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核酸リガンド
説明

核酸リガンド

【課題】標的分子と特異的に結合するリガンドを得る新規な方法を提供する。
【解決手段】以下のステップを含んでなるポリヌクレオチド以外の所定の標的と結合しうる核酸リガンドを産生または同定する方法、
(a)一本鎖核酸の候補混合物と標的とを接触させ、ここで標的と結合する核酸は残りの候補混合物から分離されうる;
(b)結合した核酸を残りの候補混合物から分離する;
(c)結合した核酸をin vitroで増幅して、該標的と結合しうる核酸に富んだ核酸産物を得る;
(d)所望のレベルの濃度を得るのに必要な回数だけステップ(a)から(c)を繰り返し、ここで候補混合物に代えて各連続的繰り返しの核酸産物を用いて行う:
(e)クローニングし、配列決定し、核酸産物の結合親和性を個別に試験する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、指数濃度化によるリガンドの計画的進化と題する、1990年6月11日出願の、合衆国特許出願番号07/536,428の一部継続出願である。本研究は国立衛生研究所を通じて合衆国政府のグラントにより援助された。合衆国政府は本発明に関して一定の権利を保有する。
【0002】
ここでは望みの標的分子に特異的に結合する新しい種類の高親和性核酸リガンドについて述べる。希望するどんな標的分子にも特異的に結合する核酸リガンドを選択する方法を提示する。この方法は、指数濃度化によるリガンドの計画的進化の頭字語、SELEX と呼ばれる。本発明(SELEX)の方法は望みの標的分子に対する核酸リガンドを分離するのに有用である。本発明の核酸産物は結合反応がかかわるどんな目的、たとえばアッセイ法、診断法、細胞選別、標的分子機能の阻害剤として、プローブとして、隔絶物質としてなどのどんな目的に対しても有用である。さらに、本発明の核酸産物は触媒活性をもつことができる。標的分子としては蛋白質、多糖類、糖蛋白質、ホルモン、レセプターおよび細胞表面を含む天然ならびに合成ポリマー、および薬剤、代謝体、補助因子、遷移状態同族体および毒素のような小分子がある。
【背景技術】
【0003】
大部分の蛋白質または小分子は特異的に核酸に結合しないことがわかっている。例外として知られている蛋白質は、核酸中に蓄えられた遺伝情報を細胞構造や遺伝物質の複製に際して転移させるときに生きた細胞中で機能するリプレッサー、ポリメラーゼ、活性化物質などのような調節蛋白質である。さらに、GTPのような小分子はいくつかのイントロンRNAに結合する。
【0004】
生物体は核酸の機能として大部分が情報の役割に限るように進化してきた。Crick が仮定したセントラルドグマによると、天然の形、伸びた形のいずれの核酸(RNAまたはDNAいずれも)も、鋳型核酸中の情報を“読みとり”相補的核酸を生ずるという複製過程を通じて他の核酸を合成するための鋳型として働らくことができる。遺伝学と遺伝子発現に関する実験的パラダイムのすべてはこのような核酸の性質に依存する:本質的に、塩基対の化学的概念の故に、そして複製過程でこの塩基対を比較的エラーのない仕方で用いることができるために、二重鎖核酸は情報的にゆとりがある。
【0005】
蛋白質の各成分である20の天然アミノ酸は、結合と触媒作用の両方に対して非常に広い幅の活性を提供するのに十分な化学的差異と活性を有している。しかし、核酸は蛋白質よりも狭い化学的可能性しかもたないが、遺伝情報がウイルスからウイルスへ、細胞から細胞へ、そして臓器から臓器へと送られるようにする情報的役割を有すると考えられている。このような関係で核酸成分、ヌクレオチドは、一つのワトソン−クリック塩基対内で情報のゆとりがあるようにさせる表面の塩基対だけを持つようにしなければならない。核酸成分は広い範囲の結合と触媒活性にとって十分な化学的差異と活性をもつ必要はない。
【0006】
しかし、天然に存在するいくつかの核酸はある標的分子と結合したり、またごく少ないながら触媒作用の例も報告されている。この種の活性の範囲は蛋白質さらにはより特異的な抗体に比べれば狭い。たとえば、核酸が高い親和性と特異性である蛋白標的に結合することが知られているところでは、結合はDNAまたはRNAリガンドを構成するヌクレオチドの正確な配列に依存する。すなわち、短い二重鎖DNA配列は、原核生物、真核生物両方での転写を抑制または活性化する標的蛋白質に結合することが知られている。他の短い二重鎖DNA配列は、高い親和性と特異性で選択できる蛋白質標的、すなわち制限エン
ドヌクレアーゼに結合することが知られている。他の短いDNA配列は、クロモソームメカニックスに参加する特異蛋白質の結合に対するリガンドを作ることによって、クロモソーム上のセントロメアとテレメアとして働らいている。こうして二重鎖DNAは、DNA結合に向かわせる機能をもつ標的蛋白質の隅や割れ目内に結合する、よく知られた能力をもっている。一重鎖DNAもまたある種の蛋白質に高い親和性と特異性をもって結合できるが、そのような例数はむしろ少ない。二重鎖DNA結合蛋白質の既知の例から、アミノ酸側鎖をB型二重鎖DNAの大きな溝の中へ突き入れた種々の蛋白質特性を含むものとして結合反応を記述でき、これによって特異性を生じさせる塩基配列の検分ができる。
【0007】
二重鎖RNAは時にある種の蛋白質、たとえば大腸菌のエンドヌクレアーゼRNaseIIIに対するリガンドとして働らく。一重鎖RNAリガンドに結合する標的蛋白質の例はもっとたくさん知られているが、これらの場合には一重鎖RNAはしばしば分子内二重鎖生成領域を含む複雑な三次元の形状を形成している。アミノアシルtRNA合成酵素は高い特異性をもってtRNA分子に強固に結合する。RNAウイルスのゲノム内の短い領域はウイルスコート蛋白質に高い特異性をもって強固に結合する。RNAの短い配列も、これまた高い親和性と特異性でバクテリオファージT4 −エンコードDNAポリメラーゼに結合する。こうして、特異的蛋白標的に対する結合の相手となる、二重鎖−または一重鎖RNAおよびDNAリガンドを見出すことができる。大部分の既知DNA結合蛋白質が二重鎖DNAに特異的に結合するのに対して、大部分のRNA結合蛋白質は一重鎖RNAを認識する。文献におけるこの統計的傾向は、疑いもなく現在の生物圏での統計的傾向が二重鎖ゲノムとしてDNAを用い、ゲノムとして働らくのを除いたRNAの演ずる多くの役割における一重鎖実体としてRNAを用いていることの反映である。化学的には特異的蛋白質相互作用のための相手になりうるものとして一重鎖DNAを除外する強力な理由はない。
【0008】
RNAとDNAはより小さな標的分子とも結合することが見出されている。二重鎖DNAはアクチノマイシンDのような種々の抗生物質と結合する。特異的一重鎖RNAは抗生物質チオストレプトンに結合する;特異的RNA配列と構造はおそらくある他の抗生物質、とくに標的有機体中のリボソームを不活化させる機能をもつ抗生物質と結合する。進化的に関連したRNAのファミリーは、特異性とかなりの親和性をもってヌクレオチドおよびヌクレオシドと結合し(Bass, B.and Cech, T.(1984)Nature308:820−826)、また同様に20のアミノ酸の一つとも結合する(Yarus, M. (1988)Science 240:1751−1758)。同じく触媒活性をもつRNAsが現在では知られているが、これらの分子の化学的可能性の範囲は狭い範囲に限られ、フォスホジエステル転移反応と核酸の加水分解に限られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの知られた例にもかかわらず、蛋白質および他の細胞成分のほとんどは生理的条件下では核酸に結合しないと考えられており、たとえ結合が観察されたとしてもそれは非特異的である。他成分に結合する核酸の能力は上記のような比較的少ない例に限られているか、あるいは特異な結合に対する核酸の化学的レパートリーが天然に生じた構造中には存在しないかである(あるものに対して選択される形で)。本発明は、化学化合物として核酸が実際上無制限の形状、大きさおよび立体配座をとることができ、生物系でみられる結合や触媒機能よりもはるかに広いレパートリーをもっているという発明者の基本的な見通しの上になされたものある。
【0010】
化学的相互作用が蛋白質−核酸結合のいくつかの知られた例についてしらべられている。たとえば、バクテリオファージR17コート蛋白質結合のRNA位置の大きさと配列がUhlenbeck および共同研究者により確認された。R17コート蛋白質に対する最小天然RNA結合位置(21塩基長)を、蛋白質−RNAフラグメント複合体がフィルターに結合
したままに留まるような、ニトロセルロースフィルター定量法でmRNAの種々の大きさの標識フラグメントを測ることによって決定した(Careyet al.(1983)Biochemistry22:2601)。最小R17コート蛋白質結合位置の異なる配列のバリアントのいくつかを、蛋白結合へのそれぞれの核酸の寄与を決定するためにin vitro で作った(Uhlenback etal. (1983)J. Biomol. Structure Dynamics :539 and Romaniuk etal.(1987)Biochemistry 26:1563)。蛋白結合のためには結合位置のヘアピン
ループ構造の保持が極めて重要なことがわかったが、さらに、ヘアピンステム中のバルジ(塩基対の相手のない)ヌクレオチドを含めて、結合位置中の一重鎖残基の大部分の位置でのヌクレオチド置換が結合に顕著に影響を与えることもわかった。類似の研究で、バクテリオファージQβコート蛋白質の翻訳オペレーターに対する結合が験べられた(Witherell and Uhlenbeck (1989)Biochemistry28:71)。Qβコート蛋白質RNA結合位置は大きさがR17のそれと同じことがわかり、また予測した二次構造中ではそれは約20の塩基から成り、その中にはバルジヌクレオチドと3塩基ループを含む8塩基ヘアピンが含まれる。R17コート蛋白質結合位置とは反対に、ループの一重鎖残基の唯一つだけが結合に必須であり、バルジヌクレオチドの存在は必要ではない。翻訳調節に含まれる蛋白質−RNA結合相互作用は顕著な特異性を示す。
【0011】
核酸は溶液中で2次および三次構造を作ることが知られている。DNAの二重鎖型はいわゆるB型二重らせん、Z−DNAおよび超らせんねじれを含む(Rich, A. et.al. (1984)Ann. Rev. Biochemi. 53:791−846)。一重鎖RNAはヘアピンループおよびシュードノット(偽結び目)構造のような二次構造の局在化領域を形成する(Schimmel, P. (1989)Cell 58:9−12)。しかし、ループ構造の安定性に対する不
対ループヌクレオチドの影響、ループ形成と変性のカイネティックス、熱力学についてはほんの僅かしかわかっていないし、三次構造と三次元形状についても、核酸中の三次折りたたみのカイネティックスと熱力学についてはほとんど何もわかっていない(Tuerk, C. et. al.(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:1364−1368)。
【0012】
In vitro 進化の一つのタイプがRNAバクテリオファージQβの複製において報告さ
れた。Mills, D. R. et. al. (1967)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 58:217−224;Levinsohn, R. and Spiegelman, S.(1968) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 60:866−872;Levisohn, R. and Spiegelman, S. (1969)Proc. Natl.Acad. Sci. USA 63:805−811;Saffhill, R. et.al. (1970)J. Mol.Biol.51;531−539; Kacian, D. L. et al.(1972)Proc. Natl. Acad. Sci. USA
69:3038−3042; Mills, D. R. et al.(1973) Science180:916−927。ファージRNAはファージ特異蛋白質の翻訳を行うポリ−シストロニックメッセンジャーRNAとして働らき、またQβRNAレプリカーゼで触媒されるそれ自身の複製のための鋳型としても働らく。このRNAレプリカーゼはそれ自身のRNA鋳型に対して高い特異性を有することが示された。in vitro での複製サイクルのコースの間に小さ
なバリアントRNAsが分離され、これらもまたQβレプリカーゼで複製された。複製サイクルが実施される条件の小さな変化によって異なるRNAsの蓄積が起こることがわかり、これはおそらく変化した条件下でこれらRNAsの複製が有利に起こるためと思われた。これらの実験において、選択されたRNAがレプリカーゼにより効率的に結合されて複製を開始し、そしてRNAの延長の間速度論的に有利な鋳型として働らいたはずである。Kramer et al (1974)J. Mol. Biol. 89:719はQβレプリカーゼの変異R
NA鋳型の分離を報告したが、このレプリカーゼの複製は天然の鋳型よりもエチジウムブロミドによる阻害に対してより抵抗性であった。この変異体は最初のRNA集団中には存在せず、Qβレプリカーゼによるin vitro 複製のサイクルの間に次々と起こる突然変異
によって生成した。選択の間の変異の唯一のソースはQβレプリカーゼによる延長の間の固有のエラー率であった。“選択”と呼ばれるこれらの研究において、最初には同じRNA配列の限られた数の天然バリアントの1つあるいはそれ以上のものの優先的増幅が起き
た。そこでは希望する結果を選択することはできず、ただQβレプリカーゼの固有の作用モードに従うのみであった。
【0013】
Joyce and Robertson (Joyce(1989)in RNA : Catalysis, Splicing, Evolution,
Belfort and Shub (eds.), Elsevier, Amsterdam PP. 83−87;and Robertson and(Joyce (1990)Nature 344:467)は一重鎖DNAを特異的に切断するRNA
sを同定する方法について報告した。触媒活性の選択の基礎は、リボザイムが基質ssRNAまたはDNAの特定位置での切断に触媒し、さらに基質の3′−末端をリボザイムの3′−末端へ転移する能力である。望みの反応の生成物をオリゴデオキシヌクレオチドプライマーを用いて選択したが、このプライマーは触媒反応によって作られた結合部を通じて完全な生成物だけに結合することができ、リボザイム配列の選択的逆転写を可能にする。選択された触媒活性配列はT7RNAポリメラーゼのプロモーターがcDNAの3′−末端に付着することによって増幅され、そのあとRNAへ転写される。少数のリボザイムバリアントの中から、選択された基質の切断に関して最も活性なバリアントを見分けるのにこの方法が用いられる。限られたバリアントの並びだけがテスト可能である。というのは変異は増幅の間に起こる単一のヌクレオチドの変化に依存するからである。
【0014】
核酸が他の物質と相互作用する化学的機能に関して先行技術は限られた範囲のことしか教えまたは示唆していない:ある特定のオリゴヌクレオチド配列に結合するように作られた蛋白質リガンドに対する標的のようなもの;より最近ではある限られた範囲の活性を有する触媒などである。以前の“選択”実験は前に述べた機能の狭い範囲のバリアントに限定されている。いまでは、まず始めに、核酸は広い範囲にわたる機能を有することが理解できるであろうし、その能力を実現する方法についてここで明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明が提供する一群の産物は核酸分子であり、それぞれは独特の配列を有し、またそれぞれが望みの標的化合物または分子に特異的に結合する性質を有する。本発明のそれぞれの化合物は与えられた標的分子の特異的リガンドである。本発明は、核酸がいろいろの二次元および三次元構造を作るのに十分な能力をもっており、モノマーかポリマーかは問わず、実際上どんな化合物に対してもリガンドとして(特異的結合対を形成)作用するそれらのモノマー中に十分な化学的融通性があるという独特の洞察を基礎としている。より一般的でより好ましくは、治療的応用に対して、塩、温度およびpHが許容できる生理的限界付近における水溶液中で結合が起こるということである。
【0016】
本発明はまたどんな望みの標的に対する核酸リガンドを作るのにも一般的に応用できる方法も提供する。この方法は、結合親和性と選択性について実質的にいかなる望みの規準でもなしとげるために、同じ一般的選択テーマを用いて、候補の混合物中からの選択と構造改善の段階的繰返しを行うことを含んでいる。好ましくは無作為配列のセグメントから成る核酸の混合体から出発して、SELEX とここで呼ばれる方法には以下のステップが含まれる:結合に有利な条件下で混合物を標的と接触させる;標的分子に結合した核酸と結合した核酸から非結合核酸を分離する;核酸−標的対を解離する;核酸−標的対から解離した核酸を増幅してリガンドが濃度化した核酸の混合物を作り、ついで結合、分離、解離および増幅の段階を望みの回数だけ繰り返す。
【0017】
調製の理論にしばられることなく、SELEX の根拠とするところは、多数の可能な配列と構造を含む核酸混合物中には与えられた標的に対する広範囲の結合親和性があるという発明者の洞察である。たとえば、無作為に選んだ20個のヌクレオチドから成るセグメントは420個の可能な候補を持ち得る。標的に対するより高い親和性定数を有するものが最も結合し易い。分離、解離および増幅の後、2番目の核酸混合物が作られ、より結合親和性の高い候補へと濃度が高められる。選択のラウンドを加える毎に最良のリガンドへと向い
、ついには核酸混合物は大部分が1つまたはごく少数の配列だけを含むようになる。そうなるとこれらはクローン化と配列決定が可能となり、純粋なリガンドとして結合親和性についてそれぞれテストすることができる。
【0018】
選択と増幅のサイクルを望みのゴールに達するまで繰り返す。最も一般的な場合、選択/増幅は、サイクルを繰り返しても顕著な改善がもはや得られなくなるときまで続けられる。繰返し選択/増幅法は、少なくとも65,000個の配列バリアントを含む混合物中の1個の配列バリアントの分離を可能とするのに十分なほど鋭敏である。この方法は1014の配列を含む混合物中の少数の高親和性配列を分別できるほど鋭敏である。原理的にはこの方法は約1018個にも及ぶ多くの異なる核酸種を試料として扱うことができる。テストする混合物の核酸は、効率的な増幅にとって必要な保存配列とともに無作為部分を含むことが好ましい。核酸配列の異なるバリアントは、無作為化核酸配列の合成および無作為に切断した細胞の核酸から大きさで選択するなどを含めたいくつかの方法で産生することができる。変化した配列部分は全体的または部分的に無作為化された配列になっている;それはまた無作為化配列が組み込まれた保存配列のサブポーションも含むことがある。テストする核酸中の配列の変化は選択/増幅の繰り返しの前またはその間に導入または増大させることができる。
【0019】
本発明の一つの態様において、選択過程は選択された標的に最も強力に結合するような核酸リガンドの分離が非常に効率がよいため、たった1回の選択、増幅のサイクルが必要なだけである。このような効率的な選択は、たとえばクロマトグラフ型過程で起こることがある:そこではカラムに結合した標的と会合する核酸の能力が、カラムが最高親和性核酸リガンドの分離と分別を十分可能にするのと同じようなやり方で発揮される。多くの場合、単一の核酸リガンドが同定されるまで SELEX の繰り返しを実施することは必ずしも
望ましくない。標的−特異的核酸リガンド溶液は、いくつかの保存配列および標的への核酸リガンドの親和性に顕著な影響を与えることなしに置換または付加ができるいくつかの配列を有する一群の核酸構造またはモチーフを含むであろう。完結に先立ってSELEX 過程を終了することによって、いくつかの核酸リガンド溶液ファミリーの配列を決定することかが可能になり、これによって核酸リガンド溶液の広汎な記述が可能になる。
【0020】
核酸リガンドファミリーの記述のあと、ある場合には、SELEX 実験の間に受け入れた情報によって調製したSELEX をさらに実施することが望ましいこともある。一つの態様においては、SELEX の2番目のシリースを行うことによって、核酸リガンドファミリーの保存領域を固定させ、その間にリガンド構造中のすべての他の位置は無作為化される。他の態様では、SELEX 過程の基礎として最も代表的な核酸リガンドファミリーが用いられることがあり、そこでは核酸配列のもとのプールは完全には無作為化されていないで、最良の既知リガンドに向けてのバイアス(偏向)を含んでいる。これらの方法によって、最も好ましい核酸リガンドに到達するSELEX 過程を最適化することができる。
【0021】
核酸の一次、二次および三次構造のいろいろのものが存在することが知られている。非ワトソン−クリック型相互作用に最も一般にみられる構造またはモチーフはヘアピンループ、対称および非対称バルジ、シュードノットおよびこれの無数の組み合わせである。このようなモチーフのほとんどすべての知られたケースから示唆されるのは、これらは30個のヌクレオチド程度の核酸配列中に生成しうるということである。この故に、隣接する無作為化セグメントを用いたSELEX法は約20−50ヌクレオチドの無作為化セグメント
を含む核酸配列で始めるのが好ましく、そして大部分の態様においてはヌクレオチドが25と40の間が好ましい。本発明は長さが少なくとも約15ヌクレオチドの隣接する無作為配列を有する、約109から1018の核酸配列の混合物を含有する溶液を含む。好まし
い態様では、配列の無作為部分はリガンドの増幅を容易にする固定配列が一緒に横に並んでいる。
【0022】
蛋白質のようなポリマー標的の場合、リガンド親和性は1番目の選択配列と2番目の無作為配列を含む候補の混合物にSELEX を適用することによって増大させることができる。結合と関連した1番目の選択リガンドの配列またはそれのサブポーションは、2番目のテスト混合物の核酸の無作為化部分中に導入することができる。SELEX の手続きを、標的への結合に関して選択された2つの配列を有する2番目の核酸リガンドを分離するために、2番目のテスト混合物について繰り返す。これによって分離した1番目の核酸リガンドに比べて2番目のものは結合力が増大しまたは結合の特異性が増える。標的への結合に関連する2番目の核酸リガンドの配列は、ついで3番目のテスト混合物の核酸の可変部分中に導入することができ、SELEX サイクルののち3番目の核酸リガンドが得られる。これらの手続きを、標的分子に対する望みの結合力または結合特異性を核酸リガンドがかち得るまで繰り返すことができる。選択された標的分子に結合する核酸配列要素の繰り返し選択と組み合わせの過程をここでは“ウォーキング(Walking)”と呼ぶ。この言葉は、最初の結合ドメインから出発して、高分子標的表面または割け目の受容可能な他の領域への最適の結合を意味する。リガンドと標的間の結合接触領域を増やすことによって結合反応の親和性定数を大きくすることができる。これらのウォーキング手法は、特定の標的分子への結合に関して高い特異性を有する核酸抗体を分離するのにとくに有用である。
【0023】
ウォーキング手法のバリアントは、最初の結合ドメインとして標的分子に結合する“アンカー(anchor)”と呼ばれる非核酸リガンドを用いる(図9参照)。このアンカー分子は、原理的には標的分子に結合し、核酸に直接または間接に共有的に結合する非核酸分子ならどんなものでもよい。たとえば、標的分子が酵素のときは、アンカー分子はその酵素の阻害剤または基質でもよい。アンカーはまた、標的に対する抗体または抗体フラグメントであってもよい。アンカー分子は既知配列の核酸オリゴマーに共有的に結合して架橋分子を生成する。そのオリゴマーは最低約3−10塩基から成ることが好ましい。ついで、候補核酸のテスト混合物を調製し、それは無作為部分と架橋分子の既知配列に相補的な配列を含むようにする。架橋分子は標的分子と複合体を作る。ついで SELEX を架橋分子と標
的分子の複合体に結合する選択核酸に適用する。
【0024】
複合体に結合する核酸リガンドを分離する。そのあと上述のウォーキング手法を、複合体に対する結合力の増加または結合特異性の増加した核酸リガンドを得るために適用する。ウォーキング手法は複合体または標的それ自身への結合に対する選択を用いることもできる。この方法は標的分子内の特定の位置に結合する核酸リガンドを分離するのにとくに有用である。テスト混合物中の相補配列は、標的分子に対して架橋分子の結合位置またはその付近で結合する核酸配列の分離を確かにするために働らく。もし架橋分子が標的分子の阻害剤から得られたならば、この方法は標的分子の機能を阻害する核酸リガンドを生ずることになる。この方法は、たとえば蛋白質機能を活性化または阻害する核酸を分離するのにとくに有用である。リガンドと標的の組み合わせは新しい、または強化された機能を持つことができる。
【0025】
本発明の核酸リガンドは複数のリガンド成分を有することもある。上に述べたように、ウォーキング手法で得られた核酸リガンドは1個以上の核酸リガンド成分を持っていると考えてよい。本発明はまた、SELEX で同定された核酸リガンドと同じではないけれども、SELEX で得られた結果を基礎に構成された核酸抗体を含む。たとえば、核酸抗体が構成され、そこでは複数の同一リガンド構造が単一核酸の部分として作られる。他の態様では、SELEX は与えられた標的に対する核酸リガンドの1つのファミリー以上のものを同定するかもしれない。この場合、異なるリガンド構造を複数個含む単一核酸抗体が構成されるかもしれない。SELEX 実験はまた、最良の核酸抗体を同定するために、固定された同じまたは異なるリガンド構造が、無作為ヌクレオチド領域および/または固定リガンド構造間のいろいろの距離の領域で接合された形で実施されるだろう。
【0026】
標的分子の機能に対する核酸リガンドの結合の影響を評価するため、スクリーン、選択またはアッセイをSELEX 法と容易に組み合わせることができる。とくに、酵素活性に対する阻害または活性化についてのスクリーンはSELEX 法と組合わせることができる。
【0027】
より特異的な態様では、SELEX 法は核酸結合蛋白質と生物学的機能の一部として核酸に結合することは知られていない蛋白質のいずれをも含めた蛋白質に結合する核酸リガンドを分離し同定するための迅速な手段を提供する。核酸結合蛋白質は多くの他のポリメラーゼや逆転写酵素の中のものを含む。この方法はまたヌクレオチド、ヌクレオシド、ヌクレオチド補助因子およびこれらと構造的に関連した分子に結合する蛋白質にも容易に適用できる。
【0028】
いま一つの視点では、本発明は試料中の標的分子の存否を検出、および/またはその量を測定する方法を提供する。そしてこの方法ではここで述べた方法によって分離し得る核酸リガンドを用いる。標的分子の検出はその標的分子に特異的な核酸リガンドへのそのものの結合によって仲介される。核酸リガンドは標識することができ、たとえば放射標識できて定性的または定量的検出を可能にする。この検出法は標的分子が蛋白質であるときにとくに有用である。この方法は生物学的機能の一部として核酸に結合することが知られていない蛋白質の検出にとってより特別に有用である。したがって、本発明の核酸リガンドは従来の抗体を基にした診断法に似た診断法に用いられる。このような検出法および診断法における核酸リガンドの従来抗体に対する一つの有利さは、核酸はin vitro でたとえ
ばPCR増幅または関連する方法によって増幅が可能であるということである。さらに、核酸リガンドの結合親和性は使用者の必要に応じて定めることができる。
【0029】
小分子標的の核酸リガンドは診断アッセイ物質として有用であり、また隔絶物質、薬剤供給賦形剤およびホルモン作用の修飾剤として治療的用途をもっている。触媒活性核酸は本発明により選択し得る産物である。たとえば、酵素触媒反応の遷移状態同族体への結合に関する選択によって触媒活性核酸が選択できる。
【0030】
また他の観点では、本発明はSELEX により分離し得る核酸リガンドを用いて標的分子の機能を修飾するための方法を提供する。標的分子に結合する核酸リガンドは、標的分子の機能を特異的に修飾するものを選択する、たとえば標的分子の機能の阻害剤または活性化物質などである。標的の機能を修飾するのに効果的な核酸リガンドの選択されたある量を標的分子と結合させて望みの機能的修飾を実現する。この方法はとくに標的が蛋白質であるときに適用可能である。この方法のとくに有用な適用は蛋白機能を阻害することであり、たとえばエフェクターへのレセプターの結合を阻害または酵素触媒作用を阻害する。この場合、標的蛋白質阻害に効果的な選択核酸分子を標的蛋白質と結合させて望みの阻害目的を達成する。
【発明の実施の形態】
【0031】
定義に従ってここではつぎの言葉が用いられる。核酸はDNA,RNA,一重鎖または二重鎖のいずれかを意味し、また選択核酸の増幅に干渉しない修飾に限り、核酸のどんな修飾も含まれる。このような修飾には以下のようなものが含まれるが、それらに限るわけではない:サイトシンエクソサイクリックアミン位置での修飾、5−ブロモウラシルの置換、バックボーン修飾、メチル化、正常でない塩基対組み合わせなどなど。リガンドは他の分子(標的)を結合した核酸を意味する。候補核酸の集団中で、リガンドは集団全体の中のどれよりも大きな親和性をもって結合するものである。候補混合物中に与えられた標的に対して1個以上のリガンドが存在し得る。リガンドは互いに標的分子に対する結合親和性が違いうる。
【0032】
候補混合物は異なる配列の核酸の混合物であり、これから望みのリガンドを選択する。候補混合物のもとは天然に存在する核酸またはそれらのフラグメント、化学的に合成した核酸、酵素的に合成した核酸またはこれらの合成法の組み合わせで作られた核酸などである。
【0033】
標的分子はそれに対してリガンドが求めるようなどんな化合物をも意味する。標的分子になり得るものには蛋白質、ぺプチド、炭水化物、多糖、糖蛋白質、ホルモン、レセプター、抗原、抗体、ウイルス、基質、代謝体、遷移状態同族体、補助因子、阻害剤、薬剤、色素、栄養物、成長因子などなど制限はない。
【0034】
分離する(partitioning) とは、リガンド−標的対とここで呼んでいる、標的分子に結合したリガンドを標的分子に結合していない核酸から分別することを意味する。分離は技術的に知られているいろいろの方法により行うことができる。核酸−蛋白質対はニトロセルロースフィルターに結合するが蛋白質と結合していない核酸はそうではない。リガンド−標的対を特異的に保持するカラム(または結合した標的と複合体を作った結合リガンドを特異的に保持する)が分離に用いられる。滲透ゲル遅延や密度勾配遠心と同様、液体−液体分配も用いることができる。どんな分離法を選ぶかは標的およびリガンド−標的対の性質に依存し、通常の技術、熟練の中で知られている原理と性質に従って行うことができる。
【0035】
増幅とは、分子または分子種のコピーの量または数を増やすなんらかのプロセスまたはプロセス段階の組み合わせを意味する。開示例中のRNA分子の増幅は一連の3つの反応で実施した:選択RNAsのcDNAコピーを作り、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて各cDNAのコピー数を増やし、そしてcDNAコピーを転写して選択RNAsと同じ配列を有するRNA分子を得る。技術的に知られているどんな反応またはそれら反応の組み合わせでも適当なものとして使用することができる。そのようなものとしてこの技術に熟練した人達が認めるような、直接的DNA複製、直接的RNA増幅その他類似のものがある。増幅法は最初の混合物中の異なる配列の本質的な代表である増幅混合物の割合を結果とし得る。
【0036】
特異的結合はそれぞれの場合に定義される言葉である。与えられたリガンドと与えられた標的の間の与えられた相互作用において、標的と候補リガンド混合物間で測定されたよりも高い親和性をもったリガンドと標的の結合相互作用が観察される。結合親和性を比較するためには、両結合反応の条件は同じでなければならず、意図する使用条件と同様のものであるべきである。最も精密な比較のためには、全体としてのリガンドと全体としての標的間の相互作用を反映するように測定が行われる。本発明の核酸リガンドは、以下のようにすることによって要求に対してできる限り特異的なものを選択できる。すなわちSELEX の間に必要な特異性を要求する選択条件を確立するか、またはSELEX の相互作用を用いて“ウォーキング”および他の修飾を通じてリガンドを作ったり修飾することである。
【0037】
無作為化は、与えられた長さについて基本的にいかなる可能な配列を有する核酸のセグメントを記述するのに用いる言葉である。無作為配列は望みに従って、約8個から100個以上のヌクレオチドにわたるいろいろの長さがある。無作為配列セグメントを作る化学反応あるいは酵素反応は、まだ知られていないバイアスまたはヌクレオチドの間に存在すると思われる優先権の差によって数学的な無作為配列は生じない。このような非理想的なことから導かれる可能性を反映させるために“手当りしだい(random) ”の代りに“無作為化(randomized)”という言葉を用いる。現在知られている技術、たとえば連続化学合成においては大きな偏りが起こることは知られていない。20ヌクレオチドまたはそれ以下の短いセグメントに関しては、何らかの小さなバイアスが存在するとしても結果は無視できるであろう。1つの合成で配列が長ければ長いほど、どんなバイアスでもその影響は
より大きくなる。 バイアスは、たとえば合成反応の前駆体ヌクレオシド(またはデオキ
シリボヌクレオシド)のモル比を変えることによって意識的に無作為配列中に導入できる。計画されたバイアスは、たとえば与えられた生物体中のそれぞれの塩基の割合に近づけるか、または二次構造に影響するようなものが望ましいであろう。
【0038】
SELEX 10Nは、核酸リガンドを同定するSELEX の強力な能力を証明し、SELEX プロセス中のどの変異がプロセスの最適化に最大のインパクトをもつかを予測するのに用いる数学的解析とコンピューターシミュレーションのことを指す。SELEX 10Nは非線形解析による統合最適化を用いた指数濃度化によるリガンドの計画的進化の頭字語である。
【0039】
核酸抗体は不連続な核酸構造から成る核酸リガンドの組、または標的分子に選択的に結合するモチーフを指すのに用いる言葉である。核酸抗体は二重鎖または一重鎖RNAまたはDNAから作ることができるだろう。核酸抗体は合成され、好ましい態様ではリガンド溶液またはSELEX プロセスによって与えられた標的のための溶液を基礎に構成される。多くの場合、本発明の核酸抗体は天然にはそのままでは生じないが、他の状況においては天然に存在する核酸配列に非常によく類似することがある。
【0040】
本発明の核酸抗体は1つの標的に対する特異的な結合親和性を有するすべての核酸を含むが、それに対して圧倒的にワトソン/クリック塩基対または三重らせん物質に依存するメカニズムを通じて核酸に結合するポリヌクレオチドが標的である場合は含まない(Riordan, M. et al.(1991)Nature350:442−443参照);しかしながら、核酸抗体が二重鎖DNAであるときには標的は、生理的機能が二重鎖DNAへの特異的結合に依存するような天然の蛋白質ではない。
【0041】
RNAモチーフはRNA分子の二次または三次構造を記述するのに一般に使われる言葉である。RNAの一次配列は一次元のヌクレオチド(A,C,GおよびU)の特異的な糸である。第1印象では一次配列がRNAの三次元立体配座に情報を与えるようにはみえないが、実際には三次元立体配座を指定するのは一次配列である。ある場合には、与えられた標的に対してSELEX を実施したあと得られたリガンド溶液は一次配列として最もよく表示されるであろう。このようなリガンド溶液に関する立体配座の情報はSELEX で得られた結果をもとにいつでも確かめ得るわけではないが、一次配列としてのリガンド溶液の表示は完全な三次構造の存在を否認するものと解釈さるべきではない。
【0042】
RNAモチーフの二次構造は特異的ヌクレオチド間の二次元での接触で表示される。最も容易に認められる二次構造モチーフはワトソン/クリック塩基対A:UとC:Gを含んでいる。しばしば安定性の低い非ワトソン/クリック塩基対が認められ、塩基対G:U,A:C,G:AおよびU:Uを含む(塩基対は1回示す;RNA分子では通常の塩基対表示X:YはYに対してXが5′であることを示し、それに対してY:Xも存在し得る)。図13に一重鎖領域で結合した1組の二次構造を示す;二次構造に関する従来の命名にはヘアピンループ、非対称バルジヘアピンループ、対称ヘアピンループおよびシュードノットが含まれている。
【0043】
一次配列の中でヌクレオチドが離れていてワトソン/クリックおよび非ワトソン/クリック塩基対を通して相互作用するとは思われないときも、これらの相互作用(しばしば二次元で描かれるが)もまた二次構造の部分である。
【0044】
RNAモチーフの三次元構造はRNAモチーフの空間の原子の単なる記述に過ぎない。ワトソン/クリック対を通じて十分に塩基対を作った二重鎖RNAは三次元で規則正しい構造をとるが、らせんバックボーンのすべての原子の正確な位置はRNA中の塩基の正確な配列に依存する。非常に多くの文献がRNAモチーフの二次構造に関連し、ワトソン/
クリック塩基対を含むこれらの二次構造はしばしばA型二重鎖ヘリックスを作ると考えられている。
【0045】
A型らせんから三次元での他のモチーフに向かって伸ばすことができる。非ワトソン/クリック塩基対であるヘアピンループ、バルジおよびシュードノットはらせん内およびらせん上で築かれる構造である。これらの付加したモチーフの構成は本文中でより詳細に述べる。
【0046】
RNAの実際の構造は三次元中の分子のヌクレオチドのすべての原子を含む。完全に解決された構造は結合水と無機原子も含むが、このような解析が研究者によってなされるのは稀である。三次元でわかったRNA構造はすべての二次構造エレメントを含み(三次元構造として表示される)、また二次構造エレメントで抑制されないヌクレオチドの原子に対する固定位置も含む;塩基スタッキングその他の力によって広汎な一重鎖ドメインが固定構造をもつと思われる。
【0047】
RNAの一次配列は固定二次構造がそうであるように、可能な三次元構造を制限する。RNAの三次元構造は二次元中の原子間の特異な接触によって制限され、ついでさらにエネルギー最小化で制限される。ここでいうエネルギー最小化とは1つの分子が自由回転可能なすべての結合を、結果として生ずる分子が同じ一次および二次配列と構造を有する他の立体配座体よりも安定であるように回転させる能力である。
【0048】
最も重要なことは、RNA分子は三次元での構造をもち、この構造は図13に示したモチーフのどの数も含めたRNAモチーフの集積を含むということである。
したがってRNAモチーフは、核酸化合物が形成しうる最も安定な立体配座の群を一般的な言葉で記述することを可能にするすべての方法を含む。与えられた標的については、リガンド溶液および核酸抗体はここで記述したRNAモチーフの1つまたはいくつかのRNAモチーフのある組合せになるだろう。
【0049】
リガンド溶液は共通に保持される三次元構造または SELEX を通じて同定された保存成
分を定めるファミリーとして定義される。たとえば、特定の標的に対して同定されたリガンドは、二次元において以下のヘアピンによって表わすことのできる共通の一次配列(NNNCGNAANUCGN'N'N) を含むであろう:
【0050】
【化1】

【0051】
このため三次元構造は5塩基対のうちの3つと5ループヌクレオチドのうちの2つの正確な配列に敏感ではないであろうし、また配列/構造のすべてまたは大部分の変化に関して、さらに使用する上での適切なリガンドになりうるであろう。こうしてリガンド溶液は、すべての正確な配列/構造溶液を含むファミリー記述によってそれぞれ確認された、適切な配列/構造の可能な大コレクションを表わすことを意味している。この定義を通じて
、RNAモチーフ間の種々の成分間の数的に正確な等価性をもったメンバーだけをリガンド溶液が含む必要はないということが一層よくわかった。たとえば、あるリガンドは5ヌクレオチドのループをもつだろうが、同じ標的に対する他のリガンドが等価なループ中でより少いかあるいはより多いヌクレオチドを含むかもしれないが、それでもリガンド溶液の記述に含まれる。
【0052】
SELEX により導出されたリガンド溶液は比較的大多数の可能なメンバーを含むだろうが、しかしリガンド溶液は標的特異性であり、大部分の場合リガンド溶液ファミリーの各メンバーは標的に対する核酸抗体として使用可能である。核酸抗体として使用されるべきリガンド溶液のファミリーからの特異的メンバーの選択は本文中に述べたようにして行うことができ、それは技術上の通常の熟練の1つに対して明らかであろうところのいくつかの実際的考案によって影響をうける。
【0053】
本発明の方法はバクテリオファージ感染における翻訳調節の研究との関連で開発された。バクテリオファージT4DNAポリメラーゼ(gp43)のようなある種のウイルス蛋白質合成の自動制御は、蛋白質のそれ自身のメッセージへ結合してその翻訳をブロックすることを含む。SELEX 法はgp43RNA結合部位の配列および構造上の必要条件を明らかにするのに用いられる。SELEX は無作為核酸配列の集団から好ましい結合配列を迅速に選択することを可能にする。RNAに結合することが知られている蛋白質に結合する核酸配列の分離と同定によって例証された一方で、本発明の方法は与えられたいかなる蛋白質にも結合できる核酸の選択にも一般的に適用される。本方法は、天然の活性または生物学的機能の一部として核酸に結合しない(または結合が知られていない)蛋白質に結合する核酸の選択に適用できる。SELEX 法は結合部位の構造または配列に関する知識を必要としないし、また標的蛋白質の構造または配列の知識も必要でない。
【0054】
この方法は選択に関して精製標的蛋白質に依存しない。一般に、SELEX の適用によって最も豊富な標的のリガンドに関して濃縮化される。リガンドの混合物中で、与えられた標的のリガンドを分離する技法が利用できる。たとえば、望みの標的のもう1つのリガンド(たとえば基質、阻害剤、抗体)が、標的への結合に関する完全に特異的なものとして使用でき、そのことによって望みの核酸リガンドが他の諸標的のリガンドから分離できる。
【0055】
より好ましい態様においては、SELEX から導出されたリガンドは一重鎖RNA配列を含んでいる。本発明の極めて重要な要素は、本発明者がRNAについて当該分野で一般に考えられているものとは反対の結論を得ることができ、そしてこれらの結論を用いてSELEX プロセスを作り上げてリガンド溶液から導出される核酸抗体を得るということである。
【0056】
RNAは最初は遺伝子であるDNA配列と酵素とその他の蛋白質内に見出される蛋白質配列との間の情報メッセンジャーとして評価された。ワトソンとクリックがDNAの構造およびDNA配列と蛋白質配列との間の相関関係を記載した後の最初の時点から、蛋白質が合成されるその方法は多くの実験生化学の中心になった。結局メッセンジャRNA(mRNA)は遺伝子と蛋白質の間の化学的中間物ということが確認された。有機体中に存在する大半のRNA種はmRNAであり、したがってRNAは主として情報分子としてずっと見られてきた。DNAがヌクレオチドの一次配列を通じて遺伝子物質としてその機能を果たすのと同じように、RNAは主としてヌクレオチドの一次配列を通じて情報分子としての役割を果たす;すなわち、核酸中の情報は一次元で表示することができる。
【0057】
遺伝子発現の生化学の研究によって、その役割が情報的でないいくつかのRNA分子が細胞内に発見された。リボソームは、その上でmRNAが蛋白質に翻訳される実体として発見され、その中に非常に重要なRNA(リボソーマルRNAs、すなわちrRNA)を含むことが見出された。rRNAは長い間構造的なものと考えられていた。すなわち、リ
ボソームの蛋白質成分がその上に“つり下げられる”足場のようなもので、それによってリボソームの蛋白合成作用を行わせるものと考えられていた。さらにRNAの大きな組として転移RNAs(tRNA)が予測され、そして発見された。tRNAは化学的に2つの作用をもつアダプターであり、それらはmRNA内のコドンを認識することと蛋白質中に組み込まれるアミノ酸を運ぶことである。tRNAの構造は1974年にX線解析により決定されたけれども、最も重要なこととして、RNAはつぎの10年間は主として一次元の“ストリング(糸)”として考えられた。rRNAは研究の世界では奇妙な位置を占めた。長い期間にわたりいろいろの種からのrRNA中の深い類似性の背後にある理由やRNA分子の本当の化学的能力に思い至らなかった。幾人かの研究者はRNAはかつては情報的役割よりもむしろ酵素的役割を果たしたと仮定したが、これらの仮説はRNAの現在の機能について予測させるようなものではなかった。
【0058】
RNA分子の新しい一組であるリボソームについてのTom Cechの研究はRNAの機能的能力についての見方を拡げた。グループIイントロンは自触媒的にスプライスすることができ、したがって少なくともいくらかの限られた触媒活性がRNAの範囲内に存在する。触媒活性のこの範囲内の、AltmanとPaceによって発見された活性、つまりRNase PのRNA成分の活性である。Cechと Altmanはかれらのこの研究によってノーベル化学賞を受
け、この研究によってRNA分子の役割は情報的なものに限られるという従来の考えが根本から変えられた。CechとAltmanの研究によって、いまではrRNAはリボソームの活性中心と考える人達もおり、もはや単なる構造的なものとは考えられないようになった。
【0059】
RNA分子は結合その他の能力に関して、それが研究者の世界で低く評価されたままになっているというのが本研究の前提である。リボザイムはRNA機能を目指した研究を著るしく増大させたが、本申請から考えられることは、RNA分子(おそらくDNAも)に関する形状の可能性が、事実上なんらかの結合機能をもったRNAsを見出すためのSELEX を使用する機会を与えるということである。RNAに関して可能な触媒機能の範囲は、蛋白質のそれほど広くは必ずしもなかったが、現在知られている伝統的な知識を越えて広い。
【0060】
いくつかのRNAsの三次元的形状はX−線解析またはNMR的方法から直接知られている。存在するデータセットはまばらである。4つのtRNAの構造は、より小さい3つのRNA分子すなわち2つの小さなヘアピンと1つの小さなシュードノットと同様に解像されている。関連する種々のtRNAはユニークな構造の要素を有する;たとえば、エロンゲーターtRNAのアンチコドン塩基は溶媒に向けて表示されるのに対して、イニシエーターtRNAのアンチコドン塩基は溶媒からより離れて位置する。これらの差のいくらかは結晶の重なりの力から生ずるが、いくらかは疑いもなく同族二次および三次元構造内の異なる一重鎖配列による特有のエネルギー最小化の結果である。
【0061】
配列の変化はもちろん極めて大きい。もし1個のRNAヘアピンの一重鎖が8個のヌクレオチドを含むと、その“スペース”を埋める配列として65,536個の異なる配列がありうる。この主張のような説には縛られないが、本発明者はそのセットの各メンバーはエネル最小化を通じて最も安定な構造をとるだろうことを信ずるし、これらの構造の全体は微妙に異なる化学的表面を溶媒または蛋白質など相互作用の可能性のある標的分子に対して提供するであろう。こうして、特定の構造モチーフ内での65,536個の配列すべてがバクテリオファージT4DNAポリメラーゼに対してテストされた場合、その中の2つの配列が他のすべてのものよりもよく結合した。このことはこれら2つの配列の構造的外観がその標的に対して特異的であること、そしてまた残りの65,534個の配列は標的への結合には適しないことを示唆する。これら65,536個の配列中には他の標的との相互作用に最も適するだろうようなメンバーまたはそれらのセットがあることは十分確かなことである。
【0062】
RNA構造のこの記述における基本的考え方は、たといRNAが構造を作らない要素である無作為のコイルまたはフロッピー(登録商標)を示唆するように画かれているとしても、どの配列もそれ自身の最も安定な構造をもつということである。ワトソン/クリック塩基対を形成できないRNAのホモポリマーはしばしば非無作為構造をとることが見出されているが、これは近接する塩基が互いに位置を固定することによって得られるスタッキングエネルギーによる。明らかに4個すべてのヌクレオチドを含む配列は固定構造の局所領域を含み、たといワトソン/クリック塩基対がなくても一様でない配列は当初予想したよりも多くの構造を持つかもしれない。RNAループ中の固定構造についての場合はもっと強い。tRNAのアンチコドンループは1つの構造を有し、そのためおそらく、T4DNAポリメラーゼに最もよく結合する2つのウィンニング(勝利)配列をもっている。
【0063】
RNA中の相補的配列の逆平行鎖は、ループ配列が現れそして戻るA型らせんを生ずる。たといループ配列が相互作用する強い能力を持たないとしても、エネルギー最小化はエネルギー的な自由構造最適化である(すなわち、活性化のエネルギーが明らかでないことからループ配列のエネルギー最小化をブロックする)。反応論的に最適化の出発点になりそうなのはRNAステムの塩基対を閉じるループであろうし、これはループヌクレオチドおよび塩基の最適スタッキングがその上で起るような平たい表面を提供する。基本的にRNAのループは逆平行のα−らせんまたはβ−鎖を連結する蛋白質のループと等価である。これらの蛋白質ループはしばしばランダムコイルと呼ばれているが、それらはランダムでもなければコイルでもない。このようなループは“オメガ”構造と呼ばれており、比較的互いに接近してループが現われたり戻ったりすることを反映している(Leszczynski, J.and Rose,G. et al. (1986)Science 234:849−855);蛋白質中のこれ
らの位置はRNAヘアピンの塩基対を閉じるループに概念的には等価である。
【0064】
X線回折によって多くのオメガ構造が解析され、それらの構造は特有であった。明らかに各構造は末端が互いに接近したループに作用するユニークなエネルギー最小化の結果である。蛋白質、RNAのいずれにおいてもこれらのループは、第一次近似としてアミノ酸の対または塩基対を閉じるループを除いた残りの構造の残りからの情報なしにこれらのループはエネルギーを最小化するであろう。蛋白質オメガループとRNAヘアピンループ両方にとって、自由に回転できるすべての結合は自由エネルギーを最小化する試みに参加するだろう。RNAは蛋白質よりも静電力により反応し易いであろうが、一方蛋白質はRNAsよりもずっと多くの自由度を持つだろう。したがって、エネルギー最小化を通じてのRNA構造の計算は蛋白質に関する同様の計算よりも正確な解像構造が得られそうである。
【0065】
RNAsおよび蛋白質両者の一重鎖領域は可能な構造を展開するように保持されるであろう。すなわち、もし一重鎖ループがα−ヘリックスまたはβ−鎖の平行鎖からなる蛋白構造中に現われ、そして戻るならば、現われ戻るポイントはオメガ構造中におけるよりも互いに離れている。さらに、ぺプチドの一本鎖が伸びた距離は平行なα−ヘリックスまたはβ−鎖の長さによって変えることができる。
【0066】
固定された蛋白二次構造上に存在する単鎖をもつ蛋白質構造に関して、本質的に、結果として起こるエネルギー最小化は一本鎖ドメインと基本構造との間の相互作用を可能にさせる。二次構造における塩架橋を形成できるアミノ酸側鎖は規則正しい二次構造の頂上に在る伸びた一本鎖中で同じことをするようである。このような蛋白質領域の正確な構造はここでもまた特有のものであり、配列に大きく依存する。この場合、配列依存性は一本鎖と二次構造の基礎配列の両方を含むであろう。
【0067】
興味のあることに、シュードノットとして知られるRNA構造はこれら伸びた蛋白質モ
チーフと類似しており、溶媒/標的または基礎にあるRNA二次構造のいずれかに向けて特有の形で並んだ塩基をもつRNAの一重鎖を伸ばした標的分子または溶媒に向けて拡がるのを助けるであろう。シュードノットは、平行鎖間のループをもとにした蛋白質モチーフと共通に、一重鎖の長さやヘリックスの配列を変える能力を有する。
【0068】
こうして、蛋白質モチーフと全く同じように、基礎となる二次構造中の配列との共変によって、一重鎖ヌクレオチドおよび塩基を溶媒または基礎構造に向けて拡げることが可能であり、これによって標的と相互作用する機能的化学グループと静電力を変える。このような構造変化はエネルギー最小化のあとに起こることを記すのは重要であるが、低い解像においてすらたった1つのシュードノット構造しか知られていない。しかしながら、本発明の価値はシュードノットからの可能な形状と機能的表示はユニークな品質中でほとんど無限であるという認識から生ずる。
【0069】
シュードノットのヘアピンループと一重鎖ドメインは逆平行RNAらせん上に作られる。RNAのらせんはバルジと呼ばれる不規則性を含んでいる。バルジはらせんの一方の鎖または両方の鎖中に存在しうるし、標的認識に有用な特有の構造上の特性を提供する。さらに、らせんの不規則が規則正しいらせん間の角度の関連を提供しうる。
【0070】
RNAの一重鎖上の大きなバルジ(図13参照)は、ループを閉じる塩基対がバルジをゆらゆらさせている2つの塩基対で置き換えられていることを除いて、ヘアピンループと同等である。対称的バルジ(図13参照)は、バルジを横切って接触するヌクレオチドによって安定化されているところの延長した不規則構造を提供するだろう。これらの接触はワトソン/クリック相互作用または他の水素結合や塩基1タッキングを含めた、なんらかの他の安定化配置を含むであろう。
【0071】
最後に、固定化RNA形状またはモチーフをよくよく考えるとき、どのような実質的差がRNAと蛋白質との間に存在するかを考慮するのは有益である。触媒作用および高度の特異的認識を含めて現在蛋白質やペプチドによって完全に成し遂げられている活性に関して進化の間に蛋白質はRNAと置き換わったと考えられるので、蛋白質の化学的性質はいろいろの形状と活性を作り上げる上でRNAよりも有用と思われる。標準的推論は以下のことを含めることになる:20のアミノ酸に対する僅か4個のヌクレオチド、リジン、アルギニン、アスパラギン酸およびグルタミン酸が蛋白質側にあるのに対してRNA塩基中にはこれらに対応するものがないこと、核酸の強い負電荷の糖−燐バックボーンに対して比較的中性のペプチドバックボーン、中性付近のpkをもつヒスチジンの存在、アミノ酸の側鎖α−らせんとβ鎖いずれについても溶媒の方に向いていること、および蛋白質の規則正しい二次構造である。RNAを含めた二重鎖核酸においては塩基対は塩基が互いに向き合っていて一次元レベルで存在する化学的情報の多くを用いている。こうして、形状の多様性と機能に寄与するために現在理解されているあらゆる角度からみて、蛋白質はRNAを含めた核酸に対して大きく優れていると考えられる。進化の間に蛋白質はRNAを越えて認識と触媒作用に関して選ばれ、このために現在広く行き渡っている見解が支持されている。
【0072】
反対に、そして本発明の中心として、RNAについてはぼう大な数の配列と形状がおそらく可能であり、RNAは僅かに4個のヌクレオチドから成り、またRNAのバックボーンは非常に高度に荷電しているとしてもすべての望みの機能と結合親和性もテストされなかった。すなわち、上述の適切な配列特異性をもつRNAモチーフは、大部分の標的への強固で特異な結合を提供するのに必要な化学的機能を空間に作り出すだろう。RNAは免疫系と同じように多才であることが示唆されるだろう。すなわち、免疫系はどんな望みの標的に対してもフィットするものを用意するが、RNAもこれら同じ機会を用意する。ここで述べる可能な方法論は1018の配列を用いることができ、したがってぼう大な数の構
造を試みることによって、RNAに対して蛋白質が本来優位でありまたは抗体が特異性においてRNAより優れていたとしても、これらはRNAリガンドを選択する可能な "プール" のぼう大さによって打ち勝つことができる。加えて、修飾ヌクレオチドを用いることにより、天然のRNAsよりも本質的により化学的に変化に富むRNAを用いることができる。
【0073】
SELEX 法は選択された核酸の増幅によって標的分子、たとえばある蛋白質に結合する核酸リガンドの選択の組み合わせを含む。選択/増幅ステップの繰返しサイクリングによって非常に多数の核酸を含むプールから標的に最も強く結合する1個または少数の核酸の選択が可能になる。
【0074】
選択/増幅のサイクリングは選択ゴールに達するまで続けられる。たとえば、テスト混合物中の核酸の結合が望みのレベルに達するまでサイクリングを続けることができるし、あるいは混合体の核酸成分の数が最小値に達するまで続けられる(究極のケースとしてはテスト混合物中にただ1個の核酸種が残る)。多くの場合、それ以上結合の改善が得られなくなるまでサイクリングを続けるのが望ましい。それは核酸のあるテスト混合物が、選択/増幅のサイクリングの間にバックグランドレベルよりも結合に関して改善が限界を示した場合である。このような場合、テスト混合物中の配列変化を増やすべきであり、その中にはより多くの可能な配列バリアントを含めるべきであり、あるいは配列無作為化領域の長さを結合の改善が達成されるまで増やすべきである。同じようにアンカリングプロトコールおよび/またはウォーキング技法も用いることができる。
【0075】
特に、この方法はまずはじめに候補核酸のテスト混合物を調製することを必要とする。それぞれのテスト核酸は混合物中のすべての核酸中に保存されている配列を近くにもつ無作為領域を含むことができる。保存領域は増幅を容易にし核酸を選択するために用意される。技術的にこのような配列は沢山知られているので、配列の選択は増幅についての望みの方法を心に抱きつつ、技術的に通常の熟練したやり方のいずれかの方法によって行う。無作為領域は全体または部分的な無作為配列をもつことができる。さもなければ、核酸のこの部分は混合物中のすべての核酸種中で一定に保たれているサブポーションに沿って無作為化されたサブポーションを含むことができる。たとえば、結合するとわかっているかまたは標的蛋白質への結合に関して選択された配列領域は、結合または結合の特異性の改善を達成するために無作為領域と一体にすることができる。テスト混合物中の配列の可変性も、選択/増幅プロセスの間にテスト混合物中の核酸中に突然変異を作り出すことによって導入または増強することができる。基本的には、テスト混合物に用いた核酸はそれらが増幅可能な長さであればどんな長さでもよい。本発明の方法は大多数の配列バリアントからの選択について最も実際的に使用できる。こうして、本方法は約4個の塩基から得られるどんな大きさまでの長さにわたる核酸配列の結合を評価するのに使用することが好ましいであろうと考えられる。
【0076】
テスト混合物中の核酸の無作為部分はいろいろの方法で得ることができる。たとえば、完全な、または部分的配列無作為化は核酸(またはそれに対応する蛋白質)の直接の化学合成または標的の合成によって容易に達成できる:そして適切な酵素を用いることによってこの標的から核酸(またはそれに対応する蛋白質)が調製できる。4つすべてのヌクレオチド三燐酸の無制限の濃度の存在下におけるターミナルトランスフェラーゼの触媒作用で最終の付加としてセグメントに対し無作為配列を加えることができる。テスト核酸中の配列可変性も、ゲノムDNA調製物または細胞性RNA調製物のような、大きな天然核酸の部分的消化(または切断)調製物の大きさを選択したフラグメントを用いることによって達成できる。無作為配列を用いるこのような場合には、テスト混合物がすべての可能なバリアント配列を含む必要はない(または長い無作為セグメントから可能な)。一般には、結合可能な配列の最大数が同定されることを保証するために、テスト混合物は選択に関
して実際的である限りできるだけ多数の配列バリアントを含むことが望ましい。30ヌクレオチドの無作為配列は計算上1018個の異なる候補配列を含むであろう。実際問題として、1回の選択で約1018個の候補をサンプルするのが便利である。実際的問題として合成カラム上の標的の数、さらに溶液中の標的やRNAの溶解性も考慮する(もちろん、候補混合物中の配列数に理論的限界はない)。したがって、30ヌクレオチドより長い無作為セグメントを有する候補混合物は、1回の選択で都合よくサンプルするには多過ぎる可能な配列をもつことになる。本発明の核酸リガンドを選択する候補核酸のすべての可能な配列をサンプルする必要はない。テスト混合物の核酸が増幅できるということがこの方法にとって基本的なことである。したがって、テスト核酸中で用いるいかなる保存領域も増幅を邪魔する配列を含んでいないことが好ましい。
【0077】
上に述べた種々のRNAモチーフは約30ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによってほとんどいつでも定義できる。SELEX プロセスの物理的束縛の故に、約30ヌクレオチドを含む無作為混合物は、使用しうる無作為セグメントとしてはおそらく最長のものであり、実質的に可能なバリアントのすべてをテストすることができる。したがって、本発明の好ましい態様は、隣接する無作為領域を用いるときは、少なくとも15ヌクレオチドの無作為配列を用いて少なくとも約109 個の核酸を含むことであり、最も好ましい態様は少なくとも25個のヌクレオチドを含むことである。
【0078】
本発明は少なくとも15ヌクレオチドからなる隣接無作為セグメントのすべての可能なバリアントを含む候補混合物を含む。候補混合物中のそれぞれのメンバーは、選択核酸配列の増幅において手助けとなる固定配列が無作為セグメントの隣りに位置するようになっている。
【0079】
候補混合物は無作為配列と固定配列両方を含むように調製することもできるだろうし、そこで固定配列は増幅プロセスに加えて1つの機能を行う。本発明の1つの態様において、候補混合物中の固定配列は、与えられた核酸モチーフを有する候補混合物中の核酸の百分率を大きくするために選択されるであろう。たとえば、適切な固定ヌクレオチドの取り込みは候補混合物中のシュードノットまたはヘアピンループの百分率を増大することを可能にするであろう。したがって、与えられた核酸構造上のモチーフの百分率を強める固定配列を含むように調製された候補混合物は、本発明の1部をなす。ここで述べたような種々の核酸抗体を日常業務的に検分する上での技術上の1つの熟練によって、不適当な実験を行うことなくこのような候補混合物を構成混合物を構成することができるてあろう。以下の例2と8では好ましいRNAモチーフを最大限に作る候補混合物の特異性な例を述べる。
【0080】
種々の固定配列を含む候補混合物または目的に応じて部分的無作為配列を用いた候補混合物は、リガンド溶液または部分的リガンド溶液をSELEX によって得た後に用いることもできる。するとリガンド溶液によってインフォームされた候補混合物によって新しいSELEX プロセスが開始されるであろう。
【0081】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は核酸増幅のための典型的方法である。PCR法の記載はたとえば以下の文献にみられる:Saiki et al.(1985)Science 230:1350−1354;Saiki et al.(1986)Nature324:163−166;Scharf et al.(1986) Science 233:1076−1078;Innis et al.(1988) Proc. Natl. Acad. Sci.85:9436−9440;and in U.S. Patent 4,683,195(Mullis et al.) and U.S. Patent 4,683,202(Mullis et al.) 基本的な形では、PCR増幅はssDNAの3′と5′末端に相補的な特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いて望みの一重鎖DNA(またはRNAのcDNAコピー)の複製サイクルを繰返すこと、DNAポリメラーゼによるプライマーのエクステンションおよびDNA変性を含む。1つのプ
ライマーからエクステンションで生じた生成物は他のプライマーからのエクステンションのための鋳型として働らく。PCT公刊申請WO89/01050(Burg et al.)に記載された関連増幅法は、二重鎖中間体を与えるために、増幅すべき配列の上流のプロモーター配列の存在または導入を必要とする。中間体を含む二重鎖プロモーターの多重RNAコピーはそのあとRNAポリメラーゼを用いて産生される。その結果生じたRNAコピーを逆転写酵素で処理して中間体を含む二重鎖プロモーターをさらに産生し、これをRNAポリメラーゼによる増幅のもう1つのラウンドに用いることができる。これに代わる増幅法は選択RNAsの選択DNAsまたはcDNAコピーを適当なベクター中へクローニングしてそのベクターを宿主有機体中へ導入、そこでベクターとクローン化DNAsを複製させて増幅する(Guatelli, J. C. et al.(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. 87:1874).一般に、本発明の方法では選択核酸配列の正確で効率的増幅を行わせるどんな手段でも用いることができる。増幅後の配列に比例した表示は最低増幅前の混合物中の配列の相対的割合を大まかに反映するだけでよい。
【0082】
RNAsを増幅させるための本発明の特異な態様は Innis et al. (1988) supra
を基礎としている。テスト混合物中のRNA分子と標的分子は、増幅とPCRの後に、それらの5′部分中の必須のT7プロモーター配列を与えるように設計されている。選択RNA分子の完全長cDNAコピーは選択RNAsの3′配列に相補的なオリゴマーでプライムした逆転写酵素を用いて作られた。その結果生成したcDNAsを、選択DNAs中のT7プロモーター配列を提供することによって、TaqDNAポリメラーゼチェインエクステンションによって増幅した。この増幅プロセスの結果としての二重鎖産物をつぎにin
vitro で転写した。転写体はつぎの選択/増幅サイクルに使用した。この方法では適当
な核酸精製ステップを選ぶこともできる。
【0083】
本発明の方法においては、一般に核酸が他の分子、たとえば蛋白質または最も一般的なケースとしてなんらかの標的分子と特異的に結合する能力を基礎に核酸の選択を可能にするなんらかのプロトコールを用いることができる。選択は増幅の可能な核酸を分離する必要だけである。たとえば、テスト核酸混合物を標的蛋白質とインキュベートした例1において述べたように、フィルター結合選択では核酸/蛋白質混合物はそのあとニトロセルロースフィルターを通じて濾過され、遊離の核酸を除去するために適当な緩衝液で洗滌する。蛋白質/核酸はしばしばフィルターに結合したままに残る。インキュベート混合物中のテスト核酸に対する蛋白質の相対濃度は選択するための結合の強さに影響する。核酸が過剰のときは、利用可能な結合部位に対する競合が起こり最も強く結合する核酸が選択される。これとは逆に、過剰の蛋白質が用いられた時は、蛋白質に結合するどんな核酸でも選択されるだろう。望みの選択を達成するために用いる核酸に対する蛋白質の相対濃度は、蛋白質の型、結合相互作用の力および存在するなんらかのバックグランド結合のレベルに依存する。望みの選択結果を達成するのに必要な相対濃度は実験することなしに経験的に容易に決定できる。同じように、バックグランド結合を最小にするために濾過洗滌操作を最適化することも必要かもしれない。濾過洗滌操作のこのような最適化は通常の技工の熟練の範囲内のことである。
【0084】
SELEXIONと呼ばれるSELEX の数学的評価は本発明者らによって用いられてきた。この適用に対する付録AにはSELEXIONから導かれるSELEX に関する一般化を得るのに用いた数学的解析の短いレビューが含まれている。
【0085】
SELEXIONから得られる一般化は以下の通りである:1)SELEX の各ラウンドで最も良く結合するRNAを回収する見込みは、存在するこれら分子の数、全体のRNAプール対これらの結合優位性および用いた蛋白質の総数に比例して増える。結合における差異をいかにして最大にするかを前もって知ることは必ずしもいつでも直観的に明らかではないが、最も良く結合するRNAの回収の見込みは試料として用いるRNA分子と標的分子の数を最
大にすることによって増大させることができる;2)SELEX の種々のラウンドで用いるべき理想的な核酸と蛋白質濃度はいくつかの因子に依存する。SELEXIONで示唆された実験的パラメータはここでの例で用いたものと並行する。たとえば、最終リガンド溶液の相対的親和性がわかっていない場合、─このようなことはSELEX を実施した場合ほとんど避けられないが─蛋白質標的に対して核酸全体の約3から7%の間の結合が起こるように蛋白質と核酸混合物濃度を選ぶことが好ましい。この規準を用いることによってSELEX の各ラウンドごとに高親和性リガンドで10倍から20倍の濃度化が達成されるだろうことが期待できる。
【0086】
好ましい態様において種々の標的に対する核酸リガンドを選択するのに用いる実験条件は、標的がin vivo で存在するような環境に似たものを選択すべきである。以下に示す例10は選択条件を変えると特定の標的を受け容れるリガンド溶液にどんな影響を与えるかを示したものである。塩が高いそして低い条件下ではNGFに対するリガンド溶液は非常によく類似しているけれども、差異も観測された。標的のin vivo 環境を正確に反映するように変えられるような調節可能な条件としては全イオン強度、二価カチオンの濃度および溶液のpHが含まれるがしかしこれらに限定されない。技術的に1つの熟練したやり方で、与えられた標的に関する知識をもとに適切な分離条件を容易に選択できるだろう。
【0087】
増幅ステップへ進むためには、分離のあと選択核酸を標的から遊離させなくてはならない。この過程は選択核酸の化学的分解なしになされなければならず、その結果として増幅可能な核酸が得られるのでなければならない。特異な態様においては、選択RNA分子はニトロセルロースフィルターで溶出したが、その場合用いたのは7M尿素200μl、20mMクエン酸ナトリウム(pH5.0)、500μlのフェノールと混合した1mM EDTA
溶液(0.1M酢酸ナトリウム、pH5.2で平衡化した)を含む新たに作った溶液であった。500μlのフェノールと7M尿素200μlの混合溶液がうまく用いられた。選択RNAの溶出液をそのあとエーテルで抽出、エタノール沈澱し、沈渣を水中に再懸濁した。フィルターからの選択RNAの溶出のためのいくつかの異なる緩衝液の条件を用いることができる。たとえば、グアニジニウムクロライド、グアニジニウムチオシアネートなど、技術的に知られているような、非界面活性水溶性蛋白質変性剤を制限なしに用いることができる。フィルターからの核酸の溶出に用いる特異な溶液は技術的に通常の熟練の一つによって日常業務的に選択できる。
【0088】
標的、とくに蛋白質に結合した核酸を分離するための代わりの分離プロトコールが技術的に利用可能である。たとえば、固体支持物質に結合した標的分子を含むカラムを通してのテスト核酸混合物の通過によって結合と分離が達成できる。標的に結合するこれらの核酸はカラム上に保持され、非結合核酸はカラムから洗い出される。
【0089】
本申請を通じて、SELEX プロセスは望みの選択性が達成されるまで選択と増幅が繰り返されるところの繰り返しプロセスとして定義されてきた。本発明の1つの態様において、選択過程は、たった1回の分離ステップ後にはリガンド溶液を与えるのに十分な効率をもっている。たとえば、理論上は候補混合物を導入するカラムは標的を支えているが─適正な条件と十分長いカラムの条件下─リガンド溶液を得るのに十分な標的への親和性をもとに、核酸を分離しうるものでなければならない。たった1つのステップの後にリガンド溶液を生ずるほどもとの選択ステップが十分選択的であるような程度なら、このようなプロセスもまた本発明の範囲内に含まれるであろう。
【0090】
本発明の1つの態様において、増幅に引続いて1個または離ればなれの少数の核酸リガンドが候補混合物中に残るまでSELEX をくり返し実施した。このような場合、リガンド溶液は単一核酸配列として表示されるだろうし、標的に対する同等の結合親和性をもつ配列のファミリーは含まないであろう。
【0091】
本発明のもう1つの代わりの態様においては、SELEX 繰返しは候補混合物がより高い結合親和性核酸リガンド中で濃度化されたときに終了させるが、それでもなお異なる配列の比較的大多数が含まれている。この点を決めるのは技術上の熟練の1つであり、候補混合物全体の配列の無作為化の程度を定期的に分析するか、または標的への全体としての親和性を定量することによって行う。
【0092】
この時点でSELEX を終了させ、クローンを調製して配列決定を行なった。もちろん、配列決定できるクローンの数はほとんど無限に近い。しかし、以下の例にみられるように、20と50の間のクローンの配列決定ののち、一般的には最も優勢な配列を検出し、リガンド溶液の特性を定義することが可能である。仮説的例においては、30の配列をクローン化してのち、6の配列は同じであることがわかった一方で、他の配列のうちの20のある配列部位は "ウインニング”配列内での配列と密接に関連している。最も優勢な配列はその標的に対するリガンド溶液と考えられるかもしれないが、クローン化された配列の多くに共通の特性を含む配列のファミリーから成るリガンド溶液を記述または構成するのがしばしばより適当である。
【0093】
本発明のさらなる態様において、はっきりとしたいくつかの特性(たとえば、リガンド溶液がAAGUNNGUNNCNNNN で、Nは4つのヌクレオチドのいずれか)を有する配列の1つのファミリーとして表示されるリガンド溶液が付加的SELEX プロセスを始めるのに用いられるだろう。この態様では、候補混合物は部分的に固定、部分的に無作為化されたヌクレオチドから成り、固定ヌクレオチドは最初のSELEX プロセスで受容されたリガンド溶液をもとに選択される。この方式では、もしもリガンド溶液ファミリーの他のメンバーよりもよく結合する単一ヌクレオチド配列があれば、それは直ちに同定されるであろう。
【0094】
本発明のさらに代わりの態様においては、SELEX プロセス中に受容されたリガンド溶液を基に第2のSELEX 実験もまた用いられる。この態様では、単一の最も圧倒的な配列(たとえばAAGUCCGUAACACAC)を用いて2番目のSELEX プロセスにインフォームするのに用いる。この2番目のSELEX プロセスで選択ウインナー(勝者)を基礎にした配列を生ずるために候補混合物を調製し、その一方で配列のそれぞれが十分な無作為化になることを確かめる。この候補混合物は無作為化よりもむしろ傾向をもったヌクレオチド出発物質を用いて産生されるであろう。たとえば、A溶液は75%のAと25%のU,CおよびGを含む。核酸合成器は圧倒的なヌクレオチドを生ずるようにセットされるが、A溶液中の他のヌクレオチドの存在はAが圧倒的に多い核酸配列を生ずるとしても、この位置がAと異なるものも生ずるであろう。また、最初のSELEX プロセスで得られた結果でインフォームされる2番目のSELEX ラウンドは与えられた標的に対する最良のリガンド溶液を得る確率を最大にするだろう。また、リガンド溶液は単一の好ましい核酸リガンドから成るだろうということ、あるいはそれは本質的に同じ結合親和性を有する構造的に関連した1つのファミリーから成ることが明らかにされねばならない。
【0095】
実際上、時には単一配列が得られるまでSELEX プロセスを実施しない方が好ましいこともあるかもしれない。SELEX プロセスは何回かのSELEX ののち候補混合物中である配列の優勢に影響するだろういくつかのバイアス点−これらは標的に対するその配列の結合親和性に関係しない−を含んでいる。たとえば、ある配列に好都合または不都合な1つのバイアスが選択後に回収されたRNAからのcDNAの産生中、あるいは増幅プロセス中に起こるかもしれない。このような予知できないバイアスの影響は、反応混合物中で唯1個または少数の配列が優勢になる前にSELEX を止めることによって最小にすることができる。
【0096】
上述のように、テスト核酸混合物中の配列変化は突然変異で起こさせたり増やしたりすることができる。たとえば、PCR増幅中に効率的に核酸配列に突然変異を起こさせる方
法が記載されている(Leung et al.1989) . この方法または機能的に等価な方法を本発明における増幅方式と随意に組み合わせることができる。あるいはまた、DNA突然変異のための従来法を核酸増幅の中に組み込むこともできる。適用可能な突然変異生起の方法には化学的誘起突然変異とオリゴヌクレオチドサイト−デイレクテッド突然変異が含まれる。
【0097】
本発明はまた核酸のさらに興味ある能力及び蛋白質のような標的と相互作用する知られているあるいは今後明らかになると思われる反応様式を利用することにまで拡大することができる。例えばSELEX 法は蛋白質とミハエル付加物を形成するリガンドのスクリーニングに使用することができる。ピリミジンはそれが蛋白質内の正常な位置、通常は重要なシステイン又は求核基の近くに存在する時には、その求核基と反応してミハエル付加物を生成することができる。ミハエル付加物が生成される機構はピリミジン塩基の6位を求核攻撃して過渡的(併しゆっくりと逆戻りする)中間体すなわち5,6−ジヒドロロピリミジンを生成する機構である。RNAと標的蛋白質との間に、蛋白質を適当な変性剤で変性させた後でも、結合が起こるかどうかを観察することによってこのような中間体が存在することを調べることができる。すなわち、標的の結合ポケットが破壊された時、共有相互反応が連続して起こることを調べるのである。しかしながら、ミハエル付加物は屡々可逆的であり、時として非常に速いので、この試験によってミハエル付加物が確認できなくても、ある重要な瞬間にこれが存在しなかったことを示すことにはならない。
【0098】
酵素や他の蛋白質標的に対して極めて強い親和性すなわち自殺基質に近い結合を作る為にミハエル付加物を利用するようにSELEX を行うことができる。無作為化RNA混合物と標的物質が結合した後、濾過やその他の方法で分離する前に標的物質が変性することが予想される。その後の分離、ミハエル付加物の反転、遊離されたRNA上でのcDNA合成、SELEX サイクルの休止は変性前の標的物質に結合するRNAsを濃縮し、科学者によってミハエル付加物が反転されるまで共有結合を続けると思われる。このリガンドは、in vivo では永続的に標的蛋白質を阻害する性質を持っていると思われる。蛋白質のtRNA−ウラシルメチル転位酵素(RUMT)はミハエル付加物を通して基質のtRNAと結合する。RUMTがE.coli中に高濃度に発現される時には大部分RNAに共有結合された状態で見出されるが、このことはほとんど不可逆的な阻害物質がSELEX によって認めることができることを強く示唆するものである。
【0099】
本発明の方法は応用範囲が広い。例えば本方法は蛋白のDNAやRNAへの結合部位を同定したり特徴付けをしたりするのを手助けするために使用することができる。このような結合部位は遺伝子発現の転写調節あるいは翻訳調節において機能している。例えば、プロモーター部位での転写アクチベータあるいはリプレッサー、転写複合体の結合部位として、複製の基点あるいはその近辺での複製補助蛋白とDNAポリメラーゼの結合部位として、またリボゾーム結合部位でのリボゾームと翻訳リプレッサーとの結合部位として機能している。このような結合部位の配列情報は、調節領域を特徴づけるための危介で徹底した方法を回避して、この領域を分離して同定するために用いることができる。単離したDNA調節領域は例えば異型構成体において遺伝子の発現を選択的に変えるのに使用することができる。
【0100】
本発明が予期しなかったことではあるが重要なことは、ここに記載した方法が、希望する標的分子のいずれとも特異的に結合する核酸分子を同定し単離しあるいは生産するために使用することができることである。このように、この方法は特定の標的に特異的に結合する核酸を生成するのに使用することができる。このような核酸リガンドは多くの面において機能的に抗体に似ている。抗体の結合機能と同様な結合機能を有する核酸リガンドが本発明の方法によって単離することができる。このような核酸リガンドをここでは核酸抗体と名付け、ポリクロナール抗体あるいはモノクロナール抗体が適用できる応用面におい
て一般に有用である。核酸抗体はin vitroあるいはin vivo のいずれにおいても一般に抗体の代りになり得る。ただ、核酸抗体が使用される條件下で、核酸が実質的に分解されないことが必要である。核酸抗体の応用には、すべての原料からの標的分子の特異的、定性的あるいは定量的検出;標的分子の核酸への特異的結合に基づく標的分子の精製;毒素あるいは他の治療薬を特定の標的部位へ特異的に方向づけることによる種々の治療法などかある。
【0101】
標的分子としては蛋白質が好ましいが、炭水化物、ペプチドグリカン及び種々の低分子のものでもよい。従来の蛋白質性抗体と同様に、核酸抗体は生物学的構造の内在部分である分子と特異的に相互作用することによって、細胞表面やウイルスのような生物学的構造物を標的として使用することができる。核酸抗体は従来の抗体のように自己寛容による制限を受けないという利点がある。また核酸抗体は合成したり生産するために動物や細胞培養を必要としない。それはSELEX がすべてin vitroプロセスであるからである。よく知られているように、核酸は相補的核酸配列に結合する。核酸のこの性質は核酸分子の検出、定量及び単離に広く利用されている。従って、本発明の方法は既知の核酸間の結合能力を包含することを意図してはいない。特に核酸抗体の使用に関する本発明の方法は、核酸分子間の既知の結合親和性を包含することを意図していない。
【0102】
多くの蛋白質が、核酸のオぺレーター配列に結合している調節蛋白質のように、核酸配列へ結合することによって機能することが知られている。ある種の核酸結合蛋白質がそれらの自然の部位へ結合するという既知の能力は、例えば、このような蛋白質の検出、定量、単離及び精製に使用されている。核酸抗体の使用に関する本発明の方法は、核酸結合蛋白質と、それらが結合することが知られている核酸配列との間の既知の結合親和性を包含することを意図してはいない。しかしながら蛋白を結合する同じ核酸へ結合する新規の天然には存在しない配列はSELEX を用いて開発することができるのである。SELEX は蛋白質へ結合する核酸の配列を極めて速やかに決定することができ、また、したがって、未知のオペレーターの構造や結合部位の配列を決定するのに容易に使用することができ、その決定された配列が、つぎにここに記述した応用に使用することができるということは注目すべきことである。
【0103】
本発明は核酸と結合することが知られていない蛋白質の検出、定量、単離及び精製に核酸分子を一般的に使用する最初の開示であると信じられる。以下に論じられるように、SELEX によって単離可能なある種の核酸抗体はまた特定の標的分子あるいは構造の機能に影響を与えるために、例えばその機能を阻害したり、高めたりあるいは活性化したりするために使用することができる。特に、核酸抗体は蛋白質の機能を阻害したり、高めたり、あるいは活性化したりするのに使用することができる。
【0104】
核酸に結合する既知の能力を有する蛋白質(例えばDNAポリメラーゼ、その他のレプリカーゼ、RNA上の部位を認識するがそれ以上触媒作用に関与しない蛋白質)はSELEX によって、標的蛋白質の活性部位に結合する高親和性のRNAリガンドを与える。したがってHIV−1の逆転写酵素の場合、生成したRNAリガンド(実施例2で1.1と呼ぶ)は、プライマーDNA、RNA鋳型、及び4種のデオキシヌクレオチド三燐酸の存在でcDNA合成を阻止する。
【0105】
RNA構造に関する発明者の理論は、殆んどすべての蛋白質はSELEX の標的になることを示唆するものである。非核酸結合蛋白質についての最初の実験を、一般に核酸あるいは特にRNAと相互反応するとは考えられない3種の蛋白質で実施した。3種の蛋白質とは組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、神経成長因子(NGF)及び成長因子レセプターの細胞外領域(gfR−Xtra) であった。これらの蛋白質すべてについて、ニトロセルロース濾紙上に無作為化混合RNAs を保留するかどうかをみるために試験した。tP
AとNGFはUMのちょうど下のkd′s で、無作為化RNAに対する親和性を示した。gfR−xtraは測定できるほどの親和性では結合しなかったけれども、これはもしその蛋白質に対するRNA抗体が存在すれば、他の大部分のRNAs に対して親和性を持たない部位へそれが結合するに違いないことを示唆するものである。
【0106】
tPA及びNGFは30の無作為化位置を有するRNAsを用いてSELEX ドリルによって得られた。tPA及びNGFはSELEX ドリルでリガンド溶液を与えたが、これは各蛋白質上のある部位が、その部位(あるいは他のもう1つの部位)が他のRNAsと結合するよりもそれを引き付ける配列とより強固に結合したことを示唆するものである。引き付ける配列は2種の蛋白質について異なる。
【0107】
tPA及びNGFがSELEX ドリルで非常によく作用したので、ランダムに集めた蛋白質及ペプチドについて、それらがRNAに対して何らかの親和性を持っているかどうかについて試験した。一般に低い親和性を与える標的の同じ領域に接触するより高い親和性配列をSELEX ドリルが与えるRNAに対して、蛋白質が何らかの親和性を有するのではないかと論理的に考えられた。一組の蛋白質とペプチドについて、ランダム化されたRNAs(40のランダム化された位置を含んでいる)がニトロセルロースの濾紙上に保留されるかどうかをみるために試験した。試験した蛋白の約2/3がRNAに結合し、少数の蛋白はRNAにきわめて強く結合した。実施例9を参照。
【0108】
RNAをニトロセルロース濾紙に結合させない蛋白質は、RNA抗体を高める可能性について何もしていないという些細な理由のために失敗しているかも知れない。一例としてブラジキニンはニトロセルロースに結合しない、したがって上記実験においては失敗するだろう。ペプチドのアミノ末端を通して固体のマトリックスに結合させたブラジキニンを調製したら、ランダム化したRNAが強固にマトリックスに結合したのがみられた(実施例7参照)。したがって最初の実験において、2つの短いペプチド、ブラジキニンとボンベスチンはランダム化RNAsに強固結合する。これらのペプチド標的を用いてSELEX で得られた高親和性のRNAリガンドは恐らくこれら活性ペプチドの拮抗体であると思われ、治療上有用であろうと思われる。きわめて小さなペプチドに、そのほとんどすべての活性に対して不活性にすることなく結合する約30のヌクレオチドからなるRNAを推測することは困難なことである。
【0109】
以下の実施例4,7,9及び10に示すように、天然では核酸と相互反応するとは考えられない蛋白質が、核酸のランダム混合物と重要な程度にまで結合することが発見された。さらにRNA混合物に非特異的に結合することが認められた蛋白質に対しては、SELEX によってリガンド溶液を得ることができることが示されている。したがってこれはSELEX 実施前に、与えられた標的物質が核酸のランダム混合物に何らかの結合を示すかどうかを決定するための潜在的に価値のあるスクリーンである。ここに記述した方法が、特定の標的分子に特異的に結合する核酸分子を同定し、単離しあるいは生産するのに使用することができるということ、またそま分子の機能に影響を与えるために使用することができるということは第二に重要なことであり、また予期しなかった面である。この面においても標的分子は蛋白質が好ましいが、他のものでも、特に特異的な核酸結合をする炭水化物や種々の小分子などでもよい。小分子に結合する核酸リガンドは、小分子の天然のリガンドと相互作用することから隔離することによって、あるいはそれらを妨げることによって小分子の機能に影響を与えることができる。
【0110】
例えば、ある酵素の活性はその酵素の基質と結合する核酸リガンドによって影響される。小分子の核酸リガンド、すなわち核酸抗体は診断試験(あるいはその他の定量)の試薬として特に有用である。例えば、結合代謝産物や正常代謝産物の異常量などの被制御物質の存在は本発明の核酸リガンドを用いて検出及び測定が可能である。触媒活性を有する核
酸リガンドは標的の化学変化を触媒することによって小分子の機能に影響を与えることができる。可能な触媒活性の範囲は少なくとも蛋白質によって示される範囲と同様の広さである。希望する反応の遷移状態にある類似体に対するリガンドを選択する方策は触媒核酸リガンドを選択することができる一方法である。
【0111】
蛋白質の機能に影響を与えて阻害したり高めたりするために核酸分子を一般的に使用することを開示するのは本発明が初めてと信ずる。本発明の結合選択法は、選択された核酸に結合させて標的分子機能を修飾するための二次的選択法あるいはスクリーニング法と容易に組み合せることができる。SELEX で試験することのできるバリアント核酸配列が多数あることは、希望する結合能力と標的分子活性を変更する機能を有する核酸配列を見つけ出す確率を高めるものである。
【0112】
本発明の方法は、蛋白質の自然の生物学的活性の一部として核酸に結合する蛋白質、及び蛋白質の生物学的機能の一部として核酸と結合することが知られていない蛋白質を含むすべての標的蛋白質の機能に選択的に影響を与えることができる核酸リガンドを選択するために有用である。ここに記述した方法は次のものと結合する蛋白質に結合してその機能を修正する核酸リガンドを単離あるいは生産するのに使用することができる。蛋白質として、DNA又はRNA、一本鎖又は二本鎖等の核酸と結合する蛋白質;プリンやピリミジン塩基又はそれらから誘導される塩基を含むヌクレオシドあるいはヌクレオチト、特にアデニン、チミジン、グアニン、ウラシル、シトシン及びヒポキサンチン塩基及びそれらの誘導体、特にメチル化誘導体などと結合する蛋白質;特にニコチンアミドヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド及びコエンザイムA等の補酵素ヌクレオチド類と結合する蛋白質などがあげられる。
【0113】
本発明の方法は、標的酵素の触媒活性に影響を与える、すなわち触媒作用を阻害したりあるいは基質結合を変更する核酸分子、蛋白質レセプターの官能性に影響を与える、すなわちレセプターへの結合を阻害しあるいはレセプターへの結合の特異を変更する核酸分子;蛋白質多量体の形成に影響を与える、すなわち蛋白質サブユニットの四次構造を破壊する核酸分子;及び蛋白質の輸送性を変更する、すなわち蛋白質による小分子又はイオンの輸送を破壊する核酸分子等の核酸分子を同定し、単離しあるいは生産するために使用し得ることが期待される。
【0114】
SELEX プロセスはここではリガンド溶液が得られるまで繰り返される候補核酸混合物の反復選択及び増幅と定義される。このプロセスの次の段階は与えられた標的に対する核酸抗体の製造である。与えられたプロセスに対して得られたリガンド溶液が単一配列であっても、そのリガンド溶液を含む核酸抗体は合成されなければならない。例えば、SELEX 実験によって、SELEX 候補混合物に用いられた30のランダム化ヌクレオチド配列のうち20のみからなるむしろ好ましい単一リガント溶液が得られるかも知れない。治療的に価値のある核酸抗体は、重要でないヌクレオチドやSELEX の増幅段階で必要な固定配列はむしろ含まない方がよいと思われる。一旦核酸抗体の好ましい構造がリガンド溶液に基づいて決定されると、核酸抗体の実際の合成は、この方面でよく知られた種々の技術にしたが実施される。
【0115】
核酸抗体はまた与えられた標的に対する一群の配列からなるリガンド溶液に基づいて構成される可能性がある。このような場合、通常の実験では、得られる配列はリガント溶液の標的に対する相対親和力に関係なく環境によってむしろ選択されると考えられる。このような考え方は当業の通常の技術を有するものにとっては明白なことである。
【0116】
本発明の別の実施例においては、核酸抗体は同じ標的に対して多数の核酸リガンドを含む可能性がある。例えば、SELEX は2つの別々のリガンド溶液を確認することがある。2
つのリガンド溶液は異なった位置で標的に結合するので、核酸抗体はむしろ両方のリガンド溶液を含んでいる方がよいかも知れない。もう一つの実施例では、核酸抗体は単一リガンド溶液を1つ以上含んでいる可能性がある。このような多価核酸抗体はただ1個のリガンドを有する当量の核酸抗体では得られない標的に対する強い親和力を有する。
【0117】
さらに核酸抗体は次のようなその他の要素を含んでいてもよい。すなわち1)標的に対する独立した親和力を核酸抗体に与える要素;2)標的に対する核酸リガンドの親和性を依存的に高める要素;3)in vivo で治療が必要とされる適当な局所へ核酸抗体を導びき局在させる要素;4)局所におけるある種の追加的反応に影響を与えるために、核酸リガンドの標的に対する特異性を利用する要素、などである。
【0118】
本発明の方法は標的蛋白質の機能を阻害する核酸を得るのに有用である、特に蛋白が核酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド及びそれらの誘導体や類似体と結合する機能を阻害する核酸を得るのに有用である。本発明の方法は核酸阻害剤、例えば核酸やヌクレオチドあるいはヌクレオシドが基質あるいは補助因子となっているポリメラーゼ、逆転写酵素、及びその他の酵素の核酸阻害剤を与えることができる。
【0119】
SELEX と組み合せることのできる二次的選択方法には、とりわけ酵素の阻害、基質結合の変更、官能性の喪失、構造の破壊等に対する選択又はスクリーニングがある。当該技術分野において通常の技量を有する者は多くの方法がある中で、ここに記載した方法と両立できる選択方法あるいはスクリーニング方法を選択することは可能である。
【0120】
ある場合には、すなわちある標的分子に対しては、あるいはある種の応用にとってはリガントとしてDNA分子よりはRNA分子を使用する方が、一方他の場合にはRNAよりDNAリガンドを使用した方が好ましいということは当該技術分野の技量を有するものにとっては自明のことである。
【0121】
本発明の選択方法はまた分子複合体、例えば基質−蛋白複合体あるいは阻害剤−蛋白質複合体に特異的に結合する核酸を選択するのに用いることもできる。複合体分子に特異的に結合するが非複合体分子には結合しないこれらの核酸の中には、複合体形成を阻害する核酸がある。例えば、基質−酵素複合体へ特異的に結合する核酸リガンドを選択した場合には、その核酸リガンド中から基質の酵素への結合を阻害して酵素による触媒作用を阻害あるいは破壊する核酸を容易に選択することができる。
【0122】
蛋白質あるいはその他の標的分子の特定の官能部位又は活性部位に結合する核酸の同定あるいは単離に特に有用である本発明実施例においては、選択・増幅プロセスを標的分子内の希望する部位で又はその近くで結合する核酸リガンドのサブセット方向へ方向づけるために、標的蛋白質内の希望する部位へ結合することが知られている、あるいは結合するように選択された分子を用いる。単純な例では、標的分子中の希望する部位に結合することが知られている核酸配列が、結合が試験されているすべての核酸の無作為化された領域の近くに組み込まれている。次にSELEX がこれらバリアントの選択に使用される(図9)。
【0123】
これらバリアントはすべて既知の結合配列を持っており、標的分子に最も強く結合する。標的分子に一層強く結合するか、あるいは標的に一層特異的に結合することが期待されるより長い結合配列はこのようにして選択することができる。この長い結合配列が次に核酸試験混合物の無作為化された領域の近くに組み込まれ、さらに長い結合配列を選択するために選択・増幅ステップが繰り返される。これらのステップ(すなわち選択した配列の試験混合物中への組込み、改良された又はより特異性のある結合の選択・増幅)の反復が、結合力又は特異性が希望するレベルに達するまで繰り返される。この反復「歩行」法は
特定の標的分子又は標的分子内の特定の部位に対して高い特異性を有する核酸の選択を可能にする。この反復「歩行」法のもう一つの実施例は、必ずしも核酸ではない「アンカー」分子を使用している(図10、11参照)。
【0124】
この実施例においては、希望する標的に結合する分子、例えば標的酵素の基質又は阻害剤、は既知の配列のオリゴヌクレオチドへ共有結合することができるように化学的に修飾される(図10の「ガイドオリゴヌクレオチド」)。標的に結合する「アンカー」分子に化学的に結合されるガイドオリゴヌクレオチドはまた標的分子に結合する。ガイドオリゴヌクレオチドの配列補体は試験核酸混合物の無作為化された領域の近くに組み込まれる、次に標的分子又はアンカー複合体に最も強く結合するこれらの配列を選択するためにSELEX を行う。標的への結合力又は結合特異性が高いより長い核酸分子を選択し生成させるために反復歩行法を使用することができる。「アンカー」法を使用することにより、標的分子内の希望する部位に、又はその近辺に結合する核酸リガンドの単離をより速やかに行うことができることが期待される。特に反復「歩行」法と組み合わせて「アンカー」法を用いることにより、特異性の高い蛋白機能阻害剤である核酸が得られることが期待される(図11)。
【0125】
SELEX の実施に当っては、選択プロセスが核酸配列の標的への親和力とは関係のない何らかの因子によってゆがめられていないことを確認するために、選択プロセスと共にプラス/マイナススクリーニングを実施することが望ましい。例えば蛋白質を結合するニトロセルロースを用いて選択を行う場合には、ある種の核酸配列が優先的にニトロセルロースに保留され、SELEX プロセス中に選択されることがみられている。ニトロセルロースに保留される性質があるために選択されてしまうこれらの配列を選択的に取り除くために、前述のSELEX 混合物がニトロセルロースを通過するステップをさらに組み入れることによって候補混合物からこれらの配列を除去することができる。このようなスクリーニング及び選択法は標的が不純物を含んでいる場合や選択プロセスが標的への親和性に関係のない傾向をもたらす時にはいつでも実施した方がよい。
【0126】
SELEX はgp43とも呼ばれているバクテリオファージT4 DNAの機能を結合して阻害するRNA分子の単離への適用によって立証されている。T4 DNAポリメラーゼの新規なRNAリガンドはT4 DNAポリメラーゼの特異的定量試薬として有用である。T4 DNAポリメラーゼの合成は自己発生的に制御されている。機能性蛋白質が存在しない場合には、アンバーフラグメントや突然変異蛋白質が、複製欠失感染における野生型蛋白質の合成速度と比較した場合、過剰発現される(Russel(1973)J. Mol. Biol. 79:83−94) 。gp43のN末端フラグメントのin vitro翻訳は精製gp43の添加によって特異的に抑えられ、そしてgp43はリボソーム結合部位近くのmRNAの別の部分をヌクレアーゼの攻撃から守る(Andrake et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA85:7942−7946) 。gp43が結合するRNA翻訳オペレータの大きさ及び配列、及びその結合の強さは確立されている。gp43オペレーターの最小の大きさは図1に示されているように約36個のヌクレオチドからなる配列で、そこに示されているようにヘアピンループ構造を有するものと想像されている。オペレーターの最小の大きさはオペレーターの末端標識加水分解フラグメントのgp43への結合を分析することによって決定された。ヘアピン及びループ配列におけるオペレーター変異体の結合の分析からgp43のオペレーターへの結合はヘリックス中の一次塩基の変化に対して敏感であることがわかる。ポリメラーゼへの結合はヘアピンの安定性を顕著に低下させる変化によって一層低下する。オペレーターの結合はループ配列に対してきわめて敏感であることが認められた。gp43の複製とオペレーター結合とは相互に排他的な活性であることが判明した。完全なオペレーターを含む精製RNAを数マイクロモル添加するとgp43によるin vitroでの複製が強力に阻害されることが判明した。
【0127】
蛋白質に結合する核酸分子を単離する選択/増幅プロセスの能力を評価するために、無作為化された配列領域を含むRNA分子の混合物の最初の設計には、野生型gp43オペレーター(図1)を基礎として用いた。RNA試験混合物は110塩基の一本鎖DNA鋳型からin vitroでの転写によって調製された。鋳型は図1に示されているように、ループ配列を除いて野生型オペレーター配列の大部分をエンコードするように組み立てられた。8塩基のループ配列は、各塩基が完全にランダムになるように合成された無作為化配列によって置換された。鋳型はまた効果的な増幅に必要な配列を含んでいる:すなわち3′末端はポリメラーゼチェーン反応における逆転写用及び増幅用プライマーに相補的となっており、またT7RNAポリメラーゼの転写開始及び完全な配列のために必要なその5′末端の配列はinvitro 転写のcDNAに相補的となっている。DNA鋳型はループ配列バリアント全部の混合物であり、理論的には65,536個の種類を含んでいる。
【0128】
野生型ループRNAの解離定数は約5×10-9Mであることが判明した。ループ配列バリアント集団の解離定数は約2.5×10-7と測定された。ループ配列の無作為化は結合親和性を50倍低下させた。
【0129】
ループ配列バリアントを含むin vitro転写は精製gp43を混合してインキュベートした。混合物をニトロセルロース濾紙で濾過した。蛋白質−RNA複合体が濾紙上に保持され、非結合RNAは保持されない。選択されたRNAを次に実施例1に示すように濾紙から溶出した。選択したRNAをGauss et al.(1987)supra に記載されている方法で3 ′−プライマーの存在下で伸張させた。得られたcDNAをInnis et al.(1986)supra に記載されている方法で、5′−プライマー存在下でTagDNAポリメラーゼで30サイクル増幅した。選択増幅されたDNAは選択増幅されたRNA転写物を生産するためのin vitro転写用鋳型として役立った。このRNA転写物は結合選択/増幅のもう1つのラウンドかけられる。結合選択混合物中のRNA/蛋白質比は選択サイクルを行っている間一定に保った。反復選択/増幅は数種の異なったRNA/蛋白質モル比を用いて実施した。すべての実験においてRNAは過剰にあった;実験AではRNA/gp43が10/1(モル/モル);実験BではRNA/gp43が1000/1;実験CではRNA/gp43が1000/1であった。
【0130】
選択プロセスの進行はこの方法の各サイクルの終了時に増幅cDNAの標識転写物を濾紙結合定量法によってモニターした。実験Bでは選択の進行をモニターするために、各ラウンドからのRNA生成物についてバッチの配列決定も行った。選択/増幅の2,3及び4ラウンド後のRNA生成物についての配列決定ゲルのオートラジオグラムを図3に示す。第3回選択後までに導入された明瞭なループ配列傾向はなかったことは明らかである。選択の第4ラウンド後には、8塩基ループ配列に対する明瞭な共通配列がA(a/g)(u/c) AAC(u/c)(u/c) と識別できる。実験A,B,Cについて選択の第4ラウンド後の選択されたRNAのバッチ配列が図4に比較されている。異なったRNA/蛋白質比を用いた3つの独立したSELEX 法のすべてが同様な明らかな共通配列を与えた。しかし実験A及びCから得られた選択されたRNAにおいては野生型ループ配列(AAUAACUC)に対するある明らかな偏向があった。
【0131】
選択されたRNAs中にどんな許容できる配列組合せが実際に存在したかを決定するために、実験Bの第4ラウンドの選択後に選択されたRNAsから個々のRNAをクローン化した。実験Bからのバッチ配列は、ループ配列の4個の可変位置の各々を構成する2個の許容ヌクレオチドの一様な分布を示すように思われた。各々はSambrook, J. etal. (
1989)Molecular Cloning : A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor, N.Y.), Section 1.13;1.85−1.86記載の方法にしたがってpUC18へクローンされた。3′プライマーへのコロニーフィルターハイブリッド形成法によって確認された20個の各クローンが配列されていた。ループ配列の外側のオペレーター配列のどの位置においても
配列されたクローンは変異体ではなかった。図7に示すごとく、ただ5個のバリアント配列のみが観察され、驚くことに2つの配列バリアントだけが選択された混合物の主たる成分であった。配列された20の各単離物中の各配列の頻度も図7に示されている。野生型配列AAUAACUCとループAGCAACCUとは実験Bの選択RNA中に略等量存在した。他の選択バリアントは2つの主なバリアントの1塩基変異体であった。配列バリアントの結合力を各精製クローン単離物から得られた標識invitro 転写物を用いて濾紙結合定量法により比較した。図6に示すように、gp43に対するRNAの結合親和性と選択された配列の量との間には大体の相関々係が観察された。主な2つのループ配列バリアントは略等しい結合親和性をgp43に対して示した。
【0132】
選択/増幅プロセスによって単離されたループ配列バリアントRNAは図7に示されているように、野生型オペレータ配列について示されているのと同様に、gp43ポリメラーゼ活性の阻害剤としてすべて作用する。
【0133】
SELEX 利用の一例にはバクテリオファージT4DNAポリメラーゼ(gp43)の新規RNAリガンドの選択がある(Andrake et al.(1988)Proc. Natl.Acad. Sei. USA 85:7942−7946)。
【0134】
本発明はHIV−1逆転写酵素、R17コート蛋白質、HIV−1 rev蛋白質、HSV
DNAポリメラーゼ、E. coli リボソーム蛋白質S1、tPA及びNGFへの親和性が
増加していることが示されている、SELEX プロセスによって得られる、特異的なリガンド溶液を含む。これらのリガンド溶液は各種標的物質に対する核酸抗体を合成するために当該技術分野における技量を有する者によって利用され得る。
【0135】
次に広範囲の標的にSELEX を適用して成功した例を示す。標的は一般に2つのカテゴリ−に分けられる−核酸結合蛋白質と、核酸と相互反応することが知られていない蛋白質の2つのカテゴリーである。各々の場合についてリガンド溶液が得られる。ある場合にはヘアピンループ、非対称の膨らみ又は擬結び目のような核酸モチーフとしてリガンド溶液を発現することが可能である。他の例においてはリガンド溶液は一次配列として発現される。このような場合、リガンド溶液は明確な四次構造を含まないことを暗示することを意味するものではない。
【0136】
T4DNAポリメラーゼに加えて、SELEX を実施して成功する標的としてバクテリオファージR17コート蛋白質、HIV逆転写酵素(HIV−RT)、HIV−1rev 蛋白質、HSV DNAポリメラーゼ±補助因子、E. coli リボソーム蛋白質S1tPA及びN
GFがある。次の実験も無作為化核酸候補混合物の種々の蛋白質に対する全体の結合親和性を試験するプロトコールを示すものである。また例7はブラジキニンの固定化及び無作為化核酸のブラジキニンに対する多くの結合試験の結果を示している。
【0137】
ここに示す実施例及び図解はいずれにおいても制限を意味するものではない。本発明の基礎となる基本的な考え方は化合物としての核酸は実質的に無限に多様な大きさ、形、及び立体配置を形成することができ、結合及び触媒機能の巨大な宝庫であり、そのうち生物学的系に存在することが知られているものはほんのわずかである。
【実施例】
【0138】
実施例
全体を通して、次の材料と方法を用いた。
転写ベクターPT−2は、商品を利用できる(U.S.Biochemical Company, Cleveland, OH) 。プラスミド PUC18は、Norrander らによって記述されている(1983)。
遺伝子24:15−27もまた、New England Biolabs から商品で利用できる。新らしい
組換えプラスミドを作るためのDNAの操作は、別に述べたものを除き、Maniatisらの(1982)分子クローニング:実験室手引き、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York に記述されているように行った。DNAオリゴヌクレオチドは、Gauss らによる(1987)Mol. Gen. Genet.206:24−34に記載のように合成し、精製した。
【0139】
T7 RNAポリメラーゼによるin vitroの転写とRNAゲル−精製は、Milliganらの
(1987)Nucl. Acids Res.15:8783−8798の記述によったが、標識化反応中のATP,CTPとGTPの濃度はそれぞれ0.5mMとし、またUTP濃度は0.05mMとした。UTPは、約20ci/mmolの32Pでアルファ位置に標識した。T4感染からの粗mRNAの製造、オリゴの標識化、及びAMV逆転写によるプライマー伸長は、すべてGauss ら(1987)のsupra に従った。
【0140】
標識し、ゲル精製したRNAと精製したgp43の稀釈は、200mM酢酸カルシウム、50mMトリス−塩酸pH7.7中4℃で行った。ニトロセルローズ濾過結合分析において、精製したgp43は、つづいて稀釈され、蛋白質の各稀釈液の分割量30μlを、稀釈し、標識し、ゲル精製したRNAの分割量30μlに添加した。RNA稀釈液(50μl)を新鮮なニトロセルローズフィルターにスポットし、乾燥し、チューブ当りのカウントを計測した。反応液中の蛋白質の濃度は10-10 Mから10-8Mであり、各実験におけるRNAsの濃度は約10-12 Mであった。4℃で30分間の培養後、各試験管を37℃で3分間放置後、各試料の50μlを予め湿らせたニトロセルローズフィルター(Millipore # HAWP02500)を通して濾過し、200mM酢酸カリウム3mlと、50mMトリス−塩酸pH7.7で洗浄した。
【0141】
フィルターを乾燥し、Ecolume TMシンチレーション液(ICN Biomedicals,Inc.) 中
で計測した。gp43を含まない状態で処理した対照品から、バックグランド(常に入力カウントの約5%以内)を測定した。各測定セットからバックグランドを差し引き、フィルターに残っている全入力カウントのパーセントを計算した。各セットのデータポイントから、等式からの曲線作成のため修正された発行プログラム(Caceci及びCacheris, 1984supra )版を用い、最適二分子結合曲線を作成した。
【0142】
等式 Q=A〔gp43〕/(Kd+〔gp43〕)において、Qはフィルターに結合する全
RNAの断片であり、Aは飽和結合するRNAのパーセント(この蛋白質−RNA相互作用では約60%)、〔gp43〕は、入力gp43濃度であり、Kdは二分子反応の解離定数である。この式は、Bisswanger(1979)の酵素反応動力学の理論と方法、Verlag Chemie, Weinheim,FRG、P.9からの方程式〔1−5〕の代数的再整理であり、記載の実験では妥当な、蛋白質濃度はRNA−蛋白質複合物の濃度をはるかに超えるという仮定で簡略化している。
【0143】
実施例1T4DNAポリメラーゼのRNA疎害剤の選択
In vitroの、転写のための110塩基一本鎖DNA鋳型が、図2に示すように、二つのキャッピングオリゴヌクレオチド(表1と2)の存在下で3つの合成オリゴヌクレオチド(表1,3,4と5)によって作られた。鋳型−製造オリゴの一つはまた、in vitroの転写の逆転写にそしてその後のポリメラーゼ連鎖反応(PCRs)の増幅に、3′プライマーとして用いられた(Innis 等、(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA85:9436−9440)。キャッピングオリゴ(1) の一つは、T7RNAポリメラーゼ転写開始に必要な情報と、PCR増幅段階に5′プライマーとして役立つin vitroの転写のcDNAに相補的な十分な配列を含んでいる。
【0144】
DNA鋳型は、ランダム配列が完全に、野生型ループ配列AAUAACUCをエンコードすべき
配列に代って置換された場合以外は、T4DNAポリメラーゼのため完全なRNA認識部位を含むRNAをエンコードした。ランダム配列は、4つのすべてのdNTP'sが反応混合液中に等モル量で、オリゴヌクレオチドナンバー4(表1)の配列中Nで示されるそれぞれの位置に存在した場合を除けば、市販のDNA合成剤(Applied Biosystems) を用い
て常用の化学合成により導入された。ランダム配列は、PCRに用いられる5′と3′オリゴのためのプライマーアニーリング配列情報により隣接されている。DNA鋳型は、こうして、すべてのループ配列のバリアントの混合であり、理論的には、65,536の個別種を含んでいる。野生型ループバリアントRNA配列の解離定数は、約5×10-9Mであり、配列の集団は約2.5×10-7M、50倍低い結合親和力であることが測定された。
【0145】
【表1】

【0146】
ループ配列バリアントを含むin vitroの転写物は、選択の複数ラウンドを通して、三つの異なるRNA−蛋白質比で、精製gp43と混合させた。(A及びBとしては、gp43の濃度が3×10-8M、 "低蛋白質" 、またCとしては、gp43の濃度が3×10-7M、“高蛋白質”であった。Aについては、RNAの濃度は約3×10-7M、 "低RNA" であり、BとCについては、RNAの濃度が約3×10-5M、 "高RNA" であった。)一ラウンドは、次の段階からなりたっている。
【0147】
1) 選択。RNAと蛋白質は上記の望みの比率で混合し、37℃で培養し、ニトロセル
ローズフィルターを通して洗い、RNAを、supra に記述のようにフィルターから溶出させた。
【0148】
2) 増幅。フィルターから溶出させたRNAは、Gauss らが(1987)supra で述べ
たような條件下で、50μlの反応液中に50ピコモルの3′プライマーの存在下で、AMV逆転写酵素によって伸長させた。その結果得られたcDNA合成物に50ピコモルの5′プライマーを添加し、100μlの反応容量で、Innis (1988)supra の記載のように、標識DNAポリメラーゼにより30回転増幅させた。
【0149】
3) 転写In vitroの転写は、選ばれた増幅鋳型で、Milliganら(1987)supra
記載のように行われ、その後、デオキシリボヌクレアーゼが、DNA鋳型を除くために添加される。その結果選択されたRNA転写物は、次のラウンドの段階1に用いられた。サイクルの各段階で作られた生成物のわずか20分の1が選択の歴史を追跡することができるように次のサイクルで用いられた。選択法の進行は各PCR反応からの標識転写物のフィルター結合分析によって検定された。選択と増幅の第4ラウンド後、標識選択されたRNA生成物は、野生型対照RNAのそれに当量のgp43との結合物を生成した。1つの実験(B)の各ラウンドからのRNA生成物と、3つの実験すべての第4ラウンドからのそれをゲル精製し、配列決定した。図3に、実験Bの第2、第3、第4ラウンドの選択と増幅から得た精製したinvitroの転写物の配列を示す。第3選択の後まで、明瞭なループ配列
のかたよりは導入されないことは明らかである。選択のこの点により、第4ラウンドの完
了後、明瞭な共通配列A(a/g)(u/c)AAC(u/c)(u/c)として偏りが検出された。試験A,B及びCの第4回目の選択と増幅後のRNA転写物のバッチ配列を図4に示す。異なった蛋白質/RNA比率による3つの独立した実験はすべて、同じような結果であった。実験AとCの4つの "可変”位置のそれぞれに、野生型配列のいくつかの明瞭な偏りがある。
【0150】
実際にどんな組み合わせが許容できるのか見出すため、文献(Samrock ら(1989)supra ;Innis ら、(1988)supra )のように、個別にPUC18にクローンされた実験Bの第4ラウンドから得たRNAからの配列を増幅するため、制限部位の情報を含む2つの "クローニング" オリゴヌクレオチドを用いた。実験Bの選択されたバッチは、おのおのが4つの "可変" 位置からなる2つの許容ヌクレオチドの分布さえあるように思われたので、さらに調査を進めるために選ばれた。3′プライマーへのコロニーフィルターハイブリダイゼーションにより、確認された20の個別のクローンが配列決定された。これらの個々のどれも、変化したループ配列位置の外側の作動配列のどの場所においても変異体ではなかった。配列分布は図7に要約されている。驚くべきことに、選択されたRNA混合物は、実際に2つの主なループ配列からなっていた。1つは野生型配列、AAUAACUCで20の中9個分離された。他の1つ、AGCAACCU,は、4つの位置が変異体で、20クローンの中の8個に存在していた(図7参照)。検出された他の3つのループ配列は、これらの2つの主要な配列のシングル変異体であった。これらのクローンの分離体の各々から得られた標識したin vitroの転写物によるフィルター結合実験は、RNAのgp43に対する結合親和性と選択された存在量の間にはラフな相関々係がみられた(図7参照)。
【0151】
実施例2HIV逆転写酵素のための特異性RNAリガンドの単離
HIV−1の逆転写酵素活性は、普通のアミノ末端をもつ2つのサブユニット(P51とP66)のヘテロ二量体からできている。さらに大きなペプチドの外部カルボキシ末端領域は、逆転写酵素のリボヌクレアーゼHドメインからなる;そのドメインの構造は最近高い解析能で決定された。
【0152】
HIV−1逆転写酵素は、同族体のプライマーt−RNALys3と、実験的にアンチコドンループとステムにおいて架橋結合するような直接的また特異的な相互作用のあることが先に示されてきた。また、ヘテロ二量体だけがこの特異的なRNA認識を示し、このtRNAと特異的に結合する逆転写酵素のホモ二量体種では生じないことが見出された。
【0153】
2つの鋳型集団(約1014のそれぞれ異なる配列)が、SELEX に用いるために連結によって作られた。1つの鋳型集団は、cDNA合成とPCR増幅を与えるためランダム化領域の末端にある固定配列を用いて、32以上のヌクレオチドの位置をランダム化した。第2の鋳型集団は、RNAの5′末端の追加の固定配列として、tRNALys3のアンチコドンのループとステムをもっていた。(この操作に用いたすべてのオリゴは、表2に示してある)。2つのランダム化集団のHIV−1逆転写酵素〔RT〕に対する親和性に相違はなかった(そして、示されているように、選択されたRNAは、特異性結合において、どちらの5′領域も利用しなかった)。各集団によるSELEX の9ラウンドは標的蛋白質としてヘテロ二量体HIV−RTを用いて行った。
【0154】
オリゴヌクレオチドの連結と架橋を利用してランダム化DNAが作られた機構は、先に述べられた。このような方法は1マイクロモル規模のDNA合成によって強いられる理論的限界から、出発集団内の異なった配列の全体の数を減らすことができる。
【0155】
これらの連結反応では、約1ナノモルの各オリゴヌクレオチドが用いられた。連結生成物は、約50%の収率でゲル−精製が行われた。この精製された鋳型は、前記のようにT7RNAポリメラーゼで転写された。HIVRTは、ニトロセルローズ解析で測定されたように約7×10-7Mで、最大結合量の半分までこのランダム集団と飽和的に結合するこ
とができた。すべてのRNA−蛋白質結合反応は、200mM酢酸カリウム、50mMトリス−塩酸pH7.7、10mMジチオスレイトルの結合緩衝液中で行われた。RNAと蛋白質稀釈液を混合し、氷の上に30分置いた後37℃で5分間置いた(結合分析では反応容量は60μl、内50が分析される;SELEX ラウンドにおける反応容量は100μlである)。各反応液は予め湿らせた(結合緩衝液により)ニトロセルローズフィルターを通して吸引され、3mlの結合緩衝液で洗った後乾燥し、分析のための計測またはSELEX 計画の一部として溶出処理に向けられた。9ラウンドが行われた。9ラウンドすべてのRNA濃度は約3×10-5Mであった。HIV−RTは、最初の選択で2×10-8Mそして2−9の選択では1×10-8Mであった。
【0156】
tRNALys3アンチコドンループとステムを含むRNAを用いた実験が最初に完了した。第9ラウンドに行われたニトロセルローズフィルター結合分析は、RNA集団か開始時の候補混合体に比較して、HIV−1 RTへの親和性が約100倍増加したが、蛋白質
不在の場合のニトロセルローズフィルターとのバックグランド結合は投入したRNAの2%から15%まで増加した。個々の配列は、この集団(フィルター自体による保持のため選択される、バックグランドの高い可能性があるいくつかの配列を除くため、ニトロセルローズフィルターを通した濾過後)からクローン化され、表3にリストされている。HIV−RTに対する選択配列の親和性のニトロセルローズフィルター結合分析は、図14に示されている。配列のいくつかは、HIV−RTのリガンドとして選択され、リガンド1.1及び1.3aの結合曲線によって例示され、表4と5により明らかなようにいくつかの配列相同を示す。いくつかのリガンド配列は、蛋白質の不在下で、ニトロセルローズフィルター上に十分な保持時間を示し、リガンド1.4(図14)によって例示され、プリン反復要素(表4に示す)のループをもった長いらせんによって特徴づけられているように見える。クローニングの前に、この実験で、それらを除くための我々の最少のおくれた努力にも拘らず、これらの配列は、この実験から集められたものの中の有意な部分を表していた。
【0157】
結果的に、実験(異なった5′固定配列をもつ)は、第1,3,6,9ラウンドの選択の前にニトロセルローズを通して事前に濾過を行った。この実験から集めた配列は表6に示されている。表4と5に示すように、実験1からの高い親和性をもつそれらに相同する多くの配列が再びみられる。ニトロセルローズのみによって保持される配列のモチフに適する配列は、あるにしても非常に少ない。この実験からの選択されたリガンド配列のニトロセルローズ結合分析の、リガンド1.1のそれとの比較が図15に示されている。
【0158】
最も普通の配列(1.1)と、同じような配列(1−3a)をもつ高親和性リガンドRNAsは、HIV−1 RTへの高親和結合のために必要な情報の範囲をきめるためにさら
に分析された。これらの実験の結果は図16に示されている。これらの実験は、これらの配列、UUCCGNNNNNNNNCGGGAAA、に共通のモチーフが、同じように認識ドメイン内に位置していることを立証している。このモチーフの配列UUCCG とCGGGA は、8塩基ループをもつRNAらせんを形成する塩基対であろう。これらの固定配列以外にHIV−1 RTへの
高親和性結合に何が貢献しているかを見つけるために、表7に示すように、これらの2つの配列とは異なるヌクレオチドの位置に、ランダム結合を含む候補の混合鋳型を作った。SELEX の8ラウンド後、個々の配列をクローン化し、配列を決定した。46の配列が表7に示されている。これらの配列の検査から、中央8n可変領域と下流4n可変領域と隣接領域間の広範な塩基の対向;上に討論したそれとの組合わせによりRNAシュードノットを示すであろう塩基の対合が示されている。この進化した集団の中で、特異的な配列の支配がみられないことは、選択が一次配列のレベルではみられず、純粋に二次構造に基づいて起ること、すなわち、HIV−1 RTへの同様の親和性を与える多くの配列組合わせ
があり、競合すべき有利性をもつものがないことを示唆している。第1,第2SELEX 実験の結果は、UUCCG---CGGGANAAモチーフに相同性をもつこれらの集団からなる個々の配列も
また、このシュードノット塩基対合の強い可能性を示すことを明らかにしている。
【0159】
図31はシュードノットとしてここに関係するものの模式図を示している。シュードノットは2つのらせん部分と3つのループ部分からなる。すべてのシュードノットがすべて3つのループをもつとは限らない。得られたデータを解明する目的で、図31に示すようにシュードノットの色々な部分を標識化した。たとえば、表5に、実験1と2で得られたいくつかの配列が、色々な配列によって仮定されたシュードノットの立体配置に従ってリストされている。
【0160】
表5に限定される、実験1と2の結果からS1(a),S1(b)とL3の配列を固定した実験3が導かれた。再び、SELEX から引き出された核酸が、ほとんど独占的に、シュードノット内に立体配置された。各々の実験の結果の調査から、HIV−RTへの核酸溶液はシュードノットとして立体配置される最も基礎の共通の要素をもつ、かなり大きなメンバーを含むことが明らかにされている。HIV−RTのための核酸溶液を定義する他の一般論は次の通りである:
1) S1(a)は、しばしば配列5′−UUCCG−3′からなり、またS1(b)は、
しばしば配列5′−CGGGA−3′からなる。しかしながら、塩基対フリップが可能となり、ステムは短くなるだろう。
2) L1は、短くなるか長くなるだろうがしかし、しばしば、最上の結合核酸内の2つの
ヌクレオチドからなる。L1内の5′ヌクレオチドは、しばしばUかまたはAである。
3) S2は、通常5または6塩基対からなり、独立した配列であると思われる。このステ
ムは、非ワトソン/クリック対を含むだろう。
4) L2は、ヌクレオチドからできてはいないが、しかしそれが存在する時は、ヌクレオ
チドはむしろA′sである。
5) L3は、一般に3またはそれ以上のヌクレオチドで、A内に豊富である。
6) SELEX で得られるほとんどの配列において、L1、S2(a)及びL2のヌクレオチ
ドの全部の数は、8で同じである。
【0161】
この実験の最初の目的は、HIV−1 RTへのリガンド溶液をみつけることであった
。進化したリガンドクローン1.1と実験1の開始集団との、逆転写酵素の活性疎害能力を比較し、図17に示している。RTに対する阻害剤RNAの濃度が同じであっても、逆転写酵素は有意に、リガンド1.1によって疎害される。逆に、わずか10mM(または200倍過剰)の開始集団RNAは、HIV−1RTの有意な疎害剤である。かくして、HIV−1 RTへの高親和性リガンドは、妨害するかまたは直接酵素の触媒部位と相互作用を
起す。
【0162】
この疎害の特異性を試験するため、色々な濃度のリガンド1:1について、MMLV,AMVまたHIV−1逆転写酵素の疎害を分析した。その実験の結果は、図18に示され、リガンド1.1の疎害は、HIV−1逆転写酵素に特異的なことを示している。
【0163】
実施例3 バクテリオファージR17コート蛋白質のための特異性RNAリガンドの単

SELEX がバクテリオファージR17コート蛋白質について行われた。蛋白質は、Carey らのBiochemistry,22,2601(1983)により記載されているように精製した。結合緩衝液は、100mMの酢酸カリウム+10mMジチオスライトル+50mMトリス−酢酸pH7.5であった。蛋白質とRNAを37℃で3分間共に培養し、次に、蛋白質結合RNAを遊離のRNAから分離するためにニトロセルローズフィルターで濾過した。フィルターを50mMトリス−酢酸pH7.5で洗浄した。蛋白質は、SELEX の最初の4ラウンドでは1.2×10-7Mで、5から11ラウンドでは4×10-8Mであった。
【0164】
開始RNAは、先に述べたように、DNAから転写された。DNA配列は、標準技術に従ってRNAを合成させるバクテリオファージT7RNAポリメラーゼ促進配列を含んでいる。SELEX サイクルの増幅部分の間にcDNA合成が、配列:
cDNAプライマー(PCRプライマー1):
5′GTTTCAATAGAGATATAAAATTCTTTCATAG 3′のDNAによって開始される。
【0165】
cDNAを増幅するために用いられるDNAプライマーは、従って、T7プロモーター、32ランダム化位置、ATジヌクレオチド、そしてPCRプライマー1に相補的な固定配列を含んだ配列であった。SELEX の第一サイクルを開始するために用いられるRNAは、従って、配列:
pppGGGAGCCAACACCACAAUUCCAAUCAAG-32N-AUCUAUGAAAGAAUUUUAUCUCUAUUGAAAC をもっている。
【0166】
SELEX の第11ラウンド後からのクローンのセットが得られ、配列決定された。47クローン内に得られた38の異なった配列の中に、3配列が1回以上発見された。1つの配列は6回、1つの配列は4回、残りは2回であった。残りの35配列は、それぞれ1回だけ見つけられた。2つの配列は、初期配列または多分第二次構造に関して、他のものとは同じではなかった。そしてそれ以上の分析は行わなかった。36配列は、普通、突出したヘアピンのテトラヌクレオチドループとして位置する配列ANCAをもつ;突出したヌクレオチドは、36のすべての場合アデニンであった。ヘアピンループの4つのヌクレオチドの並んだ全体のセットが表8に与えられている。開始RNA(AU)のランダム領域への2つのヌクレオチド3′は、cDNAプライマーが、相補的な2つのヌクレオチドを含まないので変化するのもまたは欠失するのも自由である;多くのクローンは、これらのヌクレオチドの1つまたは両方を変化させた。
【0167】
図19に示すウイニングRNAのモチーフは、部位−指向性突然変異生成と結合試験を通して早くから確認されたコート結合部位への直接的な関係を提示している。Uhlenbeck ら、supra (1983);Ramaniukら、supra (1987)参照。しかしながら、配列のいくつかは、このセットでは、期待したよりもよく保存されている。ループ配列AUCAは支配的であるが、初期の結合データは、ANCA配列がすべて同等であることが示唆されてきた。R17ゲノム上の自然の結合部位は、下記に示す配列と構造を含んでいる。
【0168】
【化2】

【0169】
自然の構造は、配列GGAGを含み、リボソーム結合とR17レプリカーゼコーディング領域の翻訳開始を促進することに役立っている。SELEX 中は、その必要が存在せず、ウイニング配列は、ループと突出部分の周りに、G:C塩基対よりも、よりしばしばC:G塩基対を含んでいる。それ故SELEX は、生物と進化の歴史の制限をゆるめて、自然のリガンドよりももっと高い親和性をもったリガンドへ誘導する。同様に、36配列のそれぞれに見出されるループシチジンは、自然の部位におけるウリジンであり、cはuよりもより高い親和性を与えることが知られている。進化の間、自然の部位は、最高に堅い結合では、生物に不利益を引き起すので、最高の親和性よりもむしろ適当な親和性をもたなければ
ならないのだろう。
【0170】
実施例4: セリンプロテアーゼのための核酸リガンドの単離
セリンプロテアーゼは、蛋白質内のペプチド結合を切断する蛋白質酵素である。セリンプロテアーゼは、哺乳動物中の遺伝子族のメンバーであり、哺乳動物の生命の中で最も重要な酵素である。セリンプロテアーゼが核酸と結合することは、知られていない。セリンプロテアーゼの例は、組織のプラスミノーゲン活性化物質、トリプシン,エラスターゼ,キモトリプシン,スロンビンまたプラスミンなどである。多くの疾病状態、たとえば、血液凝固不全や血栓形成は、セリンプロテアーゼに結合した核酸リガンドによって治療することができる。セリンプロテアーゼ以外のプロテアーゼもまた、哺乳動物にとって重要であり、これらもまた、ここに開示される発明に従って得られた適当な親和性によって核酸リガンドとして標的になるだろう。
【0171】
商業源から利用できる、ヒトの組織プラスミノーゲン活性化物質(htPA)が、本発明のSELEX 法を通して、セリンプロテアーゼとして選ばれた。用いられるRNA候補の混合物は、以下HSV DNAポリメラーゼ実験における例11に記載するものと同じであ
った。
【0172】
SELEX の間、結合は、50mM塩化ナトリウム+50mMトリス−酢酸塩pH7.5中に3分間、37℃において行われた。SELEX は10ラウンド行われた。30Nの候補混合体が、150mM酢酸ナトリウム+50mMトリス−酢酸塩pH7.5で、7×10(−8)Mの親和力(Kd)でtPAに結合した;SELEX の9ラウンド後に存在するRNA の親和力は、約3倍強かった。9クローンを単離し、配列を決定し、これらのいくつかを、純粋なRNAsとして、tPAへの結合のために試験した。低い塩として得られた9クローンの配列は、次の通りであった。
【0173】
【化3】

【0174】
試験した配列はすべて、開始時の30N候補混合物よりも少なくとも幾分かよく結合した。しかしながら、Aシリーズは、tPAの不在下で、候補混合体よりもニトロセルローズによく結合し、まるで分けられた配列モチーフが、それ自身によって、ニトロセルローズ基質上に保持される原因になっているかのようであった。そのモチーフは、上に示す配列に下線が引かれている。他のSELEX の実験で、AGG繰返し体は、リガンド溶液を、HIV−1逆転写酵素、ヒト生長ホルモンレセプター細胞外ドメインまた最初の歩行実験におけるR17コート蛋白質に対しても、同定を試みた際に単離された。試験される時、これらの配列は、標的蛋白質が存在することなく、ニトロセルローズに適度なまたは確実な結合を示す。AGG繰返し体は、ヘアピンループ内に見出されるかも知れない。SELEX は
、大抵の実施例で反復の工程であるので、このような結合モチーフが出現しても驚くには当らない。
【0175】
ニトロセルローズ結合モチーフの存在は、いくつかの分りやすい戦略の1つまたはそれ以上によって避けられるだろう。このようなモチーフを除くためSELEXの前にRNAをニ
トロセルローズフィルターを通して濾過するのがよいかも知れない。SELEX の別のラウンドに、別の基質、たとえばグラスファイバーフィルターを用いてもよい。別の分配システム、たとえば、カラム、ショ糖密度勾配などを用いてもよい。与えられたどんな単一工程も、反復工程において標的との結合を増加させず、しかし選択工程により選択されるモチーフを助長するような傾向になりがちなことは明らかである。それ故これらのモチーフを除くためには別の方法またはスクリーニング方法を用いることが重要である。AGG繰返し体は、標的が独立している偏りとして単離された他のモチーフのように、標的にとって最上の配列の親和性がむしろ低い時または、最上の配列の親和性が、開始時の候補混合体の親和性よりもほんのわずか良い時に最も多く出現しやすい傾向のあることが示された。
【0176】
実施例5哺乳動物の受容体のための核酸リガンドの単離
哺乳動物の受容体は、しばしば、細胞の細胞質膜内に存在する、そしてこれらの細胞の外側を循環する分子に反応する蛋白質である。受容体のほとんどは、核酸に結合することは知られていない。ヒトの生長ホルモン受容体は、循環するヒト成長ホルモンに応答するが、一方インスリン受容体は、循環するインスリンに応答する。受容体は、しばしば、膜の細胞外の側面に球状部分をもち、その球状部分は、特異的にホルモン(自然のリガンド)に結びつく。多くの疾病状態を、受容体に結合する核酸リガンドによって治療することができる。
【0177】
ヒト生成ホルモン受容体(shGHR)の可溶性球状ドメインに結合する核酸リガンドは、例4の候補混合体を用いて同定し精製される。再び、結合緩衝液は、遊離のDTTである。ヒト生長ホルモン受容体の可溶性球状ドメインは、市場及び大学出所品を利用でき、一般的には、膜結合受容体蛋白質への完全な遺伝子のエンコード化に利用する組換えDNA技術によって作られている。SELEX が、リガンドが見出されるまで反復して用いられる。リガンドはクローン化され、配列が決定され、可溶性受容体に対する結合親和性が測定される。結合親和性は、同じリガンドを用い、他の可溶性受容体に対し、たとへ、ほとんどの受容体が、他の受容体の細胞外ドメインとの強い蛋白質相同性を示さなくとも、特異性を確めるために測定される。リガンドは、核酸リガンドと自然リガンド(ホルモン)間の競合する結合度を測定することによってshGHR の正常な結合活性の疎害を測定することに用いられる。
【0178】
実施例6哺乳動物のホルモンまたは因子のための核酸リガンドの単離
哺乳動物のホルモンまたは因子は、動物体内を循環し、細胞の細胞質膜にある受容体と結合することによって影響を及ぼす蛋白質、たとえば、生長ホルモン、または小分子(たとえば、エピネフリン,チロイドホルモン)である。たとえば、ヒト成長ホルモンは、ヒト成長ホルモン受容体と最初の相互作用によって細胞を刺戟するが、一方、インスリンは、インスリン受容体との最初の相互作用によって細胞を刺戟する。多くの成長因子、たとえば、顆粒球集落刺戟因子(GCSF)は、細胞型に特異的な何かを含み、標的細胞上の受容体と最初に相互作用を起す。ホルモンや因子は、従ってある受容体にとっては自然のリガンドである。ホルモンや因子は、通常、核酸と結合することは知られていない。多くの疾病状態、たとえば、甲状腺機能亢進症、慢性低血糖症は、ホルモンまたは因子と結合する核酸リガンドによって治療することができる。
【0179】
ヒトインスリンと結合するリガンドは、例3の出発物質を用いて、同定し、精製される。ヒトインスリンは、商品出所源から求められ、通常、組換えDNA技術で作られている
。SELEX は、リガンドが見出されるまで、反復して用いられる。リガンドは、クローン化され、配列決定され、ヒトインスリンに対する結合親和性が測定される。結合親和性は、たとへ、ほとんどのホルモンや因子がヒトインスリンとの強い蛋白質相同性を示さなくても、特異性の確認のために、同じリガンドについて、他のホルモンや因子に対して測定される。しかしながら、いくつかのホルモンや因子の遺伝子族は、IGFの小さな族またはインスリン様増殖因子を含んで存在している。核酸リガンドは、自然リガンドであるヒトインスリンの存在または不在下で、インスリン受容体と核酸リガンドによる競合的結合の測定によって、受容体に対するヒトインスリンの正常な結合活性の阻害度を測定するために用いられる。
【0180】
実施例7SELEX のためのカラム基質の製造
以下の例9に述べるような方法の後で、ポリペプチドブラジキニンは、ニトロセルローズにより保持されないことが示された。ブラジキニンについてのSELEX過程を可能にする
ため、蛋白質は、標準方法に従い、支持基質として、活性化CHセファローズ4B(Pharmacia LKB)に接触させた。結果として基質は、ニンヒドリン分析により、2.0mMブラジキニンであることが測定された。Crestfieldら、J. Biol. Chem. vol. 238、pp. 238、pp. 622−627、(1963);Rosen Arch. Biochem. Biophys., vol. 67,pp. 10−15(1957)参照。支持基質上に残る活性基はトリスによって遮断された。Pharmacia,親和性クロマトグラフィー:原理と方法、Liungforetagen AB,Uppsida, Sweden (1988)参照。
【0181】
回転カラム分離が、候補混合物の溶液をビーズ状の基質に接触させるために用いられた。SELEX の選択段階を実施する一般的な方法において、反応緩衝液中の標的セファローズの50:50のスラリーの40μlを0.5mlのエッペンドルフ管に移す。RNA候補混合体が60μlの反応緩衝液と共に添加され、反応混合液は37℃、30分間平衡化される。チューブの底に穴をあけ、チューブを大きなエッペンドルフ管に置き、両方のキャップを除き、溶出液を分離するためチューブを回転する(1000RPM,10″,21℃)。小さいチューブを新らしい大きなチューブに移し、内容液を選択した緩衝液50μlで層別して4回洗浄し、回転した。結合分析を行うため、放射性RNAを含むチューブを新しいエッペンドルフ管に移し、回転乾燥する。
【0182】
バルク結合実験は、30の核酸ランダムセグメントからなるRNA候補混合体をブラジキニンセファローズ基質に適用して行われた。回転カラム技術を用い、バルク30N R
NAの色々な基質との結合物が、高い塩濃度の下で、セファローズとの結合物のバックグランドを最小にするような最適條件を定めるために測定された。RNAのセファローズとの結合のバックグランドは、セファローズ上の活性基をトリスにより遮断することにより、また10mM DEMと10−20mM KOACの結合緩衝液を用いて、最少にした。この緩衝液條件で、RNAのランダム化バルク溶液の結合曲線は、約1.0×10-5のバルクKdを生産した。図20参照。曲線は、ブラジキニンセファローズを遮断した活性化セファローズに対する稀釈によって決定された。
【0183】
実施例8 RNAモチーフ構造における増加した候補混合体の製造
好ましい実施例で、SELEX に用いられる候補混合体は、20と50のランダム化核酸の間の隣接領域からなる。ランダム化セグメントは、選択された核酸の増幅を可能にする固定配列が両端に接している。
【0184】
別の実施例では、与えられた核酸モチーフをもつ候補混合体中の核酸のパーセンテージを増すように候補混合体が作られる。2つの特殊な例がここに与えられているが、この発明はそれに限定されるものではない。技術に熟達した人は、同じ一般的な結果が得られるような同等の候補混合体を作ることができるだろう。
【0185】
図21の配列Aとして示される1つの特殊な例において、候補混合体中のほとんどの核酸が、4と8塩基対の間のらせん領域と、また20または21の隣接したランダム配列の“ループ”を形成する傾向をもつように作られる。配列混合液の5′と3′末端の両方共に、核酸の増幅に必要な固定配列を含むだろう。これらの機能的な固定配列に隣接して、ランダム化領域のもう一方の側に固定配列をもつ塩基対が固定配列として選ばれるだろう。配列の5′から3′末端へ向って5つの異なった配列があるだろう:1)増幅のための固定配列;2)らせん構造を形成するための固定配列;3)20または21のランダム核酸残基;4)領域2配列をもつらせん構造を形成する固定配列;そして5)増幅のための固定配列である。図21のA候補配列は、ヘアピンループと、対称及び非対称の、突出部をもつモチーフに富んでいるだろう。好ましい実施例で、候補混合体は、ランダム領域が20及び21塩基長である等量の配列を含んでいる。
【0186】
図21に配列Bとして示される第二の例は、シュードノットモチーフに含まれる核酸をもつ候補混合体に富むようにデザインされている。この候補混合体中では、固定増幅配列は、12のランダムな位置をもつ、3つの領域に隣接している。3つのランダム化領域は、4つのヌクレオチドからなる2つの固定領域に分離され、固定配列は、4つの塩基対のらせん構造を好んで作るように選択される。配列の5′から3′末端に向って、7つの異なった領域があるだろう:1)増幅のための固定配列;2)12のランダム化ヌクレオチド;3)らせん構造を形成する固定配列;4)12のランダム化ヌクレオチド;5)領域3のヌクレオチドによりらせん構造を形成する固定配列;6)12のランダム化ヌクレオチド;そして7)増幅のための固定配列である。
【0187】
好ましい候補混合体の中に、交互にGC,CG,GC,CG塩基対を生産するように工学的らせん領域がデザインされている。この塩基対モチーフは、特に安定したらせん構造を与えるように示されてきた。
【0188】
実施例9 核酸結合が知られていない蛋白質へのランダム化RNA配列のバルク結合
SELEX のため例1に記述したような一般的なニトロセルローズ選択方法につづいて、ランダムに選んだ蛋白質のグループが、RNA配列のバルクの候補混合体に親和性を示すか否かを決めるために試験を行った。それぞれの実験に利用された候補混合体は、結合のパーセントを検出するため放射化標識された40N RNA溶液(40のランダムな核酸セ
グメントをもつランダム化混合体)から出来ていた。候補混合体は結合緩衝液(200mM酢酸カリウム,50mMトリス−酢酸pH7.7、10mM DTT)に稀釈され、60μL結合
反応液中の30μLが用いられた。それぞれの反応液に、各蛋白質20μL、10μLまたは1μLが添加された。結合緩衝液が、全容量60μLに達するまで添加された。反応液は、37℃で5分間培養され、次にフィルター結合にかけられた。
【0189】
試験した蛋白質は、アセチルコリンエステラーゼ(MW230,000);N−アセチル−β−D−グルコサミニダーゼ(MW180,000);アクチン(MW43,000);アルコール脱水素酵素(240,000);アルデヒド脱水素酵素(MW200,000);アンギオテンシン(MW1297);アスコルベート酸化酵素(MW140,000);心房性ナトリウム利尿因子(MW3,064);及びボンベシン(MW1621)であった。蛋白質は、Bochringer Ingelheimから購入し、それらが販売されている緩衝液組成で利用した。
【0190】
それぞれの実験に用いたRNA候補混合体は、10,726カウントの放射能を含み、結合バックグラウンドは約72カウントであることが分った。その結果は表9にまとめられている。アセチルコリンエステラーゼ、N−アセチル−β−D−グルコサミニダーゼ及びアクチンを除く、試験した蛋白質はすべて、いくらかのバルクRNA 親和性があることが見
出された。N−アセチル−β−D−グルコサミニダーゼは、購入時の溶液濃度が低いため、この蛋白質の結果は明確ではない。加えて、もしも試験した蛋白質がニトロセルローズと結合しなければ----ブラジキニンがそのケースである----この実験では親和性は検出されないだろう。ブラジキニンを保持したカラムについて検討された例7は、この実験でバルク結合を示さないことが、その蛋白質についてバルク結合は存在しないことを意味するものではないことを明らかにした。
【0191】
実施例10神経成長因子のためのRNAリガンド溶液の単離
神経成長因子(NGF)は、標的細胞の外部表面にある受容体を通して作用する蛋白質因子である。成長因子やその他のホルモンへの拮抗薬は、受容体を遮断することにより、あるいは、因子またはホルモンを滴定することによって作用することができる。RNAは、直接NFG に結合するSELEX 法により求められた。始動するRNAは、HSV DNAポ
リメラーゼ(例11)のように正確に作られた。
【0192】
2つの異なった実験をNGFについて行った。第1は、低い塩の結合緩衝液を用い、SELEX の間、37℃、3分の培養後濾過し、同じ緩衝液で洗浄する、10ラウンドSELEX であった。低い塩の結合緩衝液は、50mM塩化ナトリウム+50mMトリス酢酸pH7.5であった。第2実験は、結合緩衝液として200mM塩化ナトリウム+50mMトリス酢酸pH7.5を用い、濾過後、50mMトリス酢酸pH7.5で洗浄した;このSELEX 実験はわずか7ラウンドで完了した。
【0193】
低塩実験は、36クローン配列を生じた。クローンの15はほとんど同じであった。すなわち、#′2,3,4,5,6,8,11,13,19,22,28,33,及び34は同じであった、しかし#′15と25はただ一つの違いであった:
【0194】
【化4】

【0195】
6回発見された、2番目に多い配列は、
CCUCAGAGCGCAAGAGUCGAACGAAUACAG(#′12,20,27,および 31)であった。
高温SELEX からは、10クローンが配列決定された。しかし、それらの中の8つは同じで、明らかに低塩実験から得たアバンダント(しかし少量)な第2級に関係していた。ウィニング配列は:
----CUCAUGGAGCGCAAGACGAAUAGCUACAUA----である。
【0196】
2つの実験の間で、全部で14の異なった配列が得られた(1つの違いをもつ配列は、この分析では一緒にまとめてある);それらはここにリストされており、類似物は、マークが重ねられ、頻度も記録されている。ngf.a からngf.k は、低塩実験からであり、一方、hsngf.a からhsngf.c は高塩実験から得られたものである:
【0197】
【化5】

【0198】
似たような配列の中に、はっきりした二次構造は何も組み込まれていないけれども、ウイニング配列が、NGF 結合部位によく適合する構造の中に重要なヌクレオチドを置いているように思われる。
【0199】
核酸hsngf.a のNGFとの結合分析が行れ、この核酸は、バルク30N候補混合体よりも約20から30倍高いKdをもつことが見出された。同じ核酸はまた、R17コート蛋白質と、tPAに対する親和性が、30N候補混合体より低いかまたは同等であることが見出された。従って、SELEX から得た核酸リガンドhsngf.a は、NGF に対する選択的なリガンドである。
【0200】
実施例11: HSV−1 DNAポリメラーゼのための核酸リガンドの単離
単純ヘルペスウィルス(HSV−1)は、哺乳動物のDNA−含有ウィルスである。HSV−1は、多くのDNA含有ウィルスのように、それ自身のDNAポリメラーゼをエンコードする。HSV−1 DNAポリメラーゼは、2つの形で精製された。それらは異な
った性質をもつが、その各々はin vitroでDNA複製を触媒するだろう。1つのポリペプチドからなる単純な形は、クローン遺伝子を発現する細胞から精製され、Hernandez ,T.R.及びLehman,I.R.,J. Biol. Chem., 265,11227−11232(1990)による。DNAポリメラーゼの第2の形、ヘテロ二量体は、HSV−1感染細胞から精製され、Crute ,J.J.及びLehman,I.R.,J. Biol. Chem., 264,19266−19270
(1989)によっている;ヘテロ二量体は、ポリメラーゼそれ自体に相当する1つのペプチドと、これもまたHSV−1によってエンコードされた他のUL42を含んでいる。
【0201】
シングルポリペプチドとヘテロ二量体の両方に、SELEX が行われた。それぞれの場合に、結合緩衝液は50mM酢酸カリウム+50mMトリス酢酸、pH7.5、及び1mMジチオスライトルであった。結合したRNAを分離するための濾過は、37℃で4分間の培養後に行われた;フィルターは、結合緩衝液からジチオスライトルを除いた液で洗浄された。
【0202】
RNA候補混合体は、前に述べたように、DNAから転写された。他の実施例でそうであるように、DNA配列は、バクテリオファージT7RNAポリメラーゼ促進配列を含んでおり、標準技術に従って、RNAを合成することが可能である。SELEX の増幅部分の間、cDNAの合成は、次の配列のDNAにより開始される:
cDNAプライマー(PCRプライマー1):
5′GCCGGATCCGGGCCTCATGTGAA3’。
【0203】
SELEX サイクルの増幅の部分において、cDNAを増幅するために用いられるDNAプライマーは、それらの一つにT7プロモーターを含む;そのPCRプライマーは次の配列をもつ:
PCR プライマー2:
5′CGAAGCTTAATACGACTCACTATAGGGAGCTCAGAATAAACGCTCAA3′。
【0204】
最初のランダム化DNAは、T7プロモーターをもつ配列;30のランダム化位置、そしてPCRプライマー1に相補的な固定配列を含んでいた。SELEX の第1サイクルを始めるために用いられたRNAは、そこで次の配列をもっている:
pppGGGAGCUCAGAAUAAACGCUCAA-30N-UUCGACAUGAGGCCCGGAUCCGGC。
【0205】
SELEX は7ラウンド行われ、先に述べたように、cDNAが作られ、クローン化された。“H”と名づけた配列のシリーズが、標的としての単純HSV DNAポリメラーゼによっ
て得られ、一方、“U”シリーズが、UL42ポリペプチドを含むヘテロダイメリックポリメラーゼによって得られた。
【0206】
Hシリーズからの配列の約25%は、ランダム化領域(大文字は、ランダム化領域からである)の5′末端における12ヌクレオチドの正確な配列を含んでいる。いくつかの配列では、固定化プライマー間の長さは、正確に30ヌクレオチドではなく、ある場合(H2)はランダム化領域内に大きな欠失がみつけられた。このHサブセットのメンバーは次のものを含む:
【0207】
【化6】

【0208】
Uシリーズの2つのメンバーは、このプライマー配列モチーフを分け合っている:
【0209】
【化7】

【0210】
H及びUシリーズの残りの配列は、はっきりした普通の配列を示さない;加えて、第7ラウンドからの配列は、どちらのシリーズもウイニング単一配列としては出現しなかった。これは、SELEX のそれ以上のラウンドは、HSV DNAポリメラーゼを阻害するため
の最上のリガンド族をみつける必要があるだろうことを示唆している。
【0211】
一次配列 --cgcucaaUAAGGAGGCCAC ....は、拮抗薬種としての候補になるかも知れ
ないように思われるが、しかし、シリーズのこれらのメンバーは、DNA合成の阻害剤として、まだ試験されねばならない。UAAGGAGGCCACへ丁度5′の固定化配列が、このサブセットの出現に加わらなければならないように思われる、さもなければ、分担した12ヌクレオチドは、ランダム化領域内で、可変的に位置づけられただろう。
【0212】
実施例12: 大腸菌リボソーム蛋白質S1のための核酸リガンドの単離
大腸菌30Sリボソーム蛋白質S1は、最大の21 30S蛋白質である。蛋白質は、
ポリピリミジンとのその高い親和性に基づいて精製されてきた。そしてピリミジンの多い一本鎖ポリヌクレオチドとむしろ堅く結合すると考えられる。SELEX によりリガンド溶液として同定されるRNAが、ピリミジン中リッチな一本鎖RNAよりもとに角より情報がリッチであったかどうかが疑問であった。
【0213】
RNAs,DNAs,cDNAプライマー(PCRプライマー1)、そしてPCRプライマー2は、HSV−1 DNAポリメラーゼ(例11参照)のために用いられたそれら
のものと同じであった。結合緩衝液は、100mM塩化アンモニウム+10mM塩化マグネシウム+2mMジチオスライトル+10mM塩化トリス、pH7.5であった。室温で結合し、複合体は再度ニトロセルローズ濾過で分離された。この蛋白質は、I. Boni ら.,European J. Biochem., 121,371(1982)に従って精製された。
【0214】
13SELEX ラウンド後、25配列のセットが得られた。これらの配列の中20以上はシュードノットを含み、これらのシュードノットは、共通の要素を含んでいる。
一般的なシュードノットの構造は、ステム1a−ループ1−ステム2a−ステム1b−ループ2−ステム2bのように図式化される(図31参照)。S1蛋白質リガンドの大部分は以下を含む:4から5塩基対のステム,Gと5′によりループ1へ約3ヌクレオチドのループ1,しばしばACA6から7塩基対のステム,直接ステム1の上に重なっている、5から7ヌクレオチドのループ2,しばしばGGAACで終結している。
【0215】
これらのデータの合理的解釈は、蛋白質S1の活性部位への一本鎖の結合を簡単にしまた強化する形に、そのループをしっかり保持するように、ループ2がステム1を越えて伸びているということである。2つの面に共通するシュードノットの図は、このように見えるだろう:
【0216】
【化8】

【0217】
この図で、塩基対は線とダッシュで示され、ランダム化領域からの塩基の選択は大文字で、Yはピリミジン、Rはプリンであり、N−N′は塩基対を意味し、Nはヌクレオチドそして小文字は、PCR増幅に用いられた固定化配列からのものである。蛋白質内の一本鎖ポリヌクレオチド結合蛋白質とドメインは、しばしばSELEXの間にシュードノットを選
択し、これが、ループ2と呼ばれる伸長した堅い一本鎖を蛋白質の結合部位へ相互作用を最大にするような方式で与えられるように見える。従って、HIV−1 RTシュードノ
ットが出現した時は、一本鎖ドメインループ2は、複製中鋳型鎖を保持するRTの領域内に結合されていると考えるのが合理的である。すなわち、ほとんどの複製酵素(DNAポリメラーゼ,RNAポリメラーゼ,RNA レプリカーゼ、逆転写酵素)は、SELEX から選ばれるリガンドとしてシュードノットを好む鋳型鎖を保つドメインを持つだろうと考えるのが合理的であるように見える。
【0218】
実施例13: HIV−1 レブ蛋白質への核酸リガンドの単離
HIV−1 レブ蛋白質のRNA認識部位は複雑であるようで、その機能は、流行性ウ
イルス疾患の感染を生じさせるに必須である。Olsen ら,Science ,vol.247,pp. 845−848(1990)参照 この蛋白質について、認識要因をさらに調べ、標的蛋白
質に対するリガンドを単離するため、SELEX 方法を行った。
【0219】
候補混合体は、例2に述べたように、32ヌクレオチド長のランダム化領域によって作られた。レブ蛋白質は、ニトロセルローズ分析により決定された1×(10-7)Mで、生ずる最大値の半分の結合力で開始候補混合体と飽和的に結合することが見出された。RNA−蛋白質のすべての結合反応は、200mM酢酸カリウム、50mMトリス−塩酸pH7.7、10mMジチオスライトルの結合緩衝液中で行われた。RNAと蛋白質稀釈液を、混合し、氷上に30分置いた後移動し、37℃で5分間置いた。(結合分析では反応容量が60μlであり、内50μlが分析される;SELEX ラウンドでは反応容量は100μlである)。各反応液は、予め湿らせた(結合緩衝液で)ニトロセルローズフィルターへ吸引され、3mlの結合緩衝液で洗浄後乾燥し、分析のため計数するかあるいは、SELEX 計画の一部である溶出へ向けられる。SELEX の10ラウンドは、約3×10(−5)Mの濃度のRNAを用いて行われた。レブ蛋白質の濃度は、第1ラウンドでは1×10(−7)であり、その後のラウンドでは、すべて2.5×10(−8)であった。最初の候補混合体は、ニトロセルローズとの高い親和性をもつ配列の数を減少するため、ニトロセルローズフィルターをあふれさせた。この行程は、3,6,及び9ラウンドの後にも繰り返した。cDNA生成物は、SELEX のラウンドの繰返しによって典型的に生ずる、異常な大きさの種類を避けるために、選択の3ラウンド毎に精製された。10ラウンド後、RNA集団の可変領域の配列は、ジデオキシ−鎖終結配列決定による測定から、ランダムではなかった。53単離液がクローン化され、配列決定がなされた。
【0220】
それぞれのクローン配列は、表10に記載されている。すべての配列が、Zucker RN
A二次構造予測プログラムにより分析された。Zucker,Science ,vol.244,pp. 48−52(1989);Iaegerら.,Proc. Natl. Acad. Sci.USA,vol.86,pp. 77
06−7710(1989)参照。共通の二次構造に基づき、すべての配列が、表11に示すように、三つの共通モチーフに群別された。モチフIとIIは、らせんにより各末端で閉じられた突出したループを含み、立体配座が同じであった。この一般構造は、表12に図式的に説明され、討論を容易にするためドメインが標識された;それは、5′から3′ステム1a(塩基対は3′ステム1bへ),ループ1,ステム2a,ループ3,ステム2b,ループ2,そしてステム1bである。色々のドメインに適合する配列が、表12に個別の配列として記載されている。(配列3aでは、相同する一列が180°回転すれば、ループによって閉じられるステム1であることに注意せよ)RNA分子(固定した側面を接する配列を含む)の折りたたみのエネルギーは表13に示されている。
【0221】
レブのHIV−1転写物への結合に少なくとも最少限含まれることが決定された野性型レブ応答要素(RRE )もまたこのプログラムによって折りこまれ、表12と13に含まれている。
【0222】
配列はまた、Hertz ら,Comput. Appl. Biosci.,vol.6.pp. 81−92(1990)に基づく方法により、関係した副次配列についても調査された。2つの重要なパタンが同定された。各単離体はそのパタンへの最上の調和を鑑定するため評点され、その結果を表13にみることができる。関係する副次構造のモチフは、同じ様な立体配座の中の共通した二次構造によって示される;すなわち、最初の配列UUGAGAUACAは、普通ループ1+3′末端CAとして見出され、第2の情報リッチの配列UGGACUC(普通ループ3)の5′末端でUGと対を作る。そこにはまた、配列IIのCUCへ配列IのGAGの塩基対合の強い予測がある。CAのUGへの同じ様な対合により、配列GAUACAGがループとして、反対側のCUGGACACを支配することではモチーフIIはモチフIと同じである。モチフIIは、ループの大きさと、ループを横切る予想される塩基対がない場合に特にいくつかの配列が異なっている。野性型RREのあるドメインがモチフIIによく似ている。モチフIII は、ほかのすべての配列と最も似ていないが、モチフIの中のように、塩基対GA−UCに近接する2つの突出したU′Sによって特徴づけられる。不幸にして、それ以上の比較は困難であり、それは、モチフIII の折り込みパタンが、厳密な二次構造内に3′固定配列領域を含むこと;これらの配列が不変であり、それらの中のどれかの重要性を分析する方法がないためである。各モチフの代表的な折りたたみ配列は、野性型RREの折りたたまれた配列によって図23に示されている。
【0223】
配列は、さらに、レブ蛋白質へのそれらの親和性について分析された。鋳型は、in vitroで標識化され、転写物が作られ、個々にそれらのレブ蛋白質への結合能力が分析された多くのクローンの中から得たPCR′dであった。これらの結合曲線は、図24から28に示されている。野性型RREを含む、オリゴヌクレオチド鋳型からの標識転写物もまた合成され、高度に安定な立体配座内の共通のモチフであることが推定されている。実験的変動を調節するため、最高の結合配列、単離6aをすべての結合実験の標準として分析された。RNA−蛋白質は先に記載の通りに処理されたが、稀釈したRNA′sは、90℃で1分加熱後、氷上で冷却し、その後に混合した。単離体6aの平均Kaは8.5×10(−8)Mであり、この実験の結果は表13に示されている。
【0224】
図24の結合曲線は、進化した集団(P)が開始候補混合体へのレブ蛋白質の結合割合の約30倍改善されたことを示している。野性型RREの結合は、最も豊富なクローン,ICのそれによく似ている。この実験はまた、レブ結合相互作用が二次構造に対して如何に敏感であるかを示している。単離体6aと6bは、高情報含有領域内で同じであるが、しかし、二次構造のレベルで全く異なり、結果として、三つのヌクレオチドの位置が異なっている。ステム1の塩基対合が予測されるこれらの変化は、6bの親和性が24倍低い。二次構造の異常に対する感受性は、図25に示すように、単離配列17の結合により、さらに明らかに示される。単離配列17は、表12に示すように、最大の情報得点をもっ
ている。しかしながら、表11に示すように、ループ1の5′末端に余分な突出したUがある。単離配列17′sのこの余分なUが、モチフIの他の配列に比較してレブに対する親和性を減少させる結果をもたらしている。逆に、ループ2配列の1ヌクレオチドの欠失は、交差突出塩基対合の見込みを減少させるものであっても、レブ相互作用によって良くもちこたえられている。
【0225】
他の注目すべき共有性は、CAがUGとの対合によりステム2が始まる配列ACA対UGGの保存である。この配列は、野性型RREと同じく、モチフIとIIによって分担されている。配列11と12は、この位置(表12参照)で塩基対の置換を示し、配列12は、試験されて、他のモチフI配列の大部分に比較して親和性が減少した。
【0226】
SELEX によって決定された、レブリガンドになるべきRNA配列は、一次及び二次構造によって級分けされるだろう。立体配置される2つのらせんが隣接する、非対称の突出部の共通の発生は、特異的に一本鎖と二本鎖ヌクレオチドを保護する。突出部分を越える、塩基の対合が、分離された配列(モチフI)の多くについて予測されるけれども、それは、レブの相互作用にとって必須でもなく重要でもないだろう。9または3の大きさでは不都合な点がみられるループ1にとって、最適の大きさは8(モチフI)、または6(モチフIII )であるように思われる。ループIII のための最適の大きさは5と4である。それに加えて、これらのリガンドの色々なドメインとレブの交互作用は、付加的なものであろう。モチフIIは、ステム2におけるループ1と3の接続点で、第一に、モチフIと似ている。モチフIII は、ステム1でのループ1と3の接続点で、モチフIと似ている。HIV−revのためのモチフIとIIの核酸溶液の共通の図解が表29と30に示されている。
【0227】
クローン集団における配列の存在量は、厳密には、レブ蛋白質への親和性に相関しない。SELEX 法を通して用いられたレブ蛋白質の濃度は、すべてのこれらの単離集団を有意なパーセンテージで結合するのに十分であった可能性がある。結論として、レブへの結合のための厳密さの欠けた選択に、PCRの間の、cDNAとDNAの複製能力の選択性が重なったかも知れない。これらのリガンドの高度に組立てられた性質と、これらの鋳型におけるcDNA合成の効率上の可能性のある差異が、この潜在的な複製の偏りを強めている。また、SELEX 工程中いくつかの突然変異が発生する。配列6aは6bに非常に似ているので、それらは共通の祖先をもっているに違いない。SELEX のラウンド中、この比較的おそい出現は、標的への高い親和性にかかわりなく、この配列の不足を説明できるかも知れない。同じように、出現したいくつかのリガンドは、最初の候補混合体に存在し、クローン集団には表れない、祖先の配列からの選択の間に、比較的最近変異を生じたのかも知れない。
【0228】
ここに開示した発明は、ここに開示した実施例の範囲に限定されない。開示されたように、この発明は、多くの核酸リガンドと標的に関する技術に普通に習熟している人々に適用することができる。この技術を個々の場合に適用する際、適当な修飾、応用、便法を用いることができ、ここに開示し、権利を主張する範囲内で、熟練者に理解されるだろう。
【0229】
【表2】

【0230】
【表3】

【0231】
【表4】

【0232】
【表5】

【0233】
【表6】

【0234】
【表7】

【0235】
【表8】

【0236】
【表9】

【0237】
【表10】

【0238】
【表11】

【0239】
【表12】

【0240】
【表13】

【0241】
【表14】

【0242】
【表15】

【0243】
【表16】

【0244】
【表17】

【0245】
【表18】

【0246】
【表19】

【0247】
【表20】

【0248】
選択。よく混合した溶液中での可逆的な蛋白質−RNA複合体に関する簡単な速度論的機構は、次のように記述される。
【0249】
【数1】

【0250】
ここで、〔Pf〕は、遊離蛋白質濃度であり、〔RNAfi 〕は、遊離RNA種-iの濃度
であり、〔P:RNAi 〕は、蛋白質−RNA種i 複合体の濃度であり、k+iは、遊離蛋白質と遊離RNA種-iの会合の速度定数であり、k-iは、蛋白質−RNA種i 複合体の解離定数であり、nは、ユニークな速度定数のセットをもつRNA 配列の数である。多重結合部位または協同作用を含む別の機構が、この単純な式の適当な延長により、その後の処理に関し、考察することができた。上式により表わされたシステムのため、時間の函数として、各蛋白質−RNA種i 複合体の濃度変化を示す基礎的な化学−速度論または質量−作用等式:
【0251】
【数2】

【0252】
ここで、〔Pf〕,〔RNAfi〕及び〔P:RNAi 〕は、遊離蛋白質、遊離RNA種i 及び蛋白質−RNA種-i複合物の、時間tにおける濃度である。
遊離蛋白質の濃度は、全蛋白質濃度と全蛋白質−RNA複合体間の差(〔P〕−Σ〔P:RNAk 〕)である;同様に、遊離RNA種-iの濃度は、全RNA種-i濃度と蛋白質−RNA種-i複合体濃度間の差(〔RNAi 〕−〔P:RNAi〕)である:
【0253】
【数3】

【0254】
これらの動力学的方程式は、速度または平衡分析の何れにも用いることができる。連続微分形は、各プロセスの平均速度が、そのプロセスにおける変動に比較してはるかに大きければ常に有効である。あるいは云いかえれば、等式(3) は、それぞれの独自の速度定数で代表される数分子をもつプールされたRNAの記述としては正確である。最適結合RNAのわずか1分子、またはわずかの分子がありさえすれば、結合の統計的記述は、最適結合RNAの回収の高い可能性を与える條件の決定に用いることができる。これらの統計式は成功の可能性について、次項において誘導される。平衡状態では、各蛋白質−RNA種-i複合体の濃度は0に等しい。
【0255】
【数4】

【0256】
等式(3) に定義するシンボルと、蛋白質−RNA種-i複合物の平衡解離定数であるKdi により(Kdi =K-i/K+i)。
ただし1つのRNA種だけを考慮すると(すなわちn=1)、蛋白質−RNA複合物の平衡濃度のための分析溶液は、次の2次方程式により解が求められる:
【数5】

【0257】
2つの実数ルートの内、1つは物理的に理解できる:
【0258】
【数6】

【0259】
もちろん、Michaelis-Menten式の中のそれのように、複合物の平衡または準定常状態の濃度について、多くの古典的近似値があるが、SELEX で用いる全RNA及び蛋白質濃度の範囲にわたり、十分な精度をもつものはない。(古典的近似値のいくつかの落し穴と限界に関する討論を知るためには、Savageau, 1991;Straus & Goldstein, 1943;Webb, 1963を参照のこと)。蛋白質上に単一の結合部位をもつ単一RNA種の簡単な可逆性解離に関する2次反応式の分析溶液は、SELEX で用いられる全RNAと蛋白質濃度の範囲にわたり正確であるけれども、そしてまた2つの競合する種の結合濃度を、三次方程式の分析溶液によって計算することができるけれども、3つまたはそれ以上の競合するRNA種が考えられる場合は、蛋白質−RNA複合体の平衡濃度を計算するには、反復の多くの方法が要求される。
【0260】
我々は、各蛋白質−RNA種-i 複合体〔P:RNAi 〕、与えられた蛋白質濃度〔P
〕、RNA種-i濃度分布〔RNAi 〕、そして平衡解離定数の分布Kdiの平衡濃度を解く
ためのコンピュータープログラムを開発した。ニュートン法(たとえばLeunberger, 1973;Press et al., 1988参照)による等式(4)の絶対溶液におけるヤコビアンマト
リックス(たとえばLeunberger, 1973参照)は、次の式を用いて計算される:
【0261】
【数7】

【0262】
ここでaijは、ヤコビアンマトリックスのi行、j列、δii=1そしてδij=0 i≠jし
ばしば、ニュートン法の成功は、溶液についての最初の判断の良さによっており(たとえばLeunberger, 1973;Press et al., 1988)、この場合は、各蛋白質−RNA種-i 複合体〔P:RNAi 〕の平衡濃度である。プールした全RNAのバルクKdを用いる
ことにより、すべての蛋白質−RNA複合体中の蛋白質濃度を推定することができる:
【0263】
【数8】

【0264】
ここで〔P:RNA〕は、全蛋白質−RNA複合体の濃度であり、〔RNA〕は、プールした全RNAの濃度であり、<Kd>はプールした全RNAのバルク平衡解離定数であり、次式を用いて計算した。
【0265】
【数9】

【0266】
ここで〔RNA〕[P]/2 は蛋白質の半分と結合する全RNA濃度であり、Fi0 =〔RN
i 〕/〔RNA〕である。複合体中の蛋白質に関するこの評価により、各蛋白質−RNA種-i 複合体の濃度に関する初期近似値は、次式を用いて求めることができる。
【0267】
【数10】

【0268】
(4) 式を満足する〔P:RNAi 〕の値をもつ溶液は(7) 式を用いるニュートン法の反
復適用により高レベルの精度で精製することができる。この遂行において、我々は、ニュートンの方法の4または5回以下の反復で、12桁以上の有効数字をもつ溶液に到達する。精密な溶液へのこの急速な集中化は、手始めに−各RNA種の平衡解離定数と数度による−代表的に1またはそれ以上の有効数字を与える式(10)における最初の近似のためである。このレベルの精度を得る一つの理由は、〔P〕−〔P:RNA〕がKdi よりも大きい時、たとえば〔RNA〕がKdi より小さいかまたはKdi が<Kd>より小さい場合は、〔P:RNA〕におけるエラーが式(10)の中で消されることである。面白いことに、これは、蛋白質−RNA種−i複合体にとってよりよい結合は、バルクRNAプールよりも、精度が高くなる傾向があることを意味する。濃縮度計算の初期精度の代表例−各ラウンド毎、最適結合RNA種で構成される全RNAプールの断片の増加として定義され、また式(10)を式(20)−に置換することによって近似する。
【0269】
全体としての精度は、すべての蛋白質−RNA種-i複合体について式(10)を用い計算した平衡濃度の精度の反映である。次の項で、我々は、最大の濃縮のための最適RNAと蛋白質濃度を計算するため、この精度を利用する。
【0270】
分配。フィルター結合(Tuerk 及びGold, 1990)、ゲル−運動性移動(Blackwell 及びWeintraub,1990)、親和性クロマトグラフィー(Ellingtor 及びSzostak,1990;Green et al., 1990;Oliphant及びStruhl, 1987;Oliphat 及びStruhl, 1988)、抗体沈澱、相分配、または核開裂の防禦(Robertson 及びJoyce,1990)を含む核酸配列の異なる種の分配方法がSELEX による利点として用いられる。たとえば、フィルター結合により、大抵の蛋白質−RNA複合体はニトロセルローズに突きささるが、大部分の遊離RNA分子は流される(Uhlen beck et al.,1983;Yarus,1976;Yarus 及びBerg, 1967;Yarus 及びBerg, 1970)。突きささり、次にフィルターから回収することのできる蛋白質−RNA複合体の実際の断片は、次のセクションで処理される。
【0271】
遊離RNA分子の断片もまた非特異的バックグランドとしてフィルターに突きささるので、フィルター上に集められた各RNA種-iの全量は、蛋白質−RNA複合体中の最適結合RNA分子からの望ましいシグナルと、蛋白質−RNA複合体中に非特異的バックグランド+競合的RNA分子として集められた遊離RNA分子からのノイズの両方を考慮する次式を用いて計算される。
【0272】
【数11】

【0273】
ここでRNAi filtは、集められたRNA種-iの分子の数であり、Volは、フィルターを通過した反応混合液の容量であり、〔P:RNAi 〕は、前項で述べたように計算された蛋白質−RNA種-i複合体の平衡濃度であり、BGは、非特異的バックグランドとして集められた遊離RNAの断片であり、また〔RNAi〕は、全RNA種-i濃度である。どの
分配方法であっても、典型的には、結合及び非結合リガンドの完全な分離よりは少ない結果となるので、それぞれのラウンドで、結合したリガンドにより、バックグランドとして集められた遊離リガンドの断片の測定が必要である。
【0274】
既に述べたように、溶液中のすべての蛋白質−RNA複合体がフィルター上に集められるとは限らない。さらに、強く結合した複合体中のRNAは、弱く結合した複合体中のRNAよりもフィルター上によりよく保持されるだろう。これが真実である限り、強く結合したRNA分子としての濃縮は、SELEX の各ラウンドでさらに強化されるだろう。一方、もしいくらかの分子が、他と同じようにフィルターから溶出されなければ、それらの濃縮度は減少するだろう。
【0275】
増幅と再標準化。フィルターから回収された各RNA 種-iの量は、次式により計算さ
れる。
【0276】
【数12】

【0277】
ここでFRは、フィルターから回収することができるRNAの断片であり、RNAi filtは、式(11)により計算されるフィルター上に集められたRNA種-iの分子数である。この処理で、FRの値は、一定であると推測され、フィルターに突きささる蛋白質−RNAの断片と、回収されるこれらの複合物中のRNAの断片の両方から決定され、PCRのためのcDNAを作るために逆転写によりコピーされる。FRはすべての種で一定であるという仮定は、十分な時間が与えられているので、合理的な出発点であり、すべての分子がPCRのために同じプライマー部位をもち、また過剰なプライマーが用いられる時は、各種−少なくても多くても−プライマー分子によるアニーリングの可能性は、実質的には同じである。
【0278】
また、各RNA分子は、同じ長さであるので、大きさに基づく増幅速度の差はない。もちろん、もしどれかのRNA種が、cDNA合成のためのプライマーアニーリングの妨害をするような二次構造をもつか、あるいはまた、相当するcDNAの一次または二次構造がPCR増幅中のDNAポリメラーゼの速度をおそくするならば、その種の濃縮は減少する。どんな構造が実際に差をもたらすのか予測する良い法則もないので、我々はこれらの影響は取り入れない。これらの構造に対する研究がさらに進めば、有効な影響をSELEX の数学的記述に加えることができる。
【0279】
フィルターから回収されたRNAの全量は、PCR増幅用としてcDNAのコピーを作るために集められた各種の分子数を集計して計算される。
【0280】
【数13】

【0281】
PCRプライマー部位がなければこれらの分子は増幅しないので、“担体”または“非特異的競合剤”は、式(13)における全数から除外すべきである。親和性測定の計画は、しばしばこれらの非特異的競合RNA分子を含み、そしてこのような分子がまた、SELEX で使用されるならば、明らかにそれらは非増殖的である筈である。面白いことに、非特異的競合分子が、最適結合リガンド分子のように、同じ部位において蛋白質と相互作用があれば添加競合剤の主な結果は、選択に利用される特異性部位の数の減少である。そこで、非特異的競合分子の高濃度の存在下で、望ましい量の増幅可能なリガンド分子と結合する蛋白質の濃度を決定するために、各適定におけるこれらの分子の適当な濃度を含めて修正した結合曲線を作らなければならない。高濃度の非特異的、非増幅性競合分子をSELEX の各ラウンドに用いる利点は、ラブウェア上の非特異的な部位への増幅性リガンド分子の吸収の減少と、標的蛋白質上の非特異的部位への増幅性リガンド分子の結合の減少あるいは“偽似分配”部位−しかし、このような部位が有意な数で存在し、用いられた非特異的競合分子の量で有効に飽和される場合のみ−上で非特異的バックグランドとして集められる遊離の増幅性分子の断片の減少を含むことができる点である。もしもこれらの條件が適合しなければ、非特異的競合分子の添加の効果は、本質的には、用いた蛋白質の量を減少することと同じである。
【0282】
(13)式の全量に比較して、1 ラウンド後に回収した各増幅性RNA種-iの量は次のように計算される:
【0283】
【数14】

【0284】
cDNAコピーのPCR増幅と、in vitroの転写( すべてのcDNA分子上の同じプロモーター部位から)により元の濃度に戻るRNAプールの再標準化後、SELEX の1ラウンド後の各RNA種の濃度は:
【0285】
【数15】

【0286】
ここで〔RNAi 〕は、RNAプールの全濃度である。SELEX の各追加ラウンドのため、開始断片がFi 0 (式(9) 参照) である1ラウンドから各RNA種としてのFi 1 によって、あらゆるRNA種の濃度を、式(7) −(15)の再反復によって算定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0287】
【図1】図1はバクテリオファージT4DNAポリメラーゼをコードする遺伝子43メッセンジャーRNAのリボヌクレオチド配列の図である。図示した部分はgp43に結合することが知られている領域中の配列である。太字の大文字はgp43の結合に必要な情報の範囲を示す。8個からなるループはSELEX のための1つの候補集団を生ずるために無作為配列で置換されたものである。
【図2】図2はT4DNAポリメラーゼ(gp43)に結合するRNAsに関するループ配列バリアントを選択するためのSELEX 過程の模式図を例示したものである。RNAのテスト混合物の調製のためのDNA標的は、表1infra に与えられた配列を有する、オリゴマー3,4および5の連結反応によってステップaに示されたようにして調製された。ステップaでの正しい連結反応が起こったかどうかはオリゴマー3と4および4と5をそれぞれ架橋する相補配列(表1に示す)を有するオリゴマー1および2とハイブリダイズさせることによって確かめられた。その結果得られた110−塩基標的をゲル精製し、オリゴ1とアニールし、そしてin vitro 転写反応に用いて(Miligan et al. (1987)Nucl. Acids. Res.15:8783−8798)、8−塩基ループの無作為配列を含む最初のRNA混合物も産生した(ステップb)。その結果得られた転写体をゲル精製し、gp43への結合に関してニトロセルロースフィルター上で選択を行った(ステップc)。このことは例1に述べた通りである。選択したRNAsを3ステップの過程を通じて増幅した:(d) オリゴ5(表1)を用いて選択されたRNAsのcDNAコピーを逆転写合成酵素を用いて作った; (e) Innis et al.(1988)Proc. Natl. Acad. Sci.USA 85:9436が記載したように、必須のT7プロモーター配列を有する、オリゴ1(表1)のTag DNAポリメラーゼチェイン延長とオリゴ5を用いてcDNAを増幅した;そして(f) 増幅した二重鎖DNA産物をin vitro で転写した。その結果選択された増幅RNAs をつぎの回の選択で用いた。
【図3】図3はgp43へのRNAループバリアントの結合に関してSELEX から得られたin vitro 転写体の電気泳動バッチ配列決定反応のオートラジオグラフのコンポジットである。図は実験Bの選択条件に関する選択サイクルの数(2,3および4サイクル)の関数としてのループ配列成分における変化を示す:ここで実験Bにおいては全選択サイクルに関してgp43の濃度は約3×10-8M、RNAの濃度は約3×10-5Mであった。配列決定はGauss et al.(1987)Mol. Gen.Genet.206:24−34に述べた方法で実施した。
【図4】図4は異なる結合条件を用いてgp43に対するRNAループバリアントの結合に関するSELEX 増幅の4回目のラウンドから選択されたRNAsのバッチRNA配列のオートラジオグラフのコンポジットである。実験Aにおけるgp43の濃度は約3×10-8MでRNA濃度は約3×10-7Mであった。実験Bではgp43は約3×10-8M、RNAは約3×10-5Mであった。実験Cではgp43は約3×10-7MでRNAは約3×10-5Mであった。
【図5】図5は実験Bの選択条件下でのgp43に対する結合に関して選択されたループバリアントに関する3つの配列決定ゲルのオートラジオグラフのコンポジットである(例1参照)。左方の配列ゲルは選択/増幅の4回目のラウンドの後の選択RNAのバッチ配列決定である。真中と右側の配列ゲルはバッチRNAsから得られた2つのクローン化分離物の二重鎖DNA配列決定ゲルである。選択されたRNAのバッチは2つの主要なバリアントから成り、その1つは野性型配列(真中配列ゲル)、他は新しい配列である(右側ゲル)。
【図6】図6は異なる選択RNAループ配列バリアントおよび無作為ループ配列を有するRNAに対するgp43濃度の関数としてgp43に結合したRNAの百分率のグラフである。野性型ループ配列AAUAACUCの結合を中空丸と実線で示した;主バリアントループ配列AGCAACCUを“X”と点線;主(メジャー)バリアントループ配列AAUAACUUを中空四角形と実線;マイナーバリアントループ配列AAUGACUCは黒丸と点線;マイナーバリアントループ配列AGCGACCUを×印と点線;そしてループ配列の無作為混合物(NNNNNNNN) の結合を中空丸と点線で示す。
【図7】図7は8個の塩基対ループ中で無作為化された候補集団から新しいgp43結合RNAを選択するSELEX の4回目のラウンドの後に達成された結果を図で要約したものである。SELEX は図4に示されたバッチ配列から期待される“見かけの”コンセンサスを生じなかったが、その代りに野生型と単一主バリアントがほぼ同じ割合のほか3個の単一変異体を生じた。20のクローン化分離物のうちの各スピーシスの頻度を、図6に示したフィルター結合アッセイから得られたそれぞれの近似親和力定数(Kd)とともに示した。
【図8】図8は酵素ターミナルトランスフェラーゼ(TDT)とDNAポリメラーゼ(DNA pol)を用いた候補核酸リガンドの合成を示す一連のダイアグラムである。5′プライマーまたは一次リガンド配列に対して、4つのデオキシリボヌクレオチドトリフォスフェート(dNTPs)の存在下ターミナルトランスフェラーゼとインキュベートすることによって無作為配列のテール(tail)を提供する。単一のデオキシリボヌクレオチドトリフォスフェート(たとえばdCTP)の存在下、同じ酵素を用いて無作為セグメントのホモポリマーテーリングはポリ−Gテール3′プライマーに対するアニーリング部位を提供する。アニーリングののち、DNAポリメラーゼの作用によって二重鎖分子の生成が完了する。もし希望すれば、ポリメラーゼ連鎖反応によって混合物をさらに増幅させる。
【図9】図9は標的蛋白質と空間的に分離した2つの結合相互作用を有する大きな核酸リガンドを選択するためにSELEX を用いたプロセスを示すダイアグラムである。このプロセスは2つの段階を含み、2番目の段階は1番目の段階の延長であることから“ウォーキング”と名付けられている。図の上の部分はSELEX の最初のラウンドで選択された核酸リガンドが蛋白質に1番目の結合部位で結合した標的(“同題にしている蛋白質”)を示す。末端トランスフェラーゼによって触媒された反応は生成した一次リガンドの長さを伸ばして、一次リガンドを含む保存領域を有する新しい1組の無作為配列候補を生ずる。図の下の部分は蛋白質の2次結合部位での二次リガンド相互作用から得られた、増進された結合を基にしたSELEX の2番目のラウンドの結果を示す。“一次”と“二次”という語は単なる操作を示す言葉で一方が他よりも高い親和性を有するということを意味しない。
【図10】図10と図11は2つのステージにおいてSELEX を用いた選択過程のダイアグラムである。図10では、特異的結合体、たとえば標的蛋白質の阻害剤に結合した架橋オリゴヌクレオチドと複合体を形成した標的上の2番目の結合部位に結合するリガンドを選択するのにSELEX を適用した。架橋オリゴヌクレオチドは近接しうる2番目の結合部位に結合するリガンドの選択がうまくいくようにガイドとして作用する。
【図11】図11では、初めから選択された二次部位と一次標的ドメインの両方に結合するリガンドを作るのに2番目のSELEX が適用される。そこで生ずる核酸は非常に強く結合するだろうし、それらは標的蛋白質の阻害剤として振舞い、あるいは標的蛋白質の阻害剤または基質に対して拮抗するかもしれない。
【図12A】図12は例2で用いた候補混合物の構成に用いるオリゴマーの配列と配置を示す。最上列はオリゴマー1bと2bそれぞれの配列を左から右へ示す(表2infra 参照)。2列目は左から右へオリゴマー3b,4bおよび5bの配列を示す(表2)。オリゴマーの正しい連結反応は配列が相補的であるオリゴマー1bと2bとのハイブリダイゼーションで確かめた。生成した連結標的をゲル精製し、オリゴマー1bにアニールしてin vitro 転写反応に使用し(Milligan et al.(1987)) 、図の最下列に“in vitro 転写体”と記したRNA候補混合物を生成した。図に示すように、候補混合物は32個のヌクレオチド無作為セグメントを含んでいる。
【図12B】図12は例2で用いた候補混合物の構成に用いるオリゴマーの配列と配置を示す。最上列はオリゴマー1bと2bそれぞれの配列を左から右へ示す(表2infra 参照)。2列目は左から右へオリゴマー3b,4bおよび5bの配列を示す(表2)。オリゴマーの正しい連結反応は配列が相補的であるオリゴマー1bと2bとのハイブリダイゼーションで確かめた。生成した連結標的をゲル精製し、オリゴマー1bにアニールしてin vitro 転写反応に使用し(Milligan et al.(1987)) 、図の最下列に“in vitro 転写体”と記したRNA候補混合物を生成した。図に示すように、候補混合物は32個のヌクレオチド無作為セグメントを含んでいる。
【図13】図13はRNAがとることが知られているいろいろの二次構造を含む仮想的なRNA配列を示す。図に含まれるのはつぎのものである:Aヘアピンループ、Bバルジ、C非対称バルジ、Dシュードノット。
【図14】図14はHIV−RTに対するリガンド親和性のニトロセルロースフィルター結合アッセイを示す。示してあるのはいろいろの濃度のHIV−RTのニトロセルロースフィルターに結合したインプットRNAの百分率である。
【図15】図15はHIV−RTに対するリガンド親和性のニトロセルロースフィルター結合アッセイをさらに付加して行った結果を示す。
【図16A】図16はHIV−1RTリガンド1.1および1.3a a)3 ′境界決定に関する情報を示す。RNAを5′末端標識し、部分アルカリ加水分解してニトロセルロースフィルターで選択し、変性した8%ポリアクリルアミドゲルで分離してオートラジオグラフにかけた。約90ピコモルの標識RNAと80ピコモルのHIV−1RTを0.5、2.5、および5mlの緩衝液中で混合して、ニトロセルロースフィルターを通して洗滌する前に37℃で5分間インキュベートした。溶出RNAsを各実験に用いたHIV−1RTの最終濃度の下に示した。また部分的なRNase T1分解産物も示したが、これによって、矢印b)5′境界決定によって隣接配列上の情報境界を同定することができる。上述と同じa)条件下で5′境界を決定した。
【図16B】図16はHIV−1RTリガンド1.1および1.3a a)3 ′境界決定に関する情報を示す。RNAを5′末端標識し、部分アルカリ加水分解してニトロセルロースフィルターで選択し、変性した8%ポリアクリルアミドゲルで分離してオートラジオグラフにかけた。約90ピコモルの標識RNAと80ピコモルのHIV−1RTを0.5、2.5、および5mlの緩衝液中で混合して、ニトロセルロースフィルターを通して洗滌する前に37℃で5分間インキュベートした。溶出RNAsを各実験に用いたHIV−1RTの最終濃度の下に示した。また部分的なRNase T1分解産物も示したが、これによって、矢印b)5′境界決定によって隣接配列上の情報境界を同定することができる。上述と同じa)条件下で5′境界を決定した。
【図16C】図16はHIV−1RTリガンド1.1および1.3a a)3 ′境界決定に関する情報を示す。RNAを5′末端標識し、部分アルカリ加水分解してニトロセルロースフィルターで選択し、変性した8%ポリアクリルアミドゲルで分離してオートラジオグラフにかけた。約90ピコモルの標識RNAと80ピコモルのHIV−1RTを0.5、2.5、および5mlの緩衝液中で混合して、ニトロセルロースフィルターを通して洗滌する前に37℃で5分間インキュベートした。溶出RNAsを各実験に用いたHIV−1RTの最終濃度の下に示した。また部分的なRNase T1分解産物も示したが、これによって、矢印b)5′境界決定によって隣接配列上の情報境界を同定することができる。上述と同じa)条件下で5′境界を決定した。
【図17】図17はRNAリガンド1.1によるHIV−1RTの阻害を示す。32N候補混合RNAの3倍希釈の系列と10μMから4.6nMにわたる最終反応濃度のものをHIV−RTと前もって混合し、200mM KOAc,50mM Tris-HCl,pH7.7,10mMジチオスレイトール、6mM Mg(OAc)2 および0.4mM NTPSの6μL中で37℃、5分間インキュベートした。別の試験管中ではRNA標的(オリゴ7と9を用いてU. S. Biochemical Corp. から入手したT7−1のPCR産物から転写)と標識オリゴ9を混合して95℃で1分間加熱し、ついで10mMTris-HCl, pH7,0.1mM EDTA中、氷上で15分間冷却した。この標的の4μlを酵素−阻害剤混合物の各6μlに加えて反応をスタートさせて37℃で5分間インキュベートしたのち反応を停止させた。すべての反応における最終濃度はHIV−1RT,RNA標的および標識プライマーがそれぞれ16nM,13nMおよび150nMであった。各反応の延長産物を示した。
【図18】図18はリガンド1.1によるHIV−1RT阻害とMMLV RTおよびAMV RTへの作用を比較したものである。図に示した結果として生じた濃度で調製した5倍希釈の阻害剤を用いたことを除いて、実験は図17と同じように実施した。希釈およびゲルバンド強度をクーマシー青(Coomasie blue) と銀染色、Biored蛋白質濃度アッセイおよび活性アッセイと比較することによって各RTの濃度をHIV−RTの濃度に規格化した。
【図19】図19はR−17コート蛋白質リガンド溶液を表わす選択ヘアピンのコンセンサス配列を示す。各位置のヌクレオチドの表示を格子内に示した。“バルジ”と表記した欄は、対応するステム塩基対間のステムの一方または両サイド上のエクストラーヘリカルヌクレオチドを有するクローンの数を示す。“エンド”と表記した欄はヘアピンがその前の塩基対位置で終っているクローンの数を表わす。
【図20】図20はブラディキニンに対する30NバルクRNAの結合曲線を示す。分析はスピンカラム;10mM KOAc,10mM DEM,pH7.5;RNA濃度1.5×10-8Mを用いて行なった。
【図21】図21はある構造モチーフ中で濃度化される候補混合物の生成で用いる標的を示す。標的Aはヘアピンループ中で候補混合物を濃度化するように設計されている。標的Bはシュードノット中の候補混合物を濃度化するように設計されている。
【図22】図22はHIV−rev リガンド溶液のモチーフIおよびIIに対するステム−ループ配置の模式図である。ループ1と3の間のステム1と2中の点線は塩基対の可能性を示す。
【図23】図23は分離体6a,1aおよび8のrev リガンドサブドメインの折りたたみ二次構造を示し、これらはそれぞれモチーフI,IIおよびIII を示している。また比較のために野性型RRE RNAの予想される折りたたみ構造である。
【図24】図24は種々のHIVrev 蛋白質濃度のニトロセルロースフィルターに結合したRNAのインプットカウントに対する百分率である。また32N出発集団(#)の結合曲線、10ラウンドののちに生じた集団(P)の結合曲線、およびオリゴ8と9(W)から成る標的から転写された野性型RRE配列の結合曲線も示す。
【図25】図25はモチーフI(a)revリガンドの比較である。パラメータは図24と同じである。“コンセンサス”構成体(C)の結合曲線も示してある。
【図26】図26はモチーフI(b)revリガンドの比較である。パラメータは図24と同じである。
【図27】図27はモチーフII revリガンドの比較である。パラメータは図24と同じである。
【図28】図28はモチーフIII rev リガンドの比較である。パラメータは図24と同じである。
【図29】図29はモチーフIと呼ばれるHIVrev に対するコンセンサス核酸リガンド溶液を示す。
【図30】図30はモチーフIIと呼ばれるHIVrev に対するコンセンサス核酸リガンド溶液を示す。
【図31】図31はシュードノットの模式表示である。シュードノットはここでステムS1 とS2 およびループ1,2,3と呼ばれる2つのステムと3つのループから成る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを含んでなるポリヌクレオチド以外の所定の標的と結合しうる核酸リガンドを産生または同定する方法、
(a)一本鎖核酸の候補混合物と標的とを接触させ、ここで標的と結合する核酸は残りの候補混合物から分離されうる;
(b)結合した核酸を残りの候補混合物から分離する;
(c)結合した核酸をin vitroで増幅して、該標的と結合しうる核酸に富んだ核酸産物を得る;
(d)所望のレベルの濃度を得るのに必要な回数だけステップ(a)から(c)を繰り返し、ここで候補混合物に代えて各連続的繰り返しの核酸産物を用いて行う:
(e)クローニングし、配列決定し、核酸産物の結合親和性を個別に試験する。
【請求項2】
候補混合物中の各一本鎖核酸が少なくとも8個の隣接する無作為化ヌクレオチドのセグメントを含み、ここでヌクレオチドは無作為化タイプではあるが、バイアスした比率で存在しうる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
無作為化セグメントが少なくとも8個から50個までの隣接するヌクレオチドを含む請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
無作為化セグメントが増幅を可能にする固定配列に隣接する請求項1−3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
標的が、核酸配列との結合を介して機能する核酸結合タンパク質である場合に、核酸結合タンパク質上の天然の核酸結合部位と、これが結合することが知られている核酸配列との間の公知の結合以外のものによって、リガンドは標的と結合する、請求項1−4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
標的がタンパク質、ペプチド、糖タンパク質、炭水化物、多糖、ホルモン、受容体、細胞表面抗原、抗体、毒素、ウイルス、基質、代謝物、遷移状態同族体、補助因子、阻害剤、薬剤、栄養物および成長因子から選択される、請求項1−4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
さらに以下のステップを含む請求項1−6のいずれかに記載の方法:
(f)前記方法で同定された核酸分子を、標的の機能に影響しうるかどうかにつきスクリーニングする。
【請求項8】
さらに以下のステップを含む請求項1−6のいずれかに記載の方法:
(f)分子複合体に特異的に結合する核酸を選択する。
【請求項9】
標的が酵素であり、前記方法がさらに以下のステップを含む請求項1−6のいずれかに記載の方法:
(f)酵素の触媒活性に影響する核酸をスクリーニングして選択する。
【請求項10】
さらに以下のステップを含む請求項1−9のいずれかに記載の方法:
(g)保存ヌクレオチドと無作為化ヌクレオチドを含む核酸の第2の候補混合物を調製し、ここで保存ヌクレオチド配列は核酸産物に由来するものである;そして
(h)第2の候補混合物を用いてステップ(a)から(e)を繰り返す。
【請求項11】
さらに以下のステップを含む請求項1−9のいずれかに記載の方法:
(g)核酸産物に由来する核酸の第2の候補混合物を調製し、ここで各核酸は、バイアスした比率で存在する無作為化ヌクレオチドのセグメントを含む;そして
(h)第2の候補混合物を用いてステップ(a)から(e)を繰り返す。
【請求項12】
さらに以下のステップを含む請求項1−11のいずれかに記載の方法:
(i)非核酸リガンドを標的分子に結合し、ここで非核酸リガンドは公知の配列の核酸と共有結合しており、また候補混合物の核酸は、無作為化セグメントおよび公知の配列の核酸配列と相補的な配列とを含む。
【請求項13】
ステップ(a)において、候補混合物は結合に好ましい条件下で標的と接触させ、これによって核酸−標的対を形成し、ステップ(b)において、非結合核酸を標的と結合した核酸から分離して核酸−標的対を解離し、そしてステップ(c)において、核酸−標的対から解離した核酸を増幅する、請求項1−12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
候補混合物および/または核酸リガンドがリボ核酸(RNA)およびデオキシリボ核酸(DNA)からなる群より選択される請求項1−13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
候補混合物が化学修飾された核酸を含む請求項1−14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
標的が以下のものである請求項1−15のいずれかに記載の方法:
・T4 DNAポリメラーゼ
・HIVRT
・バクテリオファージR17コートタンパク質
・ブラジキニン
・哺乳動物ホルモンまたは因子、あるいは
・プロテアーゼ。
【請求項17】
標的がヒト組織プラスミノーゲン活性化因子、トリプシン、エラスターゼ、キモトリプシン、トロンビンおよびプラスミンから選択されるセリンプロテアーゼ;哺乳動物受容体;またはヒトインシュリン、エピネフリンおよび甲状腺ホルモンからなる群より選択されるホルモンまたは因子である請求項1−16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
核酸リガンドの標的への特異的結合を実行するために、所望の標的の別のリガンを用いるステップをさらに含む請求項1−4のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
核酸リガンドが非核酸エレメントを含む請求項1−18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
同定された核酸リガンドを合成するステップをさらに含む請求項1−19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
核酸以外の標的分子に対する単離された核酸リガンドであって、ここで標的分子が、核酸配列との結合を介して機能する核酸結合タンパク質である場合に、核酸結合タンパク質とこれが結合する天然の核酸配列との間の結合親和性以外のものによって、リガンドは標的と結合する、前記核酸リガンド。
【請求項22】
標的分子と結合した核酸リガンドであって、ここで標的分子は核酸以外のものであり、また標的分子が、核酸配列との結合を介して機能する核酸結合タンパク質である場合に、核酸結合タンパク質とこれが結合する天然の核酸配列との間の結合親和性以外のものによって、リガンドは標的と結合する、前記核酸リガンド。
【請求項23】
核酸間の結合以外の、核酸リガンドを標的分子にin vitroで特異的に結合することを含む方法であって、ここで標的分子が、核酸配列との結合を介して機能する核酸結合タンパク質である場合に、核酸結合タンパク質とこれが結合する天然の核酸配列との間の結合親和性以外のものによって、リガンドは標的と結合する、前記方法。
【請求項24】
以下の用途に用いる請求項23記載の方法:
・標的タンパク質の検出、定量、単離または精製用;
・アッセイ;
・診断手順;
・細胞ソーティング;
・標的分子機能の阻害剤として;
・プローブ剤または金属イオン封鎖剤(sequestering agent)として;
・試料中の標的分子の存否の検出および/またはその量の測定用;
・標的分子の機能の修飾用;または
・タンパク質機能に影響、阻害または増強。
【請求項25】
核酸間の結合以外の、標的分子に対する核酸リガンドのin vivoでの特異的結合を含む方法における核酸リガンドの使用であって、ここで標的分子が、核酸配列との結合を介して機能する核酸結合タンパク質である場合に、核酸結合タンパク質とこれが結合する天然の核酸配列との間の結合親和性以外のものによって、リガンドは標的と結合する、前記使用。
【請求項26】
以下の用途に用いる請求項25記載の使用:
・標的タンパク質の検出、定量、単離または精製用;
・アッセイ;
・診断手順;
・細胞ソーティング;
・標的分子機能の阻害剤として;
・プローブ剤または金属イオン封鎖剤(sequestering agent)として;
・試料中の標的分子の存否の検出および/またはその量の測定用;
・標的分子の機能の修飾用;または
・タンパク質機能に影響、阻害または増強。
【請求項27】
核酸間の結合以外の、標的分子に対する核酸リガンドのin vivoでの特異的結合を含む治療または診断に使用するための核酸リガンドであって、ここで標的分子が、核酸配列との結合を介して機能する核酸結合タンパク質である場合に、核酸結合タンパク質とこれが結合する天然の核酸配列との間の結合親和性以外のものによって、リガンドは標的と結合する、前記核酸リガンド。
【請求項28】
核酸間の結合以外の、標的分子に対する核酸リガンドのin vivoでの特異的結合に関与する治療法または診断法に使用するための治療薬または診断薬の製造における核酸リガンドの使用であって、ここで標的分子が、核酸配列との結合を介して機能する核酸結合タンパク質である場合に、核酸結合タンパク質とこれが結合する天然の核酸配列との間の結合親和性以外のものによって、リガンドは標的と結合する、前記使用。
【請求項29】
リガンドまたは薬剤が標的分子の機能を修飾する請求項21−28のいずれかに記載の方法、リガンドまたは使用。
【請求項30】
リガンドまたは薬剤が以下のものである請求項21−28のいずれかに記載の方法、リガンドまたは使用:、
(i)酵素の酵素活性に影響する;
(ii)タンパク質受容体の機能性に影響する;
(iii)タンパク質多量体の形成に影響する;
(iv)受容体への結合を阻害する;
(v)受容体への結合特異性を修飾する;
(vi)ホルモン作用を修飾する;または
(vii)タンパク質の輸送特性を修飾する。
【請求項31】
リガンドが複数のリガンド成分を含み、それぞれが標的と結合しうる請求項21−30のいずれかに記載の方法、リガンドまたは使用。
【請求項32】
リガンドまたは薬剤が以下の目的のために使用される請求項27または28記載のリガンドまたは使用:
(i)標的たの検出または定量用;
(ii)アッセイ;
(iii)診断手順;
(iv)金属イオン封鎖剤として;
(v)薬剤送達ベヒクルとして;または
(vi)ホルモン作用の修飾剤として。
【請求項33】
核酸リガンドが以下のステップを含む方法によって同定されたものである請求項21−32のいずれかに記載の方法、リガンドまたは使用:
(a)結合に有利な条件下で核酸混合物を標的と接触させる;
(b)標的分子に結合した核酸から非結合核酸を分離する;
(c)核酸−標的対を解離する;
(d)核酸−標的対から解離した核酸を増幅して、リガンドが濃度化した核酸の混合物を作る;
(e)結合、分離、解離および増幅の段階を望みの回数だけ繰り返す。
【請求項34】
核酸リガンドが一本鎖RNAまたはDNAである請求項21−33のいずれかに記載の方法、リガンドまたは使用。
【請求項35】
リガンドが化学的に修飾されたRNAまたはDNAを含む請求項21−34のいずれかに記載の方法、リガンドまたは使用。
【請求項36】
リガンドが少なくとも15ヌクレオチドを含む請求項21−35のいずれかに記載の方法、リガンドまたは使用。
【請求項37】
リガンドがさらに非核酸エレメントを含む請求項21−36のいずれかに記載の方法、リガンドまたは使用。
【請求項38】
標的分子がタンパク質、ペプチド、炭水化物、多糖、糖タンパク質、ホルモン、受容体、抗原、抗体、ウイルス、基質、代謝物、阻害剤、薬剤、栄養物および成長因子から選択される、請求項21−37のいずれかに記載の方法、リガンドまたは使用。
【請求項39】
標的が以下のものである請求項21−38のいずれかに記載の方法、リガンドまたは使用
・ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子、トリプシン、エラスターゼ、キモトリプシン、プラスミンおよびトロンビンから選択されるセリンプロテアーゼを含むプロテアーゼ;
・ヒト成長ホルモン受容体の可溶性ドメイン(shGHR)を含む哺乳動物受容体;または
・インシュリン、エピネフリン、甲状腺ホルモンおよび神経成長因子からなる群より選択される哺乳動物ホルモンまたは因子。
【請求項40】
標的分子に対して特異的結合親和性または触媒機能をもつ天然に生じない(non-naturally occurring)核酸であって、ここで標的分子はワトソン/クリック塩基対または三重らせん結合に主として依存するメカニズムを通じて核酸に結合するポリヌクレオチド以外のものであり、該核酸は天然に生じる核酸結合標的タンパク質に結合することが知られていないものである前記核酸。
【請求項41】
以下のステップを含むポリヌクレオチド以外の所望の標的に対する核酸リガンドを同定する方法:
(a)架橋分子を標的と結合して標的:架橋分子複合体を形成し、ここで架橋分子は、公知の配列の核酸オリゴマーと共有結合する標的に結合する非核酸分子を含む;
(b)核酸の候補混合物と標的:架橋分子複合体とを接触させ、ここで候補混合物の核酸は、無作為化部分および架橋分子の公知配列と相補的な配列を含み、また標的:架橋分子複合体と結合する候補混合物の核酸は残りの候補混合物から分離されうる;
(c)結合した核酸を残りの候補混合物から分離する;
(d)結合した核酸をin vitroで増幅して、該標的と結合しうる核酸に富んだ核酸産物を得る;そして
(e)必要な回数だけステップ(a)から(d)を繰り返す。
【請求項42】
標的:架橋分子複合体と結合する核酸リガンドを単離するステップをさらに含む請求項41記載の方法。
【請求項43】
クローニングし、配列決定し、核酸産物の結合親和性を個別に試験するステップをさらに含む請求項41または42記載の方法。
【請求項44】
同定した核酸産物を合成するステップをさらに含む請求項43記載の方法。
【請求項45】
非核酸エレメントが、
・そのタンパク質標的の活性部位に結合する;
・その酵素標的の阻害剤または基質である;または
・標的に特的な抗体または抗体フラグメントである、
請求項42−44のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2007−195560(P2007−195560A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75076(P2007−75076)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【分割の表示】特願平8−54743の分割
【原出願日】平成3年6月10日(1991.6.10)
【出願人】(501345390)ギリード・サイエンシズ・インコーポレーテッド (17)
【Fターム(参考)】