核酸分析装置
【課題】試薬ボトルとフローセルの間のデッドボリュームが小さく、試薬ボトルとフローセルの間にバルブを用いない核酸分析装置を提供する。
【解決手段】本発明の核酸分析装置は、溶液を注入する注入口,反応領域,注入口と反応領域とを繋ぐ流路、及び溶液を排出する排出口を有するフローセル2と、フローセル2に溶液を注入するノズル7と、ノズル7を駆動させるノズル搬送ユニット8と、フローセル2内の試料を検出する検出ユニット9と、を備えている。
【解決手段】本発明の核酸分析装置は、溶液を注入する注入口,反応領域,注入口と反応領域とを繋ぐ流路、及び溶液を排出する排出口を有するフローセル2と、フローセル2に溶液を注入するノズル7と、ノズル7を駆動させるノズル搬送ユニット8と、フローセル2内の試料を検出する検出ユニット9と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DNAやRNAの塩基配列を決定する新しい技術が開発されてきている。
【0003】
現在、通常用いられている電気泳動を利用した方法においては、予め配列決定用のDNA断片又はRNA試料から逆転写反応を行い合成したcDNA断片試料を調製し、周知のサンガー法によるジデオキシ反応を実行した後、電気泳動を行い、分子量分離展開パターンを計測して解析する。
【0004】
これに対し、近年、基板に試料となるDNA断片を数多く固定して、パラレルに数多くの断片の配列情報を決定する方法が提案されている。
【0005】
DNA断片を担時する担体として微粒子を用い、微粒子上でPCRを行うという技術が知られている。その後、微粒子のサイズに穴径を合わせた数多くの穴を設けたプレートに、PCR増幅されたDNA断片を担持した微粒子を入れてパイロシーケンス方式で読み出している。
【0006】
また、DNA断片を担持する担体として微粒子を用い、微粒子上でPCRを行うという技術が既に知られている。その後、微粒子をガラス基板上にばら撒いて固定し、ガラス基板上で酵素反応(ライゲーション)を行い、蛍光色素付き基質を取り込ませて蛍光検出を行うことにより各断片の配列情報を得ている。
【0007】
さらに、基板上に、同一配列を有する多数のDNAプローブを固定するという技術が知られている。また、DNA試料を切断後、DNAプローブ配列と相補鎖のアダプター配列を各DNA試料断片の端に付加させる。これらを基板上でハイブリダイゼーションさせることにより、基板上にランダムに一分子ずつ試料DNA断片を固定化させている。この場合、基板上でDNA伸長反応を起こない、蛍光色素付き基質を取り込ませた後、未反応基質の洗浄,蛍光検出を行い、試料DNAの配列情報を得ている。
【0008】
以上のように、基板上に、核酸断片試料を数多く固定することにより、パラレルに数多くの断片の配列情報を決定する方法が開発され、実用化されつつある。
【0009】
これらの方式では、基板上でシーケンス反応を行うため、数多くの種類の溶液を基板上に供給するとともに、基板上での温度の上げ下げが必要である。例えば、最初にアンカープライマーを含む溶液を供給した後、基板を昇温・冷却した後、基板上に洗浄液を供給し、基板上の未反応アンカープライマーを洗浄するという技術が知られている。その後、ライゲーション反応のための溶液,アンカープライマーと蛍光プライマーの複合体を分解するための溶液を供給する。これらの溶液供給の間にも、温度の上げ下げと洗浄液での洗浄が必要である。
【0010】
これらの分析を行うための装置として、特許文献1,3には、容器に保管されている試薬溶液をチューブを介して反応場であるフローセルに供給する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2009−532031号公報
【特許文献2】特表2008−506969号公報
【特許文献3】特開2008−151772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記のようなチューブを介した装置では、試薬容器からフローセル間のチューブ内容量がデッドボリュームとなり、1回の解析に必要な試薬量が増えるため、解析のランニングコストが高くなる問題がある。
【0013】
特許文献2では、試薬ボトルとフローセルの間にバルブを用いる方法も開示されているが、バルブの開け閉め機構を実現するために、装置構成が複雑になる問題がある。
【0014】
本発明は、試薬ボトルとフローセルの間のデッドボリュームが小さく、試薬ボトルとフローセルの間にバルブを用いない核酸分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の核酸分析装置は、溶液を注入する注入口,反応領域,注入口と反応領域とを繋ぐ流路、及び溶液を排出する排出口を有するフローセルと、フローセルに溶液を注入するノズルと、ノズルを駆動させるノズル駆動部と、フローセル内の試料を検出する検出部と、を備えている。
【発明の効果】
【0016】
試薬ボトルとフローセルの間のデッドボリュームが小さく、試薬ボトルとフローセルの間にバルブを用いない核酸分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の核酸分析装置の構成の一例を説明するための図である。
【図2】本発明のフローセルの構成の一例を説明するための図である。
【図3】本発明のホルダユニットの構成の一例を説明するための図である。
【図4】本発明のホルダユニットの構成の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、上記及びその他の本発明の新規な特徴と効果について、図を参照して説明する。
ここでは、本発明を理解してもらうため、特定の実施形態について詳細な説明を行うが、本発明はここに記した内容に限定されるものではない。また、各構成は適宜組み合せることが可能であり、当該組み合せ形態についても本明細書は開示している。
【0019】
図1に本発明による核酸分析装置の例を示す。核酸分析装置1は、流路が形成されたフローセル2,フローセル2を固定し、なおかつフローセル2を温度調整するホルダユニット3,フローセル2・ホルダユニット3を移動させるステージユニット4,複数の試薬や洗浄水が収容された試薬容器5,試薬容器5に収容された試薬を吸引しフローセル2に注入する駆動源である送液ユニット6,試薬の吸引・吐出の際、実際に試薬容器5やフローセル2にアクセスするノズル7,ノズル7を搬送させるノズル搬送ユニット8,フローセル2に固定された試料を観察するための検出ユニット9,フローセル2からの廃液を収容する廃液容器10を有する。
【0020】
核酸分析装置1の動作について図1を用いて説明する。まず、測定対象のDNAを保持したフローセル2をホルダユニット3に設置する。次に、ノズル7が試薬容器5にアクセスし、試薬を送液ユニット6により吸引する。ノズル7は、ノズル搬送ユニット8によりフローセル2上面に搬送され、フローセル2に注入ポート11から試薬を注入する。そして、ホルダユニット3にて、フローセル2内に含まれたDNA断片と試薬を温度調整することで反応が起こる。
【0021】
反応したDNA断片を観察するために、フローセル2をステージユニット4にて観察したい検出領域が検出ユニット9で観察できるように移動させ、励起光を当てて検出領域内にある複数のDNA断片の蛍光を検出する。検出後、フローセル2を微小に動かし同様の方法で検出、という動作を複数回繰り返す。全ての検出領域で観察が終了したら、試薬容器5に収容された洗浄水を送液ユニット6により吸引し、フローセル2へ注入することで、フローセル2の流路内を洗浄する。また、別の試薬を注入し検出、という動作を複数回繰り返すことで、DNA配列を読み取ることができる。なお、核酸分析では4種類の塩基を同定することが必要である。4種類以上にラベル化された色素を検出する方法が広く公知である。
【0022】
本実施の形態では、ノズル7を介して分注を行うため、試薬容器5から注入ポート(後述)11までのデッドボリュームを低減することができる。
【0023】
本発明のフローセル2について図2を用いて説明する。フローセル上面には、溶液を注入,排出するための穴である、注入ポート11と排出ポート12が設けられている。フローセル2は、溶液を通すための中空構造となっており、中空構造は加熱防止のための流路部13と検出部(反応領域)14からなる。図2に示すとおり、上方から見たとき流路部13は検出部14よりも幅が狭くなっている。
【0024】
流路部13の体積を小さくすることで、試薬溶液のデッドボリュームを小さくする。検出部14の面積を大きくすることで、測定対象のDNAを持つビーズ固定数を増やすことができ、一度に解析できるDNA断片数を増やすことができる。
【0025】
フローセル2の上面部の材質は、蛍光検出のために、光透過性が高い材料が良い。この様な材料としては、ガラス,サファイアなどの無機材料やポリメタクリル酸メチル樹脂,ポリカーボネート樹脂,シクロオレフィン樹脂などの樹脂材料が挙げられる。フローセル2の下面部の材質は、熱伝導性が高い材料が望ましい。この様な材料としては、シリコン,ガラスなどの無機材料や、SUSなどの金属材料,カーボンファイバや無機フィーラを配合した高熱伝導性の樹脂材料が挙げられる。なお、図2では、注入ポート11,流路部13,検出部14、及び排出ポート12の組を2つ配置させているが、これに限らず、1つでも、3つ以上でもよい。但し、複数組、注入ポート11,流路部13,検出部14、及び排出ポート12を設けることにより、1つの検出部を検出している時に同時に他の検出部に液を注入することができる。また、検出と検出のための反応を同時に行うことができ、スループットを高めることができる。
【0026】
本発明のホルダユニット3について図3を用いて説明する。ホルダユニット3は、温調を可能とする温調素子16と、これと接触するヒートプレート15と、吸熱プレート17と、クランプ18からなる。図3に示すとおり、ヒートプレート15の下側に温調素子16が設けられている。このような構成により、複数回の温度上げ下げが必要な基板上でのシーケンス反応を実現することができる。
【0027】
具体的には、フローセル2の検出部14の下側の一部がヒートプレート15と接し、フローセル2の流路部13の下側の一部が吸熱プレート17と接する。シーケンス反応のための加熱時、流路部13内の熱は吸熱プレート17を介して、外部に放熱されるため、流路部13内の温度上昇を抑えることができ、注入ポート11からの蒸発を防止することができる。
【0028】
クランプ18は吸熱プレート17とフローセル2の下部との密着性を高めるために、断面コ字状のクランプ18が設けられている。クランプ18により、フローセル2の下部から吸熱プレート17への伝熱量を増やすことができる。吸熱プレート17の材料としては、熱伝導性が高く、クランプ時の寸法変化が小さく、耐久性が高い金属材料が望ましく、この様な材料として、アルミニウムや銅などが挙げられる。フローセル2と吸熱プレート17の密着性を高めるために、フローセル2と吸熱プレート17の間に熱伝導性が高いシリコンシートなどを用いても良い。このようなクランプ18を設けることにより、密着界面からの液漏れを防止することができる。
【0029】
また、図3とは異なる形態として、本発明のホルダユニットについて図4を用いて説明する。図3との違いは、フローセル2がホルダ19に格納されてセルホルダユニットに組み込まれている点である。この形態では、ノズル7からの液の注入は、ホルダ19にあるインジェクションポート20より行われる。図3の形態では、フローセル上面部の厚さが薄い場合、ノズルとフローセル上面部の接触面積が小さくなるので液漏れしやすくなるが、図4の形態では、ノズルと注入ポートの接触面積は、フローセル上面部の厚さによらないので、フローセルの上面部の厚さを薄くできる。なお、図3,図4では、注入ポート11,流路部13,検出部14、及び排出ポート12の組を2つ配置させているが、これに限らず、1つでも、3つ以上でもよい。
【0030】
本発明の核酸分析装置を用いた核酸分析方法を説明する。測定対象のDNAを断片化,増幅した後、エマルジョンPCR法を用いて測定対象のDNA断片が固定化されたビーズを作製する。続いて、アクリルゲルを用いて本発明のフローセル内にビーズを固定化する。次に、ビーズが固定化された反応デバイスを図1に示した核酸分析装置に設置する。最後に、
(a)アンカープライマーのハイブリダイゼーション
(b)蛍光プライマーのライゲーション
(c)蛍光検出
(d)アンカープライマーと蛍光プライマーの除去
(e)(a)〜(d)の繰り返し
を行い、塩基配列を決定する。
【符号の説明】
【0031】
1 核酸分析装置
2 フローセル
3 ホルダユニット
4 ステージユニット
5 試薬容器
6 送液ユニット
7 ノズル
8 ノズル搬送ユニット
9 検出ユニット
10 廃液容器
11 注入ポート
12 排出ポート
13 流路部
14 検出部
15 ヒートプレート
16 温調素子
17 吸熱プレート
18 クランプ
19 ホルダ
20 インジェクションポート
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DNAやRNAの塩基配列を決定する新しい技術が開発されてきている。
【0003】
現在、通常用いられている電気泳動を利用した方法においては、予め配列決定用のDNA断片又はRNA試料から逆転写反応を行い合成したcDNA断片試料を調製し、周知のサンガー法によるジデオキシ反応を実行した後、電気泳動を行い、分子量分離展開パターンを計測して解析する。
【0004】
これに対し、近年、基板に試料となるDNA断片を数多く固定して、パラレルに数多くの断片の配列情報を決定する方法が提案されている。
【0005】
DNA断片を担時する担体として微粒子を用い、微粒子上でPCRを行うという技術が知られている。その後、微粒子のサイズに穴径を合わせた数多くの穴を設けたプレートに、PCR増幅されたDNA断片を担持した微粒子を入れてパイロシーケンス方式で読み出している。
【0006】
また、DNA断片を担持する担体として微粒子を用い、微粒子上でPCRを行うという技術が既に知られている。その後、微粒子をガラス基板上にばら撒いて固定し、ガラス基板上で酵素反応(ライゲーション)を行い、蛍光色素付き基質を取り込ませて蛍光検出を行うことにより各断片の配列情報を得ている。
【0007】
さらに、基板上に、同一配列を有する多数のDNAプローブを固定するという技術が知られている。また、DNA試料を切断後、DNAプローブ配列と相補鎖のアダプター配列を各DNA試料断片の端に付加させる。これらを基板上でハイブリダイゼーションさせることにより、基板上にランダムに一分子ずつ試料DNA断片を固定化させている。この場合、基板上でDNA伸長反応を起こない、蛍光色素付き基質を取り込ませた後、未反応基質の洗浄,蛍光検出を行い、試料DNAの配列情報を得ている。
【0008】
以上のように、基板上に、核酸断片試料を数多く固定することにより、パラレルに数多くの断片の配列情報を決定する方法が開発され、実用化されつつある。
【0009】
これらの方式では、基板上でシーケンス反応を行うため、数多くの種類の溶液を基板上に供給するとともに、基板上での温度の上げ下げが必要である。例えば、最初にアンカープライマーを含む溶液を供給した後、基板を昇温・冷却した後、基板上に洗浄液を供給し、基板上の未反応アンカープライマーを洗浄するという技術が知られている。その後、ライゲーション反応のための溶液,アンカープライマーと蛍光プライマーの複合体を分解するための溶液を供給する。これらの溶液供給の間にも、温度の上げ下げと洗浄液での洗浄が必要である。
【0010】
これらの分析を行うための装置として、特許文献1,3には、容器に保管されている試薬溶液をチューブを介して反応場であるフローセルに供給する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2009−532031号公報
【特許文献2】特表2008−506969号公報
【特許文献3】特開2008−151772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記のようなチューブを介した装置では、試薬容器からフローセル間のチューブ内容量がデッドボリュームとなり、1回の解析に必要な試薬量が増えるため、解析のランニングコストが高くなる問題がある。
【0013】
特許文献2では、試薬ボトルとフローセルの間にバルブを用いる方法も開示されているが、バルブの開け閉め機構を実現するために、装置構成が複雑になる問題がある。
【0014】
本発明は、試薬ボトルとフローセルの間のデッドボリュームが小さく、試薬ボトルとフローセルの間にバルブを用いない核酸分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の核酸分析装置は、溶液を注入する注入口,反応領域,注入口と反応領域とを繋ぐ流路、及び溶液を排出する排出口を有するフローセルと、フローセルに溶液を注入するノズルと、ノズルを駆動させるノズル駆動部と、フローセル内の試料を検出する検出部と、を備えている。
【発明の効果】
【0016】
試薬ボトルとフローセルの間のデッドボリュームが小さく、試薬ボトルとフローセルの間にバルブを用いない核酸分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の核酸分析装置の構成の一例を説明するための図である。
【図2】本発明のフローセルの構成の一例を説明するための図である。
【図3】本発明のホルダユニットの構成の一例を説明するための図である。
【図4】本発明のホルダユニットの構成の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、上記及びその他の本発明の新規な特徴と効果について、図を参照して説明する。
ここでは、本発明を理解してもらうため、特定の実施形態について詳細な説明を行うが、本発明はここに記した内容に限定されるものではない。また、各構成は適宜組み合せることが可能であり、当該組み合せ形態についても本明細書は開示している。
【0019】
図1に本発明による核酸分析装置の例を示す。核酸分析装置1は、流路が形成されたフローセル2,フローセル2を固定し、なおかつフローセル2を温度調整するホルダユニット3,フローセル2・ホルダユニット3を移動させるステージユニット4,複数の試薬や洗浄水が収容された試薬容器5,試薬容器5に収容された試薬を吸引しフローセル2に注入する駆動源である送液ユニット6,試薬の吸引・吐出の際、実際に試薬容器5やフローセル2にアクセスするノズル7,ノズル7を搬送させるノズル搬送ユニット8,フローセル2に固定された試料を観察するための検出ユニット9,フローセル2からの廃液を収容する廃液容器10を有する。
【0020】
核酸分析装置1の動作について図1を用いて説明する。まず、測定対象のDNAを保持したフローセル2をホルダユニット3に設置する。次に、ノズル7が試薬容器5にアクセスし、試薬を送液ユニット6により吸引する。ノズル7は、ノズル搬送ユニット8によりフローセル2上面に搬送され、フローセル2に注入ポート11から試薬を注入する。そして、ホルダユニット3にて、フローセル2内に含まれたDNA断片と試薬を温度調整することで反応が起こる。
【0021】
反応したDNA断片を観察するために、フローセル2をステージユニット4にて観察したい検出領域が検出ユニット9で観察できるように移動させ、励起光を当てて検出領域内にある複数のDNA断片の蛍光を検出する。検出後、フローセル2を微小に動かし同様の方法で検出、という動作を複数回繰り返す。全ての検出領域で観察が終了したら、試薬容器5に収容された洗浄水を送液ユニット6により吸引し、フローセル2へ注入することで、フローセル2の流路内を洗浄する。また、別の試薬を注入し検出、という動作を複数回繰り返すことで、DNA配列を読み取ることができる。なお、核酸分析では4種類の塩基を同定することが必要である。4種類以上にラベル化された色素を検出する方法が広く公知である。
【0022】
本実施の形態では、ノズル7を介して分注を行うため、試薬容器5から注入ポート(後述)11までのデッドボリュームを低減することができる。
【0023】
本発明のフローセル2について図2を用いて説明する。フローセル上面には、溶液を注入,排出するための穴である、注入ポート11と排出ポート12が設けられている。フローセル2は、溶液を通すための中空構造となっており、中空構造は加熱防止のための流路部13と検出部(反応領域)14からなる。図2に示すとおり、上方から見たとき流路部13は検出部14よりも幅が狭くなっている。
【0024】
流路部13の体積を小さくすることで、試薬溶液のデッドボリュームを小さくする。検出部14の面積を大きくすることで、測定対象のDNAを持つビーズ固定数を増やすことができ、一度に解析できるDNA断片数を増やすことができる。
【0025】
フローセル2の上面部の材質は、蛍光検出のために、光透過性が高い材料が良い。この様な材料としては、ガラス,サファイアなどの無機材料やポリメタクリル酸メチル樹脂,ポリカーボネート樹脂,シクロオレフィン樹脂などの樹脂材料が挙げられる。フローセル2の下面部の材質は、熱伝導性が高い材料が望ましい。この様な材料としては、シリコン,ガラスなどの無機材料や、SUSなどの金属材料,カーボンファイバや無機フィーラを配合した高熱伝導性の樹脂材料が挙げられる。なお、図2では、注入ポート11,流路部13,検出部14、及び排出ポート12の組を2つ配置させているが、これに限らず、1つでも、3つ以上でもよい。但し、複数組、注入ポート11,流路部13,検出部14、及び排出ポート12を設けることにより、1つの検出部を検出している時に同時に他の検出部に液を注入することができる。また、検出と検出のための反応を同時に行うことができ、スループットを高めることができる。
【0026】
本発明のホルダユニット3について図3を用いて説明する。ホルダユニット3は、温調を可能とする温調素子16と、これと接触するヒートプレート15と、吸熱プレート17と、クランプ18からなる。図3に示すとおり、ヒートプレート15の下側に温調素子16が設けられている。このような構成により、複数回の温度上げ下げが必要な基板上でのシーケンス反応を実現することができる。
【0027】
具体的には、フローセル2の検出部14の下側の一部がヒートプレート15と接し、フローセル2の流路部13の下側の一部が吸熱プレート17と接する。シーケンス反応のための加熱時、流路部13内の熱は吸熱プレート17を介して、外部に放熱されるため、流路部13内の温度上昇を抑えることができ、注入ポート11からの蒸発を防止することができる。
【0028】
クランプ18は吸熱プレート17とフローセル2の下部との密着性を高めるために、断面コ字状のクランプ18が設けられている。クランプ18により、フローセル2の下部から吸熱プレート17への伝熱量を増やすことができる。吸熱プレート17の材料としては、熱伝導性が高く、クランプ時の寸法変化が小さく、耐久性が高い金属材料が望ましく、この様な材料として、アルミニウムや銅などが挙げられる。フローセル2と吸熱プレート17の密着性を高めるために、フローセル2と吸熱プレート17の間に熱伝導性が高いシリコンシートなどを用いても良い。このようなクランプ18を設けることにより、密着界面からの液漏れを防止することができる。
【0029】
また、図3とは異なる形態として、本発明のホルダユニットについて図4を用いて説明する。図3との違いは、フローセル2がホルダ19に格納されてセルホルダユニットに組み込まれている点である。この形態では、ノズル7からの液の注入は、ホルダ19にあるインジェクションポート20より行われる。図3の形態では、フローセル上面部の厚さが薄い場合、ノズルとフローセル上面部の接触面積が小さくなるので液漏れしやすくなるが、図4の形態では、ノズルと注入ポートの接触面積は、フローセル上面部の厚さによらないので、フローセルの上面部の厚さを薄くできる。なお、図3,図4では、注入ポート11,流路部13,検出部14、及び排出ポート12の組を2つ配置させているが、これに限らず、1つでも、3つ以上でもよい。
【0030】
本発明の核酸分析装置を用いた核酸分析方法を説明する。測定対象のDNAを断片化,増幅した後、エマルジョンPCR法を用いて測定対象のDNA断片が固定化されたビーズを作製する。続いて、アクリルゲルを用いて本発明のフローセル内にビーズを固定化する。次に、ビーズが固定化された反応デバイスを図1に示した核酸分析装置に設置する。最後に、
(a)アンカープライマーのハイブリダイゼーション
(b)蛍光プライマーのライゲーション
(c)蛍光検出
(d)アンカープライマーと蛍光プライマーの除去
(e)(a)〜(d)の繰り返し
を行い、塩基配列を決定する。
【符号の説明】
【0031】
1 核酸分析装置
2 フローセル
3 ホルダユニット
4 ステージユニット
5 試薬容器
6 送液ユニット
7 ノズル
8 ノズル搬送ユニット
9 検出ユニット
10 廃液容器
11 注入ポート
12 排出ポート
13 流路部
14 検出部
15 ヒートプレート
16 温調素子
17 吸熱プレート
18 クランプ
19 ホルダ
20 インジェクションポート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液を注入する注入口,反応領域,注入口と反応領域とを繋ぐ流路、及び溶液を排出する排出口を有するフローセルと、
フローセルに溶液を注入するノズルと、
ノズルを駆動させるノズル駆動部と、
フローセル内の試料を検出する検出部と、を備えたことを特徴とする核酸分析装置。
【請求項2】
流路は、反応領域よりも幅が狭いことを特徴とする請求項1に記載の核酸分析装置。
【請求項3】
流路と、反応領域とは別々の温度調整を行うことを特徴とする請求項1に記載の核酸分析装置。
【請求項4】
流路を吸熱する吸熱プレートが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の核酸分析装置。
【請求項5】
吸熱プレートとフローセルは、互いに固定されていることを特徴とする請求項4に記載の核酸分析装置。
【請求項6】
反応領域を温度調整する温度調整部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の核酸分析装置。
【請求項7】
温度調整部は、ヒートプレート及び温調素子を備えて構成されていることを特徴とする請求項6に記載の核酸分析装置。
【請求項8】
温度調整部とフローセルは、互いに固定されていることを特徴とする請求項6に記載の核酸分析装置。
【請求項9】
フローセルは、フローセルホルダに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の核酸分析装置。
【請求項10】
溶液はフローセルホルダに設けられた開口部より注入され、上記注入口を介してフローセル内へ入ることを特徴とする請求項9に記載の核酸分析装置。
【請求項11】
フローセルは、複数の流路を有し、これら流路毎に、注入口,反応領域、及び排出口を有することを特徴とする請求項1に記載の核酸分析装置。
【請求項12】
検出部が行う検出は、蛍光検出であることを特徴とする請求項1に記載の核酸分析装置。
【請求項13】
フローセルを駆動させる駆動部を備え、フローセルを駆動させて検出部が検出する反応領域中の検出領域を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の核酸分析装置。
【請求項14】
フローセルは、光透過性のある材質からなる部材と、熱伝導性が高い部材とを重ねて構成されることを特徴とする請求項1に記載の核酸分析装置。
【請求項1】
溶液を注入する注入口,反応領域,注入口と反応領域とを繋ぐ流路、及び溶液を排出する排出口を有するフローセルと、
フローセルに溶液を注入するノズルと、
ノズルを駆動させるノズル駆動部と、
フローセル内の試料を検出する検出部と、を備えたことを特徴とする核酸分析装置。
【請求項2】
流路は、反応領域よりも幅が狭いことを特徴とする請求項1に記載の核酸分析装置。
【請求項3】
流路と、反応領域とは別々の温度調整を行うことを特徴とする請求項1に記載の核酸分析装置。
【請求項4】
流路を吸熱する吸熱プレートが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の核酸分析装置。
【請求項5】
吸熱プレートとフローセルは、互いに固定されていることを特徴とする請求項4に記載の核酸分析装置。
【請求項6】
反応領域を温度調整する温度調整部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の核酸分析装置。
【請求項7】
温度調整部は、ヒートプレート及び温調素子を備えて構成されていることを特徴とする請求項6に記載の核酸分析装置。
【請求項8】
温度調整部とフローセルは、互いに固定されていることを特徴とする請求項6に記載の核酸分析装置。
【請求項9】
フローセルは、フローセルホルダに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の核酸分析装置。
【請求項10】
溶液はフローセルホルダに設けられた開口部より注入され、上記注入口を介してフローセル内へ入ることを特徴とする請求項9に記載の核酸分析装置。
【請求項11】
フローセルは、複数の流路を有し、これら流路毎に、注入口,反応領域、及び排出口を有することを特徴とする請求項1に記載の核酸分析装置。
【請求項12】
検出部が行う検出は、蛍光検出であることを特徴とする請求項1に記載の核酸分析装置。
【請求項13】
フローセルを駆動させる駆動部を備え、フローセルを駆動させて検出部が検出する反応領域中の検出領域を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の核酸分析装置。
【請求項14】
フローセルは、光透過性のある材質からなる部材と、熱伝導性が高い部材とを重ねて構成されることを特徴とする請求項1に記載の核酸分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2012−24000(P2012−24000A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164439(P2010−164439)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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