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核酸分析デバイス及びそれを用いた核酸分析装置
説明

核酸分析デバイス及びそれを用いた核酸分析装置

【課題】トンネル電流方式固体ナノポアによる核酸分析において、高い識別能で核酸の塩基配列を高精度に読み取ることが可能な核酸分析デバイス及びそれを用いた核酸分析装置を提供する。
【解決手段】電流測定により試料中の核酸を分析する核酸分析デバイスにおいて、トンネル電流方式固体ナノポアの電極表面に核酸塩基分子や有機化合物等を化学修飾することにより、核酸を構成する4種の塩基のうち少なくとも1種に対する識別能を向上させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノサイズのポアが設けられた薄膜によりDNA、RNAなどの核酸の配列解析等を行うデバイス及び分析装置に関する。特にポアに化学修飾分子付電極を有するナノポアを用いた核酸分析デバイス及びそれを用いた分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
次々世代DNAシーケンサを実現するアプローチとしてナノポアを用いる方式が注目を集めている。DNAを標識することなく、換言すると酵素や蛍光色素などの試薬を用いずに解析できることがナノポア方式の大きな特長と考えられている。ナノポアはその形成法により大別して2種類に分類される。その一つはナノサイズの孔(以下「ナノポア」という)を形成するチャンネルタンパク質を2分子膜に埋設したいわゆるバイオナノポアであり、もう一つは半導体材料に微細加工を施してナノポアを形成するいわゆる固体ナノポアである。
【0003】
また、このようなナノポアを用いるDNAの解析法として、現在2種類の方法が提案されている。第1の手法は、封鎖電流方式である。すなわち、ナノポアが形成された薄膜の両側に液槽を設け、それぞれの液槽に電解質溶液と電極を設け、電極間に電圧をかけると、ナノポアを通してイオン電流が流れる。イオン電流の大きさは一次近似としてナノポアの断面積に比例する。DNAがナノポアを通過すると、DNAがナノポアを封鎖し、有効断面積が減少するため、イオン電流が減少する。この減少量を封鎖電流と呼ぶ。封鎖電流の大きさを元に、DNAの1本鎖と2本鎖との差異が識別できる。またバイオポアの一形態において、封鎖電流の大きさからDNAの塩基の種類が判別可能と報告されている(非特許文献1)。
【0004】
ただし、バイオポアに用いる2分子膜は有機低分子が弱い力で集合して形成される繊細な薄膜であり、機械的な安定性に課題があると考えられる。またチャンネルタンパク質が2分子膜へ組み込まれる工程が自然現象に依存するため、チャンネルの数の制御や再現性に課題がある。一方、固体ナノポアは薄膜として半導体基板などを用いるため、バイオポアより構造の安定性の点で有利と考えられる。またナノポアを機械的に形成するため、工業的な生産が可能という利点もある。また薄膜材料として半導体基板以外にもグラフェン(Graphene)を利用してそれに設けた固体ナノポアを通過する生体分子を分析する装置及び方法も報告されている(特許文献1)。しかし固体ナノポアにおいては、封鎖電流によるDNA鎖の4種類の塩基識別は報告されていない。
【0005】
第2の手法は、トンネル電流方式である。すなわち、ナノポアに面して電極対を対向して設け、電極間に電圧をかけることにより、ナノポアを通過するDNAと電極間のトンネル電流を測定し、トンネル電流の大きさからDNAを解析する方式が提案されている(特許文献2)。理論研究より、トンネル電流の大きさから統計的に塩基識別ができるという報告があるものの(非特許文献2)、実験的にDNA鎖の4種類の塩基を識別した報告はない。
【0006】
以上のように、次々世代DNAシーケンサとして、ナノポア方式が期待されており、工業的生産性の観点では半導体材料に微細加工を施して形成できる固体ナノポアが有望であるものの、封鎖電流方式およびトンネル電流方式の何れの方式においても4種の塩基識別は実現されていない。
【0007】
トンネル電流方式の関連技術として、走査プローブ顕微鏡を用い、プローブ先端と基板表面の両方に4−メルカプト安息香酸を修飾することによって複数種のDNAヌクレオシドに対する識別能が向上するとの報告がある(非特許文献3)。また、走査プローブ顕微鏡のプローブ先端に核酸塩基分子を修飾することにより相補的な核酸塩基に対する識別能が向上すると報告されている(非特許文献4)。DNAの場合、アデニン(以下、Aと表記)とチミン(以下、Tと表記)、シトシン(以下、Cと表記)とグアニン(以下、Gと表記)が相補的な核酸塩基となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開WO2009/035647号
【特許文献2】米国特許US6627067号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Clarke,J.et al.,Nat. Nanotech.(2009年)第4巻第265−270頁
【非特許文献2】Lagerqvist,J.et al., Nano Lett.(2006年)第6巻第779−782頁
【非特許文献3】Chang,S.et al.,Nano Lett.(2010年)第10巻第1070−1075頁
【非特許文献4】Ohshiro,T.et al.,PNAS (2006年)第103巻第10−14頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
固体ナノポアを用いて、トンネル電流方式により核酸塩基を解析する方法は、塩基識別を実現できる可能性は示唆されているものの(非特許文献2、非特許文献3)、従来の方法(特許文献2)では、塩基の識別能が低く、核酸の塩基配列を高精度に読み取ることが困難である。
【0011】
そこで、本発明の課題は、固体ナノポアを用いたトンネル電流方式による核酸塩基の解析方法において、高い識別能で核酸の塩基配列を高精度に読み取ることが可能な核酸分析デバイス及びそれを用いた核酸分析装置を提供することである。
【0012】
併せて、本解析方法により、酵素や蛍光色素などの試薬を用いずに解析できることから、低コストに解析でき、更に、試薬に制限されていた読出し塩基長が長くなるため、従来よりも高スループットな解析技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本願発明の核酸分析デバイスの主な特徴は、以下の通りである。
【0014】
(1)電流測定により試料中の核酸を分析する核酸分析デバイスであって、固体基板と、固体基板を貫通して設けられ試料が通過するナノポアと、固体基板に配置され、それぞれの一端面がナノポアに面して設けられた少なくとも2つの電極とを備え、少なくとも1つの電極のナノポアに面する一端面には、核酸を構成する4種の塩基のうち少なくとも1種に対する識別能を向上させるための化学修飾分子が付与され、ナノポアに試料を進入させながら、少なくとも2つの電極間に電圧を印加して進入した試料中の核酸を構成する塩基に電流を流すことにより、核酸の分析を行うことを特徴とする。
【0015】
また、本願発明の核酸分析装置の主な特徴は、以下の通りである。
【0016】
(2)上記(1)に記載の核酸分析デバイスを有し、分析対象とする核酸を含有する試料溶液を導入する導入口と該試料溶液を排出する排出口を具備してなる第1の溶液槽と、溶液を導入する導入口と該溶液を排出する排出口を具備してなる第2の溶液槽と、第1の溶液槽と第2の溶液槽との間に配置された核酸分析デバイスを有するナノポアを通じて、核酸を第1の溶液槽から第2の溶液槽へ移動させる核酸駆動手段と、第1の溶液槽と第2の溶液槽との間に電圧を印加する第1電圧源と、ナノポアを介して第1の溶液槽と第2の溶液槽との間に流れる電流を検出する第1電流計と、核酸分析デバイスに設けられた電極間に電圧を印加する第2電圧源と、核酸分析デバイスに設けられた電極間に流れる電流を検出する第2電流計と、少なくとも核酸駆動手段を制御する制御手段と、少なくとも第1および第2電流計で検出されたデータを取得して処理するデータ処理手段とを備え、 前記第2電圧源を用いて、ナノポアに進入した試料溶液中の核酸を構成する塩基に電流を流し、第2電流計を用いてその電流を計測することにより試料溶液中の核酸を分析することを特徴とする。
【0017】
すなわち、本願発明の特徴は、トンネル電流方式固体ナノポアの電極表面に核酸塩基分子や有機化合物等を化学修飾することにより、特定または複数の核酸塩基に対する識別能を上げることにある。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、固体ナノポアを用いたトンネル電流方式による核酸塩基の解析方法において、塩基識別能が高く、塩基配列を高精度に読み取ることが可能な核酸分析デバイス及びそれを用いた核酸分析装置を提供できる。
【0019】
また、酵素や蛍光色素などの試薬を用いずに解析できることから、低コストに解析でき、更に、試薬に制限されていた読出し塩基長が長くなるため、従来よりも高スループットな解析技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】第1の実施例に係わる、対向する2つの電極を有するトンネル電流方式固体ナノポアの構造の概略図である。
【図1B】第1の実施例に係わる、対向する2つの電極を有するトンネル電流方式固体ナノポアの構造(化学修飾分子付与の場合)の概略図である。
【図2】第2の実施例に係わる、同一平面上に3〜6つの化学修飾分子付電極を有するトンネル電流方式固体ナノポアの構造の概略図である。
【図3】第3の実施例に係わる、対向する2つの電極を有するトンネル電流方式固体ナノポアであって、1つの電極のみに化学修飾分子を付与した構造の概略図である。
【図4A】第4の実施例に係わる、同一平面上に3つの電極を有するトンネル電流方式固体ナノポアであって、1つの電極を除いて化学修飾分子を付与した構造の概略図である。
【図4B】第4の実施例に係わる、同一平面上に4つの電極を有するトンネル電流方式固体ナノポアであって、1つの電極を除いて化学修飾分子を付与した構造の概略図である。
【図4C】第4の実施例に係わる、同一平面上に5つの電極を有するトンネル電流方式固体ナノポアであって、1つの電極を除いて化学修飾分子を付与した構造の概略図である。
【図4D】第4の実施例に係わる、同一平面上に6つの電極を有するトンネル電流方式固体ナノポアであって、1つの電極を除いて化学修飾分子を付与した構造の概略図である。
【図5】第5の実施例に係わる、8つの化学修飾分子付電極を有するトンネル電流方式固体ナノポアであって、同一平面状の電極数が2つ、電極の層を4層である構造の概略図である。
【図6A】第6の実施例に係わる、化学修飾分子が開口より突き出た構造のトンネル電流方式固体ナノポアの製造方法の一例を説明する各工程断面図である。
【図6B】第6の実施例に係わる、化学修飾分子が開口より突き出た構造のトンネル電流方式固体ナノポアの製造方法の一例を説明する各工程断面図である。
【図6C】第6の実施例に係わる、化学修飾分子が開口より突き出た構造のトンネル電流方式固体ナノポアの製造方法の一例を説明する各工程断面図である。
【図6D】第6の実施例に係わる、化学修飾分子が開口より突き出た構造のトンネル電流方式固体ナノポアの製造方法の一例を説明する各工程断面図である。
【図6E】第6の実施例に係わる、化学修飾分子が開口より突き出た構造のトンネル電流方式固体ナノポアの製造方法の一例を説明する各工程断面図である。
【図6F】第6の実施例に係わる、化学修飾分子が開口より突き出た構造のトンネル電流方式固体ナノポアの製造方法の一例を説明する各工程断面図である。
【図6G】第6の実施例に係わる、化学修飾分子が開口より突き出た構造のトンネル電流方式固体ナノポアの製造方法の一例を説明する各工程断面図である。
【図6H】第6の実施例に係わる、化学修飾分子が開口より突き出た構造のトンネル電流方式固体ナノポアの製造方法の一例を説明する各工程断面図である。
【図6I】第6の実施例に係わる、化学修飾分子が開口より突き出た構造のトンネル電流方式固体ナノポアの製造方法の一例を説明する各工程断面図である。
【図6J】第6の実施例に係わる、化学修飾分子が開口より突き出た構造のトンネル電流方式固体ナノポアの製造方法の一例を説明する各工程断面図である。
【図7A】第7の実施例に係わる、化学修飾分子が開口より突き出ない構造のトンネル電流方式固体ナノポアの製造方法の一例を説明する各工程断面図である。
【図7B】第7の実施例に係わる、化学修飾分子が開口より突き出ない構造のトンネル電流方式固体ナノポアの製造方法の一例を説明する各工程断面図である。
【図7C】第7の実施例に係わる、化学修飾分子が開口より突き出ない構造のトンネル電流方式固体ナノポアの製造方法の一例を説明する各工程断面図である。
【図7D】第7の実施例に係わる、化学修飾分子が開口より突き出ない構造のトンネル電流方式固体ナノポアの製造方法の一例を説明する各工程断面図である。
【図7E】第7の実施例に係わる、化学修飾分子が開口より突き出ない構造のトンネル電流方式固体ナノポアの製造方法の一例を説明する各工程断面図である。
【図7F】第7の実施例に係わる、化学修飾分子が開口より突き出ない構造のトンネル電流方式固体ナノポアの製造方法の一例を説明する各工程断面図である。
【図7G】第7の実施例に係わる、化学修飾分子が開口より突き出ない構造のトンネル電流方式固体ナノポアの製造方法の一例を説明する各工程断面図である。
【図7H】第7の実施例に係わる、化学修飾分子が開口より突き出ない構造のトンネル電流方式固体ナノポアの製造方法の一例を説明する各工程断面図である。
【図7I】第7の実施例に係わる、化学修飾分子が開口より突き出ない構造のトンネル電流方式固体ナノポアの製造方法の一例を説明する各工程断面図である。
【図7J】第7の実施例に係わる、化学修飾分子が開口より突き出ない構造のトンネル電流方式固体ナノポアの製造方法の一例を説明する各工程断面図である。
【図7K】第7の実施例に係わる、化学修飾分子が開口より突き出ない構造のトンネル電流方式固体ナノポアの製造方法の一例を説明する各工程断面図である。
【図8】第8の実施例に係わる、2つの電極を有するトンネル電流方式固体ナノポアによる核酸分析デバイスを用いた核酸分析装置の一構成の概略図である。
【図9】第8の実施例に係わる、DNA鎖がナノポアを通過時に計測されるトンネル電流値の時間変化のグラフである。
【図10】第9の実施例に係わる、4つの電極対を有するトンネル電流方式固体ナノポアによる核酸分析デバイスを用いた核酸分析装置の一構成の概略図である。
【図11】第9の実施例に係わる、DNA鎖が4つの電極対を有するナノポアを通過時に計測される4つのトンネル電流値の時間変化のグラフである。
【図12】第10の実施例に係わる、5つの電極を有するトンネル電流方式固体ナノポアによる核酸分析デバイスにおいて、電極の1つを共通電極とし、4つの電極対を構成した一例を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、以下に実施の形態を述べる。
本発明はトンネル電流方式固体ナノポアを用いて核酸塩基を解析するためのデバイス及びそのデバイスを用いた装置に関する。従って、本発明に係る核酸分析デバイスは、固体基板と、前記固体基板に設けられた少なくとも1つのポアと、前記個体基板に配置された少なくとも2つの電極を備える。
【0022】
固体基板は、電気的絶縁体の材料、例えば無機材料及び有機材料(高分子材料含む)から形成することができる。電気的絶縁体材料の例としては、シリコン、ガラス、石英、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスチレン、ポリプロピレンが挙げられる。固体基板のサイズ及び厚さは、ナノポアを設けることができるものであれば特に限定されるものではない。固体基板は、当技術分野で公知の方法で作製することができ、あるいは市販品として入手することも可能である。例えば、固体基板は、リソグラフィ及びエッチング、レーザーアブレーション、射出成形、鋳造、分子線エピタキシー、蒸着、化学気相成長(CVD)、電子ビーム若しくは収束イオンビームなどの技術を用いて作製することができる。固体基板は、表面への他の分子の吸着を避けるために、コーティングされていても良い。
【0023】
固体基板は、ナノポアを設けるための薄膜部分を有することが好ましい。即ち、ナノポアを形成するのに適した材料及び厚さの薄膜部分を固体基板に設けることによって、ナノポアを簡便かつ効率的に固体基板上に形成することができる。そのような薄膜部分は、固体基板と同じ材料であっても良いし、或いは別の電気的絶縁体材料から形成されても良い。ナノポア形成の点から、薄膜部分の材料は、例えばシリコン、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)、金属酸化物、金属ケイ酸塩などが好ましい。また薄膜部分は、単層であっても複層であっても良く、複層である場合には、後述する電極が薄膜部分の層に挟まれて配置されても良い。固体基板の薄膜部分の厚さは、5nm〜200nm、好ましくは5nm〜100nm、より好ましくは5nm〜50nmである。薄膜部分は、当技術分野で公知の技術により、例えば減圧化学気相成長(LPCVD)により、固体基板上に形成することができる。
【0024】
固体基板には、少なくとも1つのナノポアが設けられる。本発明において「ナノポア」とは、ナノメートル(nm)サイズの孔であり、固体基板、好ましくは固体基板の薄膜部分の表裏を貫通する孔である。
【0025】
また、本発明において「開口」とは、ナノポア形成のために個体基板、または固体基板薄膜部分に開けられた貫通孔であって、当該孔の基板表面側および裏面側に表出している部分を指すものとする。上記開口の形状は、ナノポアが有する側壁と個体基板もしくは固体基板薄膜部分の表面、あるいは裏面とが交差して形成される輪郭形状をなすものとする。
核酸の特性解析時に、試料溶液中の核酸塩基やイオンなどは一方の開口からナノポアに進入し、同じ又は反対側の開口からナノポア外に出る。
【0026】
ナノポアのサイズ(即ち、開口のサイズである。ただし、後述するように化学修飾分子を有する電極を用いた場合には、実効ナノポアのサイズとは異なる場合がある。)は、解析対象の種類によって適切なサイズを選択することができる。ssDNA(1本鎖DNA)の直径は約1.5nmであり、ssDNAを解析するためのナノポア径の適切な範囲は1.5nm〜10nm程度、好ましくは1.5nm〜2.5nm程度である。dsDNA(2本鎖DNA)の直径は2.6nmであり、dsDNAを解析するためのナノポアの径の適切な範囲は3nm〜10nm程度、好ましくは3nm〜5nm程度である。ナノポアの深さは、固体基板又は固体基板の薄膜部分の厚さを調整することにより変えることができる。
【0027】
ナノポアの深さは、核酸塩基を構成するモノマー単位の2倍以上、好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上の大きさとする。例えば、核酸塩基3個以上の大きさとした場合は、約1nm以上となる。これにより、核酸塩基の形状と移動速度を制御しながらナノポアに進入させることができ、高感度及び高精度な解析が可能となる。
【0028】
またナノポアの形状は、基本的には円形であるが、楕円形や多角形とすることも可能である。
【0029】
ナノポアは、固体基板に少なくとも1つ設けることができ、複数のナノポアを設ける場合には、規則的に配列することが好ましい。ナノポアは、当技術分野での公知の方法により、例えば電子ビームやイオンビームを照射することにより、リソグラフィ技術などを使用することにより、固体基板に形成することができる。
【0030】
固体基板には、少なくとも2つの電極が配置される。材料としては、例えば金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、銅、鉄、アルミ、チタン、ニッケル、タンタル、タングステン、コバルト、クロム、モリブデン、ニオブなどの金属や、窒化チタン、窒化タンタル、窒化タングステン、窒化ニオブ、窒化クロムなどの金属窒化物やタングステンシリサイド、チタンシリサイド、コバルトシリサイド、ニッケルシリサイドなどのシリサイドや、グラファイトやグラフェン、カーボンナノチューブなどのカーボン材料、シリコンやゲルマニウムなどの半導体、上記の混合物などが挙げられる。
【0031】
電極はナノポアに面して設けられており、鋭角の端部を有して、端部をナノポアに面することが望ましい。その端部の角度は10〜80度、好ましくは10〜45度とする。なお、電極端部の頂点部分は厳密な意味での点でなくともよく、好ましくは1.5nm〜5nm以下、より好ましくは1.5nm〜2.5nm程度の曲率半径を有する丸みを帯びた形状であってもよい。鋭角の端部以外の電極の形状や大きさは、特に制限されるものでなく、使用する固体基板及びナノポアの大きさ、使用する電源などに応じて適宜選択することができる。
【0032】
鋭角の端部の電極の厚さは、採用する材料に応じて、0.1nm〜10nm、好ましくは0.1nm〜5nmとする。より好ましくは0.1nm〜2nmとする。鋭角の端部の電極の厚さが小さいほど、トンネル電流の伝導する空間を限定することができ、高分解能での解析が可能となる。鋭角の端部以外の電極の厚さは、特に制限されるものでなく、電極材料の抵抗率などに応じて適宜選択することができる。
【0033】
電極は、その端部がナノポアに面して配置されていることが好ましい。より具体的には、電極をナノポア中心軸に対して直交する面内に、かつ薄膜の端部をナノポアに面して配置する。電極の端部はナノポアに面して設けられている限り、固体基板や薄膜部分の表面上に配置されてもよいし、あるいは固体基板や薄膜部分の内部に配置されてもよい。例えば、固体基板や薄膜部分を電気的絶縁体とし、その内部に電極を配置し、断面を絶縁体−電極−絶縁体の積層構造としてもよいし、更に絶縁体−電極−絶縁体−・・・−電極−絶縁体−と電極の層を複数積層した構造としてもよい。
【0034】
電極は1つのナノポアに対して2つ以上が配置されており、電極数が多いほど核酸塩基に対する識別能が向上する。配置された2つ以上の電極のうち、少なくとも1つには化学修飾分子を付与する。化学修飾分子を付与する電極を複数とする場合は、全て同じ化学修飾分子としても良いし、全て異なる化学修飾分子としても良い。所望の感度が得られるよう、化学修飾分子付電極の数と化学修飾分子の種類の数を適宜決定する。
【0035】
電極は、当技術分野で公知の方法により作製し、固体基板や薄膜部分の表面や内部に配置することができる。例えば、薄膜部分内部にチタン電極を配置する場合は、薄膜上に所望の厚さのチタンをスパッタリングにより堆積させた後、リソグラフィとドライエッチングによりチタン膜を所望の形状にパターニングし、その上から薄膜材料を堆積することにより実現できる。
【0036】
電極端部には化学修飾分子を付与し、特定または複数の核酸塩基に対する識別能を上げる。化学修飾分子の厚さは2nm以下、好ましくは1nm以下、より好ましくは0.5nm以下とする。例えば、Aに対する識別能を上げるためにはTを修飾した電極を用い、Cに対してはGを修飾した電極を用い、Tに対してはAを修飾した電極を用い、Gに対してはCを修飾した電極を用い、ウラシルに対してはAを修飾した電極を用いる。核酸分子以外の化学修飾分子としては、例えば4−メルカプト安息香酸のような有機化合物を用いても良い。電極への核酸分子や有機化合物の化学修飾分子は、電極材料と核酸分子や有機化合物の電気的性質や化学的性質を利用して行う。例えば、核酸塩基のチオール誘導体を用いることで、金電極に核酸分子の化学修飾を行うことができる。有機化合物の化学修飾は自己組織化単分子膜の形成プロセスにより行うことが望ましい。複数の電極に対して、異なる化学修飾分子を付与する場合は、電極への電圧印加や表面状態の違い等によって化学修飾される電極の選択性を変えたり、不要な化学修飾分子の付与された電極に電流を流して不要な化学修飾分子を除去したりするなどして行う。
【0037】
従来構造のトンネル電流方式固体ナノポアの電極端部に化学修飾分子を付与した場合、実効的な電極間距離と実効的なナノポアの径および実効的なナノポアの面積が減少し、DNAが通過できなくなる恐れがある。詳細は実施例1にも示すが、例えば、2つの対向した電極を有する、ナノポア径と電極間距離とが2nmと等しい1本鎖解析向け円形ナノポアの1つの電極先端に1nm厚の化学修飾分子を付与した場合、化学修飾部先端と対向する化学修飾分子の無い電極先端との間の距離は1nmとなるため、1本鎖DNAが通過できない可能性が高い。また、通過できたとしても、電極間からずれた位置を通過した場合は感度が低下するため好ましくない。
【0038】
そこで、化学修飾後の実効的なナノポアの大きさが解析対象の種類に応じて適切なサイズとなるように化学修飾前のナノポアの大きさや形状、電極間距離、薄膜部分や電極の構造を調整する。具体的には、例えば、化学修飾分子の厚み分ナノポア径と電極間距離を大きくしておくことが挙げられる。従来構造のトンネル電流方式固体ナノポアの場合、電極先端と開口の縁はほぼ一致しているため、電極先端の化学修飾分子は、その厚さ分だけ開口の縁から突き出すことになる。化学修飾部の機械的、化学的強度が低い場合、ナノポアに入ってくる試料や試料溶液が化学修飾部に衝突することによって機能の劣化や化学修飾分子の剥離が起こる可能性がある。これを避ける手段としては、例えば、ナノポア径は解析対象の種類に応じた適切なサイズとしておき、電極先端と開口の縁との間に化学修飾分子を付与できるように電極のみを化学修飾分子の厚さ分後退させることが挙げられる。
【0039】
本発明の分析装置は、核酸の移動速度を制御する機構、即ち試料移動機構を備えることが好ましい。試料移動機構は、例えば電極間の電流計測に同期して、核酸の中のモノマーを1単位ずつ、分析デバイスのナノポア中に進入させる。そのような機構としては、例えば電気泳動により核酸を駆動する試料駆動装置(任意関数発生器、電極等)を使用することができる。このような試料移動機構によって、核酸中のモノマーが順次ナノポアに進入し、離脱するように核酸の移動を制御することができ、ここのモノマーに対応するトンネル電流を経時的に取得することができる。
【0040】
また、核酸の移動速度を制御する方法として、核酸を含む試料溶液の粘性を高める方法がある。例えば分析デバイス周囲の温度を制御して、試料溶液の温度を低下させ、試料溶液の粘性を高くすることによって、核酸のブラウン運動が抑えられる。あるいは、試料溶液に測定対象以外の生体ポリマーを添加することにより、試料溶液の粘性を高くできると同時に、核酸の立体構造を直鎖状にすることができるため、核酸の形状と移動速度を制御することが可能となる。その際、測定対象以外の生体ポリマーとしては、好ましくはナノポアの内径よりも大きいサイズのポリマー、より好ましくは3次元的にクロスリンクされたポリマーを用いることにより、測定対象以外の生体ポリマーはナノポアに進入することができず、測定対象でない生体ポリマーによるトンネル電流変化を排除することが可能となる。
【0041】
核酸の移動速度を制御する別の方法は、本発明の分析デバイスの上部及び下部に存在するそれぞれの試料溶液に圧力差を印加する方法である。例えば、核酸が電気泳動によってナノポアを通過しようとする力と反対向きの力を核酸に印加することにより、核酸がナノポアを通過する速度を低下させることができる。
【0042】
核酸の形状及び/又は移動速度を制御しながら分析デバイスのナノポアに進入させることにより、核酸の主軸とナノポアの中心軸とは概ね一致する。試料移動機構により核酸を駆動することにより、核酸はナノポアを通過し、核酸を構成するモノマーは順次、ナノポア側壁に形成された電極間を通過する。すなわち核酸の主軸方向に沿って配列するモノマーが順次電極間を通過し、その際電極間のトンネル電流が変化する。この変化量がモノマーの種類によって異なるため、トンネル電流を計測することにより、モノマーの識別を順次行うことができる。
【0043】
本発明においては、上述した本発明の核酸分析デバイス及びそれを用いた核酸分析装置を用いて、核酸の特性解析を行うことができる。本発明において、「核酸」とは、単位構造の低分子(単量体、モノマー)が複数連結した多量体(オリゴマー)や高分子(ポリマー)のうち、生体に存在するもの及び生体に存在するものから誘導されるものを意味する。具体的には、一本鎖DNA(ssDNA)及び二本鎖DNA(dsDNA)、一本鎖RNA(ssRNA)及び二本鎖RNA(dsRNA)、DNAとRNAとからなるハイブリッド核酸などが含まれる。なお、核酸には、自然には存在しない配列や構成要素が含まれるポリマーが含まれ、例えば、poly(A)、poly(T)、poly(G)、poly(C)などの配列又は任意の配列を有する人為的に合成されたポリマー分子も含まれる。また、核酸には、当技術分野で公知の核酸増幅技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応)によって調整された核酸や、ベクターにクローニングされている核酸も含まれる。これらの核酸を含む試料の調整方法は、当技術分野で周知であり、当業者であれば、核酸の種類に応じて適宜調整方法を選択することができる。
【0044】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。理解し易くするために、分析対象をssDNAとする。実施例1から5は、核酸分析デバイスの構成を説明し、実施例6から7は核酸分析デバイスの製造方法を説明し、実施例8から9では核酸分析デバイスを用いた核酸分析装置の構成を説明する。但し、以下の実施例は本発明を限定するものではない。
【0045】
<実施例1>
本発明によるssDNA向け核酸分析デバイスの構成の一例を図1Aおよび1Bを用いて説明する。ここでは、対向する2つの電極を有するトンネル電流方式固体ナノポア(以下、2電極付ナノポアとする)において、2つの電極に対して化学修飾分子を付与した場合の構造を上面図と断面図を用いて説明する。電極102は絶縁膜103により挟んだ構造とする。上面図では、電極102の形状を示すために絶縁膜103を非表示とするが、絶縁膜103の開口101は示す。また、電極102は配線に接続されるが、図では省略する。
【0046】
まず、図1Aに化学修飾分子の無い従来構造の2電極付ナノポアを比較のために示す。開口101の形状は円形で、ssDNAを分析するためにナノポア径と電極間距離を2nmとした。図1Bは本発明により、化学修飾分子104を電極102の表面に付与した構造である。化学修飾分子104の厚さは1nm以下である。図1Aの従来構造の2電極付ナノポアの2つの電極102に化学修飾分子104を付与したものが図1B(a)である。
ここで、図1Bにおいて、上面図には(a1)、断面図には(a2)の記号を付しているが、上面図あるいは断面図の区別を特に必要としない場合は、(a)と表記する。以下の図面の表記においても、同様な表記を採用するものとする。
【0047】
図1B(a)の場合、電極102の先端の化学修飾分子104は、その厚さ分だけ開口101の縁から突き出すため、実効的なナノポア105の面積が減少し、分析対象であるssDNAが通過できない可能性がある。
【0048】
そこで、図1B(b)のように、化学修飾分子104の厚さ分だけナノポア径及び電極間距離を大きくし、化学修飾部の間の距離がssDNAの分析に適した2nmとなるようにする。しかし、図1B(b)のように開口101の形状が円形の場合、上面図における縦方向の実効的なナノポア105のサイズは2nmより大きく、ssDNAの分析に適したサイズよりも大きくなるため、精度良く塩基配列を読み出せない可能性がある。
【0049】
そこで、図1B(c)のように、化学修飾後の実効的なナノポア105の径がssDNAの分析に適した2nmとなるようにする。具体的には、開口101の形状を楕円とし、長径方向に対向する化学修飾分子付電極を配置し、化学修飾部の間の距離と短径を2nmとする。この構造により、精度良く塩基配列を読み出すことができる。
しかし、図1B(c)の構造の場合、化学修飾分子104が開口101の縁から突き出した構造をしているため、化学修飾部の機械的、化学的強度が低い場合、ナノポア105に入ってくる試料や試料溶液が化学修飾部に衝突することによって機能の劣化や化学修飾分子104の剥離が起こる可能性がある。その場合は、開口101をssDNAの分析に適した直径2nmの円形とし、電極102の先端と開口101の縁との間に化学修飾分子104を付与できるように電極102のみを化学修飾分子104の厚さ分程度後退させる。図1B(d)のように後退させると、化学修飾後も化学修飾分子104が開口101の縁から突き出さないため、長時間の使用による化学修飾分子104の機能の劣化や剥離を抑制できる。
【0050】
図1B(d)の構造は精度と信頼性・耐久性を両立させた構造であるが、構造がやや複雑なため、比較的製造コストが高い。求められるコストと精度と信頼性・耐久性に応じて構造を選ぶと良い。
【0051】
本実施例における各電極先端の化学修飾分子104は、同じであっても、異なっても良い。また、開口101の形状は、円や楕円でなくとも、それに類する多角形としても良い。
【0052】
<実施例2>
実施例1では同一平面上に2つの電極を有するトンネル電流方式固体ナノポアに化学修飾分子を付与した実施例を示したが、ここでは、同一平面上に2つよりも多くの電極を備えるトンネル電流方式固体ナノポアに化学修飾分子を付与した実施例を図2を用いて説明する。図2に同一平面上に3〜6つの電極202を有する固体ナノポアの上面図を示す。電極202は絶縁膜により挟んだ構造とする。電極202の形状を示すために絶縁膜を非表示とするが、開口201は示す。また、電極202は配線に接続されるが、図では省略する。
【0053】
図2(a1)、(a2)が3電極を有する固体ナノポア、図2(b1)、(b2)が4電極を有する固体ナノポア、図2(c1)、(c2)が5電極を有する固体ナノポア、図2(d1)、(d2)が6電極を有する固体ナノポアのそれぞれ上面図および断面図である。
【0054】
図2(a1)、(b1)、(c1)、(d1)は化学修飾分子204が開口201よりも突き出た構造をしており、図2(a2)、(b2)、(c2)、(d2)は図1B(d)と同様に化学修飾分子204が電極202の先端と開口201の縁の間にあり、開口201より突き出ていない。前者は化学修飾後の実効的なナノポア205の径をssDNAに適した2nmとし、後者はナノポア径を2nmとする。前者は比較的製造コストが低い一方で信頼性・耐久性が低い可能性があり、後者は逆の特徴を持つ。
【0055】
<実施例3>
実施例1〜2では、2つ以上の電極の内、全ての電極に化学修飾分子を付与したが、全ての電極に付与せずに一部の電極のみに付与しても良い。ここでは、2電極付ナノポアにおいて、2つの電極の内、1つの電極のみに化学修飾分子を付与した場合の実施例を図3を用いて説明する。図3に同一平面上に2つの電極を有する2電極付ナノポアの上面図と断面図を示す。電極302は絶縁膜303により挟んだ構造とする。電極302の形状を示すために絶縁膜303を非表示とするが、開口301は示す。また、電極302は配線に接続されるが、図では省略する。
【0056】
図3(a)は開口301の形状が円形で、電極302の先端と開口301の縁が一致し、2つの電極302の片方に化学修飾分子304を付与することにより、化学修飾部先端と化学修飾分子の無い電極先端間の距離をssDNAの分析に適した2nmとした2電極付ナノポアである。この構造は、図1B(b)の化学修飾部を1つ外して、円形の開口101の直径を小さくした構造に相当し、実施例1で説明したように、精度良く塩基配列を読み出せない可能性と信頼性・耐久性が低い可能性がある。
【0057】
図3(b)は電極302の先端と開口301の縁が一致し、片方の電極に化学修飾分子304を付与することにより、実効的なナノポア305の径がssDNAの分析に適した2nmとなるようにナノポアを形成した2電極付ナノポアである。具体的には、開口301の形状を楕円とし、長径方向に対向する電極302を配置し、2つの電極302の片方にのみ化学修飾分子304を付与し、化学修飾部先端と化学修飾分子の無い電極先端間の距離と短径を2nmとする。この構造は、図1B(c)の化学修飾部を1つ外して、楕円形の開口101の長径を小さくした構造に相当し、実施例1で説明したように、精度良く塩基配列を読み出せる一方、信頼性・耐久性が低い可能性がある。
【0058】
図3(c)は開口301の径がssDNAの分析に適した2nmで、2つの電極302は共に開口301の縁よりも化学修飾分子304の厚さ分後退しており、2つの電極302の片方のみに化学修飾分子304が付与されている2電極付ナノポアである。電極302を開口301の縁よりも後退した構造を作製する場合、複数の電極302に対してそれぞれ異なる寸法だけ後退した構造を作製することは困難であるため、全ての電極302を開口301の縁よりも化学修飾分子304の厚さ分後退させた構造とする。この構造は、図1B(d)の化学修飾部を1つ外した構造に相当し、実施例1で説明したように、精度と信頼性・耐久性を両立させた構造であるが、構造がやや複雑なため、比較的製造コストが高い。
【0059】
<実施例4>
実施例3では、2電極付ナノポアにおいて、2つの電極の片方のみに化学修飾分子を付与した実施例を示したが、ここでは、同一平面上に2つよりも多くの電極を備えるトンネル電流方式固体ナノポアにおいて、1つ以上の電極に化学修飾分子を付与するが、全ての電極に化学修飾分子を付与しない場合の具体例として、1つの電極を除いて化学修飾分子を付与した実施例を図4A〜4Dを用いて説明する。
【0060】
図4A〜図4Dに同一平面上に3〜6つの電極402を有する固体ナノポアの上面図を示す。電極402は絶縁膜により挟んだ構造とする。電極402の形状を示すために絶縁膜を非表示とするが、開口401は示す。また、電極401は配線に接続されるが、図では省略する。図4Aが3電極を有する固体ナノポア、図4Bが4電極を有する固体ナノポア、図4Cが5電極を有する固体ナノポア、図4Dが6電極を有する固体ナノポアである。図4A(a1)、4B(b1)、4C(c1)、4D(d1)は、図3(a)と同様に開口401が円形で、化学修飾分子404が開口401よりも突き出た構造をしており、図4A(a2)、4B(b2)、4C(c2)、4D(d2)は、図3(b)と同様に開口401が楕円形またはそれに類する形状で、化学修飾分子404が開口401よりも突き出た構造をしており、図4A(a3)、4B(b3)、4C(c3)、4D(d3)は、図3(c)と同様に開口401が円形で、化学修飾分子404は電極402の先端と開口401の縁の間にあり、開口401には突き出ていない。
【0061】
開口401が円形で、電極402の先端と開口401の縁が一致し、化学修飾分子404が開口401より突き出た構造の場合、図4A(a1)、4B(b1)、4C(c1)、4D(d1)に示すように、化学修飾分子の無い電極の先端が、他の化学修飾分子付電極の化学修飾部先端より離れてしまい、化学修飾部先端と化学修飾分子の無い電極の先端の位置で決まる実効的なナノポア405のサイズがssDNAの分析に適したサイズよりも大きくなり、精度良く塩基配列を読み出せない可能性がある。また、化学修飾分子404が開口401よりも突き出ているため、信頼性・耐久性が低い可能性もある。
【0062】
これに対して、図4A(a2)、4B(b2)、4C(c2)、4D(d2)に示すように、開口401の形状を楕円またはそれに類する形状とし、実効的なナノポア405の径がssDNAの分析に適した2nmとなるようにナノポアを形成し、電極402を配置すると、精度を向上することができる。しかし、化学修飾分子404が開口401よりも突き出ているため、信頼性・耐久性が低い可能性がある。図4A(a2)、4B(b2)、4C(c2)、4D(d2)は、化学修飾分子の無い電極が1つの場合であるが、この構造の場合、化学修飾分子の無い電極の数に応じて開口401の形状や電極402の配置を調整し、実効的なナノポア405の大きさを分析対象に適した大きさにする必要がある。
【0063】
一方、図4A(a3)、4B(b3)、4C(c3)、4D(d3)に示すように、開口401の形状が円形で、直径をssDNAの分析に適した2nmとし、化学修飾分子404が電極402の先端と円形の開口401の縁との間にあり、開口401には突き出ない構造の場合、図3(c)の構造と同様に、精度と信頼性・耐久性を両立させることができるが、比較的製造コストが高い。また、この構造の場合、開口401の形状や、電極402の配置が化学修飾分子の無い電極の数に依らない。
【0064】
<実施例5>
実施例1〜4では、同一平面上に2つ以上の電極を有し、電極の層が1層であるトンネル電流方式固体ナノポアの電極に対して化学修飾分子を付与した場合の構造を説明した。同一平面上の電極数が多いほど、製造の難易度が上がり、歩留まりが低下する恐れがあるため、同一平面上の電極数は4以下とし、金属の層と絶縁膜の積層数を増やすことにより電極数を増やした方が歩留まりが高い場合がある。ここでは、同一平面上の電極数を2つとし、電極の層を4層としたトンネル電流方式固体ナノポアの全ての電極に対して化学修飾分子を付与した場合の構造を図5を用いて説明する。
【0065】
図5に同一平面上に2つの電極502を有し、電極502の層が4層である8電極付ナノポアの上面図と断面図を示す。各電極502は絶縁膜503により分離された構造とする。電極502の形状を示すために絶縁膜503を非表示とするが、開口501は示す。また、電極502は配線に接続されるが、図では省略する。
【0066】
図5(a)は開口501の形状が円形で、電極502の先端と開口501の縁が一致し、電極502に化学修飾分子504を付与することにより、化学修飾部先端間の距離をssDNAの分析に適した2nmとした8電極付ナノポアである。上面図が図1B(b)のそれと同様であるため、図1B(b)の電極付ナノポアと同様に、化学修飾部先端間の距離が2nmであっても、上面図における縦方向の実効的なナノポア505のサイズは2nmより大きく、ssDNAの分析に適したサイズよりも大きくなるため、精度良く塩基配列を読み出せない可能性がある。また、化学修飾分子504が開口501よりも突き出ているため、信頼性・耐久性が低い可能性もある。
【0067】
これに対して図5(b)は図1B(c)と同様に、開口501の形状を楕円とし、長径方向に対向する化学修飾付電極を配置し、化学修飾部の間の距離と短径を2nmとした8電極付ナノポアである。実効的なナノポア505のサイズがssDNAの分析に適したサイズであるため、精度良く塩基配列を読み出すことができる。しかし、化学修飾分子504が開口501よりも突き出ているため、信頼性・耐久性が低い可能性がある。
【0068】
一方、図5(c)に示すように、開口501の形状が円形で、直径をssDNAの分析に適した2nmとし、化学修飾分子504が電極502の先端と円形の開口501の縁との間にあり、開口501には突き出ない構造の場合、図1B(d)の構造と同様に、精度と信頼性・耐久性を両立させることができるが、比較的製造コストが高い。
【0069】
本実施例では、同一平面上の電極502の数を2つ、電極502の層を4層としたが、電極502の数と層数は任意に選ぶことができる。同一平面上の電極502の数が3〜6の場合は、上面図は図2と同様となる。また、本実施例では、全ての電極502に化学修飾分子504を付与した場合を示したが、化学修飾分子の無い電極を有しても良い。更に、各電極先端の化学修飾分子504は、同じであっても、異なっても良く、任意に選ぶことができる。
【0070】
<実施例6>
本発明によるssDNA向け核酸分析デバイスの製造方法例を図6Aから6Jを用いて説明する。ここでは、同一平面上に対向した2つの電極を有し、電極の先端と開口の縁が一致し、化学修飾分子が開口より突き出た構造の2電極付ナノポアの製造方法の一例を示す。図6Aから6Jは製造プロセスフロー図で、デバイスの断面構造を示している。製造プロセスを以下で説明する。
【0071】
結晶面方位が(100)面のシリコン単結晶基板606上にCVD法によりシリコン窒化膜607を20nm堆積させ、その上にパッド電極となる窒化チタン膜608をスパッタリングにより50nm堆積させてリソグラフィとドライエッチングにより窒化チタン膜608をパッドの形状(100μm角)にパターニングする(図6A)。
【0072】
次に、トンネル電流計測用の電極となる窒化チタン膜609をCVD法により5nm堆積させて(図6B)、電極の形状にパターニングする(図6C)。電極はナノポアの形成される位置をギャップ610とし、分離された電極とする。ギャップ610の幅は形成する開口の大きさと合わせる。ここでは4nmとする。この実施例では、ギャップ610を挟んで対向した電極としてパターニングしたが、ギャップ610の無い繋がった電極としても良い。但し、その場合、繋がっている電極をナノポア616(図6I参照)形成時に切断する必要がある。電極のパターニング後、CVD法により20nmのシリコン窒化膜611、60nmのシリコン酸化膜612、200nmのシリコン窒化膜613を堆積する(図6D)。
【0073】
次に、リソグラフィとドライエッチングにより、パッド上部のシリコン窒化膜611とシリコン酸化膜612とシリコン窒化膜613を除去し、窒化チタン609を露出させる。更に、電極ギャップ上部の200nmのシリコン窒化膜613を除去し、シリコン酸化膜612を露出させる(図6E、露出させる面積は5μm角とする)。その後、裏面にCVD法によりシリコン窒化膜614を400nm堆積し、リソグラフィとドライエッチにより1030μm角のシリコン基板606が露出した領域を形成する(図6F)。
【0074】
次に裏面から露出したシリコン基板606を水酸化カリウム水溶液により異方性エッチングし、30μm角前後のシリコン基板606の無い薄膜部分615を形成する(図6G)。薄膜部分615のシリコン酸化膜612をフッ酸によるウェットエッチで除去し(図6H)、透過型電子顕微鏡による電子ビームを照射することによりナノポア616を形成する(図6I)。開口の形状は、長径4nm、短径2nmの楕円とし、長径方向に電極がある。ナノポア616の形成後、2つの電極表面に化学修飾分子604を付与する(図6J)。化学修飾分子604の厚さを約1nmとし、2つの化学修飾部の間の距離が約2nmにする。上面図は図1B(c)と同様となる。ここでは化学修飾分子604には4−メルカプト安息香酸を用いた。
【0075】
本実施例では、同一平面上に対向した2つの電極を有する2電極付ナノポアの製造方法を説明したが、電極の層が1層で2つよりも多くの電極を有する電極付ナノポアを製造する場合は、パッドのパターニング(図6A)と電極のパターニング(図6C)を変更することで実現できる。また、図5(b)のように電極の層を複数にする場合は、図6Bの後にシリコン窒化膜と窒化チタンを交互に堆積させて、図6Cと同様に最も下層の窒化チタンまで一括でパターニングする。更に、電極の数だけパッドを用意し、配線で各電極とパッドを接続すればよい。
本実施例では全ての電極に化学修飾分子604を付与したが、全ての化学修飾分子604が異なっても、同一でも良いし、化学修飾分子の無い電極が混在しても良い。
【0076】
<実施例7>
実施例6では化学修飾分子が開口より突き出た構造の電極付ナノポアの製造方法を説明した。ここでは、同一平面上に対向した2つの電極を有し、化学修飾分子が電極先端と開口の縁との間にあり、開口には突き出ない構造の2電極付ナノポアの製造方法の一例を説明する。図7A〜7Kは製造プロセスフロー図で、デバイスの断面構造を示している。製造プロセスを以下で説明する。
【0077】
結晶面方位が(100)面のシリコン単結晶基板706上にCVD法によりシリコン窒化膜707を50nm堆積させ、その上にCVD法によりアモルファスシリコン膜717を10nm堆積させ、更にその上にパッド電極となる窒化チタン膜708をスパッタリングにより50nm堆積させてリソグラフィとドライエッチングにより窒化チタン膜708をパッドの形状(100μm角)にパターニングする(図7A)。
【0078】
次にスパッタリングにより金/チタン膜718を堆積させて(図7B)、電極の形状にパターニングする(図7C)。本実施例では、電極材料に5nmの金、金と下地のアモルファスシリコン膜717との接着層に1nmチタンを用いた。金は酸化しにくい導電材料として選んだ。電極はナノポアの形成される位置をギャップ710とし、分離された電極とする。ギャップ710の幅は図7Iにて形成するナノポアの大きさと合わせる。ここでは4nmとする。本実施例では、ギャップ710を挟んで対向する電極としてパターニングしたが、ギャップの無い繋がった電極としても良い。その場合、繋がっている電極をナノポア716形成時に切断する必要がある。電極のパターニング後、CVD法により10nmのアモルファスシリコン膜719、60nmのシリコン酸化膜712、200nmのシリコン窒化膜713を堆積する(図7D)。
【0079】
次に、リソグラフィとドライエッチングにより、パッド上部のアモルファスシリコン膜719とシリコン酸化膜712とシリコン窒化膜713を除去し、金/チタン膜718を露出させる。更に、電極ギャップ上部の200nmのシリコン窒化膜713を除去し、シリコン酸化膜712を露出させる(図7E、露出させる面積は5μm角とする)。その後、裏面にCVD法によりシリコン窒化膜714を400nm堆積し、リソグラフィとドライエッチにより1030μm角のシリコン基板706が露出した領域を形成する(図7F)。
【0080】
次に裏面から露出したシリコン基板706を水酸化カリウム水溶液により異方性エッチングし、30μm角前後のシリコン基板706の無い薄膜部分715を形成する(図7G)。
【0081】
薄膜部分715の表面側のシリコン酸化膜712をフッ酸によるウェットエッチで除去し、更に薄膜部分715の裏面側のシリコン窒化膜707を熱リン酸によるウェットエッチで除去する(図6H)。その後、透過型電子顕微鏡による電子ビームを照射することによりナノポア716を形成する(図7I)。開口の形状は、直径4nmの円とする。対向する2つの電極間の距離も4nmである。ナノポア716形成後、酸素プラズマに曝すことで、電極上下を挟むアモルファスシリコン膜717、719を酸化する。アモルファスシリコン膜がシリコン酸化膜となることで、体積が増加し、ナノポアが小さくなる。酸化後のナノポアの直径が2nmとなるように酸素プラズマのパワーと時間を調整する。酸素プラズマ曝露の結果、電極上下のアモルファスシリコン膜が形成していた直径4nmの円形の開口は、シリコン酸化膜による直径2nmの円形の開口となる一方、電極材料の金は酸化しにくいため、酸化による体積増加は発生せず、2つの電極間距離は変わらない(図7J)。この後、2つの電極表面に化学修飾分子704を付与する(図7K)。化学修飾分子704の厚さを約1nmとし、2つの化学修飾部の間の距離が約2nmにする。上面図は図1B(d)と同様となる。ここでは化学修飾分子704には4−メルカプト安息香酸を用いた。
【0082】
本実施例では、同一平面上に対向した2つの電極を有する2電極付ナノポアの製造方法を説明したが、電極の層が1層で2つよりも多くの電極を有する電極付ナノポアを製造する場合は、パッドのパターニング(図7A)と電極のパターニング(図7C)を変更することで実現できる。また、図5(c)のように電極の層を複数にする場合は、図7Bの後にアモルファスシリコン膜と金/チタン膜を交互に堆積させて、図7Cと同様に最も下層の金/チタン膜まで一括でパターニングする。更に、電極の数だけパッドを用意し、配線で各電極とパッドを接続すればよい。
【0083】
本実施例では全ての電極に化学修飾分子704を付与したが、全ての化学修飾分子704が異なってもよいし、同一でもよい。また、化学修飾分子の無い電極が混在してもよい。
【0084】
<実施例8>
本発明による核酸分析デバイスを用いた核酸分析装置の一構成を図8を用いて説明する。核酸分析装置は、第一溶液槽821、第二溶液槽822、両溶液槽を分割する化学修飾分子の付与された電極付ナノポアによる核酸分析デバイス823、ナノポア816を通じて核酸837を第一溶液槽821と第二溶液槽822との間で移動させる核酸駆動手段824、825、制御及びデータ処理手段826で構成される。本実施例では核酸駆動手段824、825を両溶液槽に配置したが、これに加えて、又はこれの替わりに核酸駆動手段824、825を核酸分析デバイス823に内蔵させても良い。両溶液槽には溶液を導入する導入口827、828と溶液を排出する排出口829、830がそれぞれ備えられている。更に、両溶液槽には電極831、832が備えられており、電極831、832は極性及び出力可変の電圧源833と電流計834に接続されている。これら電極831、832は、核酸駆動手段824、825にそれぞれ内蔵させても良い。
【0085】
本実施例では、核酸分析デバイス823に全電極802に化学修飾分子804が付与された2電極付ナノポアを用いた例を示す。2つの電極802の間に極性及び出力可変の電圧源835と電流計836を接続する。電圧源833、835、電流計834、836、核酸駆動手段824、825は制御及びデータ処理手段826に接続されている。
【0086】
核酸837を解析する際には、解析対象である核酸837をバッファ溶液に混合し、導入口827より第一溶液槽821に、バッファ溶液のみを導入口828より第二溶液槽822に導入する。核酸駆動手段824、825により、核酸837を第一溶液槽821から第二溶液槽822へ移動させる。核酸駆動と同時に電圧源833を用いて2つの電極831、832の間を流れる電流、即ち、ナノポア816を介して流れるイオン電流を電流計834を用いて計測する。核酸837がナノポア816に導入されるとイオン電流値が減少する。イオン電流値が減少したら、電極802の間を流れるトンネル電流により塩基種の識別が可能となるよう、核酸駆動手段824、825により、核酸837がナノポア816を通過するスピードを調節する。塩基種の識別は一定電圧の下で流れるトンネル電流値の違いや、各塩基の電流−電圧特性の違いにより識別する。
【0087】
ここで、一定電圧の下で流れるトンネル電流値の違いでDNA鎖の塩基識別を行う方法を説明する。DNA鎖の塩基にはATGCの4種類があるが、これらの塩基の種類ごとに固有の電流値が観測され、制御及びデータ処理手段826に送られる。一例を図9に示す。予め、各塩基1種類のみが連なったポリマーがナノポア816を通過するときのトンネル電流を計測し、各塩基種に対応した電流値を求め、制御及びデータ処理手段のメモリに記憶しておく。そして、解析対象のDNA鎖のトンネル電流計測時に得られた電流値と予め計測した各塩基種に対応した電流値を比較することにより、解析対象のDNA鎖の塩基配列を知ることができる。
【0088】
核酸837を構成する全ての塩基が電極間を通過して、塩基識別が完了した後、同一の核酸837を逆方向に駆動して再び塩基識別を行い、ベリファイを行っても良い。また、核酸837がナノポア816を通過するスピードが速いために一回の測定で塩基種の識別ができない場合には、同一塩基を繰返し計測することにより統計的に識別しても良い。核酸837の分析が完了したら、排出口830から排出する。
【0089】
本実施例では、1個のナノポアを有する核酸分析デバイスを使ったトンネル電流の計測を行っているが、多数のナノポアを同一基板上に配置して、多数の解析対象核酸のトンネル電流の同時計測により、スループットの向上も図れる。
【0090】
<実施例9>
実施例8では化学修飾分子が付与された2電極付ナノポアを用いた核酸分析装置の一構成を説明した。1つのナノポアに対し、2つより多くの電極を用いて様々な電極間を流れるトンネル電流で塩基の種類を識別する方が、2電極の場合より識別能高く高精度に塩基配列を解析することができる。ここでは、化学修飾分子が付与された電極付ナノポアを用いた核酸分析装置の内、1つのナノポアに対して2つより多い電極を持つ電極付ナノポアを用いた核酸分析装置の一構成を図10を用いて説明する。ここでは、図5(c)のように、同一平面上の電極数を2つとし、電極の層を4層とした8電極付ナノポアを用いた例を説明する。8つの電極は4層の2電極対から構成されており、最も上層の電極対にはTを修飾し、Aに対する識別能を上げ、最も上層から2番目の電極対にはCを修飾し、Gに対する識別能を上げ、最も上層から3番目の電極対にはAを修飾し、Tに対する識別能を上げ、最も下層の電極対にはGを修飾し、Cに対する識別能を上げている。
【0091】
装置は、実施例8と同様に、第一溶液槽1021、第二溶液槽1022、両溶液槽を分割する化学修飾分子1004が付与された電極付ナノポアによる核酸分析デバイス1023、ナノポア1016を通じて核酸1037を第一溶液槽1021と第二溶液槽1022との間で移動させる核酸駆動手段1024、1025、制御及びデータ処理手段1026で構成される。本実施例では核酸駆動手段1024、1025を両溶液槽に配置したが、これに加えて、又はこれの替わりに核酸駆動手段1024、1025を核酸分析デバイス1023に内蔵させても良い。両溶液槽には溶液を導入する導入口1027、1028と溶液を排出する排出口1029、1030がそれぞれ備えられている。更に、両溶液槽には電極1031、1032が備えられており、電極1031、1032は極性及び出力可変の電圧源1033と電流計1034に接続されている。これら電極1031、1032は、核酸駆動手段1024、1025にそれぞれ内蔵させても良い。4つの電極対それぞれに極性及び出力可変の電圧源1035、1038、1040、1042と電流計1036、1039、1041、1043を接続する。電圧源1033、1035、1038、1040、1042、電流計1034、1036、1039、1041、1043、核酸駆動手段1024、1025は制御及びデータ処理手段1026に接続されている。本実施例では、4つの電極対につき4組の電圧源と電流計を接続したが、スイッチを用いて、1組の電圧源と電流計を4組の電極対に切り替えて接続しても良い。その場合は、スイッチも制御及びデータ処理手段に接続する。
【0092】
核酸1037を解析する際には、解析対象である核酸1037をバッファ溶液に混合し、導入口1027より第一溶液槽1021に、バッファ溶液のみを導入口1028より第二溶液槽1022に導入する。核酸駆動手段1024、1025により、核酸1037を第一溶液槽1021から第二溶液槽1022へ移動させる。核酸駆動と同時に電圧源1033を用いて2つの電極1031、1032の間を流れる電流、即ち、ナノポア1016を介して流れるイオン電流を電流計1034を用いて計測する。核酸1037がナノポア1016に導入されるとイオン電流値が減少する。電流値が減少したら、核酸分析デバイス1023が有する4つの電極対間を流れるトンネル電流により塩基種の識別が可能となるよう、核酸駆動手段1024、1025により、核酸1037がナノポア1016を通過するスピードを調節する。塩基種の識別は一定電圧の下で流れるトンネル電流値の違いや、各塩基の電流−電圧特性の違いにより識別する。
【0093】
ここで、一定電圧の下で流れるトンネル電流値の違いでDNA鎖の塩基識別を行う方法を説明する。予め、各塩基1種類のみが連なったポリマーがナノポア1016を通過するときの核酸分析デバイス1023が有する4つの電極対間を流れるトンネル電流を計測し、4種の塩基に対応した電流値を求め、制御及びデータ処理手段1026のメモリに記憶しておく。4つの電極対の内、最も上層の電極対はAに対する選択感度が高く、Aが電極間にあるとき、A以外の塩基に比べて十分大きな電流が流れるため、他の塩基と区別できる。
【0094】
一方、A以外の3種の塩基の識別能は低くても良い。同様に、最も上層から2番目の電極対はGとG以外の塩基とを区別でき、最も上層から3番目の電極対はTとT以外の塩基とを区別でき、最も下層の電極対はCとC以外の塩基とを区別できる。解析対象のDNA鎖がある時間内に4つの電極対間を通過すると、4つの電極対間のトンネル電流がある時間内で変化する。各トンネル電流変化から、それぞれ別の塩基に対して高感度に識別したデータが得られるため、各データを互いに補完することにより解析対象のDNA鎖の塩基配列を知ることができる。
【0095】
具体的には、解析対象のDNA鎖の塩基配列が仮にAGTCGTAGCの場合、DNA鎖が4つの電極対間を通過する際に得られるトンネル電流の時間依存性を図11を用いて説明する。最上層の電極対間を流れるトンネル電流の時間依存性からは、解析対象のDNA鎖の塩基配列が、少なくとも“A?????A??”であることが分かる。ここで、“?”はA、T、G、Cの何れかの塩基。次に、最上層から2番目の電極対間のトンネル電流依存性からは少なくとも“?G??G??G?”であると分かる。以下同様に、各電極対間のトンネル電流の時間依存性からそれぞれ選択感度の高い塩基を識別したデータを得て、各データを互いに補完すると、解析対象のDNA鎖の塩基配列を知ることができる。
【0096】
実施例8と同様に、核酸1037を構成する全ての塩基が4つの電極対間を通過して、塩基識別が完了した後、同一の核酸1037を逆方向に駆動して再び塩基識別を行い、ベリファイを行っても良い。また、核酸1037がナノポア1016を通過するスピードが速いために一回の測定で塩基種の識別ができない場合には、同一塩基を繰返し計測することにより統計的に識別しても良い。核酸1037の分析が完了したら、排出口1030から排出する。
【0097】
本実施例では、1個のナノポアを有する核酸分析デバイスを使ったトンネル電流の計測を行っているが、多数のナノポアを同一基板上に配置して、多数の解析対象核酸のトンネル電流の同時計測により、スループットの向上も図れる。
【0098】
<実施例10>
本発明による核酸分析デバイスの電極対構成の一例を説明する。
電極対間の解析対象核酸のトンネル電流を計測する際、電極対を構成する2つの電極は同じ化学修飾分子にせず、異なる化学修飾分子にしても良いし、片方の電極を化学修飾無しとしても良い。3つ以上の電極を有する核酸分析デバイスにおいて、電極の1つを共通電極としてグランドに接続し、n個の電極で(n−1)対の電極対を構成することができる(n≧3)。ここでは、5つの電極1202を有する核酸分析デバイスにおいて、電極1202の1つを共通電極とし、4つの電極対を構成した実施例を図12を用いて説明する。
【0099】
図12に同一平面上に5つの電極1202を有し、電極層は1層で構成されている。5つの電極1202のうち1つの電極を化学修飾無しとし、残り4つの電極には異なる化学修飾分子1204を付与する。5つの電極1202をここでは、電極a、b、c、d、eと区別して説明する。電極aには化学修飾を付与せず、電極bにはTを修飾し、Aに対する識別能を上げ、電極cにはCを修飾し、Gに対する識別能を上げ、電極dにはAを修飾し、Tに対する識別能を上げ、電極eにはGを修飾し、Cに対する識別能を上げている。電極aを共通電極とし、電極aとb、aとc、aとd、aとeの4つの電極対を構成する。電極対a−bでAを識別し、電極対a−cでGを識別し、電極対a−dでTを識別し、電極対a−eでCを識別する。
【0100】
本実施例では、共通電極は化学修飾無しとしたが、化学修飾分子を付けても良い。また、本実施例では全ての電極が同一平面上に有ったが、電極層が2層以上で、異なる平面上に電極が存在しても良い。また、電極数をより多くし、高精度化しても良い。
【符号の説明】
【0101】
101,201,301,401,501,1201…開口、
102,202,302,402,502,802,831,832,1002,1202…電極、
103,303,403,503,803,1003…絶縁膜、
104,204,304,404,504,604,704,804,1004,1204…化学修飾分子、
105,205,305,405,505…実効的なナノポア、
606,706…シリコン基板、
607,611,613,614,713,714…シリコン窒化膜、
608,609,708…窒化チタン膜、
610,710…ギャップ、
612,712,720…シリコン酸化膜、
615,715…薄膜部分、
616,716,816,1016…ナノポア、
717,719…アモルファスシリコン膜、
718…金/チタン膜、
821,1021…第一溶液槽、
822,1022…第二溶液槽、
823,1023…核酸分析デバイス、
824,825,1024,1025…核酸駆動手段、
826,1026…制御及びデータ処理手段、
827,828,1027,1028…導入口、
829,830,1029,1030…排出口、
833,835,1033,1035,1038,1040,1042…電圧源、
834,836,1034,1036,1039,1041,1043…電流計、
837,1037…核酸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流測定により試料中の核酸を分析する核酸分析デバイスであって、
固体基板と、
前記固体基板を貫通して設けられ前記試料が通過するナノポアと、
前記固体基板に配置され、それぞれの一端面が前記ナノポアに面して設けられた少なくとも2つの電極と、
を備え、
少なくとも1つの前記電極の前記ナノポアに面する一端面には、核酸を構成する4種の塩基のうち少なくとも1種に対する識別能を向上させるための化学修飾分子が付与され、
前記ナノポアに前記試料を進入させながら、前記少なくとも2つの電極間に電圧を印加して前記進入した試料中の核酸を構成する塩基に電流を流すことにより、前記核酸の分析を行うことを特徴とする核酸分析デバイス。
【請求項2】
前記化学修飾分子が付与された電極の一端面が、前記ナノポアの側壁と前記個体基板表面または裏面とが交差して形成される輪郭形状を有する開口の該開口端よりも前記ナノポアの内部方向に突き出た配置構造を有し、
前記配置構造により決定される実効的なナノポアサイズを、分析対象とする前記核酸が通過できるサイズで、かつ前記塩基に電流が流れる程度のサイズとすることを特徴とする請求項1に記載の核酸分析デバイス。
【請求項3】
前記化学修飾分子が付与された電極の一端面が、前記ナノポアの側壁と前記個体基板表面または裏面とが交差して形成される輪郭形状を有する開口の該開口端、あるいは該開口端より前記個体基板側に配置された配置構造を有し、
前記開口のサイズを、分析対象とする前記核酸が通過できるサイズでかつ該塩基に電流が流れる程度のサイズとすることを特徴とする請求項1に記載の核酸分析デバイス。
【請求項4】
前記固体基板が、シリコン、ガラス、石英、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスチレン、ポリプロピレンのいずれか1つの材料で構成されることを特徴とする請求項1に記載の核酸分析デバイス。
【請求項5】
前記固体基板が、厚さ5〜200nmの薄膜部分を有し、
前記ナノポアは、前記薄膜部分に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の核酸分析デバイス。
【請求項6】
前記薄膜部分が、シリコン、ガラス、石英、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスチレン、ポリプロピレン、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、金属酸化物、金属ケイ酸塩のいずれか1つの材料で構成されることを特徴とする請求項5に記載の核酸分析デバイス。
【請求項7】
前記電極が、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、銅、鉄、アルミ、チタン、ニッケル、タンタル、タングステン、コバルト、クロム、モリブデン、ニオブの何れかである金属材料、あるいは窒化チタン、窒化タンタル、窒化タングステン、窒化ニオブ、窒化クロムの何れかである金属窒化物材料、あるいはタングステンシリサイド、チタンシリサイド、コバルトシリサイド、ニッケルシリサイドの何れかであるシリサイド材料、あるいはグラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブの何れかであるカーボン材料、あるいはシリコン、ゲルマニウムの何れかである半導体材料のいづれかで構成されることを特徴とする請求項1に記載の核酸分析デバイス。
【請求項8】
前記電極の厚さが、0.1〜10nmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の核酸分析デバイス。
【請求項9】
前記化学修飾分子が、前記分析対象とする試料に含有される核酸分子、あるいは該核酸分子に対する分子認識能を有する有機化合物のいづれかで構成されることを特徴とする請求項1に記載の核酸分析デバイス。
【請求項10】
前記化学修飾分子の厚さが、2nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の核酸分析デバイス。
【請求項11】
前記開口の形状が円形の場合はその直径が、楕円形の場合はその短径が、多角形の場合はその内接円の直径が、10nm以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の核酸分析デバイス。
【請求項12】
前記核酸が、一本鎖DNA、二本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、DNAとRNAからなるハイブリッド核酸、人為的に合成されたポリマー分子の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の核酸分析デバイス。
【請求項13】
前記ナノポアの深さが、前記核酸を構成するモノマー単位の2倍以上の大きさであることを特徴とする請求項1に記載の核酸分析デバイス。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の核酸分析デバイスを有し、
分析対象とする核酸を含有する試料溶液を導入する導入口と該試料溶液を排出する排出口を具備してなる第1の溶液槽と、
溶液を導入する導入口と該溶液を排出する排出口を具備してなる第2の溶液槽と、
前記第1の溶液槽と前記第2の溶液槽との間に配置された前記核酸分析デバイスを有するナノポアを通じて、前記核酸を前記第1の溶液槽から前記第2の溶液槽へ移動させる核酸駆動手段と、
前記第1の溶液槽と前記第2の溶液槽との間に電圧を印加する第1電圧源と、
前記ナノポアを介して前記第1の溶液槽と前記第2の溶液槽との間に流れる電流を検出する第1電流計と、
前記核酸分析デバイスに設けられた電極間に電圧を印加する第2電圧源と、
前記核酸分析デバイスに設けられた電極間に流れる電流を検出する第2電流計と、
少なくとも前記核酸駆動手段を制御する制御手段と、
少なくとも前記第1および第2電流計で検出されたデータを取得して処理するデータ処理手段と、を備え、
前記第2電圧源を用いて、前記ナノポアに進入した前記試料溶液中の核酸を構成する塩基に電流を流し、前記第2電流計を用いてその電流を計測することにより前記試料溶液中の核酸を分析することを特徴とする核酸分析装置。
【請求項15】
前記核酸分析デバイスに前記核酸駆動手段を内蔵させたことを特徴とする請求項14に記載の核酸分析装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図6G】
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【図6H】
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【図6I】
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【図6J】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図7H】
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【図7I】
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【図7J】
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【図7K】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−90576(P2013−90576A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232612(P2011−232612)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】