説明

核酸分析

生物試料から質の良い核酸を抽出するための方法を開示する。本明細書に記載された方法によって得られる抽出物は高収量および高度の完全性を特徴とし、抽出された核酸は、質の良い核酸抽出物が好ましいさまざまな用途、例えば、医学的病状の診断、予後予測または治療法評価に有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、いずれも2009年7月16日に提出された米国特許仮出願第61,226,025号および同第61,226,106号の優先権を主張し、これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、ヒトまたは他の動物対象における核酸分析の一般的分野に関し、特に、生物試料、特に微小胞からの質の良い核酸の取得および分析に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
細胞から分離放出(shed)される小型の微小胞は「エキソソーム」として知られる(Thery et al., 2002)。エキソソームはおよそ30〜100nmの直径を有すると報告されており、多くのさまざまな細胞種から、正常状態および病的状態のいずれの下でも分離放出される(Thery et al., 2002)。エキソソームは古典的には、後期エンドソーム膜の内向き陥入および括り取られ(pinching off)によって形成される。これは小型の脂質二重層小胞(直径ほぼ40〜100nm)を多く含む多胞体(MVB)の形成をもたらし、これらの小胞のそれぞれが親細胞の細胞質の試料を含む(Stoorvogel et al., 2002)。MVBと細胞膜との融合は、これらのエキソソームの細胞からの放出、および血液、尿または他の体液中へのそれらの送達をもたらす。
【0004】
細胞由来の小胞の別のカテゴリーは、「分離放出性微小胞(shedding microvesicle)」として知られる(Cocucci et al., 2009)。細胞の原形質膜が直接出芽することによって形成されるこれらの微小胞は、エキソソームよりもサイズが不均一であり、エキソソームと同様に、親細胞の細胞質の試料も含む。エキソソームおよび分離放出性微小胞は、超遠心分離法および限外濾過単離法を用いて共分離されるため、本明細書では微小胞と総称することにする。
【0005】
最近の研究により、微小胞内の核酸はバイオマーカーとしての役割を有することが明らかになっている。例えば、Skog et. al.は、数ある中でも特に、GBM患者の血清中の微小胞から抽出された核酸の、医学的診断、予後予測および治療法評価のための使用を記載している(Skog et al., 2008)。微小胞から抽出された核酸を用いることは、生検の必要を回避する可能性があると考えられ、このことは微小胞生物学(microvesicle biology)の極めて大きな診断上の可能性を強く示すものである(Skog et al., 2008)。
【0006】
核酸バイオマーカーの研究および開発、ならびに商業的応用においては、ばらつきがなく信頼性の高い様式で、生物試料から質の良い核酸を抽出することが望ましい。本発明は、微小胞および他の生物試料からの質の良い核酸抽出物の組成物、そのような抽出物を製造する方法、ならびに、これらの質の良い核酸をさまざまな用途に用いる方法を提供する。
【発明の概要】
【0007】
1つの局面において、本発明は、真核生物の生物試料から単離された1つまたは複数の微小胞からの新規の核酸抽出物であり、ここで、該抽出物中において18S rRNAおよび28S rRNAが検出可能である。好ましくは、該新規の抽出物中において検出可能である18S rRNAと28S rRNAの量比は、およそ1:1からおよそ1:2までの範囲内にあり、かつ好ましくはおよそ1:2である。新規の抽出物を得ることのできる生物試料には、数ある中でも特に、任意の体液、好ましくは尿、血清または血漿が含まれ、それらは好ましくは哺乳動物、特にヒトに由来する。10mg/ml未満のタンパク質濃度を有する体液試料、例えば尿に関して、新規の核酸抽出物は、RNAインテグリティナンバー(RNA Integrity Number)(いずれの場合も、Agilent BioAnalyzerまたはその同等物で得られるもの)5超もしくは5を有する核酸抽出物をさらに含んでもよく、かつまたは、20mlの生物試料からの50pg/ml超もしくは50pg/mlの核酸収量をさらに含んでもよい。同様に、10mg/ml超のタンパク質濃度を有する体液試料、例えば血清または血漿に関して、新規の核酸抽出物は、RNAインテグリティナンバー3超もしくは3をさらに含んでもよく、かつ/または、1mlの生物試料からの50pg/ml超もしくは50pg/mlの核酸収量を含んでもよい。
【0008】
別の局面において、本発明は、真核生物の生物試料から単離された1つまたは複数の微小胞由来の核酸の新規のプロファイルであり、ここで、該プロファイルにおいて18S rRNAおよび28S rRNAが検出可能である。好ましくは、新規のプロファイルにおける検出可能である18S rRNAと28S rRNAの量比は、およそ1:1からおよそ1:2までの範囲内にあり、かつ好ましくはおよそ1:2である。新規のプロファイルを得ることのできる生物試料には、数ある中でも特に、任意の体液、好ましくは尿、血清または血漿が含まれ、それらは好ましくは哺乳動物、特にヒトに由来する。10mg/ml未満のタンパク質濃度を有する体液試料、例えば尿に関して、新規のプロファイルは、RNAインテグリティナンバー5超もしくは5をさらに含んでもよく、かつ/または、20mlの生物試料から50pg/ml超もしくは50pg/mlの核酸収量をさらに含んでもよい。同様に、10mg/ml超のタンパク質濃度を有する体液試料、例えば血清または血漿に関して、新規のプロファイルは、RNAインテグリティナンバー3超もしくは3をさらに含んでもよく、かつ/または、1mlの生物試料からの50pg/ml超もしくは50pg/mlの核酸収量をさらに含んでもよい。
【0009】
さらに別の局面において、本発明は、真核生物の生物試料から単離された微小胞からの核酸抽出物の質を評価する方法であって、以下の段階を含む方法である:(a)微小胞からRNAを抽出する段階;ならびに(b)抽出物中の18S rRNAおよび28S rRNAの量を決定することによってRNAの質を測定する段階。好ましくは、新規の方法によって決定される18S rRNAと28S rRNAの量比は、およそ1:1からおよそ1:2までの範囲内にあり、かつ好ましくはおよそ1:2である。新規の方法を実施しうる生物試料には、数ある中でも特に、任意の体液、好ましくは尿、血清または血漿が含まれ、それらは好ましくは哺乳動物、特にヒトに由来する。10mg/ml未満のタンパク質濃度を有する体液試料、例えば尿に関して、新規の方法が、RNAインテグリティナンバー5超もしくは5を有する核酸の抽出物をさらにもたらしてもよく、かつ/または、20mlの生物試料から50pg/ml超もしくは50pg/mlの核酸収量をさらにもたらしてもよい。同様に、10mg/ml超のタンパク質濃度を有する体液試料、例えば血清または血漿に関して、新規の方法が、RNAインテグリティナンバー3超もしくは3を有する核酸の抽出物をさらにもたらしてもよく、かつ/または、1mlの生物試料から50pg/ml超もしくは50pg/mlの核酸収量をさらにもたらしてもよい。
【0010】
1つのさらなる局面において、本発明は、生物試料から核酸を得る方法であって、以下の段階を含む方法である:(a)生物試料を得る段階;(b)該生物試料に対して抽出増強操作(extraction enhancement operation)を実施する段階;および(c)該生物試料から核酸を抽出する段階。抽出増強操作は、(a)生物試料への1つもしくは複数の増強物質の添加;または(b)核酸抽出前の1つもしくは複数の増強段階の実施;または(c)増強物質および増強段階の組み合わせを含む。増強物質は、(i)RNアーゼ阻害剤;(ii)プロテアーゼ;(iii)還元剤;(iv)デコイ基質、例えば合成RNA;(v)可溶性受容体;(vi)低分子干渉性RNA;(vii)RNA結合性分子、例えば抗RNA抗体、シャペロンタンパク質またはRNアーゼ阻害性タンパク質;(ix)RNアーゼ変性物質、例えば高浸透圧溶液または界面活性剤を含みうる。抽出増強段階は、(x)洗浄すること;(xi)試料からRNアーゼをサイズ分離すること;(xii)物理的変化によって、例えば温度の低下、または凍結/解凍サイクルの実行によって、RNアーゼ変性を生じさせることを含みうる。新規の方法は、数ある中でも特に、任意の体液、好ましくは尿、血清または血漿を含み、好ましくは哺乳動物、特にヒトに由来する、生物試料に対して実施することができる。1つの態様においては、派生物を生物試料から得て、核酸を抽出する段階の前に抽出増強操作に供する。好ましくは、派生物は生物試料由来の微小胞画分である。1つの態様において、微小胞画分は濾過濃縮法によって得られるが、他の公知の単離法を使用してもよい。本発明の方法の1つのさらなる局面において、増強抽出操作を実施する前に、派生物をリボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼまたはそれらの組み合わせによって処理してもよい。いくつかの局面において、抽出増強操作には、核酸を抽出する段階の前の、生物試料へのまたは派生物へのRNアーゼ阻害剤の添加が含まれ;好ましくは、RNアーゼ阻害剤は、1μlまたはそれ以上の試料の場合に0.027AU(1×)超;あるいは、1μlまたはそれ以上の試料の場合に0.135AU(5×)超または0.135AU(5×);あるいは、1μlまたはそれ以上の試料の場合に0.27AU(10×)超または0.27AU(10×);あるいは、1μlまたはそれ以上の試料の場合に0.675AU(25×)超または0.675AU(25×);かつ、あるいは1μlまたはそれ以上の試料の場合に1.35AU(50×)超または1.35AU(50×)の濃度を有し、ここで1×プロテアーゼ濃度とは、0.027AUまたはそれ以上のプロテアーゼを、1μlまたはそれ以上の体液から単離された微小胞を処理するために用いる酵素条件のことを指し;5×プロテアーゼ濃度とは、0.135AUまたはそれ以上のプロテアーゼを、1μlまたはそれ以上の体液から単離された微小胞を処理するために用いる酵素条件のことを指し;10×プロテアーゼ濃度とは、0.27AUまたはそれ以上のプロテアーゼを、1μlまたはそれ以上の体液から単離された微小胞を処理するために用いる酵素条件のことを指し;25×プロテアーゼ濃度とは、0.675AUまたはそれ以上のプロテアーゼを、1μlまたはそれ以上の体液から単離された微小胞を処理するために用いる酵素条件のことを指し;50×プロテアーゼ濃度とは、1.35AUまたはそれ以上のプロテアーゼを、1μlまたはそれ以上の体液から単離された微小胞を処理するために用いる酵素条件のことを指す。好ましくは、RNアーゼ阻害剤はプロテアーゼである。
【0011】
1つのなおさらなる局面において、本発明は、微小胞から核酸を得るための新規のキットであって、1つまたは複数の容器中に(a)核酸抽出増強物質;(b)DNアーゼ、RNアーゼまたはその両方;および(c)溶解用緩衝液を含む、キットである。新規のキットは、キットを使用するための説明書をさらに含んでもよい。本発明の新規のキットにおいて、核酸抽出増強物質は、(a)RNアーゼ阻害剤;(b)プロテアーゼ;(c)還元剤;(d)デコイ基質;(e)可溶性受容体;(f)低分子干渉性RNA;(g)RNA結合性分子;(h)RNアーゼ変性物質;または(i)これらの作用物質のいずれかの、混合物としてのまたは個々での、任意の組み合わせを含みうる。
【0012】
さらに別の局面において、本発明は、微小胞由来のRNAを分析する新規の方法であって、以下の段階を含む方法である:(a)微小胞の試料を得る段階;(b)該試料をDNアーゼで処理して、該試料中の該微小胞の外側または表面に位置する任意のDNAのすべてまたは実質的にすべてを除去する段階;(c)該試料からRNAを抽出する段階;および(d)抽出された該RNAを分析する段階。新規の方法は、数ある中でも特に、任意の体液、好ましくは尿、血清または血漿を含み、好ましくは哺乳動物、特にヒトに由来する、生物試料に対して実施することができる。
【0013】
1つのさらなる局面において、本発明は、(a)対象由来の尿試料から微小胞画分を単離する段階;(b)該微小胞画分中のバイオマーカーの有無を検出する段階を含む、対象を診断、モニタリングまたは治療するための新規の方法であって、該バイオマーカーが、(i)1種の核酸;(ii)核酸の発現のレベル、(iii)核酸変異体、および(iv)これらのいずれかの任意の組み合わせからなる群より選択され、かつ該バイオマーカーが、疾患もしくは他の医学的病状の有無、または治療選択肢の実行可能性と関連づけられる、方法である。いくつかの局面において、バイオマーカーはmRNA転写物であり;例えば、mRNA転写物は、NPHS2(ポドシン)、LGALS1(ガレクチン-1)、HSPG2(ヘパリン硫酸プロテオグリカン);CUBN(キュビリン)、LRP2(メガリン)、AQP1(アクアポリン1)、CA4(カルボニックアンヒドラーゼ4(carbonic anydrase 4))、CLCN5(塩素チャンネルタンパク質5)、BDKRB1(ブラジキニンB1受容体)、CALCR(カルシトニン受容体)、SCNN1D(アミロライド感受性ナトリウムチャンネルサブユニットδ)、SLC12A3(サイアザイド感受性ナトリウムクロライド共輸送体)、AQP2(アクアポリン2)、ATP6V1B1(V-ATPアーゼB1サブユニット)、SLC12A1(RiboAmp増幅した(RiboAmped)mRNAのRT-PCRによる腎臓特異的Na-K-Clシンポーター)からなる群より選択されることができ;より好ましくは、mRNA転写物はAQP2(アクアポリン2)またはATP6V1B1(V-ATPアーゼB1サブユニット)である。新規の方法のさらなる局面において、バイオマーカーおよび疾患または他の医学的病状は、(a)NPHS2(ポドシン)および糸球体疾患、例えばステロイド抵抗性腎炎症候群;(b)CUBN(キュビリン)およびタンパク尿、例えばイマースルンド-グレスベック症候群;ならびに(c)AQP2(アクアポリン2)および尿崩症からなる群より選択される。
【0014】
さらに別の局面において、本発明は、SEQ ID NO:1〜29からなる群より選択される第2のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%同一である第1のヌクレオチド配列;SEQ ID NO:1〜29から選択されるヌクレオチド配列のセグメントを含む単離されたポリヌクレオチド;または、SEQ ID NO:1〜29のいずれか1つにおける任意の13ヌクレオチドの配列と同一である少なくとも13ヌクレオチドの配列を含む単離されたポリヌクレオチドを含む、単離されたポリヌクレオチド分子である。詳細には、前記のポリヌクレオチド分子は、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドであってよい。他の局面において、本発明は、前記の単離された核酸分子のいずれかを含むベクターである。さらに他の局面において、本発明は、前記のベクターのいずれかまたは前記の単離された核酸分子のいずれかを含む、宿主細胞である。
【0015】
1つのさらなる局面において、本発明は、生物試料からの核酸抽出物の質を評価する新規の方法であって、以下の段階を含む方法である:(a)生物試料を提供する段階;(b)該生物試料由来の核酸の抽出物を得る段階;(c)該抽出物中の、SEQ NO:1〜29から選択されるヌクレオチド配列を有するセグメントを含むポリヌクレオチド分子の量を測定する段階;および(d)該ポリヌクレオチド分子の量を標準と比較して、該核酸抽出物の質を評価する段階。この新規の方法は、任意の生物試料、例えば、体液、特に尿、血清または血漿を含み、好ましくはヒトなどの哺乳動物に由来するものに対して実施することができる。この新規の方法は、前記の新規の核酸抽出物または新規の抽出方法の任意のものと併せて用いることができる。特に、核酸抽出物の質を評価するために用いられる標準は、5個超の生物試料からの核酸抽出物中の、SEQ NO:1〜29から選択されるヌクレオチド配列を有するセグメントを含むポリヌクレオチド分子の量を測定することによって導き出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1において、フレームa〜fは、尿中多胞体の電子顕微鏡写真である。多胞体(MVB)はネフロンおよび集合管のさまざまな領域で特定することができる(矢印を参照)。Podo‐有足細胞、PT‐近位尿細管、TDL‐細い下行脚、TAL‐太い上行脚、CD-PC‐集合管主細胞、CD-IC‐集合管介在細胞。スケールバー=a、c、d、e、fについては200nm;bについては500nm。
【図2】単離した尿中微小胞の電子顕微鏡写真である。ヒト尿中微小胞を分画超遠心法により単離し、リンタングステン酸を染色剤として用いるTEMにより画像化した。スケールバー=200nm。
【図3】100kDa MWCOフィルターの方法を用いて作成したRNAプロファイルを図示しているプロットである。プロットの作成にはAgilent BioAnalyzerを用いた。
【図4】超遠心分離の方法を用いて作成したRNAプロファイルを図示しているプロットである。プロットの作成にはAgilent BioAnalyzerを用いた。
【図5】×300g回転、×17,000g回転および0.8μm濾過の三段階の前処理法(A)、または0.8μm濾過のみの一段階の前処理法(B)を用い、いずれの場合もその後に超遠心分離を行って作成したRNAプロファイルを図示している一対のプロットである。プロットの作成にはAgilent BioAnalyzerを用いた。
【図6】×300g回転、×17,000g回転および0.8μm濾過の三段階の前処理法(A)、0.8μm濾過のみの一段階の前処理方法(B)を用い、いずれの場合もその後に濾過濃縮を行って作成したRNAプロファイルを図示している一対のプロットである。プロットの作成にはAgilent BioAnalyzerを用いた。
【図7】抽出増強操作を用いる、尿からの新規の核酸抽出方法を図示している流れ図である。
【図8】5×濃縮プロテアーゼと10×濃縮プロテアーゼを用いる方法を用いて作成したRNAプロファイルを対比して図示している一対のプロットである。微小胞は、20mlの尿試料から濾過濃縮器により単離した。プロットAは、5×プロテアーゼを用いて得られたプロファイルを表している。プロットBは、10×プロテアーゼを用いて得られたプロファイルを表している。1×プロテアーゼ濃度とは、1μlまたはそれ以上の体液から単離された微小胞を、0.027AUまたはそれ以上のプロテアーゼを用いて処理する酵素条件のことである。5×プロテアーゼ濃度とは、1μlまたはそれ以上の体液から単離された微小胞を、0.135AUまたはそれ以上のプロテアーゼを用いて処理する酵素条件のことである。1mAUとは、1分間当たり1μmolのチロシンに対応するフォリン陽性のアミノ酸およびペプチドを放出させるプロテアーゼ活性のことである。
【図9】25×濃縮プロテアーゼと50×濃縮プロテアーゼを用いる方法を用いて作成したRNAプロファイルを対比して図示している一対のプロットである。微小胞は、40mlの尿試料から濾過濃縮器により単離した。プロットAは、25×プロテアーゼを用いて得られたプロファイルを表している。プロットBは、50×プロテアーゼを用いて得られたプロファイルを表している。1×プロテアーゼとは0.027AUのことを指す。1mAUとは、1分間当たり1μmolのチロシンに対応するフォリン陽性のアミノ酸およびペプチドを放出させるプロテアーゼ活性のことである。
【図10】黒色腫血清、試料1のRNAプロファイルを図示しているプロットである。RNAは、RNアーゼ阻害剤Superase-In(Ambion, Inc)を用いる方法により、1mlの血清から抽出した。RNアーゼ阻害剤の最終濃度は、1.6単位/μl微小胞懸濁緩衝液である。
【図11】黒色腫血清、試料2のRNAプロファイルを図示しているプロットである。RNAは、RNアーゼ阻害剤Superase-In(Ambion, Inc)を用いる方法により、1mlの血清から抽出した。RNアーゼ阻害剤の最終濃度は、1.6単位/μl微小胞懸濁緩衝液である。
【図12】黒色腫血清、試料3のRNAプロファイルを図示しているプロットである。RNAは、RNアーゼ阻害剤Superase-In(Ambion, Inc)を用いる方法により、1mlの血清から抽出した。RNアーゼ阻害剤の最終濃度は、1.6単位/μl微小胞懸濁緩衝液である。
【図13】黒色腫血清、試料4のRNAプロファイルを図示しているプロットである。RNAは、RNアーゼ阻害剤Superase-In(Ambion, Inc)を用いる方法により、1mlの血清から抽出した。RNアーゼ阻害剤の最終濃度は、1.6単位/μl微小胞懸濁緩衝液である。
【図14】黒色腫血清、試料5のRNAプロファイルを図示しているプロットである。RNAは、RNアーゼ阻害剤Superase-In(Ambion, Inc)を用いる方法により、1mlの血清から抽出した。RNアーゼ阻害剤の最終濃度は、3.2単位/μl微小胞懸濁緩衝液である。
【図15】黒色腫血清、試料6のRNAプロファイルを図示しているプロットである。RNAは、RNアーゼ阻害剤Superase-In(Ambion, Inc)を用いる方法により、1mlの血清から抽出した。RNアーゼ阻害剤の最終濃度は、3.2単位/μl微小胞懸濁緩衝液である。
【図16】正常血清、試料7のRNAプロファイルを図示しているプロットである。RNAは、RNアーゼ阻害剤Superase-In(Ambion, Inc)を用いる方法により、1mlの血清から抽出した。RNアーゼ阻害剤の最終濃度は、1.6単位/μl微小胞懸濁緩衝液である。
【図17】正常血清、試料8のRNAプロファイルを図示しているプロットである。RNAは、RNアーゼ阻害剤Superase-In(Ambion, Inc)を用いる方法により、1mlの血清から抽出した。RNアーゼ阻害剤の最終濃度は、1.6単位/μl微小胞懸濁緩衝液である。
【図18】正常血清、試料9のRNAプロファイルを図示しているプロットである。RNAは、RNアーゼ阻害剤Superase-In(Ambion, Inc)を用いる方法により、1mlの血清から抽出した。RNアーゼ阻害剤の最終濃度は、1.6単位/μl微小胞懸濁緩衝液である。
【図19】正常血清、試料10のRNAプロファイルを図示しているプロットである。RNAは、RNアーゼ阻害剤Superase-In(Ambion, Inc)を用いる方法により、1mlの血清から抽出した。RNアーゼ阻害剤の最終濃度は、1.6単位/μl微小胞懸濁緩衝液である。
【図20】正常血清、試料11のRNAプロファイルを図示しているプロットである。RNAは、RNアーゼ阻害剤Superase-In(Ambion, Inc)を用いる方法により、1mlの血清から抽出した。RNアーゼ阻害剤の最終濃度は、3.2単位/μl微小胞懸濁緩衝液である。
【図21】正常血清、試料12のRNAプロファイルを図示しているプロットである。RNAは、RNアーゼ阻害剤Superase-In(Ambion, Inc)を用いる方法により、1mlの血清から抽出した。RNアーゼ阻害剤の最終濃度は、3.2単位/μl微小胞懸濁緩衝液である。
【図22】抽出増強操作を用いて生物試料からの核酸抽出の新規の方法を図示する流れ図である。
【図23】DNアーゼ処理を伴うまたは伴わない方法によって作成したRNAプロファイルを図示している一対のプロットである。微小胞の内部に位置していないDNAを、尿試料から単離した微小胞ペレットから、溶解および核酸抽出の前にDNアーゼ消化によって除去した。図23A‐RNeasy Micro Kitを用いた、DNアーゼ消化を伴わないプロファイル。図23B‐RNeasy Micro Kitを用いた、DNアーゼ消化を伴うプロファイル。C‐MirVana Kitを用いた、DNアーゼ消化を伴わないプロファイル。図23D‐MirVana Kitを用いた、DNアーゼ消化を伴うプロファイル。中の矢印によって指し示されている低分子RNAピークの高さおよび面積の変化に注目されたい。図23Dは、フェノール/クロロホルムを基剤とする抽出後に、試料中へのDNAの若干の持ち越しがあることを示唆している。
【図24】DNアーゼ処理を伴うまたは伴わない方法によって作成したRNAプロファイルを図示している一対のプロットである。微小胞の内部に位置していないDNAを、血清試料から単離した微小胞ペレットから、溶解および核酸抽出の前にDNアーゼ消化によって除去した。図24A‐DNアーゼ消化を伴わないプロファイル。図24B‐DNアーゼ消化を伴うプロファイル。図24C‐血清由来の微小胞と共分離される可能性のある「アポトーシス小体」様のラダーを示している擬似ゲル(pseudo-gel)。
【図25】RNアーゼ処理を伴うまたは伴わない方法を用いて作成したRNAプロファイルを図示している一対のプロットである。微小胞の内部に位置していないRNAを、尿試料から単離した微小胞ペレットから、溶解および核酸抽出の前にRNアーゼ消化によって除去した。図25A‐RNアーゼ消化を伴わないプロファイル。図25B‐RNアーゼ消化を伴うプロファイル。
【図26】尿中微小胞およびラット腎臓組織から作成したRNAプロファイルを図示している一対のプロットである。図26A‐ラット腎臓組織由来のプロファイル。図26B‐尿中微小胞由来のプロファイル。
【図27】低分子RNAの抽出を強化しうる方法を用いて尿中微小胞およびラット腎臓組織から作成したRNAプロファイルを図示している一対のプロットである。図27A‐ラット腎臓組織由来のプロファイル。図27B‐尿中微小胞由来のプロファイル。
【図28】DNアーゼ消化処理を伴うまたは伴わない単離法によって捕捉されない微小胞を除いた全尿から作成したRNAプロファイルを図示している一対のプロットである。図28A‐DNアーゼ処理を伴わずに全尿から単離された核酸。図28B‐DNアーゼ処理を伴って全尿から単離された核酸。
【図29】尿中微小胞から作成したRNAプロファイルを図示している一対のプロットである。図29A‐DNアーゼ処理を伴わずに尿中微小胞から単離された核酸。図29B‐DNアーゼ処理を伴って尿中微小胞から単離された核酸。
【図30】300g回転中に形成されたペレットから抽出された核酸から作成したRNAプロファイルを図示している一対のプロットである。図30A‐DNアーゼ処理を伴わずに300g回転ペレットから単離された核酸。図30B‐DNアーゼ処理を伴って300g回転ペレットから単離された核酸。
【図31】17,000g回転中に形成されたペレットから抽出された核酸から作成したRNAプロファイルを図示している一対のプロットである。図31A‐DNアーゼ処理を伴わずに17,000g回転ペレット由来の核酸プロファイル。図31B‐DNアーゼ処理を伴って17,000g回転ペレット由来の核酸プロファイル。
【図32】微小胞内RNアーゼ消化を伴うかまたは伴わずに、微小胞溶解の前に外側のRNアーゼおよびDNアーゼ消化を受けた微小胞から作成したRNAプロファイルを図示している一対のプロットである。図32A‐微小胞内RNアーゼ消化を伴わない核酸プロファイル。図32B‐微小胞内RNアーゼ消化を伴う核酸プロファイル。
【図33】微小胞内DNアーゼ消化を伴うかまたは伴わずに、微小胞溶解および微小胞内RNアーゼ消化の前に外側のRNアーゼおよびDNアーゼ消化を受けた微小胞から作成したRNAプロファイルを図示している一対のプロットである。図33A‐微小胞内DNアーゼ消化を伴わない核酸プロファイル。図33B‐微小胞内DNアーゼ消化を伴う核酸プロファイル。プロットBでは、20秒の直後のピークが、プロットAにおける符合するピークと比較して減少している。この減少は、少量のDNアーゼで消化可能な材料がエキソソーム内に存在することを示唆する。
【図34】(A)RT-PCRによる、尿中微小胞中のβ-アクチンおよびGAPDHに関するRiboAmpで増幅したmRNA転写物の陽性同定に関する、BioAnalyzerで作成した「擬似ゲル」プロファイルである。(B)は、ネフロンおよび集合管の説明図であり、機能的に別個であるその6つの領域を強調表示している。1.糸球体;2.近位尿細管;3.細い下行脚;4.髄質の太い上行脚;5.遠位曲尿細管;6. 集合管。
【図35】尿中微小胞由来のRiboAmp増幅したmRNAのRT-PCRによって検出された、ネフロンおよび集合管の領域1および2からの特異的な遺伝子をコードするmRNA転写物の同定に関する、BioAnalyzerで作成した擬似ゲルプロファイルを表しており、領域は具体的には以下の通りである:1.糸球体:NPHS2‐ポドシン、LGALS1‐ガレクチン-1、HSPG2‐ヘパラン硫酸プロテオグリカン 2.近位尿細管:CUBN‐キュビリン、LRP2‐メガリン、AQP1‐アクアポリン1、CA4‐カルボニックアンヒドラーゼ4、CLCN5‐塩素チャンネルタンパク質5。
【図36】尿中微小胞由来のRiboAmp増幅したmRNAのRT-PCRによって検出した、ネフロンおよび集合管の領域3〜6からの特異的遺伝子をコードするmRNA転写物の同定に関する、BioAnalyzerで作成した擬似ゲルプロファイルを表しており、領域は具体的には以下の通りである:3.細い下行脚:BDKRB1‐ブラジキニンB1受容体。4.髄質の太い上行脚:CALCR‐カルシトニン受容体、SCNN1D‐アミロライド感受性ナトリウムチャンネルサブユニットδ。5.遠位曲尿細管:SLC12A3‐サイアザイド感受性ナトリウムクロライド共輸送体。6.集合管:AQP2‐アクアポリン2、ATP6V1B1‐vATPアーゼB1サブユニット、SLC12A1‐腎臓特異的Na-K-Clシンポーター。
【図37】図37Aは、V-ATPアーゼB1 KO(B1 -/-)および野生型(B1 +/+)マウスにおける、RT-PCRによるV-ATPアーゼB1サブユニットおよびAQP2 mRNAの発現を図示している一対のBioAnalyzer擬似ゲルである。図37Bは、リアルタイムPCR分析による、V-ATPアーゼB 1KO(B1 -/-)および野生型(B1 +/+)マウス由来の尿中微小胞および腎細胞におけるV-ATPアーゼB2サブユニットの発現を図示している一対のチャートである。「NS」‐統計的に有意でない。
【図38】尿中微小胞から作成したRNAプロファイルを図示している3つのプロットである。微小胞膜を核酸抽出のために破壊する前には、洗浄も、抽出エンハンサーによる尿中微小胞の処理も行わなかった。3個の試料をこの抽出物群に用いた。プロファイルはそれぞれA、BおよびCに示されている。
【図39】尿中微小胞から作成したRNAプロファイルを図示している3つのプロットである。微小胞膜を核酸抽出のために破壊する前に、尿中微小胞を洗浄はしなかったが、RNアーゼ阻害剤、RNアーゼ-In(Promega)で処理した。3個の試料をこの抽出物群に用いた。プロファイルはそれぞれA、BおよびCに示されている。
【図40】尿中微小胞から作成したRNAプロファイルを図示している3つのプロットである。微小胞膜を核酸抽出のために破壊する前には、尿中微小胞を洗浄したが、RNアーゼ阻害剤による処理は行わなかった。3個の試料をこの抽出物群に用いた。プロファイルはそれぞれA、BおよびCに示されている。
【図41】尿中微小胞から作成したRNAプロファイルを図示している3つのプロットである。微小胞膜を核酸抽出のために破壊する前に、尿中微小胞を洗浄し、かつRNアーゼ阻害剤で処理した。3個の試料をこの抽出物群に用いた。プロファイルはそれぞれA、BおよびCに示されている。
【図42】尿中微小胞から抽出されたRNAのディープシークエンシング(deep sequencing)分析において、500個超の転写物ヒット(「スパイク」)がみられた染色体領域の一覧である。数字は、各染色体領域の開始点および終止点を指し示している。例えば、「chr1.-1.91625366.91625741」は、ヒト第1番染色体上のヌクレオチド番号91625366と同91625741との間の領域のことを指す。対応するSEQ ID NOも指し示されている。
【図43】示された10個の染色体領域における配列を増幅するためのPCR反応に用いたプライマーの一覧である。例えば、「chr1.-1.91625366.91625741」は、ヒト第1番染色体上のヌクレオチド番号91625366と同91625741との間の領域のことを指す。この領域を増幅するために用いたプライマー対は「tccagctcacgttccctatt 1Lおよびccaggtggggagtttgact 1R」であった。プライマーは左から右に進むにつれて5'側から3'側に移動する。
【図44】スパイクに富む10個の染色体領域のPCR増幅の結果を図示している一対のBioAnalyzer擬似ゲルである。各フレームの上部に付したレーンの番号付けは、図43に示された染色体領域の番号付けに対応する。図44Aでは、尿中微小胞からの核酸抽出物を、PCRのためのテンプレートとして用いた。図44Bでは、腎組織からの核酸抽出物を、PCRのためのテンプレートとして用いた。
【図45−73】29個の染色体領域におけるスパイクを図示しているプロットである。領域は各プロットの上部に指し示されている。例えば、図46におけるプロットは、ヒト第1番染色体上のヌクレオチド番号91625366と同91625741との間の領域である、「chr1.1.91625366.91625741」の領域のことを指す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
微小胞は、真核細胞によって細胞の外部に分離放出されるか、または原形質膜から出芽分離(bud off)される。これらの膜小胞のサイズは不均一であり、直径は約10nmから約5000nmまでの範囲にわたる。細胞内多胞体のエキソサイトーシスによって放出された小型の微小胞(直径およそ10〜1000nm、かつ大半の場合はおよそ10〜200nm)は、当技術分野において「エキソソーム」と呼ばれる。本明細書に記載された組成物、方法および使用は、あらゆるサイズの、好ましくは10〜800nm、かつより好ましくは10〜200nmの微小胞に同様に適用される。
【0018】
文献のいくつかでは、「エキソソーム」という用語は、mRNA分解および核小体低分子RNA(snoRNA)、核内低分子RNA(snRNA)およびリボソームRNA(rRNA)のプロセシングに関与するエキソリボヌクレアーゼを含有するタンパク質複合体のことも指している(Liu et al., 2006;van Dijk et al., 2007)。そのようなタンパク質複合体は、膜を有しておらず、本明細書において以下の用語が用いられる場合の「微小胞」でも「エキソソーム」でもない。
【0019】
本発明は一部には、有害因子が生物試料からの核酸の有効な抽出を妨げる恐れがあるという発見、ならびに新規かつ予想外の作用物質および段階を用いることで、有害因子を緩和または除去し、それにより、抽出された核酸の質を劇的に改善しうるという発見に基づく。このため、本発明の1つの局面は、生物試料から質の良い核酸を抽出するための新規の方法である。本明細書に記載された新規の方法によって得られる質の良い抽出物は高収量および高度の完全性を特徴とし、そのため、抽出された核酸は、質の良い核酸抽出物が好まれるさまざまな用途のために有用である。
【0020】
幅広く述べると、新規の方法は、例えば、生物試料を得る段階、生物試料からの核酸の有効な抽出を妨げる有害分子を緩和または除去する段階、および該生物試料から核酸を抽出し、かつ任意でその後に核酸分析を行う段階を含む。
【0021】
適用可能な生物試料には、例えば、細胞、細胞群、細胞の断片、例えば微小胞を含む細胞産物、細胞培養物、対象由来の体組織、または体液が含まれる。体液は、対象の身体の任意の箇所、好ましくは末梢部位から単離された液体であってよく、これには例えば、血液、血漿、血清、尿、痰、髄液、胸膜液、乳頭吸引液、リンパ液、気道、腸管および尿生殖路の液体、涙液、唾液、母乳、リンパ系由来の液体、精液、脳脊髄液、臓器系内部の液体、腹水、腫瘍嚢胞液、羊水ならびにそれらの組み合わせが非限定的に含まれる。
【0022】
生物試料は場合によって対象に由来してもよい。「対象」という用語は、微小胞を有することが示されているかまたは予想される、すべての動物を含むものとする。特定の態様において、対象は、哺乳動物、ヒトもしくは非ヒト霊長動物、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、他の家畜、または齧歯動物(例えば、マウス、ラット、モルモットなど)である。「対象」および「個体」という用語は、本明細書において互換的に用いられる。
【0023】
有害作用を緩和または除去する段階を行う前、行った後または行うと同時に、生物試料を任意で、生物試料派生物を得るために加工処理してもよい。生物試料派生物は、細胞、細胞残屑、膜小胞または微小胞であってよい。
【0024】
生物試料は場合によって、微小胞などの生物試料派生物を得る前に前処理される。ある場合には、前処理段階が好まれる。例えば、尿試料を前処理して尿中微小胞を得てもよい。前処理は、低速遠心分離法および前濾過などの当技術分野において公知の手法によって達成することができる。例えば、試料中の大粒子を取り除くために、尿試料を、300gの第1の遠心分離段階に供してもよい。試料中のより小さい粒子を取り除くために、尿試料を17,000gの第2の遠心分離段階に供してもよい。第2の遠心分離段階の後に、尿試料をさらに前濾過段階、例えば0.8umの前濾過段階に供してもよい。または、最初に遠心分離段階の1つまたは複数に供することなく、尿試料を前濾過段階によって前処理してもよい。
【0025】
膜小胞、例えば微小胞を、生物試料から単離してもよい。ある場合には、そのような単離は生物試料を、ある場合には前処理することなく行ってもよい。他の場合には、そのような単離を、生物試料を前処理した後に行ってもよい。単離の段階は、生物試料からの質の良い核酸の抽出のために有益であると考えられる。例えば、単離は、以下のような利点をもたらす:(1)疾患特異的または腫瘍特異的な微小胞を液体試料内の他の微小胞から隔てて単離することによって得られる、疾患特異的または腫瘍特異的な核酸を選択的に分析する機会;(2)液体試料から核酸を直接抽出することによって得られる収量/完全性と比較して、核酸種の収量が有意に多く、完全性がより高いこと;(3)例えば、低レベルで発現される核酸を検出するために、より大容積の血清からより多くの微小胞をペレット化することによって感度を高めることができる、スケーラビリティー(scalability);(4)タンパク質および脂質、死細胞由来の残屑、ならびにその他の可能性のある混入物およびPCR阻害物質が核酸抽出段階の前に微小胞ペレットから排除されるという点で、より純粋な核酸;ならびに(5)微小胞ペレットの容積が出発時の血清のそれよりもはるかに小さいために、小容積のカラムフィルターを用いて、これらの微小胞のペレットから核酸を抽出することが可能であるので、核酸抽出方法の選択肢がより多いこと。
【0026】
生物試料から微小胞を単離する方法は、当技術分野において公知である。例えば、分画遠心法は、Raposo et al.による論文(Raposo et al., 1996)、Skog et. al.による論文(Skog et al., 2008)およびNilsson et. al.による論文(Nilsson et al., 2009)に記載されている。陰イオン交換および/またはゲル浸透クロマトグラフィーの方法は、米国特許第6,899,863号および同第6,812,023号に記載されている。ショ糖密度勾配またはオルガネラ電気泳動の方法は、米国特許第7,198,923号に記載されている。磁気活性化細胞選別(MACS)の方法は、Taylor and Gercel-Taylorによる論文(Taylor and Gercel-Taylor, 2008)に記載されている。ナノ膜限外濾過濃縮の方法は、Cheruvanky et al.による論文(Cheruvanky et al., 2007)に記載されている。さらに、微小胞を、腫瘍由来の微小胞を効率的および選択的に分離するために独特なマイクロ流体プラットフォームを用いる新たに開発されたマイクロチップ技術によって、対象の体液から同定すること、および単離することもできる(Chen et al.)。前記の参照文献のそれぞれは、これらの方法に関するその教示のために参照により本明細書に組み入れられる。
【0027】
本明細書に記載された方法の1つの態様において、体液から単離された微小胞は、特定の細胞種、例えば、肺、膵臓、胃、腸、膀胱、腎臓、卵巣、精巣、皮膚、結腸直腸、乳房、前立腺、脳、食道、肝臓、胎盤、胎児の細胞から生じたものに富む。微小胞は多くの場合、それらのドナー細胞由来の抗原などの表面分子を保有するため、表面分子を用いて特定のドナー細胞種由来の微小胞を同定すること、単離することおよび/または濃縮することができる(Al-Nedawi et al., 2008;Taylor and Gercel-Taylor, 2008)。このようにして、別個の細胞集団から生じた微小胞を、それらの核酸内容物に関して分析することができる。例えば、腫瘍(悪性および非悪性)微小胞は腫瘍関連表面抗原を保有しており、これらの特異的な腫瘍関連表面抗原を介してそれらを検出すること、単離することおよび/または濃縮することができる。1つの例では、表面抗原は上皮細胞接着分子(EpCAM)であり、これは肺、結腸直腸、乳房、前立腺、頭頸部および肝臓起源の癌由来の微小胞に対しては特異的であるが、血液細胞起源のものに対してはそうでない(Balzar et al., 1999;Went et al., 2004)。別の例では、表面抗原は、尿中微小胞に対して特異的な糖タンパク質であるCD24である(Keller et al., 2007)。さらに別の例では、表面抗原は、CD70、癌胎児性抗原(CEA)、EGFR、EGFRvIIIおよび他の変異体、Fasリガンド、TRAIL、トランスフェリン受容体、p38.5、p97およびHSP72などの分子の群から選択される。加えて、腫瘍特異的な微小胞を、CD80およびCD86といった表面マーカーの欠如によって特徴づけることもできる。
【0028】
特定の細胞種からの微小胞の単離は、例えば、所望の表面抗原に対して特異的な、抗体、アプタマー、アプタマー類似体または分子インプリントポリマー(molecularly imprinted polymer)を用いることによって達成することができる。1つの態様において、表面抗原は癌の種類に対して特異的である。別の態様において、表面抗原は、必ずしも癌性ではない細胞種に対して特異的である。細胞表面抗原に基づく微小胞分離の方法の一例は、米国特許第7,198,923号に提示されている。例えば、米国特許第5,840,867号および同第5,582,981号、WO/2003/050290、ならびにJohnson et al.による刊行物(Johnson et al., 2008)に記載されている通り、アプタマーおよびそれらの類似体は表面分子と特異的に結合することができ、細胞種特異的な微小胞を回収するための分離用ツールとして用いることができる。分子インプリントポリマーも、例えば、米国特許第6,525,154号、同第7,332,553号および同第7,384,589号、ならびにBossiらによる刊行物(Bossi et al., 2007)に記載されている通り表面分子を特異的に認識し、これらも細胞種特異的な微小胞を回収および単離するためのツールである。前記の参照文献のそれぞれは、これらの方法に関するその教示のために本明細書に組み入れられる。
【0029】
意図した生物学的派生物が微小胞などの膜小胞である場合には、微小胞の内部にない核酸を除去する段階を実施することもある。核酸を除去する方法は当技術分野において周知である。例えば、試料からそのような核酸を除去するために、酵素消化段階を行ってもよい。そのような酵素は、リボ核酸の酵素消化を触媒するある種のリボヌクレアーゼ、またはデオキシリボ核酸の酵素消化を触媒するある種のデオキシリボヌクレアーゼであってよい。
【0030】
本発明の1つの局面において、新規の核酸抽出方法は、生物試料からの質の良い核酸の抽出を妨げる有害因子を除去または緩和する段階を含む。そのような有害因子は、各種の生物試料がさまざまな種類のそのような有害因子を含みうるという点で一様でない。ある種の生物試料では、過剰な微小胞外のDNAなどの因子が、そのような試料からの核酸抽出物の質に影響を及ぼし、微小胞内から抽出されるDNAに混入する可能性がある。別の試料では、過剰な内因性RNアーゼなどの因子が、そのような試料からの核酸抽出物の質に影響を及ぼす可能性がある。多くの作用物質および方法を、これらの有害因子を除去するために用いることができる。これらの方法および作用物質は「抽出増強操作」と総称される。
【0031】
ある場合には、抽出増強操作が、生物試料または派生物への核酸抽出増強物質の添加を伴ってもよい。内因性RNアーゼなどの有害因子を除去するための、本明細書に定義した抽出増強物質には、Superase-In(Ambion Inc.)、RNaseIN(Promega Corp.)もしくは同様の様式で機能する他の作用物質などの市販のRNアーゼ阻害剤;プロテアーゼ;還元剤;合成RNAなどのデコイ基質;RNアーゼと結合しうる可溶性受容体;低分子干渉性RNA(siRNA);抗RNA抗体もしくはシャペロンタンパク質などのRNA結合性分子;高浸透圧溶液、界面活性剤などのRNアーゼ変性物質、またはそれらの組み合わせが非限定的に含まれうる。これらの増強物質はそれらの機能をさまざまな様式で、例えば、限定的ではないものの、RNアーゼ活性を阻害すること(例えば、RNアーゼ阻害剤)によって、タンパク質の遍在的分解(例えば、プロテアーゼ)によって、またはRNAと結合するかもしくはそれを保護するシャペロンタンパク質(例えば、RNA結合タンパク質)によって、発揮しうる。いずれの場合にも、そのような抽出増強物質は、生物試料中の一部またはすべての有害因子を除去するかまたは緩和し、該有害因子はそうでなければ生物試料からの質の良い抽出核酸を妨げるかまたはそれと干渉すると考えられる。
【0032】
別の場合には、抽出増強操作は、1つまたは複数の加工処理段階の実施を伴ってもよい。そのような加工処理には、試料の核酸含有構成要素、例えば微小胞の高度またはかなり徹底的な洗浄;生物試料由来のRNアーゼのサイズ分離;特定のpH条件、温度条件(例えば、低下しているかまたは比較的低い温度の維持)、凍結/解凍サイクルを生じさせることを非限定的に含むさまざまな手法による、生物試料中のタンパク質の変性、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0033】
本明細書に記載した抽出増強操作の使用によって予期されず明らかに示されたことの1つは、微小胞由来の核酸の抽出物中に、かなりの量のリボソームRNA(rRNA)の存在を検出することが可能なことである。以前の研究で、微小胞核酸抽出物における18S rRNAおよび28S rRNAの検出を実証したものは知られていない。それどころか、以前の研究では、微小胞からの核酸抽出物中にはrRNAが全くまたはほとんど存在しないと示唆されていた(Skog et al., 2008;Taylor and Gercel-Taylor, 2008;Valadi et al., 2007)。
【0034】
本発明の別の局面において、抽出増強操作の実施は、抽出されたRNAの質をRNAインテグリティナンバー(RIN)の点で改善すると考えられる。RNAインテグリティナンバー(RIN)は、Agilent Technologies(http://www.chem.agilent.com/enus/products/instruments/lab-on-a-chip/pages/gpl 4975.aspx、2010年7月15日にアクセス)によって設計されたもので、全RNA試料の完全性を推定するように設計されたソフトウエアツール製品である。このソフトウエアは、真核生物の全RNA試料に対して、インテグリティナンバーを自動的に割り当てる。このツールを用いると、試料の完全性は18Sリボソームバンドおよび28Sリボソームバンドの比によってではなく、RNA試料の電気泳動トレース全体によって判定される。これは分解産物の有無を含む。割り当てられたRINは、試料濃度、装置および分析者に依存せず、RNA完全性に関する標準として役立てることができる。
【0035】
本発明のさらに別の局面において、抽出増強操作の実施は、抽出された核酸の量または収量を改善すると考えられる。例えば、抽出増強操作を用いることで、本明細書に記載された通り、20mlの低タンパク質生物試料、例えば尿から、50pg/ml超もしくは50pg/mlの核酸収量を得ることができる。または、1mlの高タンパク質生物試料、例えば血清または血漿から、50pg/ml超もしくは50pg/mlの核酸収量を得ることができる。
【0036】
本明細書に記載された方法によって得られる新規の質の良い核酸抽出物は、好ましくはおよそ1:1からおよそ1:2までの比での、およびより好ましくはおよそ1:2の比での18S rRNAおよび28S rRNAの検出の組み合わせ;低タンパク質生物試料についてはRNAインテグリティナンバー5超もしくは5、または高タンパク質生物試料についてはRNAインテグリティナンバー3超もしくは3;および20mlの低タンパク質生物試料または1mlの高タンパク質生物試料からの50pg/ml超もしくは50pg/mlの核酸収量を示してよい。
【0037】
質の良いRNA抽出物は非常に望ましいが、これはRNA分解が、遺伝子発現およびmRNAの分析、さらには低分子RNAおよびマイクロRNAなどの非コード性RNAの分析などにおいて、抽出されたRNAの以降の評価に重大な影響を及ぼす恐れがあるためである。本明細書に記載された新規の方法は、微小胞などの生物試料から質の良い核酸を抽出することを可能にし、その結果、エキソソーム内部の遺伝子発現および突然変異レベルの正確な分析を行うことを可能にする。1つの態様において、例えば、より高い濃度のプロテアーゼ(5×、10×)を抽出増強物質として用いると、尿中微小胞から単離されるRNAの量および完全性が有意に高まる。
【0038】
本発明の別の局面は、生物試料、例えば尿から質の良い低分子RNAを抽出する方法を提供する。miRNAなどの低分子RNAは、核酸抽出の過程において分解および損失を特に受けやすい。本明細書で開示する新規の方法では、高濃度のプロテアーゼを用いて、低分子RNAについての質の良い抽出を妨げる有害因子を除去または緩和する。1つの態様において、核酸、特に低分子RNAを抽出する方法は、25×および50×プロテアーゼを抽出増強物質として用い、有意に増加した量の低分子RNAを得ることができる。本明細書で用いる場合、5×、10×、25×および50×などの表現は、QIAamp MinElute Virus Spin Kitなどの市販の核酸抽出キットにおいて現在使用または推奨されているプロテアーゼの活性レベルの5倍、10倍などであることを意味する。
【0039】
抽出に影響を及ぼす有害因子が除去または緩和される場合には、当技術分野において周知である任意のさまざまな手順を用いて、生物試料から核酸分子を単離することができる。当業者は、特定の単離手順を、その特定の生物試料に対して適切であるとして選択することができる。抽出のための方法の例は、本明細書における実施例の項に提示されている。ある場合には、いくつかの手法を用いることで、微小胞からを抽出することなく、核酸を分析することも可能であることもある。
【0040】
1つの態様においては、DNAおよび/またはRNAを含む抽出された核酸を、増幅段階を伴わずに直接分析する。直接分析は、ナノストリング(nanostring)技術を非限定的に含む種々の方法を用いて実施することができる。ナノストリング技術は、色分けされた蛍光性レポーターを各標的分子に付着させることにより、生物試料中の個々の標的分子の同定および定量を可能にする。このアプローチは、バーコードのスキャニングによって在庫を評定する考え方と類似している。レポーターは、高度に多重化された分析を可能にする、数百種またはさらには数千種もの異なるコードを付けて作製することができる。この技術は、Geissらによる刊行物(Geiss et al., 2008)に記載されており、これはこの教示のために参照により本明細書に組み入れられる。
【0041】
別の態様において、微小胞の核酸を、それを分析する前に増幅することが有益であるかまたはそうでなければ望ましい場合がある。核酸増幅の方法は一般的に用いられており、当技術分野において一般に公知であり、その多くの例が本明細書に記載されている。所望であれば、増幅を、それが定量的であるように実施することもできる。定量的増幅は、さまざまな核酸の相対的な量を定量的に測定して、下記のプロファイルを作成することを可能にすると考えられる。
【0042】
1つの態様において、抽出される核酸はRNAである。次に、RNAを、好ましくは逆転写させて相補的DNA(cDNA)にして、その後にさらに増幅する。そのような逆転写は、単独で行ってもまたは増幅段階と組み合わせて行ってもよい。逆転写および増幅の段階を組み合わせる方法の一例は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)であり、これをさらに定量的であるように改変することもでき、これには例えば、この教示のために参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,639,606号に記載された定量的RT-PCRがある。
【0043】
核酸増幅方法には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(米国特許第5,219,727号)およびその変形物、例えば、インサイチューポリメラーゼ連鎖反応(米国特許第5,538,871号)、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(米国特許第5,219,727号)、ネステッドポリメラーゼ連鎖反応(米国特許第5,556,773号)、自家持続配列複製法およびその変形物(Guatelli et al., 1990)、転写増幅システムおよびその変形物(Kwoh et al., 1989)、Qbレプリカーゼ(Qb Replicase)およびその変形物(Miele et al., 1983)、コールド-PCR(cold-PCR)(Li et al., 2008)、または任意の他の核酸増幅方法が非限定的に含まれ、その後に、増幅された分子の検出を当業者に周知の方法を用いて行う。特に有用なのは、そのような分子が極めて少数しか存在しない場合の検出のために設計された、核酸分子の検出スキームである。前記の参照文献は、これらの方法に関するそれらの教示のために本明細書に組み入れられる。
【0044】
微小胞中に存在する核酸の分析は、定量的および/または定性的である。定量分析のためには、微小胞内の関心対象の特定の核酸の、相対的または絶対的な量(発現レベル)を、当技術分野において公知の方法(下記)を用いて測定する。定性分析のためには、微小胞内の関心対象の特定の種の核酸を、それが野生型であるか変異体であるかを問わず、当技術分野において公知の方法を用いて同定する。
【0045】
本明細書において開示される本発明はまた、物質の新規組成物として、18S rRNAおよび28S rRNAが核酸抽出物中において検出可能である微小胞からの該抽出物も含む。そのような核酸抽出物は、本発明において開示された新規の核酸抽出方法を用いて実現することができる。生物試料中の微小胞からの質の良い核酸抽出物が、多くの場合には望ましい。ある場合には、組織試料は容易には入手できない。例えば、脳腫瘍試料は通常、脳外科手術を行わずに得ることはできない。ところが、脳腫瘍患者の血清由来の微小胞試料は容易に入手することができる。脳腫瘍細胞内の核酸を分析するためには、脳腫瘍細胞によって分泌される血清中微小胞内の核酸を分析するのが容易である。このため、組織細胞によって分泌される微小胞内の核酸を、組織細胞由来の核酸の代わりに用いる場合には、組織細胞から直接得られるものと同じように、検出可能な質の対照(quality control)、例えば18S rRNAおよび28S rRNAを含む質の良い核酸を得ることが望ましい。別の場合には、質の良い低分子RNAが望ましい。本明細書において開示される核酸抽出物は、そのような質の良い低分子RNAを、18S rRNAおよび28S rRNAとともに含む。そのような質の良い低分子RNAは、例えば、特定のmiRNAの発現レベルといった、さまざまな目的での核酸の正確な評価のために重要である。
【0046】
本明細書で開示される本発明は、生物試料中の微小胞由来の核酸の新規の質の良いプロファイルをさらに含む。そのようなプロファイルは、18S rRNAおよび28S rRNAを含む核酸抽出物を分析することによって作成される。そのようなプロファイルを、本明細書において開示される新規の方法を用いて作成してもよい。質の良い核酸プロファイルは、医学的病状または治療法の選択に関するバイオマーカーとしての使用のためなどの多くの用途にとって非常に望ましい。そのようなプロファイルは試料間でばらつきのないことが望ましい。そのような一貫性を、質の良い核酸抽出物を用いずに達成することはほとんどできない。本発明の1つの態様において、核酸のプロファイルは、その由来となる細胞によって分泌される微小胞内の核酸を分析することによって得ることができる。そのような微小胞は、容易に入手できる生物試料、例えば、尿、血清または血漿から単離することができる。核酸のそのようなプロファイルには、低分子RNA、メッセンジャーRNA、マイクロRNA、非コード性RNAまたはそれらの組み合わせが含まれうる。本発明の1つのさらなる態様において、核酸のそのようなプロファイルを、ある特定の成績をより正確に得るために、他のバイオマーカーと組み合わせてもよい。
【0047】
核酸のプロファイルは、例えば遺伝子異常の収集物であることができ、それは本明細書において、微小胞内の核酸量ならびに核酸変異体のことを指して用いられる。具体的には、遺伝子異常には、1つの遺伝子(例えば、癌遺伝子)または一群の遺伝子の過剰発現、1つの遺伝子(例えば、p53またはRBなどの腫瘍抑制遺伝子)または一群の遺伝子の過小発現、1つの遺伝子または一群の遺伝子のスプライス変異体の選択的産生、1つの遺伝子または一群の遺伝子の、遺伝子コピー数変異体(CNV)(例えば、二重微小DNA(DNA double minute))(Hahn, 1993)、核酸修飾(例えば、メチル化、アセチル化およびリン酸化)、一塩基多型(SNP)、染色体再配列(例えば、逆位、欠失および重複)および突然変異(挿入、欠失、重複、ミスセンス、ナンセンス、同義的または任意の他のヌクレオチド変化)が非限定的に含まれ、それらの突然変異は、多くの場合には、最終的には遺伝子産物の活性および機能に影響を及ぼして、選択的転写スプライシング変異体および/または遺伝子発現レベルの変化を招く。
【0048】
そのような遺伝子異常の判定は、当業者に公知の種々の手法によって実施することができる。例えば、核酸の発現レベル、選択的スプライシング変異体、染色体再配列および遺伝子コピー数は、マイクロアレイ分析(米国特許第6,913,879号、同第7,364,848号、同第7,378,245号、同第6,893,837号および同第6,004,755号)および定量的PCRによって決定することができる。特に、コピー数変化は、Illumina Infinium II全ゲノム遺伝子型判定アッセイ法、またはAgilent Human Genome CGHマイクロアレイを用いて検出することができる(Steemers et al., 2006)。核酸修飾は、例えば、米国特許第7,186,512号および特許公報WO/2003/023065に記載された方法によってアッセイすることができる。特に、メチル化プロファイルは、Illumina DNA Methylation OMA003 Cancer Panelによって決定することができる。SNPおよび突然変異は、アレル特異的プローブを用いたハイブリダイゼーション、酵素的突然変異検出、ミスマッチヘテロ二重鎖の化学切断(Cotton et al., 1988)、ミスマッチ塩基のリボヌクレアーゼ切断(Myers et al., 1985)、質量分析(米国特許第6,994,960号、同第7,074,563号および同第7,198,893号)、核酸シークエンシング、一本鎖高次構造多型(SSCP)(Orita et al., 1989)、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)(Fischer and Lerman, 1979a;Fischer and Lerman, 1979b)、温度勾配ゲル電気泳動(TGGE)(Fischer and Lerman, 1979a;Fischer and Lerman, 1979b)、制限断片長多型(RFLP)(Kan and Dozy, 1978a;Kan and Dozy, 1978b)、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ法(OLA)、アレル特異的PCR(ASPCR)(米国特許第5,639,611号)、ライゲーション連鎖反応(LCR)およびその変形物(Abravaya et al., 1995;Landegren et al., 1988;Nakazawa et al., 1994)、フローサイトメトリーヘテロ二重鎖分析(WO/2006/113590)およびそれらの組み合わせ/改変物によって検出することができる。特に、遺伝子発現レベルは、遺伝子発現連続分析(SAGE)法によって測定することができる(Velculescu et al., 1995)。一般に、遺伝子異常を分析するための方法は、本明細書中に引用されたものに限定されない、数多くの刊行物において報告されており、それらは当業者にとって利用可能である。分析の適切な方法は、分析の具体的な目的、患者の状態/履歴、検出、モニタリングまたは治療を行おうとする具体的な癌、疾患または他の医学的状態に依存すると考えられる。前記の参照文献は、これらの方法に関するそれらの教示のために本明細書に組み入れられる。
【0049】
本発明は、本明細書に記載された特定の方法、プロトコールおよび試薬には限定されず、これらは異なってもよいことが理解されるべきである。本明細書で用いられる用語は、特定の態様を説明することのみを目的としており、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、それは特許請求の範囲のみによって規定される。
【0050】
本明細書で開示される対象物の例を、以下に述べる。本明細書で開示される対象物のその他の特徴、目的および利点は、詳細な説明、図、例および特許請求の範囲によって明らかになるであろう。本明細書に記載されたものと同様または同等な方法、デバイスおよび材料を、本明細書に開示された対象物の実行または試験に用いることができる。例示的な方法、デバイス、使用法および材料を、以下に説明する。
【実施例】
【0051】
尿中の微小胞
実施例1:腎細胞は多胞体を含む
腎細胞が微小胞を分離放出するか否かについて検査するために、本発明者らは透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、腎細胞が微小胞を生じる元となる多胞体を含むか否かを判定した。ラット腎臓を、2.0%グルタルアルデヒドを含む0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液、pH 7.4(Electron Microscopy Sciences, PA)による血管内灌流によって固定し、腎臓切片を4℃で一晩かけてさらに固定した。試料切片を0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液ですすぎ洗いして、1.0%四酸化オスミウムを含むカコジル酸緩衝液中室温で1時間後固定し、再び緩衝液ですすぎ洗いした後に、蒸留水(dH2O)ですすぎ洗いして、2.0%酢酸ウラニルの水溶液中で、室温で1時間一括染色した。試料を蒸留水ですすぎ洗いし、100%までの段階的な一連のエタノールによって脱水した。Epon:エタノールの1:1溶液中での一晩浸漬によって、試料にEpon樹脂(Ted Pella, CA)を浸透させた。翌日に試料を新たなEpon中に入れて数時間おき、60℃のEpon中に一晩おいて包埋した。薄切片を、Reichert Ultracut Eウルトラミクロトームで切り出し、ホルムバールでコーティングしたグリッド上に集め、酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛で染色した。試料をJEOL JEM 1011透過型電子顕微鏡において80kVで検査した。画像は、AMT(Advanced Microscopy Techniques, MA)デジタル画像システムを用いて収集した。図1に示されている通り、MVBの透過型電子顕微鏡(TEM)画像が、ラット腎組織細胞で認められる。多胞体(MVB)は、有足細胞、近位尿細管、細い下行脚、太い上行脚、集合管主細胞および集合管介在細胞を含む、ネフロンおよび集合管のさまざまな領域で同定することができる。このことは、エキソソームが確かに、ネフロンのさまざまな領域、さらには集合管の介在細胞および主細胞の両方から放出されうることを実証している。
【0052】
実施例2:微小胞は尿中に存在する
微小胞それ自体を検査するために、本発明者らはヒト尿中微小胞をTEMによって検査した。ヒト尿は、Massachusetts General Hospitalの承認済みのIRBガイドラインに従って得た。その後尿を、尿の4℃、300gでの10分間の遠心分離、上清の4℃、17,000gでの20分間の遠心分離、および0.8μmフィルター(硝酸セルロース膜フィルターユニット、Nalgene, NY)に通す上清の濾過という三段階からなる方法によって前処理した。または尿を、事前の遠心分離段階を行わずに0.8μmフィルターに直接通す一段階濾過によって前処理した。いずれの場合にも、濾液をその後4℃、118,000gでの70分間の超遠心分離にかけ、上清を除去して、微小胞を含有するペレットをPBSで洗浄し、4℃、118,000gで70分間かけて再びペレット化した。
【0053】
超遠心分離法の代わりに、濾過濃縮を用いて、前処理した試料から微小胞も単離した。濾液濃縮器(100kDa MWCO)(Millipore, MA)を製造元の指示に従って調製した。前処理した濾液を濾過濃縮器に添加して、室温、4,000gで4分間遠心分離した。15ml PBSでの洗浄段階も含めた。
【0054】
微小胞ペレットを、4%パラホルムアルデヒドを含むdH2Oにより1:1で固定した。10μlの小滴を、ホルムバールでコーティングした200メッシュ金グリッドの上にピペットで注ぎ、1分後に取り除いた。試料をdH2Oの小滴で2回すすぎ洗いした。2.0%リンタングステン酸(PTA)水溶液を10秒間適用し(10μl)、取り除いて、dH2Oで1回すすぎ洗いした。試料をJEOL JEM 1011透過型電子顕微鏡において80kVで検査した。画像は、AMT(Advanced Microscopy Techniques, MA)デジタル画像システムを用いて収集した。図2に示されている通り、このペレットは確かに微小胞に富んでいた。TEM画像において、微小胞は一緒に凝集しているかまたは単独のままである場合もあった。
【0055】
生物試料からの核酸抽出のための改良された方法
実施例3:微小胞単離のために超遠心分離を濾過濃縮器に置き換えることができる。
本発明者らはここで、濾過濃縮器により、超遠心分離法と同様に、RNA抽出のために実効性のある微小胞がもたらされることを示す。本発明者らは、実施例2に記載した通り、75mlの尿を4℃、300gで10分間および4℃、17,000gで20分間の遠心分離によって前処理し、その後0.8μmフィルターに通して濾過した。本発明者らは次に、100kDa MWCOの濾過濃縮器(Millipore, MA)により、および超遠心分離により微小胞を単離したが、その際、微小胞外の核酸混入物を除去するために、いずれもそれぞれRNアーゼ消化を伴うこと、ならびにDNアーゼ消化を伴うおよび伴わないこととした。図3および4に示されている通り、超遠心分離法および濾過濃縮法により、75mlの尿試料から同程度のRNA濃度がもたさられ、超遠心分離(図4)では410±28pg/μlであり、濾過濃縮器(図3)では381±47pg/μlであった(平均±SD)。2つの収量の間に統計的な有意差はない。これらのデータは、濾過濃縮器の使用が、RNA分析のために尿中微小胞を単離するための信頼性の高い方法であることを実証している。
【0056】
実施例4:0.8μm前濾過段階のみによる試料の前処理は微小胞単離の目的には十分である
さらに、本発明者らは、0.8μm前濾過段階のみによる尿前処理が低速遠心分離段階を含む方法と同程度に有効であったことから、300gおよび17,000gでの低速遠心分離段階を省きうることを見いだした。図5および6に示されている通り、低速遠心分離を0.8μm前濾過と併用する方法を用いた核酸プロファイル(A)は、0.8μm前濾過のみの方法を用いたプロファイル(B)と同じである。
【0057】
実施例5:有害因子の除去または緩和を含む方法による尿中微小胞からの核酸抽出
本発明者らは、微小胞からの核酸抽出のための改良された方法を用いた。この方法では、本発明者らは、微小胞膜を破壊する前に、質の良い核酸抽出物に対する有害因子を除去した。図7に示されている通り、尿試料100を、0.8μmフィルター膜110に通して濾過することによって前処理した。その後、詳細は実施例2に記載したものと同様にして、濾液中の微小胞を超遠心分離または濾過濃縮のいずれかによって単離した120。単離された微小胞を、その後、微小胞の内部に含まれない核酸を除去するためのRNアーゼおよび/またはDNアーゼ消化に供した130。具体的には、微小胞を1μl/mlのRNアーゼA(DNアーゼおよびプロテアーゼ非含有)(Fermentas, MD)を含むPBS中に再懸濁させ、37℃で1時間インキュベートした。試料を、PBS中で118,000g、70分間かけて再びペレット化した。DNアーゼI消化については、ペレットを、500μlのPBS、およびRDD緩衝液(製造元の指示に従って)で希釈したDNアーゼI(RNアーゼ非含有)(Qiagen, CA)中に再懸濁させて、室温で10分間インキュベートした。試料をPBS中118,000gで70分かけて再びペレット化した。濾過濃縮器により単離した微小胞のRNアーゼAおよびDNアーゼIの消化については、同じ濃度のRNアーゼおよびDNアーゼを用いて、濾過濃縮器内でインキュベーションを行った。その後、例えば、15mlのPBSのみを用いるか、またはプロテアーゼ処理と併用する、3回の再懸濁/洗浄といった、抽出増強の段階140を実施した。微小胞を単離し、ヌクレアーゼで消化して、プロテアーゼで処理した後に、核酸を抽出した150。RNA抽出は、RNeasy Micro kit(Qiagen, CA)を製造元の指示に従って用いて実施した。手短に述べると、350μlのRLT緩衝液(RLT 1ml当たり10μlのβ-メルカプトエタノール)を用いてエキソソームを溶解させ、16μlのヌクレアーゼ非含有水を溶出のために用いた。RNeasy Plus Micro kit(Qiagen, CA)はゲノムDNA(gDNA)を除去するために設計されており、これを製造元の指示に従って行い、16μlのヌクレアーゼ非含有水中に溶出させた。RNeasy Micro kitまたはRNeasy Plus Micro kitを用いる低分子RNAの単離については、製造元の指示に従ってmiRNA単離方法が続けられた。単離されたRNAを、Agilent BioAnalyzer(Agilent. CA)を用いてRNA Pico 6000チップ(Agilent, CA)にて分析し160、それにより、試料の電気泳動プロファイルおよび対応する「擬似ゲル」を作製した。
【0058】
図8および9に示されている通り、尿中微小胞からのRNA抽出の質(収量および完全性の点で)は、微小胞の膜を破壊する前に、微小胞を処理するためにより多くのプロテアーゼを用いるほど高くなる。図8では、20mlの尿中の微小胞由来の核酸を、RNA抽出にQiagen Qiamp minelute virus spin kitを用いた点を除き、上記の改良された方法を用いて抽出した。尿試料を濾過濃縮によって濃縮し、200μl PBS中に溶出させた。本明細書において、本発明者らは、1×プロテアーゼを0.027AUと;5×プロテアーゼを0.135AUと;10×プロテアーゼを0.27AUと;25×プロテアーゼを0.675AUと;および50×を1.35AUと定義する。プロテアーゼの濃度を5×(A)から10×(B)に上昇させると、より完全性の高い18S rRNAおよび28S rRNAのピークが観察された。同様に、図9に示されている通り、より高濃度のプロテアーゼである25×(A)および50×(B)では、本発明者らは、低分子/miRNAレベルの上昇に加えて、18S rRNAおよび28S rRNAのより高度の完全性を観察した。これらのデータは、プロテアーゼの添加により、18S rRNAおよび28S rRNA、ならびに低分子RNAおよびマイクロRNAの収量および完全性を高めることができることを示唆している。本発明者らは、このプロテアーゼの効果がRNアーゼおよび他の阻害因子を消化して除去するその能力に起因しうると推測している。
【0059】
微小胞を複数回洗浄する段階を加えることも、尿中微小胞から抽出される核酸の質を劇的に改善する。洗浄段階は、尿中微小胞からの質の良い核酸の抽出を妨げる有害因子を有効に除去することができる。各20mlずつの尿試料を、上記の方法に若干の変更を加えたものに従って、4群で構成される核酸抽出試験に用いる。群1については、単離された微小胞を、いずれの中間段階も伴わずに核酸抽出のために直接用いた。群2については、核酸抽出の前に微小胞をRNアーゼ阻害剤で処理した。群3については、核酸抽出の前にいずれのRNアーゼ阻害剤処理も行わずに微小胞を洗浄した。群4については、微小胞を洗浄して、RNアーゼ阻害剤で処理した。図38に示されている通り、群1の試験に関して、抽出された核酸の質は非常に不良であり、RINは3.63±2.3であり、RNA濃度は101.3±27.6pg/μlであった。群2の試験に関して(図39)、抽出された核酸の質は群1の試験におけるものとおおむね同程度であり、RINは1.83±2.2であり、RNA濃度は101.6±88pg/μlであった。群3の試験に関して(図40)、抽出された核酸の質は劇的に改良され、RINは9.2±0.0であり、RNA濃度は347.7±97.7pg/μlであった。群4の試験に関して(図41)、抽出された核酸の質は群3におけるものと同程度であり、RINは7.43±0.2であり、RNA濃度は346.3±32.7pg/μlであった。これらのデータにより、洗浄段階を伴わない場合、微小胞からの抽出物の質は一貫性がなく、核酸抽出の前に微小胞を洗浄した抽出物よりもばらつきが相対的に大きかった。
【0060】
実施例6:血清中微小胞からの核酸抽出のためのRNアーゼ阻害剤の使用
上記の改良された方法を用いることで、血清中微小胞から質の良い核酸抽出物を得ることもできる。ここで、本発明者らは黒色腫患者および正常患者の両方の血清から血清を得、かつRNアーゼ阻害剤カクテルSUPERase-In(商標)(Ambion, Inc.)を用いて、微小胞ペレットを再懸濁によって処理した。試験の1つのバッチでは、本発明者らは、2通りの1ml黒色腫血清試料4つから微小胞を単離し、最終濃度1.6単位/μlのSUPERase-Inで微小胞ペレットを処理した。微小胞の単離方法は超遠心分離であり、微小胞ペレットをDNアーゼにより室温で20分間処理した。図10〜13に示されている通り、4つの黒色腫血清試料からのRNA抽出の質は低い上に一貫性がなく、RNA収量はそれぞれ543pg/μl、607pg/μl、1084pg/μl、1090pg/μlであり、28s/18s比によって評価したRNA完全性は1.7、1.8、1.3および0.6であった。別の試験バッチで、本発明者らは、2通りの1ml黒色腫血清試料2つから微小胞を単離し、最終濃度3.2単位/μlのSUPERase-Inで微小胞ペレットを処理した。図14および15に示されている通り、3.2単位/μlのSUPERase-Inで処理した2つの黒色腫血清試料からのRNA抽出物の質は、1.6単位/μlのSUPERase-Inで処理したものからのRNA抽出物の質よりも一般に良好であった。2つの黒色腫血清試料についてのRNA収量はそれぞれ3433pg/μlおよび781pg/μlであり、28S/18S比は1.4および1.5であった。
【0061】
さらに、本発明者らは、2通りの1ml正常血清試料4つの1.6単位/μlのSUPERase-Inでの処理、および2通りの1ml正常血清試料2つの3.2/μlのSUPERase-Inでの処理についても試験した。図16〜19に示されている通り、1.6単位/μlのSUPERase-InでのRNA抽出物の質は低く、RNA収量はそれぞれ995pg/μl、1257pg/μl、1027pg/μlおよび1206pg/μlであり、28S/18S比は1.3、1.6、1.6、1.8であった。対照的に、図20および21に示されている通り、3.2単位/μlのSUPERase-InでのRNA抽出物の質は高くなり、RNA収量はそれぞれ579pg/μlおよび952pg/μlであり、28S/18S比は1.6および2.3であった。
【0062】
実施例7:生物試料からの核酸抽出のための抽出増強物質の使用
実施例3および4において、本発明者らの試験結果は、抽出エンハンサーによる処理によって、微小胞からのRNA抽出物の質を高めうることを示唆している。そのような抽出エンハンサーは、他の生物試料に対しても同様の効果を有すると期待される。図22に示されている通り、本発明における核酸抽出の新規の方法は、生物試料に対して抽出増強操作を実施する段階を必要とすると考えられる。そのような方法は、以下の構想上の核酸抽出実験によって例示しうる。医師がある患者に対して腫瘍バイオマーカーの試験を指示する。その後、5mlの血液をその患者から採取する。血液試料200を前処理して血清を得ることもある。その後増強操作210を行い、例えば、適量の抽出エンハンサーを血清に添加し、混合物を37℃で30分間インキュベートする。処理した血清から、その後、実施例5に詳述したものなどの定型的な抽出方法を用いて核酸を抽出し220、Agilent BioAnalyzerを用いて分析する230。そのような抽出は、生物試料から質の良い核酸を生成させると期待される。
【0063】
バイオマーカーとしての尿中微小胞由来の核酸
実施例8:尿微小胞には遊離した微小胞外の非細胞性DNAが混入している
本発明者らは、1つの尿試料を2つの25mlずつの試料に分け、かつ2つの部分試料(sub-sample)から、上記に詳述した通りの分画遠心法によって微小胞を単離した。1つの部分試料では、本発明者らは、微小胞をDNアーゼで処理し、処理された微小胞から、上記に詳述した通りに核酸を抽出した。別の部分試料では、本発明者らは、微小胞をDNアーゼで処理せず、未処理の微小胞から核酸を抽出した。図23に示されている通り、遊離した微小胞外の非細胞性DNAが、単離された尿中微小胞に混入していた。RNeasy micro kitを核酸抽出のために用いた場合には(図23AおよびB)、その結果により、未処理の試料(A)中には処理された試料(B)よりも多くの核酸が認められることが、(A)におけるピークが(B)におけるピークよりも一般に高かったことから示された。
【0064】
別の試験において、本発明者らは、血清試料を尿試料の代わりに用いた点を除き、同様の試験を実施した。図24に示されている通り、遊離した微小胞外の非細胞性DNAは、単離された血清中微小胞にも混入していた。DNアーゼで処理していない試料(A)では、DNアーゼ処理した試料(B)よりも多くの核酸が認められることが、(A)におけるピークが(B)におけるピークよりも一般に高かったことから示された。同様に、MirVana kitを核酸抽出のために用いた場合にも、図23(C)および(D)に示されている通り、その結果、未処理の試料(C)では処理した試料(D)よりも多くの核酸が認められることが、(C)におけるピークが(D)におけるピークよりも一般に高かったことから示された。未処理の試料由来の余剰の核酸は、図24Cにおける擬似ゲル中に示されている通り、DNアーゼ感受性の高い「アポトーシス小体」様のラダーが認められたことから、DNアーゼ感受性の高い「アポトーシス小体」による可能性が高い。尿試料および血清試料のいずれにおいても、遊離した微小胞外の非細胞性DNAの量は対象毎に違いがあったが、このDNAのサイズはおよそ25〜1500塩基対の範囲内にあった。
【0065】
実施例9:尿中微小胞には遊離した微小胞外の非細胞性RNAがほとんど混入していない
本発明者らは、1つの尿試料を2つの25mlずつの試料に分け、かつ2つの部分試料から、上記に詳述した分画遠心法によって微小胞を単離した。1つの部分試料では、本発明者らは、微小胞をRNアーゼで処理し、処理された微小胞から、上記に詳述した通りに核酸を抽出した。別の部分試料では、本発明者らは、微小胞をRNアーゼで処理せず、未処理の微小胞から核酸を抽出した。図25に示されている通り、単離された微小胞には、遊離した微小胞外の非細胞性RNAがほぼ全く混入していなかった。RNアーゼで処理していない試料(A)の曲線はRNアーゼで処理した試料(B)の曲線とほとんど重なり、このことは、単離された微小胞に遊離した微小胞外の非細胞性RNAに付随しないことを示唆している。これは、尿中にリボヌクレアーゼが存在することに起因する可能性がある。
【0066】
実施例10:Agilent BioAnalyzerによって測定された尿中微小胞および腎細胞における核酸プロファイルは類似している
本発明者らは、尿中微小胞および腎(腎臓)組織の両方から核酸を抽出し、それらのプロファイルを比較した。尿中微小胞からの抽出の方法は実施例5に詳述した通りであった。ラット腎臓試料をRNeasy Mini kitおよびRNeasy Plus kitにより加工処理した。ラット腎臓試料における低分子RNAの量を測定するために、それらも両方のキットにより、製造元の指示に従ったmiRNA単離方法を用いて加工処理した。
【0067】
図26に示されている通り、それらのプロファイル(A‐腎臓、B‐微小胞)は、18S rRNAおよび28S rRNAのピークの存在および完全性を含み、非常に類似していた。そのような18S rRNAおよび28S rRNAのピークは、以前に報告された血清由来または細胞培養液由来の微小胞においては認められていない。
【0068】
rRNAピークの類似性に加えて、尿中微小胞はまた、腎細胞から得られたものに類似する低分子RNAプロファイルも含んでいた。図27に示されている通り、尿中微小胞(B)および腎組織(A)は両方とも、低分子RNA(約25〜200塩基対)を含んでおり、類似したパターンを有していた。
【0069】
これらのデータは、本発明において開示された新規の核酸抽出方法を用いることで、尿中微小胞におけるプロファイルを用いて、微小胞の由来となった腎細胞におけるプロファイルを検査しうることを示唆している。
【0070】
実施例11:尿微小胞におけるRNAプロファイルは全尿由来のものとは異なる
本発明者らは、尿中微小胞におけるRNAプロファイルが全尿由来のものとは異なることを発見した。本発明者らは2通りの75mlの尿試料を試験のために用いた。実施例5に詳述した段階に従って、まず尿の4℃での300g、10分間の前処理、上清の4℃での17,000g、20分間の遠心分離、および0.8μmフィルター(酢酸セルロース膜フィルターユニット、Nalgene, NY)に通す上清の濾過によって、RNAを尿中微小胞から単離した。全尿由来のRNAは、ZR尿RNA単離キット(Zymo Research, CA)を製造元の指示に従って用いて単離した。Zymoで加工処理した試料からDNAを除去するために、溶出したRNAを350μlのRLT緩衝液中に再懸濁させ、DNアーゼを用いて付随するDNAを排除するRNeasy Plus Micro kitにより加工処理し、かつ16μlのヌクレアーゼ非含有水中に溶出させた。
【0071】
図28に示されている通り、DNアーゼを用いなかった場合(A)には、ZR尿RNA単離キットを用いて大量の核酸を単離することができた。しかし、そのプロファイルは、幅広いプロファイルを見せ、18S rRNAおよび28S rRNAのピークを欠いていた。さらに、DNアーゼを用いた場合にはプロファイルが著しく変化し(B)、このことは抽出物の大部分が事実上はDNAであることを示唆している。対照的に、図29に示されている通り、同一の尿試料由来の微小胞由来のRNAプロファイルは、全尿抽出物由来のプロファイルとは一般に非常に異なる。微小胞プロファイルには、18Sおよび28Sのピークが存在した。加えて、微小胞由来のRNAは全尿由来のものよりも豊富であった。本発明者らが、DNアーゼ処理を伴わないプロファイル(A)を、DNアーゼ処理を伴うプロファイル(B)と比較したところ、微小胞からの抽出物のDNアーゼ消化は、rRNAピークに著しい影響を及ぼさなかった。300gペレット(図30)および17,000gペレット(図31)由来のRNAプロファイルは、全尿抽出物由来のものと類似していた。本発明者らが、DNアーゼ処理を伴わないプロファイル(A)を、DNアーゼ処理を伴うプロファイル(B)と比較したところ、これらのプロファイルのいずれにおいても、DNアーゼ処理後にピークは大幅に低下した。これらのデータにより、DNAが抽出物中の主たる種であることが示唆され、18S rRNAおよび28S rRNAのピークは検出不能であった。したがって、実施例10におけるデータと総合すると、尿中微小胞由来のRNAプロファイルは、全尿由来のプロファイルよりも腎細胞プロファイルに類似している。さらに、微小胞からのRNA抽出の完全性は、全尿からのものよりも少なくとも10倍優れていた。
【0072】
実施例12:尿中微小胞はRNAおよびDNAの両方を含む
本発明者らは、尿中微小胞がRNA、DNAまたはその両方を含むか否かについて、遊離した微小胞外の非細胞性混入物を除去するためにペレットをまずRNアーゼおよびDNアーゼの両方によって処理し、その後にカラムによる核酸単離の際に微小胞内核酸のRNアーゼおよび/またはDNアーゼ消化を行うことによって判定した。RNアーゼ消化(B)は、RNアーゼ消化を伴わないもの(A)と比較して、核酸プロファイルをほぼ完全に消失させた(図32)。これらのデータは、RNAが微小胞内に最も豊富に存在する核酸であることを示唆している。図33に示されている通り、RNアーゼで処理した試料のDNアーゼによるオンカラム消化後(B)には、20秒直後のピークが、さらなるDNアーゼ消化の前のピーク(A)と比較して、内部のさらなるDNアーゼ消化後に低下している。この低下により、少量のDNアーゼで消化可能な材料、おそらくDNAが微小胞内部に存在したことが実証された。
【0073】
実施例13:尿中微小胞はネフロンおよび集合管のさまざまな領域由来の特定の遺伝子をコードしているmRNA転写物を含む
実施例10で示された通り、核酸プロファイルは、Agilent BioAnalyzerによる測定では尿中微小胞および腎細胞において類似している。ここで本発明者らはさらに、微小胞が、ネフロンおよび集合管のさまざまな領域からの特定の遺伝子をコードするmRNA転写物を含むことを示す。4人のヒト対象(年齢が23〜32歳)からの200mlの尿から尿中微小胞を単離して、実施例5に詳述した通りに、エキソソーム溶解およびRNA抽出の前に、RNアーゼおよびDNアーゼで消化した。抽出されたRNAを、RiboAmp(Molecular Devices, CA)を用いる2回のmRNA増幅に供した。インビトロ転写段階の1回目のリボ増幅(riboamplification)のためには、試料を42℃で4時間インキュベートし、第2のインビトロ転写段階については、試料を42℃で6時間インキュベートした。増幅されたRNAを、65℃で5分間変性させ、Qiagen Omniscriptプロトコール(Qiagen, CA)に記載された通りに第一鎖cDNA合成に供した。すべての試料でGAPDH遺伝子およびβ-アクチン遺伝子の両方が同定された(図34A)。本発明者らは、ネフロンおよび集合管のさまざまな領域に特徴的な15種の転写物を調べた(図34B)。これらには、糸球体由来のポドシン、近位尿細管由来のキュビリンおよび集合管由来のアクアポリン2を含む、さまざまな腎疾患における関与が示されているタンパク質および受容体が含まれる。
【0074】
ヒト試料の場合に、用いたPCRプライマーは、ACTB UTR、

であった。「UTR」とはUTR内に設計されたプライマーのことを指し、「EX」とは複数のエクソンにわたるように設計されたプライマーのことを指す。PCRプロトコールは、94℃ 5分間;94℃ 40秒間;55℃ 30秒間;65℃ 1分間を30サイクル;および68℃ 4分間であった。マウス試料の場合に、用いたプライマーは、

であった。PCRプロトコールは、94℃ 5分間;94℃ 40秒間;55℃ 30秒間;65℃ 1分間を30サイクル;および68℃ 4分間であった。
【0075】
図34のパネルAに示されている通り、β-アクチンおよびGAPDHのRiboAmpで増幅したmRNA転写物は、4人のヒト対象由来の尿中微小胞におけるBioAnalyzerで作製した擬似ゲルにおいて容易に検出可能であった。説明のために、ネフロンおよび集合管の6つの領域を図34のパネルBに示している。尿エキソソームからRiboAmpで増幅したmRNAのRT-PCR分析の結果として、6つの領域において以下の転写物も容易に検出可能である:領域1 糸球体:NPHS2‐ポドシン、LGALS1‐ガレクチン-1、およびHSPG2‐ヘパラン硫酸プロテオグリカン(図35);領域2 近位尿細管:CUBN‐キュビリン、LRP2‐メガリン、AQP1‐アクアポリン1、CA4‐カルボニックアンヒドラーゼ4、およびCLCN5‐塩素チャンネルタンパク質5(図35);領域3 細い下行脚:BDKRB1‐ブラジキニンB1受容体(図36);領域4 髄質の太い上行脚:CALCR‐カルシトニン受容体、およびSCNN1D‐アミロライド感受性ナトリウムチャンネルサブユニットδ(図36);領域5 遠位曲尿細管:SLC12A3‐サイアザイド感受性ナトリウムクロライド共輸送体(図36);領域6 集合管:AQP2‐アクアポリン2、ATP6V1B1‐vATPアーゼB1サブユニット、およびSLC12A1‐腎臓特異的Na-K-Clシンポーター(図36)。
【0076】
従って、検査したすべての腎領域からのmRNA転写物を同定することができたが、このことはmRNAを含む微小胞がネフロンおよび集合管のすべての領域から放出されたこと、ならびに微小胞が腎疾患に関する核酸バイオマーカーの新規で非侵襲的な供給源となりうることを示唆している。
【0077】
実施例14:尿中微小胞の内部のいくつかのmRNA転写物は腎細胞に対して特異的である
微小胞内の核酸を、疾患において腎遺伝子を非侵襲的に検査するために用いる場合には、微小胞内の転写物は腎細胞に対して特異的であるべきである。ここでは本発明者らは、mRNA転写物が腎細胞に対して特異的であることを示す。本発明者らは、V-ATPアーゼB1サブユニットが存在しないノックアウトマウスを用いた。V-ATPアーゼB1サブユニットの欠如はマウスにおける腎性アシドーシスを招く(Finberg KF, Wagner CA, Bailey MA, et al., The B1-subunit of the H(+) ATPase is required for maximal urinary acidification. Proc Natl Acad Sci USA 102:13616-13621, 2005)。
【0078】
動物実験はすべて、Massachusetts General Hospitalの承認済みの動物倫理ガイドラインに従って行った。V-ATPアーゼB1サブユニットのノックアウト動物が記載されている(Finberg KF, Wagner CA, Bailey MA, et al., The B1-subunit of the H(+) ATPase is required for maximal urinary acidification. Proc Natl Acad Sci USA 102:13616-13621, 2005)。尿収集のためには、マウスを2匹ずつの群として72時間の期間(ケージ1つ当たりに動物1匹を入れても十分なRNAを得ることができる)、代謝ケージに入れ(n=1群当たりマウス4匹)、かつヒト尿については上記の通り尿を微小胞単離および分析のために収集した。腎臓抽出のためには、動物にペントバルビタールナトリウム(ネンブタール)(Abbott Laboratories, IL)(65mg/kg体重、腹腔内)で麻酔を施し、腎臓を直ちに摘出して、液体窒素中で凍結させた。液体窒素槽中において乳棒および乳鉢を用いて凍結腎臓をすり砕き、RNAlater(Qiagen, CA)中に再懸濁させて、1mlずつのアリコートとして-80℃で保存した。RNA抽出のためには、1つのアリコートを氷上で解凍し、50μlを350μlのRLT緩衝液(RLT 1ml当たり10μlのβ-メルカプトエタノールを含む)中に溶解させた。マウス腎臓試料を、DNA消化段階を含めてRNeasy Mini kit(Qiagen, CA)により加工処理した。
【0079】
リアルタイムPCR分析のためには、マウス尿中微小胞から抽出されたRNAを65℃で5分間変性させ、Qiagen Sensiscriptプロトコール(Qiagen, MD)に記載された通りに第一鎖cDNA合成に供した。Sensiscript逆転写のためには、オリゴ-dTプライマーを最終濃度1μMで用いた(Applied Biosystems, CA)。その結果生じたcDNAを、TaqMan PreAmp Master Mix Kitに、14サイクルの前増幅を用い、製造元のガイドに従って用いた(Applied Biosystems, CA)。前増幅産物を、その後、1×TE緩衝液(Promega, WI)で1:20に希釈した。その結果生じたcDNAを、その後、Taqman Preamplificationガイド(Applied Biosystems, CA)に従って、リアルタイムPCRのためのテンプレートとして用いた。マウス腎臓RNA濃度はSmartSpec 3000(Bio-Rad, CA)で測定し、すべての試料を90ng/μlに希釈した。マウス腎臓RNAを65℃で5分間変性させ、Qiagen Omniscriptプロトコール(Qiagen, MD)に記載された通りに第一鎖cDNA合成に供した。Omniscript逆転写においては、オリゴ-dTプライマーを最終濃度1μMで用い(Applied Biosystems, CA)、その結果生じたcDNAを、次に1ウェル当たり1μlずつ、その後のリアルタイムPCR反応に用いた。リアルタイムPCR反応は、ABI 7300 Real Time PCR System(Applied Biosystems, CA)上で、TaqMan Gene Expression Master MixおよびExpression Assays(マウスGAPD Part Number 4352339EおよびマウスAtp6vlb2 assay id Mm0043 1996_mH)を用いて行った。
【0080】
本発明者らは、ノックアウトマウスの腎臓組織ならびに尿中微小胞からRNAを抽出した。本発明者らは、V-ATPアーゼB1サブユニットおよびアクアポリン2(AQP2)のmRNAの発現を、RT-PCRを用いて検査した。図37のパネルAに示されている通り、V-ATPアーゼB1サブユニット転写物は、二重突然変異体マウス(B1-/-)由来の腎臓試料および尿中微小胞試料のいずれにおいても検出されず、このことはV-ATPアーゼB1サブユニット遺伝子がこれらのマウスでノックアウトされているという事実に一致する。対照的に、V-ATPアーゼB1サブユニット転写物は、野生型マウス(B1/+/+)由来の腎臓試料および微小胞試料に存在した。AQP2 mRNAは、B1ノックアウトマウスまたは野生型マウスのいずれのマウスでも腎臓試料および微小胞試料の両方で容易に検出されたが、このことはV-ATPアーゼB1サブユニットの欠失がAQP2の発現に影響を及ぼさないため予想通りである。さらに、図37のパネルBに示されている通り、B1ノックアウト由来の微小胞におけるV-ATPアーゼB2サブユニットの発現レベルは、野生型マウス由来の微小胞におけるレベルと統計的な差はなかった。ノックアウトマウス由来の腎細胞におけるV-ATPアーゼB2サブユニットの発現レベルと、野生型マウス由来の腎細胞におけるレベルの比較においてもそうであった。このことからみて、腎細胞内に存在する転写物は腎細胞によって分泌された尿中微小胞において検出することができ、腎細胞内に存在しない転写物は腎臓細胞によって分泌された尿中微小胞内に検出することができない。したがって、尿中微小胞における転写物は腎細胞に対して特異的であり、腎細胞転写物に関する非侵襲的なバイオマーカーである。
【0081】
実施例15:尿中微小胞は非コード性RNA転写物を含む
実施例5において詳述した上記の方法に従って、尿中微小胞を単離し、核酸を抽出した。本発明者らは尿中微小胞RNAのディープシークエンシングを実施し、いくつかの特定の染色体上に、極度の転写を呈するランダムな領域があることを見いだした。転写物の数を染色体上の位置に対してプロットしたところ、これらの転写物は「スパイク」として出現した。これらの転写物は、GAPDHまたはアクチンなどの周知の内因性マーカーよりも豊富に発現され、一般的には染色体の非コード領域にあった。これらのスパイク配列の発現レベルが相対的に高いことは、これらの配列が染色体活性化および細胞調節においても重要な役割を果たしている可能性を示唆する。
【0082】
本発明者らは、500個超のスパイクがみられた29個の領域を同定した。この29個の領域は、図42に示されており、SEQ ID NO. 1〜29に対応する。これらの29個の領域における、プロットされたスパイクは図45〜73に示されている。最も高度に発現されたスパイク転写物の配列のPCR分析により、それらがヒト尿中微小胞およびヒト腎細胞の両方に確かに存在することが実証され、このことは、これらの配列がディープシークエンシングの人工産物ではないことを示唆する。スパイクに富むそのような10個の領域を増幅するために用いたプライマーは、図43に示されている。PCRは以下のプログラムに従って実施した:95℃での8分間の初期変性;95℃で40秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリングおよび65℃で1分間の伸長という3段階を30サイクル;68℃で5分間の最終伸長;ならびに反応のBioAnalyzer分析まで4℃で保持。図44に示されている通り、これらの10個の領域のそれぞれの増幅は、ヒト尿中微小胞(A)およびヒト腎細胞(B)のいずれにおけるテンプレートを用いた場合も陽性の結果をもたらし、このことはこれらのスパイク転写物が確かに微小胞およびヒト腎細胞の内部に存在することを示唆する。
【0083】
これらの豊富に存在するスパイク転写物を用いることで、生物試料からの核酸抽出物の質を評価することができる。例えば、GAPDHまたはアクチンのポリヌクレオチド分子といった一般的なマーカーの代わりに、いずれかのスパイク転写物の量を、尿中微小胞由来の核酸の質を評価するために用いることができる。尿中微小胞におけるGAPDHまたはアクチンのRNAの量は非常に少ないため、それらの量を測定するためには、余分な増幅段階、例えばRiboAMPが必要であった。対照的に、いずれの1つのスパイク転写物の量も非常に多いため、余分な増幅段階は必要でなかった。したがって、これらのスパイク転写物の使用により、核酸抽出物の質の評価をより効率的かつより簡単に行うことができる。このため、本明細書に記載された本発明の別の局面は、生物試料、例えばヒト尿試料からの核酸抽出物の質を評価する新規の方法である。本方法は、生物試料から核酸を抽出することによって達成し、いずれかのスパイク転写物の量を測定し、その量を、その特定の生物試料に関して確立された標準と比較することによって遂行することができる。そのような標準の確立は、例えば、経験豊かなバイオテクノロジー専門家によって行われた、10個の正常ヒト尿試料から抽出されたそのようなスパイク転写物の平均量であってもよい。
【0084】
本発明をいくつかの特定の態様を参照しながら開示してきたが、記載された態様に対する数多くの修正、変更および変化が、添付の特許請求の範囲において規定される本発明の領域および範囲から逸脱することなく可能である。したがって、本発明は、記載された態様に限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲、特許請求の範囲の言葉およびその同等物により規定された全範囲を有するものとする。
【0085】
参照文献




【特許請求の範囲】
【請求項1】
真核生物の生物試料から単離された1つまたは複数の微小胞からの核酸抽出物であって、該抽出物中において18S rRNAおよび28S rRNAが検出可能である、核酸抽出物。
【請求項2】
前記生物試料が体液である、請求項1記載の核酸抽出物。
【請求項3】
前記体液が尿である、請求項2記載の核酸抽出物。
【請求項4】
前記体液が血清または血漿である、請求項2記載の核酸抽出物。
【請求項5】
前記生物試料が哺乳動物由来である、請求項1〜4のいずれか一項記載の核酸抽出物。
【請求項6】
前記生物試料がヒト由来である、請求項5記載の核酸抽出物。
【請求項7】
前記抽出物中において検出可能である18S rRNAと28S rRNAの量比が、およそ1:1からおよそ1:2までの範囲内にあり、かつ好ましくはおよそ1:2である、請求項1〜6のいずれか一項記載の核酸抽出物。
【請求項8】
前記生物試料が、10mg/ml未満のタンパク質濃度を有する体液、例えば尿であり、かつ前記抽出物が、RNAインテグリティナンバー(RNA Integrity Number)5超または5を有する、請求項7記載の核酸抽出物。
【請求項9】
前記生物試料が、10mg/ml超のタンパク質濃度を有する体液、例えば血清または血漿であり、かつ前記抽出物が、RNAインテグリティナンバー3超または3を有する、請求項7記載の核酸抽出物。
【請求項10】
20mlの生物試料からの核酸収量が50pg/ml超または50pg/mlである、請求項8記載の核酸抽出物。
【請求項11】
1mlの生物試料からの核酸収量が50pg/ml超または50pg/mlである、請求項9記載の核酸抽出物。
【請求項12】
真核生物の生物試料から単離された1つまたは複数の微小胞由来の核酸のプロファイルであって、該プロファイルにおいて18S rRNAおよび28S rRNAが検出可能である、核酸のプロファイル。
【請求項13】
前記生物試料が体液である、請求項12記載のプロファイル。
【請求項14】
前記体液が尿である、請求項13記載のプロファイル。
【請求項15】
前記体液が血清または血漿である、請求項13記載のプロファイル。
【請求項16】
前記生物試料が哺乳動物由来である、請求項12〜15のいずれか一項記載のプロファイル。
【請求項17】
前記生物試料がヒト由来である、請求項16記載のプロファイル。
【請求項18】
18S rRNAと28S rRNAの量比が、およそ1:1からおよそ1:2までの範囲内にあり、かつ好ましくはおよそ1:2である、請求項12〜18のいずれか一項記載のプロファイル。
【請求項19】
前記生物試料が、10mg/ml未満のタンパク質濃度を有する体液、例えば尿であり、かつ前記核酸が、RNAインテグリティナンバー5超または5を有する、請求項18記載のプロファイル。
【請求項20】
前記生物試料が、10mg/ml超のタンパク質濃度を有する体液、例えば血清または血漿であり、かつ核酸抽出物が、RNAインテグリティナンバー3超または3を有する、請求項18記載のプロファイル。
【請求項21】
20mlの生物試料からの核酸収量が50pg/ml超または50pg/mlである、請求項19記載のプロファイル。
【請求項22】
1mlの生物試料からの核酸収量が50pg/ml超または50pg/mlである、請求項20記載のプロファイル。
【請求項23】
真核生物の生物試料から単離された微小胞からの核酸抽出物の質を評価する方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)微小胞からRNAを抽出する段階;および
(b)該抽出物中の18S rRNAおよび28S rRNAの量を決定することによって該RNAの質を測定する段階。
【請求項24】
前記生物試料が体液である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記体液が尿である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記体液が血清または血漿である、請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記生物試料が哺乳動物由来である、請求項23〜26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
前記生物試料がヒト由来である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
18S rRNAと28S rRNAの量比が、およそ1:1からおよそ1:2までの範囲内にあり、かつ好ましくはおよそ1:2である、請求項23〜28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
前記生物試料が、10mg/ml未満のタンパク質濃度を有する体液、例えば尿であり、かつ前記核酸が、RNAインテグリティナンバー5超または5を有する、請求項29記載のプロファイル。
【請求項31】
前記生物試料が、10mg/ml超のタンパク質濃度を有する体液、例えば血清または血漿であり、かつ前記核酸抽出物が、RNAインテグリティナンバー3超または3を有する、請求項29記載のプロファイル。
【請求項32】
20mlの生物試料からの核酸収量が50pg/ml超または50pg/mlである、請求項30記載のプロファイル。
【請求項33】
1mlの生物試料からの核酸収量が50pg/ml超または50pg/mlである、請求項31記載のプロファイル。
【請求項34】
生物試料から核酸を得る方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)生物試料を得る段階;
(b)該生物試料に対して抽出増強操作(extraction enhancement operation)を実施する段階;および
(c)該生物試料から核酸を抽出する段階。
【請求項35】
前記抽出増強操作が、
(a)前記生物試料への以下の作用物質のうちの1つもしくは複数の添加:
(i)RNアーゼ阻害剤;
(ii)プロテアーゼ;
(iii)還元剤;
(iv)デコイ基質、例えば合成RNA;
(v)可溶性受容体;
(vi)低分子干渉性RNA;
(vii)RNA結合性分子、例えば抗RNA抗体、シャペロンタンパク質もしくはRNアーゼ阻害性タンパク質;
(ix)RNアーゼ変性物質、例えば高浸透圧溶液、界面活性剤;または
(b)核酸抽出前の、以下の段階のうちの1つもしくは複数の実施:
(x)洗浄する段階;
(xi)該試料からRNアーゼをサイズ分離する段階;
(xii)物理的変化によって、例えば温度の低下、凍結/解凍サイクルによって、RNアーゼ変性を生じさせる段階;または
(c)(a)の作用物質もしくは(b)の段階の任意の組み合わせ
を含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記生物試料が体液である、請求項34または請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記体液が尿である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記体液が血清または血漿である、請求項36記載の方法。
【請求項39】
派生物を前記生物試料から得て、核酸を抽出する段階の前に前記抽出増強操作に供する、請求項34〜38のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
前記派生物が前記生物試料由来の微小胞画分を含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記微小胞画分が、分画遠心法、アフィニティー精製、濾過濃縮、浮遊密度勾配、マイクロ流体分離、クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換、およびこれらのいずれかの任意の組み合わせからなる群より選択される手法によって得られる、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記微小胞画分が濾過濃縮法によって得られる、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記生物試料を、0.8μm未満または0.8μmの孔径を有するフィルターに通す、請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記生物試料または前記派生物を、前記増強抽出操作の実施の前に、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼまたはそれらの組み合わせによって処理する、請求項34〜43のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
前記抽出増強操作が、核酸を抽出する段階の前の、前記生物試料へのまたは派生物へのRNアーゼ阻害剤の添加を含む、請求項32〜44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
前記RNアーゼ阻害剤が、[1×]濃度超;あるいは[5×]濃度超または[5×]濃度;あるいは[10×]濃度超または[10×]濃度;あるいは[25×]濃度超または[25×]濃度;かつ、あるいは[50×]濃度超または[50×]濃度の濃度を有する、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記RNアーゼ阻害剤がプロテアーゼである、請求項45または請求項46記載の方法。
【請求項48】
微小胞から核酸を得るためのキットであって、1つまたは複数の容器中に、
(a)核酸抽出増強物質;
(b)DNアーゼ、RNアーゼまたはその両方;および
(c)溶解用緩衝液
を含む、キット。
【請求項49】
前記キットを使用するための説明書をさらに含む、請求項48記載のキット。
【請求項50】
前記核酸抽出増強物質が、
(a)RNアーゼ阻害剤;
(b)プロテアーゼ;
(c)還元剤;
(d)デコイ基質;
(e)可溶性受容体;
(f)低分子干渉性RNA;
(g)RNA結合性分子;
(h)RNアーゼ変性物質;または
(i)これらのいずれかの任意の組み合わせ
からなる群より選択される、請求項48または請求項49記載のキット。
【請求項51】
微小胞由来のRNAを分析する方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)微小胞の試料を得る段階;
(b)該試料をDNアーゼで処理して、該試料中の該微小胞の外側または表面に位置する任意のDNAのすべてまたは実質的にすべてを除去する段階;
(c)該試料からRNAを抽出する段階;および
(d)抽出された該RNAを分析する段階。
【請求項52】
前記微小胞を生物試料から単離する、請求項51記載の方法。
【請求項53】
前記生物試料が体液である、請求項52記載の方法。
【請求項54】
前記体液が尿である、請求項53記載の方法。
【請求項55】
前記体液が血清または血漿である、請求項53記載の方法。
【請求項56】
前記生物試料が哺乳動物由来である、請求項51〜55のいずれか一項記載の方法。
【請求項57】
前記生物試料がヒト由来である、請求項56記載の方法。
【請求項58】
(a)対象由来の尿試料から微小胞画分を単離する段階;
(b)該微小胞画分中のバイオマーカーの有無を検出する段階
を含む、対象を診断、モニタリングまたは治療するための方法であって、
該バイオマーカーが、(i)1種の核酸、(ii)核酸の発現のレベル、(iii)核酸変異体、および(iv)これらのいずれかの任意の組み合わせからなる群より選択され;かつ
該バイオマーカーが、疾患もしくは他の医学的病状の有無、または治療選択肢の実行可能性と関連づけられる、方法。
【請求項59】
前記バイオマーカーがmRNA転写物である、請求項58記載の方法。
【請求項60】
前記mRNA転写物が、NPHS2(ポドシン)、LGALS1(ガレクチン-1)、HSPG2(ヘパリン硫酸プロテオグリカン);CUBN(キュビリン)、LRP2(メガリン)、AQP1(アクアポリン1)、CA4(カルボニックアンヒドラーゼ4)、CLCN5(塩素チャンネルタンパク質5)、BDKRB1(ブラジキニンB1受容体)、CALCR(カルシトニン受容体)、SCNN1D(アミロライド感受性ナトリウムチャンネルサブユニットδ)、SLC12A3(サイアザイド感受性ナトリウムクロライド共輸送体)、AQP2(アクアポリン2)、ATP6V1B1(V-ATPアーゼB1サブユニット)、SLC12A1(RiboAmpで増幅した(RiboAmped)mRNAのRT-PCRによる腎臓特異的Na-K-Clシンポーター)からなる群より選択される、請求項59記載の方法。
【請求項61】
前記mRNA転写物がAQP2(アクアポリン2)またはATP6V1B1(V-ATPアーゼB1サブユニット)である、請求項60記載の方法。
【請求項62】
前記バイオマーカーおよび前記疾患または前記他の医学的病状が、
(a)NPHS2(ポドシン)および糸球体疾患、例えばステロイド抵抗性腎炎症候群;
(b)CUBN(キュビリン)およびタンパク尿、例えばイマースルンド-グレスベック症候群;
(c)AQP2(アクアポリン2)および尿崩症
からなる群より選択される、請求項58記載の方法。
【請求項63】
SEQ ID NO:1〜29からなる群より選択される第2のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%同一である第1のヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項64】
前記ポリヌクレオチド分子がデオキシリボヌクレオチドである、請求項63記載の単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項65】
前記ポリヌクレオチド分子がリボヌクレオチドである、請求項63記載の単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項66】
請求項63記載の単離された核酸分子を含む、ベクター。
【請求項67】
請求項63記載の単離された核酸分子を含む、宿主細胞。
【請求項68】
SEQ ID NO:1〜29から選択されるヌクレオチド配列のセグメントを含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項69】
ポリヌクレオチド分子がデオキシリボヌクレオチドである、請求項68記載の単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項70】
前記ポリヌクレオチド分子がリボヌクレオチドである、請求項68記載の単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項71】
請求項68記載の単離された核酸分子を含む、ベクター。
【請求項72】
請求項68記載の単離された核酸分子を含む、宿主細胞。
【請求項73】
SEQ ID NO:1〜29のいずれか1つにおける任意の13ヌクレオチドの配列と同一である少なくとも13ヌクレオチドの配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項74】
前記ポリヌクレオチド分子がデオキシリボヌクレオチドである、請求項73記載の単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項75】
前記ポリヌクレオチド分子がリボヌクレオチドである、請求項79記載の単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項76】
請求項73記載の単離された核酸分子を含む、ベクター。
【請求項77】
請求項73記載の単離された核酸分子を含む、宿主細胞。
【請求項78】
生物試料からの核酸抽出物の質を評価する方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)生物試料を提供する段階;
(b)該生物試料由来の核酸の抽出物を得る段階;
(c)該抽出物中の、SEQ NO:1〜29から選択されるヌクレオチド配列を有するセグメントを含むポリヌクレオチド分子の量を測定する段階;および
(d)該ポリヌクレオチド分子の量を標準と比較して、該核酸抽出物の質を評価する段階。
【請求項79】
前記生物試料が体液である、請求項78記載の方法。
【請求項80】
前記体液が尿である、請求項78記載の方法。
【請求項81】
前記体液が血清または血漿である、請求項78記載の方法。
【請求項82】
前記生物試料が哺乳動物由来である、請求項78〜81のいずれか一項記載の方法。
【請求項83】
前記生物試料がヒト由来である、請求項82記載の方法。
【請求項84】
前記抽出物が請求項1記載の抽出物である、請求項78記載の方法。
【請求項85】
請求項34記載の方法によって前記抽出物を得る、請求項78記載の方法。
【請求項86】
前記標準が、5個超の生物試料からの核酸抽出物中の、SEQ NO:1〜29から選択される前記ヌクレオチド配列を有するセグメントを含むポリヌクレオチド分子の量を測定することによって導き出される、請求項78記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図23C】
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【図23D】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【図72】
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【図73】
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【公表番号】特表2012−533308(P2012−533308A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520829(P2012−520829)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/042365
【国際公開番号】WO2011/009104
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【Fターム(参考)】