説明

核酸分析方法

【課題】体液を用いた、簡便で定量性の高い核酸分析方法の提供。
【解決手段】血液から簡便に白血球を保持する担体を作製し白血球などの有核細胞が保持されたマトリックスを遺伝子解析反応に用いる核酸分析方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液から簡便に白血球を保持する担体を作製し、その一部、または全部を用いて簡便で定量性の高いPCR、RT-PCR、塩基配列解析等の遺伝子解析を行う手法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子生物学の進歩により、血液由来の核酸を利用した遺伝子検査が日常的に行われている。ところが、血液は、長期保存や凍結・融解の繰り返しにより粘性が高まり、固化するなどの状態変化が多く見受けられため、採血直後の流動性のある血液から速やかに核酸を分離し、さらに、必要に応じて精製を行うことも望まれる。
【0003】
血液から核酸を分離・精製する際には、遺伝子解析反応を阻害する物質、例えば赤血球を除去するとともに、核酸を保有する細胞、例えば白血球を回収する必要がある。しかしながら、その操作は遠心分離等、煩雑で時間を要するため、医療従事者が医療の現場で採血直後に行うことは困難であった。
【0004】
そのため、いったん保存しておいた血液から核酸を分離・精製する場面が多く見受けられる。しかしながら、保存中の血液が状態変化した結果、ピペット吸入時の飛散や赤血球の混入等によって核酸精製度が低下してしまう可能性が高かった。精製度が悪いと、その後のPCRでの遺伝子増幅効率が悪くなり、検出感度の低下や誤った検査結果を招くという問題が生じる。
【0005】
一方、操作の煩雑さを解消するため、核酸の分離・精製無しで、血液を直接PCRに供する手法も取られているが、主に赤血球や血液由来の不純物による影響のため、PCR増幅しない、シークエンスできない、検査の再現性が悪い、等の問題が生じていた。また、この手法で用いる試薬は高価なものであった。
【0006】
また、最近では、血中の特定のRNA量を指標として病態や術後の経過を判断する手法が用いられているが、その判断には検査する血液量の正確さが重要となる。しかしながら、血液が状態変化して一定量の血液の分取が困難になると、極微量の血液を基にしたPCRやRT-PCR等は不可能となる。そのため、白血球除去マトリクスを用いて回収した白血球からRNAを分離して、その後精製処理を行う手法が報告されている(特許文献1)。しかしまた、上述のような精製時の煩雑さは解消されず、精製時のロスによって厳密な定量性が失われている可能性も否定できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO05/090984
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
体液を用いた簡便で定量性の高い核酸解析方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するための検討を行い、採血後の血液を担体に均一に通過させることで容易に白血球を特異的に均一に担体に保持させ、その白血球を保持した担体の一部、または全部を用いて簡便で定量性のあるPCR、RT-PCR、塩基配列解析などの遺伝子解析を行う方法を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)有核細胞が保持されたマトリックスを遺伝子解析反応に用いることを特徴とする核酸分析方法。
(2)有核細胞を含む体液を細胞分離材に通液する工程、有核細胞が捕捉された細胞分離材を用いて遺伝子解析反応を行う工程、を含む核酸分析方法。
(3)細胞分離材が、有核細胞は捕捉し、かつ、遺伝子解析反応の阻害物質は通過させることを特徴とする、(2)記載の核酸分析方法。
(4)有核細胞が、白血球であることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の核酸分析方法。
(5)(1)から(4)のいずれかに記載の核酸分析方法に用いるキットまたはデバイス。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、血液から、容易に白血球を保持する担体、及び、その一部、または全部を用いて簡便で定量性の高い遺伝子解析を行う手法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】マトリックス(概観図)
【図2】マトリックス(断面図)
【図3】デバイス
【図4】デバイス(注射針型)
【図5】デバイス(チップ型)
【図6】デバイス(チューブ型)
【図7】PCR結果
【図8】RT−PCR結果
【図9】冷凍保存後のPCR結果
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本発明に用いられるマトリックスおよび核酸分析方法について詳細に説明する。
【0013】
本発明でいう有核細胞が保持されたマトリックスとは、有核細胞を物理的に包含しているマトリックスを意味する。その作製方法は特に限定されず、有核細胞の状態も問わない。また、マトリックスは、その内部に細胞が保持できればよく、例えば不織布や多孔質体が挙げられる。また、有核細胞を捕捉可能な細胞分離材が好ましい。
【0014】
細胞分離材の素材としては、有核細胞が保持される材質のものであれば特に限定はないが、液層で体液と素材の接触頻度の観点から表面積が大きいことが望ましい。例えば、不織布、繊維状、綿状、などの繊維状構造体、スポンジ等の高分子多孔質体、あるいはビーズ状、ゲル状等の構造が挙げられる。
【0015】
有核細胞とは、内部に核を持つ細胞を意味し、例えば、好中球・好酸球・好塩基球・リンパ球・単球などの白血球、赤芽球、造血幹細胞、造血前駆細胞、血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cells)が挙げられるが、特に白血球が好ましい。したがって、細胞分離材の素材として、白血球の吸着性、分離材としての特性から、織布、不織布が好ましく、中でも多点的な接触が可能である点から不織布が最も好ましい。
【0016】
不織布とは、編織によらずに繊維或いは繊維の集合体が、化学的、熱的、または機械的に結合された布状のものをいう。繊維と繊維とが互いに接触することによる摩擦により、或いは互いにもつれ合うことなどにより一定の形状を保っている場合、機械的に結合されたことに含める。
【0017】
不織布は、血球にダメージを与えにくいものであれば特に制限はなく、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリクロロプレン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリブタジエン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロクロロビニル、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエーテル−ポリアミドブロック共重合体、セルロース、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、エチルセルロース等が挙げられる。
【0018】
また、本発明に用いる不織布の厚さは、血液が透過できるものであれば特に制限はないが、血球浮遊液の高速処理のためには30mm以下、好ましくは20mm以下である。不織布の嵩密度は、0.50g/cm3 以下が適し、特にポリエステル糸からなる不織布の嵩密度は0.30g/cm3 以下が好ましい。
【0019】
また、白血球を効率よく回収するために細胞分離材をポリマーコーティングしてもよい。ポリマーコーティングの方法は、素材の細孔を著しく閉塞することなく、かつ表面を均一にコーティングできるものであれば特に制限はなく、各種の方法を用いることができる。
【0020】
例えば、ポリマーを溶かした溶液に素材を含浸させる方法、ポリマーを溶かした溶液を素材に吹き付ける方法、ポリマーを溶かした溶液をグラビアロール等を用い素材に塗布・転写する方法、などが挙げられるが、本発明のコーティング方法は上記例示に限定されるものではない。
【0021】
コーティングに使用されるポリマーの種類は、白血球が保持されるものであれば特に限定はない。コーティングの際のポリマーを溶解する溶剤としては、フィルター支持基材を著しく溶解させないものであれば特に限定はなく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類、トルエン、シクロヘキサンなどの炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類、水、及び上記の複数の溶剤の可溶な範囲での混合物などが挙げられるが、本発明のポリマーを溶解する溶剤は上記例示に限定されるものではない。
【0022】
遺伝子解析反応とは、DNAやRNAの解析に当たるものであれば特に制限はなく、例えば、PCR、RT-PCR、塩基配列解析、制限酵素処理、メチル化等の解析が挙げられる。また、核酸分析方法とは、上記遺伝子解析反応の結果を用いた分析を意味する。
【0023】
本発明でいう有核細胞を含む体液とは、有核細胞を含めば特に制限はないが、例えば、血液、骨髄液、リンパ液、腹水、尿、唾液、汗等を意味し、特に血液が好ましい。また、有核細胞の培養液も含まれる。
【0024】
また、血液とは、血液を何らかの形で含むものであれば特に制限はなく、尿や唾液も含まれ、血液を含む組織やその切片も含まれる。
【0025】
これら体液に何らかの処理、例えばデキストランやヒドロキシエチルスターチなどの赤血球凝集剤のような血球凝集剤を加えて得たものや、密度勾配遠心分離などのような遠心分離操作により得たもの、細胞電気泳動により得られたもの、ヘパリン、EDTA、クエン酸、フッ化ナトリウムなどの抗凝固処理を施したものなども含まれる。
【0026】
定量性の求められる遺伝子解析では担体に均一に血液が通過することが求められるため、採血直後の状態変化の少ない血液が望ましいが、一定期間保存された血液を用いることも可能である。その保存条件に特に定めはない。
【0027】
なお、本発明のフィルター素材は上記例示に限定されるものではない。
【0028】
次に、本発明の細胞分離材および細胞分離用デバイスの詳細について、図面を参照して説明する。
【0029】
図1と2は本発明の白血球回収に用いられる細胞分離材、図3は細胞分離材を内蔵したデバイスの一実施態様を示し、図4、図5、図6は、別の実施態様を示すものである。
【0030】
図1、2において、1のコーティング処理後の不織布は3枚重ねたものを例示しているが、重ねる枚数は厚みによって異なるが、1枚で用いても良いし、複数枚重ねて用いてもよい。図2は図1の細胞分離材の断面模式図である。この細胞分離材は、図で示したように一部を分離しやすいように切れ目を入れておくこともできるが、切れ目をいれずに使用することも可能である。切れ目の形状と大きさは、その後の反応に使用する容器に入れることができる大きさであれば特に制限はなく、また、切れ目の個数に制限はない。複数の切れ目を入れることで細胞分離材が分割でき、複数回の解析が可能となる。また分割切片の面積を同一にしておけば、それぞれの切片を用いて複数回の解析を行っても定量性のある解析結果を得ることができる。
【0031】
図3、4、5、6はデバイスを表しているが、この基材の部材は、担体が保持できる素材であれば特に限定されず、例えばプラスチック、紙、ガラス、金属などの材質を用いることができる。このデバイスの形状は、球、コンテナ、カセット、バッグ、管、流路、チップ、チューブ、カラム等、任意の形態をとりうるが、好ましい具体例としては、例えば、図3で示したように、容量約0.1〜1000ml程度の透明または半透明の円柱状容器、または四角柱状容器等が挙げられる。
【0032】
図3のデバイスは、少なくとも体液導入口4及び体液導出口5を有し、その内部空洞部には細胞分離材が納められている。細胞分離材の固定は、空洞部の最下部にパッキング材を設置し、その上に必要に応じて支持材をセットし、図1の細胞分離材をその上に設置する。この支持材は、切れ目を入れた細胞分離材の場合などに用い、切れ目部分のフィルターが落下するのを防御する役目を果たす。最後にパッキング材で押さえつけて細胞分離材を固定するが、その前に血液中の凝集物を除くための部材を設置した後にパッキング材をセットすることもできる。その部材としては、特に制限はないが、多孔質体などが好ましく用いられる。
【0033】
また、体液導入口と体液導出口をシリンジ型の形状にして、吸引により積極的に血液を通過させることも可能である。この場合、支持材は担体の最上部に位置する。図4は注射針に、図5はピペットチップに、図6はマイクロチューブに細胞分離材を内蔵したデバイスを示している。それぞれ基材は大きさなどの仕様に制限はないが、例えば、市販品が含まれる。
【0034】
有核細胞を含む体液を細胞分離材に通液する方法は特に制限されないが、例えば滴下、浸漬、遠心、吸入または吸引で行われる。体液量は、分析できる量の有核細胞が確保できれば制限はない。また、有核細胞を細胞分離材に捕捉させた後、さらに血液以外の余分な成分を除くために、別途溶媒を流すことも可能である。このような溶媒は有核細胞の吸着や捕捉に影響を与えなければ特に限定されるものではないが、水、生理食塩水、緩衝液などが挙げられる。また、有核細胞が捕捉された細胞分離材は、低温下、例えば15℃以下、好ましくは5℃以下で、そのまま保存可能である。
【0035】
遺伝子解析反応の阻害物質とは、例えば、多糖等の粘性物質、金属イオン、タンパク質、脂質、塩等が挙げられ、赤血球のような無核性の細胞も含まれる。
【0036】
有核細胞が捕捉された細胞分離材は、デバイスから取り出し、その後の核酸分析用の容器に加えてもよい。その際、切れ目を利用して分析担体の一部を取り出すことも可能であり、またポンチやはさみ等で一部を分離して使用することも可能である。さらには、細胞分離材を取り出さず、そのままデバイス内で核酸分析を行うことも可能である。その後、核酸分析用の容器に様々な遺伝子解析用の反応液を添加し、そのまま反応を開始することも可能である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)細胞分離材の作製
メルトブロー法で作製した以下のポリエステルテレフタレート不織布を使用した。
・プレフィルター材:平均繊維直径15μm、目付け30g/mのポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)不織布
・フィルター材:平均繊維直径0.89μm、目付け50g/mのポリブチレンテレフタレート(以下PBTと略す)不織布
ここで、プレフィルター材とは、微小凝集物を除去する効果を有する。
【0038】
なお、これらは、体液導入口から見て、プレフィルター材、フィルター材の順に重ねるとフィルター材の目詰まりが減少するため、捕捉効率が良くなり好ましい。
2−ヒドロキシエチルメタクリレートとN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートから成る共重合体(以下HEDEと略す)を濃度が1.0g/lになるようにエタノールに溶解し、HEDEコーティング溶液を調製した。
フィルター材をHEDEコーティング溶液に20℃にて5分間浸漬した後、ステンレス製バスケットに入れ、50℃にて1.5時間乾燥した。続いて、各不織布を水洗した後、ステンレス製バスケットに入れ、50℃にて3時間乾燥した。
【0039】
コーティング処理された不織布をポンチを用いて直径9mmの円形に打抜き、ディスク状のプレフィルター材、フィルター材を作製した。1枚のプレフィルター材、その上に1枚の主フィルター材A次に主フィルター材Bを重ねたものに1.5mm径のポンチで10箇所切れ込みをいれ、細胞分離材とした。
【0040】
また、ポリエチレンフィルター(厚さ:2mm)をポンチを用いて直径9mmに打ち抜き、サポートフィルターを作製した。このサポートフィルターにより、サンプル供与時に不織布が水平に保たれるという効果が得られた。
【0041】
さらに、シリコンチューブ(外径10mm、内径7mm)を巾5mmにカットしてシリコンパッキンを作製した。
【0042】
(実施例2)デバイスの作製
樹脂製注射器(テルモ製、SS−02SZ、容量2.5ml)シリンダ部に1個のパッキンを先端まで挿入し、その上にサポートフィルターを設置し、次にサポートフィルター側が主フィルター材Bとなるように細胞分離材を設置した。最後にパッキン1個を挿入してピストンでしっかり押し込んだ後、ピストンを抜いてデバイスを作製した。
【0043】
(実施例3)PCR解析
ウシ(品種:ホルスタイン)血液100mlを採血して、抗凝固剤として10mlのACD−A液(テルモ製、組成:クエン酸ナトリウム22g/l、クエン酸8g/l、ブドウ糖22g/l)を入れた血液容器に加え血液試料を調製した。
【0044】
実施例2で得られたデバイスに垂直に固定し、3.5mlの血液試料をアプライし、自然落下により、白血球を回収した。その後、3mlの生理的食塩水で2回細胞分離材を洗浄した後、白血球を保持した細胞分離材を取り出し、200μl容ピペットチップの先端で10個のうち1つの穴のフィルターをPCRチューブの底に落とし込んだ。そこに50μlの市販のPCR反応液(製品名:ExTaq、タカラバイオ社製)とホルスタイン種選別用プライマーであるF1:ctcccttgccaccccctgaaaaact及びR1:cacaacacatttatcattcaccaagを10μMになるように添加した。なお、この際に3μlの血液にそのまま50μlのPCR反応液とプライマーを添加したものをコントロールとして実施した。95℃、3分間の熱処理後、94℃、30秒→60℃、1分間→72℃、1分間を40サイクル行い、最後に72℃で3分間反応させ、PCRを完了した。なお、PCR後の反応液5μlをアガロース電気泳動に供し、増幅産物の有無を確認したところ、デバイスで処理したものでは460 bpのPCR産物が確認され、無処理のものは確認されなかった(図7)。この結果から、本発明の細胞分離材を使用することによって、市販のPCR反応液で容易にPCR解析が可能であることが明らかとなった。さらに4個の穴のフィルターをそれぞれ別々に同条件でPCRしたところ、いずれも一定の増幅を示し、白血球が均一に回収されていることが判明した。
【0045】
(実施例4)RT−PCR解析
実施例3と同様にして、抗凝固剤(ACD−A液)入りウシ(品種:ホルスタイン)血液3.5mlを回収用デバイスに供し、白血球を回収した。なお、この場合は1.5mm径の切り込みを入れないフィルターを用いた。その後、3mlの生理的食塩水で2回細胞分離材を洗浄した後、白血球を保持した細胞分離材を取り出し、Qiagen RNeasy mini kit(キアゲン社製)を用いて、マニュアルに従い30 μlのRNA溶液を回収した。次にTaKaRa Prime Script RT-PCR kit(タカラバイオ社製)を用いて、18SrRNA特異的プライマーR2:gaatggggttcaacgggttacccgcgcによる逆転写反応後(20 μl)、そのうち1μlを鋳型としてToyobo KOD Plus DNA polymerase(東洋紡社製)を用いてPCR反応を行った。なお、この際のプライマーはF2:tgcatggccgttcttagttgと前述のR2を用いた。PCR後、アガロースゲル電気泳動に供した結果、約270 bpの増幅産物が確認された(図8)。この結果から、白血球を固定した担体をそのまま用いてRT-PCRをすることが可能であることが確認できた。
【0046】
(実施例5)冷凍保存後の解析
実施例3で用いた細胞分離材を−20℃で1ヶ月間保存し、4個の穴のフィルターについて実施例2と同様にPCR解析した結果、一定のPCR増幅が可能であった(図9)。
この結果から、凍結保存してもフィルターのままPCR解析できることが証明された。
【符号の説明】
【0047】
1.不織布
2.切れ目
3.支持材
4.体液導入口
5.体液導出口
6.パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有核細胞が保持されたマトリックスを遺伝子解析反応に用いることを特徴とする核酸分析方法。
【請求項2】
有核細胞を含む体液を細胞分離材に通液する工程、有核細胞が捕捉された細胞分離材を用いて遺伝子解析反応を行う工程、を含む核酸分析方法。
【請求項3】
細胞分離材が、有核細胞は捕捉し、かつ、遺伝子解析反応の阻害物質は通過させることを特徴とする、請求項2記載の核酸分析方法。
【請求項4】
有核細胞が、白血球であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の核酸分析方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の核酸分析方法に用いるキットまたはデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−152107(P2012−152107A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11222(P2011−11222)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】