核酸分析装置
【課題】核酸分析において、反応プレートのローディング及びアンローディングの自由度が高く、効率的に試料を分析することができる技術を提供する。
【解決手段】核酸分析装置は、円周方向に沿って配置された複数の温度調節装置と、温度調節装置の上に配置された反応プレートアセンブリを円周方向に沿って回転させる回転機構と、温度調節装置の外周側に設けられた搬入ベース及び排出ベースと、反応プレートアセンブリを搬入ベースから温度調節装置の上に搬入する搬入駆動機構と、反応プレートアセンブリを温度調節装置の上から排出ベースに排出する排出駆動機構と、反応プレートアセンブリに装填された試料を光学的に検出する検出装置と、を有する。
【解決手段】核酸分析装置は、円周方向に沿って配置された複数の温度調節装置と、温度調節装置の上に配置された反応プレートアセンブリを円周方向に沿って回転させる回転機構と、温度調節装置の外周側に設けられた搬入ベース及び排出ベースと、反応プレートアセンブリを搬入ベースから温度調節装置の上に搬入する搬入駆動機構と、反応プレートアセンブリを温度調節装置の上から排出ベースに排出する排出駆動機構と、反応プレートアセンブリに装填された試料を光学的に検出する検出装置と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的試料に含まれる核酸を増幅することによって生物学的試料を分析するための核酸分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液、血漿、組織片などの生物学的試料に含まれる核酸の分析は、生物学、生化学、医学などの学術研究ばかりでなく、診断、農作物の品種改良、食品検査といった産業など多岐の分野で行われている。核酸の分析方法としてもっとも広く普及している方法はPCR(Polymerase Chain Reaction)と呼ばれる、分析したい領域の核酸を塩基配列特異的に増幅させる技術である。PCRの応用として、分析したい核酸に蛍光ラベルを付加し、励起光を照射して経時的に蛍光強度を測定することで、微量の核酸を高感度に検出することも可能である。
【0003】
PCRでは、核酸とそれを増幅させるための試薬を含む溶液を、95℃程度に加熱して核酸を熱変性させ、その後60℃程度まで冷却して核酸のアニーリングと伸長反応を進めるというサイクルが30〜40回繰り返される。現在主流のPCR装置では、96〜386個の反応ウエルを有するマイクロタイタープレートと呼ばれる反応プレートをペルチェ素子上に配置し、ペルチェ素子の温度を上下させることで温度サイクルを与えている。この方法では、ペルチェ素子そのものの温度変化に時間を要するため、分析時間の短縮に向けた大きな課題となっていた。
【0004】
また、上記の方法では、96〜386個の反応ウエルにセットした複数の試料を一括で処理するバッチ処理にならざるを得ず、一旦処理が開始されるとそのバッチが終了するまで次の処理が開始できないという課題もあった。
【0005】
非特許文献1には、温度サイクルの高速化に対する課題を解決するために、予め複数の温度に設定したヒータ上を、反応ウエルを有するディスク型の反応プレートが接触回転する構造が開示されている。この例では、ヒータを温度変化させる必要が無くなり、反応プレートの温度変化を迅速に行うことが可能となる。また、上面、下面側に配置された温度調節装置からの熱を受け取り易くするために、サンプル溶液を平面方向に広げる工夫もされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−185389号公報
【特許文献2】米国特許公報2009/0068064 A1
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Tsuguto Fujimoto, et al.,Jpn.J.Ingect.Dis.,63,31-35 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、複数のウエルを備えた円板状のマイクロチップを回転させる機構を備えた温度制御装置の例が記載されている。特許文献2には、扇状のプレートインサートをディスクアッセイプレートに装填するように構成された装置が記載されている。
【0009】
従来の核酸分析装置では、装填した反応プレートの分析が終了するまでは、次の反応プレートを装填することができなかった。また、随時、反応プレートを装填し、随時、反応プレートをアンロードすることができなかった。従来の核酸分析装置は、試料のローディング及びアンローディングの自由度が高くないため、効率的に核酸分析を行うことができなかった。
【0010】
本発明の目的は、核酸分析において、反応プレートのローディング及びアンローディングの自由度が高く、効率的に試料を分析することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、核酸分析装置は、円周方向に沿って配置された複数の温度調節装置と、温度調節装置の上に配置された反応プレートアセンブリを円周方向に沿って回転させる回転機構と、温度調節装置の外周側に設けられた搬入ベース及び排出ベースと、反応プレートアセンブリを搬入ベースから温度調節装置の上に搬入する搬入駆動機構と、反応プレートアセンブリを温度調節装置の上から排出ベースに排出する排出駆動機構と、反応プレートアセンブリに装填された試料を光学的に検出する検出装置と、を有する。
【0012】
本発明によると、回転機構は、回転軸と、該回転軸の周りに回転する複数の押さえ部と、有する。反応プレートアセンブリは、押さえ部によって温度調節装置の上に押し付けられた状態で、温度調節装置の上を円周方向に沿って移動するように構成されている。
【0013】
搬入駆動機構は、搬入ベースに配置された反応プレートアセンブリを半径方向内方に移動させて、押さえ部と温度調節装置の間に搬入する。
【0014】
排出駆動機構は、温度調節装置の上に配置された反応プレートアセンブリを半径方向外方に移動させて、押さえ部と温度調節装置の間より、排出ベースの上に排出する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、反応プレートの装填及びアンローディングの自由度が高く、効率的に試料を分析することができる核酸分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の核酸分析装置の主要部の平面構成を示す図である。
【図2A】本発明の核酸分析装置の温度調節装置に設定される温度サイクルの例を示す図である。
【図2B】本発明の核酸分析装置の温度調節装置に設定される温度サイクルの例を示す図である。
【図3A】本発明の核酸分析装置の反応プレートの例を示す図である。
【図3B】本発明の核酸分析装置の反応プレートの例を示す図である。
【図3C】本発明の核酸分析装置の反応プレートの例を示す図である。
【図3D】本発明の核酸分析装置の反応プレートの例を示す図である。
【図3E】図3Dの反応プレートの断面構成を示す図である。
【図4】本発明の核酸分析装置の温度制御装置の断面構成を示す図である。
【図5】本発明の核酸分析装置の温度制御装置の反応プレートの保持機構を説明する図である。
【図6A】本発明の核酸分析装置の温度制御装置の反応プレートアセンブリの保持機構の温調用配線を説明する図である。
【図6B】本発明の核酸分析装置の温度制御装置の反応プレートアセンブリの保持機構の温調用配線を説明する図である。
【図7A】本発明の核酸分析装置の回転機構の押さえ部と搬入駆動機構の動作を説明する説明図である。
【図7B】本発明の核酸分析装置の回転機構の押さえ部と搬入駆動機構の動作を説明する説明図である。
【図7C】本発明の核酸分析装置の回転機構の押さえ部と搬入駆動機構の動作を説明する説明図である。
【図7D】本発明の核酸分析装置の回転機構の押さえ部と搬入駆動機構の動作を説明する説明図である。
【図7E】本発明の核酸分析装置の回転機構の押さえ部と搬入駆動機構の動作を説明する説明図である。
【図7F】本発明の核酸分析装置の回転機構の押さえ部と搬入駆動機構の動作を説明する説明図である。
【図8】本発明の核酸分析装置の検出光学系の構成を示す模式図である。
【図9】本発明の核酸分析装置の全体の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照して、本発明による核酸分析装置について説明する。図1は、核酸分析装置の主要部の平面構成を示す。本例の核酸分析装置は、円周方向に沿って配置された第1〜第8の温度調節装置20A〜20Hと、第8の温度調節装置20Hの上方に配置された検出装置23A〜23Cと、第1の温度調節装置20Aの外周側に配置された搬入ベース25と、第5の温度調節装置20Eの外周側に配置された排出ベース27とを有する。
【0018】
温度調節装置20A〜20Hの上に、温度調節装置20A〜20Hの数と同数か又はそれより少ない数の反応プレートアセンブリ10A〜10Hを装填することができる。反応プレートアセンブリ10A〜10Hは、反応プレートとその上に配置された透明な重り部材を有する。反応プレートは反応ウエル102及び孔103を有する。重り部材も、反応プレートの孔103に対応した位置に孔を有する。重り部材の孔と反応プレートの孔103が接続されて、反応プレートアセンブリのガイドピン孔が形成される。反応プレートの構造については、後に、図3A〜図3Eを参照して説明する。反応プレートと重り部材は熱伝導率が高い材料によって形成される。
【0019】
反応ウエル102には、核酸と必要な試薬が注入されている。反応プレートの上面には、反応ウエルを覆うように、樹脂製の薄い透明なカバーが装着されている。透明なカバーによって反応ウエルはシールされる。重り部材は、反応プレートの上面に装着された透明なカバーの上に配置されている。重り部材は、透明なカバーが剥れることを防止する。
【0020】
本例の核酸分析装置は、更に、反応プレートアセンブリ10A〜10Hを、温度調節装置20A〜20Hの上にて、円周方向に沿って、一定の速度にて回転させる回転機構を有する。反応プレートアセンブリ10A〜10Hは、温度調節装置20A〜20Hの上にて、温度調節装置20A〜20Hと熱的に接触した状態にてスライドする。
【0021】
回転機構は、回転軸33と、回転軸に接続された支持部材32と、支持部材32によって支持された押さえ部31A〜31Hを有する。押さえ部31A〜31Hは、反応プレートアセンブリ10A〜10Hを温度調節装置20A〜20Hの上に押さえ付けるように構成されている。押さえ部31A〜31Hには、窓311が形成されている。窓311から、反応プレートの反応ウエル102を観察することができる。押さえ部31A〜31Hの構造の例は、後に図4を参照して説明する。
【0022】
本例の回転機構は、8個の押さえ部31A〜31Hを有する。しかしながら、反応プレートアセンブリ10A〜10Hを温度調節装置20A〜20Hの上に押さえ付けることができるなら、他の構造であってもよい。例えば、支持部材32は回転軸33に装着されたスポーク状部材として構成されているが、他の構造であってもよい。
【0023】
回転軸33はモータによって一定速度にて回転する。回転軸33が回転すると、押さえ部31A〜31Hと共に、押さえ部31A〜31Hによって押さえ付けられている反応プレートアセンブリ10A〜10Hも回転する。反応プレートアセンブリ10A〜10Hは、温度調節装置20A〜20Hに対して相対的に円周方向に沿って、移動する。反応プレートアセンブリ10A〜10Hの移動中に、反応プレートは、温度調節装置20A〜20Hによって、所定の温度に維持される。
【0024】
本例の核酸分析装置は、更に、反応プレートアセンブリを搬入ベース25から第1の温度調節装置20Aの上に搬入する搬入駆動機構を備える。
【0025】
搬入ベース25は、プレヒート(酵素活性化)用の熱源であるプレヒート用ヒータ251、及び、プレヒートカバー252を有する。プレヒート用ヒータ251の上に、反応プレートアセンブリを配置することができる。プレヒートカバー252は、プレヒート用ヒータ251の上に配置された反応プレートアセンブリの上を覆うように構成されている。プレヒート用ヒータ251とプレヒートカバー252の間の高さ方向の距離は、反応プレートアセンブリの厚さに略等しい。それによって、プレヒートカバー252は、反応プレートアセンブリに密着する。好ましくは、プレヒートカバー252の温度は、プレヒート用ヒータ251の温度と同一に保持される。
【0026】
搬入駆動機構は、1対の導入用ガイドピンアーム255を備える。導入用ガイドピンアーム255にはガイドピン(図7A参照)が設けられている。ガイドピンは、導入用ガイドピンアーム255より下方に延びている。
【0027】
反応プレートアセンブリを温度調節装置に搬入するには、導入用ガイドピンアーム255に設けられたガイドピンを反応プレートアセンブリのガイドピン孔に挿入する。次に、導入用ガイドピンアームを半径方向内方(矢印250)に移動させる。2つの導入用ガイドピンアーム255の間の距離は、押さえ部31A〜31Hの幅より僅かに大きい。従って、2つの導入用ガイドピンアーム255の先端は、押さえ部31A〜31Hの両側を挟むように、半径方向内方に移動可能である。導入用ガイドピンアーム255の移動とともに、反応プレートアセンブリは、半径方向内方に移動し、第1の温度調節装置20Aに配置される。
【0028】
本例の搬入駆動機構では、回転軸33の回転を止めることなく、反応プレートアセンブリを温度調節装置に導入することができるが、これについては、後に、図7A〜図7Fを参照して説明する。
【0029】
本例の搬入駆動機構は、反応プレートアセンブリを、プレヒート用ヒータ251の上にて移動し、更に、プレヒート用ヒータ251から第1の温度調節装置20Aへ搬入する。しかしながら、搬入駆動機構は、プレヒート用ヒータ251から第1の温度調節装置20Aへの搬入のみを行い、プレヒート用ヒータ251上における反応プレートアセンブリの移動は、他の駆動機構を用いてもよい。
【0030】
本例の核酸分析装置は、更に、反応プレートアセンブリを第5の温度調節装置20Eから排出ベース27の上に排出する排出駆動機構を備える。
【0031】
排出ベース27はカバー272を備える。排出駆動機構は、1対の排出用ガイドピンアーム275を備える。排出用ガイドピンアーム275には、ガイドピン(図示なし)が設けられている。ガイドピンは、排出用ガイドピンアーム275より下方に延びている。
【0032】
反応プレートアセンブリを温度調節装置より排出するには、排出用ガイドピンアーム275を半径方向内方に移動させる。2つの排出用ガイドピンアーム275の間の距離は、押さえ部31A〜31Hの幅より僅かに大きい。従って、2つの排出用ガイドピンアーム275の先端は、押さえ部31A〜31Hの両側を挟むように、半径方向内方に移動可能である。次に、排出用ガイドピンアーム275に設けられたガイドピンを、第5の温度調節装置20Eに配置された反応プレートアセンブリのガイドピン孔に挿入する。次に、排出用ガイドピンアーム275を半径方向外方(矢印270)に移動させる。排出用ガイドピンアーム275の移動とともに、反応プレートアセンブリは、半径方向外方に移動し、排出ベース27に配置される。
【0033】
本例の排出駆動機構では、回転軸33の回転を止めることなく、反応プレートアセンブリを温度調節装置より排出することができる。
【0034】
検出装置23A〜23Cは、第8の温度調節装置20Hの上方に配置されている。検出装置23A〜23Cは、反応ウエル102に装填された試料へ励起光を照射し、反応ウエル102に装填された試料からの蛍光の強度を測定する光学的検出装置であってよい。検出装置23A〜23Cは、それぞれが異なる色素の発光を検出する。ここでは、3個の検出装置が設けられているから、3種の色素の発光を検出することができる。
【0035】
反応プレートアセンブリが第8の温度調節装置20Hの上をスライドするとき、反応プレートアセンブリの複数の反応ウエルは、検出装置23A〜23Cの直下を通過する。複数の反応ウエル102は反応プレートの上に円弧状に配列されている。反応プレートアセンブリは、複数の反応ウエル102が回転軸33の回転中心を中心とする円の円周に沿って配置されるように、温度調節装置の上に配置される。従って、反応プレートアセンブリが温度調節装置の上を円周方向に沿って移動するとき、全ての反応ウエルは、同一の円周に沿って移動する。
【0036】
本例の核酸分析装置の操作を説明する。核酸分析装置では、様々な分析、解析が可能であるが、ここでは、PCRを行う場合を説明する。血液や組織からなる試料から抽出した核酸と、PCR反応に必要な試薬(酵素、プライマ、バッファなど)を反応プレートの反応ウエルに分注する。透明カバーによって反応ウエルをシールし、その上に、透明な重り部材を配置することにより、反応プレートアセンブリ10A〜10Hが形成される。
【0037】
搬入ベース25では、プレヒート(酵素活性化)を行う。プレヒート用ヒータ251は、反応プレートアセンブリを95℃に保持する。好ましくは、プレヒートカバー252の温度も95℃に保持する。反応プレートアセンブリは、プレヒート用ヒータ251上に約10分間保持される。この温度及び時間は、反応ウエル内に添加した酵素を活性化させるために必要である。これは、抽出した核酸がDNAの場合である。
【0038】
RNAを抽出する場合には、プレヒート(酵素活性化)の直前に40℃で5分間保持する逆転写の工程が必要になる。この場合には、図示の搬入ベース25の前段にさらに40℃のプレヒート用ヒータ(図示せず)とプレヒートカバー(図示せず)、ガイドピン(図示せず)を追加すればよい。
【0039】
搬入ベース25にてプレヒート(酵素活性化)が完了すると、搬入駆動機構によって、反応プレートアセンブリを搬入ベース25から第1の温度調節装置20Aの上に搬入する。搬入駆動機構は、回転軸33の回転を止めることなく、反応プレートアセンブリを第1の温度調節装置20Aに搬入する。反応プレートアセンブリは、温度調節装置20A〜20Hに熱的に接触した状態で温度調節装置20A〜20Hの上を順にスライドする。第1〜第8の温度調節装置20A〜20Hの温度は、予め決められた温度サイクルに従って設定される。即ち、反応プレートの反応ウエルに保持された核酸は、第1〜第8の温度調節装置20A〜20Hによって構成される温度サイクルに供される。
【0040】
PCRでは、核酸と増幅試薬を含む溶液を、95℃程度に加熱して核酸を熱変性させる工程と、次に60℃程度まで冷却して核酸のアニーリングと伸長反応を行う工程を含む温度サイクルが用いられる。この温度サイクルは、通常、30〜40回繰り返される。
【0041】
ここでは、反応プレートアセンブリが1回転することにより、1温度サイクルが完了するものとする。温度サイクルを30〜40回繰り返す場合には、反応プレートアセンブリを30〜40回回転させる。第1〜第8の温度調節装置20A〜20Hの温度は、例えば、次のように設定される。
第1の温度調節装置20A…95℃
第2の温度調節装置20B…95℃
第3の温度調節装置20C…60℃
第4の温度調節装置20D…60℃
第5の温度調節装置20E…60℃
第6の温度調節装置20F…60℃
第7の温度調節装置20G…60℃
第8の温度調節装置20H…60℃
【0042】
1温度サイクルの時間(周期)は50〜200秒、特に、100〜150秒である。1温度サイクルの時間は、PCRアッセイと試薬によって決定される。高速反応が可能な試薬を用いる場合には、1温度サイクルの時間を短くすることができる。したがって、核酸分析時間の短縮化が可能になる。更に、1温度サイクルの時間は、反応プレートアセンブリの材料と構造によっても変化する。反応プレートアセンブリの材料として熱伝導率が高い材料を用い、反応プレートアセンブリと温度調節装置の間の熱伝達率を高くすることにより、核酸分析の効率化と核酸分析時間の短縮化が可能になる。
【0043】
8個の温度調節装置の円周方向の寸法は同一であってよい。本例では、95℃の温度調節装置は、2個の温度調節装置からなり、円周の1/4の寸法を有する。60℃の温度調節装置は、6個の温度調節装置からなり、円周の3/4の寸法を有する。回転軸33が1回転する時間をt秒とすると、各反応ウエルが、95℃の温度調節装置に滞在している時間は、(1/4)t秒となり、各反応ウエルが、60℃の温度調節装置に滞在している時間は、(3/4)t秒となる。各反応ウエルが、95℃の温度調節装置、及び、60℃の温度調節装置に、それぞれ滞在している時間は予め設定されている。回転軸33の回転速度を変化させることにより、各反応ウエルが、95℃の温度調節装置に滞在する時間、及び、60℃の温度調節装置に滞在している時間を所定の値に設定することができる。
【0044】
1温度サイクルが完了する毎に、第8の温度調節装置20Hの上方に配置された検出装置23A〜23Cによって、反応プレートの反応ウエルに装填された試料が光学的に観察される。ここでは、3個の検出装置が設けられているから、3種の色素の発光を検出することができる。
【0045】
温度サイクルを所定の回数、繰り返したら、排出駆動機構によって、反応プレートアセンブリを、第5の温度調節装置20Eから排出ベース27に排出する。
【0046】
本例の核酸分析装置では、押さえ部31A〜31Hに配置されている全ての反応プレートアセンブリに対して、同時に温度サイクルを開始させ、同時に温度サイクルを終了させる必要はない。押さえ部31A〜31Hのいずれかに空きがあれば、何時でも、そこに、あらたな反応プレートアセンブリを挿入することができる。例えば、搬入ベース25に、逐次、又は、随時、反応プレートアセンブリが到着するような場合には、空いた押さえ部に、それを、逐次、又は、随時、装填することができる。PCR反応が終了した反応プレートアセンブリを、逐次、又は、随時、排出することができる。こうして、空きがないように、常に全ての押さえ部31A〜31Hに反応プレートアセンブリを挿入することにより、PCRを効率的に実施することができる。
【0047】
本例の核酸分析装置では、PCR反応が終了した反応プレートアセンブリを随時排出することができるために、全ての反応プレートアセンブリについて、PCR反応が終了するまで待つ必要はない。従って、分析結果の報告までの時間を短縮できる。さらに、全ての反応プレートアセンブリは、同一の円周状の軌道に沿って移動するから、搬入ベース25、排出ベース27、及び、検出装置23A〜23Cを1箇所に設ければよい。従って、核酸分析装置の全体の寸法の増加を抑制しながら、スループットを向上させることができる。
【0048】
上述の例では、反応プレートアセンブリが1回転することにより、1温度サイクルが完了する。しかしながら、反応プレートアセンブリが1回転することにより、複数回の温度サイクルが完了するように構成してもよい。例えば、1回転する間に、2回の温度サイクルが完了するように構成してよい。この場合、半周で1回の温度サイクルが完了するように、8個の温度調節装置の温度を所定の温度に設定する。
【0049】
回転機構の回転軸が1回転する間に、複数の温度サイクルを完了させる場合には、回転軸33の回転速度を低速化する必要がある。例えば、回転機構の回転軸が1回転する間に、同一の温度サイクルを2回完了させる場合には、回転速度を半分にする。回転速度が低速になると、検出装置における発光を検出精度が高くなる利点がある。
【0050】
更に、上述の例では、円周上に8個の温度調節装置20A〜20Hを設けるが、温度調節装置の数は8個に限定されるものではない。温度調節装置は、8個以下でもよいし、8個以上でもよい。更に、温度調節装置の円周方向の寸法は、全て同一であってもよいが、同一でなくてもよい。即ち、円周を等分することによって温度調節装置を設けてもよいが、不等分することによって温度調節装置を設けてもよい。
【0051】
本例では、温度調節装置20A〜20Hの平面寸法は、反応プレートアセンブリ10A〜10Hの平面寸法より大きい。従って、温度調節装置に収納することが可能であれば、様々な平面寸法及び形状を有する反応プレートアセンブリを用いることができる。しかしながら、所定の反応プレートアセンブリのみを使用する場合には、温度調節装置の平面寸法及び形状を、その反応プレートアセンブリの平面寸法及び形状と同一にしてもよい。
【0052】
本例では、複数の温度調節装置20A〜20Hを有するから、温度サイクルの変更が容易である。しかしながら、温度サイクルの変更が不要な場合には、複数の温度調節装置20A〜20Hを備える必要はない。例えば、上述の例のように、95℃と60℃の2つの設定温度を含む温度サイクルだけを実行する場合には、95℃の温度調節装置と60℃の温度調節装置の2つの温度調節装置を設ければよい。この場合、各温度調節装置の円周方向の寸法は、各温度に保温する時間に対応するように設定されてよい。
【0053】
上述の例では、核酸分析装置に装填される反応プレートアセンブリは、全て同一の温度サイクルに供するものとしている。しかしながら、回転機構を停止することによって、核酸分析装置に装填されている反応プレートアセンブリを、互いに異なる温度サイクルに供することも可能である。回転機構を停止し、温度調節装置20A〜20Hの各々を、独立した温度プログラムによって、互いに異なる温度サイクルにて作動させればよい。
【0054】
尚、反応プレートアセンブリを、温度サイクルの完了毎に、検出装置23A〜23Cの位置に移動させる必要がある。また、反応プレートアセンブリの搬入及び排出には、反応プレートアセンブリの搬入ベース又は排出ベースに移動させる必要がある。従って、この場合には、検出装置23A〜23C、搬入ベース及び排出ベースを、温度調節装置の周りに移動させる機構を設けるとよい。
【0055】
上述の例では、核酸分析装置の温度調節装置20A〜20Hに反応プレートアセンブリを装填する場合を説明したが、温度調節装置20A〜20Hに反応プレートを装填してもよい。
【0056】
図2A及び図2Bは、温度サイクルの例を示す。図2Aに示す温度サイクルは、上述のように、95℃の加熱と、60℃の保温を含む。図2Bに示す温度サイクルは、95℃の加熱と、60℃の保温と、約72℃の保温の3つのステップを含む。本例の温度制御装置では、第1〜第8の温度調節装置20A〜20Hの温度を所定の温度に設定することにより、所望の温度サイクルを構成することができる。即ち、本例の温度制御装置では、8個の温度調節装置の各々の温度を任意の温度に設定することにより、任意の温度サイクルを設定することができる。
【0057】
図3A〜図3Eを参照して、本発明による反応プレートの例を説明する。図3Aに示す例では、反応プレート101の上面に複数の反応ウエル102が円周100に沿って配置されている。円周100は、回転軸33を中心として回転する反応ウエル102の軌跡に対応する。反応プレート101の両端には、ガイドピン用孔103が設けられている。
【0058】
図3Bに示す例では、同心円に沿って、2列の反応ウエル102A、102Bが形成されている。本例では、検出装置23A〜23Cに、2次元のCCDイメージセンサを用いてもよい。図3Cに示す例では、反応プレート101の上面に1個の反応ウエル102が形成されている。
【0059】
図3D及び図3Eに反応プレート101の他の例を示す。図3Dは、この反応プレート101の平面構成を示し、図3Eは、図3Dの線A−Aに沿って切断した、この反応プレート101の断面構成を示す。この反応プレート101の上面には、凹部からなる反応ウエル102が形成されている。反応ウエル102に、試料と試薬を分注した後、その上に樹脂製の薄い透明なカバー105を貼り付ける。
【0060】
図4を参照して、本発明の核酸分析装置に設けられた温度調節装置の構造の例を説明する。ここでは、第1の温度調節装置20Aの構造を説明する。第1の温度調節装置20Aは、熱源202と、その上に配置された熱伝導プレート201と、熱源202の温度を検出する温度センサ203を有する。熱伝導プレート201の上を、反応プレートアセンブリ10Aが摺動するように構成されている。反応プレートアセンブリ10Aは反応プレート101とその上の透明なカバー105とその上の透明な重り部材107を有する。
【0061】
熱源202は、シリコンラバーヒータやペルチェなどの電気的装置が好ましい。熱伝導プレート201は板状の剛体である。熱伝導プレート201は、熱源202の熱を均一にし、反応プレート101に熱を効率的に伝えるために、熱伝導率の高い材料、例えば、アルミニウムなどの金属やセラミックによって構成される。
【0062】
熱伝導プレート201は、反応プレートアセンブリ10Aの摺動によって磨耗する可能性がある。そこで、磨耗を防止するために、熱伝導プレート201に表面処理を施してもよい。アルミニウム板の場合には、アルマイト処理を施してもよい。尚、熱伝導性が犠牲になるが、熱伝導プレート201に樹脂カバーを貼り付けたり、摺動性の高いPOM(polyacetal, polyoxymethylene)などの薄い樹脂板を密着させてもよい。
【0063】
温度センサ203は、熱源202に接触するように、又は、熱源202と熱伝導プレート201の両者に接触するように装着されている。温度センサ203によって検出された熱源202又は熱伝導プレート201の温度は、温度調節装置の制御部(図示せず)に送られる。制御部は、検出された温度が所定の温度に一致するように、熱源202に供給する電流値を調整する。
【0064】
第1の温度調節装置20Aと、それに隣接する第2の温度調節装置20Bの間には、断熱材21が充填され、温度調節装置間における熱の干渉を防いでいる。
【0065】
図5を参照して、本発明の核酸分析装置に設けられた反応プレートアセンブリの保持機構の構造及び動作の例を説明する。尚、熱伝導プレート201の図示は省略されている。第1の温度調節装置20Aの上に、反応プレートアセンブリ10Aが配置されている。反応プレートアセンブリ10Aは、反応プレート101とその上に装着された透明なカバー105とその上に配置された透明な重り部材107を含む。
【0066】
温度調節装置20Aに隣接して、搬入ベース25のヒータ251が配置されている。更に、ヒータ251の上に、ヒータカバー252が配置されている。温度調節装置20Aと搬入ベース25のヒータ251の間の距離は僅かであり、両者は略接触している。温度調節装置20Aの上面とヒータ251の上面は共面を形成している。温度調節装置20Aと押さえ部31Aの間に、反応プレートアセンブリ10Aを搬入するための搬入口35が形成されている。搬入口35は、温度調節装置20Aと押さえ部31Aの間の外周面に沿って円周状に開口している。搬入口35の高さ方向の寸法H1は、ヒータ251とヒータカバー252の間の間隙の寸法H2より大きい。
【0067】
押さえ部31Aは、押さえ部材300Aと、支点400と、支点回りに枢転可能に装着されたフック401を有する。フック401の外端の下面には突起405が形成され、この突起の両側には、テーパ406、407が形成されている。突起405の内側には、反応プレートアセンブリ10Aを押さえるための凹部408が形成されている。フック401の内端の上面には、フックのストロークを制御するための突起403が設けられている。
【0068】
押さえ部材300Aとフック401の間には、バネ410が装着されている。バネ410の弾性力によって、フック401は、本図において、時計方向の枢動力が付与される。従って、フック401は、バネ410の弾性力によって、反応プレートアセンブリ10Aの上に押し付けられている。反応プレートアセンブリ10Aは、バネ410の弾性力によって、温度調節装置20Aの上に押し付けられている。こうして反応プレート101が温度調節装置20Aに密着することにより、反応プレート101の温度は、温度調節装置20Aの温度と正確に同一となる。
【0069】
重り部材107は、温度サイクル中に、反応プレートに貼り付けたカバー105が剥がれるのを防ぐために用いる。従って、重り部材107は、カバー105と平面的に密着するように、平坦面を有することが望ましい。更に、反応プレートの反応ウエルの核酸の発光を光学的に観察することができるように、透明な材料によって形成される。重り部材107の材料には、例えば所定の透過率を有するガラスを用いるとよい。
【0070】
重り部材107は、所定の熱容量を有する。従って、重り部材107と反応プレート101がカバー105を介して接触していても、両者は熱的に均一な状態、即ち、同一温度にならないことがある。例えば、重り部材107が室温雰囲気にあり、反応プレート101が95℃の温度条件下にあるとき、両者の間で温度差が生じる。反応ウエルの内部にて気化した試料や試薬がカバー105に接触すると、冷却され、結露する可能性がある。これを回避するために、回転機構に温度調節機構を設ける。回転機構に設ける温度調節機構は、フック401及び押さえ部31A〜31Hに設けた温度センサとヒータを含む。温度センサは、サーミスタ又は熱電対であってよい。ヒータは、DC24Vの電源が供給される電気抵抗型ヒータであってよい。回転機構に設ける温度調節機構は、フック401及び押さえ部31A〜31Hを所定の温度に保持する。反応プレート101の温度は、温度調節装置に設定された温度に従って変化するが、フック401及び押さえ部31A〜31Hの温度は、一定の温度、例えば、100℃に保持されてよい。
【0071】
押さえ部31A〜31Hは回転軸33周りに回転する。そのため、フック401及び押さえ部31A〜31Hを温度制御するには、温度制御装置からの配線が、回転により断線又は絡まることがないような構造が必要である。そこで、回転軸周りの構造を説明する。
【0072】
図6A及び図6Bを参照して、反応プレートアセンブリの保持機構の温調用の配線を説明する。図6Aは、回転軸の平面構成を示す。回転軸には8個の支持部材が装着されているが、ここでは、1個の支持部材32のみを示した。回転軸33の周囲には、配線と同数の4個の電極501〜504が配置されている。4個の電極501〜504は、円弧状に形成され、同心状に配置されている。4個の電極501〜504は、支持部材と同数の8個のセグメント電極に分割されている。8個のセグメント電極は、8個の温度調節装置に対応して配置されている。
【0073】
図6Bは、図6Aの線A−Aに沿った断面構成を示す。支持部材32の内部には配線505が配置されている。ここでは、4本の配線が配置されているものとする。配線505の内端には、滑り電極506が接続されている。4個の配線505の滑り電極506は、それぞれ、4個の固定電極501〜504に電気的に接続されている。
【0074】
例えば外周側の2個の電極501、502を、フック401または押さえ部31A〜31Hに設けた温度センサの出力用に使用してよい。内周側の2個の電極503、504を、フック401または押さえ部31A〜31Hに設けたヒータの電源供給、例えばDC24Vと接地に使用してよい。
【0075】
回転軸33が回転すると、支持部材32も回転する。支持部材32の回転中、滑り電極506は、4個の電極501〜504にそれぞれ接触しながらその上を滑動する。
【0076】
本例では、4個の固定電極501〜504は、円周方向に沿って、8個のセグメント電極に分割されている。支持部材32が1つのセグメント電極から次のセグメント電極に移動するとき、その支持部材32の滑り電極は、固定電極に接触していない。従って、このとき、押さえ部31A〜31Hに設けた温度センサ及びヒータは作動を停止する。しかしながら、隣接する2つのセグメント電極の間の距離は十分小さいから、押さえ部31A〜31Hに設けた温度センサ及びヒータの作動が停止する時間は短い。
【0077】
回転機構に設ける温度調節機構が、単一の温度センサ及びヒータによって構成される場合には、4個の固定電極を8個のセグメント電極に分割する必要はない。8個のフック401または押さえ部31A〜31Hの温度を代表する1個の温度センサにより検出し、その温度を所定の温度と比較し、両者の差を、フック401または押さえ部31A〜31Hのヒータにフィードバックすればよい。
【0078】
フック401または押さえ部31A〜31Hに温度センサを設けないで、その代わりに、ヒータへ電源を供給する配線に、サーモスタット等の温度に感応してオンオフを切り替えるスイッチ素子を設けてもよい。この場合には、4個の固定電極を8個のセグメント電極に分割する必要はない。
【0079】
次に図7A〜図7Fを参照して、回転機構の押さえ部31A、及び、搬入駆動機構の動作を説明する。
【0080】
図7Aは、反応プレートアセンブリ10Aが搬入ベースのプレヒート用ヒータ251の上に配置された状態を示す。プレヒート用ヒータ251の上面と第1の温度調節装置20Aの上面は共面である。反応プレートアセンブリ10Aの上には、プレヒートカバー252が配置されている。搬入駆動機構は、ガイドピン256を備えたガイドピンアーム255を有する。
【0081】
プレヒート(酵素活性化)を行うために、反応プレートアセンブリ10Aは、プレヒート用ヒータ251上にて、95℃で約10分間保持される。
【0082】
押さえ部31Aは、押さえ部材300Aと、支点400と、支店400回りに枢転可能に装着されたフック401を有する。押さえ部材300Aの外端と第1の温度調節装置20Aの間に搬入口35が形成されている。
【0083】
押さえ部材300Aとフック401の間には、バネ410が装着されている。バネ410の弾性力によって、フック401は、図示の時計方向の枢動力が付与されている。フック401の内端の上側に設けられた突起403は、押さえ部材300Aに当接しており、フックが時計方向にこれ以上枢動することはできない。フック401の外端の下側に設けられた突起405の両側にはテーパ406、407が形成されている。
【0084】
図7Bは、駆動部に接続したガイドピンアーム255を介してガイドピン256を降下させた状態を示す。ガイドピン256は反応プレートアセンブリ10Aのガイドピン用孔10aに挿入される。このガイドピン用孔10aは、重り部材の孔と反応プレートの孔が接続されたものである。
【0085】
図7Cは、ガイドピンアーム255が、回転機構の半径方向内方に移動した状態を示す。ガイドピンアーム255が半径方向内方に移動すると、反応プレートアセンブリ10Aも、半径方向内方に移動する。反応プレートアセンブリ10Aは搬入口35を介して内方に移動する。プレヒート用ヒータ251の上面と第1の温度調節装置20Aの上面は共面であるから、反応プレートアセンブリ10Aは、半径方向内方に、水平移動することによって、プレヒート用ヒータ251の上面から第1の温度調節装置20Aの上面に容易に移動する。ここで、ガイドピンアーム255の移動速度は、回転機構の押さえ部の円周方向の移動速度に比べて十分速いものとする。従って、回転機構を停止させることなく、反応プレートアセンブリ10Aの搬入が可能である。
【0086】
反応プレートアセンブリ10Aが半径方向内方に移動すると、反応プレートアセンブリ10Aの内縁は、フック401の外端の外側のテーパ407に当接する。
【0087】
図7Dは、ガイドピンアーム255が、更に、回転機構の半径方向内方に移動した状態を示す。反応プレートアセンブリ10Aが、更に、半径方向内方に移動すると、反応プレートアセンブリ10Aによって、フック401の外端は押し上げられる。フック401は、支点400の周りに、この図にて、反時計方向に枢動する。
【0088】
図7Eは、ガイドピンアーム255が、更に、回転機構の半径方向内方に移動した状態を示す。反応プレートアセンブリ10Aが、更に、半径方向内方に移動すると、反応プレートアセンブリ10Aは、フック401の凹部408の下まで押し込まれる。ここで、フック401は、バネ410の弾性力によって、反応プレートアセンブリ10Aを押し付ける。それによって、反応プレートアセンブリ10Aは、固定される。
【0089】
図7Fは、ガイドピンアーム255を上昇させ、回転機構の半径方向外方に移動した状態を示す。ガイドピンアーム255を上昇させると、ガイドピン115は、反応プレートアセンブリ10Aのガイドピン孔10aから引き抜かれる。更に、ガイドピンアーム255を半径方向外方に移動させ、初期の位置に戻す。ガイドピンアーム255は、次の反応プレートアセンブリを次の空の押さえ部に挿入するために待機する。
【0090】
尚、搬入ベースに、反応プレートアセンブリが配置されている場合にのみ、搬入駆動機構を作動させるように構成してよい。しかしながら、搬入ベースに、反応プレートアセンブリが配置されていない場合にも、搬入駆動機構を作動させてもよい。ガイドピンアーム255が空移動しても、ガイドピンアーム255は、押さえ部31A又はフック401に衝突することはない。
【0091】
排出駆動機構の動作は、搬入駆動機構の動作と逆である。排出駆動機構によって、反応プレートアセンブリを、温度調節装置から排出ベースに排出する場合には、上述の動作の逆の動作を行えばよい。
【0092】
図8を参照して、本発明による検出装置の構造の例を説明する。本例の検出装置23は、光源801、第1レンズ802、励起フィルタ803、ダイクロイックミラー804、第2レンズ805、蛍光フィルタ807、第3レンズ808、及び、検知器809を有する。
【0093】
光源801からの励起光は、第1レンズ802によって集光され、平行光となる。平行光化した励起光より、励起フィルタ803によって最適な励起波長が選択される。波長選択された励起光は、ダイクロイックミラー804によって進路を変更し、第2レンズ805によって収斂光となり、反応ウエル806に到達する。励起光によって、反応ウエル内の蛍光色素が励起され、発光する。
【0094】
反応ウエルからの発光(蛍光)は、第2レンズ805によって集光され、平行光となり、ダイクロイックミラー804を透過する。透過した発光より、蛍光フィルタ807によって、所定の波長の蛍光が選択される。波長選択された蛍光は、第3レンズ808によって絞られ、検知器809に到達する。検知器809は、蛍光を検出する。
【0095】
光源801は、反応ウエル内の蛍光色素を励起する励起光を発生させるものであり、LEDやハロゲンランプであってよい。検知器809として、ホトダイオードや光電子増倍管などが使われる。図示していないが、励起フィルタ803を透過した励起光の一部をビームスプリッタで分割して、励起光のモニタとしてもよい。
【0096】
光源801、励起フィルタ803および蛍光フィルタ807は、検出する蛍光色素の種類に応じて変更可能である。本発明の核酸分析装置では、3つの検出装置23A〜23Cを有するが、これは3種類の蛍光色素を使用することを想定している。検出装置23A〜23Cに、CCDイメージセンサを用いてもよい。
【0097】
図9を参照して、本発明の核酸分析装置の例を説明する。本例の核酸分析装置は、核酸抽出部901、分注部902及び増幅検出部903を有する。増幅検出部903には、上述の温度制御装置が組み込まれている。
【0098】
核酸抽出部901は、全血、組織などの試料から核酸を抽出する部分である。核酸抽出部901は、以下の工程を実現する。(1)カオトロピック剤を含む溶液によって、細胞を破砕あるいはアガロースゲルを溶解させ、バッファ中に目的の核酸を溶出させる。(2)磁性ビーズ(磁性シリカ粒子)を溶解したサンプルに加え、混合することにより、粒子表面に目的の核酸を吸着させる。(3)洗浄液にて、B/F(固液)分離を繰り返すことにより、不要な核酸や蛋白質等の夾雑物を除去する。(4)洗浄後、磁性ビーズを減菌水または低塩濃度のバッファ中に懸濁することによってビーズ表面からDNAを溶出させる。(5)目的の核酸を含んだ溶出液から磁性ビーズを除去する。
【0099】
分注部902は、先の工程によって抽出された核酸溶液を反応プレートの反応ウエルに分注する工程を担う。単一の遺伝子にのみ注目するような分析の場合には、1検体からの核酸溶液を、反応プレート上の単一の反応ウエルに分注する。複数の遺伝子に注目する分析の場合には、1検体からの核酸溶液を、反応プレート上の複数の反応ウエルに分注する。試薬はこの分注部によってそれぞれの反応ウエルに分注される場合もあり、反応プレートを提供するメーカがあらかじめ分注済みの反応プレートを提供する場合もある。
【0100】
分注後に、反応プレートの上面に透明なカバーを貼り付ける。カバーは、熱または圧力によって、反応プレートに密着する。この分注済の且つシール済みの反応プレートに重り部材を組み付ける。こうして反応プレートアセンブリが形成される。
【0101】
増幅検出部903は、温度調節装置によって、PCR反応を発生させて、この反応をリアルタイムで検出する。
【0102】
核酸抽出部901から増幅検出部903の各工程は、独立した装置に分割されていてもよいし、増幅検出部とその上流の分注部を組み合わせた装置であってもよいし、また抽出部901から増幅検出部903までが一体の装置であってもよい。
【0103】
以上本発明の例を説明したが本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは、当業者によって容易に理解されよう。
【符号の説明】
【0104】
10A〜10H…反応プレートアセンブリ、20A〜20H…温度調節装置、21…断熱材、23A〜23C…検出装置、25…搬入ベース、27…排出ベース、31A〜31H…押さえ部、32…支持部材、33…回転軸、35…搬入口、100…円周、101…反応プレート、102、102A、102B…反応ウエル、103…ガイドピン用孔、105…カバー、107…重り部材、201…熱伝導プレート、202…熱源、203…温度センサ、251…プレヒート用ヒータ、252…プレヒートカバー、255…導入用ガイドピンアーム、256…ピン、272…カバー、275…排出用ガイドピンアーム、400…支点、401…フック、405…突起、406、407…テーパ、410…バネ、501〜504…電極、505…配線、506…滑り電極、801…光源、802…レンズ、803…励起フィルタ、804…ダイクロイックミラー、805…レンズ、807…蛍光フィルタ、808…レンズ、809…検出器、901…核酸抽出部、902…分注部、903…増幅検出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的試料に含まれる核酸を増幅することによって生物学的試料を分析するための核酸分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液、血漿、組織片などの生物学的試料に含まれる核酸の分析は、生物学、生化学、医学などの学術研究ばかりでなく、診断、農作物の品種改良、食品検査といった産業など多岐の分野で行われている。核酸の分析方法としてもっとも広く普及している方法はPCR(Polymerase Chain Reaction)と呼ばれる、分析したい領域の核酸を塩基配列特異的に増幅させる技術である。PCRの応用として、分析したい核酸に蛍光ラベルを付加し、励起光を照射して経時的に蛍光強度を測定することで、微量の核酸を高感度に検出することも可能である。
【0003】
PCRでは、核酸とそれを増幅させるための試薬を含む溶液を、95℃程度に加熱して核酸を熱変性させ、その後60℃程度まで冷却して核酸のアニーリングと伸長反応を進めるというサイクルが30〜40回繰り返される。現在主流のPCR装置では、96〜386個の反応ウエルを有するマイクロタイタープレートと呼ばれる反応プレートをペルチェ素子上に配置し、ペルチェ素子の温度を上下させることで温度サイクルを与えている。この方法では、ペルチェ素子そのものの温度変化に時間を要するため、分析時間の短縮に向けた大きな課題となっていた。
【0004】
また、上記の方法では、96〜386個の反応ウエルにセットした複数の試料を一括で処理するバッチ処理にならざるを得ず、一旦処理が開始されるとそのバッチが終了するまで次の処理が開始できないという課題もあった。
【0005】
非特許文献1には、温度サイクルの高速化に対する課題を解決するために、予め複数の温度に設定したヒータ上を、反応ウエルを有するディスク型の反応プレートが接触回転する構造が開示されている。この例では、ヒータを温度変化させる必要が無くなり、反応プレートの温度変化を迅速に行うことが可能となる。また、上面、下面側に配置された温度調節装置からの熱を受け取り易くするために、サンプル溶液を平面方向に広げる工夫もされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−185389号公報
【特許文献2】米国特許公報2009/0068064 A1
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Tsuguto Fujimoto, et al.,Jpn.J.Ingect.Dis.,63,31-35 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、複数のウエルを備えた円板状のマイクロチップを回転させる機構を備えた温度制御装置の例が記載されている。特許文献2には、扇状のプレートインサートをディスクアッセイプレートに装填するように構成された装置が記載されている。
【0009】
従来の核酸分析装置では、装填した反応プレートの分析が終了するまでは、次の反応プレートを装填することができなかった。また、随時、反応プレートを装填し、随時、反応プレートをアンロードすることができなかった。従来の核酸分析装置は、試料のローディング及びアンローディングの自由度が高くないため、効率的に核酸分析を行うことができなかった。
【0010】
本発明の目的は、核酸分析において、反応プレートのローディング及びアンローディングの自由度が高く、効率的に試料を分析することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、核酸分析装置は、円周方向に沿って配置された複数の温度調節装置と、温度調節装置の上に配置された反応プレートアセンブリを円周方向に沿って回転させる回転機構と、温度調節装置の外周側に設けられた搬入ベース及び排出ベースと、反応プレートアセンブリを搬入ベースから温度調節装置の上に搬入する搬入駆動機構と、反応プレートアセンブリを温度調節装置の上から排出ベースに排出する排出駆動機構と、反応プレートアセンブリに装填された試料を光学的に検出する検出装置と、を有する。
【0012】
本発明によると、回転機構は、回転軸と、該回転軸の周りに回転する複数の押さえ部と、有する。反応プレートアセンブリは、押さえ部によって温度調節装置の上に押し付けられた状態で、温度調節装置の上を円周方向に沿って移動するように構成されている。
【0013】
搬入駆動機構は、搬入ベースに配置された反応プレートアセンブリを半径方向内方に移動させて、押さえ部と温度調節装置の間に搬入する。
【0014】
排出駆動機構は、温度調節装置の上に配置された反応プレートアセンブリを半径方向外方に移動させて、押さえ部と温度調節装置の間より、排出ベースの上に排出する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、反応プレートの装填及びアンローディングの自由度が高く、効率的に試料を分析することができる核酸分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の核酸分析装置の主要部の平面構成を示す図である。
【図2A】本発明の核酸分析装置の温度調節装置に設定される温度サイクルの例を示す図である。
【図2B】本発明の核酸分析装置の温度調節装置に設定される温度サイクルの例を示す図である。
【図3A】本発明の核酸分析装置の反応プレートの例を示す図である。
【図3B】本発明の核酸分析装置の反応プレートの例を示す図である。
【図3C】本発明の核酸分析装置の反応プレートの例を示す図である。
【図3D】本発明の核酸分析装置の反応プレートの例を示す図である。
【図3E】図3Dの反応プレートの断面構成を示す図である。
【図4】本発明の核酸分析装置の温度制御装置の断面構成を示す図である。
【図5】本発明の核酸分析装置の温度制御装置の反応プレートの保持機構を説明する図である。
【図6A】本発明の核酸分析装置の温度制御装置の反応プレートアセンブリの保持機構の温調用配線を説明する図である。
【図6B】本発明の核酸分析装置の温度制御装置の反応プレートアセンブリの保持機構の温調用配線を説明する図である。
【図7A】本発明の核酸分析装置の回転機構の押さえ部と搬入駆動機構の動作を説明する説明図である。
【図7B】本発明の核酸分析装置の回転機構の押さえ部と搬入駆動機構の動作を説明する説明図である。
【図7C】本発明の核酸分析装置の回転機構の押さえ部と搬入駆動機構の動作を説明する説明図である。
【図7D】本発明の核酸分析装置の回転機構の押さえ部と搬入駆動機構の動作を説明する説明図である。
【図7E】本発明の核酸分析装置の回転機構の押さえ部と搬入駆動機構の動作を説明する説明図である。
【図7F】本発明の核酸分析装置の回転機構の押さえ部と搬入駆動機構の動作を説明する説明図である。
【図8】本発明の核酸分析装置の検出光学系の構成を示す模式図である。
【図9】本発明の核酸分析装置の全体の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照して、本発明による核酸分析装置について説明する。図1は、核酸分析装置の主要部の平面構成を示す。本例の核酸分析装置は、円周方向に沿って配置された第1〜第8の温度調節装置20A〜20Hと、第8の温度調節装置20Hの上方に配置された検出装置23A〜23Cと、第1の温度調節装置20Aの外周側に配置された搬入ベース25と、第5の温度調節装置20Eの外周側に配置された排出ベース27とを有する。
【0018】
温度調節装置20A〜20Hの上に、温度調節装置20A〜20Hの数と同数か又はそれより少ない数の反応プレートアセンブリ10A〜10Hを装填することができる。反応プレートアセンブリ10A〜10Hは、反応プレートとその上に配置された透明な重り部材を有する。反応プレートは反応ウエル102及び孔103を有する。重り部材も、反応プレートの孔103に対応した位置に孔を有する。重り部材の孔と反応プレートの孔103が接続されて、反応プレートアセンブリのガイドピン孔が形成される。反応プレートの構造については、後に、図3A〜図3Eを参照して説明する。反応プレートと重り部材は熱伝導率が高い材料によって形成される。
【0019】
反応ウエル102には、核酸と必要な試薬が注入されている。反応プレートの上面には、反応ウエルを覆うように、樹脂製の薄い透明なカバーが装着されている。透明なカバーによって反応ウエルはシールされる。重り部材は、反応プレートの上面に装着された透明なカバーの上に配置されている。重り部材は、透明なカバーが剥れることを防止する。
【0020】
本例の核酸分析装置は、更に、反応プレートアセンブリ10A〜10Hを、温度調節装置20A〜20Hの上にて、円周方向に沿って、一定の速度にて回転させる回転機構を有する。反応プレートアセンブリ10A〜10Hは、温度調節装置20A〜20Hの上にて、温度調節装置20A〜20Hと熱的に接触した状態にてスライドする。
【0021】
回転機構は、回転軸33と、回転軸に接続された支持部材32と、支持部材32によって支持された押さえ部31A〜31Hを有する。押さえ部31A〜31Hは、反応プレートアセンブリ10A〜10Hを温度調節装置20A〜20Hの上に押さえ付けるように構成されている。押さえ部31A〜31Hには、窓311が形成されている。窓311から、反応プレートの反応ウエル102を観察することができる。押さえ部31A〜31Hの構造の例は、後に図4を参照して説明する。
【0022】
本例の回転機構は、8個の押さえ部31A〜31Hを有する。しかしながら、反応プレートアセンブリ10A〜10Hを温度調節装置20A〜20Hの上に押さえ付けることができるなら、他の構造であってもよい。例えば、支持部材32は回転軸33に装着されたスポーク状部材として構成されているが、他の構造であってもよい。
【0023】
回転軸33はモータによって一定速度にて回転する。回転軸33が回転すると、押さえ部31A〜31Hと共に、押さえ部31A〜31Hによって押さえ付けられている反応プレートアセンブリ10A〜10Hも回転する。反応プレートアセンブリ10A〜10Hは、温度調節装置20A〜20Hに対して相対的に円周方向に沿って、移動する。反応プレートアセンブリ10A〜10Hの移動中に、反応プレートは、温度調節装置20A〜20Hによって、所定の温度に維持される。
【0024】
本例の核酸分析装置は、更に、反応プレートアセンブリを搬入ベース25から第1の温度調節装置20Aの上に搬入する搬入駆動機構を備える。
【0025】
搬入ベース25は、プレヒート(酵素活性化)用の熱源であるプレヒート用ヒータ251、及び、プレヒートカバー252を有する。プレヒート用ヒータ251の上に、反応プレートアセンブリを配置することができる。プレヒートカバー252は、プレヒート用ヒータ251の上に配置された反応プレートアセンブリの上を覆うように構成されている。プレヒート用ヒータ251とプレヒートカバー252の間の高さ方向の距離は、反応プレートアセンブリの厚さに略等しい。それによって、プレヒートカバー252は、反応プレートアセンブリに密着する。好ましくは、プレヒートカバー252の温度は、プレヒート用ヒータ251の温度と同一に保持される。
【0026】
搬入駆動機構は、1対の導入用ガイドピンアーム255を備える。導入用ガイドピンアーム255にはガイドピン(図7A参照)が設けられている。ガイドピンは、導入用ガイドピンアーム255より下方に延びている。
【0027】
反応プレートアセンブリを温度調節装置に搬入するには、導入用ガイドピンアーム255に設けられたガイドピンを反応プレートアセンブリのガイドピン孔に挿入する。次に、導入用ガイドピンアームを半径方向内方(矢印250)に移動させる。2つの導入用ガイドピンアーム255の間の距離は、押さえ部31A〜31Hの幅より僅かに大きい。従って、2つの導入用ガイドピンアーム255の先端は、押さえ部31A〜31Hの両側を挟むように、半径方向内方に移動可能である。導入用ガイドピンアーム255の移動とともに、反応プレートアセンブリは、半径方向内方に移動し、第1の温度調節装置20Aに配置される。
【0028】
本例の搬入駆動機構では、回転軸33の回転を止めることなく、反応プレートアセンブリを温度調節装置に導入することができるが、これについては、後に、図7A〜図7Fを参照して説明する。
【0029】
本例の搬入駆動機構は、反応プレートアセンブリを、プレヒート用ヒータ251の上にて移動し、更に、プレヒート用ヒータ251から第1の温度調節装置20Aへ搬入する。しかしながら、搬入駆動機構は、プレヒート用ヒータ251から第1の温度調節装置20Aへの搬入のみを行い、プレヒート用ヒータ251上における反応プレートアセンブリの移動は、他の駆動機構を用いてもよい。
【0030】
本例の核酸分析装置は、更に、反応プレートアセンブリを第5の温度調節装置20Eから排出ベース27の上に排出する排出駆動機構を備える。
【0031】
排出ベース27はカバー272を備える。排出駆動機構は、1対の排出用ガイドピンアーム275を備える。排出用ガイドピンアーム275には、ガイドピン(図示なし)が設けられている。ガイドピンは、排出用ガイドピンアーム275より下方に延びている。
【0032】
反応プレートアセンブリを温度調節装置より排出するには、排出用ガイドピンアーム275を半径方向内方に移動させる。2つの排出用ガイドピンアーム275の間の距離は、押さえ部31A〜31Hの幅より僅かに大きい。従って、2つの排出用ガイドピンアーム275の先端は、押さえ部31A〜31Hの両側を挟むように、半径方向内方に移動可能である。次に、排出用ガイドピンアーム275に設けられたガイドピンを、第5の温度調節装置20Eに配置された反応プレートアセンブリのガイドピン孔に挿入する。次に、排出用ガイドピンアーム275を半径方向外方(矢印270)に移動させる。排出用ガイドピンアーム275の移動とともに、反応プレートアセンブリは、半径方向外方に移動し、排出ベース27に配置される。
【0033】
本例の排出駆動機構では、回転軸33の回転を止めることなく、反応プレートアセンブリを温度調節装置より排出することができる。
【0034】
検出装置23A〜23Cは、第8の温度調節装置20Hの上方に配置されている。検出装置23A〜23Cは、反応ウエル102に装填された試料へ励起光を照射し、反応ウエル102に装填された試料からの蛍光の強度を測定する光学的検出装置であってよい。検出装置23A〜23Cは、それぞれが異なる色素の発光を検出する。ここでは、3個の検出装置が設けられているから、3種の色素の発光を検出することができる。
【0035】
反応プレートアセンブリが第8の温度調節装置20Hの上をスライドするとき、反応プレートアセンブリの複数の反応ウエルは、検出装置23A〜23Cの直下を通過する。複数の反応ウエル102は反応プレートの上に円弧状に配列されている。反応プレートアセンブリは、複数の反応ウエル102が回転軸33の回転中心を中心とする円の円周に沿って配置されるように、温度調節装置の上に配置される。従って、反応プレートアセンブリが温度調節装置の上を円周方向に沿って移動するとき、全ての反応ウエルは、同一の円周に沿って移動する。
【0036】
本例の核酸分析装置の操作を説明する。核酸分析装置では、様々な分析、解析が可能であるが、ここでは、PCRを行う場合を説明する。血液や組織からなる試料から抽出した核酸と、PCR反応に必要な試薬(酵素、プライマ、バッファなど)を反応プレートの反応ウエルに分注する。透明カバーによって反応ウエルをシールし、その上に、透明な重り部材を配置することにより、反応プレートアセンブリ10A〜10Hが形成される。
【0037】
搬入ベース25では、プレヒート(酵素活性化)を行う。プレヒート用ヒータ251は、反応プレートアセンブリを95℃に保持する。好ましくは、プレヒートカバー252の温度も95℃に保持する。反応プレートアセンブリは、プレヒート用ヒータ251上に約10分間保持される。この温度及び時間は、反応ウエル内に添加した酵素を活性化させるために必要である。これは、抽出した核酸がDNAの場合である。
【0038】
RNAを抽出する場合には、プレヒート(酵素活性化)の直前に40℃で5分間保持する逆転写の工程が必要になる。この場合には、図示の搬入ベース25の前段にさらに40℃のプレヒート用ヒータ(図示せず)とプレヒートカバー(図示せず)、ガイドピン(図示せず)を追加すればよい。
【0039】
搬入ベース25にてプレヒート(酵素活性化)が完了すると、搬入駆動機構によって、反応プレートアセンブリを搬入ベース25から第1の温度調節装置20Aの上に搬入する。搬入駆動機構は、回転軸33の回転を止めることなく、反応プレートアセンブリを第1の温度調節装置20Aに搬入する。反応プレートアセンブリは、温度調節装置20A〜20Hに熱的に接触した状態で温度調節装置20A〜20Hの上を順にスライドする。第1〜第8の温度調節装置20A〜20Hの温度は、予め決められた温度サイクルに従って設定される。即ち、反応プレートの反応ウエルに保持された核酸は、第1〜第8の温度調節装置20A〜20Hによって構成される温度サイクルに供される。
【0040】
PCRでは、核酸と増幅試薬を含む溶液を、95℃程度に加熱して核酸を熱変性させる工程と、次に60℃程度まで冷却して核酸のアニーリングと伸長反応を行う工程を含む温度サイクルが用いられる。この温度サイクルは、通常、30〜40回繰り返される。
【0041】
ここでは、反応プレートアセンブリが1回転することにより、1温度サイクルが完了するものとする。温度サイクルを30〜40回繰り返す場合には、反応プレートアセンブリを30〜40回回転させる。第1〜第8の温度調節装置20A〜20Hの温度は、例えば、次のように設定される。
第1の温度調節装置20A…95℃
第2の温度調節装置20B…95℃
第3の温度調節装置20C…60℃
第4の温度調節装置20D…60℃
第5の温度調節装置20E…60℃
第6の温度調節装置20F…60℃
第7の温度調節装置20G…60℃
第8の温度調節装置20H…60℃
【0042】
1温度サイクルの時間(周期)は50〜200秒、特に、100〜150秒である。1温度サイクルの時間は、PCRアッセイと試薬によって決定される。高速反応が可能な試薬を用いる場合には、1温度サイクルの時間を短くすることができる。したがって、核酸分析時間の短縮化が可能になる。更に、1温度サイクルの時間は、反応プレートアセンブリの材料と構造によっても変化する。反応プレートアセンブリの材料として熱伝導率が高い材料を用い、反応プレートアセンブリと温度調節装置の間の熱伝達率を高くすることにより、核酸分析の効率化と核酸分析時間の短縮化が可能になる。
【0043】
8個の温度調節装置の円周方向の寸法は同一であってよい。本例では、95℃の温度調節装置は、2個の温度調節装置からなり、円周の1/4の寸法を有する。60℃の温度調節装置は、6個の温度調節装置からなり、円周の3/4の寸法を有する。回転軸33が1回転する時間をt秒とすると、各反応ウエルが、95℃の温度調節装置に滞在している時間は、(1/4)t秒となり、各反応ウエルが、60℃の温度調節装置に滞在している時間は、(3/4)t秒となる。各反応ウエルが、95℃の温度調節装置、及び、60℃の温度調節装置に、それぞれ滞在している時間は予め設定されている。回転軸33の回転速度を変化させることにより、各反応ウエルが、95℃の温度調節装置に滞在する時間、及び、60℃の温度調節装置に滞在している時間を所定の値に設定することができる。
【0044】
1温度サイクルが完了する毎に、第8の温度調節装置20Hの上方に配置された検出装置23A〜23Cによって、反応プレートの反応ウエルに装填された試料が光学的に観察される。ここでは、3個の検出装置が設けられているから、3種の色素の発光を検出することができる。
【0045】
温度サイクルを所定の回数、繰り返したら、排出駆動機構によって、反応プレートアセンブリを、第5の温度調節装置20Eから排出ベース27に排出する。
【0046】
本例の核酸分析装置では、押さえ部31A〜31Hに配置されている全ての反応プレートアセンブリに対して、同時に温度サイクルを開始させ、同時に温度サイクルを終了させる必要はない。押さえ部31A〜31Hのいずれかに空きがあれば、何時でも、そこに、あらたな反応プレートアセンブリを挿入することができる。例えば、搬入ベース25に、逐次、又は、随時、反応プレートアセンブリが到着するような場合には、空いた押さえ部に、それを、逐次、又は、随時、装填することができる。PCR反応が終了した反応プレートアセンブリを、逐次、又は、随時、排出することができる。こうして、空きがないように、常に全ての押さえ部31A〜31Hに反応プレートアセンブリを挿入することにより、PCRを効率的に実施することができる。
【0047】
本例の核酸分析装置では、PCR反応が終了した反応プレートアセンブリを随時排出することができるために、全ての反応プレートアセンブリについて、PCR反応が終了するまで待つ必要はない。従って、分析結果の報告までの時間を短縮できる。さらに、全ての反応プレートアセンブリは、同一の円周状の軌道に沿って移動するから、搬入ベース25、排出ベース27、及び、検出装置23A〜23Cを1箇所に設ければよい。従って、核酸分析装置の全体の寸法の増加を抑制しながら、スループットを向上させることができる。
【0048】
上述の例では、反応プレートアセンブリが1回転することにより、1温度サイクルが完了する。しかしながら、反応プレートアセンブリが1回転することにより、複数回の温度サイクルが完了するように構成してもよい。例えば、1回転する間に、2回の温度サイクルが完了するように構成してよい。この場合、半周で1回の温度サイクルが完了するように、8個の温度調節装置の温度を所定の温度に設定する。
【0049】
回転機構の回転軸が1回転する間に、複数の温度サイクルを完了させる場合には、回転軸33の回転速度を低速化する必要がある。例えば、回転機構の回転軸が1回転する間に、同一の温度サイクルを2回完了させる場合には、回転速度を半分にする。回転速度が低速になると、検出装置における発光を検出精度が高くなる利点がある。
【0050】
更に、上述の例では、円周上に8個の温度調節装置20A〜20Hを設けるが、温度調節装置の数は8個に限定されるものではない。温度調節装置は、8個以下でもよいし、8個以上でもよい。更に、温度調節装置の円周方向の寸法は、全て同一であってもよいが、同一でなくてもよい。即ち、円周を等分することによって温度調節装置を設けてもよいが、不等分することによって温度調節装置を設けてもよい。
【0051】
本例では、温度調節装置20A〜20Hの平面寸法は、反応プレートアセンブリ10A〜10Hの平面寸法より大きい。従って、温度調節装置に収納することが可能であれば、様々な平面寸法及び形状を有する反応プレートアセンブリを用いることができる。しかしながら、所定の反応プレートアセンブリのみを使用する場合には、温度調節装置の平面寸法及び形状を、その反応プレートアセンブリの平面寸法及び形状と同一にしてもよい。
【0052】
本例では、複数の温度調節装置20A〜20Hを有するから、温度サイクルの変更が容易である。しかしながら、温度サイクルの変更が不要な場合には、複数の温度調節装置20A〜20Hを備える必要はない。例えば、上述の例のように、95℃と60℃の2つの設定温度を含む温度サイクルだけを実行する場合には、95℃の温度調節装置と60℃の温度調節装置の2つの温度調節装置を設ければよい。この場合、各温度調節装置の円周方向の寸法は、各温度に保温する時間に対応するように設定されてよい。
【0053】
上述の例では、核酸分析装置に装填される反応プレートアセンブリは、全て同一の温度サイクルに供するものとしている。しかしながら、回転機構を停止することによって、核酸分析装置に装填されている反応プレートアセンブリを、互いに異なる温度サイクルに供することも可能である。回転機構を停止し、温度調節装置20A〜20Hの各々を、独立した温度プログラムによって、互いに異なる温度サイクルにて作動させればよい。
【0054】
尚、反応プレートアセンブリを、温度サイクルの完了毎に、検出装置23A〜23Cの位置に移動させる必要がある。また、反応プレートアセンブリの搬入及び排出には、反応プレートアセンブリの搬入ベース又は排出ベースに移動させる必要がある。従って、この場合には、検出装置23A〜23C、搬入ベース及び排出ベースを、温度調節装置の周りに移動させる機構を設けるとよい。
【0055】
上述の例では、核酸分析装置の温度調節装置20A〜20Hに反応プレートアセンブリを装填する場合を説明したが、温度調節装置20A〜20Hに反応プレートを装填してもよい。
【0056】
図2A及び図2Bは、温度サイクルの例を示す。図2Aに示す温度サイクルは、上述のように、95℃の加熱と、60℃の保温を含む。図2Bに示す温度サイクルは、95℃の加熱と、60℃の保温と、約72℃の保温の3つのステップを含む。本例の温度制御装置では、第1〜第8の温度調節装置20A〜20Hの温度を所定の温度に設定することにより、所望の温度サイクルを構成することができる。即ち、本例の温度制御装置では、8個の温度調節装置の各々の温度を任意の温度に設定することにより、任意の温度サイクルを設定することができる。
【0057】
図3A〜図3Eを参照して、本発明による反応プレートの例を説明する。図3Aに示す例では、反応プレート101の上面に複数の反応ウエル102が円周100に沿って配置されている。円周100は、回転軸33を中心として回転する反応ウエル102の軌跡に対応する。反応プレート101の両端には、ガイドピン用孔103が設けられている。
【0058】
図3Bに示す例では、同心円に沿って、2列の反応ウエル102A、102Bが形成されている。本例では、検出装置23A〜23Cに、2次元のCCDイメージセンサを用いてもよい。図3Cに示す例では、反応プレート101の上面に1個の反応ウエル102が形成されている。
【0059】
図3D及び図3Eに反応プレート101の他の例を示す。図3Dは、この反応プレート101の平面構成を示し、図3Eは、図3Dの線A−Aに沿って切断した、この反応プレート101の断面構成を示す。この反応プレート101の上面には、凹部からなる反応ウエル102が形成されている。反応ウエル102に、試料と試薬を分注した後、その上に樹脂製の薄い透明なカバー105を貼り付ける。
【0060】
図4を参照して、本発明の核酸分析装置に設けられた温度調節装置の構造の例を説明する。ここでは、第1の温度調節装置20Aの構造を説明する。第1の温度調節装置20Aは、熱源202と、その上に配置された熱伝導プレート201と、熱源202の温度を検出する温度センサ203を有する。熱伝導プレート201の上を、反応プレートアセンブリ10Aが摺動するように構成されている。反応プレートアセンブリ10Aは反応プレート101とその上の透明なカバー105とその上の透明な重り部材107を有する。
【0061】
熱源202は、シリコンラバーヒータやペルチェなどの電気的装置が好ましい。熱伝導プレート201は板状の剛体である。熱伝導プレート201は、熱源202の熱を均一にし、反応プレート101に熱を効率的に伝えるために、熱伝導率の高い材料、例えば、アルミニウムなどの金属やセラミックによって構成される。
【0062】
熱伝導プレート201は、反応プレートアセンブリ10Aの摺動によって磨耗する可能性がある。そこで、磨耗を防止するために、熱伝導プレート201に表面処理を施してもよい。アルミニウム板の場合には、アルマイト処理を施してもよい。尚、熱伝導性が犠牲になるが、熱伝導プレート201に樹脂カバーを貼り付けたり、摺動性の高いPOM(polyacetal, polyoxymethylene)などの薄い樹脂板を密着させてもよい。
【0063】
温度センサ203は、熱源202に接触するように、又は、熱源202と熱伝導プレート201の両者に接触するように装着されている。温度センサ203によって検出された熱源202又は熱伝導プレート201の温度は、温度調節装置の制御部(図示せず)に送られる。制御部は、検出された温度が所定の温度に一致するように、熱源202に供給する電流値を調整する。
【0064】
第1の温度調節装置20Aと、それに隣接する第2の温度調節装置20Bの間には、断熱材21が充填され、温度調節装置間における熱の干渉を防いでいる。
【0065】
図5を参照して、本発明の核酸分析装置に設けられた反応プレートアセンブリの保持機構の構造及び動作の例を説明する。尚、熱伝導プレート201の図示は省略されている。第1の温度調節装置20Aの上に、反応プレートアセンブリ10Aが配置されている。反応プレートアセンブリ10Aは、反応プレート101とその上に装着された透明なカバー105とその上に配置された透明な重り部材107を含む。
【0066】
温度調節装置20Aに隣接して、搬入ベース25のヒータ251が配置されている。更に、ヒータ251の上に、ヒータカバー252が配置されている。温度調節装置20Aと搬入ベース25のヒータ251の間の距離は僅かであり、両者は略接触している。温度調節装置20Aの上面とヒータ251の上面は共面を形成している。温度調節装置20Aと押さえ部31Aの間に、反応プレートアセンブリ10Aを搬入するための搬入口35が形成されている。搬入口35は、温度調節装置20Aと押さえ部31Aの間の外周面に沿って円周状に開口している。搬入口35の高さ方向の寸法H1は、ヒータ251とヒータカバー252の間の間隙の寸法H2より大きい。
【0067】
押さえ部31Aは、押さえ部材300Aと、支点400と、支点回りに枢転可能に装着されたフック401を有する。フック401の外端の下面には突起405が形成され、この突起の両側には、テーパ406、407が形成されている。突起405の内側には、反応プレートアセンブリ10Aを押さえるための凹部408が形成されている。フック401の内端の上面には、フックのストロークを制御するための突起403が設けられている。
【0068】
押さえ部材300Aとフック401の間には、バネ410が装着されている。バネ410の弾性力によって、フック401は、本図において、時計方向の枢動力が付与される。従って、フック401は、バネ410の弾性力によって、反応プレートアセンブリ10Aの上に押し付けられている。反応プレートアセンブリ10Aは、バネ410の弾性力によって、温度調節装置20Aの上に押し付けられている。こうして反応プレート101が温度調節装置20Aに密着することにより、反応プレート101の温度は、温度調節装置20Aの温度と正確に同一となる。
【0069】
重り部材107は、温度サイクル中に、反応プレートに貼り付けたカバー105が剥がれるのを防ぐために用いる。従って、重り部材107は、カバー105と平面的に密着するように、平坦面を有することが望ましい。更に、反応プレートの反応ウエルの核酸の発光を光学的に観察することができるように、透明な材料によって形成される。重り部材107の材料には、例えば所定の透過率を有するガラスを用いるとよい。
【0070】
重り部材107は、所定の熱容量を有する。従って、重り部材107と反応プレート101がカバー105を介して接触していても、両者は熱的に均一な状態、即ち、同一温度にならないことがある。例えば、重り部材107が室温雰囲気にあり、反応プレート101が95℃の温度条件下にあるとき、両者の間で温度差が生じる。反応ウエルの内部にて気化した試料や試薬がカバー105に接触すると、冷却され、結露する可能性がある。これを回避するために、回転機構に温度調節機構を設ける。回転機構に設ける温度調節機構は、フック401及び押さえ部31A〜31Hに設けた温度センサとヒータを含む。温度センサは、サーミスタ又は熱電対であってよい。ヒータは、DC24Vの電源が供給される電気抵抗型ヒータであってよい。回転機構に設ける温度調節機構は、フック401及び押さえ部31A〜31Hを所定の温度に保持する。反応プレート101の温度は、温度調節装置に設定された温度に従って変化するが、フック401及び押さえ部31A〜31Hの温度は、一定の温度、例えば、100℃に保持されてよい。
【0071】
押さえ部31A〜31Hは回転軸33周りに回転する。そのため、フック401及び押さえ部31A〜31Hを温度制御するには、温度制御装置からの配線が、回転により断線又は絡まることがないような構造が必要である。そこで、回転軸周りの構造を説明する。
【0072】
図6A及び図6Bを参照して、反応プレートアセンブリの保持機構の温調用の配線を説明する。図6Aは、回転軸の平面構成を示す。回転軸には8個の支持部材が装着されているが、ここでは、1個の支持部材32のみを示した。回転軸33の周囲には、配線と同数の4個の電極501〜504が配置されている。4個の電極501〜504は、円弧状に形成され、同心状に配置されている。4個の電極501〜504は、支持部材と同数の8個のセグメント電極に分割されている。8個のセグメント電極は、8個の温度調節装置に対応して配置されている。
【0073】
図6Bは、図6Aの線A−Aに沿った断面構成を示す。支持部材32の内部には配線505が配置されている。ここでは、4本の配線が配置されているものとする。配線505の内端には、滑り電極506が接続されている。4個の配線505の滑り電極506は、それぞれ、4個の固定電極501〜504に電気的に接続されている。
【0074】
例えば外周側の2個の電極501、502を、フック401または押さえ部31A〜31Hに設けた温度センサの出力用に使用してよい。内周側の2個の電極503、504を、フック401または押さえ部31A〜31Hに設けたヒータの電源供給、例えばDC24Vと接地に使用してよい。
【0075】
回転軸33が回転すると、支持部材32も回転する。支持部材32の回転中、滑り電極506は、4個の電極501〜504にそれぞれ接触しながらその上を滑動する。
【0076】
本例では、4個の固定電極501〜504は、円周方向に沿って、8個のセグメント電極に分割されている。支持部材32が1つのセグメント電極から次のセグメント電極に移動するとき、その支持部材32の滑り電極は、固定電極に接触していない。従って、このとき、押さえ部31A〜31Hに設けた温度センサ及びヒータは作動を停止する。しかしながら、隣接する2つのセグメント電極の間の距離は十分小さいから、押さえ部31A〜31Hに設けた温度センサ及びヒータの作動が停止する時間は短い。
【0077】
回転機構に設ける温度調節機構が、単一の温度センサ及びヒータによって構成される場合には、4個の固定電極を8個のセグメント電極に分割する必要はない。8個のフック401または押さえ部31A〜31Hの温度を代表する1個の温度センサにより検出し、その温度を所定の温度と比較し、両者の差を、フック401または押さえ部31A〜31Hのヒータにフィードバックすればよい。
【0078】
フック401または押さえ部31A〜31Hに温度センサを設けないで、その代わりに、ヒータへ電源を供給する配線に、サーモスタット等の温度に感応してオンオフを切り替えるスイッチ素子を設けてもよい。この場合には、4個の固定電極を8個のセグメント電極に分割する必要はない。
【0079】
次に図7A〜図7Fを参照して、回転機構の押さえ部31A、及び、搬入駆動機構の動作を説明する。
【0080】
図7Aは、反応プレートアセンブリ10Aが搬入ベースのプレヒート用ヒータ251の上に配置された状態を示す。プレヒート用ヒータ251の上面と第1の温度調節装置20Aの上面は共面である。反応プレートアセンブリ10Aの上には、プレヒートカバー252が配置されている。搬入駆動機構は、ガイドピン256を備えたガイドピンアーム255を有する。
【0081】
プレヒート(酵素活性化)を行うために、反応プレートアセンブリ10Aは、プレヒート用ヒータ251上にて、95℃で約10分間保持される。
【0082】
押さえ部31Aは、押さえ部材300Aと、支点400と、支店400回りに枢転可能に装着されたフック401を有する。押さえ部材300Aの外端と第1の温度調節装置20Aの間に搬入口35が形成されている。
【0083】
押さえ部材300Aとフック401の間には、バネ410が装着されている。バネ410の弾性力によって、フック401は、図示の時計方向の枢動力が付与されている。フック401の内端の上側に設けられた突起403は、押さえ部材300Aに当接しており、フックが時計方向にこれ以上枢動することはできない。フック401の外端の下側に設けられた突起405の両側にはテーパ406、407が形成されている。
【0084】
図7Bは、駆動部に接続したガイドピンアーム255を介してガイドピン256を降下させた状態を示す。ガイドピン256は反応プレートアセンブリ10Aのガイドピン用孔10aに挿入される。このガイドピン用孔10aは、重り部材の孔と反応プレートの孔が接続されたものである。
【0085】
図7Cは、ガイドピンアーム255が、回転機構の半径方向内方に移動した状態を示す。ガイドピンアーム255が半径方向内方に移動すると、反応プレートアセンブリ10Aも、半径方向内方に移動する。反応プレートアセンブリ10Aは搬入口35を介して内方に移動する。プレヒート用ヒータ251の上面と第1の温度調節装置20Aの上面は共面であるから、反応プレートアセンブリ10Aは、半径方向内方に、水平移動することによって、プレヒート用ヒータ251の上面から第1の温度調節装置20Aの上面に容易に移動する。ここで、ガイドピンアーム255の移動速度は、回転機構の押さえ部の円周方向の移動速度に比べて十分速いものとする。従って、回転機構を停止させることなく、反応プレートアセンブリ10Aの搬入が可能である。
【0086】
反応プレートアセンブリ10Aが半径方向内方に移動すると、反応プレートアセンブリ10Aの内縁は、フック401の外端の外側のテーパ407に当接する。
【0087】
図7Dは、ガイドピンアーム255が、更に、回転機構の半径方向内方に移動した状態を示す。反応プレートアセンブリ10Aが、更に、半径方向内方に移動すると、反応プレートアセンブリ10Aによって、フック401の外端は押し上げられる。フック401は、支点400の周りに、この図にて、反時計方向に枢動する。
【0088】
図7Eは、ガイドピンアーム255が、更に、回転機構の半径方向内方に移動した状態を示す。反応プレートアセンブリ10Aが、更に、半径方向内方に移動すると、反応プレートアセンブリ10Aは、フック401の凹部408の下まで押し込まれる。ここで、フック401は、バネ410の弾性力によって、反応プレートアセンブリ10Aを押し付ける。それによって、反応プレートアセンブリ10Aは、固定される。
【0089】
図7Fは、ガイドピンアーム255を上昇させ、回転機構の半径方向外方に移動した状態を示す。ガイドピンアーム255を上昇させると、ガイドピン115は、反応プレートアセンブリ10Aのガイドピン孔10aから引き抜かれる。更に、ガイドピンアーム255を半径方向外方に移動させ、初期の位置に戻す。ガイドピンアーム255は、次の反応プレートアセンブリを次の空の押さえ部に挿入するために待機する。
【0090】
尚、搬入ベースに、反応プレートアセンブリが配置されている場合にのみ、搬入駆動機構を作動させるように構成してよい。しかしながら、搬入ベースに、反応プレートアセンブリが配置されていない場合にも、搬入駆動機構を作動させてもよい。ガイドピンアーム255が空移動しても、ガイドピンアーム255は、押さえ部31A又はフック401に衝突することはない。
【0091】
排出駆動機構の動作は、搬入駆動機構の動作と逆である。排出駆動機構によって、反応プレートアセンブリを、温度調節装置から排出ベースに排出する場合には、上述の動作の逆の動作を行えばよい。
【0092】
図8を参照して、本発明による検出装置の構造の例を説明する。本例の検出装置23は、光源801、第1レンズ802、励起フィルタ803、ダイクロイックミラー804、第2レンズ805、蛍光フィルタ807、第3レンズ808、及び、検知器809を有する。
【0093】
光源801からの励起光は、第1レンズ802によって集光され、平行光となる。平行光化した励起光より、励起フィルタ803によって最適な励起波長が選択される。波長選択された励起光は、ダイクロイックミラー804によって進路を変更し、第2レンズ805によって収斂光となり、反応ウエル806に到達する。励起光によって、反応ウエル内の蛍光色素が励起され、発光する。
【0094】
反応ウエルからの発光(蛍光)は、第2レンズ805によって集光され、平行光となり、ダイクロイックミラー804を透過する。透過した発光より、蛍光フィルタ807によって、所定の波長の蛍光が選択される。波長選択された蛍光は、第3レンズ808によって絞られ、検知器809に到達する。検知器809は、蛍光を検出する。
【0095】
光源801は、反応ウエル内の蛍光色素を励起する励起光を発生させるものであり、LEDやハロゲンランプであってよい。検知器809として、ホトダイオードや光電子増倍管などが使われる。図示していないが、励起フィルタ803を透過した励起光の一部をビームスプリッタで分割して、励起光のモニタとしてもよい。
【0096】
光源801、励起フィルタ803および蛍光フィルタ807は、検出する蛍光色素の種類に応じて変更可能である。本発明の核酸分析装置では、3つの検出装置23A〜23Cを有するが、これは3種類の蛍光色素を使用することを想定している。検出装置23A〜23Cに、CCDイメージセンサを用いてもよい。
【0097】
図9を参照して、本発明の核酸分析装置の例を説明する。本例の核酸分析装置は、核酸抽出部901、分注部902及び増幅検出部903を有する。増幅検出部903には、上述の温度制御装置が組み込まれている。
【0098】
核酸抽出部901は、全血、組織などの試料から核酸を抽出する部分である。核酸抽出部901は、以下の工程を実現する。(1)カオトロピック剤を含む溶液によって、細胞を破砕あるいはアガロースゲルを溶解させ、バッファ中に目的の核酸を溶出させる。(2)磁性ビーズ(磁性シリカ粒子)を溶解したサンプルに加え、混合することにより、粒子表面に目的の核酸を吸着させる。(3)洗浄液にて、B/F(固液)分離を繰り返すことにより、不要な核酸や蛋白質等の夾雑物を除去する。(4)洗浄後、磁性ビーズを減菌水または低塩濃度のバッファ中に懸濁することによってビーズ表面からDNAを溶出させる。(5)目的の核酸を含んだ溶出液から磁性ビーズを除去する。
【0099】
分注部902は、先の工程によって抽出された核酸溶液を反応プレートの反応ウエルに分注する工程を担う。単一の遺伝子にのみ注目するような分析の場合には、1検体からの核酸溶液を、反応プレート上の単一の反応ウエルに分注する。複数の遺伝子に注目する分析の場合には、1検体からの核酸溶液を、反応プレート上の複数の反応ウエルに分注する。試薬はこの分注部によってそれぞれの反応ウエルに分注される場合もあり、反応プレートを提供するメーカがあらかじめ分注済みの反応プレートを提供する場合もある。
【0100】
分注後に、反応プレートの上面に透明なカバーを貼り付ける。カバーは、熱または圧力によって、反応プレートに密着する。この分注済の且つシール済みの反応プレートに重り部材を組み付ける。こうして反応プレートアセンブリが形成される。
【0101】
増幅検出部903は、温度調節装置によって、PCR反応を発生させて、この反応をリアルタイムで検出する。
【0102】
核酸抽出部901から増幅検出部903の各工程は、独立した装置に分割されていてもよいし、増幅検出部とその上流の分注部を組み合わせた装置であってもよいし、また抽出部901から増幅検出部903までが一体の装置であってもよい。
【0103】
以上本発明の例を説明したが本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは、当業者によって容易に理解されよう。
【符号の説明】
【0104】
10A〜10H…反応プレートアセンブリ、20A〜20H…温度調節装置、21…断熱材、23A〜23C…検出装置、25…搬入ベース、27…排出ベース、31A〜31H…押さえ部、32…支持部材、33…回転軸、35…搬入口、100…円周、101…反応プレート、102、102A、102B…反応ウエル、103…ガイドピン用孔、105…カバー、107…重り部材、201…熱伝導プレート、202…熱源、203…温度センサ、251…プレヒート用ヒータ、252…プレヒートカバー、255…導入用ガイドピンアーム、256…ピン、272…カバー、275…排出用ガイドピンアーム、400…支点、401…フック、405…突起、406、407…テーパ、410…バネ、501〜504…電極、505…配線、506…滑り電極、801…光源、802…レンズ、803…励起フィルタ、804…ダイクロイックミラー、805…レンズ、807…蛍光フィルタ、808…レンズ、809…検出器、901…核酸抽出部、902…分注部、903…増幅検出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周方向に沿って配置された複数の温度調節装置と、前記温度調節装置の上に配置された反応プレートアセンブリを円周方向に沿って回転させる回転機構と、前記温度調節装置の外周側に設けられた搬入ベース及び排出ベースと、反応プレートアセンブリを前記搬入ベースから前記温度調節装置の上に搬入する搬入駆動機構と、反応プレートアセンブリを前記温度調節装置の上から前記排出ベースに排出する排出駆動機構と、反応プレートアセンブリに装填された試料を光学的に検出する検出装置と、を有する核酸分析装置において、
前記回転機構は、回転軸と、該回転軸の周りに回転する複数の押さえ部と、有し、反応プレートアセンブリは前記押さえ部によって前記温度調節装置の上に押し付けられた状態で、前記温度調節装置の上を円周方向に沿って移動するように構成されており、
前記搬入駆動機構は、前記搬入ベースに配置された反応プレートアセンブリを半径方向内方に移動させて、前記押さえ部と前記温度調節装置の間に搬入し、
前記排出駆動機構は、前記温度調節装置の上に配置された反応プレートアセンブリを半径方向外方に移動させて、前記押さえ部と前記温度調節装置の間より、前記排出ベースの上に排出するように構成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の核酸分析装置において、
前記搬入ベースの上面と前記温度調節装置の上面は共面であり、前記搬入駆動機構は、反応プレートアセンブリを半径方向内方に水平方向に移動させることによって、反応プレートアセンブリを前記搬入ベースから前記温度調節装置の上に搬入することができるように構成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項3】
請求項1記載の核酸分析装置において、
前記排出ベースの上面と前記温度調節装置の上面は共面であり、前記排出駆動機構は、反応プレートアセンブリを半径方向外方に水平方向に移動させることによって、反応プレートアセンブリを前記温度調節装置の上から前記排出ベースに排出することができるように構成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の核酸分析装置において、
前記搬入駆動機構は、前記回転軸に対して半径方向に可動な1対のアームと、該アームに装着されたピンと、を有し、前記1対のアームの間の距離は、前記押さえ部の円周方向の幅より大きく、前記ピンは、前記反応プレートアセンブルに形成されたガイドピン孔に挿入されるように構成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項5】
請求項1記載の核酸分析装置において、
前記排出駆動機構は、前記回転軸に対して半径方向に可動な1対のアームと、該アームに装着されたピンと、を有し、前記1対のアームの間の距離は、前記押さえ部の円周方向の幅より大きく、前記ピンは、前記反応プレートアセンブルに形成されたガイドピン孔に挿入されるように構成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項6】
請求項1記載の核酸分析装置において、
前記押さえ部は、フックと、該フックを枢動可能に支持する支点と、該フックに枢動力を付与するバネと、を有し、該フックは、半径方向の外端に、突起を有し、該突起の内側に、前記反応プレートアセンブリを保持するように構成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項7】
請求項6記載の核酸分析装置において、
前記突起の両側には、テーパが形成されており、前記反応プレートアセンブリが該テーパに当接することによって、前記フックは前記支点周りに枢動するように構成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項8】
請求項6記載の核酸分析装置において、
前記フックの内端には、該フックの枢動のストロークを制御するための突起が設けられていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項9】
請求項1記載の核酸分析装置において、
前記押さえ部には窓が形成され、該窓を介して前記反応プレートアセンブリに装填された試料は前記検出装置によって光学的に検出されるように構成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項10】
請求項1記載の核酸分析装置において、
前記押さえ部は前記温度調節装置と同一の個数であることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項11】
請求項1記載の核酸分析装置において、前記複数の温度調節装置は、独立に所定の温度サイクルに従って温度調節することができることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項12】
請求項1記載の核酸分析装置において、
前記搬入ベースは、前記反応プレートアセンブリの温度を所定の温度に保持するためのプレヒータを有することを特徴とする核酸分析装置。
【請求項13】
請求項1記載の核酸分析装置において、
前記回転軸の周囲には、複数の円弧状の電極が同心状に配置されており、各電極は、円周方向に沿って複数のセグメントに分割されており、
前記押さえ部には温度調節素子が設けられ、該温度調節素子に接続された配線の内端には、前記円弧状の電極に接触する滑り電極が接続されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項14】
請求項1記載の核酸分析装置において、
前記反応プレートアセンブリは、反応ウエルを備えた反応プレートと、該反応プレートを覆う透明なカバーと、該カバーを覆うように配置された透明な重り部材とを有することを特徴とする核酸分析装置。
【請求項15】
請求項14記載の核酸分析装置において、
前記温度調節装置の上に配置された前記反応プレートアセンブリの反応プレートに設けられた反応ウエルは、前記回転機構の回転軸を中心とする円周に沿って配置されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項16】
請求項1記載の核酸分析装置において、
試料から核酸を抽出する抽出機構と、該抽出した核酸を反応プレートに分注する分注機構と、該核酸のPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を検出する検出部を備えることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項17】
円周方向に沿って配置された複数の温度調節装置と、前記温度調節装置の上に配置された反応プレートアセンブリを円周方向に沿って回転させる回転機構と、前記温度調節装置の外周側に設けられた搬入ベース及び排出ベースと、反応プレートアセンブリを前記搬入ベースから前記温度調節装置の上に搬入する搬入駆動機構と、反応プレートアセンブリを前記温度調節装置の上から前記排出ベースに排出する排出駆動機構と、反応プレートアセンブリに装填された試料を光学的に検出する検出装置と、を有する核酸分析装置において、
前記搬入駆動機構は、前記搬入ベースに配置された反応プレートアセンブリを半径方向内方に移動させて、前記温度調節装置の外周側に形成された搬入口を介して、前記温度調節装置の上に搬入し、
前記排出駆動機構は、前記温度調節装置の上に配置された反応プレートアセンブリを半径方向外方に移動させて、前記温度調節装置の外周側に形成された排出口を介して、前記排出ベースの上に排出するように構成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項18】
請求項17記載の核酸分析装置において、
前記搬入ベースの上面と前記温度調節装置の上面は共面であり、前記搬入駆動機構は、反応プレートアセンブリを半径方向内方に水平方向に移動させることによって、反応プレートアセンブリを前記搬入ベースから前記温度調節装置の上に搬入することができるように構成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項19】
請求項17記載の核酸分析装置において、
前記排出ベースの上面と前記温度調節装置の上面は共面であり、前記排出駆動機構は、反応プレートアセンブリを半径方向外方に水平方向に移動させることによって、反応プレートアセンブリを前記温度調節装置の上から前記排出ベースに排出することができるように構成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項20】
請求項17記載の核酸分析装置において、
前記回転機構は、回転軸と、該回転軸の周りに回転する複数の押さえ部と、有し、反応プレートアセンブリは前記押さえ部によって前記温度調節装置の上に押し付けられた状態で、前記温度調節装置の上を円周方向に沿って移動するように構成されており、
前記搬入口及び前記排出口は、前記押さえ部と前記温度調節装置の間に形成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項1】
円周方向に沿って配置された複数の温度調節装置と、前記温度調節装置の上に配置された反応プレートアセンブリを円周方向に沿って回転させる回転機構と、前記温度調節装置の外周側に設けられた搬入ベース及び排出ベースと、反応プレートアセンブリを前記搬入ベースから前記温度調節装置の上に搬入する搬入駆動機構と、反応プレートアセンブリを前記温度調節装置の上から前記排出ベースに排出する排出駆動機構と、反応プレートアセンブリに装填された試料を光学的に検出する検出装置と、を有する核酸分析装置において、
前記回転機構は、回転軸と、該回転軸の周りに回転する複数の押さえ部と、有し、反応プレートアセンブリは前記押さえ部によって前記温度調節装置の上に押し付けられた状態で、前記温度調節装置の上を円周方向に沿って移動するように構成されており、
前記搬入駆動機構は、前記搬入ベースに配置された反応プレートアセンブリを半径方向内方に移動させて、前記押さえ部と前記温度調節装置の間に搬入し、
前記排出駆動機構は、前記温度調節装置の上に配置された反応プレートアセンブリを半径方向外方に移動させて、前記押さえ部と前記温度調節装置の間より、前記排出ベースの上に排出するように構成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の核酸分析装置において、
前記搬入ベースの上面と前記温度調節装置の上面は共面であり、前記搬入駆動機構は、反応プレートアセンブリを半径方向内方に水平方向に移動させることによって、反応プレートアセンブリを前記搬入ベースから前記温度調節装置の上に搬入することができるように構成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項3】
請求項1記載の核酸分析装置において、
前記排出ベースの上面と前記温度調節装置の上面は共面であり、前記排出駆動機構は、反応プレートアセンブリを半径方向外方に水平方向に移動させることによって、反応プレートアセンブリを前記温度調節装置の上から前記排出ベースに排出することができるように構成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の核酸分析装置において、
前記搬入駆動機構は、前記回転軸に対して半径方向に可動な1対のアームと、該アームに装着されたピンと、を有し、前記1対のアームの間の距離は、前記押さえ部の円周方向の幅より大きく、前記ピンは、前記反応プレートアセンブルに形成されたガイドピン孔に挿入されるように構成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項5】
請求項1記載の核酸分析装置において、
前記排出駆動機構は、前記回転軸に対して半径方向に可動な1対のアームと、該アームに装着されたピンと、を有し、前記1対のアームの間の距離は、前記押さえ部の円周方向の幅より大きく、前記ピンは、前記反応プレートアセンブルに形成されたガイドピン孔に挿入されるように構成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項6】
請求項1記載の核酸分析装置において、
前記押さえ部は、フックと、該フックを枢動可能に支持する支点と、該フックに枢動力を付与するバネと、を有し、該フックは、半径方向の外端に、突起を有し、該突起の内側に、前記反応プレートアセンブリを保持するように構成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項7】
請求項6記載の核酸分析装置において、
前記突起の両側には、テーパが形成されており、前記反応プレートアセンブリが該テーパに当接することによって、前記フックは前記支点周りに枢動するように構成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項8】
請求項6記載の核酸分析装置において、
前記フックの内端には、該フックの枢動のストロークを制御するための突起が設けられていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項9】
請求項1記載の核酸分析装置において、
前記押さえ部には窓が形成され、該窓を介して前記反応プレートアセンブリに装填された試料は前記検出装置によって光学的に検出されるように構成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項10】
請求項1記載の核酸分析装置において、
前記押さえ部は前記温度調節装置と同一の個数であることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項11】
請求項1記載の核酸分析装置において、前記複数の温度調節装置は、独立に所定の温度サイクルに従って温度調節することができることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項12】
請求項1記載の核酸分析装置において、
前記搬入ベースは、前記反応プレートアセンブリの温度を所定の温度に保持するためのプレヒータを有することを特徴とする核酸分析装置。
【請求項13】
請求項1記載の核酸分析装置において、
前記回転軸の周囲には、複数の円弧状の電極が同心状に配置されており、各電極は、円周方向に沿って複数のセグメントに分割されており、
前記押さえ部には温度調節素子が設けられ、該温度調節素子に接続された配線の内端には、前記円弧状の電極に接触する滑り電極が接続されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項14】
請求項1記載の核酸分析装置において、
前記反応プレートアセンブリは、反応ウエルを備えた反応プレートと、該反応プレートを覆う透明なカバーと、該カバーを覆うように配置された透明な重り部材とを有することを特徴とする核酸分析装置。
【請求項15】
請求項14記載の核酸分析装置において、
前記温度調節装置の上に配置された前記反応プレートアセンブリの反応プレートに設けられた反応ウエルは、前記回転機構の回転軸を中心とする円周に沿って配置されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項16】
請求項1記載の核酸分析装置において、
試料から核酸を抽出する抽出機構と、該抽出した核酸を反応プレートに分注する分注機構と、該核酸のPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を検出する検出部を備えることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項17】
円周方向に沿って配置された複数の温度調節装置と、前記温度調節装置の上に配置された反応プレートアセンブリを円周方向に沿って回転させる回転機構と、前記温度調節装置の外周側に設けられた搬入ベース及び排出ベースと、反応プレートアセンブリを前記搬入ベースから前記温度調節装置の上に搬入する搬入駆動機構と、反応プレートアセンブリを前記温度調節装置の上から前記排出ベースに排出する排出駆動機構と、反応プレートアセンブリに装填された試料を光学的に検出する検出装置と、を有する核酸分析装置において、
前記搬入駆動機構は、前記搬入ベースに配置された反応プレートアセンブリを半径方向内方に移動させて、前記温度調節装置の外周側に形成された搬入口を介して、前記温度調節装置の上に搬入し、
前記排出駆動機構は、前記温度調節装置の上に配置された反応プレートアセンブリを半径方向外方に移動させて、前記温度調節装置の外周側に形成された排出口を介して、前記排出ベースの上に排出するように構成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項18】
請求項17記載の核酸分析装置において、
前記搬入ベースの上面と前記温度調節装置の上面は共面であり、前記搬入駆動機構は、反応プレートアセンブリを半径方向内方に水平方向に移動させることによって、反応プレートアセンブリを前記搬入ベースから前記温度調節装置の上に搬入することができるように構成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項19】
請求項17記載の核酸分析装置において、
前記排出ベースの上面と前記温度調節装置の上面は共面であり、前記排出駆動機構は、反応プレートアセンブリを半径方向外方に水平方向に移動させることによって、反応プレートアセンブリを前記温度調節装置の上から前記排出ベースに排出することができるように構成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項20】
請求項17記載の核酸分析装置において、
前記回転機構は、回転軸と、該回転軸の周りに回転する複数の押さえ部と、有し、反応プレートアセンブリは前記押さえ部によって前記温度調節装置の上に押し付けられた状態で、前記温度調節装置の上を円周方向に沿って移動するように構成されており、
前記搬入口及び前記排出口は、前記押さえ部と前記温度調節装置の間に形成されていることを特徴とする核酸分析装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図8】
【図9】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−100549(P2012−100549A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249365(P2010−249365)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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