説明

核酸分子の安定性を制御するためのイオン液体の利用

【課題】核酸分子の塩基対の安定性を制御する新規技術及びその利用を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で示されるイオン液体を含む溶液中において、第1の核酸分子と第2の核酸分子とを接触させる工程を含み、前記第1の核酸分子と第2の核酸分子とがハイブリダイズした際に形成される2本鎖核酸分子に含まれるG−C塩基対を不安定化させる、及び/又は、A−T塩基対(あるいはA−U塩基対)を安定化させる方法。
【化1】


(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基等を表し、nは0〜10の整数であり、Xはアニオンを示し、Yは水素原子又は水酸基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン液体を用いて核酸分子の配列認識能や安定性を制御する新規技術に関し、例えば、DNA等の核酸分子を取り扱うための溶液としての、イオン液体の利用方法及びキット等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DNA分子がハイブリダイズして2本鎖となる場合には、原則として、グアニン(G)とシトシン(C)とが、またアデニン(A)とチミン(T)とが対をなし、それぞれG−C塩基対、A−T塩基対を形成する。G−C塩基対では、3つの水素結合が形成されるため、水素結合が2つのA−T塩基対に比べて熱的に安定である。このため、2本鎖DNA中のG−C塩基対含量が増大するとその熱安定性は高くなることが一般的に知られている。
【0003】
それゆえ、例えば、G−C塩基対含量が高いDNAをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって増幅する場合、2本鎖DNAが1本鎖DNAに解離する温度、つまり融解温度がPCR法における熱変性(アニーリング)温度よりも高い場合がある。この場合、通常の熱変性温度では鋳型DNAの熱変性が十分に起こらない。また熱変性温度をいたずらに高くすれば、DNAポリメラーゼが失活してしまう。それゆえ、G−C塩基対含量の高いDNA領域を、PCR法で増幅することは困難な場合が多い。かかる問題を解決するために、例えば、特許文献1には、グリシンベタイン等の添加剤をPCRの反応溶液中へ添加し、DNAの融解温度を熱変性温度以下に降下させる技術が報告されている。
【0004】
ところで、DNAやRNA等の核酸分子は、水溶液で取り扱うのが一般的である。しかし、DNAやRNAは、それぞれDNA分解酵素、RNA分解酵素により水溶液中では容易に加水分解を受けることが知られている。また、核酸分子の最安定構造を形成させるためには、90℃程度の高温から適切な温度まで降温させる必要があるが、この操作を水溶液中で繰り返し行うと溶液が蒸発してしまうという問題があった。これらの理由から、核酸分子を水溶液中で長期間、安定的に保存することは困難であった。このような問題を解決するために、例えば、特許文献2や非特許文献1には、イオン液体中で核酸分子を保存する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−141105号公報(2004年5月20日公開)
【特許文献2】WO2005/090563号公報(2005年9月29日公開)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Ranganathan Vijayaraghavan et al., “Long-Term Structural and Chemical Stability of DNA in Hydrated Ionic Liquids”, Angew. Chem. Int. Ed. 2010, 49, 1631-1633
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、遺伝子組み換え生物の作出、遺伝子診断・治療等、ライフサイエンス分野において核酸分子の幅広い応用が急速に進展している。特に、PCR法は、臨床検査、DNA鑑定、食品分析などの様々な分野において広範に利用されている。しかし、前記特許文献1等に記載されている添加剤では、G−C塩基対だけでなく、A−T塩基対をも同時に不安定化させてしまう。一般的にA−T塩基対領域は、PCRにおいて酵素が核酸を認識するための認識部位にもあるため、A−T塩基対領域が不安定化すると、PCRの反応効率が低下するおそれがある。
【0008】
それゆえ、上述した技術以外で、核酸分子の塩基対の安定性を制御するための新たな技術の開発が強く求められていた。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、核酸分子の塩基対の安定性を制御する新規技術及びその利用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するイオン液体を溶液として用いた場合に、2本鎖核酸分子の塩基対の安定性が影響を受けるという新規知見を見出し、本知見を応用して本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は、以下の構成からなるものである。
【0011】
1.下記一般式(1)で示されるイオン液体を含む溶液中において、第1の核酸分子と第2の核酸分子とを接触させる工程を含み、前記第1の核酸分子と第2の核酸分子とがハイブリダイズした際に形成される2本鎖核酸分子に含まれるG−C塩基対を不安定化させる、及び/又は、A−T塩基対(あるいはA−U塩基対)を安定化させる方法。
【0012】
【化1】

【0013】
(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のヘテロアリール基、置換されていてもよい炭素数5〜10のヘテロアラルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアリーレン−アルキレン基を表し、nは0〜10の整数であり、Xはアニオンを表し、Yは水素原子又は水酸基を表す。)
2.鋳型となる核酸分子、核酸合成酵素、少なくとも一対のプライマー、又は1種類以上のヌクレオチドを少なくとも含む混合物を、前記一般式(1)で示されるイオン液体を含む溶液に溶解させ、ポリメラーゼ連鎖反応により核酸分子の増幅を行う方法。
【0014】
3.前記一般式(1)で示されるイオン液体を含む溶液中において、第1の核酸分子と、第2の核酸分子とを接触させる工程と、前記第1の核酸分子と第2の核酸分子とのハイブリダイズ状態を検出する工程と、を含む方法。
【0015】
4.前記第1の核酸分子と第2の核酸分子とは、ミスマッチ塩基対を形成するものである3に記載の方法。
【0016】
5.前記ミスマッチ塩基対が、G−G、G−A、G−T、G−U、C−C、C−A、C−T、C−U、及びA−Aからなる群より選択される少なくとも1つである4に記載の方法。
【0017】
6.前記一般式(1)で示されるイオン液体を含む溶液中に溶存している核酸分子を、ポリA配列とポリT配列のハイブリダイゼーションを利用して抽出する工程を有する、核酸分子を抽出する方法。
【0018】
7.ハイブリダイズした核酸分子に含まれるG−C塩基対を不安定化させる、及び/又は、A−T塩基対(あるいはA−U塩基対)を安定化させるための、前記核酸分子を溶解させる溶液として、前記一般式(1)で示されるイオン液体を使用する方法。
【0019】
8.前記式(1)中、R〜Rがメチル基であり、Xが二水素リン酸である1〜7のいずれかに記載の方法。
【0020】
9.前記イオン液体は、5〜80wt%の水を含有する水和イオン液体である1〜8のいずれかに記載の方法。
【0021】
10.1〜9のいずれかに記載の方法を実施するためのキットであって、前記一般式(1)で示されるイオン液体を備えるキット。
【0022】
11.前記一般式(1)で示されるイオン液体を含む、ハイブリダイズした核酸分子に含まれるG−C塩基対を不安定化させる、及び/又は、A−T塩基対(あるいはA−U塩基対)を安定化させるための組成物。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、核酸分子の塩基対の安定性を簡便かつ選択的に制御できるという効果を奏する。具体的には、2本鎖核酸分子に含まれるG−C塩基対を不安定化させることができる。また、他の作用効果として、A−T塩基対(又はA−U塩基対)を安定化させることができる。それゆえ、例えば、PCR法等の核酸増幅反応において、GCリッチ配列(G−C塩基対含量が多い配列)が含まれていても熱変性温度を低下させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】イオン液体中での核酸分子の塩基対の安定性を評価した結果を示す図である。
【図2】ミスマッチ塩基対に及ぼすイオン液体の影響を評価した結果を示す図である。
【図3】蛍光スペクトルによるミスマッチ塩基対の検出結果を示す図である。
【図4】イオン液体中から核酸の抽出効率を評価した結果を示す図である。
【図5】実験溶液の蒸発速度を評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上B以下」を意味する。また、本明細書において使用される場合、用語「核酸分子」は、「核酸」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。「核酸分子」は、DNA(例えば、cDNAもしくはゲノムDNA)、又はRNA(例えば、mRNA)を含む。なお、「核酸分子」(DNA又はRNA)は、コード鎖(センス鎖)であっても、非コード鎖(アンチセンス鎖)であってもよい。また、「核酸分子」は、生物由来のものであっても、化学的に合成したものであってもよい。
【0026】
<1.本発明において使用するイオン液体>
本発明において使用するイオン液体は、下記一般式(1)で示されるイオン液体である。
【0027】
【化2】

【0028】
(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のヘテロアリール基、置換されていてもよい炭素数5〜10のヘテロアラルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアリーレン−アルキレン基を表し、nは0〜10の整数であり、Xはアニオンを表し、Yは水素原子又は水酸基を表す。)
ここで、「イオン液体」とは、イオン性液体、常温溶融塩と交換可能に使用される。
【0029】
前記一般式(1)で示されるイオン液体におけるカチオン部は、アルキルアンモニウム又はアルキルアンモニウム誘導体からなる脂肪族4級アンモニウムカチオンである。アルキルアンモニウムの主鎖部分は、nが0〜10であればよいが、好ましくはnが1〜8であるもの、より好ましくはnが1〜5(n=1,2,3,4又は5)である。なお、nが1である場合、コリン又はコリン誘導体となる。
【0030】
また、Yは水素原子又は水酸基を表す。Yが水素原子である場合でも核酸分子と相互作用し、所望の効果が得られるが、水酸基がより好ましい。
【0031】
次に、R〜Rの置換基に関して述べる。「アルキル基」としては、例えば、直鎖、分枝鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。例えば、炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖状のアルキル基又は環状のアルキル基が挙げられるが、なかでも、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、さらに炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0032】
「アルケニル基」としては、例えば、直鎖又は分枝鎖状のアルケニル基が挙げられる。例えば、炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖状のアルケニル基が挙げられるが、なかでも、炭素数1〜8のアルケニル基が好ましく、さらに炭素数1〜5のアルケニル基が好ましい。具体的には、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ゲラニル基、ファルネシル基などが挙げられる。
【0033】
「アリール基」としては、例えば、炭素数6〜10のアリール基が挙げられ、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基などが挙げられる。
【0034】
「アラルキル基」としては、例えば、炭素数6〜10のアラルキル基が挙げられ、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基などが挙げられる。
【0035】
「ヘテロアリール基」としては、例えば環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1〜5個含有するヘテロアリール基などが挙げられ、具体的には、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサジアゾリル基、フラザニル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾ[b]チエニル基、インドリル基、イソインドリル基、1H−インダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、1H−ベンゾトリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、シンノリル基、キナゾリル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、プリニル基、プテリジニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、フェナジニル基、フェノキサチイニル基、チアントレニル基、インドリジニル基などが挙げられる。なかでも、フリル基、チエニル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、インドリル基、イソインドリル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリル基などが好ましい。
【0036】
「ヘテロアラルキル基」としては、例えば環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1〜5個含有するヘテロアラルキル基などが挙げられ、特に限定されない。
【0037】
「アルキレン基」としては、例えば、直鎖又は分枝鎖状のアルキレン基が挙げられる。例えば、炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖状のアルキレン基が挙げられるが、なかでも炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、さらに炭素数1〜3のアルキレン基が好ましい。具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などが挙げられる。
【0038】
「アリーレン基」としては、例えば、炭素数6〜10アリーレン基があげられ、具体的には、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、フェナントレニレン基などが挙げられる。
【0039】
「アリーレン−アルキレン基」における「アリーレン基」及び「アルキレン基」としては、上述したものと同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。
【0040】
なお、R〜Rの置換基の鎖長に関しても、炭素数が1〜5の範囲内であることが特に好ましい。
【0041】
「置換されていてもよい」置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、シクロオクチル基、トリフルオロメチル基などのアルキル基;ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ゲラニル基、ファルネシル基などのアルケニル基;エチニル基、プロピニル基、ブチニル基などのアルキニル基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基などのアリール基;メチルフェニル基、エチルフェニル基、s−ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、1−メチルナフチル基、2−メチルナフチル基、4−メチルナフチル基、1,6−ジメチルナフチル基、4−t−ブチルナフチル基などのアルキルアリール基;4−ヒドロキシフェニル基などのヒドロキシアリール基;メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、s−ブトキシフェニル基、t−ブトキシフェニル基、1−メトキシナフチル基、2−メトキシナフチル基、4−メトキシナフチル基、1,6−ジメトキシナフチル基、4−t−ブトキシナフチル基などのアルコキシアリール基;ピリジル基、キナゾリニル基、キノリル基、ピリミジニル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、テトラゾリル基、インドリル基、フェナントロリニル基などのヘテロ環基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;ヒドロキシ基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基などのアルコキシ基;フェノキシ基などのアリールオキシ基;メルカプト基;メチルチオ基などのアルキルチオ基;フェニルチオ基などのアリールチオ基;シアノ基;ニトロ基;アミノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、アセチルアミノ基などの置換アミノ基;t−ブチルカルバメート基、メチルカルバメート基などのカルバメート基;アミド基;ベンゼンスルホンアミド基、メンタンスルホンアミド基などのスルホンアミド基;イミノ基;フタルイミド基などのイミド基;グアニジノ基;ホルミル基;カルボニル基;アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基などのアシル基;カルボキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基などのアリールオキシカルボニル基、アルキルアリール基、アルコキシアリール基などが挙げられる。置換基の数は、例えば、1〜最大置換可能な数であり、好ましくは1〜2個である。
【0042】
一般的に、カチオンのイオン半径が大きいほど常温で液体となりやすい傾向がある。取り扱う核酸分子との相性、溶解性やイオン液体の入手容易性等の観点から、炭素数1〜5のアルキル基が好ましいといえる。
【0043】
前記一般式(1)において、“X”で示される対アニオン部は、一般的なイオン液体に使用されるアニオンであればよく特に限定されない。また、アニオンの価数も特に限定されず、上記カチオン部と組み合わせてイオン液体を形成するものであればよいが、価数1〜3のアニオンが好ましい。例えば、一価のアニオンとしては、HPO、BF、PF、AsF、SbF、AlCl、HSO、ClO、CHSO、CFSO、CFCO、(CFSO、CCO、CHCO、HCO、Cl、Br、I等の各種アニオンを用いることができる。より好ましくは、二水素リン酸アニオン、リン酸アニオン、カルボン酸アニオン(例えば、マレイン酸アニオン、コハク酸アニオン、プロピオン酸アニオン、グリコール酸アニオン、安息香酸アニオン等)、ハロゲン化イオン等を例示できる。なお、イオン液体とならない場合もあるが、テトラエチルアンモニウムクロライド等のアルキルアンモニウムイオンを含む塩も好ましく使用できる場合がある。
【0044】
前記一般式(1)で示されるイオン液体は、例えば、コリン又はコリン誘導体のヨウ化物もしくは臭化物の対アニオンを、イオン交換樹脂で水酸化物に変換後、酸で中和し、その後、真空状態で乾燥することによって容易に製造できる。なお、イオン液体のうち、カチオン部におけるR〜Rがメチル基であり、アニオン部が二水素リン酸であるイオン液体は市販されており、入手が容易である点で好ましい。
【0045】
また本発明において、イオン液体は、核酸分子の溶解性、核酸合成酵素等のタンパク質の機能維持、融点調整等の観点から、5〜80wt%、好ましくは10〜60wt%、より好ましくは20〜50wt%の水を含有する水和イオン液体であることが好ましい。
【0046】
また、本発明において、前記イオン液体を含む溶液としては、核酸分子を溶解させ得ることが好ましい。
【0047】
また、イオン液体は、蒸気圧が極めて低いか、まったく無いため、高温・減圧下でも蒸発しない。このため、前記イオン液体は、DNA,RNA等の核酸分子を容易に溶解し得るだけでなく、核酸分子をイオン液体中に溶解させた状態で長期間保存することができる。核酸分子を長期間イオン液体中で保存できる理由としては、(1)高塩濃度であるため、核酸を分解する酵素(ヌクレアーゼ)が失活する、(2)非特異的な核酸(特にRNA)の加水分解には、ある程度の水が必要。イオン液体は水が全くないか、極めて水が少ない溶液状態であるので、非特異的な加水分解が起こりにくい、の2つを挙げることができる。すなわち、本発明に使用し得る前記イオン液体は、高イオン密度であり、また水と同様に極性が高い液体であるため、多数の親水性基を有するDNA,RNA等の核酸分子を溶解することができる。
【0048】
また、前記イオン液体は、極めて高いイオン強度を有しており、この液体中では核酸分解酵素が失活するためか、DNA,RNAをイオン液体中に溶解させることで、長期間安定的な保存が可能となる。しかも、イオン液体は、蒸気圧が極めて低いか、全く無いため、高温・減圧下でも蒸発しない。このため、保存に際して容器等に工夫をこらさなくとも、長期にわたり、イオン液体の基本性能を維持することができ、この点からしても長期保存に最適である。
【0049】
さらに、前記イオン液体は、広い温度域で液状を示す物質であるため、核酸分子の反応溶液としてイオン液体を使用した場合、従来の水と異なり、広い温度域での反応が可能となるだけでなく、水中で取り扱いが不可能な試薬を用いた反応を行うことも可能となるものである。
【0050】
<2.本発明に係るイオン液体の利用>
(2−1.G−C塩基対を不安定化、及び/又は、A−T塩基対等を安定化する方法)
本発明に係る方法は、前記一般式(1)で示されるイオン液体中において、第1の核酸分子と第2の核酸分子を接触させる工程を含み、前記第1の核酸分子と第2の核酸分子とがハイブリダイズした際に形成される2本鎖核酸分子に含まれるG−C塩基対を不安定化させる、及び/又は、A−T塩基対(あるいはA−U塩基対)を安定化させる方法であればよく、その他の具体的な工程、条件、材料、使用機器等については特に限定されるものではない。なお、「G」はグアニン、「C」はシトシン、「A」はアデニン、「T」はチミン、「U」はウラシルを示す。
【0051】
本方法は、ハイブリダイズした2本鎖核酸分子に含まれるG−C塩基対を不安定化させる、及び/又は、A−T塩基対(あるいはA−U塩基対)を安定化させるための、前記核酸分子を溶解させる溶液として、前記一般式(1)で示されるイオン液体を使用する方法と表現することもできる。
【0052】
なお、本明細書中では、理解の容易のために2本鎖核酸分子の塩基対についてもっぱら説明するが、核酸分子の塩基長が十分長い場合は、1本鎖であっても分子内で2本鎖となる場合がある。本発明は、かかる1本鎖核酸分子中に形成される塩基対、また1本鎖が折れ畳まって3重鎖を形成する際のワトソン・クリック塩基対及びフーグスティーン塩基対のミスマッチについても適用可能であることはいうまでもない。この場合、例えば、核酸分子中に存在するG−C塩基対を不安定化させる、及び/又は、A−T塩基対(あるいはA−U塩基対)を安定化させる方法と換言できる。
【0053】
前記方法は、上述したイオン液体を含む溶液に核酸分子を溶解させてなるものである。この場合、イオン液体中における核酸分子の含有量としては、使用するイオン液体の種類によって溶解度が変動するものであるため、一概には規定できないが、通常10wt%以下、好ましくは0.0001〜5.0wt%以下、より好ましくは0.001〜3.0wt%、さらに好ましくは0.001〜1.0wt%、より好ましくは0.001〜0.5wt%である。
【0054】
ここで、「イオン液体を含む溶液」とは、本発明の作用効果を阻害しない範囲内で、イオン液体以外の他の成分を含む溶液を意図しているが、イオン液体(又は水和イオン液体)のみからなる溶液であることが好ましい。
【0055】
イオン液体を含む溶液に、核酸分子を溶解させる手法としては、特に限定されるものではないが、イオン液体中に所定量の核酸分子を添加した後、攪拌する方法を挙げることができる。なお、添加する核酸量が増加し、溶解し難い場合は、70℃〜120℃程度に加熱して核酸分子を溶解させる方法を採用してもよい。核酸分子がイオン液体に溶解したか否かは、核酸分子を添加した時点では白濁状の溶液が、加熱後に均一透明になることから判断できる。
【0056】
第1の核酸分子と第2の核酸分子とは、それぞれ相補的な配列を有し、ハイブリダイズし得るものであるが、完全な相補配列である必要はなく、例えば、ミスマッチが形成される配列であってもよい。ここで、「ミスマッチ」とは、1本鎖の核酸分子同士がハイブリダイズして2本鎖の核酸分子を形成した場合に、正常な塩基対、つまりG−C塩基対又はA−T塩基対(あるいはA−U塩基対)を形成することができない塩基の対を意図する。なお、「ミスマッチ塩基対」とも称する場合もある。
【0057】
第1の核酸分子と第2の核酸分子の塩基長は特に限定されるものではないが、5〜50塩基長程度のプライマーやプローブ、数百〜数千塩基長の遺伝子、数万塩基長のゲノム等、その目的に応じて、適宜設定可能である。
【0058】
前記イオン液体を含む溶液中では、2本鎖核酸分子におけるG−C塩基対が不安定化、及び/又は、A−T塩基対(あるいはA−U塩基対)が安定化する。ここで、「不安定化/安定化」とは、熱安定性を意図している。換言すれば、2本鎖の核酸分子において、G−C塩基対に由来する融解温度を降下させる、及び/又はA−T塩基対(あるいはA−U塩基対)に由来する融解温度を上昇させるともいえる。
【0059】
核酸分子の塩基対の不安定化/安定化を評価する方法として、例えば、後述する実施例に示すように、基準溶液(例えば、4M NaCl水溶液)中の2本鎖の核酸分子における融解温度(Tm)と比較する方法を挙げることができる。具体的には、同一の2本鎖の核酸分子に関して、(i) 4M NaCl水溶液中でのTmと、(ii) イオン溶液中でのTmと、をそれぞれ測定し、核酸分子の塩基配列と2つのTmの差分とを比較検討することで簡便に評価できる。
【0060】
ここで、2本鎖の核酸分子が熱作用によって1本鎖となったどうかについては、核酸分子の溶液中の紫外線吸収スペクトルを測定することによって簡易に判断できる。溶液中において核酸分子は2本鎖を形成することで紫外可視吸収スペクトルにおける極大吸収波長(おおよそ260nm付近)の吸光度の減少(「淡色効果」という)が確認される。この淡色効果の消失を確認することによって、核酸分子が2本鎖から1本鎖になった(熱変性した)ことを判断することができる。それゆえ、温度(横軸)−吸光度(縦軸)からなるシグモイド状の曲線(融解曲線)における変曲点(融解温度)の変化を確認することによって、核酸分子の融解温度の変化を確認することができる。かかる手法は当業者によく知られたものである。
【0061】
前述したように、2本鎖の核酸分子中のG−C塩基対含量が増大するとその熱安定性は高くなる。このため、従前、G−C塩基対含量が多い2本鎖核酸分子を1本鎖へ解離するためには高い変性温度まで加熱する必要があった。しかし、本発明に係る方法によれば、G−C塩基対の熱安定性を低下させることができるため、変性温度を下げることができる。それゆえ、例えば、G−C塩基対含量が高いDNAをPCR法によって増幅する場合であっても、熱変性温度を高くする必要がなくなり、DNAポリメラーゼ等の酵素の失活を防止できる。
【0062】
また、本発明に係る方法によれば、A−T塩基対又はA−U塩基対の熱安定性を向上させることができる。これまで、G−C塩基対に比べてA−T塩基対の熱安定性は低かった。このため、例えば、PCR法におけるプライマーを設計するにあたり、鋳型核酸分子とプライマーとの結合安定性を確保するため、G−C塩基対含量をある程度導入する必要があり、プライマー設計の制限となっていた。しかし、本発明によれば、A−T塩基対等の熱安定性を向上させ得るため、プライマー設計にあたり無理にGC配列を導入する必要がなく、A−T塩基対含量を高めることができる。また、G−C塩基対含量が増えれば、GC配列のみで異常な構造を形成する場合があるが、かかる問題点も解決できる。
【0063】
また、DNAポリメラーゼ等の核酸合成酵素はATリッチの領域(A−T塩基対含量が多い領域)を認識する。このため、本発明により、プライマーのA−T塩基対含量を高めることにより、核酸合成酵素の認識効率を高め、結果としてPCRの増幅効率を向上させることも可能となる。
【0064】
なお、前述したPCR法における作用効果は、PCR法を利用した核酸増幅反応、つまりmRNAからcDNAを合成する逆転転写反応、核酸分子の塩基配列決定時の核酸合成反応にも同様のことがいえる。よって、これら逆転写反応やシーケンシングの効率も向上させ得る。特に逆転転写反応の場合は、mRNAのポリA部分に20塩基程度のTの連配列をハイブリダイズさせ、酵素はこのA−T塩基対から成る2重鎖を認識し、逆転写を開始するため、より本発明が効果を発揮すると考えられる。
【0065】
さらに、2本鎖の核酸分子は、上述したように、ミスマッチ塩基対を形成する場合がある。ここで、疾患の原因となるG−T、G−A塩基対(ミスマッチ塩基対)はA−T塩基対と同程度の熱安定性を有することから、遺伝子中からこれらのミスマッチを検出することは困難であった。しかし、本発明を用いることにより、G−T、G−A塩基対等のミスマッチ塩基対も精度よく検出可能である。
【0066】
加えて、溶液中から核酸を精製したり、チップ上に機能性分子を固定化したりする際には、20塩基長程度の1本鎖核酸のポリAとポリTとをハイブリダイゼーションさせる手法が用いられている。例えば、細胞抽出液からのmRNAの抽出も、mRNA末端のポリAとポリTのハイブリダイゼーションを利用して行われる。本発明によれば、A−T塩基対を安定化させ得るため、上記各種方法の効率を向上させることができる。その他にも、ATリッチ配列(例えば、アルツハイマー病の原因となる遺伝子)の高感度な検出も可能となる。
【0067】
以上にように、本発明は、種々の応用が可能である。以下に、本発明に含まれ得る利用技術をさらに詳細に説明する。
【0068】
(2−2.PCR法により核酸分子の増幅を行う方法)
前述したように、前記イオン液体はPCR法において利用可能である。すなわち、本発明には、鋳型となる核酸分子、核酸合成酵素、少なくとも一対のプライマー、又は1種類以上のヌクレオチドを少なくとも含む混合物を、前記一般式(1)で示されるイオン液体を含む溶液に溶解させ、PCRにより核酸分子の増幅を行う方法も含まれる。本方法に関しては、上記(2−1)の説明を適宜援用し、異なる部分のみここで説明する。
【0069】
本方法は、要するに前記一般式(1)で示されるイオン液体を含む溶液中においてPCR法を行い、核酸分子の増幅を行う方法であればよく、その他の具体的な工程、材料、条件、機器等は特に限定されるものではない。例えば、前記イオン液体を含む溶液に、鋳型となる核酸分子、核酸合成酵素、少なくとも1対のプライマー、又は1種類以上のヌクレオチドを少なくとも含む混合物を溶解させ、これをPCR用の反応溶液として、熱変性→アニーリング→伸長のサーマルサイクルを繰り返し実施すればよい。より具体的に例示すると、(i) 一般的には約90℃〜100℃における鋳型DNAの熱変性、(ii) 約37℃〜75℃における鋳型DNAとプライマーとのアニーリング、及び(iii) 約55℃〜80℃におけるプライマーの伸長反応からなる反応サイクルを繰り返すことで、プライマーに区切られた領域のDNAを高度に増幅することができる。PCR法に関しては、例えば、Nature, 324巻〔6093〕, 1986年, p.13-19等に記載されており、当業者に周知技術である。
【0070】
上述したとおり、従来、G−C塩基対含量が高い核酸分子をPCR法によって増幅することは困難な場合が多々見られた。特に鋳型DNAとして用いられるゲノムDNA上にはG−C塩基対含量が高い領域が多く、かかる領域を増幅することは困難であった。しかし、本発明に係る方法によれば、G−C塩基対を不安定化させ得るため、従前のPCR用の反応溶液に比べて、熱変性温度を低く設定できる。このため、前述の技術的課題を解決できる。また、本発明に係る方法では、溶媒として前記イオン液体を用いるだけでよいため、DNAの融解温度を低下させるための添加剤(ベタイン等)に比べて、添加剤の濃度等の調整が不要であり、より簡便である点で優れる。さらに、従来、添加剤の問題点であったA−T塩基対の不安定化を回避できるため、酵素の配列認識能を悪化させず、反応の効率低下をも防止できる。
【0071】
なお、本発明に係る方法は、逆転転写反応、塩基配列決定時の核酸合成反応、又はRNAを合成するための転写反応等の核酸増幅反応に利用可能である。
【0072】
(2−3.核酸分子のハイブリダイズ状態を検出する方法)
本発明に係る方法として、前記一般式(1)で示されるイオン液体を含む溶液中において、第1の核酸分子と、第2の核酸分子とを接触させる工程と、前記第1の核酸分子と第2の核酸分子とのハイブリダイズ状態を検出する工程と、を含む方法も含まれる。
【0073】
本方法は、要するに前記一般式(1)で示されるイオン液体を含む溶液中において、第1の核酸分子と第2の核酸分子とのハイブリダイズ状態を検出する方法である。すなわち、前記一般式(1)で示されるイオン液体を含む溶液中において、第1の核酸分子(プローブ核酸分子)を用いて、第2の核酸分子(ターゲット核酸分子)を検出する方法とも換言できる。
【0074】
第1の核酸分子及び/又は第2の核酸分子は、担体に固定化されていてもよいし、溶液中に溶解あるいは分散している状態であってもよい。核酸分子が担体に固定化された態様であれば、前記イオン液体を含む溶液中に、ターゲットの核酸分子を検出するためのプローブ核酸分子(DNA又はRNA)を固定化したチップを入れ、マイクロアレイ法のようにハイスループットに疾患遺伝子等を検出できるシステムを簡易に構築できる。すなわち、前記イオン液体を含む溶液と、ターゲットの核酸分子を検出するためのプローブ核酸分子を固定化したチップと、を備えるデバイスであって、前記溶液中に、前記チップが浸漬しているデバイスも本発明に含まれ得る。
【0075】
ここで、「第1の核酸分子と第2の核酸分子とのハイブリダイズ状態を検出する」とは、第1の核酸分子と第2の核酸分子とがハイブリダイズしているか否か、及び/又は、ハイブリダイズしている場合は、形成された2本鎖の核酸分子についてどの程度の熱安定性があるかを検出することを意図している。つまり、第1の核酸分子と第2の核酸分子とから形成された2本鎖の核酸分子の融解温度等を把握する態様も包含される。「第1の核酸分子と第2の核酸分子とのハイブリダイズ状態を検出する」ための具体的な手法としては、例えば、上述した核酸分子の塩基対の不安定化/安定化を評価する方法を好適に利用できる。
【0076】
これにより、例えば、第1の核酸分子と第2の核酸分子とが、完全な相補的配列でなく、2本鎖を形成した際にミスマッチ塩基対が存在する場合、かかるミスマッチ塩基対を検出することも可能となる。すなわち、本発明には、前記第1の核酸分子と第2の核酸分子とは、ミスマッチ塩基対を形成するものであってもよい。かかるミスマッチ塩基対としては、例えば、G−G、G−A、G−T、G−U、C−C、C−A、C−T、C−U、及びA−Aからなる群より選択される少なくとも1つを挙げることができる。
【0077】
上述しているように、前記イオン液体を含む溶液中では、G−C塩基対を不安定化することができる。このため、これまでその安定性ゆえに検出が難しかったG−TミスマッチやG−Aミスマッチ等の安定なミスマッチ塩基対についても、高感度かつ簡便な手法で検出することができる。これにより、例えば、疾患遺伝子等において、ミスマッチ塩基対を含む配列を検出することが可能となる。
【0078】
また、前記イオン液体を含む溶液中では、A−T塩基対あるいはA−U塩基対を安定化することができる。このため、ATリッチな配列を含む遺伝子やmRNAを選択するようなシステムを設計することができ、検出能を向上させ得る。
【0079】
さらに、プローブとして用いる核酸分子は長期間の保存が可能であり、また繰り返し使用できるため、工業的観点からだけでなく環境的観点からも有用である。また、本イオン液体を含む溶液は、検出した遺伝子の保存液としても有用である。
【0080】
以上のように、本発明によれば、疾患の早期発見を行う診断技術に有用なDNAセンサー、医療分野で注目されているDNAハイドロゲル、ナノテクノロジーに活用できる分子スイッチやDNAワイヤー等の核酸マテリアルの構築においても適用できる。また、かかる核酸マテリアルに利用される核酸分子(例えば、センサーに利用されるプローブ核酸等)を長期間保存できるため、リサイクル可能である。
【0081】
また、本発明を利用すれば、繰り返し核酸マテリアルを使用できる点から、環境に優しい。
【0082】
(2−4.その他の方法)
上述したように、核酸分子を溶液から抽出する際に、ポリAとポリTのハイブリダイゼーションを利用することが知られている。この手法に本発明を利用すれば、核酸分子の抽出を効率的に行うことができる。すなわち、本発明には、前記一般式(1)で示されるイオン液体を含む溶液中に溶存している核酸分子を、ポリA配列とポリT配列のハイブリダイゼーションを利用して抽出する工程を有する、核酸分子を抽出する方法も含まれる。例えば、ポリA領域を有する核酸分子(ターゲット)を、ポリT領域を有する核酸分子を用いて抽出する方法を挙げることができる。ポリT領域を有する核酸分子を磁気粒子等に固定化しておけば、磁石を用いて簡易にターゲット核酸分子を分離・抽出することができる。なお、ポリA配列とポリT配列のハイブリダイゼーションを利用して核酸分子を抽出する技術は、当業者にとって周知であり、磁気粒子への固定化する態様に限られず、本発明の技術思想を体現できる範囲で、当業者に知られた各種の抽出技術を適宜利用可能である。
【0083】
「ポリA」や「ポリT」の塩基長についても特に限定されず、例えば5〜30塩基長、好ましくは20塩基長を例示できる。もちろんこれ以上長くても構わない。
【0084】
また、本発明によれば、機能性分子を担体に固定化する際に利用されるポリAとポリTの連結を安定化させることもできる。このため、本発明には、機能性分子の担持チップ(例えば、センサーチップ)において、ポリA(あるいはポリT)を有する核酸分子を備える機能性高分子を、ポリT(あるいはポリA)を有する核酸分子を備える担体に固定化する方法/安定化する方法も含まれ得る。
【0085】
また、Gは、AやT(U)ともある程度安定な塩基対を形成するので、核酸構造のミスフォールを引き起こしやすい。しかし、本発明によれば、G−AやG−T等のミスマッチ塩基対を不安定化させることができる。このため、GCリッチな核酸分子であってもミスフォールディングを防止する方法も本発明に含まれ得る。
【0086】
(2−5.キット、組成物、剤等)
本発明には、上述したいずれかの方法を実施するためのキットも含まれる。かかるキットには、少なくとも前記一般式(1)で示されるイオン液体を備えていればよく、その他の具体的な構成については限定されない。前記イオン液体以外のキットの構成物としては、例えば、イオン液体を水和させるための水、イオン液体を入れるための容器・チューブ等のほか、PCR用の核酸合成酵素やヌクレオチド等を挙げることができる。また、核酸分子が固定化された担体(例えば、DNAチップ等)が含まれていてもよい。
【0087】
さらに、他の態様として、前記一般式(1)で示されるイオン液体を含む、2本鎖核酸分子に含まれるG−C塩基対を不安定化する、及び/又は、A−T塩基対(あるいはA−U塩基対)を安定化させるための組成物も本発明に含まれ得る。かかる組成物には、前記イオン液体が含まれていればよく、その他の組成については特に限定されない。なお、例示すれば、前記イオン液体は、核酸分子の溶解性、核酸合成酵素等のタンパク質の機能維持、融点調整等の観点から、5〜80wt%、好ましくは10〜60wt%、より好ましくは20〜50wt%の水を含有する水和イオン液体であることが好ましい。その他、使用予定の核酸分子を予め溶解させておいても構わない。
【0088】
また、上述した各種方法は、全て「〜剤(組成物)」の発明として把握することもできる。例えば、(i) 「前記イオン液体中でPCRにより核酸分子の増幅を行う方法」であれば、前記イオン液体を含む、PCRにより核酸分子の増幅の効率を向上させる添加剤(組成物)、(ii) 「核酸分子のハイブリダイズ状態を検出する方法」であれば、前記イオン液体を含む、核酸分子の検出効率を向上させる剤(ex.核酸抽出キットの活性化剤)、(iii) 「核酸分子を抽出する方法」であれば、前記イオン液体を含む、核酸分子をポリA配列とポリT配列のハイブリダイゼーションを利用して抽出するための薬剤(組成物)、(iv) 「核酸のミスフォールディングを防止する方法」であれば、前記イオン液体を含む、核酸のミスフォールディング防止剤、といった具合である。
【0089】
本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、明細書に記載した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0090】
(1)イオン液体中でのDNA塩基対の安定性の評価
イオン液体中でのDNA塩基対の安定性の評価を行った。具体的には、イオン液体(4M リン酸二水素コリンの水和イオン液体)と、標準水溶液として4M NaCl水溶液とにおいて、配列(G−C塩基対含量)の異なる2種類のDNA2本鎖(12塩基対)について、UV融解挙動による熱安定性を評価した。なお、4M リン酸二水素コリンの水和イオン液体は、リン酸二水素コリンに対して、20wt%の水を加えて調製した。また、使用したDNA2本鎖を以下に示す。
<AT2本鎖>
5’→3’:AGAAGAAAAAAA(配列番号1)
3’→5’:TCTTCTTTTTTT(配列番号2)
<GC2本鎖>
5’→3’:CGGCACCAGCGC(配列番号3)
3’→5’:GCCGTGGTCGCG(配列番号4)
結果を図1に示す。融解曲線が高温で遷移するほどDNA2本鎖の熱安定性が高いと評価できる。図1(b)の左側に示すように、標準水溶液中では、AT2本鎖に比べて、GC2本鎖の方が高い熱安定性を示す。しかし、イオン液体中では、AT2本鎖が、GC2本鎖に比べて、より高い熱安定性を示した。より詳細には、イオン液体中における5μM のGC2本鎖の融解温度は、標準水溶液中と比べて7.7℃不安定化したが、5μM AT2本鎖は、23.7℃安定化した。よって、イオン液体中での核酸分子の挙動は、NaCl水溶液と全く異なることが示された。
【0091】
(2)ミスマッチ塩基対に及ぼすイオン液体の影響の評価
モレキュラービーコン法を用いて、ミスマッチ塩基対に及ぼすイオン液体の影響の評価した。モレキュラービーコン法に用いるプローブDNAとして、両末端に蛍光剤と消光剤とを修飾付加し、ターゲットDNAが存在しない場合は、プローブDNAはヘアピン型構造を形成しており蛍光を発しないが、ターゲットDNAが共存する場合、プローブDNAとターゲットDNAとが2本鎖を形成し、蛍光を発するように設計した。具体的なプローブDNAとターゲットDNAの配列を以下に示す。
<プローブDNA>
CGAATCGCCAAAAAAAAAAACCCGATTCG(配列番号5)
<ターゲットDNA>
・ターゲットA:GGTTTTTATTTTTGG(配列番号6)
・ターゲットC:GGTTTTTCTTTTTGG(配列番号7)
・ターゲットG:GGTTTTTGTTTTTGG(配列番号8)
・ターゲットT:GGTTTTTTTTTTTGG(配列番号9)
ターゲットDNAは、「ターゲットT」がフルマッチとなるように、これ以外はミスマッチとなるように設計した。
【0092】
標準水溶液、イオン液体については、上記(1)と同じものを用い、プローブDNAとターゲットDNAとの2本鎖について、UV融解挙動による熱安定性を評価した。
【0093】
結果を図2に示す。図2(b)に示すように、標準水溶液中では、フルマッチの2本鎖DNAとミスマッチの2本鎖DNAとの熱安定性に大きな差異は認められなかったが、イオン液体中では、フルマッチの2本鎖DNAの熱安定性が向上した。これは、A−T塩基対の安定性の向上に起因するものと推測される。
【0094】
次に、イオン液体中において、蛍光スペクトルによるミスマッチ塩基対の検出を評価した。結果を図3に示す。図3(a)に示すように、イオン液体中では、フルマッチの2本鎖DNAの蛍光強度が、ミスマッチ2本鎖DNAの蛍光強度に比べて強く検出された。また、図3(b)に示すように、イオン液体中の試料DNAに対して紫外光を照射した場合、ミスマッチ2本鎖DNA(Target G)は蛍光が認められないが、フルマッチ2本鎖DNA(Target T)は強い蛍光が確認できた。
【0095】
よって、イオン液体中では、UV融解挙動によっても、またモレキュラービーコン法によっても、ミスマッチを精度よく検出できることがわかった。
【0096】
(3)イオン液体中における核酸分子の抽出
イオン液体中における核酸分子の抽出を評価した。ターゲットDNAとして、アデニン(A)の連続配列(poly A tail模倣配列(アデニンが10塩基以上連続しているDNA鎖))を有し、3’末端に蛍光物質を修飾したものを設計した。また、チミンを20個連続させたプローブ配列(dT20)を付加した磁気ビーズを調製した。実験の具体的な手法としては、ターゲットDNAが溶けたイオン溶液又は標準水溶液を調製し、これらの溶液に磁気ビーズを混ぜ、チューブ外側から磁石を近づけ、溶液から磁気ビーズのみを取り出した(図4の左側参照)。なお、標準水溶液及びイオン液体は、上記(1)と同様のものを用いた。
【0097】
結果を図4に示す。磁気ビーズなし及び標準水溶液では、蛍光が観察され、溶液中にターゲットDNAが残存していた。一方、イオン液体では、蛍光が観察されず、ターゲットDNAが溶液中に溶存しておらず全て磁気ビーズに吸着されたことがわかる。よって、イオン液体中では、ポリA−ポリTのハイブリダイズを利用した、ターゲットDNAの抽出効率を向上させ得ることが明らかとなった。
【0098】
なお、一般的なmRNAの抽出法で使用されるのはmRNAのポリA連続配列にDNAのポリT配列をハイブリダイズさせるものであるが、本実施例では、実験の便宜上、DNAのポリAを使っているが、RNAでも同様の結果が得られることを付言しておく。
【0099】
(4)実験溶液の蒸発速度の評価
イオン液体と標準水溶液とで、実験溶液の蒸発速度を評価した。チューブに10μlの溶液を分取し、フタをせず、60℃にて放置した。時間経過に伴う全容量を測定した。なお、標準水溶液としては、高温での反応が必要であるPCR反応で用いる溶液を使用した。具体的な組成は、東洋紡績社製の「KOD−Plus−」の付属溶液を使用した。イオン液体は、上記(1)と同様のものを用いた。
【0100】
結果を図5に示す。同図に示すように、標準水溶液は実験開始後30分で全ての溶液が蒸発したが、イオン液体では60分経過後もほとんど液量が変化しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、核酸分子の塩基対の安定性を選択的に制御可能である。それゆえ、ライフサイエンス、医療、農林業、食品等といった核酸分子を利用する種々の産業において利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるイオン液体を含む溶液中において、第1の核酸分子と第2の核酸分子とを接触させる工程を含み、
前記第1の核酸分子と第2の核酸分子とがハイブリダイズした際に形成される2本鎖核酸分子に含まれるG−C塩基対を不安定化させる、及び/又は、A−T塩基対(あるいはA−U塩基対)を安定化させる方法。
【化1】

(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のヘテロアリール基、置換されていてもよい炭素数5〜10のヘテロアラルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアリーレン−アルキレン基を表し、nは0〜10の整数であり、Xはアニオンを表し、Yは水素原子又は水酸基を表す。)
【請求項2】
鋳型となる核酸分子、核酸合成酵素、少なくとも一対のプライマー、又は1種類以上のヌクレオチドを少なくとも含む混合物を、下記一般式(1)で示されるイオン液体を含む溶液に溶解させ、ポリメラーゼ連鎖反応により核酸分子の増幅を行う方法。
【化2】

(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のヘテロアリール基、置換されていてもよい炭素数5〜10のヘテロアラルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアリーレン−アルキレン基を表し、nは0〜10の整数であり、Xはアニオンを表し、Yは水素原子又は水酸基を表す。)
【請求項3】
下記一般式(1)で示されるイオン液体を含む溶液中において、第1の核酸分子と、第2の核酸分子とを接触させる工程と、
前記第1の核酸分子と第2の核酸分子とのハイブリダイズ状態を検出する工程と、を含む方法。
【化3】

(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のヘテロアリール基、置換されていてもよい炭素数5〜10のヘテロアラルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアリーレン−アルキレン基を表し、nは0〜10の整数であり、Xはアニオンを表し、Yは水素原子又は水酸基を表す。)
【請求項4】
前記第1の核酸分子と第2の核酸分子とは、ミスマッチ塩基対を形成するものである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ミスマッチ塩基対が、G−G、G−A、G−T、G−U、C−C、C−A、C−T、C−U、及びA−Aからなる群より選択される少なくとも1つである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
下記一般式(1)で示されるイオン液体を含む溶液中に溶存している核酸分子を、ポリA配列とポリT配列のハイブリダイゼーションを利用して抽出する工程を有する、核酸分子を抽出する方法。
【化4】

(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のヘテロアリール基、置換されていてもよい炭素数5〜10のヘテロアラルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアリーレン−アルキレン基を表し、nは0〜10の整数であり、Xはアニオンを表し、Yは水素原子又は水酸基を表す。)
【請求項7】
ハイブリダイズした核酸分子に含まれるG−C塩基対を不安定化させる、及び/又は、A−T塩基対(あるいはA−U塩基対)を安定化させるための、前記核酸分子を溶解させる溶液として、下記一般式(1)で示されるイオン液体を使用する方法。
【化5】

(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のヘテロアリール基、置換されていてもよい炭素数5〜10のヘテロアラルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアリーレン−アルキレン基を表し、nは0〜10の整数であり、Xはアニオンを表し、Yは水素原子又は水酸基を表す。)
【請求項8】
前記式(1)中、R〜Rがメチル基であり、Xが二水素リン酸である請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記イオン液体は、5〜80wt%の水を含有する水和イオン液体である請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法を実施するためのキットであって、下記一般式(1)で示されるイオン液体を備えるキット。
【化6】

(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のヘテロアリール基、置換されていてもよい炭素数5〜10のヘテロアラルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアリーレン−アルキレン基を表し、nは0〜10の整数であり、Xはアニオンを表し、Yは水素原子又は水酸基を表す。)
【請求項11】
下記一般式(1)で示されるイオン液体を含む、ハイブリダイズした核酸分子に含まれるG−C塩基対を不安定化させる、及び/又は、A−T塩基対(あるいはA−U塩基対)を安定化させるための組成物。
【化7】

(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のヘテロアリール基、置換されていてもよい炭素数5〜10のヘテロアラルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアリーレン−アルキレン基を表し、nは0〜10の整数であり、Xはアニオンを表し、Yは水素原子又は水酸基を表す。)



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図5】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−244916(P2012−244916A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117381(P2011−117381)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り ・刊行物名 日本化学会 第91春季年会(2011年) 講演予稿集 第III分冊 発行日 平成23年3月11日 発行所 社団法人 日本化学会 ・刊行物名 日本化学会 第91春季年会(2011年) 講演予稿集(DVD−ROM) 発行日 平成23年3月11日 発行所 社団法人 日本化学会 ・ホームページのアドレス http://www1.csj.jp/nenkai/91haru/ 掲載日 平成23年3月11日
【出願人】(397022911)学校法人甲南学園 (18)
【Fターム(参考)】