、例えば35のアミノ酸またはそれ以下、例えば30のアミノ酸またはそれ以下がある。典型的にはそれらは上に記載した大きさを有する。
【0059】
本発明のモチーフまたはペプチドのいずれかは公知の天然のタンパク質中に存在する限りでは(実施例4を参照)、ペプチドそれ自体に関する本発明の態様は、そのような公知の天然の完全長のタンパク質を含まない。
【0060】
本発明のペプチドは環状領域を含み得る。例えば本発明のモチーフは、1またはそれ以上のジサルファイド結合を形成することができる2またはそれ以上のシステインにより隣接されうる。
【0061】
ある場合には、ペプチドが上に記載したより大きいのが望ましい。本発明のペプチドは組み換えポリペプチドの部分または融合タンパク質、例えば所望の機能、例えばアフィニティクロマトグラフィーに適した配列を有するアミノ酸配列に融合したタンパク質の部分であり得る。融合タンパク質の更なる例は本発明のペプチドおよびウイルスキャプシドタンパク質または標的化された運搬のためのその領域、または標的目的のためペプチド表示を促進するタンパク質を含む。
【0062】
更なる融合タンパク質は本発明のペプチドおよびウイルスキャプシドタンパク質またはそのサブユニットに対する抗体を含む。抗体成分はいずれの種類の抗体であっても浴、適当な抗原結合ドメインであってもよく、およびキメラまたはヒト化抗体であってもよく、それらに由来するモノでも良い。ウイルスベクターを再標的化する場合に用いうるそのような融合タンパク質は本発明の一部である。
【0063】
本発明のペプチドは樹状細胞、特にヒト樹状細胞、例えば未熟なヒト樹状細胞およびマウス樹状細胞に結合する。従って本発明のペプチドはそのような細胞にたいする所望の物質を標的にするため用いられる。例えば本発明のペプチドは、核酸または樹状細胞に対する抗原を標的にするために用いうる。本発明のペプチドは樹状細胞に対する医薬的に活性な物質を標的にするのに用いうる。
【0064】
樹状細胞のどの受容体に本発明のペプチドが結合するのかは未だ知られていない。しかしながら、本発明のペプチドが、ヒト一次マクロファージ、N2a細胞(Neuro2A細胞、マウス神経芽腫細胞系)、HAEo細胞(ヒト気道上皮細胞系)、HepG2細胞(ヒト肝細胞系)および骨髄由来樹状細胞およびSca1+veマウス幹細胞を含む一次マウス細胞を含む他の細胞および他の種類の細胞にも結合することを我々は見出した。本発明のペプチドはそのような細胞に対して物質、例えば核酸、抗原、および医薬的に活性な物質を標的にするのに用いられ得る。
【0065】
本発明のペプチドの同定および様々な細胞型に対するその結合は容易に、例えば全細胞フローサイトメトリー、例えばFACSまたはファージの力価決定を用いるファージペプチドクローンスクリーニングアッセイにより、または問題のペプチドを有する再標的化アデノウイルスでの細胞の形質導入により、容易に決定しうる。
【0066】
本発明のペプチド、例えば樹状細胞結合成分はオリゴマーペプチドのペプチドライブラリー、例えば、一般的に同じ長さのランダムペプチドオリゴマーのライブラリーからの選択により同定しうる。原理的にはオリゴマーペプチドはいかなる長さをも有し得るが、長すぎるペプチドは化学的合成の困難性を示し、インビボで免疫原性であり、一方短すぎるペプチドは結合ドメインを有しないかも知れない。一般的に適当な標的モチーフの例は約4〜約30のアミノ酸残基を有するものである。下記参照。
【0067】
以下の実施例で詳細に記載する研究において、繊維状のファージ粒子上に提示されるランダム7マー(7つのアミノ残基を有するペプチド)を用いた。用いたその7マーライブラリーはC7Cライブラリー、即ちシステイン残基により隣接されるランダム7マーペプチドであり、New England Biolabs Incから得た。
【0068】
上記の様に、本発明の樹状細胞結合ペプチドはシステイン残基により隣接され環化を可能にする長さ7つの残基のランダムペプチド配列を含むファージディスプレーライブラリーからの選択により同定した。そのような選択方法は一般的に知られている。そのような方法によれば、ファージの懸濁液を標的細胞とともにインキュベートする。非結合のファージを次に洗い去り、次に結合ファージを、残存細胞を低pHの緩衝液で洗浄するか、細胞を溶解することにより抽出する。E.coliを次に放出されたファージで感染させ。第一ラウンドのファージの製造物を得る。そのサイクルは繰り返し、例えば3回行い、標的にするファージを豊富にするためにストリンジェンシー条件は選択の後のラウンドでは、例えば洗浄工程の数を増加させる、溶出前に低pH洗浄を導入する、および培地ブロッカーでコートしたウエルで前選択することにより増加させうる。
【0069】
ファージ増幅の連続したラウンドによる選択の後、樹状細胞に高い親和性を有するファージを更にホールセルフローサイトメトリーおよびファージ力価決定(titration)アッセイにより選択しうることを我々は見出した。
【0070】
第一の実験において細胞溶解溶出C7Cファージから得たクローンのアミノ酸配列を表1に示す。
【表1】
【0071】
上にリストしたそれぞれのペプチドは上に記載したようにそのより長いおよびより短い誘導体と同様に本発明の部分である。
【0072】
表1に示したファージクローンからの16の結合配列の分析は、4つの最小モチーフ、即ちPX1X2X3T(配列番号1)、PSX4S(配列番号2)、QX5X6X7Q(配列番号3)およびSX8S(配列番号4)を同定した。これらは樹状細胞上の受容体への結合に重要な役割を果たしている可能性があると考えられる。PX1X2X3Tは、PXXXTA/V(配列番号37)、PXNXT(配列番号38)、PXN/LXT(配列番号39)、およびPXNT/ST(配列番号40)を含む数個のモチーフを含む。PSX4Sに基づく時々起こるモチーフはA/LPSXS(配列番号41)であり、QX5X6X7Qに基づく時々起こるモチーフはQXN/QXQ(配列番号42)である。SL/IS(配列番号43はモチーフSXSの時々起こる形である。
【0073】
配列決定したクローンの中で46%は上のモチーフの1またはそれ以上を含み、最も頻繁なクローンはAPSNSTAであり3つの他のペプチド配列SPALKTV,STPPNTTおよびPMLPSLSとある程度の相同性を示す。
【0074】
ファージを回収し、未熟な樹状細胞へのファージクローン結合の各ラウンドから力価決定した。その過程を要約すると、2x1011のブロックされたファージを5x104のブロックされた単球由来の未熟な樹状細胞に氷上で1時間加えた後、細胞を3回PBS−0.05%のTween20で洗浄し、TBS pH5.5でファージを溶出し、細胞を溶解し結合されて残っているファージを収穫した。細胞溶解により収穫したファージの数はプラーク生成単位(pfu)として計算した。図1はいくつかの力価決定結果を示す。図1に示した結合したファージの配列決定は、ペプチドをAPSNSTA,QLLTGAS,TARDYRL,FQSQYQK,PLMPSLS,FPRAPHH,MASISMK,DWWHTSA,SHVKLNSおよびSPALKTVとして同定した。
【0075】
未熟な樹状細胞に結合するファージクローンの力価決定の第三ラウンドからの細胞会合画分からの81ファージクローンの配列決定は16の様々な配列を同定した。表2を参照。
【表2】
【0076】
3つの最も頻繁なファージクローンは21%(APSNSTA)、20%(DWWHTSA)および12%(SHVKLNS)存在し、残りは7%以下で存在する。ファージクローンからの16の結合配列の分析は5つの最小モチーフ、即ちPXNT/ST、PXXXTA/V、A/LPSXS、SL/ISおよびQXN/QXQを同定した。表3参照。そのモチーフは樹状細胞上の受容体への結合に重要な役割を果たし得る。配列決定したすべてのクローンの内、46%は1またはそれ以上のモチーフを含み、最も頻繁なクローンはAPSNSTAであり、3つの他のペプチド配列とある程度の相同性を示す。表3参照。
【表3】
【0077】
同一のアミノ酸は太字でかつイタリックで、類似のアミノ酸はイタリックで示す。
【0078】
たいていの場合、樹状細胞に結合するファージクローンの力価決定は、ペプチド挿入物を有するクローンは、細胞中に挿入物を有しないファージより、細胞により大きい程度で結合することを示した。2つのクローンFPRAPHHおよびMASISMKは、マウスの樹状細胞へのファージ結合の力価決定を含め、すべての力価決定において最高の数で結合した。プラスチックに対するファージ結合の数は試験したすべてのクローンについて低く、これらの実験における高力価により示されるファージ結合は細胞の結合のためであって、ウエルまたはブロッキング分子へのバックグラウンドの非特異的結合のためではないことを示唆する。
【0079】
6の最も頻繁なクローン、即ちAPSNSTA,FQSQYQK、DWWHTSA、SHVKLNS、SPALKTVおよびSQKNPQMでの5つの異なる樹状細胞ドナーからの樹状細胞へのファージ結合のFACS分析は、1つのクローンSPALKTVを除くすべてのクローンは挿入物を有しないファージクローンより高いパーセントの細胞に結合することが検出された。
【0080】
結合のパターンは、ペプチドAPSNSTA、DWWHTSA、およびSHVKLNSを含むものと同様に樹状細胞に最高量で結合する3つのクローンを同定した。そのクローンも選択から3つの最も頻繁に単離されたものであった。試験した第2のセットの6つのクローン、即ちペプチドQLLTGAS、TARDYRL,PMLPSLS,FPRAPHH、MASISMK,およびSTPPNTTを含むものについては、すべてのクローンが挿入物を有しない対照より結合されたファージについて陽性のより高いパーセントの細胞を示した。QLLTGASは他よりわずかに多い細胞に結合する。図3を参照。
【0081】
16ファージの配列のうちの5つ、即ちSHVKLNS(ペプチドA)、APSNSTA(ペプチドB)、MASISMK(ペプチドC)、FPRAPHH(ペプチドD)およびDWWHTSA(ペプチドF)は、それらが最も頻繁なクローンであり、ファージクローン結合のFACSアッセイにおけるトップのバインダーであるという根拠に基づいて合成のために選択した。
【0082】
表からモチーフがいくつかのクローンに存在することが見られる。これはこれらのモチーフが樹状細胞結合のために重要であることを示唆する。どの樹状細胞受容体にその配列が結合するのか現在のところ分からない。様々なモチーフが同じ受容体を標的にするかもしれないし、それらが樹状細胞上の異なる受容体を標的にするかも知れない。
【0083】
良好な結合は、高いアフィニティ相互作用および/または細胞表面に多数存在する細胞表面受容体の結合を示す。
【0084】
ペプチドA〜FをDNA結合[K]16ドメイン、GAC(インターおよびC末端 CGグループを有するコンストレインされた形で合成した。そのペプチド誘導体を、DNAおよび脂質を有するトランスフェクション複合体で未熟な樹状細胞をトランスフェクトするそれらの能力について試験した(「LID]または「リポポリプレックス」ベクター、Lは脂質を表わし、Iはペプチド誘導体を表わし、Dは核酸を表す)。結果を図4に示す。
【0085】
FACSにより測定したリポーター遺伝子EGFRに対して陽性の細胞のパーセントにより非最適化実験で測定した6日細胞におけるトランスフェクション効率、正の対照、ペプチド6(それはインテグリン結合ペプチドRRETAWAである)、および負の対照6J(ペプチド6のスクランブルバージョン)の約1.5倍のレベルまでファージ由来のペプチドA(SHVKLNS)の使用により増加した。ペプチドB(APSNSTA)はペプチド6のそれと等しいトランスフェクションレベルを示した。図4a参照。個々のペプチドに対する条件の最適化はトランスフェクション効率の改良をもたらすかも知れない。トランスフェクトされた細胞のパーセントはおそらく樹状細胞におけるトランスフェクション過程の毒性効果のため5%に達しなかった。
【0086】
リポフェクチンおよび4日の樹状細胞トランスフェクションを用いるLIDフォーマットにおけるすべての5つのペプチド合成誘導体のトランスフェクション効率の比較は、A,BおよびDを最良のトランスフェクション効率を与えるものとして同定し、すべては樹状細胞の10%以上をトランスフェクトし、ペプチドCはその値の約半分を与え、ペプチドFは劣って行われ、細胞の1%未満がトランスフェクトされた。図4bを参照。
【0087】
FACSにより測定したリポーター遺伝子EGFPに陽性の細胞のパーセントにより測定したトランスフェクション効率は、正の対照、ペプチド6,インテグリン結合ペプチドRRETAWAおよび負の対照ペプチド6J(ペプチド6のスクランブルバージョン)の約1.5倍のレベルまで、ファージ由来ペプチドA(SHVKLNS)の使用により増加した。ペプチドB(APSNSTA)はペプチド6のそれと等しいトランスフェクションレベルを与えた。トランスフェクトされた細胞のパーセントは、おそらく樹状細胞におけるトランスフェクション過程の毒性効果により5%に達しなかった。
【0088】
DNA結合性[K]16ドメインと共に合成した4つのコンストレインされたペプチドA,B,CおよびDを、商業的に利用できる脂質リポフェクチンおよびリポフェクタミンを含むリポポリプレックス(LID)トランスフェクションにおける4日の未熟な樹状細胞をトランスフェクトするそれらの能力について試験した。図5a参照。リポフェクチンを用いた場合、すべてのペプチドはペプチド6(インテグリン結合ペプチド)のそれ以上のトランスフェクション効率を得た。ペプチドAは17%という最高の効率を与え、ペプチドBおよびDは11%の陽性の細胞を与え、Cは7%、ペプチド6およびペプチドなしの対照で達成されたより僅か2%上であった。脂質を用いなかった場合、トランスフェクションはペプチドAについて1%未満であって、複合体の効率についての脂質の重要性を示す。
【0089】
リポフェクタミン2000は、3%の陽性の細胞を与えるペプチド6を除いてリポフェクチンより一般的に低いトランスフェクション効率、5および8%の間を与えた。毒性はすべての場合、40および53%の間で高く(図5b参照)、リポフェクチンはペプチドCおよびペプチドのない場合を除いて(その場合リポフェクタミン2000はリポフェクチンより顕著に毒性が高い)リポフェクタミン2000と類似の毒性レベルを与える。この毒性は実験の間変わり得、リポフェクチンは17〜46%の範囲で細胞死をもたらし、リポフェクタミン2000は26〜53%の範囲で細胞死をもたらす。メタフェテンを製造者の指示に従って使用した場合、ずっと高いレベルの細胞死、78〜84%が見られ(データ示さず)、脂質の選択がトランスフェクション後の細胞死にひどく影響することを示唆する。
【0090】
3日の樹状細胞のトランスフェクション効率は、7%EFP陽性細胞で低く、対照ペプチド6(それは14%の効率を与える)を除いて4日の樹状細胞よりかなり低い(図6a参照)。細胞死は28%と48%の間ですべての試料において高く、リポフェクチンはリポフェクタミン2000より僅かに毒性が低い。図6b参照。
【0091】
標的ペプチドを用いる単球のトランスフェクションはペプチド6を用いるトランスフェクションに匹敵する効率を与え、ペプチドA,B,およびDは再度最高のパーセントのトランスフェクトされた細胞を与えたが、レベルは4日樹状細胞より低く、僅か6%がEGFP(ペプチドAをリポフェクチンと組み合わす)について陽性の最高のパーセントであった。毒性は、ペプチドFまたはペプチドなしがリポフェクチンと組み合わされた場合を除いて(その場合細胞死はそれぞれ25%および20%に上昇した)、5および14の間の細胞死でかなり低かった(図7b参照)。興味深いことにこれらはトランスフェクション効率が最低である条件であった。
【0092】
未熟な4日の樹状細胞のトランスフェクションは細胞表面でのHLA−DRおよびCD86分子の上方調節をもたらし(図8参照)、樹状細胞の活性化が起こりつつあることを示す。EGFP陽性および陰性細胞の両方は上方調節されたマーカーを示し、すべてではないトランスフェクトされた樹状細胞は上方調節されたマーカーを示し、トランスフェクション過程はおよびEGFPの発現しないことは活性化の原因であることを示唆する。
【0093】
LPSを用いるトランスフェクション後の樹状細胞の成熟はLPSなしのトランスフェクトされた樹状細胞へのHLA−DRおよびCD86の類似の程度の上方調節を示したが、LPSとインキュベートしたトランスフェクトされない樹状細胞と比べて活性化の程度は小さく、トランスフェクションは活性化に僅かに阻害作用を有することを示唆する(図9更に)。4日または6日細胞に対するLPSの添加は活性化レベルに小さい影響を有し、CD86は、4日に比べて6日にLPSとともに細胞をインキュベートする場合、僅かに小さい活性化を示した。
【0094】
本発明のペプチド配列は、樹状細胞を用いて同定されたが、それらの有用性は樹状細胞での使用に限定されない。ペプチドが結合する受容体は他の細胞タイプにおいても発現しうる。本発明のペプチドが使用しうる細胞のタイプはいずれかの適当なスクリーニング方法で同定しうる。
【0095】
例えば、トランスフェクションベクターにおけるペプチドAおよびBを、他の細胞系をトランスフェクトするそれらの能力について試験した。トランスフェクション効率を存在するタンパク質1mgあたりのルシフェラーゼ活性により測定した。試験したすべての細胞系、即ち、HMEC−1,HAEo−およびN2a細胞において、ペプチドAおよびBの少なくとも1つがペプチド6,インテグリン標的ペプチドでみられたのと等しい、またはそれ以上のトランスフェクション効率を与えた。
【0096】
HMEC−1細胞において、ペプチドAはペプチド6で見られたのとほぼ等しいトランスフェクション効率を有し、ペプチドBはペプチド6のそれの1.5倍効率を増加させることができる。図5参照。
【0097】
HAEo−細胞においては、ペプチドAは最高のトランスフェクション効率、ペプチド6でみられるものの約2倍を与え、ペプチドBを用いる効率はペプチド6を用いるそれの1.5倍であった。図6を参照。
【0098】
N2a(Neuro2A)細胞においては、ペプチドAのみがペプチド6で見られるのと等しいトランスフェクション効率を与え、ペプチドBはその値の半分以下の効率を有した。図7を参照。
【0099】
更に、以下で詳細に記載する様に、本発明のペプチドはその普通の標的以外の細胞に対しウイルスベクターを再標的化するのに用い得る。
【0100】
完全培地において100000ウイルス粒子/細胞で2つの異なったドナーからの未熟な樹状細胞に再標的化したEGFP−リポーター遺伝子を有するアデノウイルス構築物の遺伝子導入をFACSにより測定した。両方のドナーにおいて、ペプチドAまたはペプチドBでアデノウイルスを再標的化することは、64および79%の間の形質導入効率を得、両方は類似の効率であり、両方はキャプシドにおける野生タイプの繊維タンパク質(43および46%の間陽性)、KO1繊維タンパク質(0.7および1.4%の間)、および無関係なペプチドを有する繊維タンパク質(12および20%の間)を有するアデノウイルスと比べて顕著に高いパーセントの細胞を形質導入した。顕著な毒性はいずれの形質導入でも見られず、その細胞死は5および15%の間で測定された(図8参照)。
【0101】
同じウイルスベクターを用いて、2.5%の血清中の10000ウイルス粒子/細胞でヒト単球由来一次マクロファージの形質導入も、ペプチドA(67.6%の細胞が形質導入された)またはペプチドB(34.6%の細胞が形質導入された)をウイルスのこと中に導入することは野生タイプの繊維タンパク質(13.3%)またはKO1繊維タンパク質(9.2%細胞が形質導入された)を有するウイルスにみられる以上の形質導入の効率を顕著に増加させた(図8参照)。
【0102】
すべての他の細胞タイプにおいて、そして同じウイルスベクターを用いて、ウイルスをOptiMEMにおいて細胞あたり10,000粒子で添加した場合、ペプチドAまたはペプチドBを有するウイルスは、野生タイプの繊維タンパク質、KO1繊維タンパク質、および無関係なペプチドを有する繊維タンパク質を有するウイルスより顕著に高い形質導入効率をもたらした。
【0103】
N2a細胞において、ペプチドAを有するウイルスは63.5%の形質導入された細胞を、ペプチドBは53.7%の形質導入された細胞を作ったが、野生タイプのウイルスは24.3%を、KO1ウイルスは1.4%を、および無関係なペプチドウイルスは1.3%を形質導入した。
【0104】
HAEo−細胞において、ペプチドAは82.9%の形質導入された細胞を、ペプチドBは79%の形質導入された細胞を作ったが、野生タイプの繊維タンパク質を有するウイルスは45.8%を、KO1ウイルスは2%を、および無関係なペプチドを有するウイルスは3.2%を形質導入した。
【0105】
同じパターンの形質導入効率はHMEC細胞(ペプチドA 95.7%、ペプチドB94.2%、野生タイプ73.3%、KO1 2.7%、および無関係25.1%)およびHepG2細胞(ペプチドA 88.5%、ペプチドB 79.7%、野生タイプ63.8%、KO1 1.7%、および無関係9.7%)について見られた。
【0106】
ペプチドSHVKLNSまたはAPSNSTAのアデノウイルスHIループへの導入は、一次マウス樹状細胞の形質導入効率を、それぞれ71.7%および54.1%まで増加させ、レベルは野生タイプのAd5(13.5%)(表6参照)より顕著に良好であった。マウスのScal陽性の幹細胞のずっと低い形質導入効率がすべてのアデノウイルス試料で達成され、SHVKLNSまたはAPSNSTAで再標的化されたアデノウイルス5.45という最良の形質導入効率、Ad5ウイルス2.2%を形質導入し、KO1は0.6%を形質導入した。ネズミ科の神経芽腫細胞(Neuro−2A)も野生タイプウイルスより効率的に形質導入され、野生タイプウイルスについての24%と比べてSHVKLNSおよびAPSNSTA再標的化ウイルスについてそれぞれ63.5%および53.7%のGFP陽性の細胞を作った。
【0107】
LPSに反応して成熟する樹状細胞の能力を、5つの成熟マーカー;HLA−DR,CD40,CD83およびコスチミュラトリー分子CD80およびCD86を研究することにより、ウイルス的に形質導入したおよび形質導入しない試料で測定した。すべての5のマーカーのレベル(フローサイトメトリーで試験)は、LPSにより形質導入しない細胞の成熟に基づいて増加した。表11参照。
【0108】
本発明は式A−B−Cのペプチド誘導体を提供し、式中、Aはポリカチオン性核酸結合成分であり、Bは化学結合またはスペーサー要素であり、Cは本発明のペプチドである。
【0109】
ポリカチオン性核酸結合成分AはDNAまたはRNAに結合できるいずれかのポリカチオンである。ポリカチオンはポリカチオンそのものでも良いが、DNAまたはRNAに結合する能力が保持されるならいずれかの数のカチオン性モノマー有しても良い。例えば、3〜100のカチオン性モノマーが存在してもよく、例えば10〜20,例えば14〜18,例えば約16のカチオン性モノマーが存在しても良い。
【0110】
核酸結合ポリカチオン分子の例は1またはそれ以上のカチオン性アミノ酸を含むオリゴペプチドである。そのようなオリゴペプチドは例えば、3〜35,例えば5〜25のリシン残基、例えば10〜20リシン残基、例えば14〜18のリシン残基、例えば16のリシン残基を有するオリゴリシン分子、例えば3〜35の、例えば5〜25の,例えば10〜20の、例えば14〜18、例えば16のヒスチジンまたはアルギニンを有するオリゴヒスチジン分子またはオリゴアルギニン分子、またはヒスチジン、アルギニン、リシン残基のいずれかの組み合わせを含み、例えば、全体で3〜35の、例えば5〜25,好ましくは例えば10〜20、例えば14〜18、例えば16残基を有する組み合わされたオリゴマーでありえる。
【0111】
例えば3〜35の,例えば2〜25のリシン残基、例えば10〜20のリシン残基、例えば13〜19の、例えば14〜18のリシン残基、例えば15〜17の、例えば16の残基、即ち[K]16を有するオリゴリシン(「K]はリシンを示す)が特に好ましい。
【0112】
ポリカチオン性成分の更なる例は、デンドリマーおよびポリエチレンイミンを含む。ポリエチレンミン(PEI)は非毒性の架橋性のカチオン性ポリマ−であり、遺伝子運搬可能性を有する(Proc. Natl. Acad. Sci., 1995, 92, 7297-7301)。ポリエチレンミンはFluka(800kDa)またはSigma(50kDa)から、またはPolyPlus−トランスフェクション(Illkirch、フランス)からトランスフェクション目的のためにあらかじめ希釈されて入手できる。典型的には、PEIはpH5〜8で、DNAの9倍過剰に用いられた場合最も有効であり、過剰比はPEI窒素:DNA燐酸として計算される。そのようなパラメーターは当業者によく知られた方法で最適化される。
【0113】
ポリカチオン性核酸結合成分は、本発明のペプチドと結合するかさもなければ付着してA−B−C(式中、Cは本発明のペプチドを表わし、Bは結合またはスペーサー要素を表わし、Aはポリカチオン性核酸結合成分を表わす)のペプチド誘導体を形成しうる。ポリカチオン性成分はペプチドのいずれかの適当な位置で結合しうる。ポリカチオン性核酸結合成分は例えば本発明のペプチドに化学的に直接結合してもよい。その場合成分Bは化学結合を表す。例えば本発明のペプチドはペプチド結合により、例えばオリゴリシンポリカチオン性核酸結合成分の場合は結合してもよい。本発明のペプチド誘導体の例は例えば本発明のペプチド、例えば上記のペプチドにペプチド結合により結合した、オリゴリシン、例えば[K]16である。本発明のペプチド誘導体の更なる例は本発明のペプチド、例えば上記のペプチドに共有結合により結合したポリエチレンイミンである。そのような共有結合は例えば、当業界で知られた方法、例えばGene Therapy, 1999, 6, 138-145を用いるジサルファイド橋またはスクシンイミヂル橋であり得る。
【0114】
他の態様では、本発明のペプチドはスペーサーを介してポリカチオン性核酸結合成分に結合し、本発明のペプチド誘導体を形成してもよい。
【0115】
スペーサー要素は一般的にペプチドである、即ちそれはアミノ酸残基を含む。そのアミノ酸は天然のまたは非天然であり得る。それらはL−またはD−立体配置を有し得る。スペーサーは2以上のアミノ酸を有しうる。それは例えば3以上、例えば4以上、例えば5以上、例えば10までのアミノ酸残基またはそれ以上のアミノ酸残基を有し得る。アミノ酸は同一でも異なってもよいが多数のリシン残基(またはベクター複合体のポリカチオン性核酸結合成分での使用に適する他のカチオン性アミノ酸)の使用は、オリゴリシン配列はポリカチオン性核酸結合成分としての活性を有するので一般的にスペーサーにおいては避けるべきである。
【0116】
スペーサーは例えばジペプチドグリシン−グリシン(GG)またはグリシン−アラニン(GA)で有り得る。一般的にはスペーサーはジペプチドスペーサーGGおよびGAより長くおよび/または疎水性であるのが好ましい。
【0117】
スペーサーはジペプチドGGおよびGAより疎水性で有り得る。例えばグリシンおよびアラニンより疎水性であるアミノ酸を用い得る。疎水性アミノ酸の例はよく知られ、ε−アミノヘキサン酸を含む。
【0118】
スペーサーはジペプチドGGおよびGAより長くまたは疎水性であり得、より長くまたはより疎水性で有り得る。後者のタイプのスペーサーの例はXSXGA(式中、Sはセリン、Gはグリシン、Aはアラニン、Xはε−アミノヘキサン酸である)。このスペーサーは高度に疎水性である。
【0119】
組み合わせたペプチド/ポリカチオン性核酸結合成分、即ち本発明のペプチド誘導体は以下で成分「I」と呼ぶ。
【0120】
本発明は、
(i)脂質成分
(ii)ポリカチオン性核酸結合性成分、および
(iii)本発明のペプチド
を含むトランスフェクション混合物を更に提供する。
【0121】
本発明は、
(i)脂質成分
(ii)ポリカチオン性核酸結合性成分、
(iii)本発明のペプチド、および
(iv)核酸
を含む非ウイルストランスフェクション複合体をも更に提供する。
【0122】
本発明のトランスフェクション混合物またはトランスフェクション複合体において、成分(ii)および(iii)は、好ましくは例えば上記のように本発明のペプチド誘導体の形である。
【0123】
本発明のトランスフェクション混合物またはトランスフェクション複合体の脂質成分はカチオン性リポソームであるかカチオン性リポソームを形成しうる。
【0124】
脂質成分はカチオン性脂質および膜不安定化またはフソジェニック性を有する脂質、特にカチオン性脂質および膜不安定化性を有する脂質の組み合わせ、より選択される1以上の脂質であり、または脂質を含む。
【0125】
好ましい脂質成分(「L])は、中性の脂質ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(本願明細書で「DOPE]と呼ぶ)であるか、または含む。DOPEは膜不安定化の性質を有し、時には「フソジェニック(fusogenic)」と呼ばれる(Farhood et al. 1995)。他の脂質、例えば膜不安定化性、特にDOPEのそれのように膜不安定化性を有する中性の脂質はDOPEの代わりに、または同様に用い得る。
【0126】
少なくとも1つの長鎖アルキル基を有する他のリン脂質、例えばジ(長鎖アルキル鎖)ホスホリピッドを用い得る。リン脂質はホスファチジル基、例えばホスファチジルアルカノールアミン基、例えばホスファチジル−エタノールアミン基を含み得る。
【0127】
更なる好ましい脂質成分はN−〔1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル〕−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(本明細書では「DOTMA]と言う)であり、または含む。DOTMAはカチオン性を有する。他のカチオン性脂質、特にDOTMAと類似の性質を有するカチオン性脂質もDOTMAに加え、または代わりに用い得る。そのような脂質は例えば3つの短鎖アルキル基と1つの長鎖アルキルにより置換された4級アンモニウム塩である。短鎖アルキル基は同一または相異なり得、メチルおよびエチル基より選択しうる。少なくとも1つのそして3つ迄の短鎖アルキル基はメチル基でありえる。長鎖アルキル基は直鎖または分枝鎖、例えばジ(直鎖アルキル)アルキル基を有し得る。
【0128】
他の好ましい脂質成分は、脂質2,3−ジオレイルオキシ−N−〔2-(スペルミジンカルボキサミド)エチル〕−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオリドアセテート(本明細書では「DOSPA]と言う)であるか、含む。類似の脂質DOSPAに加えて、またはその代わりに、特にDOSPAと類似の性質を有する脂質を用い得る。そのような脂質は例えばDOSPAにおけるそれとは異なる短鎖を有する。
【0129】
好ましい脂質成分はDOPEおよび1以上の、例えば上に記載した脂質成分を含む。特に好ましいのはDOPEおよびDOTMAの混合物を含む脂質成分である。そのような混合物はカチオン性リポソームを形成する。DOPEおよびDOTMAの等モル混合物は特に効果的であることが解っている。そのような混合物は「リポフェクチン」として一般的に知られ、「リポフェクチン」の名前で商業的に利用できる。用語「リポフェクチン」はDOPEおよびDOTMAの等モル混合物を示すのに一般的に用いる。リポフェクチンと似た性質を有するカチオン性リポソームである他の脂質混合物は用いうる。リポフェクチンは試験したすべての細胞タイプで効果的であるので特に有用である。
【0130】
更に好ましい脂質成分はDOPEおよびDOSPAの混合物を含む。そのような混合物もカチオン性リポソームを形成する。重量比3:1のDOSPA:DOPEのDOPEおよびDOSPAの混合物は特に効果的である。膜濾過した水中のそのような混合物は「リポフェクタミン」、例えばリポフェクタミン2000の名で商業的に利用できる。DOPE,DOTMAおよびDOSPAを含む混合物は、例えばリポフェクチンおよびリポフェクタミン混合物は用い得る。
【0131】
他のカチオン性脂質例えばDOTAP(Beringer-Mannheim)およびTfx範囲(Promega)中の脂質は商業的に利用できる。DOTAPはN-〔1-(2,3-ジオリルオキシ)プロピル〕−N,N,N-トリメチルアンモニウムメチルサルフェートである。Tfx試薬は合成カチオン性脂質、N,N,N',N'-テトラメチル−N,N'-ビス(2−ヒドロキシエチル)−2,3−ジ(オレイルオキシ)−1,4−ブタンジアンモニウムおよびDOPEの混合物である。すべての試薬は同量のカチオン性脂質成分を含むが、異なるモル量のfusogenic脂質液、DOPEを含む。
【0132】
しかしながら、リポフェクチンとリポフェクタミンは、DOTPAおよびTfx試薬より核酸で細胞のトランスフェクションを促進するのに著しくより効果的であるようである。
WO 03/094974(PCT/GB03/01985)は数個の脂質を記載する。そのような脂質はジカチオン性脂質、カチオン中心の間にスペーサーを導入するPEGをベースとする脂質、およびエリスリトールをベースとする脂質を含む。
【0133】
WO 03/094974に記載された脂質の2つは、一般式(I)または(II)を有する:
【化1】
(式中、
X1およびX2は同一または異なり、−OCH2−および−O−C(O)−から選択され;
R1およびR2は同一または異なり、直鎖または分枝の、飽和または不飽和のC7〜C24カルビル基であり、ヒドロキシ、ハロゲンおよびOR’から選択された1以上の置換基により置換され置換されず、R’はC1〜C6のヒドロカルビル基であり;
それぞれのR3およびR4は同一または異なり直鎖または分枝の、飽和または不飽和のC1〜C10ヒドロカルビル基であり、ヒドロキシ、ハロゲン、OR’、−C(O)OH.−CN,NR’R”,および−C(O)R”から選択される1以上の置換基により置換されまたは置換されず、R’およびR”は同一または異なり、C1〜C6のヒドロカルビル基である)
【化2】
(式中、
X1およびX2は同一または異なり、上に定義した通りである。
R1およびR2は同一または異なり、上に定義した通りである。
R5は−N+(R3)2−R6(各R3は同一または異なり、上に定義した通りである)である。
R6は
(a)−[A−Y−]−nR4
(式中、
各Yは同一または異なり、−N+(R4)2−であり、R4は上に定義した通りである
各AはC1-20アルキレン基であり、ヒドロキシ、ハロゲン、OR’、−C(O)OH、−CN,NR’R”,および−C(O)R”から選択される(R’およびR”は同一または異なり、C1〜C6のヒドロカルビル基である)1以上の置換基で置換されまたは置換されない。
nは1〜10である)、または
(b) −[B-O-]-mB−Q
各Bは同一または異なり、ヒドロキシ、ハロゲン、OR’、−C(O)OH.−CN,NR’R”,および−C(O)R”から選択される(R’およびR”は同一または異なり、C1〜C6のヒドロカルビル基である)1以上の置換基で置換されまたは置換されないC1-10アルキレン基であり、
mは1〜10であり;
Qは−N+(R3)3、−OH,OR’、−C(O)R’,およびハロゲンから選択され、R3およびR’は上に定義した通りである。)
である。
【0134】
WO 03/094974は構造式IIIを記載し、それはエリスリトールをベースにした脂質である。
【化3】
(式中、
Rは,同一または異なり、
(a)H,
(b)−CH2−N+(R2)2−CH2−CH2−[Y−(CH2)p]q−Z、または
(c)−CH2−N+(R4)3
である。但し1つのRはHで、他は基(b)であるか、両方のRが(c)群である。
Xは同一または異なり、OCH2またはO−C(O)である。
R1は同一または異なりC7〜C23の飽和または不飽和鎖である。
R2は同一または異なりC1〜C6の飽和または不飽和鎖である。
YはNH,CH2,O,またはN(アセチル)である。
ZはO(C1〜C4),OC(O)R3,N+R34,OH,F,Cl,BrまたはIでる(R3はC1〜C6アルキルである)である。
R4は同一または異なり、C1〜C6鎖である。
nは2,3,または4である。
mは1〜200であり、それが少なくとも2の場合、生じた繰り返し単位は同一または異なる)
【0135】
WO 03/094974に記載された脂質のいずれも本発明による脂質成分として、または本発明による脂質成分の1要素として用いてもよく、例えば上記の WO 03/094974による脂質は他のいずれかの脂質成分、例えば上に記載した好ましい脂質の1つと組み合わせて使用してもよい。好ましい比は例えば上に記載した通りである。
【0136】
本発明のトランスフェクション複合体の核酸成分は例えば天然源から得てもよく、組換え的にまたは化学合成により製造しうる。
【0137】
核酸成分は例えば特殊な機能を有する分子、例えば各標的分子よりなるか、または含む。核酸はDNAまたはRNAで有り得る。DNAは単鎖または2本鎖で有り得る。核酸配列は、遺伝子治療において、遺伝子ワクチンにおいて、またはアンチセンス治療における使用に適している。核酸は特定の遺伝子治療に対する標的であり得るか、関係しうるか、または遺伝子ワクチンとして、またはアンチセンス治療剤として機能できる分子で有り得る。核酸は完全なコード配列であり得るか、対応し得、コード配列の部分であり得る。
【0138】
或いは、核酸は商業的に有用な、例えば産業的にまたは科学的に有用なタンパク質、例えば酵素であるタンパク質をコードしうる。それは例えば薬剤またはワクチンとして治療的にまたは予防的に使用できる医薬的に有用なタンパク質であり、タンパク質はELISAにおける使用のための抗原として診断的に有用である。商業的に有用なタンパク質を製造できる宿主細胞は時に「細胞工場」と呼ばれる。
【0139】
発現されるべき核酸配列の場合には適当な転写および翻訳調節因子が一般的に提供される。
【0140】
核酸は一般的にはDNAであるが、RNAはある場合、例えば癌ワクチンにおいて用いられる。核酸成分は以下で「プラスミド成分」または成分「D]と呼ぶかも知れない。
【0141】
遺伝子治療および/または遺伝子ワクチンにおいて用いることができる核酸の例は、タンパク質のコード配列、cDNAコピー、およびそのゲノムバージョン(イントロンそしてまたエクソンを含む)、調節上流および下流配列を含む。他の有用な核酸は遺伝子修復および相同的組換えに関与する配列である。これらは、RNA/DNAキメラ(Bandyopadhyay et al., 1999; Cole-Strauss et al., 1996; Kren et al., 1998; Yoon et al., 1996)またはDNAオリゴヌクレオチド(Goncz et al., 1998)であり得る。有用な核酸はプラスミドに含まれる短い配列、またはプラスミドまたは核酸の組み込みを媒介する他の大きい核酸、例えばファージインテグラゼ(Groth et al., 2000; Olivares et al., 2001; Stoll et al., 2002; Thyagarajan et al., 2000; Thyagarajan et al., 2001)および「眠れる美」トランスポゾン(Yant et al., 2000)であり得る。
【0142】
DNAオリゴヌクレオチドはアンチセンス調節(Bachmann et al., 1998; Knudsen and Nielsen, 1997; Mannion et al., 1998; Woolf et al., 1995)の目的で、または転写因子デコイ(Ehsan et al., 2001; Ehsan et al., 2002; Mann et al., 1999; Morishita et al., 1995)として運搬される。CpGリッチなオリゴヌクレオチド配列はブーストワクチン反応に対するアジュバンドとして有用であり得る(Krieg et al., 1995)。
【0143】
遺伝子治療で用いることができる他の重要な新しい種類の分子は、スモール・インターフェアリングRNAである。上で説明したように、哺乳動物細胞におけるRNAインターフェアレンスは、高度の特異性を有する遺伝子発現の調節への重要な新しいアプローチとして過去2または3年内に出現した(レビユー Shi 2003)。スモール・インターフェアリングRNA(siRNA)として知られる長さ20−30ntの2本鎖RNA分子はmRNAの相同的領域を標的にする。次にそれらはmRNA標的を崩壊へと導く保存された経路を活性化する。siRNAの作用の正確なメカニズムは熱心な研究中であるが、siRNAの哺乳動物への適用は機能的ゲノムの分野を革命化する可能性を有する。簡単に、効果的に、特異的に哺乳動物における遺伝子の発現をした方調節する能力は巨大な科学的、商業的、および治療的可能性を保持する。
【0144】
現在効果的なsiRNA標的を予測する方法はないので多数の配列のスクリーニングがおこなわれ多数の可能性のある分子をスクリーニングしなければならない。そのようなスクリーニングは非ウイルスベクターにより運搬される化学的に合成したsiRNA分子を用いて最も便利に行われる。サブシークエントスクリーニングのためのsiRNA分子をトランスフェクトするための本発明のトランスフェクション複合体の使用は従って費用効果性そしてまたより大きい機能性の利益を提供する。siRNA分子は治療的にも使用しうる。そのようなトランスフェクションおよびsiRNAのその後のスクリーニングは本発明の部分である。
【0145】
本発明のペプチドのトランスフェクションの効率、ポリカチオン性核酸結合成分、本発明のペプチド誘導体、脂質成分、またはそれらのいずれかの組み合わせは本明細書に記載した方法を用いて容易に決定しうる。
【0146】
トランスフェクションベクターとして上記したトランスフェクション複合体を用いるトランスフェクションの効率は脂質成分:ペプチド/ポリカチオン性核酸結合成分の比、即ち本発明のペプチド誘導体:DNAまたはRNAの比により影響される。トランスフェクトされるべきいずれかの個々の細胞タイプに対する成分のいずれかの選択された組み合わせについて、最適比は異なる割合の成分を混合し、その細胞タイプについて例えば上記のように測定することにより簡単に測定できる。
【0147】
リポフェクチンおよびリポフェクタミンが上記したシステムにおいてトランスフェクションを高めるのに特に効果的であるようである。リポフェクチンは非常に少量のみが必要であるという利点を有する。生じ得るいずれかの副作用は従って最小化される。WO 03/94974に記載されたカチオン性脂質も特に効果的である。
【0148】
脂質およびDNA成分の間の適当な重量比は0.75〜4:1で有り得る。0.75:1の比が適当であることが見出された。いずれかのあるトランスフェクション実験においてこの比は当業者に知られた方法で最適化されうる。
【0149】
本発明のトランスフェクション混合物は、成分(i)、脂質成分、成分(ii)、ポリカチオン性核酸結合成分、成分(iii)本発明のペプチドを混合することにより製造されうる。上記のトランスフェクション複合体は(i)、(ii)、(iii)および(iv)を混合することにより製造しうる。成分(ii)および(iii)は好ましくは本発明のペプチド誘導体の形である。
【0150】
成分はいずれの順序で混合してもよいが、脂質成分は最後に加えないことが一般的に好ましい。ペプチド誘導体を用いる場合、次の順序:脂質成分;ペプチド誘導体;DNAまたはRNA成分、で成分を混合する、即ち脂質成分とペプチドを混合し最後に核酸成分を脂質/ペプチド混合物を混合することが好ましい。
【0151】
ペプチド誘導体および脂質成分を含むトランスフェクション混合物を用いて、核酸のトランスフェクション混合物での導入、例えば混合により核酸を含むトランスフェクション複合体を作りうる。或いは、トランスフェクション混合物を核酸成分ではなくポリカチオン性核酸結合成分、例えばタンパク質を含むベクター複合体の製造に用い得る。
【0152】
本発明のトランスフェクション混合物は一般に4℃での貯蔵に安定である。従って、トランスフェクション混合物をバルクで作って、必要に応じ、必要な場合トランスフェクション混合物の部分を用いて選択した核酸を導入するトランスフェクション複合体を製造するのが便利である。
【0153】
本発明のトランスフェクション混合物は脂質成分として等モル混合物のDOPEおよびDOTMA(リポフェクチン)、本発明のペプチド、特に本発明のペプチド誘導体、例えば[K]16ペプチドを好ましくは含む。上記のスペーサーはペプチド誘導体中に存在してもよい。好ましいモル比、リポフェクチン:ペプチド誘導体は0.75:4である。
【0154】
本発明のトランスフェクション混合物の個々の成分はそれぞれ本明細書に記載する。トランスフェクション混合物およびトランスフェクション複合体について、好ましい成分、好ましい成分の組み合わせ、好ましい成分の比、および好ましい混合順序およびその製造は本明細書に記載する。
【0155】
本発明は更に、
(i)核酸、
(iii)ポリカチオン性核酸結合成分、および
(iv)本発明のペプチド
を含む非ウイルストランスフェクション複合体を提供する。
【0156】
本発明のペプチドを含むトランスフェクション複合体によりトランスフェクトされうる細胞は、例えば内皮および上皮細胞、例えば気管支および肺の上皮を含む気道のいずれかの部分の細胞を含む。気道上皮は嚢胞性繊維症および喘息のための遺伝子療法に対する重要な標的である。
【0157】
本発明はウイルスベクターをも提供し、そのベクターは本発明のペプチドを含む。
【0158】
ウイルスベクターはウイルスが結合する受容体を標的にし、その宿主細胞への入り口を得る。そのようなベクターは、本発明のペプチドをベクターに結合することにより再標的化されうる。ペプチドはそのような方法でそのような部位で結合されるべきであるのでベクター宿主細胞に結合できなおベクターとして作用する。
【0159】
ウイルスベクターは目的の核酸をも含む。そのような核酸は本発明のトランスフェクション複合体と関連して上に記載した通りであル。ウイルスベクターへの本発明のペプチドの導入は核酸で妨げるべきではない。本発明のペプチドは、核酸がベクターに挿入される前または後にウイルスベクターと共に導入され得る。
【0160】
ウイルスベクター、例えばアデノウイルスは、コックスサキー−アデノウイルス受容体(CAR)である天然の受容体である。これはアデノウイルスのための主な受容体である。第2の受容体はインテグリンおよびプロテオグリカンを含む。CARは多くの細胞タイプに見出されるが、樹状細胞では低レベルでのみ、そして気道上皮細胞の先端の表面ではないかまたは低レベルでのみ見出され、そのことが細胞および組織におけるアデノウイルスベクターの効率を限定する。アデノウイルスベクターは、例えばキャプシドの繊維タンパク質のHI領域への、本発明のペプチドの導入により再標的化される(Nicklin et al., 2001)。
【0161】
例えばアデノウイルスタイプ5は、広い範囲の細胞タイプを高効率で形質導入するので原理的には良いベクターであるが、樹状細胞につてはそのような細胞が低レベルのCAR受容体を有しているので貧弱なベクターである。本発明のペプチドをキャプシドの繊維タンパク質のHI領域に挿入すると樹状細胞についてのトランスフェクション効率はキャプシドの野生タイプの繊維タンパク質を有するアデノウイルスタイプ5ベクターを用いて測定して20〜45%から64および79%の間まで増加した。更に、トランスフェクション効率の増加は、樹状細胞ばかりでなく他の細胞でも認められた。例えば、本発明のペプチドを導入する再標的化アデノウイルスを用いるヒトの一次マクロファージは、野生タイプウイルスで認められた約13%からペプチドSHVKLNSについて約67%迄、ペプチドAPSNSTAについて約35%まで増加した。N2a細胞の場合、トランスフェクション効率は野生タイプベクターについての約24%と比較して再標的化したベクターについて約83%であり;HAEo細胞の場合、その値はペプチドSHVKLNSについて約79%、APSNSTAについて約79%であるのに対し、野生タイプ繊維を有するベクターは約45%の形質導入効率、KO1ウイルスは約2%、そして無関係なペプチドを有するウイルスは約32%であった。同じパターンの形質導入効率がHMEC−1内皮細胞について見られた。ペプチドSHVKLNSは約95%、ペプチドAPSNSTAは約94%、野生タイプは約73%、KO1ウイルスは約3%2.7%および無関係なペプチドは約25%であり、HepG2肝癌細胞ではペプチドSHVKLNSは約88%、ペプチドAPSNSTAは約80%、野生タイプは約64%、KO1は約2%および無関係なペプチドは約10%であった。
【0162】
或いは、ウイルスベクターは静電的にウイルスキャプシドまたは外被に結合することができるカチオン性ドメインを含む本発明のペプチドとの複合体の形成により再標的化されうる。そのようなペプチドの例は本発明のペプチド誘導体であり、それはポリカチオン性核酸結合成分、例えば3〜32のリシン、例えば上記のように例えば[K]16を有するポリカチオン性オリゴリシンを含む。ウイルスと修飾したペプチドの間の静電的複合体はウイルスおよびペプチドの溶液を混合することにより製造しうる。そのような複合体は本発明の部分である。
【0163】
更なる代替では、本発明のペプチドをウイルスに結合することができる抗体によってウイルスベクターで導入する。抗体はペプチドおよびウイルスに結合することができる2特異性であってもよいし、ペプチドおよび抗体が融合タンパク質の形であってもよい。どちらの場合もペプチドを用いてアデウイルス結合を媒介しウイルス上で提示し、再標的化形質導入を可能にする(Watkins et al., 1997)。抗体成分はいずれの種類の抗体であってもよく、適当な抗原結合ドメインであってもよく、キメラまたはヒト化抗体であってもよく、由来しても良い。そのような融合タンパク質は本発明の部分である。2特異的抗体およびペプチド、またはペプチド−抗体融合タンパク質はウイルスベクターと接触し、結合を可能にする。2特異的抗体およびペプチド/抗体融合タンパク質を製造し、選択する方法は当業者に知られている。例えば(Nicklin et al., 2001; Pereboev et al., 2002; Tillman et al., 1999; Watkins et al., 1997; Wickham et al., 1997)を参照。
【0164】
複合体、2特異的抗体、およびペプチド−抗体融合タンパク質は本発明のすべての部分である。
【0165】
野生タイプのベクターの効率と比較して、いずれかの個々の細胞または細胞タイプについての本発明のウイルスベクターのトランスフェクション効率は、例えば以下の実施例3に記載のように容易に決定できる。アデウイルスに関して上に記載したが、本発明のウイルスベクターは、本発明のペプチドを用いて再標的化できるウイルスベクターである。そのようなウイルスベクターの例は、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)および単純ヘルペスウイルスの遺伝的に操作され、複製欠陥性の誘導体である。
【0166】
特に述べない限り、本発明のウイルスベクターは本発明のトランスフェクション複合体と類似的に、例えば同じ目的に用い得る。
【0167】
本発明は宿主細胞中で核酸を発現させる方法をも提供し、その方法は宿主細胞をインビトロまたはインビボで核酸を含む本発明のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターに接触させ、宿主細胞を細胞が核酸を発現させることができる条件下に培養することを含む。
【0168】
本発明は更に宿主細胞中でタンパク質を製造する方法を提供し、その方法は宿主細胞をインビトロまたはインビボでタンパク質をコードする核酸を含む本発明のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターに接触させ、細胞がタンパク質を発現することを可能にし、タンパク質を得ることを含む。タンパク質は宿主細胞から、または培地から得られ得る。適当な宿主はよく知られている。適当な宿主細胞の例はチャイニーズハムスターオバリー(CHO)細胞(Watkins et al., 1997)、BHK細胞(Cruz et al., 2002)、293細胞(Castilho et al、2002)およびSf9等の昆虫細胞[Wang, 2000 #1964]を含む。
【0169】
本発明は更に細胞をトランスフェクトする方法を提供宿主、その方法は細胞を本発明によるトランスフェクション複合体またはウイルスベクターと接触させることを含む。そのようなトランスフェクションはインビトロまたはインビボで行い得る。インビトロでトランスフェクトされた細胞は、望むなら、治療目的のためヒトまたは非ヒト動物に投与しうる。以下参照。
【0170】
本発明は更に本発明による方法により核酸でトランスフェクトされた細胞およびそのような細胞の子孫を提供する。
【0171】
本発明は、医薬的に適当な担体と混合して、または結合して核酸を含む本発明のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターを含む医薬組成物をも提供する。その組成物はワクチンであり得、その場合アジュバンドを含み得る。
【0172】
本発明は遺伝子の欠陥および/または欠陥によりヒトまたは非ヒト動物において起こされる状態の治療または予防方法をも提供し、その方法は欠陥および/または欠陥を正すに適当な核酸を含む本発明のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターをヒトまたは非ヒト動物に投与することを含む。
【0173】
本発明はヒトまたは非ヒト動物の治療的または予防的免疫方法を提供宿主、その方法はヒトまたは非ヒト動物に、適当な核酸を含む本発明のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターを投与することを含む。
【0174】
本発明はヒトまたは非ヒト動物のアンチセンス治療方法をも提供し、その方法はヒトまたは非ヒト動物にアンチセンス核酸を含む本発明のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターをアンチセンスDNAを投与することを含む。
【0175】
本発明は、遺伝子の欠陥および/または欠陥によりヒトまたは非ヒト動物に起こされる状態の予防のための薬剤の製造のための本発明のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターの使用、ヒトまたは非ヒト動物の治療的または予防的免疫のための使用、およびヒトまたは非ヒト動物のアンチセンス治療のための使用を提供する。
【0176】
本発明の複合体またはベクターの投与の代替はインビトロでトランスフェクトした細胞を投与することである。
【0177】
非ヒト動物は例えば哺乳動物、鳥、魚であり、商業的に育てられた動物である。
【0178】
トランスフェクション複合体またはウイルスベクターにおける核酸、DNAまたはRNAは意図した使用のため、例えば遺伝子治療、遺伝子ワクチン、アンチセンス治療またはタンパク質生産に適当である(上記参照)。DNAまたはRNA従ってトランスフェクション複合体またはウイルスベクターは意図する目的に有効量投与する。
【0179】
治療および上記の使用はそれぞれのトランスフェクション複合体、ウイルスベクター、または薬剤または薬品を適当な方法で投与することにより行いうる。例えば投与は標的細胞の部位および意図する効果によって全身的、区域的の、または局所的であり得る。例えば気道上皮の場合には運搬は一般的に区域的の、または局所的であり、噴霧療法または気管支鏡法を含む。目の治療のためには投与は眼内である。他の標的の場合には全身的投与が必要であるかも知れず、その場合投与は注射、例えば静脈内、筋肉内、または腹膜内であり得る。
【0180】
更なる態様において本発明は、核酸を含むトランスフェクション複合体またはウイルスベクターを含むキットを提供する。
【0181】
本発明は次のものを含むキットをも提供する:(a)本発明のペプチド;(b)ポリカチオン性核酸結合成分;および(c)脂質成分。そのようなキットは更に、(d)核酸を含み得る。成分(a)および(b)は好ましくは本発明のペプチド誘導体の形である。或いは、キットは(a)、(b)および(d)を含み得る。
【0182】
そのような核酸は単鎖または2本鎖であり得、プラスミドまたは人工的染色体であり得る。核酸成分はその核酸の発現に適当なトランスフェクション複合体により提供去れ、ベクター複合体は空であるかまたは核酸を含む。
【0183】
成分(a)〜(d)キットは例えばトランスフェクションベクター混合物またはトランスフェクション複合体に関して記載した通りである。
【0184】
ポリカチオン性核酸結合成分は上に記載したように好ましくはオリゴリシンである。脂質成分は好ましくはカチオン性リポソームを形成でき、好ましくはDOPEおよび/またはDOTMA、であるか、それらを含み、例えばそれらの等モル混合物であるか、またはDOSPAであるか、それを含み、例えばDOPEおよびDOSPAの混合物、例えば重量比1:3のDOPE:DOSPAの混合物である。成分間の比は、成分の混合順序と同様に好ましくは上に記載した通りである。
【0185】
キッは一般的に指示を含み、例えば上記のように好ましくは成分の好ましい比、および成分の使用または混合の好ましい順序を含む。キットは遺伝子治療、遺伝子ワクチン、またはアンチセンス治療に用いうる。或いは、商業的に有用なタンパク質をコードする核酸で宿主細胞形質転換するのに、いわゆる「細胞工場」を作るのに用いうる。
【0186】
遺伝子治療の標的はよく知られており、単一遺伝子による障害、例えば嚢胞性線維症、様々な癌、および感染症、例えばウイルス感染、例えばHIVによる感染を含む。例えば、p53遺伝子によるトランスフェクションは癌治療のための大きい可能性を提供する。遺伝子ワクチンの標的もよく知られており、天然の源に由来するワクチンがヒトへの使用にあまりに危険であり、組み換えワクチンが必ずしも有効出ない、例えばB型肝炎、HIV、HCVおよび単純ヘルペスウイルス病原に対するワクチンを含む。アンチセンス治療の標的も知られている。遺伝子治療およびアンチセンス治療の更なる標的は、遺伝子ワクチンの更なる標的と同様に、病気の遺伝的基礎についての知識が増加するに従い、提案されつつある。本発明はトランスフェクションの効率、従って治療の有効性を高める。
【0187】
プロ炎症性サイトカインによる細胞のトランスフェクションは、自己免疫病、例えばリュウマチ性関節炎および多発性硬化症癌の治療においてアンチ炎症性サイトカインと共に癌免疫治療で用い得る。
【0188】
細胞を抗脈管形成性の遺伝子、例えば癌治療のための可溶性VEGF−R、または心筋の病気、または末梢脈管病のため脈管形成性の遺伝子、例えばVEGFでトランスフェクトしうる。
【0189】
本発明の非ウイルス性のトランスフェクション複合体は、例えば通常のベクターを用いて特に困難な125kbより大きいDNAの細胞内輸送に有効であり得る。これは人工染色体を細胞に導入することを可能にする。
【0190】
気道、例えば気管支の上皮のトランスフェクションは、嚢胞性繊維症、肺気腫、喘息、肺線維症、肺高血圧、および肺癌等の例えば呼吸器の病気の遺伝子治療に対して有用性を示す。
【0191】
嚢胞性繊維症(CF)は、コーカーシア人における最も一般的な単一遺伝子障害である。病的状態は主に肺の病気を伴う。CFは嚢胞性繊維症膜貫通伝導性調節タンパク質(CFTR)、クロライドイオンの分泌を媒介する細胞膜チャンネルをコードする遺伝子における突然変異により起こる。CFTR遺伝子導入による気管支細胞のこの欠陥の修正は、生化学的な輸送の欠陥および従って肺の病気を修正するであろう。現在までの臨床的試みは、勇気づけるデータを生み出したがもっと有効で非毒性のベクターの必要性を強調している。
【0192】
高められたレベルのトランスフェクションは本発明の方法を所望のタンパク質を製造できる宿主細胞、いわゆる「細胞工場」の製造に特に適している。長期の製造のために、導入された核酸が宿主細胞のゲノムに導入されるか、さもなければ安定に維持されることが望ましい、それは容易に確かめることができる。上に示したように、この方法で製造されるタンパク質は大きく、科学的および産業的使用のための酵素、治療および予防のためのタンパク質、ワクチンにおける使用のための免疫源、診断に使用する抗原を含む。
【0193】
本発明は高効率のトランスフェクションができる受容体標的ベクター複合体について特に有用である。好ましい態様では、ベクター複合体は4つのモジュラー要素;オリゴリシン、特に[K]16、DNA結合性またはRNA結合性因子;本発明のペプチド、例えば本明細書に記載したペプチド;場合によりプラスミド中の、そして場合によりウイルスプロモーターおよびエンハンシング因子により調節されるDNAまたはRNA;カチオン性のリポソームDOTMA/DOPE(リポフェクチン)を含む。オリゴリシン−ペプチド/DNAまたはRNA複合体のカチオン性リポソーム処方DOTMA/DOPEの組み合わせは強力な組み合わせである。或いは、DOPE/DOSPA処方をDOTMA/DOPE処方の代わりに、またはそれに加えて用い適しても良い。複合体形成に関する変数およびLIDベクター複合体によるトランスフェクション様式の最適化は示されている。
【0194】
最適のトランスフェクション複合体の形成における最も重要な変数は3つの成分の比およびその混合順序のようである。
【0195】
本発明は更にsiRNAを同定する方法を提供する。20−30のヌクレオチドの長さのsiRNA分子のパネルを標的遺伝子配列を通してばらまかれた領域に対する相同性について設計する。siRNA分子は商業的源、例えばQiagen Promegaにより合成できる。標的遺伝子を発現する細胞を個々のsiRNAでトランスフェクトし、発現レベルを標準的な関連したタンパク質アッセイまたはmRNAアッセイにより定量する。
【0196】
本発明はペプチドが結合する細胞または細胞タイプに対する物質を標的にするための本発明のペプチドの使用を提供する。その物質は核酸または他の分子、例えば治療的または薬学的に活性な分子、または検出可能な標識を含む分子であり得る。次の非限定的な実施例は本発明を説明する。
【0197】
実施例
実施例1:ペプチドモチーフの同定
材料および方法
(i)抗体
次の抗ヒト抗体をフローサイトメトリーに用いた。HLA−DR,CD40,CD86並びにマウスIgG1およびIgG2蛍光イソタイプ対照抗体(Beckton Dickinson UK Ltd, Cowley, UK)およびCD80およびCD83(Caltag Medsystems Lts, Towcester, UK)、そのすべてはフィコエリスリン(PE)で標識された。
【0198】
(ii)細胞系
次の細胞系を用いた、HMEC−1(CDC, Atlanta, GA 30333, U.S.A.),HAEo細胞(courtesy DC Gruenert, Human Molecular Genetics Unit, Department of Medicine, University of Vermont, Burlington, VT 05405, USA)、N2a細胞としても知られているNeuro−2a細胞(LGC Promochem, Teddington, Middlesex, UK)、およびHepG2細胞。
【0199】
ヒト気道上皮細胞系(1HAEo−)を、10%の胎児子牛血清(FCS, Sigma, Poole, UK)、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(InVitrogen, Paisley, U. K.)および2mM L-グルタミン(InVitrogen, Paisley, U. K.)を補ったEagleの最少必須培地(MEM)HEPES改変(Sigma, Poole, U.K.)中に保持した。
【0200】
ヒト微小血管の内皮細胞系HMEC-1を1HAEo−細胞の場合のようにだが1mg/Lハイドロコーチゾン(R & D Systems Europe Ltd, Abingdon, U. K.)10mg/Lの表皮性増殖因子(EGF; Sigma, Poole, U.K)を補ったMCDB31培地(Invitrogen, Paisly, U.K)中に保持した。
【0201】
マウス神経芽腫細胞系Neuro-2Aは、10%FCS,1mMピルビン酸ナトリウム(InVitrogen, Paisley, U. K.)、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンおよび0.1mM非必須アミノ酸を有するGlutamax−1(InVitrogen, Paisley, U. K.)を有するダルベッコのMEM中に保持した。
【0202】
ヒト肝癌細胞系HepG2はイーグルのベイシック塩溶液(BSS)、1.5g/L炭酸水素ナトリウム、0.1mM非必須アミノ酸(Sigma, Poole, U.K.)を含むイーグルのMEM中に保持し、1mMピルビン酸ナトリウムを除いて1HAEo細胞の場合のように補った。
【0203】
(iii)マクロファージの生成
単球は上記のように末梢血から調製した。単核細胞を10%FCS,RPMI中に1−2時間25cm3のフラスコ中にプレートした(10mlの血液あたり1フラスコ)した後、上澄みを除去し、新鮮な10%FCS、RPMI+10ng/ml MCSF(マクロファージコロニー刺激因子)(R&D System)を添加した。48時間後、培地の半分を新鮮な10%FCS、RPMI+MCSF(10ng/ml)で置換し、細胞6日に用い、ウエルから細胞を削ることにより収穫した。
【0204】
(iv)ペプチドライブラリー
用いたライブラリーC7CはNew England Biolabs Incから商業的に得、ファージ、力価決定および増殖課程は製造者のハンドブックに記載された通り行った。ライブラリーはランダムペプチド配列長さで7の残基よりなり、システイン残基が隣接し、環化を可能にする。コンストレインされた環状ペプチドはその線状対応物より高い結合親和性をしばしば示す。
【0205】
(v)未熟なヒト樹状細胞の生成
未熟な樹状細胞を以下に記載するように末梢血液単球から調製した。この方法を用いてヒトおよびマウスの樹状細胞を作り得る。
【0206】
10mlまたは40mlの末梢血試料をハンクス緩衝塩溶液(HBSS;Gibco BRL-InVitrogen, Paisley, U.K.)で1:1希釈し、次にLymphoprep(Nycomed (UK) Ltd, Sheldon , Birmingham)に層にし、750gで30分間遠心分離し、リンパ球を界面から単離した。過剰のLymphoprepは細胞を250gで10分間スピンダウンすることにより除去し、存在する血小板はHBSSで2度洗浄し、細胞を1200rpmで10分間遠心分離することにより除去した。次に単球を、製造者のプロトコールに記載のようにMACs CD14磁気マイクロビーズ(Miltenyi Biotec Ltd., Bisley, Surrey)を用いて除去した。単球を、ウェルあたり3mlの、組み換えヒトGM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(Schering Plough/ Sandoz, Innishannon, Irelandから得た)およびIL-4(PreproTech EC Ltd, London,UK) cytokinesから得た)サイトカインを補った(それぞれ100ng/mlおよび25ng/ml最終濃度)完全培地(HEPES緩衝RPMI)(InVitogenn,Paisley, U.K.)+10%胎児子牛血清(FCS Myclone low LPS, InVitogenn, Paisley, U.K.)、100U/mlのペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンで6ウエルプレートにウエル当たり1x106細胞で接種し、37℃、5%CO2でインキュベートした。新鮮なサイトカインGM−CSFおよびIL−4をインキュベーションの3日に添加し、非付着性の未熟な樹状細胞をウイルス形質導入のために6日に、非ウイルス形質導入のために3または4日に収穫した。
【0207】
(vi)溶液中の樹状細胞選択(「パンニング」)
ペプチドライブラリーからの樹状細胞結合ファージの選択(「パンニング」)は、溶液中でラウンドあたり実施例1(iv)に記載した方法により得た約1x106の生存している樹状細胞を用いて、そしてC7Cライブラリーから2x1011ファージを用いて(実施例1(i)参照)行った。
【0208】
細胞にファージライブラリーを添加する前に、両者は1mlの2%のマーベル(ドライミルク)5%のBSA−PBS(燐酸塩緩衝の血清、pH7中のウシ血清アルブミン)4℃でアップアンドダウンターンテーブル(垂直に回転する輪)中で30分間ブロックして非特異的相互作用を減少させた。そのファージを回転することにより混合して4℃で2時間細胞に結合させた後、細胞を315g(2000rpm)で3分間遠心分離し、上澄みを除去する。上澄みは非結合性のファージを含む。次に細胞を2%BSA−PBSで、5回、各5分洗浄し、細胞を各時にきれいな試験管に移し、非特異的または弱く結合するファージを除去した。PBSのみにおける2回の洗浄を次に行い、アップアンドダウンターンテーブル(垂直に回転)中で混合することで10分間76mMクエン酸緩衝液を用いて溶出した。細胞はスピンダウンし、溶出液を除去し、600μlの1M Tris pH7.5の添加により中和し、4℃で貯蔵した(「溶出した画分」)。残った細胞を1ml 30mM Tris pH8.0、1mM EDTAで1時間氷上で溶解した後、短くボルテックスし、後のファージ力価決定のために4℃で貯蔵した。以下の実施例1(vii)を参照。
【0209】
各細胞溶解画分から収穫したファージは、プラーク形成単位(PFU)として力価決定した後、E.coli ER2738(New England Biolabs (UK) Ltd, Hitchin, Herts)中で製造者の指示に記載のように増幅させ、力価決定し、次のパンニングラウンドのためのインプットファージとして用いた。第3ラウンドのパンニングは、HLA特異的結合ペプチドの単離を避けるため、各ラウンドについて2つの異なるドナーからの樹状細胞を用いて行った。すべてのパンニングは4℃またはそれ以下で行い、樹状細胞表現型の変化を妨げた。第2および第3ラウンドのパンニングの場合、少ない数のファージが収穫されるなら、2%BSA−PBSで3度およびPBSのみで2度に洗浄ストリンジェンシーを減少させうる。第3ラウンドの画分からのファージの力価決定後、単一のよく単離されたプラークを選び取り、配列決定およびFACSまたは力価決定によるクローン結合特性決定のために精製した。
【0210】
ファージを回収し、各ラウンドの選択から次の様に力価決定した。2x1011のブロックしたファージを5x104のブロックした単球由来未熟な樹状細胞に氷上で1時間添加した後、細胞を3度0.05% Tween20−PBSで洗浄し、ファージをTBS pH5.5で溶出し、細胞を溶解し、結合して残っているファージを収穫した。細胞溶解により収穫したファージの数をプラーク形成単位(pfu)として計算した。図1はいくつかの力価決定の結果を示す。図1に示した結合したファージの配列決定は、ペプチドをAPSNSTA、QLLTGAS,TARDYRL,FQSQYQK,PLMPSLS,FPRAPHH、MASISMK、DWWHTSA、SHVKLNSおよびSPALKTVとして同定した。
【0211】
(vii)選択したファージの細胞結合の特性決定
ヒト単球由来未熟な樹状細胞(樹状細胞)へのファージの結合は全細胞フローサイトメトリーおよびファージ力価決定アッセイにより研究した。
【0212】
(a)全細胞フローサイトメトリー
実施例1(v)で記載したように製造し非粘着性未熟なヒト樹状細胞を収穫した。5x104の樹状細胞および2x1011の個々の精製したファージクローンを1ml MBSA(2% Marvel、PBS中で5%BSA)中でターンテーブルで混合して4℃で30分間ブロックした。その樹状細胞を2000rpmでスピンダウンし、それらを溶解することなく5分間4℃でペレット細胞までゆるやかな遠心分離し、そのペレットをブロックしたファージ溶液に再懸濁した。その混合物を氷上で30分間保ち、ファージを結合した後、細胞をスピンダウンし、上澄みを除き、細胞を1mlの1%BSA,0.05%のTween20-PBSで洗浄した。その細胞を再びスピンし、上澄みを除き、細胞を1mlの1%パラホルムアルデハイド中で氷上で30分固定した。細胞をPBS中で2度洗浄し、1mlの1%Marvel、PBS中の2.5%BSAおよび2μlのFITC(フルオレセイン−イソチオシアネート)標識抗Fd抗体(Sigma, Poole, Dorset)(3mg/ml)に再懸濁した。細胞を氷上で30分抗体とインキュベートした後、スピンダウンし、0.05%のTween20、1%のBSA PBS中で2度洗浄し、200μlのPBS中に再懸濁し、FACS分析によるFITCについて陽性の細胞のパーセントを測定した。
【0213】
或いは、5x104の樹状細胞をファージライブラリーのパンニングについて記載したように2x1011の個々のファージクローンと混合物した。ファージおよびDC懸濁液の混合物を氷上で30分間保った後、細胞を遠心分離し上澄みを除去し、1mlの1%BSA、0.05%のTween20-PBSで洗浄した。細胞を再び遠心分離によりペレットにし、次に1mlの1%パラホルムアルデヒド中に氷上で30分間再懸濁することによりフローサイトメトリーのために固定した。固定した樹状細胞をPBSで2度洗浄し、1%のマーベル、PBS中の2.5%のBSA中に再懸濁し、2 lのFITC-抗fdファージ抗体溶液と3mg/ml(Sigma, Poole, U. K.)で混合した。細胞を抗体と氷上でインキュベートし、次に遠心分離によりペレットにし、0.05%のTween20、1%のBSA PBSで2度洗浄し、200 lのpBSに再懸濁した。FITC陽性の細胞のパーセントはEpics XLフローサイトメーター(Beckman Coulter, High Wycombe, UK.)を用いてフローサイトメトメトリーにより測定した。
【0214】
(b)細胞に結合するファージクローンの力価決定
各力価決定について、5x104の単球由来樹状細胞(5または6日)を、200μlのブロック用緩衝液(DMEM/2%マーベル/1%BSA)中で30分間4℃でインキュベートし、コンスタントに混合することにより、最初にブロックした。2x1011のファージも200μlのブロック用緩衝液で30分間4℃でブロックした。樹状細胞を2000rpmで5分間4℃でスピンダウンし、ファージ溶液に再懸濁し、ファージを1時間氷上で時々混合しながら結合させた。次に細胞をPBS-Tween 20(0.05%)で三回洗浄した後、ファージを166μlのTBS pH5.5で10分間、氷上で溶出させた。溶出液は34μlの1M Tris-HCl pH8で中和し、細胞をスピンダウンし、上澄みを除去し、溶出液として貯蔵した。細胞ペレットを200μlの細胞溶解緩衝液(30mM Tris-HCl、1mM EDTA pH8.0)中に1時間氷上で振とうしながら再懸濁した。細胞断片を5000rpmで5分間スピニングすることにより除去し、上澄みを回収した。溶出液中のファージおよび細胞溶解液をNEB C7C技術ビュレチンに記載するようにE,coli ER2738中でプラーク形成単位(pfu)を測定することにより力価決定した。
【0215】
ファージクローン結合の力価決定は、対照としてプラスチックへの結合を用いて、ヒトおよびマウス樹状細胞を用いて行った。ヒト細胞は以下に述べるドナーから得た。
【0216】
(c)ファージペプチド挿入物の配列決定
第3ラウンドの樹状細胞選択後の細胞溶解画分から単離した81の個別のファージクローンを、少スケールポリエチレングリコール(PEG)生成物から精製し(NEBテクニカルビュレチンを参照)、単鎖ファージDNAを配列決定のために作った[Kay, 1996 #50]。
【0217】
簡単に言えば、タンパク質の外被をフェノールクロロホルム抽出により試料から除去し、DNAをエタノール沈殿によりペレットにした。微量の塩はペレットから氷冷70%エタノールで洗浄した後、そのDNAをトリEDTA(TE)(10 mM Tris Hcl, ImMEDIA, pH7.5)に再懸濁した。50−100ngの精製したDNAをビッグダイ(Applied Biosystems, Foster City, California, USA)ターミネーターサイクル配列決定反応に、96プライマー(5’-CCCTCATTAGCGTAACG-3’)(C7Cライブラリーで供給)を用いキットの指示に記載されたようにエタノール沈殿によりローディングするために精製した。試料はABI377シークエンサー(Applied Biosystems, Foster City, California, USA)上で操作し、結果はプログラム(Informax Inc, Oxford UK)のVector NTI Suiteを用いて分析した。
【0218】
結果
ペプチドの同定
「パンニング」は実施例1(vi)に記載するように行って、ファージの力価決定を得た。図1はいくつかの力価決定の結果を示す。図1に示された結合したファージの配列決定はペプチドを、APSNSTA、QLLTGAS,TARDYRL,FQSQYQK,PLMPSLS,FPRAPHH、MASISMK、DWWHTSA、SHVKLNSおよびSPALKTVとして同定した。
【0219】
未熟な樹状細胞に結合するファージクローンの力価決定の第3ラウンドから細胞に関連する画分からの81ファージクローンの配列決定は16の異なった配列を同定した。
【表4】
【0220】
3つの最も頻繁なファージクローンは、21%(APSNSTA)、20%(DWWHTSA)および12%(SHVKLNS)で残りは7%以下存在した。ファージクローンからの16の結合配列の分析は5つの最小モチーフ、即ち、PXNT/ST,PXXXA/V,A/LPSXS,SL/ISおよびQXN/QXQを同定し(表3参照)、そのモチーフは樹状細胞上の受容体への結合に重要な役割を果たしているかもしれない。配列決定したすべてのクローンの中で、46%は1以上のモチーフを含み、最も頻繁なクローンは、APSNSTAであり、3つの他のペプチド配列とある程度の相同性を示した、表3参照。
【表5】
【0221】
同一のアミノ酸は太字およびイタリックで、類似のアミノ酸はイタリックのみで示した。
【0222】
大部分の場合樹状細胞に対して結合するファージクローンの力価決定は、クローンは細胞中に挿入物を有さないファージより、大きい程度で細胞に結合することを示した。2つのクローンFPRAPHHおよびMASISMKは、マウス樹状細胞へ結合するファージ結合の力価決定を含み、すべての力価決定で最高数で結合した。プラスチックに結合するファージの数は試験したすべてのクローンで低く、これらの実験において、高力価により証明されるファージ結合は細胞への結合によるものであり、ウエルへのバックグラウンドの非特異的結合または分子ブロッキングでないことを示唆する。図1および表4参照。
【表6】
【0223】
6つの最も頻繁なクローン、即ちAPSNSTA、FQSQYQK、DWWHTSA、SHVKLNS、SPALKTVおよびSQKNPQMは、1つSPALKTVを除いてすべてのクローンが挿入物を有さないファージクローンより高いパーセントまで結合が検出された。図2aおよび2bを参照。
【0224】
結合のパターンは3つのクローンが、これらがペプチドAPSNSTA、DWWHTSAおよびSHVKLNSを含むので最高量で樹状細胞に結合することを示し。そのクローンは選択から最も頻繁に単離された。試験した6つのクローンの第2セット、即ちペプチドQLLTGAS、TARDYRL、PMLPSLS,FPRAPHH、MASISMKおよびSTPPNTTを含むものについて、すべてのクローンは挿入物を有さない対照より結合したファージについて高いパーセントの細胞が陽性であることを示した。QLLTGASは他よりわずかに多い細胞に結合する。図3aおよび3bを参照。
【0225】
16のファージ配列のうち、5つ、即ちAPSNSTA、SHVKLNS、MASISMK、FPRAPHHおよびDWWHTSAが、それらが最も頻繁なクローンの内であり、ファージクローン結合のFACSアッセイにおけるトップのバインダーの内であることを根拠に合成のために選ばれた。
【0226】
実施例2:非ウイルストランスフェクション
材料および方法
(i)ペプチドの合成
望ましい細胞結合およびエントリー特性を示すファージから同定されたペプチドA,B,C,DおよびF(表7参照)を標準的な合成化学を用いて合成し、16のリシンの尾、GACリンカーおよびC−末端 CG基を有する。ペプチド6,RRETEWAはインテグリン結合ペプチドである。ペプチド6J、ATRWAREはペプチド6のスクランブルバージョンであり、対照ペプチドとして役立つ。ペプチド誘導体という用語は以下に示す合成したペプチド配列を示すのに用いる。即ち、「ペプチドA」はSHVKLNSを示し、「ペプチドA誘導体」は[K]16−GACSHVKLNSCGを示す。ペプチドおよびペプチド誘導体の詳細は以下の表5に示す。
【表7】
【0227】
(ii)リポポリプレックス(LID)トランスフェクション複合体の形成および未熟な樹状細胞のトランスフェクション
(a)未熟な樹状細胞のためのトランスフェクション複合体
脂質(L)、ペプチド(上に記載したペプチド誘導体の形で)(I)およびDNA(D)を含むリポポリプレックス(LID)トランスフェクション複合体を製造した。脂質成分はリポフェクチンまたはリポフェクタミン2000(Invitrogen Ltd, Paisley, UK)であり、ペプチドは上の表7に記載した合成したペプチドA〜F,6または6J誘導体であり、DNAはプラスミドpEGFP−N1(Clontech, BD Biosciences, Palo Alto, CA)であった。
【0228】
トランスフェクション複合体において、ペプチド成分対DNA電荷の比(+/-)は1.5:1,3:1および7:1で用いた。脂質成分(リポフェクチンまたはリポフェクタミン2000)DNAに対して重量で0.75:1という一定の割合で保持した。トランスフェクション複合体の製造の前に、方法Aでは脂質成分を15μg/mlの濃度に希釈し。ペプチドは0.1mg/mlで、DNA(プラスミド pEGFP-N1, BD Biosciences, Cowley, UK, EndoFree プラスミドキット, Qiagen Ltd, Crawley, UKを用いて製造)は10μg/mlで調製した。すべての希釈はOptiMEMを減少させた組織培養培地((Life Technologies Ltd, Paisley, UK))で行った。方法Bではトランスフェクション複合体を作る前に脂質成分を30μg/mlの濃度まで希釈し、ペプチドは0.1mg/mlで調製し、DNA(プラスミドpEGFP−N1、BD Biosciences, Cowley, UK,
EndeFree プラスミドキット Quiagen Ltd, Crawley UK)40μg/mlであった。すべての希釈は血清を含まないRPMIで行った。
【0229】
トランスフェクション複合体は成分を1)脂質(50μl)、次に2)ペプチド(70μl)および最後に3)DNA(50μl)の順に混合し、次にOptiMEMまたは血清を含まないRPMIで、300μl(OptiMEM)あたり、または500μl(RPMI)あたり2μgのDNA成分に対する濃度まで、適当なように希釈した。
【0230】
(b)未熟な樹状細胞および単球のトランスフェクション
実施例1(v)で記載したように得られた未熟な6日樹状細胞を完全培地中にウエルあたり5x104細胞で48ウエルプレートにプレートし、3時間37℃でかすを沈殿させた。上記のように得たトランスフェクション複合体の300μlまたは500μl(適当に応じて)を各ウエルに加えた。トランスフェクション複合体は製造5分以内に細胞に加えた。トランスフェクションインキュベーションは37℃で4時間行い、その後、培地を24時間サイトカインを有する完全培地で置換した。細胞をスクレイピングにより収穫し、スピンダウンし、FACS分析のために300 lのPBSに再懸濁し、リポーター遺伝子EGFP(Enhanced Green Fluorescent Protein)に陽性の細胞のパーセントを決定した。各トランスフェクションは3つのウエルで行った。
【0231】
単球のトランスフェクションのために、末梢血単球を、実施例1(v)において単球由来樹状細胞の製造方法において記載するようにLymphoprep遠心分離およびCD14ビーズ選択を用いて調製した。これらの細胞を次に単球のトランスフェクション(および3または4日の未熟な樹状細胞のも)を溶液中で行ったことを除いて樹状細胞につて記載したようにトランスフェクトした。
【0232】
(iii)他の細胞タイプのトランスフェクション
(a)他の細胞タイプ
用いた他の細胞タイプは、HMEC-1細胞(CDC, Atlanta, GA 30333, U.S.A)、HAEo細胞(courtesy DC Gruenert, Human Molecular Genetics Unit, Department of Medicine, University of Vermont, Burlington, VT 05405, USA))、およびNeuro-2a(N2a細胞としても知られている)(LGC Promochem, Teddington, Middlesex, UK)。
【0233】
(b)他の細胞タイプについてのトランスフェクション複合体
脂質、ペプチド、およびDNAを含むトランスフェクション複合体を調製した。脂質成分はリポフェクチン(Invitrogen Ltd, Paisley, UK)であり、ペプチド成分は、上記のようにペプチドA〜F、6,または6J誘導体であり、DNAはプラスミドpCILuc (Promega UK Ltd, Southampton)であった。トランスフェクション複合体においてペプチド対DNA電荷比(+/−)は3:1,5:1および7:1で用いた。脂質成分はDNAに対して重量で0.75:1の一定の比を維持した。トランスフェクション複合体の製造の前に、脂質成分を15μgまたは30μg/mlの濃度に希釈した。ペプチドは0.1mg/mlで、DNAは40μg/mlであった。すべての希釈はOptiMEM減少血清組織培養培地(Life Technologies)で行った。トランスフェクション複合体は成分を1)脂質、次に2)ペプチドおよび最後に3)DNAの順に混合し、次にOptiMEMで、300μl(OptiMEM)あたり、または200μlあたり0.25μgのDNA成分に対する濃度まで希釈した。
【0234】
(c)他の細胞タイプのトランスフェクション
これらのタイプの細胞、即ちHMEC, HAEo-、N2aおよびHepG2のトランスフェクションのために、1x104の細胞を96ウエルプレートに一晩接種した。(b)に従って製造したトランスフェクション複合体の200μl懸濁液を各ウエルに加えた。懸濁液は調製の5分以内に細胞に加えた。トランスフェクションインキュベーションは37℃で4時間行い、その後、培地を24時間適当な完全培地で置換した。各トランスフェクションは6回行った。
【0235】
細胞を含まない抽出物におけるルシフェラーゼリポーター遺伝子アッセイを、製造者のプロトコールを用いてPromega UK Ltdからのルシフェラーゼアッセイを用いて24時間インキュベートした後行った。光単位は各抽出物内部でタンパク質濃度に標準化された。
【0236】
(iv)トランスフェクトされた樹状細胞のフェノタイピング
未熟な4日の樹状細胞を、ペプチドAをDNA(プラスミドpEGFP)に対して7:1の電荷比でLID複合体でトランスフェクトし、リポフェクチンをRPMI中で4時間DNAに対して重量比0.75で加えた後、24時間サイトカインを有する完全培地中でインキュベートした。対照として、樹状細胞を24時間完全培地中でインキュベートした(未熟な樹状細胞)。細胞をかきとることにより収穫し、成熟マーカーの存在について次の様に染色した:2ml以下の培地の体積中の最小5x104の細胞を推奨される量の抗体に添加し20分間氷上でインキュベートした。2mlの氷冷却PBSを添加した後、300xgで5分間4℃で遠心分離した。上澄みを飛ばし去りペレットを300 lの氷冷1%パラホルムアルデハイド−PBS中に再懸濁した。各試料からの細胞をHLA-DRに対する抗体で、およびCD86およびアイソトープマッチした対照抗体で染色した。細胞をEpics XL(Beckman Coulter, High Wycombe, UK.)およびEXPO32分析ソフトウエア(Beckman Coulter)を用いてフローサイトメトリーにより分析した。
【0237】
(v)トランスフェクトされた樹状細胞の成熟とフェノタイピング
未熟な4日の樹状細胞を、ペプチドDをDNA(プラスミドpEGFP-N1)に対して7:1の電荷比でLID複合体でトランスフェクトし、リポフェクチンRPMI中で4時間DNAに対して重量比0.75で加えた(上記のように)。1つの試料において、24時間のトランスフェクションの直後LPSを完全培地に50ng/mlの濃度で添加し、他では細胞を完全培地で2日間インキュベートした後、LPSを更に24時間添加した。対照として、樹状細胞を完全培地中で(未熟なDC)、またはLPSを有する完全培地中で(成熟DC)で24時間インキュベートした。次に細胞をスクレイピングで収穫試料、成熟マーカーの存在について次のように染色した。細胞をかきとりにより収穫し、成熟マーカーの存在にゆいて次のように染色した。2ml以下の培地の体積中の最小5x104の細胞を推奨される量の抗体に添加し20分間氷上でインキュベートした。2mlの氷冷却PBSを添加した後、300xgで5分間4℃で遠心分離した。上澄みを飛ばし去りペレットを300 lの氷冷1%パラホルムアルデハイド−PBS中に再懸濁した。各試料からの細胞をHLA-DRに対する抗体、およびCD86およびアイソトープマッチした対照抗体で染色した。細胞をEpics XL(Beckman Coulter, High Wycombe, UK.)およびEXPO32分析ソフトウエア(Beckman Coulter)を用いてフローサイトメトリーにより分析した。
【0238】
結果
DNA結合[K]16を有する合成した束縛されたペプチドを、未熟な樹状細胞をDNAおよび脂質を有するリポポリプレックス(LID)トランスフェクション複合体でトランスフェクトするそれらの能力について試験した。結果を図4に示す。
【0239】
リポフェクチンおよび4日樹状細胞を用いるLIDフォーマット中のすべての5つの合成されたペプチド誘導体A、B、C、DおよびFのトランスフェクション効率の比較は、ペプチドA,B,およびDを最良のトランスフェクション効率を与えると同定し、すべては樹状細胞の10%以上をトランスフェクトしペプチドCはおよそ半分の価を与え、ペプチドFは不十分に挙動し、細胞の1%未満がトランスフェクトされた。図4bを参照。
【0240】
FACSにより測定したリポーター遺伝子EGFPについて陽性の細胞のパーセントで測定したトランスフェクション効率は正の対照、ペプチド6,インテグリン結合ペプチドPRETAWAおよび負の対照、ペプチド6J(ペプチド6のスクランブルバージョン)のそれの約1.5倍レベルまで、ファージ由来ペプチドA(SHVKLNS)の使用により増加した。ペプチドB(APSNSTA)はペプチド6のそれと等しいレベルのトランスフェクションレベルを与えた。トランスフェクトされた細胞のパーセントは、多分樹状細胞におけるトランスフェクション過程の毒性効果のため5%に達しなかった。
【0241】
DNA結合〔K〕16ドメインを有する合成された4つのコンストレインされたペプチドA,B,CおよびDを、商業的に利用できる脂質リポフェクチンおよびリポフェクタミンを含むリポポリプレックス(LID)トランスフェクションにおける4日の未熟な樹状細胞をトランスフェクトするそれらの能力について試験した。図5a参照。リポフェクチンを用いた場合、すべてのペプチドはペプチド6(インテグリン結合細胞)のそれを超えるトランスフェクション効率を得た。ペプチドAは17%という最高の効率を得、ペプチドBおよびDは11%の陽性の細胞を得、Cは約7%陽性であり、ペプチド6および非ペプチド対照で達成された2%の少し上であった。脂質を用いなかった場合、ペプチドAについてトランスフェクションは1%以下であり、複合体の効率のための脂質の重要性を証明する。
【0242】
リポフェクタミン2000は、3%陽性の細胞を与えたペプチド6を除いて、リポフェクチンより低いトランスフェクション効率、5および8%の間を与えた。毒性はすべての場合に高く(図5b参照)40および53%の間であり、リポフェクチンは、リポフェクタミンが、リポフェクチンより顕著により毒性であるペプチドCおよびペプチドなしの場合を除いてリポフェクタミン2000と似たレベルの毒性を与えた。この毒性は実験間で変化し、リポフェクチンは17-46%の間、リポフェクタミン2000は26-53%の間の細胞死であった。メタフェテンを製造者の指示に従って用いた場合、ずっと高いレベルの細胞死、78-84%の間が見られ、脂質の選択はトランスフェクション後の細胞死にひどく影響しうることを示唆する。
【0243】
3日の樹状細胞のトランスフェクション効率は、7%EGFP陽性細胞で対照ペプチド6(14%の効率を与えた)を除いて4日樹状細胞よりかなり低かった。細胞死はすべての試料で28および48%の間で高く、リポフェクチンはリポフェクタミン2000より毒性が僅かに低かった。図6b参照。
【0244】
標的ペプチドを用いる単球のトランスフェクションはペプチド6を用いるトランスフェクションに匹敵する効率を与え、ペプチドA、BおよびDはトランスフェクトされた細胞の最高のパーセントを与えたが(図7a参照)、レベルは4日樹状細胞より低く、僅か6%がEGFPについて陽性の最高のパーセントであった(ペプチドAをリポフェクチンと組み合わせる)。毒性はほとんどの場合5および14%の細胞死であった(図7b参照)。但しペプチドFまたはペプチドなしをリポフェクチンと共に用いた場合は除き、それらの細胞死はそれぞれ25%および20%に上昇した、興味深いことに、これらはトランスフェクション効率が最低の条件であった。
【0245】
未熟な4日樹状細胞のトランスフェクションは細胞表面でのHLA−DRおよびCD86分子の上方調節をもたらし、樹状細胞の活性化が生じつつあることを示す。EGFP陽性および陰性の両方の細胞は上方調節されたマーカーを示し、すべてではないトランスフェクトされた樹状細胞は上方調節されたマーカーを示し、トランスフェクション過程およびEGFPの発現のないことは活性化の原因であることを示唆する。
【0246】
LPSを用いるトランスフェクション後の樹状細胞の成熟は、LPSなしのトランスフェクトされた樹状細胞と同程度のHLA−DRおよびCD86の上方調節を示したが、LPSとインキュベートしたトランスフェクトしない樹状細胞に比べ低い程度の活性化であり、トランスフェクションは活性化に僅かに阻害的効果を有し得ることを示唆する。4日または6日の細胞に対するLPSの添加は活性化レベルに小さい影響を有し、CD86は細胞が、4日に比べ6日でLPSとインキュベートした場合僅かに小さい活性化を示した。
【0247】
他の細胞タイプの場合、トランスフェクション効率は存在するタンパク質1mgあたりのルシフェラーゼ活性により測定した。試験したすべての細胞系、即ちHMEC−1,HAEo−、およびN2a細胞において、少なくとも1つのペプチドがペプチド6で見られたのと等しいか、または以上のトランスフェクション効率を与えた。
【0248】
HMEC−1細胞においてはペプチドAはペプチド6で見られたのとほぼ等しいトランスフェクション効率を与えたが、ペプチドBはペプチド6の1.5倍効率を増加させることができる。図10参照。
【0249】
HAEo−細胞においては、ペプチドAは最高のトランスフェクション効率、ペプチド6で見られたそれのおよそ2倍を与え、ペプチドBを用いる効率はペプチド6を用いたそれ1.5倍であった。図11参照。
【0250】
Neuro2A(N2a)においては、ペプチドAのみがペプチド6を用いる場合に見られたのと等しいトランスフェクション効率を与え、ペプチドBは半分以下の効率を与えた。図12参照。
【0251】
実施例3:再標的化アデノウイルス
材料および方法
(i)マウス骨髄由来樹状細胞
マウス樹状細胞を5週齢A/Jマウスの大腿骨および頸骨の髄腔から流した全骨髄から調製し、10%FCS,ペニシリンおよびストレプトマイシンおよび2ng/mlの組み換えGM−CSFを補ったHepes緩衝RPMI+Glutax(InVitrogen, Paisley, U. K.)中で培養した。サイトカインを3日に同じ濃度まで添加死、樹状細胞を6日にMACs CD11cマイクロビーズ(Milteny Biotec, Bisley, UK)により浮いている細胞画分から単離した。
【0252】
(ii)マウスScal+ve幹細胞
マウス骨髄細胞を上のように単離しScal+ve細胞をMACs Scalマイクロビーズ(Milte nyi Biotec, Bisley, U. K.)を用いて単離した。これらの細胞を、30%FCSおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含んだGlutamax-1および次のサイトカインネズミSCF(50 ng/ml; Preprotech, London, UK)、IL−6(20ng/ml; Preprotech, London, UK)およびFlt3−L(10ng/ml)(R&D Systems, Oxford, U. K.)と共に、7x104細胞/RPMI中の500 lでプレートした。
【0253】
(iii)再標的化アデノウイルス/組換えアデノウイルスの製造および定量
ペプチドA〜Fを有し、またはキャプシドの線維タンパク質のHI領域に挿入された再標的化アデノウイルスタイプ5(Ad5)を構築し、Nicklin 2001 Mol Ther 2001 Dec;4(6):534-42に記載された方法を用いてDr Dan von Seggern, Scripps Research Institute, California, USAの実験室で生産した。
【0254】
線維タンパク質のHIループに挿入されたDC結合タンパク質を有するAd5粒子を実質的に以前に記載したように製造した。ペプチド配列SHVKLNS ( 5' CC GGA AGC CAC GTG AAG CTG AAC AGC G 3' および 5' CC GGC GCT GTT CAG CTT CAC GTG GCTT 3') または APSNSTA ( 5' CC GGA GCC CCC AGC AAC AGC ACC GCC G 3' および 5' CC GGC GGC GGT GCT GTT GCT GGG GGCT 3')をコードする相補的オリゴヌクレオチドを合成した(Operon Technologies, Alameda CA U. S. A.)。オリゴペアをキナーゼ化し、アニールし、pDV137のユニークなBspE1部位に結合し、CAR結合およびHIループ中のリンカー/制限部位をブロックしてpDV178(SHVKLNS)およびpDV179(APSNSTA)を作る2重ポイント変異体を有するAd5線維タンパク質をコードする発現構築物を作った。配列確認の後、そのプラスミドを用いて、上記のように293細胞に一時的にトランスフェクションすることにより線維を除いたベクターAd5.GFP. Fをtrans補足した。ウイルス粒子を凍結/解凍溶解およびCsClグラジエント遠心分離により精製し、40mM TRIS−pH8.1/0.9%NaCl/10%グリセロール中で透析し、−80℃で貯蔵した。ウイルスをBSA標準に対するタンパク質アッセイ(BioRad, Hercules CA, U. S. A.)により、そして1μgのウイルスタンパク質は4x109ウイルス粒子に等しいという関係を用いて定量した。
【0255】
(iv)アデノウイルスを用いる形質導入
ペプチドAまたはBを有する再標的化アデノウイルスを以下に記載する形質導入実験に用いた。野生タイプのアデノウイルスタイプ5およびKO1線維を有するタイプ5アデノウイルスはすべてDr Dan von Seggernにより提供され、Nicklin 2001 Mol Ther 2001 Dec;4(6):534-42)に記載のように、対照として用いた。
【0256】
(a)樹状細胞の形質導入
6日樹状細胞(上記実施例1(v)参照)またはマウス骨髄由来樹状細胞またはScal+ve幹細胞((i)および(ii)参照)500μlの完全培地中で48ウエルプレート中でウエルあたり5x104細胞でプレートし、3時間37℃で静置した。形質導入は完全培地中で行い、ウイルスは24時間の間100000ウイルス粒子/細胞で添加した。細胞をかき取り、650g(2000rpm)で5分間スピンダウンし、300μlのPBS中に再懸濁し、分析前に氷上で保った。GFP陽性の細胞のパーセントにより測定したウイルス形質導入はFACS分析により測定した。生存力パーセントを測定するため、10μlの7−アミノ−アクチノマイシンD(7AAd; Sigma, Poole Dorst)を分析の直前に添加した。
【0257】
マクロファージのウイルス形質導入は、2.5%のFCSを含む培地中で10,000粒子/細胞で行った。他の細胞タイプについては、細胞を適当な培地中で24ウエルプレート中でウエルあたり5x104細胞で一晩接種した。アデウイルス10,000ウイルス粒子/細胞、ウエルあたり1mlでOptiMEM中で3回添加し、24時間、37℃でインキュベートした。次に細胞をPBSで2回洗浄し、トリプシン化し、3回のウエルをプールし、350gで5分間スピンダウンし、300μlのPBS中に再懸濁した後、細胞生存力を測定するフローサイトメトリーにより分析し、10 lの7AADを分析の直前に添加した。
【0258】
細胞を結果の計算のため3回の別の形質導入実験からプールした。
【0259】
(b)ヒト一次マクロファージの形質導入
1次マクロファージ以下に記載のように末梢血液単球から作った。
【0260】
10mlの末梢血液をHBSSで1:1に希釈し、次にLymphoprep(Nycomed)上に層にし、750gで30分間スピンアウトし、精製したリンパ球を界面から単離した。過剰のLymphoprepを、細胞を250gで10分間遠心分離することにより除き、存在する血小板をHBSS中で洗浄し、1200rpmで10分間細胞を遠心分離することにより除いた。次に単球を製造者のプロトコールに記載のようにMACs CD14マイクロビーズを用いて単離した。単核細胞を10%FCS,RPMI中で1−2時間、25cm3フラスコ(10mlの血液あたり1フラスコ)にプレートした後、上澄みを除き、新鮮な10%FCS,RPMI+10ngMCSF(マクロファージコロニー刺激因子)を添加した。半分の培地を新鮮な10%FCS,RPMI+MCSF(10ng/ml)で48時間後置き換え、細胞をウエルから引きはがすことにより収穫し、6日に用いた。
【0261】
ウイルス形質導入は2.5%FCSを含む培地中で10000粒子/細胞で行った。GFP陽性細胞のパーセントにより決定したウイルス形質導入はFACS分析により測定した。細胞を結果の計算のため3つの別の形質導入実験からプールした。
【0262】
(c)他の細胞タイプの形質導入
N2a細胞、HAEo−細胞、HMEC−1細胞およびHepG1細胞を再標的化したアデノウイルスで形質導入した。N2a細胞、HAEo−細胞、HMEC−1細胞は上の実施例2(iii)(a)に記載した源から得た。HepG1細胞はLGC Promochem, Teddington, Middlesex, UKから得た。
【0263】
これらの他の細胞タイプの形質導入のために、細胞を適当な培地中で24ウエルプレート中でウエルあたり5x104細胞で一晩接種した。アデノウイルスはOptiMEM中に10000ウイルス粒子/細胞、ウエルあたり1ml、3回添加し、37℃で24時間インキュベートした。次に細胞を2回PBS中で洗浄し、トリプシン化し、3回のウエルをプールし、1200rpmで5分間遠心分離し、300μlのPBS中に再懸濁した後、FACSにより分析した。細胞生存可能性を測定すべき場合、10μlの7−アミノ−アクチノマイシンD(7AAD; Sigma, Poole, Dorset)を分析直前に添加した。細胞を結果の計算のため3つの別の形質導入実験からプールした。
【0264】
(d)再標的化アデノウイルスで形質導入後の6日の未熟な樹状細胞の成熟とフェノタイピング
6日の未熟な樹状細胞を再標的化したAdまたはAd5で完全培地中で24時間、細胞あたり100,000粒子で感染させ、E.coli 026:B6リポポリサッカライド(LBS)を3時間のインキュベーションの後50ng/mlの濃度で添加した。対照として、樹状細胞を完全培地で24時間インキュベートするか、完全培地中で24時間LPSの添加により成熟させた。すべての試料において、IL−4およびGN−CSFがそれぞれ25ng/mlおよび100ng/ml存在した。細胞を次に次の様に染色することにより表現型化した。2ml以下の容積の培地中に最小5x104の細胞を推奨される量の抗体に添加し、氷上で20分インキュベートした。2mlの氷冷PBSを添加後、300gで5分間4℃で遠心分離した。上澄みを飛ばし、ペレットを300 lの冷pBS中に再懸濁した。各試料からの細胞をHLA−DR、CD40,CD80,Cd83,CD86に対する抗体およびイソタイプにマッチした対照抗体で染色した。細胞の生存可能性も測定する場合、10 lの7AADを分析の直前に添加した。細胞をEpics XL(Beckman Coulter, High Wycombe, UK)およびEXPO32分析ソフトウエア(Beckman Coulter)を用いてフローサイとめとりーにより分析した。
【0265】
結果
アデウイルス形質導入
Ad5ベクターの貧弱な樹状細胞DC伝染性は細胞表面上にAd5線維受容体(CAR)の欠如によることが示された。線維タンパク質を向け直して樹状細胞を結合するために、SHVKLNSまたはAPSNSTAペプチドを改変したAd5線維タンパク質のHIループ中に遺伝的に挿入した。この線維もCAR結合をブロックすることが以前に示されている2重ポイント変異(KO1)の包含により「脱標的化」された。生じた線維で偽タイプ化したGFP−マークしたAd5粒子の感染性を修飾しないAd5線維の場合のそれと、またはKO1変異のみを含む線維と比較した。
【0266】
完全培地中の100000ウイルス粒子/細胞で2つの異なるドナーからの未熟樹状細胞への再標的EGFPリポーター遺伝子を有するアデノウイルス構築物の遺伝子導入をFACSにより測定した。両方のドナーにおいて、ペプチドAまたはBのどちらかによるアデノウイルスの再標的化は64%および79%の間、例えば78.9%の形質導入効率を与え、両方は、キャプシド中に野生タイプ線維タンパク質を有するアデノウイルス、43および46%の間、と比較して、顕著に高いパーセントの細胞を形質導入し、KO1線維タンパク質では0.7%および1.4%の間、例えば0.7%であった。表6および図13を参照。
【0267】
顕著な毒性はいずれの形質導入でも見られず、細胞死は5%および15%の間で測定され、ウイルス間に差はなかった。
【表8】
【0268】
2.5%血清中の10000ウイルス粒子/細胞でのヒト一次マクロファージの形質導入も、ペプチドA(67.6%の細胞形質導入)またはペプチドB(34.6%の細胞が形質導入)をウイルスの外被に導入することは野生タイプの線維タンパク質(13.3%)またはKO1線維タンパク質(9.2%の細胞が形質導入された)を有するウイルスで見られた以上に形質導入効率を顕著に増加させた。表7を参照。
【表9】
【0269】
すべての他の細胞タイプにおいて、ウイルスがOptiMEM中の細胞あたり10000粒子で添加された場合、ペプチドAまたはペプチドBを有するウイルスは野生タイプの線維タンパク質または無関係なペプチドを有する線維タンパク質を有するウイルスより顕著に高い形質導入効率をもたらした。表8を参照。
【表10】
【0270】
Neuro−2A(N2a)細胞においては、ペプチドAを有するウイルスは63.5%の形質導入細胞を、ペプチドBでは53.7%を与え、一方野生タイプは24.3%,KO1は1.4%を無関係なペプチドは1.3%を与えた。
【0271】
HAEo−細胞においては、ペプチドAは82.9%の形質導入細胞を、ペプチドBでは79%を与え、一方野生タイプは45.8%,KO1ウイルスは2%を無関係なペプチドは3.2%を与えた。
【0272】
同じパターンの形質導入効率はHMEC細胞(ペプチドA95.7%、ペプチドB94.2%、野生タイプ73.3%、KO1 2.7%、無関係25.1%)、そしてHepG2細胞(ペプチドA88.5%、ペプチドB79.7%、野生タイプ63.8%、KO1 1.7%および無関係9.7%)でも見られた。
【0273】
ネズミ細胞の形質導入
SHVKLNSまたはAPSNSTAのアデノウイルスHIループへの導入は一次マウス樹状細胞の形質導入効率をそれぞれ71.7%および54.1%まで増加させ、そのレベルは野生タイプAd5(13.5%)(表6参照)で達成されたより顕著に良好なレベルであった。マウスScal陽性の幹細胞のずっと低い形質導入効率がすべてのアデノウイルス試料で達成され、SHVKLNSまたはAPSNSTAペプチドで再標的化されたアデノウイルスは、最良の形質導入効率5.4%を与え、Ad5ウイルスは2.2%の形質導入を、KO1は0.6%を与えた。ネズミ神経芽腫細胞(Neuro−2A)も野生タイプウイルスより効率的に形質導入し、野生タイプウイルスの24%と比較して、SHVKLNSおよびAPSNSTA再標的ウイルスについてそれぞれ63.5%および53.7%のGFP陽性の細胞を得た。
【0274】
樹状細胞の成熟
LPSに反応して成熟する樹状細胞の能力をウイルス的に形質導入したおよび形質導入しない試料において、5つの成熟マーカー;HLA−DR,CD40.CD83および共刺激分子CD80およびCD86を研究することにより測定した。すべての5つのマーカー(フローサイトメトリーで試験した)のレベルはLPSによる形質導入しない細胞の成熟について増加した。表9参照。
【表11】
【0275】
アデノウイルス形質導入細胞は、形質導入しない細胞とLPSに反応してマーカーにおいて同じ増加を示さなかった。CD86のレベルはウイルス感染に関係なくすべてのLPS処理細胞で増加したが、HLA−DR,CD40、CD80およびCD86の誘導は野生タイプウイルスに感染したものと比べて再標的化アデノウイルスで形質導入した細胞においては減少した(表6)。CD40の場合、少ない(0.5%)未熟な樹状細胞が検出可能なレベルを示したが、これは形質導入されないLPS成熟樹状細胞での30.2%まで増加し、似たレベルの成熟が野生タイプウイルス(26.4%)で形質導入細胞で見られた。しかしながら、再標的化ウイルスで形質導入した樹状細胞上のCD40のレベル波、野生タイプウイルスで形質導入後誘導されたそれ以下であった(SHVKLNSについて15.6%およびAPSNSTAについて9.8%)。ペプチド再標的化ウイルスが野生タイプウイルスに比べてLPSに反応して樹状細胞上で成熟マーカーの低レベルをもたらすこのパターンはHLA−DR,CD80およびCD83についても見られた。HLA−DR,およびCD83染色についてのフローサイトメトリープロットは、成熟はEGFPの最大域値まで発現するウイルス的に感染した細胞で起こり、それ以上成熟は阻害されるようであることを示す。図14参照。この効果はEGFP発現が域値を超える野生タイプのウイルスでも見られるが、多分形質導入されEGFPを発現する細胞のより多い数のため再標的化されたアデノウイルスで感染した試料でより著しい。
【0276】
実施例4 BLASTによるペプチド配列分析
ペプチドAPSNSTAおよびSHVKLNSを2つの標的ペプチドのBLAST配列分析により公知のリガンドに対する類似性について研究した。表10はペプチドAPSNSTAに対する相同性を有することが見出されたタンパク質を示す。表10において、太字でハイライトされた残基は同一性を示し、イタリックで示した残基は類似性を示す。
【表12】
【0277】
3つの異なったウイルスの受容体標的タンパク質がペプチドAPSNSTAと相同性を有することが見出された。これらのタンパク質はHIV−1のgp120(アクセッションナンバー:AAR95712)、ヒトエコウイルス-7のVP−1(EV−7)(アクセッションナンバー:AAK13411)およびヒトヘルペス6(HHV6)のgp82/105およびHHV7( アクセッションナンバー:AAF06020)であった。gp120はHIVビリオン粒子をCD4およびCタイプレクチン受容体(CLR)によって樹状細胞と結合し、一方EV−7のVP1は樹状細胞を含むたいていの細胞で発現する崩壊促進因子(DAF;CD55)を結合し、gp82−105は樹状細胞にも存在するヘパリンおよびヘパリン硫酸塩グリコプロテインに結合する。しかしながら、ペプチドの完全長の機能的タンパク質との単なる相同性はペプチドがタンパク質と同じ方法で機能するかどうかを決定するのに十分ではない。
【0278】
ペプチドSHVKLNSは多くのタンパク質と近い類似性を共有するが、いずれも可能性ある樹状細胞リガンドとして候補物ではない。
【0279】
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【図面の簡単な説明】
【0280】
【図1】プラスチックに対する結合を対照としてヒトおよびマウス樹状細胞へのファージクローンの結合の力価決定の結果を示す。図1はドナーJD,SおよびLAから得た6日ヒト単球由来未熟な樹状細胞への結合を示す。多くのファージをプラーク形成単位(pfu)として示した。結合したファージの配列決定はペプチドAPSNSTA、QLLTGAS、TARDYRL、FQSQYQK、PLMPSLS、FPRAPHH、MASISMK、DWWHTSA、SHVKLNSおよびSPALKTVを同定し、非挿入ペプチドを有するファージをも示す。
【0281】
【図2a】蛍光活性細胞ソーティング(FACS)により測定した、4日ヒト単球由来未熟な樹状細胞に対するファージクローンの結合を示す。FITCに対して陽性の細胞のパーセントをFACS分析により測定した。図2aはドナーSB,U,SH,KGおよびAMからの細胞に対する結合を示す。
【図2b】図2bはドナーA〜Eからの細胞に対する結合を示す。両方の場合において、結合ファージの配列決定はペプチドAPSNSTA、FQSQYQK、DWWHTSA、SHVKLNS、SPALKTVおよびSQKNPQMを同定した。
【0282】
【図3a】FACSにより測定した、4日ヒト単球由来未熟な樹状細胞に対するファージクローンの結合を示す。図3aはKGおよびSBからの細胞への結合を示す。
【図3b】図3bはドナーAおよびBの細胞への結合を示す。両方の場合において、結合したファージの次の配列決定はペプチドQLLTGAS、TARDYRL、PLMPSLS、FPRAPHH、MASISMK、STPPNTTを同定した。
【0283】
【図4a】脂質−ペプチド−DNA(LID)におけるファージ由来標的ペプチドを用いるヒト単球由来未熟な樹状細胞のトランスフェクションを示す。図4aはファージ由来ペプチドA誘導体([K]16−GACSHVKLNSCG)、ペプチドB誘導体([K]16−GACAPSNSTACG)、ペプチド6誘導体([K]16−GACRREEWACG)またはスクランブル対照ペプチド6J([K]16−GACATRWARECG)で6日単球由来樹状細胞のトランスフェクションを示す。ペプチドAおよびB誘導体はファージDNAに対する比で1.5:1(A1.5,B1.5)3:1(A3,B3)および7:1(A7,B7)のトランスフェクション複合体で用いた。対照はトランスフェクション複合体を添加しないもの(OptiMEMのみ)、並びにペプチド6誘導体およびペプチド6J(そのスクランブル対照)でトランスフェクションしたものをペプチド:DNAの3:1の比で含む。それぞれの結果は3つのプールしたトランスフェクション反応からのGFP陽性の細胞のパーセントである。
【図4b】図4bはファージ由来ペプチドA、B、C([K]16−GACMASISMKCQ)、D([K]16−GACFPRAPHHCG)およびF([K]16−GACDWWHTSACG)で4日の単球由来樹状細胞のトランスフェクションの結果を示す。
【0284】
【図5】脂質−ペプチド−DNA(LID)トランスフェクションベクターを用いた4日未熟な単球由来樹状細胞のトランスフェクション後のトランスフェクションと細胞死を示す(図4の注を参照)。ペプチド誘導体A,B,C,Dおよび6を用い、ペプチドを含まないベクターを対照として用いた。脂質としてリポフェクチンまたはリポフェクタミン2000を含むベクターを用い、ペプチド誘導体Aを含むベクターおよび脂質を用いないのも対照として用いた。脂質:DNAの比は重量で0.75:1であった。すべてのペプチド:DNA電荷比は7:1であった。図5bは図5aのベクターを用いたトランスフェクション後の細胞死を示す。細胞死はトランスフェクション後24時間のフローサイトメトリーにより測定した7AADの保持により測定した。
【0285】
【図6】図5の短い記述で記載した同じベクターシステムにおけるペプチド誘導体A,B,C,D,Fおよび6を用いる3日樹状細胞のトランスフェクション後のトランスフェクションおよび細胞死を示す。図6aはトランスフェクション効率を示す。図6bは細胞死を示す。
【0286】
【図7】ペプチド誘導体A,B,C,D,Fおよび6並びに対照ちしてペプチドを用いないで、図5の注に記載したLIDベクターシステムを用いてヒト末梢血単球のトランスフェクション後のトランスフェクションと細胞死を示す。図7aはトランスフェクション効率を示す。図7bは細胞死を示す。
【0287】
【図8】ペプチドAおよびリポフェクチンを含むLIDトランスフェクションベクター(図5の注を参照)でトランスフェクトした4日の未熟な樹状細胞がCD86とHLA−DRを上方調節することを示す。セル(A)の上の列はトランスフェクトしておらず、セル(B)の上の列はトランスフェクトしている。各試料からの細胞を、フローサイトメトリーの前にHLA−DRおよびCD86に対するPEコンジュゲート抗体で染色した。結果は2つの別のトランスフェクションからのプールした細胞を示し、他のドナーからの樹状細胞の場合も再現可能であった。
【0288】
【図9a】LPS(リポポリサッカライド)に反応して4日樹状細胞のトランスフェクションの成熟を示す。未熟な細胞をペプチドDおよびリポフェクチンを含みLIDベクターでトランスフェクトした(図5の注を参照)。細胞を図8のように抗体で染色した。示した結果は2つの別のトランスフェクションからのプールした細胞である。列Aは未熟な細胞を示し、列BはLPSで成熟した細胞を示す。
【図9b】列Cは4日にトランスフェクトしLPSで成熟した細胞を示し、列Dは4日にトランスフェクトし、6日にLPSで成熟した細胞を示す。
【0289】
【図10】ファージ由来ペプチドAおよびB誘導体(図4の注を参照)でのHMEC−1細胞系のトランスフェクションを示す。結果はRLU/mgで示す。RLUは比較の光単位である。ペプチドAおよびB誘導体、および対照ペプチド6誘導体およびそのスクランブル対照ペプチド6Jを用いる細胞のトランスフェクションは、3:1,5:1および7:1を含むペプチド:DNA電荷比で行われた(A3,A5,A7,B3,B5およびB7,63、65および6J5)。対照はトランスフェクション複合体を添加しない細胞(OptiMEMのみ)、インテグリン結合ペプチド(ペプチド6誘導体)でトランスフェクトした細胞、ペプチド6J誘導体でトランスフェクとした細胞(ペプチド6Jはペプチド6のスクランブルした対照である)を含む。各結果は3のプールしたトランスフェクション反応からのGFP陽性の細胞のパーセントである。各結果は6つの値の平均であり、誤差の棒は平均についての標準偏差である。
【0290】
【図11】ファージ由来合成ペプチドおよび図10について記載した対照についてのHAEo−細胞系のトランスフェクションを示す。
【0291】
【図12】ファージ由来合成ペプチドおよび図10について記載した対照についてのN2a(Neuro2a)ネズミ細胞のトランスフェクションを示す。
【0292】
【図13】ペプチドA(カラムA)またはペプチドB(カラムB)をキャプシドの線維タンパク質のHI領域に導入することにより再標的化した6日のヒト単球由来未熟な樹状細胞のトランスフェクションを、キャプシドのKO1線維タンパク質(カラムKO1)、キャプシドの野生タイプの線維タンパク質(カラムWT)、ブランクを対照として示す。暗い影にしたカラムは形質導入を示し、明るい影にしたカラムは細胞死%を示す。
【0293】
【図14a】LPSに反応して成熟する6日の樹状細胞の能力におよぼすアデノウイルス形質導入の影響を示す。未熟な樹状細胞を野生タイプのAD5で、またはペプチドSHBKLNSまたはペプチドAPSNSTAで再標的化したAD5で感染させた。LPSは3時間のインキュベートの後、添加した。上の列はHLA−DRを示し、下の列はCD83を示す。示した結果は3つの別の形質導入からプールした細胞であり、他のドナーからの樹状細胞について再現可能である。
【図14b】図14aの続きである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)PX1X2X3T(配列番号1)
b)PSX4S(配列番号2)
c)QX5X6X7Q(配列番号3)
d)SX8S(配列番号4)
(式中、
X1、X2、X3は同一または異なっていてもよく、それぞれアミノ酸残基を表し、
X4は、アミノ酸残基を表し、
X5、およびX7は同一または異なっていてもよく、それぞれアミノ酸残基を表し、そしてX6はアミド側鎖を有するアミノ酸残基を表わし、
X8は脂肪族側鎖を有するアミノ酸残基を表す。
但し、配列番号1,2,3または4のアミノ配列を含むペプチドは天然の完全長のたんぱく質ではない。)
から選択されるアミノ酸配列よりなる、または含むペプチド。
【請求項2】
アミノ酸配列PX1X2X3T(配列番号1)(式中、X2はNまたはLを表す)を含む請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
X2はLを表す請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
X1はS,AまたはPを表す請求項3に記載のペプチド。
【請求項5】
X3はS,KまたはTを表す請求項3に記載のペプチド。
【請求項6】
X1はAを表す請求項3〜5のいずれかに記載のペプチド。
【請求項7】
X3はTを表す請求項3〜6のいずれかに記載のペプチド。
【請求項8】
アミノ酸配列PALKTよりなる、または含む請求項3に記載のペプチド。
【請求項9】
X2はNを表す請求項1または2に記載のペプチド。
【請求項10】
X1はSまたはPを表す請求項9に記載のペプチド。
【請求項11】
X3はSまたはTを表す請求項9または10に記載のペプチド。
【請求項12】
アミノ酸配列PALKT(配列番号6)、PSNST(配列番号8)またはPPNTT(配列番号9)よりなる、または含む請求項1に記載のペプチド。
【請求項13】
C末端にAまたはV残基を有する請求項1〜12のいずれかに記載のペプチド。
【請求項14】
N末端にA、SまたはT残基を有する請求項1〜13のいずれかに記載のペプチド。
【請求項15】
配列STPPNTT(配列番号17)、APSNSTA(配列番号15)およびSPALKTV(配列番号16)を有する請求項12または13に記載のペプチド。
【請求項16】
アミノ酸配列PSX4S(配列番号2)(式中、X2はNまたはLを表す)よりなる、または含む請求項1に記載のペプチド。
【請求項17】
N末端にAまたはL残基を有する請求項16に記載のペプチド。
【請求項18】
配列LPSLS(配列番号22)を有する請求項17に記載のペプチド。
【請求項19】
N末端に1以上の更なる残基を有する請求項16〜18のいずれかに記載のペプチド。
【請求項20】
配列MLPSLS(配列番号23)またはPMLPSLS(配列番号24)を有する請求項19に記載のペプチド。
【請求項21】
アミノ酸配列QX5X6X7Q(配列番号3)(式中、独立にX6はNまたはQ残基を表す)よりなる、または含む請求項1に記載のペプチド。
【請求項22】
独立にX5がKまたはSを表し、X7はPまたはYを表す請求項21に記載のペプチド。
【請求項23】
X5がKで、X6がNで、X7がPであるか、またはX5がSで、X6がQで、X7がYである請求項21に記載のペプチド。
【請求項24】
N末端にSまたはF残基を有しおよび/またはC末端にMまたはK残基を有する請求項21〜23のいずれかに記載のペプチド。
【請求項25】
配列SQKNPQM(配列番号25)またはFQSQYSQK(配列番号26)を有する請求項24に記載のペプチド。
【請求項26】
アミノ酸SX8S(配列番号4)(式中、X8はLまたはIを表す)よりなる、または含む請求項1に記載のペプチド。
【請求項27】
N末端に独立にAまたはP残基のいずれかまたは両方を有し、C末端にM残基を有する請求項26に記載のペプチド。
【請求項28】
N末端および/またはC末端に1以上の更なる残基を有する請求項27に記載のペプチド。
【請求項29】
配列PMLPSLSまたはMASISMKまたは1以上の末端残基が除かれているその変異体を有する請求項27または28に記載のペプチド。
【請求項30】
請求項1に記載され、表1に記載されたペプチド。
【請求項31】
N末端および/またはC末端に1以上の更なるアミノ酸残基を有する請求項1に記載のペプチド。
【請求項32】
30までのアミノ、例えば20までのアミノ酸、例えば12までのアミノ酸、例えば7アミノ酸を有する請求項1〜30のいずれかに記載のペプチド。
【請求項33】
アミノ酸の環状領域を含む請求項1〜32のいずれかに記載のペプチド。
【請求項34】
ペプチドが1以上のジサルファイド結合を形成できる2以上のシステイン残基を含む請求項33に記載のペプチド。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれかに記載のペプチドであるが、請求項1の但し書きを受けず、そのペプチドはポリカチオン性核酸結合成分に結合しているペプチド。
【請求項36】
ポリカチオン性核酸結合成分がポリエチレンイミンまたはデンドリマーである請求項35に記載のペプチド。
【請求項37】
ポリカチオン性核酸結合成分が1以上のカチオン性モノマーを含むオリゴペプチドである請求項35に記載のペプチド。
【請求項38】
オリゴペプチドがオリゴリシン、オリゴアルギニン、オリゴヒスチジンまたはヒスチジン、アルギニンおよびリシン残基のいずれかの組み合わせを含む混合オリゴマーである請求項37に記載のペプチド。
【請求項39】
カチオン性オリゴペプチドが5〜25のモノマー、好ましくは10〜20のモノマーを有する請求項37または38に記載のペプチド。
【請求項40】
オリゴペプチドがオリゴリシンである請求項39に記載のペプチド。
【請求項41】
オリゴリシンが14〜18のモノマー、例えば6モノマーを有する請求項40に記載のペプチド。
【請求項42】
ペプチドがポリカチオン性核酸結合成分にスペーサー要素を介して結合している請求項35〜41のいずれかに記載のペプチド
【請求項43】
スペーサー要素がGG または GAであるか、またはジペプチドスペーサーGG(グリシン−グリシン)およびGA(グリシン−アラニン)より長いおよび/または疎水性である請求項42に記載のペプチド。
【請求項44】
スペーサー要素がGAである請求項42または43に記載のペプチド。
【請求項45】
スペーサー要素が化学結合である請求項42に記載のペプチド。
【請求項46】
ペプチドがポリエチレンイミンとジサルファイド結合によりただし結合している請求項36に記載のペプチド。
【請求項47】
式A−B−C
(式中、Aはポリカチオン性核酸結合成分、Bは化学結合またはスペーサー要素であり、そしてCは,請求項1〜34のいずれかに記載のペプチドであり、そのペプチドは請求項1の但し書きを受けない)
のペプチド誘導体。
【請求項48】
ポリカチオン性核酸結合成分が請求項36〜41のいずれかに定義した通りである請求項47に記載のペプチド誘導体。
【請求項49】
スペーサー因子が請求項42〜46のいずれかに定義した通りである請求項47に記載のペプチド誘導体。
【請求項50】
誘導体が請求項36〜41のいずれかに記載したペプチドの形である請求項47に記載のペプチド誘導体。
【請求項51】
(ii)脂質成分
(iii)ポリカチオン性核酸結合性成分および
(iv)請求項1〜34のいずれかにペプチド(そのペプチドは請求項1の )
を含む非ウイルス性トランスフェクション混合物。
【請求項52】
ポリカチオン性核酸結合成分が請求項36〜41のいずれかに定義した通りである請求項51に記載の混合物。
【請求項53】
成分(iii)および(iv)が請求項39〜50のいずれかに記載したペプチドまたはペプチド誘導体の形である請求項51に記載の混合物。
【請求項54】
脂質成分がカチオン性脂質および膜不安定化またはフソジェニック(fusogenic)な性質を有する脂質から選択される1以上の脂質であるか、または含む請求項51〜53のいずれかに記載の混合物。
【請求項55】
脂質成分が中性の脂質ジオレイルホスファチジル-エタノ−ルアミン(DOPE)または類似の膜不安定化またはフソジェニックな性質を有する脂質であるか、または含む請求項54に記載の混合物。
【請求項56】
脂質成分がカチオン性脂質N-〔1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル〕-N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)または類似のカチオン性の性質を有する脂質であるか、または含む請求項54または55に記載の混合物。
【請求項57】
脂質成分がDOPEおよびDOTMAの混合物、特にその等モル混合物であるか、または含む請求項56に記載混合物。
【請求項58】
脂質成分:ペプチド/ポリカチオン性核酸結合成分の比が重量で0.75:4、またはモルベースで0.5nmol:1.25nmolである請求項57に記載の混合物。
【請求項59】
脂質成分が2,3−ジオレイルオキシ−N−〔2-(スペルミジンカルボキサミド)エチル〕−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオリドアセテート(DOSPA)またはDOSPAに類似の性質を有する脂質であるか、または含む請求項51〜58のいずれかに記載の混合物。
【請求項60】
脂質成分がDOPEおよびDOSPAの混合物、特に1重量部のDOPEに対して3重量部のDOSPAである混合物であるか、または含む請求項59に記載の混合物。
【請求項61】
脂質成分が、一般式(I):
【化1】
(式中、 X1およびX2は同一または異なり、−OCH2−および−O−C(O)−から選択され;
R1およびR2は同一または異なり、直鎖または分枝の、飽和または不飽和のC7〜C24ハイドロカルビル基であり、ヒドロキシ、ハロゲンおよびOR’から選択された1以上の置換基により置換され、または置換されず、R’はC1〜C6のヒドロカルビル基であり;
それぞれのR3およびR4は同一または異なり直鎖または分枝の、飽和または不飽和のC1〜C10ヒドロカルビル基であり、ヒドロキシ、ハロゲン、OR’、−C(O)OH.−CN,NR’R”,および−C(O)R”から選択されろ1以上の置換基により置換されるか、または置換されず、R’およびR”は同一または異なり、C1〜C6のヒドロカルビル基である)、
一般式(II):
【化2】
(式中、 X1およびX2は同一または異なり、上に定義した通りである。
R1およびR2は同一または異なり、上に定義した通りである。
R5は−N+(R3)2−R6(各R3は同一または異なり、上に定義した通りである)である。
R6は
(a)−[A-Y-]-nR4:
(式中、
各Yは同一または異なり、−N+(R4)2−であり、R4は上に定義した通りである
各Aは同一または異なりC1−20アルキレン基であり、ヒドロキシ、ハロゲン、OR’、−C(O)OH、−CN,NR’R”,および−C(O)R”から選択される(R’およびR”は同一または異なり、C1〜C6のヒドロカルビル基である)1以上の置換基で置換されるかまたは置換されない。
nは1〜10であり、R4は上に定義した通りである)であるか、または
(b) −[B-O-]-mB-Q
(式中、
各Bは同一または異なり、ヒドロキシ、ハロゲン、OR’、−C(O)OH.−CN,NR’R”,および−C(O)R”から選択される(R’およびR”は同一または異なり、C1〜C6のヒドロカルビル基である)1以上の置換基で置換されまたは置換されないC1−10アルキレン基であり、
mは1〜10であり;
Qは−N+(R3)3、−OH,OR’、−OC(O)R’,およびハロゲンから選択され、R3およびR’は上に定義した通りである。)
)である)、または
一般式(III):
【化3】
(式中、Rは,同一または異なり、
(a)H,
(b)−CH2−N+(R2)2−CH2−CH2−[Y−(CH2)p]q−Z、または
(c)−CH2−N+(R4)3
である。但し1つのRはHで、他は基(b)であるか、両方のRが基(c)である。
Xは同一または異なり、OCH2またはO−C(O)である。
R1は同一または異なりC7〜C23の飽和または不飽和鎖である。
R2は同一または異なりC1〜C6の飽和または不飽和鎖である。
YはNH,CH2,O,またはN(アセチル)である。
ZはO(C1〜C4),OC(O)R3,N+R34,OH,F,Cl,BrまたはIでる(R3はC1〜C6アルキルである)である。
R4は同一または異なり、C1〜C6鎖である。
nは2,3,または4である。
mは1〜200であり、それが少なくとも2の場合、生じた繰り返し単位は同一または異なり得る)
の脂質のいずれかの1以上であるか、または含む請求項51〜53に記載の混合物。
【請求項62】
混合物脂質成分、請求項1〜14のいずれかに記載のペプチド(そのペプチドは請求項1の但し書きを条件としない)およびポリカチオン性核酸結合成分としての〔K〕16を含む請求項51〜61のいずれかに記載の混合物。
【請求項63】
脂質成分:ペプチド/ポリカチオン性核酸結合成分の比が重量で12:4:1である請求項62に記載の混合物。
【請求項64】
請求項51〜63のいずれかに記載の混合物の製造方法であって、成分(ii),(iii)および(iv)を混合することを含む方法。
【請求項65】
(i)核酸
(ii)脂質成分
(iii)ポリカチオン性核酸結合性成分
(iv)請求項1〜34のいずれかに記載のペプチド(そのペプチドは請求項1の但し書きを条件としない)
のペプチド
を含む非ウイルス性トランスフェクション複合体。
【請求項66】
ポリカチオン性核酸結合成分が請求項36〜41のいずれかに定義した通りである請求項65に記載の複合体。
【請求項67】
成分(iii)および(iv)が請求項39〜50のいずれかに記載のペプチドまたはペプチド誘導体の形である請求項65に記載の混合物。
【請求項68】
脂質成分が請求項54〜63のいずれかに定義の通りである請求項65〜67のいずれかに記載の複合体。
【請求項69】
核酸成分が遺伝子治療、遺伝子ワクチン化またはアンチセンス治療に適当な核酸配列、または所望のタンパク質をコードする請求項65〜68のいずれかに記載の複合体。
【請求項70】
核酸成分がタンパク質のコード配列、cDNAコピー、およびそのゲノムバージョン(イントロンそしてまたエクソンを含む)、遺伝子の調節上流および下流配列、遺伝子修復および相同的組換えに関与する配列、プラスミドに含まれる短い配列、またはプラスミドまたは核酸の組み込みを媒介する他の大きい核酸、例えばファージインテグラーゼ、または「眠れる美」トランスポゾン、アンチセンス調節のために、または転写因子デコイとして有用なDNA,ワクチン反応をブーストするアジュバンドとして有用なオリゴヌクレオチド、例えばCpGリッチな配列、またはスモール・インターフェアリングRNAである請求項65〜69のいずれかに記載の複合体。
【請求項71】
核酸の転写および/または翻訳調節因子が提供され、核酸が場合によりファージまたはベクターにパックされる請求項69または70に記載の複合体。
【請求項72】
核酸成分がDNAである請求項65〜71のいずれかに記載の複合体。
【請求項73】
核酸成分がRNAである請求項65〜71のいずれかに記載の複合体。
【請求項74】
核酸および請求項51〜63のいずれかに記載のトランスフェクション混合物を含む請求項65に記載の複合体。
【請求項75】
核酸が請求項69〜73のいずれかに記載の通りである請求項74に記載の複合体。
【請求項76】
成分(i)、(ii)、(iii)および(iv)を混合することを含む請求項65〜73のいずれかに記載の複合体の製造方法。
【請求項77】
成分を次の順序:脂質成分、ペプチド/ポリカチオン性核酸結合成分、核酸で混合する請求項76に記載の方法。
【請求項78】
核酸を請求項51〜63のいずれかに記載の混合物と共に導入することを含む請求項74または75に記載の複合体の製造方法。
【請求項79】
請求項76〜78のいずれかに記載の方法により得られうる請求項65〜75のいずれかに記載の複合体。
【請求項80】
(i)核酸
(iii)ポリカチオン性核酸結合性成分
(iv)ポリカチオン性核酸結合成分、および
(iv) 請求項1〜34のいずれかに記載のペプチド(そのペプチドは請求項1の但し書きを条件としない)
を含む非ウイルス性トランスフェクション複合体。
【請求項81】
核酸が請求項69〜73のいずれかに定義する通りであり、ポリカチオン性核酸結合成分が請求項36〜41のいずれかに定義する通りであり、そして場合によりペプチドが請求項35〜46のいずれかに定義する通りであるか、または請求項47〜50のいずれかに記載するペプチド誘導体である請求項80に記載の複合体。
【請求項82】
請求項80または81に記載の複合体の製造方法であって、成分(i)、(iii)および(iv)を次の順序:ペプチド/ポリカチオン性核酸結合成分、核酸で混合することを含む方法。
【請求項83】
請求項82の方法により得られ得る請求項80または81に記載の方法。
【請求項84】
請求項1〜34のいずれかに記載のペプチドを含むウイルスベクター。
【請求項85】
ウイルスベクターがレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)またはヘルペス単純ウイルスの遺伝的に操作され、複製欠陥誘導体である請求項84に記載のウイルスベクター。
【請求項86】
ウイルスベクターがアデノウイルスである請求項85に記載のウイルスベクター。
【請求項87】
アデノウイルスがアデノウイルスタイプ5である請求項85に記載のウイルスベクター。
【請求項88】
ペプチドがウイルスキャプシドまたはことのタンパク質に導入されている請求項84〜87のいずれかに記載のウイルスベクター。
【請求項89】
ペプチドがアデノウイルスキャプシドの線維タンパク質のHI領域に導入される請求項87または88に記載のウイルスベクター。
【請求項90】
ペプチドがベクターと複合体を形成し、そのペプチドはウイルスキャプシドまたは外被に静電的に結合することができるカチオン性ドメインを含む請求項84〜87のいずれかに記載のウイルスベクター。
【請求項91】
ペプチドが請求項35〜46のいずれかに記載の通りであるか、または請求項47〜50のいずれかに記載のペプチド誘導体の形である請求項90に記載のウイルスベクター。
【請求項92】
ペプチドがウイルスに結合することができる抗体によりウイルスベクターで導入される請求項84〜87のいずれかに記載のウイルスベクター。
【請求項93】
抗体がペプチドおよびウイルスに結合することができる2特異性抗体である請求項92に記載のウイルスベクター。
【請求項94】
ペプチドおよび抗体が融合タンパク質の形である請求項92に記載のウイルスベクター。
【請求項95】
抗体がウイルスキャプシドまたはこと上のエピトープに結合する請求項92〜94のいずれかに記載のウイルスベクター。
【請求項96】
抗体がいずれかのクラスの抗体であるか、抗原結合ドメインであるか、および/またはキメラまたはヒト化抗体である請求項92〜95のいずれかに記載のウイルスベクター。
【請求項97】
細胞を核酸でトランスフェクトする方法であって、細胞をインビトロまたはインビボで請求項65〜75,79〜81,および83〜96のいずれかに記載のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターと接触させることを含む方法。
【請求項98】
請求項65〜75,79〜81,および83〜96のいずれかに記載のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターを、医薬的に適当な担体と混合してまたは結合して含む医薬組成物。
【請求項99】
遺伝子の欠陥または欠陥によりヒトまたは非ヒト動物に起こる状態の治療または予防のための方法であって、ヒトまたは非ヒト動物に請求項65〜75,79〜81,および83〜96のいずれかに記載のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターを投与することを含む方法。
【請求項100】
ヒトまたは非ヒト動物の治療的または予防的免疫化方法であって、ヒトまたは非ヒト動物に請求項65〜75,79〜81,および83〜96のいずれかに記載のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターを投与することを含む方法。
【請求項101】
アンチセンス治療方法であって、ヒトまたは非ヒト動物に請求項65〜75,79〜81,および83〜96のいずれかに記載のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターを投与することを含む方法。
【請求項102】
薬剤またはワクチンとしての使用のための請求項65〜75,79〜81,および83〜96のいずれかに記載のトランスフェクション複合体またはウイルスベクター
【請求項103】
遺伝子の欠陥および/または欠陥によりヒトまたは非ヒト動物に起こる状態の治療または予防のための、または治療的若しくは予防的免疫化のための、またはアンチセンス治療のための薬剤の製造のための請求項65〜75,79〜81,および83〜96のいずれかに記載のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターの使用。
【請求項104】
(i)核酸、
(ii)脂質成分、
(iii)ポリカチオン性核酸結合成分、および
(iv)請求項1〜34のいずれかに記載のペプチド(そのペプチドは請求項1の但し書きを条件としない)
を含むキット。
【請求項105】
(i)核酸、
(iii)ポリカチオン性核酸結合成分、および
(iv)請求項1〜34のいずれかに記載のペプチド(そのペプチドは請求項1の但し書きを条件としない)
を含むキット。
【請求項106】
ウイルスおよび請求項1〜34のいずれかに記載のペプチドに結合できる2特異性抗体。
【請求項107】
請求項1〜34のいずれかに記載のペプチド融合ペプチドで(そのペプチドは請求項1の但し書きを条件としない)およびウイルスに結合できる抗体を含む融合ペプチド。
【請求項108】
siRNAを同定する方法であって、標的遺伝子を発現する細胞をsiRNAでトランスフェクトし、発現レベルを定量することを含む方法。
【請求項1】
a)PX1X2X3T(配列番号1)
b)PSX4S(配列番号2)
c)QX5X6X7Q(配列番号3)
d)SX8S(配列番号4)
(式中、
X1、X2、X3は同一または異なっていてもよく、それぞれアミノ酸残基を表し、
X4は、アミノ酸残基を表し、
X5、およびX7は同一または異なっていてもよく、それぞれアミノ酸残基を表し、そしてX6はアミド側鎖を有するアミノ酸残基を表わし、
X8は脂肪族側鎖を有するアミノ酸残基を表す。
但し、配列番号1,2,3または4のアミノ配列を含むペプチドは天然の完全長のたんぱく質ではない。)
から選択されるアミノ酸配列よりなる、または含むペプチド。
【請求項2】
アミノ酸配列PX1X2X3T(配列番号1)(式中、X2はNまたはLを表す)を含む請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
X2はLを表す請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
X1はS,AまたはPを表す請求項3に記載のペプチド。
【請求項5】
X3はS,KまたはTを表す請求項3に記載のペプチド。
【請求項6】
X1はAを表す請求項3〜5のいずれかに記載のペプチド。
【請求項7】
X3はTを表す請求項3〜6のいずれかに記載のペプチド。
【請求項8】
アミノ酸配列PALKTよりなる、または含む請求項3に記載のペプチド。
【請求項9】
X2はNを表す請求項1または2に記載のペプチド。
【請求項10】
X1はSまたはPを表す請求項9に記載のペプチド。
【請求項11】
X3はSまたはTを表す請求項9または10に記載のペプチド。
【請求項12】
アミノ酸配列PALKT(配列番号6)、PSNST(配列番号8)またはPPNTT(配列番号9)よりなる、または含む請求項1に記載のペプチド。
【請求項13】
C末端にAまたはV残基を有する請求項1〜12のいずれかに記載のペプチド。
【請求項14】
N末端にA、SまたはT残基を有する請求項1〜13のいずれかに記載のペプチド。
【請求項15】
配列STPPNTT(配列番号17)、APSNSTA(配列番号15)およびSPALKTV(配列番号16)を有する請求項12または13に記載のペプチド。
【請求項16】
アミノ酸配列PSX4S(配列番号2)(式中、X2はNまたはLを表す)よりなる、または含む請求項1に記載のペプチド。
【請求項17】
N末端にAまたはL残基を有する請求項16に記載のペプチド。
【請求項18】
配列LPSLS(配列番号22)を有する請求項17に記載のペプチド。
【請求項19】
N末端に1以上の更なる残基を有する請求項16〜18のいずれかに記載のペプチド。
【請求項20】
配列MLPSLS(配列番号23)またはPMLPSLS(配列番号24)を有する請求項19に記載のペプチド。
【請求項21】
アミノ酸配列QX5X6X7Q(配列番号3)(式中、独立にX6はNまたはQ残基を表す)よりなる、または含む請求項1に記載のペプチド。
【請求項22】
独立にX5がKまたはSを表し、X7はPまたはYを表す請求項21に記載のペプチド。
【請求項23】
X5がKで、X6がNで、X7がPであるか、またはX5がSで、X6がQで、X7がYである請求項21に記載のペプチド。
【請求項24】
N末端にSまたはF残基を有しおよび/またはC末端にMまたはK残基を有する請求項21〜23のいずれかに記載のペプチド。
【請求項25】
配列SQKNPQM(配列番号25)またはFQSQYSQK(配列番号26)を有する請求項24に記載のペプチド。
【請求項26】
アミノ酸SX8S(配列番号4)(式中、X8はLまたはIを表す)よりなる、または含む請求項1に記載のペプチド。
【請求項27】
N末端に独立にAまたはP残基のいずれかまたは両方を有し、C末端にM残基を有する請求項26に記載のペプチド。
【請求項28】
N末端および/またはC末端に1以上の更なる残基を有する請求項27に記載のペプチド。
【請求項29】
配列PMLPSLSまたはMASISMKまたは1以上の末端残基が除かれているその変異体を有する請求項27または28に記載のペプチド。
【請求項30】
請求項1に記載され、表1に記載されたペプチド。
【請求項31】
N末端および/またはC末端に1以上の更なるアミノ酸残基を有する請求項1に記載のペプチド。
【請求項32】
30までのアミノ、例えば20までのアミノ酸、例えば12までのアミノ酸、例えば7アミノ酸を有する請求項1〜30のいずれかに記載のペプチド。
【請求項33】
アミノ酸の環状領域を含む請求項1〜32のいずれかに記載のペプチド。
【請求項34】
ペプチドが1以上のジサルファイド結合を形成できる2以上のシステイン残基を含む請求項33に記載のペプチド。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれかに記載のペプチドであるが、請求項1の但し書きを受けず、そのペプチドはポリカチオン性核酸結合成分に結合しているペプチド。
【請求項36】
ポリカチオン性核酸結合成分がポリエチレンイミンまたはデンドリマーである請求項35に記載のペプチド。
【請求項37】
ポリカチオン性核酸結合成分が1以上のカチオン性モノマーを含むオリゴペプチドである請求項35に記載のペプチド。
【請求項38】
オリゴペプチドがオリゴリシン、オリゴアルギニン、オリゴヒスチジンまたはヒスチジン、アルギニンおよびリシン残基のいずれかの組み合わせを含む混合オリゴマーである請求項37に記載のペプチド。
【請求項39】
カチオン性オリゴペプチドが5〜25のモノマー、好ましくは10〜20のモノマーを有する請求項37または38に記載のペプチド。
【請求項40】
オリゴペプチドがオリゴリシンである請求項39に記載のペプチド。
【請求項41】
オリゴリシンが14〜18のモノマー、例えば6モノマーを有する請求項40に記載のペプチド。
【請求項42】
ペプチドがポリカチオン性核酸結合成分にスペーサー要素を介して結合している請求項35〜41のいずれかに記載のペプチド
【請求項43】
スペーサー要素がGG または GAであるか、またはジペプチドスペーサーGG(グリシン−グリシン)およびGA(グリシン−アラニン)より長いおよび/または疎水性である請求項42に記載のペプチド。
【請求項44】
スペーサー要素がGAである請求項42または43に記載のペプチド。
【請求項45】
スペーサー要素が化学結合である請求項42に記載のペプチド。
【請求項46】
ペプチドがポリエチレンイミンとジサルファイド結合によりただし結合している請求項36に記載のペプチド。
【請求項47】
式A−B−C
(式中、Aはポリカチオン性核酸結合成分、Bは化学結合またはスペーサー要素であり、そしてCは,請求項1〜34のいずれかに記載のペプチドであり、そのペプチドは請求項1の但し書きを受けない)
のペプチド誘導体。
【請求項48】
ポリカチオン性核酸結合成分が請求項36〜41のいずれかに定義した通りである請求項47に記載のペプチド誘導体。
【請求項49】
スペーサー因子が請求項42〜46のいずれかに定義した通りである請求項47に記載のペプチド誘導体。
【請求項50】
誘導体が請求項36〜41のいずれかに記載したペプチドの形である請求項47に記載のペプチド誘導体。
【請求項51】
(ii)脂質成分
(iii)ポリカチオン性核酸結合性成分および
(iv)請求項1〜34のいずれかにペプチド(そのペプチドは請求項1の )
を含む非ウイルス性トランスフェクション混合物。
【請求項52】
ポリカチオン性核酸結合成分が請求項36〜41のいずれかに定義した通りである請求項51に記載の混合物。
【請求項53】
成分(iii)および(iv)が請求項39〜50のいずれかに記載したペプチドまたはペプチド誘導体の形である請求項51に記載の混合物。
【請求項54】
脂質成分がカチオン性脂質および膜不安定化またはフソジェニック(fusogenic)な性質を有する脂質から選択される1以上の脂質であるか、または含む請求項51〜53のいずれかに記載の混合物。
【請求項55】
脂質成分が中性の脂質ジオレイルホスファチジル-エタノ−ルアミン(DOPE)または類似の膜不安定化またはフソジェニックな性質を有する脂質であるか、または含む請求項54に記載の混合物。
【請求項56】
脂質成分がカチオン性脂質N-〔1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル〕-N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)または類似のカチオン性の性質を有する脂質であるか、または含む請求項54または55に記載の混合物。
【請求項57】
脂質成分がDOPEおよびDOTMAの混合物、特にその等モル混合物であるか、または含む請求項56に記載混合物。
【請求項58】
脂質成分:ペプチド/ポリカチオン性核酸結合成分の比が重量で0.75:4、またはモルベースで0.5nmol:1.25nmolである請求項57に記載の混合物。
【請求項59】
脂質成分が2,3−ジオレイルオキシ−N−〔2-(スペルミジンカルボキサミド)エチル〕−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオリドアセテート(DOSPA)またはDOSPAに類似の性質を有する脂質であるか、または含む請求項51〜58のいずれかに記載の混合物。
【請求項60】
脂質成分がDOPEおよびDOSPAの混合物、特に1重量部のDOPEに対して3重量部のDOSPAである混合物であるか、または含む請求項59に記載の混合物。
【請求項61】
脂質成分が、一般式(I):
【化1】
(式中、 X1およびX2は同一または異なり、−OCH2−および−O−C(O)−から選択され;
R1およびR2は同一または異なり、直鎖または分枝の、飽和または不飽和のC7〜C24ハイドロカルビル基であり、ヒドロキシ、ハロゲンおよびOR’から選択された1以上の置換基により置換され、または置換されず、R’はC1〜C6のヒドロカルビル基であり;
それぞれのR3およびR4は同一または異なり直鎖または分枝の、飽和または不飽和のC1〜C10ヒドロカルビル基であり、ヒドロキシ、ハロゲン、OR’、−C(O)OH.−CN,NR’R”,および−C(O)R”から選択されろ1以上の置換基により置換されるか、または置換されず、R’およびR”は同一または異なり、C1〜C6のヒドロカルビル基である)、
一般式(II):
【化2】
(式中、 X1およびX2は同一または異なり、上に定義した通りである。
R1およびR2は同一または異なり、上に定義した通りである。
R5は−N+(R3)2−R6(各R3は同一または異なり、上に定義した通りである)である。
R6は
(a)−[A-Y-]-nR4:
(式中、
各Yは同一または異なり、−N+(R4)2−であり、R4は上に定義した通りである
各Aは同一または異なりC1−20アルキレン基であり、ヒドロキシ、ハロゲン、OR’、−C(O)OH、−CN,NR’R”,および−C(O)R”から選択される(R’およびR”は同一または異なり、C1〜C6のヒドロカルビル基である)1以上の置換基で置換されるかまたは置換されない。
nは1〜10であり、R4は上に定義した通りである)であるか、または
(b) −[B-O-]-mB-Q
(式中、
各Bは同一または異なり、ヒドロキシ、ハロゲン、OR’、−C(O)OH.−CN,NR’R”,および−C(O)R”から選択される(R’およびR”は同一または異なり、C1〜C6のヒドロカルビル基である)1以上の置換基で置換されまたは置換されないC1−10アルキレン基であり、
mは1〜10であり;
Qは−N+(R3)3、−OH,OR’、−OC(O)R’,およびハロゲンから選択され、R3およびR’は上に定義した通りである。)
)である)、または
一般式(III):
【化3】
(式中、Rは,同一または異なり、
(a)H,
(b)−CH2−N+(R2)2−CH2−CH2−[Y−(CH2)p]q−Z、または
(c)−CH2−N+(R4)3
である。但し1つのRはHで、他は基(b)であるか、両方のRが基(c)である。
Xは同一または異なり、OCH2またはO−C(O)である。
R1は同一または異なりC7〜C23の飽和または不飽和鎖である。
R2は同一または異なりC1〜C6の飽和または不飽和鎖である。
YはNH,CH2,O,またはN(アセチル)である。
ZはO(C1〜C4),OC(O)R3,N+R34,OH,F,Cl,BrまたはIでる(R3はC1〜C6アルキルである)である。
R4は同一または異なり、C1〜C6鎖である。
nは2,3,または4である。
mは1〜200であり、それが少なくとも2の場合、生じた繰り返し単位は同一または異なり得る)
の脂質のいずれかの1以上であるか、または含む請求項51〜53に記載の混合物。
【請求項62】
混合物脂質成分、請求項1〜14のいずれかに記載のペプチド(そのペプチドは請求項1の但し書きを条件としない)およびポリカチオン性核酸結合成分としての〔K〕16を含む請求項51〜61のいずれかに記載の混合物。
【請求項63】
脂質成分:ペプチド/ポリカチオン性核酸結合成分の比が重量で12:4:1である請求項62に記載の混合物。
【請求項64】
請求項51〜63のいずれかに記載の混合物の製造方法であって、成分(ii),(iii)および(iv)を混合することを含む方法。
【請求項65】
(i)核酸
(ii)脂質成分
(iii)ポリカチオン性核酸結合性成分
(iv)請求項1〜34のいずれかに記載のペプチド(そのペプチドは請求項1の但し書きを条件としない)
のペプチド
を含む非ウイルス性トランスフェクション複合体。
【請求項66】
ポリカチオン性核酸結合成分が請求項36〜41のいずれかに定義した通りである請求項65に記載の複合体。
【請求項67】
成分(iii)および(iv)が請求項39〜50のいずれかに記載のペプチドまたはペプチド誘導体の形である請求項65に記載の混合物。
【請求項68】
脂質成分が請求項54〜63のいずれかに定義の通りである請求項65〜67のいずれかに記載の複合体。
【請求項69】
核酸成分が遺伝子治療、遺伝子ワクチン化またはアンチセンス治療に適当な核酸配列、または所望のタンパク質をコードする請求項65〜68のいずれかに記載の複合体。
【請求項70】
核酸成分がタンパク質のコード配列、cDNAコピー、およびそのゲノムバージョン(イントロンそしてまたエクソンを含む)、遺伝子の調節上流および下流配列、遺伝子修復および相同的組換えに関与する配列、プラスミドに含まれる短い配列、またはプラスミドまたは核酸の組み込みを媒介する他の大きい核酸、例えばファージインテグラーゼ、または「眠れる美」トランスポゾン、アンチセンス調節のために、または転写因子デコイとして有用なDNA,ワクチン反応をブーストするアジュバンドとして有用なオリゴヌクレオチド、例えばCpGリッチな配列、またはスモール・インターフェアリングRNAである請求項65〜69のいずれかに記載の複合体。
【請求項71】
核酸の転写および/または翻訳調節因子が提供され、核酸が場合によりファージまたはベクターにパックされる請求項69または70に記載の複合体。
【請求項72】
核酸成分がDNAである請求項65〜71のいずれかに記載の複合体。
【請求項73】
核酸成分がRNAである請求項65〜71のいずれかに記載の複合体。
【請求項74】
核酸および請求項51〜63のいずれかに記載のトランスフェクション混合物を含む請求項65に記載の複合体。
【請求項75】
核酸が請求項69〜73のいずれかに記載の通りである請求項74に記載の複合体。
【請求項76】
成分(i)、(ii)、(iii)および(iv)を混合することを含む請求項65〜73のいずれかに記載の複合体の製造方法。
【請求項77】
成分を次の順序:脂質成分、ペプチド/ポリカチオン性核酸結合成分、核酸で混合する請求項76に記載の方法。
【請求項78】
核酸を請求項51〜63のいずれかに記載の混合物と共に導入することを含む請求項74または75に記載の複合体の製造方法。
【請求項79】
請求項76〜78のいずれかに記載の方法により得られうる請求項65〜75のいずれかに記載の複合体。
【請求項80】
(i)核酸
(iii)ポリカチオン性核酸結合性成分
(iv)ポリカチオン性核酸結合成分、および
(iv) 請求項1〜34のいずれかに記載のペプチド(そのペプチドは請求項1の但し書きを条件としない)
を含む非ウイルス性トランスフェクション複合体。
【請求項81】
核酸が請求項69〜73のいずれかに定義する通りであり、ポリカチオン性核酸結合成分が請求項36〜41のいずれかに定義する通りであり、そして場合によりペプチドが請求項35〜46のいずれかに定義する通りであるか、または請求項47〜50のいずれかに記載するペプチド誘導体である請求項80に記載の複合体。
【請求項82】
請求項80または81に記載の複合体の製造方法であって、成分(i)、(iii)および(iv)を次の順序:ペプチド/ポリカチオン性核酸結合成分、核酸で混合することを含む方法。
【請求項83】
請求項82の方法により得られ得る請求項80または81に記載の方法。
【請求項84】
請求項1〜34のいずれかに記載のペプチドを含むウイルスベクター。
【請求項85】
ウイルスベクターがレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)またはヘルペス単純ウイルスの遺伝的に操作され、複製欠陥誘導体である請求項84に記載のウイルスベクター。
【請求項86】
ウイルスベクターがアデノウイルスである請求項85に記載のウイルスベクター。
【請求項87】
アデノウイルスがアデノウイルスタイプ5である請求項85に記載のウイルスベクター。
【請求項88】
ペプチドがウイルスキャプシドまたはことのタンパク質に導入されている請求項84〜87のいずれかに記載のウイルスベクター。
【請求項89】
ペプチドがアデノウイルスキャプシドの線維タンパク質のHI領域に導入される請求項87または88に記載のウイルスベクター。
【請求項90】
ペプチドがベクターと複合体を形成し、そのペプチドはウイルスキャプシドまたは外被に静電的に結合することができるカチオン性ドメインを含む請求項84〜87のいずれかに記載のウイルスベクター。
【請求項91】
ペプチドが請求項35〜46のいずれかに記載の通りであるか、または請求項47〜50のいずれかに記載のペプチド誘導体の形である請求項90に記載のウイルスベクター。
【請求項92】
ペプチドがウイルスに結合することができる抗体によりウイルスベクターで導入される請求項84〜87のいずれかに記載のウイルスベクター。
【請求項93】
抗体がペプチドおよびウイルスに結合することができる2特異性抗体である請求項92に記載のウイルスベクター。
【請求項94】
ペプチドおよび抗体が融合タンパク質の形である請求項92に記載のウイルスベクター。
【請求項95】
抗体がウイルスキャプシドまたはこと上のエピトープに結合する請求項92〜94のいずれかに記載のウイルスベクター。
【請求項96】
抗体がいずれかのクラスの抗体であるか、抗原結合ドメインであるか、および/またはキメラまたはヒト化抗体である請求項92〜95のいずれかに記載のウイルスベクター。
【請求項97】
細胞を核酸でトランスフェクトする方法であって、細胞をインビトロまたはインビボで請求項65〜75,79〜81,および83〜96のいずれかに記載のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターと接触させることを含む方法。
【請求項98】
請求項65〜75,79〜81,および83〜96のいずれかに記載のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターを、医薬的に適当な担体と混合してまたは結合して含む医薬組成物。
【請求項99】
遺伝子の欠陥または欠陥によりヒトまたは非ヒト動物に起こる状態の治療または予防のための方法であって、ヒトまたは非ヒト動物に請求項65〜75,79〜81,および83〜96のいずれかに記載のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターを投与することを含む方法。
【請求項100】
ヒトまたは非ヒト動物の治療的または予防的免疫化方法であって、ヒトまたは非ヒト動物に請求項65〜75,79〜81,および83〜96のいずれかに記載のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターを投与することを含む方法。
【請求項101】
アンチセンス治療方法であって、ヒトまたは非ヒト動物に請求項65〜75,79〜81,および83〜96のいずれかに記載のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターを投与することを含む方法。
【請求項102】
薬剤またはワクチンとしての使用のための請求項65〜75,79〜81,および83〜96のいずれかに記載のトランスフェクション複合体またはウイルスベクター
【請求項103】
遺伝子の欠陥および/または欠陥によりヒトまたは非ヒト動物に起こる状態の治療または予防のための、または治療的若しくは予防的免疫化のための、またはアンチセンス治療のための薬剤の製造のための請求項65〜75,79〜81,および83〜96のいずれかに記載のトランスフェクション複合体またはウイルスベクターの使用。
【請求項104】
(i)核酸、
(ii)脂質成分、
(iii)ポリカチオン性核酸結合成分、および
(iv)請求項1〜34のいずれかに記載のペプチド(そのペプチドは請求項1の但し書きを条件としない)
を含むキット。
【請求項105】
(i)核酸、
(iii)ポリカチオン性核酸結合成分、および
(iv)請求項1〜34のいずれかに記載のペプチド(そのペプチドは請求項1の但し書きを条件としない)
を含むキット。
【請求項106】
ウイルスおよび請求項1〜34のいずれかに記載のペプチドに結合できる2特異性抗体。
【請求項107】
請求項1〜34のいずれかに記載のペプチド融合ペプチドで(そのペプチドは請求項1の但し書きを条件としない)およびウイルスに結合できる抗体を含む融合ペプチド。
【請求項108】
siRNAを同定する方法であって、標的遺伝子を発現する細胞をsiRNAでトランスフェクトし、発現レベルを定量することを含む方法。
【図1】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2007−527208(P2007−527208A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508402(P2006−508402)
【出願日】平成16年6月7日(2004.6.7)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002421
【国際公開番号】WO2004/108938
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(502433276)アイシーエイチ プロダクションズ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月7日(2004.6.7)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002421
【国際公開番号】WO2004/108938
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(502433276)アイシーエイチ プロダクションズ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
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