説明

核酸増幅による液体サンプル分析用使い捨て装置

本発明は、核酸増幅による、特にポリメラーゼ連鎖反応技術による液体サンプル分析用装置中で使用される使い捨てサンプル保持および処理装置(1)であって、構造化された表面を有する装置本体(2)、および該構造化された表面を覆いそれにより、増幅室(5)が、液体サンプル分析用に核酸増幅を行うように設計されかつ意図された増幅室(5)の壁および増幅室(5)にサンプル液体を提供するために増幅室に接続された入り口経路(6)の壁とを形成するシールカバー(4)とを含むことを特徴とする装置を記述している。本発明によれば、該装置本体(2)は、入り口経路(6)を形成する構造化された表面が配置されているシート(20)を含んでおり、また該シート(20)は、装置本体(2)の剛性を増加させるために、少なくとも1つのリブ(34,35,36)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸増幅による、特にポリメラーゼ連鎖反応技術による液体サンプル分析用装置中で使用される使い捨てサンプル保持および処理装置であって、構造化された表面を有する装置本体および該構造化された表面を覆い、それにより、
−液体サンプル分析用に核酸増幅を行うように設計されかつ意図された増幅室の壁と、
−増幅室にサンプル液体を提供するために増幅室に接続された入り口経路の壁とを形成するシールカバーとを含むことを特徴とする装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
そのような装置が、米国特許第6551841号明細書中に開示されている。公知の装置は、シリコンまたはポリマー材料の基材からなり、その中では複数の経路と室が形成されている。該基材は、基材とカバーの間で複数の経路と室をシールするガラス製またはプラスチック製のカバーによって覆われている。
【0003】
国際公開第01/28684号パンフレットは、構造化された表面が配置されたシートを有する装置本体と、構造化された表面をカバーし、それにより入り口経路の壁上に増幅室を形成するシールカバーを含む核酸増幅を行うための使い捨てサンプル保持および処理装置を開示している。装置の剛性を増加させるために、シール部材はリブを有する。核酸増幅を行うための他の使い捨てサンプル保持および処理装置は、国際公開第03/057369号パンフレットに開示されている。
【0004】
欧州特許出願公開第1346771号明細書は、複数の被覆されていない開放された壁を有し、そこでは、外壁をさらに強固にするために、該壁の底とマイクロプレートを囲む枠の外壁の間にリブを置いているポリメラーゼ連鎖反応プロセスを行うためのマイクロプレートを言及している。
【0005】
米国特許出願公開第2005/0038357号明細書は、サンプル室中に含まれるサンプルの光学的測定を可能にする薄い壁(「窓」と命名されている)を持つサンプル室中に多量の体液を保持するための一般的なタイプのサンプルエレメントを開示している。補強用リブは、検体濃度測定の精度に対する臨界パラメータである窓の平面性を保持を支持するために該窓に一体的に形成される。
【0006】
ポリメラーゼ連鎖反応技術のような核酸増幅技術により、多数の流体サンプルを分析するためには、分析のスピードとコストが、サンプル保持および処理装置の重要な局面である。したがって、本発明の目的は、低コストでかつタイミングよく短時間で流体サンプルを分析するために適した使い捨てサンプル保持および処理装置を、提供することである。
【0007】
これに対して、以下の特定要件を考慮しなければならない。装置中に含まれる経路および室から生じる諸条件は;装置と共に分析に使用される(自動)装置の取り扱いおよび駆動手段との機械的接触およびサンプルを加熱冷却するための熱移動を可能にするシールカバーの使用を可能にし、容易で安価な製造を行い、収縮、サイズのズレ、装置本体およびカバー中の泡の形成、高コストの射出成形および製造プロセス中での長いサイクル時間を避け、製造プロセス中での型の通風、本体または装置に必要な材料の量の最適化を可能にし、特に装置中での使用に際して自動取り扱いおよび処理の観点から、装置の高い剛性を提供し、また装置本体に対するシールカバーの容易な取り付けを可能にすることなどである。
【発明の開示】
【0008】
装置本体が、入り口経路を形成する構造化された表面が配置されたシートを含んでいることおよび該シートが、装置本体の剛性を増加させるための少なくとも1つのリブを有しているという本発明によって、これらの目的は解決される。
【0009】
本発明による使い捨てサンプル保持および処理装置を、好ましくはポリマー材料を用いて、安価に製造することができる。装置本体のシートは、少なくとも1つの、好ましくはいくつかのリブによって強化されている。この強化により厚さ1.2mm好ましくは、厚さ0.8mmから1.0mmのシートを、装置本体用に使用することが可能になる。本発明による装置は一方では材料コストを下げ、かつ他方では装置の熱容量を下げる低質量を持つことが有利に達成できる。さらなる利点としてはリブの強化効果が、熱歪により装置本体の屈曲を生じることなく、シールカバーたとえばフォイルを、溶接により装置本体に固定することを容易にさせることになる。
【0010】
核酸増幅技術は一般的ルールとして、室温以上での温度におけるサンプル処理とポリメラーゼ連鎖反応技術、たとえば注意深く制御された温度の間での循環を必要としているため、低熱容量は有利でありまた重要である。本発明による装置の有利な低熱容量は、装置に含まれるサンプル液体を加熱しまたは冷却するための時間が、より短くてすむ。
【0011】
さらに本発明による装置は、少なくとも1つのリブによって強化された装置本体が、充分な機械的強度を有しているため核酸増幅装置中で、それは垂直方向に処理可能であるという利点を有している。該使い捨て装置の垂直処理により、機器に対して要求される設置面積が削減される。
【0012】
該装置により分析されるサンプルは、体液たとえば、血漿、血清、尿または体液の処理、混合または他の処置により得られるいかなる液体であってもよい。サンプルの他の可能性は、生体物質または検体を含む液体の懸濁液を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の更なる詳細および利点を、添付した図面を参照して、例示の実施態様に基づいて以下に図示する。以下のことは、図面中に図示されている。
【0014】
図1は、使い捨て取り扱いおよび処理装置1とサンプル移送チップ12とを含む操作キット100の拡大図を示す。図2および図3は、核酸増幅による、特にポリメラーゼ連鎖反応技術による液体サンプル分析用装置中で使用されるように設計されている使い捨てサンプル保持および処理装置1の本体2を示す。処理装置1および本体2は、たとえば装置に挿入するために寸法付けされる。装置1は、経路および室用の溝と窪みを含む構造化された表面3、および該構造化された表面3を覆いそれにより、核酸増幅を行うように設計されかつ意図された増幅室の壁および増幅室5に接続された入り口経路6の壁とを形成するシールカバー4とを含んでいる。
【0015】
装置1は、サンプル液体中に含まれる核酸を結合するために、固相吸着材8、好ましくはガラス繊維フリースを含む結合室7をも含む。装置1は、サンプル移送チップ12を受け取るために適用される挿入開口部16を持ったサンプル調製室10をも含む。該サンプル調製室10は、経路13を経由して結合室7に接続される出口9を有している。該サンプル調製室10は、50μlから20ml、特に200μlから10mlの範囲の体積を持ち、またサンプル材料の溶解用またはより一般的には、サンプルの調製工程用に典型的に使用される。
【0016】
種々の室5,7,10は、互いにおよび/または流体界面ポート14,14’に対して経路13によって接続されている。結合室7は、5μlから500μl、特に10μlから100μlの体積を持つ。増幅室5は、10μlから100μlの体積をもち、また少なくとも結合室7の体積と同等であることが好ましい。シールカバー4に対して垂直で測定される増幅室5、結合室7、経路6,13の深さは、50μmから2mm、好ましくは、100μmから1mmの範囲である。経路6,13は、0.01mm2から2mm2、特に0.04mm2から0.5mm2の断面積を持つ。
【0017】
図4は装置1およびサンプル移送チップ12を含む操作キット100の機能の概略図を示している。サンプル調製室10中へのチップ12の導入にあたり、チップのシール領域43および室10の内壁のシール領域46は、密封を形成する。試薬、たとえば溶解用の試薬を流体界面ポート14および経路13を経由して、サンプル調製室10中に添加できる。フィルター32により閉じられる排出口31も、サンプル調製室10に接続されている。室10は、図1から図3に示された室5,7を含む流体システム23に導く出口9を有している。経路を閉じそしてそれにより、ガスまたは液体の流れを制御するために、流体制御領域21,22を使用できる。たとえば流体制御領域は、操作キット100をサンプル分析用に使用する装置によって用いられる熱または圧力によって、閉じられてもよい。
【0018】
装置本体2はプラスチック製シート20を含み、その上に、経路6,13および室5,7,10を形成する構造化された表面3が配置される。装置本体2は、射出成形によって製造される。サンプル液体に対してまた試薬に対して不活性な適当なプラスチック材料は、たとえば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネートおよびポリメタクリル酸メチルである。好ましくは熱可塑性材料、特にポリプロピレンが使用される。
【0019】
装置本体2の構造化された表面3は、平坦なシールカバー4によって覆われ、それにより装置1の室5,7,10の壁および経路6,13を形成しかつそれらを堅くシールする。シールカバー4は薄いシート材料、たとえばプラスチックホイルであり、それはシール領域38において、装置本体2と接触する。好ましくはシールカバー4は、2層以上を含む。示された例において、それはサンプル液体に対して不活性な材料で作られた第1層(好ましくは、装置本体2に接触する)および金属、好ましくはアルミニウムで作られた第2層(そこでは、好ましくは第1層は装置本体2と第2層の間に置かれる)とを含む。第2層は、好ましくは第1層より厚い。
【0020】
第2層は、熱をサンプル液体に移すための効率的な道を提供し、またはそこから熱を取り去る道を提供する。サンプルを加熱しまたは冷却するためには、分析装置の加熱領域または冷却領域に、シールカバー4を接続できる。シールカバー4の厚みは、できるだけ薄いのが好ましいが、装置1の種々の室5,7,10を信頼性良くシールするために充分な機械的強度を確保するのが好ましい。シールカバー4の厚みが薄いほど、熱容量が小さくなり、かつ熱転移速度が高くなる。低い熱容量、高い熱移動伝導度および高い熱転移速度は有利である。なぜならそれらが、装置1のそれぞれそこにある流体の加熱または冷却を早めることが可能であるからである。
【0021】
一般的にシールカバー4の厚みは1mmを超えるべきではなく、500μm以下であることが好ましい。室5,7,10および経路6,13の信頼性あるシールのために充分な機械的強度を確保するために、該厚みは少なくとも50μmとするべきである。50μmから350μm、特に60μmから200μmの厚みが特に有利である。
【0022】
アルミニウムは、それが非常に低い熱容量を有しているから、シールカバー4の第2層用の材料として特に良好に適している。勿論、他の材料も使用可能である。第2層の厚みは、好ましくは20μmから400μm、特に20μmから200μmである。
【0023】
第1層の機能は、主としてサンプル液体と第2層の間の接触を避けることであるので、できるだけ薄い厚さであるが、連続層を確保できる第1層を設けることが有利である。したがって、第1層の厚みは300μm未満であり、好ましくは200μm未満であり、特に100μm未満である。0.1μmから80μmの第1層の厚みが、特に好ましい。
【0024】
示された例において、シールカバー4は第1層と第2層からなる複合フォイルである。第1層を第2層に張り合わせることができるし、または第2層上に噴霧したり、塗布したり、またはたとえば蒸着することができる。さらなる層をシールカバー4に加えることができるし、たとえば第2層を保護するためのペイント塗布を行うこともできる。シールカバー4の全熱伝導度は、少なくとも200Wm-2-1、好ましくは少なくとも2000Wm-2-1である。
【0025】
適当な結合手段、たとえば熱シールまたはポリウレタン接着剤またはポリメタクリル酸メチル接着剤などの接着剤使用により、シールカバー4を、装置本体2に固着することができる。好ましくは、熱結合を用いて、シールカバー4を装置本体2に結合するか、または、たとえば、超音波溶接またはレーザ溶接により、装置本体2に溶接する。もしシールカバー4の第1層が、装置本体2と同じ材料、たとえばポリプロピレンからなっているときには、溶接が、最も適している。シールカバー4および装置本体2は、製造の間に、シールカバー4を、構造化された表面3上に正確に位置決めするために使用される位置決め穴(図示されていない)を有している。
【0026】
それぞれ装置1から流体を導き出すための試薬を供給するために、装置1は、経路6,13または室5,7,10に接続されている流体接触ポート14,14’を有している。該流体接触ポート14は、シールカバー4が配置されている装置1の表側の広い部分に対して両者を隣接させる小さな部分および裏側の広い部分に、配置される。示された例において、接触ポート14,14’は、隔膜29用円筒状リセスを含んでいる。
【0027】
図3が、示すように、接触ポート14は、装置1の汚染を避けるために、隔壁29によって閉じられる。該隔壁29は、装置1中に試薬またはプロセスガスを配送するために、中空針、注射器または類似の装置によって穿刺可能な適当なエラストマーから作られている。隔壁29用に使用されるエラストマーは、20から80ショアAの範囲の、好ましくは30から60ショアAの範囲のショア硬度を有している。サンプル調製室10の挿入開口部も、その小さな領域側に配置されている。この配置により、分析装置中での垂直位置での装置1の処理を可能にしている。
【0028】
流体接触ポート14’は、入り口ポート14と同じ側に配置されるか、または装置1の表側の広い部分および裏側の広い部分に両者を隣接させた、異なる小さい部分側に配置される。流体接触ポート14’は、直接増幅室5に接続され、また装置1からガスまたは液体を除去するための出口ポートとして、使用可能である。出口接触ポート14’は、入り口流体接触ポート14が配置される小さな面積側とは反対の小さな面積側に配置されることが、好ましい。
【0029】
さらに、装置1は、挿入開口部を経由して、サンプル調製室10に接続される排出口31を有している。手段19,32が、排出口31に設けられている。手段19、32は、埃、エアロゾルなどとのサンプルの汚染を避けるために、また潜在的に危険なサンプル材料との環境物の汚染を避けるために、液体または固体粒子の通過を阻止する。これらの手段は、排出口31中に置かれるフィルター材料、好ましくは多孔質材料を含んでいる。代替的に、または追加的に、該手段は曲がりくねった経路壁に、液体または固体粒子を付着させる経路13の蛇行部分19を含んでいても良く、その結果、そのような粒子は、ガス流から取り出される。該蛇行部分19は、それがより多くのカーブを含めば含むほど、またカーブの半径が小さければ小さいほどより効果的になる。示された例中において、蛇行部分19は、ろ過効果を提供するのに充分な単一カーブのみを含んでいる。
【0030】
液体または固体粒子の通過を阻止するための手段19,32により、サンプル調製室10のガスは、周囲の雰囲気、通常は空気と交換可能になる。示された装置1において、多孔質プラスチック材料32は、装置1の背後に置かれた排出口31を閉じるために使用される。
【0031】
記述された使い捨てサンプル保持および処理装置1は、液体を使い捨て装置中に移送するためのサンプル移送チップ12をも含む処理キット100の1部である。処理キット100は、図5中の背面図中および図6中の図5のCC線に沿った断面図中に示されている。
【0032】
該サンプル移送チップ12は、原理上ガラスのような異なる材料により作られているが、サンプル移送チップ12は、使い捨て装置1の本体2と同じポリマー材料で作られている。該使い捨て装置1は、サンプル移送チップ12を受け取るために適用される挿入開口部を持ったサンプル調製室10を有している。挿入開口部およびサンプル移送チップ12は、サンプル調製室10中へのサンプル移送チップ12の挿入が、サンプル移送チップ12の外壁40とサンプル調製室10の内壁41の間に、密封を生じさせるような方法で寸法付けされている。サンプル調製室10の内壁41は、サンプル移送チップ12の外壁40と噛み合い、それにより密封を形成するシール領域46を有している。密封が形成されるサンプル調製室10の内壁41およびシール43ならびにサンプル移送チップ12の外壁40は円形である。シールが機能すると、サンプル調製室10の内壁41はサンプル移送チップ12を押し付ける。サンプル移送チップ12の外径は、典型的には5mmから20mmの範囲である。このように血液採取管またはサンプルを蓄える同様な装置から、サンプルを取り出すために、サンプル移送チップ12を使用できる。
【0033】
サンプル移送チップ12は、サンプル調製室10の挿入開口部中への挿入用先端部15を有している。図6中に示されるように、サンプル移送チップ12が、サンプル調製室10中に導入されると、サンプル移送チップ12の先端部15は、挿入開口部16(図1)、すなわちそのリム11から、少なくとも1cm、好ましくは3cm、特に少なくとも5cmだけ離される。サンプル移送チップ12の先端部15とシール領域43との間の距離は、サンプルをサンプル容器から、たとえば吸引により取り出すときサンプル採取工程の間にサンプル液体中にサンプル移送チップ12が浸漬される浸漬深さより大きい。
【0034】
サンプル移送チップ12により、サンプル調製室10にサンプルを移送後、チップ12を挿入位置に押し込む適当な押し込み力を印加することにより、チップ12は、装置1中に摩擦ロックされる。この力は、典型的には、2Nから50Nの範囲であり、好ましくは、5Nと30Nの間である。挿入位置中のサンプル移送チップ12と使い捨て装置の間の摩擦ロックは、少なくとも2N、好ましくは、少なくとも5Nのロック力を作り出す。したがって、少なくとも2N、好ましくは少なくとも5Nの力は、挿入位置からチップを抜き取るために必要であろう。サンプル移送チップ12のシール領域43は、チップ12の錐台形状の部分として与えられるが、異なった手段により容易に与えられても良い。
【0035】
サンプル移送チップ12は、図1中に示されかつフィルター材料、好ましくは多孔質材料で作られたプラグ50を含んでいる。繊維材料、吸着材料、サイズ排除材料および/または膜も使用してもよい。示された例においてプラグ50は、多孔質プラスチック材料で作られている。該プラグ50は汚染を防止するが、圧力を伝達するために、空気に対して十分に透過性であり、したがってサンプル調製室10中でのサンプル液体の試薬との飲み込み吹き出し混合と同様に、サンプル吸引および投与を可能にする。プラグ50は装置が周囲の雰囲気と置換する空気からエアロゾルをろ過する。
【0036】
図7は、図5のAA線に沿った断面図を示している。図7中に見られるように、シート20は、装置本体2の剛性を増加させるための少なくとも1つのリブ34,35,36を有している。リブ34,35,36とシート20は、単一部品として製造される。示された装置1中において、リブ34,35,36は、シート20の表側(すなわち、カバー4に面している構造化された表面3上に)およびシート20の裏側(すなわち、シート20に面したシート20の反対側)の両方に配置される。勿論、シート20の表側または裏側のリブのみ、または単一リブによっても、有用な強化効果を得ることができる。
【0037】
経路6,13の少なくとも1つの壁が、該リブによって形成されるように、少なくとも1つのリブ35,36が構造化された表面3上に配置されれば、それは有利である。示された装置1において、経路6の反対の壁(または、対応する別の経路13の)、すなわち壁の間に経路6を形成する隣の壁が、互いに平行に沿っている2つの対応するリブ35,36によって形成される。もし経路底37が、図8に示されているように、経路6の反対壁を形成しているリブ35,36に隣接したシート20の表面に対して持ち上げられているとすれば、それは特に有利である。
【0038】
同様に、リブ35,36または持ち上げられた部分は、結合室7および増幅室5の側壁を形成する。シールカバー4は、シート20の表側のリブ35,36に固定され、したがって、それは、表面積の部分を用いてのみ、装置本体2に接触し、それは、使い捨て本体2とシールカバー4の間の密封形成を容易にし、かつ装置1の屈曲を減少させる。図7および図8に示すように、リブ35,36は、シールカバー4に接続される平坦なトップを有している。このようにして、空気のポケット45は、シート20とシールカバー4の間に存在する。このことが、装置本体2とシールカバー4の間に断熱を行う。同時に、シールカバー4が、種々の経路6,13および室5,7,10に対して、壁を形成するので、シールカバー4とサンプル液体の間の改良された熱接触は達成される。
【0039】
経路6,13または室5,7,10の壁が、直線であろうと、曲がっていようと、リブ34またはシート20の裏側のリブは、シート20の表側上の入り口経路6または1つまたは数個の他の経路13整列するか、室壁と整列する。少なくとも1つのリブ34は、直線的な経路6,13に対して平行であり、および/または経路6,13の直線部分に対して平行であり、および/または直線的な室壁に対して平行であることが、好ましい。少なくとも1つのリブ34またはリブを、シート20の裏側、すなわち、シールカバー4によってカバーされていない側に、配置することが、特に有利である。図7および図8に示されているように、少なくとも1つのリブ34が、経路6,13の反対側および/またはカバーシート4が、装置本体2に接続されるシール領域38の反対側であることが、好ましい。さらなる強化のために、特にシート20の裏側にさらに、リブを加えても良い。
【0040】
シート20は、0.2mmから4mm、特に0.3mmから2mm、好ましくは0.5mmから1.5mm、特に好ましくは、0.8mmから1.0mmの厚みを有している。シート20の裏側のリブ34は、典型的には半分の高さで、シート20の厚みの50%から150%である幅を有している。リブ34は、シート20の表面上で、シート20の厚みの60%から200%、好ましくは80%から150%である高さに、立ち上がっている。シート20の表側のリブ35,36は、シート20の裏側のリブ34より小さな高さを有しており、すなわち、シート20の表側のリブ35,36は、シート20の厚みの20%から120%の高さを有していることが好ましい。
【0041】
シート20の裏側のリブ34と表側のリブ35,36の間の高さの差は、それらの機能における差によるところが、大きい。リブ34が、装置本体2の強度を増加させるためにだけ役立つのに対して、リブ35,36は、1つまたはいくつかの経路6,13の壁を提供するために、および/または装置本体2をカバー4に接続するために、最初にまた最も重要に役立っている。したがって、リブ35,36は、高さではかなり小さいが、それらは、さらに歓迎すべき強化効果を提供している。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】使い捨て取り扱いおよび処理装置とサンプル移送チップを含む本発明による操作キットの実施態様の拡大図を示す。
【図2】図1中に示された使い捨て取り扱いおよび処理装置の本体の斜視図を示す。
【図3】図1中に示された装置本体の他の斜視図を示す。
【図4】図1中に示された操作キットの概略図を示す。
【図5】図1中に示された装置本体および挿入されたチップの裏面図を示す。
【図6】CC線に沿った図5の断面図を示す。
【図7】AA線に沿った図4の断面図を示す。
【図8】図7に対応した断面図中の他の実施態様の詳細を示す。
【符号の説明】
【0043】
1 使い捨てサンプル保持および処理装置
2 装置本体
3 構造化された表面
4 シールカバー
5 増幅室
6 入り口経路
7 結合室
8 固相吸着材
9 サンプル調製室10の出口
10 サンプル調製室
11 サンプル調製室10の挿入開口部16のリム
12 サンプル移送チップ
13 経路
14、14’ 接触ポート
15 サンプル移送チップ12の先端
16 サンプル調製室の挿入開口部
19 経路13の蛇行部分
20 シート
21 流体制御領域
22 流体制御領域
23 経路6,13および室5,7からなる流体システム
29 隔壁
31 排出口
32 ろ過材料
34 リブ(シート20の裏側の)
35 リブ(シート20の表側の)
36 リブ(シート20の表側の)
37 経路底
40 サンプル移送チップ12の外壁
41 サンプル調製室10の内壁
43 チップのシール領域
45 エアーポケット
46 室のシール領域
50 プラグ
100 操作キット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸増幅による、特にポリメラーゼ連鎖反応技術による液体サンプル分析用装置中で使用される使い捨てサンプル保持および処理装置(1)であって、構造化された表面(3)を有する装置本体(2)、および該構造化された表面(3)を覆いそれにより、
−増幅室(5)が、液体サンプル分析用に核酸増幅を行うように設計されかつ意図された増幅室(5)の壁および
−増幅室(5)に液体を提供するために増幅室に接続された入り口経路(6)の壁とを形成するシールカバー(4)とを含むことを特徴とする装置であり、
該装置本体(2)は、入り口経路(6)を形成する構造化された表面(3)が配置されているシート(20)を含んでいることを特徴とし、また該シート(20)は、装置本体(2)の剛性を増加させるために、少なくとも1つのリブ(34,35,36)を有していることを特徴とする装置。
【請求項2】
少なくとも1つのリブ(34)が、シート(20)の裏側に配置されまた入り口経路(6)が、シート(20)の表側上に配置されていることを特徴とする請求項1記載の装置(1)。
【請求項3】
少なくとも1つのリブ(34)が、入り口経路(6)および/または装置(1)の1つまたはいくつかの他の経路(13)に整列され、および/または装置(1)の室(5,7,10)の壁に整列されていることを特徴とする請求項1または2記載の装置(1)。
【請求項4】
少なくとも1つのリブ(34)が、直線経路(6,13)に平行に、および/または経路(6,13)の直線部分に平行に、および/または直線的な室壁に平行に整列されていることを特徴とする請求項3記載の装置(1)。
【請求項5】
少なくとも1つのリブ(35,36)が、入り口経路(6)が配列されているシート(20)の表側に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項6】
該シート(20)の表側にあるリブ(35,36)が、1つまたはいくつかの他の経路(6,13)の壁を提供するために役立っていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項7】
リブ(35,36)が、構造化された表面(3)上に配置され、その結果、経路(6,13)の少なくとも1つの壁が、少なくとも1つのリブ(35,36)によって形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項8】
経路(6,13)の反対の壁が、2つの対応するリブ(35,36)により形成されていることを特徴とする請求項7記載の装置(1)。
【請求項9】
経路(6,13)が、経路(6,13)の反対の壁を形成するリブ(35,36)に隣接して、シート(20)の表面に対して持ち上げられている底(37)を有していることを特徴とする請求項7または8記載の装置(1)。
【請求項10】
該シート(20)の表側にあるリブ(35,36)が、シールカバー(4)に対して、装置本体(2)を接続するために役立っていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項11】
該シールカバー(4)が、該シート(20)の表側に置かれたリブ(35,36)に対して固定され、また装置本体(2)を、表面積の一部分のみに接触させることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項12】
該シート(20)の表側に置かれたリブ(35,36)が、シールカバー(4)に接続される平坦なトップを有しており、かくして該装置本体(2)と該シールカバー(4)の間に断熱性を与えるために、シート(20)とカバー(4)間に空気のポケット(45)を提供することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項13】
該シート(20)および該少なくとも1つのリブ(34,35,36)が、プラスチック材料、好ましくは熱可塑性材料で作られていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項14】
該シート(20)および該少なくとも1つのリブ(34,35,36)が、特に射出成形により、単一部品として製造されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項15】
該カバー(4)は、該シート(20)の構造化された表面(3)上に配置された該リブ(35,36)にシールされているフォイルであることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項16】
該少なくとも1つのリブ(34)が、半分の高さで、該シート(20)の厚みの30%から300%、特に50%から250%、好ましくは80%から120%である幅を有していることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項17】
該少なくとも1つのリブ(34)が、該シート(20)の表面上で、該シート(20)の厚みの60%から200%、好ましくは80%から150%である高さまで立ち上がることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−8】
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【公表番号】特表2009−543546(P2009−543546A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518759(P2009−518759)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005952
【国際公開番号】WO2008/006501
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】